説明

留め具構造

【課題】装飾部材を内装パネルに脱着可能に取付ける機能を保ちつつ、衝撃などの大荷重が入力された際に装飾部材が内装パネルから外れてしまうことを防ぐ。
【解決手段】留め具構造100は、センタークラスター140(装飾部材)に立設される留め具本体101と、インストゥルメントパネル130(内装パネル)の取付け孔131に差し込まれて係合する係止爪111とを有する。留め具本体101は、係止爪111の係合方向に対して垂直な径方向に突出する突起112と、突起とは反対方向に突出する位置ずれガイド121とを備える。係止爪111が取付け孔131に係合した状態では、位置ずれガイド121により突起112が取付け孔131の径方向の外側領域にずれた状態に保持される。留め具本体101に取付け孔131から引き抜かれる大荷重が入力された場合には、突起112がインストゥルメントパネル130に裏側から当接して引き抜きが阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留め具構造に関する。詳しくは、車両の内装パネルに装飾部材を着脱可能に取付けるための留め具構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の留め具構造については、例えば特許文献1に開示されているクリップが知られている。図15に示すように、このクリップ910は、自動車のインストゥルメントパネル930(内装パネル)に取付けられるセンタークラスター940(装飾部材)に一体に立設された板状のリブ920に前もって差し込んで装着されている。このクリップ910をインストゥルメントパネル930にうがたれた取付け孔931に差し込むと、上記クリップ910に設けられた一対の係止爪911が取付け孔931の径によって撓みすぼめられた後に拡開して、両係止爪911の弾発力によってクリップ910が取付け孔931に係止される。これにより、センタークラスター940をインストゥルメントパネル930に脱着可能に取付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4184473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記クリップ910は、各係止爪911の弾発力によってセンタークラスター940をインストゥルメントパネル930に取付けている。このため、衝撃荷重などの大荷重に対してもセンタークラスター940がインストゥルメントパネル930から外れない保持力を得るために各係止爪911を撓みにくくすると、クリップ910の差し込み荷重が大きくなって、センタークラスター940の取付けの作業性が悪くなってしまうという問題があった。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、装飾部材を内装パネルに脱着可能に取付ける機能を保ちつつ、衝撃荷重などの大荷重が入力された際に装飾部材が内装パネルから外れてしまうことを防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の留め具は次の手段をとる。
まず、第1の発明は、車両の内装パネルに装飾部材を着脱可能に取付けるための留め具構造である。この留め具構造は、装飾部材に対して一体的に立設される留め具本体と、留め具本体に形成され、内装パネルに形成された取付け孔に差し込まれることで取付け孔の周縁部に弾性的に係合して抜け止めされた係止状態となる係止爪とを有している。さらに、留め具本体には、係止爪に先行して取付け孔に差し込まれ、係止爪が取付け孔の周縁部に係合して弾発力を作用させる特定の径方向に対して垂直な径方向に突出する突起と、突起とは反対方向に突出し、係止爪が取付け孔の周縁部に係止した状態となるまでの間の差し込みにより、取付け孔内に差し込まれて突起を取付け孔の径方向の外側領域へと押し出すように留め具本体の差し込み位置を径方向に位置ずれさせるように案内する位置ずれガイドとが形成されている。留め具本体が取付け孔に差し込まれて係止爪が取付け孔の周縁部に係合した状態では、突起が取付け孔の径方向の外側領域にずれた状態に保持される。留め具本体に係止爪の弾発力を超えた強い力で取付け孔から引き抜かれる方向の抜去荷重が入力された場合には、突起が内装パネルに裏側から当接して、留め具本体が取付け孔から引き抜かれる移動が阻止される。
【0006】
この第1の発明によれば、留め具本体に取付け孔から引き抜かれる方向の強い力が入力された場合には、突起が内装パネルに裏側から当接して、留め具本体が取付け孔から引き抜かれる移動が阻止される。それにもかかわらず、留め具本体は、位置ずれガイドを引き抜いてから突起を取付け孔の径方向の内側領域に戻すように留め具本体を径方向に位置ずれさせて引き抜くことで、取付け孔から引き抜かれる。
【0007】
ついで、第2の発明は、上述した第1の発明において、留め具本体は、装飾部材に一体成形されて形成された取付け座と、取付け座に差し込みにより一体的に装着された状態となるクリップとからなる構成とされ、クリップに係止爪と突起とが形成され、取付け座に位置ずれガイドが形成されているものである。
【0008】
この第2の発明によれば、突起および係止爪が形成されるクリップは、位置ずれガイドが形成される取付け座とは別体に形成される。
【0009】
さらに、第3の発明は、上述した第2の発明において、クリップは、突起が位置ずれガイドの突出する径方向にも突出して形成されて、取付け座に対する装着の差し込み向きが旋回方向に180°回転させた状態でも装着することのできる対称形状とされているものである。
【0010】
この第3の発明によれば、クリップは、取付け座に装着する際にどちら側の突起を位置ずれガイドとは反対側に向けていても、留め具本体が機能するようになる。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、衝撃荷重などの大荷重の入力に対して留め具本体が取付け孔から引き抜かれないようにして、装飾部材が内装パネルから外れてしまうことを防ぐことができる。それにもかかわらず、留め具本体は径方向に位置ずれさせて引き抜くことで取付け孔から引き抜くことができるので、装飾部材を内装パネルに脱着可能に取付ける機能は保たれる。
【0012】
また、第2の発明によれば、係止爪を位置ずれガイドとは別体で形成したことで、係止爪を撓ませやすくする一方で位置ずれガイドを変形させにくくして、留め具本体の機能の信頼性を向上させることができる。さらに、位置ずれガイドが突起とは別体に形成されるので、クリップを差し込み方向の長さに対してよりコンパクトにすることができる。
【0013】
また、第3の発明によれば、クリップを取付け座に装着する際にどちら側の突起を位置ずれガイドの反対側に向けていても留め具本体が機能するようになるので、クリップの取付け座への装着の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1にかかる留め具構造の概略構成を表した斜視図である。
【図2】実施例1にかかるクリップと取付け座とを分解して表した斜視図である。
【図3】実施例1にかかる留め具本体を取付け孔に差し込む前の状態を表した側面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】実施例1にかかる留め具本体の突起を取付け孔に差し込んだ状態を表した側面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】実施例1にかかる留め具本体を取付け孔に差し込んだ状態を表した側面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】実施例1にかかる留め具本体に取付け孔から引き抜かれる方向の抜去荷重が入力された状態を表した側面図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【図11】実施例2にかかる留め具本体を取付け孔に差し込んだ状態を表した側面図である。
【図12】実施例3にかかる留め具本体を取付け孔に差し込んだ状態を表した側面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線断面図である。
【図14】実施例3にかかるクリップの構成を表した斜視図である。
【図15】従来のクリップの構成を表した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
始めに、実施例1にかかる留め具構造100の構成について、図1ないし図10を用いて説明する。実施例1の留め具構造100は、図1に示すように、合成樹脂製のインストゥルメントパネル130に合成樹脂製のセンタークラスター140を脱着可能に取付けるために用いられるものである。この留め具構造100は、センタークラスター140に一体に立設された留め具本体101と、留め具本体101に形成され、インストゥルメントパネル130に形成された取付け孔131に差し込まれることで取付け孔131の周縁部131Aに係合して抜け止めされた係止状態となる一対の係止爪111とを有している。ここで、インストゥルメントパネル130が本発明における「内装パネル」に相当する。また、センタークラスター140が本発明における「装飾部材」に相当する。
【0017】
留め具本体101には、図1および図2に示すように、径方向外方に張り出す突起112と、留め具本体101の差し込み位置を径方向に位置ずれさせるように案内する位置ずれガイド121とが形成されている。突起112は、係止爪111が取付け孔131の周縁部131Aに係合して弾発力を作用させる特定の径方向(図8で見て左右方向)に対して垂直な径方向(図7で見て左方向)に突出している。位置ずれガイド121は、突起112とは反対方向(図3で見て右方向)に突出している。突起112は、図3ないし図6に示すように、各係止爪111に先行して取付け孔131に差し込まれる。
【0018】
位置ずれガイド121は、図5ないし図8に示すように、突起112が取付け孔131に差し込まれてから、各係止爪111が取付け孔131の周縁部131Aに係合して抜け止めされた係止状態となるまでの間に、取付け孔131内に差し込まれる。位置ずれガイド121は、取付け孔131内に差し込まれることによって、突起112を取付け孔131の径方向の外側領域へと押し出すように留め具本体101の差し込み位置を径方向(図5および図7で見て左方向)に位置ずれさせるように案内する構成となっている。なお、上記係止状態では、図7および図8に示すように、差し込まれた位置ずれガイド121によって突起112が取付け孔131の径方向の外側領域にずれた状態に保持されている。
【0019】
上記係止状態から留め具本体101に衝撃荷重などの大荷重が入力されて、係止爪111の弾発力を超えた強い力で取付け孔131から引き抜かれる方向の抜去荷重が加わると、図7ないし図10に示すように、係止爪111の係合が外れて留め具本体101が取付け孔131から引き抜かれる方向(図示下方向)に移動する。このとき、留め具本体101は、位置ずれガイド121によって差し込み位置をずらされた状態のまま移動するので、その移動の途中で突起112がインストゥルメントパネル130に裏側から当接する(図9参照)。これにより、留め具本体101が取付け孔131から引き抜かれる移動が阻止されて、センタークラスター140がインストゥルメントパネル130から外れてしまうことを防ぐことができる。
【0020】
上記突起112は、取付け孔131に差し込まれた位置ずれガイド121によって取付け孔131の径方向の外側領域にずれた状態に保持されることによって、インストゥルメントパネル130に裏側から当接できるようになっている。また、図9に示すように、位置ずれガイド121は、突起112がインストゥルメントパネル130に裏側から当接した状態では、取付け孔131から完全に引き抜かれた状態となるようにその端面121Aの位置が設定されている。このため、突起112をインストゥルメントパネル130に裏側から当接させた状態から、突起112を取付け孔131の径方向の内側領域へ戻すように留め具本体101の差し込み位置を径方向(図9で見て右方向)に位置ずれさせた後に、留め具本体101を取付け孔131から引き抜いて、センタークラスター140をインストゥルメントパネル130から外すことができる。
【0021】
ところで、留め具本体101は、図1および図2に示すように、センタークラスター140に一体成形されて形成された取付け座120と、取付け座120に差し込みにより一体的に装着された状態となるクリップ110とからなる構成とされている。クリップ110には、上記係止爪111と上記突起112とが形成されている。取付け座120には、上記位置ずれガイド121が形成されている。係止爪111が形成されるクリップ110を位置ずれガイド121が形成される取付け座120とは別体に形成することにより、係止爪111を撓みやすくしながら位置ずれガイド121を変形しにくくして、留め具本体101の機能の信頼性を向上させることができる。さらに、取付け孔131に先行して差し込まれる突起112が位置ずれガイド121とは別体に形成されるので、クリップ110を差し込み方向の長さに対してよりコンパクトにすることができる。
【0022】
なお、上述したクリップ110は、厳密には、図1、図2、図3、図5、図7および図9に示すように、その突起112が位置ずれガイド121が突出する径方向(図3で見て右方向)にも突出して形成されて、取付け座120に対する装着の差し込み向きが旋回方向に180°回転させた状態でも装着することのできる対称形状とされている。これにより、クリップ110は、取付け座120に装着する際にどちらか一方の突起112を位置ずれガイド121に向けていれば、その反対側の突起112が位置ずれガイド121の反対側に向かって突出するようになっている。このため、クリップ110を取付け座120に装着する際にどちらか一方の突起112を位置ずれガイド121に向けていれば留め具本体101が機能するようになり、クリップ110の取付け座120への装着の作業性を向上させることができる。
【0023】
続いて、留め具構造100の各部材の構成について説明する。クリップ110は、全体が合成樹脂によって一体に形成されている。図2に示すように、クリップ110は、クリップ110の一端(図2で見て上端)側に位置する頭部114と、頭部114から反対側の端(図2で見て下端)に向けて延びる一対の係止爪111と、両係止爪111の内側に位置する一対の挟持片113と、各挟持片113から外側に向けて突出する突起112とに大別される。上記頭部114は、インストゥルメントパネル130の取付け孔131に対して留め具本体101を差し込むときに先行する案内部となる。このため、頭部114は、取付け孔131に差し込みやすいように外周面に丸みを持たせた形状に形成されている。上記一対の挟持片113は、図4に示すように、頭部114から所定の間隔を隔てて図示下方側にそれぞれ片持ち梁状に延長された平行板状に形成されている。
【0024】
両挟持片113は、互いの間に取付け座120が図示下方側から差し込まれることにより、この取付け座120を挟み込んだ状態にして保持するようになっている。詳しくは、上記両挟持片113の板面の間に取付け座120が図示下方側から差し込まれると、取付け座120が両挟持片113を板厚方向(図4で見て左右方向)に押し広げながら両挟持片113の間に進入する。これによって、図4に示すように、両挟持片113が取付け座120をその両側から挟みつけるとともに、各挟持片113の板面から互いの間に向かって突出した各係合突部113Aが取付け座120の係合孔123に対してその両側からそれぞれ係合する。これにより、クリップ110は取付け座120に対して外れないように取付けられる。なお、各挟持片113には、それぞれの先端部に取付け座120の差し込みを円滑にする傾斜面113Bが形成されている。
【0025】
上記一対の係止爪111は、図2に示すように、頭部114から上記各挟持片113をその板厚方向に挟みこむように図示下方側にそれぞれ片持ち梁状に延長されている。両係止爪111は、それぞれの弾性および上記頭部114の弾性によって、互いの開口を広げたりすぼめたりするように内外に弾性変形できるようになっている。これにより、クリップ110が取付け孔131に差し込まれたときに、各係止爪111が取付け孔131の径によって撓みすぼめられた後に拡開する弾発力によって、クリップ110が取付け孔131に係止されるようになる。各係止爪111は、図2および図4に示すように、取付け孔131の周縁部131Aに傾斜面で当接した状態で係止する係止肩111Aと、各係止爪111の先端部から留め具本体101の径方向外方(図4で見て左右方向)に突出したスタビライザー111Bとを備えている。各係止肩111Aは、各係止爪111から留め具本体101の径方向外方(図4で見て左右方向)に張り出されている。
【0026】
各突起112は、図2および図3に示すように、各挟持片113の板幅を部分的に広げることによって、上記係止肩111Aの張り出しとは直交する径方向外方(図3で見て左右方向)の両側にそれぞれ張り出されている。各突起112は、上記頭部114とともに留め具本体101の差し込みの際に先行する案内部となる。このため、各突起112は、留め具本体101の差し込み方向側(図3で見て上側)の端面112Aが留め具本体101の差し込みを案内するように傾けられて、取付け孔131の周縁部131Aに係合することができる爪形状に形成されている。なお、各突起112のうち、位置ずれガイド121と同じ側(図3で見て右側)に位置する各突起112は、互いの間に取付け座120がはめ込まれることで、留め具本体101から突出しないようになっている。
【0027】
取付け座120は、センタークラスター140の所定の個所に立設された板状の部材として、合成樹脂によりセンタークラスター140と一体に成型されている。センタークラスター140に一体に立設された取付け座120をクリップ110に前もって差し込んで留め具本体101を構成し、その留め具本体101をインストゥルメントパネル130の取付け孔131に差し込んで係止させることで、センタークラスター140をインストゥルメントパネル130に取付けることができる。図2に示すように、取付け座120には、クリップ110への差し込み方向側(図示上側)の先端部に、クリップ110の各挟持片113に対する取付け座120の差し込みが円滑となるような傾斜面が形成されている。
【0028】
取付け座120は、上述した位置ずれガイド121と、留め具本体101が倒れないように支持する複数のリブ122と、クリップ110を取付け座120に取付けるための係合孔123とを備えている。係合孔123は、上述した各係合突部113Aがはまり込む孔として、取付け座120をその板厚方向に貫通して形成されている。係合孔123は、厳密には、取付け座120の板面の、位置ずれガイド121とは反対側に寄った位置に形成されている。これにより、取付けられたクリップ110の位置ずれガイド121とは反対側の各突起112をより大きく突出させて、その各突起112をインストゥルメントパネル130に裏側から当接させやすくすることができる。
【0029】
各リブ122は、取付け座120のクリップ110が差し込まれる部分を回避するように、取付け座120の板面から垂直に張り出している。各リブ122には、図2および図7に示すように、留め具本体101を取付け孔131に差し込んだときにインストゥルメントパネル130と当接するように張り出した座面122Aが設けられている。これにより、留め具本体101の取付け孔131への差し込みの深さを規制することができる。位置ずれガイド121は、図1ないし図10に示すように、その留め具本体101の差し込み方向側(図1で見て上側)の端面121Aが、留め具本体101の取付け孔131への差し込みを案内するように傾けられた傾斜面として形成されている。これにより、留め具本体101を取付け孔131に差し込んで係止させる作業をよりスムーズに行うことができる。
【0030】
上記端面121Aは、図3に示すように、各突起112よりも留め具本体101の根元側(図示下側)に位置している。厳密には、端面121Aの留め具本体101の先端側(図示上側)の端と各突起112の留め具本体101の根元側(図示下側)の端との間の、留め具本体101の差し込みに沿う方向(図示上下方向)の離間寸法W1が、インストゥルメントパネル130の板厚W2と等しくなるように設定されている。これにより、留め具本体101の差し込み位置を位置ずれさせるように案内する際に各突起112が取付け孔131と干渉しないようにして、留め具本体101の取付け孔131への差し込みをよりスムーズにすることができる。さらに、留め具本体101を差し込み方向の長さに対してよりコンパクトにするとともに、各突起112をインストゥルメントパネル130の裏面により安定的に当接させることができる。
【0031】
取付け孔131は、図1に示すように、インストゥルメントパネル130に矩形にうがたれて、その周縁部131Aに各係止爪111の各係止肩111Aが弾性的に係合する構成とされている。詳しくは、図4、図6および図8に示すように、留め具本体101を取付け孔131に差し込むと、両係止爪111が取付け孔131の径によって撓みすぼめられた後に拡開して、両係止爪111の弾発力によって留め具本体101が矩形にうがたれた取付け孔131の周縁部131Aの長辺部分に係止されるようになっている。これにより、センタークラスター140はインストゥルメントパネル130に対して抜け止めされた係止状態となる。
【0032】
センタークラスター140は、図7に示すように、その端面141が留め具本体101を取付け孔131に差し込んだときにインストゥルメントパネル130に当接するように曲げられた板状に形成されている。これにより、センタークラスター140のインストゥルメントパネル130への取付け状態をより安定化させることができる。
【0033】
このように、実施例1の留め具構造100によれば、衝撃荷重などの大荷重の入力に対して留め具本体101が取付け孔131から引き抜かれないようにして、センタークラスター140がインストゥルメントパネル130から外れてしまうことを防ぐことができる。それにもかかわらず、留め具本体101は径方向に位置ずれさせて引き抜くことで取付け孔131から引き抜くことができるので、センタークラスター140をインストゥルメントパネル130に脱着可能に取付ける機能は保たれる。
【0034】
また、各係止爪111を位置ずれガイド121とは別体で形成したことで、各係止爪111を撓ませやすくする一方で位置ずれガイド121を変形させにくくして、留め具本体101の機能の信頼性を向上させることができる。さらに、位置ずれガイド121が各突起112とは別体に形成されるので、クリップ110を差し込み方向(図3で見て上下方向)の長さに対してよりコンパクトにすることができる。
【0035】
また、クリップ110を取付け座120に装着する際にどちら側の各突起112を位置ずれガイド121の反対側に向けていても留め具本体101が機能するようになるので、クリップ110の取付け座131への装着の作業性を向上させることができる。
【実施例2】
【0036】
続いて、実施例2にかかる留め具構造200の構成について、図11を用いて説明する。実施例2の留め具構造200は、実施例1の留め具構造100を変形した実施例である。したがって、上記実施例1の留め具構造100の各構成と共通する構成については、実施例1の留め具構造100の各構成に付した符号から、その百の位の数字を「2」に置き換えた符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。実施例2の留め具構造200は、図11に示すように、実施例1の留め具構造100のクリップ110を合成樹脂製のクリップ210に置き換えたものである。
【0037】
クリップ210は、図11に示すように、その各突起212が位置ずれガイド221が突出する径方向とは反対の径方向(図11で見て左方向)のみに突出して形成されている。これにより、留め具本体210全体の各突起212の突出方向(図11で見て左右方向)の幅を狭くして、取付け孔231をより小さくすることができる。なお、実施例2の留め具構造200の使用方法および作用効果は、実施例1の留め具構造100の使用方法および作用効果と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【実施例3】
【0038】
続いて、実施例3にかかる留め具構造300の構成について、図12ないし図14を用いて説明する。実施例3の留め具構造300は、実施例1の留め具構造100を変形した実施例である。したがって、上記実施例1の留め具構造100の各構成と同様の構成については、実施例1の留め具構造100の各構成に付した符号から、その百の位の数字を「3」に置き換えた符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。実施例3の留め具300は、図12および図13に示すように、実施例1の留め具構造100のクリップ110を金属製のクリップ310に置き換えたものである。上記クリップ310は、1枚の金属板をプレス加工により打ち抜いた後に、さらに曲げ加工されて形成されている。これにより、クリップ310は、頭部314から互いに対向する一対の係止爪311を延ばした形に形成されている。これらの係止爪311は、取付け孔331の周縁部331Aに傾斜面で当接した状態で弾性的に係止する係止肩311Aを備えているが、各係止爪311から突出するスタビライザーは備えていない。
【0039】
各係止爪311は、そのバネ弾性により、互いの開口を広げたりすぼめたりするように内外に弾性変形できるようになっている。そして、上記クリップ310には、図14に示すように、さらに、上記各係止爪311からそれぞれ内側に切り起こされて突出する挟持片313が形成されている。詳しくは、各挟持片313は、各係止爪311の頭部314寄り(図14で見て上方寄り)の板面から、各係止爪311の先端側(図14で見て下側)に向かって面を延ばすように切り起こされた形に形成されている。各挟持片313には、図13に示すように、各挟持片313の先端部が外側に向かって曲げられることで、取付け座320の差し込みを円滑にする傾斜面313Bが形成されている。
【0040】
各傾斜面313Bのうち一方側(実施例3では、図13で見て右側)の傾斜面313Bには、その先端部が内側に向かって曲げられることで、取付け座320の係合孔323に対してはまり込んで係止する係合突部313Aが形成されている。クリップ310の係合突部313Aが取付け座320の係合孔323に係止することにより、クリップ310は取付け座320に対して外れないように取付けられる。各係止爪311には、図13に示すように、互いの板面の間隔を部分的に広げるように曲げ加工することで、取付け孔331に弾性的にはまり込んで係止する係止肩311Aが形成されている。各係止爪311には、図12に示すように、各係止爪311の板幅を部分的に両側に向かって広げることによって、取付け孔331の周縁部331Aに係合することができる複数の突起312が形成されている。
【0041】
各突起312は、クリップ310の頭部314とともに留め具本体301の差し込みの際に先行する案内部となる。このため、各突起312は、留め具本体301の差し込み方向側(図12で見て上側)の端面312Aが留め具本体301の差し込みを案内するように傾けられた爪形状に形成されている。なお、各突起312のうち、取付け座320の位置ずれガイド321と同じ側(図12で見て右側)に位置する各突起312は、互いの間に取付け座320がはめ込まれることで、留め具本体301から突出しないようになっている。なお、実施例3の留め具構造300の使用方法および作用効果は、実施例1の留め具構造100の使用方法および作用効果と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0042】
以上、本発明の実施形態について実施例1ないし実施例3を用いて説明したが、本発明は上記3つの実施例以外にも各種の形態で実施できるものである。例えば、突起と係止爪とがクリップに設けられている必要はなく、例えば突起または係止爪のいずれか一方が取付け座に設けられた構成であってもよい。また、位置ずれガイドが取付け座に設けられている必要はなく、位置ずれガイドをクリップに設けることもできる。ただし、この場合はクリップが大型化するおそれがある。また、取付け座の構成は実施例1ないし実施例3の構成に限定されず、例えば取付け座を金属製にした構成や取付け座がリブを備えていない構成であってもよい。また、取付け座の座面は必須の構成ではなく、例えば係止爪のスタビライザーをインストゥルメントパネルに当接させることで、留め具本体の取付け孔への差し込みの深さを規制する構成を用いてもよい。また、留め具本体はクリップを取付け座に装着した構成に限定されず、例えば留め具本体の全体が一体に成形された構成であってもよい。
【0043】
また、係止爪および取付け孔は実施例1ないし実施例3の構成に限定されず、係止爪が取付け孔に弾性的に係合して脱着可能に抜け止めされた係止状態となる構成ならば、他の公知の構成を用いることもできる。また、上記各実施例では、突起を各係止爪または各挟持片の一部を板幅方向に広げて形成したものを示したが、突起は係止爪が取付け孔に係合して弾発力を作用させる特定の径方向に対して垂直な径方向に突出した形状となっていればよく、その具体的な形状は限定されない。また、位置ずれガイドの端面は傾斜面である必要はなく、例えば留め具本体の差し込み方向に対して垂直な面であってもよい。ただし、この場合は留め具本体の差し込みの際に留め具本体をインストゥルメントパネルに沿ってスライドさせる必要が生じる。また、位置ずれガイドは、留め具本体の差し込みの際に押し撓まされることで、その弾発力によって留め具本体の差し込み位置を位置ずれさせるように案内する構成であってもよい。
【0044】
実施例1ないし実施例3にかかる留め具構造は、インストゥルメントパネルにセンタークラスターを脱着可能に取付けるために用いられるものである。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されたものではなく、車両の内装パネルに装飾部材を着脱可能に取付けるための留め具構造であれば、本発明を適用することができる。例えば、内装パネルとしては車両ボデーやインストゥルメントパネルなどの板状部材を選択することができ、装飾部材を保持するのに十分な強度があればその具体的な素材は特に限定されない。また、装飾部材としては、インストゥルメントパネル、センタークラスターあるいはトリムボードなどの任意の部材を選択することができ、その具体的な素材は特に限定されない。
【符号の説明】
【0045】
100 留め具構造
101 留め具本体
110 クリップ
111 係止爪
111A 係止肩
111B スタビライザー
112 突起
112A 端面
113 挟持片
113A 係合突部
113B 傾斜面
114 頭部
120 取付け座
121 位置ずれガイド
121A 端面
122 リブ
122A 座面
123 係合孔
130 インストゥルメントパネル(内装パネル)
131 取付け孔
131A 周縁部
140 センタークラスター(装飾部材)
141 端面
200 留め具構造
201 留め具本体
210 クリップ
211 係止爪
211A 係止肩
211B スタビライザー
212 突起
212A 端面
214 頭部
220 取付け座
221 位置ずれガイド
221A 端面
222 リブ
222A 座面
230 インストゥルメントパネル(内装パネル)
231 取付け孔
231A 周縁部
240 センタークラスター(装飾部材)
241 端面
300 留め具構造
301 留め具本体
310 クリップ
311 係止爪
311A 係止肩
312 突起
312A 端面
313 挟持片
313A 係合突部
313B 傾斜面
314 頭部
320 取付け座
321 位置ずれガイド
321A 端面
322 リブ
322A 座面
323 係合孔
330 インストゥルメントパネル(内装パネル)
331 取付け孔
331A 周縁部
340 センタークラスター(装飾部材)
341 端面
910 クリップ
911 係止爪
920 リブ
930 インストゥルメントパネル(内装パネル)
931 取付け孔
940 センタークラスター(装飾部材)
W1 離間寸法
W2 板厚


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内装パネルに装飾部材を着脱可能に取付けるための留め具構造であって、
前記装飾部材に対して一体的に立設される留め具本体と、
前記留め具本体に形成され、前記内装パネルに形成された取付け孔に差し込まれることで当該取付け孔の周縁部に弾性的に係合して抜け止めされた係止状態となる係止爪と、を有し、
さらに、前記留め具本体には、
前記係止爪に先行して前記取付け孔に差し込まれ、前記係止爪が前記取付け孔の周縁部に係合して弾発力を作用させる特定の径方向に対して垂直な径方向に突出する突起と、当該突起とは反対方向に突出し、前記係止爪が前記取付け孔の周縁部に係止した状態となるまでの間の差し込みにより、前記取付け孔内に差し込まれて前記突起を前記取付け孔の径方向の外側領域へと押し出すように前記留め具本体の差し込み位置を径方向に位置ずれさせるように案内する位置ずれガイドと、が形成されており、前記留め具本体が前記取付け孔に差し込まれて前記係止爪が前記取付け孔の周縁部に係合した状態では、前記突起が前記取付け孔の径方向の外側領域にずれた状態に保持され、前記留め具本体に前記係止爪の弾発力を超えた強い力で前記取付け孔から引き抜かれる方向の抜去荷重が入力された場合には、前記突起が前記内装パネルに裏側から当接して、前記留め具本体が前記取付け孔から引き抜かれる移動が阻止されるようになっていることを特徴とする留め具構造。
【請求項2】
請求項1に記載の留め具構造であって、
前記留め具本体は、前記装飾部材に一体成形されて形成された取付け座と、当該取付け座に差し込みにより一体的に装着された状態となるクリップと、からなる構成とされ、前記クリップに前記係止爪と前記突起とが形成され、前記取付け座に前記位置ずれガイドが形成されていることを特徴とする留め具構造。
【請求項3】
請求項2に記載の留め具構造であって、
前記クリップは、前記突起が前記位置ずれガイドの突出する径方向にも突出して形成されて、前記取付け座に対する装着の差し込み向きが旋回方向に180°回転させた状態でも装着することのできる対称形状とされていることを特徴とする留め具構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−167694(P2012−167694A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26999(P2011−26999)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】