画像読取装置、画像読取方法および画像読取のためのコンピュータプログラム
【課題】読取対象である媒体上に形成された画像をより確実に読み取る。
【解決手段】読取対象である媒体MS上の特定位置RFに形成された読取対象画像MKを読み取る画像読取装置は、媒体MSを搬送方向に搬送して媒体MSを表す媒体画像を取得する。画像読取装置は、取得された媒体画像から、媒体MSの複数箇所EF,EBのそれぞれについて、搬送方向に対する媒体MSの傾き角θf,θbを算出する傾き角算出部と、複数箇所EF,EBのそれぞれの位置および傾き角θf,θbとに基づいて、特定位置RFに対応する媒体画像上の読取位置ARを設定する読取位置設定部と、媒体画像上の読取位置から読取対象画像MKを読み取る画像読取部とを備えている。
【解決手段】読取対象である媒体MS上の特定位置RFに形成された読取対象画像MKを読み取る画像読取装置は、媒体MSを搬送方向に搬送して媒体MSを表す媒体画像を取得する。画像読取装置は、取得された媒体画像から、媒体MSの複数箇所EF,EBのそれぞれについて、搬送方向に対する媒体MSの傾き角θf,θbを算出する傾き角算出部と、複数箇所EF,EBのそれぞれの位置および傾き角θf,θbとに基づいて、特定位置RFに対応する媒体画像上の読取位置ARを設定する読取位置設定部と、媒体画像上の読取位置から読取対象画像MKを読み取る画像読取部とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、媒体上に形成された画像の読取を行う画像読取技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータへの入力手段として、紙等の帳票(「媒体」とも呼ぶ)上に鉛筆等で記入されたマークを光学的に読み取る光学式マーク読取装置(OMR:Optical Mark Reader)が使用されている。OMRは、帳票を搬送するとともに、搬送中に帳票からの反射光をリニアイメージセンサで受けることにより、帳票の反射率分布を表すイメージデータを取得する。OMRは、このようにして取得したイメージデータを解析することにより、帳票に記入されたマークを読み取る。
【0003】
このように、帳票を搬送することによりイメージデータを取得する際、搬送方向に対して帳票が傾いている(「スキュー」と呼ばれる)と、イメージデータ中におけるマークの記入位置が搬送方向に変化する。そこで、1枚の帳票ごとに、その傾きを検出して、検出した傾きに応じてマークの記入位置を特定することが行われている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−67247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、帳票が搬送中に蛇行あるいは回転した場合、帳票の傾きを特定することができない。そのため、従来のOMRでは、帳票の搬送状態によっては、マークの記入位置が正確に特定されず、帳票に記入されたマークの読取精度が低下する虞があった。なお、この問題は、OMRに限らず、媒体上の特定の位置に形成された画像を読み取るための種々の画像読取装置に共通する問題であった。
【0006】
そこで、本発明は、媒体上に形成された画像をより確実に読み取ることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
読取対象である媒体上の特定位置に形成された読取対象画像を読み取る画像読取装置であって、前記媒体を搬送方向に搬送して前記媒体を表す媒体画像を取得する媒体画像取得部と、前記媒体画像から、前記媒体の複数箇所のそれぞれについて、前記搬送方向に対する前記媒体の傾き角を算出する傾き角算出部と、前記媒体に対する前記複数箇所の位置と、前記複数箇所のそれぞれにおける傾き角とに基づいて、前記特定位置に対応する前記媒体画像上の読取位置を設定する読取位置設定部と、前記媒体画像上の前記読取位置から前記読取対象画像を読み取る画像読取部とを備える画像読取装置。
【0009】
この適用例によれば、媒体の複数箇所の位置と、媒体画像から算出された複数箇所の傾き角に基づいて、媒体上の特定位置に対応する読取位置が設定される。そのため、媒体の搬送状態によらず、より確実に読取対象画像を読み取ることが可能となる。
【0010】
[適用例2]
適用例1記載の画像読取装置であって、前記複数箇所は、前記媒体の前記搬送方向の前側と後側とにおいて予め設定された前記媒体上の位置である
画像読取装置。
【0011】
通常、搬送状態による媒体の傾きの変化は、搬送方向の前側と後側との間で最も大きくなる。この適用例では、前側と後側とにおいて設定された複数箇所の傾き角に基づいて読取位置の設定が行われる。そのため、読取対象画像の読取精度を維持したまま、より簡便な方法で読取対象画像を読み取ることが可能となる。
【0012】
[適用例3]
適用例2記載の画像読取装置であって、前記複数箇所は、前記媒体の前記前側と前記後側との辺であり、前記傾き角算出部は、前記媒体の前記前側と前記後側との辺の方向と、前記搬送方向に直交する方向とのなす角度を傾き角とする画像読取装置。
【0013】
媒体が蛇行あるいは回転した場合でも、一般に、媒体画像上における媒体の前側の辺と後側の辺との歪みは小さい。そのため、傾き角を算出する複数箇所を媒体の前側と後側との辺とし、当該箇所における辺の方向と、搬送方向に直交する方向とのなす角度とすることにより、より正確に媒体の傾き角を算出することができる。
【0014】
[適用例4]
適用例2または3記載の画像読取装置であって、前記読取位置設定部は、前記前側と前記後側とに設定された前記複数箇所のそれぞれの位置および傾き角と、前記媒体に対する前記特定位置の前記搬送方向における位置とに基づいて前記特定位置における前記媒体の傾き角を算出し、該傾き角に基づいて前記読取位置を設定する画像読取装置。
【0015】
この適用例によれば、媒体の傾きが徐々に変化していく場合、読取位置の設定に使用される傾き角を実際の媒体の傾き角により近づけることができる。そのため、読取対象画像の読取をより確実に行うことが可能となる。
【0016】
[適用例5]
適用例1ないし3のいずれか記載の画像読取装置であって、前記読取位置設定部は、前記媒体画像を前記複数箇所のそれぞれに対応する複数の分割領域に分割し、前記複数の分割領域における前記読取位置を対応する前記複数箇所のそれぞれの傾き角に基づいて設定する画像読取装置。
【0017】
この適用例によれば、搬送中に媒体が蛇行や回転した場合においても、分割領域ごとに読取位置の設定に使用される傾き角が設定できる。そのため、より確実に読取対象画像を読み取ることが可能となる。
【0018】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、画像読取装置、画像読取方法、それらの装置および方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0020】
A.第1実施例:
図1は、第1実施例としてのマーク読取装置の構成を示す概略構成図である。マーク読取装置100は、紙等の帳票(媒体)上に鉛筆等を用いて記入されたマークを読み取るための装置である。本実施例のマーク読取装置100は、制御部200と、画像入力機構300とを備えている。制御部200は、CPU210、ROM220、RAM230、外部インタフェース240、および入出力ポート250を有するコンピュータとして構成されている。
【0021】
CPU210は、ROM220あるいはRAM230に格納されたプログラムを実行することにより、画像入力部212および画像処理部214としての機能を実現する。なお、画像入力部212および画像処理部214の具体的な機能については、後述する。CPU210は、入出力ポート250を介して画像入力機構300との間でデータの授受を行い、外部インタフェース240を介して図示しない外部機器との間でデータの授受を行う。
【0022】
入出力ポート250に接続された画像入力機構300は、イメージセンサ310と搬送機構320とを有している。イメージセンサ310は、マークが記入された帳票上の線状の領域(検出領域)からの反射光を受光し、検出領域の色の濃さ(濃度)の分布を表す線状の画像データ(線画像)を出力するリニアイメージセンサである。搬送機構320は、帳票を搬送する機構である。
【0023】
制御部200の画像入力部212は、搬送機構320を制御して帳票を搬送するとともに、イメージセンサ310が出力する線画像を蓄積する。具体的には、画像入力部212は、搬送機構320を制御して、帳票を搬送する。そして、帳票を所定の長さ搬送するごとに、画像入力部212は、イメージセンサ310が出力する線画像を蓄積する。画像入力部212は、このように帳票を搬送方向に走査することにより、濃度の2次元的な分布を表すイメージデータ(面画像)を取得する。
【0024】
画像処理部214は、画像入力部212により取得された面画像から、マークが記入されている領域(記入欄)に相当する読取領域の画像を切り出す。次いで、画像処理部214は、切り出した画像を解析して、帳票への記入内容を特定する。画像処理部214により特定された帳票の記入内容は、外部インタフェース240を介して外部機器に供給される。
【0025】
図2は、画像入力機構300の構成を示す説明図である。画像入力機構300は、イメージセンサ310と、光源330と、搬送路下地340と、搬送機構320(図1)としての4つの搬送ローラ322a〜322dとを有している。マークが記入された帳票MSは、搬送ローラ322a〜322dが回転することにより、一点鎖線で示す搬送路CTPに沿って搬送方向に搬送される。なお、画像入力機構300は、搬送機構320として、帳票を画像入力機構300に取り込むためのフィーダや、他の搬送ローラ等を有しているが、図2ではその図示を省略している。
【0026】
光源330は、搬送路CTPに向かって光を射出する。光源330から射出された光は、帳票MS、あるいは、搬送路下地340により反射される。イメージセンサ310は、搬送方向に直交する線状の検出領域LDAからの反射光を受光する。搬送路下地340は、帳票MSの下地(未記入部分)よりも反射率が低いため、検出領域LDAの位置に帳票MSがかかっていない場合、イメージセンサ310が出力する線画像の全画素は、搬送路下地340の反射率に相当する濃度値を有する画素となる。
【0027】
図3は、マーク読取装置100(図1)によりマークの読み取りが行われる帳票MSの一例を示す説明図である。帳票MSは、搬送ローラ322a〜322d(図2)が回転することにより、帳票MSの縦方向(列方向)にほぼ沿って図の上方(F方向)に搬送される。図3の帳票MSには、10個のタイミングマークTMが、帳票MSの左側(L方向側)の辺に沿って列方向に配置されている。帳票MSには、また、各タイミングマークTMにそれぞれ対応する6つの記入欄RFが設けられている。6つの記入欄RFは、予め定められた列ピッチpc間隔で列方向に直交する行方向に配置されている。最も左側の記入欄RFは、その中心が帳票MSの左端から左マージンmlだけ離れた位置に配置されている。
【0028】
これらの記入欄RFには、鉛筆などによりマークMKが記入される。本実施例では、帳票MSの下地は、白色となっている。但し、下地の色は、タイミングマークTM、マークMK、および搬送路下地340のいずれとも反射率が異なっている色であれば、必ずしも白色でなくともよい。
【0029】
図4は、マーク読取装置100(図1)によるマーク読取処理の流れを示すフローチャートである。このマーク読取処理は、マーク読取装置100の起動に伴って実行が開始される。
【0030】
ステップS110において、CPU210(図1)は、帳票MSが検出されたか否かを判断する。具体的には、イメージセンサ310(図2)が出力する線画像に、帳票MSの下地の反射率に相当する画素(白色画素)、すなわち、濃度が所定の閾値よりも低い画素が含まれているか否かを判断する。線画像に白色画素が含まれている場合、帳票MSが検出されたと判断され、処理はステップS120に進む。一方、線画像に白色画素が含まれていない場合、帳票MSが検出されていないと判断される。そして、線画像に白色画素が含まれるようになるまで、ステップS110が繰り返し実行される。
【0031】
ステップS120において、画像入力部212は、イメージセンサ310から出力される線画像を蓄積し、面画像を生成する。線画像の蓄積は、検出領域LDAに帳票が存在している間、すなわち、線画像に白色画素が含まれている間、継続して行われる。
【0032】
図5は、ステップS120において取得された面画像ISの一例を示す説明図である。図5の例では、帳票MSが一定の角度θ0の傾きを保ったまま搬送されている。そのため、面画像ISのうち、帳票MSに相当する領域の画像(帳票画像)は、搬送方向から紙面に向かって反時計回り(以下、単に「反時計回り」と呼び、時計回りについても同様に呼ぶ)に角度θ0だけずれている。なお、以下では、帳票画像を帳票MSとも呼ぶ。また、帳票MS上に形成されているタイミングマークTM、記入欄RF、および、マークMKに相当する画像を、それぞれタイミングマークTM、記入欄RF、および、マークMKとも呼ぶ。
【0033】
図4のステップS130では、画像処理部214は、面画像IS上にマークを読み取るための読取領域ARを設定する。図5に示すように、読取領域ARは、面画像ISに対して傾いていない矩形の領域として設定される。そのため、面画像ISから読取領域ARを切り出す処理をより容易に行うことができる。なお、具体的な読取領域ARの設定方法については、後述する。
【0034】
図5の例では、帳票MSが傾いた状態で搬送されている。そのため、搬送方向に直交する方向、すなわち、面画像ISの横方向(以下、単に「横方向」とも呼ぶ)と記入欄RFの配列方向(すなわち、行方向)とが角度θ0だけずれている。そのため、読取領域ARは、タイミングマークTMから右方(R方向)に行くに従って上方(搬送方向)にずれた位置に設定される。
【0035】
図4のステップS140では、画像処理部214が、ステップS130において設定されたマークの読取領域ARの画像を解析して、読取領域AR内にマークが記入されているか否かを判断する。マークが記入されているか否かについての判断結果は、外部インタフェース240を介して外部機器に出力される。ステップS140におけるマークの有無の判断の後、処理はステップS110に戻され、ステップS110〜S140が繰り返し実行される。
【0036】
図6は、画像処理部214により読取領域AR内のマークの有無が判定される様子を示す説明図である。図6の例では、読取領域ARは、縦12画素、横30画素の矩形の領域となっている。図6に示すように、マークMKが記入されている場合、読取領域ARの画像には濃度が高い黒色の画素(ハッチングで示す)が存在する。そこで、画像処理部214は、読取領域ARの画像において、濃度が所定の閾値よりも高い画素(黒色画素)の数を算出する。画像処理部214は、読取領域AR全体の画素数(領域内画素数)に対する算出された黒色画素数の比率が所定の基準値よりも高い場合、マークMKが記入されていると判断する。なお、本実施例の画像処理部214は、領域内画素数に対する黒色画素数の比率に基づいてマークMKが記入されているか否かを判断しているが、他の方法によってマークMKが記入されているか否かを判断することも可能である。マークが記入されているか否かは、例えば、読取領域ARの全画素の濃度の積分値に基づいて判断することも可能である。
【0037】
このように、マーク読取装置100では、画像入力機構300から取得された帳票画像から読取領域ARの画像を切り出し、切り出した画像を解析することにより帳票MSに記入されたマークMKの読み取りが行われる。なお、本実施例では、読取領域ARを搬送方向に対して傾いていない矩形とすることで、読取領域AR内の画像を変形することなく解析を行っているが、読取領域ARの形状を適宜変更することもできる。この場合、読取領域AR内の画像は必要に応じて変形される。但し、変形処理によりマークMKの像がぼける虞を低減することができる点で、搬送方向に対して傾いていない矩形の領域を読取領域ARとするのが好ましい。
【0038】
図7は、図4のステップS130において実行される読取領域設定処理の流れを示すフローチャートである。図8は、読取領域ARの設定が行われる様子を示す説明図である。
【0039】
ステップS210において、画像処理部214は、帳票MSの前端EFにおける傾きθfを算出する。前端EFにおける傾きθf(以下、「前側傾き角θf」とも呼ぶ)は、例えば、帳票MSが検出された際の白色画素の位置Xf0から、所定の距離L1,L2だけ横方向にずれた横基準位置Xf1,Xf2間の距離ΔXf(=Xf2−Xf1)と、これらの横基準位置Xf1,Xf2において、それぞれ白色画素が検出される最前端の位置Yf1,Yf2間の距離ΔYf(=Y2−Y1)とから以下の式(1)により算出することができる。
【0040】
θf=tan-1(ΔYf/ΔXf) …(1)
【0041】
式(1)から明らかなように、前側傾き角θfは、帳票MSの傾きが時計回りである場合には正の値となり、反時計回りである場合には負の値となる。帳票MSの傾きの方向と、前側傾き角θfとの関係は、必ずしもこの限りでない。すなわち、傾きが時計回りである場合に前側傾き角θfが負となり、反時計回りである場合に前側傾き角θfが正となるようにしても良い。但し、この場合、後述する読取領域ARの位置の設定における縦方向の位置は、本実施例と反対の方向に設定される。
【0042】
なお、横基準位置Xf1,Xf2は、帳票MSが検出された際の白色画素の位置Xf0が面画像ISの右側(R方向側)にある場合には、当該位置Xf0よりも左側(L方向側)に設定される。一方、帳票MSが検出された際の白色画素の位置Xf0が面画像ISの左側にある場合には、当該位置Xf0よりも右側に設定される。
【0043】
前側傾き角θfを算出する際に、面画像ISの上端から所定の距離の間に白色画像が検出されなかった場合には、距離L1を小さくすることにより横基準位置Xf1をより内側に設定して前端EFの検出を行うのが好ましい。そして、距離L1が所定の下限値以下である場合においても白色画素が検出されなかった場合には、処理を中断するのがより好ましい。
【0044】
なお、前側傾き角θfは、他の方法によって求めることも可能である。例えば、横基準位置Xf1,Xf2を、面画像ISの横方向の両端からそれぞれ所定の距離だけ内側に設定し、上述のように前側傾き角θfを求めることも可能である。また、面画像ISから帳票MSの前端EFの2つの頂点の位置を検出し、検出した2つの頂点の位置に基づいて前側傾き角θfを算出することも可能である。さらに、前端EFと横方向とのなす角度を用いずに、前端付近における帳票MSの右側(R方向側)もしくは左側(L方向側)の辺の方向と、搬送方向とのなす角度を前側傾き角θfとすることも可能である。
【0045】
図7のステップS220において、画像処理部214は、帳票MSの後端EBにおける傾きθbを算出する。後端EBにおける傾きθb(以下、「後側傾き角θb」とも呼ぶ)は、前側傾き角θfと同様に、横基準位置間の距離と、横基準位置における白色画像の検出位置に基づいて算出することができる。
【0046】
上述のように、図8の例では、帳票MSは、反時計回りに一定の角度θ0で傾いた状態で搬送されている。そのため、ステップS210およびS220において、前側傾き角θfと後側傾き角θbは、いずれも−θ0と算出される。すなわち、帳票MSの前端と後端との2箇所における傾き角は、それぞれ−θ0と算出される。
【0047】
図7のステップS230において、画像処理部214は、タイミングマークTMを検出する。タイミングマークTMは、例えば、灰色画素に隣接する黒色画素の領域として検出することができる。なお、灰色画素、すなわち、搬送路下地340に対応する画素は、面画像ISのうちの帳票MSよりも外側の領域に存在する。
【0048】
タイミングマークTMが検出されると、ステップS240において、画像処理部214は、検出された個々のタイミングマークTMに対する補正角θを算出する。補正角θは、搬送方向(縦方向)における帳票MSの左端の頂点間の距離Ltと、帳票MSの左上端からタイミングマークTMの左端の中央(読取基準位置)までの距離Luと、前端EFおよび後端EBの傾きθf,θbとを用いて、以下の式(3)により算出される。
【0049】
θ=θf−Lu/Lt×(θb−θf) …(3)
【0050】
ステップS250において、画像処理部214は、読取基準位置に基づいて、面画像ISに対して傾いていない矩形の読取領域ARを設定する。読取領域ARは、読取基準位置から延び、補正角θだけ時計回りに傾いた直線(基準線)BL上で、読取基準位置から右方向に距離LXi(iは、1以上の整数)だけ離れた位置(読取位置)が中心となるように配置される。
【0051】
距離LXiは、それぞれ、対応する記入欄RFと、帳票MSの左端との間の傾きがない場合における距離である。帳票が傾いた場合、帳票MSの左端から記入欄RFまでの距離は、傾きの角度θが大きくなるに従って短くなる。しかしながら、帳票MSの左端から記入欄RFまでの距離の変化量は、角度θが小さい場合には十分小さくなる。そのため、読取領域ARの横方向の位置を傾きの角度θによらずに設定しても、通常の傾きの程度であれば、読取領域と記入欄RFとのずれを十分小さく抑えることができる。但し、距離LXiを補正角θに応じて変更するものとしてもよい。
【0052】
図8の例では、左端(L方向端)の読取領域ARは、読取基準位置から左マージンmlだけ右方向(R方向)に離れた位置に配置されている。そして、6つの読取領域ARは、横方向に列ピッチpc間隔で配置されている。すなわち、図8の例では、距離LXiは、以下の式(4)で表される値が使用される。
【0053】
LXi=ml+(i−1)×pc …(4)
【0054】
一方、読取領域ARは、基準線BL上に配置されている。そのため、図8に示すように、読取領域ARの位置は、帳票MSが傾くことにより搬送方向(縦方向)に大きくずれる記入欄RFの位置にほぼ一致する。
【0055】
ステップS250(図7)において読取領域ARが設定された後、処理は図4のマーク読取処理に戻される。そして、上述のように、ステップS140において、読取領域ARの画像からマークMKの有無が判定される。
【0056】
図9は、帳票MSの傾きが搬送中に連続的に変化している場合に読取領域ARが設定される様子を示す説明図である。図9に示す面画像ISaでは、帳票MSの傾きが搬送中に変化しているため、前側傾き角θfと後側傾き角θbとが異なっている。そのため、タイミングマークTMごとに上記の式(3)で算出される補正角θが互いに異なった値に設定され、基準線BLaの傾きは個々のタイミングマークごとに異なっている。これにより、個々のタイミングマークTMに対して決定される読取領域ARは、タイミングマークTMの縦方向の位置にかかわらず、記入欄RFをカバーする領域に設定される。
【0057】
図10は、第1の比較例において読取領域ARが設定される様子を示す説明図である。図10は、図9と同様に帳票MSの傾きが搬送中に変化している場合において、前側傾き角θfのみに基づいて設定した読取領域ARの配置を示している。第1の比較例では、タイミングマークTMから前側傾き角θfだけ傾いた基準線BLb上に読取領域ARが設定される。そのため、帳票MSの後端EB側のタイミングマークTMに対しては、読取領域ARが対応する記入欄RFから外れた位置に設定される。このように読取領域ARが記入欄RFから外れることにより、第1の比較例では、読取領域ARを切り出した画像を解析しても記入欄RFに記録されたマークが検出されない虞が生じる。
【0058】
図11は、第2の比較例において読取領域ARが設定される様子を示す説明図である。
図11は、図9と同様に帳票MSの傾きが搬送中に変化している場合において、後側傾き角θbのみに基づいて設定された読取領域ARの配置を示している。第2の比較例では、タイミングマークTMから後側傾き角θbだけ傾いた基準線BLc上に読取領域ARが設定される。そのため、帳票MSの前端EF側のタイミングマークTMに対しては、読取領域ARが対応する記入欄RFから外れた位置に設定される。このように、第2の比較例においても、第1の比較例と同様に、記入欄RFに記録されたマークが検出されない虞が生じる。
【0059】
これに対し、第1実施例では、帳票MSの前端EFと後端EBとの2辺についてその傾きθf,θbを算出し、算出された2辺の傾きθf,θbに基づいて読取領域ARを設定する。そのため、図9に示すように、帳票MSの傾きが搬送中に変化した場合においても、記入欄RFをカバー可能な読取領域ARを設定することができる。このように、第1実施例では、帳票MSの傾きが搬送中に変化した場合においても、より確実にマークの有無を検出することが可能となる。
【0060】
なお、第1実施例では、個々のタイミングマークTMに対して別個に補正角θを算出しているが、必ずしも全てのタイミングマークTMに対して別個に補正角θを算出しなくても良い。例えば、帳票MSを搬送方向に複数の領域に分割し、分割された各領域ごとに算出された補正角θを用いて読取領域ARを設定しても良い。帳票MSが3つ以上の領域に分割された場合、中間の分割領域に対応する補正角θは、例えば、タイミングマークTMの位置関係や、横方向の帳票MSの辺の方向に基づいて決定される。
【0061】
また、第1実施例では、タイミングマークTMを検出し、検出されたタイミングマークTMに対応する補正角θを算出して読取領域ARを設定しているが、タイミングマークTMを用いずに読取領域ARを設定することも可能である。ただし、マーク読取装置100が帳票MSにおける記入欄RFの配置に関する情報を持っていなくても読取領域ARが設定できる点で、タイミングマークTMを用いて読取領域ARを設定するのがより好ましい。
【0062】
タイミングマークTMを用いずに読取領域ARを設定する場合、読取領域ARの設定に使用される補正角θは、帳票MSの縦方向(図3)の長さと、記入欄RFの前端あるいは後端からの距離とに基づいて決定される。すなわち、読取領域ARの位置を決定するための記入欄RFにおける帳票の傾きは、搬送方向(すなわち、ほぼ帳票MSの縦方向)における帳票と当該記入欄RFの位置関係に基づいて決定される。
【0063】
B.第2実施例:
図12は、帳票MSの傾きが搬送中に不連続的に変化している場合に読取領域ARが設定される様子を示す説明図である。図12は、帳票MSの傾きが搬送中に1回だけ大きく変化している場合の面画像ISdを示している。第2実施例では、帳票MSを搬送方向に2つに分割し、分割された個々の領域ごとに読取領域ARを設定する。第2実施例において、画像処理部214は、面画像IScから帳票MSの傾きが変化した屈曲点VPを検出する。そして、屈曲点VPの前方(F方向)のタイミングマークTMに対しては、補正角θを前側傾き角θfに設定し、屈曲点VPの後方(B方向)のタイミングマークTMに対しては、補正角θを後側傾き角θbに設定する。このように補正角θを設定した後、第1実施例と同様に読取領域を設定することにより、図12に示すように記入欄RFをカバー可能な読取領域ARを設定することができる。
【0064】
屈曲点VPは、面画像ISdの縦方向の長さに対して所定の位置関係となるように設定された縦方向基準位置Y1〜Y4と、縦方向基準位置Y1〜Y4のそれぞれにおける帳票MSの左端(L方向端)PE1〜PE4の位置に基づいて決定される。具体的には、縦方向基準位置Y1〜Y4における帳票MSの左端PE1〜PE4のうち、前側(F方向側)の2点PE1,PE2を通る直線ELFと、後側(B方向側)の2点PE3,PE4を通る直線ELBとが求められる。そして、これらの2本の直線が交わる位置が屈曲点VPとなる。
【0065】
なお、4つの縦方向基準位置Y1〜Y4における左端PE1〜PE4のうち3つが直線上に存在する場合には、屈曲点VPが正確に求まらない。そのため、画像処理部214は、その直線から外れている左端に最も近い縦方向基準位置を当該左端に近づける。縦方向基準位置の変更の後、画像処理部214は、さらに左端の位置を求め、直線上に3つの左端が存在しなくなるまで、縦方向基準位置の変更を行う。このように、縦方向基準位置Y1〜Y4を繰り返し変更することにより、屈曲点VPを正確に求めることができる。なお、縦方向基準位置の変更量は、繰り返しを行うごとに小さくするのがより好ましい。
【0066】
縦方向基準位置は、他の方法により設定することも可能である。例えば、前側と後側との2つの左端位置(例えば、帳票MSの左前端、帳票MSの左後端)をとり、左前端および左後端とを結ぶ直線を2分する縦方向位置での左端と、左前端および左後端との位置関係に基づいて縦方向基準位置を求めることも可能である。
【0067】
また、帳票MSの左側の辺を複数の線分に分割し、傾きの差が所定の閾値以下の隣接する線分を結合することにより屈曲点VPを求めることも可能である。この場合、複数の屈曲点を求めることが可能になる。複数の屈曲点が求められた場合、補正角は線分の傾きに基づいて決定される。
【0068】
なお、第2実施例では、屈曲点VPの前方のタイミングマークTMに対しては、補正角θを前側傾き角θfに設定し、屈曲点VPの後方のタイミングマークTMに対しては、補正角θを後側傾き角θbに設定しているが、これらのタイミングマークTMに対する補正角θは、前側の直線ELFと、後側の直線ELBとのそれぞれの傾きに基づいて決定することも可能である。
【0069】
C.変形例:
なお、この発明は上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0070】
C1.変形例1:
上記各実施例では、本発明をマーク読取装置100に適用しているが、本発明は、一般に紙等の媒体上の特定の位置に形成された画像を読み取る種々の画像読取装置に適用することができる。本発明は、例えば、媒体上に印刷されたバーコードやQRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標)の読取装置や、光学式文字認識装置(OCR)等に適用することも可能である。
【0071】
C2.変形例2:
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1実施例としてのマーク読取装置の構成を示す概略構成図。
【図2】画像入力機構300の構成を示す説明図。
【図3】マーク読取装置によりマークの読み取りが行われる帳票MSの一例を示す説明図。
【図4】マーク読取装置によるマーク読取処理の流れを示すフローチャート。
【図5】ステップS120において取得された面画像の一例を示す説明図。
【図6】読取領域内のマークの有無が判定される様子を示す説明図。
【図7】図4のステップS130において実行される読取領域設定処理の流れを示すフローチャート。
【図8】読取領域の設定が行われる様子を示す説明図。
【図9】帳票の傾きが搬送中に連続的に変化している場合に読取領域が設定される様子を示す説明図。
【図10】第1の比較例において読取領域が設定される様子を示す説明図。
【図11】第2の比較例において読取領域が設定される様子を示す説明図。
【図12】帳票の傾きが搬送中に不連続的に変化している場合に読取領域が設定される様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0073】
100…マーク読取装置
200…制御部
210…CPU
212…画像入力部
214…画像処理部
220…ROM
230…RAM
240…外部インタフェース
250…入出力ポート
300…画像入力機構
310…イメージセンサ
320…搬送機構
322a〜322d…搬送ローラ
330…光源
340…搬送路下地
【技術分野】
【0001】
この発明は、媒体上に形成された画像の読取を行う画像読取技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータへの入力手段として、紙等の帳票(「媒体」とも呼ぶ)上に鉛筆等で記入されたマークを光学的に読み取る光学式マーク読取装置(OMR:Optical Mark Reader)が使用されている。OMRは、帳票を搬送するとともに、搬送中に帳票からの反射光をリニアイメージセンサで受けることにより、帳票の反射率分布を表すイメージデータを取得する。OMRは、このようにして取得したイメージデータを解析することにより、帳票に記入されたマークを読み取る。
【0003】
このように、帳票を搬送することによりイメージデータを取得する際、搬送方向に対して帳票が傾いている(「スキュー」と呼ばれる)と、イメージデータ中におけるマークの記入位置が搬送方向に変化する。そこで、1枚の帳票ごとに、その傾きを検出して、検出した傾きに応じてマークの記入位置を特定することが行われている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−67247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、帳票が搬送中に蛇行あるいは回転した場合、帳票の傾きを特定することができない。そのため、従来のOMRでは、帳票の搬送状態によっては、マークの記入位置が正確に特定されず、帳票に記入されたマークの読取精度が低下する虞があった。なお、この問題は、OMRに限らず、媒体上の特定の位置に形成された画像を読み取るための種々の画像読取装置に共通する問題であった。
【0006】
そこで、本発明は、媒体上に形成された画像をより確実に読み取ることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
読取対象である媒体上の特定位置に形成された読取対象画像を読み取る画像読取装置であって、前記媒体を搬送方向に搬送して前記媒体を表す媒体画像を取得する媒体画像取得部と、前記媒体画像から、前記媒体の複数箇所のそれぞれについて、前記搬送方向に対する前記媒体の傾き角を算出する傾き角算出部と、前記媒体に対する前記複数箇所の位置と、前記複数箇所のそれぞれにおける傾き角とに基づいて、前記特定位置に対応する前記媒体画像上の読取位置を設定する読取位置設定部と、前記媒体画像上の前記読取位置から前記読取対象画像を読み取る画像読取部とを備える画像読取装置。
【0009】
この適用例によれば、媒体の複数箇所の位置と、媒体画像から算出された複数箇所の傾き角に基づいて、媒体上の特定位置に対応する読取位置が設定される。そのため、媒体の搬送状態によらず、より確実に読取対象画像を読み取ることが可能となる。
【0010】
[適用例2]
適用例1記載の画像読取装置であって、前記複数箇所は、前記媒体の前記搬送方向の前側と後側とにおいて予め設定された前記媒体上の位置である
画像読取装置。
【0011】
通常、搬送状態による媒体の傾きの変化は、搬送方向の前側と後側との間で最も大きくなる。この適用例では、前側と後側とにおいて設定された複数箇所の傾き角に基づいて読取位置の設定が行われる。そのため、読取対象画像の読取精度を維持したまま、より簡便な方法で読取対象画像を読み取ることが可能となる。
【0012】
[適用例3]
適用例2記載の画像読取装置であって、前記複数箇所は、前記媒体の前記前側と前記後側との辺であり、前記傾き角算出部は、前記媒体の前記前側と前記後側との辺の方向と、前記搬送方向に直交する方向とのなす角度を傾き角とする画像読取装置。
【0013】
媒体が蛇行あるいは回転した場合でも、一般に、媒体画像上における媒体の前側の辺と後側の辺との歪みは小さい。そのため、傾き角を算出する複数箇所を媒体の前側と後側との辺とし、当該箇所における辺の方向と、搬送方向に直交する方向とのなす角度とすることにより、より正確に媒体の傾き角を算出することができる。
【0014】
[適用例4]
適用例2または3記載の画像読取装置であって、前記読取位置設定部は、前記前側と前記後側とに設定された前記複数箇所のそれぞれの位置および傾き角と、前記媒体に対する前記特定位置の前記搬送方向における位置とに基づいて前記特定位置における前記媒体の傾き角を算出し、該傾き角に基づいて前記読取位置を設定する画像読取装置。
【0015】
この適用例によれば、媒体の傾きが徐々に変化していく場合、読取位置の設定に使用される傾き角を実際の媒体の傾き角により近づけることができる。そのため、読取対象画像の読取をより確実に行うことが可能となる。
【0016】
[適用例5]
適用例1ないし3のいずれか記載の画像読取装置であって、前記読取位置設定部は、前記媒体画像を前記複数箇所のそれぞれに対応する複数の分割領域に分割し、前記複数の分割領域における前記読取位置を対応する前記複数箇所のそれぞれの傾き角に基づいて設定する画像読取装置。
【0017】
この適用例によれば、搬送中に媒体が蛇行や回転した場合においても、分割領域ごとに読取位置の設定に使用される傾き角が設定できる。そのため、より確実に読取対象画像を読み取ることが可能となる。
【0018】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、画像読取装置、画像読取方法、それらの装置および方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0020】
A.第1実施例:
図1は、第1実施例としてのマーク読取装置の構成を示す概略構成図である。マーク読取装置100は、紙等の帳票(媒体)上に鉛筆等を用いて記入されたマークを読み取るための装置である。本実施例のマーク読取装置100は、制御部200と、画像入力機構300とを備えている。制御部200は、CPU210、ROM220、RAM230、外部インタフェース240、および入出力ポート250を有するコンピュータとして構成されている。
【0021】
CPU210は、ROM220あるいはRAM230に格納されたプログラムを実行することにより、画像入力部212および画像処理部214としての機能を実現する。なお、画像入力部212および画像処理部214の具体的な機能については、後述する。CPU210は、入出力ポート250を介して画像入力機構300との間でデータの授受を行い、外部インタフェース240を介して図示しない外部機器との間でデータの授受を行う。
【0022】
入出力ポート250に接続された画像入力機構300は、イメージセンサ310と搬送機構320とを有している。イメージセンサ310は、マークが記入された帳票上の線状の領域(検出領域)からの反射光を受光し、検出領域の色の濃さ(濃度)の分布を表す線状の画像データ(線画像)を出力するリニアイメージセンサである。搬送機構320は、帳票を搬送する機構である。
【0023】
制御部200の画像入力部212は、搬送機構320を制御して帳票を搬送するとともに、イメージセンサ310が出力する線画像を蓄積する。具体的には、画像入力部212は、搬送機構320を制御して、帳票を搬送する。そして、帳票を所定の長さ搬送するごとに、画像入力部212は、イメージセンサ310が出力する線画像を蓄積する。画像入力部212は、このように帳票を搬送方向に走査することにより、濃度の2次元的な分布を表すイメージデータ(面画像)を取得する。
【0024】
画像処理部214は、画像入力部212により取得された面画像から、マークが記入されている領域(記入欄)に相当する読取領域の画像を切り出す。次いで、画像処理部214は、切り出した画像を解析して、帳票への記入内容を特定する。画像処理部214により特定された帳票の記入内容は、外部インタフェース240を介して外部機器に供給される。
【0025】
図2は、画像入力機構300の構成を示す説明図である。画像入力機構300は、イメージセンサ310と、光源330と、搬送路下地340と、搬送機構320(図1)としての4つの搬送ローラ322a〜322dとを有している。マークが記入された帳票MSは、搬送ローラ322a〜322dが回転することにより、一点鎖線で示す搬送路CTPに沿って搬送方向に搬送される。なお、画像入力機構300は、搬送機構320として、帳票を画像入力機構300に取り込むためのフィーダや、他の搬送ローラ等を有しているが、図2ではその図示を省略している。
【0026】
光源330は、搬送路CTPに向かって光を射出する。光源330から射出された光は、帳票MS、あるいは、搬送路下地340により反射される。イメージセンサ310は、搬送方向に直交する線状の検出領域LDAからの反射光を受光する。搬送路下地340は、帳票MSの下地(未記入部分)よりも反射率が低いため、検出領域LDAの位置に帳票MSがかかっていない場合、イメージセンサ310が出力する線画像の全画素は、搬送路下地340の反射率に相当する濃度値を有する画素となる。
【0027】
図3は、マーク読取装置100(図1)によりマークの読み取りが行われる帳票MSの一例を示す説明図である。帳票MSは、搬送ローラ322a〜322d(図2)が回転することにより、帳票MSの縦方向(列方向)にほぼ沿って図の上方(F方向)に搬送される。図3の帳票MSには、10個のタイミングマークTMが、帳票MSの左側(L方向側)の辺に沿って列方向に配置されている。帳票MSには、また、各タイミングマークTMにそれぞれ対応する6つの記入欄RFが設けられている。6つの記入欄RFは、予め定められた列ピッチpc間隔で列方向に直交する行方向に配置されている。最も左側の記入欄RFは、その中心が帳票MSの左端から左マージンmlだけ離れた位置に配置されている。
【0028】
これらの記入欄RFには、鉛筆などによりマークMKが記入される。本実施例では、帳票MSの下地は、白色となっている。但し、下地の色は、タイミングマークTM、マークMK、および搬送路下地340のいずれとも反射率が異なっている色であれば、必ずしも白色でなくともよい。
【0029】
図4は、マーク読取装置100(図1)によるマーク読取処理の流れを示すフローチャートである。このマーク読取処理は、マーク読取装置100の起動に伴って実行が開始される。
【0030】
ステップS110において、CPU210(図1)は、帳票MSが検出されたか否かを判断する。具体的には、イメージセンサ310(図2)が出力する線画像に、帳票MSの下地の反射率に相当する画素(白色画素)、すなわち、濃度が所定の閾値よりも低い画素が含まれているか否かを判断する。線画像に白色画素が含まれている場合、帳票MSが検出されたと判断され、処理はステップS120に進む。一方、線画像に白色画素が含まれていない場合、帳票MSが検出されていないと判断される。そして、線画像に白色画素が含まれるようになるまで、ステップS110が繰り返し実行される。
【0031】
ステップS120において、画像入力部212は、イメージセンサ310から出力される線画像を蓄積し、面画像を生成する。線画像の蓄積は、検出領域LDAに帳票が存在している間、すなわち、線画像に白色画素が含まれている間、継続して行われる。
【0032】
図5は、ステップS120において取得された面画像ISの一例を示す説明図である。図5の例では、帳票MSが一定の角度θ0の傾きを保ったまま搬送されている。そのため、面画像ISのうち、帳票MSに相当する領域の画像(帳票画像)は、搬送方向から紙面に向かって反時計回り(以下、単に「反時計回り」と呼び、時計回りについても同様に呼ぶ)に角度θ0だけずれている。なお、以下では、帳票画像を帳票MSとも呼ぶ。また、帳票MS上に形成されているタイミングマークTM、記入欄RF、および、マークMKに相当する画像を、それぞれタイミングマークTM、記入欄RF、および、マークMKとも呼ぶ。
【0033】
図4のステップS130では、画像処理部214は、面画像IS上にマークを読み取るための読取領域ARを設定する。図5に示すように、読取領域ARは、面画像ISに対して傾いていない矩形の領域として設定される。そのため、面画像ISから読取領域ARを切り出す処理をより容易に行うことができる。なお、具体的な読取領域ARの設定方法については、後述する。
【0034】
図5の例では、帳票MSが傾いた状態で搬送されている。そのため、搬送方向に直交する方向、すなわち、面画像ISの横方向(以下、単に「横方向」とも呼ぶ)と記入欄RFの配列方向(すなわち、行方向)とが角度θ0だけずれている。そのため、読取領域ARは、タイミングマークTMから右方(R方向)に行くに従って上方(搬送方向)にずれた位置に設定される。
【0035】
図4のステップS140では、画像処理部214が、ステップS130において設定されたマークの読取領域ARの画像を解析して、読取領域AR内にマークが記入されているか否かを判断する。マークが記入されているか否かについての判断結果は、外部インタフェース240を介して外部機器に出力される。ステップS140におけるマークの有無の判断の後、処理はステップS110に戻され、ステップS110〜S140が繰り返し実行される。
【0036】
図6は、画像処理部214により読取領域AR内のマークの有無が判定される様子を示す説明図である。図6の例では、読取領域ARは、縦12画素、横30画素の矩形の領域となっている。図6に示すように、マークMKが記入されている場合、読取領域ARの画像には濃度が高い黒色の画素(ハッチングで示す)が存在する。そこで、画像処理部214は、読取領域ARの画像において、濃度が所定の閾値よりも高い画素(黒色画素)の数を算出する。画像処理部214は、読取領域AR全体の画素数(領域内画素数)に対する算出された黒色画素数の比率が所定の基準値よりも高い場合、マークMKが記入されていると判断する。なお、本実施例の画像処理部214は、領域内画素数に対する黒色画素数の比率に基づいてマークMKが記入されているか否かを判断しているが、他の方法によってマークMKが記入されているか否かを判断することも可能である。マークが記入されているか否かは、例えば、読取領域ARの全画素の濃度の積分値に基づいて判断することも可能である。
【0037】
このように、マーク読取装置100では、画像入力機構300から取得された帳票画像から読取領域ARの画像を切り出し、切り出した画像を解析することにより帳票MSに記入されたマークMKの読み取りが行われる。なお、本実施例では、読取領域ARを搬送方向に対して傾いていない矩形とすることで、読取領域AR内の画像を変形することなく解析を行っているが、読取領域ARの形状を適宜変更することもできる。この場合、読取領域AR内の画像は必要に応じて変形される。但し、変形処理によりマークMKの像がぼける虞を低減することができる点で、搬送方向に対して傾いていない矩形の領域を読取領域ARとするのが好ましい。
【0038】
図7は、図4のステップS130において実行される読取領域設定処理の流れを示すフローチャートである。図8は、読取領域ARの設定が行われる様子を示す説明図である。
【0039】
ステップS210において、画像処理部214は、帳票MSの前端EFにおける傾きθfを算出する。前端EFにおける傾きθf(以下、「前側傾き角θf」とも呼ぶ)は、例えば、帳票MSが検出された際の白色画素の位置Xf0から、所定の距離L1,L2だけ横方向にずれた横基準位置Xf1,Xf2間の距離ΔXf(=Xf2−Xf1)と、これらの横基準位置Xf1,Xf2において、それぞれ白色画素が検出される最前端の位置Yf1,Yf2間の距離ΔYf(=Y2−Y1)とから以下の式(1)により算出することができる。
【0040】
θf=tan-1(ΔYf/ΔXf) …(1)
【0041】
式(1)から明らかなように、前側傾き角θfは、帳票MSの傾きが時計回りである場合には正の値となり、反時計回りである場合には負の値となる。帳票MSの傾きの方向と、前側傾き角θfとの関係は、必ずしもこの限りでない。すなわち、傾きが時計回りである場合に前側傾き角θfが負となり、反時計回りである場合に前側傾き角θfが正となるようにしても良い。但し、この場合、後述する読取領域ARの位置の設定における縦方向の位置は、本実施例と反対の方向に設定される。
【0042】
なお、横基準位置Xf1,Xf2は、帳票MSが検出された際の白色画素の位置Xf0が面画像ISの右側(R方向側)にある場合には、当該位置Xf0よりも左側(L方向側)に設定される。一方、帳票MSが検出された際の白色画素の位置Xf0が面画像ISの左側にある場合には、当該位置Xf0よりも右側に設定される。
【0043】
前側傾き角θfを算出する際に、面画像ISの上端から所定の距離の間に白色画像が検出されなかった場合には、距離L1を小さくすることにより横基準位置Xf1をより内側に設定して前端EFの検出を行うのが好ましい。そして、距離L1が所定の下限値以下である場合においても白色画素が検出されなかった場合には、処理を中断するのがより好ましい。
【0044】
なお、前側傾き角θfは、他の方法によって求めることも可能である。例えば、横基準位置Xf1,Xf2を、面画像ISの横方向の両端からそれぞれ所定の距離だけ内側に設定し、上述のように前側傾き角θfを求めることも可能である。また、面画像ISから帳票MSの前端EFの2つの頂点の位置を検出し、検出した2つの頂点の位置に基づいて前側傾き角θfを算出することも可能である。さらに、前端EFと横方向とのなす角度を用いずに、前端付近における帳票MSの右側(R方向側)もしくは左側(L方向側)の辺の方向と、搬送方向とのなす角度を前側傾き角θfとすることも可能である。
【0045】
図7のステップS220において、画像処理部214は、帳票MSの後端EBにおける傾きθbを算出する。後端EBにおける傾きθb(以下、「後側傾き角θb」とも呼ぶ)は、前側傾き角θfと同様に、横基準位置間の距離と、横基準位置における白色画像の検出位置に基づいて算出することができる。
【0046】
上述のように、図8の例では、帳票MSは、反時計回りに一定の角度θ0で傾いた状態で搬送されている。そのため、ステップS210およびS220において、前側傾き角θfと後側傾き角θbは、いずれも−θ0と算出される。すなわち、帳票MSの前端と後端との2箇所における傾き角は、それぞれ−θ0と算出される。
【0047】
図7のステップS230において、画像処理部214は、タイミングマークTMを検出する。タイミングマークTMは、例えば、灰色画素に隣接する黒色画素の領域として検出することができる。なお、灰色画素、すなわち、搬送路下地340に対応する画素は、面画像ISのうちの帳票MSよりも外側の領域に存在する。
【0048】
タイミングマークTMが検出されると、ステップS240において、画像処理部214は、検出された個々のタイミングマークTMに対する補正角θを算出する。補正角θは、搬送方向(縦方向)における帳票MSの左端の頂点間の距離Ltと、帳票MSの左上端からタイミングマークTMの左端の中央(読取基準位置)までの距離Luと、前端EFおよび後端EBの傾きθf,θbとを用いて、以下の式(3)により算出される。
【0049】
θ=θf−Lu/Lt×(θb−θf) …(3)
【0050】
ステップS250において、画像処理部214は、読取基準位置に基づいて、面画像ISに対して傾いていない矩形の読取領域ARを設定する。読取領域ARは、読取基準位置から延び、補正角θだけ時計回りに傾いた直線(基準線)BL上で、読取基準位置から右方向に距離LXi(iは、1以上の整数)だけ離れた位置(読取位置)が中心となるように配置される。
【0051】
距離LXiは、それぞれ、対応する記入欄RFと、帳票MSの左端との間の傾きがない場合における距離である。帳票が傾いた場合、帳票MSの左端から記入欄RFまでの距離は、傾きの角度θが大きくなるに従って短くなる。しかしながら、帳票MSの左端から記入欄RFまでの距離の変化量は、角度θが小さい場合には十分小さくなる。そのため、読取領域ARの横方向の位置を傾きの角度θによらずに設定しても、通常の傾きの程度であれば、読取領域と記入欄RFとのずれを十分小さく抑えることができる。但し、距離LXiを補正角θに応じて変更するものとしてもよい。
【0052】
図8の例では、左端(L方向端)の読取領域ARは、読取基準位置から左マージンmlだけ右方向(R方向)に離れた位置に配置されている。そして、6つの読取領域ARは、横方向に列ピッチpc間隔で配置されている。すなわち、図8の例では、距離LXiは、以下の式(4)で表される値が使用される。
【0053】
LXi=ml+(i−1)×pc …(4)
【0054】
一方、読取領域ARは、基準線BL上に配置されている。そのため、図8に示すように、読取領域ARの位置は、帳票MSが傾くことにより搬送方向(縦方向)に大きくずれる記入欄RFの位置にほぼ一致する。
【0055】
ステップS250(図7)において読取領域ARが設定された後、処理は図4のマーク読取処理に戻される。そして、上述のように、ステップS140において、読取領域ARの画像からマークMKの有無が判定される。
【0056】
図9は、帳票MSの傾きが搬送中に連続的に変化している場合に読取領域ARが設定される様子を示す説明図である。図9に示す面画像ISaでは、帳票MSの傾きが搬送中に変化しているため、前側傾き角θfと後側傾き角θbとが異なっている。そのため、タイミングマークTMごとに上記の式(3)で算出される補正角θが互いに異なった値に設定され、基準線BLaの傾きは個々のタイミングマークごとに異なっている。これにより、個々のタイミングマークTMに対して決定される読取領域ARは、タイミングマークTMの縦方向の位置にかかわらず、記入欄RFをカバーする領域に設定される。
【0057】
図10は、第1の比較例において読取領域ARが設定される様子を示す説明図である。図10は、図9と同様に帳票MSの傾きが搬送中に変化している場合において、前側傾き角θfのみに基づいて設定した読取領域ARの配置を示している。第1の比較例では、タイミングマークTMから前側傾き角θfだけ傾いた基準線BLb上に読取領域ARが設定される。そのため、帳票MSの後端EB側のタイミングマークTMに対しては、読取領域ARが対応する記入欄RFから外れた位置に設定される。このように読取領域ARが記入欄RFから外れることにより、第1の比較例では、読取領域ARを切り出した画像を解析しても記入欄RFに記録されたマークが検出されない虞が生じる。
【0058】
図11は、第2の比較例において読取領域ARが設定される様子を示す説明図である。
図11は、図9と同様に帳票MSの傾きが搬送中に変化している場合において、後側傾き角θbのみに基づいて設定された読取領域ARの配置を示している。第2の比較例では、タイミングマークTMから後側傾き角θbだけ傾いた基準線BLc上に読取領域ARが設定される。そのため、帳票MSの前端EF側のタイミングマークTMに対しては、読取領域ARが対応する記入欄RFから外れた位置に設定される。このように、第2の比較例においても、第1の比較例と同様に、記入欄RFに記録されたマークが検出されない虞が生じる。
【0059】
これに対し、第1実施例では、帳票MSの前端EFと後端EBとの2辺についてその傾きθf,θbを算出し、算出された2辺の傾きθf,θbに基づいて読取領域ARを設定する。そのため、図9に示すように、帳票MSの傾きが搬送中に変化した場合においても、記入欄RFをカバー可能な読取領域ARを設定することができる。このように、第1実施例では、帳票MSの傾きが搬送中に変化した場合においても、より確実にマークの有無を検出することが可能となる。
【0060】
なお、第1実施例では、個々のタイミングマークTMに対して別個に補正角θを算出しているが、必ずしも全てのタイミングマークTMに対して別個に補正角θを算出しなくても良い。例えば、帳票MSを搬送方向に複数の領域に分割し、分割された各領域ごとに算出された補正角θを用いて読取領域ARを設定しても良い。帳票MSが3つ以上の領域に分割された場合、中間の分割領域に対応する補正角θは、例えば、タイミングマークTMの位置関係や、横方向の帳票MSの辺の方向に基づいて決定される。
【0061】
また、第1実施例では、タイミングマークTMを検出し、検出されたタイミングマークTMに対応する補正角θを算出して読取領域ARを設定しているが、タイミングマークTMを用いずに読取領域ARを設定することも可能である。ただし、マーク読取装置100が帳票MSにおける記入欄RFの配置に関する情報を持っていなくても読取領域ARが設定できる点で、タイミングマークTMを用いて読取領域ARを設定するのがより好ましい。
【0062】
タイミングマークTMを用いずに読取領域ARを設定する場合、読取領域ARの設定に使用される補正角θは、帳票MSの縦方向(図3)の長さと、記入欄RFの前端あるいは後端からの距離とに基づいて決定される。すなわち、読取領域ARの位置を決定するための記入欄RFにおける帳票の傾きは、搬送方向(すなわち、ほぼ帳票MSの縦方向)における帳票と当該記入欄RFの位置関係に基づいて決定される。
【0063】
B.第2実施例:
図12は、帳票MSの傾きが搬送中に不連続的に変化している場合に読取領域ARが設定される様子を示す説明図である。図12は、帳票MSの傾きが搬送中に1回だけ大きく変化している場合の面画像ISdを示している。第2実施例では、帳票MSを搬送方向に2つに分割し、分割された個々の領域ごとに読取領域ARを設定する。第2実施例において、画像処理部214は、面画像IScから帳票MSの傾きが変化した屈曲点VPを検出する。そして、屈曲点VPの前方(F方向)のタイミングマークTMに対しては、補正角θを前側傾き角θfに設定し、屈曲点VPの後方(B方向)のタイミングマークTMに対しては、補正角θを後側傾き角θbに設定する。このように補正角θを設定した後、第1実施例と同様に読取領域を設定することにより、図12に示すように記入欄RFをカバー可能な読取領域ARを設定することができる。
【0064】
屈曲点VPは、面画像ISdの縦方向の長さに対して所定の位置関係となるように設定された縦方向基準位置Y1〜Y4と、縦方向基準位置Y1〜Y4のそれぞれにおける帳票MSの左端(L方向端)PE1〜PE4の位置に基づいて決定される。具体的には、縦方向基準位置Y1〜Y4における帳票MSの左端PE1〜PE4のうち、前側(F方向側)の2点PE1,PE2を通る直線ELFと、後側(B方向側)の2点PE3,PE4を通る直線ELBとが求められる。そして、これらの2本の直線が交わる位置が屈曲点VPとなる。
【0065】
なお、4つの縦方向基準位置Y1〜Y4における左端PE1〜PE4のうち3つが直線上に存在する場合には、屈曲点VPが正確に求まらない。そのため、画像処理部214は、その直線から外れている左端に最も近い縦方向基準位置を当該左端に近づける。縦方向基準位置の変更の後、画像処理部214は、さらに左端の位置を求め、直線上に3つの左端が存在しなくなるまで、縦方向基準位置の変更を行う。このように、縦方向基準位置Y1〜Y4を繰り返し変更することにより、屈曲点VPを正確に求めることができる。なお、縦方向基準位置の変更量は、繰り返しを行うごとに小さくするのがより好ましい。
【0066】
縦方向基準位置は、他の方法により設定することも可能である。例えば、前側と後側との2つの左端位置(例えば、帳票MSの左前端、帳票MSの左後端)をとり、左前端および左後端とを結ぶ直線を2分する縦方向位置での左端と、左前端および左後端との位置関係に基づいて縦方向基準位置を求めることも可能である。
【0067】
また、帳票MSの左側の辺を複数の線分に分割し、傾きの差が所定の閾値以下の隣接する線分を結合することにより屈曲点VPを求めることも可能である。この場合、複数の屈曲点を求めることが可能になる。複数の屈曲点が求められた場合、補正角は線分の傾きに基づいて決定される。
【0068】
なお、第2実施例では、屈曲点VPの前方のタイミングマークTMに対しては、補正角θを前側傾き角θfに設定し、屈曲点VPの後方のタイミングマークTMに対しては、補正角θを後側傾き角θbに設定しているが、これらのタイミングマークTMに対する補正角θは、前側の直線ELFと、後側の直線ELBとのそれぞれの傾きに基づいて決定することも可能である。
【0069】
C.変形例:
なお、この発明は上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0070】
C1.変形例1:
上記各実施例では、本発明をマーク読取装置100に適用しているが、本発明は、一般に紙等の媒体上の特定の位置に形成された画像を読み取る種々の画像読取装置に適用することができる。本発明は、例えば、媒体上に印刷されたバーコードやQRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標)の読取装置や、光学式文字認識装置(OCR)等に適用することも可能である。
【0071】
C2.変形例2:
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1実施例としてのマーク読取装置の構成を示す概略構成図。
【図2】画像入力機構300の構成を示す説明図。
【図3】マーク読取装置によりマークの読み取りが行われる帳票MSの一例を示す説明図。
【図4】マーク読取装置によるマーク読取処理の流れを示すフローチャート。
【図5】ステップS120において取得された面画像の一例を示す説明図。
【図6】読取領域内のマークの有無が判定される様子を示す説明図。
【図7】図4のステップS130において実行される読取領域設定処理の流れを示すフローチャート。
【図8】読取領域の設定が行われる様子を示す説明図。
【図9】帳票の傾きが搬送中に連続的に変化している場合に読取領域が設定される様子を示す説明図。
【図10】第1の比較例において読取領域が設定される様子を示す説明図。
【図11】第2の比較例において読取領域が設定される様子を示す説明図。
【図12】帳票の傾きが搬送中に不連続的に変化している場合に読取領域が設定される様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0073】
100…マーク読取装置
200…制御部
210…CPU
212…画像入力部
214…画像処理部
220…ROM
230…RAM
240…外部インタフェース
250…入出力ポート
300…画像入力機構
310…イメージセンサ
320…搬送機構
322a〜322d…搬送ローラ
330…光源
340…搬送路下地
【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象である媒体上の特定位置に形成された読取対象画像を読み取る画像読取装置であって、
前記媒体を搬送方向に搬送して前記媒体を表す媒体画像を取得する媒体画像取得部と、
前記媒体画像から、前記媒体の複数箇所のそれぞれについて、前記搬送方向に対する前記媒体の傾き角を算出する傾き角算出部と、
前記媒体に対する前記複数箇所の位置と、前記複数箇所のそれぞれにおける傾き角とに基づいて、前記特定位置に対応する前記媒体画像上の読取位置を設定する読取位置設定部と、
前記媒体画像上の前記読取位置から前記読取対象画像を読み取る画像読取部と
を備える画像読取装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像読取装置であって、
前記複数箇所は、前記媒体の前記搬送方向の前側と後側とにおいて予め設定された前記媒体上の位置である
画像読取装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像読取装置であって、
前記複数箇所は、前記媒体の前記前側と前記後側との辺であり、
前記傾き角算出部は、前記媒体の前記前側と前記後側との辺の方向と、前記搬送方向に直交する方向とのなす角度を傾き角とする
画像読取装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の画像読取装置であって、
前記読取位置設定部は、前記前側と前記後側とに設定された前記複数箇所のそれぞれの位置および傾き角と、前記媒体に対する前記特定位置の前記搬送方向における位置とに基づいて前記特定位置における前記媒体の傾き角を算出し、該傾き角に基づいて前記読取位置を設定する
画像読取装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか記載の画像読取装置であって、
前記読取位置設定部は、前記媒体画像を前記複数箇所のそれぞれに対応する複数の分割領域に分割し、前記複数の分割領域における前記読取位置を対応する前記複数箇所のそれぞれの傾き角に基づいて設定する
画像読取装置。
【請求項6】
読取対象である媒体上の特定位置に形成された読取対象画像を読み取る画像読取方法であって、
前記媒体を搬送方向に搬送して前記媒体を表す媒体画像を取得し、
前記媒体画像から、前記媒体の複数箇所のそれぞれについて、前記搬送方向に対する前記媒体の傾き角を算出し、
前記媒体に対する前記複数箇所の位置と、前記複数箇所のそれぞれにおける傾き角とに基づいて、前記特定位置に対応する前記媒体画像上の読取位置を設定し、
前記媒体画像上の前記読取位置から前記読取対象画像を読み取る
画像読取方法。
【請求項7】
読取対象である媒体上の特定位置に形成された読取対象画像を読み取るためのコンピュータプログラムであって、
前記媒体を搬送方向に搬送して前記媒体を表す媒体画像を取得する機能と、
前記媒体画像から、前記媒体の複数箇所のそれぞれについて、前記搬送方向に対する前記媒体の傾き角を算出する機能と、
前記媒体に対する前記複数箇所の位置と、前記複数箇所のそれぞれにおける傾き角とに基づいて、前記特定位置に対応する前記媒体画像上の読取位置を設定する機能と、
前記媒体画像上の前記読取位置から前記読取対象画像を読み取る機能と
をコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。
【請求項1】
読取対象である媒体上の特定位置に形成された読取対象画像を読み取る画像読取装置であって、
前記媒体を搬送方向に搬送して前記媒体を表す媒体画像を取得する媒体画像取得部と、
前記媒体画像から、前記媒体の複数箇所のそれぞれについて、前記搬送方向に対する前記媒体の傾き角を算出する傾き角算出部と、
前記媒体に対する前記複数箇所の位置と、前記複数箇所のそれぞれにおける傾き角とに基づいて、前記特定位置に対応する前記媒体画像上の読取位置を設定する読取位置設定部と、
前記媒体画像上の前記読取位置から前記読取対象画像を読み取る画像読取部と
を備える画像読取装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像読取装置であって、
前記複数箇所は、前記媒体の前記搬送方向の前側と後側とにおいて予め設定された前記媒体上の位置である
画像読取装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像読取装置であって、
前記複数箇所は、前記媒体の前記前側と前記後側との辺であり、
前記傾き角算出部は、前記媒体の前記前側と前記後側との辺の方向と、前記搬送方向に直交する方向とのなす角度を傾き角とする
画像読取装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の画像読取装置であって、
前記読取位置設定部は、前記前側と前記後側とに設定された前記複数箇所のそれぞれの位置および傾き角と、前記媒体に対する前記特定位置の前記搬送方向における位置とに基づいて前記特定位置における前記媒体の傾き角を算出し、該傾き角に基づいて前記読取位置を設定する
画像読取装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか記載の画像読取装置であって、
前記読取位置設定部は、前記媒体画像を前記複数箇所のそれぞれに対応する複数の分割領域に分割し、前記複数の分割領域における前記読取位置を対応する前記複数箇所のそれぞれの傾き角に基づいて設定する
画像読取装置。
【請求項6】
読取対象である媒体上の特定位置に形成された読取対象画像を読み取る画像読取方法であって、
前記媒体を搬送方向に搬送して前記媒体を表す媒体画像を取得し、
前記媒体画像から、前記媒体の複数箇所のそれぞれについて、前記搬送方向に対する前記媒体の傾き角を算出し、
前記媒体に対する前記複数箇所の位置と、前記複数箇所のそれぞれにおける傾き角とに基づいて、前記特定位置に対応する前記媒体画像上の読取位置を設定し、
前記媒体画像上の前記読取位置から前記読取対象画像を読み取る
画像読取方法。
【請求項7】
読取対象である媒体上の特定位置に形成された読取対象画像を読み取るためのコンピュータプログラムであって、
前記媒体を搬送方向に搬送して前記媒体を表す媒体画像を取得する機能と、
前記媒体画像から、前記媒体の複数箇所のそれぞれについて、前記搬送方向に対する前記媒体の傾き角を算出する機能と、
前記媒体に対する前記複数箇所の位置と、前記複数箇所のそれぞれにおける傾き角とに基づいて、前記特定位置に対応する前記媒体画像上の読取位置を設定する機能と、
前記媒体画像上の前記読取位置から前記読取対象画像を読み取る機能と
をコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−9283(P2010−9283A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167302(P2008−167302)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
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