説明

画像読取装置

【課題】画像読取中に光源駆動部の異常状態を検出することが可能な技術を開示する。
【解決手段】画像読取装置1は、光源31,41及び受光する受光部32を有する画像読取部24と、電流設定信号SG3を出力する発光制御部11と、電流設定信号に応じた駆動電流を光源に流して発光させる光源駆動部16と、駆動電流Iの電流値を検知する電流検知部54と、光源の発光中に、原稿Mの画像を主走査方向に沿ったラインごとに読み取る読取動作を画像読取部に実行させる読取制御部11と、読取動作中において、電流検知部で検知された電流値が基準値と相違する場合に、光源駆動部が第1異常状態であると判断する異常判断部11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置において静電電流等の外的な要因による光源駆動部の異常状態を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、操作者が誤って密着型イメージセンサ表面に触れたとしても、故障とならないよう構成された画像読取装置がある。具体的には、操作者が静電気を帯電した状態で原稿カバーを開いて読み取りセンサ部の表面に触れると、読み取りセンサ部が静電電流を受け、センサコントロールICがラッチアップなどの異常状態になることがある。そこで、上記従来の画像読取装置では、原稿カバーが開状態のときにセンサコントロールICへの電源供給をONし、原稿カバーが閉状態のときにセンサコントロールICへの電源供給をOFFする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−46194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記静電電流等の外的な要因で、上記センサコントローラIC等の光源駆動部が光源を正常に発光させることができない異常状態は、画像読取中に生じることもある。画像読取中に光源駆動部が異常状態になると、光源からの光量が変動し、その変動に応じた濃淡が画像の読取結果に現れるなどの悪影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
このような光量制御部の異常状態を検出する方法として、画像読取部が有する画像読取用の受光素子を利用する方法がある。具体的には、この方法では、画像読取部の光源からの光を用紙の余白部分に照射し、その反射光を受光する受光素子で受光し、その受光量に基づき異常状態を検出する。しかし、この方法では、画像読取中に異常状態を検出することはできない。
【0006】
本明細書では、画像読取中に光源駆動部の異常状態を検出することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される画像読取装置は、原稿を照射する光源、及び、前記原稿からの反射光を受光する受光部を有する画像読取部と、電流設定信号を出力する発光制御部と、前記発光制御部から出力される前記電流設定信号に応じた駆動電流を前記光源に流して発光させる光源駆動部と、前記光源駆動部から前記光源に流れる駆動電流の電流値を検知する電流検知部と、前記光源の発光中に、前記原稿の画像を主走査方向に沿ったラインごとに読み取る読取動作を前記画像読取部に実行させる読取制御部と、前記読取動作中において、前記電流検知部で検知された電流値が基準値と相違する場合に、前記光源駆動部が第1異常状態であると判断する異常判断部と、を備える。
【0008】
上記画像読取装置では、前記読取制御部は、前記異常判断部が前記第1異常状態であると判断しても前記読取動作を続行し、当該第1異常状態であると判断されたときに読み取った異常ラインデータの代わりに、当該異常ラインデータよりも前に正常に読み取った前ラインデータ、及び、後に正常に読み取った後ラインデータの少なくとも一方のラインデータに基づき補完ラインデータを生成する補完処理を実行してもよい。
【0009】
上記画像読取装置では、前記読取制御部は、前記補完処理において、前記異常ラインデータを、前記前ラインデータまたは前記後ラインデータに置換してもよい。
【0010】
上記画像読取装置では、前記読取制御部は、前記補完処理において、前記前ラインデータと前記後ラインデータとに基づく補間法により前記補完ラインデータを生成してもよい。
【0011】
上記画像読取装置では、前記発光制御部は、前記電流検知部で検知された電流値が前記基準値と相違する場合、前記電流設定信号が示す設定値を変更して前記光源に流す駆動電流を前記基準値に近づけてもよい。
【0012】
上記画像読取装置では、前記異常判断部は、前記電流検知部で検知された電流値と前記基準値との差が規定量以上である場合に、前記光源駆動部が第2異常状態であると判断し、前記読取制御部は、前記異常判断部が前記第2異常状態でないと判断した場合には現在実行中の読取動作を続行し、前記第2異常状態であると判断した場合には現在実行中の読取動作を中止してもよい。
【0013】
上記画像読取装置では、前記異常判断部は、前記電流検知部で検知された電流値と前記基準値との差が規定量以上である場合に、前記光源駆動部が第2異常状態であると判断し、前記読取制御部は、前記異常判断部が前記第2異常状態でないと判断した場合には現在実行中の読取動作を続行し、前記第2異常状態であると判断した場合には現在実行中の読取動作を中止してもよい。
【0014】
上記画像読取装置では、前記読取制御部は、前記異常ラインデータを連続して基準数読み取った場合には、現在実行中の読取動作を中止してもよい。
【0015】
上記画像読取装置では、前記現在実行中の読取動作を中止したことを通知する中止通知部を備える。
【0016】
上記画像読取装置では、前記読取制御部は、前記現在実行中の読取動作を中止した後、前記異常ラインデータよりも前のラインデータから読取動作を再開する。
【0017】
なお、この発明は、制御装置、制御方法、印刷装置、印刷方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、画像読取中に光源駆動部の異常状態を検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】画像読取装置1の外観を示す斜視図
【図2】画像読取装置1の概略的な内部構成図
【図3】画像読取部24の概略的な構成図
【図4】画像読取装置1の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図5】光源31及び点灯回路16の回路構成図
【図6】画像読取処理を示すフローチャート
【図7】電流設定値、駆動電流、発光量の変化、および、模式的なラインを示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
本明細書が開示する発明の一実施形態を図1〜図9を参照しつつ説明する。以下の説明では、図1から3中の符号Xが付された方向が画像読取装置1の前方向であり、符号Yが付された方向が右方向であり、符号Zが付された方向が上方向であるものとして説明する。
【0021】
1.画像読取装置の機械的構成
図1は画像読取装置1の外観を示す斜視図であり、図2は画像読取装置1の概略的な内部構成図である。画像読取装置1は、原稿トレイ2と、本体部3と、排出トレイ4と、を含む。この画像読取装置1は、原稿トレイ2に載置された原稿M(図2参照)を本体部3内に搬送しつつ、その搬送中の原稿M上の画像を、本体部3内に設けられた画像読取部24(図2参照)により読み取り、その画像が読み取られた原稿Mを排出トレイ4に排出するシートフィードスキャナである。なお、原稿Mは、紙製に限らずプラスチック製などでもよい。
【0022】
原稿トレイ2は、前側が下方に傾斜した状態で、本体部3の後側に設けられている。原稿トレイ2の左右の両端部には、ガイド7A、7Bが左右方向に移動可能に設けられている。ガイド7A、7Bは、例えばユーザにより押し広げられ、又は押し狭められることにより、ガイド7A、7Bの間の距離が原稿の左右方向の幅と等しくなるよう調整可能であり、それらのガイド7A、7Bの間に1または複数の原稿Mが配置される。
【0023】
図2に示すように、本体部3の内部には、原稿トレイ2の前端から排出トレイ4の後端まで延びる搬送経路22が設けられており、この搬送経路22の周辺に、ピックアップローラ20と、分離パッド21と、フィードローラ23と、画像読取部24と、排出ローラ25と、フロントセンサ26、リヤセンサ27とが設けられている。
【0024】
ピックアップローラ20は、原稿トレイ2の前側に配置され、摩擦力により、原稿トレイ2に載置された1または複数枚の原稿Mを本体部3の内部へと引き込む。分離パッド21は、ピックアップローラ20に対向するように配置され、摩擦力により、複数枚の原稿Mを1枚ずつ分離する。これにより、原稿Mが1枚ずつ本体部3の内部へと搬送される。
【0025】
フィードローラ23は、ピックアップローラ20等よりも搬送経路22の下流側に設けられ、図示しないモータにより駆動され、搬送経路22上に存在する原稿Mを前方へと搬送する。画像読取部24は、フィードローラ23よりも搬送経路22の下流側に設けられ、そのフィードローラ23による搬送中の原稿Mの画像を読み取る。
【0026】
排出ローラ25は、画像読取部24よりも搬送経路22の下流側に設けられ、画像読取部24にて画像読取処理がされた原稿Mを、本体部3の外部に送り出す。排出トレイ24は本体部3の前側に設けられ、その排出トレイ24に、本体部3の外部に送り出された原稿Mが積層される。なお、搬送経路22、ピックアップローラ20、フィードローラ23、排出ローラ25が搬送機構28を構成する。
【0027】
フロントセンサ26は、原稿トレイ2の前端側に設けられ、原稿トレイ2上に配置されている原稿Mの有無を検知し、その検知結果に応じた検知信号SG1を出力する。リヤセンサ27は、搬送経路22途中に存在する原稿Mの有無を検知し、その検知結果に応じた検知信号SG2を出力する。なお、フロントセンサ26、リヤセンサ27は、例えば、圧力センサなどの接触式センサでも、光学センサや磁気センサなどの非接触式センサでもよい。
【0028】
図3は画像読取部24の概略的な構成図である。画像読取部24は、搬送経路22を挟んで対向配置された一対の読取デバイス30、40を含んで構成されている。一対の読取デバイス30,40は、搬送経路22の搬送方向においてお互いに相対移動不能に設けられている。なお、読取デバイス30,40は、CIS(Contact Image sensor)や、CCD(Charge Coupled Drive Image Sensor)であることが好ましい。
【0029】
読取デバイス30は、搬送経路22の上側に配置されており、搬送中の原稿Mの一面、換言すれば上面の画像を読み取る。具体的には、読取デバイス30は、光源31、受光部32、基準部材33、プラテンガラス34がキャリッジ35に搭載された構成とされている。光源31は、発光ダイオードなどを備えて構成され、受光部32は、図示しない複数の受光素子が左右方向に配列されて構成されている。プラテンガラス34は、搬送経路22に沿って配置されている。光源31は、プラテンガラス34を介して搬送経路22内を搬送される原稿M、または、読取デバイス40の基準部材43に光L1を照射し、受光部32は、原稿Mまたは基準部材43からの反射光L2を受光する。
【0030】
読取デバイス40は、搬送経路22の下側に配置されており、搬送中の原稿Mの他面、換言すれば下面の画像を読み取る。具体的には、読取デバイス40は、光源41、受光部42、基準部材43、プラテンガラス44がキャリッジ45に搭載された構成とされている。光源41及び受光部42は、上記光源31及び受光部42と同様の構成である。プラテンガラス44は、搬送経路22に沿って配置されている。光源41は、プラテンガラス44を介して搬送経路22内を搬送される原稿M、または、読取デバイス30の基準部材33に光L3を照射し、受光部42は、原稿Mまたは基準部材33からの反射光L4を受光する。
【0031】
基準部材33及び基準部材43は、白色基準板に限らず灰色基準板などでもよく、また、図3に示すようにプラテンガラス34,44に埋設された構成以外に、プラテンガラス34,44の前面または背面に配置された構成でもよい。図3に示すように、読取デバイス30は、読取デバイス40が有する基準部材43を用いてシェーディング補正等に必要な白基準データを取得し、読取デバイス40は、読取デバイス30が有する基準部材33を用いてシェーディング補正等に必要な白基準データを取得する。
【0032】
また、図1に示すように、本体部3には、この他に、電源スイッチや各種設定ボタンからなり、ユーザからの操作指令等を受け付ける操作部5や、液晶ディスプレイからなり、画像読取装置1の状況や画像読取部24が原稿を読み取った画像を表示する表示部6を含む。
【0033】
2.画像読取装置の電気的構成
図4は画像読取装置1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。画像読取装置1は、画像読取装置1の各部を制御する制御回路10を含む。制御回路10は、中央処理装置(以下、CPU)11、ROM12、RAM13を備え、これらにバス14を介して操作部5、表示部6、アナログフロントエンド(以下、AFE)15、点灯回路16、搬送機構28に含まれる各ローラを駆動する駆動回路17、読取デバイス30、40、フロントセンサ26、リヤセンサ27などが接続されている。
【0034】
ROM12には、画像読取装置1の動作を制御するための制御プログラムなど、各種のプログラムが記憶されており、CPU11は、ROM12から読み出した制御プログラムに従って各部の制御を行う。
【0035】
点灯回路16は、読取デバイス30、40に各々接続されており、CPU11からの命令に基づいて、光源31、41の点灯及び照射時間を制御する信号を読取デバイス30、40に送信する。読取デバイス30、40は、点灯回路16から信号を受け取ると、光源31、41を点灯し、照射時間に亘って光源31、41を発光させる。その際、読取デバイス30、40は、CPU11からの命令に基づいて、搬送経路22内を搬送される原稿M又は基準部材33、43から反射される反射光を受光部32、42にて受光し、受光部32、42が受光した受光量応じたアナログ信号である読取電圧をAFE15に出力する。読取デバイス30、40は、受光部32、42の各受光素子を用いて反射光を受光し、各受光素子が受光した受光量に応じた読取電圧を順次、AFE15に出力する。
【0036】
AFE15は、読取デバイス30、40に各々接続されており、CPU11からの命令に基づいて、読取デバイス30、40から送信される読取データをデジタル信号である階調値に変換する。AFE15は、予め定められた分解能(例えば、8ビットであるならば0から255の階調)を有している。AFE15は、読取デバイス30、40から出力された読取電圧を8ビット(0〜255)の読取データにA/D変換を行う。AFE15によってA/D変換された読取データは、バス14を介してRAM13に記憶される。
【0037】
3.光源及び点灯回路
図5は光源31及び点灯回路16の回路構成図である。なお、同図には光源41は省略されているが、光源41についても光源31と同様に次述する回路構成が備えられている。また、点灯回路16は、光源駆動部の一例であり、LEDドライバやセンサコントローラICなどが好ましい。
【0038】
点灯回路16は、デジタルアナログ変換回路51、定電流回路52、スイッチング素子53を備える。デジタルアナログ変換回路51は、制御回路10から与えられるデジタル信号としての電流設定信号SG3を、アナログ信号SG4に変換して定電流回路52に与える。
【0039】
電源ラインVDDとグランドラインGNDとの間には、定電流回路52、光源31及びスイッチング素子53が直列接続されている。定電流回路52は、電源VDDに接続されており、デジタルアナログ変換回路51から受けたアナログ信号SG4に応じた駆動電流Iを生成する。スイッチング素子53は、制御回路10からオン信号SG6を受けることによりオン動作し、これにより、定電流回路52から駆動電流Iが光源31に流れて、光源31が発光する。
【0040】
また、定電流回路52は、電流検知回路54を有し、この電流検知回路54は、定電流回路52が光源31に流す駆動電流Iに応じた検知信号SG5を制御回路10に与える。これにより、CPU11は、光源31に流れる駆動電流Iの電流値を把握することができる。なお、電流検知回路54は、電流検知部の一例であり、上記駆動電流Iの電流経路に設けられる図示しない検出抵抗を有し、当該検出抵抗の負担電圧に応じた電圧信号を、上記検知信号SG5として出力する構成が好ましい。
【0041】
4.画像読取、及び、点灯回路の異常検出
(1)光量調整処理
CPU11は、ユーザによる操作部5での操作や外部機器からの指示信号の受信に基づき、画像読取の開始指示を受け付ける指示受付処理を実行する。次に、CPU11は、光量調整処理を実行する。例えば、CPU11は、各読取デバイス30,40の光源31,41を発光させ、基準部材33,43からの反射光を受光部32、42にて受光させる投受光動作を実行させる。
【0042】
そして、CPU11は、受光部32,42からの受光信号に応じた階調値に基づき、電流設定値を決定する。電流設定値は、光源31,41の発光量を所定の目標量にさせるために点灯回路16に与えるべき電流設定信号SG3が示す値である。なお、RAM13には、点灯回路16の特性に基づく、電流設定値と、発光量或いは駆動電流Iの電流値との対応関係情報が記憶されている。対応関係情報は、予め実験などにより求められたものが好ましく、データテーブルでも演算式でもよい。
【0043】
(2)補正データ作成処理
また、CPU11は補正データ作成処理を実行する。CPU11は、例えば、光源31,41が発光していないときの受光信号に応じた階調値に基づき黒基準データを取得し、上記投受光動作時の受光信号に応じた階調値に基づき白基準データを取得する。そして、黒基準データ及び白基準データに基づきシェーディング補正時に用いる補正データを作成し、例えばRAM13に記憶する。
【0044】
(3)画像読取処理
図6は画像読取処理を示すフローチャートである。また、図7は電流設定値、駆動電流、発光量の変化、および、模式的なラインを示すタイムチャートである。CPU11は、補正データ作成処理の実行後、上記制御プログラムに従って画像読取処理を実行する。このとき、CPU11は、発光制御部、読取制御部、異常判断部として機能する。CPU11は、まず上記光量調整処理で決定された電流設定値を示す電流設定信号SG3を点灯回路16のデジタルアナログ変換回路51に与えるとともに、スイッチング素子53にオン信号SG6を与えてオン動作させる。これにより、点灯回路16が正常であれば、光源31,41は上記電流設定値に対応する発光量、即ち目標量で発光する。
【0045】
また、CPU11は、異常ライン数Nをゼロにリセットする(S2)。異常ライン数Nは、点灯回路16が異常状態であるときに画像読取部24により読み取られたラインデータの本数である。ラインデータは、CPU11が、次述する読取動作で各読取デバイス30,40からAFE15を介して読み取る1または複数本分の画像ラインの階調値、換言すれば画像データであり、画像ラインは、主走査方向、即ち、画像読取装置1の左右方向に沿う。以下、1回の読取動作で1本分のラインデータを読み取る場合を例に挙げて説明する。また、異常状態時に読み取られたラインデータを「異常ラインデータ」という。また、S2の処理は、S1の処理よりも前または並行して実行してもよい。
【0046】
次に、CPU11は、各読取デバイス30,40から1ライン分の階調値、即ち、1本分のラインデータを取得してラインの読取順位に対応付けてRAM13に記憶する読取動作を実行する(S3)。このときCPU11は読取制御部として機能する。また、CPU11は、電流検知回路54からの検知信号SG5に基づき、点灯回路16から光源31,41に流れる駆動電流Iの電流値を検知する(S4)。なお、S4の処理は、S3の処理よりも前または並行して実行してもよい。
【0047】
CPU11は、検知された駆動電流Iの電流値が基準値と相違するかどうかを判断する(S5)。このときCPU11は異常判断部として機能する。基準値は、正常状態の点灯回路16に、上記目標量に対応する電流設定値を与えた時に、当該点灯回路16が光源31,41に流す駆動電流Iで電流値が、初期値とされている。なお、電流値と基準値との差が微少量、例えば基準値の数%に相当する量である場合、両値は一致すると判断してもよい。
【0048】
CPU11は、電流値が基準値に略一致する場合には(S5:NO)、点灯回路16は正常状態であると判断する(図7の時間T1より前の期間、および、時間T2と時間T3との間の期間参照)。そして、CPU11は、異常ライン数Nをゼロにリセットし(S6)、このときに読み取ったラインデータを上記補正データに基づき補正を施し、例えば画像読取装置1と通信可能に接続された図示しない端末装置や印刷装置に出力する(S7)。以下、正常状態時に読み取られたラインデータを「正常ラインデータ」という。CPU11は、1枚の原稿Mについて全ラインの画像読取を終了していなければ(S8:NO)、S3に戻り、全ラインの画像読取を終了していれば(S8:YES)、本画像読取処理を終了する。
【0049】
一方、CPU11は、図7の時間T1、T3のように、電流値が基準値と相違する場合には(S5:YES)、点灯回路16は異常状態であると判断する。この異常状態とは、点灯回路16が、CPU11から受けた電流設定信号SG3に対し、上記対応関係情報に従った駆動電流Iを流すことができない状態をいう。この異常状態が発生する要因は、帯電したユーザが点灯回路16の近傍を触れたり、搬送経路22を搬送されることによって帯電した原稿Mによって、静電気が点灯回路16に伝わることによって生じるノイズなどが生じることが挙げられる。
【0050】
CPU11は、点灯回路16が異常状態であると判断すると(S5:YES)、検知された駆動電流Iの電流値と基準値との差が規定量以上であるかどうかを判断する(S9)。また、この規定量は、例えば基準値の数%に相当する量であることが好ましい。CPU11は、差が規定量未満であると判断した場合(S9:NO)、この異常状態時に読み取った異常ラインデータに対する補完処理を実行する(S10)。なお、このときの異常状態は第1異常状態の一例である。
【0051】
補完処理としては補完処理A,Bのいずれかが好ましい。
補完処理Aは、異常ラインデータよりも前に読み取った正常ラインデータ、または、後に読み取った正常ラインデータを補完ラインデータとし、異常ラインデータを、補完ラインデータに置換する処理である。これらの補完ラインデータは前ラインデータ、後ラインデータの一例である。置換する場合、異常ラインデータを破棄してもよいし、異常ラインデータに対して補完ラインデータを上書きしてもよい。前ラインデータ及び後ラインデータは、読取順位が異常ラインデータの近傍であることが好ましく、読取順位が異常ラインデータの直前または直後であることがより好ましい。
【0052】
また、前ラインデータまたは後ラインデータについて複数本分の階調値の平均値を算出し、その平均値に基づくラインデータを補完ラインデータとしてもよい。この補完処理Aによれば、異常ラインデータを、前ラインデータまたは後ラインデータに置換するという比較的に簡単な方法により補完処理を実現することができる。なお、図7には、異常ラインデータL3を、直前のラインデータL2に置換する例が示されている。
【0053】
補完処理Bは、前ラインデータと後ラインデータとに基づく補間法により補完ラインデータを生成し、異常ラインデータを、補完ラインデータに置換する処理である。補間法は、平均法や、線形補間法が好ましい。平均法は、前ラインデータと後ラインデータの階調値の平均値を算出し、その平均値に基づくラインデータを補完ラインデータとする方法である。線形補間法は、前ラインデータと後ラインデータの階調値に基づき線形補間し、その線形補間による階調値に基づくラインデータを補完ラインデータとする方法である。この補完処理Bによれば、上記補完処理Aに比べて、点灯回路16の異常状態による影響が、より抑制された読取画像を生成することができる。
【0054】
CPU11は、補完処理を実行すると、検知された電流値と基準値との差、或いは、電流検知回路54からの検知信号SG5に応じて光源31,41に流す駆動電流Iの電流値が基準値に近づくよう、点灯回路16に与える電流設定値を変更する(S11 図7の時間T2参照)。このように電流設定値を変更することにより、この後に、異常状態が継続して異常ラインデータが読み取られ続けることを抑制することができる。
【0055】
CPU11は、電流設定値の変更後、異常ライン数Nに1を加算し(S12)、加算後の異常ライン数Nが基準数に達したかどうかを判断する(S13)。上記補完処理により生成される補完ラインデータは、本来読み取った正常ラインデータではない。従って、1枚の原稿Mの読取画像中に含まれる補完ラインデータの本数が多くなるほど、読取画像の品質が規定レベルよりも低下し得る。基準数は、読取画像の品質が規定レベルよりも低下すると想定される、補完ラインデータの本数であり、換言すれば、1枚の原稿Mの画像読取中における補完処理の実行回数である。本実施形態では、基準数は10回に設定されている。
【0056】
CPU11は、異常ライン数Nが基準数に達していないと判断した場合には(S13:NO)、異常ラインデータの代わりに、補完ラインデータに上記補正データに基づき補正を施し、上記端末装置等に出力し(S7)、画像読取を続行する。これに対して、CPU11は、異常ライン数Nが基準数に達したと判断した場合には(S13:YES)、読取画像の品質が規定レベルよりも低下するとみなして、現在対象の原稿Mに対する画像読取を中止し、通知処理を実行する(S14)。
【0057】
この通知処理では、CPU11は、点灯回路16が異常状態であること、画像読取を中止したこと、および、画像読取を再実行することの少なくともいずれか1つを表示部6に表示させる。画像読取の中止を表示する場合、表示部6は中止通知部として機能する。これにより、現在実行中の読取動作を中止したことをユーザに通知することができる。なお、通知方法としては、音声による通知や、通信による外部機器への通知でもよい。CPU11は、通知処理の実行後、本画像読取処理を終了する。
【0058】
画像読取の再実行の方法としては、CPU11が、搬送機構28が有する各ローラ23等を逆回転させて原稿Mを逆搬送させ、異常状態が発生したラインよりも前の画像ラインから図6に示す画像読取処理を再開する方法がある。この場合、CPU11は、常に原稿Mの画像の先頭ラインから画像読取処理を再開する構成にすれば、異常状態が発生したラインを記憶したりする必要がないため、処理を簡略化することができる。
【0059】
また、CPU11は、異常状態が発生したときの原稿Mを再度、原稿トレイ2にセットするようユーザに促すメッセージを表示部6に表示させ、当該原稿Mについて画像読取処理を最初から実行する方法もある。このように、画像読取を再実行することにより、中止後に、点灯回路16が正常状態に復帰した場合に、正常な画像読取を実行することができる。
【0060】
CPU11は、図7の時間T3のように、駆動電流Iの電流値と基準値との差が規定量以上であると判断した場合(S9:YES)、やはり読取画像の品質が規定レベルよりも低下するとみなして、現在対象の原稿Mに対する画像読取を中止し、通知処理を実行する(S14)。なお、このときの異常状態は第2異常状態の一例である。これにより、画像読取に与える影響が極めて大きい異常状態で画像読取が続行されることを抑制することができる。
【0061】
5.本実施形態の効果
点灯回路16が異常状態になると、それに伴って点灯回路16により光源31,41に流される駆動電流Iの電流値が変動する。そこで、本実施形態によれば、電流検知回路54で検知された駆動電流の電流値が基準値と相違する場合に(S5:YES)、点灯回路16が異常状態であると判断される。これにより、画像読取中に点灯回路16の異常状態を検出することができる。
【0062】
また、本実施形態では、電流値と基準値との差が規定量未満である場合には画像読取が続行され、異常ラインデータの代わりに、当該異常ラインデータよりも前に正常に読み取った前ラインデータ、及び、後に正常に読み取った後ラインデータの少なくとも一方のラインデータに基づき補間ラインデータが生成される。これにより、画像読取中に点灯回路16が第1異常状態になっても、画像読取を続行しつつ、第1異常状態のときに読み取られたラインデータによる影響が抑制された読取画像を生成することができる。
【0063】
また、異常ラインデータを連続して基準数だけ読み取った場合には(S13:YES)、現在実行中の読取動作を中止する。これにより、異常状態が長期間継続した状態で画像読取が続行されることを抑制することができる。
【0064】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。特に、各実施形態の構成要素のうち、最上位の発明の構成要素以外の構成要素は、付加的な要素なので適宜省略可能である。
【0065】
(1)上記実施形態では、画像読取装置1は、画像読取機能のみ有する構成であった。しかし、画像読取機能に加えて、印刷機能、ファクシミリ機能などを有する複合機、コピー機、ファクシミリ装置などでもよい。また、画像読取装置1はシートフィードスキャナであった。しかし、原稿Mが固定配置され、画像読取部が画像読取をしつつ移動する、いわゆるフラットベットタイプでもよい。
【0066】
(2)上記実施形態では、RAM13がラインデータなどの各情報を記憶する例を挙げたが、他の記憶部でもよい。例えばハードディスク装置、フラッシュメモリ、CD−ROMなどの記憶媒体でもよい。
【0067】
(3)上記実施形態では、複数のローラを有する搬送機構28を例に挙げた。しかし、回転駆動されるベルトを備える搬送機構などでもよい。
【0068】
(4)上記実施形態では、一対の読取デバイス30,40は搬送経路22を挟んで対向配置されていた。しかし、一対の読取デバイス30,40が、搬送経路22の搬送方向において互いにずれた位置に配置された構成でもよい。また、読取デバイスを1つだけ備える画像読取装置でもよい。
【0069】
(5)上記実施形態では、点灯回路16が異常状態である場合に(S5:YES)補完処理等を実行した。しかし、単に異常状態であることを、表示部6などを介して通知するだけで、補完処理等を実行せずに通常の読取動作を続行する構成でもよい。
【0070】
(6)上記実施形態の画像読取処理のS10において補完処理に代えて、次の補正処理を実行してもよい。具体的には、CPU11が、異常ラインデータの階調値を、電流検知部で検知された電流値と基準値との差に応じた補正係数により補正した補正ラインデータを生成し、この補正ラインデータを、異常ラインデータの代わりとする。これにより、異常ラインデータの階調値の変化特性を、読取画像に反映させることができる。
【0071】
(7)上記実施形態では、画像読取処理のS11において、電流設定値を変更した。しかし、電流設定値を変更せずに、検知された電流値と基準値との差に応じて上記補正データを変更してもよい。例えば電流値が基準値よりも大きい場合には、補正データのうち明度を示す補正係数の値を小さくする。
【0072】
(8)上記実施形態では、異常ラインデータを連続して基準数だけ読み取った場合に画像読取を中止した。しかし、連続しなくても、原稿Mの画像読取中において、読み取った異常ラインデータの合計本数が基準数に達した場合に画像読取を中止してもよい。この場合、図6の画像読取処理のうちS6の処理は実行されない。
【0073】
(9)上記実施形態では、制御回路10は、1つのCPU11を備え、その1つのCPU11により画像読取処理が実行される構成であった。しかし、複数のCPU11により画像読取処理が実行される構成でもよい。例えば発光制御部としての処理、異常判断部としての処理、補完処理、読取制御部としての処理の一部または全部を別々のCPUに実行させる構成でもよい。また、制御回路10は、汎用性のあるCPUで構成したものに限らず、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)や、FPGA(Field−Programmable Gate Array)などの専用回路で構成したものでもよい。
【符号の説明】
【0074】
1:画像読取装置 6:表示部 11:CPU 16:点灯回路 24:画像読取部 31,41:光源 32:受光部 I:駆動電流 M:原稿 SG3:電流設定信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を照射する光源、及び、前記原稿からの反射光を受光する受光部を有する画像読取部と、
電流設定信号を出力する発光制御部と、
前記発光制御部から出力される前記電流設定信号に応じた駆動電流を前記光源に流して発光させる光源駆動部と、
前記光源駆動部から前記光源に流れる駆動電流の電流値を検知する電流検知部と、
前記光源の発光中に、前記原稿の画像を主走査方向に沿ったラインごとに読み取る読取動作を前記画像読取部に実行させる読取制御部と、
前記読取動作中において、前記電流検知部で検知された電流値が基準値と相違する場合に、前記光源駆動部が第1異常状態であると判断する異常判断部と、を備える画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
前記読取制御部は、前記異常判断部が前記第1異常状態であると判断しても前記読取動作を続行し、当該第1異常状態であると判断されたときに読み取った異常ラインデータの代わりに、当該異常ラインデータよりも前に正常に読み取った前ラインデータ、及び、後に正常に読み取った後ラインデータの少なくとも一方のラインデータに基づき補完ラインデータを生成する補完処理を実行する、画像読取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像読取装置であって、
前記読取制御部は、前記補完処理において、前記異常ラインデータを、前記前ラインデータまたは前記後ラインデータに置換する、画像読取装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像読取装置であって、
前記読取制御部は、前記補完処理において、前記前ラインデータと前記後ラインデータとに基づく補間法により前記補完ラインデータを生成する、画像読取装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記発光制御部は、前記電流検知部で検知された電流値が前記基準値と相違する場合、前記電流設定信号が示す設定値を変更して前記光源に流す駆動電流を前記基準値に近づける、画像読取装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記異常判断部は、前記電流検知部で検知された電流値と前記基準値との差が規定量以上である場合に、前記光源駆動部が第2異常状態であると判断し、
前記読取制御部は、前記異常判断部が前記第2異常状態でないと判断した場合には現在実行中の読取動作を続行し、前記第2異常状態であると判断した場合には現在実行中の読取動作を中止する、画像読取装置。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記読取制御部は、前記異常ラインデータを連続して基準数読み取った場合には、現在実行中の読取動作を中止する、画像読取装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の画像読取装置であって、
前記現在実行中の読取動作を中止したことを通知する中止通知部を備える、画像読取装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記読取制御部は、前記現在実行中の読取動作を中止した後、前記異常ラインデータよりも前のラインデータから読取動作を再開する、画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−209713(P2012−209713A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73176(P2011−73176)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】