説明

画像読取装置及び画像形成装置

【課題】鏡像反転の補正を不要とすると共に、原稿の向きを間違えにくくする。
【解決手段】固定原稿モードにおいて、原稿収容部59に収容された原稿に対して、画像読取部30を左から右方向に移動させながら原稿画像を読み取る。移動原稿モードにおいては、画像読取部30に対して、原稿を右から左方向に移動させながら原稿画像を読み取る。このように、固定原稿モード及び移動原稿モードにおいて、原稿画像を読み取る読み取り方向が同じであるため、鏡像反転の補正が不要である。また、原稿画像を上向きにして原稿が原稿台60に載置されるので、実際に原稿画像を見ながら原稿を原稿台60に載置でき、原稿の向きを間違えにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置としては、特許文献1に開示される画像読取り装置が公知である。特許文献1に開示される画像読取り装置では、固定読み時において、原稿台上に位置決め固定された原稿に対して走査ユニットを左から右に移動させながら画像面を読み取り、流し読み時において、位置決め配置された走査ユニットに対して原稿を右から左に移動させながら画像面を読み取る。
【0003】
すなわち、走査ユニットを固定して考えた場合、この走査ユニットに対する固定読み時の原稿、及び流し読み時の原稿の相対移動方向が同じであるので、鏡像補正用のメモリが不要であり、また、流し読みに先立つ走査ユニットの移動が不要となる。
【特許文献1】特開2002−94750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、鏡像反転の補正を不要とすると共に、原稿の向きを間違えにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る画像読取装置は、原稿画像を上向きにして原稿収容部に収容された原稿束から一枚ずつ分離搬送される原稿を、画像読取部に対して移動させて原稿画像を読み取る移動原稿モードと、原稿画像を上向きにして前記原稿収容部に収容された原稿に対して前記画像読取部を移動させて原稿画像を読み取ると共に、前記画像読取部が原稿画像を読み取る読取り方向が前記移動原稿モードと同じである固定原稿モードと、を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る画像読取装置は、請求項1の構成において、前記固定原稿モードにおける角度よりも前記移動原稿モードにおいて斜めに傾けられ、前記画像読取部が収容された筐体と、前記筐体上に形成され、前記画像読取部に対して移動した原稿が排出される排出部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る画像読取装置は、請求項1又は請求項2の構成において、前記原稿収容部に収容された原稿束から原稿を一枚ずつ分離搬送する搬送手段と、前記固定原稿モードにおいて、前記画像読取部が前記原稿の原稿画像を読み取り可能な読み取り位置へ前記原稿収容部を上昇させると共に、前記移動原稿モードにおいて、前記搬送手段が前記原稿を搬送可能な搬送位置へ前記原稿収容部を下降させる昇降手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る画像形成装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像読取装置と、前記画像読取装置で読み取られた画像に基づいて、記録媒体へ画像を記録する画像記録装置と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1の構成によれば、鏡像反転の補正が不要となると共に、原稿収容部に原稿を下向きに収容する構成に比して、原稿の向きを間違えにくい。
【0010】
本発明の請求項2の構成によれば、斜めに傾けられた筐体上に形成された排出部に原稿が排出されるので、排出された原稿の端部をそろえやすい。
【0011】
本発明の請求項3の構成によれば、読み取り位置と搬送位置との間の原稿の移動を原稿収容部の昇降により行うので、本構成を有していない場合に比して簡易な構成となる。
【0012】
本発明の請求項4の構成によれば、鏡像反転の補正が不要となると共に、原稿収容部に原稿を下向きに収容する構成に比して、原稿の向きを間違えにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0014】
(本実施形態に係る画像形成装置の構成)
まず、本実施形態に係る画像形成装置の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【0015】
本実施形態に係る画像形成装置100は、用紙等の記録媒体Pに画像を記録する画像記録装置110と、原稿を搬送すると共にその原稿の画像を読み取る画像読取装置10とを備えている。
【0016】
画像読取装置10は、画像形成装置100の上部に設けられ、画像記録装置110は、画像形成装置100の下部に設けられている。
【0017】
画像読取装置10は、原稿の画像を読み取り、その読み取った画像を画像信号に変換するようになっている。画像記録装置110は、画像読取装置10が変換した画像信号に基づいて記録媒体Pへ画像を記録するようになっている。
【0018】
ここで、本実施形態に係る画像記録装置110の構成について説明する。
【0019】
本実施形態に係る画像記録装置110は、図1に示すように、その下部に、記録媒体Pが収容された複数の記録媒体収容部120、121を備えている。
【0020】
記録媒体収容部120、121には、それぞれ、異なるサイズの記録媒体Pが収容されている。例えば、記録媒体収容部120には、B5サイズの記録媒体Pが収容され、記録媒体収容部121には、B4サイズの記録媒体Pが収容される。
【0021】
記録媒体収容部120、121の先端側(図1において右端側)の直上には、記録媒体Pの上面の先端側に接触して回転し、記録媒体収容部120、121から記録媒体Pを送り出す送出しロール126が配置されている。
【0022】
画像記録装置110内には、記録媒体収容部120、121の先端部から延出して、S字状に湾曲し、画像記録装置110の上部へ向かって延びる搬送路122が形成されている。
【0023】
この搬送路122に沿って、記録媒体の搬送方向の上流側から順に、記録媒体Pを挟持搬送する複数(例えば、6つ)の搬送ロール対164と、レジストロール168とが配置されている。
【0024】
記録媒体収容部121の上方には、記録媒体Pへ画像を記録する画像記録部130が配置されている。
【0025】
記録媒体収容部120、121に収容された記録媒体Pは、送出しロール126により送り出され、搬送ロール対164及びレジストロール168によって搬送路122を搬送されて画像記録部130へ送られる。
【0026】
画像記録部130は、記録媒体収容部120、121から送られてきた記録媒体Pに、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色トナーを用いてカラー画像を形成するようになっている。
【0027】
画像記録部130には、4つの感光体ドラム112が並んで回転可能に配設されている。各感光体ドラム112は、図示しない駆動部により、矢印Kの方向に回転する。
【0028】
各感光体ドラム112の左斜め下方には、帯電ローラ114が感光体ドラム112に接触するように配設されている。帯電ローラ114は、感光体ドラム112の表面を所定の電位に帯電する。
【0029】
帯電後、各感光体ドラム112の下方に配置された各露光ヘッド116から出射された光によって露光が行われ、画像読取装置10が変換した画像信号に応じた潜像が感光体ドラム112の表面に形成される。
【0030】
各感光体ドラム112の右斜め下方には、各色に対応した現像器118が配設されている。各色の現像器118の現像ローラ119には、所定の極性に帯電した各色トナーが保持されている。各感光体ドラム112の表面に形成された潜像は、現像ローラ119に現像バイアスを印加することで現像され各色のトナー像となる。
【0031】
4個の各感光体ドラム112にそれぞれ形成された各色のトナー像は、各感光体ドラム112の上方に配置された中間転写ベルト113上に第1転写ローラ115で転写され、中間転写ベルト113上に重畳されてフルカラーのトナー像となる。
【0032】
記録媒体収容部120、121から送り出されると共に搬送ロール対164で搬送された記録媒体Pは、レジストロール168により所定のタイミングで第2転写ローラ132と中間転写ローラ134との間に送られ、フルカラーのトナー像が記録媒体Pに転写される。なお、中間転写ローラ134側の記録媒体Pの面にトナー像は転写される。
【0033】
フルカラーのトナー像が転写された記録媒体Pは、定着器136に送られる。定着器136は熱と圧力とで記録媒体Pにトナー像を定着する。トナー像が定着された記録媒体Pは、排出ローラ142によって排紙トレイ140へ排出される。
【0034】
なお、中間転写ベルト113と記録媒体Pとにトナー像は全て転写されずに、一部は感光体ドラム112及び中間転写ベルト113に残留トナーとして残る。感光体ドラム112上の残留トナーはクリーニングロール144により除去され、中間転写ベルト113上の残留トナーはクリーニング装置138によって除去される。
(本実施形態に係る画像読取装置の構成)
次に、本実施形態に係る画像読取装置の構成を説明する。
【0035】
画像読取装置10は、図2、図3及び図4に示すように、原稿が収容される原稿収容部59と、原稿収容部59に収容された原稿束から原稿を一枚ずつ分離搬送する搬送手段としての搬送部20と、搬送部20によって搬送される原稿の原稿画像及び原稿収容部59に収容された原稿の原稿画像を読み取る画像読取部30と、を備えている。
【0036】
また、画像読取装置10は、画像読取部30に対して原稿を移動させて原稿画像を読み取る移動原稿モードと、原稿に対して画像読取部30を移動させて原稿画像を読み取る固定原稿モードと、を備えている。
【0037】
画像読取装置10では、移動原稿モードにおいて、搬送部20によって搬送される原稿の原稿画像が、画像読取部30により読み取られ、固定原稿モードにおいて、原稿収容部59に収容された原稿の原稿画像が、移動する画像読取部30により読み取られる。
【0038】
原稿収容部59は、原稿が載置される原稿台60を備えている。本実施形態では、原稿画像が形成された被読み取り面を上向きにした状態で原稿が原稿台60に載置され、原稿画像を上向きにして原稿が原稿収容部59に収容される構成となっている。画像読取部30が、原稿台60の上方に配置されており、上向きの原稿画像を画像読取部30が読み取る。
【0039】
なお、原稿収容部59には、原稿台60に載置された原稿の先端部が突き当たって原稿の先端部が揃えられる先端ガイド59Aが設けられている(図5参照)。また、原稿収容部59には、原稿台60に載置された原稿の幅方向端部に突き当てて、原稿の幅方向端部を揃えるサイドガイド(図示省略)が配置されている。このサイドガイドの位置により、原稿台60に載置された原稿の原稿幅を検出する検出センサが、原稿収容部59に設けられている。また、原稿収容部59には、原稿の原稿長を検出する検出センサが設けられている。さらに、原稿収容部59には、原稿が原稿台60に載置されている否かを検出する検出センサが設けられている。
【0040】
本実施形態に係る画像読取装置10は、原稿収容部59の原稿台60が、昇降可能に装置本体11に設けられている。原稿収容部59には、図5(A)及び図5(B)に示すように、原稿収容部59の原稿台60を昇降させる昇降手段の一例としての昇降装置62が設けられている。
【0041】
昇降装置62は、原稿台60の一端部を揺動中心として他端部を上下に揺動することにより、原稿台60を昇降する。本実施形態では、原稿収容部59から送り出される原稿の後端側を揺動中心として原稿の先端側が上下に揺動する構成となっている。
【0042】
具体的には、昇降装置62は、図5(A)に示すように、固定原稿モードにおいて、原稿収容部59に収容された原稿の原稿画像を画像読取部30が読み取り可能な読み取り位置へ原稿台60を上昇させる。この読み取り位置において、原稿台60は、例えば、水平とされる。
【0043】
さらに、昇降装置62は、図5(B)に示すように、移動原稿モードにおいて、搬送部20が原稿を搬送可能な搬送位置へ原稿台60を下降させる。この搬送位置において、原稿台60は、例えば、斜めに傾けられる。
【0044】
なお、図5(A)において、実線で示す原稿収容部59の位置が読み取り位置を示し、二点鎖線で示す原稿収容部59の位置が搬送位置を示す。図5(B)においては、実線で示す原稿収容部59の位置が搬送位置を示し、二点鎖線で示す原稿収容部59の位置が読み取り位置を示す。
【0045】
昇降装置62としては、例えば、原稿台60の底面に突き当てられたアームを備え、アームを駆動させ、原稿台60を押し上げて原稿台60を昇降させる構成とすることができる。
【0046】
なお、原稿台60の一端部を揺動中心として他端部が上下に揺動する構成に限られず、原稿台60の全体が上下動する構成であってもよい。
【0047】
本実施形態に係る画像読取装置10は、図2、図3及び図4に示すように、画像読取部30が筐体50に収容されている。筐体50の底面には、開口50Aが形成されており、この開口50Aには、光を透過する透過部材としての透明ガラス52がはめ込まれている。
【0048】
画像読取部30は、画像を取り込むためのフルレートキャリッジ36、フルレートキャリッジ36から得られた光学像を結像部へ導くハーフレートキャリッジ38を備えている。このフルレートキャリッジ36及びハーフレートキャリッジ38は、透明ガラス52に沿って移動する構成となっている。
【0049】
フルレートキャリッジ36には、原稿に光を照射する光源36A、原稿から得られた反射光を受光する第1ミラー36Bが設けられている。
【0050】
ハーフレートキャリッジ38には、第1ミラー36Bから得られた光を結像部へ導く第2ミラー38Aおよび第3ミラー38Bが備えられている。
【0051】
また、画像読取部30は、結像レンズを有する結像部としての縮小光学系39と、CCD(Charge Coupled Device)等からなる画像読取素子40とを備えている。縮小光学系39は、結像レンズにより、第3ミラー38Bから得られた光学像を光学的に縮小して画像読取素子40に結像する。
【0052】
画像読取素子40は、縮小光学系39によって結像された光学像を光電変換するようになっている。ここで、固定原稿モードにおいて、原稿収容部59に収容された原稿の画像を読み取る場合には、フルレートキャリッジ36とハーフレートキャリッジ38とが、2:1の割合で読取り方向(図2における矢印A方向)に移動する。このとき、フルレートキャリッジ36の光源36Aの光が原稿の被読み取り面に照射されると共に、その原稿からの反射光が第1ミラー36B、第2ミラー38A、および第3ミラー38Bの順に反射されて縮小光学系39に導かれる。縮小光学系39に導かれた光は、画像読取素子40の受光面に結像され、画像読取素子40に結像された光は、画像読取素子40により読み取られる。
【0053】
移動原稿モードにおいて、搬送部20で搬送される原稿の画像を読み取る場合は、フルレートキャリッジ36が搬送路22上の読み取り位置に移動し、フルレートキャリッジ36の下方を通過する原稿の画像が、画像読取部30によって読み取られる。
【0054】
画像読取部30が収容された筐体50は、原稿台60に対して開閉可能に取り付けられており、揺動軸50Bを揺動中心として揺動可能に装置本体11に支持されている。
【0055】
筐体50は、操作者により操作されて、固定原稿モード位置と、固定原稿モード位置の角度より傾けられた移動原稿モード位置に移動可能とされている。本実施形態では、筐体50を水平にした水平位置が固定原稿モード位置とされ、筐体50を斜めに傾けた傾斜位置が移動原稿モード位置とされる。
【0056】
また、画像読取装置10は、筐体50を移動原稿モード位置に固定する固定部(図示省略)を備えている。
【0057】
筐体50は、固定部に固定されることにより、移動原稿モード位置に維持される。筐体50は、固定部による固定が解除されることにより、筐体50の自重により固定原稿モード位置に移動すると共に、固定原稿モード位置と移動原稿モード位置との間を移動可能な状態となり、操作者の操作により固定原稿モード位置と移動原稿モード位置との間を移動する。
【0058】
また、筐体50は、固定原稿モード位置において、原稿台60に載せられた原稿を押させる押さえカバーとして機能する。すなわち、筐体50を原稿台60に対して開放して、原稿を原稿台60に載せ、筐体50を閉じて原稿が押さえられる。特に、厚みのある本などの原稿が押さえられる。
【0059】
本実施形態に係る画像読取装置10は、搬送部20が、原稿の上面の先端側に接触して回転し、原稿収容部59から原稿を送り出す送出しロール13を備えている。
【0060】
送出しロール13は、搬送位置に位置する原稿台60に載置された原稿に接触する接触位置と、原稿に接触しないように原稿から退避した退避位置に移動可能とされている。
【0061】
送出しロール13には、図6に示すように、送出しロール13を接触位置及び退避位置に移動させるアクチュエータ64が設けられている。アクチュエータ64は、往復移動する可動部64Aを有しており、可動部64Aには、送出しロール13が回転可能に支持されている。
【0062】
アクチュエータ64は、図6に示すように、移動原稿モードにおいて、原稿収容部59が搬送位置に移動した場合に、送出しロール13を接触位置に移動させる。また、アクチュエータ64は、固定原稿モードにおいて、原稿収容部59が搬送位置から読み取り位置に移動する際に、送出しロール13を退避位置に移動させる。
【0063】
なお、図6において、実線で示す原稿収容部59の位置が搬送位置を示し、二点鎖線で示す原稿収容部59の位置が読み取り位置を示し、実線で示す送出しロール13の位置が接触位置を示し、二点鎖線で示す送出しロール13の位置が退避位置を示す。
【0064】
送出しロール13を退避させる構成は、上記の構成に限られず、種々の構成が可能である。例えば、送出しロール13の回転軸にギアを設け、そのギアと噛み合うギアを回転させると共に移動させることにより送出しロール13を退避させる構成であってもよい。
【0065】
また、画像読取装置10内には、搬送位置における原稿収容部59の先端部から延出して、C字状に湾曲する搬送路22が形成されている。
【0066】
この搬送路22の上部側であって送出しロール13の原稿搬送方向下流側には、原稿収容部59から送り出された原稿を原稿搬送方向の下流側へ搬送する搬送ロール14が配置されている。
【0067】
搬送路22の下部側であって送出しロール13の原稿搬送方向下流側には、搬送ロール14の下方位置で搬送ロール14に対向する分離ロール15が配置されている。分離ロール15は搬送ロール14に接触しており、搬送ロール14と分離ロール15との間に原稿収容部59から送り出された原稿を挟持する挟持部Nが形成される。
【0068】
搬送ロール14は、駆動制御部(図示省略)によって、原稿搬送方向に直交する方向を軸方向としてこの軸周りに回転すると共に、その回転駆動が制御される。この搬送ロール14が、原稿収容部59から送り出され挟持部Nに導入される原稿の上面(表面)に接触して回転駆動することにより、原稿が下流へ搬送される。
【0069】
分離ロール15の回転軸には、トルクリミッタ(図示省略)が取り付けられている。このため、挟持部Nに1枚の原稿が導入され、その1枚の原稿が搬送ロール14に搬送される場合では、その原稿から分離ロール15が所定値以上のトルクを受け、トルクリミッタの作用により、分離ロール15は原稿に従動回転する。
【0070】
原稿収容部59から挟持部Nへ複数の原稿が重なって送り出せられた場合には、搬送ロール14が上側の原稿(1枚目の原稿)へ搬送力を付与する一方、下側の原稿(2枚目以降の原稿)は、分離ロール15によって、搬送抵抗を付与する。すなわち、搬送ロール14と分離ロール15とで、重なった原稿を一枚ずつに分離して(捌いて)原稿を搬送し、原稿の重送を抑制する。
【0071】
なお、本実施形態に係る分離ロール15は、駆動力を付与されず従動回転する従動ロールで構成であったが、分離ロール15は、駆動力が付与される駆動ロールで構成されていてもよい。
【0072】
さらに、搬送路22には、搬送路22に沿って、原稿のスキューを補正するレジロール16、原稿を挟持搬送する搬送ロール対28、排出ロール29が配置されている。
【0073】
搬送ロール14及び分離ロール15で分離搬送される原稿は、レジロール16によりスキューが補正されて、読み取り位置にあるフルレートキャリッジ36の下方へ導入される。フルレートキャリッジ36の下方へ導入された原稿は、搬送ロール対28で搬送されて、画像読取部30による読み取りが行われる読み取り位置を通過する。読み取り位置を通過した原稿は、排出ロール29により、筐体50上に形成された排出部19へ排出される。
【0074】
排出部19には、原稿の端部をそろえるためのガイド17が形成され、傾けられた排出部19に排出された原稿の端部がそろえられる。
【0075】
また、透明ガラス52の表面には、搬送路22を搬送される原稿が当る段差部材54が設けられている。これにより、段差部材54は、搬送路22搬送される原稿が、直接透明ガラス52に接触せずに、読み取り位置を通過するようにさせる。
【0076】
また、段差部材54の裏面(画像読取部30に対向する面)には、シェーディング補正するための白基準板等の色基準板が設けられている。
【0077】
さらに、画像読取装置10には、昇降装置62及びアクチュエータ64を駆動制御する制御基板66が設けられている。
【0078】
制御基板66は、固定原稿モードにおいて、アクチュエータ64により送出しロール13を退避位置に退避させ、昇降装置62により原稿台60を読み取り位置に昇降させる。
【0079】
また、制御基板66は、移動原稿モードにおいて、昇降装置62により原稿台60を搬送位置に下降させ、アクチュエータ64により送出しロール13を接触位置に移動させる。
【0080】
制御基板66は、例えば、筐体50が傾斜位置である移動原稿モード位置に固定部により固定された場合に移動原稿モードと認識し、筐体50が、固定部による固定が解除された場合に移動原稿モードと認識する。
【0081】
なお、操作者が外部入力で選択されることにより固定原稿モード及び移動原稿モードを認識する構成でもよい。
【0082】
(本実施形態の作用)
次に、上記の実施形態について作用を説明する。まず、固定原稿モードにおける原稿の読み取りについて説明する。
【0083】
固定原稿モードにおいては、制御基板66により、原稿台60が読み取り位置に上昇し、読み取り位置にて原稿台60が固定される(図2参照)。操作者は、筐体50を開放して、原稿画像を上向きにして原稿を原稿台60に載置し、筐体50を閉じる。
【0084】
画像読取部30が、図2における右から左方向(矢印A方向)へ移動し、原稿収容部59に収容された原稿の左端から右端にかけて、原稿の原稿画像を読み取る。
【0085】
次に、移動原稿モードにおける原稿の読み取りについて説明する。
【0086】
移動原稿モードにおいては、操作者により、筐体50が、斜めに傾けられる移動原稿モード位置に移動させる。また、操作者は、筐体50を開放して、原稿画像を上向きにして原稿を原稿台60に載置する。
【0087】
また、移動原稿モードにおいては、制御基板66により、原稿台60が搬送位置に下降し、搬送位置にて原稿台60が固定される。送出しロール13は、アクチュエータ64により、原稿収容部59に収容された原稿に接触する接触位置に移動する。
【0088】
画像読取部30は、図3に示すように、画像読取部30を段差部材54の色基準板の位置に移動してシェーディング補正を実施した後、図4に示すように、段差部材54よりも左側の読み取り位置に移動する。
【0089】
操作者により、操作画面のスタートボタンが押されると、送出しロール13が原稿を原稿収容部59から送り出す。送出しロール13で送り出された原稿は、搬送ロール14及び分離ロール15により1枚ずつに分離搬送され、レジロール16でスキュー補正されて、段差部材54でガラスに接触しないようにされた読み取り位置で、画像読取部30で読み取られる。
【0090】
搬送路22を搬送される原稿は、画像読取部30のフルレートキャリッジ36に対して、右から左方向へ移動する。原稿画像が読み取られた原稿は、排出ロール29により排出部19に排出される。
【0091】
このように、固定原稿モードにおいて、原稿収容部59に収容された原稿に対して、画像読取部30を図2における左から右方向に移動させながら原稿画像を読み取る。移動原稿モードにおいては、画像読取部30に対して、原稿を図4における右から左方向に移動させながら原稿画像を読み取る。
【0092】
画像読取部30を固定して考えた場合、この画像読取部30に対する固定原稿モードにおける原稿及び移動原稿モードにおける原稿の相対移動方向が同じであり、どちらのモードでも画像読取部30の右側に原稿がある。すなわち、固定原稿モード及び移動原稿モードにおいて、原稿画像を読み取る読み取り方向が同じである。このため、鏡像反転の補正が不要となる。
【0093】
また、本実施形態では、図7(A)に示すように、原稿画像を上向きにして原稿が原稿台60に載置されるので、実際に原稿画像を見ながら原稿を原稿台60に載置でき、原稿の向きを間違えにくい。特に、切り取られた原稿を複数並べて原稿台60に載置する際においては、原稿の向き及び原稿の配置を間違えにくい。
【0094】
図7(B)に示すように、仮に、原稿画像を下向きにして原稿が原稿台60に載置する場合には、原稿画像が見えず、原稿の向きを間違えやすい。特に、切り取られた原稿を複数並べて原稿台60に載置する際においては、原稿の向き及び原稿の位置を間違えやすい。
【0095】
また、本実施形態では、画像読取部30の読み取り面が下向きに配置されてあり、透明ガラス52が1枚で構成されているため、複数のガラスがはめ込まれている構成に比して、透明ガラス52と筐体50との隙間から紙粉が進入しにくく、画像読取部30が汚れることを抑制できる。
【0096】
固定原稿読み取りモードでは、画像読取部30が収容された筐体50を水平にし、移動原稿モードでは筐体50を傾けるように構成したので、画像読取部30を含む筐体50の小型化が可能となった。
【0097】
また、筐体50の固定原稿モード位置は、搬送路22を開放できるので、ジャムクリアのときにも使用できる。
【0098】
また、透明ガラス52は、固定原稿モードのサイズだけあればよいので、機械サイズも小型に設計可能となる。
【0099】
また、本実施形態では、画像読取部30の筐体50の読み取り面とは、反対側の面が排出部19を兼ねているので、部品点数の削減が出来る。
【0100】
なお、本実施形態の画像読取部30は縮小光学系を用いているが、CIS(Contact Image Sensorを有する密着光学系にすれば、さらに薄型の読み取り装置が実現できる。
【0101】
また、図8に示すように、移動原稿モードにおいて、筐体50を水平位置にする構成であってもよい。
【0102】
この構成では、筐体50上に凹凸を有する排出部19が形成されており、排出部19が傾斜している。
【0103】
また、筐体50は、画像読取部30の読み取り位置がある側とは反対の端部(図8において右側の端部)を支点として開放されるようになっている。この構成では、開放する支点を任意に設定することができ、例えば、画像読取装置10の奥側を支点に開放される構成であってもよい。
【0104】
この構成では、原稿が透明ガラス52の下方位置から上方へ搬送されて、読み取り位置に運ばれ、読み取り位置から下方へ搬送されてから排出部19に運ばれる。
【0105】
なお、上述の筐体50を傾斜させる構成では、原稿が横方向へ搬送されて、読み取り位置に運ばれ、読み取り位置から下方へ搬送されるから排出部19に運ばれる。
【0106】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、固定原稿モードにおける画像読取装置の構成を示す概略図である。
【図3】図3は、移動原稿モードにおける画像読取装置の構成において、シェーディング補正を実施している状態を示す概略図である。
【図4】図4は、移動原稿モードにおける画像読取装置の構成において、画像読取部が読み取り位置にある状態を示す概略図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る原稿台を昇降させる構成を示す概略図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る送出しロールを退避させる構成を示す概略図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る原稿台に切り取り原稿を載置した場合を示す概略図である。
【図8】図8は、移動原稿モードにおける画像読取装置の構成の変形例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0108】
10 画像読取装置
19 排出部
20 搬送部(搬送手段)
50 筐体
62 昇降装置(昇降手段)
100 画像形成装置
110 画像記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿画像を上向きにして原稿収容部に収容された原稿束から一枚ずつ分離搬送される原稿を、画像読取部に対して移動させて原稿画像を読み取る移動原稿モードと、
原稿画像を上向きにして前記原稿収容部に収容された原稿に対して前記画像読取部を移動させて原稿画像を読み取ると共に、前記画像読取部が原稿画像を読み取る読取り方向が前記移動原稿モードと同じである固定原稿モードと、
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記固定原稿モードにおける角度よりも前記移動原稿モードにおいて斜めに傾けられ、前記画像読取部が収容された筐体と、
前記筐体上に形成され、前記画像読取部に対して移動した原稿が排出される排出部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記原稿収容部に収容された原稿束から原稿を一枚ずつ分離搬送する搬送手段と、
前記固定原稿モードにおいて、前記画像読取部が前記原稿の原稿画像を読み取り可能な読み取り位置へ前記原稿収容部を上昇させると共に、前記移動原稿モードにおいて、前記搬送手段が前記原稿を搬送可能な搬送位置へ前記原稿収容部を下降させる昇降手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置で読み取られた画像に基づいて、記録媒体へ画像を記録する画像記録装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−105837(P2009−105837A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277929(P2007−277929)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】