説明

異物混入製品の検出方法

【課題】コンベア等で連続して搬送される製品に異物が混入しているか否かを、画像処理技術を用いることにより非接触で高速に精度良く行えるようにした異物混入製品の検出方法を提供する。
【解決手段】コンベア上を搬送される製品をカメラで撮影して得られる画像データの情報から明度と色彩データのヒストグラムを作成する。次いで、このヒストグラムを2値化処理して良品領域を作成する。その後、この良品領域と以後搬送される製品から得られる画像データの情報とを比較して、良品領域の範囲外にある画素データを予め設定した個数以上検出した場合に異物混入と判断し、その製品を搬送ライン上から排除するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベア等で連続して搬送される製品に異物が混入しているか否かを、画像処理技術を用いることにより非接触で高速かつ高精度に行えるようにした異物混入製品の検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、生産した各種の工業製品や食料品等の品質を保証するのに、生産ライン上で検査機によって良品・不良品の選別を行っており、この検査において画像処理技術が広く用いられている。
この画像処理の一般的な流れは、カメラ等により画像を取り込む「センシング段階」、特徴量を抽出する「前処理段階」、計測や合否判定を行う「後処理段階」に大別されており、前記「前処理段階」では、「後処理段階」で行われる計測や合否判定が容易にできるように必要最低限の情報が出力されることが望まれている。
【0003】
前記の特徴量を抽出する「前処理段階」として、例えば特許文献1に示されるように、明度、色相、彩度の三属性データが入力されると、入力された画像データを構成する画素ごとに、有彩色画素と無彩色画素のいずれかであるかを判断し、また、階級を色相とし、度数を画素数とする色ヒストグラムを生成し、この生成した色ヒストグラムに基づいて、特定の色相を抽出し、この抽出した色相に基づいて特徴量を産出する方法が知られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるような画像処理で異物を検出する方法の場合は、色の抽出した部分を異物として定義しているので、定義してない異物(即ち、想定していない異物)の検出をすることはできないという問題点があった。また、事前にあらゆる異物を想定して定義しておくことはほとんど不可能であるとともに、予期しないような異物を想定すること自体が非常に困難であるという問題点があった。従って、従来法においては定義されていない異物の混入は当然に防止することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−205429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決して、従来のように膨大な異物データを予め定義しなくても異物混入のおそれがある製品中の異物を確実に不良品としてコンベア上から高速かつ高精度に排除することができる異物混入製品の検出方法を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の異物混入製品の検出方法は、コンベア上を搬送される製品をカメラで撮影して得られる画像データの情報から明度と色彩データのヒストグラムを作成した後、このヒストグラムを2値化処理して良品領域を作成し、この良品領域と以後搬送される製品から得られる画像データの情報とを比較して、良品領域の範囲外にある画素データを予め設定した個数以上検出した場合に異物混入と判断し、その製品を搬送ライン上から排除するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
また、一定周期ごとに、直前の製品群から得られる複数個の画像データの情報をもとに良品領域を作成することにより、逐次良品領域を自動的に更新していくようにすることが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、コンベア上を搬送される製品をカメラで撮影して得られる画像データの情報から良品領域を作成し、この良品領域と以後搬送される製品から得られる画像データの情報とを比較して、良品領域の範囲外にある画素データを予め設定した個数以上検出した場合に異物混入と判断するようにしたので、想定外の異物の混入があったとしても不良品として、その製品を搬送ライン上から確実に排除することが可能となる。
【0010】
また、請求項2に係る発明では、一定周期ごとに、直前の製品群から得られる複数個の画像データの情報をもとに良品領域を作成することにより、逐次良品領域を自動的に更新していくようにしたので、明度や色彩の状態が変化する製品であっても、最新の情報に基づいて良品領域が作成され、これを基準値として検査が行われることとなり製品状態に対応した最適な検査が行えることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】カメラで撮影した時の色彩を示す画像である。
【図2】図1で得た画像をもとに作成したLabカラーモードのヒストグラムを示すグラフである。
【図3】図2の情報を3次元カラーマップに展開したグラフである。
【図4】カメラで撮影した時の色の濃淡を示す画像である。
【図5】図4で得た画像をもとに作成した色の濃淡のヒストグラムを示すグラフである。
【図6】図5の濃度ヒストグラムをP−タイル法で二値化したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
一例として、焙煎処理した茶葉をコンベアで搬送する際に、異物が混入している製品を検出する場合について説明する。なお、被検査物である茶葉はできるだけ重ならないように散布し、このような状態にある製品を画像カメラで撮影し、画像処理技術を用いて異物混入製品の検出行うものである。
本発明は、製品をカメラで撮影して得られた画像データの情報から明度と色彩データのヒストグラムを作成した後、このヒストグラムを2値化処理して良品領域を作成し、この良品領域と以後搬送される製品から得られる画像データの情報とを比較して、良品領域の範囲外にある画素データを予め設定した個数以上検出した場合に異物混入と判断する点に特徴を有する。
【0013】
以下に、茶葉の色彩について検査する場合について説明する。
先ず、画像カメラで茶葉をカメラで撮影して画像データを得る(図1)。例えば、画素数が約400万画素(2048×2048画素)のカメラを使用すれば、約400万個の画素データが得られる。得られた画素データはR(赤)、G(緑)、B(青)の三原色で表されるRGBカラーであり、この画素データの情報を基に、Labカラーモードに変換してヒストグラムを作成する(図2)。このLabカラーは、各画素を輝度成分(L)と2つの色成分(a、b)で表現するモードである。なお、Labカラーの他、YUVカラーモード等のその他のカラーモードを用いることもできる。
【0014】
次いで、得られた色彩ヒストグラムを、2値化処理して良品領域を作成する。2値化処理としては、例えばP−タイル法を用い、異物の混入割合などを予測して決めた所定の割合(閾値)で2値化することができる。この閾値は、異物の割合等を予測して任意に決めることができる。なお、P−タイル法の他、周知の2値化手法を用いてもよいことは勿論である。
以上のようにして得られた2値化情報を3次元カラーマップに展開したものが、図3に示す3次元グラフである。図3において、空間上の各点は2値化処理した後のLabカラーモードに変換した各画素データを示しており、これらの点を含むように曲線で囲んだ部分が2値化処理して作成した良品領域(S1)となる。
【0015】
この良品領域(S1)を作成した後は、以後コンベア上を搬送される製品から得られる画素データの情報(即ち、Labカラーモードに変換した情報)をこの良品領域(S1)と比較して、良品領域の範囲外にある画素データを予め設定した個数以上検出した場合に異物の混入があると判断する。異物混入の信号があると、その製品は後工程で搬送ライン上から排除されるが、この排除工程については従来の技術を適用することができる。
このようにして、非検査物である製品から得られる画像データの情報が予め作成した良品領域内にあるか否かを判定し、良品領域内にあれば良品とみなし、良品領域内にない場合は異物混入のおそれがあるとみなすことにより、高速かつ高精度で良否の判定を行うことができる。
【0016】
前記良品領域(S1)の作成は、一定周期ごとに、直前の製品群から得られる複数個の画像データの情報をもとに良品領域を作成することができる。
即ち、焙煎処理した茶葉のような製品は、外観の状態が常に一定ではなく生産条件や時間の経過や製品ロット条件等により微妙に変化するため、良品の認定もこれに応じて変化させることが必要となる。そこで、一度作成した良品領域のみで良否の判断を行うのではなく、例えば製品100個ごとや1時間ごと等の一定周期ごとに、かつ直前の例えば5〜30個程度の製品群から得られる複数個の画像データの情報をもとに平均化して新たな良品領域を作成すると、最新の製品情報に基づいた最適な良品領域を作成できる。
このように、良品領域として一定周期ごとに逐次最新の良品領域に自動的に更新するようにしておけば、製品の外観状態が徐々に変化すると、それに対応して良品領域も変化し、常に最新に作成した最適な良品領域との比較がなされることとなり、無駄な不良品を発生させることがなく、現状に即した高精度の検査を実行できることとなる。
【0017】
また、カメラの撮影で得られる約400万個の画像データの全てについて良品領域内にあるか否かを判定するのを異本とするが、例えば、異物の大きさ等を考慮して、8画素間隔とか16画素間隔等の任意の間隔に間引いたデータを対象に判定することもできる。この場合は、データ数を1/16、1/256に減らすことができるため、より高速に検査ができることとなる。
【0018】
次に、白黒カメラを用いて茶葉の明度情報のみから検査する場合について説明する。
コンベア上を搬送される製品をカメラで撮影して画像データを得る(図4)。この画像データの情報から明度のヒストグラムを作成する(図5)。得られた明度ヒストグラムを、P−タイル法により所定の割合で二値化し(図6)、次いで異物の混入割合を予測して良品領域を決定する(図6の(S2))。
その後は、前記良品領域(S2)と、コンベア上を連続して搬送される製品をカメラで撮影して得られる画像データとを比較し、良品領域の範囲外である場合は異物の混入があると判断し、後工程においてその製品をエジェクタ装置等により搬送ライン上から排除することとなる。
【0019】
なお、色の濃淡について検査の場合でも、良品領域(S2)の作成は、一定周期ごとに、直前の製品群から得られる複数個の画像データの情報をもとに平均化した良品領域を作成することができる。また、8画素間隔とか16画素間隔等の任意の間隔に間引いたデータを対象に判定することができることも勿論である。
【0020】
以上の説明からも明らかなように、本発明は従来のように事前に異物を定義して、この異物を検出した場合に不良品と判断する方法とは根本的に異なり、予め良品領域を作成して、この良品領域と被検査物の製品から得られる画像データの情報とを比較し、良品領域の範囲外にある画素データを検出した場合に異物混入と判断するようにしたので、予期できないような異物があっても的確に除外することが可能となる。また、良品領域の作成を最新情報に対応して自動更新するので、製品の外観状態に変化があっても良品領域を変化させて適正に検査を行うことができという利点や、検査条件の設定等を熟練者でなくても誰もが簡単に行うことができるという利点等、種々の効果を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベア上を搬送される製品をカメラで撮影して得られる画像データの情報から明度と色彩データのヒストグラムを作成した後、このヒストグラムを2値化処理して良品領域を作成し、この良品領域と以後搬送される製品から得られる画像データの情報とを比較して、良品領域の範囲外にある画素データを予め設定した個数以上検出した場合に異物混入と判断し、その製品を搬送ライン上から排除するようにしたことを特徴とする異物混入製品の検出方法。
【請求項2】
一定周期ごとに、直前の製品群から得られる複数個の画像データの情報をもとに良品領域を作成することにより、逐次良品領域を自動的に更新していくようにした請求項1に記載の異物混入製品の検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−108026(P2012−108026A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257731(P2010−257731)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000198477)石塚硝子株式会社 (77)
【出願人】(391065356)ワイエムシステムズ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】