説明

畜肉加工品及びその製造方法

【課題】
原料として「おから」を含有し、食感がふっくらと柔らかく適度な弾力性を有する畜肉加工品と、かかる畜肉加工品を工業的に大量生産できる方法を提供する。
【解決手段】
パン粉及びおからに対してそれらの乾燥質量の1.5〜5倍の質量の濃縮卵白を含浸させて調整した混合物を、全原料に対し15〜50%配合して加熱凝固させた畜肉加工品であって、パン粉に対するおからの乾燥質量比は0.2〜0.5としてあり、濃縮卵白の固形分含量は15〜50%としてあることを特徴とする畜肉加工品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンバーグ、スコッチエッグ等の畜肉加工品及びその製造方法に関し、特に、食感及び風味が改善された畜肉加工品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高級レストラン等で一つずつ丁寧に製造されるハンバーグやスコッチエッグ等の畜肉加工品は、ふっくらと柔らかく、かつ適度な弾力性があるが、工業的に大量に製造する場合には、原料の選択や処理、また焼き加減等について微細な調整を行い難いため、食感や風味が優れた畜肉加工品の製造は困難であるという問題があった。
【0003】
例えば、工業的に大量生産されるハンバーグにおいては、ふっくらと焼き上げると原料間の結着力が弱くなり、製品が脆いものとなる傾向があり、一方、弾力性が強いものとすれば、食感が不自然なものとなってしまう等、食感の柔らかさと弾力性のバランスを調整することは極めて困難であった。
【0004】
かかる問題の解決を目的とした先行技術としては、特許文献1に記載の発明が知られている。しかし、この特許文献1に記載のハンバーグの製造方法によれば、ハンバーグの外層部と内層部で原料配合が異なり、そのため食感においても差異を生ずる事になり、不自然さを感じることは否めないという問題がある。
【0005】
また、畜肉加工品の原料として「おから」を用いた場合には、現代人に不足しがちな食品である豆類を効率よく摂取することが出来、且つ余分な畜肉の脂質分を食物繊維が吸収し体外に排出する等、畜肉加工品を食した際の摂取カロリーを低く抑えることが出来るといった栄養面において利点があるものの、配合量を増やすと、畜肉加工品特有の食感を損ねパサパサした食感となる傾向があり、また、畜肉加工品が脆く崩れやすくなるといった問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−243917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、原料として「おから」を含有し、ふっくらと柔らかく、かつ適度な弾力性を有し、食感・風味共に肉質感に富む畜肉加工品と、そのような畜肉加工品を工業的に大量生産する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果本発明を完成させた。
即ち、本発明は、(1)パン粉及びおからに対してそれらの乾燥質量の1.5〜5倍の質量の濃縮卵白を含浸させて得た混合物を、全原料に対し15〜50%配合して加熱凝固させた畜肉加工品であって、パン粉に対するおからの乾燥質量比は0.2〜0.5%としてあり、濃縮卵白の固形分含量は15〜50%としてあることを特徴とする畜肉加工品、及び、(2)さらに、パン粉及びおからに調味料を含浸させたことを特徴とする上記(1)に記載の畜肉加工品を提供する。
また、(3)パン粉及びおからに濃縮卵白を含浸させて混合物とし、当該混合物に他の原料を加え混合して生地を調製し、当該生地を所望の形状に成型して加熱凝固させることを特徴とする上記(1)に記載の畜肉加工品の製造方法、さらに、(4)パン粉及びおからに濃縮卵白及び調味料を含浸させて混合物とし、当該混合物に他の原料を加え混合して生地を調製し、当該生地を所望の形状に成型して加熱凝固させることを特徴とする上記(2)に記載の畜肉加工品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の畜肉加工品は、おからを含有し、食感がふっくら柔らかく、かつ適度な弾力性を有し、食感・風味共に肉質感に富むものであり、また、本発明の畜肉加工品の製造方法によれば、そのような食感の柔らかさと適度の弾力性のバランスを兼ね備えた畜肉加工品を、工業的に大量生産することができる。
また、パン粉及びおからにあらかじめ濃縮卵白と共に調味料を含浸させておくことにより、畜肉加工品の全体に、調味料を凝固した卵白に取り込ませた状態として分散させることができるため、畜肉加工品の食味をマイルドなものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、本発明において「%」の記載は、特に断らない限り「質量%」を意味し、「部」の記載は「質量部」を意味するものである。
【0011】
本発明において畜肉加工品とは、牛肉、豚肉、家禽肉(鶏肉、鴨肉など)、羊肉、馬肉、または家兎肉等の食用に適した畜肉(食肉)の挽肉を主原料として加工した食品であり、例えば、肉団子(ミートボール、つくね)、ハンバーグ、スコッチエッグ、ロールキャベツ、肉ギョーザ、肉シューマイ等の食肉を一部若しくは全てに使用した惣菜類を挙げることができる。なお、主原料の畜肉としては肉の赤身部分の他、脂肪部分、内臓部分も使用することができる。
【0012】
本発明においてパン粉としては、生パン粉や乾燥パン粉などパンをくずして小片状にしたものの他、クラッカーなどの焼き菓子を砕いたもの等を使用することができる。
【0013】
また、本発明においておからとは、大豆を蒸煮やボイルなどによって加熱した後にすり潰し、圧搾して豆乳を搾り出した後の残部をいい、一般的には豆腐を製造する際に得られる副産物とされており、「うのはな」、「きらず」とも呼ばれるものである。また、おからには、冷凍品や乾燥品等が存在するが、本発明においては、いずれの状態のものでも好適に使用することができる。
【0014】
本発明においてパン粉及びおからの水分含量の測定方法は、減圧加熱乾燥法(「食品衛生検査指針」厚生労働省監修、社団法人日本食品衛生協会、2005年3月31日発行)によることができる。減圧加熱乾燥法は、測定サンプルが分解しない温度において減圧下で加熱することにより減少した質量(水分含量)を測定する方法であり、本発明においては、測定サンプルであるパン粉及びおからを、70℃の減圧下で2時間加熱して減少した質量を測定することにより、水分含量を求めることができる。
【0015】
一般に、生パン粉の水分含量は20〜35%程度であり、乾燥パン粉では5〜10%程度である。また、一般におからの水分含量は70〜85%であり、乾燥させたものでは5〜15%程度である。
上述の通り、本発明においては生パン粉や乾燥パン粉等、おからについてもその水分含量にかかわらず使用することができるが、後述する液卵白との配合割合を特定するために、便宜上パン粉及びおからの乾燥質量を把握する必要がある。
【0016】
本発明においては、パン粉に対するおからの乾燥質量比は0.2〜0.5としておく必要がある。パン粉に対するおからの乾燥質量比が0.2より小さいとおからの栄養的価値を期待できず、畜肉加工品におからを配合する意義がなくなり、一方、乾燥質量比が0.5より大きいと、畜肉加工品がパサパサした食感となる傾向があり、また、弾力性に乏しく脆く崩れやすいものとなるからである。
【0017】
本発明において濃縮卵白とは、鶏卵等の卵を割卵し卵黄を分離して得られる通常の液卵白よりも、固形分含量を高めてある液状の卵白をいう。また、通常の液卵白は、その約90%が水分であるため固形分含量は10%程度であるが、本発明で用いる濃縮卵白の固形分含量は15〜50%とする必要がある。すなわち、固形分含量が15%より低いと、畜肉加工品は、水分が多いため弾力性が低く歯応えの乏しいものとなり、一方、固形分含量が50%を超えると、畜肉加工品の食感が硬くなるからである。
【0018】
本発明において濃縮卵白、液卵白又は乾燥卵白の固形分含量の測定方法は、上記のパン粉及びおからの水分含量の測定方法と同様の減圧加熱乾燥法によることができる。具体的には、測定サンプルである濃縮卵白等を、70℃の減圧下で2時間加熱して減少した質量を測定することにより固形分含量を求めることができる。
【0019】
本発明で用いる濃縮卵白は、通常の液卵白を、膜濃縮法等により濃縮処理して製造することができる。膜濃縮法は、水分を分離する機能を持つ半透膜を利用して液卵白を濃縮する方法であり、UF(限外ろ過)法、RO(逆浸透)法、ナノろ過法等がある。また、より簡易な濃縮卵白の製法としては、乾燥卵白を所定量よりも少量の清水で水戻しし、或いは、通常の液卵白に乾燥卵白を加えて溶解し固形分含量を高める等の方法を採用することができる。
【0020】
また、濃縮卵白の原料としては、なるべく新鮮な生の液卵白を用いることが好ましいが、加熱凝固性を保持していればどのような状態のものであっても使用可能である。例えば、上記の乾燥処理した卵白の他、凍結処理、加熱殺菌処理、脱糖処理、脱リゾチーム処理等を施した卵白を使用することも可能である。
尚、液卵白を得る場合の割卵方法は、手割り又は機械割りのいずれでもよく、したがって、液卵白には通常の機械割りによって混入する0.1〜0.5%程度の卵黄が混入しても差し支えない。
【0021】
本発明の畜肉加工品は、上記の濃縮卵白をパン粉及びおからの乾燥質量に対して1.5〜5倍で配合し含浸させてある。パン粉に濃縮卵白を含浸させることにより、パン粉のスポンジ状の構造中に濃縮卵白が吸収され、この濃縮卵白を吸収したパン粉を混ぜ込んだ畜肉加工品生地を加熱することにより、卵白が凝固してパン粉のスポンジ状の構造に強いコシが付与されるものと思われる。また、おからに濃縮卵白を含浸されることにより、パサパサした食感の原因となる繊維状構造に濃縮卵白が保収され、加熱により卵白が凝固しておからの繊維状の構造にしなやかな食感が付与されるものと思われる。
これらの濃縮卵白を含浸させたパン粉とおからの相乗的な作用により、本発明の畜肉加工品は、ふっくら柔らかいにもかかわらず、適度な弾力性を有し、十分な肉質感が感じられるものになるものと推察される。
【0022】
ここで、パン粉及びおからの乾燥質量に対し濃縮卵白の配合量が1.5倍よりも少ないと、加熱により凝固する卵白が少なすぎるためか弾力性に乏しく、完成した畜肉加工品が脆いものとなる。一方、液卵白の配合量が5倍よりも多いと、製造時に加熱前の畜肉加工品生地の保形性が低下して所望の形状に成形し難いといった問題が生じ、さらに加熱後には、畜肉加工品が「さつま揚げ」のような、畜肉加工品として不自然な食感となる傾向がある。
【0023】
また、本発明においては、パン粉及びおからに濃縮卵白を含浸させる際に、同時に各種調味料を含浸させることができる。ここで使用する調味料としては、水性調味料である醤油、ソース、ケチャップ等、油性調味料であるラー油、ガーリックオイル等の他、食塩、砂糖、アミノ酸等の水溶性の調味料、微粉末状の各種スパイス、さらに山葵、生姜、ガーリック等のすりおろし品を含めることができる。
【0024】
これらの調味料をパン粉及びおからに含浸させる方法としては、例えば、パン粉及びおからと濃縮卵白とを混合する際に、同時に各種調味料を加えて混合すればよい。それにより、調味料が濃縮卵白と共にパン粉やおからに吸収され、その状態の混合物を畜肉加工品の生地全体に分散させて加熱凝固させることができるため、食味をマイルドなものとすることができる。なお、かかる場合の調味料の配合量は、濃縮卵白の加熱凝固性を阻害しないようにするためには、濃縮卵白の固形分含量にも影響を受けるものの、おおよそ濃縮卵白の質量の3分の1以下とすることが望ましい。
また、パン粉及びおからに濃縮卵白や調味料を含浸させる際には、本発明の目的を損なわない範囲で、各種野菜や海藻の細断物等の他の原料を配合することも可能である。
【0025】
上述の濃縮卵白と必要に応じて調味料を含浸させて調製した混合物は、畜肉を含む他の原料と混合されて畜肉加工品生地とし、所望の形状に成型後、加熱凝固されて本発明の畜肉加工品とされるが、ここで、当該混合物の全原料に対する配合割合は15〜50%となるように調整する必要があり、より好ましくは25〜40%である。15%より少ないと畜肉加工品をふんわり柔らかくすることが困難であり、50%より多い場合は相対的に挽肉の配合量が減少することになり、畜肉の風味や食感が感じられ難くなる傾向があるからである。
【0026】
また、本発明の畜肉加工品には、その効果を損なわない限り、玉葱、人参、蓮根、ゴボウ等の野菜の細断物やすりおろし物の他、ひじき等の海藻類、魚介類や豆腐等の蛋白質類、油脂類、各種色素・調味料等を適宜添加することができる。
さらに、本発明の畜肉加工品は、冷凍による食感の低下が少ないため、冷凍しておくことにより、長期間保存することができるものである。
【0027】
次に、本発明の畜肉加工品の代表的な製造方法を説明する。
まず、ミキサー等を用いて濃縮卵白をパン粉及びおからに含浸させて混合物を調製する。その場合には使用するパン粉及びおからの乾燥質量に対し濃縮卵白を1.5〜5倍の質量割合で染込ませるが、上述の通り、同時に各種調味料を含浸させてもよい。
【0028】
次に、得られた混合物に、挽肉及びその他の原料を加え攪拌混合して畜肉加工品生地とする。これを適量ずつ小分けして所望の形状に成型し、中心部まで十分に火が通る程度に加熱する。例えば、70gの厚さ1cmのハンバーグであれば約90℃で10分程度蒸煮すればよい。
以上により得られる畜肉加工品は、長期保存する場合は急速凍結すればよい。
【0029】
かかる本発明の畜肉加工品は、食感がふっくら柔らかく、かつ適度な弾力性を有し、食感・風味共に肉質感に富むものであり、さらに、上記の製造方法により、工業的に大量生産することができるものである。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]
水分含量10%のパン粉5.0部(乾燥品換算で4.5部)、水分含量80%のおから10.0部(乾燥品換算2.0)、及び固形分含量34.9%の濃縮卵白15.0部をミキサーに投入して軽く混合し、濃縮卵白をパン粉及びおからに含浸させ混合物を得た。ここで、濃縮卵白は、生の液卵白(固形分含量10%)10.5部に乾燥卵白(固形分含量93%)4.5部を加えて溶解し、固形分含量を34.9%(計算値)に調整することにより製造した。
次に、得られた混合物に鶏挽肉62.0部、食用油3.0部、砂糖2.0部、醤油2.0部、食塩1.0部を加え、均一になるまで混合撹拌した
得られたハンバーグ生地を70gずつ丸め、ローラーで1cmの厚さの円盤型に成型後、90℃で10分間蒸煮加熱し、鶏肉ハンバーグを製造した。得られた鶏肉ハンバーグは−18℃以下の冷凍庫に収納して急速凍結した。
なお、パン粉及びおからの水分含量、液卵白及び乾燥卵白の固形分含量は、上記の減圧加熱乾燥法により測定した。
【0032】
得られた鶏肉ハンバーグについて、上記の冷凍品を解凍し再加熱したところ、型崩れによるひび割れ等は発生しておらず、外観は美しいものであった。また、この鶏肉ハンバーグを試食したところ、ふっくら柔らかく、ジューシーな食感を呈し、肉質感に富むおいしいものであった。
【0033】
[実施例2]
水分含量10%のパン粉5.0部(乾燥品換算で4.5部)、水分含量80%のおから10.0部(乾燥品換算2.0部)、砂糖1.8部、食塩1.0部、グルタミン酸ナトリウム0.1部をミキサーに投入して均一に混合し、更に固形分含量19.2%の濃縮卵白18.0部、醤油1.0部、生姜のすりおろし品0.8部を加え、攪拌混合しパン粉及びおからに濃縮卵白及び調味料を含浸させ混合物を得た。ここで、濃縮卵白は、生の液卵白(固形分含量10%)16.0部に乾燥卵白(固形分含量93%)2.0部を加えて溶解し、固形分含量を19.2%(計算値)に調整することにより製造した。
次に、得られた混合物に食用油2.7部を添加・攪拌し、さらにコーン8.0部、4mm角にカットした人参4.5部、4mm角にカットしブランチングした玉葱3.0部、4mm角にカットした枝豆4.5部を加えて混合し、次いで、鶏挽肉39.6部を加えミキサーを用いて均一になるまで攪拌混合した。
得られたハンバーグ生地を70gずつ丸め、ローラーで1cmの厚さの円盤型に成型し、90℃で10分間蒸し焼きにし、鶏肉ハンバーグを製造した。
なお、パン粉及びおからの水分含量、液卵白及び乾燥卵白の固形分含量は、上記の減圧加熱乾燥法により測定した。
【0034】
得られた鶏肉ハンバーグは、型崩れによるひび割れ等は発生しておらず、外観は美しいものであった。また、この鶏肉ハンバーグを試食したところ、ふっくら柔らかく、かつ肉質感に富み、調味料の味が適度に抑えられたマイルドな食味で、大変おいしいものであった。
【0035】
[試験例1]
本発明の畜肉加工品において、パン粉及びおからの配合量の変更、また、これらの乾燥質量に対し含浸させる濃縮卵白の質量割合の変更が、畜肉加工品の物性に与える影響について試験した。
【0036】
サンプルの製造
実施例1と同じ原料を用いて、パン粉、おから及び濃縮卵白の配合量を変更し、その他は実施例1と同様の方法により鶏肉ハンバーグの冷凍品のサンプル(1−a〜1−h)を調製した。また、サンプル1−bは実施例1の鶏肉ハンバーグと同配合品である。
【0037】
試験方法
サンプル1−a〜1−hについて、その製造時に円盤型に成型したハンバーグ生地の保形性を外観観察により評価した。また、製造後の各サンプルを解凍し、品温約80℃まで再加熱した後、専門のパネラーが15gずつ試食して食感を評価した。これらの評価結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1中の記号の意義は下記のとおりである。
[生地の保形性]
○:成型後にほぼ一定形状を保っている。
×:柔らかく、成型後に変形してしまう。
[総合評価]
○:製品として良好である。
×:製品として難がある。
【0040】
表1より、パン粉に対するおからの乾燥質量比を0.20〜0.51に調整し、さらに、パン粉及びおからの乾燥質量に対して含浸させる濃縮卵白の質量を1.5〜5.0倍に調整することにより、鶏肉ハンバーグの食感を柔らかく良好なものとすることができ、さらに、製造時に生地を成型し易いものとすることができることが理解できる(サンプル1−a〜1−c、1−f、1−g)。
【0041】
[試験例2]
本発明の畜肉加工品において、パン粉及びおからに濃縮卵白を含浸させて得た混合物の、全原料に対する質量割合の変更が、畜肉加工品の物性に与える影響にについて試験した。
【0042】
サンプルの製造
まず、実施例1の畜肉加工品と同じ配合及び方法で、濃縮卵白をパン粉及びおからに含浸させた混合物を得た。次いで、表2に示すとおりに、当該混合物の配合量と鶏挽肉の配合量を変更し、その他は実施例1と同様の配合及び方法により、鶏肉ハンバーグの冷凍品のサンプル(2−a〜2−g)を調製した。尚、サンプル2−dは実施例1の鶏肉ハンバーグと同配合品である。
【0043】
試験方法
サンプル2−a〜2−gを解凍し、品温約80℃まで再加熱した後、専門のパネラーが各サンプルを15gずつ試食して、食感及び風味を評価した。それらの評価結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表2中の記号の意義は下記のとおりである。
[食感]
◎:ふっくらと柔らかく極めて良好である。
○:柔らかく良好である。
×:柔らかさに欠ける。
[風味]
◎:鶏肉の風味が十分に感じられ極めて良好である。
○:鶏肉の風味がやや薄いが良好である。
×:鶏肉の風味が薄い。
[総合評価]
◎:製品として最良である。
○:製品として良好である。
×:製品として難がある。
【0046】
表2より、パン粉及びおからに濃縮卵白を含浸させて得た混合物の配合量を、全原料に対し15〜50%(サンプル2−b〜2−f)に調整することにより、食感が柔らかく鶏肉の風味が良好な鶏肉ハンバーグが得られることが理解できる。さらに、当該混合物の配合量を25〜40%(サンプル2−c〜2−e)に調整すれば、鶏肉ハンバーグの品質を製品として最良のものとすることができることが理解できる。
【0047】
[試験例3]
本発明の畜肉加工品において、濃縮卵白の固形分含量の変更が、畜肉加工品の物性に与える影響について試験した。
【0048】
サンプルの製造
実施例1と同じ原料を用いて、表3に示すように生の液卵白(固形分含量10%)と乾燥卵白(固形分含量93%)の配合量を変えることにより、濃縮卵白の固形分含量(計算値)を変更し、その他は実施例1と同様の方法により鶏肉ハンバーグの冷凍品のサンプル(3−a〜3−e)を調製した。尚、サンプル3−cは実施例1の鶏肉ハンバーグと同配合品である。
【0049】
試験方法
サンプル3−a〜3−eを解凍し、品温約80℃まで再加熱した後、専門のパネラーが各サンプルを15gずつ試食して食感を評価した。評価結果を表3に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
表3より、濃縮卵白の固形分含量を15.0〜50.4%に調整することにより、鶏肉ハンバーグの食感を、適度の弾力性を有し、かつ柔らかいものにできることが理解できる(サンプル3−b〜3−d)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン粉及びおからに対してそれらの乾燥質量の1.5〜5倍の質量の濃縮卵白を含浸させて得た混合物を、全原料に対し15〜50%配合して加熱凝固させた畜肉加工品であって、パン粉に対するおからの乾燥質量比は0.2〜0.5としてあり、濃縮卵白の固形分含量は15〜50%としてあることを特徴とする畜肉加工品。
【請求項2】
さらに、パン粉及びおからに調味料を含浸させたことを特徴とする請求項1記載の畜肉加工品。
【請求項3】
パン粉及びおからに濃縮卵白を含浸させて混合物とし、当該混合物に他の原料を加え混合して生地を調製し、当該生地を所望の形状に成型して加熱凝固させることを特徴とする請求項1記載の畜肉加工品の製造方法。
【請求項4】
パン粉及びおからに濃縮卵白及び調味料を含浸させて混合物とし、当該混合物に他の原料を加え混合して生地を調製し、当該生地を所望の形状に成型して加熱凝固させることを特徴とする請求項2記載の畜肉加工品の製造方法。


【公開番号】特開2007−143471(P2007−143471A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341843(P2005−341843)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】