説明

療法薬としてのシクロアルキルスルファニル置換ベンゾ[b]チオフェン

本発明は、炎症性疾患、心血管疾患、および癌を含めた疾患および状態の処置に際して薬剤として有用な式(I)のベンゾ[b]チオフェン(R、R、R、およびLは、それらについて明細書中に定めたいずれかの意味をもつ)、およびその医薬的に許容できる塩類を提供する。1種類以上の式(I)の化合物を含む医薬組成物も提供される。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
ホスホイノシチド−3−キナーゼ(PI3K)は、ホスホイノシトール類を3’−OHにおいてリン酸化してPI−3−P(ホスファチジルイノシトール−3−リン酸)、PI−3,4−P2およびPI−3,4,5−P3を生成する脂質キナーゼファミリーである。あるクラスのPI3Kは、増殖因子により刺激される。他のクラスのPI3KはGタンパク質結合受容体により活性化され、これにはPI3Kγが含まれる。増殖因子により刺激されるPI3K(たとえばPI3Kα)は、細胞増殖および癌に関係することが示唆されている。PI3Kγは、シグナル伝達カスケードに関与することが証明された。たとえば、PI3KγはC5a、fMLP、ADP、およびIL−8などのリガンドに応答して活性化される。さらに、PI3Kγは免疫病に関係することが示唆されている(Hirsch et al., Science 2000; 287: 1049-1053)。PI3Kγヌル−マクロファージは走化性応答の低下および炎症対抗能の低下を示す(Hirsch et al., 2000;前掲)。さらにPI3Kγは血栓溶解性疾患(たとえば血栓塞栓症、虚血性疾患、心臓発作、および発作)に関係することも示唆されている(Hirsch et al., FASEB J. 2000; 15(11): 2019-2021;およびHirsch et al., FASEB J. 2001年7月9日; 10.1096/fj.00-0810fje(Hirsch et al., 2001として本明細書に援用する))。
【0002】
ヒト疾患の治療のためにPI3Kメンバーの阻害薬が開発された(たとえばWO 01/81346;WO 01/53266;およびWO 01/83456を参照)。医薬として使用するためにPI3Kを阻害しうるさらに他の化合物が求められている。
【0003】
発明の概要
1態様において、本発明は式Iの化合物:
【0004】
【化1】

【0005】
またはその医薬的に許容できる塩を提供する;
式中:
およびRは、下記よりなる群から選択され:
(i)Rはメトキシであり、RはH、メトキシ、ベンジルオキシメチル、CHCHOCH−、およびCHOCH−よりなる群から選択される;
(ii)Rはメチルであり、Rはメトキシである;
(iii)Rはエトキシであり、RはHである;
Lは存在しないか、または−CH−であり;
は、C−Cシクロアルキルである。
【0006】
式Iの化合物のある態様において、Rはメトキシであり、Rはメチルである―式IIの化合物:
【0007】
【化2】

【0008】
式IIの化合物の例には下記のものが含まれるが、これに限定されない:3−シクロヘキシルスルファニル−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
【0009】
式Iの化合物のある態様において、Rはメトキシであり、Rはメトキシである―式IIIの化合物:
【0010】
【化3】

【0011】
式IIIの化合物の例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:3−シクロヘキシルメチルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;3−シクロペンチルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;および3−シクロヘキシルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
【0012】
式Iの化合物のある態様において、Rはメチルであり、Rはメトキシである―式IVの化合物:
【0013】
【化4】

【0014】
式IVの化合物の例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:3−シクロペンチルスルファニル−6−メトキシ−5−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;および3−シクロヘキシルスルファニル−6−メトキシ−5−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
【0015】
式Iの化合物のある態様において、RはCHCHO−であり、Rはメチルである―式Vの化合物:
【0016】
【化5】

【0017】
式Vの化合物の例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:3−シクロペンチルスルファニル−5−エトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;および3−シクロヘキシルスルファニル−5−エトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
【0018】
式Iの化合物のある態様において、Rはメトキシであり、RはHである―式VIの化合物:
【0019】
【化6】

【0020】
式VIの化合物の例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:3−シクロヘキシルメチルスルファニル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;3−シクロペンチルスルファニル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;および3−シクロヘキシルスルファニル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
【0021】
式Iの化合物のある態様において、Rはメトキシであり、RはCHOCH−である―式VIIの化合物:
【0022】
【化7】

【0023】
式VIIの化合物の例は3−シクロヘキシルスルファニル−5−メトキシ−6−メトキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミドである。
【0024】
式Iの化合物のある態様において、Rはメトキシであり、RはCHCHOCH−である―式VIIIの化合物:
【0025】
【化8】

【0026】
式VIIIの化合物の例は3−シクロヘキシルスルファニル−6−エトキシメチル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミドである。
【0027】
式Iの化合物のある態様において、Rはメトキシであり、Rはベンジルオキシメチルである―式IXの化合物:
【0028】
【化9】

【0029】
式IXの化合物の例は6−ベンジルオキシメチル−3−シクロヘキシルスルファニル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミドである。
【0030】
式Iの化合物のある態様において、Rはシクロヘキシルである―式Xの化合物:
【0031】
【化10】

【0032】
式Xの化合物の例は3−シクロヘキシルスルファニル−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミドである。
ある態様において、Rはシクロペンチルである―式XIの化合物:
【0033】
【化11】

【0034】
式XIの化合物の例は3−シクロペンチルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミドである。
ある態様において、Rはシクロプロピルである―式XIIの化合物:
【0035】
【化12】

【0036】
式XIIの化合物の例は3−シクロプロピルメチルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミドである。
【0037】
他の態様において本発明は、療法有効量の式I〜XIIの化合物および医薬的に許容できるキャリヤーを含む、医薬組成物を提供する。ある態様において、これらの組成物はPI3K仲介による障害または状態の処置に有用である。本発明化合物は、癌、血栓溶解性疾患、心疾患、発作、炎症性疾患、たとえば慢性関節リウマチ、または他のPI3K仲介障害の処置に有用な化合物をも含む医薬組成物中に組み合わせることもできる。
【0038】
他の態様において本発明は、PI3K仲介による障害または状態を伴う対象を処置する方法であって、PI3K仲介による状態または障害を伴う対象に、療法有効量の式I〜XIIの化合物および医薬的に許容できるキャリヤーを含む医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。ある態様において、PI3K仲介による状態または障害は、慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患、および自己免疫疾患よりなる群から選択される。他の態様において、PI3K仲介による状態または障害は、心血管疾患、アテローム性硬化症、高血圧症、深在静脈血栓症、発作、心筋梗塞、不安定狭心症、血栓塞栓症、肺塞栓症、血栓溶解性疾患、急性動脈虚血、末梢血栓性閉塞、および冠動脈疾患よりなる群から選択される。さらに他の態様において、PI3K仲介による状態または障害は、癌、結腸癌、神経膠芽細胞腫、子宮内膜癌、肝細胞癌、肺癌、黒色腫、腎細胞癌、甲状腺癌、細胞性リンパ腫、リンパ球増殖性障害(lymphoproliferative disorders)、小細胞性肺癌、扁平上皮性肺癌、神経膠腫、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚癌、および白血病よりなる群から選択される。さらに他の態様において、PI3K仲介による状態または障害は、II型糖尿病よりなる群から選択される。さらに他の態様において、PI3K仲介による状態または障害は、呼吸器疾患、気管支炎、喘息、および慢性閉塞性肺疾患よりなる群から選択される。ある態様において、対象はヒトである。
【0039】
定義
本明細書中で使用する下記の用語は、別途明記しない限りそれらに属する意味をもつ。
”PI3K仲介による障害または状態”は、その障害または状態の発症、1以上の症状もしくは疾患マーカーの発現、重症度、または進行において、1種類以上のPI3KまたはPI3Pホスファターゼ(たとえばPTENなど)の関与を特色とする。PI3K仲介による障害および状態には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患、肺線維症、自己免疫疾患、心血管疾患、アテローム性硬化症、高血圧症、深在静脈血栓症、発作、心筋梗塞、不安定狭心症、血栓塞栓症、肺塞栓症、血栓溶解性疾患、急性動脈虚血、末梢血栓性閉塞、冠動脈疾患、癌、乳癌、神経膠芽細胞腫、子宮内膜癌、肝細胞癌、結腸癌、肺癌、黒色腫、腎細胞癌、甲状腺癌、小細胞性肺癌、扁平上皮性肺癌、神経膠腫、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚癌、白血病、細胞性リンパ腫、リンパ球増殖性障害、II型糖尿病、呼吸器疾患、気管支炎、喘息、および慢性閉塞性肺疾患。
【0040】
PI3Kは、ホスホイノシトール類の3’−OHをリン酸化してPI3Pを生成することができる酵素である。PI3KにはPI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ、およびPI3Kδが含まれるが、これらに限定されない。PI3Kは一般に少なくとも1つの触媒サブユニット(たとえばp110γ)を含み、さらに調節サブユニット(たとえばp101など)を含む場合がある。
【0041】
用語”アルキル基”または”アルキル”には、直鎖および分枝鎖炭素鎖基が含まれる。用語”アルキレン”は、非置換または置換アルカンの二価の基を表わす。たとえば”C1−6アルキル”は、1〜6個の炭素原子をもつアルキル基である。直鎖アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが含まれるが、これらに限定されない。分枝鎖アルキル基の例には、イソプロピル、t−ブチル、イソブチルなどが含まれるが、これらに限定されない。アルキレン基の例には、−CH−、−CH−CH−、−CH−CH(CH)−CH−、および−(CH1−6が含まれるが、これらに限定されない。アルキレン基は、アルキルについて下記に示す基で置換されていてもよい。
【0042】
さらに、用語アルキルには、”非置換アルキル基”および”置換アルキル”の両方が含まれ、これらのうち後者は1個以上の炭素上の水素を置換する(たとえば1、2、3、4、5、または6個の炭素上の水素を置換する)置換基をもつアルキル部分を表わす。そのような置換基には下記のものを含めることができるが、これらに限定されない:C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、ハロ、I、Br、Cl、F、−OH、−COOH、スルフヒドリル、(C−Cアルキル)S−、C−Cアルキルスルフィニル、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、−NH、=O、=S、=N−CN、=N−OH、−OCHF、−OCHF、−OCF、−SCF、−SO−NH、C−Cアルコキシ、−C(O)O−(C−Cアルキル)、−O−C(O)−(C−Cアルキル)、−C(O)−NH、−C(O)−N(H)−C−Cアルキル、−C(O)−N(C−Cアルキル)、−OC(O)−NH、−C(O)−H、−C(O)−(C−Cアルキル)、−C(S)−(C−Cアルキル)、−NR7072;ここでR70およびR72は、それぞれ独立して、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、およびC(O)−C−Cアルキルから選択される。
【0043】
したがって代表的な置換アルキル基は、アミノメチル、2−ニトロエチル、4−シアノブチル、2,3−ジクロロペンチル、および3−ヒドロキシ−5−カルボキシヘキシル、2−アミノエチル、ペンタクロロエチル、トリフルオロメチル、2−ジエチルアミノエチル、2−ジメチルアミノプロピル、エトキシカルボニルメチル、メタニルスルファニルメチル、メトキシメチル、3−ヒドロキシペンチル、2−カルボキシブチル、4−クロロブチル、およびペンタフルオロエチルである。
【0044】
”ハロ”には、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードが含まれる。
”アルケニル”は、2個以上の炭素原子をもち、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、直鎖および分枝鎖炭化水素基を意味し、これにはエテニル、3−ブテン−1−イル、2−エテニルブチル、3−ヘキセン−1−イルなどが含まれる。用語”アルケニル”には、置換および非置換両方のアルケニル基が含まれるものとする。”C−Cアルケニル”は、2〜6個の炭素原子をもつアルケニル基である。アルケニル基は、アルキルについて前記に示した基で置換されていてもよい。用語”アルケニレン”は、非置換または置換アルケンの二価の基を表わす。アルケニレン基の例には−CH=CH−、−CH=CH−CH−、および−(CH1−6−CH=CH−CH−が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
”アルキニル”は、2個以上の炭素原子をもち、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む、直鎖および分枝鎖炭化水素基を意味し、これにはエチニル、3−ブチン−1−イル、プロピニル、2−ブチン−1−イル、3−ペンチン−1−イルなどが含まれる。用語”アルキニル”には、置換および非置換両方のアルキニル基が含まれるものとする。アルキニル基は、アルキルについて前記に示した基で置換されていてもよい。ある態様において、直鎖または分枝鎖アルキニル基はその主鎖中に6個以下の炭素原子をもつ(たとえば直鎖についてはC−C、分枝鎖についてはC−C)。用語C−Cには、2〜6個の炭素原子を含むアルキニル基が含まれる。用語”アルキニレン”は、非置換または置換アルキンの二価の基を表わす。アルキニレン基の例には−CH≡CH−、−C≡C−CH−、および−(CH1−6−C≡C−CH−が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
”シクロアルキル”は炭素単環式官能基を意味し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルを含むが、これらに限定されない;シクロアルキル基は所望により1または2つの二重結合を含むことができ(すなわちシクロアルキレニル)、これにはシクロペンテニルおよびシクロヘキセニルが含まれるが、これらに限定されない。別途指示しない限り、用語”(C−C)シクロアルキル”は、3〜6個の炭素原子を含むシクロアルキル基を表わす。したがって用語”(C−C)シクロアルキル”には、3〜6個の炭素原子を含む単環式シクロアルキル基が含まれる。
【0047】
本発明のある種の化合物は、鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何異性体を含めた、立体異性体として存在する場合がある。幾何異性体にはアルケニル基をもつ本発明化合物が含まれ、それらはEまたはZ立体配座として存在することができ、その場合EとZ、シスとトランスの両方、およびその混合物など、そのすべての幾何異性体形が本発明の範囲に含まれる。本発明のある種の化合物は、1個以上の炭素原子において置換されていてもよいシクロアルキル基をもち、その場合、シスとトランスの両方、およびその混合物など、そのすべての幾何異性体形が本発明の範囲に含まれる。(R)、(S)、エピマー、ジアステレオマー、シス、トランス、シン、アンチ、(E)、(Z)、互変異性体、およびその混合物など、そのすべての形が本発明化合物に含まれるものとする。
【0048】
発明の詳細な記述
I.序言
本発明は、炎症性疾患、心血管疾患、および癌を含めた疾患および状態の処置に際して薬剤として有用な式I〜XIIのベンゾ[b]チオフェン(R、R、R、およびLは、それらについて本明細書中に定めたいずれかの意味をもつ)、およびその医薬的に許容できる塩類に関する。1種類以上の式I〜XIIの化合物を含む医薬組成物も提供される。
【0049】
II.化合物の製造
本発明化合物(たとえば式I〜XIIの化合物)は、当技術分野で既知の合成法および下記の反応経路に概説する合成法を適用することにより製造できる。
【0050】
【化13】

【0051】
反応経路1においては、塩基、たとえばトリエチルアミンの存在下に、適切な溶媒、たとえばアセトニトリル中で、酸塩化物20をアミノテトラゾールに結合させて22を得る。次いで、第三級アミン、たとえば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)または1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)で処理することにより、22をチオール23、すなわちHS−L−Rの3−位に結合させて、24を得る。式23の化合物の例にはベンゼンチオール、4−メルカプト−フェノール、2−メチル−ベンゼンチオール、2−フェニル−エタンチオール、および3−(4−メルカプト−フェニル)−プロピオン酸メチルエステルが含まれるが、これらに限定されない。ある態様においては、適切な塩基、たとえば水酸化ナトリウムを、適切な溶媒、たとえばテトラヒドロフラン(THF)中で用いて、24上のRのエステル置換基を加水分解し、対応する酸にすることができる。
【0052】
【化14】

【0053】
反応経路2においては、ベンゾチオフェン30(たとえば3−メルカプト−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸ベンジルエステル)と、塩基、たとえばトリエチルアミン、および式31の化合物(X−L−R)(たとえばブロモメチル−シクロプロパン)[Xはハロ基である]を、溶媒、たとえばアセトニトリル中で反応させて、32(たとえば3−シクロプロピルメチルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸ベンジルエステル)を得る。Rは、カルボン酸基を保護し、かつ後に塩基加水分解により除去することができる、適切ないずれかの基(たとえばC−Cアルキル、イソプロピル、フェニル、ベンジル、メチルなど)であってよい。
【0054】
次いで、塩基、たとえばLiOH、KOH、またはNaOHにより、溶媒、たとえばTHFとメタノールの混合物中で、エステル32を加水分解して34にする。無水CHCl中のカルボン酸34(たとえば3−シクロプロピルメチルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸)を、触媒量のDMF(ジメチルホルムアミド)、続いて塩化オキサリルで処理することができる。次いでアセトニトリルをこの混合物に添加し、続いて5−アミノテトラゾールおよびトリエチルアミンを添加して、36(たとえば3−シクロプロピルメチルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド)を得る。34と塩化オキサリルおよびDMFの反応は、THF(テトラヒドロフラン)中で実施できる。
【0055】
あるいは、非プロトン溶媒、たとえばTHF(テトラヒドロフラン)中で、酸34をカルボニルジイミダゾール(CDI)と反応させ、続いて5−アミノテトラゾールを添加して、カルボキサミド36を得ることができる。
【0056】
III.化合物の評価
本発明化合物(たとえば式I〜XIIの化合物およびその医薬的に許容できる塩類)がPI3Kを阻害する能力をアッセイすることができる。これらのアッセイ法の例は下記に示され、PI3K活性のインビトロおよびインビボアッセイ法を含む。
【0057】
ある態様において本発明は、サイクリックヌクレオチド依存性プロテインキナーゼ、PDGF、チロシンキナーゼ、MAPキナーゼ、MAPキナーゼキナーゼ、MEKK、サイクリン依存性プロテインキナーゼを含めた(これらに限定されない)1種類以上の酵素と比較して、1種類以上のPI3Kを選択的に阻害する化合物である。他の態様において本発明は、他のPI3Kと比較して、1種類のPI3Kを選択的に阻害する化合物である。たとえばある態様において本発明化合物は、PI3KαまたはPI3Kβと比較して、PI3Kγを選択的に阻害する能力を示す。化合物は、第1酵素に対するその化合物のIC50が第2化合物に対するその化合物のIC50より小さい場合、第2酵素と比較して第1酵素を選択的に阻害する。IC50は、たとえばインビトロPI3Kアッセイ法において測定できる。
【0058】
現在好ましい態様においては、本発明化合物がPI3K活性を阻害する能力をインビトロまたはインビボアッセイ法(後記を参照)で評価することができる。
PI3K阻害化合物の阻害活性を測定するために、PI3K阻害化合物の存在下または不存在下でPI3Kアッセイを実施し、酵素活性量を比較する。
【0059】
PI3K阻害化合物を含有しない試料に、相対PI3K活性値100を帰属させる。PI3K阻害化合物の存在下でのPI3K活性が対照(すなわち阻害化合物なし)より低い場合、PI3K活性の阻害が達成されている。化合物のIC50は、対照試料活性の50%を示す化合物濃度である。ある態様において本発明化合物は、約100μM未満のIC50をもつ。他の態様において本発明化合物は、約1μM以下のIC50をもつ。さらに他の態様において本発明化合物は、約200nM以下のIC50をもつ。
【0060】
PI3Kγアッセイ法は当技術分野で記載されている(たとえばLeopoldt et al., J. Biol. Chem., 1998; 273: 7024-7029を参照)。一般に、p101およびp110γタンパク質の複合体を含有する試料を、GβおよびGγタンパク質(たとえばGタンパク質β/γサブユニット)と混和する。次いで放射性標識ATP(たとえばγ−32P−ATP)をこの混合物に添加する。脂質基質は、PIPを含有する脂質ミセルを構築することにより形成される。次いで脂質および酵素混合物の添加により反応を開始し、HPOの添加により停止させる。次いで脂質生成物をガラス繊維濾板に移し、HPOで数回洗浄する。放射性脂質生成物(PIP)の存在を、当技術分野で周知の放射分析法により測定することができる。
【0061】
増殖因子により調節されるPI3Kの活性は、脂質キナーゼアッセイ法により測定することもできる。たとえばPI3Kαは、調節サブユニットおよび触媒サブユニットを含有する試料を用いてアッセイすることができる。放射性標識ATPを含む試料に活性化ペプチド(たとえばpYペプチド、SynPep Corp.)を添加する。次いでPIPを含有する脂質ミセルを試料に添加して、反応を開始する。PI3Kγアッセイについて記載したように反応物を仕上げ処理および分析する。細胞抽出物を用いてアッセイを行うこともできる(Susa et al., J. Biol. Chem., 1992; 267: 22951-22956)。
【0062】
IV.医薬的に許容できる塩類および溶媒和物
本発明に使用する化合物は、非溶媒和形でも溶媒和形(水和形を含む)でも存在することができる。一般に、溶媒和形(水和形を含む)は非溶媒和形と均等であり、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0063】
本発明化合物(たとえば式I〜XIIの化合物)は、さらに医薬的に許容できる塩類を形成することができ、これには酸付加塩および/または塩基塩が共に含まれるが、これらに限定されない。式(I)の化合物の医薬的に許容できる塩類には、その酸付加塩および/または塩基塩(二塩を含む)が含まれる。適切な塩類の例は、たとえばStahl and Wermuth, Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, Wiley-VCH, ドイツ国バインハイム(2002);およびBerge et al.,”医薬塩類”,J. of Pharmaceutical Science, 1977; 66:1-19中にある。
【0064】
式I〜XIIの化合物の医薬的に許容できる酸付加塩には、無機酸、たとえば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸(phosphorus)などから誘導される無毒性塩、ならびに有機酸、たとえば脂肪族モノ−およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカンジ酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などから誘導される塩類が含まれる。そのような塩類には、たとえば下記のものが含まれる:式I〜XIIの化合物の酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩(ベンゼンスルホン酸塩)、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩、カプリル酸塩、カムシル酸塩(ショウノウスルホン酸塩)、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩(1,2−エタンジスルホン酸塩)、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩、エシル酸塩(エタンスルホン酸塩)、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/クロリド、臭化水素酸塩/ブロミド、ヨウ化水素酸塩/ヨージド、イソ酪酸塩、リン酸一水素塩、イセチオン酸塩、D−乳酸塩、L−乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩(メタンスルホン酸塩)、メタリン酸塩、メチル安息香酸塩、メチル硫酸塩、2−ナプシル酸塩(2−ナフタレンスルホン酸塩)、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロット酸塩、シュウ酸塩、パルモエート、フェニル酢酸塩、リン酸塩、フタル酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、ピロ硫酸塩、サッカリン酸塩、セバシン酸塩、ステアリン酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、D−酒石酸塩、L−酒石酸塩、トシル酸塩(トルエンスルホン酸塩)、およびキシナホ酸塩(xynafoate)。アミノ酸塩、たとえばアルギン酸塩、グルコン酸塩、ガラクツロン酸塩なども考慮される。
【0065】
塩基性化合物の酸付加塩は、常法により遊離塩基形を十分量の目的酸と接触させて塩を調製することにより製造される。遊離塩基形は、常法により塩形を塩基と接触させて遊離塩基を単離することにより再生できる。遊離塩基形は、ある物理的特性、たとえば極性溶媒中での溶解度においてそれらの各塩形と若干異なるが、他の点では塩類は本発明の目的に関してそれらの各遊離塩基と同等である。
【0066】
金属またはアミン、たとえばアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、または有機アミンと、医薬的に許容できる塩基付加塩が形成される。カチオンとして使用する金属の例は、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなどである。適切なアミンの例には、アルギニン、コリン、クロロプロカイン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジオラミン(diolamine)、エチレンジアミン(エタン−1,2−ジアミン)、グリシン、リシン、メグルミン、N−メチルグルカミン、オーラミン(olamine)、プロカイン(ベンザチン)、およびトロメタミンが含まれる。
【0067】
酸性化合物の塩基付加塩は、常法により遊離酸形を十分量の目的塩基と接触させて塩を調製することにより製造される。遊離酸形は、常法により塩形を酸と接触させて遊離酸を単離することにより再生できる。遊離酸形は、ある物理的特性、たとえば極性溶媒中での溶解度においてそれらの各塩形と若干異なるが、他の点では塩類は本発明の目的に関してそれらの各遊離酸と同等である。
【0068】
V.医薬組成物および投与方法
本発明は、療法有効量の式I〜XIIの化合物またはその医薬的に許容できる塩を、医薬的に許容できるキャリヤー、希釈剤または賦形剤と共に含む、医薬組成物をも提供する。”医薬組成物”という句は、ヒトまたは動物の医療用として投与するのに適した組成物を表わす。”療法有効量”という句は、単独で、または他の医薬もしくは処置と組み合わせて投与した場合に、特定の対象または対象集団において、処置される障害または状態を抑制し、停止させ、または改善できるのに十分な、化合物またはその医薬的に許容できる塩の量を意味する。たとえばヒトまたは他の哺乳類において、療法有効量は、処置される特定の疾患および対象について、実験室または臨床設定で実験的に決定でき、あるいは米国食品医薬品庁またはそれに相当する外国省庁の指針により要求される量であってもよい。
【0069】
適切な剤形、投与量、および投与経路は、医薬および医療の分野の専門家が容易に決定でき、以下に記載されるものであることを認識すべきである。
本発明化合物は、医薬組成物として、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁液剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ、トローチ剤、水性液剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ゲル剤、乳剤などの形で配合できる。好ましくは本発明化合物は、定量的または定性的に測定したPI3K仲介障害関連の症状または疾患指標を低下させるであろう。
【0070】
本発明化合物から医薬組成物を調製するには、医薬的に許容できるキャリヤーは固体または液体であってよい。固形製剤には、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒剤が含まれる。固体キャリヤーは、希釈剤、着香剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、または封入材料としても作用しうる1種類以上の物質であってよい。
【0071】
散剤の場合、キャリヤーは微細に分割された固体であり、これが微細に分割された有効成分と混合されている。錠剤の場合、必要な結合性をもつキャリヤーと有効成分を適切な割合で混合し、目的の形状およびサイズに圧縮する。
【0072】
散剤および錠剤は1〜95%(w/w)の有効化合物を含有する。ある態様において、有効化合物は5〜70%(w/w)である。適切なキャリヤーは、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ショ類、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ろう、カカオ脂などである。用語”製剤”は、カプセルを提供するキャリヤーとしての封入材料を含む有効化合物の配合物(formulation)であって、有効成分が(他のキャリヤーと共に、または他のキャリヤーなしに)キャリヤーで取り囲まれ、したがってそれと一緒になったものを含むものとする。カシェ剤およびロゼンジも含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤およびロゼンジは、経口投与に適した固体剤形として使用できる。
【0073】
坐剤の調製のためには、低融点ろう、たとえば脂肪酸グリセリド混合物またはカカオ脂をまず融解し、それに有効成分を撹拌などによって均一に分散させる。融解した均質な混合物を、次いで好都合なサイズの型に注入し、放冷し、これにより凝固させる。
【0074】
液状製剤には、液剤、懸濁液剤、および乳剤、たとえば水溶液または水/プロピレングリコール溶液が含まれる。非経口注射のためには、液体製剤をプロピレングリコール水溶液中の液剤として配合することができる。
【0075】
経口用として適した水性液剤は、有効成分を水に溶解し、適切な着色剤、着香剤、安定剤、および増粘剤を目的に応じて添加することにより調製できる。経口用として適した水性懸濁液剤は、粘稠な物質、たとえば天然または合成のゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の周知の沈殿防止剤を含む水に、微細に分割した有効成分を分散させることにより調製できる。
【0076】
使用直前に経口投与用の液状製剤に変換するための固形製剤も含まれる。そのような液体剤形には、液剤、懸濁液剤、および乳剤が含まれる。これらの製剤は、有効成分のほかに着色剤、着香剤、安定剤、緩衝剤、人工および天然の甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有できる。
【0077】
医薬製剤は、好ましくは単位剤形である。そのような剤形の場合、製剤は適量の有効成分を含有する単位量に小分割される。単位剤形は、パッケージ製剤、すなわち個別量の製剤を収容したパッケージ、たとえばバイアルまたはアンプルに充填した錠剤、カプセル剤、および散剤であってもよい。単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、またはロゼンジそのものであってもよく、あるいは適切な個数のこれらのいずれかをパッケージしたものであってもよい。
【0078】
単位量製剤中の有効成分の量は、個々の用途および有効成分の力価に応じて、0.1〜1000mg、好ましくは1.0〜100mg、または1〜95%(w/w)の単位量で変更または調節できる。本発明組成物は、所望により他の適合する療法薬をも含有できる。
【0079】
医薬的に許容できるキャリヤーは、投与する個々の組成物、および組成物を投与するために用いる個々の方法により、ある程度は決まる。したがって、多様な適切な本発明の医薬組成物の配合物がある(たとえば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版, Gennaro et al.編, Lippincott Williams and Wilkins, 2000を参照)。
【0080】
本発明化合物は、単独で、または他の適切な成分と組み合わせて、吸入により投与するためのエアゾル配合物にすることができる(すなわち、それらを”噴霧”することができる)。エアゾル配合物は、加圧した許容できる噴射剤、たとえばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などに装入することができる。
【0081】
非経口投与、たとえば静脈内、筋肉内、皮内、および皮下経路による投与に適した配合物には、水性および非水性の等張無菌注射液剤が含まれ、これらは酸化防止剤、緩衝剤、殺菌剤、および配合物を予定したレシピエントの血液と等張にするための溶質を含有することができる;ならびに水性および非水性の無菌懸濁液剤が含まれ、これらは沈殿防止剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および保存剤を含有することができる。本発明の実施に際しては、組成物をたとえば静脈内注入、経口、局所、腹腔内、膀胱内またはクモ膜下に投与することができる。本発明化合物の配合物は、1回量または多数回量の密閉容器、たとえばアンプルおよびバイアルに入れて提供することができる。注射用の液剤および懸濁液剤は、前記に述べた種類の無菌の散剤、顆粒剤、および錠剤から調製できる。
【0082】
本発明に関して対象に投与する量は、ある期間、有益な療法応答を生じるのに十分なものでなければならない。用語”対象”は、哺乳類綱のメンバーを表わす。哺乳類の例にはヒト、霊長類、チンパンジー、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、家畜、イヌ、ネコ、ヒツジ、およびウシが含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
投与量は、使用する個々の化合物の有効性および処置される対象の状態、ならびに対象の体重または体表面積により決まるであろう。投与量は、個々の対象において個々の化合物の投与に伴う有害な副作用の有無、性質、および程度によっても決まるであろう。処置される障害の治療または予防に際して投与する化合物の有効量を決定する場合、医師は循環血漿中の化合物濃度、化合物の毒性、および/または疾患の進行度などの要因を評価することができる。一般に化合物の投与相当量は、一般的な対象について約1μg/kg〜100mg/kgである。多様な投与方法が当業者に知られている。
【0084】
投与のためには、化合物のLD50、化合物の薬物動態プロフィール、配合禁忌薬物、および種々の濃度における化合物の副作用を含めた要因(これらに限定されない)を対象の全般的な健康状態に当てはめることにより決定される割合で、本発明化合物を投与することができる。投与は1回量または分割量で行うことができる。
【0085】
代表的な錠剤、非経口およびパッチ配合物の例には、下記のものが含まれる:
錠剤配合例1
【0086】
【表1】

【0087】
本発明化合物(たとえば式I〜XIIの化合物、またはその医薬的に許容できる塩)を乳糖およびトウモロコシデンプン(混合用)と混合し、均質になるまでブレンドして粉末にすることができる。トウモロコシデンプン(ペースト用)を6mLの水に懸濁し、加熱撹拌してペーストを調製する。このペーストを前記の混合粉末に添加し、混合物を造粒する。湿潤顆粒をNo.8硬質スクリーンに通し、50℃で乾燥させる。混合物を1%ステアリン酸マグネシウムで滑沢処理し、圧縮して錠剤にする。この錠剤を、PI3K仲介による障害または状態の処置のために1日1〜4個の割合で患者に投与する。
【0088】
非経口液剤配合例1
700mLのプロピレングリコールおよび200mLの注射用水の溶液に、20.0gの本発明化合物を添加することができる。混合物を撹拌し、塩酸でpHを5.5に調整する。体積を注射用水で1000mLに調整する。この溶液を殺菌し、5.0mLアンプルにそれぞれ2.0mL(40mgの本発明化合物)を収容するように充填し、窒素下でシールする。PI3K仲介による障害または状態を伴い、その処置を必要とする対象に、この液剤を注射により投与する。
【0089】
パッチ配合例1
10mgの本発明化合物を、プロピレングリコール1mL、および樹脂架橋剤を含有するアクリル系ポリマー接着剤2mgと混合する。この混合物を不透過性裏層(30cm)に付与し、PI3K仲介による障害または状態の持続放出処置のために患者の上背に貼付する。
【0090】
V.PI3K仲介による障害および状態の処置方法
本発明化合物、および本発明化合物を含む医薬組成物は、PI3K仲介による障害または状態を伴う対象に投与することができる。PI3K仲介による障害および状態を、障害または状態の性質に応じて本発明化合物により予防的、短期的、および長期的に処置することができる。一般にこれらの各方法のホストまたは対象はヒトであるが、他の哺乳類も本発明化合物の投与が有益である。
【0091】
治療用途において、本発明化合物を広範な経口および非経口剤形で調製し、投与することができる。用語”投与”は、化合物を対象と接触させる方法を表わす。たとえば本発明化合物を注射により、すなわち静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、腸管外、または腹腔内に投与できる。本明細書に記載する化合物は、吸入により、たとえば鼻腔内投与することもできる。さらに、本発明化合物を経皮、局所、埋込み、経皮、局所、および埋込みにより投与できる。ある態様においては、本発明化合物を経口送達する。本発明化合物を直腸、口腔、膣内、眼内、andially、または吹入により投与することもできる。
【0092】
本発明の医療に用いられる化合物は、1日約0.001〜約100mg/kgの初期量で投与することができる。ある態様において、1日量は約0.1〜約10mg/kgである。ただし投与量は、対象の要件、状態の重症度、および使用する化合物に応じて変更できる。個々の状況に適切な投与量は当業者が容易に決定できる。一般に、その化合物の最適量より少ない投与量から処置を開始する。その後、その状況で最適効果に達するまで投与量を少量ずつ増加する。便宜上、所望により全1日量を分割して、その日全体で少量ずつ投与してもよい。用語”処置”には、処置される障害に関連または起因する少なくとも1つの症状または特性の短期的、長期的、または予防的な減弱または軽減が含まれる。たとえば処置には、障害の幾つかの症状の減弱、障害の病理進行の抑制、または障害の完全な根絶を含めることができる。本発明化合物は、対象に共投与することができる。用語”共投与”は、2種類以上の異なる医薬または処置(たとえば放射線処置)を施すことを意味し、これらを同一の医薬組成物または個別の医薬組成物中において対象に投与する。したがって共投与は、2種類以上の医薬を含む単一の医薬組成物を同時投与すること、または2以上の異なる組成物を同一対象に同時に、もしくは異なる時点で投与することを伴う。たとえば、本発明化合物を含む第1薬剤を午前8時に投与され、次いでセレブレックス(CELEBREX、登録商標)を1〜12時間後、たとえば同日午後6時に投与される対象は、本発明化合物とセレブレックス(登録商標)を共投与されたことになる。あるいは、たとえば本発明化合物とセレブレックス(登録商標)を含む単一剤形を午前8時に投与された対象は、本発明化合物とセレブレックス(登録商標)を共投与されたことになる。
【0093】
たとえば本発明化合物は、癌の処置に有用なたとえば下記の化合物と共投与することもできる:細胞毒性薬物、たとえばタキソール(TAXOL、登録商標)、タキソテール(taxotere)、グリベック(GLEEVEC、登録商標)(イマチニブメシラート(Imatinib Mesylate))、アドリアマイシン、ダウノマイシン、シスプラチン、エトポシド(etoposide)、ツルニチニチソウアルカロイド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、メトトレキセート(methotrexate)、またはアドリアマイシン、ダウノマイシン、シスプラチン、エトポシド、およびアルカロイド、たとえばビンクリスチン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬、エンドスタチン(endostatin)およびアンギオスタチン(angiostatin)、VEGF阻害薬、ならびに代謝拮抗薬、たとえばメトトレキセート。本発明化合物は、タキサン誘導体、白金配位錯体、ヌクレオチド類似体、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害薬、またはアロマターゼ阻害薬とも併用できる。癌処置のために、放射線処置も本発明化合物と併用できる。
【0094】
本発明化合物は、血栓溶解性疾患、心疾患、発作などの処置に有用な、たとえば下記の化合物とも共投与できる:アスピリン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゼンアクチベーター、ウロキナーゼ、抗凝固薬、抗血小板薬(たとえばプラビックス(PLAVIX、登録商標);二硫酸クロピドグレル(clopidogrel bisulfate))、スタチン類(たとえばリピトール(LIPITOR、登録商標)(アトルバスタチンカルシウム(Atorvastatin calcium))、ゾコル(ZOCOR、登録商標)(シンバスタチン(Simvastatin))、クレストール(CRESTOR、登録商標)(ロスバスタチン(Rosuvastatin))など)、β遮断薬(たとえばアテノロール(Atenolol))、ノルバスク(NORVASC、登録商標)(ベシル酸アムロジピン(amlodipine besylate))、およびACE阻害薬(たとえばアキュプリル(Accupril、登録商標)(塩酸キナプリル(Quinapril Hydrochloride))、リシノプリル(Licinopril)など)。
【0095】
本発明化合物は、高血圧症の処置のために、たとえばACE阻害薬、脂質低下薬、たとえばスタチン類、リピトール(登録商標)(アトルバスタチンカルシウム)、カルシウムチャンネル遮断薬、たとえばノルバスク(登録商標)(ベシル酸アムロジピン)とも共投与できる。本発明化合物は、フィブラート類、β遮断薬、NEPI阻害薬、アンギオテンシン−2受容体アンタゴニストおよび血小板凝集阻害薬とも併用できる。
【0096】
本発明化合物は、慢性関節リウマチを含めた炎症性疾患の処置のために、たとえば下記の化合物とも共投与できる:TNF−α阻害薬、たとえば抗TNFαモノクローナル抗体(たとえばレミケード(REMICADE、登録商標)、CDP−870およびヒューミラ(HUMIRA、商標)(アダリムマブ(adalimumab)))およびTNF受容体−免疫グロブリン融合分子(たとえばエンブレル(ENBREL、登録商標))、IL−1阻害薬、受容体アンタゴニストまたは可溶性IL−1Rα(たとえばキネレット(KINERET、商標)またはICE阻害薬)、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ピロキシカム(piroxicam)、ジクロフェナク(diclofenac)、ナプロキセン(naproxen)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、フェノプロフェン(fenoprofen)、ケトプロフェン(ketoprofen)、イブプロフェン(ibuprofen)、フェナメート類、メフェナム酸、インドメタシン(indomethacin)、スリンダク(sulindac)、アパゾン(apazone)、ピラゾロン類、フェニルブタゾン(phenylbutazone)、アスピリン、COX−2阻害薬(たとえばセレブレックス(CELEBREX、登録商標)(セレコキシブ(celecoxib))、ビオックス(VIOXX、登録商標)(ロフェコキシブ(rofecoxib))、ベクストラ(BEXTRA、登録商標)(バルデコキシブ(valdecoxib))およびエトリコキシブ(etoricoxib))、メタロプロテアーゼ阻害薬(好ましくはMMP−13選択的阻害薬)、ニューロチン(NEUROTIN、登録商標)、プレガバリン(pregabalin)、低用量メトトレキセート、レフルノミド(leflunomide)、ヒドロキシクロロキン、d−ペニシラミン、オーラノフィン(auranofin)または非経口用もしくは経口用の金。
【0097】
本発明化合物は、変形性関節症の処置のための既存の療法薬とも共投与できる。併用に適した薬剤には、下記のものが含まれる:標準的な非ステロイド系抗炎症薬(以下、NSAID)、たとえばピロキシカム、ジクロフェナク、プロピオン酸類、たとえばナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェンおよびイブプロフェン、フェナメート類、たとえばメフェナム酸、インドメタシン、スリンダク、アパゾン、ピラゾロン類、たとえばフェニルブタゾン、サリチル酸類、たとえばアスピリン、COX−2阻害薬、たとえばセレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブおよびエトリコキシブ、鎮痛薬および関節内療法薬、たとえばコルチコステロイドおよびヒアルロン酸類、たとえばヒアルガン(hyalgan)およびシンビスク(synvisc)。
【0098】
本発明化合物は、抗ウイルス薬、たとえばビラセプト(Viracept)、AZT、アシクロビル(aciclovir)およびファムシクロビル(famciclovir)、ならびに消毒薬、たとえばバラント(Valant)とも共投与できる。
【0099】
本発明化合物は、さらに下記の化合物とも共投与できる:CNS薬、たとえば抗うつ薬(たとえばセルトラリン(sertraline))、抗パーキンソン病薬(たとえばデプレニル(deprenyl)、レボドパ(L-Dopa)、レキップ(Requip)、ミラペックス(Mirapex)、MAOB阻害薬、たとえばセレギン(selegine)およびラサギリン(rasagilline)、comP阻害薬、たとえばタスマル(Tasmar)、A−2阻害薬、ドーパミン再取込み阻害薬、NMDAアンタゴニスト、ニコチンアゴニスト、ドーパミンアゴニスト、および神経性一酸化窒素シンターゼ阻害薬)、および抗アルツハイマー病薬、たとえばドネペジル(donepezil)、タクリン(tacrine)、ニューロチン(登録商標)、プレガバリン、COX−2阻害薬、プロペントフィリン(propentofylline)またはメトリフォネート(metryfonate)。
【0100】
本発明化合物は、さらに骨粗鬆症薬、たとえばエビスタ(EVISTA、登録商標)(塩酸ラロキシフェン(raloxifene hydrochloride))、ドロロキシフェン(droloxifene)、ラゾフォキシフェン(lasofoxifene)またはフォソマックス(fosomax)、および免疫抑制薬、たとえばFK−506およびラパマイシン(rapamycin)とも共投与できる。
【0101】
実施例
【0102】
【化15】

【0103】
【表2−1】

【0104】
【表2−2】

【0105】
中間体1. 3−クロロ−5−エトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル. 3−(3−エトキシ−フェニル)−アクリル酸(5.3g,28mmol)、ピリジン(0.21mL,2.65mmol)、ジメチルホルムアミド(2.05mL,26mmol)、塩化チオニル(10.4mL)およびクロロベンゼン(40mL)のスラリーを、21時間、加熱還流した。反応物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。残留物をジクロロメタン(15mL)に溶解し、メタノール(15mL)で処理した。生成した固体を濾過により分離し、メタノールで洗浄して、表題化合物(6.7g,88%)を得た。
【0106】
【数1】

【0107】
中間体2. 3−クロロ−5−エトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド. 中間体1(2.0g,7.39mmol)の、THF(20mL)中における溶液に、1N NaOH(20mL)を添加した。混合物を65〜75℃に2時間、加熱撹拌し、次いで室温に放冷した。反応混合物をEtOAcで2回洗浄し、次いで酸性にすると、灰白色固体沈殿が生成した。この沈殿をEtOAcで数回抽出した。有機層をブラインで洗浄し、濃縮すると3−クロロ−5−エトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸が得られた。3−クロロ−5−エトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1.8g,7.01mmol)のCHCl中における室温溶液に、塩化オキサリル(1.35mL,15.5mmol)、続いて2〜3滴のDMFを添加した。反応物を室温で2時間撹拌し、次いで濃縮した。残留物をCHCN(60mL)に溶解した。トリエチルアミン(1.08mL,7.75mmol)、続いて5−アミノテトラゾール(0.725g,9.52mmol)を反応物に添加した。反応物を60℃で16時間撹拌し、次いで室温に冷却した。混合物をHO(約30mL)で希釈すると、固体沈殿が生成した。この固体を濾過し、HOおよびCHCNで洗浄して、表題化合物(1.2g,50%)を得た。MS:M+1=324。
【0108】
中間体3. 3−クロロ−5−メトキシ−6−ブロモメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル. 3−クロロ−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル(2.5g,9.2mmol)、N−ブロモスクシンイミド(1.71g,9.99mmol)、触媒量のAIBN(2,2−アゾビスイソブチロニトリル)および四塩化炭素(80mL)の混合物を、24時間、加熱還流した。溶液を冷却し、減圧濃縮した。移動相としてヘキサン−ジクロロメタン(1−2)を用いて、粗生成物を小さなシリカゲル床に通した。減圧濃縮して、表題化合物(2.1g,65%)を得た。
【0109】
【数2】

【0110】
中間体4. 3−クロロ−5−メトキシ−6−(メチルカルボニルオキシ)メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル. 中間体3(2.1g,6.0mmol)および酢酸ナトリウム(1.48g,18mmol)の、DMF(20mL)およびTHF(10mL)中における混合物を、80℃に18時間加熱した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチル/水に溶解した。有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧濃縮して、表題化合物(2.1g,95%)を得た。
【0111】
【数3】

【0112】
中間体5. 3−クロロ−5−メトキシ−6−ヒドロキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル. 中間体4(1.86g,5.7mmol)の、メタノール(80mL)中における溶液を、炭酸カリウム(2g)と共に18時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を水で数回、摩砕処理し、乾燥させた。残留物を酢酸エチル/メタノールから再結晶して、表題化合物(0.89g,54%)を得た。
【0113】
【数4】

【0114】
中間体6. 3−クロロ−5−メトキシ−6−メトキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸. 中間体5(0.25g,0.87mmol)の、DMF(5ml)中における溶液を、NaH(0.038g,0.95mmol)で処理し、15分間撹拌した。ヨードメタン(0.27mL,4.35mmol)を添加し、18時間撹拌し続けた。溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチルに溶解した。溶液を1N NaOH、水、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧濃縮すると、0.220g(89%)の粗製化合物が得られた。このエステルをTHF(5ml)に溶解し、1N NaOH(2ml)と共に18時間撹拌した。THFを減圧下で除去し、酢酸エチルで抽出した。水層を酸性になるまでHClで処理し、生成物を濾過により回収して、表題化合物(0.11g,44%)を得た。
【0115】
【数5】

【0116】
中間体7. 3−クロロ−5−メトキシ−6−メトキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド. 中間体6(0.11g,0.38mmol)、塩化チオニル(2ml)およびジクロロメタン(5ml)の溶液を、50℃に2時間加熱した。反応物を周囲温度に冷却し、溶媒を減圧下で除去すると、中間体6の酸塩化物が得られた。この酸塩化物、トリエチルアミン(0.10ml,0.77mmol)、および5−アミノ−1H−テトラゾール(0.065g,0.77mmol)をアセトニトリル(10ml)に溶解し、70℃に18時間加熱した。溶媒の半分を減圧下で除去し、得られた溶液を水(1ml)で処理すると、生成物が沈殿した。生成物を濾過により分離し、アセトニトリル/水で洗浄し、乾燥させて、表題化合物(0.1g,74%)を得た。
【0117】
【数6】

【0118】
中間体8. 3−クロロ−6−メトキシ−5−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボニルクロリド. 3−(4−メトキシ−3−メチル−フェニル)−アクリル酸(Kulkarni et al., (1967) Indian J. Chem. 5: 471-474)(5.3g,28mmol)、ピリジン(0.21mL,2.65mmol)、ジメチルホルムアミド(2.05mL,26mmol)、塩化チオニル(10.4mL)およびクロロベンゼン(40mL)を、21時間、加熱還流した。反応物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。残留物をトルエンに再溶解し、減圧濃縮した。表題化合物をトルエン/ヘキサンから再結晶して、表題化合物(4.1g,28%)を得た。
【0119】
【数7】

【0120】
中間体9. 3−クロロ−6−メトキシ−5−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド. 中間体8(2.0g,7.2mmol)、5−アミノテトラゾール(0.649g,7.6mmol)、およびトリエチルアミン(1.32mL,9.4mmol)の、アセトニトリル(60mL)中における溶液を、18時間、加熱還流した。反応物を冷却し、溶媒を減圧下で除去した。水を残留物に添加し、生成した固体を濾過により採集した。乾燥した固体をジクロロメタン/メタノールから再結晶して、表題化合物(1.7g,72%)を得た。
【0121】
【数8】

【0122】
中間体10. 3−クロロ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド. 中間体9の合成について記載したものと同様な方法で、アセトニトリル(200mL)中の3−クロロ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボニルクロリド(Connor et al., J. Med. Chem., 35: 958-965)(5.82g,20mmol)、5−アミノテトラゾール(1.7g,20.0mmol)、およびトリエチルアミン(5.58mL,40.0mmol)から表題化合物(5.0g,76%)を得た。MS:M+1=340。
【0123】
中間体11. 3−クロロ−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド. 中間体9の合成について記載したものと同様な方法で、アセトニトリル中の3−クロロ−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボニルクロリド(Connor et al., J. Med. Chem., 38: 4597-4614)、5−アミノテトラゾール、およびトリエチルアミンから表題化合物を得た。MS:M+1=310。微量分析:計算値:C=42.66;H=2.60;N=22.61;実測値:C=43.01;N=2.70;H=22.0。
【0124】
中間体12. 3−メトキシ−4−メチルケイ皮酸. 出発物質3−(3−メトキシ−4−メチル−フェニル)−アクリル酸を下記の反応に従って製造した:3−メトキシ−4−メチルベンズアルデヒド(20.0mL,137mmol)をマロン酸(27.2g,206mmol)と共に、ピペリジン(6mL)およびピリジン(200mL)の混合物中で2.5時間還流した。混合物を半分の体積に濃縮した。HO(約20mL)および1N HCl(約6mL)を添加すると、固体沈殿が生成した。この固体を濾過し、1N HCl、次いでHOですすぎ、次いで真空乾燥して、表題生成物を定量的収率で得た。
【0125】
【数9】

【0126】
中間体13. 3−クロロ−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボニルクロリド. 中間体12(9.18g,47.8mmol)を、ピリジン(0.39mL)、DMF(3.51mL)、およびクロロベンゼン(60mL)の混合物に、アルゴンパージした還流冷却器付き丸底フラスコ内で溶解した。塩化チオニル(17.8mL,244mmol)を注射器で混合物に添加した。反応物を18時間、激しい還流下で加熱撹拌した。反応物を室温に放冷し、次いで真空濃縮した。残留物をCHCl(約40mL)に溶解し、次いで過剰のヘキサンで希釈した。希釈液を約半分の体積に濃縮すると、沈殿が生成した。この固体沈殿を濾過して採集し、真空乾燥させて、表題生成物(8.49g,32.9mmol,69%)を灰褐色の綿毛状固体として得た。
【0127】
中間体14. 3−クロロ−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド. 中間体7の合成について記載したものと同様な方法で、中間体13を表題化合物(0.442g,58%)に変換した。MS:M+1=324。
【0128】
中間体15. 3−クロロ−5−メトキシ−6−エトキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸. 中間体6の合成について記載したものと同様な方法で、中間体5を表題化合物(0.1g,34%)に変換した。
【0129】
【数10】

【0130】
中間体16. 3−クロロ−5−メトキシ−6−エトキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド. 中間体7の合成について記載したものと同様な方法で、中間体15を表題化合物(0.075g,53%)に変換した。
【0131】
【数11】

【0132】
中間体17. 3−クロロ−5−メトキシ−6−ベンジルオキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸. 中間体6の合成について記載したものと同様な方法で、中間体5を表題化合物(0.04g,27%)に変換した。
【0133】
【数12】

【0134】
中間体18. 3−クロロ−5−メトキシ−6−ベンジルオキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド. 中間体7の合成について記載したものと同様な方法で、中間体17を表題化合物(0.048g,定量的)に変換した。
【0135】
【数13】

【0136】
目的チオール(R−L−SH)の溶液を、溶液(DMF)の最終モル濃度が0.66Mの目的チオール(1当量)および0.66MのDBUとなるように調製した。適宜なバイアル(2ドラム)、中間体2、7、9、10、11、14、16または18(1.5ml,0.11mmol)および目的チオール溶液(0.5mL,0.33mmol)を添加した。バイアルに蓋をし、振とうしながら80℃に10時間加熱した。反応物を冷却し、Bohdan Mini Blockの個別容器に移した。バイアルをDMF(0.5ml)で洗浄し、洗液をMini Blockの適宜な容器に移した。ArgoPore(登録商標)−イソシアネート捕獲樹脂(0.20g)(Argonaut Technologies, Inc., カリフォルニア州フォスター・シティー)を各容器に添加し、2時間混合した。得られた溶液を濾過して樹脂を除去した。次いで樹脂をDMF(0.5mL)で洗浄した。次いで反応物を酢酸(0.2Mメタノール,0.5ml)で処理し、次いで溶媒を減圧下で除去した。残留物をメタノール(2mL)に溶解し、Bohdan Mini Blockの新たな容器に移した。Argonaut MP−TsOH捕獲樹脂(0.20g)(Argonaut Technologies, Inc., カリフォルニア州フォスター・シティー)を各容器に添加し、18時間混合した。樹脂を濾過により分離し、樹脂をメタノール(0.4mL)およびDMF(0.5mL)で洗浄した。溶媒を減圧下で除去し、実施例1〜14の表題化合物を逆相クロマトグラフィーにより精製した。
【0137】
実施例1. 3−シクロヘキシルメチルスルファニル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
実施例2. 3−シクロヘキシルメチルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
【0138】
実施例3. 3−シクロペンチルスルファニル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
実施例4. 3−シクロヘキシルスルファニル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
【0139】
実施例5. 3−シクロペンチルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
実施例6. 3−シクロヘキシルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
【0140】
実施例7. 3−シクロペンチルスルファニル−6−メトキシ−5−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
実施例8. 3−シクロヘキシルスルファニル−6−メトキシ−5−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
【0141】
実施例9. 3−シクロペンチルスルファニル−5−エトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
実施例10. 3−シクロヘキシルスルファニル−5−エトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
【0142】
実施例11. 3−シクロヘキシルスルファニル−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
実施例12. 3−シクロヘキシルスルファニル−5−メトキシ−6−メトキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
【0143】
実施例13. 3−シクロヘキシルスルファニル−6−エトキシメチル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
実施例14. 6−ベンジルオキシメチル−3−シクロヘキシルスルファニル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド。
【0144】
中間体19. 3−シクロプロピルメチルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸. 3−メルカプト−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸ベンジルエステル(1.4g,4.0mmol)を、アセトニトリル(ACN)10mL中の(ブロモメチル)シクロプロパン(0.39g,4.0mmol)およびトリエチルアミン(TEA)(0.61mL,4.4mmol)と混和した。反応物を6時間還流し、次いで室温に冷却した。溶媒を真空下で除去した。残留物を1:1 EtOAc/EtOに溶解し、水およびブラインで洗浄した。有機層を濃縮乾固し、THF(30mL)および1N NaOH(15mL)に溶解し、10時間還流した。反応物を室温に冷却し、EtOAcで希釈した。この2相物質を濾過して、目的生成物を得た。収量:1.0g,77%。
【0145】
実施例15. 3−シクロプロピルメチルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド. 中間体19(0.96g,2.9mmol)を触媒量のDMF滴、続いて塩化オキサリル(5.0mL)と混和した。反応物を室温で30分間撹拌した。溶媒を真空下で除去した。残留物をアセトニトリル(10mL)に溶解し、5−アミノテトラゾール(0.30g,3.5mmol)およびトリエチルアミン(0.49mL,3.5mmol)を添加した。反応物を周囲温度で2.5時間撹拌した。反応物をHOで希釈した。固体を濾過により採集し、EtOで洗浄し、真空乾燥した。収量:0.70,60%。HPLC:97.87%、保持時間:7.303分。融点=>250℃。
【0146】
生物学的実施例1
PI3Kγタンパク質の発現および精製のプロトコル
ESF921培地で増殖させたヨトウガ(Spodtera frugiperda)細胞に、glu−タグ付きp101発現バキュロウイルスおよびHA−タグ付きp110γ発現バキュロウイルスを、p101バキュロウイルス対p110γバキュロウイルスの比率3:1で同時感染させた。Sf9細胞を10Lのバイオリアクター内で総細胞数1×10/mLになるまで増殖させ、感染の48〜72時間後に収穫した。次いで感染細胞の試料を、免疫沈降およびウェスタンブロット分析法(後記を参照)によりp101/p110γ PI3キナーゼ発現について検査した。
【0147】
PI3Kγを精製するために、細胞ペーストのグラム当たり4体積の室温の溶解用低張緩衝液(1mM MgCl、1mM DTT、5mM EGTA、1mM Pefabloc、0.5μMアプロチニン、5μMロイペプチン、2μMペプスタチン、5μM E64、pH8)を凍結細胞ペレットに撹拌下で注ぎ、次いで400psiの窒素”ボンベ”(599HC T316、Parr Instrument Co.、イリノイ州モーリン)内で細胞溶解した。NaClを150mMになるように添加し、コール酸ナトリウムを1%になるように添加し、さらに45分間混合した。溶解物を14,000rpmで25分間の遠心分離により澄明にした。次いで、溶解物を抗−glu結合プロテインGセファロース(Sepharose)ビーズ(Covance Research Products、カリフォルニア州リッチモンド)に、樹脂20mL/細胞ペースト50gで負荷した。カラムを15体積の洗浄用緩衝液(1mM DTT、0.2mM EGTA、1mM Pefabloc、0.5μMアプロチニン、5μMロイペプチン、2μMペプスタチン、5μM E64、150mM NaCl、1%コール酸ナトリウム、pH8)で洗浄した。gluタグの結合に対して競合するペプチド100μg/mLを含有する洗浄用緩衝液6カラム体積で、PI3Kγを溶離した。溶離タンパク質を含むカラム画分(OD280の読みを求めることにより判定)を採集し、0.2mM EGTA、1mM DTT、1mM Pefabloc、5μMロイペプチン、0.5%コール酸ナトリウム、150mM NaCl、および50%グリセロール、pH8中で透析した。これらの画分を後に使用するまで−80℃に保存した。
【0148】
生物学的実施例2
Gタンパク質サブユニットの発現
ヨトウガ(Spodtera frugiperda)細胞に、glu−タグ付きGタンパク質β発現バキュロウイルスおよびGタンパク質β発現バキュロウイルスを、glu−タグ付きGタンパク質βバキュロウイルス対Gタンパク質βバキュロウイルスの比率1:1で同時感染させた。Sf9細胞を10Lのバイオリアクター内で増殖させ、感染の48〜72時間後に収穫した。感染細胞の試料を、後記に従ってウェスタンブロット分析によりGタンパク質β/β発現について検査した。細胞溶解物をホモジナイズし、生物学的実施例1と同様なglu−タグ付きビーズのカラムに負荷し、生物学的実施例1に記載したようにカラムからgluペプチドと競合溶離し、処理した。
【0149】
生物学的実施例3
ウェスタンブロット分析
タンパク質試料を8%トリス−グリシンゲルに流し、45μMニトロセルロース膜へ移した。次いでブロットを、TBST(50mMトリス、200mM NaCl、0.1%トゥイーン(Tween)20、ph7.4)中の5%ウシ血清アルブミン(BSA)および5%卵白アルブミンにより、室温で1時間遮断し、0.5%のBSAを含むTBST中に1:1000希釈した一次抗体と共に4℃で一夜インキュベートした。p110γ、p110α、p110β、p85α、Gタンパク質β、およびGタンパク質γサブユニットに対する抗体は、Santa Cruz Biotechnology, Inc.(カリフォルニア州サンタクルーズ)から購入された。p101サブユニットの抗体はResearch Genetics, Inc.(アラバマ州ハンツビル)でp101ペプチド抗原に基づいて作成された。
【0150】
一次抗体と共にインキュベートした後、ブロットをTBST中で洗浄し、0.5%のBSAを含むTBST中に1:10,000希釈したヤギ抗ウサギ抗体HRPコンジュゲート(Bio-Rad Laboratories, Inc.、カリフォルニア州ハーキュレス、製品番号170-6515)と共に室温で2時間インキュベートした。抗体をECL(商標)検出試薬(Amersham Bioscience Corp.、ニュージャージー州ピスカッタウェイ)で検出し、Kodak ISO400Fスキャナーで定量した。
【0151】
生物学的実施例4
免疫沈降
生物学的実施例1または2からの細胞ペースト100μLを融解し、氷上で400μLの溶解用低張緩衝液(25mMトリス、1mM DTT、1mM EDTA、1mM Pefabloc、5μMロイペプチン、5μM E−64(Roche)、1%Nonidet P40、pH7.5〜8)により細胞溶解した。溶解物をglu−タグ付きビーズ(Covance Research Products、英国ケンブリッジ、製品番号AFC-115P)と共に室温で2時間インキュベートした。洗浄用緩衝液(20mMトリス、pH7.8〜8、150mM NaCl、0.5%NP40)中でビーズを3回洗浄し、2倍の試料用緩衝液(Invitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッド、製品番号LC1676)中で加熱することによりタンパク質をビーズから溶離した。
【0152】
生物学的実施例5
PI3Kγインビトロキナーゼアッセイ
表1の化合物の阻害特性をインビトロPI3Kアッセイ法でアッセイした。96ウェルポリプロピレンプレートの各ウェルに、DMSO中における目的最終濃度の50倍の化合物2μLを滴下した。各反応につき、精製した組換えp101/p110γタンパク質(0.03μg;約2.7nM)およびGタンパク質β/γサブユニット(0.09μg;約57.7nM)を、アッセイ用緩衝液(30mM HEPES、100mM NaCl、1mM EGTA、および1mM DTT)中で混和した。ATPおよび[γ−32P−ATP](0.09μCi)を、反応物中の最終ATP濃度が20μMになるように、この混合物に添加した。ホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸(PIP)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびコール酸ナトリウムをアッセイ用緩衝液中で10分間、超音波処理し、MgClを添加し、氷上で20分間インキュベートすることにより、脂質ミセルを形成した;最終濃度:反応物中25μMのPIP、300μMのPE、0.02%のコール酸ナトリウム、および10mMのMgCl。等体積の脂質および酵素混合物(合計体積50μL)を添加することにより反応を開始し、室温で20分間進行させ、100μLの75mM HPOで停止した。脂質生成物をガラス繊維濾板に移し、75mM HPOで数回洗浄した。各ウェルにWallac Optiphaseミックスを添加し、Wallac 1450 Triluxプレートリーダー(PerkinElmer Life Sciences Inc.、02118マサチュセッツ州ボストン)で計数することにより、放射性脂質生成物(PIP)の存在を測定した。各被験化合物のIC50をμMで表1に報告する。
【0153】
【表3】

【0154】
本明細書に記載した実施例および態様は説明のためのものにすぎず、それを考慮して当業者に多様な修飾および変更が示唆され、それらが本発明の精神および範囲ならびに特許請求の範囲に含まれることは理解される。本明細書に引用したすべての刊行物、特許および特許出願の全体を、あらゆる目的で本明細書に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

またはその医薬的に許容できる塩
[式中:
およびRは、下記よりなる群から選択され:
(i)Rはメトキシであり、RはH、メチル、メトキシ、ベンジルオキシメチル、CHCHOCH−、およびCHOCH−よりなる群から選択される;
(ii)Rはメチルであり、Rはメトキシである;
(iii)Rはエトキシであり、RはHである;
Lは存在しないか、または−CH−であり;
は、C−Cシクロアルキルである]。
【請求項2】
がメトキシであり、RがメチルまたはHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
化合物が
3−シクロヘキシルスルファニル−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−シクロヘキシルメチルスルファニル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−シクロペンチルスルファニル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;または
3−シクロヘキシルスルファニル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド
である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
がメトキシであり、Rがメトキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
化合物が
3−シクロヘキシルメチルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−シクロペンチルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;または
3−シクロヘキシルスルファニル−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド
である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
がメチルであり、Rがメトキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
化合物が
3−シクロペンチルスルファニル−6−メトキシ−5−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;または
3−シクロヘキシルスルファニル−6−メトキシ−5−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド
である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
がメトキシであり、RがCHOCH−、CHCHOCH−、またはベンジルオキシメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
化合物が
3−シクロヘキシルスルファニル−5−メトキシ−6−メトキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−シクロヘキシルスルファニル−6−エトキシメチル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド;または
6−ベンジルオキシメチル−3−シクロヘキシルスルファニル−5−メトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド
である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
PI3K仲介による障害または状態を伴う対象を処置する方法であって、
PI3K仲介による状態または障害を伴う対象に、療法有効量の請求項1に記載の化合物および医薬的に許容できるキャリヤーを含む医薬組成物を投与する
ことを含む方法。
【請求項11】
PI3K仲介による状態または障害が、
慢性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患、および自己免疫疾患
よりなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
PI3K仲介による状態または障害が、
癌、乳癌、神経膠芽細胞腫、子宮内膜癌、肝細胞癌、結腸癌、肺癌、黒色腫、腎細胞癌、甲状腺癌、小細胞性肺癌、扁平上皮性肺癌、神経膠腫、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚癌、白血病、細胞性リンパ腫、およびリンパ球増殖性障害(lymphoproliferative disorders)
よりなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
化合物が請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
療法有効量の請求項1に記載の化合物および医薬的に許容できるキャリヤーを含む、医薬組成物。
【請求項15】
療法有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物および医薬的に許容できるキャリヤーを含む、医薬組成物。

【公表番号】特表2006−526610(P2006−526610A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508428(P2006−508428)
【出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001820
【国際公開番号】WO2004/108714
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミティド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】