説明

界面活性剤濃度測定装置及び界面活性剤濃度測定方法

【課題】試料溶液中の界面活性剤濃度を簡単に測定でき、小型化が可能で特に野外において容易に使用できる界面活性剤濃度測定装置及びそれを用いた方法を提供する。
【解決手段】容器10に界面活性剤の濃度測定対象である所定量の試料溶液Lが収容され、水溶液中で界面活性剤と結合し、可視〜赤外の光を吸収する所定量の発色指示薬が発色指示薬添加部11より試料溶液に添加されて混合部Mにより攪拌混合され、光ファイバ(20a,20b)の中途部に、伝送する光の一部を外界と相互作用させ、表面が疎水性であってセンサ部SPとなる光透過部材を有するファイバセンサが設けられ、光透過部材が試料溶液に浸漬する構成となっており、光ファイバの入射端に対してセンサ光を出射する光源13と、光透過部材を介して光ファイバの出射端から出射されるセンサ光を受光する受光部(スペクトルアナライザ14)とが設けられた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤濃度測定装置と、これを用いた界面活性剤濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、洗剤や洗濯時の仕上げ剤などとして広く用いられている一方、排水にも多量に含まれていることから、環境への影響が懸念されている。
このため、河川や湖水などの種々の環境において採取された試料溶液中の界面活性剤を検出し、高精度に濃度を測定する簡便な方法及び装置が求められている。
【0003】
例えば、試料溶液中のアニオン系の界面活性剤濃度を測定する方法として、以下の方法が知られている。
まず、界面活性剤の濃度を測定する対象である試料溶液に対してメチレンブルーなどの発色指示薬を添加し、クロロホルムやヘキサンなどの有機溶媒を加えて混和させ、発色指示薬と界面活性剤の複合体を有機溶媒に抽出し、静置して水相と有機相に分離する。
次に、有機相の色の濃度を分光光度計などで測定する。有機相の色の濃度は有機相中に抽出された複合体濃度に対応しており、予め調べられた界面活性剤濃度と吸光度との関係と比較することにより、試料溶液中の界面活性剤濃度を測定する。
【0004】
また、試料溶液中のアニオン系の界面活性剤濃度を測定する方法として、壁面付着法が非特許文献1などに開示されている。
まず、界面活性剤の濃度を測定する対象である試料溶液をポリマー容器に採り、メチレンブルーなどの発色指示薬を添加し、激しく振って混和させ、発色指示薬と界面活性剤の複合体をポリマー容器の内壁に付着させる。
次に、ポリマー容器内の液体を排出し、ポリマー容器の内壁に付着した複合体を所定量のエタノールなどに溶解して集め、エタノール溶液の色の濃度を分光光度計などで測定する。エタノール溶液の吸光度はエタノール溶液中に集められた複合体濃度に対応しており、予め調べられた吸光度と界面活性剤濃度の関係と比較することにより、試料溶液中の界面活性剤濃度を測定する。
【非特許文献1】http://www.soran.net/index_html/A0110014.htm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の試料溶液に発色指示薬と有機溶媒を混和させて有機相に指示薬を抽出する方法においては、抽出する操作が必要であり、測定する際にも抽出した有機溶媒の吸光度を分光光度計で測定する必要があり、操作が煩雑であるという不利益がある。
【0006】
また、上記のポリマー容器中で試料溶液と発色指示薬を混和してポリマー容器の内壁に付着した指示薬を集める方法においては、ポリマー容器の内壁に付着した複合体をエタノールなどに溶解して集める操作が必要であり、測定する際にも複合体を抽出したエタノールなどの吸光度を分光光度計で測定する必要があり、操作が煩雑であるという不利益がある。
【0007】
また、分光光度計を用いずに液体クロマトグラフィーを用いて測定することも可能であるが、この場合においても試料溶液の前処理が必要であることに変わりはなく、さらに野外活動で採集した試料溶液に対する測定をその場で行うことが困難となる。
【0008】
解決しようとする問題点は、試料溶液中の界面活性剤濃度を簡単に測定することができず、特に野外において容易に実施することができないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の界面活性剤濃度測定装置は、界面活性剤の濃度を測定する対象である所定量の試料溶液を収容する容器と、水溶液中で前記界面活性剤と結合し、可視あるいは赤外波長領域の光を吸収する性質を有する所定量の発色指示薬を前記試料溶液に添加する発色指示薬添加部と、前記試料溶液を攪拌混合する混合部と、光ファイバと、前記光ファイバの中途部に設けられ、伝送する光の一部を外界と相互作用させ、表面が疎水性であってセンサ部となる光透過部材とを有し、前記光透過部材が前記試料溶液に浸漬する構成となっているファイバセンサと、前記光ファイバの入射端に対してセンサ光を出射する光源と、前記光透過部材を介して前記光ファイバの出射端から出射される前記センサ光を受光する受光部とを有する。
【0010】
上記の本発明の界面活性剤濃度測定装置は、容器に界面活性剤の濃度を測定する対象である所定量の試料溶液が収容され、発色指示薬添加部により水溶液中で界面活性剤と結合し、可視あるいは赤外波長領域の光を吸収する性質を有する所定量の発色指示薬が試料溶液に添加され、混合部により試料溶液が攪拌混合される。
さらに、光ファイバと、光ファイバの中途部に設けられ、伝送する光の一部を外界と相互作用させ、表面が疎水性であってセンサ部となる光透過部材とを有するファイバセンサが設けられており、光透過部材が試料溶液に浸漬する構成となっている。
さらに、光ファイバの入射端に対してセンサ光を出射する光源と、光透過部材を介して光ファイバの出射端から出射されるセンサ光を受光する受光部とが設けられている。
【0011】
上記の本発明の界面活性剤濃度測定装置は、好適には、受光された前記センサ光から前記試料溶液中の界面活性剤の濃度を算出する処理部をさらに有する。
【0012】
上記の本発明の界面活性剤濃度測定装置は、好適には、前記光透過部材が、前記光ファイバのコア径と異なるコア径を有するヘテロコア部である。
あるいは好適には、前記光透過部材が、前記光ファイバのコアの屈折率あるいはクラッドの屈折率と同等の屈折率を持つ光透過部材である。
【0013】
上記の本発明の界面活性剤濃度測定装置は、好適には、前記光ファイバがマルチモード光ファイバである。
【0014】
上記の本発明の界面活性剤濃度測定装置は、好適には、前記光ファイバの一方の端部が2本に分岐して前記入射端及び前記出射端が設けられ、前記光ファイバの他方の端部に前記光ファイバを伝送する光を反射して前記光ファイバに戻す反射部が設けられている。
【0015】
また、本発明の界面活性剤濃度測定方法は、界面活性剤の濃度を測定する対象である所定量の試料溶液に対して、水溶液中で前記界面活性剤と結合し、可視あるいは赤外波長領域の光を吸収する性質を有する所定量の発色指示薬を添加し、混合する工程と、光ファイバと、前記光ファイバの中途部に設けられ、伝送する光の一部を外界と相互作用させ、表面が疎水性であってセンサ部となる光透過部材とを有するファイバセンサを用い、前記光透過部材を前記発色指示薬が添加された前記試料溶液に浸漬する工程と、前記光ファイバの入射端に対してセンサ光を入射する工程と、前記光透過部材を介して前記光ファイバの出射端から出射される前記センサ光を受光する工程とを有する。
【0016】
上記の本発明の界面活性剤濃度測定方法は、界面活性剤の濃度を測定する対象である所定量の試料溶液に対して、水溶液中で前記界面活性剤と結合し、可視あるいは赤外波長領域の光を吸収する性質を有する所定量の発色指示薬を添加し、混合する。
次に、光ファイバと、光ファイバの中途部に設けられ、伝送する光の一部を外界と相互作用させ、表面が疎水性であってセンサ部となる光透過部材とを有するファイバセンサを用い、光透過部材を発色指示薬が添加された試料溶液に浸漬する。
次に、光ファイバの入射端に対してセンサ光を入射し、光透過部材を介して光ファイバの出射端から出射されるセンサ光を受光する。
【0017】
上記の本発明の界面活性剤濃度測定方法は、好適には、前記センサ光を受光する工程の後に、受光された前記センサ光から前記試料溶液中の界面活性剤の濃度を算出する工程をさらに有する。
【0018】
上記の本発明の界面活性剤濃度測定方法は、好適には、前記ファイバセンサとして、前記光透過部材が前記光ファイバのコア径と異なるコア径を有するヘテロコア部であるファイバセンサを用いる。
あるいは好適には、前記ファイバセンサとして、前記光透過部材が前記光ファイバのコアの屈折率あるいはクラッドの屈折率と同等の屈折率を持つ光透過部材であるファイバセンサを用いる。
【0019】
上記の本発明の界面活性剤濃度測定方法は、好適には、前記ファイバセンサとして、前記光ファイバがマルチモード光ファイバであるファイバセンサを用いる。
【0020】
上記の本発明の界面活性剤濃度測定方法は、好適には、前記ファイバセンサとして、前記光ファイバの一方の端部が2本に分岐して前記入射端及び前記出射端が設けられ、前記光ファイバの他方の端部に前記光ファイバを伝送する光を反射して前記光ファイバに戻す反射部が設けられているファイバセンサを用いる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の界面活性剤濃度測定装置によれば、試料溶液中の界面活性剤濃度を簡単に測定でき、小型化が可能で特に野外において容易に使用できる。
【0022】
本発明の界面活性剤濃度測定方法によれば、試料溶液中の界面活性剤濃度を簡単に測定でき、特に野外において容易に実施することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の界面活性剤濃度測定装置及びそれを用いた界面活性剤濃度測定方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
第1実施形態
図1は本実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置の模式構成図である。
例えば、容器10に、界面活性剤の濃度を測定する対象である所定量の試料溶液Lが収容される。容器10の上方には水溶液中で界面活性剤と結合し、可視あるいは赤外波長領域の光を吸収する性質を有する所定量の発色指示薬を試料溶液に添加するディスペンサなどの発色指示薬添加部11が設けられており、試料溶液Lに対して所定量の発色指示薬が添加される。発色指示薬が添加された試料溶液Lは、混合部Mにより十分に攪拌混合される。
【0025】
例えば、光ファイバ(20a,20b)の中途部にセンサ部SPとなる光透過部材が設けられている。センサ部SPは伝送する光の一部を外界と相互作用させ、表面が疎水性であって、保持部材12に保持され、試料溶液Lに浸漬する構成で設けられている。
【0026】
また、例えば、光ファイバ20aの光入射端に、白色光源などのセンサ光を出射する光源13が設けられ、光ファイバ20bの光出射端に光出射端から出射されるセンサ光を検出するフォトダイオードやパワーメータなどの受光部を備えたスペクトルアナライザ14が設けられている。
【0027】
上記の発色指示薬は、例えば赤外や可視光領域に吸収を有する色素であって、水溶液中で界面活性剤と結合する性質を有するものが用いられる。
界面活性剤は、親水基と疎水基が結合した構造を有している。疎水基は、例えば炭化水素基などからなる。親水基は、例えば水溶液中で負または正に帯電するものや、帯電しないものがある。親水基が負または正に帯電する界面活性剤はアニオン系またはカチオン系の界面活性剤と称せられ、帯電しないタイプは非イオン系界面活性剤と称せられる。
【0028】
例えば、親水基が負に帯電するアニオン系の界面活性剤に対しては、水溶液中で正に帯電するメチレンブルーなどの発色指示薬が用いられ、また、親水基が正に帯電するカチオン系の界面活性剤に対しては、テトラブロモフェノールフタレインエチルエステル塩などの水溶液中で負に帯電する発色指示薬が用いられる。
上記の水溶液中で正または負に帯電する発色指示薬は、静電的にそれぞれ負または正に帯電する界面活性剤の親水基に結合する。
【0029】
また、親水基が帯電しないタイプの非イオン系界面活性剤に対しては、チオシアン酸アンモニウムと硝酸コバルトを混合して得られるコバルト錯体を用いる。
【0030】
図2(a)は、本実施形態に係る光ファイバセンサのセンサ部SP近傍の斜視図であり、図2(b)はセンサ部SP近傍の長手方向の断面図である。
例えば、本実施形態の測定装置に用いられるファイバセンサは、コア径50μmのマルチモードファイバである一方の光ファイバ20aと他方の光ファイバ20bの間に、センサ部SPが設けられた構成である。
センサ部SPは、例えば、伝送する光の一部を外界と相互作用させる光透過部材であるヘテロコア部3である。ヘテロコア部3の表面は疎水性となっている。
【0031】
例えば、光ファイバ(20a,20b)は、コア21と、その外周部に設けられたクラッド22とを有し、ヘテロコア部3は、光ファイバ(20a,20b)のコア径と異なるコア径を有するコア31と、その外周部に設けられたクラッド32とを有する。
また、例えば、ヘテロコア部3におけるコア31の径blは、光ファイバ(20a,20b)のコア21の径alより小さく、例えばal=50μm、bl=3μmである。また、ヘテロコア部3の長さclは、1mm〜数cmである。
センサ部SPを構成するヘテロコア部3と光ファイバ(20a,20b)は、例えば、長手方向に直交する界面4でコア同士が接合するようにほぼ同軸に、例えば汎用化されている放電による融着などにより、接合されている。
【0032】
光ファイバ(20a,20b)およびヘテロコア部3としては、例えば、シングルモード光ファイバおよびマルチモード光ファイバのいずれをも使用可能であり、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0033】
本実施形態に係るセンサ部SPとなるヘテロコア部3は、表面が疎水性となっている。
例えば、ヘテロコア部3がガラスからなる場合、一般にガラスは親水性の表面となっているが、オクチルトリエトキシシランやオクタデシルトリエトキシシランなどによる疎水化処理を施して、例えば8個以上の炭素鎖を有する炭化水素基などの疎水基をガラスの表面に導入することで、疎水性の表面が実現される。
疎水性の程度としては、ヘテロコア部3の表面に導入する疎水基の性質や量などにも依存するが、例えばオクチルトリエトキシシランで疎水化処理を施した場合には、水の接触角が100度程度の疎水性となっている。
【0034】
上記の構成の界面活性剤濃度測定装置を用いた試料溶液中の界面活性剤濃度の測定方法について説明する。
まず、図3(a)に示すように、界面活性剤の濃度を測定する対象である所定量の試料溶液Lを容器10に収容し、試料溶液Lに対して、ディスペンサなどの発色指示薬添加部11から水溶液中で界面活性剤と結合し、可視あるいは赤外波長領域の光を吸収する性質を有する所定量の発色指示薬を添加し、不図示の混合部により十分に混合する。図中、界面活性剤Sは親水基S1と疎水基S2からなることを示している。
【0035】
上記のように試料溶液Lに発色指示薬Dを添加して十分に攪拌混合すると、図3(b)に示すように、水溶液中で正または負に帯電する発色指示薬Dは、クーロン力によってそれぞれ負または正に帯電する界面活性剤Sの親水基S1に結合する。
ここで、界面活性剤に対して発色指示薬を過剰量添加することにより、実質的に全量の界面活性剤が発色指示薬と結合するようにすることが好ましい。
【0036】
次に、光ファイバと、光ファイバの中途部に設けられ、伝送する光の一部を外界と相互作用させ、表面が疎水性であってセンサ部SPとなる光透過部材とを有する上述のファイバセンサを用い、光透過部材(センサ部SP)を発色指示薬が添加された試料溶液Lに浸漬する。
【0037】
図4(a)はセンサ部SPの表面の模式構成図である。
センサ部SPの表面は、例えば炭化水素基などの疎水基Hが導入されて疎水性となっている。
ここで、上記のように、ファイバセンサのセンサ部SPを発色指示薬Dが添加された試料溶液Lに浸漬すると、図4(b)に示すように、界面活性剤Sの疎水基S2が、センサ部SPの表面に導入された疎水基Hと結合する。
界面活性剤Sの親水基S1には上記のように予め発色指示薬Dが結合されていることから、試料溶液L中の界面活性剤の濃度に応じた量の発色指示薬Dがセンサ部SPの表面に吸着、捕捉されることになる。
【0038】
次に、光源からのセンサ光をファイバセンサを構成する光ファイバの入射端に入射し、光透過部材を介して光ファイバの出射端から出射されるセンサ光を受光部で受光する。
ここで、図2(a)に示すように、上記の光ファイバ(20a,20b)の中途部にヘテロコア型のセンサ部SPが接合されてなる構成において、ヘテロコア部3におけるコア31の径blと光ファイバ(20a,20b)のコア21の径alとが界面4で異なっており、このコア径の差に起因して、図2(a)に示すように、光の一部のヘテロコア部3のクラッド32へのリークWが発生して、センサ部SPは伝送する光の一部を外界と相互作用させることになる。
【0039】
上記のように光ファイバにセンサ光が導波している場合は、センサ部においてエバネッセント波が生じており、センサ部SPの表面に発色指示薬が吸着されていると、エバネッセント波のエネルギーの一部が発色指示薬に移り、反射光が減少する。これにより、伝播するセンサ光の強度が低下し、センサ部SPを伝送する光に損失が生じたことになる。
上記のセンサ光の損失は、センサ部の表面に吸着した発色指示薬の量に比例する。従って、試料溶液の界面活性剤濃度と損失の関係を予め調べておくことにより、受光部で受光したセンサ光のスペクトル解析などを通じて得られたセンサ光の損失から、測定対象の試料溶液中の界面活性剤の濃度を算出することができる。
センサ光を受光して得られるデータからの試料溶液中の界面活性剤の濃度の算出は、コンピュータ上でプログラムを動作させることなどにより行うことができる。
【0040】
上記において、一度使用したファイバセンサのセンサ部には、発色指示薬と界面活性剤が付着した状態となっているが、水や有機溶媒などで洗浄することで容易に除去することが可能であり、何度でも繰り返し使用できる。
【0041】
また、本実施形態の界面活性剤濃度測定装置によれば、試料溶液中の界面活性剤濃度を簡単に測定でき、小型化が可能で特に野外において容易に使用できる。
【0042】
本実施形態の界面活性剤濃度測定方法によれば、試料溶液中の界面活性剤濃度を簡単に測定でき、特に野外において容易に実施することが可能である。
【0043】
第2実施形態
センサ部SPとしては、第1実施形態に記載の構成以外の構成を採用することも可能である。
図5(a)及び(b)は、本実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置に用いられるファイバセンサのセンサ部SP近傍の長手方向の断面図である。
図5(a)では、センサ部SPを構成する光透過部材であるヘテロコア部3のコア31の径blが、光ファイバ(20a,20b)のコア21の径alよりも大きな構成となっている。上記のヘテロコア部3の表面は疎水性となっている。
図5(b)では、センサ部SPとして、光ファイバ(20a,20b)のコア21の屈折率あるいはクラッド22の屈折率と同等の屈折率を持つ材料からなる、ヘテロコア部ではない光透過部材30が光ファイバ(20a,20b)の中途部に接合されてなる構成となっている。上記の光透過部材30の表面は疎水性となっている。
【0044】
上記以外の構成は、実質的に第1実施形態と同様である。
本実施形態のファイバセンサを用いた界面活性剤装置と、それを用いた界面活性剤濃度測定方法によれば、試料溶液中の界面活性剤濃度を簡単に測定でき、特に野外において容易に実施することが可能である。
【0045】
第3実施形態
図6は、本実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置の構成を示す模式図である。
例えば、光ファイバ(20a,20b)の中途部にセンサ部SPが設けられている。
光ファイバ20aには、光カプラ16において光ファイバ20cを分岐する構成であり、光ファイバ20bの端部には銀を蒸着して形成された反射部(鏡)15が設けられ、光ファイバ20a端部が光入射端、光ファイバ20c端部が光出射端となる。
光ファイバ20aの光入射端に光源13が設けられ、光ファイバ20cの光出射端にスペクトルアナライザ14が設けられている。
【0046】
上記以外の構成は、実質的に第1実施形態と同様である。また、センサ部SPとして第2実施形態に示す構成を用いることも可能である。
本実施形態のファイバセンサを用いた界面活性剤装置と、それを用いた界面活性剤濃度測定方法によれば、試料溶液中の界面活性剤濃度を簡単に測定でき、特に野外において容易に実施することが可能である。
【0047】
特に、反射部15で反射した光は、再びセンサ部SPを通過するため、一方向に通過させただけの光と比較してより多くの相互干渉の情報を含んだ光が測定されることとなる。
【0048】
第4実施形態
図7は、本実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置の構成を示す模式図である。
例えば、光ファイバ(20a,20b)の中途部にセンサ部SPが設けられている。
光ファイバ20aの光入射端に、レーザダイオードまたは発光ダイオードなどのセンサ光を出射する光源13aが設けられ、光ファイバ20bの光出射端に光出射端から出射されるセンサ光を検出する光マルチメータ14aが設けられている。
レーザダイオードまたは発光ダイオードは単一波長の光を発光するので、受光部には分光しないで光強度をモニタできる光マルチメータを用いることができる。
例えば、レーザダイオードまたは発光ダイオードなどの発光波長は、発色指示薬の吸収極大となる波長を選択し、光マルチメータでモニタする光強度の減衰から、界面活性剤の濃度に対応する光の損失を感知することができる。
【0049】
上記以外の構成は、実質的に第1実施形態と同様である。また、センサ部SPとして第2実施形態に示す構成を用いることも可能である。
本実施形態のファイバセンサを用いた界面活性剤装置と、それを用いた界面活性剤濃度測定方法によれば、試料溶液中の界面活性剤濃度を簡単に測定でき、特に野外において容易に実施することが可能である。
例えば、光源として発光ダイオードを用い、受光部としてフォトダイオードを用いると、界面活性剤濃度測定装置全体の大きさを大幅に小型化することができ、さらに携帯しやすい構成となる。
【0050】
第5実施形態
図8は、本実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置の構成を示す模式図である。
例えば、光ファイバ(20a,20b)の中途部にセンサ部SPが設けられている。
光ファイバ20aには、光カプラ16において光ファイバ20cを分岐する構成であり、光ファイバ20bの端部には銀を蒸着して形成された反射部(鏡)15が設けられ、光ファイバ20a端部が光入射端、光ファイバ20c端部が光出射端となる。
光ファイバ20aの光入射端に、レーザダイオードまたは発光ダイオードなどのセンサ光を出射する光源13aが設けられ、光ファイバ20cの光出射端に光出射端から出射されるセンサ光を検出する光マルチメータ14aが設けられている。
レーザダイオードまたは発光ダイオードは単一波長の光を発光するので、受光部には分光しないで光強度をモニタできる光マルチメータを用いることができる。
例えば、レーザダイオードまたは発光ダイオードなどの発光波長は、発色指示薬の吸収極大となる波長を選択し、光マルチメータでモニタする光強度の減衰から、界面活性剤の濃度に対応する光の損失を感知することができる。
【0051】
上記以外の構成は、実質的に第1実施形態と同様である。また、センサ部SPとして第2実施形態に示す構成を用いることも可能である。
本実施形態のファイバセンサを用いた界面活性剤装置と、それを用いた界面活性剤濃度測定方法によれば、試料溶液中の界面活性剤濃度を簡単に測定でき、特に野外において容易に実施することが可能である。
【0052】
特に、反射部15で反射した光は、再びセンサ部SPを通過するため、一方向に通過させただけの光と比較してより多くの相互干渉の情報を含んだ光が測定されることとなる。
【0053】
第6実施形態
図9は、本実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置の構成を示す模式図である。
例えば、光ファイバ(20a,20b)の中途部にセンサ部SPが設けられている。
光ファイバ20aには、OTDR(Optical time-domain reflectometer)装置70が接続されている。OTDR装置70から入射されたセンサ光の後方へのレイリー散乱光をOTDR装置70自身が検出する。
【0054】
上記以外の構成は、実質的に第1実施形態と同様である。また、センサ部SPとして第2実施形態に示す構成を用いることも可能である。
本実施形態のファイバセンサを用いた界面活性剤装置と、それを用いた界面活性剤濃度測定方法によれば、試料溶液中の界面活性剤濃度を簡単に測定でき、特に野外において容易に実施することが可能である。
【0055】
第7実施形態
図10は、本実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置の構成を示す模式図である。
例えば、光ファイバ(20a,20b)の中途部にセンサ部SPが設けられ、光ファイバ(20b,20c)の中途部にセンサ部SPが設けられ、さらに光ファイバ(20c,20d)の中途部にセンサ部SPが設けられている。即ち、複数個のセンサ部(SP〜SP)が1本の光ファイバ上に直列に接続された構成となっている。
光ファイバ20aには、OTDR装置70が接続されている。OTDR装置70からセンサ光が入射されると、複数個のセンサ部(SP〜SP)のそれぞれにおいて後方へのレイリー散乱光が発生し、これをOTDR装置70が検出する。
【0056】
上記以外の構成は、実質的に第1実施形態と同様である。また、センサ部SPとして第2実施形態に示す構成を用いることも可能である。
本実施形態のファイバセンサを用いた界面活性剤装置と、それを用いた界面活性剤濃度測定方法によれば、試料溶液中の界面活性剤濃度を簡単に測定でき、特に野外において容易に実施することが可能である。
特に、複数個のセンサ部(SP〜SP)で同時に濃度を測定することが可能であり、より精密な計測が可能である。
【0057】
(実施例)
第1実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置を構成し、アニオン系の界面活性剤であるドデシルスルホン酸ナトリウムの濃度を0M、10−5M〜10−3Mの種々に変更した試料溶液1mlに対して、発色指示薬として10−2Mの濃度のメチレンブルー溶液2mlを過剰に添加し、混合した。
得られた試料溶液に、第1実施形態に記載のファイバセンサを用いてセンサ部を試料溶液に浸漬し、10分後のセンサ光の損失を測定した。光源は白色光源、受光部は、スペクトルアナライザを用いた。
【0058】
図11は本実施例に係る界面活性剤の濃度を種々に変更したときのセンサ光の損失のスペクトルである。
界面活性剤無添加の試料aに対して、試料b:6.7×10−6M、試料c:1.1×10−5M、試料d:4.4×10−5M、試料e:6.7×10−5M、試料f:1.1×10−4M、試料g:6.7×10−4Mという濃度を種々に変更した試料b〜gにおいては、濃度が高くなるにつれて光の損失が順に大きくなることを示し、界面活性剤濃度が高いほど損失が大きくなることを示した。
【0059】
図12は本実施例に係る界面活性剤の濃度を種々に変更したときのセンサ光の損失の値を濃度に対してプロットしたグラフである。
図11において、600nmにおけるセンサ光の損失の値を、試料溶液中の界面活性剤濃度に対してプロットしたものである。界面活性剤濃度が高いほど損失が大きくなることを示した。
【0060】
本実施形態の界面活性剤濃度測定装置と、それを用いた界面活性剤濃度測定方法によれば、抽出などの操作が不要で、試料溶液中の界面活性剤濃度を簡単に測定でき、特に野外において容易に実施することが可能である。
また、10−5M程度の薄い濃度まで測定可能であり、界面活性剤濃度が高いほど損失が大きくなることから定量性がある測定を行うことができる。また、試料は少量にも測定することが可能である。
【0061】
本発明は上記の説明に限定されない。
例えば、用いる光源や受光部などは、上述のものに限らず、種々のものを使用できる。
光ファイバはマルチモードファイバでもシングルモードファイバでも使用できる。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の界面活性剤濃度測定装置及び界面活性剤濃度測定方法は、河川や湖水などの種々の環境から採取した試料溶液中の界面活性剤の濃度を測定する装置及び方法として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は本発明の第1実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置の模式構成図である。
【図2】図2(a)は本発明の第1実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置を構成するファイバセンサのセンサ部近傍の斜視図であり、図2(b)はセンサ部近傍の長手方向の断面図である。
【図3】図3(a)及び(b)は本発明の第1実施形態に係る界面活性剤濃度測定方法を説明する模式図である。
【図4】図4(a)及び(b)は本発明の第1実施形態に係る界面活性剤濃度測定方法を説明する模式図である。
【図5】図5(a)及び(b)は本発明の第2実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置を構成するファイバセンサのセンサ部近傍の長手方向の断面図である。
【図6】図6は本発明の第3実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置の構成を示す模式図である。
【図7】図7は本発明の第4実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置の構成を示す模式図である。
【図8】図8は本発明の第5実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置の構成を示す模式図である。
【図9】図9は本発明の第6実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置の構成を示す模式図である。
【図10】図10は本発明の第7実施形態に係る界面活性剤濃度測定装置の構成を示す模式図である。
【図11】図11は本発明の実施例に係る界面活性剤の濃度を種々に変更したときのセンサ光の損失のスペクトルである。
【図12】図12は本発明の実施例に係る界面活性剤の濃度を種々に変更したときのセンサ光の損失の値を濃度に対してプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0064】
3…ヘテロコア部
4…界面
10…容器
11…発色指示薬添加部
12…保持部材
13,13a…光源
14…スペクトルアナライザ
14a…光マルチメータ
15…反射部
16…光カプラ
20a,20b,20c,20d…光ファイバ
21,31…コア
22,32…クラッド
30…光透過部材
70…OTDR装置
H…疎水基
L…試料溶液
M…混合部
S…界面活性剤
S1…親水基
S2…疎水基
SP,SP,SP,SP…センサ部
W…リーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤の濃度を測定する対象である所定量の試料溶液を収容する容器と、
水溶液中で前記界面活性剤と結合し、可視あるいは赤外波長領域の光を吸収する性質を有する所定量の発色指示薬を前記試料溶液に添加する発色指示薬添加部と、
前記試料溶液を攪拌混合する混合部と、
光ファイバと、前記光ファイバの中途部に設けられ、伝送する光の一部を外界と相互作用させ、表面が疎水性であってセンサ部となる光透過部材とを有し、前記光透過部材が前記試料溶液に浸漬する構成となっているファイバセンサと、
前記光ファイバの入射端に対してセンサ光を出射する光源と、
前記光透過部材を介して前記光ファイバの出射端から出射される前記センサ光を受光する受光部と
を有する界面活性剤濃度測定装置。
【請求項2】
受光された前記センサ光から前記試料溶液中の界面活性剤の濃度を算出する処理部をさらに有する
請求項1に記載の界面活性剤濃度測定装置。
【請求項3】
前記光透過部材が、前記光ファイバのコア径と異なるコア径を有するヘテロコア部である
請求項1に記載の界面活性剤濃度測定装置。
【請求項4】
前記光透過部材が、前記光ファイバのコアの屈折率あるいはクラッドの屈折率と同等の屈折率を持つ光透過部材である
請求項1に記載の界面活性剤濃度測定装置。
【請求項5】
前記光ファイバがマルチモード光ファイバである
請求項1に記載の界面活性剤濃度測定装置。
【請求項6】
前記光ファイバの一方の端部が2本に分岐して前記入射端及び前記出射端が設けられ、
前記光ファイバの他方の端部に前記光ファイバを伝送する光を反射して前記光ファイバに戻す反射部が設けられている
請求項1に記載の界面活性剤濃度測定装置。
【請求項7】
界面活性剤の濃度を測定する対象である所定量の試料溶液に対して、水溶液中で前記界面活性剤と結合し、可視あるいは赤外波長領域の光を吸収する性質を有する所定量の発色指示薬を添加し、混合する工程と、
光ファイバと、前記光ファイバの中途部に設けられ、伝送する光の一部を外界と相互作用させ、表面が疎水性であってセンサ部となる光透過部材とを有するファイバセンサを用い、前記光透過部材を前記発色指示薬が添加された前記試料溶液に浸漬する工程と、
前記光ファイバの入射端に対してセンサ光を入射する工程と、
前記光透過部材を介して前記光ファイバの出射端から出射される前記センサ光を受光する工程と
を有する界面活性剤濃度測定方法。
【請求項8】
前記センサ光を受光する工程の後に、受光された前記センサ光から前記試料溶液中の界面活性剤の濃度を算出する工程をさらに有する
請求項7に記載の界面活性剤濃度測定方法。
【請求項9】
前記ファイバセンサとして、前記光透過部材が前記光ファイバのコア径と異なるコア径を有するヘテロコア部であるファイバセンサを用いる
請求項7に記載の界面活性剤濃度測定方法。
【請求項10】
前記ファイバセンサとして、前記光透過部材が前記光ファイバのコアの屈折率あるいはクラッドの屈折率と同等の屈折率を持つ光透過部材であるファイバセンサを用いる
請求項7に記載の界面活性剤濃度測定方法。
【請求項11】
前記ファイバセンサとして、前記光ファイバがマルチモード光ファイバであるファイバセンサを用いる
請求項7に記載の界面活性剤濃度測定方法。
【請求項12】
前記ファイバセンサとして、前記光ファイバの一方の端部が2本に分岐して前記入射端及び前記出射端が設けられ、前記光ファイバの他方の端部に前記光ファイバを伝送する光を反射して前記光ファイバに戻す反射部が設けられているファイバセンサを用いる
請求項7に記載の界面活性剤濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−63538(P2009−63538A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233832(P2007−233832)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(598123138)学校法人 創価大学 (49)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】