説明

異物検出方法

【課題】 液体充填時に生じた微細な気泡を効果的に除去でき、液体充填工程から異物検出工程までキャップを保持した状態のまま溶液内の異物検出を行なう方法を提供する。
【解決手段】 この方法は、液体充填後の透明容器1の上部側の開口部を閉栓した後、透明容器の上部側の位置をチャック3でつかみ、この状態のまま透明容器を振動板4に密接させた状態で載置し、振動板を超音波振動させて気泡を除去する工程Aと、気泡除去後の透明容器を、容器の上部側の位置をつかんだ状態のまま、ライン状に配列された複数のセンサで画像情報として検知して複数の画像情報信号を出力して処理する異物検出センサ5を用いて時間をずらして少なくとも2回撮影し、先に撮影された画像と後で撮影された画像を比較することにより異物の移動の有無を検知する工程Bとを含む。本発明では、液体の入った液槽内に容器を浸漬させた状態で超音波振動を伝達させても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性を有した容器内に充填された液体内に存在する気泡を除去し、当該溶液内の異物の有無を検知・検出するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、光透過性を有した容器内に充填させた液状物質内の異物検査において気泡が混在した場合、気泡を異物と判断するため、一般的には気泡が抜けるまで製品を放置し、気泡が抜けたことを確認した後、カメラにて撮影した画像から異物の有無を判定することが行なわれてきており、大量に生産される中では製品の保管場所が必要になり、充填後、すぐに検査・包装・出荷が行なえないという問題点があった。
そこで、充填された液体中に存在する気泡を、超音波を用いて強制的に消去させる装置が種々開発されてきている(例えば下記の特許文献1〜2等)。
【特許文献1】特開平6−191595号公報
【特許文献2】特開平7−291395号公報
【0003】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載されている泡消去装置はいずれも、容器を閉栓する前に、容器の開口部の上方に配置させた振動板又は反射板から超音波を容器の開口部に向けて放射して消泡を行なうものであるが、このような装置の場合には、超音波は指向性が非常に強いために、振動板又は反射板の直下でしか泡が消去せず、また、開口部の口径が小さい容器では消泡に必要な超音波が容器の中に入らずに十分な消泡効果が得られないことがあり、更には、未だ閉栓が行なわれていないために異物が混入する恐れがある等の問題点があった。
【0004】
一方、容器内に密封された液体に混入している異物を検出する装置についても種々提案されてきている(例えば下記の特許文献3〜4等)。
【特許文献3】特開平8−240540号公報
【特許文献4】特開平8−159989号公報
【0005】
上記特許文献3及び4に記載されている検査装置はどちらも、気泡除去を行なった後の液体容器内の液体中の異物を高速度で検査するのには適しているが、気泡除去工程を行なうための構造部分を有していない。
このように、これまで、液体充填〜閉栓〜気泡除去〜異物検出という一連の工程を行なうのに適した装置及び方法は提案されていないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、透明容器内に充填された液体内に存在する気泡を効果的に除去することができ、液体充填〜閉栓〜気泡除去〜異物検出という一連の工程の中で、液体充填後、一度容器の上部側を保持してからは異物検出工程まで保持した状態を開放せずに、溶液内の異物検出を行う方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決可能な本発明の異物検出方法は、透明容器内に充填された液体内に存在する気泡を除去し、当該溶液内の異物検出を行うための方法であって、当該方法が、
工程A:液体が充填された後の前記透明容器の上部側に存在する開口部を閉栓した後、当該透明容器の上部側の位置をチャックにてつかみ、チャックでつかんだ状態のままの前記透明容器を振動板上に密接させた状態で載置し、当該振動板を超音波振動させて、充填された液体内に存在する気泡を除去する工程と、
工程B:前記工程Aにより気泡除去を行った後の透明容器を、当該透明容器の上部側の位置を前記チャックでつかんだ状態のまま、ライン状に配列された複数のセンサで画像情報として検知して複数の画像情報信号を出力し、当該複数の画像情報信号を処理する異物検出センサを用いて時間をずらして少なくとも2回撮影し、先に撮影された画像と後で撮影された画像を比較することにより異物の移動の有無を検知する工程
とを含むことを特徴とし、この方法は、透明容器を液槽中に浸漬しないで気泡除去を行なう乾式法である。
【0008】
又、本発明は、上記の異物検出方法の前記工程Bにおいて、前記透明容器を中心軸を回転軸として回転させた後、回転を停止させ、透明容器内の液体を流動させた状態にて、当該透明容器の中心軸に対して30〜90°の角度で交差する方向から前記異物検出センサにより撮影を行なうことを特徴とするものである。
又、本発明は、上記の異物検出方法の前記工程Bにおいて、前記透明容器を前記チャックを支点として揺動させた後、揺動を停止させ、透明容器内の液体を流動させた状態にて、当該透明容器の中心軸に対して30〜90°の角度で交差する方向から前記異物検出センサにより撮影を行なうことを特徴とするものでもある。
【0009】
更に、本発明の異物検出方法は、透明容器内に充填された液体内に存在する気泡を除去し、当該溶液内の異物検出を行うための方法であって、当該方法が、
工程A’:液体が充填された後の前記透明容器の上部側に存在する開口部を閉栓した後、当該透明容器の上部側の位置をチャックにてつかみ、チャックでつかんだ状態のままの前記透明容器を、振動板が取り付けられ、槽内に液体が入れられた液槽中に浸漬し、前記振動板を超音波振動させて、充填された液体内に存在する気泡を除去する工程と、
工程B’:前記工程A’により気泡除去を行った後の透明容器を、当該透明容器の上部側の位置を前記チャックでつかんだ状態のまま、前記液槽から取り出し、乾燥を行うことによって当該容器の周囲に付着した液体を除去する工程と、
工程C’:前記工程B’により乾燥を行った後の透明容器を、当該透明容器の上部側の位置を前記チャックでつかんだ状態のまま、ライン状に配列された複数のセンサで画像情報として検知して複数の画像情報信号を出力し、当該複数の画像情報信号を処理する異物検出センサを用いて時間をずらして少なくとも2回撮影し、先に撮影された画像と後で撮影された画像を比較することにより異物の移動の有無を検知する工程
とを含むことを特徴とし、この方法は、透明容器を液槽中に浸漬して気泡除去を行なう湿式法である。
【0010】
又、本発明は、上記の異物検出方法の前記工程A’において、前記透明容器を、当該透明容器の中心軸方向の長さの60〜100%の長さに相当する部分が液体中に沈むようにして浸漬させることを特徴とするものである。
【0011】
更に本発明は、上記の異物検出方法の前記工程C’において、前記透明容器を中心軸を回転軸として回転させた後、回転を停止させ、透明容器内の液体を流動させた状態にて、当該透明容器の中心軸に対して30〜90°の角度で交差する方向から前記異物検出センサにより撮影を行なうことを特徴とするものでもある。
又、本発明は、上記の異物検出方法の前記工程C’において、前記透明容器を前記チャックを支点として揺動させた後、揺動を停止させ、透明容器内の液体を流動させた状態にて、当該透明容器の中心軸に対して30〜90°の角度で交差する方向から前記異物検出センサにより撮影を行なうことを特徴とするものでもある。
【0012】
又、本発明は、透明容器内に充填された液体内に存在する気泡を除去し、当該溶液内の異物検出を行うための方法であって、当該方法が、
工程A”:液体が充填された後の前記透明容器の上部側に存在する開口部を閉栓した後、当該透明容器の上部側の位置をチャックにてつかみ、チャックでつかんだ状態のままの前記透明容器を、槽内に液体が入れられた液槽の上面を覆うようにして配置されたフィルムシートの上方から当該フィルムシートを下方側に押さえつけるようにして浸漬させ、前記フィルムシートが当該透明容器に密着した状態とし、前記液槽内に取り付けられた振動板を超音波振動させて、充填された液体内に存在する気泡を除去する工程と、
工程B”:前記工程A”により気泡除去を行った後の透明容器を、当該透明容器の上部側の位置を前記チャックでつかんだ状態のまま、前記液槽から取り出した後、ライン状に配列された複数のセンサで画像情報として検知して複数の画像情報信号を出力し、当該複数の画像情報信号を処理する異物検出センサを用いて時間をずらして少なくとも2回撮影し、先に撮影された画像と後で撮影された画像を比較することにより異物の移動の有無を検知する工程とを含むことを特徴とし、この方法の場合には、前記工程B’(乾燥工程)が不要である。
【0013】
更に、本発明は、上記の異物検出方法の前記工程A”において、前記透明容器を、当該透明容器の中心軸方向の長さの60〜100%の長さに相当する部分が液体中に沈むようにして浸漬させることを特徴とするものである。
又、本発明は、前記工程B”において、前記透明容器内の液体を流動させた状態にて、当該透明容器の中心軸に対して30〜90°の角度で交差する方向から前記異物検出センサにより撮影を行なうことを特徴とするものでもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法を用いた場合には、液体充填によって液体中に生じた気泡を超音波振動によって短時間でほぼ完全に除去できるので、容器を静置して気泡を除く工程が不要であり、液体充填から異物検出までの時間を短縮することができ、気泡を異物と判断することもなく、高速度で高精度な異物検出が行なえる。又、透明容器内に液体を充填した後、一度容器の上部側を保持してから異物検出を行なうまで、この状態が維持されるために、連続して気泡除去工程と異物検出工程が行なえるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、液体が充填された透明容器を液槽中に浸漬せずに大気中で気泡除去を行ってから異物検出を行なう本発明の異物検出方法(乾式法)の各工程について説明する。
図1は、本発明の異物検出方法(乾式法)の各工程における状態の一例を示す図であり、図1に示されるようにして、本発明における工程Aを行なう前の工程としては、一般に、エア洗滌及び/又は放射線殺菌により内部洗滌された透明容器1の開口部に上方から充填ノズル6を降下させて液体を加圧充填するが、この際に液体中に微細な気泡が生じ、図1においては液体中に存在する気泡を小さな丸で表している。尚、本発明における透明容器1とは、透明性を有する材質より成るものを広く意味し、その材質が限定されるものではなく、その形状についても、図1に示されるようなビン状のものに限定されない。
そして、図1に例示した本発明における工程Aでは、この後、透明容器1の開口部の位置にキャップ2を位置させ、チャック3を用いて閉栓を行なう。この際、透明容器1の閉栓は、キャップ2を回転させて螺子留めすることによってなされても、キャップ2を上方からの押し込むことによってなされても良く、チャック3は、透明容器1の開口部をキャップ2により閉栓するキャップ機能を有し、キャップ2の位置がチャック3により確実につかんだ状態で保持できればよい。但し、本発明では、透明容器1がガラス製アンプルであっても良く、この場合には、キャップ部材を使用せずにアンプル上部側を溶融して閉栓がなされ、チャック3は、透明容器1の上部側を保持可能な構造を有していればよい。
【0016】
更に、図1に例示した本発明における工程Aでは、図1に示されるようにして、閉栓が完了した透明容器1を、チャック3により容器上部側(キャップ部分)をつかんだ状態のまま、振動板4上に密接させた状態で載置する。図1においては、振動板4が透明容器1の底面と側面に密接しているが、底面又は側面の一方が密接する場合であっても良く、この際、閉栓されてチャック3に保持された透明容器1を移動させることなく、透明容器1の下方から振動板4を上昇させて密接させることが好ましい。そして、この状態において、振動板4を超音波振動させることにより透明容器1内の液体に超音波を伝達させ、充填された液体内に存在する気泡を除去する。一般的に、透明容器1内の気泡を除去するのに要する時間は10秒〜20秒程度で十分である。尚、本発明では、気泡の除去効率を高めるために、透明容器1を振動板4と共に前後左右に揺動させて透明容器1内の液体を動かせながら超音波振動を与えることが好ましい。
本発明では、超音波による気泡除去を行なう際、基板となる板上に振動板4をバネ又はワイヤで浮かした状態で取り付け、この上に透明容器1を載置し、超音波振動させて気泡を除去する構造を有した装置を用いても良く、あるいは、基板となる板上に振動板4をバネ又はワイヤで浮かした状態で取り付け、更にこの振動板4に側面板を取り付け、透明容器1に対し、振動効率を高めて気泡を除去する構造を有した装置を用いても良い。又、基板となる板上にカゴや袋状ケースをバネ又はワイヤで浮かした状態で取り付け、透明容器をカゴ又は袋状ケースに入れ、透明容器全体に超音波振動が伝わり、気泡除去が早くなる構造を有した装置を用いても良い。
【0017】
本発明の異物検出方法における工程Bでは、透明容器1内の異物の有無を検知する異物検出センサ5として、ライン状に配列された複数のセンサで画像情報として検知して複数の画像情報信号を出力し、当該複数の画像情報信号を処理する機能を有するものを使用し、前記工程Aにより気泡除去を行った後の透明容器1を、キャップ2の位置をチャック3でつかんだ状態のまま、液体の入った部分を、時間的間隔をあけて少なくとも2回撮影し、先に撮影された画像の画像情報信号と、後で撮影された画像の画像情報信号を比較して、溶液中の異物の有無を検知する。即ち、透明容器1の表面又は内部にキズがあった場合には、先に撮影された画像におけるキズの位置と、後で撮影された画像におけるキズの位置は変動せずに同じであるが、充填された液体中に異物が混入していた場合には、重力落下や容器内での液体の流動によって、先に撮影された画像における異物の位置と、後で撮影された画像における異物の位置が変動し、これを検知することによって、異物が存在しているか否かを判断することができる。本発明の工程Bで使用するに適した検査システムとしては、立体検査に適した焦点深度が深いカメラシステムが使用され、例えば株式会社テクノスの5000Kが使用できる。
【0018】
本発明では、このような透明容器1の撮影(撮像)を行なう際、液体内の異物の移動を強制的に生じさせるために、透明容器1を中心軸を回転軸として回転させ、液中心部に渦ができた状態としてから一時回転を停止させて異物が動いている状態としてから、図1に示されるようにして、透明容器1の中心軸に対して30〜90°の角度(図中の角度θ)、好ましくは45°の角度で交差する方向から異物検出センサ5により撮影を行なうことが好ましく、液体内の異物の移動は、チャックを支点として透明容器を揺動させることによってなされても良い。尚、透明容器の回転速度は適宜選択できるが、一般的には60回転/分程度であり、図1中の符号7は、異物検出精度を高めるために透明容器1内を照らす照明装置である。
このようにして透明容器1を軸回転させるには、透明容器1を保持したチャック3が、X,Y,Z方向にそれぞれ移動可能な機能を有したロボットアームに取り付けられ、これにより容器の回転及び転倒が行なえることが好ましい。このようなロボットアームによりX,Y,Z方向へのそれぞれの移動が可能な場合には、撮像時に被写体(透明容器)の固定ができ、搬送システム構造が容易となってシステムの小型化が可能となり、X,Y,Z方向への移動時に持ち替えを行なったり方向変更を行なうのに時間がかからず、検査時間を短縮することができる。
【0019】
尚、本発明の工程Bにおいて使用される異物検出センサ5は、画像取り込み可能なCCDカメラ又は同等機能を有し、透明容器中の遠近にかかわらずあらゆる場所にある全ての異物を1台のカメラで検知することができるものであり、回転させるのに適していない形状の透明容器に対しても中心軸又はチャックを支点として90°〜180°の角度で透明容器を左右又は前後に揺動させて異物を移動させ、異物検知ができるものであれば良く、異物判定部においては、カメラ部にて取り込まれた画像から、画像処理及び波形処理にて画素間にまたがる異物の大きさを、画素間にまたがらない異物と同じ合否判定が可能なソフトを有している。
【0020】
上記の工程Bが終了した後、異物の混入が検知された製品を除去するための不良品選別を行い(図1参照)、正常品についてはラベラーを用いてラベル貼付した後、CCDカメラで外観検査(ラベルが正しく貼付されているかを検査)して包装・梱包される。不良品を取り除く際には、図1に示されるようにして不良品を落下させるのが一般的であるが、不良品選別工程はこれに限定されるものではない。
【0021】
次に、液体充填された透明容器を液槽中に浸漬させ、超音波を照射して気泡除去を行ってから異物検出を行なう本発明の異物検出方法(湿式法)の各工程について説明する。
図2は、本発明の異物検出方法(湿式法)の各工程における状態の一例を示す図であり、図2に示されるようにして、本発明における工程A’を行なう前の工程としての液体充填工程及び閉栓工程は、先に述べた乾式法の場合と同じである。
そして、本発明における工程A’では、図2に示されるようにして、閉栓が完了した透明容器1を、チャック3により容器上部側(キャップ部分)をつかんだ状態のまま、槽内に液体8が入れられた液槽(気泡除去液槽)9中に浸漬させる。
この際、透明容器1を液槽9に直接浸漬させると透明容器1に液体8が付着するので、液体の付着を回避するのが望ましい場合には、液槽9の上面を覆うようにしてフィルムシート11を配置させ、透明容器1がフィルムシート11を押し下げるようにして液槽9中に浸漬させ、液圧によりフィルムシート11が透明容器1に密着した状態とし、図3に示されるような状態で超音波振動を与えて気泡除去を行なうことが好ましい(図3中の透明容器内の小さな丸は気泡を示している)。この場合におけるフィルムシートの材質等は、透明容器1の外周面にある程度密着可能なものであれば特に限定されないが、一般的には20μm程度の厚みを有したポリエチレン製フィルムが好適である。図3においては、フィルムシート11は巻取りロールにて供給され、一定時間使用した後に透明容器1との接触部分を移動させて順次一定方向に巻き取る構造となっており、一方向に完全に巻き取った後には逆方向へ巻き取りが開始されるようになっている。図3において、フィルムシート11を支えるローラー10は、フィルムシートに傷を付けない材質より成るものであればよいが、透明容器1が液槽9から引き上げられた時点でフィルムシートが巻き戻る際に液体8がフィルムシートに付着しているのを除去する役目も行なうために、吸水性のある材質より成ることが好ましく、例えばスポンジ製のローラーが好適である。
尚、図2及び図3に例示した液槽9では、振動板4が槽の側壁に取り付けられているが、槽の底面に取り付けられた液槽9を用いても良く、本発明では、振動板4を超音波振動させることによって、液体8を介して透明容器1内に充填された液体内の気泡を除去する。この際、透明容器1内の気泡を除去するのに要する時間は一般的に3秒〜10秒程度で十分である。この際、気泡の除去効率を高めるために、透明容器1を液槽9内で前後左右に揺動させて透明容器1内の液体を動かせながら超音波振動を与えることが好ましい。
【0022】
このような湿式法において超音波照射により透明容器内の液体の気泡除去をする場合の条件として、液槽の体積は処理要求能力に関係するが、できるだけ発振効率を高めるため、超音波振動板4の有効面積以内で、透明容器の気泡除去処理が可能な大きさにする必要がある。同時に液槽の壁が近すぎても、振動効率が低下することがあるので適正な大きさが必要となり、振動板の大きさの5倍以内が適正である。又、振動板4の取付場所は並列処理したい場合には、液槽の底面に取り付ける必要があるが、直列処理の場合は、液槽の側壁面に取り付けるのが有効である。更に、透明容器1を液体に浸漬させて超音波振動を与える際、気泡の除去効率を高めるには、透明容器1の中心軸方向の長さの60〜100%の長さに相当する部分が液体中に沈むようにして浸漬させることが好ましく、液槽9は、透明容器内の液体高さの約60%〜100%が液体8中に浸漬されるになるように、透明容器1に対して上下動可能な機構を有することが好ましい。尚、透明容器1の側面(外周面)と液槽9内に設けられた振動板4との適正間隔は、透明容器1の長手方向の寸法の3倍以内とし、液体8の粘性により調整できることが好ましく、又、透明容器1を連続して液槽9内を通過させる場合、気泡の除去効率を高めるために、透明容器1を進行方向に対して左右又は前後に振らすか、あるいは、透明容器1に瞬間的にショックを与えながら振動板4からの振動を受けるようにすることが好ましい。
【0023】
この後の工程B’においては、前記工程A’により気泡除去を行った後の透明容器1を、容器上部側(キャップ部分)の位置をチャック3でつかんだ状態のまま、液槽9から取り出し、乾燥を行うことによって透明容器1の周囲に付着した液体を除去するが、この際、乾燥前にエア(圧縮エア)の吹き付けを行なって透明容器1の周囲に付着した水滴を予め除去しておくことが好ましく、加熱乾燥を行う際の温度としては60℃以下とするのが一般的である。
又、最終工程である工程C’は、前述の乾式法における工程Bと同様であり、前記工程B’により乾燥を行った後の透明容器を、容器の上部側の位置をチャックでつかんだ状態のまま、ライン状に配列された複数のセンサで画像情報として検知して複数の画像情報信号を出力し、当該複数の画像情報信号を処理する異物検出センサを用いて時間をずらして少なくとも2回撮影し、先に撮影された画像と後で撮影された画像を比較することにより異物の移動の有無を検知する。この際、透明容器を中心軸を回転軸として回転させた後、回転を停止させ、透明容器内の液体を流動させた状態にて、当該透明容器の中心軸に対して30〜90°の角度で交差する方向から異物検出センサにより撮影を行なうか、あるいは、チャックを支点として透明容器を揺動させた後、揺動を停止させ、透明容器内の液体を流動させた状態にて、当該透明容器の中心軸に対して30〜90°の角度で交差する方向から前記異物検出センサにより撮影を行なうことが好ましい。
尚、その後の不良品除去、ラベル貼付・検査、包装、梱包工程についても、前述の乾式法と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の異物検出方法では、閉栓した後に透明容器の上部側の位置をつかんだ状態のまま開放することなく強制的に超音波照射によって気泡除去が行なわれ、精度良く異物検査が行なわれ、短時間での検査包装出荷が可能である。
又、上述の本発明の異物検出方法(乾式法及び湿式法)は、各種透明容器内の異物検査に用いることができ、特に各種小型プラスチック容器、アンプルやバイアル瓶などの透明容器内の薬液(例えば目薬など)内に混入した異物を検出するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の異物検出方法(乾式法)の各工程における状態の一例を示す図である。
【図2】本発明の異物検出方法(湿式法)の各工程における状態の一例を示す図である。
【図3】透明容器1が液体8と直接接触するのを防ぐために、透明容器1の外周面にフィルムシート11を密着させ、この状態で超音波振動により気泡除去を行なう際の状態の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 透明容器
2 キャップ
3 チャック
4 振動板
5 異物検出センサ
6 充填ノズル
7 照明装置
8 液体
9 液槽
10 ローラー
11 フィルムシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明容器内に充填された液体内に存在する気泡を除去し、当該溶液内の異物検出を行うための方法であって、当該方法が、
工程A:液体が充填された後の前記透明容器の上部側に存在する開口部を閉栓した後、当該透明容器の上部側の位置をチャックにてつかみ、チャックでつかんだ状態のままの前記透明容器を振動板上に密接させた状態で載置し、当該振動板を超音波振動させて、充填された液体内に存在する気泡を除去する工程と、
工程B:前記工程Aにより気泡除去を行った後の透明容器を、当該透明容器の上部側の位置を前記チャックでつかんだ状態のまま、ライン状に配列された複数のセンサで画像情報として検知して複数の画像情報信号を出力し、当該複数の画像情報信号を処理する異物検出センサを用いて時間をずらして少なくとも2回撮影し、先に撮影された画像と後で撮影された画像を比較することにより異物の移動の有無を検知する工程
とを含むことを特徴とする異物検出方法。
【請求項2】
前記工程Bにおいて、前記透明容器を中心軸を回転軸として回転させた後、回転を停止させ、透明容器内の液体を流動させた状態にて、当該透明容器の中心軸に対して30〜90°の角度で交差する方向から前記異物検出センサにより撮影を行なうことを特徴とする請求項1に記載の異物検出方法。
【請求項3】
前記工程Bにおいて、前記透明容器を前記チャックを支点として揺動させた後、揺動を停止させ、透明容器内の液体を流動させた状態にて、当該透明容器の中心軸に対して30〜90°の角度で交差する方向から前記異物検出センサにより撮影を行なうことを特徴とする請求項1に記載の異物検出方法。
【請求項4】
透明容器内に充填された液体内に存在する気泡を除去し、当該溶液内の異物検出を行うための方法であって、当該方法が、
工程A’:液体が充填された後の前記透明容器の上部側に存在する開口部を閉栓した後、当該透明容器の上部側の位置をチャックにてつかみ、チャックでつかんだ状態のままの前記透明容器を、振動板が取り付けられ、槽内に液体が入れられた液槽中に浸漬し、前記振動板を超音波振動させて、充填された液体内に存在する気泡を除去する工程と、
工程B’:前記工程A’により気泡除去を行った後の透明容器を、当該透明容器の上部側の位置を前記チャックでつかんだ状態のまま、前記液槽から取り出し、乾燥を行うことによって当該容器の周囲に付着した液体を除去する工程と、
工程C’:前記工程B’により乾燥を行った後の透明容器を、当該透明容器の上部側の位置を前記チャックでつかんだ状態のまま、ライン状に配列された複数のセンサで画像情報として検知して複数の画像情報信号を出力し、当該複数の画像情報信号を処理する異物検出センサを用いて時間をずらして少なくとも2回撮影し、先に撮影された画像と後で撮影された画像を比較することにより異物の移動の有無を検知する工程
とを含むことを特徴とする異物検出方法。
【請求項5】
前記工程A’において、前記透明容器を、当該透明容器の中心軸方向の長さの60〜100%の長さに相当する部分が液体中に沈むようにして浸漬させることを特徴とする請求項4に記載の異物検出方法。
【請求項6】
前記工程C’において、前記透明容器を中心軸を回転軸として回転させた後、回転を停止させ、透明容器内の液体を流動させた状態にて、当該透明容器の中心軸に対して30〜90°の角度で交差する方向から前記異物検出センサにより撮影を行なうことを特徴とする請求項4又は5に記載の異物検出方法。
【請求項7】
前記工程C’において、前記透明容器を前記チャックを支点として揺動させた後、揺動を停止させ、透明容器内の液体を流動させた状態にて、当該透明容器の中心軸に対して30〜90°の角度で交差する方向から前記異物検出センサにより撮影を行なうことを特徴とする請求項4又は5に記載の異物検出方法。
【請求項8】
透明容器内に充填された液体内に存在する気泡を除去し、当該溶液内の異物検出を行うための方法であって、当該方法が、
工程A”:液体が充填された後の前記透明容器の上部側に存在する開口部を閉栓した後、当該透明容器の上部側の位置をチャックにてつかみ、チャックでつかんだ状態のままの前記透明容器を、槽内に液体が入れられた液槽の上面を覆うようにして配置されたフィルムシートの上方から当該フィルムシートを下方側に押さえつけるようにして浸漬させ、前記フィルムシートが当該透明容器に密着した状態とし、前記液槽内に取り付けられた振動板を超音波振動させて、充填された液体内に存在する気泡を除去する工程と、
工程B”:前記工程A”により気泡除去を行った後の透明容器を、当該透明容器の上部側の位置を前記チャックでつかんだ状態のまま、前記液槽から取り出した後、ライン状に配列された複数のセンサで画像情報として検知して複数の画像情報信号を出力し、当該複数の画像情報信号を処理する異物検出センサを用いて時間をずらして少なくとも2回撮影し、先に撮影された画像と後で撮影された画像を比較することにより異物の移動の有無を検知する工程
とを含むことを特徴とする異物検出方法。
【請求項9】
前記工程A”において、前記透明容器を、当該透明容器の中心軸方向の長さの60〜100%の長さに相当する部分が液体中に沈むようにして浸漬させることを特徴とする請求項8に記載の異物検出方法。
【請求項10】
前記工程B”において、前記透明容器内の液体を流動させた状態にて、当該透明容器の中心軸に対して30〜90°の角度で交差する方向から前記異物検出センサにより撮影を行なうことを特徴とする請求項8又は9に記載の異物検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−98385(P2006−98385A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343928(P2004−343928)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(504329643)
【Fターム(参考)】