説明

異常生体組織を検出する方法および装置

異常が疑われる生体組織を検出するための光散乱・吸収技術。異常のある組織、病変部または、そうした病変部や腫瘍に発展する前の組織の位置を特定するため内視鏡または結腸鏡をより良く導くためのデータを有益に提供するために複数の血液量センサおよび/または接触センサ(12a〜12n)を利用する装置および方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、異常が疑われる生体組織を検出する光散乱・吸収技術の利用に関する。特に、本発明は、複数の血液量センサを利用してプローブや内視鏡を導いて生体内の異常組織をより有効に検出する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学者により、例えば、本明細書に援用される非特許文献1に記載のように、健康な組織の血液量に対する表面粘膜の血液量の検出可能な増加は、大腸内の癌性・前癌性病変部の近くで起こるということがわかっている。こうした現象は、血液供給の初期増加(early increase in blood supply:EIBS)と称される。
【0003】
この現象により、異常領域内の血液供給の初期増加(EIBS)に基づく異常があり得る領域を予測できることが知られている。更に、注目領域に平行光を照射するプローブを用いて吸収光および反射光を検出することにより、臨床医への情報提供が可能となり、これにより内視鏡を導き侵襲的措置を行わずに体内で起こり得る異常を検出できることがわかっている。こうした技術は、例えば、本明細書に援用される、2007年11月8日出願の「Blood Content Detecting Capsule」と題された本発明の譲受人に譲渡される特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願明細書11/937,113
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】R. K. Wali, H. K. Roy, Y. L. Kim, Y. Liu, J. L. Koetsier, D. P. Kunte, M. J. Goldberg, V. Turzhitsky, and V. Backman, Increased Microvascular Blood Content is an Early Event in Colon Carcinogenesis, Gut Vol. 54, 654-660 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特定の種類の血液量光センサには、血液量を正確に検出するために検出センサと下にある組織の粘膜との接触が必要とされる。こうした種類の検出センサと注目組織との間に隙間が存在すると、照射された組織と相互に作用する光の小さくなった振幅がセンサに受信されるが、その値は異常を検出するには小さな値となってしまう可能性がある。そこで、組織の異常領域が検出される確からしさを向上させるため、測定センサが確実に調査対象の組織に接触したままであることが重要となる。従来考えられる構成はこの問題に取り組んだものではない。この結果、こうしたシステムで異常領域が見逃される、あるいは、検出できない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
調査対象の組織に検出センサが接触する場合にセンサの接触を増やす、および/または、収集されたデータを特定するシステムおよび方法に基づいて、本発明は検出センサからのデータの精度を効果的に上昇させる。本発明において、例えば、生体の体腔へ挿入されるプローブの一部である血液量検出部に関連した接触検出部を用いることおよび/または異常組織、病変部、または、そうした病変部や腫瘍に発展する前の組織の位置を特定するため、内視鏡または結腸鏡をより良く導くためのデータを有益に提供するために複数の血液量センサを用いることにより、データの精度を効果的に上昇させることができる。
【0008】
本発明の一態様では、接触検出部を用い、それとともに用いる血液量光検出部によって、これらのセンサが対象組織に直接接触している際のより正確な血液量データを得る。接触検出部は、こうしたセンサが組織に接触している状態を示し、これに応じて、こうした状態に生成される血液量情報信号はこれらのセンサが組織接触していない状態に比べて精度が高くなる傾向にあることを示す。更に、接触センサは、接触センサが組織粘膜に接触している期間のみ血液量センサ内の照射部および集光部に電力が供給されるように、血液量センサへの信号や電力を生成してもよい。
【0009】
本発明の別の態様では、プローブや内視鏡の表面内または表面上に効果的に配置される複数の血液量センサを利用することにより、改良された血液量検出が実現できる。異常組織の検出およびその位置の特定は、複数のセンサからの血液量検出データに基づいて向上する。統計的に処理できるこうしたセンサからのほぼ同時に生成されたデータを利用することや、プローブや内視鏡を導く際に使用される情報をより良くかつ正確に提供することは特に有益となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、複数の血液量検出センサを利用する本発明の一態様にかかる例示のシステムのブロック図である。
【図2】図2は、少なくとも3つの血液量光センサを用いる本発明にかかるシステムの例示の図である。
【図3】図3は、本発明で利用可能な光学血液量センサの例示の実施形態である。
【図4】図4は、本発明で利用可能な光学血液量センサの別の例示の実施形態を示す。
【図5】図5は、本発明で利用可能な偏光素子の例示の実施形態を示す。
【図6】図6は、本発明で利用可能な例示の処理部の代表ブロック図を示す。
【図7】図7は、本発明を利用する第1の内視鏡構成の例示の実施形態を示す。
【図8】図8は、本発明を利用する第2の内視鏡構成の例示の実施形態を示す。
【図9】図9は、本発明を利用する第3の内視鏡構成の例示の実施形態を示す。
【図10】図10は、本発明を利用する第4の内視鏡構成の例示の実施形態を示す。
【図11】図11は、本発明を利用する内視鏡の例示の箇所の一実施形態を示す。
【図12】図12は、本発明を利用する例示の内視鏡およびシースの構成を示す。
【図13】図13は、本発明を利用する第2の例示の内視鏡およびシースの構成を示す。
【図14】図14は、本発明で利用可能な例示の光ファイバ束を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、接触の改善による血流検出の改善と、様々な検出センサと調査対象の生体組織粘膜との接触の改善の可能性とに関する。
【0012】
図面は、全体を通して同じ参照番号が同じ部分を表す。本明細書中で用いられるように、「a」、「an」および「the」は、内容により明示されていない限り複数についても言及するものとする。また、本明細書で用いられるように、「in」は、内容により明示されていない限り「in」および「on」の両方を含むものとする。また、本明細書で用いられるように、「and」と「or」は、内容により明示すされていない限り、接続語および離接語の両方を含み、また、ほぼ同じ意味で使用できるものとする。
【0013】
図1は、3つの検出センサを含む血液検出システム100の模式図を示す。
【0014】
当業者に理解されるように、検出センサや窓の数は3つに限られるものではない。光源1は、シングルファイバロッド2に接触している。光源1から生じる光は、シングルファイバロッド2の端面に集束される。シングルファイバロッド2の内部構成により、光ビームはシングルファイバのコアの内壁に繰り返し反射して均一の強度の光源、つまり、平行光となる。
【0015】
シングルファイバロッド2は更にファイバ束3と接触している。ファイバ束3は、独立した光ファイバ3a〜3nからなる。透過光は、それぞれ光ファイバ3a〜3nを通り測定部12a〜12nへと伝達される。各測定部12a〜12nでは、透過光は測定部を出る前に偏光板、レンズ、およびプリズムの列を通過する。測定部を出た光は、検査対象の生体組織の領域を照射する。照射された組織粘膜からの作用光はそれに応じて測定部12a〜12nにより検出される。各測定部12a〜12nでは、図3に示すように、受光された作用光が測定部のプリズム、レンズ、および偏光子を通過し、集光ファイバ7a、7a〜集光ファイバ7n、7nのうち対応する1つを介して分析のために分光器9へ透過される。
【0016】
図2は、図1のシステム100の例示の構成のブロック図を示す。図2を参照すると、図2に見られる例示のシステムは、照射された組織粘膜内の血液量を確認するために調査対象の組織を照射するのに十分な強度と周波数の光を生成する光源を含む。シングルファイバロッド2は、例えば、光ファイバに入射する光の均一な強度および周波数を保証するため、例えば、光コアを含む光導体であってもよく、あるいは、光源1から出射された光を均一かつ平行にするように設計されてもよい。光ファイバ3a〜3nは、シングルファイバロッド2から測定部12a〜12nへと光を伝える個別の光透過ラインである。光源1は、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、LED、または十分な強度と周波数の光を与えることができる他のどんな光源であってもよい。
【0017】
光源1の他に、各測定部12a〜12nは、更に偏光子4と、レンズ5と、プリズム6と、測定窓15とを有する。偏光子4は、透過光波が線形に、つまり、水平方向または鉛直方向に合わせられることを保証するように設計される直線偏光子である。レンズ5は、光波を平行方向で伝える光学レンズである。光波は、略平行にレンズ5を出て、プリズム6の表面に当たる。プリズム6は、反射面で覆われた光学プリズムである。プリズム6の表面に当たる光波は測定窓15を垂直に通過して下の生体組織に反射する。測定窓15は光学窓であり、通常、検出波長範囲内のガラスや他の材料からなり、透過光波や反射光波と相互に作用せず、また、透過光波や反射光波を減衰させない。
【0018】
下の生体組織と相互に作用、または、生体組織で反射した光は、測定窓15を通り、プリズム6と、レンズ5と、偏光子4とを通り、対応する集光ファイバ7a、7a〜集光ファイバ7n、7nに戻る。集光ファイバ7a、7a〜集光ファイバ7n、7nは、それぞれ反射光を分光処理部(分光器)9へと伝える。集光ファイバ7a、7a〜集光ファイバ7n、7nを偏光器4に対して配置した結果、集光ファイバ7a、7a〜集光ファイバ7n、7nはそれぞれ水平または鉛直に偏光された光波を分光器9へと伝える。集光ファイバ7a、7a〜集光ファイバ7n〜7nはそれぞれスロット8で分光器9に入射し、各血液量データを分光器9に設置するデータ受信部へと伝える。
【0019】
ここで、図1および図2の一つの測定部12aに関し、システム100の例示の詳しい動作を説明するが、この動作は同時に行われる、あるいは図1に示す測定部12a〜12nによって行われると理解される。図2を参照すると、光源1から発光された光は、シングルファイバロッド2を通過し、独立した光ファイバ3aに到達する。光源1から生じる光がシングルファイバロッド2を通過する際、ロッド2は光源1から発光された光の強度および周波数を均一および平行にし、均一および平行になった光を独立した光ファイバ3aへと導く。
【0020】
平行光が1つのファイバ3aへ進入すると、その光は個別の測定部12aへ伝達される。測定部12aは、光ファイバと、偏光子4と、レンズ5と、プリズム6と、測定窓15とにより構成される。透過光は測定窓15を介して測定部12aを出て生体内の組織領域を照射する。
【0021】
照射された組織と相互に作用する特定の光は、反射し、対応する反射窓15を通って対応する測定部12aに集光されてプリズム6、レンズ5、および偏光子4を通過して集光ファイバ7a、7aに到達する。
【0022】
測定部12aは、受光あるいは集光した作用光を分光器9の通過スリット8へと導く2つの受光/集光ファイバ7a、7aを有する。通過スリット8を介して分光処理部9に進入する測定部12aの集光ファイバ7a、7aに代えて、より良い効率的な光透過のために、レンズを集光ファイバ7a、7aとスリット8との間に設けても良い。こうしたレンズは例えば円筒形に構成される。しかし、本発明に従い代わりの形状や他の構成を用いてもよい。
【0023】
図14に示し、また、図14に関して後に説明するように、独立したファイバ3a〜3nは、例えば、100μmの小さな直径を有し、それによりファイバ束3の直径は1mnと小さくてもよい。本例では、1本のファイバの直径は、同じく所望の強度の様々な窓から発光される光を生成する光源1から発光される光を受光するのに十分な大きさとする。ファイバ束3の十分に小さなサイズの各光ファイバ3a〜3nを維持するために、独立した各ファイバ端は先細りの形状を有してもよく、光源に近い端面のコアの領域は、各測定部12a〜12nに近いもう一方の端面よりも大きい。
【0024】
図3は、測定部12aの例示の構成を示す。他の測定部12b〜12nは同様の光学構成を有してもよい。図3を参照すると、測定部12aは、光ファイバ3と、集光ファイバ7a、7aと、直線偏光子41、42と、レンズ5と、プリズム6と、測定窓15とを含む。
【0025】
図3の測定部の動作において、光源1(図1および図2に示す)から発光された光は、光ファイバ3a内を進み、直線偏光子4を通過する。偏光子4は、2つの直線偏光子41および42から成る。直線偏光子41は水平に偏光する配向を有し、直線偏光子42は直線偏光子41による直線偏光に対し垂直に偏光する配向を有してもよい。透過された直線偏光ビーム301は、直線偏光子41を通過してレンズ5に入射する。レンズ5の形状により、光ビーム301はプリズム6で屈折する前に平行にレンズを出る。そして、その光は、プリズム表面21に反射して測定窓15に伝わり、対象組織粘膜17を照射する。プリズム表面21は、好ましい反射率を得るために、銀、アルミニウム、または他の材料で蒸着コーティングされてもよい。
【0026】
測定窓15が対象組織粘膜17に接触している場合、透過光は組織粘膜17と互いに作用する。作用光302および303の一部は、プリズム6に再入射し、プリズム表面21で屈折してレンズ5を通る。作用光302および303は、レンズ5を通過して偏光子へ入り、直線偏光子41および直線偏光子42を通過する。光302および303は、各偏光子41および42を通過した後、光がどちらの直線偏光子を通過したかに応じてそれぞれ集光ファイバ7a、7aに入射する。
【0027】
このレンズ、プリズム、および偏光子の構成により、組織粘膜17と特定の角度で相互に作用する光のみが集光部や集光ファイバ7a、7aとに入射する。より詳細には、透過光と反射光の両方が直線偏光子41を通過するので、集光部や集光ファイバ7aに入射する光は透過光と同じ向きに偏光される。一方、集光部や集光ファイバ7aに入射する光は、直線偏光子41に対して垂直の配向を有する偏光方向の直線偏光子42を通過するので、透過光に対して常に垂直となる。
【0028】
図4は、図3の測定部12aの偏光子、レンズ、およびプリズムの組み合わせの別の実施形態を示す。図4では、図3のレンズ5およびプリズム6が統合されて一つのレンズプリズム部19となる。このように2つの素子を統合することにより、レンズとプリズムの個々を組み合わせた場合よりも面の数が減る。これにより、面反射により生成される迷光の量が減少し、よって、受光ファイバに到達する迷光を減少させることができる。レンズとプリズムを1つに組み合わせることで得られる別の利点は、必要となる構成部の数が減り、製造および組み立てのコストを減らせることで実現される。別の実施形態では、レンズ自体の同じ効果を得るために、プリズムの平坦な反射面21が球面または楕円面であっても良く、これにより、更に構成部の数と製造コストが低減できる。
【0029】
動作中、図4の測定部は、図3についての説明と同様に作動する。光源1から発光された光は光ファイバ3a内を進み、直線偏光子41を通過する。直線偏光子41は水平に偏光する配向を有し、直線偏光子42は偏光子41による直線偏光に対して垂直に偏光する配向を有してもよい。透過直線偏光ビーム301は直線偏光子41を通過し、レンズプリズム部19に入射する。レンズプリズム部19のレンズ部分の形状により、光ビーム301は、レンズプリズム部19の表面21により屈折する前に互いに平行になるように偏光される。光は、表面21で反射され、測定窓15を通って対象組織粘膜17を照射する。プリズム表面21は、好ましい反射率を得るために、例えば、銀、アルミニウム、または他の材料で蒸着コーティングされてもよい。
【0030】
測定窓15が対象組織粘膜17に接触している場合、透過光は組織粘膜17と互いに作用する。作用光302および303の一部は、レンズプリズム部19に再入射し、表面21で屈折してレンズプリズム部19のレンズに戻る。光302および303は、レンズプリズム部19を通過して直線偏光子41または直線偏光子42へ入る。直線偏光子41または直線偏光子42を通過した後、光は集光ファイバ7aまたは集光ファイバ7aに適宜入射する。
【0031】
このレンズプリズム部19および偏光子41、42の構成により、組織粘膜17と特定の角度で互いに作用する光のみが集光部や集光ファイバ7a、7aに入射する。より詳細には、透過光と反射光の両方が直線偏光子41を通過するので、集光ファイバ7aに入射する光は、透過光と同じ向きに偏光される。一方、集光ファイバ7aに入射する光は、直線偏光子41に対して垂直の配向を有する偏光方向の直線偏光子42を通過するので、透過光に対して常に垂直となる。
【0032】
図5は、図2〜4の直線偏光子4の例示の構成を示す。図5は、図2〜図4の直線偏光子41、42がガラス基板51からなり、ポリマー材料52が第1の側面に接着されアルミワイヤが反対の第2の側面53に蒸着してもよいことを示している。偏光面、つまり、ポリマー側またはアルミワイヤ側は受光ファイバ面に好ましく接着されてもよい。偏光面の耐熱性を理由に、偏光面はアルミワイヤ、例えば、ニュージャージー州、バーリントンのEdmunds Optics社製のアルミワイヤグリッド偏光ファイバから形成されるのが好ましい。
【0033】
本発明では、独立した測定部により受光される作用光の検出に基づいて計算が行われる。図6は、例示の分光器9の模式図を示す。図6では、分光器9は分光計620と、データ前処理部621と、血液量試算部622(または血液量計算部)と、データ検証部623と、電源624と、オプションディスプレイやインジケータ625と、データコンパレータ626とを備える。分光計620は、集光ファイバ7a、7a〜集光ファイバ7n、7nからの情報を受信する。
【0034】
動作中、図6の分光器9の分光計620が受信したデータは、データ前処理部621に与えられる。データ前処理部621は、例えば、以下の式(1)に表されるようなホワイト補正などのデータ補正アルゴリズムを実行する。
【数1】

【0035】
式(1)において、式(1)の分子および分母で使われるΠと⊥はそれぞれ水平偏光スペクトルと垂直偏光スペクトルを表す。式(1)では、λは波長を表す。ΔI(λ)は、測定された差分偏光スペクトルを示す。ΔI(λ)は、標準白色板を用いて測定されるスペクトルであり、式(1)の分母に示すように、白色水平偏光スペクトルIWΠ(λ)と白色垂直偏光スペクトルIW⊥(λ)とを合計することにより算出される。式(1)の分子では、水平偏光スペクトルIΠ(λ)と垂直偏光スペクトルI(λ)との差分が算出され、その差分は、ΔI(λ)を表す信号である。
【0036】
データ前処理部621が得た結果に基づいて、血液量試算部622は、例えば、本明細書に援用される、M. P. Siegel et al, Assessment of blood supply in superficial tissue by polarization-gated elastic light-scattering spectroscopy, Applied Optics, Vol. 45, Issue 2, 335-342 (2006) に見られる以下の式(2)を用いて血液量を算出する。
【数2】

【0037】
血液量試算部622は、式(2)などのモデル式を用いて血液量を算出し、対応する血液量値をオプションディスプレイ625に与える。また、血液量試算部622は、収集したデータ全体の確認として血液量値をデータ検証部623に与えても良い。更に、血液量試算部622は、様々な測定部12a〜12nからの結果をコンパレータ626に与えることで測定の有効性を判断しかつ多数の測定部12a〜12nに基づく検出の精度を向上させてもよい。特に、コンパレータ626は、測定部12a〜12nそれぞれの、組織に作用した光を表す信号を比較し、少なくとも1つの比較信号を生成する。そして、コンパレータ626に接続される血液量算出部622は、照射された組織内の血液量を表す情報を比較信号に基づいて算出する。
【0038】
複数の測定部を有する本発明にかかる例示の内視鏡の様々な構成を図7〜13に示す。より詳細には、図7は、複数の測定部を有する内視鏡先端71を示す。内視鏡先端71は通常凹形状であり、その内視鏡先端面に沿って配置される複数の測定部72を有する。動作中、内視鏡先端71を生体組織に押し込むことにより、組織は、複数の測定部72に引き込まれる、あるいは、吸引されて複数の測定部に接触する。凹面に多数の測定部を配置することにより、1つ以上の測定部による接触が保証される。複数の測定部との接触により、1つの測定部を有するプローブに比べより正確な読み取りが行われやすくなる。また、複数の測定部72から得られるデータを比較することにより、血液量検出の精度が向上する。図8の構成では、複数の測定部84は、従来の可撓内視鏡8と共に用いられる。内視鏡8は、硬質の先端81と、接続部82と、屈曲部83と、本発明にかかる測定部84とを有する。可撓内視鏡の挿入部の外円周部に測定部84を配置することにより、装置を挿入し取り外す際に、検出窓が、有効に、より組織粘膜に接触しやすくなる。
【0039】
図9は、図8に示す発明の構成の変形例を示す。測定部184の第2の輪は、接続部82の円周部に縦方向に配置される。可撓内視鏡の円周部の測定部184の第2の輪を利用して、ユーザは、内視鏡の縦方向に沿った二つの異なる箇所での測定結果を得ることができる。生体組織の二つの異なる領域からのデータを分析することにより、オペレータは、2つの測定領域間の差異を利用して異常病変部への近似をより正確に判断することができる。
【0040】
図10は、図8および図9に開示の構成の別の実施形態を示す。図10に見られるように、測定部184は、可撓内視鏡の挿入部の円周部に略螺旋状に配置されてもよい。このような配置により、複数の検出窓が対応する範囲は著しく増加する。
【0041】
図11は、本発明の一実施形態を示し、内視鏡の接続部が糸状または螺旋状の凸部112を有する。この実施形態では、複数の測定部111が螺旋状の凸部112の外円周部に配置される。この構成の動作では、挿入や抽出の際に挿入部が回転されるにつれて組織粘膜の同一領域に複数の測定部111が順番に接触しやすくなる。
【0042】
図12は、内部に測定部123が設けられ、シースで覆われた内視鏡122を示す。シース121は、本来、筒状であり、その内部に、例えば、従来の内視鏡などの内視鏡122が挿入される。複数の測定部123がシース121の外周に沿って配置されており、生体組織粘膜124に接触する。この種のシースの構成により、ユーザは、従来の内視鏡を用いると同時に、異常組織へ内視鏡を導くための血液量検出方法を好適に利用することができる。シース121は、糸状の突出部を有して構成することができ、これに応じて複数の測定部123は糸状の周部に沿って螺旋状に構成してもよいと当業者に理解されるだろう。
【0043】
図13は、シース131と、内視鏡132と、内部に複数の測定部134を備えるバルーン133とを有する実施形態を示す。シース131は、通常、空洞管であり、その内部に、例えば、内視鏡132が通される。バルーン133は、シース131に取付け、あるいは、シース131と一体に形成され、空気または水圧により膨張する。シース131を設置する際、バルーン133が膨張して対象組織粘膜135に接触する。バルーン133の膨張は、複数の測定部134と組織粘膜135との接触を確実にする。更に、バルーン133の膨張に基づく血液検出プロセスを開始するためにセンサ136を用いても良い。当業者に理解されるように、センサ136はシース131またはバルーン133の外部と内部どちらに設けてもよい。例えば、センサは、バルーン136の表面またはシース131内部に位置してもよく、バルーン133が膨張して生体組織135に接触する際にバルーン133が与える背圧を検知してもよい。
【0044】
別の実施形態では、各自一組の測定部134を有する2つ以上のバルーンが用いられてもよい。複数のバルーン133を用いることで、複数の測定部134をシース131に沿って広げることができる。このように、血液量検知データが分析されて注目領域に最も近いバルーン133を判断する。こうした情報により、疑わしい注目領域を孤立させ、また検出しやすくなる。本発明の別の実施形態では、バルーン133と組織粘膜135との接触を検知すると血液データの収集が開始される。バルーン膨張機構内で背圧の検知やバルーン133内に位置する表面センサ136により、このように接触が検知されてもよい。
【0045】
上記の記載および図面は本発明の好適な実施形態を示すが、本発明の思想と範囲から逸脱しなければ様々な変更や変形が可能だと考えることができる。例えば、本明細書に記載の改良型の方法および装置は、内視鏡の一部として、あるいは、内視鏡と併せて説明されるが、本発明は、独立型のプローブや他の医療装置とともに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の体腔内に挿入されるプローブ(8;122;132)であり、複数の照射部(3a〜3n)と複数の集光部(7a〜7n)とを有するプローブ(8;122;132)を備え、
前記照射部(3a〜3n)は、前記生体内の組織領域を照射し、
前記集光部(7a〜7n)は、照射された前記組織領域からの作用光を受光し、血液量測定を示す信号を生成する、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記集光部(7a〜7n)に接続され、生成された前記信号に基づき、照射された前記組織領域内の血液量を判断する処理部(9)を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プローブ(8;122;132)の案内に有用となるように、判断された前記血液量に基づくパラメータを示す、前記処理部(9)に接続されるインジケータ(625)を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プローブ(8;122;132)は、円筒形状であり、その外面に前記照射部(3a〜3n)と、前記集光部(7a〜7n)と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
円筒形状の前記プローブ(8)は、隆起した螺旋状部(112)を有し、その上に前記照射部(3a〜3n)と前記集光部(7a〜7n)とを備えることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記隆起した螺旋部(112)は、前記生体の対象とする前記体腔を形成する前記組織に接触するのに十分な大きさであることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記処理部(9)は、
前記複数の集光部(7a〜7n)のそれぞれの、前記組織と互いに作用する光を示す信号を比較し、少なくとも1つの比較信号を生成するコンパレータ(626)と、
前記コンパレータ(626)に接続され、前記比較信号に基づいて照射された前記組織内の前記血液量を示す情報を算出する処理部(622)と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記照射部(3a〜3n)は、平行光を発光することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記照射部(3a〜3n)は、偏光を発光することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記集光部(7a〜7n)に近接する少なくとも1つの偏光子(4)を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
2つの偏光子(41、42)が、前記集光部(7a〜7n)に近接して位置し、前記2つの偏光子(41、42)は互いに略直交する偏光を有することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
内視鏡を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記照射部(3a〜3n)および前記集光部(7a〜7n)は、前記内視鏡の遠位端(71)に近接して配置されることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
生体組織の特性を判断するための装置であり、
生体の体腔内に挿入されるプローブ(8;122;132)であり、前記生体内の前記組織の各部を照らすために前記プローブ(8;122;132)に設けられる複数の照射部(3a〜3n)と、前記組織の各部からの作用光を受光する前記プローブ(8;122;132)に設けられる複数の集光部(7a〜7n)と、を備えるプローブ(8;122;132)と、
前記プローブ(8;122;132)と、前記生体の前記体腔を形成する前記組織との接触を容易にする接触部と、
前記プローブ(8;122;132)の案内に有用となるように、前記照射された組織内の血液量を示すために前記集光部(7a〜7n)に接続される処理部(9)と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項15】
前記照射部(3a〜3n)および前記集光部(7a〜7n)は、前記接触部の表面に配置、または、前記接触部と並べられることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記接触部は、前記プローブ(8;122;132)を軸方向に囲むことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記接触部は膨張可能であることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記接触部からの受信信号に応じ、前記照射部(3a〜3n)および前記集光部(7a〜7n)のうち少なくとも1つに電力が供給されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項19】
内視鏡と共に使用される装置であって、
生体の体腔に挿入され、内円周を有する内面と外円周を有する外面とを有するシース(121;131)と、
前記外面に位置し、前記生体内の組織領域を照射する複数の照射部(3a〜3n)と、
前記外面に位置し、照射された各組織領域からの作用光を受光し、血液量測定を示す信号を生成する複数の集光部(7a〜7n)と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項20】
前記集光部(7a〜7n)に接続され、生成された前記信号に基づいて前記照射された組織領域内の血液量を判断する処理部(9)を更に備えることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記プローブ(8;122;132)の案内に有用となるように、前記判断された血液量に基づくパラメータを示す、前記処理部(9)に接続されるインジケータ(625)を更に含むことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記シースの前記外円周は、前記生体組織の前記体腔よりも大きいことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記シースと前記生体の前記体腔を形成する組織との接触を保証する接触部を更に備えることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記接触部からの受信信号に応じ、前記照射部(3a〜3n)および前記集光部(7a〜7n)のうち少なくとも1つに電力が供給されることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項25】
前記照射部(3a〜3n)および前記集光部(7a〜7n)は、前記接触部の表面に配置、または、前記接触部の表面と並べられることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記接触部は、前記シースを軸方向に囲むことを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記接触部は膨張可能であることを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記シースは、前記シースの前記外円周に隆起した螺旋状部(112)を有することを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項29】
前記照射部(3a〜3n)および前記集光部(7a〜7n)は、前記隆起した螺旋状部(112)に位置することを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
生体の体腔内で内視鏡を導く方法であり、
生体の体腔内にプローブ(8;122;132)を挿入し、
前記プローブ(8;122;132)を、前記体腔を形成する組織の表面に接触させ、
接触された前記組織の表面上の部分を照射し、
照射され、接触された前記組織の表面からの作用光を受光し、
前記プローブ(8;122;132)の案内に有用となるように、受光した前記作用光を処理して照射された前記組織の血液量を示すパラメータを決定する、
ことを含む方法。
【請求項31】
前記接触は、前記プローブ(8;122;132)を囲む膨張可能なカフを膨張させることで実現されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
決定された前記パラメータに基づいて前記生体内の前記プローブ(8;122;132)を再度配置することを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記プローブ(8;122;132)は前記内視鏡内部に設けられ、決定された前記パラメータは前記プローブ(8;122;132)を導くために使用されることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記接触は、前記プローブ(8;122;132)上に設けられた複数の検出センサのうち少なくとも1つを用いて前記組織に接触させることを更に含むことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項35】
生体の体腔内で血液量検出部を案内する方法であり、
生体の体腔内にシースを挿入し、
前記シースを、前記体腔を形成する組織の表面に接触させ、
接触された前記組織の表面上の部分を照射し、
照射され、接触された前記組織の表面からの作用光を受光し、
前記シースの案内に有用となるように、受信した前記作用光を処理して照射された前記組織の血液量を表すパラメータを決定する、
ことを含む方法。
【請求項36】
前記シースの案内に有用となるように前記シースに内視鏡を挿入することを更に含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−521672(P2011−521672A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547769(P2010−547769)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国際出願番号】PCT/JP2009/060570
【国際公開番号】WO2009/148187
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】