説明

異方性導電膜及びその製造方法、並びに、接合体及びその製造方法

【課題】電子部品に対する接着強度を向上して、高い導通信頼性を得ることができる異方性導電膜及びその製造方法、並びに、接合体及びその製造方法の提供。
【解決手段】単層配列された導電性粒子を含む第1の層と、前記第1の層の一方の表面側に配置された第2の層と、前記第1の層の他方の表面側に配置された第3の層とを有し、前記単層配列された導電性粒子の一部が、前記第2の層及び前記第3の層のいずれかの層の内部に存在する異方性導電膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電膜及びその製造方法、並びに、接合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品を接続する手段として、導電性粒子が分散された熱硬化性樹脂を剥離膜に塗布したテープ状の接続材料(例えば、異方性導電膜(ACF;Anisotropic Conductive Film))が用いられている。
【0003】
この異方性導電膜は、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)やICチップの端子と、LCDパネルのガラス基板上に形成されたITO(Indium Tin Oxide)電極とを接続する場合を始めとして、種々の端子同士を接着すると共に電気的に接続する場合に用いられている。
【0004】
前記異方性導電膜において、前記導電性粒子は、通常、ランダムに配置されている。よって、異方性導電膜を圧着する際において、前記導電性粒子が流動することにより、導電性粒子同士が凝集してショートなどの不具合が発生する場合がある。
そこで、前記異方性導電膜として、導電性粒子を樹脂と共に噴霧して導電性粒子を単層配列した膜が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、前記異方性導電膜は、電子部品に対する接着強度、導電性粒子の捕捉率、及び導通信頼性が十分でないという問題があった。
【0005】
また、前記異方性導電膜として、導電性粒子を分散した異方導電接着剤層と絶縁性接着剤層とが積層された膜が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この膜は、依然として、電子部品に対する接着強度、導電性粒子の捕捉率、及び導通信頼性が十分でないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開09/037964号パンフレット
【特許文献2】特開2009−170898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、電子部品に対する接着強度を向上して、高い導通信頼性を得ることができる異方性導電膜及びその製造方法、並びに、接合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 単層配列された導電性粒子を含む第1の層と、前記第1の層の一方の表面側に配置された第2の層と、前記第1の層の他方の表面側に配置された第3の層とを有し、前記単層配列された導電性粒子の一部が、前記第2の層及び前記第3の層のいずれかの層の内部に存在することを特徴とする異方性導電膜である。
<2> 第1の層が樹脂を含み、該樹脂の100℃での溶融粘度が5.0×10Pa・s〜2.0×10Pa・sであり、第2の層及び第3の層が樹脂を含み、該樹脂の100℃での溶融粘度が5.0×10Pa・s〜1.0×10Pa・sである前記<1>に記載の異方性導電膜である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の異方性導電膜を介して、電子部品及び基板から選択される2種以上が、電気的に接合されてなることを特徴とする接合体である。
<4> 電子部品の接合端子と基板の接合端子とが、電気的に接合されてなる前記<3>に記載の接合体である。
<5> 導電性粒子の一部が、第2の層及び第3の層のうち基板側に配置された層の内部に存在する前記<4>に記載の接合体である。
<6> 一の噴霧手段を用いて噴出され、静電電位付与手段により静電電位が付与された導電性粒子と、他の噴霧手段を用いて噴出された樹脂粒子とを、被処理面上に同時に噴霧することにより形成された第1の層中に、前記導電性粒子を単層配列させる工程を含むことを特徴とする異方性導電膜の製造方法である。
<7> 樹脂粒子が、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種の絶縁樹脂からなる前記<6>に記載の異方性導電膜の製造方法である。
<8> 前記<4>から<5>のいずれかに記載の接合体の製造方法であって、基板の接合端子上に前記<1>から<2>のいずれかに記載の異方性導電膜及び電子部品をこの順で配置する工程と、前記電子部品を加熱しながら押圧する工程と、前記基板の接合端子と前記電子部品の接合端子とを前記導電性粒子を介して接続させる工程とを含む接合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、電子部品に対する接着強度を向上して、高い導通信頼性を得ることができる異方性導電膜及びその製造方法、並びに、接合体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、噴霧手段の一例としての2流体ノズルの概略説明図である。
【図2】図2は、本発明の異方性導電膜の製造方法の一例を示す概略説明図である。
【図3】図3は、本発明の異方性導電膜の圧着前の状態を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の異方性導電膜の圧着後の状態を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の接合体の製造方法の一例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(異方性導電膜)
本発明の異方性導電膜は、少なくとも、第1の層と、第2の層と、第3の層とを有してなり、さらに必要に応じて、その他の層を有してなる。
【0012】
<第1の層>
前記第1の層は、単層配列された導電性粒子を含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種の絶縁性樹脂により構成されていることが好ましい。
【0013】
−導電性粒子−
前記導電性粒子としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、半田、ニッケル、金等の金属粒子;金属(ニッケル、金、アルミニウム、銅等)で被覆(メッキ)された、樹脂粒子、ガラス粒子あるいはセラミック粒子;などが挙げられる。
前記導電性粒子の粒径としては、第1の層の厚みより大きい限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、体積平均粒径で、2μm〜10μmが好ましく、2μm〜4μmがより好ましい。
前記体積平均粒径が、2μm未満であると、分級処理及び入手が困難であり、10μmを超えると、接合端子のファインピッチ化に伴う、該接合端子の狭小化への対応が困難となることがある。
前記導電性粒子の比重としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1.5〜3.0が好ましい。
前記比重が、1.5未満であると、前記被処理面上での前記導電性粒子の位置安定性を確保することが困難になることがあり、3.0を超えると、前記導電性粒子を単層配列させるためには、より高い静電電位の付与が必要となることがある。
【0014】
前記単層配列された前記導電性粒子の配列間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、隣接する導電性粒子同士の中心間距離の10点平均が、1μm〜30μmが好ましく、1μm〜15μmがより好ましく、1μm〜10μmが特に好ましい。これらの場合、接合端子のファインピッチ化に伴う、該接合端子の面積の狭小化に充分対応可能な点で、有利である。
【0015】
−エポキシ樹脂−
前記エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
−アクリル樹脂−
前記アクリル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記アクリレートをメタクリレートにしたものが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記第1の層における樹脂の100℃での溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5.0×10Pa・s〜2.0×10Pa・sが好ましく、1.0×10Pa・s〜1.5×10Pa・sがより好ましく、5.0×10Pa・s〜1.0×10Pa・sが特に好ましい。
前記第1の層における樹脂の100℃での溶融粘度が、5.0×10Pa・s未満であると、導電性粒子が流動し過ぎることがあり、2.0×10Pa・sを超えると、フィルムが硬過ぎて、切断され易くなることがある。一方、前記第1の層における樹脂の100℃での溶融粘度が前記特に好ましい範囲内であると、導電性粒子の位置保持性の点で有利である。
【0018】
−溶融粘度の測定方法−
前記溶融粘度は、例えば、パラレルプレート用いたE型粘度計により測定することができる。
【0019】
前記溶融粘度のコントロールは、前記第1の層における樹脂の組成比を調整することにより行われる。例えば、前記第1の層における樹脂として、エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の組成物を用いた場合、エポキシ樹脂の比率を大きくすると、溶融粘度は低くなり、エポキシ樹脂の比率を小さくすると、溶融粘度は高くなる。
また、フェノキシ樹脂の種類を適宜選択し、フェノキシ樹脂のガラス転移点の範囲を制御することによっても前記溶融粘度をコントロールすることができる。
【0020】
前記第1の層の厚みとしては、前記導電性粒子を前記被処理面上に固定することができ、前記導電性粒子の最大粒径よりも小さい限り、特に制限はなく、前記導電性粒子の粒径に応じて、適宜選択することができるが、2μm〜20μmが好ましい。
前記厚みが、2μm未満であると、前記導電性粒子の固定化が困難になることがあり、20μmを超えると、製造効率が低下することがある。
【0021】
<第2の層>
前記第2の層は、前記第1の層の一方の表面側に配置されている限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記エポキシ樹脂及び前記アクリル樹脂から選択される少なくとも1種の絶縁性樹脂により構成されていることが好ましい。
【0022】
前記第2の層における樹脂の100℃での溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5.0×10Pa・s〜1.0×10Pa・sが好ましく、5.0×10Pa・s〜5.0×10Pa・sがより好ましく、8.0×10Pa・s〜3.0×10Pa・sが特に好ましい。
前記第2の層における樹脂の100℃での溶融粘度が、5.0×10Pa・s未満であると、接着強度が下がることがあり、1.0×10Pa・sを超えると、仮貼り性が低下することがある。一方、前記第2の層における樹脂の100℃での溶融粘度が前記特に好ましい範囲内であると、仮貼り性と接着強度を向上できる点で有利である。
【0023】
前記第2の層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2μm〜30μmが好ましく、2μm〜20μmがより好ましく、2μm〜10μmが特に好ましい。
前記第2の層の厚みが、2μm未満であると、接着強度が低下することがあり、30μmを超えると、圧着時に、接着剤が圧着部よりはみ出すことがある。一方、前記第2の層の厚みが前記特に好ましい範囲内であると、良好な接着強度を確保する点で有利である。
【0024】
前記溶融粘度のコントロールは、前記第2の層における樹脂の組成比を調整することにより行われる。例えば、前記第2の層における樹脂として、エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の組成物を用いた場合、エポキシ樹脂の比率を大きくすると、溶融粘度は低くなり、エポキシ樹脂の比率を小さくすると、溶融粘度は高くなる。
また、フェノキシ樹脂の種類を適宜選択し、フェノキシ樹脂のガラス転移点の範囲を制御することによっても前記溶融粘度をコントロールすることができる。
【0025】
<第3の層>
前記第3の層は、前記第1の層の他方の表面側に配置されている限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記エポキシ樹脂及び前記アクリル樹脂から選択される少なくとも1種の絶縁性樹脂により構成されることが好ましい。
【0026】
前記第3の層における樹脂の100℃での溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5.0×10Pa・s〜1.0×10Pa・sが好ましく、5.0×10Pa・s〜5.0×10Pa・sがより好ましく、8.0×10Pa・s〜3.0×10Pa・sが特に好ましい。
前記第3の層における樹脂の100℃での溶融粘度が、5.0×10Pa・s未満であると、接着強度が低下することがあり、1.0×10Pa・sを超えると、仮貼り性が低下することがある。一方、前記第3の層における樹脂の100℃での溶融粘度が前記特に好ましい範囲内であると、仮貼り性と接着強度を向上できる点で有利である。
【0027】
前記第3の層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2μm〜30μmが好ましく、2μm〜20μmがより好ましく、2μm〜10μmが特に好ましい。
前記第3の層の厚みが、2μm未満であると、接着強度が低下することがあり、30μmを超えると、圧着時に、接着剤が圧着部よりはみ出すことがある。一方、前記第3の層の厚みが前記特に好ましい範囲内であると、良好な接着強度を確保する点で有利である。
【0028】
単層配列された導電性粒子の一部が、前記導電性粒子を固定する第1の層から突出し、第2の層及び第3の層のいずれかの層の内部に存在する。
前記導電性粒子の第1の層からの突出高さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜8μmが好ましく、0.5μm〜6μmがより好ましく、1μm〜4μmが特に好ましい。
前記突出高さが、0.1μm未満であると、導通特性が不充分となることがあり、8μmを超えると、導電性粒子の位置安定性が低下し、保持できなくなることがある。一方、前記突出高さが前記特に好ましい範囲内であると、導通特性と導電性粒子の位置保持性の点で有利である。
【0029】
前記溶融粘度のコントロールは、前記第3の層における樹脂の組成比を調整することにより行われる。例えば、前記第3の層における樹脂として、エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の組成物を用いた場合、エポキシ樹脂の比率を大きくすると、溶融粘度は低くなり、エポキシ樹脂の比率を小さくすると、溶融粘度は高くなる。
また、フェノキシ樹脂の種類を適宜選択し、フェノキシ樹脂のガラス転移点の範囲を制御することによっても前記溶融粘度をコントロールすることができる。
【0030】
図3に示すように、本発明の異方性導電膜60は、所定間隔で単層配列された導電性微粒子64を含むACF層62、ACF層62の一方の面に形成されたNCF層61と、ACF層62の他方の面に形成されたNCF層63とを有し、導電性微粒子64の一部がNCF層61に存在している(めり込んでいる)。
異方性導電膜60における導電性微粒子64は、圧着後、図4に示すように、電子部品の接合端子(ICチップ70のバンプ70a)と基板の接合端子(ガラス基板50の電極50a)との間に介装される。
【0031】
(異方性導電膜の製造方法)
本発明の前記異方性導電膜の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来の異方性導電膜の一般的な製造方法では、樹脂中に導電性粒子が分散されてなる樹脂組成物を塗布することにより製造するので、10μm以下の厚みで異方性導電膜を連続生産するのが困難であり、塗布ヘッド部分に発生した増粘部分、粒子溜まりなどの影響によるスジ、ムラ等の不良が発生し易いという問題がある。
これに対し、以下に説明する方法により異方性導電膜を製造すると、これらの不良の発生が抑制される点で、有利である。即ち、本発明の前記異方性導電膜の製造方法としては、一の噴霧手段を用いて噴出され、静電電位付与手段により静電電位が付与された導電性粒子と、他の噴霧手段を用いて噴出された樹脂粒子とを、被処理面上に同時に噴霧することにより、前記樹脂粒子で形成された第1の層中に、前記導電性粒子を単層配列させる第1の層形成工程を含んでいるのが好ましく、第2の層形成工程、第3の層形成工程、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
【0032】
<第1の層形成工程>
−導電性粒子−
前記導電性粒子は、溶剤に溶解乃至分散させることにより調製したスラリー溶液の状態で、前記噴霧手段を用いて噴出させるのが好ましい。
前記スラリー溶液における前記導電性粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20質量%〜40質量%が好ましい。
前記含有量が、20質量%未満であると、噴霧時間が長くなり、製造効率が低下することがあり、40質量%を超えると、前記導電性粒子間で凝集が発生し易くなることがある。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、エタノールなどが好適に挙げられる。
【0033】
−樹脂粒子−
前記樹脂粒子は、樹脂を溶剤に溶解させて調製したスラリー溶液を、前記噴霧手段を用いてミスト状に噴出させることにより形成される。
また、前記樹脂粒子が、前記噴霧手段により前記被処理面に対して噴霧されることにより、堆積されて樹脂膜が形成される。
【0034】
前記樹脂粒子の粒径としては、特に制限はなく、前記導電性粒子の粒径に応じて適宜選択することができるが、体積平均粒径で4μm〜6μmが好ましい。
前記体積平均粒径が、4μm未満あるいは6μmを超えると、前記導電性粒子の配列に乱れが生じることがある。
【0035】
前記スラリー溶液における前記樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜30質量%が好ましい。
前記含有量が、10質量%未満であると、噴霧時間が長くなり、製造効率が低下することがあり、30質量%を超えると、ミストを噴霧することが困難になることがある。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、エタノールなどが好適に挙げられる。
【0036】
前記樹脂粒子は、前記エポキシ樹脂及び前記アクリル樹脂から選択される少なくとも1種の絶縁性樹脂からなるのが好ましい。
【0037】
−噴霧手段−
前記噴霧手段は、前記導電性粒子及び前記樹脂粒子を、前記被処理面に対して噴霧する機能を有する。
前記噴霧手段は、前記一の噴霧手段と、前記他の噴霧手段との少なくとも2つが必要であり、これら別々の噴霧手段により、前記導電性粒子と前記樹脂粒子とを、前記被処理面に対して同時に噴霧することが必要である。これらの粒子を同時に噴霧しない場合、例えば、予め形成した樹脂膜上に、前記導電性粒子のみを噴霧する場合、後述する静電電位付与手段により前記導電性粒子に付与された静電電位を有していても、前記樹脂膜が存在することから、電気的な制御が不能となり、前記導電性粒子を単層配列させることができないことがある。
前記一の噴霧手段及び前記他の噴霧手段の形状、構造、大きさなどは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
前記噴霧手段における、前記導電性粒子の噴出口と、前記被処理面との距離としては、特に制限はなく、前記噴霧手段の前記導電性粒子の噴出速度と、前記導電性粒子の前記被処理面への到達速度との関係に応じて、適宜選択することができる。
前記被処理面への前記導電性粒子の到達速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.3m/min以下が好ましい。
前記到達速度が、0.3m/minを超えると、任意の場所に前記導電性粒子の配列を形成するのが困難になることがある。
【0039】
前記噴霧手段としては、前記導電性粒子及び前記樹脂粒子を噴霧することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ノズルを有しているのが好ましい。
前記ノズルとしては、その形状、構造、大きさ、径としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、前記ノズルの径としては、0.1mm〜1.0mmが好ましい。
前記ノズルの径が、0.1mm未満であると、噴霧し難くなることがあり、1.0mmを超えると、ミストの粒径制御が困難となることがある。
前記ノズルは、市販品であってもよいし、適宜作製したものであってもよく、前記市販品としては、例えば、図1に示す、二流体ノズル(「2流体スプレーノズル 1/4JAUCO」;スプレイイングシステムス(株)製)が挙げられる。
前記第2の層及び前記第3の層を形成する場合は、前記樹脂粒子のみを前記噴霧手段により噴霧する。
【0040】
−静電電位付与手段−
前記静電電位付与手段は、前記導電性粒子に静電電位を付与する機能を有する。
前記静電電位付与手段は、前記導電性粒子が前記噴霧手段を用いて噴出された直後に、前記導電性粒子に静電電位を付与するのが好ましく、例えば、前記静電電位付与手段を、前記噴霧手段における前記導電性粒子の噴出口に隣接配設し、かつ特定の電圧を印加することにより、前記導電性粒子を帯電させることができる。
【0041】
前記静電電位付与手段における印加電圧としては、特に制限はなく、前記導電性粒子の種類に応じて適宜選択することができる。
前記静電電位付与手段により静電電位が付与された前記導電性粒子における、該静電電位の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300V〜1,500Vが好ましい。
前記静電電位の大きさが、300V未満であると、前記導電性粒子が配列し難いことがあり、1,500Vを超えると、前記導電性粒子同士が反発し合い、配列構造を制御することができないことがある。
【0042】
前記静電電位付与手段としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、電荷印加装置(直流高圧電源、「PSD−200」;春日電機(株)製)などが挙げられる。
【0043】
−被処理面−
前記被処理面は、前記導電性粒子を単層配列させる対象であり、該被処理面としては、各種膜(例えば、樹脂膜)の表面などが挙げられる。
【0044】
以上の工程により、別々の前記噴霧手段を用いて噴出され、前記静電電位付与手段により静電電位が付与された前記導電性粒子と、前記樹脂粒子とが、前記被処理面上に同時に噴霧されて、前記樹脂粒子で形成された前記第1の層中に前記導電性粒子が単層配列される。
【0045】
ここで、本発明の前記異方性導電膜の製造方法における第1の層形成工程の一例を、図面を用いて説明する。
図2に示すように、一の噴霧手段10を用いて噴出された導電性粒子12と、他の噴霧手段20を用いて噴出された樹脂粒子22とを、被処理面40上に同時に噴霧する。このとき、一の噴霧手段10と被処理面40との間であって、一の噴霧手段10における導電性粒子12の噴出口に、静電電位付与手段30が隣接配置されており、導電性粒子12は、一の噴霧手段10を用いて噴出された直後、静電電位付与手段30により電圧が印加されて、静電電位が付与される。
このように、別々の噴霧手段(噴霧手段10及び噴霧手段20)を用いて噴出された導電性粒子12と、樹脂粒子22とが、同時に被処理面40上に噴霧されるので、導電性粒子12は、静電電位が損なわれることなく被処理面40上にて単層配列され、しかも導電性粒子12の位置安定性が確保された状態にて、樹脂粒子22が堆積されて樹脂膜(第1の層)24が形成される。その結果、樹脂膜(第1の層)24中であって、樹脂膜(第1の層)24の厚み方向における一方の面側に、導電性粒子12が、ミクロンオーダーの配列間隔で単層配列された第1の層が得られる。
【0046】
<第2の層形成工程>
前記第2の層形成工程は、前記第1の層の一方の表面側に第2の層を形成する工程である。
前記第2の層形成工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、
例えば、前記噴霧手段を用いて前記樹脂粒子を噴霧する噴霧方法、前記樹脂粒子が溶媒中に溶解した樹脂粒子溶液を塗布する塗布方法、などが挙げられる。
【0047】
<第3の層形成工程>
前記第3の層形成工程は、前記第1の層の他方の表面側に第3の層を形成する工程である。
前記第3の層形成工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、
例えば、前記噴霧手段を用いて前記樹脂粒子を噴霧する噴霧方法、前記樹脂粒子が溶媒中に溶解した樹脂粒子溶液を塗布する塗布方法、などが挙げられる。
【0048】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記異方性導電膜を加熱し、前記溶剤を乾燥させる工程などが挙げられる。
【0049】
本発明の異方性導電膜は、前記第1の層において、前記導電性粒子が単層配列しており、前記第1の層の両面に第2の層及び第3の層が形成されているので、電子部品等と基板との接続に用いると、接続の際に、前記導電性粒子の流動を抑制してショートの発生を防止すると共に、少ない粒子添加量で、高い粒子捕捉率を確保することができ、優れた導通信頼性が得られる。
このため、本発明の前記異方性導電膜は、各種電子部品と基板、基板同士などの接合に好適に使用することができ、例えば、ICタグ、ICカード、メモリーカード、フラットパネルディスプレイなどの製造に好適に使用することができる。
【0050】
本発明の異方性導電膜の製造方法によると、ミクロンオーダーの配列間隔で単層配列された前記導電性粒子を樹脂中に含有する第1の層を有する異方性導電膜を容易に製造することができる。
本発明の前記異方性導電膜の製造方法により得られた異方性導電膜における第1の層は、ミクロンオーダーの配列間隔で単層配列された導電性粒子を有するので、粒子の規則配列が要求される各種分野に好適に使用することができ、例えば、DNAチップにおけるDNA固定用導電性基材、MEMS(メムス;Micro Electro Mechanical Systems)の開発における導電性基材などにも好適に使用することができる。
【0051】
(接合体)
本発明の接合体は、本発明の前記異方性導電膜を介して、電子部品及び基板から選択される2種以上が、電気的に接合されてなる。即ち、前記電子部品における接合端子と、前記基板における接合端子との間、或いは前記基板同士における接合端子間に、前記導電性粒子が挟まれて潰されることにより、前記接合端子間の導通が図られている。
なお、本発明の前記異方性導電膜の詳細については、上述した通りである。
【0052】
前記電子部品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ICチップ、例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)における液晶画面制御用ICチップ、液晶パネルなどが挙げられる。
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ITOガラス基板、フレキシブル基板、リジッド基板、フレキシブルプリント基板などが挙げられる。
【0053】
前記基板は、導電性パターンを有してなるのが好ましい。
前記導電性パターンとしては、導電性を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その材質としては、金属が好適に挙げられ、パターン形状としては、ライン状のほか、目的に応じて各種模様を選択することができる。
【0054】
前記電子部品及び前記基板から選択される2種以上における接合端子の面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、電子機器の小型化及び高機能化に伴う接合端子のファインピッチ化の技術動向に対応可能な点で、600μm以上1,800μm未満が好ましく、600μm〜1,200μmがより好ましい。
【0055】
本発明の前記接合体は、本発明の前記異方性導電膜を用いているので、前記導電性粒子の粒子捕捉率が高く、優れた導通信頼性を有する。
【0056】
(接合体の製造方法)
本発明の接合体の製造方法は、少なくとも、配置工程と、押圧工程と、接続工程とを含み、さらに、必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
【0057】
<配置工程>
前記配置工程は、基板の接合端子上に、本発明の異方性導電膜及び電子部品をこの順で配置する工程である。
【0058】
<押圧工程>
前記押圧工程は、前記電子部品を加熱しながら押圧する工程である。
前記押圧工程における加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、120℃〜260℃が好ましく、130℃〜240℃がより好ましく、150℃〜220℃が特に好ましい。
前記加熱温度が、100℃未満であると、硬化反応が充分に進行せず硬化不良となることがあり、260℃を超えると、ICチップが押し込まれる前に接着剤が硬化するので導通不良が発生することがある。一方、前記加熱温度が前記特に好ましい範囲内であると、導通特性、接着特性の点で有利である。
前記押圧工程における押圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10MPa〜100MPaが好ましく、20MPa〜90MPaがより好ましく、30MPa〜80MPaが特に好ましい。
前記押圧力が、10MPa未満であると、導通不良が発生することがあり、100MPaを超えると、基板が破損することがある。一方、前記押圧力が前記特に好ましい範囲内であると、導通特性、接着特性の点で有利である。
【0059】
<接続工程>
前記接続工程は、前記基板の接合端子と前記電子部品の接合端子とを前記導電性粒子を介して接続させる工程である。
【0060】
本発明の接合体の製造方法を、図5を用いて説明する。
図5に示すように、接合体100は、ガラス基板50の接合端子上に、NCF層61、ACF層62及びNCF層63を有する異方性導電膜60と、電子部品としてのICチップ70とをこの順で配置し、ICチップ70を加熱しながら押圧し、ガラス基板50の接合端子50aとICチップ70接合端子70aとを導電性粒子64を介して接続させることにより製造される。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
(製造例1)
−異方性導電膜の作製−
前記導電性粒子としてのNi−Auメッキ樹脂粒子(「ミクロパール AU」;積水化学工業(株)製、粒径(体積平均粒径)9μm、以下、「金粒子」と称する。)9質量部に、前記溶剤としてのトルエンを加えて、導電性粒子の40質量%スラリー溶液を調製した。以下、このスラリー溶液を、「A液」と称する。
【0063】
次に、前記絶縁性樹脂としての液状エポキシ樹脂(「EP828」;ジャパンエポキシレジン(株)製)30質量部、フェノキシ樹脂(「PKHH」;インケム(株)製)30質量部、シランカップリング剤(「A−187」;日本ユニカー(株)製)1質量部、及びイミダゾール系潜在性硬化剤(「3941HP」;旭化成ケミカルズ社製)30質量部を混合して樹脂組成物を調製し、これに前記溶剤としてのトルエンを加えて、樹脂の10質量%トルエン溶液を調製した。以下、このトルエン溶液を、「B液」と称する。このB液に含まれる樹脂の100℃での溶融粘度をE型粘度計で測定したところ、1.0×10Pa・sであった。
【0064】
次に、前記絶縁性樹脂としての液状エポキシ樹脂(「EP828」;ジャパンエポキシレジン(株)製)30質量部、フェノキシ樹脂(「PKHC」;インケム(株)製)30質量部、シランカップリング剤(「A−187」;日本ユニカー(株)製)1質量部、及びイミダゾール系潜在性硬化剤(「3941HP」;旭化成ケミカルズ社製)30質量部を混合して樹脂組成物を調製し、これに前記溶剤としてのトルエンを加えて、樹脂の10質量%トルエン溶液を調製した。以下、このトルエン溶液を、「C液」と称する。このC液に含まれる樹脂の100℃での溶融粘度をE型粘度計で測定したところ、1.0×10Pa・sであった。
【0065】
噴霧対象として、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム(PET層)を用意した。
次いで、図1に示す二流体ノズル(「2流体スプレーノズル 1/4JAUCO」;スプレイイングシステムス(株)製、)を接続した噴霧装置を、導電性粒子噴霧用と、樹脂粒子噴霧用との2つ用意し、それぞれのノズルの噴出口とPET層表面との離間距離が、1mとなるように配置した。また、導電性粒子噴霧用の噴霧装置とPET層表面との間に、電荷印加装置(直流高圧電源、「PSD−200」;春日電機(株)製)を配置した。
【0066】
そして、噴霧装置を用いて、C液を、ノズル径0.6mm、噴霧時間0.5秒間、樹脂粒子のPET層への到達速度0.3m/minの条件で、ノズルから噴霧した。このとき、ノズルから噴出された、C液により形成された樹脂粒子が、PET層の表面上に噴霧されて堆積され、エポキシ樹脂からなる絶縁性接着層(NCF層)が形成された。前記NCF層の乾燥後の厚みは、4μmであった。
【0067】
次に、噴霧装置を用いて、A液及びB液を、ノズル径0.6mm、噴霧時間0.5秒間、金粒子及び樹脂粒子のPET層への到達速度0.3m/minの条件で、別々のノズルから噴霧した。このとき、ノズルから噴出されたA液中の金粒子に対して、前記電荷印加装置により、500Vの電圧を印加することにより、静電電位が付与されて、金粒子は、帯電(静電電位300V)した状態にて、前記NCF層の表面上に噴霧された。また、ノズルから噴出された、B液により形成された樹脂粒子が、前記NCF層の表面上に噴霧されて堆積された。その結果、前記NCF層の表面上に、エポキシ樹脂中に金粒子が単層配列されたエポキシ樹脂塗布層(ACF層)が形成された。前記ACF層の乾燥後の厚みは、6μmであった。
【0068】
さらに、噴霧装置を用いて、C液を、ノズル径0.6mm、噴霧時間0.5秒間、樹脂粒子のPET層への到達速度0.3m/minの条件で、ノズルから噴霧した。このとき、ノズルから噴出された、C液により形成された樹脂粒子が、前記ACF層の表面上に噴霧されて堆積され、エポキシ樹脂からなる絶縁性接着層(NCF層)が形成された。前記NCF層の後述する乾燥後の厚みは、4μmであった。
【0069】
得られた3層構造のエポキシ樹脂膜を、60℃、15分間の条件にて、オーブン中で加熱し、トルエンを乾燥させ、金粒子が単層配列したエポキシ樹脂膜(異方性導電膜)(厚み14μm)を得た。
【0070】
得られたエポキシ樹脂膜中の金粒子の存在位置を測定したところ、該エポキシ樹脂膜(異方性導電膜)とPET層との境界面と、金粒子の中心との距離の10点平均が、8.5μmであった。
また、金粒子の配列間隔を測定したところ、隣接する金粒子同士の中心間距離の10点平均が、10μmであった。
【0071】
(製造例2)
−異方性導電膜の作製−
製造例1において、前記樹脂のトルエン溶液(B液)の代わりに、下記のように調製した樹脂のトルエン溶液(D液)を用いてACF層を形成した以外は、製造例1と同様にして、製造例2の異方性導電膜を作製した。
−−樹脂のトルエン溶液(D液)の調製−−
前記絶縁性樹脂としての液状エポキシ樹脂(「EP828」;ジャパンエポキシレジン(株)製)40質量部、フェノキシ樹脂(「PKHC」;インケム(株)製)20質量部、シランカップリング剤(「A−187」;日本ユニカー(株)製)1質量部、及びイミダゾール系潜在性硬化剤(「3941HP」;旭化成ケミカルズ社製)30質量部を混合して樹脂組成物を調製し、これに前記溶剤としてのトルエンを加えて、樹脂の10質量%トルエン溶液を調製した。以下、このトルエン溶液を、「D液」と称する。このD液に含まれる樹脂の100℃での溶融粘度をE型粘度計で測定したところ、1.0×10Pa・sであった。
【0072】
(製造例3)
−異方性導電膜の作製−
製造例2において、前記樹脂のトルエン溶液(C液)の代わりに、下記のように調製した樹脂のトルエン溶液(E液)を用いてNCF層を形成した以外は、製造例2と同様にして、製造例3の異方性導電膜を作製した。
−−樹脂のトルエン溶液(E液)の調製−−
前記絶縁性樹脂としての液状エポキシ樹脂(「EP828」;ジャパンエポキシレジン(株)製)30質量部、フェノキシ樹脂(「PKHC」;インケム(株)製)30質量部、シランカップリング剤(「A−187」;日本ユニカー(株)製)1質量部、及びイミダゾール系潜在性硬化剤(「3941HP」;旭化成ケミカルズ社製)30質量部を混合して樹脂組成物を調製し、これに前記溶剤としてのトルエンを加えて、樹脂の10質量%トルエン溶液を調製した。以下、このトルエン溶液を、「E液」と称する。このE液に含まれる層における樹脂の100℃での溶融粘度をE型粘度計で測定したところ、5.0×10Pa・sであった。
【0073】
(製造例4)
−異方性導電膜の作製−
製造例1において、前記樹脂のトルエン溶液(C液)の代わりに、前記樹脂のトルエン溶液(E液)を用いてNCF層を形成した以外は、製造例1と同様にして、製造例4の異方性導電膜を作製した。
【0074】
(製造例5)
−異方性導電膜の作製−
製造例1において、NCF層上に形成されたACF層の上にNCF層を形成しなかった(2層構造とした)こと以外は、製造例1と同様にして、製造例5の異方性導電膜を作製した。
【0075】
(製造例6)
−異方性導電膜の作製−
製造例1において、粒径(体積平均粒径)9μmのNi−Auメッキ樹脂粒子を用い、PET層上にNCF層、ACF層、NCF層をこの順で形成する代わりに、粒径(体積平均粒径)6μmのNi−Auメッキ樹脂粒子を用い、PET層上にACF層を形成し、ACF層の上にNCF層を形成しなかった(1層構造とした)こと以外は、製造例1と同様にして、製造例6の異方性導電膜を作製した。
【0076】
(製造例7)
−異方性導電膜の作製−
製造例1において、ACF層の乾燥後の厚みを6μmとする代わりに、ACF層の乾燥後の厚みを9μmとしたこと以外は、製造例1と同様にして、製造例7の異方性導電膜を作製した。
【0077】
(実施例1)
製造例1で作製した異方性導電膜を用いて、以下に示す評価用チップと、ITOパターンガラスとの接合体を作製した。
〔評価用チップ〕
材質:シリコン、外寸:20mm×2mm、厚み:0.5mm
バンプ種類:金メッキバンプ、バンプ厚み:15μm、バンプ数:800/チップ、バンプサイズ:30μm×150μm、バンプ間スペース:18μm
〔ITOパターンガラス〕
厚み:0.7mm
【0078】
導電性粒子が内部に存在しているNCF層側の一方の異方性導電膜面をITOパターンガラスの導体パターン側に、他方の異方性導電膜面を評価用チップのバンプ側にそれぞれ配置した状態で、バンプと導体パターンとが対向するように、異方性導電膜を介して、評価用チップAと、ITOパターンガラスとを重ね、200℃の加熱条件にて、60MPa/チップ、10秒間、評価用チップの実装ピッチ25μmの条件で加圧することにより圧着し、接合体を得た。
【0079】
ここで、製造例1の異方性導電膜を介して評価用チップとITOパターンガラスとが圧着されてなる接合体の断面を確認したところ、製造例1の異方性導電膜における金粒子は、図4に示すように、単層配列していた。
【0080】
<接着強度の測定>
次いで、前記接合体について、接着強度(N/cm)を以下のように測定し、下記の評価基準により評価した。その結果を表1に示す。
−接着強度の測定方法−
ダイシェア強度測定機を用いて、チップと基板との接合面が破壊された時の強度を測定した。
〔評価基準〕
○:5N/cm以上
△:3N/cm以上、5N/cm未満
×:3N/cm未満
【0081】
<導電性粒子の粒子捕捉率の測定>
次いで、前記接合体について、接合体の断面及び基板面を光学顕微鏡で観察し(捕捉された導電性粒子をカウントし)、導電性粒子の粒子捕捉率(バンプの単位面積あたりの粒子捕捉率)を算出した。その結果を表1に示す。
【0082】
<COG(Chip on glass)導通抵抗試験>
次いで、前記接合体について、JEITA EIAJ ED−4701の試験規格に従い、導体パターン間の抵抗値を4端子法によって測定し、下記評価基準に基づいて評価した。結果を、表1に示す。
〔評価基準〕
◎:圧着直後の抵抗値が3Ω以下であり、ショートの発生無し。
○:圧着直後の抵抗値が5Ω以下であり、ショートの発生無し。
△:圧着直後の抵抗値が10Ω以下であり、ショートの発生無し。
×:圧着直後の抵抗値が10Ωより大きく、ショートの発生有り。
【0083】
<COG(Chip on glass)導通抵抗信頼性試験>
次いで、前記接合体について、JEITA EIAJ ED−4701の試験規格に従い、導体パターン間の抵抗値を4端子法によって測定した。ここで、抵抗値は、温度85℃、湿度85%RHの条件下にて、評価用チップとITOパターンガラスとの圧着直後及びエージング後(500時間経過後)において測定し、下記評価基準に基づいて評価した。結果を表1に示す。
〔評価基準〕
◎:圧着直後の抵抗値が3Ω以下であり、エージング後の抵抗値が、圧着直後の抵抗値の5倍以下である。
○:圧着直後の抵抗値が5Ω以下であり、エージング後の抵抗値が、圧着直後の抵抗値の5倍以下である。
△:圧着直後の抵抗値が10Ω以下であり、エージング後の抵抗値が、圧着直後の抵抗値の5倍以下である。
×:圧着直後の抵抗値は10以下であるが、エージング後の抵抗値が、圧着直後の抵抗値の5倍より大きい。
【0084】
(実施例2)
実施例1において、製造例1の異方性導電膜を用いる代わりに、製造例2の異方性導電膜を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の接合体を作製し、接着強度の測定、導電性粒子の粒子捕捉率の測定、COG(Chip on glass)導通抵抗試験、COG(Chip on glass)導通抵抗信頼性試験を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例3)
実施例1において、製造例1の異方性導電膜を用いる代わりに、製造例3の異方性導電膜を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の接合体を作製し、接着強度の測定、導電性粒子の粒子捕捉率の測定、COG(Chip on glass)導通抵抗試験、COG(Chip on glass)導通抵抗信頼性試験を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例4)
実施例1において、製造例1の異方性導電膜を用いる代わりに、製造例4の異方性導電膜を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の接合体を作製し、接着強度の測定、導電性粒子の粒子捕捉率の測定、COG(Chip on glass)導通抵抗試験、COG(Chip on glass)導通抵抗信頼性試験を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例5)
実施例1において、導電性粒子が内部に存在しているNCF層側の異方性導電膜面をITOパターンガラスの導体パターン側に、他方の異方性導電膜面を評価用チップのバンプ側にそれぞれ配置する代わりに、導電性粒子が内部に存在しているNCF層側の異方性導電膜面を評価用チップのバンプ側に、他方の面をITOパターンガラスの導体パターン側にそれぞれ配置したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の接合体を作製し、接着強度の測定、導電性粒子の粒子捕捉率の測定、COG(Chip on glass)導通抵抗試験、COG(Chip on glass)導通抵抗信頼性試験を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(比較例1)
実施例1において、製造例1の異方性導電膜を用いる代わりに、製造例5の異方性導電膜を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の接合体を作製し、接着強度の測定、導電性粒子の粒子捕捉率の測定、COG(Chip on glass)導通抵抗試験、COG(Chip on glass)導通抵抗信頼性試験を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(比較例2)
実施例1において、製造例1の異方性導電膜を用いる代わりに、製造例6の異方性導電膜を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の接合体を作製し、接着強度の測定、導電性粒子の粒子捕捉率の測定、COG(Chip on glass)導通抵抗試験、COG(Chip on glass)導通抵抗信頼性試験を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(比較例3)
実施例1において、製造例1の異方性導電膜を用いる代わりに、製造例7の異方性導電膜を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の接合体を作製し、接着強度の測定、導電性粒子の粒子捕捉率の測定、COG(Chip on glass)導通抵抗試験、COG(Chip on glass)導通抵抗信頼性試験を行った。結果を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
実施例1〜5では、ACF層の厚み6μmに対して、導電性粒子の粒子径が9μmであることから、導電性粒子の一部がACF層からはみ出し、NCF層に存在していた(NCF層にめり込んでいた)。
実施例1〜5の中でも、導電性粒子の一部が内部に存在するNCF層がITOパターンガラス(基板)側である(粒子突出位置が基板側である)実施例1〜4の結果が良好であった。
一方、2層構造の比較例1は、接着強度が十分でなく、接続信頼性が低く、また、単層構造の比較例2は、NCF層がないことに加えて、ACF層における樹脂の溶融粘度が低い(導電性粒子の流動性が大きい)ため、導電性粒子が圧着時に流れ、流れて接近した導電性粒子によりショートが発生し、また、接着強度は実施例1及び2と比較して40%程度低かった。
また、比較例3は3層構造であるが、導電性粒子の一部がACF層からはみ出さず、NCF層の内部に存在していなかったので、粒子捕捉率が低かった。
実施例1は、ACF層における樹脂の溶融粘度が高く(導電性粒子の流動性が小さく)、NCF層における樹脂の溶融粘度が低くなるように調整されており、結果が最も良好であった。
実施例2及び3は、ACF層における樹脂の溶融粘度が低い(導電性粒子の流動性が大きい)ため、導電性粒子が圧着時に流れる傾向があった。また、実施例3において、接着強度は実施例1及び2と比較して30%程度低かった。
実施例4は、ACF層及びNCF層における樹脂の溶融粘度がいずれも高い(導電性粒子の流動性が小さい)ため、粒子捕捉率が低くなる傾向があった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の異方性導電膜は、各種電子部品等と基板、基板同士などの接合に好適に使用することができ、例えば、ICタグ、ICカード、メモリーカード、フラットパネルディスプレイなどの製造に好適に使用することができる。
本発明の接合体は、導電性粒子の粒子捕捉率が高く、優れた導通信頼性を有する。
【符号の説明】
【0094】
10 一の噴霧手段
12 導電性粒子
20 他の噴霧手段
22 樹脂粒子
24 樹脂膜
30 静電電位付与手段
40 被処理面
50 ガラス基板
50a 接合端子
60 異方性導電膜
61 NCF層
62 ACF層
63 NCF層
64 導電性粒子
70 ICチップ
70a 接合端子
100 接合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層配列された導電性粒子を含む第1の層と、前記第1の層の一方の表面側に配置された第2の層と、前記第1の層の他方の表面側に配置された第3の層とを有し、
前記単層配列された導電性粒子の一部が、前記第2の層及び前記第3の層のいずれかの層の内部に存在することを特徴とする異方性導電膜。
【請求項2】
第1の層が樹脂を含み、該樹脂の100℃での溶融粘度が5.0×10Pa・s〜2.0×10Pa・sであり、
第2の層及び第3の層が樹脂を含み、該樹脂の100℃での溶融粘度が5.0×10Pa・s〜1.0×10Pa・sである請求項1に記載の異方性導電膜。
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載の異方性導電膜を介して、電子部品及び基板から選択される2種以上が、電気的に接合されてなることを特徴とする接合体。
【請求項4】
電子部品の接合端子と基板の接合端子とが、電気的に接合されてなる請求項3に記載の接合体。
【請求項5】
導電性粒子の一部が、第2の層及び第3の層のうち基板側に配置された層の内部に存在する請求項4に記載の接合体。
【請求項6】
一の噴霧手段を用いて噴出され、静電電位付与手段により静電電位が付与された導電性粒子と、他の噴霧手段を用いて噴出された樹脂粒子とを、被処理面上に同時に噴霧することにより形成された第1の層中に、前記導電性粒子を単層配列させる工程を含むことを特徴とする異方性導電膜の製造方法。
【請求項7】
樹脂粒子が、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種の絶縁樹脂からなる請求項6に記載の異方性導電膜の製造方法。
【請求項8】
請求項4から5のいずれかに記載の接合体の製造方法であって、基板の接合端子上に請求項1から2のいずれかに記載の異方性導電膜及び電子部品をこの順で配置する工程と、前記電子部品を加熱しながら押圧する工程と、前記基板の接合端子と前記電子部品の接合端子とを前記導電性粒子を介して接続させる工程とを含む接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−199087(P2010−199087A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−109185(P2010−109185)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】