説明

痩身用食品組成物

【課題】全身もしくは局所の脂肪組織の減少を促進することによる肥満体質の改善、又は同組織の増大を防止することによる肥満の抑制もしくは防止に有効な脂肪分解促進剤、及び該脂肪分解促進剤を含有する痩身用食品組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)


(但し、式中Rは水素原子)からなる脂肪分解促進剤を含有する痩身用食品組成物。特に、該脂肪分解促進剤を0.1〜20重量%含有する痩身用食品組成物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全身もしくは局所の脂肪組織の減少を促進することによる肥満体質の改善、又は同組織の増大を防止することによる肥満の抑制もしくは防止に有効な脂肪分解促進剤、及び該脂肪分解促進剤を含有する痩身用皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
体内の脂肪は、消費エネルギーに対し、摂取エネルギーの過剰分が、白色脂肪細胞の中性脂肪として蓄積して生じる物である。体脂肪としての蓄積が大きい肥満は、美容上好ましくないばかりでなく、動脈硬化等の様々な疾病を引き起こす。最近、過食、運動不足、ストレス等による肥満が増加しているが、反面、特に女性は外見上からもスリムな引き締まった体を切望する傾向にある。また、皮下脂肪等の蓄積は、健康上も好ましくなく、皮下脂肪等の減少、もしくは蓄積の防止が重要な問題となっている。
【0003】
一方、肥満防止作用を有する物質としてトウガラシ等に含まれるカプサイシン類は血中のアルブミンと結合し、副腎の代謝を促進するホルモンを分泌し、肝臓や脂肪細胞に作用してエネルギー代謝を活発化することが知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、カプサイシン類は強い刺激を有しているために、その用途や使用量を限定される問題があった。このため、食欲抑制剤等の経口薬、食事制限及び運動等によるアプローチが種々なされているが、皮下脂肪等を抑制又は減少させる満足な効果を有する脂肪分解促進剤及び痩身用皮膚化粧料は、見出されてはいなかった。
【非特許文献1】岩井和夫及び中谷延二著、香辛料成分の食品機能、97頁、1989年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、全身もしくは局所の脂肪組織の減少を促進することによる肥満体質の改善、又は同組織の増大を防止することによる肥満の抑制もしくは防止に有効な脂肪分解促進剤及び痩身用皮膚化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明者等は一度蓄積した脂肪細胞を無くすのは難しく、脂肪細胞をなるべく小さくすることが早道であり、そのためには脂肪中の油滴を分解することが必要であると考え、鋭意研究した。油滴は蛋白質と同じように酵素(ホスホリパーゼC)によって分解される。しかしながら油滴は水をはじくリン脂質の膜に覆われ、油滴周辺の小包体という水の固まりの中にいる酵素は近づくことが出来ない。一方、運動することで交感神経を活発にすることにより脂肪分解ホルモンが分泌されて、脂肪の分解が促進される。この時、ホルモンはリン脂質の膜を取り除き、酵素と油滴の親和性を高めることで脂肪分解を促進することができる。このホルモンと同様に油滴と酵素の親和性を高める働きをもつ物質を見つけることが必要であると考えた。
【0006】
そこで本発明者らは脂肪細胞に作用し、脂肪分解を促進する物質を検討した結果、下記一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(但し、式中Rは水素原子、単糖類もしくは少糖類の残基、又は炭素数2〜20のアシル基である。)及び下記一般式(2)
【0009】
【化2】

【0010】
(但し、式中Rは水素原子、単糖類もしくは少糖類の残基、又は炭素数2〜20のアシル基である。)が、上記作用を有し、脂肪組織に蓄積された脂肪の分解を促進し、肥満の抑制、又は肥満体質の改善に有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0012】
【化3】

【0013】
(但し、式中Rは水素原子。)からなる脂肪分解促進剤を含有する痩身用食品組成物にあ
る。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、全身あるいは局所の脂肪組織を減少させ、肥満の抑制又は防止、肥満体質の改善に有効な脂肪分解促進剤、及び該効果を有する痩身用食品組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に関し、詳説する。本発明に用いられる化合物の中には、香料成分やメラニン生成抑制剤としての用途について提案している物質も含まれるが(特開平7-179328号公報、特開平10-265325号公報)、それらが脂肪分解促進作用を有していることは何ら記載も示唆もなされていない。
【0016】
本発明に用いる前記一般式(1)で表される化合物のうち、Rが単糖類又は少等類の残基のものは、いわゆる配糖体であり、市販されているものも多くあり容易に入手することができる。また、前記公報等に記載されている公知の方法で容易に合成することもできる。例えば、糖類と4−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノンとを酸類の存在下に反応させることにより容易に合成できる。また従来公知のKoenigs−Knorr反応等を用いることにより、β−体のみを合成することも可能である[Chem.ber.,34,957(1901)]。さらに、カラムクロマト等の手段を用いてこれらの配糖体を精製することもできる。尚、ここで残基とは、糖においてヘミアセタール性水酸基の水素を除いた残り部分を指す。
【0017】
ここで少糖類とは、二糖類から六糖類迄を指し、具体的には、ラクトース、マルトース、シュークロース、セロビオース、イソマルトース、エピラクトース等の二糖類、ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース、マルトトリオース、セロトリオース、マンニノトリオース等の三糖類、スタキオース等の四糖類等を挙げることができる。また、単糖類としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、ラムノース、キシロース、リボース、アラビノース、グルコサミン、ガラクトサミン等を挙げることができる。
【0018】
本発明に用いる前記一般式(1)で表される化合物のうち、Rが炭素数2〜20のアシル基のものは、フェノール化合物のアシル化として既に公知の方法を用いて得ることができる。例えば、ピリジン中において4−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノンと酸クロライドとを反応させることにより、容易に得ることができる。尚、アシル基としては、内部に不飽和結合を有するものでも問題無く、また芳香環を有していてもよい。また、アミノ基等の官能基を有するものであってもかまわない。具体的には、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ヘキサノイル、ラウロイル、パルミトイル、オレオイル等を挙げることができる。
【0019】
本発明に用いる前記一般式(2)で表される化合物も、4−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノンの替りにジンゲロンを用いて上記同様にして得ることができる。
【0020】
また、合成以外にも前記一般式(1)又は(2)で表される化合物を含有する植物から適当な溶媒によって抽出し、必要により公知の方法で濃縮や乾固して用いることもできる。
【0021】
前記一般式(1)又は(2)で表される化合物は、脂肪分解促進剤として、一種又は二種以上を併用することができる。また、痩身用皮膚化粧料に用いる場合、配合量は痩身用皮膚化粧料の形態によっても種々異なり一概に規定できるものではないが、例えば、該化粧料中に0.001〜20重量%配合するのが好ましい。0.001重量%未満では本発明の効果を奏しない場合があり、20重量%を越えて配合しても、配合量に見合った効果
が得られない場合がある。
【0022】
本発明の痩身用皮膚化粧料には、必須成分である上記化合物の他に通常の皮膚化粧料において使用される、油分、顔料、界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、色素等の他に、ブトパミン、イソプロテレノール等のβアドレナリン作用興奮剤、ヨヒンビン、エルゴトキシン等のα2アドレナリン作用抑制剤、テオフィリン、カフェイン等のキサンチン誘導体、ミルリノン、アムリノン等のビピリジン誘導体等、肥満の抑制又は防止作用を有する公知物質等を配合することができる。
【0023】
本発明の脂肪分解促進剤は、例えば、食品、経口投与薬、皮膚化粧料等に配合することができ、また痩身用皮膚化粧料の剤型は特に限定されるものではなく、皮膚塗布用、浴用、洗浄用等のクリーム、乳液、ジェル、スティック、シート、パップ、粉末、液体、顆粒等とすることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき、詳説する。尚、脂肪分解促進効果の評価として、下記の脂肪分解試験、皮下脂肪分解試験にて評価した。尚、ラズベリーケトン及びジンゲロンは市販のものを用いた。それ以外の誘導体は前記の合成方法により得たものを用いた。
【0025】
[脂肪分解試験法]
ロッドベルの方法〔Rodbell,M.,J.Biol.Chem.,239,375(1964)〕により、ウィスター系雄性ラット(体重150〜200g)の副睾丸脂肪組織からコラゲナーゼ溶液を用いて遊離脂肪細胞を調製した。被験物濃度が100μg/mLとなるよう調製した牛血清アルブミン及びノルエピネフリン(最終濃度0.05μg/mL)を含むハンクス緩衝液中に上記細胞を加え、37℃にて1時間反応した。遊離した脂肪酸を抽出し、銅試薬及び発色試薬により脂肪酸量を定量した。
【0026】
脂肪分解促進率(%)=[A/B]×100
A:被験物添加時の脂肪酸量
B:コントロール(被験物無添加)の脂肪酸量
【0027】
[皮下脂肪分解試験法]
ウィスター系ラット(雄、7〜9週齢)の腹部を刈毛後、同部皮膚を皮下脂肪組織とともに摘出し、直径2cmのフランツ型拡散セルに装着する。角質層側の上部セルに皮膚化粧料0.5gを均一に塗布し、皮下脂肪組織側の下部セルにpH7.2リン酸緩衝生理食塩水を満たす。セルを37℃に保ち、6時間放置後、下部セルより緩衝溶液を採取し、溶液中に遊離したグリセロール量を酵素法(ベーリンガー・マンハイム社製 F−キット;グリセロール)にて測定する。尚、測定は5回行いその平均値で示す。
【0028】
実施例1〜4、比較例1
各種脂肪分解促進剤について、上記の脂肪分解試験にて評価した結果を以下に示す。
【0029】
脂肪分解促進剤 濃度(重量%) 脂肪分解促進率(%)
実施例1 ラズベリーケトン 0.1 367.9
実施例2 ラズベリーケトン 1.0 505.5
実施例3 ジンゲロン 0.1 347.5
実施例4 ジンゲロン 1.0 445.8
比較例1 カプサイシン 0.1 200.6
比較例2 ロドデンドロール 0.1 116.4
【0030】
実施例1〜4の脂肪分解促進剤は、脂肪分解促進率が比較例1及び2に比べはるかに高く脂肪分解促進作用が高いことが明らかにされた。
【0031】
実施例5〜7、比較例3(ジェル状痩身用皮膚化粧料)
以下に示す組成で、常法によりA、B各成分を個別に混合溶解後、B成分をA成分に添加し攪拌することにより、ジェル状痩身用皮膚化粧料を調製した。
【0032】
配合成分(重量%) 実施例5 実施例6 実施例7 比較例3
(A成分)
ラズベリーケトングルコシド 1.0 − − −
ラズベリーケトンガラクトシド − 3.0 − −
ヘキサノイルラズベリーケトン − − 5.0 −
ジンゲロングルコシド 0.5 − − −
グリセリン 10.0 10.0 10.0 10.0
カルボキシビニルポリマー 0.3 0.3 0.3 0.3
エデト酸二ナトリウム 0.1 0.1 0.1 0.1
精製水 残量 残量 残量 残量
ジイソプロパノールアミン 1.0 1.0 1.0 1.0
スクワラン 10.0 10.0 10.0 10.0
(B成分)
ポリオキシエチレン(60) 0.8 0.8 0.8 0.8
硬化ヒマシ油
カラギーナン 3.0 3.0 3.0 3.0
キサンタンガム 3.0 3.0 3.0 3.0
ポリビニルアルコール 2.0 2.0 2.0 2.0
エタノール 45.0 45.0 45.0 45.0
メントール 0.1 0.1 0.1 0.1
香料 適量 適量 適量 適量
【0033】
上記ジェル状痩身用皮膚化粧料について、前記の皮下脂肪分解試験にて評価した結果を以下に示す。
【0034】
遊離グリセロール
(μmol/mL)
実施例5 160.1
実施例6 172.3
実施例7 185.4
比較例3 59.8
【0035】
実施例8〜10、比較例4(ローション状痩身用皮膚化粧料)
以下に示す組成で、常法によりA、B各成分を個別に混合溶解後、B成分をA成分に添加し攪拌することにより、ローション状痩身用皮膚化粧料を常法により調製した。
【0036】
配合成分(重量%) 実施例8 実施例9 実施例10 比較例4
(A成分)
ラズベリーケトン 0.1 − 0.3 −
ラズベリーケトンキシロシド 3.0 − − −
ジンゲロン − 0.5 0.7 −
オクタノイルジンゲロン − 4.5 − −
グリセリン 10.0 10.0 10.0 10.0
精製水 残量 残量 残量 残量
グリセリン脂肪酸エステル 0.1 0.1 0.1 0.1
ポリオキシエチレン(60)
硬化ヒマシ油 0.2 0.2 0.2 0.2
(B成分)
エタノール 20.0 20.0 20.0 20.0
メントール 0.4 0.4 0.4 0.4
香料 適量 適量 適量 適量
【0037】
上記ローション状痩身用皮膚化粧料について、前記の皮下脂肪分解試験にて評価した結果を以下に示す。
【0038】
遊離グリセロール
(μmol/mL)
実施例 8 202.4
実施例 9 176.3
実施例10 180.2
比較例 4 82.7
【0039】
以上から明らかなように、実施例5〜10は、皮下脂肪分解試験において脂肪分解物である遊離グリセロール量が比較例と比して格段に多く、皮下脂肪分解を促進することが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(但し、式中Rは水素原子)からなる脂肪分解促進剤を含有する痩身用食品組成物。
【請求項2】
下記一般式(1)
【化2】

(但し、式中Rは水素原子)からなる脂肪分解促進剤を0.1〜20重量%含有する痩身用食品組成物。

【公開番号】特開2008−208132(P2008−208132A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78559(P2008−78559)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【分割の表示】特願平10−352560の分割
【原出願日】平成10年12月11日(1998.12.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】