説明

画像読取装置、画像形成装置および画像データ補正方法

【課題】生産性の低下を招くことなく、シェーディング補正によって照明深度特性の影響を有効に低減することができる画像読取装置、画像形成装置および画像データ補正方法を提供する。
【解決手段】ギャップ部の大きさが原稿読取時と略等しい状態で第2読取ローラ(白色部材)の表面を読み取ることで取得される第1の基準データと、ギャップ部の大きさが原稿読取時よりも小さい状態で第2読取ローラの表面を読み取ることで取得される第2の基準データとの比率を基準データ比として求めて、この基準データ比を保持しておく。そして、各原稿の画像データを補正するためのシェーディングデータを生成する際には、ギャップ部の大きさが原稿読取時と略等しい状態で第2読取ローラの表面を読み取ることで取得される第3の基準データに、保持している基準データ比を乗算して、シェーディングデータを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を読み取る画像読取装置、画像形成装置および画像データ補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やファクシミリ等の読み取り装置、コンピュータ入力用のスキャナ等として、原稿の画像情報を自動的に読み取る画像読取装置が用いられている。この種の画像読取装置では、原稿の搬送路に直交する主走査方向に沿って延設された光源を用いて原稿に光を照射し、照射された原稿から反射した反射光をイメージセンサにて受光することで、原稿上の画像を読み取っている。また、近年では、装置の小型化を目的として、形状の小さい発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を光源に利用し、等倍結像系の光学系を介してリニアイメージセンサに画像を結像させる密着イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)方式の読取手段を備えた画像読取装置も実用化されている。
【0003】
画像読取装置で読み取った画像データは光源のムラとセンサ感度ムラを含んでいる。このため、所定の基準面を読取手段で読み取ることで得られるデータ(シェーディングデータ)を用いて、原稿の画像データから光源のムラやセンサ感度ムラの影響を除去するシェーディング補正が行われる。シェーディング補正は、一般的に次式の演算によって行われる。
Dout=(Din−Bk)/(Dsh−Bk)×(2−1)
Dout:シェーディング補正後の出力画像データ
Din:原稿読み取り時の画像データ
Dsh:基準面読み取り時の画像データ(シェーディングデータ)
Bk:黒レベル(光が入らない時の画像データレベル)
【0004】
また、読取手段の読取面に対向して白色部材を備え、この白色部材の表面を基準面として、原稿読み取り期間以外に白色部材の表面を読取手段で読み取ってシェーディングデータを生成するものも既に知られている(例えば、特許文献1等を参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、等倍結像系の光学系では、光路が短く光源からの光の集光度が高いため、読取手段と原稿面との間の距離が変わることによる出力レベルの変化量が大きくなる(以下、読取手段と原稿面との間の距離が変わることによる出力レベルの変化量を照明深度特性と定義する)。一方、シェーディングデータの生成に用いる基準面は一般的に固定されているため、読取手段と基準面との間の距離は一定である。したがって、原稿搬送時の原稿のばたつきに起因した照明深度特性の影響により主走査方向のある位置で出力レベルが変動していると、その変動分をシェーディング補正によって除去することができない。そして、この出力レベルの変動が副走査方向に連続することによって、画像としては縦スジが発生してしまうという問題がある。
【0006】
上記特許文献1に記載の画像読取装置では、シェーディングデータを生成する際に白色部材を読取手段の読取面と対向する位置に移動させ、原稿読み取り期間では白色部材を退避させる構成である。このため、白色部材を読取手段の読取面と対向する位置に移動させたときの読取手段の読取面と白色部材との間の隙間(以下、ギャップ部という。)の大きさを、原稿読取時におけるギャップ部の大きさ(つまり、原稿がばたつく範囲)よりも小さくなるようにすることで、上述した照明深度特性の影響をシェーディング補正によって低減できる効果が得られると考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の画像読取装置では、例えば連続した原稿を読み取る際には、白色部材を読取手段の読取面と対向する位置に繰り返し移動させてシェーディングデータの生成を行う必要があり、白色部材の移動に時間がかかるために生産性(一定時間に読み取りが可能な枚数)の低下を招くといった新たな問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、生産性の低下を招くことなく、シェーディング補正によって照明深度特性の影響を有効に低減することができる画像読取装置、画像形成装置および画像データ補正方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像読取装置は、密着イメージセンサ方式により原稿を読み取る読取手段と、前記読取手段の読取面に対向する白色部材と、前記読取手段と前記白色部材の少なくともいずれかを移動させて、前記読取手段の読取面と前記白色部材との間の隙間であるギャップ部の大きさを可変するギャップ可変手段と、前記ギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくして前記読取手段により前記白色部材の表面を読み取らせることで取得される第1の基準データと、前記ギャップ部の大きさを原稿読取時よりも小さくして前記読取手段により前記白色部材の表面を読み取らせることで取得される第2の基準データとの比率である基準データ比を保持する基準データ比保持手段と、前記ギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくして前記読取手段により前記白色部材の表面を読み取らせて第3の基準データを取得するとともに、前記第3の基準データに前記基準データ比を乗算してシェーディングデータを生成するシェーディングデータ生成手段と、生成された前記シェーディングデータを用いて前記読取手段により読み取られた原稿の画像データを補正するシェーディング補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る画像読取装置と、前記画像読取装置から出力される画像データに基づいて画像形成を行う画像形成部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る画像データ補正方法は、密着イメージセンサ方式により原稿を読み取る読取手段と、前記読取手段の読取面に対向する白色部材と、前記読取手段と前記白色部材の少なくともいずれかを移動させて、前記読取手段の読取面と前記白色部材との間の隙間であるギャップ部の大きさを可変するギャップ可変手段と、を備える画像読取装置において実行される画像データ補正方法であって、前記ギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくして前記読取手段に前記白色部材の表面を読み取らせて第1の基準データを取得するとともに、前記ギャップ部の大きさを原稿読取時よりも小さくして前記読取手段に前記白色部材の表面を読み取らせて第2の基準データを取得し、前記第1の基準データと前記第2の基準データとの比率である基準データ比を算出するステップと、算出した前記基準データ比を保持するステップと、前記ギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくして前記読取手段により前記白色部材の表面を読み取らせて第3の基準データを取得するとともに、前記第3の基準データに前記基準データ比を乗算してシェーディングデータを生成するステップと、生成した前記シェーディングデータを用いて前記読取手段により読み取られた原稿の画像データを補正するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、読取手段の読取面と白色部材との間の隙間であるギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくしながら、ギャップ部の大きさを小さくしたときと同等のシェーディングデータを生成してシェーディング補正を実施することができるので、生産性の低下を招くことなく、シェーディング補正によって照明深度特性の影響を有効に低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施形態に係る複写機の概略構成を示す構成図である。
【図2】図2は、複写機が備えるADFの詳細な構成を示す構成図である。
【図3】図3は、ADFの制御系のブロック図である。
【図4】図4は、ADFの第2画像読取部に関わる電気回路の要部を説明する図である。
【図5】図5は、画像に縦スジが発生する理由を説明する図である。
【図6】図6は、画像に縦スジが発生する理由を説明する図である。
【図7】図7は、照明深度特性と読取距離との関係を示す図である。
【図8】図8は、照明深度特性のばらつきを説明する図である。
【図9】図9は、第2読取ローラを第2画像読取部の読取面に対して近接離間する方向に移動させる機構の一例を示す図である。
【図10】図10は、コントローラの制御により画像処理部において実現されるシェーディング補正に関わる構成を示す機能ブロック図である。
【図11】図11は、コントローラによる制御のもとで実行される基準データ比の算出処理を示すフローチャートである。
【図12】図12は、複数ページからなる原稿の読み取りジョブの実行時にコントローラによる制御のもとで実行される一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】図13は、第2実施例における一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】図14は、第3実施例における一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】図15は、搬送される原稿の厚さを検知する機構の一例を示す図である。
【図16】図16は、変位センサの出力電圧と検出距離との関係を示す図である。
【図17】図17は、第4実施例における基準データ比の算出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る画像読取装置、画像形成装置および画像データ補正方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明を複写機に適用した例であるが、本発明は以下で例示する形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態での実施が可能である。
【0015】
(複写機の構成)
図1は、本実施形態に係る複写機1の概略構成を示す構成図である。図1に示すように、複写機1は、画像読取装置としての機能を有する自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)100と、給紙部2と、画像形成部3とを備えている。
【0016】
給紙部2は、用紙サイズの異なる記録紙を収納する給紙カセット21,22と、給紙カセット21,22に収納された記録紙を画像形成部3の画像形成位置まで搬送する各種ローラからなる給紙手段23とを有している。
【0017】
画像形成部3は、露光装置31と、感光体ドラム32と、現像装置33と、転写ベルト34と、定着装置35とを備えている。画像形成部3は、ADF100内部の画像読取部により読み取られた原稿の画像データに基づいて、露光装置31により感光体ドラム32を露光して感光体ドラム32に潜像を形成し、現像装置33により感光体ドラム32に異なる色のトナーを供給して現像するようになっている。そして、画像形成部3は、転写ベルト34により感光体ドラム32に現像された像を給紙部2から供給された記録紙に転写した後、定着装置35により記録紙に転写されたトナー画像のトナーを溶融して、記録紙にカラー画像を定着するようになっている。
【0018】
図2はADF100の詳細な構成を示す構成図であり、図3はADF100の制御系のブロック図である。ADF100は、図2に示すように、原稿束110がセットされる原稿セット部Aと、セットされた原稿束110から一枚ごとに原稿を分離して給送する分離給送部Bと、給送された原稿を一次突当整合するとともに整合後の原稿を引き出し搬送するレジスト部Cと、搬送される原稿をターンさせて、原稿面を第1画像読取部131による読取り側(図中の下方)に向けて搬送するターン部Dと、原稿の表面画像をコンタクトガラスの下方から第1画像読取部131により読み取る第1読取搬送部Eと、表面画像が読み取られた後の原稿の裏面画像を第2画像読取部135により読み取る第2読取搬送部Fと、表裏の画像の読み取りが完了した原稿を機外に排出する排紙部Gと、排出された原稿を積載保持するスタック部Hとを備える。
【0019】
また、ADF100は、図3に示すように、上記各部における駆動を行うモータ101〜106と、一連の動作を制御するコントローラ150を備える。コントローラ150は、I/F107を介して複写機1の全体制御を行う本体制御部10に接続されている。また、本体制御部10には、I/F108を介して、ユーザが各種操作を行う操作部11が接続されている。
【0020】
原稿セット部Aには、読み取りを行う原稿束110がセットされる。原稿束110がセットされるのは、可動原稿テーブル111を含む原稿テーブル112上である。原稿テーブル112上には、原稿束110が原稿面を上向きの状態でセットされる。このとき、原稿束110の幅方向は、図示しないサイドガイドによって搬送方向と直交する方向に位置決めされる。また、原稿束110のセットは、セットフィラー113およびセットセンサ114によって検知され、原稿束110がセットされたことを示す情報が、コントローラ150からI/F107を介して本体制御部10に送信される。
【0021】
さらに、原稿テーブル面に設けられた原稿長さ検知センサ115,116により、原稿束110の搬送方向長さの概略が判定される。なお、原稿長さ検知センサ115,116としては、例えば、反射型センサまたは原稿1枚でも検知可能なアクチェータタイプのセンサが用いられる。また、原稿長さ検知センサ115,116の配置は、少なくとも同一原稿サイズの縦か横かを判断可能な配置としておく必要がある。
【0022】
可動原稿テーブル111は、底板上昇モータ105により図2中のa,b方向に上下動可能な構成となっている。原稿テーブル112上に原稿束110がセットされていないとき、可動原稿テーブル111は下降した状態であり、この状態は底板HPセンサ117により検知される。コントローラ150は、原稿テーブル112上に原稿束110がセットされたことが前記セットフィラー113およびセットセンサ114により検知されると、底板上昇モータ105を正転させて原稿束110の最上面が分離給送部Bのピックアップローラ118と接触するように、可動原稿テーブル111を上昇させる。ピックアップローラ118は、ピックアップモータ101によりカム機構の作用で図2中のc,d方向に動作するとともに、可動原稿テーブル111が上昇して可動原稿テーブル111上の原稿束110上面によって押されることで図2中のc方向に上昇し、給紙適正位置センサ119により上限を検知可能となっている。
【0023】
ユーザにより操作部11のプリントキーが押下され、本体制御部10からI/F107を介してコントローラ150に原稿給紙信号が送信されると、ピックアップローラ118は給紙モータ102の正転によりコロが回転駆動し、原稿テーブル112上の数枚(理想的には1枚)の原稿をピックアップする。回転方向は、最上位の原稿を給紙口に搬送する方向である。
【0024】
給紙ベルト120は、給紙モータ102の正転により給紙方向に駆動される。また、リバースローラ121は、給紙モータ102の正転により給紙と逆方向に回転駆動される。これにより、最上位の原稿とその下の原稿とを分離して、最上位の原稿のみを給紙できる構成となっている。さらに詳しく説明すると、リバースローラ121は、給紙ベルト120と所定圧で接し、給紙ベルト120と直接または原稿1枚を介して接している状態では、給紙ベルト120の回転につられて反時計方向に連れ回りする。一方、原稿が2枚以上給紙ベルト120とリバースローラ121の間に進入したときは、連れ回り力がトルクリミッタのトルクよりも低くなるように設定されており、リバースローラ121は本来の駆動方向である時計方向に回転し、余分な原稿を押し戻す働きをする。これにより、原稿の重送が防止される。
【0025】
給紙ベルト120とリバースローラ121との作用により1枚に分離された原稿は、給紙ベルト120によってレジスト部C側へと送られ、突き当てセンサ122によって先端が検知された後、さらに進んで停止しているプルアウトローラ123に突き当たる。その後、原稿は、突き当てセンサ122の検知から所定量定められた距離送られ、プルアウトローラ123に所定量撓みを持って押し当てられた状態で給紙モータ102を停止させることによって、給紙ベルト120の駆動が停止する。このとき、ピックアップモータ101を回転させることでピックアップローラ118を原稿上面から退避させ、原稿を給紙ベルト120の搬送力のみで送ることにより、原稿先端は、プルアウトローラ123の上下ローラ対のニップに進入し、先端の整合(スキュー補正)が行われる。
【0026】
プルアウトローラ123は、前記スキュー補正機能を有するとともに、分離後にスキュー補正された原稿を中間ローラ124まで搬送するためのローラであり、給紙モータ102の逆転により駆動される。また、給紙モータ102の逆転時には、プルアウトローラ123と中間ローラ124は駆動されるが、ピックアップローラ118と給紙ベルト120は駆動されない。
【0027】
原稿幅センサ125は図2の奥行き方向に複数個並べて設けられ、プルアウトローラ123により搬送された原稿の搬送方向と直交する幅方向のサイズを検知する。また、原稿の搬送方向の長さは、原稿の先端後端を突き当てセンサ122で読み取ることにより、モータパルスから原稿の長さが検知される。
【0028】
プルアウトローラ123及び中間ローラ124の駆動によりレジスト部Cからターン部Dに原稿が搬送される際には、レジスト部Cでの搬送速度を第1読取搬送部Eでの搬送速度よりも高速に設定して、原稿を画像読取部へ送り込む処理時間の短縮が図られている。原稿の先端が読取入口センサ126により検出されると、読取入口ローラ127の上下ローラ対のニップに原稿の先端が進入する前に、原稿搬送速度を読取搬送速度と同速にするために減速を開始すると同時に、読取モータ103を正転駆動して読取入口ローラ127、読取出口ローラ128、CIS出口ローラ129を駆動する。コントローラ150は、原稿の先端をレジストセンサ130にて検知すると、所定の搬送距離をかけて原稿の搬送速度を減速し、第1画像読取部131の手前で原稿を一時停止させるとともに、本体制御部10にI/F107を介してレジスト停止信号を送信する。
【0029】
続いて、本体制御部10からI/F107を介してコントローラ150に読取開始信号が送信されると、コントローラ150は、レジスト停止していた原稿を、第1画像読取部131の位置に原稿先端が到達するまでに所定の搬送速度に立ち上がるように増速して搬送させる。このとき、読取モータ103のパルスカウントにより原稿先端の位置が検出され、原稿先端が第1画像読取部131に到達するタイミングで、本体制御部10に対して原稿の表面の副走査方向(原稿の搬送方向と同じ方向)の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。このゲート信号は、原稿後端が第1画像読取部131を抜けるまで継続して送信される。そして、原稿が読取入口ローラ127および読取出口ローラ128の駆動により搬送される間に、第1画像読取部131によって原稿の表面画像が読み取られる。
【0030】
片面原稿読取りの場合には、第1読取搬送部Eの第1画像読取部131による表面画像の読み取りが終了した原稿は、第2読取搬送部Fをそのまま通過して排紙部Gへと搬送される。この際、コントローラ150は、排紙センサ132により原稿の先端を検知すると、排紙モータ104を正転駆動して排紙ローラ133を反時計方向に回転させる。また、コントローラ150は、排紙センサ132による原稿の先端検知からの排紙モータ104のパルスカウントにより、原稿後端が排紙ローラ133の上下ローラ対のニップから抜ける直前に、排紙モータ駆動速度を減速させて、スタック部Hの排紙トレイ134上に排出される原稿が飛び出さないように制御する。
【0031】
一方、両面原稿読取りの場合には、排紙センサ132にて原稿先端を検知してから読取モータ103のパルスカウントにより搬送中の原稿先端の位置が検出され、第2読取搬送部Fの第2画像読取部135の位置に原稿先端が到達するタイミングで、コントローラ150から第2画像読取部135に対して、原稿の裏面の副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。このゲート信号は、原稿後端が第2画像読取部135を抜けるまで継続して送信される。そして、原稿が読取出口ローラ128およびCIS出口ローラ129の駆動により搬送される間に、原稿流し読み方式(シートスルー読取)で、第2画像読取部135によって原稿の裏面画像が読み取られる。
【0032】
第2画像読取部135と対向配置される第2読取ローラ136は、第2画像読取部135における原稿の浮きを抑えると同時に、第2画像読取部135におけるシェーディングデータを取得するための基準白部を兼ねるものである。つまり、第2読取ローラ136は白色部材に相当するものである。この第2読取ローラ136は、ステッピングモータ106の駆動により、第2画像読取部135の読取面に対して近接離間する方向に移動可能とされている。この第2読取ローラ136の移動により、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間の隙間であるギャップ部の大きさが可変とされている。
【0033】
本実施形態に係る複写機1では、上述したADF100の第2画像読取部135が、CIS方式により原稿を読み取る読取手段として構成されている。以下、この第2画像読取部135および第2画像読取部135に関わる制御系の構成について、さらに詳しく説明する。
【0034】
図4は、第2画像読取部135に関わる電気回路の要部を説明する図である。同図に示すように、第2画像読取部135は、LEDアレイ等からなる光源部200と、複数のセンサチップが主走査方向(原稿幅方向に対応する方向)に並べられてなるリニアイメージセンサ201と、リニアイメージセンサ201の各センサチップに個別に接続された複数のアンプ回路202と、各アンプ回路202に接続された複数のA/Dコンバータ203とを備える。リニアイメージセンサ201が備える各センサチップは、等倍密着イメージセンサと称されるセンサチップであり、画素に対応して主走査方向に直線状に並べられた複数の光電変換素子と集光レンズとを具備している。
【0035】
また、第2画像読取部135の出力は、デジタル信号処理部210に接続されている。デジタル信号処理部210は、A/Dコンバータ203の出力信号を入力してリニアイメージセンサ201により読み取られた原稿の画像データを生成する画像処理部205と、画像処理部205により生成される画像データをフレーム単位で保持するフレームメモリ206と、画像データの出力を制御する出力制御回路207およびI/F回路208とを備える。
【0036】
ADF100では、第2画像読取部135による読取位置(第2画像読取部135の読取面と対向する位置)に原稿が進入するのに先立って、コントローラ150から光源部200に点灯ON信号が送られる。これにより、光源部200が点灯し、その光を第2画像読取部135の読取位置(読取面と対向する位置)に進入した原稿に向けて照射する。原稿で反射した反射光は、リニアイメージセンサ201が備える各センサチップにおいて、集光レンズによって光電変換素子に集光されて画像情報として読み取られる。リニアイメージセンサ201の各センサチップで読み取られた画像の信号は、アンプ回路202によって増幅された後、A/Dコンバータ203によってデジタルデータに変換される。
【0037】
A/Dコンバータ203から出力される各デジタルデータは画像処理部205に入力される。画像処理部205では、入力されたデジタルデータに黒レベル補正、シェーディング補正などを施した後、これらのデータを用いて原稿の画像データを生成してフレームメモリ206に一時的に格納する。なお、ADF100では、画像処理部205においてシェーディング補正を行うために、第2画像読取部135により第2読取ローラ(白色部材)136の表面(基準面)を読み取ってシェーディングデータを生成する処理を行うが、このシェーディングデータ生成処理については、詳細を後述する。
【0038】
その後、フレームメモリ206に格納された原稿の画像データは、出力制御回路207によって本体制御部10に受入可能なデータ形式に変換された後、I/F回路208を経由して本体制御部10に出力される。なお、第2画像読取部135やデジタル信号処理部210の動作は、コントローラ150により統括的に制御される。例えば、コントローラ150は、原稿の先端が第2画像読取部135による読取位置に到達するタイミング(そのタイミング以降の画像データが有効データとして扱われる)を知らせるためのタイミング信号や、光源部200の点灯信号などを出力して、第2画像読取部135やデジタル信号処理部210の動作を制御する。また、第2画像読取部135やデジタル信号処理部210への電源供給は、コントローラ150の制御のもとで行われる。
【0039】
ところで、第2画像読取部135により原稿の読み取りを行う場合、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部に原稿を搬送しながら読み取りが行われるため、ギャップ部の大きさは、ADF100が対応している最大紙厚の原稿が適切に通過できる大きさを確保しておく必要がある。したがって、多くの原稿の紙厚に対してギャップ部の大きさに余裕があるため、ギャップ部を通過する原稿にばたつきが生じる可能性がある。
【0040】
第2画像読取部135は、上述したように等倍結像系の光学系を用いたCIS方式の読取手段であるため、原稿搬送時の原稿のばたつきに起因した照明深度特性の影響を受けやすい。そして、照明深度特性の影響により主走査方向のある位置で出力レベルが変動していると、その変動分をシェーディング補正によって除去することができず、この出力レベルの変動が副走査方向に連続することによって、画像としては縦スジが発生してしまうという問題がある。
【0041】
ここで、均一濃度の原稿を読み取った場合を例示しながら、画像に縦スジが発生する理由について更に詳しく説明する。図5および図6は、画像に縦スジが発生する理由を説明する図であり、第2画像読取部135で均一濃度の原稿を読み取った場合の出力レベルの主走査方向における分布を原稿の画像データ、第2画像読取部135で第2読取ローラ136の表面を読み取った場合の出力レベルの主走査方向における分布をシェーディングデータとしてそれぞれ示している。
【0042】
シェーディングデータをDsh、原稿の画像データをDinとして、上述した演算式によりシェーディング補正を行うと、図5(a)に示すように主走査方向の全画素位置でDshとDinの出力比率が同じであれば、同図(b)に示すように、シェーディング補正後はフラットな画像データとして出力される。
【0043】
一方、図6(a)に示すように、照明深度特性が主走査方向の位置によってばらつき、DshとDinの出力比率が異なる場合には、同図(b)に示すように、均一濃度の原稿の画像を読み取った場合であっても、シェーディング補正後の画像データはフラットにならない。そして、その状態が副走査方向に連続するために、画像としては縦スジが発生してしまうことになる。
【0044】
一般的に、照明深度特性は、読取手段の読取面からの距離(以下、読取距離という。)が離れるほど、ばらつきが大きくなる傾向にある。図7は、照明深度特性と読取距離との関係を示す図であり、図7(a)は、読取距離が0mm、0.2mm、0.4mmのときの出力レベルの主走査方向における分布をそれぞれ表し、図7(b)は、読取距離0mmを基準とした読取距離0.2mmの場合の照明深度特性および読取距離0.4mmの場合の照明深度特性をそれぞれ表している。図7(b)の読取距離0.2mmの場合の照明深度特性と読取距離0.4mmの場合の照明深度特性とを比較すると、読取距離0.4mmの場合の照明深度特性のばらつきが大きいことが分かる。
【0045】
シェーディングデータと原稿の画像データとの照明深度特性のばらつきを抑制し、シェーディング補正によって原稿の画像データにおける照明深度特性の影響を抑制するためには、シェーディングデータ生成時における読取距離(第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間の距離)と、原稿読取時における読取距離(第2画像読取部135の読取面と原稿との間の距離)との差を小さくする必要がある。
【0046】
ここで、図8に示すように、原稿読取時における第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間の距離(ギャップ部の大きさ)をA、原稿読取時における読取距離をBとすると、原稿読取時における読取距離Bは最小で0mm(第2画像読取部135の読取面に沿って原稿が搬送されるとき)、最大で距離A(第2読取ローラ136に沿って原稿が搬送されるとき)となる。したがって、シェーディングデータ生成時における読取距離がAの場合には、シェーディングデータ生成時における読取距離と、原稿読取時における読取距離Bとの差は、最大で距離A(第2画像読取部135の読取面に沿って原稿が搬送されるとき)となり、照明深度特性は距離Aで変動することになる。
【0047】
一方、シェーディングデータ生成時における読取距離をAよりも小さく、つまり原稿読取時におけるギャップ部の大きさよりも小さくし、例えばA/2とした場合には、シェーディングデータ生成時における読取距離と、原稿読取時における読取距離Bとの差は、最大で距離A/2(第2読取部135の読取面または第2読取ローラ136に沿って原稿が搬送されるとき)となり、照明深度特性は距離±A/2で変動することになる。このとき、シェーディングデータ生成時における読取距離と原稿読取時における読取距離との差を最も小さくできるので、照明深度特性のばらつきによる影響を最も小さくできる。
【0048】
以上のように、シェーディング補正によって照明深度特性のばらつきによる影響を抑制するとの観点からは、シェーディングデータ生成時におけるギャップ部の大きさを、原稿読取時におけるギャップ部の大きさよりも小さくする(好ましくは1/2にする)ことが有効である。本実施形態のADF100では、上述したように、ステッピングモータ106の駆動によって第2読取ローラ136が第2画像読取部135の読取面に対して近接離間する方向に移動可能とされているので、シェーディングデータ生成時に第2読取ローラ136を第2画像読取部135の読取面に近づけるようにすれば、シェーディングデータ生成時におけるギャップ部の大きさを、原稿読取時におけるギャップ部の大きさよりも小さくできる。
【0049】
しかしながら、光源の光量の時間変化なども考慮して最適なシェーディング補正を行うには、原稿の読み取りを行うたびにシェーディングデータの生成を行う必要があるため、例えば複数ページからなる原稿の読み取りジョブの実行時など、連続した原稿を読み取る際には、第2読取ローラ136の移動が繰り返されることになる。そして、第2読取ローラ136の移動に時間がかかるために生産性(一定時間に読み取りが可能な枚数)の低下を招くといった新たな問題が生じる。
【0050】
そこで、本実施形態のADF100では、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさが原稿読取時と略等しい状態で第2画像読取部135により第2読取ローラ136の表面を読み取ることで取得されるデータ(第1の基準データ)と、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさが原稿読取時よりも小さい(例えば1/2)状態で第2画像読取部135により第2読取ローラ136の表面を読み取ることで取得されるデータ(第2の基準データ)との比率を基準データ比として求めて、この基準データ比を保持しておくようにしている。そして、実際に各原稿の画像データを補正するためのシェーディングデータを生成する際には、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさが原稿読取時と略等しい状態で第2画像読取部135により第2読取ローラ136の表面を読み取ることで取得されるデータ(第3の基準データ)に、保持している基準データ比を乗算して、シェーディングデータを生成するようにしている。これにより、シェーディングデータ生成時には、第2読取ローラ136を移動させずに、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくしながら、ギャップ部の大きさを小さくしたときと同等のシェーディングデータを生成してシェーディング補正を実施することができる。その結果、生産性の低下を招くことなく、シェーディング補正によって照明深度特性の影響を有効に低減することが可能となる。
【0051】
図9は、第2読取ローラ136を第2画像読取部135の読取面に対して近接離間する方向に移動させる機構の一例を示す図である。同図に示すように、第2読取ローラ136と隣接した位置にはカム301が設けられ、このカム301がステッピングモータ106(図9では図示せず)の駆動により回転することで、第2読取ローラ136をガイド302に沿って第2画像読取部135の読取面に対して近接離間する方向に移動可能な構成となっている。
【0052】
カム301の回転軸には、カム301の位置を制御するためのフィラー303が設けられている。また、カム301の近傍には、カム301の回転位置が第2読取ローラ136を第2画像読取部135の読取面に最も近づける位置(図9の例ではA/2)となったときにフィラー303を検知するカム位置検知センサ304が設けられている。
【0053】
以上のような構成により、カム301の回転位置が図9(a)に示す位置のときに、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさがA(原稿読取時のギャップ部の大きさ)となり、カム位置検知センサ304によりフィラー303が検知されるまでステッピングモータ106によってカム301を回転させ、カム301の回転位置を図9(b)に示す位置とすることでギャップ部の大きさがA/2となるように、ギャップ部の大きさを可変することができる。
【0054】
基準データ比を算出する際は、まず、カム位置検知センサ304によりフィラー303が検知されるまでステッピングモータ106の駆動によりカム301を回転させて、図9(b)に示すように、ギャップ部の大きさをA/2とする。この状態で第2画像読取部135により第2読取ローラ136の表面を読み取って第2の基準データを取得する。その後、所定ステップだけステッピングモータ106を駆動させてカム301を回転させ、図9(a)に示すように、ギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しいAとする。この状態で第2画像読取部135により第2読取ローラ136の表面を読み取って第1の基準データを取得する。そして、第1の基準データと第2の基準データの比を算出し、基準データ比として保持する。
【0055】
以上のような本実施形態のADF100において特徴的な処理は、コントローラ150が第2画像読取部135、デジタル信号処理部210およびステッピングモータ106の動作を制御することによって実現される。以下、処理の具体例を実施例として説明する。
【0056】
(第1実施例)
まず、図10〜図12を参照しながら第1実施例について説明する。第1実施例は、複数ページからなる原稿の読み取りジョブの実行時に、ジョブの先頭で基準データ比の算出を1回のみ行うようにした例である。
【0057】
図10は、コントローラ150の制御により画像処理部205において実現されるシェーディング補正に関わる構成を示す機能ブロック図である。画像処理部205に実現されるシェーディング補正に関わる機能は、基準データ比算出ブロック400と、シェーディングデータ生成ブロック500と、シェーディング補正ブロック600と、メモリ700とに分けられる。なお、図中のDは第2画像読取部135から入力される各画像データを表し、図中のDoutはシェーディング補正後の画像データを表している。
【0058】
基準データ比算出ブロック400は、第1の基準データ取得部401と、第2の基準データ取得部402と、黒補正データ取得部403と、減算器404,405と、基準データ比演算部406を有する。
【0059】
第1の基準データ取得部401は、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくした状態で第2画像読取部135が第2読取ローラ136の表面を読み取ったときに画像処理部205に入力される画像データを第1の基準データDsh1として取得する。また、第2の基準データ取得部402は、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさを原稿読取時よりも小さく(例えば1/2)した状態で第2画像読取部135が第2読取ローラ136の表面を読み取ったときに画像処理部205に入力される画像データを第2の基準データDsh2として取得する。また、黒補正データ取得部403は、光源部200を点灯させずに第2画像読取部135の読み取り動作を行ったときに画像処理部205に入力される画像データを黒補正データBk1として取得する。
【0060】
減算器404は、第1の基準データ取得部401で取得された第1の基準データDsh1から、黒補正データ取得部403により取得された黒補正データBk1を減算し、第1の基準データDsh1から信号成分以外の黒レベルオフセット成分を除去する。黒レベルオフセット成分が除去された第1の基準データDsh1は、基準データ比演算部406に入力される。また、減算器405は、第2の基準データ取得部402で取得された第2の基準データDsh2から、黒補正データ取得部403により取得された黒補正データBk1を減算し、第2の基準データDsh2から信号成分以外の黒レベルオフセット成分を除去する。黒レベルオフセット成分が除去された第2の基準データDsh2は、基準データ比演算部406に入力される。
【0061】
基準データ比演算部406は、第2画像読取部135のリニアイメージセンサ201における有効画素毎に、黒レベルオフセット成分が除去された第1の基準データDsh1と黒レベルオフセット成分が除去された第2の基準データDsh2の比率を演算し、演算結果を基準データ比Kとしてメモリ700に格納する。
【0062】
シェーディングデータ生成ブロック500は、第3の基準データ取得部501と、黒補正データ取得部502と、減算器503と、乗算器504を有する。
【0063】
第3の基準データ取得部501は、シェーディングデータを生成するタイミングにおいて、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくした状態で第2画像読取部135が第2読取ローラ136の表面を読み取ったときに画像処理部205に入力される画像データを第3の基準データDsh3として取得する。また、黒補正データ取得部502は、光源部200を点灯させずに第2画像読取部135の読み取り動作を行ったときに画像処理部205に入力される画像データを黒補正データBk2として取得する。
【0064】
減算器503は、第3の基準データ取得部501で取得された第3の基準データDsh3から、黒補正データ取得部502により取得された黒補正データBk2を減算し、第3の基準データDsh3から信号成分以外の黒レベルオフセット成分を除去する。乗算器504は、黒レベルオフセット成分が除去された第3の基準データDsh3に対して、メモリ700から読み出された基準データ比Kを乗算して、シェーディングデータDshを生成する。
【0065】
シェーディング補正ブロック600は、原稿画像データ取得部601と、減算器602と、シェーディング補正実行部603を有する。
【0066】
原稿画像データ取得部601は、第2画像読取部135の読取位置(読取面と対向する位置)に搬送された原稿を第2画像読取部135が読み取ったときに画像処理部205に入力される画像データを原稿画像データDinとして取得する。減算器602は、原稿画像データ取得部601で取得された原稿画像データDinから、黒補正データ取得部502により取得された黒補正データBk2を減算し、原稿画像データDinから信号成分以外の黒レベルオフセット成分を除去する。
【0067】
シェーディング補正実行部603は、シェーディングデータ生成ブロック500の乗算器504によって生成されたシェーディングデータDshを用いて、黒レベルオフセット成分が除去された原稿画像データDinに対して、シェーディング補正を実施する。
【0068】
図11は、コントローラ150による制御のもとで実行される基準データ比の算出処理を示すフローチャートである。基準データ比を算出する際には、まずステップS101において、光源部200が消灯した状態で第2画像読取部135により読み取り動作が行われ、黒補正データBk1が取得される。
【0069】
次に、ステップS102において、光源部200が点灯する。その後、光源部200の点灯から光量が安定するまでには時間を要するため、予め定められた光源安定化時間だけ待機する(ステップS103)。
【0070】
次に、ステップS104において、ステッピングモータ106の駆動により第2読取ローラ136が第2画像読取部135に近づく方向に移動し、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさが、原稿読取時よりも小さく(例えば1/2)される。そして、ステップS105において、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部が原稿読取時よりも小さくなっている状態で、第2画像読取部135により第2読取ローラ136の表面が読み取られ、第2の基準データDsh2が取得される。
【0071】
次に、ステップS106において、ステッピングモータ106の駆動により第2読取ローラ136が元の位置まで移動し、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさが、原稿読取時と略等しくされる。そして、ステップS107において、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部が原稿読取時と略等しくなっている状態で、第2画像読取部135により第2読取ローラ136の表面が読み取られ、第1の基準データDsh1が取得される。
【0072】
次に、ステップS108において、ステップS107で取得した第1の基準データDsh1とステップS105で取得した第2の基準データDsh2のそれぞれに対して、ステップS101で取得した黒補正データBk1を用いて黒レベルオフセット成分が除去され、黒レベルオフセット成分が除去された第1の基準データDsh1と第2の基準データDsh2との比率が基準データ比Kとして算出される。そして、ステップS109において、ステップS108で算出した基準データ比Kが、メモリ700に格納される。
【0073】
基準データ比Kは、以下の演算式に従い、第2画像読取部135のリニアイメージセンサ201の画素単位で算出される。
K(i)=(Dsh2(i)−Bk1(i))/(Dsh1(i)−Bk1(i))
Dsh1(i):i番目の画素における第1の基準データ
Dsh2(i):i番目の画素における第2の基準データ
Bk1(i):i番目の画素における黒補正データ
K(i):i番目の画素における基準データ比
【0074】
図12は、複数ページからなる原稿の読み取りジョブの実行時にコントローラ150による制御のもとで実行される一連の処理の流れを示すフローチャートである。複数ページからなる原稿の読み取りジョブを実行する場合、コントローラ150は、本体制御部10からの読取開始命令を待ち、読取開始命令を受けると、ステップS201において、ADF100の原稿セット部Aにセットされている複数ページからなる原稿の1ページ目の搬送を開始させる。そして、1ページ目の原稿が第2画像読取部135の読取位置に到達するまでの間に、図11に示したフローチャートに従って基準データ比Kの算出を実行し、算出された基準データ比Kをメモリ700に格納する(ステップS202)。
【0075】
その後、1ページ目の原稿が第2画像読取部135の読取位置に到達すると、ステップS203において、第2画像読取部135による原稿の読み取りが行われ、原稿の画像データDinが取得される。そして、ステップS204において、ステップS202における基準データ比Kの算出に用いた第2の基準データDsh2をシェーディングデータとして用いて、原稿の画像データDinに対するシェーディング補正が行われる。
【0076】
2ページ目以降の原稿については、以下の処理が繰り返される。まず、ステップS205において、次原稿があるかどうか、つまり前回処理した原稿が最終ページの原稿かどうかが判定され、次原稿がある場合(ステップS205:Yes)には、ステップS206において原稿の搬送が開始される。そして、原稿が第2画像読取部135の読取位置に到達するまでの間に、光源部200が消灯し(ステップS207)、光源部200が消灯した状態で第2画像読取部135により読み取り動作が行われ、黒補正データBk2が取得される(ステップS208)。
【0077】
次に、ステップS209において、光源部200が点灯する。その後、光源部200の点灯から光量が安定するまでには時間を要するため、予め定められた光源安定化時間だけ待機する(ステップS210)。
【0078】
その後、原稿が第2画像読取部135の読取位置に到達する前に、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部が原稿読取時と略等しくなっている状態で、第2画像読取部135により第2読取ローラ136の表面が読み取られ、第3の基準データDsh3が取得される(ステップS211)。そして、ステップS212において、メモリ700から基準データ比Kが読み出され、ステップS211で取得した第3の基準データDsh3に基準データ比Kを乗算することにより、シェーディングデータDshが生成される。
【0079】
シェーディングデータDshは、以下の演算式に従い、第2画像読取部135のリニアイメージセンサ201の画素単位で生成される。
Dsh(i)=(Dsh3(i)−Bk2(i))×K(i)
Dsh(i):i番目の画素におけるシェーディングデータ
Dsh3(i):i番目の画素における第3の基準データ
Bk2(i):i番目の画素における黒補正データ
K(i):i番目の画素における基準データ比
【0080】
その後、原稿が第2画像読取部135の読取位置に到達すると、ステップS213において、第2画像読取部135による原稿の読み取りが行われ、原稿の画像データDinが取得される。そして、ステップS214において、ステップS212で生成したシェーディングデータDshを用いて、原稿の画像データDinに対するシェーディング補正が行われる。
【0081】
シェーディング補正は、以下の演算式に従い、第2画像読取部135のリニアイメージセンサ201の画素単位で行われる。
Dout(i)=(Din(i)−Bk2(i))/Dsh(i)×(2−1)
Dout(i):i番目の画素におけるシェーディング補正後の画像データ
Din(i):i番目の画素における原稿の画像データ
【0082】
上記のステップS206〜ステップS214の処理は、ジョブの最終ページの原稿の読取が終了するまで繰り返し行われる。そして、最終ページの原稿の読み取りが終了し、ステップS205で次原稿がないと判断されると(ステップS205:No)、図12のフローチャートで示す一連の処理が終了する。
【0083】
以上のように、本実施例では、複数ページからなる原稿の読み取りジョブの実行時に、ジョブの先頭で基準データ比の算出を行い、算出した基準データ比をメモリ700に格納しておくようにしている。そして、2ページ目以降の原稿の画像データに対してシェーディング補正を行う場合は、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさが原稿読取時と略等しい状態で取得した第3の基準データに対して、予め算出しておいた基準データ比を乗算してシェーディングデータを生成し、このシェーディングデータを用いて原稿の画像データに対するシェーディング補正を行うようにしている。したがって、第2読取ローラ136の移動回数を低減して、第2読取ローラ136の移動を頻繁に行った場合に懸念される生産性の低下を抑制しつつ、シェーディング補正によって照明深度特性の影響を有効に低減することが可能となる。
【0084】
また、本実施例では、ジョブの先頭で基準データ比の算出を行うようにしているので、新たなジョブの実行時には基準データ比が更新されることになる。したがって、時間経過によって光源部200の光量が変化したとしても、変化した光量に対応させてシェーディングデータを精度良く生成して、適切なシェーディング補正を実施することができる。
【0085】
また、本実施例では、第2画像読取部135のリニアイメージセンサ201の画素単位で基準データ比の算出を行うようにしているので、精度の良いシェーディング補正を実現することができる。すなわち、先に図6を用いて説明したように、シェーディングデータ生成時と原稿読取時とで読取距離が異なると、照明深度特性のばらつきによって、シェーディングデータと原稿の画像データとで主走査方向の位置によって出力比率が異なる。この出力比率を同一にするためには、シェーディングデータの主走査方向の分布形状を画素単位で補正することが有効である。本実施例では、基準データ比を画素単位で算出しているので、第3の基準データに対して画素単位で基準データ比を乗算することで、主走査方向の分布形状を画素単位で補正したシェーディングデータが得られることになる。そして、このシェーディングデータを用いることで、精度の良いシェーディング補正を実現することができる。
【0086】
なお、基準データ比の算出は、リニアイメージセンサ201の画素単位ではなく、リニアイメージセンサ201が備えるセンサチップ単位で行うようにしてもよい。この場合、算出した基準データ比を用いたシェーディングデータの生成や、生成したシェーディングデータを用いた原稿の画像データに対するシェーディング補正についても、リニアイメージセンサ201が備えるセンサチップ単位で行われることになる。リニアイメージセンサ201が備えるセンサチップ単位で基準データ比の算出を行うことで、照明深度特性のばらつきによる影響をある程度抑制できるうえに、基準データ比の算出を画素単位で行った場合と比較して、メモリの容量低減や計算処理時間の短縮といった効果が期待できる。
【0087】
また、本実施例では、基準データ比を算出する際に、まず第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさを原稿読取時よりも小さくして第2の基準データを取得し、その後、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくして第1の基準データを取得するようにしているので、基準データ比を算出してから原稿の読み取りを行うまでの時間を短縮して、生産性の向上を図ることができる。すなわち、第1の基準データを取得する際のギャップ部の大きさは原稿読取時と略等しいため、第2の基準データを取得した後に第1の基準データを取得して基準データ比を算出するようにすれば、基準データ比を算出した後に原稿の読み取りを行うまでの間に第2読取ローラ136を移動させてギャップ部を変更する必要はない。したがって、基準データ比を算出してから原稿の読み取りを行うまでの時間が短縮され、生産性を向上させることができる。
【0088】
また、本実施例では、シェーディングデータ生成の基準面となる白色部材として、原稿の搬送に伴って回転するローラ形状の第2読取ローラ136を用いるようにしているので、汚れの付着をローラの回転方向に分散することが可能となり、汚れの影響がシェーディングデータに現れて適切なシェーディング補正を阻害する要因となるといった不都合を有効に抑制することができる。
【0089】
(第2実施例)
次に、図13を参照しながら第2実施例について説明する。第2実施例は、読み取りを行った原稿の枚数または前回基準データ比の算出を行ってからの経過時間をカウントし、所定枚数の原稿の読み取りが行われる毎に、あるいは前回基準データ比の算出を行ってから所定時間が経過する毎に、基準データ比の算出を行うようにした例である。
【0090】
図13は、本実施例における一連の処理の流れを示すフローチャートである。本実施例では、コントローラ150は、本体制御部10からの読取開始命令を待ち、読取開始命令を受けると、ステップS301において、ADF100の原稿セット部Aにセットされている原稿の搬送を開始させる。そして、原稿が第2画像読取部135の読取位置に到達するまでの間に、図11に示したフローチャートに従って基準データ比の算出を実行し、算出された基準データ比をメモリ700に格納する(ステップS302)。
【0091】
その後、原稿が第2画像読取部135の読取位置に到達すると、ステップS303において、第2画像読取部135による原稿の読み取りが行われ、原稿の画像データDinが取得される。そして、ステップS304において、ステップS302における基準データ比の算出に用いた第2の基準データをシェーディングデータとして用いて、原稿の画像データDinに対するシェーディング補正が行われる。
【0092】
次に、ステップS305において、次原稿があるかどうかが判定され、次原稿がなければ(ステップS305:No)そのまま処理を終了する。一方、次原稿がある場合(ステップS305:Yes)には、ステップS306において、基準データ比を算出するタイミングであるか否かが判定される。ここで、基準データ比を算出するタイミングであるか否かの判定は、後述するステップS316でカウントされる読み取り済み原稿の枚数または前回の基準データ比算出時からの経過時間に基づいて行われる。すなわち、ステップS316でカウントされた読み取り済み原稿の枚数が所定枚数に達している場合、あるいはステップS316でカウントされた前回の基準データ比算出時からの経過時間が所定時間に達している場合に、基準データ比を算出するタイミングであると判定される。
【0093】
そして、基準データ比を算出するタイミングであれば(ステップS306:Yes)、ステップS316でのカウント値をリセットした上で、ステップS301に戻ってステップS301以降の処理が繰り返される。一方、基準データ比を算出するタイミングでなければ(ステップS306:No)、ステップS307において、次の原稿の搬送が開始される。そして、次の原稿が第2画像読取部135の読取位置に到達するまでの間に、光源部200が消灯し(ステップS308)、光源部200が消灯した状態で第2画像読取部135により読み取り動作が行われ、黒補正データBk2が取得される(ステップS309)。
【0094】
次に、ステップS310において、光源部200が点灯する。その後、光源部200の点灯から光量が安定するまでには時間を要するため、予め定められた光源安定化時間だけ待機する(ステップS311)。
【0095】
その後、原稿が第2画像読取部135の読取位置に到達する前に、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部が原稿読取時と略等しくなっている状態で、第2画像読取部135により第2読取ローラ136の表面が読み取られ、第3の基準データDsh3が取得される(ステップS312)。そして、ステップS313において、メモリ700から基準データ比Kが読み出され、ステップS312で取得した第3の基準データDsh3に基準データ比Kを乗算することにより、シェーディングデータDshが生成される。
【0096】
その後、原稿が第2画像読取部135の読取位置に到達すると、ステップS314において、第2画像読取部135による原稿の読み取りが行われ、原稿の画像データDinが取得される。そして、ステップS315において、ステップS313で生成したシェーディングデータDshを用いて、原稿の画像データDinに対するシェーディング補正が行われる。
【0097】
原稿の画像データDinに対するシェーディング補正が終了すると、ステップS316において、これまでの読み取り済み原稿の枚数または前回の基準データ比算出時からの経過時間がカウントされる。そして、ステップS305に戻って、ステップS305以降の処理が繰り返される。
【0098】
以上のように、本実施例では、所定枚数の原稿の読み取りが行われる毎に、あるいは前回基準データ比の算出を行ってから所定時間が経過する毎に基準データ比の算出を行い、算出した基準データ比をメモリ700に格納しておくようにしている。そして、基準データ比の算出を行わないタイミングでは、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさが原稿読取時と略等しい状態で取得した第3の基準データに対して、予め算出しておいた基準データ比を乗算してシェーディングデータを生成し、このシェーディングデータを用いて原稿の画像データに対するシェーディング補正を行うようにしている。したがって、第2読取ローラ136の移動回数を低減して、第2読取ローラ136の移動を頻繁に行った場合に懸念される生産性の低下を抑制しつつ、シェーディング補正によって照明深度特性の影響を有効に低減することが可能となる。
【0099】
また、本実施例では、所定枚数の原稿の読み取りが行われる毎に、あるいは前回基準データ比の算出を行ってから所定時間が経過する毎に基準データ比の算出を行うので、基準データ比が随時更新されることになる。したがって、時間経過によって光源部200の光量が変化したとしても、変化した光量に対応させてシェーディングデータを精度良く生成して、適切なシェーディング補正を実施することができる。
【0100】
(第3実施例)
次に、図14を参照しながら第3実施例について説明する。第3実施例は、複写機1の電源投入時、つまり画像読取装置としての機能を有するADF100の電源投入時に、基準データ比の算出を1回のみ行うようにした例である。
【0101】
図14は、本実施例における一連の処理の流れを示すフローチャートであり、複写機1の電源オンとともに開始されるものである。本実施例では、複写機1の電源がオンされて図14のフローチャートで示す処理が開始されると、まず、図11に示したフローチャートに従って基準データ比の算出を実行し、算出された基準データ比をメモリ700に格納する(ステップS401)。
【0102】
次に、コントローラ150は、本体制御部10からの読取開始命令を待ち(ステップS402)、読取開始命令を受けると(ステップS402:Yes)、ステップS403において、ADF100の原稿セット部Aにセットされている原稿の搬送を開始させる。そして、原稿が第2画像読取部135の読取位置に到達するまでの間に、光源部200が消灯し(ステップS404)、光源部200が消灯した状態で第2画像読取部135により読み取り動作が行われ、黒補正データBk2が取得される(ステップS405)。
【0103】
次に、ステップS406において、光源部200が点灯する。その後、光源部200の点灯から光量が安定するまでには時間を要するため、予め定められた光源安定化時間だけ待機する(ステップS407)。
【0104】
その後、原稿が第2画像読取部135の読取位置に到達する前に、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部が原稿読取時と略等しくなっている状態で、第2画像読取部135により第2読取ローラ136の表面が読み取られ、第3の基準データDsh3が取得される(ステップS408)。そして、ステップS409において、メモリ700から基準データ比Kが読み出され、ステップS408で取得した第3の基準データDsh3に基準データ比Kを乗算することにより、シェーディングデータDshが生成される。
【0105】
その後、原稿が第2画像読取部135の読取位置に到達すると、ステップS410において、第2画像読取部135による原稿の読み取りが行われ、原稿の画像データDinが取得される。そして、ステップS411において、ステップS409で生成したシェーディングデータDshを用いて、原稿の画像データDinに対するシェーディング補正が行われる。
【0106】
次に、ステップS412において、次原稿があるかどうかが判定され、次原稿があれば(ステップS412:Yes)、ステップS403に戻ってステップS403以降の処理が繰り返される。一方、次原稿がなければ(ステップS412:No)、複写機1の電源がオンのままであること(ステップS413:No)を条件に、ステップS402に戻って次の読取開始命令待ちの状態となり、複写機1の電源がオフされたら(ステップS413:Yes)、図14のフローチャートで示す一連の処理が終了する。
【0107】
以上のように、本実施例では、複写機1の電源投入時、つまり画像読取装置としての機能を有するADF100の電源投入時に、基準データ比の算出を行い、算出した基準データ比をメモリ700に格納しておくようにしている。そして、その後、第2画像読取部135で読み取った原稿の画像データに対してシェーディング補正を行う場合は、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさが原稿読取時と略等しい状態で取得した第3の基準データに対して、予め算出しておいた基準データ比を乗算してシェーディングデータを生成し、このシェーディングデータを用いて原稿の画像データに対するシェーディング補正を行うようにしている。したがって、第2読取ローラ136の移動を最小限として、第2読取ローラ136の移動を頻繁に行った場合に懸念される生産性の低下を抑制しつつ、シェーディング補正によって照明深度特性の影響を有効に低減することが可能となる。
【0108】
(第4実施例)
次に、図15〜図17を参照しながら第4実施例について説明する。第4実施例は、第1実施例と同様に複数ページからなる原稿の読み取りジョブの先頭で基準データ比の算出を行うが、基準データ比を算出する際、搬送される原稿の厚さを検知して、検知した原稿の厚さに応じて原稿読取時における第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさを決定するようにしたものである。
【0109】
図15は、搬送される原稿の厚さを検知する機構の一例を示す図である。同図に示すように、ADF100のレジスト部Cに設けられている一対のプルアウトローラ123(以下、駆動側のローラをプルアウト駆動ローラ123a、従動側のローラをプルアウト従動ローラ123bという。)のうち、プルアウト従動ローラ123bを圧縮スプリング800によってプルアウト駆動ローラ123a側に付勢する構成とする。
【0110】
具体的には、プルアウト従動ローラ123bの軸801を回転自在に支持する取付部材802と、ADF100の筐体フレームに固設された取付部材803との間に、圧縮スプリング800を配設する。2つの取付部材802,803は対向配置され、プルアウト駆動ローラ123aとプルアウト従動ローラ123bとの間のニップ部に原稿が進入すると、原稿の厚さに応じて圧縮スプリング800が変形し、2つの取付部材802,803間の距離が変化する。
【0111】
2つの取付部材802,803の一方(図15の例では取付部材803側)には変位センサ804が設けられ、変位センサ804の出力がコントローラ150に入力される。変位センサ804は、例えば光学的に2つの取付部材802,803間の距離を検出するものであって、図16に示すように、その出力電圧と検出距離とは比例関係にある。したがって、コントローラ150は、プルアウト駆動ローラ123aとプルアウト従動ローラ123bとの間のニップ部に原稿が進入しないときの出力電圧に対応する検出距離と、そのニップ部に原稿が進入通過したときの出力電圧に対応する検出距離との差から、原稿の厚さを検出することができる。
【0112】
なお、以上は、原稿の厚さを検知する機構をプルアウトローラ123に設けた例であるが、この例に限らず、原稿搬送経路における第2画像読取部135の上流側の別の箇所、例えばリバースローラ121等に原稿の厚さを検知する機構を設けるようにしてもよい。
【0113】
図17は、本実施例における基準データ比の算出処理を示すフローチャートである。本実施例では、まずステップS501において、ADF100の原稿セット部Aにセットされている複数ページからなる原稿の1ページ目の搬送を開始させる。そして、1ページ目の原稿がプルアウト駆動ローラ123aとプルアウト従動ローラ123bとの間のニップ部を通過する際に、変位センサ804の出力電圧に基づいて原稿の厚さが検知される(ステップS502)。
【0114】
次に、ステップS503において、ステップS502で検知された原稿の厚さに応じて、原稿読取時における第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさ(以下、距離Aとする。)が決定される。そして、ステップS504において、ステップS503で決定した距離Aに基づき、第2基準データ取得時におけるギャップ部の大きさ(例えばA/2、以下、距離Bとする。)が決定される。
【0115】
次に、ステップS505において、光源部200が消灯した状態で第2画像読取部135により読み取り動作が行われ、黒補正データBk1が取得される。
【0116】
次に、ステップS506において、光源部200が点灯する。その後、光源部200の点灯から光量が安定するまでには時間を要するため、予め定められた光源安定化時間だけ待機する(ステップS507)。
【0117】
次に、ステップS508において、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさがステップS504で決定した距離Bとなるように、ステッピングモータ106の駆動により第2読取ローラ136を移動させる。そして、ステップS509において、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさが距離Bとなっている状態で、第2画像読取部135により第2読取ローラ136の表面が読み取られ、第2の基準データDsh2が取得される。
【0118】
次に、ステップS510において、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさがステップS503で決定した距離Aとなるように、ステッピングモータ106の駆動により第2読取ローラ136を移動させる。そして、ステップS511において、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさが距離Aとなっている状態で、第2画像読取部135により第2読取ローラ136の表面が読み取られ、第1の基準データDsh1が取得される。
【0119】
次に、ステップS512において、ステップS511で取得した第1の基準データDsh1とステップS509で取得した第2の基準データDsh2のそれぞれに対して、ステップS505で取得した黒補正データBk1を用いて黒レベルオフセット成分が除去され、黒レベルオフセット成分が除去された第1の基準データDsh1と第2の基準データDsh2との比率が基準データ比Kとして算出される。そして、ステップS513において、ステップS512で算出した基準データ比Kが、メモリ700に格納される。
【0120】
以上のように、本実施例では、基準データ比を算出する際に、搬送される原稿の厚さを検知して、検知した原稿の厚さに応じて原稿読取時における第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさを決定するようにしているので、原稿の厚さに応じて最適な基準データ比を算出することができ、照明深度特性の影響をより効果的に低減することができる。
【0121】
なお、本実施例では、1つの読み取りジョブの中で原稿の厚さが変化することは極めて稀であることを考慮して、基準データ比の算出を第1実施例と同様に複数ページからなる原稿の読み取りジョブの先頭で1回のみ行うようにしているが、複数ページからなる原稿の読み取りジョブの途中で原稿の厚さが変化したことを検知した場合に、その時点で再度、基準データ比の算出を行うようにしてもよい。これにより、1つの読み取りジョブの中で原稿の厚さが変化した場合にも、上記と同様の効果を得ることができる。
【0122】
また、第2の実施例と同様に、所定枚数の原稿の読み取りが行われる毎、あるいは前回基準データ比の算出を行ってから所定時間が経過する毎に基準データ比の算出を行うようにしても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0123】
また、第3の実施例と同様に、複写機1の電源投入時、つまり画像読取装置としての機能を有するADF100の電源投入時に基準データ比の算出を行うことも可能である。この場合、電源投入時にいくつかの原稿厚(通常紙、はがき、薄紙など)に応じた基準データ比を算出して、メモリ700に格納しておく。そして、原稿読み取り時には、検知した原稿の厚さに対応する基準データ比を読み出してシェーディングデータを生成し、シェーディング補正を行う。これにより、ジョブの先頭や所定枚数または所定時間毎に間欠で基準データ比を生成するよりも、原稿読み取り時の時間を短縮することが可能となり、生産性をさらに向上させることができる。また、異なる厚さの原稿が混在している連続読み取り動作においても、原稿の厚さが変わる度に基準データ比を算出する必要がないため、生産性をさらに向上させることができる。
【0124】
なお、本実施例では原稿が搬送される過程でその厚さが自動的に検知されるようにしているが、原稿の厚さについては、通常紙、はがき、薄紙などのパターンを用意して、原稿読み取り前にユーザが操作部11を利用して設定する構成としてもよい。この場合、コントローラ150は、ユーザが設定した原稿の厚さに合わせて、原稿読取時における第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさを決定する。この場合にも、原稿の厚さを自動的に検知する場合と同様の効果を得ることができる。
【0125】
以上、本発明の実施形態および具体的な実施例について説明したが、本発明は、上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えて具体化することができる。例えば、上記の実施形態では、第2読取ローラ136を移動させることで、第2画像読取部135の読取面と第2読取ローラ136との間のギャップ部の大きさを可変するようにしているが、第2画像読取部135を移動させることで、あるいは第2画像読取部135と第2読取ローラ136の双方を移動させることでギャップ部の長さを可変するようにしてもよい。
【0126】
また、上記の実施形態は、ADF100の第2画像読取部135に対して本発明を適用した例であるが、ADF100の第1画像読取部131もCIS方式で画像の読み取りを行うように構成されている場合には、第1画像読取部131に対しても本発明を適用するようにしてもよい。
【0127】
また、上記の実施形態は、本発明を複写機1に適用した例であるが、本発明は、CIS方式の読取手段を備える画像読取装置に対して広く適用可能である。また、このような画像読取装置を備える画像形成装置であれば、複合機やファクシミリ装置など、複写機以外の画像形成装置であっても本発明は有効に適用可能である。
【符号の説明】
【0128】
1 複写機
3 画像形成部
100 ADF
106 ステッピングモータ
135 第2画像読取部
136 第2読取ローラ
150 コントローラ
201 リニアイメージセンサ
205 画像処理部
301 カム
400 基準データ比算出ブロック
401 第1の基準データ取得部
402 第2の基準データ取得部
406 基準データ比演算部
500 シェーディングデータ生成ブロック
501 第3の基準データ取得部
504 乗算器
600 シェーディング補正ブロック
601 原稿画像データ取得部
603 シェーディング補正実行部
700 メモリ
804 変位センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0129】
【特許文献1】特開2005−328156号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密着イメージセンサ方式により原稿を読み取る読取手段と、
前記読取手段の読取面に対向する白色部材と、
前記読取手段と前記白色部材の少なくともいずれかを移動させて、前記読取手段の読取面と前記白色部材との間の隙間であるギャップ部の大きさを可変するギャップ可変手段と、
前記ギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくして前記読取手段により前記白色部材の表面を読み取らせることで取得される第1の基準データと、前記ギャップ部の大きさを原稿読取時よりも小さくして前記読取手段により前記白色部材の表面を読み取らせることで取得される第2の基準データとの比率である基準データ比を保持する基準データ比保持手段と、
前記ギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくして前記読取手段により前記白色部材の表面を読み取らせて第3の基準データを取得するとともに、前記第3の基準データに前記基準データ比を乗算してシェーディングデータを生成するシェーディングデータ生成手段と、
生成された前記シェーディングデータを用いて前記読取手段により読み取られた原稿の画像データを補正するシェーディング補正手段と、を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記ギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくして前記読取手段に前記白色部材の表面を読み取らせて第1の基準データを取得するとともに、前記ギャップ部の大きさを原稿読取時よりも小さくして前記読取手段に前記白色部材の表面を読み取らせて第2の基準データを取得し、前記基準データ比を算出する基準データ比算出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記基準データ比算出手段は、前記読取手段の画素単位で前記基準データ比を算出することを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記読取手段は複数のセンサチップを有し、
前記基準データ比算出手段は、前記センサチップ単位で前記基準データ比を算出することを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記基準データ比算出手段は、複数ページからなる原稿の読み取りジョブの実行時に、該ジョブの先頭で前記基準データ比の算出を1回のみ行うことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記基準データ比算出手段は、所定枚数の原稿の読み取りが行われる毎に、前記基準データ比の算出を行うことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記基準データ比算出手段は、所定時間が経過する毎に、前記基準データ比の算出を行うことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記基準データ比算出手段は、画像読取装置の電源投入時に前記基準データ比の算出を1回のみ行うことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記読取手段により読み取られる原稿の厚さを検知する原稿厚さ検知手段と、
検知された前記原稿の厚さに応じて原稿読取時の前記ギャップ部の大きさを決定するギャップ決定手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記基準データ比算出手段は、前記ギャップ部の大きさを原稿読取時よりも小さくして前記読取手段に前記白色部材の表面を読み取らせて第2の基準データを取得した後に、前記ギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくして前記読取手段に前記白色部材の表面を読み取らせて第1の基準データを取得することを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項11】
前記白色部材は、ローラ形状であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置から出力される画像データに基づいて画像形成を行う画像形成部と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
密着イメージセンサ方式により原稿を読み取る読取手段と、
前記読取手段の読取面に対向する白色部材と、
前記読取手段と前記白色部材の少なくともいずれかを移動させて、前記読取手段の読取面と前記白色部材との間の隙間であるギャップ部の大きさを可変するギャップ可変手段と、を備える画像読取装置において実行される画像データ補正方法であって、
前記ギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくして前記読取手段に前記白色部材の表面を読み取らせて第1の基準データを取得するとともに、前記ギャップ部の大きさを原稿読取時よりも小さくして前記読取手段に前記白色部材の表面を読み取らせて第2の基準データを取得し、前記第1の基準データと前記第2の基準データとの比率である基準データ比を算出するステップと、
算出した前記基準データ比を保持するステップと、
前記ギャップ部の大きさを原稿読取時と略等しくして前記読取手段により前記白色部材の表面を読み取らせて第3の基準データを取得するとともに、前記第3の基準データに前記基準データ比を乗算してシェーディングデータを生成するステップと、
生成した前記シェーディングデータを用いて前記読取手段により読み取られた原稿の画像データを補正するステップと、を含むことを特徴とする画像データ補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−23696(P2012−23696A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162296(P2010−162296)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】