説明

画像読取装置

【課題】スキャナに接続されたプリンタの画質調整を迅速かつ適切に行うことが可能なスキャナを提供する。
【解決手段】画像データを出力するプリンタ部を備えたプリンタと通信可能に接続されたスキャナにおいて、上記プリンタ部から出力された、上記プリンタの画質調整を行うためのテストパターンの画像を読み取った際に、読み取ったテストパターンの画像データのうち、ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付けるデータ受付手段306と、受け付けた画像データに基づいて、上記プリンタの画質を調整するためのデータである画質調整データを当該プリンタに送信するデータ送信手段307とを備えることを特徴とするスキャナを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に関し、詳しくは、画像読取装置に接続された画像形成装置の画質調整を迅速かつ適切に行うことが可能な画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複合機、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、画像形成装置から出力される印刷物には、各個体の機械特性のバラツキ等に起因してその印刷物の画質のバラツキが発生している。
【0003】
上記画質のバラツキを調整するために、画像形成装置から、画質調整のためのテストパターンを印字したテスト原稿を出力させ、そのテスト原稿を画像形成装置のスキャナ部で読み取り、当該テストパターンから算出される値を画像形成装置に送信して、画像形成装置に記憶された基準値に合わせる調整方法が採用されている。テストパターンの値と基準値とを合わせる方法は、例えば、画像形成装置内の調整ソフトウェアを用いて、調整パラメータを算出し、その算出された調整パラメータに基づいて、画質が調整されている。
【0004】
画質の調整に関して、機械特性のバラツキ調整の他に、ユーザの好みの画質を実現するための調整、使用環境等に合わせた調整等があり、画質調整のためのソフトウェアは画像形成装置内のROMに格納されている。これらの調整は、画像形成装置の操作部を操作することにより、ユーザ自身が試行錯誤して調整している。
【0005】
しかしながら、ROMの記憶容量は制限があり、ユーザ毎の膨大な好みを実現するソフトウェアを全てROMに組み込むことは不可能である。そのため、ユーザの好みに応じた十分な調整を行うことができないという問題があった。また、好みや使用環境にあわせて画質を調整することは、ユーザにとって手間のかかる煩雑な作業であるという問題があった。
【0006】
さらに、調整ソフトウェアの更新は、メーカ側が多数の画像形成装置に対して個々に更新する必要があり、更新に対応する管理コストが掛かっていた。更に、画像形成装置の機械特性の履歴を経時的に記憶することは、記憶容量制限により不可能であり、調整時に取得した機械特性の情報はメンテナンスに活かされていなかった。
【0007】
上記問題を解決するために、特開2004−274328号公報(特許文献1)には、入力された画像データを転写紙に印刷するプリンタ部を備えた画像形成装置と、前記画像形成装置の画質調整を行う外部コントローラとが通信ネットワークを介して接続された画質調整システムであって、前記画像形成装置は、ユーザの指示情報を入力する操作部と、上記入力されたユーザ指示情報を上記外部コントローラに送信する送信部と、上記外部コントローラから送信された調整パラメータを受信する受信部と、上記受信された調整パラメータを記憶する情報記憶部と、上記情報記憶部に記憶された調整パラメータに基づいて上記入力された画像データに画像処理を施して上記プリンタ部に出力する画像処理部とを備え、上記外部コントローラは、上記画像形成装置から上記ユーザ指示情報を受信する受信部と、上記受信されたユーザ指示情報に基づいて上記画像形成装置の画質を調整するための調整パラメータを演算するパラメータ演算部と、上記演算された調整パラメータを上記画像形成装置に送信する送信部とを備えたことを特徴とする画質調整システムが開示されている。
【0008】
上記構成により、ユーザの指示に応じた画質調整を容易にかつ迅速に行うことができるとしている。また、外部コントローラで調整パラメータを演算する調整ソフトウェアを保持しているので、調整ソフトウェアの更新は、外部コントローラの調整ソフトウェアを更新すればよく、メーカが多数の画像形成装置の調整ソフトウェアをサービスマンが出向く等により個々に直接更新する必要がなくなり、ソフトウェア更新に係る管理コストを低減することができるとしている。画像形成装置では、記憶容量の制限にとらわれることなく、細かな調整を行うことができるとしている。
【特許文献1】特開2004−274328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、読み取ったテストパターンの画像データ全てを外部コントローラのパラメータ演算部の演算対象としており、当該画像データは、圧縮処理等を施さない生データ、読み取ったデータに対応するため、そのデータの演算処理は、圧縮処理等を施されたデータに対する演算処理と比較して、時間が掛かるという問題がある。
【0010】
また、テストパターンは必ず画像形成装置によってシートに印刷されるが、そのシートが何らかの理由により聊か汚れていたり、折れ曲っていたり、傷が発生していたりすると、読み取ったテストパターンの画像データにも、その影響が反映されるという問題がある。そのような場合、上記技術では、汚れや傷などのない画像データがテストパターン内に存在するにも関わらず、読み取った画像データ全てを破棄せざるを得ず、無駄なシートやトナーの発生が生じるという問題がある。
【0011】
また、メーカが販売している多数の画像形成装置のうち、所定の画像形成装置には、既に調整パラメータを演算することが可能な演算部を備えた画像形成装置が存在し、そのような画像形成装置に対しては、読み取ったテストパターンのRAW画像データを送信しなければ、画質調整を行うことが出来ない場合がある。この場合は、上記画像形成装置に、調整パラメータを送信したとしても、適切に画質調整を行えないという問題がある。
【0012】
当該問題は、例えば、画像形成装置と画像読取装置とが一体となった複合機等においては、あまり問題とならないが、画像形成装置と画像読取装置とが別個に設置されている場合では、画像形成装置に備わっている演算部、ソフトウェアと、画像読取装置のそれとが対応していないことがほとんどであることから、大きく問題となる。
【0013】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、画像読取装置に接続された画像形成装置の画質調整を迅速かつ適切に行うことが可能な画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像読取装置は、画像データを出力するプリンタ部を備えた画像形成装置と通信可能に接続された画像読取装置において、上記プリンタ部から出力された、上記画像形成装置の画質調整を行うためのテストパターンの画像を読み取った際に、読み取ったテストパターンの画像データのうち、ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付けるデータ受付手段と、受け付けた画像データに基づいて、上記画像形成装置の画質を調整するためのデータである画質調整データを当該画像形成装置に送信するデータ送信手段とを備える。
【0015】
画像形成装置は、画像データを印刷物として出力可能な装置であればよく、例えば、プリンタ、複写機、複合機が該当する。カラー印刷、モノクロ印刷、グレースケール印刷、いずれの印刷モードであっても適用することが可能である。
【0016】
画像読取装置は、原稿あるいはテストパターンの原稿(印刷物)の画像を読み取ることが可能な装置であればよく、例えば、スキャナ、複写機、複合機が該当する。カラー読取、モノクロ読取、グレースケール読取、いずれの読取モードであっても適用することが可能である。
【0017】
プリンタ部は、画像データを印刷物として出力可能であれば、どのような部材であっても構わず、電子写真方式でも、インクジェット記録方式でも構わない。
【0018】
ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付ける方法は、どのような方法であっても構わないが、例えば、読み取った画像データを画面に表示して、所定のポインティングデバイスにより、ユーザに範囲を指定させて、所定の画像データを受け付ける方法、所定の数値を受け付ける手段を設け、その数値に基づいて、読み取った画像データ全体の位置を指定し、所定の範囲内の画像データを受け付ける方法等が挙げられる。
【0019】
画質調整データは、画像形成装置の画質を調整するためのデータであればよく、画像形成装置の機種、性能等に応じて決定される。例えば、画質調整にRAW画像データが必要であれば、そのRAW画像データとなるし、ハーフトーン、RGBの平均値あるいはYMCKの平均値、輝度値等の周知の調整パラメータが必要であれば、その調整パラメータとなる。画像形成装置、画像読取装置に応じて、画質調整パラメータは適宜設定変更される。
【0020】
また、画質調整の種類(濃度ムラ、色ムラ、ガンマ補正等)に応じて、読み取った画像データの位置(xy座標)から算出される画像のエッジ(端部)の補正を可能とするよう、画質調整パラメータを構成しても構わない。
【0021】
上記データ受付手段は、上記テストパターンの画像をプレビュー画像として画面に表示して、当該テストパターンの画像データのうち、ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付けるよう構成することができる。
【0022】
プレビュー画像は、読み取ったテストパターンの画像データの状態を予め画面上に表示する画像のことであり、テストパターンの画像データの容量に応じて、適当な解像度を有する画像データに変換され、画面に表示される画像となる。
【0023】
プレビュー画像は、どのような画像でもよいが、例えば、画像読取装置近傍のユーザが、テストパターンの全貌を確認することが可能な大きさの画像であると好ましい。
【0024】
上記データ受付手段は、プレビュー画像が表示された画面上の位置を指定するポインティングデバイスによって、上記テストパターンの画像データのうち、ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付けるよう構成することができる。
【0025】
ポインティングデバイスは、上記タッチパネルの他に、パネルの画面上での位置座標を指定する入力機器であるマウス、トラックパッド、トラックボール等を採用することができる。
【0026】
指定された範囲内の画像データとは、例えば、2点の位置座標から特定される領域内に含まれた画像データが該当し、その領域の形状は、例えば、正方形、長方形、楕円、円等を採用することができる。さらに、2点以上の位置座標から領域を特定するよう構成しても構わない。
【0027】
上記データ受付手段は、上記データ送信手段が画質調整データを画像形成装置に送信する前に、画質調整データを、画像読取装置の撮像部によりテストパターンの光学像を光電変換した後、A/D変換を施したRAW画像データとするか、そのRAW画像データに所定の演算処理を施して算出された調整パラメータとするかを、ユーザに選択可能に表示するよう構成することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の画像読取装置によれば、画像データを出力するプリンタ部を備えた画像形成装置と通信可能に接続された画像読取装置において、上記プリンタ部から出力された、上記画像形成装置の画質調整を行うためのテストパターンの画像を読み取った際に、読み取ったテストパターンの画像データのうち、ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付けるデータ受付手段と、受け付けた画像データに基づいて、上記画像形成装置の画質を調整するためのデータである画質調整データを当該画像形成装置に送信するデータ送信手段とを備えるよう構成している。
【0029】
これにより、テストパターンの画像データ全てを画質調整のためのデータとすることなく、ユーザが必要な部分のデータを指定して、その部分を対象として画像読取装置に画質調整を行わせることが可能となる。そのため、画質調整のためのデータの演算時間や転送時間を削減することが可能となり、画像形成装置の画質調整を迅速に行うことが可能となる。さらに、ユーザが指定した部分のデータに基づいて、画像形成装置は画質調整を行うこととなるため、例えば、濃度ムラや色ムラの著しい部分をテストパターンの画像から予め確認しておいて、その部分に対応して画質調整を行うことが可能となり、適切な画質調整を行うことが可能となる。また、画像形成装置間で異なるテストパターンに、画像読取装置が機動的に対応することも可能となり、多種の画像形成装置に対しても、適切な画質調整を行うことが可能となる。
【0030】
また、上記データ受付手段は、上記テストパターンの画像をプレビュー画像として画面に表示して、当該テストパターンの画像データのうち、ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付けるよう構成することができる。
【0031】
これにより、ユーザは、テストパターンの画像データを指定する前に、プレビュー画像によって、指定すべき範囲を容易に確認することが可能となる。そのため、ユーザの意図しない、誤った範囲でテストパターンの画像データを指定することなく、適切に画像データの指定を行うことが可能となり、適切な画質調整を実行することが可能となる。
【0032】
また、上記データ受付手段は、プレビュー画像が表示された画面上の位置を指定するポインティングデバイスによって、上記テストパターンの画像データのうち、ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付けるよう構成することができる。
【0033】
これにより、ユーザは、自己の意図する範囲をプレビュー画像に併せて指定することが可能となるとともに、自己の指定するテストパターンの画像データを確認することが可能となる。そのため、ユーザは、画像調整を行いたいテストパターンの画像データを適切に指定することが可能となり、画質調整時におけるユーザの利便性を向上することが可能となる。
【0034】
また、上記データ受付手段は、上記データ送信手段が画質調整データを画像形成装置に送信する前に、画質調整データを、RAW画像データとするか、調整パラメータとするかを、ユーザに選択可能に表示するよう構成することができる。
【0035】
これにより、例えば、画像形成装置と画像読取装置とが別個に設置されている場合であっても、ユーザは、画像形成装置に送信する画質調整データを、画像形成装置に適合した画質調整データとして送信することが可能となる。そのため、画像形成装置と画像読取装置との相互の機種の違い、演算部の有無、ソフトウェアの違い等により生じる画質調整の不具合を解消することが可能となる。その結果、画像形成装置と画像読取装置とが別個に備えられている場合であっても、画像読取装置を機動的に対応させ、画像形成装置の画質調整を適切に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、図面では部材の位置及び大きさ等は適宜強調して描かれている。
【0037】
<画質調整システム>
本発明では、原稿の画像を読取可能な当該画像読取装置と、その画像読取装置を制御する外部コントローラと、その外部コントローラ(あるいは画像読取装置)と通信可能に接続された、画像データを出力する画像形成装置とを有する画質調整システムとして構成される。
【0038】
まず、画像読取装置であるスキャナについて説明する。
【0039】
ユーザが画像読取装置であるスキャナ100を利用して例えば原稿の画像を読み取る場合、原稿を図1に示す原稿台103、或いは載置台105に配置し、スキャナ100に接続されたパーソナルコンピュータ(以下、外部コントローラとして後述する)に対して、画像読取の指示を行う。当該指示がスキャナ100に送信されると、以下に示す各部(駆動部)が動作することで、画像読取が行われる。
【0040】
なお、上記外部コントローラは、例えば、スキャナに付属の操作部に代えても構わない。また、外部コントローラまたは操作部がユーザから画像読取の指示を受け付ける場合は、外部コントローラまたは操作部に予め備えられたタッチパネル、所定のキーボード、ハードキー、ソフトキー等を利用するよう構成しても構わない。
【0041】
図1に示すように、本実施形態のスキャナ100は、本体101と、本体101の上方に取り付けられたプラテンカバー102を備え、当該本体101の上面は原稿台103が設けられており、原稿台103は、プラテンカバー102によって開閉されるようになっている。プラテンカバー102は、自動原稿給紙装置104と載置台105と排紙台109が設けられている。
【0042】
自動原稿給紙装置104は、プラテンカバー102の内部に形成された原稿搬送路108と、プラテンカバー102の内部に備えられたピックアップローラ106や搬送ローラ107A、107B等で構成される。原稿搬送路108は、載置台105から、本体101に設けられた読取部110にて読み取りが行なわれる読取位置Pを経由して、排紙台109に通じる原稿の搬送路である。
【0043】
自動原稿給紙装置104は、載置台105に載置された原稿1枚ずつをピックアップローラ106で原稿搬送路内108に引き出し、搬送ローラ107A、107B等によって引き出した原稿を、読取位置Pを通過させて排紙台109に排紙する。読取位置Pを通過する時に原稿は読取部110にて読み取られる。
【0044】
次に、読取部110は、原稿台103及び自動原稿給送装置104の下方に設けられている。読取部110は、原稿台103を照射する主走査方向に長い光源111と、原稿台103からの光を選択的に通過させるスリット116と、原稿台103からの光を導くミラー112とを備える第一の移動キャリッジ117や、第一の移動キャリッジ117からの反射光を再度反射するミラー113A、113Bを備える第二の移動キャリッジ118、さらにミラーで導かれた光を光学的に補正するレンズ群119、当該レンズ群119より補正された光を受光する撮像素子(撮像部)115、撮像素子にて受光した光を電気信号に変換し(光電変換)、補正処理・修正処理などを行う画像データ生成部114とで構成されている。
【0045】
自動原稿給紙装置104上の原稿を読み取る場合には、光源111は、読取位置Pを照射できる位置に移動して発光する。光源111からの光は、原稿台103を透過して読取位置Pを通過する原稿にて反射し、スリット116、ミラー112、113A、113B、レンズ群119によって撮像素子115に導かれる。撮像素子115は、受光した光を電気信号に変換して画像データ生成部114に送信する。画像データ生成部114には、上記撮像素子115にて受光された光がR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)のアナログ電気信号として変換(入力)され(光電変換)、ここでアナログ−デジタル変換(A/D変換)され、即ちデジタル化される。さらに、画像データ生成部114では、順次変換されたデジタル信号を単位データとし、これら単位データを補正処理・修正処理等することで複数の単位データからなる画像データを生成する。
【0046】
なお、通常の画像読取では、撮像素子にて受光された光学像(被写体光学像)を光電変換した後に、A/D変換を施し、さらに、補正処理・修正処理等を施して生成された画像データを、原稿の画像データとするが、画質調整のための画像読取では、画質調整を行う目的のため、補正処理・修正処理等を施さない、光学像(被写体光学像)を光電変換した後、A/D変換を施したデータ、すなわち、RAW画像データを、原稿(テストパターンが印刷された原稿)の画像データとする。
【0047】
また、読取部110は、自動原稿給紙装置104で搬送される原稿だけでなく、原稿台103に載置された原稿も読み取ることが可能となっている。原稿台103に載置された原稿を読み取る場合は、第一のキャリッジ112は、光源111を発光しながら副走査方向に移動し、光源111から撮像素子115までの光路長を一定にするために、第二の移動キャリッジ118は第一の移動キャリッジ117の1/2の速度で撮像素子115方向に移動する。
【0048】
撮像素子115は、自動原稿給紙装置104に搬送された原稿のときと同様に、ミラー112、113A、113Bに導かれた光に基づいて原稿台103に載置された原稿からの光を電気信号に変換し(光電交換)、これに基づいて画像データ生成部114が画像データを生成する。
【0049】
生成された画像データは、スキャナの記憶部(図示せず)に一時記憶される。なお、記憶部は、外部コントローラに備えられていても構わない。一時記憶された画像データは、例えば、スキャナの操作部や外部コントローラを介して入力されるユーザの指示に従って所定の画面に表示されたり、スキャナまたは外部コントローラに接続された画像形成装置(例えば、プリンタ、複写機、複合機等)や端末(パーソナルコンピュータ)に送信されたりする。
【0050】
次に、外部コントローラについて説明する。
【0051】
図1に示すように、外部コントローラ10には、所定の画像データや、予め記憶された所定の画面データを画面上に表示する液晶ディスプレイ11と、複数の文字・図形・記号と対応付けられた複数のキーを有し、所定の信号・命令を入力可能なキーボード12と、液晶ディスプレイに表示されたカーソルの動作と同期して、そのカーソルを操作可能、命令入力可能なマウス13と、上記液晶ディスプレイ11と上記キーボード12と上記マウス13との動作・命令等を制御する制御部14とから構成され、ユーザは、当該キーボード12とマウス13とを操作する(命令入力する)ことが可能である。
【0052】
外部コントローラ10には、プリンタと通信可能とするネットワークに接続された通信ケーブルが接続されており、ユーザが外部コントローラ10を介して、一時記憶された画像データを当該プリンタ1へ送信することが可能である。なお、上記通信ケーブルは、スキャナに接続されるよう構成しても構わない。
【0053】
次に、画像形成装置であるプリンタについて説明する。
【0054】
図1に示された上記プリンタは、カラー画像を形成するためのタンデム型の画像形成ユニットFY,FM,FC及びFKを備えている。この画像形成ユニットFY,FM,FC及びFKには、転写ベルトB1と、転写ベルトB1の表面を清掃するためのクリーニング部B2と、転写ベルトB1の移動方向に沿って転写ベルトB1に接するように配列されたイエロー、シアン、マゼンタ、及びブラックの各感光体ドラム10Y、10M、10C、10Kが設けられている。
【0055】
イエロー用の感光体ドラム10Yには、感光体ドラム10Yの周面に形成された静電潜像をトナーで現像するための現像装置、およびこの感光体ドラム10Yの周面を帯電させるための帯電器が隣設されている。同様に、マゼンタ、シアン、ブラック用の感光体ドラムに対して現像装置および各感光体ドラム10M〜10Kの周面を帯電させるための帯電器が設けられる。さらに、各感光体ドラム10Y〜10Kの周面に担持される各トナー像を転写ベルトB1に転写するために、各感光体ドラム10Y〜10Kの周面には、転写ベルトB1を隔てて転写ローラ20Y、20M、20C、20Kが配置されている。
【0056】
転写ベルトB1は、駆動ローラ21および従動ローラ22間に張設されており、テンションローラ23によって所定の張力が与えられている。転写ベルトB1は、矢印方向に移動し、このため、4つの感光体ドラム10Y〜10Kは、それぞれ、図1において反時計周りに回転する。
【0057】
各感光体ドラム10Y〜10Kは、各帯電器によって、その周面がそれぞれ予め定める電位に帯電され、各露光装置により、ネットワークから送信された画像データ(例えば、原稿画像に対応する画像データ)に対応した画像が書き込まれ、それによって静電潜像が形成される。その静電潜像は、各現像装置によって互いに異なる色のトナー像にそれぞれ現像される。そして、各色のトナー像は、転写ローラ20Y〜20Kによって転写ベルトB1上に転写されて、転写ベルトB1上で、各トナー像が重ね合わされる。
【0058】
上記のように転写がなされた後の感光体ドラム10Y〜10Kの表面に残っているトナーはブレード35によって拭き取られ、排出ローラ31で所定の容器に輩出され、その後、感光体ドラム10Y〜10Kの表面は除電装置13によって除電される。
【0059】
一方で、用紙Pは、複数枚の用紙(シート)を収容可能なカセット2から、搬送部6によって、画像形成ユニットFY、FM、FC及びFKに向けて複数枚の用紙が所定の間隔をあけて搬送される。この画像形成ユニットFY、FM、FC及びFKに搬送される用紙Pに対して、転写ベルトB1に転写されたトナー像が2次転写部3によって転写される。
【0060】
制御部30は、各感光体ドラム10Y〜10K、各現像装置、各帯電器および各転写ローラ20Y〜20Kを含む画像形成ユニットFY、FM、FC及びFKにおける各画像形成部材の動作制御を制御する。また、搬送ローラB1を含む搬送機構の動作制御を行う。
【0061】
また、制御部に付属の記憶部には、各画像形成ユニットの画質を調整するためのテストパターンのデータが記憶されており、プリンタに付属のテストパターン出力のためのボタンの押下や外部コントローラからの指示に対応して、制御部が当該テストパターンのデータを取得し、そのテストパターンに対応する印刷物を出力する。上記テストパターンのデータは、画質調整の種類、プリンタの機種に対応して、複数記憶されている。
【0062】
原稿の画像データまたはテストパターンのデータに対応するカラートナー像の形成と同期して用紙収容部2に収容されている用紙が図示しない給紙装置で用紙収容部2から一枚ずつ取り出されて、用紙搬送部6上を搬送される。そして、用紙は中間転写ベルトB1への一次転写とタイミングを合わせて二次転写部3に送り込まれ、二次転写部3で中間転写ベルトB1上のカラートナー像が用紙に二次転写される。カラートナー像が転写された用紙はさらに定着部4に搬送されて熱と圧力によりカラートナー像が用紙に定着される。さらに用紙は排紙装置5によって画像形成装置1の外周に設けられた排紙トレイ部7に排紙される。二次転写後、中間転写ベルトB1に残留したトナーは、中間転写ベルトのクリーニング部B2によって中間転写ベルトB1から除去される。
【0063】
次に、図2を用いて、スキャナ、外部コントローラ、プリンタの制御系ハードウェアの構成を説明する。図2は、スキャナ、外部コントローラ、プリンタの各制御系ハードウェアの概略構成図である。ただし、本発明に直接には関係しない各部の詳細は省略している。
【0064】
スキャナ100の制御回路は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、HDD(Hard Disk Drive)204、各駆動部に対応するドライバ205、インターフェイス206を内部バス207によって接続している。上記CPU201は、例えば、RAM203を作業領域として利用し、上記ROM202、HDD204等に記憶されているプログラムを実行し、当該実行結果に基づいて上記ドライバ205と操作部あるいは外部コントローラとからのデータ、指示を授受し、上記図1に示した各駆動部等の動作を制御する。また、上記駆動部以外についても、上記CPU201がプログラムを実行することで当該各手段を実現する。上記ROM202、HDD204等には、以下に説明する各手段を実現するプログラムやデータが記憶されている。読取部で読み取られた画像データは、場合によって上記ROM202、HDD204等に一時記憶される。
【0065】
インターフェイス206は、スキャナ100と外部コントローラ10とを接続する。上記CPU202は、インターフェイス206を通じて、外部コントローラ10とデータや指示を授受し、各駆動部の動作を制御する。
【0066】
外部コントローラ10の制御回路は、CPU208、ROM209、RAM210、HDD211、各駆動部に対応するドライバ212、インターフェイス213、ネットワークと通信可能な通信インターフェイス214を内部バス215によって接続している。上記CPU208は、例えば、上記RAM210を作業領域として利用し、上記ROM209等に記憶されているプログラムを実行し、当該実行結果に基づいて上記ドライバ212とキーボード12、マウス13とからのデータや指示を授受し、各駆動部を制御する。上記ROM209、HDD211等には、下記の各手段を実現するプログラムやデータが記憶されている。読取部で読み取られた画像データが、上記ROM209、HDD211等に、インターフェイス213を介して送信され、一時記憶される場合もある。
【0067】
通信インターフェイス214は、ネットワークを介して、外部コントローラ10とプリンタ1とを接続する。上記CPU208は、通信インターフェイス214を通じて、プリンタ1とデータや指示を授受し、各駆動部の動作を制御する。
【0068】
プリンタ1の制御回路は、CPU216、ROM217、RAM218、HDD219、各駆動部に対応するドライバ220、通信インターフェイス221を内部バス222によって接続している。上記CPU216は、例えば、上記RAM218を作業領域として利用し、上記ROM217等に記憶されているプログラムを実行し、当該実行結果に基づいて上記ドライバ220と画像形成ユニットとからのデータや指示を授受し、各駆動部を制御する。上記ROM217、HDD219等には、下記の各手段を実現するプログラムやデータが記憶されている。通常、上記ROM217、HDD219等に、テストパターンのデータがプリンタの機種に応じて記憶されているが、例えば、スキャナ100、外部コントローラ10から送信された新たなテストパターンのデータを記憶するよう構成しても構わない。
【0069】
<本発明の実施形態>
次に図3乃至図4を参照しながら、本発明の実施形態のスキャナが、スキャナに接続されたプリンタの画質調整を迅速かつ適切に行う手順について説明する。なお、本発明の実施形態に直接には関係しない各部の詳細は省略している。図3は、本発明の実施形態に係る画質調整システム、すなわちスキャナ、外部コントローラ、プリンタの機能ブロック図である。図4は、本発明の実施形態の実行手順を示すためのフローチャートである。
【0070】
ユーザが、スキャナ100と、当該スキャナ100に接続された外部コントローラ10との電源を投入すると、外部コントローラ10の条件受付手段301が、スキャナ100と通信可能に接続されていることを確認した上で、外部コントローラ10に付属の液晶ディスプレイ11上に、画像読取に関する指示の入力を受け付ける画面である画像読取受付画面を表示する。
【0071】
当該画像読取受付画面の表示は、例えば、ユーザが外部コントローラ10に記憶された所定のプログラム(例えば、画像読取に関するプログラム)を起動した場合に、スキャナ100と通信可能であることを確認した条件受付手段301が画像読取受付画面を表示しても構わない。
【0072】
画像読取受付画面には、スキャナ100の読取部100に載置された原稿の画像を読み取るモードである画像読取モードの項目と、外部コントローラ10に接続されたプリンタ1の画質調整を行うモードである画質調整モードの項目とが表示される。
【0073】
ユーザが、画像読取受付画面を見ながら、外部コントローラ10に付属のポインティングデバイスであるマウス13を操作し、液晶ディスプレイ11上に表示された、マウス13と同期するカーソルを画質調整モードの項目に位置し、画質調整モードの項目を押下(クリック)すると、条件受付手段301が、画質調整モードを受け付ける(図4:S101)。
【0074】
条件受付手段301が画質調整モードを受け付けると、画質調整のための印字パターンであるテストパターンの印刷物の出力を受け付ける画面であるテストパターン出力画面を液晶ディスプレイ上に表示する。
【0075】
テストパターン出力画面には、画質調整を行いたい、外部コントローラ10(あるいはスキャナ100)に接続された画像形成装置を選択・決定する画像形成装置選択項目と、選択・決定された画像形成装置にテストパターンの印刷物を出力する旨の信号を送信するための項目である出力項目とが表示される。画像形成装置選択項目は、その項目を選択する前に、例えば、外部コントローラ10(あるいはスキャナ100)に接続された画像形成装置を検索し、検索した画像形成装置の識別子に基づいてその画像形成装置の名称等を項目として複数表示するよう構成しても構わない。
【0076】
ユーザは、画像形成装置選択項目から、現時点で外部コントローラ10に接続された画像形成装置であるプリンタ1を選択・決定し、出力項目を押下すると、条件受付手段301は、当該プリンタ1の画像形成手段302に、テストパターンの印刷物を出力する旨の信号を、ネットワークを介して、送信する。
【0077】
なお、条件受付手段301が画像形成装置選択項目の選択・決定を受け付けた際に、条件受付手段が、画質調整の対象となるプリンタ1と外部コントローラ10(あるいはスキャナ100)とが通信可能か否かを確認し、通信可能であれば当該信号を送信し、通信不可であれば、通信不可である旨の画面を液晶ディスプレイ11に表示するよう構成しても構わない。
【0078】
当該信号を受信した画像形成手段302は、テストパターンに対応する画像データを記憶しているプリンタ1のテストパターン記憶手段303を参照し、テストパターンの印刷物を出力する(図4:S102)。
【0079】
画像形成手段302が印刷物を出力する場合、画像形成装置302に予め記憶されている画像形成に関する基準値(例えば、ハーフトーン、RGBの平均値等)に基づいて、カラートナー像等を形成し、印刷物を出力する。
【0080】
テストパターン500は、図5に示すように、所定の画質調整処理(濃度ムラ、色ムラ、ガンマ補正等)用のパターンであり、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色毎にパッチと呼ばれる試験画像501(例えば、縦1.5cm、横1.0cmのサイズで略均一な単色の試験画像)を複数混色させたパターンから構成され、さらに、一色に対してその色の濃度を段階的に増減させた複数の試験画像(例えば、一色に対して、濃度値が100%、50%、30%である三種類の試験画像)も複数混在させたバターンである。
【0081】
例えば、図5に示すテストパターン500では、シートの副走査方向に対する前後全長の前端から3分の1の位置で、主走査方向に対して後端に位置する試験画像に、シアンで濃度値が100%である試験画像が配置され、その位置から主走査方向前方に、シアンで濃度値50%、30%の試験画像を配置し、この三種類の試験画像を一行としている。この一行に、さらにシアンの一行の試験画像を配置して、一色の試験画像群502が完成する。
【0082】
主走査方向前方で、シアンの試験画像群502に隣接する位置に、マゼンタの試験画像群503が配置され、マゼンタの試験画像群503の前方に、イエローの試験画像群の一部504(2種類のイエローの試験画像(濃度値100%と50%))が配置される。イエローの試験画像群が一部配置されているのは、シートのサイズが十分でないためであり、シートのサイズ等に応じて、試験画像群が一部であるか全部であるか、あるいは、試験画像のサイズを拡大縮小するかを適宜設計変更するよう構成しても構わない。
【0083】
上記シアンの試験画像群502の副走査方向後方に、ブラックの試験画像群505が配置され、そのブラックの試験画像群505の主走査方向前方に、シアンの試験画像群506とマゼンタの試験画像群の一部507(2種類のマゼンタの試験画像(濃度値100%と50%))とが配置される。
【0084】
同様に、副走査方向後方に、シアンの試験画像群502、ブラックの試験画像群505、イエローの試験画像群508、マゼンタの試験画像群509の順番で、各試験画像群が配置され、4色の試験画像群が一セットとなるよう配置される。図5では、二セット配置されている。
【0085】
また、主走査方向前方に、シアンの試験画像群、マゼンタの試験画像群、イエローの試験画像群、ブラックの試験画像群の順番で、各試験画像群が配置され、シートに全て試験画像群が配置できない場合は、上述したように、一色に対して二種類の試験画像を配置するよう構成される。
【0086】
上記構成とすると、シートの主走査方向でも、副走査方向でも、一色に対する色の段階的な変化をパターンとして出力することが可能となるとともに、主走査方向に対して約45度を成す斜め方向でも、一色の試験画像が連なるパターンとなるため、精度の高い画質調整を実行することが可能となる。
【0087】
なお、テストパターン500は、図5に示したテストパターンに限られず、画質調整処理に応じて、適宜変更するよう構成しても構わない。例えば、試験画像群を構成する試験画像の数を増減したり、試験画像の濃度の種類を増減したり、シートに印字される試験画像の位置に応じて、試験画像の色と濃度(例えば、濃度値100%、90%、80%と10%毎に段階的に低減する試験画像等)とをさらに混在させても構わない。
【0088】
また、条件受付手段301は、画質調整モードを受け付けると、出力されたテストパターンの画像の読み取りを開始するボタンであるテストパターン読取ボタンを液晶ディスプレイ11上に表示する。
【0089】
そこで、ユーザは、出力されたテストパターンの印刷物をスキャナ100の原稿台に載置し、外部コントローラ10のマウス13を操作して、上記テストパターン読取ボタンを押下すると、条件受付手段301は、テストパターンの画像の読み取りを開始する旨の信号を画像読取手段304に送信する。当該信号を受信した画像読取手段304は、テストパターンの画像の読み取りを開始する(図4:S103)。
【0090】
画像読取手段304により読み取られたテストパターンの画像データは、スキャナ100に備えられた画像データ記憶手段305に一時記憶される。一時記憶される場合、画像データは、圧縮処理等が全く行われることのないRAW画像データとして一時記憶される。
【0091】
テストパターンの画像読取を完了した画像読取手段304が、完了した旨の信号を、外部コントローラ10のデータ受付手段306に送信する。さらに、画像読取手段304が読み取ったテストパターンのプレビュー画像をRAW画像データに基づいて生成し、データ受付手段306に送信する。
【0092】
データ受付手段306は、当該信号とプレビュー画像とを受信し、テストパターンのプレビュー画像を表示する画面であるテストパターンデータ受付画面を液晶ディスプレイ11上に表示する(図4:S104)。
【0093】
テストパターンデータ受付画面600には、図6に示すように、プレビュー画像内で画質調整に必要とする領域の指定をユーザに促す旨のメッセージ601「テストパターンの読み取りが完了しました。必要なデータの範囲を指定してください。」と、読み取ったテストパターンのプレビュー画像602と、指定した範囲のデータにおいてプリンタに送信するデータの種類の選択を促す旨のメッセージ603「指定された範囲内のデータにおいて、画像形成装置に送信したデータの種類を選択してください。」と、RAW画像データを送信するボタンである「RAW画像データ」604と、指定された範囲内のデータから算出される画質の調整に使用されるパラメータである「調整パラメータ」605と、送信を開始するボタンである「OK」606とが表示される。
【0094】
例えば、ユーザが「RAW画像データ」604を押下すると、押下されたことを示すために、「RAW画像データ」604の背景色が白色から灰色へ変更される。また、ユーザが「調整パラメータ」605を押下すると、「調整パラメータ」605の背景色が灰色へ変更されるとともに、「調整パラメータ」605の下段に、調整パラメータのうち、所定のパラメータである「ハーフトーン」609、「RGBの平均値」610、製造者等が予め作成し、RAW画像データから画質調整の基準として算出される所定の調整パラメータを演算可能なプログラミングを起動させる「その他の調整パラメータ」611等が押下可能に表示される。上記構成により、ユーザが画質調整を希望する調整パラメータをプリンタに送信することが可能となる。なお、必要に応じて、プレビュー画像の拡大(縮小)を指示するボタンである「拡大」(「縮小」)を表示するよう構成しても構わない。
【0095】
プレビュー画像602のうち、対象とする画像(領域)を指定する方法は、どのような方法でも構わないが、例えば、指定される領域を長方形乃至正方形と構成し、ユーザがプレビュー画像602上にカーソル610を位置させ、一回クリックすると、当該クリックしたカーソルの位置で領域の始点611が決定され、さらに、ユーザが他の位置にカーソルを移動させて再度クリックすると、当該クリックしたカーソルの位置で領域の終点612が決定され、当該始点と終点とを対角線とする長方形613を対象とする画像(領域)として指定する方法が挙げられる。この場合、さらに他の位置にカーソル610を移動させてクリックすると、指定された領域が解除され、再度領域の始点が決定可能な状態へ戻るよう構成しても構わない。
【0096】
ユーザは、テストパターンデータ受付画面600を見ながら、プレビュー画像602の複数の試験画像のうち、プレビュー画像の下方左側(シートでは、主走査方向後方、副走査方向後方)の一セットの試験画像(四色の試験画像群)が指定される範囲内に含まれるよう、カーソル610にて長方形613を作成し、対象とする画像(領域)を指定する。
【0097】
さらに、ユーザがテストパターンデータ受付画面600の「調整パラメータ」605と「RGBの平均値」608とを押下して、「OK」606を押下すると、データ受付手段306は、対象とする画像(領域)を受け付け、その指定された画像(領域)の範囲に対応するRAW画像データから、画質調整のためのデータ、ここでは、RGBの平均値を算出する旨の信号をデータ送信手段307に送信する(図4:S105)。なお、当該信号送信は、プレビュー画像602内に長方形613が作成され、「RAW画像データ」604または「調整パラメータ」605に属する項目が押下された後でなければ、「OK」606が押下されても、実行されないよう構成される。
【0098】
データ送信手段307は、当該信号を受信すると、画像データ記憶手段305に記憶されたテストパターンのRAW画像データのうち、プレビュー画像で指定されたxy座標に対応するRAW画像データを取得し、そのRAW画像データに所定の演算を施して、RGBの平均値を算出する(図4:S106)。さらに、データ送信手段307は、算出したRGBの平均値をプリンタの補正手段308に送信する(図4:S107)。
【0099】
上記では、データ送信手段307が、プレビュー画像で指定されたxy座標に対応するRAW画像データからRGBの平均値を算出する演算を実行したが、例えば、ユーザにより「ハーフトーン」609が押下された場合は、データ送信手段307が、当該RAW画像データからハーフトーンを演算することになる。なお、演算処理に対応するプログラム、所定の演算式、テーブル等は、データ送信手段307の所定のメモリに予め記憶されている。
【0100】
補正手段308がRGBの平均値を受信すると、画像形成手段302の所定のメモリに予め記憶されている基準のRGBの平均値を、受信したRGBの平均値に書き換え(変更)する(図4:S108)。これにより、画質調整は完了することになる。
【0101】
なお、従来では、プリンタの画質調整を行う場合、スキャナのデータ送信手段がテストパターンに対応するRAW画像データをプリンタの補正手段に送信する必要があった。その場合、例えば、A4サイズのテストパターンに対応するRAW画像データは、約100MBであり、データ送信手段から補正手段へのデータの転送時間は、非常に長くなり、時間が掛かる(例えば、数十秒以上)。
【0102】
本発明に係るデータの転送時間は、例えば、RGBの平均値のデータが数KBであることから、スキャナに備えられた、データ転送に関する部材の性能、スペックにも拠るものの、ほとんど時間が掛からない(例えば、一秒以下)。さらに、ユーザが、プレビュー画像から必要な部分の画像データを指定して、画質調整等の処理を行うため、例えば、所定の調整パラメータを演算する際に、演算する時間もほとんど掛からない。従って、画質調整に掛かる合計時間を短くすることが可能となり、迅速な画質調整処理を実現することが可能となる。
【0103】
このように、上記プリンタから出力されたテストパターンの画像を読み取った際に、読み取ったテストパターンの画像データのうち、ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付けるデータ受付手段と、受け付けた画像データに基づいて、上記画像形成装置の画質を調整するためのデータを当該画像形成装置に送信するデータ送信手段とを備えるよう構成している。
【0104】
これにより、テストパターンの画像データ全てを画質調整のためのデータとすることなく、ユーザが必要な部分のデータを指定して、その部分を対象として画像読取装置に画質調整を行わせることが可能となる。そのため、画質調整のためのデータの演算時間や転送時間を削減することが可能となり、画像形成装置の画質調整を迅速に行うことが可能となる。さらに、ユーザが指定した部分のデータに基づいて、画像形成装置は画質調整を行うこととなるため、例えば、濃度ムラや色ムラの著しい部分をテストパターンの画像から予め確認しておいて、その部分に対応して画質調整を行うことが可能となり、適切な画質調整を行うことが可能となる。また、画像形成装置間で異なるテストパターンに、画像読取装置が機動的に対応することも可能となり、多種の画像形成装置に対しても、適切な画質調整を行うことが可能となる。
【0105】
また、上記データ受付手段は、上記テストパターンの画像をプレビュー画像として画面に表示して、当該テストパターンの画像データのうち、ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付けるよう構成することができる。
【0106】
これにより、ユーザは、テストパターンの画像データを指定する前に、プレビュー画像によって、指定すべき範囲を容易に確認することが可能となる。そのため、ユーザの意図しない、誤った範囲でテストパターンの画像データを指定することなく、適切に画像データの指定を行うことが可能となり、適切な画質調整を実行することが可能となる。
【0107】
また、上記データ受付手段は、プレビュー画像が表示された画面上の位置を指定するポインティングデバイスによって、上記テストパターンの画像データのうち、ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付けるよう構成することができる。
【0108】
これにより、ユーザは、自己の意図する範囲をプレビュー画像に併せて指定することが可能となるとともに、自己の指定するテストパターンの画像データを確認することが可能となる。そのため、ユーザは、画像調整を行いたいテストパターンの画像データを適切に指定することが可能となり、画質調整時におけるユーザの利便性を向上することが可能となる。
【0109】
また、上記データ受付手段は、上記データ送信手段が画質調整データを画像形成装置に送信する前に、画質調整データを、RAW画像データとするか、調整パラメータとするかを、ユーザに選択可能に表示するよう構成することができる。
【0110】
これにより、例えば、画像形成装置と画像読取装置とが別個に設置されている場合であっても、ユーザは、画像形成装置に送信する画質調整データを、画像形成装置に適合した画質調整データとして送信することが可能となる。そのため、画像形成装置と画像読取装置との相互の機種の違い、演算部の有無、ソフトウェアの違い等により生じる画質調整の不具合を解消することが可能となる。その結果、画像形成装置と画像読取装置とが別個に備えられている場合であっても、画像読取装置を機動的に対応させ、画像形成装置の画質調整を適切に行うことが可能となる。
【0111】
なお、本発明の実施形態では、複写機、複合機が各手段を備えるよう構成しても構わないが、スキャナ、外部コントローラ、プリンタが各手段を備えるよう構成すると、特に本発明の作用効果を発揮する。例えば、画像形成装置と画像読取装置とが一体となった複合機、複写機では、画像形成装置と画像読取装置との相互の機種の違い(差異)、演算部の有無、ソフトウェアの違い(差異)が生じ難い。一方、画像形成装置と画像読取装置とが別個である場合、当該差異が生じ易く、従って、画像形成装置と画像読取装置との相互の製造メーカを同一にしなければならない問題が生じたりする。そのような場合は、本発明各手段を採用すると、画質調整に要する時間を大きく削減することが可能となるという効果を得ることができる。さらに、画質調整を実行する管理者・サービスマン等の負担を軽減することが可能となる。
【0112】
また、本発明の実施形態では、スキャナ、外部コントローラ、プリンタが各手段を備えるよう構成したが、これに限られず、例えば、同一の画質調整システムを構成する他の画像形成装置乃至画像読取装置であれば、いずれかの他の画像形成装置乃至画像読取装置に当該各手段を備えるよう構成しても、本発明の作用効果を奏する。例えば、プリンタに、データ受付手段を備える場合等である。もちろん、上記各手段を備えた一画像形成装置(例えば、画像形成装置と画像読取装置とが一体となった複合機)に当該各手段を備えるよう構成しても構わない。さらに、上記画質調整システムに複数のスキャナ、外部コントローラ、プリンタ、複写機、複合機を備えるよう構成しても構わない。
【0113】
また、本発明の実施形態では、スキャナ、外部コントローラ、プリンタが各手段を備えるよう構成したが、当該各手段を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。上記構成では、上記プログラムを複合機に読み出させ、その複合機が上記各手段を実現する。その場合、上記記録媒体から読み出されたプログラム自体が本発明の作用効果を奏する。さらに、各手段が実行するステップをハードディスクに記憶させる記憶方法として提供することも可能である。
【0114】
また、本発明の実施形態では、プリンタの画質調整モードに関して採用したが、例えば、プリンタに対して、各色の印画位置の位置合わせを行うレジストレーション調整モード、カラー紙、厚紙等の通常のシート以外のシートに対する画像の印画位置を調整する印画位置調整モード、通常のシート乃至通常のシート以外のシートに対して画像を余白なく記録する(シートに画像を印字する際に生じる端部の余白位置を記録する)ための端部調整モード等にも採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上のように、本発明にかかる画像読取装置は、スキャナ、複写機、複合機等に有用であり、画像読取装置に接続された画像形成装置の画質調整を迅速かつ適切に行うことが可能な画像読取装置として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施形態に係る画質調整システムの全体構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画質調整システムの制御系ハードウェアの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画質調整システムの機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態の実行手順を示すためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係るテストパターンの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に液晶ディスプレイ上に表示された画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
100 複合機
301 条件受付手段
302 画像形成手段
303 テストパターン記憶手段
304 画像読取手段
305 画像データ記憶手段
306 データ受付手段
307 データ送信手段
308 補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを出力するプリンタ部を備えた画像形成装置と通信可能に接続された画像読取装置において、
上記プリンタ部から出力された、上記画像形成装置の画質調整を行うためのテストパターンの画像を読み取った際に、読み取ったテストパターンの画像データのうち、ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付けるデータ受付手段と、
受け付けた画像データに基づいて、上記画像形成装置の画質を調整するためのデータである画質調整データを当該画像形成装置に送信するデータ送信手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
上記データ受付手段は、上記テストパターンの画像をプレビュー画像として画面に表示して、当該テストパターンの画像データのうち、ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付けることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
上記データ受付手段は、プレビュー画像が表示された画面上の位置を指定するポインティングデバイスによって、上記テストパターンの画像データのうち、ユーザにより指定された範囲内の画像データを受け付けることを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
上記データ受付手段は、上記データ送信手段が画質調整データを画像形成装置に送信する前に、画質調整データを、画像読取装置の撮像部によりテストパターンの光学像を光電変換した後、A/D変換を施したRAW画像データとするか、そのRAW画像データに所定の演算処理を施して算出された調整パラメータとするかを、ユーザに選択可能に表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−50767(P2010−50767A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213520(P2008−213520)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】