説明

病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、そして除去するための医薬組成物

【課題】有効成分として無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体を含有する、病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、そして除去するための医薬組成物の提供。
【解決手段】無機高分子第二鉄塩はポリ硫酸第二鉄であり、無機高分子第二鉄塩複合体はポリケイ酸第二鉄塩、ポリリン酸第二鉄塩及びそれらの類似体からなる群より選択される、医薬組成物を提供する。驚くべき医学効果は、治療する病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、そして吸収又は剥離させる本発明の医薬組成物を用いて病理学的組織を治療することによって実現できる。本発明の医薬組成物は、費用効果が高くて使い勝手がよく、痔核、血管腫、静脈瘤、ヒグローマ、膿瘍、腫瘍、熱湯熱傷及び火焔熱傷、出血外傷性創傷、及び/又は化学薬品又は微生物によって引き起こされた局所損傷の治療に著しい効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学分野における、病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、そして除去するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ硫酸第二鉄(Polyferric sulfate)(PFS)は、塩基性硫酸第二鉄(ferric subsulfate)(分子式Fe4(OH)2(SO4)5である化合物)から作られるポリマーである。ポリ硫酸第二鉄の分子式は、[Fe2(OH)n(SO4)3-n/2]m(0.5<n<1、m=f(n))である。
【0003】
伝統的に、ポリ硫酸第二鉄は無機凝集剤として使われている。他の種類の凝集剤と比較して、ポリ硫酸第二鉄にはいくつかの効果(例:比較的低い用量、広い範囲のpHにおいて使用可能な適応性、不純物(混濁、COD、浮遊物等)に関する高い除去率、残留物の低濃度化、高凝集速度、良好な脱色効果等)がある。現在ポリ硫酸第二鉄は、産業廃水、都市の下水及び生活用水を浄化処理するために広く使われている。ポリ硫酸第二鉄が水中で加水分解されるときに、多核性ヒドロキシル複合体を生成し、様々な水溶液においてコロイド粒子に強い吸収性を示して、結合、架橋及びクロスリンクにより粒子を会合及び凝集させる。
【0004】
近年、凝集剤(例:ポリケイ酸塩及びポリ硫酸第二鉄)を基礎として、研究者達は高分子第二鉄塩複合体を含む以下の新規な無機又は有機高分子複合凝集剤を開発した:ポリケイ酸第二鉄複合塩(poly-silicate ferric composite salts)(例:ポリ塩化ケイ酸第二鉄(poly ferric silicate chloride)(PFSC)、高分子ケイ酸硫酸第二鉄(polymeric ferric sulfate silicate)(PFSS)及びポリケイ酸硫酸第二鉄アルミニウム(polysilicate ferric aluminum sulfate)(PAFSC)); ポリリン酸第二鉄複合塩(polyphosphate ferric composite salts)(例:ポリリン酸硫酸第二鉄(polyphosphate ferric sulfate)(PPFS)); ポリ第二鉄アルミニウム複合塩(poly aluminum-ferric composite salts)(例:高分子リン酸第二鉄アルミニウム(polymeric aluminum ferric phosphate)(PAFP)); ポリ塩化硫酸第二鉄(poly-ferric chloride sulfate)(PFCS)を含有する凝集剤; 共重合第二鉄塩(co-polymeric ferric salts)(例:ポリ塩化第二鉄アルミニウム(poly-aluminum ferric chloride)(PAFC))を含んでいる凝集剤; 有機高分子凝集剤(例:有機カチオン性高分子凝集剤-DMC共重合体)、CTS-AM-DMC強カチオン性天然高分子(キトサン-(CTS)メタクリロイル-オキシエチルトリメチル塩化アンモニウム(DMC)-アクリルアミド(AM)強カチオン性天然高分子)凝集剤及びそれらの類似体; 有機/無機高分子複合凝集剤(例えばCAF(キトサン、ポリアルミニウム及び塩化第二鉄から作製された有機/無機高分子複合凝集剤の一種))及びその類似体。
【0005】
塩基性硫酸第二鉄とポリ硫酸第二鉄(PFS)とを比較すると、上述の新しいタイプの凝集剤は、より大きな分子量と、より強力な吸着能及び結合能と、混濁、COD及びBODを除去するより良好な能力と、を有する。例えば、汚水を処理するとき、高分子ケイ酸硫酸第二鉄(PFSS)の用量はポリ硫酸第二鉄の用量の1/3未満である。石炭スラリーを処理するとき、無機凝集剤であるポリ塩化アルミニウムの投薬量は、単剤では石炭1トンあたり1.0KG超えと報告されており、有機凝集剤であるポリアクリルアミドの投薬量は、単剤では石炭1トンあたり0.1KGよりやや少ないと報告されている。しかしながら両方とも使用するときは、上記のそれぞれの量を合わせた量よりもその投薬量は少ない。
【0006】
凝集剤として上記物質の利用が今に至るまで公知であるにもかかわらず、誰も医学分野においてこれらの物質の特性を利用しようとはしなかった。即ち、生体の病理学的組織を脱水させ、萎縮さえ、最終的に除去することである。
【0007】
従って、病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、そして除去するための新規の医薬組成物を提供する必要性がある。
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、そして除去するための新規の効果的な医薬組成物を提供することにある。
【0009】
医療を通じて、本発明の発明者達は凝集剤としての無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体が医学分野において使われるときに、それらが病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、最終的に除去するという驚くべき発見をした。例えば、ポリ硫酸第二鉄、高分子ケイ酸硫酸第二鉄(PFSS)、ポリ塩化ケイ酸第二鉄(PFSC)及びポリリン酸硫酸第二鉄(PPFS)は、局部疾患又は損傷を患ったヒトの体の病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、最終的に除去するだろう。これらの種類の凝集剤が医学分野において使用され、痔核、血管腫、静脈瘤、ヒグローマ、膿瘍、腫瘍、熱湯熱傷及び火焔熱傷、出血外傷性創傷、及び/又は化学薬品又は微生物によって引き起こされた局所損傷を治療し、病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、そして除去できる。そして、患者は最終的には回復するだろう。
【0010】
本発明の発明者達は、凝集剤(例:塩基性硫酸第二鉄)を出血外傷の止血の治療に用いたとき、黒い固体粒子物質の形成物が沈殿の形で観察され、鮮明で透明なものが単離された。発明者達は、この現象のメカニズムが、止血が血小板及びフィブリンの血栓、赤血球の凝集及び血液凝固の促進によって引き起こされたという文献に記載の、モンセルの収斂剤に関する周知のメカニズムよりはむしろ、血液及び血液組織の脱水、萎縮及び除去であると見つけ出した。
【0011】
医学分野において、多くの疾患は局部組織の病理学的変化(例:痔核、血管腫(皮膚、肛門、肝臓、大脳等の血管腫又はその中の血管腫)、下肢の静脈瘤、頭蓋内血腫、リンパ管腫、ヒグローマ、膿瘍、いくつかの腫瘍)、熱湯熱傷及び火焔熱傷、出血外傷性創傷、及び/又は化学薬品又は微生物によって引き起こされた局所損傷等によって引き起こる。これらの疾患の症状は、病理学的組織の異常な増殖、うっ血、充血、出血、水症、炎症、滲出及び壊死である。それらは、異常且つ汚染された生物学的コロイド溶液を示し、自然環境又は産業への応用を由来とする汚水のようである。
【0012】
従って、本発明は、病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、そして除去するための医薬組成物であって、その有効成分として無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体を含む医薬組成物である。無機高分子第二鉄塩はポリ硫酸第二鉄であり、無機高分子第二鉄塩複合体はポリケイ酸第二鉄塩、ポリリン酸第二鉄塩及びそれらの類似体からなる群より選択される。
【0013】
好ましくは、医薬組成物のポリケイ酸第二鉄塩は高分子ケイ酸硫酸第二鉄(PFSS)及び/又はポリ塩化ケイ酸第二鉄(PFSC)であり、ポリリン酸第二鉄塩はポリリン酸硫酸第二鉄(PPFS)である。
【0014】
本発明の医薬組成物の製剤は、固体粉末製剤、ペースト製剤、粉末注射製剤、溶液製剤、注射製剤、外用塗布(lininment)製剤、坐薬製剤又はスプレー製剤の形である。
【0015】
好ましくは、本発明の医薬組成物には、麻酔薬、特に局所麻酔薬が更に含まれる。例えば、本発明の医薬組成物には、レボブピバカイン、ロピバカイン、塩酸リドカイン、メントール、メチレンブルー、プロカイン及びテトラカインからなる群より選択される1又は複数の麻酔薬が含まれる。
【0016】
本発明の一実施形態において、医薬組成物は、1〜60重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%の無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体と、適当量の麻酔薬と、残りの量として医薬的に許容可能な固体賦形剤と、を含む固体粉末製剤である。
【0017】
本発明の別の実施形態において、医薬組成物は、1〜60重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%の無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体と、40〜80重量%のゼオライト粉末と、残りの量として他の医薬的に許容可能な固体賦形剤と、を含む固体粉末製剤である。
【0018】
本発明の更なる別の実施形態において、医薬組成物は、1〜60重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%の無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体と、適当量の麻酔薬と、残りの量として医薬的に許容可能な賦形剤と、を含むペースト製剤である。
【0019】
本発明の更に別の実施形態において、医薬組成物は、0.2〜60重量%、好ましくは1〜60重量%、より好ましくは5〜60重量%の無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体と、適当量の麻酔薬と、残りの量としての水と、を含む溶液製剤である。例えば、本発明の医薬組成物は、最初に粉末注射製剤へと調製することができて、そして、実際の臨床で使用する時に0.2%超の濃度を有する、病理学的組織への局所注射用溶液に調製することができる。
【0020】
本発明の別の態様として、病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、そして除去するための医薬品を製造するための上記医薬組成物の使用を提供する。例えば、上記使用は、痔核、血管腫、静脈瘤、ヒグローマ、膿瘍、腫瘍、熱湯熱傷及び火焔熱傷、出血外傷性創傷、及び/又は化学薬品又は微生物によって引き起こされた局所損傷を治療するための医薬品の製造に関するものである。
【0021】
本発明の発明者は、無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体(古くから、水処理剤として使われているもの)を使用し、病理学的組織を脱水させ萎縮させることにより治療する。治療した病理学的組織は、その後正常組織によって吸収されるか又は正常組織からかさぶたとしてとれる。本発明の医薬組成物による病理学的組織を抑制させる効果は、全く驚くべきことである。本発明の医薬組成物は、費用効果が高くて使い勝手がよく、血管疾患(例えば痔核、血管腫、血腫(脳内出血によって引き起こされる血腫を含む)、血栓及び静脈瘤)及び局所外傷(例えば出血及び浮腫)の治療に著しい効果を有する。上記組成物は、標的注射によって様々な腫瘍細胞を死滅させることもできる。
【0022】
本発明を、以下の実施例と共に更に詳細に説明する。無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体の医学的用途の最初の発見に基づいても、本発明は本願明細書に記載のこれらの実施例の製剤型及び成分比率に限定されない。医学分野における、病理学的組織を脱水及び萎縮させる有効成分としての無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体を含む任意の医薬組成物又はかかる医薬組成物の任意の使用は、本発明の保護範囲に帰属する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1-12は、種々の患者から撮られた写真であり、本発明による医薬組成物によって治療された時の医療効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
インビトロ実験
本発明の発明者達は、塩基性硫酸第二鉄より大きな分子量を有する無機高分子第二鉄塩(即ち、ポリ硫酸第二鉄)を使用し、種々の種類のヒト血液(即ち、抗凝固剤を含まない非凝固血液、抗凝固剤を含む非凝固血液、及び自然にできる凝血塊)を用いたインビトロ実験を行った。実験から各種の血液が例外なく凝集し、脱水されることが証明された。完全反応の割合は、ヒト血液約2mlあたり0.4mlの10重量%のポリ硫酸第二鉄溶液であることが、これらの実験から観察された。このデータは、ポリ硫酸第二鉄の効力比としてとられることができ、それは等価効果に対する相対濃度又は投与量を意味する。より安全でより好ましい実施形態として、発明者達は5重量%のポリ硫酸第二鉄と病理学的組織の体積比が1:3であることを推奨した。同様に、本発明の医薬組成物の病理学的組織の脱水及び萎縮に関する効力比は、好ましい臨床用の実施形態と同様に、インビトロ実験によって決定できる。
【0025】
以下の表は、ポリ硫酸第二鉄のインビトロ実験に関する手順及び結果を要約したものであり、 表Iはヒト血液の脱水に関するポリ硫酸第二鉄のインビトロ実験及び対応する結果を示し、表IIはヒト血液と低濃度のポリ硫酸第二鉄とのインビトロ反応(即ち、脱水)を示した。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
発明者達は、他の実験において、無機高分子第二鉄塩(例えばポリ硫酸第二鉄)、無機高分子第二鉄塩複合体(例えば高分子ケイ酸硫酸第二鉄(PFSS)、ポリ塩化ケイ酸第二鉄(PFSC)及びポリリン酸硫酸第二鉄(PPFS))が、ヒト血液に対して強い凝集性及び脱水性を示す一方で、高分子アルミニウム塩(例えばポリ塩化アルミニウム及びポリ硫酸アルミニウム) 及び有機高分子凝集剤(例えばポリアクリルアミド)はヒト血液に対して脱水性を示さないことが観察された。これら2種類の物質を一緒に混ぜ合わせる場合、無機高分子第二鉄塩(slats)由来の脱水性は低減するか、更にはなくなるだろう。
【実施例】
【0029】
医薬組成物の製剤及び応用
実施例1
10グラムのポリ硫酸第二鉄を90グラムの蒸留水に溶解する。得られた溶液を3mlサイズの無菌アンプルに分注し、脱気して溶かすことで封止する。これを1.5重量%のレボブピバカイン及び1重量%のメチレンブルーを含む注射剤を当量使用して希釈し、5重量%のポリ硫酸第二鉄、0.75重量%のレボブピバカイン及び0.5重量%のメチレンブルーを含む注射剤を得る。それを適当量用いて様々な痔核、血管腫、静脈瘤及び出血性血腫を治療する。
【0030】
注射手順は、患部の洗浄及び殺菌工程と、痔核、血管腫、血腫又は血栓の数箇所に溶液を注射する工程と、数秒以内に綿棒で患部を押圧し、固くなっている痔核、血管腫又は血栓を溶液で均等に分散させる工程と、を含む。3分以上の後に、血管腫及び血腫は軟化し、脱水され、萎縮し、消失した。10〜20分以内に脱水及び萎縮処理は完了した。7〜14日後に、病理学的組織は正常組織によって置き換わるか脱皮するかして外傷は治癒された。共同効果(co-effect)、出血、瘢痕又は他の副作用は観察されなかった。従って、この方法は、痔核、血管腫、血腫及び血栓の新規な脱水治療である。医薬組成物は、痔核の静脈瘤、血腫及び血栓によって引き起こされるうっ血した病理学的組織の脱水及び萎縮に関して非常に特異性があり、迅速で優れた効果を有するものである。これは、世界中の文献で見つからなかった。
【0031】
実施例2
7グラムの高分子ケイ酸硫酸第二鉄(PFSS)を93グラムの蒸留水に溶解し、3mlサイズの無菌アンプルに分注し、脱気して溶かすことで封止する。それを1.5重量%のレボブピバカイン及び1重量%のメチレンブルーを含む注射剤を当量使用して希釈し、3.5重量%のポリ硫酸第二鉄、0.75重量%のレボブピバカイン及び0.5重量%のメチレンブルーを含む注射剤を得る。それを適当量用いて様々な痔核、血管腫、静脈瘤及び出血性血腫を治療する。
【0032】
実施例3
7グラムのポリ塩化ケイ酸第二鉄(PFSC)を93グラムの蒸留水に溶解し、3mlサイズの無菌アンプルに分注し、脱気して溶かすことで封止する。それを1.5重量%のレボブピバカイン及び1重量%のメチレンブルーを含む注射剤を当量使用して希釈し、3.5重量%のポリ硫酸第二鉄、0.75重量%のレボブピバカイン及び0.5重量%のメチレンブルーを含む注射剤を得る。それを適当量用いて様々な痔核、血管腫、静脈瘤及び出血性血腫を治療する。
【0033】
実施例4
7グラムのポリリン酸硫酸第二鉄(PPFS)を93グラムの蒸留水に溶解し、3mlサイズの無菌アンプルに分注し、脱気して溶かすことで封止する。それを1.5重量%のレボブピバカイン及び1重量%のメチレンブルーを含む注射剤を当量使用して希釈し3.5重量%のポリ硫酸第二鉄、0.75重量%のレボブピバカイン及び0.5重量%のメチレンブルーを含む注射剤を得る。それを適当量用いて様々な痔核、血管腫、静脈瘤及び出血性血腫を治療する。
【0034】
実施例5
10グラムのポリ硫酸第二鉄の固体粉末を90グラムのワセリンオイル、1グラムのメントール及び0.75グラムのレボブピバカインと混ぜ合わせ、柔らかいペーストを形成させた。柔らかいペーストは、プラスチックソフトチューブに分注(10グラム/チューブ)し、臨床用のために封止される。柔らかいペーストを、外傷性創傷、熱湯熱傷及び火焔熱傷、局所損傷であって化学薬品又は細胞毒によって引き起こされるもの、細菌又はウイルスによる感染性外傷、又は膿の除去後の膿瘍空洞に対し塗布する。かかる治療は、洗浄、膿の除去、細菌及びウイルスの無毒化、止血、回復、乾燥、かさぶた化、治癒促進の効果を実現ができる。
【0035】
実施例6
10グラムのポリ硫酸第二鉄の固体粉末、0.25グラムのメントール及び0.75グラムのレボブピバカインを90グラムの蒸留水に溶解し、バクテリアろ過器によってフィルター処理をして、100ml、250ml又は500mlサイズの無菌の褐色ガラス瓶又はプラスチックボトルに分注し、臨床用のために封止される。スプレー(sraying)又は塗摩によって、外傷性創傷、感染性及び炎症性外傷、膿の除去後の膿瘍空洞、化学薬品又は細胞毒によって引き起こされる局所損傷を治療する。かかる治療は、洗浄、膿の除去、止血、回復、細菌及びウイルスの殺菌、無毒化及び治癒促進の効果を実現ができる。
【0036】
実施例7
5グラムのポリ硫酸第二鉄の固体粉末、0.25グラムのメントール又はミント及び0.75グラムのレボブピバカインを94グラムの蒸留水に溶解し、バクテリアろ過器によってフィルター処理をし、100ml、250ml又は500mlサイズの無菌の褐色ガラス瓶又はプラスチックボトルに分注して、臨床用のために封止される。スプレー(sraying)又は塗摩によって、外傷性創傷、感染性及び炎症性外傷、膿の除去後の膿瘍空洞と、化学薬品又は細胞毒によって引き起こされる局所損傷を治療する。かかる治療は、洗浄、膿の除去、止血、回復、細菌及びウイルスの殺菌、無毒化及び治癒促進の効果を実現ができる。
【0037】
臨床実験の所見
塩基性硫酸第二鉄、無機高分子第二鉄塩(ポリ硫酸第二鉄)及び無機高分子第二鉄塩複合体(高分子ケイ酸硫酸第二鉄)は、関連疾患を治療する臨床において無事に利用されている。
【0038】
臨床実験I
0.5重量%のカエル毒を含有する(containg)塩基性硫酸第二鉄の飽和溶液を老人性血管腫(また、老人性血管腫と呼ばれる)を患っている患者の顔、胴体、腕及び脚に位置する136個の腫瘍表面に塗布した。同じ箇所に浸透させる目的でコアニードルを用いて上記溶液を腫瘍に注射した。腫瘍の組織構造及び血液を凝固させ、硬化させた。上記腫瘍は、軟化し、脱水され、乾燥し、萎縮し、そして乾燥したかさぶたを形成した。1つの腫瘍を治療するのにわずか10〜20秒であるため、全ての腫瘍は2人の医師によって1時間以内に治療できる。かさぶたは、次の7〜10日に剥離した。
【0039】
臨床実験II
0.25mlの5%ポリ硫酸第二鉄を、肛門管の静脈瘤(また、外痔核と呼ばれるもの)を患う患者に局所注射によって投与した。病理学的血管は、数秒以内に石のように堅くなって、そして1分以内に軟化した。上記血管は、脱水され、萎縮し、12分以内に平になった。
【0040】
臨床実験III
ポリ硫酸第二鉄及び高分子ケイ酸硫酸第二鉄は、病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、そして除去するための組成物として使用し、様々な痔核、静脈瘤、血管腫及び腫瘍組織を含む疾患を患っている130人の患者を治療した。痔核は、環状混合痔核、内痔核及び外痔核を含む。環状混合痔核とは、種々のレベルの感染、出血(したたり落ちる血液又は注射による出血)、血栓、壊死、化膿、寒さに対する嫌悪、熱病、重篤な苦痛等を含む症状を伴う急性嵌頓痔核が主である。これらの患者の中で、何人かは静脈瘤内痔核及び外痔核を患っていた。何人かは、嵌頓痔核を患い、壊死、重篤な苦痛及び熱病の症状があった。何人かは、嵌頓痔核を患い、冠不全の治療に用いられるワーファリン投与のために出血を止められなかった。何人かは、10日以上の間出血が止まらない痔核を患い、血液関連疾患(例えば血液凝固障害及び重篤な貧血)も患っていた。何人かは、直腸ポリープ又は肛門腫瘍を患っていた。患者は主に老人であり、そのうちの一人は、肛門に血管腫を患う95歳の患者である。
【0041】
治療手順は、以下の通りに要約される。患者を局所消毒し、局部麻酔薬を含むポリ硫酸第二鉄溶液を病理学的組織に適量注射した。例えば、痔核又は腫瘍の各々は、上記溶液の投与後直ちに硬化し、1分以内に柔らかくなり、液体がにじみ出て、出血及び痛みが止まった。痔核の体積は、10〜30分後に処理前の1/5又は1/7に収縮した。痔核は、肛門に引っ込んだ。萎縮した痔核又は腫瘍は、4〜8日後に吸収されるか又は剥離した。全ての患者は、同じ手順に従って治療され、例外なく同じ成果になった。
【0042】
本発明の治療は、正常組織又は生理的構造を損傷させない病理学的組織に焦点を置いた。上記治療方法は、低コストであり、安全且つ短時間で簡単に実施できる。加えて、上記方法は幅広く用いることができ、著しい禁忌症がない。例えば、本方法は従来型の手術方法(例えば切除、結紮及び縫合による結紮)より著しい効果と、従来型の薬剤注射方法(例えば硬化剤注射、壊死薬剤注射及び軟化剤注射)より著しい効果と、従来型の物理療法(例えば電気凝固、レーザー治療、寒冷療法、マイクロ波療法、低周波治療法、高周波療法、静電容量場療法、イオン導入及び電気振動療法)より著しい効果と、痔核、静脈瘤、血管腫及び局所腫瘍の治療に関して、国内及び国際的な医学界によって提案及び叫ばれているPPH治療(脱出及び痔核の手技)より更に著しい効果と、を有する。事実、本方法によって治った多くの患者は、以前PPHの実施又は他の従来型の処理方法による治療を受けていた。
【0043】
図2〜12は、患者2〜患者12の治療効果を示す。
【0044】
図2は、嵌頓混合痔核を治療するための手順を示す。これらの図において、図2Aは、壊死、出血、化膿及び熱症の症状を患っている患者の局所病理学的部位を示す。図2Bは、薬剤注射の処理を通じて痔核が脱水され、萎縮し、そして除去されたことを示す。図2Cは、痔核が薬剤注射の25分後に肛門に引っ込んでいるところを示し、内視鏡検査により痔核の体積が治療前の約1/5に収縮したことを示す。図2Dは、治療の17時間後の治療効果を示す。図2Eは、治療の5日後の肛門の外見を示す。図2Fは、治療の35日後の内視鏡検査の所見を示す。
【0045】
図3は、肛門から脱出した混合痔核及び腫瘍を治療するための手順を示す。図3Aは、治療前の病理学的部位を示す。図3Bは、薬剤注射の3分後に腫瘍がまず収縮し始めているところを示す。図3Cは、治療の25分後に腫瘍が肛門に引っ込んでいるところを示す。図3Dは、患者の痔核を出させた時、腫瘍が消失し、痔核が萎縮しているところを示す。図3Eは、痔核が自然に肛門に引っ込んでいるところを示す。図3Fは、8日後に病理学的組織が剥離することを示す。図3Gは、15日後に外傷がほとんど瘢痕化しているところを示す。
【0046】
図4は、出血が止まらない嵌頓混合痔核を治療するための手順を示す。これらの図において、図4Aは、治療前の病理学的部位を示す。図4Bは、脱水及び萎縮薬液の注射を示す。図4Cは、注射10分後の病理学的部位を示す。図4Dは、注射25分後の病理学的部位を示す
【0047】
図5は、壊死症状のある他の嵌頓混合痔核を治療するための手順を示す。これらの図において、図5Aは、治療前の病理学的部位を示す。図5Bは、脱水及び萎縮薬液の注射を示す。図5Cは、5分以内に薬液を完全に注射するところを示す。図5Dは、注射の29分後に病理学的組織が脱水され、萎縮しているところを示す。図5Eは、注射の30分後に萎縮性の痔核が肛門に引っ込んでいるところを示す。図5Fは、注射の31分後に肛門鏡によって観察される図を示す。図5Gは、11日後に痔核が除去された後の外傷を示す。図5Hは、治療41日後の肛門を示す。
【0048】
図6は、肛門管の歯状線下にある環状の静脈瘤を治療するための手順を示す。これらの図において、図6Aは、治療前の病理学的部位を示す。図6Bは、脱水及び萎縮薬液の注射を示す。図6Cは、7分以内に薬液を完全に注射し、以前治療した痔核が萎縮しているところを示す。図6Dは、22分後の状態を示す。図6Eは、25分後の状態を示す。図6Fは、2日後の排便後の状態を示す。
【0049】
図7は、糖尿病、高血圧及び脳卒中を患う95歳の女性を治療するための手順を示す。上記患者は、肛門から脱出した血管腫も患っている。これらの図において、図7Aは、治療前の病理学的部位を示す。図7Bは、腫瘍が樹冠、葉、果物、木の幹及び根を有する木の様であり、そして薬剤を樹冠に注射するところを示す。図7Cは、同じように脱水及び萎縮のために木の幹と根へ薬剤を注射し、そして萎縮した樹冠の剥離を示す。図7Dは、12分後の病理学的部位の状態を示す。
【0050】
図8は、高血圧を患い、心抑制薬、抗高血圧症薬及びワーファリンを長い間服用している78歳の男性患者を治療するための手順を示す。上記患者は、肛門から脱出した腫瘍も患っている。これらの図において、図8Aは、治療前の病理学的部位を示す。図8Bは、薬剤注射後の病理学的部位を示す。図8Cは、15分後に腫瘍が萎縮しているところを示す。図8Dは、11日後の剥離した萎縮物を示す。図8Eは、41日後の瘢痕化した外傷を示す。図8Fは、肛門の外見を示す。
【0051】
図9は、膵臓癌を患う52歳の男性患者を治療するための手順を示す。上記患者は、壊死、化膿及び重篤な痛みの症状を有する混合痔核及びポリープ嵌頓も患っている。これらの図において、図9Aは、治療前の病理学的部位を示す。図9Bは、薬剤注射中の痔核を示す。図9Cは、薬剤が完全に注射され、痔核が萎縮しているところを示す。図9Dは、20分後の萎縮した痔核が肛門に引っ込み、それが直径1.5cmの痔核であることを示す。図9Eは、6日後の剥離した黒い物質を示す。図9Gは、21日後に外傷が回復したことを示す。
【0052】
図10は、嵌頓痔核を患う60歳の男性患者を治療するための手順を示す。この患者は、冠状動脈インターベンションを受けており、狭心症で苦しんでいた。彼は長い間ワーファリンを服用し続けており、痔核の出血が止まらない。これらの図において、図10Aは、治療前の病理学的部位を示す。図10Bは、麻薬注射の2分後の病理学的部位を示す。図10Cは、5分後に、痔核が脱水され、萎縮し、出血が止まっているところを示す。図10Dは、痔核が15分後に肛門に引っ込んでいるところを示す。図10Eは、肛門の萎縮した痔核を示す。
【0053】
図11は、痔核の再発を患う56歳の男性患者を治療するための手順を示す。上記患者は、高血圧及び狭心症も患い、長い間ワーファリンを服用し続けている。痔核は排便後脱出し、出血している。上記患者は、最近の4年間に2回の結紮手術を受けた。これらの図において、図11Aは、治療前の病理学的部位を示す。図11Bは、麻薬注射後の病理学的部位を示す。図11Cは、5分後に痔核が脱水され、萎縮しているところを示す。図11Dは、痔核が肛門に引っ込んでいるところを示す。図11Eは、肛門の内痔核を示す。薬剤は投与されていない。図11Fは、追加薬剤の注射を示す。図11Gは、14日目の肛門の外見を示す。
【0054】
図12は、高血圧及び糖尿病を患う83歳の男性患者を治療するための手順を示す。上記患者は、10年間、排便後脱出(格納式)の病歴を有する。上記患者は混合痔核も患い、外痔核部分は静脈瘤であり、内痔核部分はびらん性出血がある。これらの図において、図12Aは治療前の病理学的部位を示す。図12Bは、麻薬注射後の病理学的部位を示す。図12Cは、14分後に痔核が肛門に引っ込んでいるところを示す。図12Dは、肛門鏡によって観察される図を示す。図12Eは、5日目の剥離物を示す。図12Fは、11日目の病理学的部位を示す。図12Gは、30日目の病理学的部位を示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、そして除去するための医薬組成物であって、
前記組成物は、有効成分として無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体を含有し、
前記無機高分子第二鉄塩は、ポリ硫酸第二鉄であり、
前記無機高分子第二鉄塩複合体は、ポリケイ酸第二鉄塩、ポリリン酸第二鉄塩及びそれらの類似体からなる群より選択される、医薬組成物。
【請求項2】
前記ポリケイ酸第二鉄塩は、高分子ケイ酸硫酸第二鉄(PFSS)及び/又はポリ塩化ケイ酸第二鉄(PFSC)であり、
前記ポリリン酸第二鉄塩は、ポリリン酸硫酸第二鉄(PPFS)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物は、固体粉末製剤、ペースト製剤、粉末注射製剤、溶液製剤、注射製剤、外用塗布製剤、坐薬製剤又はスプレー製剤の形である、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物は、レボブピバカイン、ロピバカイン、塩酸リドカイン、メントール、メチレンブルー、プロカイン及びテトラカインからなる群より選択される1又は複数の麻酔薬を更に含有する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物は、1〜60重量%の無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体と、適当量の麻酔薬と、残りの量として医薬的に許容可能な固体賦形剤と、を含有する固体粉末製剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物は、1〜60重量%の無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体と、40〜80重量%のゼオライト粉末と、残りの量として医薬的に許容可能な固体賦形剤と、を含有する固体粉末製剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物は、1〜60重量%の無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体と、適当量の麻酔薬と、残りの量として医薬的に許容可能な賦形剤と、を含むペースト製剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物は、0.2〜60重量%の無機高分子第二鉄塩及び/又は無機高分子第二鉄塩複合体と、適当量の麻酔薬と、残りの量としての水と、を含む溶液製剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項9】
病理学的組織を脱水させ、萎縮させ、そして除去するための医薬品の製造のための、請求項1-8に記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
前記使用は、痔核、血管腫、静脈瘤、ヒグローマ、膿瘍、腫瘍、熱湯熱傷及び火焔熱傷、出血外傷性創傷、及び/又は化学薬品又は微生物によって引き起こされる局所損傷を治療する医薬品の製造のためである、請求項10に記載の使用。

【公開番号】特開2012−51887(P2012−51887A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−184730(P2011−184730)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(511208999)
【氏名又は名称原語表記】TAM, KUOK LEONG
【住所又は居所原語表記】Avenida do Lacerda No.81−17 D San Tou, Macao, People s Republic of China Country of Citizenship  People s Republic of China
【出願人】(511209000)
【氏名又は名称原語表記】TAM, HIO MAN
【住所又は居所原語表記】Avenida do Lacerda No.81−17 D San Tou, Macao, People s Republic of China Country of Citizenship  People s Republic of China
【出願人】(511209011)
【氏名又は名称原語表記】TAM, IO CHENG
【住所又は居所原語表記】Avenida do Lacerda No.81−17 D San Tou, Macao, People’s Republic of China Country of Citizenship  People’s Republic of China
【Fターム(参考)】