説明

畜肉加工食品の成型方法

【課題】従来になく手作り感に溢れた形状と、ほぐれの良い軟らかな食感を有する畜肉加工食品の製造に用いる成型方法、及び、該方法に用いる成型機用吐出ノズルの提供。
【解決手段】畜肉加工食品の製造に用いる成型方法であって、混練生地を、通過する混練生地の流路を分岐させた後合流させることができる部分遮蔽部材を内部に有する配管部を通過させることを特徴とする成型方法、混練生地投入口と、混練生地吐出口と、混練生地投入口と混練生地吐出口を結ぶ配管部を有する成型機用吐出ノズルであって、前記配管部内に、混練生地の流路を分岐させた後合流させることができる部分遮蔽部材を有し、かつ、前記配管部の送方向に対する最大断面積が、前記混練生地投入口の断面積よりも大きいことを特徴とする成型機用吐出ノズル、該成型方法及び該成型機用吐出ノズルを用いた成型物及び畜肉加工食品の製造方法、並びに、該製造方法により製造された畜肉加工食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手作り様の形状や食感を有する畜肉加工食品の製造に供することができる畜肉加工食品の成型方法、及び該製造方法により製造した畜肉加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
畜肉加工食品は、通常、主原料である挽肉や細切れ肉等を、野菜、パン粉、調味料等の副原料と混和して練り、得られた混練生地を成型した後、鉄板、オーブン、フライヤー、蒸し器等で加熱することにより製造される。該畜肉加工食品の中でも、特にハンバーグやミートボールは、子供から大人まで多くの人々に好まれる食品であり、業務用の惣菜、特に冷凍食品として、工業的に量産されている。
【0003】
工業生産における畜肉加工食品の成型方法は、打ち出し成型法と吐出分割成型法に大別される。打ち出し成型法とは、金型等の定容な型枠に混練生地を押し込み、これを打ち出して定量な成型物を得る方法である。例えば、前後に揺動する板に1個ないし複数の10〜200g程度の定容の孔を設け、回転スクリュー、押し込みペラー、ギアクランク等からなる混練生地送りシステムによって混練生地を該孔に押し込んだ後、板を引き出して、ピストン等で生地を孔から押し出して、定量な成型物を得る方法がある。その他、ロータリードラムの表面に金型を配し、前述と同様な混練生地送りシステムをドラム上方に設置し、該定容金型内に連続的に混練生地を押し込み、回転するドラムの下部で、内部ピストン等により金型内部の混練生地を押し出して、定量な成型物を得る方法がある。
【0004】
吐出分割成型法とは、配管等から吐出した混練生地を、シャッター等で切断分割して混練生地玉を調製し、該混練生地玉を丸めたり、転圧ローラーで伸ばしたりすることにより、定量な成型を得る方法である。例えば、前記打ち出し成型法と同様な混練生地送りシステムで、吐出ノズルから混練生地を一定の速度で吐出させ、シャッター等で10〜200gずつの混練生地玉に分割し、該混練生地玉を回転する円盤上で丸めたり、回転するローラーで挟み込むことにより、扁平化(転圧)して定量な成型物を得る方法がある。
【0005】
近年、多種多様な飲食品が販売される中で、消費者は、冷凍食品等の工場で量産される飲食品に対して、「手作り感」や「できたて感」を求めるようになってきている。例えば、冷凍食品のハンバーグに対しては、手作りハンバーグのような、周縁部が丸みを帯びており、かつ、短径に対する長径の長さの比が大きな楕円形の形状、凹凸のある表面、ほぐれの良い軟らかな食感、ジューシーさ等が求められている。
【0006】
しかしながら、打ち出し成型法では、楕円形の金型を用いたとしても、金型から打ち抜く際に混練生地のエッジが立ち、周縁部が角張った形状となるため、手作りハンバーグのような、縁が丸みを帯びたハンバーグを製造することができない。椀状の打ち出し装置等を用いることにより、上面の角張りを除く方法もあるが、下面の角張りを除くことができない。また、表面も平滑で、凹凸に乏しい。一方、吐出分割成型法では、金型を用いないため、周縁部を丸みを帯びた形状とすることができる。しかし、手作りハンバーグのような短径に対する長径の長さの比が大きい楕円形となるように、混練生地を転圧ローラーで伸ばすことは困難であり、かつ、加熱後の加熱縮みにより、楕円形よりも円形に近い形状のハンバーグとなってしまう。また、混練生地玉をチューブ状となるように吐出し、コンベアに筒を寝かす格好で転圧して成型することにより、短径に対する長径の長さの比を大きくすることができるが、四隅が角張り、楕円形の丸みが失われてしまうため、手作りハンバーグの形状とは大きく異なり、好ましくない。
また、いずれの方法で成型した場合であっても、成型後加熱されたハンバーグは、凝集性の強い硬い食感のハンバーグであり、ほぐれの良い軟らかな食感やジューシーさを得ることは困難である。
【0007】
手作り食品のような特性を有する挽肉加工食品を製造するために、種々の方法が開示されている。原料の挽肉を改良するものとして、例えば、(1)ブロック状冷凍食肉をミンチ状に加工した後、4℃以下の条件で、得られたミンチ状の肉に食塩を0.5〜5重量%含有させるように混合することを特徴とする挽肉加工食品用挽肉の製造法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、ハンバーグのジューシーさを改良するものとして、例えば、(2)加熱によりジューシーで軟らかくなる内部用生地と、加熱により適度な硬さと弾力を有する外部用生地とからなる二層構造に成型することにより、内部に肉汁を局在化して蓄えた空間を有することを特徴とするハンバーグ及びその製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。その他、周縁部が丸みを帯びた楕円形の形状に改良するものとして、例えば、(3)打ち出し成型法で成型したハンバーグ素形材を用いて、上昇コンベアと下降コンベアとをその頂部で連接した水平コンベアとからなる間欠移動するコンベア装置と、前記水平コンベアとほぼ同一平面で水平移動する一対の押型装置とからなり、前記上昇コンベアから移送され前記水平コンベア上に停止したハンバーグ素形材を前記押型装置の押し型で整形するよう構成したことを特徴とするハンバーグの整形装置が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2000−217551号公報
【特許文献2】特許第3109000号公報
【特許文献3】特開平6−292539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記(1)の方法では、加熱後のハンバーグは、若干硬さは減少するものの、ほぐれの良い軟らかな食感やジューシーさの点からは不十分である。また、上記(2)の方法では、ジューシーさは得られるものの、外側はやはり硬く、ほぐれの良い軟らかな食感を得ることは困難である。また、上記(1)と(2)の両方とも、形状を改善することはできない。一方、上記(3)の方法では、周縁部が丸みを帯びた楕円形の形状のハンバーグを製造することができるが、表面は平滑であり、かつ、食感を改善することはできない。
【0009】
本発明は、周縁部が丸みを帯びており、かつ短径に対する長径の長さの比が大きい楕円形の形状、凹凸のある表面、ほぐれの良い軟らかな食感等を有し、従来になく手作り感に溢れた畜肉加工食品を、工業的に量産できる方法、該方法に用いる成型機用吐出ノズル、及び、該方法により製造された畜肉加工食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、多くの肉類は結着性凝集性を有するため、成型時の混練生地送り時に、肉原料を含む混練生地組成物に一方向の配向性が生じるため、加熱凝集方向が一定となることを見出した。該配向性により、吐出分割成型法において転圧ローター等で楕円形に成型する場合であっても、短径に対する長径の長さの比が小さくなり、好ましい楕円形に成型することができず、また、加熱により混練生地中央に向かって加熱縮みが生じるため、得られた畜肉加工食品は円形に近い形状となり、かつ、硬い食感になると推察された。そこで、本発明者らは、さらに研究した結果、吐出分割成型機の吐出ノズルに至る配管部に、混練生地の流路を分岐させた後合流させることができる部分遮蔽部材を配することにより、混練生地の流れを単一方向ではなく、複数方向とし、該複数方向の流れの混練生地を合流させて、ノズルから吐出することにより、混練生地の配向性を不均一にできることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、畜肉加工食品の製造に用いる成型方法であって、混練生地を、通過する混練生地の流路を分岐させた後合流させることができる部分遮蔽部材を内部に有する配管部を通過させることを特徴とする成型方法を提供するものである。
また、本発明は、前記部分遮蔽部材が、前記配管部の送方向に対する断面の中央に位置するように固定されている部分遮蔽部材であることを特徴とする成型方法を提供するものである。
また、本発明は、前記配管部が、送方向に対する配管部の最大断面積が、混練生地投入口の断面積よりも大きい配管部であることを特徴とする成型方法を提供するものである。
また、本発明は、前記配管部が、送方向に対する配管部の最大断面積が、混練生地投入口の断面積の1.5倍以上である配管部であることを特徴とする成型方法を提供するものである。
また、本発明は、前記部分遮蔽部材が、前記配管部の送方向に対し垂直な面への正射影の面積が、前記配管部の最大断面積の1/5〜4/5である部分遮蔽部材であることを特徴とする成型方法を提供するものである。
また、本発明は、前記部分遮蔽部材が、平板状構造体、円錐状構造体、及び球状構造体からなる群より選ばれる1以上の構造体であることを特徴とする成型方法を提供するものである。
また、本発明は、前記いずれか記載の成型方法を用いて成型された成型物を提供するものである。
また、本発明は、前記成型物を用いることを特徴とする、畜肉加工食品の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記畜肉加工食品の製造方法を用いて製造された畜肉加工食品を提供するものである。
また、本発明は、混練生地投入口と、混練生地吐出口と、混練生地投入口と混練生地吐出口を結ぶ配管部を有する成型機用吐出ノズルであって、前記配管部内に、混練生地の流路を分岐させた後合流させることができる部分遮蔽部材を有し、かつ、前記配管部の送方向に対する最大断面積が、前記混練生地投入口の断面積よりも大きいことを特徴とする、成型機用吐出ノズルを提供するものである。
また、本発明は、前記部分遮蔽部材が、前記配管部の送方向に対する断面の中央に位置するように固定されている部分遮蔽部材であることを特徴とする成型機用吐出ノズルを提供するものである。
また、本発明は、前記配管部の送方向に対する最大断面積が、前記混練生地投入口の断面積の1.5倍以上であることを特徴とする成型機用吐出ノズルを提供するものである。
また、本発明は、前記部分遮蔽部材の、前記配管部の送方向に対し垂直な面への正射影の面積が、前記配管部の最大断面積の1/3〜4/5であることを特徴とする成型機用吐出ノズルを提供するものである。
また、本発明は、前記部分遮蔽部材が、平板状構造体、円錐状構造体、及び球状構造体からなる群より選ばれる1以上の構造体であることを特徴とする成型機用吐出ノズルを提供するものである。
また、本発明は、前記部分遮蔽部材が、前記配管部の送方向に対する断面の中央に位置するように固定されている平板状構造体であることを特徴とする成型機用吐出ノズルを提供するものである。
また、本発明は、前記いずれか記載の成型機用吐出ノズルを用いて成型された成型物を提供するものである。
また、本発明は、前記いずれか記載の成型機用吐出ノズルを用いて製造された畜肉加工食品を提供するものである。
また、本発明は、前記いずれか記載の成型機用吐出ノズルを用いることを特徴とする、畜肉加工食品の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記畜肉加工食品がハンバーグである畜肉加工食品を提供するものである。
また、本発明は、中心温度が65℃以上に加熱された後の形状が楕円形状であって、短径に対する長径の長さの比が1.25以上であることを特徴とするハンバーグである畜肉加工食品を提供するものである。
また、本発明は、周縁部が丸みのある形状であって、表面に凹凸を有することを特徴とする前記畜肉加工食品を提供するものである。
また、本発明は、周縁部が丸みのある形状であり、短径に対する長径の長さの比が1.25以上である楕円形状であり、かつ、表面に凹凸を有することを特徴とする加熱済みハンバーグを提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の畜肉加工食品の成型方法により、混練生地の配向性を不均一にできるため、成型の自由度が増し、従来不可能であった形状の畜肉加工食品を製造することができる。また、成型後加熱時の加熱凝集方向が拡散されるため、従来の混練生地を用いた場合でも、非常に軟らかい畜肉加工食品を製造することができる。例えば、手作りハンバーグのような、周縁部が丸みを帯びた短径に対する長径の長さの比が大きい楕円形の形状を有するハンバーグや、軟らかく、ほぐれやすい食感を有するハンバーグを、工業上製造することができる。
また、本発明の成型機用吐出ノズルにより、効率よく、混練生地の配向性を不均一にすることができるため、従来の成型機用吐出ノズルに代えて用いることにより、既存の製造設備を用いて、手作り感に溢れた形状と食感を有する畜肉加工食品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における畜肉加工食品とは、畜肉を主原料とし、副原料と混和して練り、得られた混練生地を成型した後、加熱処理することによって得られる食品を意味する。該畜肉の種類は、通常食用に用いられる畜肉であれば、特に限定されるものではないが、入手が容易であり、かつ嗜好性が高いため、牛肉、豚肉、鶏肉であることが好ましい。また、該畜肉の形状は、練り合わせられる形状であれば、特に限定されるものではないが、挽肉であることが好ましい。該畜肉加工食品して、例えば、ハンバーグ、ミートボール、餃子の餡等がある。特に、ハンバーグが好ましい。副原料は、たまねぎ、パン粉、卵等の通常畜肉加工食品に用いられるものを利用することができる。その他、塩や醤油、ポークエキス等の調味料も添加してもよい。さらに、嗜好性を高めるために、副原料として、食品への添加物として慣用されている各種の調味成分を添加することができる。該調味成分として、例えば、チーズやバジル等のハーブ類等がある。
【0014】
本発明における混練生地は、通常、畜肉加工食品を製造する場合に行われる方法により、調製することができる。例えば、畜肉原料と副原料を全て混合槽に添加して、市販のニーダー等を用いて混練することにより、調製することができる。また、原料の組成や配合、混練時間等は、目的の畜肉加工食品の品質等を考慮して適宜決定することができる。
【0015】
本発明の成型方法は、畜肉加工食品の製造に用いる成型方法であって、混練生地を、通過する混練生地の流路を分岐させた後合流させることができる部分遮蔽部材を内部に有する配管部を通過させることを特徴とする成型方法である。なお、本発明における配管部とは、物質を運搬する通路として機能する管状の構造部を意味する。また、本発明における部分遮蔽部材とは、該配管部の送方向に対する断面の一部分を、物質が通過できないように遮蔽することができる構造部を意味する。
【0016】
通常、混練生地を送出するための配管部の内部に、混練生地の送出を妨げる障害物を設置することはない。このため、該配管部を通って送出された混練生地には、送方向に配向性が生じてしまう。内部に障害を有する、すなわち、混練生地の送出を部分的に妨げ、流路を分岐させた後合流させる部分遮蔽部材を有する配管部を通過させることにより、送出された混練生地の配向性を不均一にすることができる。該部分遮蔽部材により、混練生地の流れが一部遮蔽されて、流路が分岐された後さらに合流されることにより、渦流等が生じ、混練生地の流れが乱れて複数方向となる結果、混練生地中の、特に肉繊維の走行性を不均一にすることができるためと推察される。
【0017】
吐出分割成型法を用いた場合に、従来では、混練生地が一方向の配向性を有しているため、扁平化のためのローラー等を用いた通常の転圧処理では、楕円形に成型する場合であっても、短径に対する長径の長さの比が大きな楕円形の成型物を得ることは困難であった。さらに、該成型物を加熱すると、成型物中央部に向かって加熱凝集が発生し、ローラーの混練生地送方向に対して収縮が強く起こり、より円形に近い形状となってしまうため、短径に対する長径の長さの比が1.2以上の楕円形の形状をしたハンバーグを得ることは困難であった。
一方、手作りハンバーグは通常、周縁部が丸く、短径に対する長径の長さの比が大きな楕円形である。したがって、手作り感を創出するためには、ハンバーグの形状を、丸みを帯びた周縁部であって、短径に対する長径の長さの比が1.25以上の楕円形の形状とすることが好ましい。短径に対する長径の長さの比が1.5以上の楕円形の形状とすることが特に好ましい。
【0018】
本発明の畜肉加工食品の成型方法を用いることにより、配向性が不均一な混練生地を用いて成型することができるため、通常の転圧処理によっても、短径に対する長径の長さの比が大きな楕円形の成型物を得ることができる。さらに、加熱凝集方向が拡散されるため、いわゆる加熱縮みが小さく、加熱処理により、成型時の形状が大きく損なわれるおそれが小さい。また、該成型物を加熱処理することにより得られた畜肉加工食品は、食感が軟らかく、ほぐれ性が良好であるという特性を有している。
【0019】
つまり、本発明の畜肉加工食品の成型方法を用いることにより、丸みを帯びた周縁部であって、短径に対する長径の長さの比が1.25以上の楕円形の形状を有するハンバーグを製造することができる。また、混練生地玉の重量や転圧ローラーの圧力等を適宜調整することにより、短径に対する長径の長さの比が1.5以上の楕円形の形状を有するハンバーグを製造することもできる。さらに、本発明の畜肉加工食品の成型方法により得られた成型物は、部位によって加熱凝集性に差違が発生するため、及び、転圧ローラー等による転圧処理の際の圧縮に対するストレスに対する応力が小さいことから、該成型物を加熱処理することにより、平滑ではなく凹凸のある表面を有するハンバーグを製造することができる。すなわち、本発明の畜肉加工食品の成型方法を用いて製造されたハンバーグは、従来になく、手作り感を有する好ましい形状を有している。
【0020】
さらに、本発明の畜肉加工食品の成型方法を用いて成型された成型物は、加熱処理による加熱縮み方向が分散され、かつ収縮率も小さいため、該成型物を加熱処理することにより、軟らかく、ほぐれやすい食感を有し、適度な肉粒感を有する官能性の良いハンバーグを製造することができる。
【0021】
本発明における部分遮蔽部材は、該配管部の送方向に対する断面の一部分を、物質が通過できないように遮蔽することができ、かつ、混練生地の流路を分岐させた後合流させることができる構造部であることが必要である。したがって、例えば、該配管部が円筒であった場合に、送方向に対する断面を、単に半円形に遮蔽するような遮蔽部材は、混練生地の送出を部分的に妨げることができるが、混練生地の流路は単一のままであるため、本発明おける部分遮蔽部材ではない。また、単に該配管部の内壁面から一部突出しているだけの遮蔽部材も、混練生地の流路を分岐させることができないため、本発明おける部分遮蔽部材ではない。
【0022】
本発明における部分遮蔽部材は、混練生地の流路を分岐させた後合流させることができるように、該配管部内に適宜設置されればよく、該設置の場所は特に限定されるものではないが、前記配管部の送方向に対する断面の中央に位置するように固定されていることが好ましい。より効率よく、混練生地の流路を分岐させた後合流させることができるため、及び、加熱後に過度に偏った変形を抑制できるためである。おそらく、部分遮蔽部材が中央に位置するように固定されていることにより、分岐後再度合流させる際に偏りなく合流させることできるためと推察される。
【0023】
なお、該部分遮蔽部材を該配管部に設置する方法は、混練生地が通過する際に固定させることができる方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、支え棒等を用いて固定してもよく、該配管部内壁に薄い溝等のはめ込み部を設けて、該はめ込み部に該部分遮蔽部材をはめ込むことにより、固定し設置してもよい。
【0024】
また、配管部の送方向に対する断面積は、拡張させたり、縮小させたりすることにより、変化させることが好ましい。該断面積の変化は、部分遮蔽部材による、送出された混練生地の配向性の不均一化を増強することができるためである。特に、部分遮蔽部材を設置した部位の配管部の送方向に対する断面積は、拡張させることが好ましく、該配管部の最大断面積であることが特に好ましい。該部分遮蔽部材による混練生地の送出速度の低下を防止することができるためである。例えば、配管部の送方向に対する最大断面積が、混練生地投入口の断面積の1.5倍以上である配管部であることが好ましい。混練生地の送出速度を落とすことなく、混練生地投入口の断面積と等しい面積の部分遮蔽部材を、配管部に設置することができるためである。
【0025】
該部分遮蔽部材の、該配管部の送方向に対する断面に占める割合、すなわち、該配管部の送方向に対し垂直な面への正射影の面積は、該配管部の送方向に対する断面積の1/5〜4/5であることが好ましく、2/5〜3/5であることがより好ましい。また、該配管部の送方向に対する最大断面積の1/3〜4/5であることが特に好ましい。該配管部の送方向に対する断面積の1/5未満である場合には、送出された混練生地の配向性の不均一化が不十分であり、4/5超である場合には、混練生地の流れが過剰に妨げられ、生産性が悪くなる。加えて、混練生地が過剰に均質となり、畜肉加工食品としての本来の食感を損ねてしまうおそれがある。
【0026】
本発明における部分遮蔽部材は、混練生地の流路を分岐させた後合流させることができる形状の構造体であれば、特に限定されるものではない。該構造体として、例えば、平板状構造体、円錐状構造体、球状構造体等がある。より効果的に、混練生地の配向性を不均一にすることができるため、平板状構造体であることが好ましい。該部分遮蔽部材が平板状構造体であることにより、流路の分岐により、渦流等が生じ易く、混練生地の流れをより効果的に乱して複数方向の流れとすることができるためではないかと推察される。支え棒等により、送られる混練生地の通過する部分の中央に位置するように設置された平板状構造体であることがより好ましい。また、該配管部の送方向に対する断面に垂直に設置した平板状構造体であってもよい。
【0027】
該平板状構造体の形状は、混練生地の流路を分岐させた後合流させることができる、すなわち、混練生地の流れを乱して複数方向とした後、さらに合流させることができる形状であれば、特に限定されるものではなく、円形であってもよく、正方形や長方形の四角形や十字形であってもよい。また、一部が隆起した形状や、一部が打ち抜かれ、穴の開いた形状であってもよい。該穴の、該平板状構造体に占める位置や形状、面積等も、適宜決定することができる。平板状構造体の形状の違いにより、成型物内部での混練生地組成物の配向性に差違が生じるため、加熱凝集後に得られた畜肉加工食品の形状と食感に、多様性を与えることができる。
【0028】
例えば、配管部の送方向に対する断面の断面積が最大となる部位に平板状構造体である部分遮蔽部材を、該部位の断面の中央に、送方向に対し垂直となるように設置する場合に、該部位の断面積、すなわち、送方向に対する該配管部の最大断面積が、混練生地投入口の断面積の1.5倍以上であり、かつ、該板状構造体の扁平面の面積が、該混練生地投入口の断面積と等しいことが好ましい。
【0029】
なお、該配管部の形状、大きさ等は、成型する成型物や該成型物を用いて製造される畜肉加工食品の、品種やサイズ等を考慮して、適宜決定することができる。また、該配管部や該部分遮蔽部材の素材等は、通常、畜肉加工食品の製造に用いる成型方法において用いられる配管部等の素材等を利用することができる。また、配管部と部分遮蔽部材は、異なる素材であってもよい。頑強、かつ衛生的であり、洗浄・滅菌等も容易であることから、該配管部や該部分遮蔽部材は、ステンレス製であることが好ましい。
【0030】
本発明の成型方法は、混練生地を、通過する混練生地の流路を分岐させた後合流させることができる部分遮蔽部材を内部に有する配管部を通過させる方法であれば、特に限定されるものではなく、通常、畜肉加工食品を製造する場合に行われている成型方法であれば、いずれの成型方法に適用してもよい。より手作り感に溢れた畜肉加工食品を製造することができるため、吐出分割成型法に適用することが好ましい。一方、打ち出し成型法に適用した場合にも、軟らかく、ほぐれやすい食感の、嗜好性の高い畜肉加工食品を製造することができる。
【0031】
該配管部は、成型機用吐出ノズルの配管部であることが好ましい。従来の成型機用吐出ノズルに代えて用いることにより、既存の製造設備を用いて、従来に無く成型の自由度が高く、かつ、軟らかくほぐれやすい食感を有する畜肉加工食品を製造することができる。
【0032】
本発明において成型機用吐出ノズルとは、成型機に備えられたノズルであって、混練生地を成型直前に吐出するためのノズルを意味する。例えば、打ち出し成型法に用いる成型機では、混練生地を、金型等の定容な型枠へ吐出するためのノズルを意味する。また、吐出分割成型法に用いる成型機では、混練生地玉を調製するために、シャッター等で切断分割するための混練生地を吐出するためのノズルを意味する。該成型機用吐出ノズルは、混練生地投入口と、混練生地吐出口と、混練生地投入口と混練生地吐出口を結ぶ配管部を有しており、通常、回転スクリューやロータリーペラー、ギア等で混練生地に圧力を与えて、混練生地投入口から、成型機用吐出ノズル内に混練生地を投入し、混練生地吐出口から吐出させる。
【0033】
図1は、本発明の成型機用吐出ノズルの一態様の概略を示した斜視図である。1は成型機用吐出ノズルであり、2は混練生地投入口であり、3は、配管部であり、4は混練生地吐出口であり、5は部分遮蔽部材である。また、図中、混練生地投入口2から混練生地吐出口4に向かう矢印は、混練生地の流路を示している。混練生地投入口2から投入された混練生地は、配管部3内を通過する際に、部分遮蔽部材5の左右に流路が分岐し、その後、合流して、混練生地吐出口4から吐出される。
【0034】
混練生地投入口2の形状や大きさは、通過させる混連生地の量や粘性、混練生地吐出口4の形状等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、口径20〜160mmの円形や、20〜100mm×20〜500mmの長方形であってもよい。なお、長方形は、混練生地吐出口4が多穴の成形機に適している。また、長辺が500mmの長方形の形状であれば、汎用品のうち最長長を有する大型チャンバーにも用いることができる。混練生地吐出口4の形状や大きさは、目的の成型物の重量や混練生地の流速等を考慮して、適宜決定することができる。また、1の穴からなる吐出口であってもよく、多穴の吐出口であってもよい。また、円形であってもよく、楕円形であってもよい。口径15〜120mmの円形の混練生地吐出口4により、10g程度のミートボールから、200g程度のハンバーグまでの大きさの成型物を得ることができる。例えば、混練生地吐出口4を、口径60〜100mmの円形状、又は、短径40〜70mm、長径70〜120mmの楕円状とすることにより、吐出された混練生地を所定の重量に分割し、転圧処理することにより、120gのハンバーグを製造することができる。
【0035】
配管部3の形状は、円筒形でもあってよく、直方体であってもよい。該配管部3の送方向に対する断面のうち、面積が最大となる部位の断面は、混練生地投入口2の1.5倍程度の面積を得ることができるように、例えば、口径40〜320mmの円形や、40〜200mm×20〜500mmの長方形とすることができる。また、部分遮蔽部材5は、図1に示すように、配管部3の送方向に対する断面の断面積が最大となる部位に、該部位の断面の中央に、送方向に対し垂直となるように固定されることが特に好ましい。また、部分遮蔽部材5の面積の、混練生地投入口2の面積に対する比は、1/2〜1であることが好ましい。部分遮蔽部材5の形状は、長方形以外でも円形や十字形等であってもよい。
【0036】
本発明の成型方法により成型された成型物を加熱する方法は、通常、畜肉加工食品の製造方法に用いられる方法であれば、特に限定されるものではない。該加熱する方法として、例えば、鉄板やオーブン等を用いて焼成する方法や、フライヤー等を用いて揚げる方法、スチーマー等を用いて蒸す方法、電子レンジ等を用いて加熱する方法等がある。これらの方法は、組み合わせてもよい。有害微生物による食中毒を防止するため、成型物の中心温度が65℃以上、好ましくは70〜80℃になるまで加熱することが好ましい。例えば、焼き目つきハンバーグの場合、まず、鉄板で焼成することにより、成型物の表面に焼き目をつけた後、オーブンで焼成し、さらにスチーマーで蒸して、成型物の中心温度が65℃以上、好ましくは70〜80℃程度の規定の温度となるように加熱することにより、製造することができる。
【0037】
また、本発明の畜肉加工食品の製造方法により製造された畜肉加工食品は、そのままの状態で食してもよく、必要に応じて、加工を施してもよい。例えば、畜肉加工食品を、常法により冷凍食品としてもよく、チルド食品としてもよい。その他、各種ソースに絡めて、惣菜として販売してもよい。
【0038】
次に実施例及び試験例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例及び試験例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
表1記載の処方により、本発明の成型機用吐出ノズル1を用いてハンバーグを製造した。なお、成型機用吐出ノズル1は、混練生地投入口と混練生地吐出口が、それぞれ口径72mmの円形の形状であり、配管部は中央部が膨らんだ円筒形であり、該配管部の断面が最大断面積となる部位に、該断面の中央に、送方向に対し垂直に固定された、板状の部分遮蔽部材を有している。なお、該配管部の断面が最大断面積となる部位は、内径102mmの円形状であり、該部分遮蔽部材の形状は、直径72mmの円盤状である。
【0040】
【表1】

【0041】
牛豚合い挽肉に、食塩、調味料、香辛料、調製水を加え、2軸混連装置で5分間混合し、粘着性のある生地状態にした後、みじん切りにしたたまねぎ、パン粉、全卵を加え、さらに3分間混合し、十分に混和した混練生地を得た。目標最終製品重量120gの規格のハンバーグを製造するために、該混練生地を、成型機用吐出ノズル1を通過させた後、シャッターを用いて135gの混練生地玉に分割した。得られた混練生地玉を、ベルトコンベア上に設置した転圧ローラーによって成型し、成型物を得た。なお、該成型の際の、ベルトコンベアの速度、転圧ローラーの圧力等の条件は、長径120mm、短径80mm、高さ18mmの扁平楕円形状の成型物を得るための条件で行った。その後、200℃の鉄板上で、該成型物の扁平上下両面をそれぞれ1分間加熱し、さらに98℃の蒸し器での8分間蒸すことにより、中心温度72℃まで加熱し、ハンバーグを得た。該ハンバーグを、−28℃の急速冷凍庫に1時間置き、中心温度−20℃の冷凍ハンバーグを得た。
【実施例2】
【0042】
成型機用吐出ノズル1の混練生地吐出口が、口径59mmの円形の形状であり、かつ、目標最終製品重量60gの規格のハンバーグを製造するために、70gの混練生地玉に分割した以外は、全て実施例1と同様にして、冷凍ハンバーグを得た。
【実施例3】
【0043】
目標最終製品重量80gの規格のハンバーグを製造するために、90gの混練生地玉に分割した以外は、全て実施例2と同様にして、冷凍ハンバーグを得た。
【実施例4】
【0044】
目標最終製品重量150gの規格のハンバーグを製造するために、170gの混練生地玉に分割した以外は、全て実施例1と同様にして、冷凍ハンバーグを得た。
【0045】
(比較例1)
混練生地投入口が口径71mm×48mmの楕円形の形状であり、混練生地吐出口が口径72mmの円形の形状であり、配管部は口径72mmの円筒形であり、該配管部の内部には、混練生地の送出を妨げる障害物等は一切ない、従来の成型機用吐出ノズルを用いた以外は、全て実施例1と同様にして、冷凍ハンバーグを得た。
【0046】
(比較例2)
実施例1と同様にして調製した混練生地を、市販の平板打ち出し成型機(745型、ブランテック社製)を用いて、長径110mm、短径90mm、深さ15mmの金型に生地を押し込み、打ち出し成型物を得た。得られた成型物を、実施例1と同様にして加熱後、冷凍することにより、長径96mm、短径86mm、高さ19mm、中心温度−20℃、111gの冷凍ハンバーグを得た。
【0047】
(試験例1)
実施例1〜4及び比較例1により得た、転圧後の成型物、加熱後のハンバーグ、冷凍後の冷凍ハンバーグの、それぞれの、大きさ及び重量を測定した。該測定結果を表2に示す。この結果、実施例1〜4のハンバーグは、いずれの重量であっても、長径と短径の長さの比が1.3程度あったが、比較例1のハンバーグは、長径と短径の長さの比が1.1程度であり、円形に近い形状であった。また、実施例1〜4のハンバーグの表面は、手作りハンバーグのような凹凸があったが、比較例1のハンバーグの表面は平滑であった。なお、全てのハンバーグにおいて、周縁部は丸みを帯びていた。試験例1の結果から、本発明の成型機用吐出ノズルを用いることにより、周縁部が丸みを帯びており、かつ、短径に対する長径の長さの比が大きい楕円形の形状と凹凸のある表面を有するハンバーグ等の畜肉加工食品を製造できることが明らかである。
【0048】
【表2】

【0049】
(試験例2)
実施例1及び比較例1で製造したハンバーグの剪断性を、レオメーターRE−3305型(山電社製)を用いて測定し、それぞれの剪断性を比較した。
具体的には、くさび型プランジャー(進入角度30°、幅30mm)に対し、1mm/secで各ハンバーグを進入させて、プランジャーにかかる応力を計測した。なお、実施例1及び比較例1で得られた冷凍ハンバーグを解凍し、180℃に設定したオーブンで中心温度が70℃になるように再加熱調理した。得られた中心温度が50〜70℃のハンバーグを試料として用いた。
【0050】
図2は、該測定結果を、各ハンバーグの厚みを100%とした時の割合を横軸とし、応力を縦軸として、2次元グラフで表したものである。実線が実施例1のハンバーグを、破線が比較例1のハンバーグの結果を、それぞれ示している。いずれのハンバーグでも、くさび形プランジャーが貫入すると、貫入率に比例してプランジャーにかかる応力が増加した。実施例1のハンバーグでは、貫入率50%で約1.7×10N/mの応力があったのに対し、比較例1のハンバーグでは、2.5×10N/m強であった。図2の結果から、実施例1のハンバーグの方が軟らかい食感であることが明らかである。
【0051】
(試験例3)
実施例1、比較例1及び2で製造したハンバーグの剪断性を、レオメーターRE−3305型を用いて測定し、箸による切断しやすさを比較検討した。
具体的には、平板型プランジャー(厚み3mm、幅41mm)に対し、1mm/secで各ハンバーグを進入させて、プランジャーにかかる応力を計測した。なお、該測定に用いたハンバーグ試料は、試験例1と同様にして調製した。
【0052】
図3は、該測定結果を、各ハンバーグの厚みを100%とした時の割合を横軸とし、応力を縦軸として、2次元グラフで表したものである。実線が実施例1のハンバーグを、破線が比較例1のハンバーグを、二点鎖線が比較例2のハンバーグの結果を、それぞれ示している。実施例1のハンバーグでは、平板プランジャーが貫入し、しばらくなだらかに応力が増した。したがって、適度な歯ごたえとほぐれ性を有するハンバーグであることが示唆される。一方、比較例1のハンバーグでは、破断で応力が頂点に達し、その後急激な応力の減衰があり、割れるように破断していた。したがって、肉同士の結着が強く、やや硬い食感であることが示唆される。また、比較例2のハンバーグでは、明確な破断点がなく崩れるように破断し、最後に割れが起こっていた。このため、脆弱ながら結着性があり、ややブリブリした食感であることが示唆される。
【0053】
(試験例4)
実施例1及び比較例1で製造したハンバーグの引っ張り破断性を、レオメーターRE−3305型を用いて測定し、それぞれの引っ張り破断性を比較した。
具体的には、ハンバーグの長径方向の前後部分を、上下の挟み込み板の間の距離が60mmとなるように、長さ100mm、幅20mmのプラスチック板で挟み込んだ後、該プラスチック板を、1mm/secで40mm引っ張り、プランジャーにかかる応力を測定した。なお、該測定に用いたハンバーグ試料は、試験例1と同様にして調製した。
【0054】
図4は、該測定結果を、該プラスチック板を引っ張った距離を横軸とし、応力を縦軸として、2次元グラフで表したものである。実線が実施例1のハンバーグを、破線が比較例1のハンバーグの結果を、それぞれ示している。実施例1のハンバーグでは、引っ張り開始後7mm弱の引っ張り点で、1.35×10N/mの応力で破断が発生し、さらに8mm引っ張られた際の応力の減衰は0.15×10N/mであった。一方、較例1では、引っ張り点18mmで、2.55×10N/mの応力で破断が発生し、さらに8mm引っ張られた際の応力の減衰は1.5×10N/mであった。つまり、比較例1のハンバーグは、弾性を持った硬さと一気に切断されてしまうもろさを持つ硬い食感を有する飲食品と同様に、破断まで高い応力を保持し、破断後急速に応力を失うという傾向を示した。一方、実施例1のハンバーグは、ほぐれの良い食感を有する飲食品と同様に、引っ張り開始後早い時点で破断が生じ、その後応力の減衰がないまま牽引されているという傾向を示した。
【0055】
試験例2〜4の結果から、本発明の成型方法を用いて製造された畜肉加工食品は、ほぐれの良い軟らかな食感を有することが明らかである。
【0056】
(試験例5)
実施例1、比較例1及び2で製造したハンバーグの、それぞれの外観形状、物性、喫食時の食感を、専門パネラー7名で官能評価した。なお、該官能評価に用いたハンバーグ試料は、試験例1と同様にして調製した。
具体的には、外観形状として、手作りハンバーグのような丸みや楕円形であり、表面に適度な凹凸があるかどうかを評価した。また、物性として、箸で切った際に感じる手応えや切りやすさを評価した。さらに、食感として、歯ざわりとして軟らかな食感を有しているかどうか、咀嚼時にほぐれやすい食感を有しているかどうか、また、咀嚼時に弾力性のある食感を有しているかどうかを、それぞれ評価した。
【0057】
【表3】

【0058】
得られた官能評価の結果を表3に示した。実施例1のハンバーグは、比較例1及び2のハンバーグと比較して、丸みがあり、かつ、表面の凹凸が適度であった。また、箸でほぐれるように切れ、かつ、非常に軟らかい食感を有していた。比較例2のハンバーグも、箸で切りやすく、軟らかい食感を有していたが、実施例1のハンバーグとは異なり、より練れた感じであり、ハンバーグに求められる肉粒感とは異なる軟らかさであった。
すなわち、該官能評価の結果から、実施例1のハンバーグは、比較例1及び2のハンバーグと比較して、より手作り感溢れる外観形状を有しており、かつ、より肉粒感を感じられるような、軟らかくてほぐれるような食感を有していることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の成型方法、該成型方法により製造された成型物、該成型方法に供される成型機用吐出ノズル、及び、これらを用いる畜肉加工食品の製造方法は、周縁部が丸みを帯びており、かつ、短径に対する長径の長さの比が大きい楕円形の形状、凹凸のある表面、ほぐれの良い軟らかな食感等を有し、従来になく手作り感に溢れた畜肉加工食品を、工業的に量産できるため、畜肉加工食品の製造分野で利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の成型機用吐出ノズルの一態様を示した概略斜視図である。1は成型機用吐出ノズルであり、2は混練生地投入口であり、3は、配管部であり、4は混練生地吐出口であり、5は部分遮蔽部材である。また、図中、混練生地投入口2から混練生地吐出口4に向かう矢印は、混練生地の流路を示している。
【図2】試験例2において、実施例1及び比較例1のハンバーグの剪断性を、くさび型プランジャーを用いて測定した結果を示した図である。各ハンバーグの厚みを100%とした時の割合を横軸とし、応力を縦軸として表している。実線が実施例1のハンバーグを、破線が比較例1のハンバーグの結果を、それぞれ示している。
【図3】試験例3において、実施例1、比較例1及び2のハンバーグの剪断性を、平板型プランジャーを用いて測定した結果を示した図である。各ハンバーグの厚みを100%とした時の割合を横軸とし、応力を縦軸として表している。実線が実施例1のハンバーグを、破線が比較例1のハンバーグを、二点鎖線が比較例2のハンバーグの結果を、それぞれ示している。
【図4】試験例4において、実施例1及び比較例1のハンバーグの引っ張り破断性を測定した結果を示した図である。該プラスチック板を引っ張った距離を横軸とし、応力を縦軸として表している。実線が実施例1のハンバーグを、破線が比較例1のハンバーグの結果を、それぞれ示している。
【符号の説明】
【0061】
1…成型機用吐出ノズル、2…混練生地投入口、3…配管部、4…混練生地吐出口、5…部分遮蔽部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜肉加工食品の製造に用いる成型方法であって、混練生地を、通過する混練生地の流路を分岐させた後合流させることができる部分遮蔽部材を内部に有する配管部を通過させることを特徴とする成型方法。
【請求項2】
前記部分遮蔽部材が、前記配管部の送方向に対する断面の中央に位置するように固定されている部分遮蔽部材であることを特徴とする、請求項1記載の成型方法。
【請求項3】
前記配管部が、送方向に対する配管部の最大断面積が、混練生地投入口の断面積よりも大きい配管部であることを特徴とする、請求項1又は2記載の成型方法。
【請求項4】
前記配管部が、送方向に対する配管部の最大断面積が、混練生地投入口の断面積の1.5倍以上である配管部であることを特徴とする、請求項1又は2記載の成型方法。
【請求項5】
前記部分遮蔽部材が、前記配管部の送方向に対し垂直な面への正射影の面積が、前記配管部の最大断面積の1/5〜4/5である部分遮蔽部材であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか記載の成型方法。
【請求項6】
前記部分遮蔽部材が、平板状構造体、円錐状構造体、及び球状構造体からなる群より選ばれる1以上の構造体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか記載の成型方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の成型方法を用いて成型された成型物。
【請求項8】
請求項7記載の成型物を用いることを特徴とする、畜肉加工食品の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の畜肉加工食品の製造方法を用いて製造された畜肉加工食品。
【請求項10】
混練生地投入口と、混練生地吐出口と、混練生地投入口と混練生地吐出口を結ぶ配管部を有する成型機用吐出ノズルであって、前記配管部内に、混練生地の流路を分岐させた後合流させることができる部分遮蔽部材を有し、かつ、前記配管部の送方向に対する最大断面積が、前記混練生地投入口の断面積よりも大きいことを特徴とする、成型機用吐出ノズル。
【請求項11】
前記部分遮蔽部材が、前記配管部の送方向に対する断面の中央に位置するように固定されている部分遮蔽部材であることを特徴とする、請求項10記載の成型機用吐出ノズル。
【請求項12】
前記配管部の送方向に対する最大断面積が、前記混練生地投入口の断面積の1.5倍以上であることを特徴とする、請求項10又は11記載の成型機用吐出ノズル。
【請求項13】
前記部分遮蔽部材の、前記配管部の送方向に対し垂直な面への正射影の面積が、前記配管部の最大断面積の1/3〜4/5であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか記載の成型機用吐出ノズル。
【請求項14】
前記部分遮蔽部材が、平板状構造体、円錐状構造体、及び球状構造体からなる群より選ばれる1以上の構造体であることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか記載の成型機用吐出ノズル。
【請求項15】
前記部分遮蔽部材が、前記配管部の送方向に対する断面の中央に位置するように固定されている平板状構造体であることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか記載の成型機用吐出ノズル。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか記載の成型機用吐出ノズルを用いて成型された成型物。
【請求項17】
請求項10〜15のいずれか記載の成型機用吐出ノズルを用いて製造された畜肉加工食品。
【請求項18】
請求項10〜15のいずれか記載の成型機用吐出ノズルを用いることを特徴とする、畜肉加工食品の製造方法。
【請求項19】
前記畜肉加工食品がハンバーグである、請求項9又は17記載の畜肉加工食品。
【請求項20】
中心温度が65℃以上に加熱された後の形状が楕円形状であって、短径に対する長径の長さの比が1.25以上であることを特徴とする請求項19記載の畜肉加工食品。
【請求項21】
周縁部が丸みのある形状であって、表面に凹凸を有することを特徴とする、請求項20記載の畜肉加工食品。
【請求項22】
周縁部が丸みのある形状であり、短径に対する長径の長さの比が1.25以上である楕円形状であり、かつ、表面に凹凸を有することを特徴とする加熱済みハンバーグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−245560(P2008−245560A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90017(P2007−90017)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】