説明

画像読取装置、画像形成装置および自動原稿搬送装置

【課題】デュアルスキャン読取において両面共に画像品質を確保することのできる画像読取装置を提供する。
【解決手段】表面読取用の第1の読取部と裏面読取用の第2の読取部とを備えた画像読取装置において、搬送距離の差や、給紙用の裏面側の高摩擦部材の影響により、第2の読取部での読取画像に筋ノイズが多いという問題に対して、第1の読取部の清掃頻度は、原稿番号nが3の倍数のときのみ行なうようにする(S201でYES,S203)ことで、原稿3枚に対して1回にし、第2の読取部の清掃頻度を原稿1枚ずつに対して1回行なうよう、第2の読取部での清掃頻度を第1の読取部での清掃頻度より高く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像読取装置、画像形成装置および自動原稿搬送装置に関し、特に、シートスルー方式の自動原稿搬送装置および該自動原稿搬送装置を搭載した画像形成装置ならびに画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートスルー方式とは搬送機構により搬送される原稿面を停止している画像読取部で読取る方式であり、シートスルー方式の画像読取装置は、停止している原稿を画像読取部を移動させながら読取るプラテンセット方式の画像読取装置と比較して、小型化、低コスト、低騒音、高い生産性に利点を有する。
【0003】
シートスルー方式の場合、画像読取位置は定位置、すなわち、透明部材(長尺状の読取ガラス)上に固定され、搬送される原稿の画像面に読取り光学系の焦点を読取ガラスを介して合わせる。
【0004】
従来、画像読取装置で原稿の表裏両面を読取るための構成として、装置内で原稿を反転させる機構を有し、表面の読取りが完了した原稿を反転させ、再度、裏面の読取りのために画像読取位置まで原稿を搬送する形態が一般的であった。この形態をシングルスキャン読取と称する。
【0005】
これに対し、近年、読取ユニットをさらに備え、シートスルー方式で原稿の表面を読取ると同時に裏面も読取る形態の画像読取装置が急速に需要を拡大している。この読取形態をデュアルスキャン読取と称する。デュアルスキャン読取は最短経路で両面読取が可能であるため、シングルスキャン読取と比較して、高生産性、低騒音に加え、紙詰まり等の搬送不良も低減でき、高い信頼性に利点を有する。
【0006】
デュアルスキャン読取では、一般的に、軽量で小型のCIS(Contact Image Sensor)が用いられる。CISは焦点深度がCCD(Charge Coupled Device)と比較して浅い特徴をもつ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−48184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に読取機構は、読取ガラス上に付着したごみや残留したごみなどの異物の影響を受けやすく、異物により遮光された部分は読取画像において筋状の画像ノイズとなる。原稿が紙であると、炭酸カルシウムなどの紙に含まれる填料や繊維などの微小異物が読取ガラスに付着する不具合が避けられない。特に焦点深度の浅いCISでは、原稿をCISに極力近接させる必要があるため、CISに、原稿に付着した粘着性の異物(テープやのりによる接着部単面からはみ出した粘着物、修正液、ペンのインク塊、消しゴム、等)の転写が生じやすい。CISに転写、付着した粘着性異物は容易に剥離されない。
【0009】
この問題に対処する技術として、たとえば特開2004−48184号公報(以下、特許文献1)は、CISと対向する位置に清掃部材を有する回転体を備えて、該回転体を回転させることでCIS表面を清掃する技術を開示している。
【0010】
しかしながら、デュアルスキャン読取において、原稿の表面をCCDで読取り、裏面をCISで読取る構成の場合、両読取機構ともに同等の画像品質を確保することが要求されることがある。
【0011】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、デュアルスキャン読取において両面共に画像品質を確保することのできる画像読取装置、画像形成装置および自動原稿搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、画像読取装置は、原稿を一枚ずつ搬送するための搬送手段と、搬送された原稿を搬送手段での搬送経路上の第1の読取位置に設けられた第1の透明部材を介して光学的に読取るための第1の読取手段と、第1の読取位置に設けられた第1の透明部材を清掃するための第1の清掃手段と、搬送された原稿を搬送手段での搬送経路上であって、第1の読取位置よりも下流側の第2の読取位置に設けられた第2の透明部材を介して光学的に読取るための第2の読取手段と、第2の読取位置に設けられた第2の透明部材を清掃するための第2の清掃手段とを備え、第2の清掃手段は第1の清掃手段よりも清掃能力が高いことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の局面に従うと、画像読取装置は、原稿を搬送するための搬送手段と、積載された複数の原稿の内から一枚を搬送手段に投入するためのピックアップローラおよびピックアップローラに対向する部材からなる投入手段と、搬送された原稿を搬送手段での搬送経路上であって、ピックアップローラ側の原稿面に対応した搬送経路上の第1の読取位置に設けられた第1の透明部材を介して光学的に読取るための第1の読取手段と、第1の読取位置に設けられた第1の透明部材を清掃するための第1の清掃手段と、搬送された原稿を搬送手段での搬送経路上であって、ピックアップローラに対向する部材側の原稿面に対応した搬送経路上の第2の読取位置に設けられた第2の透明部材を介して光学的に読取るための第2の読取手段と、第2の読取位置に設けられた第2の透明部材を清掃するための第2の清掃手段とを備え、第2の清掃手段は第1の清掃手段よりも清掃能力が高いことを特徴とする。
【0014】
好ましくは、上述のピックアップローラに対向する部材は、ピックアップローラによる搬送方向と逆向きに原稿との間に摩擦力を生じさせる部材である。
【0015】
好ましくは、上述のピックアップローラに対向する部材は、ピックアップローラの回転方向と逆向きに回転するローラである。
【0016】
好ましくは、第1の読取手段はCCD(Charged Coupled Device)を含み、第2の読取手段はCIS(Contact Image Sensor)を含む。
【0017】
好ましくは、第1の清掃手段および第2の清掃手段はそれぞれ清掃部材を有し、第1および第2の透明部材上で清掃部材を移動させることによって第1および第2の透明部材を清掃し、第2の清掃手段での清掃部材の移動速度が第1の清掃手段での清掃部材の移動速度よりも遅い。
【0018】
好ましくは、第1の清掃手段における清掃頻度よりも第2の清掃手段における清掃頻度の方が高い。
【0019】
より好ましくは、画像読取装置は第1の清掃手段の駆動機構と第2の清掃手段の駆動機構とを制御するための第1の制御手段をさらに備え、第1の制御手段は、画像読取モードに応じて第2の清掃手段における清掃頻度を切り替える。
【0020】
より好ましくは、第1の制御手段は、画像読取モードが低解像度モードである場合には第2の清掃手段における清掃頻度を第1の清掃手段における清掃頻度と同じとし、高解像度モードである場合には第2の清掃手段における清掃頻度を第1の清掃手段における清掃頻度よりも高くする。
【0021】
好ましくは、第1の清掃手段および第2の清掃手段はそれぞれ複数の要素からなる集合体である清掃部材を有し、第1の清掃手段における集合体の密度よりも第2の清掃手段における集合体の密度の方が高い。
【0022】
好ましくは、第1の清掃手段および第2の清掃手段はそれぞれ剛性を有した清掃部材を有し、第1の清掃手段における清掃部材の剛性よりも第2の清掃手段における清掃部材の剛性の方が高い。
【0023】
好ましくは、第2の清掃手段は、第1の清掃手段と同等の清掃部材である第1の清掃部材と、第1の清掃手段よりも集合体の密度または剛性が高い第2の清掃部材とを有し、画像読取装置は第2の清掃手段における清掃部材の切替を制御するための第1の制御手段をさらに備え、第1の制御手段は、画像読取モードに応じて第2の清掃手段における清掃部材を切り替える。
【0024】
より好ましくは、第1の制御手段は、画像読取モードが低解像度モードである場合には第2の清掃手段で用いる清掃部材を第1の清掃部材とし、高解像度モードである場合には第2の清掃手段で用いる清掃部材を第2の清掃部材とする。
【0025】
好ましくは、画像読取装置は第1の清掃手段の駆動機構と第2の清掃手段の駆動機構とを制御するための第2の制御手段をさらに備え、第2の制御手段は、画像読取モードに応じて第2の清掃手段における清掃動作の実行を制御する。
【0026】
より好ましくは、第2の制御手段は、画像読取モードが原稿の面のうちの第1の読取手段側の面のみを読取る片面読取モードである場合には第2の清掃手段における清掃動作を実行させず、第1の読取手段側および第2の読取手段側の両面を読取る両面読取モードである場合には第2の清掃手段における清掃動作を実行させる。
【0027】
本発明のさらに他の局面に従うと、画像形成装置は、上述の画像読取装置を有する。
本発明のさらに他の局面に従うと、自動原稿搬送装置は、原稿を一枚ずつ搬送するための搬送手段と、搬送された原稿を光学的に読取るための読取装置での読取位置に対応した、搬送手段での搬送経路上の第1の読取位置に設けられた第1の透明部材を清掃するための第1の清掃手段と、搬送された原稿を搬送手段での搬送経路上であって、第1の読取位置よりも下流側の第2の読取位置に設けられた第2の透明部材を介して光学的に読取るための読取手段と、第2の読取位置に設けられた第2の透明部材を清掃するための第2の清掃手段とを備え、第2の清掃手段は第1の清掃手段よりも清掃能力が高いことを特徴とする。
【0028】
本発明のさらに他の局面に従うと、自動原稿搬送装置は、原稿を搬送するための搬送手段と、積載された複数の原稿の内から一枚を搬送手段に投入するためのピックアップローラおよびピックアップローラに対向する部材からなる投入手段と、搬送された原稿を光学的に読取るための読取装置での読取位置に対応した、搬送手段での搬送経路上であって、ピックアップローラ側の原稿面に対応した搬送経路上の第1の読取位置に設けられた第1の透明部材を清掃するための第1の清掃手段と、搬送された原稿を搬送手段での搬送経路上であって、ピックアップローラに対向する部材側の原稿面に対応した搬送経路上の第2の読取位置に設けられた第2の透明部材を介して光学的に読取るための読取手段と、第2の読取位置に設けられた第2の透明部材を清掃するための第2の清掃手段とを備え、第2の清掃手段は第1の清掃手段よりも清掃能力が高いことを特徴とする。
【0029】
好ましくは、上述のピックアップローラに対向する部材は、ピックアップローラによる搬送方向と逆向きに原稿との間に摩擦力を生じさせる部材である。
【0030】
好ましくは、上述のピックアップローラに対向する部材は、ピックアップローラの回転方向と逆向きに回転するローラである。
【0031】
好ましくは、読取手段はCIS(Contact Image Sensor)を含む。
好ましくは、第1の清掃手段および第2の清掃手段はそれぞれ清掃部材を有し、第1および第2の透明部材上で清掃部材を移動させることによって第1および第2の透明部材を清掃し、第2の清掃手段での清掃部材の移動速度が第1の清掃手段での清掃部材の移動速度よりも遅い。
【0032】
好ましくは、第1の清掃手段における清掃頻度よりも第2の清掃手段における清掃頻度の方が高い。
【0033】
より好ましくは、自動原稿搬送装置は第1の清掃手段の駆動機構と第2の清掃手段の駆動機構とを制御するための第1の制御手段をさらに備え、第1の制御手段は、画像読取モードに応じて第2の清掃手段における清掃頻度を切り替える。
【0034】
より好ましくは、第1の制御手段は、画像読取モードが低解像度モードである場合には第2の清掃手段における清掃頻度を第1の清掃手段における清掃頻度と同じとし、高解像度モードである場合には第2の清掃手段における清掃頻度を第1の清掃手段における清掃頻度よりも高くする。
【0035】
好ましくは、第1の清掃手段および第2の清掃手段はそれぞれ複数の要素からなる集合体である清掃部材を有し、第1の清掃手段における集合体の密度よりも第2の清掃手段における集合体の密度の方が高い。
【0036】
好ましくは、第1の清掃手段および第2の清掃手段はそれぞれ剛性を有した清掃部材を有し、第1の清掃手段における清掃部材の剛性よりも第2の清掃手段における清掃部材の剛性の方が高い。
【0037】
好ましくは、第2の清掃手段は、第1の清掃手段と同等の清掃部材である第1の清掃部材と、第1の清掃手段よりも集合体の密度または剛性が高い第2の清掃部材とを有し、自動原稿搬送装置は第2の清掃手段における清掃部材の切替を制御するための第1の制御手段をさらに備え、第1の制御手段は、画像読取モードに応じて第2の清掃手段における清掃部材を切り替える。
【0038】
より好ましくは、第1の制御手段は、画像読取モードが低解像度モードである場合には第2の清掃手段で用いる清掃部材を第1の清掃部材とし、高解像度モードである場合には第2の清掃手段で用いる清掃部材を第2の清掃部材とする。
【0039】
好ましくは、自動原稿搬送装置は第1の清掃手段の駆動機構と第2の清掃手段の駆動機構とを制御するための第2の制御手段をさらに備え、第2の制御手段は、画像読取モードに応じて第2の清掃手段における清掃動作の実行を制御する。
【0040】
より好ましくは、第2の制御手段は、画像読取モードが原稿の面のうちの読取装置側の面のみを読取る片面読取モードである場合には第2の清掃手段における清掃動作を実行させず、読取装置側および読取手段側の両面を読取る両面読取モードである場合には第2の清掃手段における清掃動作を実行させる。
【発明の効果】
【0041】
この発明によると、原稿の表面と裏面との両面を読取る場合において、表面と裏面とで読取画像の品質の差異を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施の形態にかかる画像読取装置の構成の具体例を示す図である。
【図2】画像読取装置に含まれる、CIS(Contact Image Sensor)方式を採用した読取機構である第2の読取部の、構成の具体例を示す図である。
【図3】画像読取装置の第2の読取部に含まれる、回転体の構成の具体例を示す図である。
【図4】回転体の回転に伴う、回転体と読取ガラスとの位置関係を説明するための図である。
【図5】発明者の実験によって得られた、回転体の回転回数と読取ガラス表面に残留する紙粉量との関係を示す図である。
【図6】発明者の実験によって得られた、各紙種における、第1の読取部(CCD)と第2の読取部(CIS)とのそれぞれの筋ノイズの発生頻度を表わす図である。
【図7】発明者の実験によって得られた、第2の読取部(CIS)での位置ごとの筋ノイズの発生率の関係を表わす図である。
【図8】ピックアップローラおよび捌きローラでの給紙方法を説明するための図である。
【図9】ピックアップローラおよび捌きローラでの給紙方法を説明するための図である。
【図10】前捌き板を用いた給紙方法を説明するための図である。
【図11】第1の読取部(CCD)までと第2の読取部(CIS)までとの搬送経路長、および第1の読取部(CCD)、第2の読取部(CIS)付近の概略を示す図である。
【図12】第1の実施の形態にかかる画像読取装置の動作の流れを表わすフローチャートである。
【図13】第1の読取部(CCD)での清掃動作である第1の清掃シーケンスを表わすフローチャートである。
【図14】第2の読取部(CIS)での清掃動作である第2の清掃シーケンスを表わすフローチャートである。
【図15】発明者による、第1の実施の形態にかかる画像読取装置での読取画像におけるノイズの発生頻度の算出結果を表わす図である。
【図16】発明者による、清掃部材を備えた回転体の回転速度と清掃能力との関係のタグチメソッドによる評価結果を示す図である。
【図17】回転体の回転速度が遅い方が清掃能力が高い理由を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
【0044】
図1を参照して、実施の形態にかかる画像読取装置100は、原稿を自動的に搬送するためのADF(Auto Document Feeder)部101と、原稿を読取るための第1の読取部102Aと、ADF部101内に設けられた原稿を読取るための第2の読取部102Bと、全体制御および画像処理を行なうための制御部500とを備える。
【0045】
図1に表わされた画像読取装置100は、複写機、プリンタ、スキャナ、ファクシミリ送受信機、またはこれら装置のうちのいずれか2以上の装置の機能を備えた複合機であるMFP(Multi Function Peripheral)などである画像形成装置の一部であってもよい。
【0046】
ADF部101においては、原稿トレイ200に積載された原稿は、ピックアップローラ201A,201A’と、ピックアップローラ201Aに搬送経路を挟んで対向する位置にある対向部材201Bとで1枚ずつ搬送経路に送り出される。対向部材は後述するように、ピックアップローラ201A,201A’が用紙に対して搬送方向に力を作用させるのに対して、搬送方向とは逆向きに力を作用させて、ピックアップローラ201A,201A’と対向する位置にある用紙(ピックアップローラ201A直下の用紙以外の用紙)が搬送されないようにする部材である。具体的には搬送方向と逆向きに摩擦力を作用させるコルクなどの部材や、ピックアップローラ201A,201A’と逆向きに回転するローラなどが該当する。この例では、対向部材201Bとしてピックアップローラ201A,201A’と逆向きに回転する捌きローラ201Bが用いられているものとする。
【0047】
送り出された原稿は、搬送経路(1)から(2)を通り、第1の読取部102Aの読取位置211へ搬送される。読取位置211を通過した原稿は搬送ローラ212により搬送されて原稿搬送経路(3)を通り、第2の読取部102Bへ搬送される。第2の読取部102Bで読取られた原稿は、その後、搬送経路(4)を通って排出トレイ214へ排出される。搬送ローラ212近傍には通紙センサ217が備えられ、原稿の、原稿搬送経路(3)の搬送が検出される。
【0048】
第1の読取部102AはCCD(Charged Coupled Device)方式を採用した読取機構である。すなわち、光源206は、読取位置211を通過する原稿の、図1において下方に表わされる第1の面を照射する。照射光によって原稿の第1の面から反射された光は、板状の透明部材の一例である読取ガラス215、ミラー群207およびレンズ208を通して、CCDセンサ209によって受光される。CCDセンサ209は、光電変換により、受光信号をRGBデータに変換して制御部500に対して出力する。
【0049】
第2の読取部102Bは、ADF部101内に設けられた、CIS(Contact Image Sensor)方式を採用した読取機構である。すなわち、図2を参照して、光源301は、読取位置306を通過する原稿の、第1の面の裏面である第2の面、すなわち、図1においては上方に表わされる面を照射する。照射光によって原稿の第2の面から反射された光は、板状の透明部材の一例である読取ガラス302を通して、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ303によって受光される。CMOSセンサ303は、R,G,Bそれぞれの受光信号をRGBデータに変換して制御部500に対して出力する。
【0050】
原稿が第1の読取部102Aを経て第2の読取部102Bへ搬送され、それぞれにおいて第1の面、第2の面が読取られることで、搬送工程で原稿を表裏反転させずに両面読取りが可能となる。すなわち、第1の読取部102Aおよび第2の読取部102Bは原稿の両面読取機構に含まれる。
【0051】
制御部500は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を含み、メモリ600に記憶されているプログラムを読み出して実行することで、画像処理を行なうための機能である画像処理部501と、各部の駆動を制御するための機能である駆動制御部502とが実現される。これら機能は、CPUの処理で実現されるものであってもよいし、電気回路などのハードウェアで実現されてもよい。
【0052】
画像処理部501は、第1の読取部102AからのRGBデータおよび第2の読取部102BからのRGBデータに基づき画像データを生成する。
【0053】
駆動制御部502は、ADF部101内に設置された通紙センサ217などのセンサや、第2の読取部102Bに含まれるセンサ312(図2参照)、および図示されない操作パネルなどと接続され、これらのセンサ信号および操作信号の入力を受け付ける。さらに、駆動制御部502は、ピックアップローラ201Aや搬送ローラ212などの駆動機構(パルスモータやそれを制御するためのモータ駆動IC(Integrated Circuit)等)、第1の読取部102Aの駆動機構、および第2の読取部102Bの駆動機構と通信可能に接続され、入力されたセンサ信号や操作信号などに基づいてこれらの駆動を制御する。
【0054】
画像読取装置100は、図1に示されるように画像形成部700に接続されてもよく、このように接続されることで、画像読取装置100はMFP等の画像形成装置の一部として機能する。この場合、制御部500は画像形成部700に電気的に接続されて、生成された画像データを出力する。画像形成部700が印刷装置である場合には、生成された画像データは、出力用紙などに印刷される。
【0055】
再度図2を参照して、第2の読取部102Bは、さらに、読取ガラス302の原稿が通過する側の面の直下に備えられる、原稿の画像面がガラス面とは接触しないように原稿をガイドするために搬送路を挟む位置に設けられるガイド304と、読取位置306において読取ガラス302を挟んでCMOSセンサ303と対向する位置に備えられる回転体310Bとを含む。なお、以降の説明において、読取位置306を基準に、搬送ローラ212の回転によって通紙センサ217を通過させながら読取位置306に原稿を供給(送出)する側を「搬送方向の上流側」といい、読取られた原稿が読取位置306から搬送ローラ212の回転によって送出される側を「搬送方向の下流側」という。
【0056】
読取ガラス302のガラス表面上に搬送されてきた原稿は、ガイド304に挟まれてガイドされることにより、画像面が読取ガラス302の表面に対して非接触の状態で、上流側から下流側へと搬送される。
【0057】
ガイド304の読取位置306は、読取ガラス302に近い側も遠い側も開放されている。そのため、ガイド304に沿って上流側から搬送されてきた原稿は、読取位置306で間に何も挟まずに読取ガラス302と相対する。また、原稿が読取位置306にないときには、回転体310Bが読取位置306で間に何も挟まずに読取ガラス302と相対する。
【0058】
図2に示されるように、回転体310Bはその表面の一部が平坦であり、その平坦な面に弾性変形可能なブラシ状の清掃部材31が設けられる。清掃部材31は、たとえば、導電性ナイロンを植毛したものである。回転体310Bの清掃部材31が設けられた以外の面には、シェーディング補正のための白基準面32が設けられる。
【0059】
図3を参照して、回転体310Bは、その回転軸が読取ガラス302(すなわちCMOSセンサ303)の長手方向と平行となるよう配備され、清掃部材31および白基準面32が読取ガラス302の読取位置306に対向して回転可能に配置されている。清掃部材31および白基準面32はいずれも、原稿の搬送方向に沿って延びる軸を想定すると、この軸と直交するようなライン状に延びている。
【0060】
回転体310Bの一端部に固定したスプロケット331は、回転体310Bの駆動機構であるモータ234Bの出力用スプロケット332に、タイミングベルト333を介して連結されている。モータ234Bは正逆回転可能なステッピングモータである。
【0061】
回転体310Bは、モータ234Bの回転に連動して、所定のタイミングおよび速度に従って正転または逆転する。回転体310Bの駆動機構であるモータ234Bは、制御部500からの制御信号に従って回転する。また、モータ234Bの回転を表わすパルス信号が制御部500に対して出力される。このパルス信号をカウントすることで、制御部500ではモータ234Bの回転数、すなわち回転体310Bの回転量を得ることができる。
【0062】
図1に表わされるように、第2の読取部102Bに備えられる回転体310Bと同様の回転体310Aが第1の読取部102Aにも備えられる。第1の読取部102Aに備えられる回転体310Aもまた同様の清掃部材および白基準面が設けられる。回転体310Aもまた、図3に一部が示されるように、回転体310Bの構成と同様にモータ234Bにタイミングベルトを介して接続され、モータ234Aの回転に伴って回転する。
【0063】
回転体310Bの回転に伴って、図4に示される白基準面32が読取ガラス302に対向する位置にあり清掃部材31が読取ガラス302に対向しない位置にある第1のポジション、および図2に表わされた清掃部材31が読取ガラス302に対向する位置にあり白基準面32が読取ガラス302に対向しない位置にある第2のポジションをとる。第1のポジションは非清掃時のポジションであってホームポジションであり、第2のポジションは清掃時のポジションである。回転体310Aと読取ガラス215との位置関係も同様である。
【0064】
回転体310A,310Bはホームポジションである第1のポジションで待機している。駆動制御部502からの制御信号に従ってモータ234A,234Bが回転駆動することにより、回転体310A,310Bはホームポジションである第1のポジションから右回りに回転が進み、第2のポジションを経て第1のポジションに戻る。この回転に連動して、弾性変形可能なブラシ状の清掃部材31の先端は読取ガラス302または読取ガラス215表面を摺擦する。これにより、読取ガラス302上または読取ガラス215上の異物が清掃部材31によって捕獲され、読取位置306または読取位置211から排除される。この回転体310A,310Bを1回転または複数回回転させる動作を「清掃動作」とも称する。
【0065】
発明者は、画像読取装置に実際に市場に流通しているいくつかの上質紙を通紙したときの筋状のノイズ(以下、筋ノイズ)の発生頻度を、第1の読取部102A(CCD)と第2の読取部102B(CIS)とのそれぞれについて算出した。具体的には、発明者は、市場で流通量の多い紙A(80g/m2のA4サイズ)、紙B(64g/m2のA4サイズ)、紙C(80g/m2のA4サイズ)、紙D(80g/m2のA4サイズ)、紙E(90g/m2のレターサイズ)、および紙F(80g/m2のレターサイズ)の6種類の上質紙を選定し、特定画像がプリントされた上質紙を原稿として用いて、画像読取装置にてそれぞれ500枚ずつ搬送して読取らせ、用紙ごとに、第1の読取部102A(CCD)と第2の読取部102B(CIS)とのそれぞれの筋ノイズの発生頻度を算出した。筋ノイズの発生頻度は、筋ノイズの発生した枚数の搬送および読取りを行なった総枚数に対する割合(%)、すなわち、筋ノイズの発生した枚数を搬送および読取りを行なった総枚数(ここでは3000枚)で除して100%を乗じた値とする。
【0066】
その結果、第1の読取部102A(CCD)と第2の読取部102B(CIS)とのそれぞれの筋ノイズの発生頻度は、各紙種について図6の棒グラフに表わされるような関係が得られた。図6において、各紙種の左側が第1の読取部102A(CCD)でのノイズの発生頻度を表わし、右側が第2の読取部102B(CIS)でのノイズの発生頻度を表わしている。図6から明らかなように、いずれの紙種においても、第1の読取部102A(CCD)でのノイズの発生頻度と比較して第2の読取部102B(CIS)でのノイズの発生頻度の方が極端に高いことがわかった。
【0067】
この理由として、(1)給紙機構の影響、および(2)搬送経路の差、の2つの理由が考えられた。そこで、発明者は、理由(1)の検証のため、さらに、第2の読取部102Bでの筋ノイズの発生傾向として位置ごとの筋ノイズの発生率を算出した。
【0068】
(理由1)
その結果、第2の読取部102Bでの位置ごとの筋ノイズの発生率は図7の棒グラフに表わされるような関係が得られた。図7から明らかなように、第2の読取部102Bでの筋ノイズの発生率は中央部が極端に高いことがわかった。さらに、図7に示されている筋ノイズの発生した位置と搬送ローラ212、捌きローラ201Bとの位置関係については、捌きローラ201Bと一致する位置の筋ノイズの発生率が極端に高く、搬送ローラ212と一致する位置と筋ノイズの発生率との関連は見られないことがわかった。これにより、第2の読取部102Bでの筋ノイズの発生率と捌きローラ201Bとに関連があることが検証された。
【0069】
ここで、ADF部101の有するピックアップローラ201A,201A’と捌きローラ201Bとによる、複数枚積載された原稿を一枚ずつ順次搬送経路に投入するための給紙機構について説明する。なお、以降の説明においては、便宜上、ピックアップローラ201A’が省略されて示される場合もある。給紙機構は、図示しないピックアップローラ201A,201A’を回転駆動させるための駆動機構、および捌きローラ201Bを回転駆動させるための駆動機構を有する。
【0070】
ピックアップローラ201Aおよびピックアップローラ201A’はベルトで連結され、共には駆動機構によって接する原稿を搬送方向に搬送経路に押し出す向き(駆動方向)に回転する。これにより、ピックアップローラ201A,201A’に接する原稿には、ピックアップローラ201A,201A’およびこれらを連結するベルト表面との摩擦により搬送方向に摩擦力Foが作用する。
【0071】
捌きローラ201Bは、4[N]程度の圧接力Nsで原稿に圧接されつつ、駆動機構によってピックアップローラ201A,201A’の駆動方向と同じ向きに回転する。これにより、捌きローラ201Bに接する原稿には、捌きローラ201B表面との摩擦により搬送方向とは逆向きに摩擦力F’が作用する。なお、捌きローラ201Bを回転駆動させるための駆動機構には、捌きローラ201Bを予め規定されたトルク値Tr以上では空転させるためのトルクリミッタが含まれる。トルクリミッタ値Trとしてはたとえば4[N]程度が挙げられる。これにより、捌きローラ201Bの回転トルク値の最大値はトルクリミッタ値Trとなり、これ以上では回転しない。捌きローラ201Bの半径をRとすると、摩擦力F’の最大値はTr×Rとなる。
【0072】
ピックアップローラ201Aと捌きローラ201Bとの間に原稿が1枚のみ存在するときには、図8に表わされたように、当該用紙にはピックアップローラ201Aによって、捌きローラ201Bによって作用する摩擦力F’よりも大きい摩擦力Foが作用する(Fo>F’)。これにより、捌きローラ201Bは図中矢印Rで表わされたピックアップローラ201Aの駆動方向とは逆向きに回転する。このとき、原稿の捌きローラ201B側の面には捌きローラ201Bによる摩擦力F’が作用している。
【0073】
ピックアップローラ201Aと捌きローラ201Bとの間に原稿が2枚存在するときには、図9に表わされたように、ピックアップローラ201Aに接する原稿(1枚目原稿)はピックアップローラ201Aによる摩擦力Foによって搬送方向に搬送される。1枚目原稿と捌きローラ201Bに接する原稿(2枚目原稿)との間には、1枚目原稿の移動によって摩擦力foが発生する。摩擦力foは原稿間の摩擦係数をμoとするとμo×Nsで表わされる。1枚目原稿には搬送方向と逆向きに摩擦力foが作用し、2枚目原稿には搬送方向に摩擦力foが作用する。摩擦力foは2枚目原稿に作用する捌きローラ201Bによる摩擦力F’よりも十分に小さいため、摩擦力F’が2枚目原稿の搬送方向への重送を制止する。これにより、1枚目原稿のみが搬送経路に送り出される。
【0074】
ピックアップローラ201Aと捌きローラ201Bとの間に原稿が3枚以上存在するときの重送防止の構成として、給紙機構は、捌きローラ201Bよりも上流側に前捌き部材201Cを備える。前捌き部材201Cはゴム等の高摩擦抵抗材料からなるガイドであり、たとえば板状のものが該当する。当該部分を拡大した図10には、前捌き部材が板状の前捌き板201Cである例が示されている。図10を参照して、一例として前捌き部材である前捌き板201Cは、その端部がピックアップローラ201A,201A’および捌きローラ201Bよりも上流側の搬送経路に突出した状態で備えられる。これにより、前捌き板201Cは原稿の捌きローラ201B側の面に接触して搬送方向とは逆向きに摩擦力を作用させる。1枚目原稿にはピックアップローラ201A,201A’により前捌き板201Cによる摩擦力よりも大きな摩擦力Foが作用しているため搬送経路に送り出されるが、1枚目原稿以外の原稿は上記捌きローラ201Bおよび前捌き板201Cによる摩擦力により重送が防止される。
【0075】
以上の図8〜図10で説明されたように、ピックアップローラ201A,201A’と捌きローラ201Bとにより原稿が1枚ずつ送り出される過程において、原稿の捌きローラ201B側の面には捌きローラ201Bによる摩擦力F’および/または前捌き板201Cによる摩擦力が常に作用する。これにより、原稿の捌きローラ201B側の面は摩擦力で擦られ、紙の繊維などの紙粉が発生する。原稿が図1の搬送経路(1)〜(4)で搬送されることによって原稿の捌きローラ201B側の面は第2の読取部102B(CIS)の読取ガラス302に面する。このため、図7にも表わされたように、第2の読取部102Bで高確率で発生する筋ノイズはその位置の一致する捌きローラ201Bによる紙粉の影響であると言える。
【0076】
(理由2)
上述の、第1の読取部102A(CCD)でのノイズの発生頻度と比較して第2の読取部102B(CIS)でのノイズの発生頻度の方が極端に高い理由(2)としては、読取り位置に達するまでの搬送経路が第1の読取部102Aと第2の読取部102Bとでは、図11で長さLで表わされた、第1の読取部102Aから第2の読取部102Bまでの搬送経路の長さ分、第2の読取部102Bの方が長いことにある。すなわち、搬送経路を搬送される原稿に対して、搬送方向に直交する方向には力が作用しないため、紙粉は搬送方向に移動するが搬送方向に直交する方向には移動しない。従って、第1の読取部102A以降に発生した紙粉はその下流に位置する第2の読取部102Bに向けて移動し、第2の読取部102Bに到達することになる。そのため、第1の読取部102Aから第2の読取部102Bまでの間の原稿とガイドとの接触による発生した紙粉量分、第2の読取部102Bに到達する紙粉量は多くなる。また、CISではガイド間隔がCCDよりも狭いため、紙粉の飛散が抑えられ、第1の読取部102Aよりも読取ガラス302に付着しやすい。このため、第1の読取部102A(CCD)でのノイズの発生頻度と比較して第2の読取部102B(CIS)でのノイズの発生頻度の方が極端に高い原因の一つとして搬送経路長の差が挙げられる。
【0077】
第1の読取部102A(CCD)でのノイズの発生頻度と比較して第2の読取部102B(CIS)でのノイズの発生頻度の方が極端に高いと、両面読取りの場合において、原稿の表面の読取画像の品質と裏面の読取画像の品質とに差異が生じることになる。この場合、たとえば読取画像を印字すると、表面と裏面とで印字物における画像品質に差異が生じることになり、見難い印字物となる可能性がある。特に、その印字物を見開きで製本すると左右のページの品質が異なることになり、非常に見難くなる可能性がある。そこで、画像読取装置100は第2の読取部102B(CIS)側の清掃能力を第1の読取部102Aの清掃能力より高める構成を有する。
【0078】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態として、画像読取装置100は、第2の読取部102Bでの清掃回数を第1の読取部102Aでの清掃回数よりも多くすることで、第2の読取部102B(CIS)側の清掃能力を第1の読取部102Aの清掃能力より高める。
【0079】
発明者は、図2に示された構成の装置を用いて実験し、清掃部材の清掃性能を確認した。実験に用いた清掃部材は抵抗率11.5[LogΩ]の導電性ナイロンを用いたブラシ状の部材であって、毛1本当たりの太さが2[D(デニール)](15.0[μm])、毛の密度が240[kf/inch2]のものを用いた。CMOSセンサ303の長手方向についての幅L2は309mm、原稿の搬送方向についての幅は5[mm]とした。また、読取ガラス302への食い込み量を1.5[mm]±0.5[mm]、および回転体310Bの読取ガラス302への圧接力を6[N(ニュートン)]とした。回転体310Bすなわち清掃部材31は、302[mm/s]以下の回転速度で回転させた。
【0080】
実験では、読取ガラスに紙粉を均一に散布した状態から回転体を回転させ、回転後に読取ガラス上に残留する紙粉数を顕微鏡にて確認した。確認範囲は、回転中心から3.5mm幅とした。
【0081】
この実験により図5に示された回転体の回転回数と読取ガラス表面に残留する紙粉量との関係が得られ、この実験結果より、ある程度回転体の回転回数を多くすることで、清掃部材を備えた回転体を回転させる方式の清掃能力はバラツキが小さく安定した清掃能力であることが確認された。
【0082】
ここで、ブラシ状の清掃部材を読取ガラスに接触させて清掃することはガラス表面を摩擦する作用を与え、コーティングの剥離や微小な傷の発生を生じる原因になる。そのため、読取ガラスの耐久性を確保する観点からは清掃動作は極力少ない方が好ましい。また、図5にも表わされたように、読取ガラス状の紙粉量が少なくなるほど清掃動作によって紙粉量が減少する効果は少なくなる。そこで、第1の実施の形態にかかる画像読取装置100では、第1の読取部102A(CCD)の清掃頻度を3枚の原稿読取で1回の割合とし、第2の読取部102B(CIS)の清掃頻度を1枚の原稿読取ずつ1回の割合とする。
【0083】
より好ましくは、第1の実施の形態にかかる画像読取装置100では、読取モードに応じて第2の読取部102B(CIS)の清掃頻度を切り替える。一例としては、第1の読取部102Aのみで画像読取を行なう片面読取モードのときには第2の読取部102Bが動作しないため、第2の読取部102Bの清掃動作を行なわない。他の例としては、ファクシミリやスキャンモードなどの低容量な画像ファイルを得るためのモードである低分解能読取モードのときには紙粉による1ドット程度の筋ノイズは画像処理によって間引かれて目立たなくなるため、第2の読取部102Bの清掃頻度を第1の読取部102Aでの清掃頻度と同じとする。
【0084】
第1の実施の形態にかかる画像読取装置100の動作について、図11および図12〜図14のフローチャートを用いて説明する。図12〜図14のフローチャートに表わされる動作は、制御部500が、図示しない操作パネル等から読取開始(たとえばコピー開始等)を指示する指示信号を受け付けることで開始されるものであって、制御部500に含まれる図示しないCPUがメモリ600に記憶されているプログラムを読み出して実行することによって実現される。なお、以降の説明において、便宜上、原稿の第1の読取部102Aで読取られる側の面を「表面」、第2の読取部102Bで読取られる側の面を「裏面」とし、それぞれの読取部について表面、裏面と称することがある。
【0085】
図12を参照して、読取動作が開始されると、始めに制御部500は操作パネル等からの指示信号を解析して読取モードを特定する。読取モードが片面読取モードである場合には(ステップS101でYES)、ステップS105で制御部500は第2の読取部102B側の清掃動作を行なわないと判断し、第2の読取部102Bの回転体310Bを回転駆動させるための機構(モータ234B等)をOFFし、その後、指示信号に従って片面読取シーケンスを開始する(ステップS107)。読取モードが低分解能読取モードである場合には(ステップS103でYES)、以降の、第1の読取部102Aの清掃頻度と第2の読取部102Bの清掃頻度とを異ならせる清掃シーケンスとは異なる、これらの清掃頻度を同じとする通常の清掃シーケンスを含んだ低分解能読取シーケンスを開始する(ステップS109)。
【0086】
読取モードが片面読取モードでも低分解能読取モードでもない場合、すなわち、通常の分解能での両面読取モードである場合(ステップS101でNO,かつS103でNO)、ステップS111で原稿のページ数を表わす変数nを初期値1に設定した後に、ステップS113で給紙シーケンスを開始する。これにより、原稿トレイ200に積載された原稿がピックアップローラ201Aと捌きローラ201Bとによって1枚ずつ搬送経路に取り込まれ、図11に示されるように、搬送経路を第1の読取部102Aに向けて速度Vで搬送されてくる。
【0087】
搬送経路には図2にも表わされたようにいくつかのセンサが備えられており、制御部500に含まれる図示しないCPUに接続されている。制御部500はセンサ信号に基づいて搬送経路上の原稿の位置を特定し得る。制御部500は、図11に示される、第1の読取部102Aの上流側に配置されるセンサSE1からのセンサ信号の入力を受け付けると、すなわち、搬送された原稿の先端がセンサSE1位置に達したことが検出されると(ステップS115でYES)、ステップS117で制御部500に含まれる図示しない第1のタイマをスタートさせ、原稿先端のセンサSE1位置に達した時点からの時間経過を計時する。計時される、原稿先端のセンサSE1位置に達した時点からの時間経過は、タイマ値t1で表わされる。
【0088】
タイマ値t1が、センサSE1位置から第1の読取部102Aの読取位置211までの距離L1を原稿が進む時間に相当するL1/Vに達すると、すなわち原稿先端が読取位置211に達したことが検出されると(ステップS119でYES)、制御部500は第1の読取部102Aにおいて当該原稿の表面を読み取るための動作を開始すると判断し、ステップS121で駆動制御部502は第1の読取部102Aの読取機構を駆動させ、第1の読取部102Aで搬送されてきた原稿の読取動作を開始させる。
【0089】
続いて、タイマ値t1が、センサSE1位置から第2の読取部102Bの読取位置306までの距離L2を原稿が進む時間に相当するL2/Vに達すると、すなわち、原稿先端が読取位置306に達したことが検出されると(ステップS123でYES)、制御部500は第2の読取部102Bにおいて当該原稿の裏面を読み取るための動作を開始すると判断し、ステップS125で駆動制御部502は第2の読取部102Bの読取機構を駆動させ、第2の読取部102Bで搬送されてきた原稿の読取動作を開始させる。
【0090】
制御部500は、センサSE1からのセンサ信号の入力が終了すると、すなわち、搬送された原稿の後端がセンサSE1位置に通過したことが検出されると(ステップS127でYES)、ステップS129で制御部500に含まれる図示しない第2のタイマをスタートさせ、原稿後端のセンサSE1位置を通過した時点からの時間経過を計時する。計時される、原稿後端のセンサSE1位置を通過した時点からの時間経過は、タイマ値t2で表わされる。
【0091】
タイマ値t2が、センサSE1位置から第1の読取部102Aの読取位置211までの距離L1を原稿が進む時間に相当するL1/Vに達すると、すなわち、読取位置211を原稿後端が通過したことが検出されると(ステップS131でYES)、制御部500は第1の読取部102Aでの当該原稿の読取動作を終了すると判断し、ステップS133で駆動制御部502は読取機構の駆動を終了させる。その後、ステップS135で第1の読取部102Aの清掃動作に関する第1の清掃シーケンスが実行される。
【0092】
続いて、タイマ値t2が、センサSE1位置から第2の読取部102Bの読取位置306までの距離L2を原稿が進む時間に相当するL2/Vに達すると、すなわち、読取位置306を原稿後端が通過したことが検出されると(ステップS123でYES)、制御部500は第2の読取部102Bでの当該原稿の読取動作を終了すると判断し、ステップS139で駆動制御部502は読取機構の駆動を終了させる。その後、ステップS141で第2の読取部102Bの清掃動作に関する第2の清掃シーケンスが実行される。
【0093】
原稿トレイ200に次の原稿が積載されている場合(ステップS143でYES)、制御部500はステップS145で原稿のページ数を表わす変数nを1インクリメントした後に、次の原稿についての上記ステップS113〜S141までの動作を繰り返す。そして、原稿トレイ200に積載されたすべての原稿についての動作が終了すると(ステップS143でNO)、制御部500は一連の動作を終了する。
【0094】
上記ステップS135の第1の読取部102Aでの清掃動作についての第1の清掃シーケンス、およびステップS141の第2の読取部102Bでの清掃動作についての第2の清掃シーケンスについては、さらに図13,図14のフローチャートを参照して説明する。それぞれの回転体310A,310B近傍には、図11に示される、センサSE2,センサSE3(センサ312)が備えられており、制御部500に含まれる図示しないCPUに接続されている。センサSE2,SE3は、それぞれ、回転体310A,310Bがホームポジションであることを検出してセンサ信号をCPUに入力する。制御部500はセンサ信号に基づいて回転体310A,310Bがホームポジションであることを検出することができる。
【0095】
図13を参照して、第1の清掃シーケンスにおいては、処理対象の原稿のページ数が3の倍数である場合に(ステップS201でYES)、制御部500は第1の読取部102Aの清掃動作を実行すると判断し、ステップS203で駆動制御部502が回転体310Aの駆動機構であるモータ234Aを駆動させる。これにより、ホームポジションで待機していた回転体310Aは回転を開始し、清掃部材によって第1の読取部102Aの読取ガラス215が清掃される。
【0096】
その後、回転体310A近傍のセンサSE2からセンサ信号の入力を受け付けると、すなわち、回転の後にホームポジションに戻ったことが検出されると(ステップS205でYES)、制御部500は第1の読取部102Aの清掃動作を終了すると判断し、ステップS207で駆動制御部502が回転体310Aの駆動機構であるモータ234Aの駆動を終了させる。
【0097】
第1の清掃シーケンスにおいては、処理対象の原稿のページ数が3の倍数でない場合には(ステップS201でNO)、一連の清掃動作が行なわれない。
【0098】
図14を参照して、第2の清掃シーケンスにおいては、ステップS139で第2の読取部102Bでの読取動作が終了すると制御部500は第2の読取部102Bの清掃動作を実行すると判断し、ステップS301で駆動制御部502が回転体310Bの駆動機構であるモータ234Bを駆動させる。これにより、ホームポジションで待機していた回転体310Bは回転を開始し、清掃部材によって第2の読取部102Bの読取ガラス302が清掃される。
【0099】
その後、回転体310B近傍のセンサSE3からセンサ信号の入力を受け付けると、すなわち、回転の後にホームポジションに戻ったことが検出されると(ステップS303でYES)、制御部500は第2の読取部102Bの清掃動作を終了すると判断し、ステップS305で駆動制御部502が回転体310Bの駆動機構であるモータ234Bの駆動を終了させる。
【0100】
第1の実施の形態にかかる画像読取装置100において以上の動作が行なわれることで、第1の読取部102Aでは3枚の原稿読取で1回の割合で清掃動作が行なわれ、第2の読取部102Bでは1枚の原稿読取ごとに清掃動作が行なわれる。さらに、片面読取モードのときには第2の読取部102Bの清掃動作が行なわれない。また、低分解能読取モードのときには第2の読取部102Bの清掃頻度が第1の読取部102Aでの清掃頻度と同じとされる。これにより、トータルの清掃回数を抑え、読取ガラスの耐久性を確保することができる。
【0101】
発明者は、先の実験と同様に、上述の紙A〜紙Fの6種類の上質紙を原稿として用いて第1の実施の形態にかかる画像読取装置100にてそれぞれ500枚ずつ搬送して読取らせ、用紙ごとに第1の読取部102A(CCD)と第2の読取部102B(CIS)とのそれぞれの筋状のノイズの発生頻度を算出した。このときの原稿搬送速度Vは約280[mm/s]、センサSE1位置から読取位置211までの距離が約50[mm]、センサSE1位置から読取位置306までの距離が約90[mm]であった。
【0102】
この実験の結果、図15の棒グラフに表わされたように、第1の読取部102A(CCD)での筋ノイズの発生頻度と第2の読取部102B(CIS)での筋ノイズの発生頻度との差異が、図6の実験結果より大幅に減縮されたことがわかった。また、筋ノイズの発生頻度10%を目標レベルに設定すると、第1の読取部102A(CCD)において3枚の原稿読取で1回の割合で清掃動作が実行されても、いずれの紙種においても筋ノイズの発生頻度が目標レベル以下であることがわかった。これにより、第1の実施の形態にかかる画像読取装置100の動作によって、読取ガラスの耐久性を確保しつつ第1の読取部102A、第2の読取部102Bの両方の読取画像の品質を同程度に確保することができ、かつ、それらの品質を目標レベルとすることができることが検証された。
【0103】
なお、第2の読取部102Bの清掃動作の頻度モードとして、1枚の原稿読取ごとに清掃動作が行なわれる第1のモードと、第1の読取部102Aと同様の3枚の原稿読取で1回の割合で清掃動作が行なわれる第2のモードとの2種類のモードが用意されて、必要に応じて頻度モードが切り替えられる構成であってもよい。この場合、制御部500は、上述の動作のうち、読取モードが両面読取モードでありかつ低分解能読取モードである場合には、第2の読取部102Bにおいて上述の第2のモードでの頻度モードで清掃動作を行なうよう制御することができる。
【0104】
このようにすることによっても、CIS側の清掃能力の向上と読取ガラスの耐久性の確保との両立を図ることが可能となる。
【0105】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態として、画像読取装置100では、清掃動作における回転体の回転速度を調整することによって第2の読取部102B(CIS)側の清掃能力を第1の読取部102Aの清掃能力より高める。
【0106】
ここで、清掃部材を備えた回転体の回転速度と清掃能力との関係について、発明者はタグチメソッドによる評価を行ない、その結果として図16に示されるような回転速度とSN比との関係が得られた。タグチメソッドにおいてはSN比の高い方が性能の安定性が高いことを示しており、図16の結果より回転体の回転速度が遅い方のSN比が高く、清掃能力が高いことが示されている。
【0107】
この理由として、次のように考えられる。すなわち、清掃部材の紙粉に与える圧接力をN、清掃部材と紙粉との間の摩擦係数をμB、読取ガラス面と紙粉との間の摩擦係数をμgとすると、図17に示されるように、読取ガラス面上の紙粉に清掃部材が接触することで、紙粉には、清掃部材の清掃動作方向(図17においては右向き)に力F(=μBN)と、清掃動作方向と逆向き(図17においては左向き)に力F’(=μgN)とが作用する。力Fは紙粉を読取ガラス面上から排除する力であり、力F’は紙粉を読取ガラス面上に保持する力である。従って、力Fが力F’よりも大なる場合(F>F’)には紙粉は読取ガラス面上から排除され、力Fが力F’よりも小なる場合(F<F’)には紙粉は読取ガラス面上から排除されずに保持される。
【0108】
ここで、読取ガラス面と紙粉との間の摩擦係数μgは停止のための条件であるために安定しているが、清掃部材と紙粉との間の摩擦係数μBと圧接力Nとは動作を伴う条件であるために安定していない。すなわち、圧接力Nについては、限定された範囲でのみ作用すること、および清掃部材の振動などによって容易に変化すること、によって、圧接力Nは安定していない。また、清掃部材と紙粉との間の摩擦係数μBについては、清掃部材による清掃動作の速度が速くなると清掃部材と紙粉との間が動摩擦状態となり、スリップが発生しやすくなるため、清掃部材と紙粉との間の摩擦係数μBは安定していない。従って、清掃部材によって紙粉に作用する力Fは清掃部材の速度によって低下しやすく、清掃部材の速度、すなわち回転体の回転速度が高くなると清掃部材と紙粉との間にスリップ現象が発生し、力Fが低下する。このため、力Fが力F’よりも小さくなり、紙粉は読取ガラス面上から排除されずに保持されることにつながる。
【0109】
第2の読取部102Bの回転体310Bの回転速度V2を遅くすることで第2の読取部102Bの清掃能力は高まるが、清掃動作中は第2の読取部102Bでの読取動作が行なわれなくなるため画像読取装置100での読取生産性が低下することになる。従って、90%の頻度で使用される片面読取モードにおいては第1の読取部102A(CCD)側の回転体310Aの回転速度V1を高速度として生産性を確保し、両面読取モードにおいては第2の読取部102B(CIS)の回転体310Bの回転速度V2を第1の読取部102A(CCD)側の回転体310Aの回転速度V1よりも遅くして原稿間隔を拡大することで、CIS側の清掃能力の向上と生産性の確保との両立を図ることが可能となる。すなわち、以上の検証に基づいて、第2の実施の形態にかかる画像読取装置100では、モータ234Bよる第2の読取部102Bの回転体310Bの回転速度V2が、モータ234Aよる第1の読取部102Aの回転体310Aの回転速度V1よりも遅く設定される。回転速度V1,V2の具体例としては、たとえばV1=300[mm/s]、V2=150[mm/s]程度が挙げられる。このようにそれぞれの回転体の回転速度を設定することで、第2の読取部102B(CIS)側の清掃能力を第1の読取部102A(CCD)側の清掃能力より高めることができ、表面と裏面とで読取画像の品質の差異を抑えることができる。
【0110】
または、第2の実施の形態にかかる画像読取装置100での清掃動作においても、第1の実施の形態における動作と同様に、読取モードに応じて第2の読取部102B(CIS)での清掃動作を切り替えることができる。一例としては、第1の読取部102Aのみで画像読取を行なう片面読取モードのときには第2の読取部102Bが動作しないため、第2の読取部102Bの清掃動作を行なわない。他の例としては、ファクシミリやスキャンモードなどの低容量な画像ファイルを得るためのモードである低分解能読取モードのときには紙粉による1ドット程度の筋ノイズは画像処理によって間引かれて目立たなくなるため、第2の読取部102Bの回転体310Bの回転速度を第1の読取部102Aの回転体310Aの回転速度と同じとする。
【0111】
この場合、第2の実施の形態にかかる画像読取装置100でも、図11および図12〜図14のフローチャートを用いて説明された第1の実施の形態にかかる画像読取装置100での動作と同様の動作が行なわれる。すなわち、読取動作が開始されると制御部500において読取モードが特定されて、読取モードが片面読取モードである場合には(ステップS101でYES)、第2の読取部102B側の清掃動作が行なわれない。また、読取モードが低分解能読取モードである場合には(ステップS103でYES)、通常の清掃シーケンスを含んだ低分解能読取シーケンスが実行される。
【0112】
読取モードが両面読取モードであり、かつ高解像度読取モードである場合には(ステップS101でNO,かつS103でNO)、図12のフローチャートに示されたそれぞれのタイミングで第1の読取部102Aおよび第2の読取部102Bにおいて清掃動作が行なわれる。その際、第2の実施の形態にかかる画像読取装置100では、第2の読取部102B(CIS)の回転体310Bの回転速度が第1の読取部102A(CCD)の回転体310Aの回転速度よりも遅い。
【0113】
第2の実施の形態にかかる画像読取装置100において以上の動作が行なわれることで、CIS側の清掃能力の向上と読取生産性の確保との両立を図ることが可能となる。
【0114】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態として、画像読取装置100では、第1の読取部102Aの回転体310Aに備えられる清掃部材と、第2の読取部102Bの回転体310Bに備えられる清掃部材とを異ならせることによって第2の読取部102B(CIS)側の清掃能力を第1の読取部102Aの清掃能力より高める。
【0115】
すなわち、ブラシ状の清掃部材は、剛性が高い方が読取ガラス表面に確実に接触するため清掃能力を高めることができる。そこで、第3の実施の形態にかかる画像読取装置100では、第2の読取部102B(CIS)側の清掃部材の太さおよび密度を、第1の読取部102A(CCD)側の清掃部材のそれよりも高いものとする。具体例としては、第1の読取部102A(CCD)側の清掃部材については、毛1本当たりの太さが2[D(デニール)]、毛の密度が240[kf/inch2]のものを用い、第2の読取部102B(CIS)側の清掃部材については、太さが4[D]、密度が180[kf/inch2]のものを用いるものとする。このような清掃部材を用いることで、第2の読取部102B(CIS)側の清掃能力を第1の読取部102A(CCD)側の清掃能力より高めることができ、表面と裏面とで読取画像の品質の差異を抑えることができる。
【0116】
一方で、第2の読取部102B側で太さおよび密度の高い清掃部材を用いて清掃動作が行なわれることで、先述のようにガラス表面をより摩擦するように作用し、コーティングの剥離や微小な傷の発生を生じる原因になる。そのため、読取ガラスの耐久性を確保する観点からは、特に太さおよび密度の高い清掃部材を用いた清掃動作は極力少ない方が好ましい。そこで、第3の実施の形態にかかる画像読取装置100での清掃動作では、第1の実施の形態における動作と同様に、読取モードに応じて第2の読取部102B(CIS)の清掃動作を切り替えることができる。一例としては、第1の読取部102Aのみで画像読取を行なう片面読取モードのときには第2の読取部102Bが動作しないため、第2の読取部102Bの清掃動作を行なわない。
【0117】
第3の実施の形態にかかる画像読取装置100でも、図11および図12〜図14のフローチャートを用いて説明された第1の実施の形態にかかる画像読取装置100での動作と同様の動作が行なわれる。すなわち、読取動作が開始されると制御部500において読取モードが特定されて、読取モードが片面読取モードである場合には(ステップS101でYES)、第2の読取部102B側の清掃動作が行なわれない。
【0118】
読取モードが両面読取モードでありである場合には(ステップS101でNO)、図12のフローチャートに示されたそれぞれのタイミングで第1の読取部102Aおよび第2の読取部102Bにおいて清掃動作が行なわれる。その際、第3の実施の形態にかかる画像読取装置100では、第2の読取部102B(CIS)側で第1の読取部102A(CCD)側よりも太さおよび密度の高い清掃部材を用いて清掃動作が行なわれる。
【0119】
第3の実施の形態にかかる画像読取装置100において以上の動作が行なわれることで、CIS側の清掃能力の向上と読取ガラスの耐久性の確保との両立を図ることが可能となる。
【0120】
なお、第2の読取部102Bに、上述の太さおよび密度の高い清掃部材を備えた第1の回転体と、第1の読取部102A側と同様の清掃部材を備えた第2の回転体との2つの回転体が備えられ、必要に応じて用いる回転体が切り替えられる構成であってもよい。すなわち、第2の読取部102Bにおいて第1の回転体と第2の回転体との位置が可変であり、かつ、それらとモータ234Bとの接続が可変であってもよい。この場合、制御部500は、上述の動作のうち、読取モードが両面読取モードでありかつ低分解能読取モードである場合に、第2の読取部102Bにおいて上述の第2の回転体を用いて清掃動作を行なうよう制御することができる。
【0121】
このようにすることによっても、CIS側の清掃能力の向上と読取ガラスの耐久性の確保との両立を図ることが可能となる。
【0122】
[変形例]
以上の第1の実施の形態から第3の実施の形態では、清掃動作の実施回数の調整、回転体の回転速度の調整、および清掃部材の調整、をそれぞれ行なうことで第1の読取部102A(CCD)側よりも第2の読取部102B(CIS)側の清掃能力を高め、表面と裏面とで読取画像の品質の差異を抑えるものとしている。しかしながら、変形例として、画像読取装置100においてこれら3つの実施の形態にかかる動作および構成のうちの少なくとも2つが組み合わされていてもよい。
【0123】
このようにすることによって、表面と裏面とで読取の品質の差異を抑えつつ、読取ガラスの耐久性の確保や、読取生産性の確保を図ることが可能となる。
【0124】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0125】
31 清掃部材、32 白基準面、100 画像読取装置、101 ADF部、102A 第1の読取部、102B 第2の読取部、200 原稿トレイ、201A,201A’ ピックアップローラ、201B 対向部材,捌きローラ、201C 前捌き部材,前捌き板、206 光源、207 ミラー群、208 レンズ、209 CCDセンサ、211 読取位置、212 搬送ローラ、214 排出トレイ、215 読取ガラス、217 通紙センサ、234A,234B モータ、301 光源、302 読取ガラス、303 CMOSセンサ、304 ガイド、306 読取位置、310A,310B 回転体、312,SE1〜SE3 センサ、331 スプロケット、332 出力用スプロケット、333 タイミングベルト、500 制御部、501 画像処理部、502 駆動制御部、600 メモリ、700 画像形成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を一枚ずつ搬送するための搬送手段と、
前記搬送された原稿を、前記搬送手段での搬送経路上の第1の読取位置に設けられた第1の透明部材を介して光学的に読取るための第1の読取手段と、
前記第1の読取位置に設けられた前記第1の透明部材を清掃するための第1の清掃手段と、
前記搬送された原稿を、前記搬送手段での搬送経路上であって、前記第1の読取位置よりも下流側の第2の読取位置に設けられた第2の透明部材を介して光学的に読取るための第2の読取手段と、
前記第2の読取位置に設けられた前記第2の透明部材を清掃するための第2の清掃手段とを備え、
前記第2の清掃手段は前記第1の清掃手段よりも清掃能力が高いことを特徴とする、画像読取装置。
【請求項2】
原稿を搬送するための搬送手段と、
積載された複数の原稿の内から一枚を前記搬送手段に投入するためのピックアップローラおよび前記ピックアップローラに対向する部材からなる投入手段と、
前記搬送された原稿を、前記搬送手段での搬送経路上であって、前記ピックアップローラ側の原稿面に対応した搬送経路上の第1の読取位置に設けられた第1の透明部材を介して光学的に読取るための第1の読取手段と、
前記第1の読取位置に設けられた前記第1の透明部材を清掃するための第1の清掃手段と、
前記搬送された原稿を、前記搬送手段での搬送経路上であって、前記ピックアップローラに対向する部材側の原稿面に対応した搬送経路上の第2の読取位置に設けられた第2の透明部材を介して光学的に読取るための第2の読取手段と、
前記第2の読取位置に設けられた前記第2の透明部材を清掃するための第2の清掃手段とを備え、
前記第2の清掃手段は前記第1の清掃手段よりも清掃能力が高いことを特徴とする、画像読取装置。
【請求項3】
前記ピックアップローラに対向する部材は、前記ピックアップローラによる搬送方向と逆向きに原稿との間に摩擦力を生じさせる部材である、請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記ピックアップローラに対向する部材は、前記ピックアップローラの回転方向と逆向きに回転するローラである、請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記第1の読取手段はCCD(Charged Coupled Device)を含み、前記第2の読取手段はCIS(Contact Image Sensor)を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記第1の清掃手段および前記第2の清掃手段はそれぞれ清掃部材を有し、前記第1および前記第2の透明部材上で前記清掃部材を移動させることによって前記第1および前記第2の透明部材を清掃し、
前記第2の清掃手段での前記清掃部材の移動速度が前記第1の清掃手段での前記清掃部材の移動速度よりも遅い、請求項1〜5のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記第1の清掃手段における清掃頻度よりも前記第2の清掃手段における清掃頻度の方が高い、請求項1〜5のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記第1の清掃手段の駆動機構と前記第2の清掃手段の駆動機構とを制御するための第1の制御手段をさらに備え、
前記第1の制御手段は、画像読取モードに応じて前記第2の清掃手段における清掃頻度を切り替える、請求項7に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記第1の制御手段は、画像読取モードが低解像度モードである場合には前記第2の清掃手段における清掃頻度を前記第1の清掃手段における清掃頻度と同じとし、高解像度モードである場合には前記第2の清掃手段における清掃頻度を前記第1の清掃手段における清掃頻度よりも高くする、請求項8に記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記第1の清掃手段および前記第2の清掃手段はそれぞれ複数の要素からなる集合体である清掃部材を有し、
前記第1の清掃手段における前記集合体の密度よりも前記第2の清掃手段における前記集合体の密度の方が高い、請求項1〜5のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項11】
前記第1の清掃手段および前記第2の清掃手段はそれぞれ剛性を有した清掃部材を有し、
前記第1の清掃手段における前記清掃部材の剛性よりも前記第2の清掃手段における前記清掃部材の剛性の方が高い、請求項1〜5のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項12】
前記第2の清掃手段は、前記第1の清掃手段と同等の清掃部材である第1の清掃部材と、前記第1の清掃手段よりも前記集合体の密度または剛性が高い第2の清掃部材とを有し、
前記第2の清掃手段における清掃部材の切替を制御するための第1の制御手段をさらに備え、
前記第1の制御手段は、画像読取モードに応じて前記第2の清掃手段における清掃部材を切り替える、請求項10または11に記載の画像読取装置。
【請求項13】
前記第1の制御手段は、画像読取モードが低解像度モードである場合には前記第2の清掃手段で用いる清掃部材を前記第1の清掃部材とし、高解像度モードである場合には前記第2の清掃手段で用いる清掃部材を前記第2の清掃部材とする、請求項12に記載の画像読取装置。
【請求項14】
前記第1の清掃手段の駆動機構と前記第2の清掃手段の駆動機構とを制御するための第2の制御手段をさらに備え、
前記第2の制御手段は、画像読取モードに応じて前記第2の清掃手段における清掃動作の実行を制御する、請求項1〜13のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項15】
前記第2の制御手段は、画像読取モードが前記原稿の面のうちの前記第1の読取手段側の面のみを読取る片面読取モードである場合には前記第2の清掃手段における清掃動作を実行させず、前記第1の読取手段側および前記第2の読取手段側の両面を読取る両面読取モードである場合には前記第2の清掃手段における清掃動作を実行させる、請求項14に記載の画像読取装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の画像読取装置を有する、画像形成装置。
【請求項17】
原稿を一枚ずつ搬送するための搬送手段と、
前記搬送された原稿を光学的に読取るための読取装置での読取位置に対応した、前記搬送手段での搬送経路上の第1の読取位置に設けられた第1の透明部材を清掃するための第1の清掃手段と、
前記搬送された原稿を、前記搬送手段での搬送経路上であって、前記第1の読取位置よりも下流側の第2の読取位置に設けられた第2の透明部材を介して光学的に読取るための読取手段と、
前記第2の読取位置に設けられた前記第2の透明部材を清掃するための第2の清掃手段とを備え、
前記第2の清掃手段は前記第1の清掃手段よりも清掃能力が高いことを特徴とする、自動原稿搬送装置。
【請求項18】
原稿を搬送するための搬送手段と、
積載された複数の原稿の内から一枚を前記搬送手段に投入するためのピックアップローラおよび前記ピックアップローラに対向する部材からなる投入手段と、
前記搬送された原稿を光学的に読取るための読取装置での読取位置に対応した、前記搬送手段での搬送経路上であって、前記ピックアップローラ側の原稿面に対応した搬送経路上の第1の読取位置に設けられた第1の透明部材を清掃するための第1の清掃手段と、
前記搬送された原稿を、前記搬送手段での搬送経路上であって、前記ピックアップローラに対向する部材側の原稿面に対応した搬送経路上の第2の読取位置に設けられた第2の透明部材を介して光学的に読取るための読取手段と、
前記第2の読取位置に設けられた前記第2の透明部材を清掃するための第2の清掃手段とを備え、
前記第2の清掃手段は前記第1の清掃手段よりも清掃能力が高いことを特徴とする、自動原稿搬送装置。
【請求項19】
前記ピックアップローラに対向する部材は、前記ピックアップローラによる搬送方向と逆向きに原稿との間に摩擦力を生じさせる部材である、請求項18に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項20】
前記ピックアップローラに対向する部材は、前記ピックアップローラの回転方向と逆向きに回転するローラである、請求項18に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項21】
前記読取手段はCIS(Contact Image Sensor)を含む、請求項17〜20のいずれかに記載の自動原稿搬送装置。
【請求項22】
前記第1の清掃手段および前記第2の清掃手段はそれぞれ清掃部材を有し、前記第1および前記第2の透明部材上で前記清掃部材を移動させることによって前記第1および前記第2の透明部材を清掃し、
前記第2の清掃手段での前記清掃部材の移動速度が前記第1の清掃手段での前記清掃部材の移動速度よりも遅い、請求項17〜21のいずれかに記載の自動原稿搬送装置。
【請求項23】
前記第1の清掃手段における清掃頻度よりも前記第2の清掃手段における清掃頻度の方が高い、請求項17〜21のいずれかに記載の自動原稿搬送装置。
【請求項24】
前記第1の清掃手段の駆動機構と前記第2の清掃手段の駆動機構とを制御するための第1の制御手段をさらに備え、
前記第1の制御手段は、画像読取モードに応じて前記第2の清掃手段における清掃頻度を切り替える、請求項23に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項25】
前記第1の制御手段は、画像読取モードが低解像度モードである場合には前記第2の清掃手段における清掃頻度を前記第1の清掃手段における清掃頻度と同じとし、高解像度モードである場合には前記第2の清掃手段における清掃頻度を前記第1の清掃手段における清掃頻度よりも高くする、請求項24に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項26】
前記第1の清掃手段および前記第2の清掃手段はそれぞれ複数の要素からなる集合体である清掃部材を有し、
前記第1の清掃手段における前記集合体の密度よりも前記第2の清掃手段における前記集合体の密度の方が高い、請求項17〜21のいずれかに記載の自動原稿搬送装置。
【請求項27】
前記第1の清掃手段および前記第2の清掃手段はそれぞれ剛性を有した清掃部材を有し、
前記第1の清掃手段における前記清掃部材の剛性よりも前記第2の清掃手段における前記清掃部材の剛性の方が高い、請求項17〜21のいずれかに記載の自動原稿搬送装置。
【請求項28】
前記第2の清掃手段は、前記第1の清掃手段と同等の清掃部材である第1の清掃部材と、前記第1の清掃手段よりも前記集合体の密度または剛性が高い第2の清掃部材とを有し、
前記第2の清掃手段における清掃部材の切替を制御するための第1の制御手段をさらに備え、
前記第1の制御手段は、画像読取モードに応じて前記第2の清掃手段における清掃部材を切り替える、請求項26または27に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項29】
前記第1の制御手段は、画像読取モードが低解像度モードである場合には前記第2の清掃手段で用いる清掃部材を前記第1の清掃部材とし、高解像度モードである場合には前記第2の清掃手段で用いる清掃部材を前記第2の清掃部材とする、請求項28に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項30】
前記第1の清掃手段の駆動機構と前記第2の清掃手段の駆動機構とを制御するための第2の制御手段をさらに備え、
前記第2の制御手段は、画像読取モードに応じて前記第2の清掃手段における清掃動作の実行を制御する、請求項17〜29のいずれかに記載の自動原稿搬送装置。
【請求項31】
前記第2の制御手段は、画像読取モードが前記原稿の面のうちの前記読取装置側の面のみを読取る片面読取モードである場合には前記第2の清掃手段における清掃動作を実行させず、前記読取装置側および前記読取手段側の両面を読取る両面読取モードである場合には前記第2の清掃手段における清掃動作を実行させる、請求項30に記載の自動原稿搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−166664(P2011−166664A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30041(P2010−30041)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】