説明

疼痛管理のためのプロテインキナーゼCγのペプチドインヒビター

【課題】疼痛の調節のための薬剤を提供すること。
【解決手段】疼痛管理における使用のためのプロテインキナーゼCのアイソザイムのV5ドメイン由来のペプチド配列(例えば、γ−プロテインキナーゼC(γPKC)またはεプロテインキナーゼC(εPCK)のV5ドメインから誘導されたペプチドであって、該ペプチドは、疼痛の調節のためのアイソザイム特異的活性を有する、ペプチド)が記載される。疼痛の処置および/または痛覚脱失を誘導するためのペプチドを含む組成物がまた記載される。疼痛の処置方法およびこのペプチドの活性を模倣する化合物を同定する方法がまた記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、プロテインキナーゼCのγアイソザイムおよび/またはプロテインキナーゼCのεアイソザイム、ならびに疼痛の管理および/または疼痛の軽減のためのそれらの使用に関する。より特定すると、本発明は、疼痛の管理における治療的薬剤としての使用のための、PKCγアイソザイムおよびPKCεアイソザイムの可変(V5)領域に由来するペプチドを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
米国において、7500万人よりも多い人々が、慢性的障害性疼痛に苦しんでいる(NIH Guide、1998)。アメリカにおける慢性疼痛は、大きな社会的および経済的な負担であり、賃金の損失、生産性の損失、医療負担などで年に500億ドルを越える負担がかかる。さらなる負担(例えば、疼痛患者およびその家族の肉体的および感情的衝撃)は、定量することがより困難である。
【0003】
正常な痛みは、体が使用する重要な自己防衛機構である。危険な刺激が発生すると、末梢の侵害受容器(痛みを感知する第1求心性ニューロン)が、痛みシグナルを検出し、Aβ繊維、Aδ繊維、およびC繊維を介して、脊髄の背角(dorsal horn)へと痛覚シグナルを伝える。背角が入ってきたシグナルを処理し、シグナルが蓄積すると、脊柱上の部位へと情報を伝達し、次いで応答(例えば、熱から足を引っ込める行為)を指揮する。正常な生理学的疼痛応答において、痛覚は、危険な刺激が停止すると、解消する。
【0004】
慢性疼痛は、正常な痛みとは異なり、軽減しない。脊髄、脊髄神経節(DRG)、および脳における多数の生理学的変化が観察され、これらは、慢性疼痛の状態に対応する。慢性疼痛の正確な発生機構については、解明されていない;しかし、主な感作が、慢性疼痛の発生において役割を果たしていることが示されている。C繊維は、低い加熱速度を使用した試験において優先的に活性化され、一方、Aδ繊維は、高い加熱速度によって活性化されるという証拠に基づいて、C繊維は、慢性疼痛の大部分の症例において、支配的に活性化されているようである。
【0005】
慢性の神経障害性疼痛は、代表的には、初期の炎症性エピソード、免疫学的エピソード、またはウィルス的エピソードによって、あるいは神経に対する虚血性傷害または機械的傷害によって引き起こされる末梢神経系および/または中枢神経系(CNS)のいずれかにおける異常な感覚処理によって生じる。神経障害性疼痛は、痛覚の変化によって特徴づけられ、この痛覚変化は、異痛症(普通は有害ではない刺激に対する応答(例えば、衣類の接触が痛みを伴うものとなる))、または痛覚過敏(有害な刺激に対する閾値の低下(例えば、日焼けした肌に対する暖かい水))として発症し得る。
【0006】
伝統的な薬理学的治療および外科的介入は、多くの種類の疼痛を処置において有効ではなかった。既存の治療(例えば、オピオイド)は、しばしば、耐性の発展および副作用に起因して長期間において有効ではなかった。そのために、単独でまたは既存の治療と共に使用される場合に疼痛の被害を軽減する、新規の高度に特異的な薬剤に対する大きなニーズがある。
【0007】
プロテインキナーゼC(PKC)は、種々の細胞機能(細胞増殖、遺伝子発現の制御、および、イオンチャネル活性が挙げられる)に伴うシグナル伝達における重要な酵素である。アイソザイムのPKCファミリーは、その相同性およびアクチベーターへの感受性に基づいて、少なくとも3つのサブファミリーに分けられ得る、少なくとも11種の異なるプロテインキナーゼを含む。
【0008】
古典的な、すなわちcPKCサブファミリー(αPKC、βPKC、βIIPKCおよびγPKC)のメンバーは、その間にアイソザイムに独特な(可変またはV)領域を有する、4つの相同ドメイン(C1、C2、C3およびC4)を含み、活性化のために、カルシウム、ホスファチジルセリン(PS)およびジアシルグリセロール(DG)またはホルボールエステルを必要とする。古典的なPKCファミリー(αアイソザイム、βアイソザイム、βIIアイソザイムおよびγアイソザイム)は、脊髄の背角の浅層において見出される。
【0009】
新規の、すなわちnPKCサブファミリー(δPKC、εPKC、ηPKCおよびθPKC)のメンバーは、C2相同ドメインを欠き、活性化のために、カルシウムを必要としない。εPKCは、脊髄神経節(DRG)および後部脊髄の浅層の両方の一次求心性ニューロンにおいて見出される。
【0010】
最後に、異型の、すなわちαPKCサブファミリー(ζPKCおよびλPKC)のメンバーは、C2相同ドメインおよびC1相同ドメインの1つの半部の両方を欠き、DG、ホルボールエステル、およびカルシウムに対して非感受性である。
【0011】
PKCアイソザイムの細胞内分布についての研究によって、PKCの活性化が、細胞内でのその再分布(または、トランスロケーションともいわれる)を生じ、その結果、活性化されたPKCアイソザイムが、原形質膜、細胞骨格要素、核、および他の細胞内区画を結合することが実証される(Saito,N.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:3409−3413(1989);Papadopoulos,V.and Hall,P.F.J.Cell Biol.108:553−567(1989);Mochly−Rosen,D.,ら,Molec.Biol.Cell(以前は、Cell Reg.)1:693−706,(1990))。
【0012】
種々のPKCアイソザイムの独特な細胞機能は、細胞内位置によって決定される。例えば、活性化されたβPKCは、核内に見出され、一方、βIIPKCは、核の周囲および心筋細胞の細胞表面に見出される(Disatnik,M.H.ら、Exp.Cell Res.210:287−297(1994))。種々のPKCアイソザイムの異なる細胞領域への局在化は、代わりに、Receptors for Activeted C−Kinase(RACK)と呼ばれる、活性化されたアイソザイムの特定の停留分子への結合に起因するようである。RACKは、活性化されたPKCアイソザイムをそれぞれの細胞内部位に選択的に停留することにより機能すると考えられている。RACKは、完全に活性化されたPKCとのみ結合し、必ずしもその酵素の基質であるわけではない。RACKとの結合が、そのキナーゼの触媒ドメインを介して媒介されることはない(Mochly−Rosen,Dら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3997−4000(1991))。PKCのトランスロケーションは、活性化した酵素の細胞の特定の画分に停留するRACKへの結合を反映し、RACKへの結合は、PKCがその細胞内応答を生じるために必要である(Mochly−Rosen,Dら、Science 268:247−251(1995))。インビボでのPKCのRACKへの結合の阻害は、PKCのトランスロケーションおよびPKC媒介性の機能を阻害する(Johnson,J.A.,ら,J.Biol.Chem 271:24962−24966(1996a);Ron,D.,ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
92:492−496(1995);Smith,B.L.and Mochly−Rosen,D.,Biochem.Biophys.Res.Commun.188:1235−1240(1992))。
【0013】
一般的に、PKCのトランスロケーションは、PKCアイソザイムの適切な機能のために必要である。RACK上のPKC結合部位(Mochly−Rosen,D.,ら,J.Biol Chem.,226:1466−1468(1991a);Mochly−Rosen,D.,ら,上記,1995)またはPKC上のRACK結合部位(Ron,ら,上記,1995;Johnson,J.A.ら,上記,1996a)のいずれかを模倣するペプチドは、インビボで酵素の機能を特異的に阻害する、PKCのアイソザイム特異的トランスロケーションインヒビターである。
【0014】
3種類のPKCアイソザイムが、痛覚に関与していることが示されている(痛覚経路):βII、γ、およびε(Igwe O.J.,ら,Neuroscience 104(3):875−890(2001);Martin W.J.,ら,Neuroscience 88(4):1267−1274(1999);Khasar S.G.,ら,Neuron 24(1):253−60(1999))。βII PKCは、完全フロイントアジュバントによる末梢炎症によって誘導された痛覚過敏において、活性化されることが見出された(Igwe O.J.ら、Neuroscience 104(3):875−890(2001))。別の研究によって、γPKCは、同じ薬剤による傷害を受けた場合に活性化されること(Martin W.J.ら、Neuroscience 21(14):5321−5327(2001))、およびγPKC欠損マウスは、炎症性神経傷害の後の痛覚過敏の大きな減少を示すこと(Martin W.J.ら、Neuroscience 88(4):1267−1274(1999))が示唆された。εPKC欠損マウスは、炎症の後の熱刺激に対して痛覚過敏応答の減衰を示し、このことは、εPKCもまた、侵害受容器の機能において重要な役割を果たしていることを示唆する(Khasar S.G.ら、Neuron 24(1):253−60(1999))。非特異的PKCインヒビターの使用(例えば、神経障害マウスにおけるカルフォスチン(calphostin)(Ohsawa M.,ら,Eur.J.Pharmacol.,372(3):221−8(1999)、カプサイシンモデルにおけるNPC15437(Sluka K.A.,ら,Pain,71(2):165−178(1997))、およびホルマリンモデルにおけるセレリスリン(chelerythrine)(Hua X.Y.,ら,Neurosci Lett.,276(2):99−102(1999)))は、全て、炎症性薬剤によって誘導される異痛症および/または痛覚過敏の逆転を示した。
【0015】
痛覚におけるεPKCの役割もまた記載されており(WO00/01415;米国特許第6,376,467号)、選択的εPKCインヒビターであるεV1−2ペプチドは、疼痛を軽減することが報告された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
PKCは、一般的に、痛覚において役割を果たしているようであるという、このような発見にもかかわらず、痛覚に伴うペプチド配列は、ほとんど同定されていない。現在までに、一握りのεPKC V1 ペプチドのみが、疼痛の管理のために治療的有効であるとして記載されてきた。本発明は、非オピオイドベースの疼痛処置の開発のための、さらなるPKCアイソザイムの標的およびPKCアイソザイム/領域に特異的なペプチドを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
したがって、本発明の目的は、疼痛管理のために、1種類以上のPKCアイソザイムに特異的な活性を有するPKCペプチドを提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、痛覚においてアイソザイムに対して特異的な活性を有する、PKCアイソザイムのV5領域に由来するPKCペプチドを提供することである。
【0019】
本発明のなお別の目的は、疼痛の管理のために、PKCγおよびPKCεのV5領域に由来するペプチドを使用する、組成物および方法を提供することである。
【0020】
従って、一つの局面において、本発明は、γ−プロテインキナーゼC(γPKC)またはε−プロテインキナーゼ(εPCK)のV5ドメインに由来するペプチドを含み、このペプチドは、疼痛を調製に関するアイソザイム特異的な活性を有する。
【0021】
1つの実施形態において、本ペプチドのアイソザイム特異定な活性は、痛覚を減衰させる阻害活性である。
【0022】
別の実施形態において、本ペプチドは、V5ドメインの最初の10残基から決定されたアミノ酸配列に対応する配列を有する。なお別の実施形態において、本ペプチドは、V5ドメインの25番目残基と35番目残基の間の残基(25番目残基と35番目残基の含む)から決定されたアミノ酸配列に対応する配列を有する。
【0023】
γPKCのV5ドメインの25番目残基と35番目残基の間の残基に由来するアミノ酸配列に対応する例示的な配列が、配列番号4である。γPKCおよびεPCKのV5ドメインの最初の10残基内の残基に由来する例示的な配列はそれぞれ、配列番号3および配列番号5である。
【0024】
一つの実施形態において、本ペプチドは、細胞膜を越えて輸送するために処方される。例えば、本ペプチドは、キャリアペプチドと結合体化されるか、または膜輸送が可能な送達ビヒクル中に処方される。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、疼痛を軽減する方法を含み、この方法は、(i)γPKCまたはεPCKのV5ドメインに由来し、(ii)アイソザイム特異的な活性を有するペプチドを投与する工程を包含する。
【0026】
1つの実施形態において、本方法は、本ペプチドの投与の前に、選択されるV5ドメインペプチドが、γPKCまたはεPCKに対してアイソザイム特異的な活性を有するかどうかを決定する工程を包含する。アイソザイム特異的な活性を決定するインビトロの方法およびインビボの方法が、本明細書において記載され、当該分野において公知である。この実施形態において、疼痛の管理が、選択されるV5ドメインが、γPKCまたはεPCKに対してアイソザイム特異的な活性を有するかどうかを決定する工程;そして、ペプチドがこのような活性を有している場合には、疼痛管理を必要とする被験体に投与するために本ペプチドを提供する工程によって、達成される。
【0027】
別の実施形態において、本方法は、本明細書において配列番号3、配列番号4、および配列番号5として識別される配列から選択されたペプチドを投与する工程または投与のために提供する工程を包含する。
【0028】
本ペプチドは、注射または疼痛部位への局所的送達を介して、投与され得る。1つの実施形態において、局所的送達は、局所的適用、皮内適用、または経皮適用により達成される。
【0029】
本発明の方法は、急性疼痛または慢性疼痛の処置のため、および疼痛の前兆の予防的処置のためであることを意図する。
【0030】
なお別の局面において、本発明は、疼痛を調節する化合物の同定の方法を含む。本方法は、試験化合物の存在下および非存在下で、配列番号3、配列番号4、および配列番号5からなる群から選択されるペプチドの活性を測定する工程;ならびに、ペプチドの活性が、試験化合物の存在下で変化させられる場合に、その試験化合物を、疼痛の調節に有効であるとして選択する工程を包含する。
【0031】
1つの実施形態において、ペプチドの活性を測定する工程は、試験化合物の存在下で競合的結合アッセイを行うことにより、達成される。
【0032】
1つの実施形態において、疼痛の管理において有効である、試験化合物の選択は、ペプチドの結合が、その試験化合物の存在下で減少する場合に行われる。
【0033】
1つの実施形態において、例示的な試験化合物は有機化合物である。
【0034】
さらなる局面は、疼痛の処置における使用のための医薬の調製における、本ペプチドインヒビターの使用を含む。したがって、本発明は以下をも提供する。
(1)γ−プロテインキナーゼC(γPKC)またはεプロテインキナーゼC(εPCK)のV5ドメインから誘導されたペプチドであって、該ペプチドは、疼痛の調節のためのアイソザイム特異的活性を有する、ペプチド。
(2)前記アイソザイム特異的活性が、痛覚を軽減する阻害活性である、項目1に記載のペプチド。
(3)前記ペプチドが、前記V5ドメインの第1の10残基から決定されたアミノ酸の配列に対応する配列を有する、項目1または2に記載のペプチド。
(4)前記ペプチドが、前記V5ドメインの25番目残基と35番目残基との間の残基から決定されたアミノ酸の配列に対応する配列を有する、項目1または2に記載のペプチド。
(5)前記ペプチドが、配列番号4として同定される配列を有する、項目4に記載のペプチド。
(6)前記ペプチドが、配列番号3または配列番号5として同定される配列を有する、項目3に記載のペプチド。
(7)前記ペプチドが、細胞膜を横切る輸送のために処方されている、項目5または6に記載のペプチド。
(8)前記ペプチドが、キャリアペプチドに結合体化されている、項目7に記載のペプチド。
(9)疼痛管理における使用のための、項目1、2、5、6または8のいずれか1項に記載のペプチド。
(10)注射用に処方された、項目9に記載のペプチド。
(11)疼痛の部位への局所送達用に処方された、項目9に記載のペプチド。
(12)前記処方物が、局所、皮内または経皮の適用に適している、項目11に記載のペプチド。
(13)急性疼痛または慢性疼痛の管理における使用のための、項目9に記載のペプチド。
(14)疼痛を調節する化合物を同定する方法であって、以下:
試験化合物の存在下または非存在下で、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群から選択されるペプチドの活性を測定する工程、および
該ペプチドの活性が、該試験化合物の存在下で変更される場合、該試験化合物を、疼痛を調節するのに有効であるとして選択する工程、
を包含する、方法。
(15)前記測定する工程が、前記試験化合物の存在下で、競合結合アッセイにおいて該ペプチドの活性を測定することを包含する、項目14に記載の方法。
(16)前記選択する工程が、前記ペプチドの結合が前記試験化合物の存在下で減少する場合、該試験化合物を有効であるとして選択することを包含する、項目14に記載の方法。
(17)前記試験化合物が、有機化合物である、項目14に記載の方法。
【0035】
本発明のこれらのおよび他の特徴および目的は、添付した図面と組み合わせて以下の本発明の詳細な説明を読んだ場合により完全に理解される。
【0036】
(配列の簡単な説明)
配列番号1は、γPKCのV5ドメインに由来するペプチドに対応する。
【0037】
配列番号2は、εPKCのV5ドメインに由来するペプチドに対応する。
【0038】
配列番号3は、PKCのγアイソザイムのV5ドメインに由来するペプチドである。
【0039】
配列番号4は、PKCのγアイソザイムのV5ドメインに由来するペプチドである。
【0040】
配列番号5は、PKCのεアイソザイムのV5ドメインに由来するペプチドである。
【0041】
配列番号6は、εPKCのV1ドメインに由来するペプチドである。
【0042】
配列番号7は、Tat由来キャリアペプチド(Tat 47−57)である。
【0043】
配列番号8は、Drosophila Antennapediaのホメオドメイン由来キャリアペプチドである。
【0044】
配列番号9は、配列番号4の改変体である。
【0045】
配列番号10は、配列番号4の改変体である。
【0046】
配列番号11は、配列番号4の改変体である。
【0047】
配列番号12は、配列番号4の改変体である。
【0048】
配列番号13は、配列番号4の改変体である。
【0049】
配列番号14は、配列番号4の改変体である。
【0050】
配列番号15は、配列番号4の改変体である。
【0051】
配列番号16は、配列番号4の改変体である。
【0052】
配列番号17は、配列番号4の改変体である。
【0053】
配列番号18は、配列番号4の改変体である。
【0054】
配列番号19は、配列番号4の改変体である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、PKCγおよびPKCεのV5ドメインの配列を示す。疼痛管理における使用のためのV5ドメインに由来するペプチドは、太字で示してある。
【図2A】図2Aは、V5ドメイン由来のγPKCペプチド(黒正方形)、ポジティブコントロールとしてのV1ドメインのεPCKペプチド(白正方形)、キャリアペプチド(白三角)、または生理食塩水(白丸)で処置し、その後、足にホルマリンを皮内投与した生後7日の仔ねずみにおける時間(分)の関数としての疼痛スコアを示すプロットである。
【図2B】図2Bは、V5ドメイン由来のγPKCペプチド(黒正方形)、ポジティブコントロールとしてのV1ドメインのεPCKペプチド(白正方形)、キャリアペプチド(白三角)、または生理食塩水(白丸)で処置し、その後、足にホルマリンを皮内投与した生後15日の仔ねずみにおける時間(分)の関数としての疼痛スコアを示すプロットである。
【図2C】図2Cは、V5ドメイン由来のγPKCペプチド(黒正方形)、ポジティブコントロールとしてのV1ドメインのεPCKペプチド(白正方形)、キャリアペプチド(白三角)、または生理食塩水(白丸)で処置し、その後、足にホルマリンを皮内投与した生後21日の仔ねずみにおける時間(分)の関数としての疼痛スコアを示すプロットである。
【図3】図3は、V5ドメインのγPKCペプチド(黒正方形)、ポジティブコントロールとしてのV1ドメインのεPCKペプチド(白正方形)、キャリアペプチド(白三角)、または生理食塩水(白丸)を髄腔内注射後の、ラットのカプサイシン誘導痛覚モデルを使用した場合の、時間の関数としての足引込め潜伏期間を示すプロットである。
【図4A】2μM γPKC(逆三角)、10μM γPKC(菱形)、または20μM γPKC(丸)、あるいは10μMのキャリアペプチドコントロール(三角)の投与後の生後7日のラットのホルマリン誘導疼痛モデルを使用した場合の、時間(分)の関数としての平均疼痛スコアを示すプロットである。
【図4B】2μM γPKC(逆三角)、10μM γPKC(菱形)、または20μM γPKC(丸)、あるいは10μMのキャリアペプチドコントロール(三角)の投与後の生後15日のラットのホルマリン誘導疼痛モデルを使用した場合の、時間(分)の関数としての平均疼痛スコアを示すプロットである。
【図4C】2μM γPKC(逆三角)、10μM γPKC(菱形)、または20μM γPKC(丸)、あるいは10μMのキャリアペプチドコントロール(三角)の投与後の生後21日のラットのホルマリン誘導疼痛モデルを使用した場合の、時間(分)の関数としての平均疼痛スコアを示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
他に示さない限り、本明細書中の全ての用語は、本発明の技術分野の当業者が理解するのと同じ意味を有する。技術者は、当該分野の定義および用語について、得にCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel,F.M.et al.,John Wiley And Sons,Inc.,Media Pa.)を参考する。
【0057】
アミノ酸残基の略語は、20種類の共通L−アミノ酸の1つをいうために当該分野で使用される標準的な3文字および/または1文字のコードである。
【0058】
アミノ酸の「保存セット」とは、タンパク質の群のメンバー間で保存されているアミノ酸の連続的な配列をいう。保存セットは、長さが2アミノ酸残基〜50以上アミノ酸残基のいずれでもあり得る。代表的には、保存セットは、長さが2連続残基と10連続残基の間のである。例えば、RLVLAS(配列番号4)およびKLVLAS(配列番号9)の2つのペプチドについて、5つの同一の位置(LVLAS)が存在し、これらは、2つの配列についてアミノ酸の保存セットを形成する。
【0059】
「保存的アミノ酸置換」とは、選択したポリペプチドまたはタンパク質の活性または三次構造に重大な変化を生じない置換である。このような置換としては、代表的には、選択したアミノ酸残基と、類似の物理化学特性を有する異なる残基との置換が挙げられる。例えば、GluとAspの置換は、両方が、類似のサイズの負に帯電したアミノ酸であるので、保存的置換である。物理化学的特性によるアミノ酸の分類は、当業者に公知である。
【0060】
「ペプチド」および「ポリペプチド」は、本明細書において交換可能に使用され、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基の鎖から構成される化合物をいう。他に示さない限り、ペプチド配列は、アミノ末端からカルボキシル末端への順序で与えられる。
【0061】
6以上の変異ギャップおよびギャップペナルティでプログラムALIGNを使用した時に、5よりも大きいアラインメントスコア(標準偏差単位)を有する場合に、その2つのアミノ酸配列または2つのヌクレオチド配列は、相同的(好ましくは、この用語が、本明細書において使用される)であると考えられる(Dayhoff,M.O.,ATLAS
OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE(1972)第5巻,National Biomedical Research Foundation,pp.101−110,およびこの巻の補遺2,PP.1−10)。上記のALIGNプログラムを使用して最適にアラインした時に、そのアミノ酸が、50%以上、より好ましくは70%以上、またより好ましくは80%以上、同じである場合に、この2つの配列(またはその一部)は、より好ましく相同的である。
【0062】
親ペプチドまたは親ポリペプチドの少なくとも5アミノ酸残基の連続的な配列に対して、同一であるか、または相同的であるアミノ酸配列を有する場合に、ペプチドまたはペプチドフラグメントは、親ペプチドまたは親ポリペプチドに「由来」する。
【0063】
用語「痛覚脱失を誘導する」、「痛覚脱失の誘導」などは、疼痛を試験するか、または無痛覚を評価するための1種類以上の従来の実験室モデル(例えば、本明細書に記載される試験(例えば、ホルマリンモデルおよびカプサイシンモデル))における有利な結果によって証明されるように、ペプチドが疼痛を管理する能力、代表的には疼痛を減衰させる能力をいう。ヒト被験体に痛覚脱失の誘導を決定するための適切なモデルが、公知であり、例えば、後の節で示されるものが挙げられる。
【0064】
「疼痛を軽減する」とは、被験体が感じる疼痛のレベルが、治療的薬剤の投与が存在しない場合または治療的薬剤の投与の前に被験体が感じる(または感じてきた)ものと同じかまたは類似の疼痛のレベルに対して減少されるプロセスをいう。疼痛のレベルは、被験体の大きさ、あるいは被験体の疼痛に対する応答の測定(例えば、ストレス関連因子の放出あるいは末梢神経系または中枢神経系での疼痛伝達神経の活性によって行われる)によって検定され得る。疼痛のレベルはまた、被験体が疼痛が存在しないこと報告するか、または被験体が疼痛の症状を示さないために必要な鎮痛剤の量を測定することによって検定され得る。
【0065】
「疼痛を調節する」とは、疼痛のレベルの軽減、増加、他の測定可能な変化を企図する。
【0066】
「疼痛管理」とは、疼痛の軽減および/または痛覚脱失の誘導の両方を企図する。
【0067】
PKCアイソザイム間の区別ができない非特異的ペプチドまたは非特異的化合物とは反対に、痛覚経路に伴われる特定のPKCアイソザイムに作用する場合に、そのペプチドは、「特異的活性」を有する。
【0068】
用語「処置」または「処置する」とは、哺乳動物における任意の疼痛処置を意味し、以下の工程を包含する:(a)痛覚に対して予防するかまたは保護する工程、つまり、臨床的症状を進展させない工程;(b)痛覚を阻害する工程、つまり、臨床的症状の進展を停止するかまたは抑制する工程;および/または(c)痛覚を救済する工程、つまり、臨床的症状を後退させる工程。究極的感応事象が、未知であり得るし、潜在的であり得るし、または、患者は、事象の発生の十分に後まで確かめられないので、ヒト医薬において、「予防」と「抑制」との間を区別することが常に可能であるわけではないことを、当業者は理解する。そのために、本明細書で使用される場合、用語「予防」は、本明細書中に定義される「予防する」および「抑制する」の両方を含む「処置」の要素として企図される。本明細書で使用される場合、用語「保護」とは、「予防」を含むように意味付けられる。
【0069】
用語「有効量」とは、処理されている障害または疾患状態に対して処置を提供するために十分な投薬量を意味する。これは、患者、疾患、および行われる処置に依存して変動する。
【0070】
(II.疼痛管理のためのペプチド)
1つの局面において、本発明は、疼痛管理のために特定のPKCアイソザイムを選択的に阻害し得るペプチドを提供する。下に述べるように、これらのペプチドは、疼痛の調節における使用、代表的には、疼痛の軽減、将来の疼痛の予防、および/ならびに有害な刺激への感受性の高まりの阻害における使用のための治療的薬剤として投与される。1つの
選択されたPKCアイソザイムの選択的阻害を介して、これらの活動を選択的に実行するこのペプチドの能力によって、望まない副作用が減少する。
【0071】
本明細書に記載されるペプチドは、各PKCアイソザイムの可変ドメインであるV5ドメインに由来する。より詳細には、このペプチドは、γPKCおよびεPKCのV5ドメインに由来するペプチドフラグメントに対応する。図1は、γPKCおよびεPKCのV5ドメインの配列を示す(それぞれ、配列番号1および配列番号2)。γPKC V5ドメインは、このペプチド配列の633番目のアミノ酸残基に対応する。εPKC V5ドメインは、このペプチド配列の687番目のアミノ酸残基に対応する。
【0072】
また、図1は、γPKCのV5領域に由来する2つのペプチドフラグメントを示し、これらは、図において太字で示されており、本明細書において配列番号3および配列番号4として同定される。また、εPKCのV5ドメインに由来するペプチドフラグメントも図1において太字で示され、配列番号5として同定される。1つの実施形態において、このペプチドは、親アイソザイムのV5領域の最初の10残基に由来するペプチドに対応する。図1は、示したアイソザイムのV5ドメインの残基1、残基5、残基10、残基25、および残基35を番号によって同定する。配列番号3および配列番号5は、アイソザイムのV5ドメインの最初の10残基中の連続的な残基に対応するペプチドである。別の実施形態において、このペプチドは、アイソザイムのV5ドメインの25位〜35位(25位および35位も含む)内の連続的な配列または連続的な残基から決定される残基に対応する。配列番号4は、γPKCアイソザイムの例示である。本発明のペプチドは、上記のフラグメントおよびそれらの改変体(特に、その改変が保存的アミノ酸置換を伴う場合)を含み、例示的な改変が、下で与えられる。
【0073】
本発明を支持するために実施された研究において、配列番号4として同定されたγPKCペプチドは、痛覚を調整するための例示のγPKCアンタゴニストペプチドとして用いられた。2つの痛みモデルが用いられ、ここで、急性の炎症性疼痛は、カプサイシンによりまたはホルマリンにより誘導された。これらのカプサイシンベースの、およびホルマリンベースのモデルは、侵害性刺激に対する感受性の長期間の増加を有し、そしてヒトの病理学的疼痛のモデリングの際に有用である。
【0074】
炎症のカプサイシンモデルは、低速熱試験とともに、慢性疼痛から生じる中枢感作および痛覚過敏を模倣する。カプサイシンの皮膚への塗布は、強い、数時間続く、低加熱速度熱試験の間の脚を引っ込める反応時間(paw withdrawal latency)の有意な低下によって示されるC線維選択的痛覚過敏を生成する。カプサシシンは、スパイスを入れた「辛い」食品中の活性成分である。カプサシンのレセプターである、C線維上に見出されるVR−1バニロイドレセプターは、最近クローン化された。それは、リガンドでゲートされる非選択的カチオンチャネルである。カプサイシンに応答することに加え、VR−1はまた、熱刺激(約43℃)(Kidd B.L.ら、Br.J.Anaesth.、87(1):3−11(2001))およびプロトンに応答し、その活性は、炎症の間に増加することを示唆する。カプサイシンは、Aδではなく、C線維を選択的に活性化および感作することが示されている。従って、Aδ反応時間測定を、研究の間の動物福祉のためのコントロールとして用いた。
【0075】
げっ歯類におけるホルマリンモデルは、ヒトにおける損傷誘導疼痛を処置する予測試験として有効にされている(Dennis,S.G.およびMelzack,R、Advances in Pain Research and Therapy、Vol.3、747、J.J.Bonicaら編、Ravan Press、New York、1979;Tjolsen、Aら、Pain、51:5〜17(1992))。このモデルは、2相応答を生成し、ここでは、初期相は、一次求心射撃によってトリガーされ、化学的侵害レセプターがメディエーターであることを除き、急性相試験について記載されたものと特徴が類似している。第2相は、初期相損傷から生じる痛覚過敏自発活性であると考えられ、そして侵害閾値プラス対応する脊髄回路のプライミングまたは「ワインドアップ」の低下を反映している。従って、末梢および中枢神経回路およびメディエーターの両方が、この痛みのある組織損傷状態を誘導し、かつ持続するために必要である。
【0076】
実施例1は、PKCγインヒビターペプチド(配列番号4)のラットの仔における疼痛を調整する能力が調査された研究を記載する。このラットは、疼痛プロセッシングを研究するための優れたモデルを提供する。なぜなら、出生後7日におけるラット神経系の発達は、ヒト幼児の全期間に対応し、そして出生21日後では、ヒトの就学前年齢の子供のモデルになるからである(FitzgeraldおよびAnand、Pain Management in Infants、Children and Adolescents(Schetchterら、編)11〜32頁、Baltimore、MD、Williams and Williams、1993)。発生の類似性に加え、ラットおよびヒトの両方は、年齢とともに衰える繰り返し刺激に応答する過敏症を示す(Fitzgeraldら、Developmental Medicine and Child Neurology、30:520(1988);Fitzgeraldら、Proceedings National Academy of Science USA、96:7719(1999))。
【0077】
実施例1に詳述される研究では、本明細書で配列番号4として同定されるペプチドは、出生後7、15、および21日にラットの髄に投与された。このペプチドは、足底内ホルマリン注入の15分前に投与された。ホルマリン注入の後、自発疼痛挙動が、1時間の間2分毎に記録された。この研究では、V1ドメインからのεPKCアンタゴニストペプチドをポジティブの匹敵するコントロールとして用いた。上記のように、このεV1−2ペプチド、EVASLKPT(配列番号6)は、例えば、米国特許第5,783,405号およびDornら(PNAS、46(22):12798(1999))に記載されている。このεV1−2ペプチドは、PCKεを選択的に阻害し、そして疼痛を改善することが示されている(WO 00/01415)。
【0078】
εV1−2ペプチドおよびγPKCペプチドV5−3(配列番号4)の両方は、投与のために、キャリアペプチドであるTat(配列番号7)に、末端システイン残基を経由して結合された。動物の1つの群は、コントロールとしてTatキャリアペプチド単独で処理された。別の群の動物は、コントロールとして生理食塩水のみを受けた。
【0079】
結果を図2A〜2Cに示し、そこでは、γPKC(黒四角)、εPKC(白四角)、Tatキャリアペプチド単独(白三角)、または生理食塩水(白丸)で処理されたラットの髄の平均疼痛スコアが、時間(分)の関数として示されている。平均疼痛スコアは、時間サンプリング法によって決定され、そこでは、動物の挙動は2分毎に記録された。「1」のスコアは、動物がホルマリン処理した足をなめ、ゆするか、または挙げる場合に与えられる。6分間の観察に亘る3つの疼痛スコアを1つのスコアに合計し、各6分間隔に対し各動物について3の最大の可能なスコアを与えた。平均疼痛スコアは、各処置群における動物の個々のスコアから決定された。図2Aは、7日齢のラット仔に対する平均疼痛スコアに対応し、ここでは、1%ホルマリンが、上記ペプチドまたはコントロール物質の送達後15分で足に投与された。図2A中のデータは、γPKCペプチド(配列番号4)が、コントロールの仔に対し減少した疼痛スコアによって証明されるように、疼痛を低下するために有効であったことを示す。
【0080】
図2Bは、試験物質またはコントロール物質の送達の15分後に、2.5%ホルマリンを投与した15日齢の仔ラットについてのデータを示す。コントロール仔ラットと比較して疼痛スコアが減少したことから証明されるように、γPKCペプチドは、疼痛を緩和するために有効であった。
【0081】
図2Cは、試験物質またはコントロール物質の15分後に、2.5%ホルマリンを投与した21日齢の仔ラットについての疼痛スコアを示す。コントロール仔ラットと比較して疼痛スコアが減少したことから証明されるように、γPKCペプチドは、疼痛の減少を提供した。
【0082】
まとめると、図2A〜2Cのデータは、γ−PKCペプチドインヒビターが、ホルマリン誘導性の自発的疼痛行動を減衰させたことを示す。さらに、γPKCペプチドは、ホルマリン誘導性の疼痛の持続期間を効果的に短縮した。εPKCのV1ペプチドは、生後7日の仔ラットのホルマリン誘導性の痛覚のより大きな減衰を提供したこと(図2A)、一方、両方のアイソザイムが、生後15日および生後21日における痛覚の軽減に寄与することも注目される。これは、痛覚の発生上の特異的パターンに従うPKCアイソザイムの適切な選択による、新生児の疼痛および/または小児の疼痛を処置するための戦略を示唆する。
【0083】
実施例2は、本発明を支持する別の研究を記載し、γPKCのV5ドメインペプチド(配列番号4)を、カプサイシン疼痛モデルにおける疼痛管理のために使用した。ポジティブな比較コントロールとして、V1 εPKCペプチド(配列番号6)を使用した。このペプチドをTatキャリアペプチド(配列番号7)に結合し、カプサイシンの足への塗布の前に、試験動物に髄腔内投与した。カプサイシンの塗布の30分後に、足引込め潜伏期間を75分の規則的な間隔で測定した。Tat由来γPCK(黒正方形)、Tat由来εPCK(白正方形)、Tatキャリアペプチド単独(白三角)、および食塩水で処置した動物(白丸)についての結果を図3に示す。
【0084】
図3は、γPKCのV5ドメインペプチドが、痛覚に対する応答を調節するために有効であったことを示す。詳細には、γPKCアンタゴニスト(配列番号4)は、鎮痛効果を誘導し、最初の時点での閾値の増大を起こした。5分時での谷は、包膜内注射による傷害に起因するようである。εPKCのV1アンタゴニストは、抗痛覚過敏的であり、足引込め潜伏期間を約50%減少させた。
【0085】
生後21日齢のラットにおいて、足底内ホルマリンは、決まりきった2段階の行動パターンを起こす。第1段階は、末梢侵害受容器の活性化によって起きる足の裏(hindpaw)の不快に対する強烈な振り、持ち上げ、および舐めによって特徴付けられる。下行性の阻害経路の活性化がそれに続き、自発的な疼痛行動が減少する(休止段階)。休止の後に、第2段階が続き、これは、疼痛行動の復活、および主な機構よって少なくとも部分的に媒介されることによって特徴付けられる。生後15日のラットは、生後21日以上のラットで観察されたものよりも短い持続期間の初期の2段階の応答を示す。対照的に、生後7日のラットは、成体ラットと比較して、足底内ホルマリンの侵害受容効果に対して4倍感受性であり、1段階の応答パターンを示す(Guyら,上記(1992);Tengら,上記(1998))。
【0086】
生後7日、15日、21日のラットについての用量応答研究において、本明細書において配列番号4で識別されるγPCKのV5ペプチドを使用した。この研究において、上記のように、ホルマリン誘導性疼痛モデルを使用して、時間の関数としての平均疼痛スコアを決定した。ホルマリン注射の15分後に、このペプチドを2μM、10μMおよび20μMの投薬量で投与した。生後7日のラット(図4A)、生後15日のラット(図4B)および生後21日(のラット図4C)について、結果を図4A〜4Cに示す。ここで、2μMのγPKC用量を逆三角で、10μMのγPKC用量を菱形で、20μMのγPKC用量を円で表す。コントロールグループは、10μMのTatキャリアペプチドを受容し、三角で表す。
【0087】
図4A〜4Cは、γPKCのトランスロケーションの阻害によって、用量依存的な様式で、ホルマリン誘導性の自発的疼痛行動の第2段階は減衰されたが、第1段階は減衰されなかったことを示す。第2段階行動の減衰は、年齢依存的であり、21日齢のラットの3つ全ての用量で起こるより強い抗痛覚と比較して、最も高い容量は、7日齢のラットでは穏やかな抗痛覚を起こす。ペプチド(配列番号4)によるγPKCトランスロケーションの阻害は、15日齢ラットおよび21日齢ラットの両方において、第2段階の行動の持続期間を短縮した。
【0088】
従って、1つの実施形態において、本発明は、配列番号3、配列番号4、および配列番号5によって例示されるような、疼痛管理の必要な患者に投与するためのそれぞれのペプチドのV5ドメイン由来のγPKCまたはεPKCペプチドを含む組成物を企図する。γPKCおよびεPKCのV5ドメイン由来のペプチドは、鎮痛活性を有し、疼痛を効果的に調節する。
【0089】
別の実施形態において、本発明は、同じPKCアイソザイムまたは異なるPKCアイソザイム由来のV5ドメインペプチドの組合せを含む組成物を企図する。本発明はまた、同じPKCアイソザイムまたは異なるPKCアイソザイム由来のV5ドメインPKCペプチドおよび非V5ドメインPKCペプチドから構成される組合せ治療を企図する。例えば、γPKC V5ドメインペプチド(例えば、配列番号4)およびεPKC V5ドメインペプチド(例えば、配列番号5)から構成される組成物は、疼痛管理のために調製および投与される。γPKC V5ドメインペプチドおよび例えばεPKC V1ドメインペプチド(例えば、εPKC V1−2(配列番号6))から構成される組成物もまた調製及び投与され得る。
【0090】
ペプチドは、ネイティブな形態で使用され得るか、またはキャリアへの結合によって改変され得ることが理解される。ネイティブな形態において、ペプチドは、細胞へのその輸送を容易にするために必要に応じて処方され得る。細胞浸透のための適切な処方物は、当該分野において公知であり、そしてこれには、例えば、ミセル、リポソーム(荷電および非荷電)、および親油性媒体が挙げられる。キャリアに結合される場合、当業者は、当該分野で公知の種々のペプチドキャリアから選択し得る。上記研究において使用されるTatキャリアに加えて、Drosophila Antennapediaホメオドメイン(配列番号8;Theodora,L.,ら.J.Neurosci.15:7158(1995);Johnson,J.A.,ら,Circ.Res.79:1086(1996b))に基づくキャリア(ここで、このPKCペプチドは、N末端Cys−Cys結合を介して、Antennapediaキャリアに架橋される)が、適切である。ポリアルギニンは、別の例示的なキャリアペプチドである(Mitchellら,J.Peptide Res.,56:318−325(2000);Rolhbardら,Nature Med.,6:1253−1257(2000))。
【0091】
上記のように、図1は、γPKCおよびεPKCのV5ドメインに由来する3つの例示的ペプチドを示す。これらの例示的ペプチドは、配列番号3、4および5として図に示される。これらの例示的配列および保存的アミノ酸置換を有するペプチドに相同なペプチド、ならびに活性を保持しているフラグメントが、企図されるペプチドの範囲内であることもまた理解される。配列番号4(RLVLAS)の例示的改変は、小文字で示した以下の変化を含む:kLVLAS(配列番号9);RLVLgS(配列番号10);RLVLpS(配列番号11);RLVLnS(配列番号12)、および上記の任意の組み合わせ。他の改変は、以下を含む:1つまたは2つのLからIもしくはVへの変更(例えば、RiVLAS(配列番号13);RLViAS(配列番号14);またはRiViAS(配列番号15)。また、LおよびVは、以下のようにV、L、I、R、および/またはDに変更され得る:RLiLAS(配列番号16)、RLdLAS(配列番号17)、およびRidLAS(配列番号18)またはRridAS(配列番号19)。従って、用語「γPKCのV5領域に由来するγPKCペプチド」は、RLVLAS(配列番号4)およびGRSGEN(配列番号3)として同定される配列、ならびに所望の活性を保持しているそれらの全ての改変物、誘導物、フラグメント、組み合わせ、およびハイブリッドによって例示される。用語「εPKCのV5領域に由来するεPKCペプチド」は、IKTKRDVN(配列番号5)として同定される配列、および所望の活性を保持しているそれらの全ての改変物、誘導物、フラグメント、組み合わせ、およびハイブリッドにより例示される。従って、上記の例示的フラグメントの全てにおいて、保存的改変および他の改変は、その活動性を容易には変更できない、企図されるペプチドの範囲内に入り得る。
【0092】
本明細書中に記載される全てのペプチドは、当該分野で公知の自動化されたまたは手動の固相合成技術のいずれかを用いて、化学合成により調製され得る。そのペプチドはまた、当該分野で公知の技術を用いて組換えにより調製され得る。
【0093】
(III.使用方法)
疼痛は、医師によってみられる基本的な臨床症状であり、しばしば、軽度、中程度、または重度として分類される。本明細書中に記載のペプチドは、これらの分類のいずれかにおける疼痛の処置に適切である。例えば、癌および術後疼痛は、しばしば、中程度−重度の分類にあると記載される。骨、神経、軟組織、または内臓の腫瘍浸潤は、癌の疼痛の共通した原因である。腫瘍の型、状態、および部位、ならびに患者の変数のような種々の要因が、患者における癌の疼痛の有病率に影響を及ぼす。術後疼痛に関して、疼痛の重篤度は、しばしば、介入の位置および程度に依存する。
【0094】
より具体的には、そのペプチドは、例えば、神経障害状態または炎症状態によって引き起こされる急性または慢性の疼痛の処置に適している。処置が企図される例示的な炎症状態としては、日焼け、変形性関節症、大腸炎、心臓炎、皮膚炎、心筋炎(myostis)、神経炎、ならびに慢性関節リウマチ、狼瘡および他のコラーゲン脈管疾患、ならびに術後疼痛が挙げられるが、これらに限定されない。神経障害性疼痛と関連する状態としては、外傷、手術、切断、膿瘍、脱髄疾患、三叉神経痛、癌、慢性アルコール中毒、発作(stroke)、視床疼痛症候群、糖尿病、ヘルペス感染などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
上記のように、炎症および神経損傷は、痛覚過敏を含み得、ここで有毒刺激が、疼痛閾値の低下に起因して、極めて疼痛を伴うと認められる。従って、本発明は、患者における痛覚過敏を処置するための組成物および方法を企図する。さらに、本発明は、被験体における異痛症を処置;すなわち、通常は、非有毒刺激と関連した疼痛を処置するための組成物および方法を企図する。
【0096】
このペプチドは、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせることによって投与のために調製される。従って、本発明のさらなる局面は、疼痛管理の必要な被験体への投与に適した投薬形態において、γPKCペプチドまたはεPKCペプチドを含む薬学的組成物を提供する。例示的な投薬形態としては、薬学的キャリア(例えば、デンプン、ラクトース、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水溶液、油−水エマルジョンなど)中に処方されるペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。任意の経路(髄腔内、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下が挙げられるが、これらに限定されない)による注射に適した投薬形態が、薬学的キャリア(例えば、緩衝化水性媒体または非水性媒体)を用いて調製され得る。そのペプチドは、例えば、局所的適用、皮膚もしくは経皮的投与、または真皮内注射によって、炎症または末梢神経損傷の部位近辺に局所投与され得る。粘膜送達もまた企図され、ここでそのペプチドは、舌下送達、膣送達、経鼻送達、または眼内送達のために処方される。特定の形態の投与が、経時的により拡がる送達の最初の局部的な部位を達成し得ることが理解される。例えば、頬パッチまたは膣坐剤は、適用の部位における最初の局部的な送達を提供する。時間が経つにつれて、そのペプチドは、送達の部位から体液(リンパ、血液)中を移動して、より広い作用領域を提供する。送達の程度は、製薬分野の当業者に公知であるように、処方物および投与経路の選択によって制御され得る。
【0097】
別の実施形態において、疼痛管理のためのペプチドの投与の後に、選択されたV5ドメインペプチドが、γPKCまたはεPCKについて比活性を有するか否かが決定される。より具体的には、γPKCまたはεPCKのV5ドメインに由来する選択されたペプチドは、インビトロまたはインビボで試験されて、酵素が由来するアイソザイム(γPKCまたはεPCK)の移動を阻害する活性を有するか否かが決定される。インビトロまたはインビボ試験は、当該分野で記載されている(例えば、Mochly−Rosenら,Science,268:247(1995);Mochly−Rosenetら,FASEB,12:35(1998);Mochly−Rosenら,PNAS USA,84:4660(1987);Igwe O.J.ら,Neuroscience 104(3):875−890(2001)を参照のこと)。そのペプチドがその特定のアイソザイムの移動を阻害するために有効である場合、そのペプチドは、疼痛処置が必要な被験体への投与のために選択され、投与に適した投薬形態で提供される。
【0098】
組成物中のペプチドの量は、適切な用量が得られ、かつ有効な鎮痛効果が達成されるように、変更され得る。投薬量は、多くの要因(例えば、投与経路、処置の持続時間、患者のサイズおよび身体状態、ペプチドの有効性、ならびに患者の応答)に依存する。そのペプチドの有効量は、本明細書中に記載される1以上の疼痛モデルにおいてそのペプチドを試験することによって予測され得る。
【0099】
そのペプチドは、必要な場合、1時間ごと、1日に数回、1日1回、または個人が疼痛を経験する程度の頻度またはその個人の医師が適切であると考える程度の頻度、投与され得る。そのペプチドは、疼痛を予測して予防的に投与され得るか、または必要な場合、疼痛の急性エピソードの前またはその間に投与され得る。そのペプチドは、慢性頭痛の管理の継続を基本として投与され得るか、または疼痛のエピソードの前/後(例えば、手術前および/または手術後)に短時間を基本として投与され得る。
【0100】
(IV.同定方法)
本発明の別の局面は、例えば、本明細書中に記載のペプチドを、ペプチドの鎮痛活性を模倣する化合物を同定するための研究ツールとして使用することにより、疼痛を調節する化合物を同定する方法である。本発明はまた、ペプチドの作用部位を検出するためのアッセイにおいて、またはペプチド作用機構についての研究において、そのペプチドの使用を企図する。
【0101】
そのペプチドの活性を模倣する化合物の同定において、痛覚脱失を誘導し、細胞レセプター(このレセプターにそのペプチドが結合するか、さもなければそのペプチドと類似の生理学的様式で作用する)に結合し得る化合物は、いくつかの技術によって同定され得る。例えば、1つの方法は、γPKCペプチド(例えば、配列番号3または配列番号4)の活性の指標であることが公知の生物学的アッセイに、試験化合物を添加することを包含する。その試験化合物の存在下および/または非存在下でのγPKCペプチドの活性は、γPKCの活性に対する試験化合物の効果を理解するために決定される。例えば、試験化合物の非存在下での生物学的アッセイにより、γPKCが基質または結合パートナーに結合する特定の程度が測定される場合、γPKC結合の増加または減少は、それぞれ、アゴニスト活性またはアンタゴニスト活性を有する試験化合物の指標である。
【0102】
あるいは、γPKCの活性を調節する試験化合物は、アッセイ、その後の鎮静活性についてのその化合物の試験によって決定され得る。例えば、競合的結合スクリーニングアッセイは、試験化合物および検出可能に標識されたペプチドを哺乳動物細胞、組織、または活性化キナーゼペプチド(「RACK」または偽RACK)についてのレセプターに、ペプチドの結合を可能にする条件下で添加することによって、γPKCの活性を模倣する化合物を同定するために使用され得る。標識されたタンパク質の細胞、組織、またはRACKへの結合が測定される。そのペプチドの活性を模倣する化合物は、結合についてそのペプチドと競合する。結論として、より少量の検出可能な標識が、その試験化合物がそのペプチドの活性を模倣せず、かつそのレセプターに結合しないかまたは結合するが親和性が低い場合よりも、その試験化合物がレセプターに結合することによってそのペプチドの活性を模倣する場合に測定される。
【0103】
一般に、γPKCおよびεPKCのV5ドメインに由来するペプチドの活性を模倣する化合物の同定は、試験化合物がV5ドメインペプチドの活性を阻害、増強または調節する能力を測定することによって、同定される。選択されたアッセイにおけるγPKCまたはεPKCペプチドのV5ドメインの活性は、試験化合物の存在下または非存在下で測定される。そのアッセイは、上記の競合的結合アッセイまたは第2のメッセンジャー生成物の調節、細胞代謝の変化、または酵素活性に対する効果をモニターする細胞アッセイであり得る。γPKCまたはεPKCペプチドのV5ドメインの活性を模倣または調節すると同定された化合物は、次いで、動物疼痛モデル(例えば、上記および実施例に記載されるもの)を使用して鎮痛活性について試験される。
【0104】
種々の試験化合物(他のペプチド、高分子、薬物、有機化合物、化学的混合物および/または生物学的混合物、真菌抽出物、細菌抽出物、ならびに藻類抽出物を含む)が、この方法によってスクリーニングされ得る。この化合物は、起源が生物学的または合成であり得る。
【0105】
前述から、本発明の種々の目的および特徴がどのように満たされるかが理解され得る。γPKCまたはεPKC移動のアイソザイム特異的ペプチドインヒビターを、疼痛管理の治療剤として使用した。このペプチドインヒビターは、γPKCおよびεPKCのV5ドメインに由来し、試験動物における疼痛応答を有効に調節することが示された。疼痛刺激の前、疼痛エピソードの間、または疼痛刺激の間に、あるいは疼痛刺激の後にペプチドを投与することは、疼痛感覚を管理するために有効な手段を提供する。このペプチドは、予測される疼痛部位、または疼痛部位に局所投与され得るか、あるいは注射により全身投与され得る。
【実施例】
【0106】
(V.実施例)
以下の実施例は、本明細書中に記載される発明をさらに例示するのであって、本発明の範囲を限定するようには決して意図されない。
【0107】
(実施例1:ホルマリン誘導性の痛覚へのPKCγペプチドの効果)
生後の選択した日(生後7日、15日および21日)に、ラットの仔(雄および雌、Spraque−Dawley)をランダムに治療群に分けた。各群に、PKC V5−ドメイン試験ペプチド、陽性の比較コントロールペプチド、キャリアペプチドコントロール、または生理食塩水コントロールを与えた。V5−ドメイン試験ペプチドは、本明細書中で配列番号4として同定されたγPKCペプチドであり、比較コントロールペプチドとしては、本明細書中で配列番号6として同定されたV1ドメインεPKCペプチドであった。ペプチドを、N末端のシステイン−システイン結合を介してTat−ペプチドキャリア(配列番号7)に可逆的に結合した。ペプチドを、所定の用量(代表的には、5μL(7日齢の仔)または10μL(15日齢および21日齢の仔)生理食塩水中20μMのPKCペプチド)で、直接腰椎穿刺(くも膜下腔内投与)によって投与した。
【0108】
ペプチドまたはコントロール物質の投与の15分後に、1% ホルマリン(7日齢の仔)または2.5% ホルマリン(15日齢および21日齢の仔)を足に皮内で送達した。ホルマリン注入後1時間にわたって、自発的な疼痛行動を2分毎に記録した。行動観察のための時間サンプリング法を用い、これは、観察者が動物の行動を2分毎に迅速に記録するものである(Tengら、Pain,76:337(1998))。動物が舌なめずり、身震い、または後足を上げている場合、「1」のスコアを与えた。6分間の観察で、各動物について「3」の最高疼痛スコアを得た。
【0109】
結果を図2A〜2Cに示す。図2Aは、7日齢のラットの仔での研究に対応し、ここで、Tat由来のγ−PKCペプチドを黒四角で表し、Tat由来のεPKC(ポジティブコントロール)を白四角で表し、Tatキャリアペプチド単独を白三角で表し、そして、生理食塩水を白丸で表す(n=8〜10/群)。
【0110】
図2Bは、15日齢のラットの仔に対応し、ここで、Tat由来のγPKC V5ペプチドを黒四角で表し、Tat由来のεPKC(ポジティブコントロール)ペプチドを白四角で表し、Tatキャリアペプチド単独を白三角で表し、そして、生理食塩水を白丸で表す(n=9〜10/試験群)。
【0111】
図2Cは、21日齢のラットの仔に対応し(n=10/試験群)、ここで、Tat由来のγPKC V5ペプチドを黒四角で表し、Tat由来のεPKC(ポジティブコントロール)を白四角で表し、Tatキャリアペプチド単独を白三角で表し、そして、生理食塩水を白丸で表す。
【0112】
(実施例2:カプサイシン誘導性の痛覚へのPKC V5ペプチドの効果)
成体雄Sprague−Dawleyラット(体重200〜250g)をウレタン(800mg/kg、i.p.)で軽く麻酔した。各動物の背側表面にIndiaインクを塗り、熱が背側表面に均等に適用されたことを確認した。C−線維(0.9℃/秒の加熱速度)およびAδ−線維(6.5℃/秒の加熱速度)の両方について45分間、全ての動物のベースライン測定値(n=10/試験群)を取った。試験V5ペプチドは、γPKCのV5領域由来であり(配列番号4)、Tat−キャリアペプチド(配列番号7)に結合体化した。陽性の比較コントロールとして、εPKCのV1ドメイン由来のペプチド(配列番号6)をまた、Tat−キャリアペプチド(配列番号7)に結合体化した。カプサイシンを左後足に局所塗布(100μLの3%カプサイシン)する15分前に、このペプチドを直接腰椎穿刺(20μL生理食塩水中10μMのペプチド)によってくも膜下腔内に送達した。生理食塩水およびTat−キャリアペプチド単独(配列番号7)もまた、2つの別の動物のコントロール群に投与した。直接的なペプチドの効果のために、コントロールへのペプチドの投与後で、カプサイシンの塗布前に、潜伏期測定を行った。カプサイシンの塗布の20分後、インクを再塗布し、後足の背側表面を、最大20秒間、低い加熱速度に供した。足の禁断症状の潜伏期間を15分間隔で測定した。結果を図3に示す。
【0113】
(実施例3:既存のカプサイシン誘導性の痛覚へのPKCペプチドの効果)
既存の慢性疼痛の処置のためのV5−ドメインPKCペプチドの試験を以下のようにして行う。確立された既存のカプサイシン誘導製の温痛覚過敏を逆転するペプチドの能力を、試験ペプチドをカプサイシン処理後に投与することを除いて、実施例2に記載された手順を用いて決定する。すなわち、ベースラインの測定の後、カプサイシンを投与する。25分後、試験物質を10分間にわたって投与する。種々の濃度の試験ペプチド(1μM、50μM、および100μM)を動物に投与する。次いで、実施例2に記載されるように熱試験を行う。
【0114】
本発明は、特定の実施形態に関して記載されているが、種々の変更および改変が、本発明から逸脱することなくなされ得ることが当業者に明らかである。
【0115】
(配列表)









【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2009−91372(P2009−91372A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10402(P2009−10402)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【分割の表示】特願2003−586177(P2003−586177)の分割
【原出願日】平成15年4月22日(2003.4.22)
【出願人】(504394593)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー (10)
【Fターム(参考)】