説明

異なる粒状構造の領域を有する構成部品及びその製造方法

【課題】異なる粒状構造2つ又はそれ以上の領域をもつ構成部品を製造するプロセス、及びこのプロセスで製造された構成部品を提供する。
【解決手段】鍛造ステップをプリフォーム20に施して、構成部品の第1の領域に対応する第1の部位28を有するプロファイル24をもたらす段階を含む。プリフォームは、合金の析出物が固溶化するソルバス温度を有する析出強化合金から形成され、鍛造ステップは、第1の歪み速度及び合金のソルバス温度以下の第1のサブソルバス温度で行われる非最終鍛造ステップを含む。後続の鍛造ステップをプロファイルに施して、第1の部位及び構成部品の第2の領域に対応する第2の部位32を含む最終プロファイル26をもたらす段階を含む。後続の鍛造ステップは、後続の歪み速度及び後続のサブソルバス温度で行われる。次に、最終プロファイルに熱処理を施して、最終プロファイル内に粒成長を引き起こす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的には異なる微細構造を備える領域を有する構成部品を製造するプロセスに関する。詳細には、本発明は、結果として得られる構成部品の領域内に異なる微細構造をもたらすようにプリフォームに漸進的鍛造プロセスを施すことで、例えばターボ機械の回転構成部品である構成部品を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンの燃焼器及びタービンセクション内の構成部品は、燃焼器内で発生する高温燃焼ガスに起因する昇温時に許容できる機械的特性を得るために、超合金材料で形成される場合が多い。また、最新の高圧縮比ガスタービンエンジンの高い圧縮機出口温度は、ブレード、スプール、ディスク(ホイール)及び他の構成部品を含む、圧縮機の構成部品に対して高性能な超合金の使用を強いる場合もある。特定の構成部品の適切な合金組成及び微細構造は、構成部品がさらされる所定の温度、応力、及び他の条件によって決まる。例えば、タービンディスク、及び圧縮機のスプール及びディスク等の回転ハードウェアは、一般に合金で形成されが、制御された粒状構造及び所望の機械的特性をもたらすように注意深く制御された鍛造、熱処理、及び表面処理を経る必要がある。これらの用途に使用される合金の顕著な例としては、主成分としてニッケルと結合してガンマ(γ)マトリックスを形成するクロム、タングステン、モリブデン、レニウム、及び/又はコバルトを含有すると共に、主成分としてニッケルと結合してガンマプライム析出強化相、基本的にはNi3(Al,Ti)を形成するアルミニウム、チタニウム、タンタル、ニオブ、及び/又はバナジウムを含有する、ガンマプライム(γ’)析出強化ニッケル基の超合金を挙げることができる。ガンマプライムニッケル基超合金の特定の実施例として、Rene88DT(R88DT;米国特許第4,957,567号)、Rene95(R95;米国特許第3,576,681号)、及びRene104(R104;米国特許第6,521,175号)、並びにInconel(登録商標)、Nimonic(登録商標)、及びUdimet(登録商標)の商標名で入手できる特定のニッケル基超合金を挙げることができる。ディスク及び他の重要なガスタービンエンジンの構成部品は、粉末冶金(P/M)、従来式の鋳鍛造プロセス、及びスプレー鋳造又は核形成鋳造成形方法によって形成されるビレットから鍛造される場合が多い。鍛造は、一般に成形性を高める細粒の微細構造のビレットに行われ、その後、均一な粒成長をもたらして特性を最適化するために熱処理が行われる場合が多い。この熱処理は、スーパーソルバス温度、換言すれば、合金のガンマプライム析出物が固容体になるソルバス温度以上で行われる。
【0003】
図1は従来公知のタービンディスク10を示す。ディスク10は、全体的には外側リム12、中央ハブ又はボア14、及びリム12とボア14との間のウェブ16を含む。リム12は、従来からタービンブレード(図示せず)の取り付け具として構成される。貫通孔の形態のボアホール18は、ディスク10をシャフト上に取り付けるためにボア14の中心に配置されているので、ボアホール18の軸はディスク10の回転軸と一致している。ディスク10は単一鍛造品であり、限定されるものではないが、ゼネラルエレクトリック社製のGE90(登録商標)及びGEnx(登録商標)民間用エンジン等の高バイパスガスタービンエンジンを含む、航空機エンジンに使用されるタービンディスクに代表される。
【0004】
一般に、タービンディスク10のボア14及びウェブ16(並びに、圧縮機スプール及びディスクの)の作動温度は、リム12の作動温度よりも低い。従って、ボア14がリム12とは異なる特性をもつことが許容され、それが望ましい場合も多い。使用される特定の合金に応じて、リム12、ボア14、及びウェブ16に関する最適な微細構造が異なる場合もある。例えば、ボア14及びウェブ16には引張強度、破壊強度、及び低サイクル疲労(LCF)抵抗を高めるために比較的微細な粒度が最適であるが、リム12にはクリープ、応力破断、及び亀裂成長抵抗、例えば、高温時の低ドエル(ホールド時間)疲労亀裂成長速度(DFCGR)を高めるため粗い粒度が最適である場合が多い。この矛盾する要件を満たすために、複数の合金で形成されたディスク、又はリム及びボア内で異なる微細構造を有するディスクが提案されている。例えば、米国特許第4,820,358号、5,527,020号、5,527,402号、及び6,478,896号には、リム及びボアを異なる温度で熱処理を行い、リムが粗い粒度、ボアが微細な粒度を有し、異なる粒度構造及び結果として得られる異なる特性を備える、単一部品、一定組成のディスクを形成できる二重の熱処理技術が開示されている。
【0005】
一般に研究されてきた複合合金ディスクは、異なる合金で形成されたリム部及びボア部の別々の製造を必要とする。次に、リム部及びボア部は、溶接又は他の冶金学的接合プロセス等で接合される。その一例は、米国特許第5,100,050号、5,106,012号、及び5,161,950号に開示されるような鍛造強化接合として知られており、リム及びボアの鍛造プリフォームを同時に必要とする。鍛造作業中に、プリフォームの変形によりリム及びボアがもたらされ、同様にリム及びボアの冶金学的接合がもたらされる。他の例は、米国特許第6,969,238号及び米国公開特許第2008/0120842号及び2008/0124210号に開示される形式のイナーシャ接合技術を含む、固相接合プロセスである。合金が共通の固溶化熱処理サイクルに寄与しないので、異なる合金は異なるソルバス温度をもつ場合があり、イナーシャ接合は、接合作業後に時効サイクルを被る固溶化熱処理されたリム部及びボア部を接合することが制限される。
【0006】
また、鍛造温度、歪み、及び歪み速度特性、及び鍛造後の冷却速度は、ガンマプライムニッケル基超合金で形成される単一部品、一定組成ディスクの粒度に影響を与えることが分かっている。例えば、米国特許第5,593,519号には、一般にガンマプライムソルバス温度以上の最大約100°F(約55°C)のスーパーソルバス温度で鍛造される場合、低い歪み速度(0.01s-1又はそれ以下)に維持することで均一な粗い粒度を生じることができる鍛造技術が開示されている。異なる粒度は、特定の部位をスーパーソルバス鍛造温度から異なる速度で冷却することで、構成部品の特定の部位で得ることができる。他の例として、米国特許第6,059,904号には、ガンマプライムソルバス温度以下の一般に約100°F(約55°C)よりも限りなく低いサブソルバス温度で行われる少なくとも最初の鍛造ステップの間に、低い歪み速度(0.01s-1又はそれ以下)に維持することで均一な微細な粒度を生じることができる鍛造技術が開示されている。この特許には、米国特許第5,593,519号の技術を用いることで、構成部品の特定の部位で異なる粒度を得ることができるとの説明がある。
【0007】
前述の進歩の場合でも、実際には、最新の商用航空機タービンのディスクは、単一合金で形成された一体構造として作られ、粒度が必然的にリムに望まれるクリープ、応力破断、及びDFCGR特性と、ボアに望まれるLCF及び破壊特性との間の妥協案である均一の微細構造を有するように処理されるのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,969,238号明細書
【特許文献2】米国特許第4,957,567号明細書
【特許文献3】米国特許第3,576,681号明細書
【特許文献4】米国特許第6,521,175号明細書
【特許文献5】米国特許第4,820,358号明細書
【特許文献6】米国特許第5,527,020号明細書
【特許文献7】米国特許第5,527,402号明細書
【特許文献8】米国特許第6,478,896号明細書
【特許文献9】米国特許第5,100,050号明細書
【特許文献10】米国特許第5,106,012号明細書
【特許文献11】米国特許第5,161,950号明細書
【特許文献12】米国公開特許第2008/0120842号
【特許文献13】米国公開特許第2008/0124210号
【特許文献14】米国特許第5,593,519号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、異なる粒状構造2つ又はそれ以上の領域をもつ構成部品を製造するプロセス、及びこのプロセスで製造された構成部品を提供するものである。非限定的な実施例は、ガスタービンエンジンのタービンディスクを含むターボ機械の回転構成部品を含む。
【0010】
本発明の第1の態様は、異なる粒状構造の少なくとも第1及び第2の領域を有する構成部品を製造する方法である。この方法は、少なくとも1つの鍛造ステップをプリフォームに施して、少なくとも構成部品の第1の領域に対応する第1の部位を有するプロファイルをもたらす段階を含む。プリフォームは、合金の析出物が固溶化するソルバス温度を有する析出強化合金から形成され、少なくとも1つの鍛造ステップは、第1の歪み速度及び合金のソルバス温度以下の第1のサブソルバス温度で行われる非最終鍛造ステップを含む。後続の鍛造ステップをプロファイルに施して、第1の部位及び構成部品の第2の領域に対応する第2の部位を含む最終プロファイルをもたらす段階を含む。後続の鍛造ステップは、後続の歪み速度及び後続のサブソルバス温度で行われ、後続の歪み速度及び後続のサブソルバス温度の少なくとも1つは第1の歪み速度又は第1のサブソルバス温度よりも高いか又は低い。次に、最終プロファイルに熱処理を施して、最終プロファイル内に粒成長を引き起こす段階を含む。最終プロファイルの第1の部位は、第1の歪み速度が後続の歪み速度と異なる、及び/又は第1のサブソルバス温度が後続のサブソルバス温度と異なる結果として、第2の部位とは異なる粒度を有する。
【0011】
本発明の追加の態様では、プリフォームは、合金のガンマプライム析出物が固溶化するソルバス温度をもつ析出強化ニッケル基合金で形成され、前述のステップでもたらされる構成部品は、異なる粒状構造をもつボア及びリムを有するガスタービンエンジンの回転構成部品とすることができる。更に、本方法は、前述の非最終及び後続鍛造ステップに対応する、わずか2つの鍛造ステップを必要とするか、又は、最終の歪み速度よりも高い歪み速度でプリフォームに施されると共に最終のサブソルバス温度よりも低いサブソルバス温度でプリフォームに施される、例えば、事前鍛造ステップである追加の鍛造ステップを含むことができる。
【0012】
本発明の他の態様は、前述のステップを含むプロセスで形成される構成部品を含む。
【0013】
本発明の技術的効果は、異なる粒度を含む異なる特性の2つ又はそれ以上の領域を有する構成部品を製造できることであり、構成部品の異なる領域は、異なる特性を促進するそれぞれの粒度をもつことができる。タービンディスクに関して、本方法によってボア内に微細粒を有すると共にリム内に粗い粒を有するディスクを作ることができ、リム及びボアの特性が該リム及びボアの異なる作動環境に適応又は上手く適合するようにできる。本発明の方法は、多様な合金に適用して、構成部品の異なる領域内に異なる粒度及び構造を実現することができる。
【0014】
本発明の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明から明白になるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ガスタービンエンジンに使用される形式のタービンディスクの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による、二重特性のタービンディスクの製造で実施されるステップを概略的に示す。
【図3】本発明の別の実施形態による、二重特性のタービンディスクの製造で実施されるステップを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ターボ機械、詳細には、高バイパスガスタービンエンジンのタービン及び圧縮機ディスク、及び圧縮機スプールに使用される形式の回転ハードウェアを参照して説明する。しかしながら、本発明の教示及び利点は、このようなハードウェアに限定されず、むしろ広範な用途で使用されるハードウェアに適合及び適用できることを理解されたい。例えば、本発明は、図1に示すタービンディスク10を参照して説明されるが、本発明の教示及び利点はこの特定のディスク10に限定されないことを理解されたい。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、リム12、ボア14、及びウェブ16の全ては同じ合金で形成される。好ましい合金は、合金の加工時に固溶化可能な析出相で強化される。タービンディスク10の形成との関連において、好ましい合金はガンマプライム析出強化ニッケル基合金であり、特定の合金は、最終製品がさらされる作動環境に基づいて選択できる。適切な材料の非限定的な実施例としては、前述のガンマプライムニッケル基超合金R88DT、R95、及びR104、並びにInconel(登録商標)、Nimonic(登録商標)、及びUdimet(登録商標)の商標名で入手できる特定のニッケル基超合金を挙げることができる。
【0018】
本発明は、漸進的鍛造プロセスとして説明する鍛造プロセスを使用することを含み、該プロセスは、ガンマプライムニッケル基超合金で形成された鍛造品の選択された領域を加工するために、異なる条件で実施される複数の個別の鍛造ステップを含む。本発明の好ましい態様において、個別の鍛造ステップは、最終製品の異なる部位で異なる粒度を生じる方法でもって、合金のサブソルバス温度で実施され、特定の部位の粒度は、これらの部位の使用条件に適合するようになっている。例えば、図1のディスク10を使用して、プリフォームは、最初は比較的大きな歪み速度及び比較的低い温度で鍛造でき、後でディスク10のボア14を形成することになる鍛造プリフォームの少なくとも一部の領域に、ボア14に望まれる低サイクル疲労(LCF)性を向上させる微細粒度構造を生じるようになっている。鍛造されたプリフォームの限定された部位は、その後、高温及び低い歪み速度での鍛造が施され、後でディスク10のリム12を形成することになる鍛造プリフォームの所定の領域に、リム12に望まれるクリープ及び高温ドエル特性を向上させる粗い粒状構造を生じるようになっている。このようにして、本発明では、鋳造品の部位固有の粒状構造を生じることができ、これにより鍛造品の部位固有の特性がもたらされる。従って、本発明のプロセスは、例えば、圧縮機又はタービンディスクの局所的なエンジン作動環境に適合する、ハードウェア内の局所的性能を高めるために、必要性に応じた部位固有の微細構造を備えるハードウェアを製造するため使用できる。他の追加的な利点としては、温度特性及びサイクル寿命が高められ、ガスタービンエンジンの燃料効率等のハードウェアが組み込まれる機械の運転特性を向上できる、改善されたハードウェア構成を含むことができる。
【0019】
図2は、図1に示す形式のディスクを製造するための少なくとも3つの鍛造ステップを伴う、第1の漸進的鍛造プロセスを示す。少なくとも1つの鍛造ステップは、好ましくは等温鍛造プロセスである。図2の処理ステップは、ディスク10の任意の適切な形状及び寸法のプリフォーム20で始まる。ディスク10の軸対称構成により、図2に示されていないプリフォーム20の対称位置の部分があること、並びに後続の図2に見られる鍛造プロファイル22、24、及び26に対して同様に図示されていない対称位置の部分があることに留意されたい。プリフォーム20は、粉末冶金(P/M)、従来式の鋳鍛造プロセス、及びスプレー鋳造又は核形成鋳造成形方法によって製造されるビレットを含む、種々の公知のプロセスによって製造できる。プリフォーム20は、約ASTM10又はより微細な平均粒度であることが好ましい。図2においてプリフォーム20に向かって軸方向に向かう矢印で示す第1の鍛造ステップは、その略平坦な形状をパンケーキ処理鍛造品と呼ぶことができるプロファイル22をもたらす、事前鍛造ステップとして説明できる。図2においてプリフォーム22に向かって軸方向に向かう矢印で示す次の鍛造ステップは、それぞれディスク10のボア14及びウェブ16に対応する部位28及び30を含む形状のウェブ処理鍛造品と呼ばれるプロファイル24をもたらし、非最終鍛造ステップとして説明できる。図2においてプリフォーム24に向かって軸方向に向かう矢印で示す第3の鍛造ステップは、ディスク10のリム12に対応する部位32を更に含む形状のリム処理鍛造と呼ばれる最終プロファイル26をもたらし、最終鍛造ステップとして説明できる。図2のサブソルバス漸進的鍛造プロセスの終了に続いて、鍛造品プロファイル26には、ディスク10の異なる部位に異なる粒度の発生を引き起こす又は促進するために使用できる最終熱処理を施すことが好ましい。本発明の特定の実施例において、最終熱処理は、ガンマプライム析出物を溶解して、先行の鍛造ステップから鍛造品26内に残留する塑性変形の結果生じる再結晶及び粒成長を引き起こす、スーパーソルバス熱処理であることが好ましい。熱処理に続いて、所望の体積率のガンマプライム析出物が形成される冷却が行われる。図2の鍛造ステップは以下に詳細に説明する。
【0020】
ニッケル基超合金が、所望のスーパーソルバス粒成長挙動を実現するための好ましい歪み速度領域をもつことは従来から知られている。プリフォーム20及びプロファイル22、24、及び26の形状寸法の調整、並びに鍛造プロセス管理は、プロファイル22、24、及び26のボア部28、ウェブ部30、及びリブ部32内の局所的な歪み及び歪み速度特性を得るために使用できる。前述のように、本発明の好ましい態様は、ボア14における微細粒状構造及びリム12における粗い粒状構造を備えるディスク10を製造することである。プロファイル22を製造する第1の鍛造ステップ時に、プリフォーム20は、合金のサブソルバス温度で鍛造され、プロファイル24及び26のボア部28、最終的にディスク10のボア14における微細粒の形成を促進できる歪みレベル及び歪み速度を得るようになっている。前述のガンマプライムニッケル基超合金R88DT、R95、及びR104等のニッケル基合金に関して、第1の鍛造ステップの適切なサブソルバス温度は合金のソルバス温度より低い約25°Cから約150°Cである。プリフォーム20の歪みレベルは、十分な残留塑性変形を引き起こして熱処理の間に再結晶及び粒成長をもたらすために、少なくとも50%、好ましくは約70%から約250%である。更に、歪み速度は、少なくとも0.008s-1、より好ましくは約0.01s-1から約0.32s-1である。例えば、ニッケル基超合金R104を使用すると(一般的なガンマプライムソルバス温度は約2110°Fから約2125°F(約1155°Cから約1165°C))、適切なサブソルバス温度は約1925°F(約1050°C)である。
【0021】
プロファイル24を製造する第2の鍛造ステップの間に、プロファイル22は、サブソルバス温度、及びプロファイル24及び26のボア部28、最終的にはディスク10のボア14における微細粒の形成を更に促進できるか又は少なくとも維持できる歪みレベル及び歪み速度で鍛造される。ボア部28及びウェブ部30を形成する本鍛造ステップでは、第1の鍛造ステップのサブソルバス温度と同じ、高い、又は低いサブソルバス温度を使用できる。本鍛造ステップで使用する歪み速度は、同様に第1の鍛造ステップで使用する歪み速度と同じ、高い、又は低い速度とすることができる。しかしながら、本発明の特定の実施形態において、プロファイル24のボア部28内の微細粒の形成を促進するために、本鍛造ステップの間は低い歪み速度が望ましい。好まし歪み速度は、少なくとも0.008s-1、より好ましくは約0.01s-1から約0.1s-1である。プリフォーム22の歪みレベルは、同様に少なくとも50%であるが、より好ましくは約70%から約200%である。
【0022】
図2に示す最終の鍛造ステップの間に、プロファイル24は、サブソルバス温度において鍛造され、プロファイル24のボア部28に既に存在する微細粒を劣化さえることなく好ましくは保留しながら、プロファイル26のリム部32、最終的にはディスク10のリム12内の粗い粒の形成を促進する、歪みレベル及び歪み速度を実現するようになっている。最終鍛造ステップで使用する歪み速度及び温度の少なくとも1つは、先行ステップで使用する歪み速度又は温度よりも高いか又は低い。しかしながら、本発明の特定の実施形態において、リム部32を形成する最終の鍛造ステップは、第1及び第2の鍛造ステップよりも高いサブソルバス温度で行われ、低い歪み速度を実現するようになっている。第1及び第2の鍛造ステップと同様に、最終の鍛造ステップは、合金のソルバス温度よりも低い約25°Cから約150°Cのサブソルバス温度で行われるが、2つの先行の鍛造ステップで使用するよりも高い温度である。最終の鍛造ステップのサブソルバス温度のより好ましい範囲は、合金のソルバス温度よりも低い約25°Cから約65°Cである。例えばR104合金を使用する場合、第3の鍛造ステップの適切なサブソルバス温度は、約2050°F(約1120°C)である。好ましい歪み速度は、最大0.004s-1、より好ましくは最大0.001s-1である。同様に、プリフォーム24の歪みレベルは、少なくとも50%、より好ましくは約70%から約250%である。最終の鍛造ステップの低い歪み速度によって残留塑性変形が解放/緩和され、その結果、プロファイルは粗い微細構造をもつことになる。
【0023】
図2に示す各鍛造ステップの終了後、最終プロファイル26には最終熱処理が施されて、ディスク10の異なる部位に異なる粒度の発生を引き起こす又は促進するようになっている。前述のように、本発明の特定の実施形態において、例えば、合金がR88DT、R95、又はR104等の析出強化合金である場合、最終熱処理は、スーパーソルバス(固溶化)熱処理温度、換言すると、合金のソルバス温度よりも高い温度で行われることが好ましい。スーパーソルバス熱処理の間にプロファイル26内のガンマプライム析出物は溶解し、これにより再結晶及び粒成長の発生が可能になる。その後、プロファイル26は、サブソルバス温度でガンマプライム相を再析出する適切な時効処理を含むプロセスで冷却できる。ボア部28及びリム部32が異なる温度にさらされる特異な熱処理又は特異な冷却速度の意図的な使用に対して、これらの熱処理の両者は、プロファイル26全体にわたって実質的に均一な温度を実現するために(又は少なくとも実現する目的で)行うことができる。
【0024】
前述の熱処理の後に、及び前述の漸進的鍛造プロセスの結果として、プロファイル26のボア部28は、引張強さ、破壊強度、及びLCF抵抗を向上させる微細粒度の微細構造(例えば、ASTM7又はそれ以下)を有し、リム部32は、クリープ、応力破断、及び亀裂成長抵抗、例えば、DFCGRを向上させる粗い粒度(例えば、ASTM6又はそれ以上)を有する。好ましくは、ボア部28の粒度はSTM9又はそれ以上に微細であり、リム部32の粒度はASTM3又はそれ以上に粗い。ウェブ部30の粒度は、概してボア部28の微細粒度からリム部32の粗い粒度までの実質的に一様な遷移を示すであろう。
【0025】
図3は、図2のプロセスといくつかの点で類似するが、これにより2つの鍛造ステップだけで本発明の好ましい態様を実現できる第2の漸進的鍛造プロセスを示す。図2及び3の実施形態の間の類似点に照らして、図3の以下の説明は、いくつかの注目すべき又は顕著な様式で第1の実施形態とは異なる第2の実施形態の態様に主として焦点を合わせるものである。詳細に説明されない第2の実施形態の他の態様は、構造、材料、プロセス等に関して、本質的に第1の実施形態で説明したものとすることができる。
【0026】
図2と同様に、図3の処理ステップは、図2に関して説明したようなプリフォーム20で始まる。図3においてプリフォーム20に向かって軸方向に向かう矢印で示す第1の鍛造ステップは、輪郭がそれぞれディスク10のボア14及びウェブ16に対応するボア部28及びウェブ部30を含む、図2のプロファイル24に類似のプロファイルをもたらす。従って、このプロファイルは図3でも同様に符号24で特定されが、ボア/ウェブ処理鍛造品と呼ばれる。図3においてプロファイル24に向かって軸方向に向かう矢印で示す第2の鍛造ステップは最終鍛造ステップと呼ぶことができ、リム処理鍛造と呼ばれる最終プロファイル26をもたらす。図2の実施形態と同様に、プロファイル26の形状は、更にディスク10のリム12に対応するリム部32を含むことができる。
【0027】
図2の実施形態と同様に、図3の漸進的鍛造プロセスの目的は、ボア14に微細粒状構造及びリム12に粗い粒状構造を有するディスク10をもたらすことにある。プロファイル24をもたらす第1の鍛造ステップの間に、プリフォーム20は、合金のサブソルバス温度で鍛造され、プロファイル24及び26のボア部28及びウェブ部30、結果的にはディスク10のボア14及びウェブ16内での微細粒の形成を促進することになる歪みレベル及び歪み速度を実現するようになっている。図2の第1の鍛造ステップで特定されるのと同じサブソルバス温度、歪みレベル、及び歪み速度を、プロファイル24のボア部28及びウェブ部30を形成する図3の第1の鍛造ステップで使用できる。更に、図2の最終鍛造ステップで特定されるのと同じサブソルバス温度、歪みレベル、及び歪み速度を、プロファイル26のリム部32を形成する図3の最終鍛造ステップで使用できる。従って、図3の最終鍛造ステップで使用される歪み速度及び温度の少なくとも1つは、先行ステップで使用される歪み速度又は温度よりも高いか又は低い。しかしながら、本発明の特定の実施形態において、図3の最終鍛造ステップは高いサブソルバス温度で行われ、図3の第1の鍛造ステップで使用されるよりも低い歪み速度を実現するようになっている。図3に示す各鍛造ステップの終了後に、最終プロファイル26は、図2のプロセスでもたらされるプロファイル26に関して説明したのと同じ方法で熱処理することができる。前述のように、ボア部28の粒度はASTM9又はそれ以上に微細であり、リム部32の粒度はASTM3又はそれ以上に粗いことが好ましい。ウェブ部30の粒度は、概してボア部28の微細粒度からリム部32の粗い粒度までの実質的に一様な遷移を示すであろう。従って、図2及び3の異なるプロセスの間に意図的な粒度の差異はない。
【0028】
本発明につながる研究において、図2及び3で示す各プロセスによってディスクを製造したR104合金からディスクを製造した(推定ガンマプライムソルバス温度は約1155°Cから約1165°C)。図2及び3で示す各プロセスの鍛造条件を以下の表I及びIIにそれぞれ示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
表Iのプロセスステップの結果は、ASTM9及びそれ以上に微細な平均粒度をもつ微細粒度のボア部、及びASTM3及びそれ以上に粗い平均粒度をもつ粗い粒度のリム部を有するディスクであった。表IIのプロセスステップの結果は、表Iのプロセスステップで製造されるディスクで得られるのと実質的に同じボア部及びリム部の微細粒度及び粗い粒度の微細構造を有するディスクであった。これらの粒度は、結果として得られるボアが耐破壊性の高い降伏強度を有する一方でリムが亀裂成長速度抵抗を有するという点で有利である。
【0032】
前記の説明から、前述のプロセスに関連する利点は、モノリシックプリフォームから製造されるモノリシック鍛造品、換言すれば、異なる化学的性質の個々のサブコンポーネントから形成されない鍛造品及びプリフォームで実現できることが明らかになるはずである。しかしながら、1つ又はそれ以上の接合技術を、ディスク10を製造するための前述のプロセスの1つに組み込むことも本発明の範囲とすることができる。例えば、リム、ボア、及び/又はウェブのための別個のプリフォームをもたらすことができ、その後、これにイナーシャ接合又は鍛造強化接合等の接合プロセスを施し、1つ又はそれ以上の固体接合部によって接合されたリム部、ボア部、及びウェブ部を有するプロファイルをもたらすことができ、その後、このプロファイルには前述の鍛造プロセスの1つが施されるようになっている。しかしながら、本発明の顕著な利点は、イナーシャ接合又は鍛造強化接合プロセス等の固体接合技術を用いて作ることが難しいか又は不可能であろうディスク構成体を製造できる点にある。
【0033】
前述のプロセスに関する他の利点は、複雑な異なる熱処理プロセスに頼ることなく、モノリシック部品の別個の領域に有意な粒度を実現できる点である。しかしながら、このような異なる熱処理方法は、異なる鍛造領域の間で顕著な微細構造上の差異を生じるような、又は各領域の一方に特徴のある微細構造を生成するような構成部品に適用できる。
【0034】
本発明は特定の実施形態に関連して説明されるが、当業者には他の形態を採用できることは明白である。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0035】
10 ディスク
12 リム
14 ボア
16 ウェブ
18 ボアホール
20 プリフォーム
22 プロファイル
24 プロファイル
26 プロファイル
28 部位
30 部位
32 部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる粒状構造の少なくとも第1及び第2の領域(14,12)を有する構成部品(10)を製造する方法であって、
前記方法は、
少なくとも1つの鍛造ステップをプリフォーム(20)に施して、少なくとも前記構成部品(10)の前記第1の領域(14)に対応する第1の部位(28)を有するプロファイル(24)をもたらす段階を含み、
前記プリフォーム(20)は、合金の析出物が固溶化するソルバス温度を有する析出強化合金から形成され、前記少なくとも1つの鍛造ステップは、第1の歪み速度及び前記合金のソルバス温度以下の第1のサブソルバス温度で行われる非最終鍛造ステップを含み、
前記方法は更に、
後続の鍛造ステップを前記プロファイル(24)に施して、前記第1の部位(28)及び前記構成部品(10)の前記第2の領域(12)に対応する第2の部位(32)を含む最終プロファイル(26)をもたらす段階を含み、
前記後続の鍛造ステップは、後続の歪み速度及び後続のサブソルバス温度で行われ、前記後続の歪み速度及び前記後続のサブソルバス温度の少なくとも1つは前記第1の歪み速度又は前記第1のサブソルバス温度よりも高いか又は低く、
前記方法は更に、
前記最終プロファイル(26)に熱処理を施して、前記最終プロファイル(26)内に粒成長を引き起こす段階を含み、
前記最終プロファイル(26)の前記第1の部位(28)は、前記第1の歪み速度が前記後続の歪み速度と異なる、及び/又は前記第1のサブソルバス温度が前記後続のサブソルバス温度と異なる結果として、前記第2の部位(32)とは異なる粒度を有する、
方法。
【請求項2】
前記合金はニッケル基合金であり、前記析出物はガンマプライム析出物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の歪み速度は、前記後続の歪み速度よりも高い、請求項1〜請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記後続の歪み速度は、前記第1の歪み速度よりも高い、請求項1〜請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1のサブソルバス温度は、前記後続のサブソルバス温度よりも高い、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記後続のサブソルバス温度は、前記第1のサブソルバス温度よりも高い、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの鍛造ステップは、前記非最終鍛造ステップの前に前記プリフォーム(20)に施され、前記非最終鍛造ステップが施される事前プロファイル(22)をもたらす、事前鍛造ステップを更に含み、前記事前鍛造ステップは、前記第1の及び後続の歪み速度よりも高い事前の歪み速度で行われると共に、前記合金のソルバス温度以下で前記後続のサブソルバス温度以下の事前のサブソルバス温度で行われる、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記鍛造ステップの少なくとも1つは、等温鍛造プロセスを使用して行われる、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記プリフォーム(20)又は前記プロファイル(24)を前記構成部品(10)の第3の領域に対応する部位に接合する段階、又は前記最終プロファイル(26)を前記構成部品(10)の第3の領域に接合する段階を更に含む、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記構成部品(10)はガスタービンエンジンの回転構成部品(10)であり、前記構成部品(10)の前記第1の及び第2の領域(14,12)は、それぞれ構成部品(10)のボア(14)及びリム(12)を含む、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−250286(P2012−250286A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−125549(P2012−125549)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】