説明

病理学的プロセスに関する遺伝子発現を制御するためのキナゾリノン組成物

本発明は、病理学的プロセスにおける遺伝子発現を変化させ、それによって前記プロセスを予防または改善するための医薬組成物に関する。特にこの組成物は、線維化の間における遺伝子発現の変化を阻害または抑制するためのキナゾリノン、とりわけハロフジノンを含有する。本発明は、特に硬変した肝臓の再生を改善するための医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キナゾリノン組成物により哺乳類の遺伝子発現を制御する分野、および哺乳類の疾患を治療する際のキナゾリノン組成物の使用に関する。具体的には、本発明は、線維化中に誘導される遺伝子発現の変化を阻害または抑制するためのキナゾリノン、特にハロフジノンを含む組成物に関する。本発明は、特に硬変した肝臓の再生を改善するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗線維化活性を有するキナゾリノン
米国特許第3,320,124号では、キナゾリノン誘導体を用いてコクシジウム症を治療するための方法が開示され、権利が主張された。ハロフジノン、あるいは(キナゾリノン誘導体の一つである)7−ブロモ−6−クロロ−3−[3−(3−ヒドロキシ−2−ピペリジニル)−2−オキソプロピル]−4(3H)−キナゾリノンとして知られているものは、アメリカン シアナミッド カンパニー(American Cyanamid company)による前記特許において最初に記載され、権利が主張された。そして前記特許によって好ましい化合物が教示され、前記誘導体の中から商品化された一つが記載され、権利が主張された。続いて、米国特許第4,824,847号;第4,855,299号;第4,861,758号および第5,215,993号のすべては、ハロフジノンのコクシジウム症についての特性に関するものであった。
さらに最近になって、本発明の発明者のうちの幾人かによる米国特許第5,449,678号では、これらのキナゾリノン誘導体が、意外にも線維化の状態を治療するのに有用なことが開示されている。本開示によって、一般式:

式中:n=1〜2であり、
は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
の薬学上の活性を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含む、特定の阻害剤である組成物が提供される。
このグループの化合物であるハロフジノンは、このような治療に特に有効であることが分かった。
米国特許第5,449,678号では、硬皮症および移植片対宿主病(GVHD)などの線維化の状態の治療にこれらの化合物が有効であることが開示されている。米国特許第5,891,879号では、さらに再狭窄の治療にこれらの化合物が有効であることが開示されている。線維症および再狭窄は、過剰なコラーゲンの蓄積と関係があり、ハロフジノンによって、これらの過剰なコラーゲンの蓄積を阻害することができる。再狭窄は、血管の障害に反応して影響を受けた血管の管腔内での平滑筋細胞の増殖と細胞外マトリックスの蓄積に特徴がある。このような平滑筋細胞の増殖の一つの顕著な特徴は、正常な収縮性の表現型から合成的な表現型への表現型の変化である。I型コラーゲンがこのような表現型の変化を支持することが示されており、ハロフジノンによってこのことを防止することができる(チョイ イーティーら(Choi ET. et al.)、1995.Arch.Surg.,130:257-261;米国特許第5,449,678号)。
とりわけ、ハロフジノンは、線維母細胞によるコラーゲンの合成をインビトロで阻害する;しかしながら、インビボでは傷の治癒を促進する(WO01/17531)。ハロフジノンが、軟骨細胞におけるコラーゲンの合成にインビトロおよびインビボでは、異なる影響を与えることも示されていた。米国特許第5,449,678号に記載されているように、ハロフジノンは、軟骨細胞によるI型コラーゲンの合成をインビトロで阻害する。しかしながら、ハロフジノンで処理されたニワトリの骨折の割合は、増加しなかったことが報告されており、このことは、インビボでは、異なる影響は見られないことを示唆している。したがって、インビトロの研究から、ハロフジノンのインビボでの正確な挙動を常に的確に予測することはできない。
ハロフジノンなどのキナゾリノンを含有する医薬組成物は、悪性腫瘍の治療(米国特許第6,028,075号)、新血管形成の予防(米国特許第6,090,814号)、ならびに肝線維症の治療(米国特許第6,562,829号)に有用であることが開示されており、権利が請求されている。
【0003】
ハロフジノンおよび遺伝子の発現
I型コラーゲン合成の阻害剤としてのハロフジノンの活性に基づいて、ハロフジノンは、α1(I)型コラーゲンの遺伝子の発現は阻害するが、II型またはIII型の遺伝子の発現は、阻害しないことが見いだされた。培養液において、ハロフジノンは、マウス、トリ、および硬皮症患者かまたは慢性の移植片対宿主病(cGVHD)患者のいずれかに由来するヒトの皮膚の線維母細胞によるコラーゲンα1(I)の遺伝子の発現およびコラーゲンの産生を減少させた。線維症の動物モデルにおいて、過剰なコラーゲンがこの疾患の顕著な特徴であるが、ハロフジノンを投与することによって、コラーゲンの合成およびコラーゲンα1(I)遺伝子の発現の増加が抑制された。これらのモデルには、cGVHDに苦しむマウスおよびtight skin(Tsk+)マウス、(レヴィ−シャッファー エフら(Levi-Schaffer F. et al.)、1996.J Invest Dermatol.106:84-88;パインズ エムら(Pines M. et al.)、2001 Biochem Pharmacol 62:1221-1227)、ブレオマイシン処理後に肺線維症をにかかったラット(ナグラー エーら(NAGLER A. et al.)、1996.AM J RESPIR CRIT CARE MED.154:1082-1086)および種々の部位で癒着が進行したラット(ニスカ エムら(Nyska M. et al.)、1996.Connect Tissue Res.34:97-103)が包含されていた。本発明の発明者および協力者らは、既にcGVHDの患者をハロフジノンで局所的に治療することによって、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現を一時的に弱め、それによってヒトの臨床治療の有効性が実証されたことを報告している。
国際特許出願WO00/09070では、ハロフジノンおよびそれに関連するキナゾリノンが、I型コラーゲンの合成や遺伝子の発現だけでなく、外傷によって開始される病理学的プロセスのカスケードをも妨害することが開示されている。具体的に言えば、ハロフジノンが細胞外の細胞マトリックス系を分子レベルで制御することが分かった。本発明は、線維化した肝臓の再生を改善するための医薬組成物に関する。肝細胞における遺伝子の発現をインビトロで制御する種々の薬剤が、インビボで生理学的に活性化した下で常に同程度に活性化しているわけではなかったことは、既に実証されている。この現象は、おそらく部分的には、インビトロで試験された培養において、細胞の異質性が欠けていたことが理由であろう。
【0004】
キナゾリノンならびに肝硬変および肝臓の再生
線維症とは、慢性的なウイルスの感染、アルコール、免疫学上の攻撃(immunological attack)、遺伝的な形成物質の過負荷(hereditary metal overload)、寄生虫症、および毒物による損傷などの種々の慢性の損傷の原因に対する、肝臓の反応を示すものである。これらの損傷の原因が世界中に広く存在しているため、肝線維症は、発症率が高く、最終的には罹患率および死亡率と著しく関連する肝硬変に至る。肝線維症は、原因に関係なく、細胞外マトリックス(ECM)成分の増加という特徴を有するが、肝小葉の範囲内におけるこれらの相対的な分布は、損傷の原因の部位および性質によって異なる(ジョージ ジェイら(George J. et al.)、1999.PNAS USA 96:12719-12724)。
損傷を受けた肝臓においては、肝星細胞(HSC)がECMの主要な供給源を構成する。通常、これらの細胞は、増殖速度が遅い静止状態にあるが、活性化すると同時に、恐らくは肝細胞の損傷が原因で、これらは、筋線維母細胞様の細胞に分化して高い増殖能を有する。線維症において、HSCsによって合成されるECMタンパク質の支配的なものは、I型コラーゲンであり、I型コラーゲン遺伝子の転写が増加することが主な原因である。III型およびIV型などのその他の型のコラーゲン、ならびにその他の基質タンパク質の遺伝子発現の増加も報告されている。肝線維症は、基質タンパク質の産生と分解との間の相対的な不均衡も原因となり得る。活性化したHSCは、ECMの再構築に必要な種々のコラゲナーゼの供給源およびメタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMPs)の供給源を構成する(イレデール ジェイピーら(Iredale JP. et al.)、1996.Hepatology 24:176-184;アーサー エムジェイら(Arthur MJ. et al.)、1998.J Gastroenterol Hepatol 13:S33-S38)。
【0005】
本発明の発明者のうちの幾人かによる米国特許第6,562,829号では、ハロフジノンが、恐らくはI型コラーゲンの合成を阻害することによって、肝線維症の病態生理学的プロセスをインビボで阻害することが開示されている。ジメチルニトロサミン(DMN)またはチオアセトアミド(TAA)のいずれかによって損傷を与えられたラットにおいて、ハロフジノンは、HSCの活性化を未然に防ぎ、そしてコラーゲンα1(I)の遺伝子の発現およびコラーゲンの蓄積の増加を完全に停止させることを示した。線維症が認められたラットに与えた場合、ハロフジノンは、線維化の状態をほぼ完全に解消した。
現在では、肝線維症および肝硬変については、長い間の進行と逆行の両方が可能な動的プロセスであることを示す十分な一連の証拠が存在し、これらの証拠は、動物モデルとヒトの肝臓病の両方に由来したものである。線維症の病変部の進行および分解の両方には、肝臓に存在する種々のタイプの細胞による細胞クロストークが必要である。
肝臓組織の喪失後の肝臓の再生は、損傷に反応する肝臓の基本パラメーターである。このような長期間にわたって認められる現象は、現在では特定の外部からの刺激によって誘導される組織的な反応と定義されており、遺伝子の発現、成長因子の産生、および形態学的構造における連続的な変化を伴う。多数の成長因子やサイトカイン、特に肝細胞成長因子、表皮成長因子、トランスフォーミング成長因子−α、インターロイキン−6、腫瘍壊死因子−α、インスリン、およびノルエピネフリンは、このプロセスにおいて重要な役割を果たしているように思われる。IL6−/−マウスにおいて、肝細胞DNAの合成の極めて著しい低下、肝臓の壊死の増加、STAT3活性化の欠如、AP−I活性化の減少を含めた個々のG相の異常、および遺伝子の発現における選択的な異常が、肝切除術後や四塩化炭素による損傷の後で観察される。これらのすべては、IL−6の注射によって訂正される。IL6−/−におけるその発現が異常であるこれらの遺伝子の間で、部分肝切除後の肝臓は、AP−1因子、c−Myc、およびサイクリンD1などの細胞周期の前進に関与するタンパク質をコード化するものである。しかしながら、細胞の成長への関与がより小さいその他の多数の遺伝子については、インスリン様成長因子結合タンパク質−1(IGFBP−1)遺伝子を含めて、IL−6が存在しない場合は、誘導が鈍いことが示される。
【0006】
肝臓の再生には、無傷の臓器を構成する成熟した機能を有する細胞の増殖を必要とする。毒物による損傷、肝炎、外科的切除などの後、更新された組織が誘導されるかもしれない。この誘導によって、通常はG期になされる実質細胞の増殖がもたらされ、その結果、肝臓の実質組織が修復される。
肝切除術後の肝機能の不全症は、主要な肝切除に関連する主な課題の一つである。このことは、機能の蓄積が減少した肝硬変においてとりわけ正しい。肝硬変との関係を有することが多い肝細胞がんにおいては、悪性腫瘍の発生を防ぐために広範囲にわたって切除することは、疑問の余地がある処置であり、肝硬変などでは、再生を弱めてしまう。したがって、損傷を有する肝臓の再生能力を改善することは、肝細胞がんのより良い治療を可能とするだろう。本発明の発明者および協力者らの予備段階の結果(スピラ ジーら(Spira G. et al.)、2002.J.Hepatol.37:3e31-339)から、硬変した肝臓が部分肝切除後に再生するという能力をハロフジノンが改善することが示された。予防的な治療プログラムを適用することは、より少ないため、現存する病的な状態を治療することが、最も多く行われる望ましい治療法である。したがって、損傷が既に生じた後の肝組織を、肝臓の再生を改善することによって治療することは、非常に有効だろう。
【特許文献1】米国特許第3,320,124号
【特許文献2】米国特許第4,824,847号
【特許文献3】米国特許第4,855,299号
【特許文献4】米国特許第4,861,758号
【特許文献5】米国特許第5,215,993号
【特許文献6】米国特許第5,449,678号
【特許文献7】米国特許第5,891,879号
【特許文献8】国際特許出願WO01/17531
【特許文献9】米国特許第6,028,075号
【特許文献10】米国特許第6,090,814号
【特許文献11】米国特許第6,562,829号
【特許文献12】国際特許出願WO00/09070
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、肝臓の再生を改善することができるエフェクターが医学上必要であり、まだ対処されていないと認識されている。その効果がその他のあらゆる有用な修復メカニズムを妨げることがないような、転写レベルかまたはその他の分子レベルで干渉するこのようなエフェクターを有することは、極めて有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、線維化した組織の再生を改善するための医薬組成物に関する。具体的には、本発明は、病理学的プロセスにおける遺伝子の発現を変化させ、それによって前記病理学的プロセスを予防または改善するための医薬組成物を対象とする。第一の態様において、本発明は、線維化した肝臓の再生を改善するための医薬組成物を対象とする。第二の態様において、本発明は、線維化に関する遺伝子の発現を変化させるための医薬組成物を対象とする。第三の態様において、本発明は、毒素すなわち有毒物質によって誘導される遺伝子の発現を変化させ、それによって前記毒素によって誘導される病理学的プロセスを予防または改善するための医薬組成物を対象とする。
意外にも、下記のように、チオアセトアミド(TAA)によって誘導された硬変した肝臓の部分肝切除後の再生を、ハロフジノンが改善することが見いだされた。ハロフジノンは、チオアセトアミド(TAA)依存性の遺伝子の発現の変化、具体的に言えば、インスリン様成長因子結合タンパク質1(IGFBP−1)遺伝子の制御を抑制する。あらゆる理論またはあらゆるメカニズムを結合させるという願望が無くても、TAAにより誘導されるIGFBP−1遺伝子の下方制御をハロフジノンが抑制することが、ハロフジノン処理後に見られる肝線維症の分解と、ハロフジノンによる硬変した肝臓の再生への有益な効果を説明することができる。
一つの態様によれば、本発明によって、硬変した肝臓の再生能力を改善するための方法が提供される。

一つの実施形態によれば、本発明によって、
化学式:

式中:n=1〜2であり、
は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含む医薬組成物を、それが必要な個体に投与するステップを含む、肝臓の再生を改善するための方法が提供される。
このグループの化合物であるハロフジノンは、肝臓の再生を改善するために特に有効であることが分かった。
【0009】
別の態様によれば、本発明によって、線維化の間における遺伝子の発現の変化に関する病理学的プロセスを治療または予防するための方法が提供される。
一つの実施形態によれば、本発明によって、
化学式:

式中:n=1〜2であり、
は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含有する医薬組成物を、それが必要な個体に投与するステップを含む、線維化プロセスによる遺伝子の発現の変化に関する病理学的プロセスを治療または予防するための方法が提供される。
このグループの化合物であるハロフジノンは、このような治療に特に有効であることが分かった。
特定の実施形態によれば、線維化プロセスは、肝臓の線維化である。
【0010】
別の態様によれば、本発明によって、毒素にさらされることによる遺伝子の発現の変化を防ぐための方法が提供される。
一つの実施形態によれば、本発明によって、
化学式:

式中:n=1〜2であり、
は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含有する医薬組成物を、それが必要な個体に投与するステップを含む、毒素にさらされることによる遺伝子の発現の変化を防ぐための方法が提供される。
このグループの化合物であるハロフジノンは、このような治療に特に有効であることが分かった。
特定の実施形態によれば、前記毒素は、チオアセトアミド(TAA)であり、この毒素は、肝細胞の線維化を誘導することが知られている。
【0011】
さらに別の実施形態によれば、本発明の組成物は:
IGFBP−1−インスリン様成長因子結合タンパク質1
IGFBP−3−インスリン様成長因子結合タンパク質3
PRL−1(またはPTP4A1)−タンパク質チロシンホスファターゼ4A1
APO−AIV−アポリポタンパク質A−IV前駆体
PI3−キナーゼp85−アルファサブユニット
MAPキナーゼp38−マイトジェン活性化タンパク質キナーゼp38
プロテアソーム成分C8
E−FABP(FABP5またはC−FABP)−表皮性の脂肪酸結合タンパク質
PMP−22(SR13ミエリンタンパク質)−末梢ミエリンタンパク質22
PCNA−増殖細胞核抗原
プロテアソームアクチベーターrPA28サブユニットアルファ
c−K−ras2bプロトオンコジーン
ST2A2−アルコールスルホトランスフェラーゼA、推定アルコールスルホトランスフェラーゼ
TIMP−2−メタロプロテイナーゼ阻害剤2(前駆体)、メタロプロテイナーゼ2の組織阻害剤
MMP−3−メタロプロテイナーゼ3
MMP−13−メタロプロテイナーゼ13
からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の発現を変化させる。
【0012】
別の実施形態によれば、その遺伝子がIGFBPファミリーの一要素である遺伝子の発現を、組成物を用いて変化させる。別の実施形態によれば、この遺伝子は、IGFBP−1である。さらに別の実施形態によれば、この遺伝子は、IGFBP−3である。
別の実施形態によれば、本発明によって、
化学式:

式中:n=1〜2であり、
は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含有する医薬組成物を投与するステップを含む、肝細胞におけるIGFBP−1遺伝子の発現を増加させることによって、肝硬変を治療または予防するための方法が提供される。
このグループの化合物であるハロフジノンは、このような治療に特に有効であることが分かった。
【0013】
別の実施形態によれば、本発明によって、
化学式:

式中:n=1〜2であり、
は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含有する医薬組成物を投与するステップを含む方法であって、部分肝切除後にIGFBP−1、PRL−1、MMP−3およびMMP−13から選択される少なくとも一つの遺伝子の遺伝子発現を誘導することによって、硬変した肝臓を再生させてその能力を改善するための方法が提供される。
このグループの化合物であるハロフジノンは、このような治療に特に有効であることが分かった。
【0014】
別の実施形態によれば、本発明によって、
化学式:

式中:n=1〜2であり、
は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含有する医薬組成物を投与するステップを含む方法であって、部分肝切除後に肝細胞成長因子(HGF)のシグナル伝達経路における分子に影響を及ぼすことによって、硬変した肝臓を再生させてその能力を改善するための方法が提供される。
このグループの化合物であるハロフジノンは、このような治療に特に有効であることが分かった。
本発明の別の実施形態によれば、キナゾリノンとりわけハロフジノンを含有する組成物は、生物活性を有するIGF−1の量を高めるのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
特定のキナゾリノンの抗線維化活性は、種々の組織において実証されてきた。これらの化合物の中で、特に好ましい実施形態のものは、ハロフジノンである。
これらの化合物の作用メカニズムは、既にいくつかの考察の対象であり、そして前記化合物にさらされることによって誘導される遺伝子の発現が研究され、コラーゲンの種々のサブタイプの発現やその他の基質タンパク質の発現をハロフジノンが阻害していることが分かった。それにもかかわらず、同時に、回復プロセスを弱くしたり、または阻害することはなかった。実際、正反対のことが観察され、ハロフジノンで処理することによって、回復プロセスが改善した。
本発明は、線維化した肝臓の再生を改善するための医薬組成物に関する。本発明は、さらにハロフジノンが存在することにより、異なった形で発現する遺伝子に関する。さらに具体的に言えば、本発明は、ハロフジノンで処理された線維化した組織における遺伝子の異なった形での発現に関する。本発明は、さらに毒素にさらされ、かつハロフジノンで処理された組織における遺伝子の異なった形での発現に関する。有利なことに、本発明によって提供される前記方法によって、線維化の間における種々の遺伝子の発現に対するハルフジノンのインビボでの影響が説明できる。
今や、損傷を受けた線維化組織の成長や再生に必要なプロセスを、ハロフジノンが促進することが初めて開示された。ハロフジノンによる有益な効果は、ハロフジノンがインスリン成長因子−1の利用性または活性を高めるという事実によるものである。
意外にも、下記に示すような
化学式:

式中:n=1〜2であり、
は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルケンオキシからなる群の一要素であり;および
は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;を有する化合物および薬学的に許容され得るこれらの塩類が、線維化した組織の再生能力、具体的には線維化した肝臓の再生能力を改善することが分かった。
このグループの化合物である、
化学式:

を有するハロフジノンが、特に有効であることが分かった。
【0016】
本明細書で用いられるように、「低級アルキル」という用語は、直鎖または分岐鎖の、C〜Cのアルキル基を意味し、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどである。「アルケニル」という用語は、炭素−炭素の二重結合を少なくとも一つ有する基を意味する。
「アルコキシ」および「アルケンオキシ」という用語は、−ORを意味し、ここで、Rは、それぞれアルキルまたはアルケニルである。
TAAは、肝線維症のためのモデルとして用いられる。腹膜内(I.P.)注射によって投与する場合、TAAは、線維化組織の蓄積や肝機能の喪失を含む肝硬変を誘導する。本発明の発明者および協力者らは、ジメチルニトロサミンまたはTAAで処理したラットにおいては、ハロフジノンは、肝臓における星細胞(HSC)の活性化を抑制し、コラーゲンα−1(I)遺伝子の発現やコラーゲンの蓄積の増加を無効にすることを既に開示している(米国特許第6,562,829号)。さらに、スピラら(Spira et al.)(上記)が記載したように、ハロフジノンは、硬変した肝臓が部分肝切除術後に再生する能力を著しく改善する。ここで、この記載の内容は、引用することによって本明細書に取り込まれる。ハロフジノン処理によって、回復した肝臓の質量の増加(図2A)およびPCNA標識化指数の増加(図2B)によって実証される肝臓の再生が顕著に改善された。再生が改善されたことは、αSMA−陽性細胞の数の減少、コラーゲンの減少およびTIMP−2含有量の減少ならびにイスハック病期分類の改善によっても反映された。
肝線維症/肝硬変は、コラーゲンの合成およびコラーゲン分解の阻害が原因で活性化したHSCによるECMの過剰な産生に特徴を有する。したがって、肝線維症を治療するための薬理学的な介入は、HSCの活性化の阻害、ECMの合成の阻害および/または基質タンパク質の分解の促進を、少なくともある程度は目的とすべきである。肝硬変を元に戻すためには、活性化したHSCによってコラーゲン合成を阻害することや、肝細胞とその他のタイプの細胞の機能が正常であることは不可欠である。インビボでのハロフジノンの作用を引き起こす遺伝子を同定するための最初の試みにおいて、我々は、イスハックのランクが5〜6の肝臓と、ハロフジノン処理後のイスハックのランクが1〜2の肝臓との遺伝子のパターンを比較した(図3Aおよび図3B)。アレイにある588の遺伝子のうち、13の遺伝子が異なった形で発現した。
別の態様によれば、本発明によって、線維化プロセスの間における遺伝子発現の変化に関する病理学的プロセスを治療および予防するための方法が提供される。
【0017】
本発明の一つの実施形態によれば、ハロフジノンは、線維化の間における遺伝子発現の変化を抑制した。ここで、それらの遺伝子は:
IGFBP−1−インスリン様成長因子結合タンパク質1
IGFBP−3−インスリン様成長因子結合タンパク質3
PRL−1(またはPTP4A1)−タンパク質チロシンホスファターゼ4A1
APO−AIV−アポリポタンパク質A−IV前駆体
PI3−キナーゼp85−アルファサブユニット
MAPキナーゼp38−マイトジェン活性化タンパク質キナーゼp38
プロテオソーム成分C8
E−FABP(FABP5またはC−FABP)−表皮性の脂肪酸結合タンパク質
PMP−22(SR13ミエリンタンパク質)−末梢ミエリンタンパク質22
PCNA−増殖細胞核抗原
プロテオソームアクチベーターrPA28サブユニットアルファ
c−K−ras2bプロトオンコジーン
ST2A2−アルコールスルホトランスフェラーゼA、推定アルコールスルホトランスフェラーゼ
TIMP−2−メタロプロテイナーゼ阻害剤2(前駆体)、メタロプロテイナーゼ2の組織阻害剤
MMP−3−メタロプロテイナーゼ3
MMP−13−メタロプロテイナーゼ13
からなる群より選択される。
本発明の別の実施形態によれば、ハロフジノンは、線維化の間における遺伝子発現の変化を抑制した。ここで、これらの遺伝子は、IGFBPファミリーから選択される。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態によれば、ハロフジノンは、線維化の間における遺伝子発現の変化を抑制した。ここで、これらの遺伝子は、IGFBP−1およびIGFBP−3である。
一つの実施形態によれば、ハロフジノンは、肝臓の線維化の間における遺伝子発現の変化を抑制した。
今ここで、本発明は、TAAで誘導されるIGFBP−1遺伝子の下方制御を、ハロフジノンが抑制することを開示する。このことによって、ハロフジノン処理後に見られる肝臓の線維の分解や、ハロフジノンによる肝硬変した肝臓の再生への有益な効果を説明できるかもしれない。
さらに本発明において、IGF−1軸が健常者および患者における肝臓の生理機能に関与していることから、我々は、我々の注意の焦点をハロフジノンによるIGFBP合成への影響に絞った。線維症/肝硬変において、IGFBPファミリーの異なる要素をコード化した遺伝子の発現の部分的な変化ならびにIGF−Iの血漿レベルの変化およびその結合タンパク質の変化を含めた主な変化は、GH/IGF−I軸に見られた。肝線維症において、IGFBPs遺伝子の発現と、それらの血漿濃度との関係は弱いことが観察された。このことは、これらのクリアランスの変化を反映したものと思われる。
【0019】
IGFBP−1は、前初期遺伝子であり、部分肝切除後の残りの肝臓、または結果として肝臓が再生するその他の任意の肝臓に損傷を与えるプロセス後の残りの肝臓において、遺伝子転写レベルで誘導される。代謝状態の変化や肝臓の損傷後の変化によって、その血漿レベルが動的に制御されるので、識別可能である。IGFBP−1プロモーターは、広く研究されてきた。従来のプロモーターや遺伝子の欠如の分析から、転写開始部位の上流の二百〜三百程度の塩基の範囲内に強固に保存された配列が、肝臓に特定なホルモン性の制御を与えていることが示されている。DNアーゼI超高感度分析によって、プロモーター領域内にある、肝臓に限定された核に敏感な部位の一団が同定された。この組織の特定な発現パターンは、肝細胞核因子(HNF−1)のタンパク質のファミリーの要素などによってある程度は制御されるかもしれない。というのは、HNF−1の形態が、RNA開始部位のわずかに上流の保存部位を介しての肝臓がん細胞内の基礎的なIGFBP−1プロモーター活性の原因だからである。
クッファー細胞および内皮細胞により合成されるIGFBP−3は、ラットおよびヒトを含む成熟した哺乳類の種において最も豊富な循環性のIGFBPである。IGF−I、IGFBP−3および酸に弱いサブユニットは、150−kDaの三重複合体を形成する。この三重複合体は、IGF−Iの血漿中の半減期を延長し、遊離型で生物活性を有するIGF−Iの循環内の量を制限する。IGF−Iもその他のIGFBPsと結合して循環するが、これらの生理学上の重要性は、まだほとんど立証されていない。
【0020】
一つの実施形態によれば、本発明によって、化学式:

式中:n=1〜2であり、
は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物の薬学的に有効な量を投与することによって、肝細胞におけるIGFBP−1の発現の下方制御を妨げることにより肝硬変を治療するための方法が提供される。薬学的に許容され得るこれらの塩類も含まれる。
ハロフジノンは、肝細胞におけるIGFBP−1合成にのみ影響を及ぼした(図5)。このことは、肝臓におけるIGFBP−1の主要な供給源は、肝細胞であるとの考えと一致した。
別の態様によれば、本発明によって、毒素にさらされることによる遺伝子発現の変化を抑制するための方法が提供される。
一つの実施形態によれば、本発明によって、化学式:

式中:n=1〜2であり、
は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含有する医薬組成物を、それが必要な個体に投与するステップを含む、毒素にさらされることによる遺伝子発現の変化を抑制するための方法が提供される。
このグループの化合物であるハロフジノンは、このような治療に特に有効であることが分かった。
【0021】
特定の実施形態によれば、前記毒素は、チオアセトアミド(TAA)であり、これは、肝細胞における線維化を誘導することが知られている。
さらに別の態様によれば、本発明によって、肝臓の線維化の間における遺伝子発現の変化に関する病理学的プロセスを治療または予防することにより、損傷を受けた肝臓の再生を改善するための方法が提供される。
一つの実施形態によれば、本発明によって、
化学式:

式中:n=1〜2であり、
は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物の薬学的に有効な量を投与することにより、部分肝切除後にIGFBP−1遺伝子およびPRL−1遺伝子の発現を誘導することによって、硬変した肝臓を再生させて、その能力を改善するための方法が提供される。薬学的に許容され得るこれらの塩類も含まれる。
このグループの化合物であるハロフジノンは、このような治療に特に有効であることが分かった。
【0022】
部分肝切除後の残りの肝臓において、転写レベルで誘導される前初期遺伝子のうちの二つのものであって、再生の間の肝臓の代謝を維持するのにおそらく重要であると思われるものは、IGFBP−1およびタンパク質チロシンホスファターゼ4A1(PRL−1)である。これらの両方の遺伝子は、ハロフジノンによって上方に制御された(図3)。この観察結果によって、ハロフジノン処理後に硬変した肝臓の再生能力が大きく改善されることを説明することができた。再生した肝臓においては、肝細胞核因子1を介してインターロイキン6によってIGFBP−1が制御され、STAT3因子や活性化タンパク質1(AP−1、c−Fos/c−Jun)が誘導される。ハロフジノンによるI型コラーゲンの合成への阻害効果もc−Jun依存性であり(ファン エスら(Fan S. et al.)、2000.Oncogene 19:2212-2223)、同じ経路がハロフジノン依存性のIGFBP−1の合成の促進に関与している可能性が高くなった。シクロヘキサミドによって、ハロフジノン依存性のIGFBP−1合成の活性化(図7)およびコラーゲンα1(I)遺伝子発現の阻害(ハルヴィ オーら(Halevy O. et al.)、1996.Biochem Pharmacol 52:1057-1063)の両方が無効にされたことは、タンパク質のデノボ合成がハロフジノンのシグナル伝達の必要条件であることを示唆するものである。
別の実施形態によれば、本発明によって、
化学式:

式中:n=1〜2であり、
は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物の治療上の有効量を投与することにより、部分肝切除後に肝細胞成長因子のシグナル伝達経路における分子に影響を及ぼすことによって、硬変した肝臓を再生させてその能力を改善するための方法が提供される。薬学的に許容され得るこれらの塩類も含まれる。
このグループの化合物であるハロフジノンは、このような治療に特に有効であることが分かった。
【0023】
ホスファチジルイノシトール3’キナーゼ(PI3K)は、肝細胞におけるIGFBP−1遺伝子の制御(シチィ エスビーら(Cichy SB. et al.)、1998.J Biol Chem 273:6482-6487)および星細胞におけるI型コラーゲン遺伝子の制御(スヴェグリアティーバロニ ジーら(Svegliati-Baroni G. et al.)、1999.Hepatology 29:1743-1751)に関与していた。興味深いことには、前記PI3Kのp85 α−サブユニットは、ハロフジノンによって上方に制御されるバッテリー遺伝子のうちの一つであった。MAPキナーゼp38もハロフジノンによって上方に制御された。このことは、一つ以上の経路の関与を示唆するものである。部分肝切除後にPI3Kが肝臓の再生を促進することを経てシグナルを送ることが示されている肝細胞成長因子(HGF)が、肝硬変のTAAモデルにおいてコラーゲン合成を減少させ、IGFBP−1遺伝子の発現を誘導することに気づいたのは、興味深い。IGF−1の生物学的有用性と作用の調節に加えて、IGFBP−1は、その他の活性にも関与していた。星細胞によるIGF−I依存性のI型コラーゲンの合成を阻害することと同様に、IGFBP−1は、I型コラーゲン遺伝子の発現の阻害に直接関与していた。プロアポトーシスのシグナルのレベルを小さくすることによって、IGFBP−1は、マイトジェンシグナル経路を制御し、肝臓において肝臓の重要な生存因子として機能することが示された。IGFBP−1のさらなる特徴は、細胞の運動性に影響を与える能力である。ハロフジノン処理後にHepG2によって分泌された前記IGFBP−1は、星細胞の運動性を阻害した(図8)。星細胞の運動性は、I型コラーゲンに依存する;したがって、インビボでは、I型コラーゲンの産生を阻害することによって、星細胞の運動性の阻害をさらに生じさせることになり、肝細胞によるIGFBP−1の合成を促進することによって、ハロフジノンは、星細胞の運動性を直接的に阻害するのかもしれない。移動能力は、星細胞の「活性化された」表現型の一部であるので、このことは、一つの主要な重要事項である。
【0024】
遺伝子発現の制御に影響を与えることが可能なあらゆる手段によって、本発明の組成物を投与してもよい。たとえば、投与としては、非経口、皮下、静脈注射、筋肉内、髄腔内、経口、または局所であり得る。
有効成分を単独で投与することもできるが、それらを医薬製剤として提供することが好ましい。本発明の製剤には、一つまたはそれ以上の許容されるそれらの担体と共に、上記に規定されたような少なくとも一つの有効成分が含まれ、必要に応じてその他の治療用成分が含まれてもよい。製剤のその他の成分と適合し、かつその受容者に害を与えないという意味で、単数(または複数)の担体は、許容し得るものでなければならない。
製剤は、剤形単位で提供されることが好都合であり、製薬学の分野で周知のあらゆる方法によって調製することができる。このような方法としては、有効成分と担体とを関連させるステップが挙げられ、この担体は、一つまたそれ以上の副成分を構成する。一般的には、有効成分と液体担体もしくは細かく分割した固体担体、またはその両方とを均等かつ完全に関連させ、次いで必要に応じて生産物を成形することによって、製剤を調製する。本発明の組成物における有効成分の用量は、変更してもよい;選択される剤形は、投与経路および治療期間に左右される。投与量および投与回数は、副作用の可能性を考慮に入れつつ、患者の年齢および一般的な健康状態に左右されるだろう。投与することも、その他の薬剤を用いての併用治療や投与される薬剤に対する患者の耐性に左右されるだろう。
経口投与のための固体の剤形としては、カプセル、錠剤、丸薬、粉剤および顆粒が挙げられる。このような固体の剤形において、少なくとも一つの不活性な賦形剤、たとえばショ糖、乳糖またはデンプンなどを有効な化合物と一緒に混合する。このような経口用の剤形には、不活性な賦形剤以外の追加物質を含めることができる。カプセル、錠剤および丸薬の場合において、製剤に緩衝化剤を含めてもよい。錠剤および丸薬を腸溶コーティングでさらに調製してもよい。
【0025】
経口投与のための液体の剤形としては、薬学的に許容され得るエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられ、調剤学の分野で広く用いられる不活性な賦形剤を含有する。不活性な賦形剤に加えて、このような組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤などの補助薬、ならびに甘味料を含有してもよい。
本発明による非経口投与のための製剤としては、滅菌水溶液もしくは非水性液、懸濁液またはエマルジョンが挙げられる。非水性の溶媒または賦形剤の具体例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物性油、オレイン酸エチルなどの注射用の有機エステルが挙げられる。
当業者が周知のいずれかの方法によって局所投与を実施することができ、クリーム、軟膏または経皮貼布に組成物を組み込む方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。クリームに配合した場合、有効成分を水中油型のクリーム基剤と共に用いてもよい。必要に応じて、クリーム基剤の水相に、たとえば少なくとも30重量%の多価アルコール、すなわち二つ以上のヒドロキシル基を有するアルコールであり、たとえば、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセリンおよびポリエチレングリコールならびにそれらの混合物などが含まれていてもよい。望ましい局所用製剤としては、皮膚またはその他の病気に冒された部位を経由しての有効成分の吸収または浸透を促進する化合物が挙げられる。このような皮膚の浸透を促進するものの具体例としては、ジメチルスルホキシドおよび関連する類似体が挙げられる。
【0026】
本発明のエマルジョンの油相は、既知の成分から既知の方法で構築してもよい。この相は、ただ単に乳化剤(emulsifier)(それでなければ乳化剤(emulgent)として知られているもの)のみから構成されていてもよいが、少なくとも一つの乳化剤(emulsifier)と脂肪または油の混合物か、または少なくとも一つの乳化剤(emulsifier)と脂肪および油の両者を含む混合物を含むものが望ましい。好ましくは、脂肪親和性の乳化剤(emulsifier)と共に親水性の乳化剤(emulsifier)が含まれ、これらは、安定剤として機能する。脂肪と油の両者を含むものも好ましい。総合すれば、単数(または複数)の安定剤を含むかまたは含まない単数(または複数)の乳化剤(emulsifier)は、いわゆる乳化性ワックスを作製し、このワックスは、油および/または脂肪と共に、いわゆる乳化性軟膏基剤を作製する。これは、クリーム剤の油性の分散相を形成する。本発明の製剤に用いるのに適した乳化剤(emulgent)およびエマルジョンの安定剤としては、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリンおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
特定のキナゾリノン誘導体「ハロフジノン」は、明細書全体にわたって言及されているが、その他のキナゾリノン誘導体もしかるべき場合に用いてもよいことが理解される。ここで、これらの誘導体は
一般式:

式中:n=1〜2であり、
は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である。薬学的に許容され得るこれらの塩類も含まれる。
【0027】
ここで、次の図面および実施例における特定の好ましい実施形態を伴って、それらの態様をより完全に理解できかつ評価できるように本発明を説明するが、これらの特定の実施形態に本発明を制限する意図はない。これに対して、すべての選択肢、変更物および均等物を、添付された特許請求の範囲に規定されたような、本発明の範囲内に含まれ得るものとして網羅する意図がある。したがって、好ましい実施形態が含まれる次の図面および実施例は、本発明の実践を例証することに役立てようとするものであり、示されている詳細な事項は、例示を目的とするものであり、本発明の好ましい実施形態を例証をもって検討するためだけのものであることが理解され、製剤化の手段ならびに本発明の原則および概念上の態様を最も役立つように、かつ容易に理解できる記述とするように考えられたものを提供するために提示されている。
<実施例>
材料
ハロフジノンブロムヒドラートをコルガード バイオファーマシューティカルズ リミテッド(Collgard Biopharmaceuticals Ltd.)(テルアヴィヴ、イスラエル)から得た。TAAをシグマ(Sigma)(セントルイス、ミズーリ州、アメリカ合衆国)から得た。アルファ平滑筋アクチン(αSMA)モノクローナル抗体(1:200希釈)をダコ エー/エス(Dako A/S)(グロストラップ、デンマーク)から得た。TIMP−2ポリクローナル抗体(1:50希釈)およびHistomouse SPキット(二次抗体)をツァイメッド ラボラトリーズ インク(Zymed Laboratories Inc.)(サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)から得た。IGFBP−1ポリクローナル抗体、IGFBP−3ポリクローナル抗体をサンタ クルズ バイオテクノロジー、インク(Santa Cruz Biotechnology, Inc.)(カリフォルニア州、アメリカ合衆国)から得た。AtlasラットcDNAアレイは、ハウスキーピングcDNAsと二重のドットで見分けられるネガティブコントロールcDNAsを含む、広範囲の機能グループで構成された588のラットの断片からなり、これをクロンテック(Clontech)(パロアルト、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)から得た。
【0028】
動物、組織学および細胞
オスのWistarラット(200−250グラム)を自由に摂食させ、規格ガイドラインのもとで、飼育した。1週間、2週間および4週間の間、TAA(200mg/kgにて週に二回)を腹膜内に投与することによって、肝臓の線維化を誘導した。食餌にハロフジノン(5ppm)を添加した(ナグラー エーら(Nagler A. et al.)、1988.Ann Surg 227:575-582; ナグラー エーら(Nagler A.et al.)、1999.Am J Obstet Gynecol 180:558-563; ブルック アールら(Bruck R. et al.)、2001.Hepatology 33:379-386)。既に記載されたように(ブルック アールら(Bruck R. et al.)、2001.Hepatology 33:379-386)、切片標本の作製、in situハイブリダイゼーションおよび免疫組織細胞の化学的研究を実施した。ウリジン[αS35]トリホスフェートによって、IGFBP−1プローブを標識化した。用いたセルラインは、ヒトの肝細胞がんHepG2、Hep3BおよびHuh-7、ヒトの線維母細胞Detroit 551、ラットの骨肉腫ROS 17/2.8ならびにSV40−不死化ラット細胞のHSC-T6(S.L Friedman博士の好意により提供された)であった。10%のFCSを含むDMEMにて細胞を増殖させ、一晩培養した後、この培地を、無血清のDMEMと交換した。血清飢餓状態(18時間)の後、その培地を、ハロフジノンを含む新鮮な培地またはハロフジノンを含まない新鮮な培地と交換した。ラットの初代肝細胞を記載のように(リバル−ウェクスラーら(Libal-Weksler Y. et al.)、2001.J Nutr Biochem 12:458-464)調製し、フィブロネクチンで被覆した6ウェルプレート上で、10%のFCSを含むDMEMにおいて1.5×10細胞/ウェルの密度にて培養した。播種から18時間後に、細胞を6時間の間、血清飢餓状態とし、1nMのハロフジノンまたは100nMのインスリンでさらに24時間処理した。ならし培地を集め、全RNAを精製するためのTRI Reagent内で、細胞を直接集めた。増殖を計算するために、24ウェルプレート内で、10%のFCSを含むDMEMにて細胞を培養し、セルカウンターを用いて細胞数を直接評価した。
【0029】
部分肝切除
成熟したオスのSprague-Dawleyラット(140−200g)を、標準的な条件下で、食餌および水を与えて飼育した。弱い麻酔の下で、Higgins and Andersonの方法に従って、中葉および側部左葉を除去することによって、70%の部分肝切除(PHx)を実施した(イスハック ケイら(Ishak K et al.)、1995.J Hepatol 22(6):696-699)。手術から異なる間隔をあけて、動物(群あたり6匹)がエーテル麻酔下で犠牲となった。摘出した肝臓の重量を測定し、0.5gのサンプルを、組織化学、免疫染色およびin situハイブリダイゼーションのために4%のパラホルムアルデヒドで処理するか、またはRNA抽出およびヒドロキシプロリンの含有量のために液体窒素で凍結させた。0.2mg/体重gのTAAを週に二回、八週間の間、腹膜内に投与することによって、肝硬変を誘導した。このような処置の結果、特徴的な小結節状の病変が生じた。食餌にハロフジノンを5ppmまたは10ppmの濃度で添加した。
線維症のイスハック病期分類
イスハック病期分類システム(イスハックら(Ishak et al.)、上記)を用いて、線維症のレベルを決定した。0−正常な肝臓構造;1−門脈のいくつかの領域に線維化が進行しており、短い線維性の隔壁を伴うかまたは伴わない;2−門脈のほとんどの領域で線維化が進行しており、短い線維性の隔壁を伴うかまたは伴わない;3−門脈のほとんどの領域で線維化が進行しており、時折門脈から門脈への架橋が見られることがある;4−門脈の領域で線維化が進行しており、架橋形成が著しい(門脈から門脈ならびに門脈から中央部);5−顕著な架橋形成(P−Pおよび/またはP−C)が見られ、時折小結節を伴う;6−肝硬変である。シリウスレッド(ジュンクェラ エルシーら(Junquiera LC. et al.)、1979.Anal Biochem.94(1):96-99)での染色と別個の10領域で計算した後、ランク付けを行った。
【0030】
肝臓の再生のモニタリング
PCNAの免疫染色と肝臓の重量によって、肝臓の再生をモニターした。切除した肝臓の部分の重量を測定することによって、回復した肝臓の質量を評価した。この値を用いて肝切除術前の肝臓の総重量(a)を計算した。犠牲のもとに残りの肝臓を摘出し、重量を測定し、それぞれの30%の肝臓の重量を減じた(b)。回復した肝臓の質量を、b/aの比率に100を乗じて得たパーセントで示した。
RNAの精製とAtlasラットcDNAアレイでのハイブリダイゼーション
肝臓の組織からの全RNA(3匹のラットからのRNAと同一の量を含む5μg)を、TRI Reagentを用いて分離し、DNアーゼIで処理して、[α−32P]dATP(3000Ci/mmol)の存在下で、MMLV逆転写酵素(50U/μL)を用いて48℃で25分間かけて、逆転写を行った。アレイの膜を、ExpressHyb溶液中で68℃で1時間かけてプレハイブリダイズし、68℃で一晩かけて、標識化cDNAプローブでハイブリダイズした。下端から二番目の列はハウスキーピング遺伝子を表す。cDNAマイクロアレイのイメージをAtlasimage 1.01ソフトウェア(クロンテック(Clontech)、アメリカ合衆国)で分析した。バックグラウンドシグナルと余白を考慮した初期設定の外部バックグラウンドにて、バックグラウンドを計算した。シグナルの閾値は、バックグラウンドを基準とし、加算法を利用して、シグナル強度を全体的に正規化した。
【0031】
免疫沈降、ウェスタンブロット法およびノーザンブロット法ならびにプローブ
HepG2のならし培地を、ヤギ抗IGFBP−1または健康なヤギの血清(1:100希釈)と共に4℃で一晩かけて培養した。タンパク質A-Sepharoseと共に4℃で2時間かけて培養し、次いで13,000rpmで5分間遠心分離処理を行うことによって、免疫複合体を沈殿させた。上澄みおよびペレットにおいてIGFBP−1タンパク質が存在するか否かについて、ウェスタンブロット法によって分析した。ウェスタンブロット法については、12.5%のSDS-PAGE上でならし培地(45μl)の電気泳動を行い、ニトロセルロース膜上に転写し、抗IGFBP−1を用いて探査した。ノーザンブロット法については、全RNAの10μgを、1.2%のアガロース/ホルムアルデヒドゲル上で変性条件下で分離し、Nytran Nナイロン膜上に転写し、32P標識化cDNAプローブを用いて68℃で一晩かけてハイブリダイズした。次のプライマー対:

を用いたRT-PCRでの増幅によってプローブを作製した。
細胞の運動性の評価
HitKit(セロミクス インク(Cellomics, Inc.)、ピッツバーグ、ペンシルベニア州、アメリカ合衆国)によって運動性を計算した。HSCを微細なビーズのローン上に蒔いた。細胞が移動するのに従って、細胞は貪食し、ビーズを脇に押しのけて細胞の後ろ側の軌道がはっきりとなった。位相差顕微鏡法によって可視化された軌道の面積は、細胞の運動の規模に比例する。DeltaVisionデジタル顕微鏡法システムを用いて、30分間の間隔を設けた低速度撮影の映画を得、Priismソフトウェアを用いて処理した。細胞の面積を除去した後のμmで表すファゴキネティック軌道(PKT)の平均±S.Eとして、結果を提示する。
【0032】
実施例1:TAA誘導性の肝臓の線維化へのハロフジノンによる影響
コントロールのラットの肝臓の切片標本は、多くの場合ECMが無く(H&E染色)、とりわけコラーゲンが無かった(シリウスレッド染色)。αSMA抗体を用いた場合、星細胞を検出できなかった。このことは、後者は、静止状態にあったことを示唆するものである。コラーゲンα1(I)遺伝子を発現する細胞またはTIMP−2を合成する細胞を、それぞれin situハイブリダイゼーションまたは免疫組織化学で検出することはできなかった(図1)。ハロフジノンのみで処理したラットにおいては、上記のパラメーターに変化が見られなかった。TAAで4週間処理すると、肝臓のECM含有量について著しい上昇が示され、小葉を取り囲むコラーゲンの塊が見られた。そして長い線維性の中隔が生じ、組織構造が変形するという結果に至った。これらの中隔には、高いレベルのコラーゲンα1(I)遺伝子が発現し、高いレベルのTIMP−2を含むαSMA−陽性細胞が多数を占め、これらのすべてに線維形成が進行しているという特徴がある。これらの切片標本を、イスハック病期分類システムにより、5〜6のランクで診断した。ハロフジノンの経口投与によって、ほとんどの星細胞の活性化が阻害され、わずかに痕跡量のαSMA−陽性細胞が検出されただけであった。低レベルのコラーゲンα1(I)遺伝子を発現する残りの星細胞は、低レベルのコラーゲンを生じさせる結果となった。TAA処理したラットと比較して、TIMP−2のレベルも低下していた。イスハック病期分類による1〜2のランクとして診断された切片標本から得たDNAを、Atlasマイクロアレイに用いた。
【0033】
実施例2:肝臓の再生
肝臓のイスハック病期分類のハロフジノン依存性の減少には、再生能力の改善が伴った。ハロフジノン処理を8週間行った結果、肝臓の質量が正常値に近くなり、コントロール食を与えた群で記録された値よりも有意に高くなった(24.2±5.7対13.7±4.5、p<0.05)(図2A)。このような上昇は、非処理動物のPCNA標識化指数の18.8±2.9と比較して、31.4±6.4というその指数と関係があった(図2B)。
上記の群間で変化するPHxに先立って、PCNAのレベルを注目すべきである。PHxの前でのPCNAの染色は、健康なコントロール群においては無視できる程度であった。TAAの供給は、多数の増殖細胞によって予想されるところに特徴があった。ハロフジノンが存在する場合または存在しない場合のいずれかにおいて、TAAを除去すると、非処理群で記録された組織変化にもかかわらず、標識化指数が低くなる結果となった。70%のPHxに対応した二つの群の能力は異なってはいたが、ハロフジノン処理後の再生能力が顕著に改善したことが実証された。
【0034】
実施例3:ハロフジノン依存性遺伝子の発現
TAAおよびハロフジノンの両方で処理された肝臓の生検材料(図3B)と比較して、TAA処理された肝臓の生検材料(図3A)において、それぞれに発現した遺伝子を同定する目的で、cDNAアレイハイブリダイゼーション分析を用いた。異なった形で発現した少数の遺伝子が同定された(表1)。いくつかの遺伝子(IGFBP−1;PRL−1およびアポリポタンパク質A−IV)は、ハロフジノンによって上方に制御され、それに対して、その他の遺伝子(E−FABP、プロテオソームアクチベーター28α、末梢ミエリンタンパク質22、アルコールスルホトランスフェラーゼおよびTIMP−2)は、ハロフジノンによって下方に制御された。

Atlasマイクロアレイの結果を有効なものとする目的で、二つの遺伝子−PRL−1およびアポリポタンパク質A−IV−をノーザンブロット法で分析し、その結果をAtlasマイクロアレイの結論で確認した(図3C)。ハロフジノン処理後のTIMP−2含有量の減少も実証した(図1)。肝臓の線維化および再生において、IGF−1/IGFBP軸が関与していることが文書で十分に裏付けられたため、我々は、注意の焦点をIGFBP−1遺伝子に絞った。ハロフジノンによるIGFBP−1遺伝子の発現への影響を、ノーザンブロット分析によって確認した(図4A)。TAA処理から1週間後、ハロフジノン処理のあらゆる影響がない状態で、IGFBP−1遺伝子の発現が減少したことが見られた。対照的に、処理から2週間後および4週間後、TAAにより誘導されるIGFBP−1遺伝子の発現の下方制御をハロフジノンが抑制した。単独のハロフジノンによるIGFBP−1のmRNAのレベルへの影響は、わずかであったことが観察された(図4A)。IGFBP−1遺伝子だけが、ハロフジノンによって影響を受けるファミリーの要素であるかどうかを決定するために、IGFBP−3プローブを用いての同一の肝臓の生検材料のノーザンブロット分析を実施した。処理から1週間後のあらゆる群においては、IGFBP−3のmRNAレベルは、変化しないことが分かった。2週間後および4週間後では、TAAによってIGFBP−3レベルの上昇が生じたが、ハロフジノンによって部分的に抑制された。単独のハロフジノンがIGFBP−3のmRNAレベルに影響を与えることは、試験されたいかなる時点においてもなかった。ハロフジノンの影響をさらにin situハイブリダイゼーション(図4B)によって確認した。コントロールの肝臓においては、IGFBP−1遺伝子の高レベルの発現が見られた。ハロフジノンにより抑制されるIGFBP−1遺伝子の発現は、TAA処理によって減少した。
【0035】
実施例4:ハロフジノンによるIGFBP−1合成への影響
ラットの初代肝細胞、HepG2、Hep3B、Huh-7およびHSCを用いて、IGFBP−1のハロフジノン依存性を合成する供給源を同定した。さらに、その他の組織(線維母細胞および骨芽細胞)から得たセルラインも同様に用いた。肝細胞を起源とする細胞のみが、ハロフジノンに反応したIGFBP−1遺伝子の発現と合成の増加を示した(図5A)。ラットの初代肝細胞において、その他の研究(イスハック ケイら(Ishak K. et al.)、J Hepatol;22:696-699)と同じく、インスリンは、IGFBP−1遺伝子の合成の減少を生じさせたが、1nMという低濃度のハロフジノンは、IGFBP−1の合成を促進した(図5B)。HepG2においては、ハロフジノンがない場合は、IGFBP−1遺伝子の発現が無かったことが認められた(図6A)。10nMの濃度のハロフジノンは、IGFBP−1遺伝子の発現を促進し、より高濃度のハロフジノンでは、さらに促進することが観察された。ハロフジノンが無い場合、HepG2細胞のならし培地においては、極めて低いレベルのIGFBP−1遺伝子が認められた(検出できない場合もあった)(図6B)。50nMの濃度のハロフジノンから、IGFBP−1のレベルが上昇することが観察された。ハロフジノン処理から6時間後という早い時点でIGFBP−1の遺伝子の発現を促進することが観察され(図6C)、結果的に10〜15時間後のならし培地においてIGFBP−1含有量が増加した(図6D)。HepG2細胞をIGFBP−1合成に影響した濃度のハロフジノンと共に培養し、その24時間後に、細胞の増殖の顕著な減少が観察された(図6E)。培養期間の全体において、ハロフジノンが存在することは不可欠ではなく、23時間後に分泌されるIGFBP−1遺伝子の増加を検出するためには、ハロフジノンと共に1時間の培養をすることで十分であった。ハロフジノンとの培養時間を長くすることで、この発現量は増加した(図7A)。この期間中、ハロフジノンによるIGFBP−1遺伝子の発現へのあらゆる影響を実証するためには、タンパク質のデノボ合成が必要であった。というのは、シクロヘキサミドとの培養によって、ハロフジノン依存性のIGFBP−1遺伝子の発現の促進が無効化されるからである(図7B)。
実施例5:星細胞の運動性
HepG2細胞を50nMのハロフジノンと共に11時間培養した。この後、培地を除去し、細胞をDMEMで二回洗浄してハロフジノンのあらゆる痕跡を取り除いた。新鮮な培地と共にさらに13時間培養した。ハロフジノン除去後、細胞は、IGFBP−1の分泌を継続していた。培養期間が終了した時点で、ならし培地は、非処理細胞よりも高レベルのIGFBP−1を含んでいた(図8A)。HSCを添加した場合、IGFBP−1を含む培地によって、細胞の運動性が顕著に妨害された。ならし培地からのIGFBP−1の免疫沈降によって、HSCの運動性に与える妨害の影響は、無効化されたが、正常な血清を用いた場合は、そのような影響は見られなかった(図8B)。





【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】肝臓の切片標本の組織学的分析を示す図である。コントロールのラット、ハロフジノン(H、食餌中に5ppm)で処理したラット、TAA(T、200mg/kgにて週に二回)で処理したラットまたはこの二つの組み合わせで4週間(T+H)処理したラットから肝臓のサンプルを取り出した。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で切片標本を染色し、コラーゲンについてはシリウスレッドで染色した。星細胞およびTIMP−11を免疫組織化学によって検出した。コラーゲンα1(I)遺伝子の発現を、in situハイブリダイゼーション法によって計算した。TAA処理後にコラーゲンα1(I)遺伝子を発現させ、コラーゲンとメタロプロテイナーゼIIの組織阻害剤(TIMP−II)を合成する、アルファ平滑筋アクチン(αSMA)陽性星細胞のレベルの高さに留意すること。ハロフジノンを用いて、線維性の病変部の顕著な分解が観察された。
【図2】次のハロフジノン食を与えた場合または与えなかった場合の、正常なラットおよびTAA処理ラットの肝臓の再生を示す図である。ラットに70%部分肝切除を施し、このラットの犠牲のもとに48時間の実験を行った。回復した肝臓の質量(図2A)およびPCNA標識化指数(図2B)によって、肝臓の再生能力をモニターした。外科手術後および48時間後の時点のPCNA標識化指数を記録した。再生能力を改善することによって、ハロフジノンの有益な使用法を実証している。
【図3】ハロフジノンによるラットの肝臓の遺伝子の発現への影響が記載されている。肝臓組織からの全RNAを、Atlasマイクロアレイフィルターとハイブリダイズさせた。図3Aは、4週間の間、TAAのみで処理(200mg/kgにて週に二回)したラットの肝臓の生検材料のマイクロアレイ分析を示す。図3Bは、4週間の間、TAA(200mg/kgにて週に二回)とハロフジノン(食餌中に5ppm)を組み合わせて処理したラットの肝臓の生検材料のマイクロアレイ分析を示す。矢印は、異なった形で発現した遺伝子を指している。図3Cは、PRL−1およびApoA−IVの発現を示す。TAA(T)およびハロフジノンを組み合わせたもの(T+H)で処理したラットの肝臓の生検材料から全RNAを調製した。RNAの添加を指示するものとして、リボソーム28SのRNAを用いた。
【図4】ハロフジノンによって、IGFBP−1のインビボでの遺伝子発現の促進が惹起されることを示す図である。ノーザンブロット法(図3A)およびin situハイブリダイゼーション法(図3B)によって、IGFBP−1について評価した。図4Aでは、コントロールのラット(C)、TAAのみで処理したラット(T)、およびハロフジノンのみで処理したラット(H)、または組み合わせたもので処理したラット(T+H)の肝臓の生検材料から、全RNAを調製した。1週間後、2週間後および4週間後に、IGFBP−1プローブまたはIGFBP−3プローブとハイブリダイズさせた。RNAの添加を指示するものとして、リボソーム18SのRNAを用いた。図4Bでは、処理から4週間後の肝臓の切片標本を、IGFBP−1プローブとハイブリダイズさせた。暗視野顕微鏡写真は、アンチセンスのIGFBP−1プローブの、コントロールのラット(C)、TAAで処理したラット(T)およびTAAとハロフジノンを組み合わせて処理したラット(T+H)の肝臓の切片標本とのハイブリッド形成を示している。センスのIGFBP−1プローブを用いて、ネガティブコントロールとしてのハイブリダイゼーションを行った。
【図5】種々の細胞のタイプにおける、ハロフジノンによるIGFBP−1の合成への影響を示す図である。図5Aでは、HEPG2細胞、Huh-7細胞、Hep3B細胞、Det551細胞、ROS細胞およびHSC細胞を、50nMのハロフジノンを含む無血清培地およびそれを含まない無血清培地で培養した。IGFBP−1遺伝子の発現をノーザンブロット法(NB)によって分析し、ならし培地中のIGFBP−1の有無をウェスタンブロット法(WB)によって評価した。肝細胞だけが、ハロフジノンに反応してIGFBP−1を合成したことに留意すること。図5Bでは、ラットの初代肝細胞を、インスリン(Ins、100nM)またはハロフジノン(Halo、1nM)と共に24時間培養した。IGFBP−1をウェスタンブロット法によって検出した。
【図6】ハロフジノンによるIGFBP−1合成への、および細胞増殖への影響:投与量と時間応答を示す図である。HepG2細胞を種々の濃度のハロフジノンと共に24時間培養した。IGFBP−1遺伝子の発現レベルをノーザンブロット法(図6A)によって分析し、ならし培地中のIGFBP−1の含有量をウェスタンブロット法(図6B)によって評価した。図6Cおよび図6Dは、ならし培地中の、50nMのハロフジノンに反応して種々の間隔を設けた後のIGFBP−1遺伝子の発現レベルとIGFBP−1遺伝子のレベルをそれぞれ表す。図6Eでは、種々の濃度のハロフジノンと共に、細胞を24時間培養した。平均細胞数±6回の反復実験のSEとして、結果を表した。
【図7】ハロフジノンによるIGFBP−1の上方制御への、シクロヘキサミドによる影響が記載されている。図7Aでは、血清飢餓状態の後、HepG2細胞を50nMのハロフジノンと共に、示された時間培養した。その後にハロフジノンを含まない新鮮な培地と交換した。実験開始から24時間後に、IGFBP−1のレベルをウェスタンブロット法によって評価した。図7Bでは、HepG2細胞を、10μg/mLのシクロヘキサミド(CX)および50nMのハロフジノンと共に、ならびにこれらが無い状態で24時間培養した。IGFBP−1の発現をノーザンブロット法によって分析した。
【図8】IGFBP−1による星細胞の運動性の阻害を示す図である。図8Aでは、ハロフジノン処理後の肝細胞(HepG2)のならし培地は、コントロール(挿入部分;レーン1−ハロフジノンなし;レーン2−ハロフジノンあり)に比べて、より高いレベルのIGFBP−1を含有していた。星細胞(HSC-T6)に添加した場合、細胞の運動性が阻害されたことが観察された。それぞれの時点は、3〜5細胞の平均軌道面積±S.Eを表す。図8Bでは、抗IGFBP−1抗体または健常なヤギの血清を用いて、ハロフジノン処理後の肝細胞(HepG2)のならし培地の免疫沈降を行った。運動性について計算するために、星細胞と共に培養した。8時間の間、前記星細胞に前記培地を添加した。それぞれの列は、10〜20細胞の平均軌道面積±S.Eを表す。免疫沈降前と免疫沈降後での培地中のIGFBP−1のレベルを、挿入部分に記載している。レーン1−ハロフジノン処理せず;レーン2−ハロフジノン処理後;レーン3−抗IGFBP−1抗体を用いた免疫沈降後の培地;レーン4−抗IGFBP−1抗体を用いた処理後の沈殿物中のIGFBP−1。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式:

式中:n=1〜2であり、
1は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
2は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
3は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含有する医薬組成物を、それが必要な個体に投与するステップを含む、肝臓の再生を改善するための方法。
【請求項2】
前記化合物は、ハロフジノンである、請求項1に記載の前記方法。
【請求項3】
化学式:

式中:n=1〜2であり、
1は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
2は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
3は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含有する医薬組成物を、それが必要な個体に投与するステップを含む方法であって、線維化プロセス中に遺伝子発現の変化に関する病理学的プロセスを治療または予防するための方法。
【請求項4】
前記化合物は、ハロフジノンである、請求項3に記載の前記方法。
【請求項5】
前記遺伝子発現に:
IGFBP−1−インスリン様成長因子結合タンパク質1
IGFBP−3−インスリン様成長因子結合タンパク質3
PRL−1(PTP4A1)−タンパク質チロシンホスファターゼ4A1
APO−AIV−アポリポタンパク質A−IV前駆体
PI3−キナーゼp85−アルファサブユニット
MAPキナーゼp38−マイトジェン活性化タンパク質キナーゼp38
プロテアソーム成分C8
E−FABP−表皮性の脂肪酸結合タンパク質
PMP−末梢ミエリンタンパク質(PMP−22/SR13)
PCNA−増殖細胞核抗原
プロテアソームアクチベーターrPA28サブユニットアルファ
c−K−ras2bプロトオンコジーン
ST2A2−アルコールスルホトランスフェラーゼA、推定アルコールスルホトランスフェラーゼ
TIMP−2−メタロプロテイナーゼ阻害剤2(前駆体)、メタロプロテイナーゼ2の組織阻害剤
MMP−3−メタロプロテイナーゼ3
MMP−13−メタロプロテイナーゼ13
から選択される少なくとも一つの遺伝子が包含される、請求項3に記載の前記方法。
【請求項6】
前記遺伝子は、前記IGFBPファミリーの一要素である、請求項3に記載の前記方法。
【請求項7】
前記遺伝子は、IGFBP−1である、請求項6に記載の前記方法。
【請求項8】
前記遺伝子は、IGFBP−3である、請求項5に記載の前記方法。
【請求項9】
前記線維化プロセスは、肝臓の線維化である、請求項3に記載の前記方法。
【請求項10】
化学式:

式中:n=1〜2であり、
1は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
2は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
3は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含有する医薬組成物を、それが必要な個体に投与するステップを含む方法であって、遺伝子発現の変化を誘導する毒素に関する病理学的プロセスを治療または予防するための方法。
【請求項11】
前記毒素は、チオアセトアミド(TAA)である、請求項10に記載の前記方法。
【請求項12】
前記化合物は、ハロフジノンである、請求項10に記載の前記方法。
【請求項13】
前記遺伝子発現に:
IGFBP−1−インスリン様成長因子結合タンパク質1
IGFBP−3−インスリン様成長因子結合タンパク質3
PRL−1(PTP4A1)−タンパク質チロシンホスファターゼ4A1
APO−AIV−アポリポタンパク質A−IV前駆体
PI3−キナーゼp85−アルファサブユニット
MAPキナーゼp38−マイトジェン活性化タンパク質キナーゼp38
プロテアソーム成分C8
E−FABP−表皮性の脂肪酸結合タンパク質
PMP−末梢ミエリンタンパク質(PMP−22/SR13)
PCNA−増殖細胞核抗原
プロテアソームアクチベーターrPA28サブユニットアルファ
c−K−ras2bプロトオンコジーン
ST2A2−アルコールスルホトランスフェラーゼA、推定アルコールスルホトランスフェラーゼ
TIMP−2−メタロプロテイナーゼ阻害剤2(前駆体)、メタロプロテイナーゼ2の組織阻害剤
MMP−3−メタロプロテイナーゼ3
MMP−13−メタロプロテイナーゼ13
から選択される少なくとも一つの遺伝子が包含される、請求項10に記載の前記方法。
【請求項14】
前記遺伝子は、前記IGFBPファミリーの一要素である、請求項10に記載の前記方法。
【請求項15】
前記遺伝子は、IGFBP−1である、請求項14に記載の前記方法。
【請求項16】
前記遺伝子は、IGFBP−3である、請求項14に記載の前記方法。
【請求項17】
化学式:

式中:n=1〜2であり、
1は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
2は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
3は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含む医薬組成物を投与するステップを含む方法であって、肝細胞において前記IGFBP−1の発現を増大することによって肝硬変を治療するための方法。
【請求項18】
前記化合物は、ハロフジノンである、請求項17に記載の前記方法。
【請求項19】
化学式:

式中:n=1〜2であり、
1は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
2は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
3は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含有する医薬組成物を投与するステップを含む方法であって、肝細胞において前記IGFBP−1の発現を増大することによって肝臓の再生を改善するための方法。
【請求項20】
前記化合物は、ハロフジノンである、請求項19に記載の前記方法。
【請求項21】
化学式:

式中:n=1〜2であり、
1は各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
2は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
3は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含む医薬組成物を投与するステップを含む方法であって、部分肝切除後にIGFBP−1、PRL−1、MMP−3およびMMP−13から選択される少なくとも一つの遺伝子の遺伝子発現を誘導することによって、硬変した肝臓を再生させてその能力を改善するための方法。
【請求項22】
前記化合物は、ハロフジノンである、請求項21に記載の前記方法。
【請求項23】
化学式:

式中:n=1〜2であり、
1は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
2は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
3は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含む医薬組成物を、それが必要な個体に投与するステップを含む方法であって、部分肝切除後に肝細胞成長因子(HGF)のシグナル伝達経路における分子に影響を及ぼすことによって、硬変した肝臓を再生させてその能力を改善するための方法。
【請求項24】
前記化合物は、ハロフジノンである、請求項23に記載の前記方法。
【請求項25】
一般式:

式中:n=1〜2であり、
1は、各発生時に水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;
2は、ヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一要素であり;および
3は、水素および低級アルケンオキシ−カルボニルからなる群の一要素である;
を有する化合物および薬学的に許容され得るその塩類の治療上の有効量を含む医薬組成物を個体に投与するステップを含む方法であって、生物活性を有するIGF−1の量を増大させるための方法。
【請求項26】
前記化合物は、ハロフジノンである、請求項25に記載の前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−504769(P2006−504769A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547952(P2004−547952)
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000900
【国際公開番号】WO2004/039308
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(505161644)
【出願人】(500545311)ハダシット メディカル リサーチ サービシーズ アンド ディベロップメント リミテッド (8)
【出願人】(504251056)コルガード バイオファーマシューティカルズ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】