説明

画像評価装置及び画像形成装置

【課題】画像ノイズの原因や現象を精度良く特定すること、客観的な評価を行うこと又はダウンタイムを低減することのいずれかを実現すること。
【解決手段】テストプリント画像の画像情報をフーリエ変換して空間周波数特性Raps(u,v)を算出するフーリエ変換部102と、少なくとも二以上の帯域フィルタを用いてフーリエ変換部102により算出された空間周波数特性Raps(u,v)の帯域を制限する帯域フィルタ作用部103と、帯域フィルタ作用部103により制限された空間周波数特性Raps(u,v)の帯域内の情報に基づき、テストプリント画像についての画像ノイズの評価値を算出する評価処理部104とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上にインクやトナー等の色材で形成された画像を分析して、その画像を形成した画像形成装置を検査するためのデータを提供する画像評価装置及びその画像評価装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置(プリンタや複写機など)には、予め与えられている画像信号又は画像作成用プログラムを動作させて、テストプリント画像として必要な画像を形成させるテストプリントモードが用意されているものがある。テストプリント画像としては、文字画像や色味確認画像などと共に、一様なベタ画像、とりわけ一様なハーフトーン画像が一般的である。一様なハーフトーン画像は画像形成装置の微細な変動に影響されやすく、画像形成装置の詳細な運転状態を把握するためには簡便な画像である。ユーザ又はサービスマンは、記録媒体上に形成されたテストプリントを参照して、ハーフトーン画像に発生したバンディングやスジなどを目視で判断する。これにより、ユーザやサービスマンは画像形成装置の出力画像を評価でき、場合によっては異常状態の原因個所の推定まで行うことができる。この場合サービスマン又はユーザは、形成される画像を評価し、異常の原因と推定される画像形成装置の各種パラメータを操作したり、あるいは不具合箇所を修理したりして画像形成装置を適切な状態又は好みの状態に調整することができる。尚、バンディングとは本来一様であるべき画像濃度に帯状の濃淡の濃度変化が連続的に生じている状態であり、スジとは濃淡の変化部分の濃度勾配が急峻な線状の画像である。
【0003】
また、画像形成装置の定着部の下流側に設けた画像読み取り部により記録媒体に記録されたテストプリント画像を読み取って、読み取り結果に基づいて状態を把握できる画像形成装置も提案されている。また、複写機等であれば複写機自体が備える画像スキャナにより記録媒体に記録されたテストプリント画像を読み取って、読み取り結果に基づいて状態を把握できる画像形成装置も提案されている。このような画像形成装置では、テストプリント画像のバンディングやスジなどを、画像読み取り部で読み取った画像から検出する。バンディングやスジの検出は、読み取られた画像データ、すなわち輝度又は濃度あるいは色味成分の平均値及び標準偏差を求めることで行われる。また、読み取った画像データにフーリエ変換を施して変換後のフーリエ係数から得られる周波数特性に基づいてブレやムラやスジを判断する評価法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この評価法は、特定の周波数のパワースペクトルの増減でその周波数の画像ノイズの増減が判断可能であり、周波数が特定できる原因(例えば駆動ギアやスキャナモータなど)の劣化部品交換などのメンテナンスに利用が可能である。
【0004】
また、周期が揺らぐものや、ある帯域で周期がランダムに変化する等の周期性の低い画像ノイズにおいて特定の周波数のパワースペクトルを観察すると、パワースペクトルの大きさの再現性が低く、画像ノイズの検出能力が低い。このような周期性の低い画像ノイズの評価に有効な手法として、帯域フィルタを用いる手法がある。すなわち、帯域フィルタと、画像の濃度変動のパワースペクトルとのカスケード値を積分する手法である。帯域フィルタを用いレンジを持った周波数帯を評価対象とすることで、そのレンジ内の周期であれば、周期性の低い画像ノイズに対しても検出感度が高い。代表的な帯域フィルタとして、例えば、視覚の空間周波数特性(VTF:Visual Transfer Function)が知られている。それを用いた画質評価法として、Xerox社のDooley及びShawによって定義された粒状度GSが知られている(例えば、非特許文献1参照)。これは、画像の濃度変動のパワースペクトル(以下、WS(f))と、VTFとのカスケード値が積分された数値である。粒状度GSは、次式によって求められる。
【数1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−36437号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】R.P.Dooley and R.Shaw:”Noise Perception in Electro−photography”,J.Appl.Photogr.Eng.,5,pp.190−196(1979)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、画像ノイズによる画像不良は、現象ごとにさまざまな帯域を持つ。そして、メーカーやメンテナンス業務を行うサービスマンは、同じ1次元画像ノイズであっても発生する周波数帯によって表現を替えることで、現象の識別を行っている。一般的に、バンディングはおおよそ10mmピッチ以下の高周波な帯域をもつ画像ノイズを言う。一方、10mmピッチ以上の低周波な帯域をもつ一次元ノイズは濃度むらと表現され、バンディングと区別する傾向がある。尚、図7(a)にバンディングと濃度むらの画像を示す。また、スジも低周波な周波数特性を示す場合が多い。高周波ノイズのバンディングは、像形成や転写材搬送に用いるローラなど駆動を伝達するギア一歯の噛み合いや、像形成の電気的ノイズに起因し、低周波ノイズの濃度むらは像形成や転写材搬送に用いるローラの偏芯や回転むらなどに起因する。
【0008】
次に、転写起因及び定着起因の2次元画像ノイズについて説明する。転写起因のノイズは高周波の周波数帯を持つことが多い。過剰な転写バイアスによってトナーの電荷が中和されたり又は反転したりして、トナーが転写材へ一様に転写されず「ガサツキ」と呼ばれる高周波ノイズが発生する。定着起因の場合には、過定着によって紙目が浮かび上がるまだらと呼ばれる低周波ノイズが発生する。図7(b)にガサツキとまだらの画像、図7(c)にガサツキとまだらのノイズの周波数特性を示す。
【0009】
これらの異なる周波数特性を持つ画像ノイズにVTFのような広帯域の帯域フィルタを適応すると、バンディングやスジなどの画像不良現象の識別が不可能であった。同様に、ガサツキやまだらの画像不良現象の識別ができず、原因の推定が不可能であった。例として、図7(d)に粒状度GSを算出するためのVTFと周波数特性を記したグラフを示す。VTFが各現象のノイズの周波数帯域を包括するため、画像不良現象の識別ができず、原因(定着か転写か)の特定が不可能であった。従来手法では画像不良の原因や現象が精度良く特定できないことから、プロセス条件を変更するなどのプリンタとして改善の対応がとれずにいた。また、サービスマン対応において、画像不良の現象やその程度、原因をサービスマンが判断するため、サービスマンの主観で判断基準が異なったり、サービスマン対応のダウンタイムの問題もあった。
【0010】
本発明は、このような課題及び他の課題のうち、少なくとも1つを解決することを目的とする。本発明では、画像ノイズの原因や現象を精度良く特定すること、客観的な評価を行うこと又はダウンタイムを低減することのいずれかを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。
【0012】
(1)入力された評価対象画像の画像情報に基づき画像ノイズの評価を行う画像評価装置であって、評価対象画像の画像情報をフーリエ変換して空間周波数特性を算出するフーリエ変換手段と、少なくとも二以上の帯域フィルタを用いて前記フーリエ変換手段により算出された空間周波数特性の帯域を制限するフィルタ手段と、前記フィルタ手段により制限された前記空間周波数特性の帯域内の情報に基づき、前記評価対象画像についての画像ノイズの評価値を算出する評価手段と、を備えることを特徴とする画像評価装置。
(2)評価対象画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により形成された評価対象画像を読み取る画像読取手段と、前記(1)に記載の画像評価装置と、を備え、前記画像評価装置は、前記画像読取手段により読み取った前記評価対象画像の画像情報が入力されることにより画像ノイズの評価を行うことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画像ノイズの原因や現象を精度良く特定すること、客観的な評価を行うこと又はダウンタイムを低減することのいずれかを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の画像形成装置の構成を示す図、制御基板、入出力装置の電気的構成の説明図
【図2】実施例1の画像の状態を判断する画像解析部のブロック図、帯域フィルタのリストを示す表、ガサツキとまだらの周波数特性に特化した帯域フィルタを付与したグラフ
【図3】実施例1のテストプリント画像のレイアウトを示す図、評価結果の一覧を示す表
【図4】実施例1の客観評価とまだら又はガサツキの主観評価値の相関を示す図
【図5】実施例3の画像形成装置の構成を示す図、制御基板、外付け入出力装置の電気的構成の説明図、CIS装置を説明する断面図
【図6】実施例4の画像形成装置のプロセス条件のフィードバックルーチンを説明するフローチャート
【図7】従来例のバンディング、濃度むら、ガサツキ、まだらの画像を示す図、ガサツキとまだらのノイズの周波数特性を示すグラフ、粒状度GSを算出するためのVTFと周波数特性を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係わる実施の形態を、図面を参照して詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0016】
<画像形成装置の構成>
図1(a)は、実施例1の画像形成装置の構成を示す図である。本実施例の画像形成装置は、リーダスキャナ部1とプリンタ部20により構成される。本実施例の画像評価におけるテストプリント画像(評価対象画像)は、プリンタ部20によって形成され、リーダスキャナ部1によって読み取られる。リーダスキャナ部1は、原稿台ガラス2上と圧板3の間に載置された原稿を、蛍光灯やLEDなどの光源4及び反射ミラー5により走査し、原稿からの反射光を反射ミラー6、7及び8にてレンズ9を通過させCCD10によりデジタル画像信号に変換する。一方、CCD10により読み取られたデジタル画像信号は、不図示の画像処理装置により、フィルタ処理、濃度変換、γ変換などを経てプリンタ部20内の半導体レーザ21を駆動すべき画像信号に変換される。半導体レーザ21により発生したレーザビームは、スキャナモータ22及び回転多面鏡23の回転によりレンズ24及び反射ミラー25を経て像担持体である感光ドラム26に所望の解像度で照射される。感光ドラム26は予め帯電ローラ27により印加される帯電バイアスにより均一な電位を帯びており、レーザビームによる走査で画像情報に応じた静電潜像が形成される。感光ドラム26上(像担持体上)の静電潜像は、現像器29からのトナーによりトナー像として顕像化される。このトナー像は、転写ローラ32及び転写ローラ32により印加される所定の転写バイアスにより、給紙デッキ33から給紙された転写紙34に転写される。この後搬送ベルト35により転写紙34は搬送され、定着器36において、所定の定着温度により転写紙上に未定着のトナー画像が定着される。トナー像が定着した転写紙34は、搬送ローラ対38、39により機外に排紙される。なお、転写ローラ32の位置で転写紙上に転写されずに残留した転写残トナーはクリーナー37により感光ドラム26から剥ぎ取られる。
【0017】
図1(b)は、画像形成装置内部の制御基板及び入出力装置について電気的構成を説明する図である。図1(b)において、制御基板301内には制御プログラムの記述されたROM70と、プログラム上の必要データの一時記憶素子であると同時に、画像信号を展開するRAM71がCPU72に接続されている。またインターフェイス素子であるI/O 73と、データの変換素子であるA/D変換器74及びD/A変換器75が外部の入出力装置と接続され、制御基板301と入出力装置間で情報が入出力される。そして制御基板301には、画像の入力部としてリーダスキャナ部1が接続されている。更に、制御基板301には、画像形成装置の状態を表示する表示部90と、画像の状態を判断する画像解析部91と、画像形成装置各部の制御を行う各種制御部92が接続されている。ここで画像解析部91は、後述する図2(a)に示す構成を専用のハードウェアで備えたものとして本実施例では説明する。尚、画像解析部91は、制御基板301のCPU72が実行するROM70に記憶されたプログラムとしてソフトウェアで実現されるものとしても良い。また、画像解析部91は、解析対象の画像データ、解析処理途中の画像データ又は結果のデータを保存するためのメモリ910を有する。
【0018】
<画像評価>
本実施例では、例えばバンディング、濃度むら又はスジ、ガサツキ、まだらといった画像ノイズを評価対象とする。ここで、バンディング、濃度むら又はスジは、図7(a)に示すように、画像の一方向にのみ周期的に又は非周期的に変化する画像ノイズで、これらを1次元の画像ノイズとする。尚、画像の一方向とは、転写紙の搬送方向又は主走査方向(転写紙の搬送方向に直交する方向)のいずれかである。1次元の画像ノイズは、例えば本実施例では10mmを閾値とし、10mm未満のピッチで変化する高周波のものをバンディング、10mm以上のピッチで変化する低周波のものを濃度むら又はスジとする。尚、スジとは濃度むらに比べて濃淡の変化部分の濃度勾配が急峻な線状の画像ノイズである。また、ガサツキ及びまだらは、図7(b)に示すように、画像全体にわたって周期的に又は非周期的に変化が生じる画像ノイズで、これらを2次元の画像ノイズとする。2次元の画像ノイズのうち、高周波のものをガサツキ、低周波のものをまだらとする。
【0019】
図2(a)は、本実施例の画像の状態を判断する画像解析部91のブロック図である。まず、2次元の画像ノイズの解析について説明する。リーダスキャナ部1のCCD10により読み取られた画像データは、制御基板301を介して画像解析部91に入力され、前処理部100により画像の加工が行われる。本実施例では、前処理部100は、CCD10で読み込んだ2次元的な輝度情報から解析対象の範囲分(以後、評価範囲と呼ぶ)だけ画像解析部91の備えるメモリ910に保持する。評価範囲は、メモリ910の容量に応じた適切な範囲とする。明度変換部101は、不図示の輝度−明度変換テーブルを有する。明度変換部101は、メモリ910に保持された2次元の輝度情報を読み出し、その輝度情報を明度に変換し、再度メモリ910に明度情報として保持する。
【0020】
フーリエ変換部102は、明度変換部101により生成された2次元の明度情報をメモリ910から読み出し、フーリエ変換する。下記式は、評価範囲の明度情報L(x,y)をフーリエ変換し、空間周波数特性Raps(u,v)を求めるものである。
【数2】

M、N:評価範囲の縦・横画素数
C :円周
dpi:画像解像度
【0021】
帯域フィルタ作用部103はフーリエ変換部102により生成された空間周波数特性Raps(u,v)に所望の帯域フィルタをかけ、ウィーナースペクトルWS2D(u,v)を求める。
【数3】

ここでBPF2D(u,v)は2次元の画像ノイズの評価用の帯域フィルタである。
【0022】
評価処理部104はウィーナースペクトルWS2D(u,v)の積分値を算出し、評価値とする。評価値が大きいほど画像に2次元の画像ノイズが多く含まれ、画像の劣化を表している。評価処理部104は算出した評価値をメモリ910に保存する。
【0023】
以上、2次元の画像ノイズの解析について述べたが、バンディングやスジなど1次元の画像ノイズを解析する場合は、あえて2次元で演算する必要はない。そのため1次元の画像ノイズを解析する場合は、前処理部100において読み取った画像を転写紙の搬送方向、あるいは感光ドラムなどの長手方向に領域を分けて短冊状の範囲の短辺方向に並ぶ画素値を平均して長辺方向に並んだ1次元化情報とする。明度変換部101は、2次元の画像ノイズの場合と同様に、前処理部100でメモリ910に保存した評価範囲の1次元の輝度情報を1次元の明度情報L(y)に変換する。フーリエ変換部102は、明度変換部101で変換した明度情報L(y)に1次元のフーリエ変換を行い、空間周波数特性Vaps(v)を求める。
【数4】

【0024】
帯域フィルタ作用部103は、フーリエ変換部102で変換した空間周波数特性Vaps(v)に所望の帯域フィルタをかけ、ウィーナースペクトルWS1D(v)を求める。
【数5】

【0025】
評価処理部104は、帯域フィルタ作用部103で求めたウィーナースペクトルWSBPF(v)の積分値を算出し、1次元の画像ノイズの評価値とする。
【0026】
図2(b)は、帯域フィルタ作用部103が有する複数個の帯域フィルタBPF(Band Pass Filter)のリストである。BPF2D−High(u,v)は2次元の高周波ノイズを評価するための帯域フィルタ(2次元高周波帯域フィルタ)であり、主に転写などに起因するガサツキなどの高周波ノイズに対応する。また、BPF2D−Low(u,v)は2次元の低周波ノイズを評価するための帯域フィルタ(2次元低周波帯域フィルタ)であり、主に定着などに起因するまだらなどの低周波ノイズに対応する。尚、r=√(u+v)である。また、BPF1D−High(v)は1次元の高周波ノイズを評価するための帯域フィルタ(1次元高周波帯域フィルタ)であり、主にバンディングなどの高周波ノイズに対応する。また、BPF1D−Low(v)は1次元の低周波ノイズを評価するための帯域フィルタ(1次元低周波帯域フィルタ)であり、主に濃度むらやスジなどの低周波ノイズに対応する。
【0027】
帯域フィルタ作用部103において、BPF2D−High(u,v)を作用させればガサツキなどの転写起因の画像ノイズ、BPF2D−Low(u,v)を作用させればまだらなどの定着起因の画像ノイズを評価することとなる。また、帯域フィルタ作用部103において、BPF1D−High(v)を作用させればバンディングなどの高周波な1次元の画像ノイズ、BPF1D−Low(v)を作用させれば濃度むらやスジなどの低周波な1次元の画像ノイズを評価することとなる。
【0028】
図2(c)にガサツキとまだらの周波数特性に特化した帯域フィルタを付与したグラフを示す。図中、2D_帯域フィルタ1は図2(b)の2次元高周波帯域フィルタBPF2D−High(u,v)であり、2D_帯域フィルタ2は図2(b)の2次元低周波帯域フィルタBPF2D−Low(u,v)である。帯域フィルタ作用部103が空間周波数特性Vaps(v)に2次元高周波帯域フィルタBPF2D−High(u,v)を作用させると、図示のようにガサツキに対応する帯域内の周波数のみ抽出できる。帯域フィルタ作用部103が空間周波数特性Vaps(v)に2次元低周波帯域フィルタBPF2D−Low(u,v)を作用させると、図示のようにまだらに対応する帯域内の周波数のみ抽出できる。このように、従来の図7(d)のVTFではガサツキとまだらを切り分けて評価できなかったのに対し、本実施例では、ガサツキとまだらを切り分けて評価できる。尚、1次元の画像ノイズを抽出するための1次元高周波帯域フィルタBPF1D−High(v)及び1次元低周波帯域フィルタBPF1D−Low(v)についても図2(c)に示すグラフと同様である。すなわち、1次元高周波帯域フィルタBPF1D−High(v)は、空間周波数特性Vaps(v)の帯域を、10mmに相当する周波数である閾値以上の帯域に制限するもので、バンディングを抽出できる。一方、1次元低周波帯域フィルタBPF1D−Low(v)は、空間周波数特性Vaps(v)の帯域を、10mmに相当する周波数である閾値未満の帯域に制限するもので、濃度むら又はスジを抽出できる。このように本実施例では、帯域フィルタ作用部103は少なくとも二以上の帯域フィルタを有する。
【0029】
<本実施例と主観評価、従来例との比較>
画像ノイズの評価の一例として、図3(a)の配置のハーフトーン画像を14枚印字し、まず主観評価を行った。主観評価の評価条件は、色温度5000ケルビン、照度600ルクスの環境で、30人の被験者でテストを行った。主観評価は順序尺度法を用い、ガサツキとまだらそれぞれについて被験者に順列をつけてもらった。一方、本実施例の2次元高周波帯域フィルタBPF2D−High(u,v)を用いガサツキを、2次元低周波帯域フィルタBPF2D−Low(u,v)を用いまだらを評価した。また、本実施例との比較対象として、従来のVTFを帯域フィルタとして同一画像を別途評価した。以上の評価結果を図3(b)に示す。各々画像の主観評価値とそれぞれの帯域フィルタを用いて数値化した客観評価値を一覧にして示す。また、この評価結果をグラフに示す。図4(a)はまだら評価の結果であり、図4(b)はガサツキの評価結果である。
【0030】
まだらにおける主観評価との相関は、VTFを帯域フィルタとして用いた場合は0.70であり、本実施例の2次元低周波帯域フィルタBPF2D−Low(u,v)を用いた場合は0.89であった。すなわち、本実施例の2次元低周波帯域フィルタBPF2D−Low(u,v)を用いた場合の強い相関が確認された。また、ガサツキにおける主観評価との相関は、VTFを帯域フィルタとして用いた場合は0.61であり、2次元高周波帯域フィルタBPF2D−High(u,v)を用いた場合は0.87であった。すなわち、本実施例の2次元高周波帯域フィルタBPF2D−High(u,v)を用いた場合の強い相関が確認された。つまり、従来のVTFを帯域フィルタとして用いるよりも、ガサツキ評価に適した2次元高周波帯域フィルタBPF2D−High(u,v)やまだら評価に適した2次元低周波帯域フィルタBPF2D−Low(u,v)を用いることで、次の効果が得られる。すなわち、画像ノイズについて、まだらやガサツキなどの現象に特化した評価を精度良く行うことができる。また、1次元の画像ノイズに対しても、1次元高周波帯域フィルタBPF1D−High(v)及び1次元低周波帯域フィルタBPF1D−Low(v)を用いることで、バンディングや濃度むら又はスジなどの現象に特化した評価を精度良く行うことができる。尚、本実施例では、4つの画像ノイズの現象に特化した4つの帯域フィルタを例として説明したが、画像ノイズの現象に応じて画像ノイズの原因を切り分けられるような複数のフィルタを用いることが可能である。
【0031】
このように、本実施例では、複数個の帯域フィルタを予め有し、それらの帯域フィルタが画像不良の現象に対応し、画像の周波数特性をそれら帯域フィルタで帯域制限する構成とする。これにより本実施例によれば、ガサツキやまだら、バンディングやスジなどの画像不良現象の識別や、転写や定着などの画像不良の原因が推定できる。そして、制御基板301のCPU72は、メモリ910に保存された評価値を解析結果として読み込み、例えば画像形成装置の表示部90に表示させて、ユーザやサービスマンに告知する。尚、本実施例では、明度において説明したが、aやbなどの他のカラーチャンネル各々において複数個の帯域フィルタで帯域制限を行うでもかまわない。また、Lab表色系のみならず、Lch表色系など他の表色系でも同様である。
【0032】
以上、本実施例によれば、画像形成装置により媒体上に形成された画像を読み取って得られる画像データについて、画像不良現象の識別や、転写や定着などの画像不良の原因が推定できる。そして、主観的な評価に依存することなく客観的に評価することが可能である。特に、画像に表れるバンディングやスジ、ガサツキやまだら等の現象や原因の異なる乱れのうち、それら現象を切り分け、また、原因を特定することで、その画像の乱れに対する対処が容易であるのみならず、根本的な原因に対する対応が可能となる。このように本実施例によれば、画像ノイズの原因や現象を精度良く特定すること、客観的な評価を行うこと又はダウンタイムを低減することのいずれかを実現することができる。
【実施例2】
【0033】
実施例2の画像形成装置は、図1(a)の画像形成装置からリーダスキャナ部1を外した画像形成装置と、画像形成装置とは別体の外付けリーダスキャナによって定着後の画像が電子的に読み取られる構成である。すなわち本実施例では、印刷機能のみを備えるシングルファンクションプリンタと外付けリーダスキャナを、ホストコンピュータを介して、もしくはネットワークを介して接続した構成を想定する。
【0034】
外付けリーダスキャナより取得される画像データは、例えばR(Red)、G(Green)、B(Blue)の各色成分信号を含んで構成される。例えば、ホストコンピュータにインストールしたソフトウェアである不図示の色情報変換手段(以降、色情報変換部とする)により、外付けリーダスキャナより入力された画像データを色情報に変換する。本実施例では、ホストコンピュータにおいてRGB値をL表色系の成分に変換することで、L、すなわち明度情報を取得する。従って、実施例1の図2(a)の前処理部100、明度変換部101の動作は、ホストコンピュータにおいて例えばドライバにより行われる。ホストコンピュータにおいて変換された明度情報は、図2(a)のフーリエ変換部102に入力され、その後、実施例1と同様のステップで画像評価がなされる。フーリエ変換部102以降の処理は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0035】
以上本実施例によれば、色情報変換手段を有する別体のリーダスキャナを接続し、その別体のリーダスキャナを画像読取手段とすることで、シングルファンクションプリンタでも実施例1と同様の評価が可能となる。そして、画像不良の原因や現象を精度良く特定できるようになる。そして、プロセス条件や画像処理条件にフィードバックをかけるなど、プリンタとして改善の対応が可能となる。また、サービスマン対応において、画像不良の現象やその程度、原因を客観的に評価可能となり、サービスマンの主観で判断基準が異なるなどの問題や、サービスマン対応のダウンタイムの問題が回避される。このように本実施例によれば、画像ノイズの原因や現象を精度良く特定すること、客観的な評価を行うこと又はダウンタイムを低減することのいずれかを実現することができる。
【実施例3】
【0036】
図5(a)は、実施例3の画像形成装置について説明する図である。本画像形成装置は、図1(a)の画像形成装置からリーダスキャナ部1を外し、定着器36の下流側、搬送ローラ対38、39の間に密着イメージセンサ(Contact Image Sensor)(以降CIS)装置50を配置する。CIS装置50は、定着後の画像を電子的に輝度成分で読み取る。
【0037】
図5(b)は、画像形成装置内部の制御基板及び外付けの入出力装置について電気的構成を説明する図である。実施例1で説明した図1(b)と同じ構成には同じ符号を付し説明を省略する。CIS装置50で読み取られた画像データ(画像情報)は、制御基板301を介して画像解析部91に入力される。取得された輝度情報は図2(a)の前処理部100に入力され、もしくは、前処理が必要ない場合は明度変換部101に入力される。尚、CIS装置50で転写紙34上の定着後の画像を読み取る本実施例においては、プリンタ部20の内部で転写紙34の搬送を制御している状態であり、転写紙34上の画像がCIS装置50に到達するタイミングは予めわかっており、画像位置がわかる。このため、実施例1のように手動でリーダスキャナ部1にテストプリント画像を載置する場合のように前処理部100による評価範囲を抽出する前処理を行う必要がない場合がある。その後、実施例1と同様のステップで画像評価がなされる。この処理は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0038】
<CIS装置の構成>
図5(c)は、CIS装置50について説明する断面図である。搬送ローラ対38、39に囲まれた領域に、CIS装置50が対向板51とでギャップGを構成するように配置されている。このギャップGを定着ローラから排出された転写紙34が通過した際に、転写紙上のトナー像をCIS装置50が検知するようになっている。CIS装置50は、転写紙上のトナー像に光を照射するLEDアレイ60と、転写紙34の摺擦や紙紛などから内部を保護するコンタクトガラス61とを有する。更にCIS装置50は、転写紙34からの投影光束を導くセルフォック(登録商標)ガラス62と、投影画像として読み取るフォトダイオード63とを有する。CIS装置50は、例えば長手方向約300mm、長手方向解像度2400dpiの高精細センサーで、本画像形成装置内部での通紙方向解像度は2400dpiとなっている。またCIS装置50は8ビット256階調の輝度信号情報として得られるため階調性についても緻密な判定が可能である。
【0039】
本実施例によれば、CIS装置50のような画像読み取り手段を定着後の転写紙搬送路に配置し、作像プロセスを実施しながら画像を読み取るオンライン画像評価が可能となる。オンライン評価なので、テストプリントの印刷と評価、そして実施例4で説明する評価結果のフィードバックを自動で行うことが可能となり、ユーザの手間を軽減することができる。このように本実施例によれば、画像ノイズの原因や現象を精度良く特定すること、客観的な評価を行うこと又はダウンタイムを低減することのいずれかを実現することができる。
【実施例4】
【0040】
図6は、実施例4の画像評価と、評価結果に基づき画像形成装置のプロセス条件にフィードバックをかける具体的手順のルーチンを説明するフローチャートである。本実施例を説明するにあたり、画像形成装置の構成は実施例1の画像形成装置の構成で、かつ、2次元の画像ノイズを解析する場合を例として説明する。尚、画像形成装置は、本実施例のようなレーザビームプリンタに限られずインクジェットプリンタでもよい。
【0041】
ステップ(以下、Sとする)20でCPU72は、プリンタ部20によりテストプリント画像の印刷を行う。プリンタ部20が印刷したテストプリント画像のレイアウトを図3(a)に示す。テストプリント画像は、例えばA4サイズであり、ほぼ全面に均一なハーフトーンが印字される。S21でリーダスキャナ部1は、CCD10により原稿台にセットされたテストプリント画像を読み込む。リーダスキャナ部1により読み込まれた画像データの輝度情報は制御基板301を介して画像解析部91に送られる。尚、実施例3で説明した構成の画像形成装置の場合は、定着後のテストプリント画像がCIS装置50で読み取られ、読み取られたデータは画像解析部91に送られる。S22で画像解析部91は実施例1で説明した画像解析を行う。画像解析部91が画像を解析・評価する過程で、帯域フィルタ作用部103が2次元の低周波の帯域フィルタを作用させ、評価処理部104はその評価式によって、低周波の画像ノイズのまだらを評価するまだら評価値を計算する。画像解析部91は評価処理部104により計算した評価値を解析結果として制御基板301のCPU72に出力し、S23でCPU72は、入力されたまだら評価値が許容値の範囲か否かを判断する。ここでCPU72が評価値が許容値の範囲か否かを判断するために閾値を超えるか否かによって判断するとしてもよい。S23でCPU72は、まだら評価値が許容値の範囲内ではない又は閾値を超えると判断した場合は、すなわち過定着である場合であり、S26でCPU72は、定着条件である定着温度を低く設定するように定着器36を制御する。そしてS28でCPU72は、評価値とプロセス条件を変更したことをサービスマン又はユーザに知らせる手段として、それらの情報を表示部90に表示する。その後、CPU72はS20に戻り、再度テストプリント画像を印刷する。
【0042】
S23で、CPU72はまだら評価値が許容値の範囲内である又は閾値を超えなかったと判断した場合は、S24で画像解析部91の帯域フィルタ作用部103により2次元の高周波の帯域フィルタを作用させる。評価処理部104は、用いた評価式によって高周波の画像ノイズのガサツキを評価するガサツキ評価値を計算する。評価処理部104は計算した評価値を解析結果として制御基板301のCPU72に出力する。S24でCPU72は、ガサツキ評価値が許容値の範囲か否か又は閾値を超えるか否か判断する。S24でCPU72は、ガサツキ評価値が許容値の範囲内でない又は閾値を超えたと判断した場合は、すなわち転写不良である場合であり、S27で転写条件である転写ローラ32と感光ドラム26の間に印加する転写バイアス値を低く設定するように制御する。S28でCPU72は、評価値と、プロセス条件の変更内容を表示部90に表示し、S20に戻ってテストプリント画像を印字する。
【0043】
S24で、CPU72は評価値が許容値の範囲内である又は閾値を超えなかったと判断した場合は、S25で評価結果を表示部90に表示した後、画像評価と、評価結果より画像形成装置のプロセス条件にフィードバックをかける本ルーチンを終了する。尚、本実施例は画像形成装置のプロセス条件にフィードバックをかける例について説明しているが、スクリーン線数などの画像処理条件にフィードバックをかけてもかまわない。また、本実施例では、2次元の画像ノイズを解析する場合を説明したが、1次元の画像ノイズを解析するように、S23で例えば濃度むら、S24でバンディングについて評価するようにしてもよい。更に、1次元の画像ノイズ及び2次元の画像ノイズについて解析するようにしてもよい。
【0044】
以上、本実施例によれば、画像評価の結果のフィードバックより画像形成条件や画像処理条件を自動で最適に調整することが可能となり、画像ノイズを低減した良好な画像を出力することができる。このように本実施例によれば、画像ノイズの原因や現象を精度良く特定すること、客観的な評価を行うこと又はダウンタイムを低減することのいずれかを実現することができる。
【符号の説明】
【0045】
102 フーリエ変換部
103 帯域フィルタ作用部
104 評価処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された評価対象画像の画像情報に基づき画像ノイズの評価を行う画像評価装置であって、
評価対象画像の画像情報をフーリエ変換して空間周波数特性を算出するフーリエ変換手段と、
少なくとも二以上の帯域フィルタを用いて前記フーリエ変換手段により算出された空間周波数特性の帯域を制限するフィルタ手段と、
前記フィルタ手段により制限された前記空間周波数特性の帯域内の情報に基づき、前記評価対象画像についての画像ノイズの評価値を算出する評価手段と、
を備えることを特徴とする画像評価装置。
【請求項2】
前記フィルタ手段は、前記評価対象画像の1次元の画像ノイズの評価について、前記空間周波数特性の帯域を閾値以上の帯域に制限する1次元高周波帯域フィルタと、前記空間周波数特性の帯域を閾値未満の帯域に制限する1次元低周波帯域フィルタと、を有することを特徴とする請求項1に記載の画像評価装置。
【請求項3】
前記フィルタ手段は、前記評価対象画像の2次元の画像ノイズの評価について、前記空間周波数特性の帯域を閾値以上の帯域に制限する2次元高周波帯域フィルタと、前記空間周波数特性の帯域を閾値未満の帯域に制限する2次元低周波帯域フィルタと、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像評価装置。
【請求項4】
評価対象画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段により形成された評価対象画像を読み取る画像読取手段と、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像評価装置と、を備え、
前記画像評価装置は、前記画像読取手段により読み取った前記評価対象画像の画像情報が入力されることにより画像ノイズの評価を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記画像評価装置により行った評価に基づき、画像形成条件を設定するよう制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
所定の転写バイアスを印加することにより像担持体上の画像を転写紙上に転写する転写手段を備え、
前記画像形成条件は、前記転写バイアスであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
転写紙上の未定着の画像を所定の定着温度で定着する定着手段を備え、
前記画像形成条件は、前記定着温度であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像読取手段は、前記定着手段により定着された転写紙上の画像を読み取る密着イメージセンサであることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像読取手段は、画像形成装置が備えるスキャナであることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記画像評価装置が行った画像ノイズの評価結果を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項4乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−113093(P2012−113093A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261211(P2010−261211)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】