説明

画調変換装置およびプログラム

【課題】トリミングすること無く原画像の所望領域を容易かつ各種の画調に変換する画調変換装置を実現する。
【解決手段】ユーザ端末10が原画像中の画調変換したい画像領域をウインドウ画像で指定する。絵画変換サーバ20は原画像中でウインドウ画像によって囲まれた画像領域を画調変換し、画調変換された画像領域の画像を、ウインドウ画像によって囲まれた画像領域に貼り付けてユーザ端末10へ送出する。ユーザ端末10では、原画像中のウインドウ画像で囲まれた領域が画調変換された画像として表示される。絵画変換サーバ20では、原画像中に配置するウインドウ画像が指定された時点から所定時間経過する毎に、画調変換に用いる変換アルゴリズム・パラメータ群を異ならせる。この結果、原画像中の画調変換したい画像領域をウインドウ画像で指定するだけで、そのウインドウ画像で囲まれた領域が所定時間経過する毎に異なる画調に変換されて表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリミングすること無く原画像の所望領域を容易かつ各種の画調に変換する画調変換装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像を絵画調に変換する技術が知られている。この種の技術として、例えば特許文献1には、原画像の各部分をより均一な輝度、彩度および色相を持つように修正して、所謂筆運びを表現したり、原画像中のコントラストエッジを検出し、検出したコントラストエッジに沿う輝度を修正して輪郭線を強調したりすることで原画像を油絵風の絵画に変換する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−44867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、原画像中の所望の画像領域について絵画調に変換する等の画調変換を施す場合には、先ず原画像から所望の画像領域をトリミングして切り出し、各種の画調(水彩画、油彩画(印象派)、油彩画(野獣派)、ガッシュ画、パステル画など)の中から選択した画調に従い、トリミングされて切り出された画像領域を画調変換することになるが、そうして画調変換された画像が意図したイメージ通りのものでなければ、最初からやり直しすることになり、極めて煩雑な作業を強いられる。つまり、言い換えれば、トリミングすること無く原画像の所望領域を容易かつ各種の画調に変換することが出来ない、という問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、トリミングすること無く原画像の所望領域を容易かつ各種の画調に変換することができる画調変換装置およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、原画像中の画調変換したい領域を指定する領域指定手段と、前記領域指定手段が原画像中の画調変換したい領域を指定してからの経過時間に応じて異なる種類の画調を指定する画調指定手段と、前記領域指定手段により指定された原画像中の領域の画像を、前記画調指定手段により指定された画調に変換する画像変換手段と、前記画像変換手段により画調変換された領域の画像を、前記領域指定手段により指定された原画像中の領域に合成して表示する合成表示手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
上記請求項1に従属する請求項2に記載の発明では、前記領域指定手段は、枠形画像の大きさを設定するサイズ設定手段と、原画像中に配置する枠形画像の位置を設定する位置設定手段とを備え、前記位置設定手段により設定される原画像中の配置位置に、前記サイズ設定手段により設定される大きさの枠形画像を設定し、その枠形画像で囲まれた原画像の画像領域を画調変換したい領域に指定することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、コンピュータに、原画像中の画調変換したい領域を指定する領域指定ステップと、前記領域指定ステップが原画像中の画調変換したい領域を指定してからの経過時間に応じて異なる種類の画調を指定する画調指定ステップと、前記領域指定ステップにより指定された原画像中の領域の画像を、前記画調指定ステップにて指定された画調に変換する画像変換ステップと、前記画像変換ステップにて画調変換された領域の画像を、前記領域指定ステップで指定された原画像中の領域に合成して表示する合成表示ステップとを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、トリミングすること無く原画像の所望領域を容易かつ各種の画調に変換することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の一形態による絵画変換システム100の全体構成を示すブロック図である。
【図2】絵画変換サーバ20の構成を示すブロック図である。
【図3】RAM20cのメモリ構成を示すメモリマップである。
【図4】画像データのデータ形式を説明するための図である。
【図5】筆触パターンの一例を示す図である。
【図6】端末処理の動作を示すフローチャートである。
【図7】サーバ処理の動作を示すフローチャートである。
【図8】サーバ処理の動作を示すフローチャートである。
【図9】画像変換処理の動作を示すフローチャートである。
【図10】変換処理の動作を示すフローチャートである。
【図11】画像変換処理の動作の一例を説明するための図である。
【図12】原画像(1)の一例を示す画像である。
【図13】原画像(1)中にウインドウ画像を重ねた画像である。
【図14】原画像(1)中に重ねたウインドウ画像内部を油彩画に変換した一例である。
【図15】原画像(2)の一例を示す画像である。
【図16】原画像(2)中にウインドウ画像を重ねた画像である。
【図17】原画像(2)中に重ねたウインドウ画像内部を油彩画に変換した一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
A.構成
(1)システム概要(発明の概要)
図1は、実施の一形態による絵画変換システム100の全体構成を示すブロック図である。この図に示す絵画変換システム100は、インターネットを介して絵画変換サーバ20にアクセスする複数のユーザ端末10−1〜10−Nからなる。ユーザ端末10は、インターネット接続機能およびブラウザ機能を備えるパーソナルコンピュータから構成される。
【0012】
ユーザ端末10では、インターネットを介して絵画変換サーバ20にアクセスし、表示ページをトップページから絵画変換ページに移動させると、絵画変換サーバ20側から送出される原画像を受信して画面表示する。原画像とは、例えば図12に図示される原画像(1)や、図15に図示される原画像(2)等の絵画調変換される元の画像を指す。
【0013】
絵画変換ページでは、複数の原画像(1)〜(N)が画面表示される。ユーザ端末10では、これら原画像(1)〜(N)の中から絵画調変換したい原画像中に、枠のサイズ(大きさ)および配置位置がユーザ操作に応じて変更可能なウインドウ画像を配置する。具体的には、図13に図示するように、原画像(1)の中央から下部を囲むウインドウ画像を配置したり、図16に図示するように、原画像(2)の右下部を囲むウインドウ画像を配置したりする。
【0014】
なお、図13および図16に図示した一例では、黒枠のウインドウ画像であるが、額縁を模した形状のウインドウ画像を用いる方が好ましい。すなわち、原画像中に配置されるウインドウ画像とは、絵画調変換したい画像領域を指定するものである為、ウインドウ画像が額縁を模していれば、絵画調変換された画像領域にマッチする。
【0015】
ユーザ端末10側が、こうして原画像中の絵画調変換したい画像領域をウインドウ画像で指定すると、そのウインドウ画像の枠のサイズおよび配置位置をそれぞれ表すサイズデータおよび位置データが絵画変換サーバ20側へ送出される。絵画変換サーバ20では、ユーザ端末10から供給されるサイズデータおよび位置データで指定されるウインドウ画像によって囲まれる原画像中の画像領域を絵画調変換し、絵画調変換された画像領域の画像を、ウインドウ画像によって囲まれる原画像中の画像領域に貼り付けてユーザ端末10へ送出する。
【0016】
これにより、ユーザ端末10では、図14や図17に図示する一例のように、原画像中のウインドウ画像で囲まれた領域が油絵調に変換された画像として表示される。そして、絵画変換サーバ20では、ユーザ端末10から供給されるサイズデータおよび位置データで指定される原画像中の画像領域を絵画調変換する際に用いる変換アルゴリズム・パラメータ群を経時変化させる。具体的には、原画像中に配置するウインドウ画像の枠のサイズおよび配置位置が指定された時点からの経過時間に応じて、例えば「油彩画」、「水彩画」、「パステル画」の順に、絵画調変換に用いる変換アルゴリズム・パラメータ群を異ならせる。
【0017】
したがって、ユーザ端末10では、原画像中の絵画調変換したい画像領域をウインドウ画像で指定するだけで、そのウインドウ画像で囲まれた領域が所定時間経過する毎に「油彩画」、「水彩画」、「パステル画」へ順番に絵画調変換されて表示されるので、従来のように、トリミングして切り出した画像領域を絵画調変換し、それが意図したイメージ通りのものでなければ、最初からやり直すといった煩雑な操作を不要とする結果、トリミングすること無く原画像の所望領域を容易かつ各種の絵画調に変換することが可能になる。
【0018】
(2)絵画変換サーバ20の構成
次に、図2〜図5を参照して絵画変換サーバ20の構成を説明する。絵画変換サーバ20は、構成要素20a〜20eを備える。CPU20aは、操作部20dが発生する操作イベントに応じてサーバ各部を制御する。本発明の要旨に係わるCPU20aの処理動作(サーバ処理)については追って詳述する。ROM20bには、CPU20aにロードされる各種の制御プログラムや制御データが記憶される。各種の制御プログラムとは、後述のサーバ処理を含む。
【0019】
RAM20cは、図3に図示するように、原画像データエリアGE、ウインドウ画像エリアWE、表示エリアDE、変換元画像エリアTHE、変換画像エリアTME、位置データPDを格納するエリア、サイズデータSDを格納するエリアおよび筆触パターンエリアHEから構成される。原画像データエリアGEには、複数の原画像(1)〜(N)が記憶される。これら複数の原画像(1)〜(N)は、絵画変換ページに表示される画像群として表示エリアDEにコピーされる。なお、本実施形態で扱う画像は、説明の簡略化を図る為、例えば図4に図示するn行m列の画素P(1)〜P(n×m)からなる公知のビットマップ形式で表現されるものとする。
【0020】
ウインドウ画像エリアWEには、例えば図13および図16に図示した一例のように、黒枠のウインドウ画像が記憶される。変換元画像エリアTHEは、絵画調変換する為の作業エリアであり、絵画調変換の対象となる画像、すなわち原画像に配置されるウインドウ画像によって囲まれた領域の画像データが一時記憶される。変換画像エリアTMEには、変換元画像エリアTHEに一時記憶された画像について変換アルゴリズム・パラメータに基づき絵画調変換された画像データが一時記憶される。
【0021】
位置データPDを格納するエリアには、原画像中に配置されるウインドウ画像の位置を表す位置データPDが記憶される。位置データPDが表すウインドウ画像の位置とは、例えばウインドウ画像が形成する枠の左上頂角の座標位置であり、ユーザ端末10側から受領する。サイズデータSDを格納するエリアには、原画像中に配置されるウインドウ画像の大きさを表すサイズデータSDが記憶される。サイズデータSDが表すウインドウ画像の大きさとは、例えばウインドウ画像が形成する枠のアスペクト比(縦横比率)および対角線長からなり、ユーザ端末10側から受領する。
【0022】
筆触パターンエリアHEには、筆触図形(タッチ形状)を示す複数種の筆触パターンHP(1)〜HP(N)が格納される。これら筆触パターンHP(1)〜HP(N)は、上述の変換元画像エリアTHEにストアされた画像(原画像に配置されるウインドウ画像によって囲まれた領域の画像)を、絵画調の画像に変換する際に用いられる。
【0023】
例えば油彩画における筆触図形であれば、図5に図示する一例の筆触パターンHP(1)〜HP(4)が筆触パターンエリアHEに登録される。筆触パターンHP(1)は、筆触図形1を形成する10個の画素から構成される。筆触パターンHP(2)は、筆触図形2を形成する13個の画素から構成される。筆触パターンHP(3)は、筆触図形3を形成する13個の画素から構成される。筆触パターンHP(4)は、筆触図形4を形成する9個の画素から構成される。
【0024】
操作部20dは、キーボードやマウスなどの入力デバイスから構成され、入力に応じた操作イベントを発生する。操作イベントはCPU20aに取り込まれる。通信部20eは、CPU20aの制御の下に、インターネットを介してアクセスするユーザ端末10側とデータ授受する。
【0025】
B.動作
次に、図6〜図17を参照して上記構成による実施形態の動作について説明する。以下では、最初にユーザ端末10が実行する端末処理について説明した後、絵画変換サーバ20が実行するサーバ処理について説明する。なお、サーバ処理は、画像変換処理および変換処理を含む。
【0026】
(1)端末処理の動作
インターネット接続機能およびブラウザ機能を備えるパーソナルコンピュータから構成されるユーザ端末10が、図6に図示する端末処理を実行すると、先ずステップSA1において絵画変換サーバ20とのネットワーク接続を確立させるサーバ接続処理を行う。そして、絵画変換サーバ20とのネットワーク接続が確立すると、ステップSA2に進み、絵画変換サーバ20が提供するトップページを画面表示する。次いで、ステップSA3に進み、ユーザ操作に応じてトップページから絵画変換ページへ移動させると、ステップSA4に進み、絵画変換サーバ20側から送出される原画像およびウインドウ画像を受信したか否かを判断する。
【0027】
表示ページをトップページから絵画変換ページに移動させた場合には、複数の原画像(1)〜(N)およびデフォルトのウインドウ画像を受信するので、上記ステップSA4の判断結果は「YES」になり、絵画変換サーバ20側から受信した複数の原画像(1)〜(N)のなかでいずれか選択された原画像とウインドウ画像とを画面表示する。これにより、例えば図12に図示される原画像(1)あるいは、図15に図示される原画像(2)などがユーザ端末10の表示手段(不図示)において画面表示される。なお、デフォルトのウインドウ画像とは、絵画変換ページ中の所定位置に表示される所定サイズのウインドウ画像である。
【0028】
複数の原画像(1)〜(N)のいずれかを画面表示し終えると、ステップSA6およびステップSA9においてウインドウ移動指示操作の有無およびウインドウサイズ変更操作の有無を判断する。ウインドウ移動指示操作とは、マウスなどの入力デバイスを用い、絵画変換サーバ20側から受信したウインドウ画像を、表示された原画像中に配置する操作を指す。また、ウインドウサイズ変更操作とは、ウインドウ移動指示操作により原画像中に配置されたウインドウ画像の枠のサイズ(大きさ)を、マウスなどの入力デバイスを用いて設定する操作を指す。
【0029】
ユーザがウインドウ移動指示操作を行った場合には、上記ステップSA6の判断結果が「YES」になり、ステップSA7に進み、ウインドウ移動指示操作に応じて位置データPDを更新し、続くステップSA8では、更新された位置データPDを絵画変換サーバ20へ送出した後、上述のステップSA4に処理を戻す。なお、ここで言う位置データPDとは、前述した通り、例えばウインドウ画像が形成する枠の左上頂角の座標位置である。
【0030】
ユーザがウインドウサイズ変更操作を行った場合には、上記ステップSA9の判断結果が「YES」になり、ステップSA10に進み、ウインドウサイズ変更操作に応じてサイズデータSDを更新し、続くステップSA11では、更新されたサイスデータSDを絵画変換サーバ20へ送出した後、上述のステップSA4に処理を戻す。なお、ここで言うサイスデータSDとは、前述した通り、例えばウインドウ画像が形成する枠のアスペクト比(縦横比率)および対角線長からなるデータである。
【0031】
そして、ウインドウ移動指示操作やウインドウサイズ変更操作が為されると、絵画変換サーバ20では、位置又はサイズが更新されたウインドウ画像によって囲まれる原画像中の画像領域を絵画調変換し、絵画調変換された画像領域の画像を、ウインドウ画像によって囲まれる原画像中の画像領域に貼り付けてユーザ端末10へ送出する。すると、上述したステップSA4の判断結果が「YES」になり、ステップSA5に進み、ウインドウ画像によって囲まれた画像領域が絵画調変換された原画像、すなわち図14や図15に図示される一例の原画像がユーザ端末10の表示手段(不図示)において画面表示される。
【0032】
このように、ユーザ端末10が実行する端末処理では、絵画変換サーバ20にアクセスしてトップページから絵画変換ページに移動すると、絵画変換サーバ20側から送出される複数の原画像(1)〜(N)の中からいずれか選択された原画像とウインドウ画像とを受信して画面表示し、ウインドウ移動指示操作およびウインドウサイズ変更操作に応じて、画面表示された原画像中に、所望の枠のサイズ(大きさ)および位置にウインドウ画像を配置すると、当該ウインドウ画像の位置を表す位置データPDおよび大きさを表すサイズデータSDを発生して絵画変換サーバ20側へ送出する。
【0033】
そして、ウインドウ移動指示操作やウインドウサイズ変更操作に応じて位置又はサイズが更新されたウインドウ画像に基づき、絵画変換サーバ20が当該ウインドウ画像によって囲まれる原画像中の画像領域を絵画調変換し、絵画調変換された画像領域の画像を、ウインドウ画像によって囲まれる原画像中の画像領域に貼り付けてユーザ端末10へ送出すると、ユーザ端末10ではそれを受信して画面表示するようになっている。
【0034】
(2)サーバ処理の動作
次に、図7〜図8を参照して絵画変換サーバ20が実行するサーバ処理の動作を説明する。絵画変換サーバ20は、先ず図7に図示するステップSB1において、インターネットを介してアクセスしてきたユーザ端末10との接続を確立する。そして、接続確立したユーザ端末10側から絵画変換ページへの移動要求が有ると、ステップSB2に進み、表示エリアDEにコピーされた複数の原画像(1)〜(N)およびウインドウ画像をユーザ端末10へ転送する。これにより、ユーザ端末10では、複数の原画像(1)〜(N)の中からいずれか選択された原画像およびウインドウ画像からなる絵画変換ページが画面表示される。
【0035】
次いで、ステップSB3では、ユーザ端末10側から位置データPD又はサイズデータSDの何れかを受信したか否かを判断する。ユーザ端末10側で行われるウインドウ移動指示操作又はウインドウサイズ変更操作に応じて更新される位置データPD又はサイズデータSDを受信した場合には、判断結果は「YES」になり、ステップSB4に進む。そして、ステップSB4〜SB5では、サイズデータSDに対応したウインドウ画像を作成し、作成したウインドウ画像を位置データPDで指定される位置で原画像に重ねた画像を作成する。
【0036】
続いて、ステップSB6では、原画像に、位置データPD又はサイズデータSDに応じて更新されたウインドウ画像を重ねて作成した画像をユーザ端末10に送付する。次いで、ステップSB7では、タイマTをゼロクリアすると共に、タイマTの計時をスタートさせる。この後、上述のステップSB3に処理を戻し、ユーザ端末10側から位置データPD又はサイズデータSDの何れかを受信しなければ、判断結果は「NO」になり、図8に図示するステップSB8に進む。
【0037】
ステップSB8〜SB13では、画面表示された原画像中に、所望の枠のサイズ(大きさ)および位置にウインドウ画像を配置した時点からタイマTによって計時される経過時間に応じて、絵画調変換に用いる変換アルゴリズム・パラメータ群を異ならせる。すなわち、タイマ計時開始から時間t0が経過すると、ステップSB8の判断結果が「YES」になり、ステップSB9に進み、油彩画変換アルゴリズム・パラメータ群を指定した後、ステップSB14に進む。
【0038】
タイマ計時開始から時間t1が経過すると、ステップSB10の判断結果が「YES」になり、ステップSB11に進み、水彩画変換アルゴリズム・パラメータ群を指定した後、ステップSB14に進む。タイマ計時開始から時間t2が経過すると、ステップSB12の判断結果が「YES」になり、ステップSB13に進み、パステル画変換アルゴリズム・パラメータ群を指定した後、ステップSB14に進む。
【0039】
そして、ステップSB14では、ウインドウ画像によって囲まれる原画像中の領域の画像を抽出する。次いで、ステップSB15では、現在選択されている変換アルゴリズム・パラメータ群に従って上記ステップSB14にて抽出された領域の画像を絵画調変換する画像変換処理を実行する。画像変換処理については追って詳述する。
【0040】
続いて、ステップSB16〜SB17では、上記ステップSB15の画像変換処理で得られた変換画像を、ウインドウ画像によって囲まれる原画像中の領域に貼り付けてユーザ端末10へ送出する。この後、前述したステップSB3(図7参照)に処理を戻し、ユーザ端末10側でウインドウ移動指示操作又はウインドウサイズ変更操作に応じて位置データPD又はサイズデータSDが更新された場合には、再びステップSB3〜SB17の動作を繰り返す。
【0041】
(3)画像変換処理の動作
次に、図9〜図11を参照して画像変換処理の動作を説明する。上述したサーバ処理のステップSB15(図8参照)を介して本処理が実行されると、絵画変換サーバ20は図9に図示するステップSC1に進み、筆触パターンエリアHE(図3参照)に格納される各種筆触パターンHP(1)〜(N)の中から、現在選択されている変換アルゴリズム・パラメータ群で指定される筆触パターンを設定する。ここでは、説明の簡略化を図る為、例えば油彩画に変換する筆触パターンHP(1)を設定したものとする。続いて、ステップSC2を介して変換処理を実行する。
【0042】
変換処理が実行されると、絵画変換サーバ20は、図10に図示するステップSD1に進む。ステップSD1では、前述したサーバ処理のステップSB14(図8参照)において抽出した画像、すなわちウインドウ画像によって囲まれる原画像中の領域の画像データを、変換元画像エリアTHEにコピーする。続いて、ステップSD2では、変換を開始する開始画素Pを設定する。開始画素Pは、ビットマップ形式の画素P(1)〜P(n×m)の何れか一つを選択する。具体的には、例えば図11(a)に図示する変換画像エリアTMEの画素P(1)を開始画素Pに設定する。
【0043】
次に、ステップSD3では、現在選択されている変換アルゴリズム・パラメータ群に基づき離間値Nを設定する。離間値Nとは、図11(a)に図示する通り、開始画素Pに設定した画素P(1)と次に変換を開始する画素P(2)との間の離間距離を画素数で表すものであり、筆触パターンHPの重なり具合を表す。続いて、ステップSD4では、変換元画像エリアTHEにコピーされた画像において、変換を開始する開始画素P(画素P(1))の色Cpを取得する。
【0044】
そして、ステップSD5では、上述のステップSC1(図9参照)において設定された筆触パターンHP(1)を構成する画素の番号を指定するポインタnに初期値「1」をセットする。次いで、ステップSD6では、変換元画像エリアTHEの開始画素Pと同じ位置の画素に、筆触パターンHP(1)の1番目の画素を合わせる。なお、筆触パターンHP(1)は、図5に図示する一例のように、筆触図形1を形成する10個の画素から構成される。
【0045】
続いて、ステップSD7では、1番目の画素が開始画素Pに位置合わせされた筆触パターンHP(1)において、ポインタnで指定されるn番目の画素に対応した画素を検索する。ステップSD8では、その検索した画素が対象画像内に収まっているか否かを判断する。対象画像外ならば、判断結果は「NO」になり、後述のステップSD10に進む。
【0046】
一方、検索した画素が対象画像内に収まっていれば、判断結果は「YES」となり、ステップSD9に進み、その検索した画素の色を、上記ステップSD4で取得した色Cpに設定する。この後、ステップSD10に進み、ポインタnをインクリメントして歩進させる。
【0047】
次いで、ステップSD11では、歩進されたポイントnの値が筆触パターンHP(1)の最終画素の番号以上になったか否か、つまり筆触パターンHP(1)を構成する全ての画素について色設定し終えたかどうかを判断する。全ての画素について色設定し終えていなければ、判断結果は「NO」になり、ステップSD7に処理を戻す。以後、筆触パターンHP(1)を構成する全ての画素について色設定し終えるまで上記ステップSD7〜SD11を繰り返す。これにより、上述の一例の場合、図11(b)に図示する通り、画素P(1)に対応する位置の開始画素Pを1番目の画素とした筆触パターンHP(1)が、ステップSD4で取得した色Cpで塗り潰されることになる。
【0048】
こうして、最初の開始画素P(画素P(1))について筆触パターンHP(1)による塗り潰しを終えると、上記ステップSD11の判断結果が「YES」になり、ステップSD12に進み、開始画素P(画素P(1))に離間値Nを加算して次の開始画素P(画素P(2))に更新する。そして、ステップSD13に進むと、更新された次の開始画素P(画素P(2))が最終画素に達したか否かを判断する。
【0049】
更新された次の開始画素P(画素P(2))が最終画素に達していない場合には、判断結果は「NO」になり、上述したステップSD4以降の処理を繰り返す。これにより、例えば図11(a)に図示するように、離間値Nを隔てて並ぶ画素P(1)、P(2)、P(3)がそれぞれ開始画素Pに設定された場合には、これら開始画素Pを1番目の画素として配置された筆触パターンHP(1)が、同図(b)に図示する通り、それぞれの取得色Cpで塗り潰されて重ね合わされる結果、同図(c)のように筆触図形1のタッチで描かれる油彩画として画像変換される。そして、更新された次の開始画素Pが最終画素に達した場合には、上述したステップSD13の判断結果が「YES」となり、本処理を終える。
【0050】
このように、画像変換処理では、変換元画像エリアTHEにコピーされた変換対象画像(ウインドウ画像によって囲まれる原画像中の画像領域)から任意選択した開始画素Pを起点として、画素数(離間値N)置きの各画素をパターン始点となるように各筆触パターンHPの重なり具合を決め、変換対象画像から各パターン始点の画素に対応する色Cpを取得し、取得した色Cpに従って対応する筆触パターンを塗り潰すことによって油絵調に変換される。
【0051】
従って、例えば図13に図示するように、原画像(1)中の所望の領域を囲む位置およびサイズのウインドウ画像を配置すると、図14に図示する通り、ウインドウ画像で囲まれた領域が油絵調に変換された画像として表示され、また例えば図16に図示するように、原画像(2)中の所望の領域を囲む位置およびサイズのウインドウ画像を配置すると、図17に図示する通り、ウインドウ画像で囲まれた領域が油絵調に変換された画像として表示される。
【0052】
以上のように、本実施形態では、原画像中の画調変換したい画像領域をウインドウ画像で指定すると、原画像中でウインドウ画像によって囲まれた画像領域を画調変換し、画調変換された画像領域の画像を、ウインドウ画像によって囲まれた画像領域に貼り付けて表示する。画調変換に用いる変換アルゴリズム・パラメータ群の種別を、原画像中に配置するウインドウ画像が指定された時点からの経過時間に応じて、例えば「油彩画」、「水彩画」、「パステル画」の順に異ならせる。
【0053】
この結果、原画像中の画調変換したい画像領域をウインドウ画像で指定するだけで、そのウインドウ画像で囲まれた領域が所定時間経過する毎に「油彩画」から「水彩画」へ、さらに「パステル画」と順番に種類の異なる画調に変換されて表示される結果、トリミングすること無く原画像の所望領域を容易かつ各種の画調に変換することが出来る。
【0054】
なお、上述の実施形態では、ユーザ端末10と絵画変換サーバ20とから構成される絵画変換システムについて言及したが、本発明の要旨はこれに限定されず、絵画変換サーバ20と同等の画像処理能力を備えたユーザ端末10であれば、絵画変換サーバ20に接続することなくスタンドアローンの実行環境において、トリミングすること無く原画像の所望領域を容易かつ各種の画調に変換することが可能になる。
【0055】
また、本実施形態では、説明の簡略化を図る為、ビットマップ形式の画像を扱うものとしたが、本発明の要旨はビットマップ形式の画像にのみ適用されるものではなく、jpeg(登録商標)等の他のデータ形式で表現される画像であっても適用可能であることは言うまでもない。
【0056】
さらに、本実施形態では、ウインドウ画像で囲まれた原画像中の領域が所定時間経過する毎に「油彩画」から「水彩画」へ、さらに「パステル画」と順番に種類の異なる画調に変換される態様としたが、これに限らず画調変換する種類を循環的、すなわち「油彩画」→「水彩画」→「パステル画」→「油彩画」→・・・の順に繰り返す態様としても構わない。
【0057】
加えて、上述の実施形態では、一つのウインドウ画像で囲まれた原画像中の領域を画調変換するが、これに替えて、複数のウインドウ画像を備え、原画像中で画調変換したい複数の領域をそれら複数のウインドウ画像で囲い、各ウインドウ画像で囲われた複数の領域を、それぞれ異なる画調に同時変換する態様にすることも可能である。こうすることで、原画像にマッチした画調変換の種類を一目瞭然にすることが出来る。
【符号の説明】
【0058】
10 ユーザ端末
20 絵画変換サーバ
20a CPU
20b ROM
20c RAM
20d 操作部
20e 通信部
100 絵画変換システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像中の画調変換したい領域を指定する領域指定手段と、
前記領域指定手段が原画像中の画調変換したい領域を指定してからの経過時間に応じて異なる種類の画調を指定する画調指定手段と、
前記領域指定手段により指定された原画像中の領域の画像を、前記画調指定手段により指定された画調に変換する画像変換手段と、
前記画像変換手段により画調変換された領域の画像を、前記領域指定手段により指定された原画像中の領域に合成して表示する合成表示手段と
を具備することを特徴とする画調変換装置。
【請求項2】
前記領域指定手段は、
枠形画像の大きさを設定するサイズ設定手段と、
原画像中に配置する枠形画像の位置を設定する位置設定手段とを備え、
前記位置設定手段により設定される原画像中の配置位置に、前記サイズ設定手段により設定される大きさの枠形画像を設定し、その枠形画像で囲まれた原画像の画像領域を画調変換したい領域に指定することを特徴とする請求項1記載の画調変換装置。
【請求項3】
コンピュータに、
原画像中の画調変換したい領域を指定する領域指定ステップと、
前記領域指定ステップが原画像中の画調変換したい領域を指定してからの経過時間に応じて異なる種類の画調を指定する画調指定ステップと、
前記領域指定ステップにより指定された原画像中の領域の画像を、前記画調指定ステップにて指定された画調に変換する画像変換ステップと、
前記画像変換ステップにて画調変換された領域の画像を、前記領域指定ステップで指定された原画像中の領域に合成して表示する合成表示ステップと
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−113472(P2012−113472A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261154(P2010−261154)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】