癌のためのMRIガイド下光線力学的療法
磁気共鳴画像法ガイド下光線力学的療法と呼ばれる、MRIを使用した増強された光線力学的療法のための診断ツールと組み合わせて使用される療法が開示される。本発明の方法は、MRI造影剤により標識されたポリマー光増感剤コンジュゲートの投与、コントラスト増強MRIによる腫瘍または癌組織の検出および位置の特定、ならびにレーザー・エネルギーを使用した、腫瘍または癌細胞のような位置が特定された標的組織の特異的な照明および治療を含む。送達されたレーザー・エネルギーは、標的組織に集積した光増感剤を活性化し、治療をもたらす。また、光増感性薬剤に連結されたMRI造影剤を含み得る、多機能性を有するPLGA-Mce6-DOTA-Gd錯体のような新規のコンジュゲート化合物も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、バイオテクノロジーおよび癌治療の領域に関し、より具体的には、腫瘍およびその他の標的組織および/または部位の磁気共鳴画像法ガイド下光線力学的治療の使用に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2004年12月3日出願の米国仮出願番号60/633,255(これの完全な内容が参照により組み入れられる)に基づく優先権を主張する。
【0003】
連邦政府によって支援された研究または開発に関する声明
本明細書に記載された研究は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)からのグラント、グラント番号CA097465によって一部分支援された。米国政府は、本発明における一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
米国特許出願第20020095197号(特許文献1)(これの内容は参照により本明細書に組み入れられる)に開示されるように、PDT(すなわち、光化学療法(photochemotherapy))とは、可視光と、特定の波長の光への曝露によって活性化される光増感剤との組み合わせられた効果に基づく新興の癌治療である。光化学療法は周知であり(Hsi R.A.,Rosenthal D.I.,Glatstein E.,"Photodynamic therapy in the treatment of cancer:current state of the art,"Drugs 1999,57(5):725-734(非特許文献1);Moore J.V.,West C.M.L.,Whitehurst C.,"The biology of photodynamic therapy,"Phys.Med.Biol.1997;42:913-935(非特許文献2))、癌療法のために現在実施されているように、光増感性薬剤が対象に全身的に注射され、それが、腫瘍細胞における光増感性薬剤の優先的な取り込みをもたらす。次いで、その光増感性薬剤により吸収される特定のエネルギーおよび波長の可視光が、腫瘍部位に照明される。この照明は、光増感性薬剤を活性化し、例えば、その薬剤が局在化した細胞において細胞障害性の励起状態酸素分子の発生をもたらす。これらの分子は、細胞成分と高度に反応性であり、腫瘍細胞の治療(サイズ、数、または質量の減少)を提供する。ポルフィリン化合物が腫瘍に優先的に集積し、光増感をもたらし、これらの化合物の蛍光のため腫瘍検出を補助することが証明された20世紀半ばに、最初に、光線力学的療法は臨床的な関心を集めた。Doughertyは、腫瘍治療のための光線力学的療法の可能性を認識し、1970年代に皮膚の転移性腫瘍の治療におけるその使用を証明したことから、現代の光線力学的療法の作出の功績を認められている(Oleinick N.L.,Evans H.H.,"The photobiology of photodynamic therapy:cellular targets and mechanisms,"Radiat Res.1998;150:S146-56(非特許文献3))。
【0005】
参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,825,343号(特許文献2)に開示されるように、光線力学的療法(「PDT」)は、一般に、典型的には可視域(近紫外であってもよい)の光を吸収し得る化合物の投与、それに続く、修飾または阻害効果が望まれる対象の位置の照射を含んでいる。PDTは、最初、腫瘍を治療するためにヘマトポルフィリンおよび関連化合物を使用して開発されたが、それは、これらの化合物が、(腫瘍のような)迅速に分裂する細胞に局在化するようであったためである。次いで、腫瘍に光が照射され得る。光はヘマトポルフィリンより吸収され、腫瘍が破壊される。それ以来、PDTは、動脈硬化巣、再狭窄、血流中の感染、慢性関節リウマチ、乾癬の治療のため、そして必ずしも腫瘍に限定されない眼状態の治療において有用であることが示されている。
【0006】
磁気共鳴画像法(「MRI」)における常磁性金属イオン、ランタノイド、ガドリニウムの使用は、よく立証されている。例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第20040204344号(特許文献3)およびその中の参照を参照のこと。常磁性金属キレートGd(III)-DTPA、Gd(III)-DOTA、およびそれらの誘導体は、周囲の水プロトンの緩和速度を増加させ、MRI用の造影剤として使用されている(1)。
【0007】
しかしながら、低分子量造影剤は、疾患組織を正常組織から効果的に識別することができない。画像コントラスト増強を改良するために、ポリ(アミノ酸)(2、3)、多糖(4、5)、デンドリマー(6〜8)、およびタンパク質(9、10)を含む医用ポリマーとこれらのGd(III)キレートを接合することにより、高分子Gd(III)錯体が開発されている。これらの高分子薬剤は、動物モデルにおいて、血液プール画像化および癌画像化のための優れたコントラスト増強を示した。残念ながら、高分子薬剤の臨床的な適用は、MRI検査後の遅い排泄(11、12)および薬剤の代謝によって放出されるGd(III)イオンの可能性のある不都合な副作用(13〜15)によって制限されている。
【0008】
最近、高分子Gd(III)錯体のクリアランスを容易にするためのいくつかの努力がなされた。例えば、腎尿細管再吸収の阻止により腎クリアランスを容易にするために、リジンが、デンドリマーに基づく高分子薬剤と同時注射された(16)。Zheng-Rong Luは、分解性スペーサーを含むそのようなポリ(L-グルタミン酸)Gd(III)-DOTAコンジュゲートの一例を報告しており、その論文は参照により本明細書に組み入れられる(17)。しかしながら、このアプローチは、比較的高い分子量の高分子のクリアランスは容易にすることができない。MRI検査後のGd(III)錯体のクリアランスを加速し、かつ高分子造影剤の可能性のある副作用(side affects)を減少させるためには、高分子Gd(III)錯体の革新的な設計が必要とされる。
【0009】
LITT(レーザー誘導間質温熱療法(Laser-Induced Interstitial Thermotherapy))またはRFA(高周波アブレーション(Radio Frequency Ablation))のような癌のための現在利用可能なMRIガイド下療法は、侵襲性であり、不均一な病変を治療することが困難であること、および皮膚熱傷による安全性の懸念のような、問題のある短所を有する。
【0010】
また、現在使用されている低分子量造影剤は、特に腫瘍においては、速いクリアランス、低い緩和度、およびより低いコントラスト増強を有する。従って、現在、高分子量造影剤が、(EPR効果のため)受動的に腫瘍を標的とするためにより一般的に使用されている。これらのより高い分子量の造影剤は、腫瘍において、より高い緩和度を示し、従って、より良好なコントラスト増強を示す。
【0011】
【特許文献1】米国特許出願第20020095197号
【特許文献2】米国特許第6,825,343号
【特許文献3】米国特許第20040204344号
【非特許文献1】Hsi R.A.,Rosenthal D.I.,Glatstein E.,"Photodynamic therapy in the treatment of cancer:current state of the art,"Drugs 1999,57(5):725-734
【非特許文献2】Moore J.V.,West C.M.L.,Whitehurst C.,"The biology of photodynamic therapy,"Phys.Med.Biol.1997;42:913-935
【非特許文献3】Oleinick N.L.,Evans H.H.,"The photobiology of photodynamic therapy:cellular targets and mechanisms,"Radiat Res.1998;150:S146-56
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は、MRIガイド下光線力学的癌療法による癌治療のための新技術を含む。一つの態様において、この技術は、MRI造影剤により標識されたポリマー-光増感剤コンジュゲートの投与、コントラスト増強MRIによる腫瘍または癌組織の検出および位置の特定、ならびに腫瘍または癌組織(これらに制限はされない)のような標的組織へのレーザーの照射を含む。送達されたレーザー・エネルギーは、標的組織に集積した光増感剤を活性化し、標的細胞死および治療をもたらすであろう。本明細書に開示されたようなこの方法は、画像ガイド下アブレーションを含む他の画像ガイド下療法と比較して、より非侵襲性である。本発明は、MRI造影剤により標識されたポリマー-光増感剤コンジュゲートの使用、およびコントラスト増強MRIと光線力学的療法との組み合わせを含んでいる。
【0013】
ポリマー骨格に共有結合的に付着した光増感薬(Mesochlorin e6)および造影剤(DOTA-Gd)を含有している高分子量ポリ-L-グルタミン酸(PLGA)-ガドリニウム(「Gd」)錯体の合成が、本明細書に開示される。これらの錯体は、当領域において現在使用されている他の錯体と比較して遅延の後に腫瘍における有意なコントラスト促進を示し、MRIガイド下PDTのために使用され得る。
【0014】
コントラスト増強MRIは、非侵襲性の腫瘍検出のための有効なアプローチである。光線力学的療法(PDT)は、癌のような疾患の治療において臨床的に使用されている療法である。本発明の態様は、MRIガイド下光線力学的療法を提供するために、コントラスト増強MRIとPDTとを組み合わせる。
【0015】
本発明の一つの局面において、薬物送達系は、ポリマー、タンパク質、リポソーム、ナノ粒子を含む薬物担体、Gd、Fe、Mn錯体、または酸化鉄粒子を含むMRI造影剤;光増感剤または腫瘍ターゲティング剤のような組織ターゲティング剤を含有している。送達系は、標的組織へ造影剤および光増感剤を輸送し、次いで、その組織がコントラスト増強MRIにより対象において位置が特定される。レーザー・ビームが標的組織部位に向けられる。レーザー・エネルギーは光増感剤を活性化し、それが、一つの態様において、標的の細胞および組織を死滅させるかまたは破壊する高度に反応性の種を発生させる。
【0016】
一つの例示的な態様において、方法は、癌または腫瘍細胞を治療するために使用される。しかしながら、本発明の方法は、MRIによりターゲティングされた標的組織の光線力学的癌治療に制限されない。それは、陽電子放射型断層撮影(PET)および単光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)によりターゲティングされた光線力学的治療のためにも使用され得る。PETおよびSPECTガイド下療法において、当業者は、送達系において(MRI造影剤を)PETおよびSPECTのプローブに置換することができる。
【0017】
例示的な態様において、光増感剤コンジュゲートは、乳癌細胞を検出し治療するために使用される。その他の例示的な態様において、本発明の方法は、乳癌細胞、膵臓癌細胞、前立腺癌細胞、皮膚癌細胞、および本発明の方法を使用して治療され得るその他の悪性病変を検出し治療するために使用される。
【0018】
もう一つの態様において、対象における標的組織の治療において有用な、新規の、光増感剤と接合したMRI造影剤の合成の方法が提供される。
【0019】
発明の詳細な説明
「治療」とは、本明細書において使用されるように、標的組織内の細胞の数の減少、または標的組織のサイズ、形、もしくは質量の減少を与える、エネルギー源を使用した照射と併せた、ある用量のポリマー-光増感剤コンジュゲートの提供(provision)を含むものと定義される。腫瘍または癌細胞の治療とは、本明細書において使用されるように、生存可能な癌または腫瘍細胞のサイズ、形、質量、生存率、または数の減少を可能にする、レーザー・エネルギーを使用した照射と併せた、ある用量のポリマー-光増感剤コンジュゲートの提供(provision)を含むものと定義される。
【0020】
本明細書において使用されるように、「有効量」とは、対象における疾患状態を改善、防止、または治療するのに有効な、対象に投与されるポリマー-光増感剤コンジュゲートおよびレーザー・エネルギーの量を意味する。
【0021】
本発明の目的のために許容される薬学的担体には、薬物、宿主、または薬物送達装置を含む材料に悪影響を及ぼさない担体が含まれる。適当な薬学的担体には、滅菌水、生理食塩水、デキストロース、デキストロースを含む水または生理食塩水、(ヒマシ油1モル当たり約30〜35モルのエチレンオキシドを組み合わせた)ヒマシ油およびエチレンオキシドの縮合生成物、液体酸、低級アルカノール、脂肪酸のモノまたはジグリセリドのような乳化剤を含む、トウモロコシ油、落花生油、ゴマ油等のような油;またはホスファチド、例えば、レシチン等;単独の、またはレシチン、ポリオキシエチレン・ステアレートのような適当な分散剤を含む、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリ(ビニルピロリドン)の存在下でのグリコール、ポリアルキレン・グリコール、水性媒体等が含まれる。担体は、浸透増強剤およびポリマー-光増感剤コンジュゲートと共に、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤等のような佐剤を含有していてもよい。
【0022】
一般に、本発明の様々な態様は、光線力学的療法のための新規のポリマー-光増感薬コンジュゲートに関する。本発明のさらなる態様は、一般に、高分子量ポリマー-光増感薬コンジュゲートに関する。一態様において、高分子または高分子量ポリマーは、光線力学的療法のための常磁性標識されたポリマー・コンジュゲートである。一つの態様において、常磁性標識されたポリマー・コンジュゲートは、常磁性標識されたポリ-(L-グルタミン酸)-Mce6である。一態様において、接合されたポリマーは、PLGA-Mce6-[(Gd-DOTA))-ヘキサン・ジアミン]を含む。しかしながら、当業者は、本発明の様々な態様において機能するであろうその他のポリマー-光増感薬コンジュゲートを容易に同定すると思われる。
【0023】
前述のように、光線力学的療法(PDT)は、当技術分野において一般的であり、一般に、米国特許第5,829,448号、米国特許第5,736,563号、米国特許第5,630,996号、米国特許第5,482,698号、および米国特許第6,889,723号(これらの全ての内容が、あたかも本明細書に完全に記述されているかのように、参照により本明細書に組み入れられる)に開示されたもののようなPDTの様々な方法が、本発明の態様と共に使用され得る。一態様において、本発明のPDTはMRIガイド下療法であり、ポリマー-光増感薬コンジュゲートの態様はコントラスト増強型である。一態様において、MRI造影剤により標識されたポリマー-光増感薬コンジュゲートである。さらなる態様は、陽電子放射型断層撮影(PET)および単光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)によりターゲティングされた光線力学的治療を含む。PETおよびSPECTガイド下療法において、当業者は、送達系においてMRI造影剤をPETおよびSPECTのプローブに置換することができる。
【0024】
本発明は、(MRI造影剤のような)造影剤および光増感剤を含有している送達系;コントラスト増強MRIまたはその他の画像モダリティによる患者における標的組織の正確な位置付け;ならびに標的組織へのレーザー・エネルギーの画像ガイド下照射を含む。これは、対象における腫瘍組織の正確な位置付けおよびPDTによる標的組織の非侵襲性の治療を可能にする。
【0025】
従って、一つの態様において、本発明の薬物送達系は、ポリマー、タンパク質、リポソーム、ナノ粒子を含む薬物担体、Gd、Fe、Mn錯体、または酸化鉄粒子(これらに制限はされない)のようなMRI造影剤;光増感剤または腫瘍ターゲティング剤のようなその他の組織ターゲティング剤を含む。
【0026】
一態様において、送達系は、造影剤および光増感剤を、標的部位へと、または標的部位の近傍へと輸送または運搬する。一態様において、送達系は、標的組織および/または標的細胞である標的部位に運搬される。
【0027】
さらなる態様は、当技術分野において一般的な手段および/または方法によって標的組織の位置を特定する。一態様において、標的部位は、コントラスト増強MRIまたはその他の型のMRIにより位置が特定される。その他の態様は、標的部位に送達系を向ける。
【0028】
次いで、レーザー、その他のエネルギー・パルス、ビーム、および/または光手段(photo means)のようなエネルギー源が、標的部位に向けられる/適用される/照明する。エネルギー・パルスは、光増感剤を活性化し、それにより、標的部位を死滅させ、かつ/または破壊する。一態様において、エネルギー・パルスは、光増感剤による、標的部位を死滅させ、かつ/または固定化する反応種の発生を開始させるかまたは引き起こす。
【0029】
従って、本発明の方法の様々な態様は、一般に、対象において、またはインビトロで標的部位を死滅させるかまたは破壊する方法を含み、その方法は、造影剤および光増感剤を含む送達系を、薬学的に有効な量で、対象に、またはインビトロで投与する工程;送達系を標的組織に運搬する工程;画像モダリティにより標的組織の位置を特定する工程;ならびに標的組織を照明し、標的部位を死滅させるかまたは破壊する工程を含む。さらなる態様は、対象の標的部位を美容的に治療する方法を含み、その方法は、造影剤および光増感剤を含む送達系を、薬学的に有効な量、対象に投与する工程;送達系を標的組織に運搬する工程;ならびに標的組織を照明し、標的部位を治療する工程を含む。
【0030】
本発明の送達系は、当技術分野において公知の任意の方法および/またはアプリケータによって投与され得る。一つの態様において、本発明の送達系は、注射により、例えば、注射器、注射針なしのインジェクター等により投与される。別の態様において、本発明の送達系は、注入(pouring)、塗布(wiping)、塗沫(smearing)等のような適用によって投与される。別の態様において、本発明の送達系は、経口投与される。
【0031】
一態様において、薬学的に有効な量の送達系を対象に投与する工程は、薬学的に有効な量の磁気共鳴画像法造影剤により標識されたポリマー-光増感コンジュゲートを投与することを含む。一態様において、薬学的に有効な量の磁気共鳴画像法造影剤により標識されたポリマー-光増感コンジュゲートは、ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)-ヘキサンジアミン]である。
【0032】
様々な態様は、癌および/または腫瘍細胞のような悪性の細胞、奇胎、いぼ、増殖物(growths)等(これらに制限はされない)のような所望の組織または細胞を治療するかまたはそれらの治療を提供するために使用される方法および/または系を含む。
【0033】
本発明のもう一つの態様において、対象における標的組織の治療において有用な、新規の、光増感剤に接合したMRI造影剤の合成の方法が、提供される。本発明の一つの局面において、本発明の錯体は、腫瘍細胞または癌細胞のような急速に分裂している細胞を標的とする。本発明のもう一つの局面において、本発明の錯体は、光増感剤に連結されたプローブの同一性に基づき、その他の組織特異的な細胞を標的とし得る。従って、本発明の態様は、腫瘍もしくは癌組織または癌細胞の治療のための薬学的に許容される組成物の使用を含む。
【0034】
例示的なコンジュゲートの合成の方法は、以下の工程を含む:以下の工程を含む、ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)-ヘキサンジアミン]を合成する方法:
γ-ベンジル・グルタメートをトリホスゲンと反応させ、γ-ベンジル・グルタメートのN-カルボキシ無水物を形成させる工程;
γ-ベンジル・グルタメートのN-カルボキシ無水物をトリブチルアミンと反応させ、ポリ-(ベンジル・グルタメート)を形成させる工程;
ポリ(ベンジル・グルタメート)を臭化水素とを反応させ、ポリ-(L-グルタメート)を形成させる工程;
ポリ-(L-グルタメート)をN-ヒドロキシスクシンイミドと反応させ、ポリ-(L-グルタミン酸)-N-ヒドロキシ・スクシンイミドを形成させる工程;
ポリ-(L-グルタミン酸)-N-ヒドロキシ・スクシンイミドを(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネートおよび1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート-ヘキサンジアミンと反応させる工程;ならびに
ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)-ヘキサンジアミン]をガドリニウム・アセテートと反応させる工程。
【0035】
当業者は、本発明の方法が癌細胞または腫瘍組織を標的とすることのみに制限されず、任意の悪性病変等も標的とすることを理解すると思われる。当技術分野には、対象におけるその他の組織を標的とするために有用な、本明細書に記載されたものに類似したその他の化学物質が存在する。同様に、当業者は、特定の化合物の合成の具体例の他に、本発明の様々な態様が、合成の方法および多数の利用可能な化合物を全て含むものであることが容易に明白であることを理解するであろう。
【0036】
高分子量ポリ-グルタミン酸ポリマーは、コントラスト増強の増加によって示される腫瘍組織におけるより高い緩和度およびより高い集積を、2時間と比較して、24時間後に示す。腫瘍内または腫瘍周辺のポリマーの量は、画像モダリティ等の使用により照射されるべき正確な腫瘍体積の決定を補助し得る。従って、治療の時間は、悪性病変のサイズ、照明、エネルギー・ビーム、および/またはパルスの強度、組織における悪性病変の深さ、組織における悪性病変の組成等に依って変動し得る。一態様において、悪性病変は、約1〜約25分間、650nmのレーザーにより治療される。しかしながら、一般に、レーザーが、ビーム幅および/または時間(これらに制限はされない)のような正確なパラメーターの範囲内で使用された場合に周囲の組織に過度の傷害を引き起こさない限り、任意のサイズおよび/または強度のレーザーが、様々な態様により使用され得、かつ/または使用されるよう修飾され得る。
【0037】
様々な態様において、投与された送達系が標的部位の位置を特定するための時間が与えられるまで、標的部位の照明は遅延する。一態様において、0.1時間〜36時間の遅延が起こる。別の態様において、約1時間〜24時間の遅延が起こる。別の態様において、約18時間の遅延が起こる。
【0038】
一態様において、本発明のポリマー-光増感剤コンジュゲートは、複数の用量で投与される。様々なその他の態様において、標的部位は、複数回、または複数の手順を通して照明され得る。
【0039】
様々な態様において、標的部位の画像が撮影される。一態様において、画像は送達媒体の投与前に撮影される。別の態様において、画像は送達媒体の投与時に撮影される。別の態様において、複数の画像が様々な時点で撮影される。様々な態様において、画像は、データを提供するため、方向を提供するため、進行をモニタリングするため等に使用される。
【0040】
本発明のもう一つの例示的な態様において、使用されるポリマーは、造影剤としてのDOTA-Gdおよび光増感薬としてのMse6を含むポリ-(L-グルタミン酸)である。
【0041】
本発明は、とりわけ、癌の治療において有用な薬学的組成物を調製する方法を開示する。一態様において、組成物はPLGA-Mce6-[(Gd-DOTA)]を含む。一態様において、組成物は化合物PLGA-Mce6-[-1,6-ヘキサンジアミン-(Gd-DOTA)]を含む。様々なPLGA-Mce6-(Gd-DOTA)コンジュゲートは、治療後の残存するGd錯体の対象からの迅速な排除を可能にするジスルフィド・リンカーを造影剤とポリマー担体との間に含有している。(コンジュゲートの生分解性特徴を提供するジスルフィド結合の形成に関しては、参照17、Lu,et al.を参照のこと。)これに類似したその他の生分解性リンカーは、当技術分野において公知であり、当業者は、コンジュゲートに生分解性特性を提供するために、その他のそのようなリンカーを代用し得ることが理解される。そのような生分解性ポリマー・コンジュゲートは、本発明に包含され、本発明のさらなる例示的な態様を構成する。
【0042】
従って、本発明の様々な態様は、薬学的に許容される量の化合物ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)-ヘキサンジアミン]を含む、対象における標的組織の治療において有用な薬学的組成物を含む。
【0043】
さらなる態様は、標的部位の治療のための薬品の製造における、ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[1,6-ヘキサンジアミン-(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)]を含む薬学的に許容される組成物の使用を含む。
【0044】
さらなる態様は、標的部位の位置を特定または探索するための、薬学的に有効な量の磁気共鳴画像法造影剤により標識されたポリマー-光増感コンジュゲートの使用を含む。一つの態様において、薬剤は、ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[1,6-ヘキサンジアミン-(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)]である。
【0045】
本発明のさらなる態様は、様々な系を含む。一つの態様において、磁気共鳴画像化造影剤、光増感剤、および画像モダリティを含む、標的組織の位置を特定するための系が開示される。別の態様において、磁気共鳴画像法造影剤;光増感剤、画像モダリティ;およびレーザーを含む、標的部位を治療するための系が開示される。本発明の系のさらなる態様は、送達媒体の適用のためのアプリケータを含み得る。
【0046】
本発明を制限することなく、本発明をさらに例示するため、以下の例示的な実施例が提供される。
【0047】
実施例
材料および方法
γ-ベンジル・グルタメートは、VWR(West Chester,PA)のため購入された。特別乾燥(Extra dry)溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、および塩化メチレンは、Arcos Organics,NJから購入された。Meso chlorin e6およびCyclenは、Macrocyclic Incから購入された。Gd(OAc)3およびジ-tert-ブチルジカルボネート(t-boc)、tert-ブチルブロモアセテート、N-エチルジイソプロピルアミン、およびモノ-boc-1,6-ジアミノヘキサンは、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から購入された。[1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl](EDC)は、TCI America(Portland,OR)から購入された。シリカゲル、メッシュ・サイズ230〜400は、Natland International Corp.,NCから購入された。全ての溶媒が、Fisher Scientificから購入され、特記しない限り、さらなる精製なしに使用された。Spectra/Por再生セルロース膜(MWCO=16〜18kDa)は、Spectrum Laboratories(Rancho Dominguez,CA)から購入された。PD-10脱塩カラムは、Amersham Bioscience(Uppsala,Sweden)から購入された。
【0048】
細胞系(MDA-MB-231)、2μMグルタミンおよびトリプシンを含有しているLH-15培地は、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas VA)から購入された。雌nu/nu胸腺欠損マウスは、NCI(Frederick,MD)から購入された。動物は、IACUC、University of Utah guidelinesに従って維持された。
【0049】
分子量決定は、UVおよび屈折率の検出器が装備されているSuperdex 200/Superose 6カラムを含むAKTA FPLC系(Amersham Biosciences Corp.,Piscataway,NJ)でのサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって実施された。FPLCカラムは、ポリ[N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]標準により較正された。1H NMRスペクトルは、25℃で、400MHzで、Varian INOVA 400で取得された。ESI-MSスペクトルは、University of Utah Mass Spectrometry and Proteonomic Core Facilityで、PE Sciex API III Mass Spectrometerで取得された。Meso chlorin含有量は、Cary Win UV-Vis分光計で決定された。Gd含有量は、誘導結合アルゴン・プラズマ発光分析法(Inductively Coupled argon Plasma-Optical Emission Spectrometer)(ICP-OES)(Perkin Elmer,Norwalk,CT,Optima 3100XL)を使用して決定された。最終的なコンジュゲートについてのT1緩和度測定は、標準的なインバージョン・リカバリー・シーケンス(inversion recovery sequence)を使用してSiemens Trio 3T MRIスキャナで取得された。光線力学的療法は、Diode Odysseyレーザー(650nm)(CAO Group,UT)を介して実施された。
【0050】
A. 常磁性標識された薬物-ポリマー錯体の合成
1. ポリ-(L-グルタミン酸)活性エステル(PLGA-OSu)の合成
a. ポリ-L-グルタミン酸(PLGA)の合成
高分子量ポリ-(L-グルタミン酸)は、以前に記載された方法によって合成された。簡単に説明すると、合成の第一工程は、THF(15ml)中でのγ-ベンジル・グルタメート(15g、0.06mol)のトリホスゲン(9.37g、0.03mol)との反応によるN-カルボキシ無水物の形成を含んでいた。反応をN2下で50℃で3時間実施し、NCAを沈殿させるためにn-ヘキサン(150ml)へ反応混合物を注入した。酢酸エチル(10ml)への溶解およびn-ヘキサン中での再沈殿により、生成物を再結晶化した。γ-ベンジル・グルタメートのNCAは、高い収率および純度で入手された。M.P=110℃
【0051】
高分子量ポリ-(ベンジル-γ-グルタメート)[PBLG]の合成のため、開始剤としてジクロロメタン中のトリブチルアミン10%溶液を使用した(M/I=100/1)、18mlの酢酸エチル:ジクロロメタン混合物(1:6v/v)中でのNCA(3G、11.4mol)の反応によって、開環重合を実施した。反応を、30Cで3時間およびR.Tで24時間、維持した。PBLGをメタノール:エーテル(2:1)混合物中で沈殿させ、ろ過し、エーテルで洗浄し、真空乾燥させた。
【0052】
最終工程は、ポリ-L-グルタミン酸が析出するまで、溶液にHBrを通すことによる、ジクロロメタンに溶解したPBLG(300ml中1.0gm)上のベンジル基の除去を含んでいた。HBrガスは、テトラリンおよび臭素の反応により発生させた。PLGAを、アセトンを使用してさらに精製した。分子量決定は、UVおよび屈折率(RI)の検出器が装備されたSuperdex 200カラムでのSECを使用して実施された。RIピークに相当するUVピークの欠如により、PLGAのほぼ完全な脱保護が確認された。
【0053】
b. PLGA-OSuの合成
ポリ-(L-グルタミン酸)をN-ヒドロキシ・スクシンイミド(NHS)と反応させ、コハク酸エステル形成させた。簡単に説明すると、PLGAおよびNHSをDMFに溶解させ、反応を開始させるためにカップリング剤EDCを添加した。活性エステルをアセトン中で沈殿させ、真空下で乾燥させた。エステルの存在は、NMRによって確認された。
【0054】
2. Gd-DOTA-1,6-ジアミノヘキサン(リンカー)の合成
a.DO3Aの合成
DO3Aは、高純度のDO3Aを入手するためわずかに変更された以前に記載された方法に従い、2工程で、cyclenを介して合成された。
【0055】
第一工程において、cyclen(1.72gm、10mmol)およびDIPEA(10eq、100mmol、12.9gm)を、80mlのクロロホルムに溶解させた。完全に溶解した後、反応混合物を2工程でクロロホルム中でtert-ブチル・ブロモアセテートと反応させた。一回目の添加のため、40mlのクロロホルムに溶解したtert-ブチル・ブロモアセテート(2eq、20mmol、3.92gm)を、絶えず攪拌しながら溶液へ滴下にて添加することにより反応させた。完全な添加の後、反応物を12時間撹拌した。二回目の添加のため、20mlに溶解したtert-ブチル・ブロモアセテート(1eq、10mmol、1.96gm)を、反応混合物に滴下にて添加した。反応物をR.Tでさらに18時間撹拌した。溶液を真空で濃縮し、固体を最少量の塩化メチレンに溶解させ、さらなる精製のためシリカゲル・カラムに適用した。溶出剤系として酢酸エチル:メタノール(100%、50:1、20:1、および10:1)を使用した勾配溶出を実施した。TB-cyclen(tert-ブチル保護cyclen)は20:1画分に入手された。
【0056】
TB cyclenを最少量の冷トリフルオロ酢酸を使用して脱保護し(25℃、一夜)、DO3Aを形成させた。生成物をジエチルエーテルを使用して精製した。
【0057】
b. N-boc-1,6-ジアミノヘキサン・ブロモアセテート(中間体)の合成
1工程の過程において、N-boc-1,6-ジアミノヘキサン(1gm、4mmol)を、ジクロロメタン(30ml)中のブロモ酢酸のN-ヒドロキシ・スクシンイミド・エステル(1.32gm、5mmol)と0℃で反応させた。完全な添加の後、反応物を25Cで24時間撹拌した。NaOH(2×50ml)および水(2×50ml)での洗浄、有機溶媒での抽出により精製され、乾燥するまで濃縮されたブロモアセテート・エステル。
【0058】
c. 合成DOTA-1,6-ジアミノヘキサン
20mlのメタノール:トリエチルアミン溶媒混合物(2:1)および過剰のK2CO3(2.76gm、20mmol)の中でのDO3A(0.7gm、2mmol)のN-boc-1,6-ジアミノヘキサン・ブロモアセテート(1.36gm、4mmol)との反応により、リンカーを合成した。反応を室温で24時間実施した。溶媒を蒸発させ、生成物を水に溶解させ、希HClで酸性化した。全ての酸を塩に変換し、KBrのような無機塩を溶解させるため、pHは、2〜3の間に調整した。水性溶液を真空で蒸発させ、リンカーをメタノール:トリエチルアミン(2:1)混合物から塩として抽出した。
【0059】
3. Gd(III)-DOTA-リンカー-PLGAおよびGd-DOTA-リンカー-PLGA-Mce6錯体の合成
a. DOTA-リンカー-PLGAおよびDOTA-リンカー-PLGA-Mce6コンジュゲートの合成
PLGA活性エステル(PLGA-NHS、200mg、542mmol)を、meso chlorin e6(24mg、37mmol)と共にDMF(3ml)に溶解させ、30分間反応させた。次いで、DOTA-リンカー(300mg、600mmol)を溶液に添加した。反応を開始させるために各添加の後に過剰のDMAPを組み込んだ。反応を室温で24時間実施した。反応終了後、DMFを真空下で蒸発させ、残さを水に溶解させた。対照として使用するためのDOTA-リンカー-PLGAコンジュゲートを、Mce6を添加せずに、同様にして合成した。Gd(III)によるポリマー・コンジュゲートの錯体化を、さらなる精製なしに実施した。
【0060】
b. Gd(III)-DOTA-リンカー-PLGA-Mce6(Pol1)およびGd(III)-DOTA-リンカー-PLGA(Pol2)の合成
DI水中のポリマー・コンジュゲートの水性溶液を、pH8で、過剰のGd(III)アセテートと反応させた。一夜撹拌した後、希NaOHにより溶液のpHを11に増加させることにより、過剰のGdをGd2O3として析出させた。酸化物を析出させ、溶液のpHを5.5〜6の間に調整した。最終的な溶液を、真空下で濃縮し、カラムに適用した。溶出液を凍結乾燥した。
【0061】
B. 常磁性標識されたポリマー-光増感剤コンジュゲートの特徴決定(表1)
分子量の決定
ポリマー錯体の分子量は、AKTA FPLC系(Amersham Inc)でのサイズ排除クロマトグラフィを使用して決定された。錯体は、TRIS緩衝液pH7.4に溶解させられ、0.2μ膜でろ過された後、カラムに適用された。
【0062】
緩和度の決定
ポリマー錯体Pol1およびPol2のT1緩和度は、22〜1600msの変動するTIにより、標準的なインバージョン・リカバリー・シーケンスを使用して、Siemens Trio 3Tスキャナで決定された。
【0063】
Gd含有量の決定
Pol1およびPol2含有量のGd(III)は、標準曲線を構築するためにGd標準を使用して、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-OES)により決定された。
【0064】
Mce6含有量の決定
Pol1についてのMeso chlorin e6含有量は、UV分光測光法により決定された。Mce6標準ポリマー・コンジュゲート溶液がメタノールで調製され、UV吸光度が650nmで測定された。
【0065】
C. 細胞培養
MDA-MB-231(ATCC)ヒト乳癌細胞系を、5%CO2で、2mMグルタミンおよび10%FBSを含むLH-15培養培地で培養した。細胞をコンフルエンスで採集し、トリパンブルーで染色した後に計数した。腫瘍モデルを作製するため、動物1匹当たり2×106個の細胞を注射した。
【0066】
D. 動物モデル
6週齢の雌胸腺欠損nu/nuマウスを、NCI(Frederick,MD)から購入した。腫瘍モデルを作製するため、各マウスの側腹部に、100μlのBD MATRIGEL、EHSマウス肉腫から抽出された可溶化(solubulized)された基底膜調製物と混合された100μlの培養培地の中の2×106個のMB-231細胞を皮下注射した。磁気共鳴画像法および光線力学的療法の研究は、25〜40mm3の平均腫瘍サイズで実施された。
【0067】
(表1)Gd(ICP)およびMeso Chlorin(UV)の含有量の決定
(データは図6に例示された結果において使用されたマウスに関するものである)
【0068】
実施例I
動物腫瘍モデル試験
異種移植片を作製するため、6匹の雌胸腺欠損nu/nuマウスに、MDA-MB231ヒト乳癌細胞(ATCC)を注射した。約1〜3×106個の細胞をMATRIGEL(BD Biosciences)と混合し、各マウスに注射した。マウスを腫瘍増殖に関して観察した。腫瘍体積をディジタル・ノギスを使用して測定した。腫瘍体積がおよそ20mm3になった時点で、マウスを画像法および療法のために選択した。
【0069】
実施例II
動物モデルの磁気共鳴画像法およびコンジュゲートの投与
MR画像法をSiemens Trio 3T MRIスキャナで実施した。麻酔薬(80mg/kg体重のケタミンおよび12mg/kg体重のキシラジンの混合物)の腹腔内または筋肉注射により、動物に麻酔をかけた。
【0070】
画像化の目的のため、動物をヒト用リスト・コイル(human wrist coil)に置き、コントラスト前画像(薬物および造影剤を含有しているポリマー・キレート系の注射前)を、3D FLASH(Fast Low Angle Shot)シーケンスを使用して入手した。
【0071】
コントラスト前画像を入手した後、高分子錯体を、0.09mmol Gd/kg体重および6mg/kgのMce6の用量で、尾静脈注射により注射した。画像取得は、注射後5、30、60、120分、および24時間目に設定された。動物画像法は多相T1加重シーケンスを使用して実施された。反復時間は、それぞれ、4〜8cm FIV(視野)と一致する約6ミリ秒〜2ミリ秒であり、各動物について組織薄片の厚さは0.5mmを選択した。画像化容量は、注射前に、そして注射後に迅速に連続して取得された。取得は、各々、約30秒を必要とした。
【0072】
類似した投薬量が、ヒトのような他の対象において有効であると予想される。ヒトにおいて、投薬量は、例えば、0.01〜0.03mmol Gd/kg体重を含み得る。同様に、例えば、1〜10mg/kg体重のMce6を含み得る投薬量が、ヒトのような他の対象において有効であると予想される。しかしながら、投薬量は、ルーチンの実験により決定されるように調整してもよい。
【0073】
実施例III
動物モデルにおける標的組織の特異的な照明
コントラスト増強が観察された後、Mce6の励起波長に相当する650nmの波長のレーザーを使用して腫瘍を照射した。
【0074】
腫瘍内の高分子錯体の位置および集積を、MRIで観察した。次いで、注射後2時間目および18時間目に、220mW/cm2のエネルギーの入力および照射のため0.5mmのアパーチャーにより波長650nmの光(Denlaser)を使用して腫瘍を照射した。照射の時間は15分であった。次いで、無関係の照射を回避するため、マウスを直接光から隔離し、腫瘍体積の減少を測定した。
【0075】
結果は、注射前、注射後5、30、60、120分、および24時間目の胸腺欠損nu/nuマウスにおける腫瘍の画像を示す、図6の磁気共鳴画像に示される。組織薄片は、マウス1については心臓および腫瘍を別々に通っており、マウス2については心臓および腫瘍を同時に通っている。両方のマウスにおいて、24時間目の画像は、コントラスト前と比較して腫瘍を通るコントラスト増強を示しており、注射後5分目の心臓にもコントラスト増強が存在する。計6匹のマウスが上記の方法論を使用して調査され、全て、類似した結果を与えた。これらの結果は、コンジュゲートが24時間以内に標的組織に局在化し得ることを示している。
【0076】
実施例IV
実施例VIIのためのポリマー・コンジュゲートおよび対照の合成および物理化学的特徴決定
Mce6およびGd(III)DOTA(Pol1およびPol3)またはGd(III)DOTAのみ(Pol2)を含有しているポリ-(-グルタミン酸)コンジュゲートを、同一分子量Mw=82kDaのPLGAから合成した。薬物および造影剤の異なる比率を、両方の活性モエティのための最適の含有量を有する最終的なコンジュゲートを作製するため、評価した(示されていない)。Meso chlorin e6は、その疎水性の性質、およびより良好な光の透過に至るより高い光の波長において励起される可能性のために使用された。臨床的に認可されている造影剤Gd-DOTAは、非環式金属キレートと比較してより高い安定性のために選ばれた。ポリマー・コンジュゲートおよび対照についての分子量、PDI、meso chlorin e6およびGdの含有量、ならびに緩和度を含む物理化学的特徴決定は、下記表2に与えられる。薬物を含むポリマー・コンジュゲートおよび薬物を含まないポリマー・コンジュゲートは、低分子量カウンターパートと比較して、より高い緩和度を示した。
【0077】
(表2)(結果は図7〜10におけるマウスに関するものである)
【0078】
MR画像法
Pol1およびPol2により、マウス6匹の2つの群においてコントラスト増強が観察された。図7および図8は、それぞれ腫瘍および心臓を通る2D冠状MR画像を示す。図7の上パネルはPol1によるマウスを表し、下のパネルはPol2によるマウスを表す。図8の上パネルはPol1によるマウスを表し、下のパネルはPol2によるマウスを表す。Pol1およびPol2の両方について、注射後5分目に、腫瘍、心臓、および肝臓(示されないデータ)を含む全ての組織に、コントラスト前と比較して増加したコントラストが存在した。心臓においては、全ての時点で、対照に、より高いコントラストが存在し、腫瘍組織においては、全ての時点で、両方に、類似した増強が観察された。心臓におけるより高いシグナルは、対照ポリマーの高分子量画分によるものかもしれない。
【0079】
両方のポリマーについての腫瘍組織におけるシグナル強度の半定量的評価は、注射後2時間目までに、増加したコントラストを示した。2時間目のコントラスト前と比較した両方の群についての腫瘍のシグナル強度の増加は100%である。注射後18時間目のシグナル強度は、Pol1およびPol2の両方についてコントラスト前より少なくとも30%高かった。IDLを使用したシグナル強度の定量的評価を、半定量分析から入手されたデータを確証するために実施した。
【0080】
光線力学的療法の効力
第1の群に属するマウスについての腫瘍体積の減少、6匹のマウスがポリマー-薬物-CA(薬物)を受容し、6匹のマウスがポリマー-CAコンジュゲート(対照)を受容した。
【0081】
図11は、Pol1を受容したマウスについて腫瘍体積の減少または腫瘍増殖の遅延が観察され、Pol2を注射されたマウス(対照群)が腫瘍の迅速な増加を示したことを例示している。薬物群のマウス6匹中4匹が、実験期間(90日)の後、生存していた。対照群のマウス6匹中5匹が、体重の10%より大きな腫瘍を有しており、屠殺された。
【0082】
治療後のMR画像化
治療されたマウスおよび治療されていないマウスについての腫瘍取り込みの違いを決定するために、治療後のMR画像法のため、高分子量造影剤(Gd-DTPA)-シスチン・コポリマー(GDCP)を使用した。この薬剤は、類似した腫瘍モデルにおいて血管形成中の血管において比較的強いコントラスト増強を生じることが以前の研究において示されている。ポリマーの分子量および緩和度は、Pol1のものに類似しており、34kDaおよび5.33mM-1sec-1であった。
【0083】
図9は、注射後2、5、10、15、30分目の、GDCCを受容したマウスの3D MIPエコーMR画像を例示している。図10は、注射後2、5、10、15、30分目の、GDCCを受容したマウスの2DスピンエコーMR画像を例示している。両方の群のマウスについて、腫瘍は、周縁部増強を示した。しかしながら、対照群のマウスは、治療の欠如を示すより高いコントラスト増強を示した。
【0084】
結果
薬物を受容したマウスにおける腫瘍体積の減少は、対照と有意に異なっていた。さらに、上記の結果は、例えば、MRIから入手された動的なデータを使用して、照射の時間が決定され調整され得、増強された部位特異的光線力学的療法のための増加した効力に至ることを例示している。
【0085】
本明細書に引用された公開、特許、および特許出願を含む全ての参照は、あたかも各参照が参照により組み入れられると個々に具体的に示され、完全に本明細書に記述されたかのような程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0086】
本発明はある種の態様において記載されているが、本発明は、さらに、この開示の本旨および範囲の中で修飾され得る。従って、本願は、その一般的な原理を使用した本発明の任意の変動、使用、または適応を包含するものとする。さらに、本願は、本発明が関係する技術分野における公知のまたは慣習的な実務の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるような、本発明の開示からのそのような逸脱を包含するものとする。
【0087】
参照
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】ポリ-L-グルタミン酸の合成。γ-ベンジル・グルタメートを、50℃で3時間、テトラヒドロフラン(「THF」)中でトリホスゲンと反応させ、次いで、24時間-20℃に冷却して、γ-ベンジル・グルタメートのN-カルボキシ無水物(「NCA」)を生成させる。次いで、この生成物を、ジクロロメタンおよびエチルアセトアセテート(「EtOAc」、1:6、v:v)の中でトリブチルアミンと反応させ、ポリ-(ベンジル・グルタミン酸)を生成させる。次いで、ポリ-(ベンジル・グルタミン酸)を、3時間、臭化水素(Br2+テトラリン)と共にインキュベートし、72時間撹拌し、ポリ-(L-グルタミン酸)を得る。
【図2】ポリ-L-グルタミン酸活性エステルの合成。ポリ(L-グルタミン酸)(「PLGA」、MW 67kDa、810mg)を、2.166gのN-ヒドロキシ・スクシンイミド(「NHS」、MW 115、グルタミン酸モノマーに基づき3×モル)と共に、4mlのN,N-ジメチルホルムアミド(「DMF」)に溶解させる。最少量のDMFが使用される。DMFへのPLGA(約1時間)およびNHSの完全な溶解の後、3.61gの1-エチル-3-(3-ジメチル・アミノプロピル)カルボジイミド(「EDC」、MW 191、3×モル)を添加する。反応物を24時間撹拌し、反応の完了の後、DMFを蒸発させる。反応混合物をアセトンの中で沈殿させ、真空下で乾燥させ、核磁気共鳴(「NMR」)により分析する。
【図3】PLGA-Mce6-DOTA-Gd錯体の合成。PLGA-NHS、mesochlorin e6((2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオン酸、「Mce6」)、および1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート(「DOTA」)-ヘキサンジアミンを、24時間、ジメチルアミノピリジン(「DMAP」)およびDMFの中でインキュベートする。DMFを蒸発させ、コンジュゲートを0.1N NaOHを使用して水に溶解させ、pH11に調整する。Mce6およびその他の未反応成分を抽出し、生成物を過剰のGd(OAc)3と反応させる。24時間の反応の後、エチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)を添加し、生成物を精製し、凍結乾燥する。(下記実施例I参照)
【図4】ポリマー-Gd錯体の分子量の決定。ポリマー-Gd錯体の溶出を示す溶出像のプロット、ミリ-吸光(absorbane)単位(「mAU」)対時間(分)。試料は、30%アセトニトリルを含むトリス緩衝液で、0.5ml/分で、セファロース6サイズ排除ゲルFPLCカラム(Pharmacia)に適用された。
【図5】ポリマー-Gd錯体の緩和度の決定。T1対[Gd](mM)のプロットは、ポリマー-Gd錯体の緩和度の決定を可能にする。水性溶液中の様々な濃度のポリマー-Gd錯体のT1を、室温で、LX8.4オペレーティング・システムを有する1.5T GE NV/CViスキャナで、B1均一性補正ルック・ロッカー(homogeneity corrected Look-Locker)技術を使用して測定した(18)。かさ高い(bulky)水分子の協調は、Gd(III)錯体の緩和度にとって重大である。
【図6】注射前、注射後5、30、60、120分、および24時間目の腫瘍(胸腺欠損nu/nuマウス)のMRI。組織薄片は、マウス1については心臓および腫瘍を別々に通っており、マウス2については心臓および腫瘍を同時に通っている。両方のマウスにおいて、24時間目の画像は、コントラスト前と比較して腫瘍を通るコントラスト増強を示しており、注射後5分目に心臓にコントラスト増強が存在している。
【図7】腫瘍細胞を通る、Mce6(Pol1、上パネル)および対照(Pol2、下パネル)を含むポリマーを受容した動物についての2D冠状MR画像。
【図8】心臓細胞を通る、Mce6(Pol1、上パネル)および対照(Pol2、下パネル)を含むポリマーを受容した動物についての2D冠状MR画像。
【図9】Mce6(Pol1、上パネル)および対照(Pol2、下パネル)を含むポリマー・コンジュゲートを受容した動物についての3D MIP画像。
【図10】治療後の腫瘍組織における造影剤の集積を示すPol1(上パネル)およびPol2(下パネル)についての2Dスピンエコー画像。
【図11】光線力学的療法の効力の例示。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、バイオテクノロジーおよび癌治療の領域に関し、より具体的には、腫瘍およびその他の標的組織および/または部位の磁気共鳴画像法ガイド下光線力学的治療の使用に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2004年12月3日出願の米国仮出願番号60/633,255(これの完全な内容が参照により組み入れられる)に基づく優先権を主張する。
【0003】
連邦政府によって支援された研究または開発に関する声明
本明細書に記載された研究は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)からのグラント、グラント番号CA097465によって一部分支援された。米国政府は、本発明における一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
米国特許出願第20020095197号(特許文献1)(これの内容は参照により本明細書に組み入れられる)に開示されるように、PDT(すなわち、光化学療法(photochemotherapy))とは、可視光と、特定の波長の光への曝露によって活性化される光増感剤との組み合わせられた効果に基づく新興の癌治療である。光化学療法は周知であり(Hsi R.A.,Rosenthal D.I.,Glatstein E.,"Photodynamic therapy in the treatment of cancer:current state of the art,"Drugs 1999,57(5):725-734(非特許文献1);Moore J.V.,West C.M.L.,Whitehurst C.,"The biology of photodynamic therapy,"Phys.Med.Biol.1997;42:913-935(非特許文献2))、癌療法のために現在実施されているように、光増感性薬剤が対象に全身的に注射され、それが、腫瘍細胞における光増感性薬剤の優先的な取り込みをもたらす。次いで、その光増感性薬剤により吸収される特定のエネルギーおよび波長の可視光が、腫瘍部位に照明される。この照明は、光増感性薬剤を活性化し、例えば、その薬剤が局在化した細胞において細胞障害性の励起状態酸素分子の発生をもたらす。これらの分子は、細胞成分と高度に反応性であり、腫瘍細胞の治療(サイズ、数、または質量の減少)を提供する。ポルフィリン化合物が腫瘍に優先的に集積し、光増感をもたらし、これらの化合物の蛍光のため腫瘍検出を補助することが証明された20世紀半ばに、最初に、光線力学的療法は臨床的な関心を集めた。Doughertyは、腫瘍治療のための光線力学的療法の可能性を認識し、1970年代に皮膚の転移性腫瘍の治療におけるその使用を証明したことから、現代の光線力学的療法の作出の功績を認められている(Oleinick N.L.,Evans H.H.,"The photobiology of photodynamic therapy:cellular targets and mechanisms,"Radiat Res.1998;150:S146-56(非特許文献3))。
【0005】
参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,825,343号(特許文献2)に開示されるように、光線力学的療法(「PDT」)は、一般に、典型的には可視域(近紫外であってもよい)の光を吸収し得る化合物の投与、それに続く、修飾または阻害効果が望まれる対象の位置の照射を含んでいる。PDTは、最初、腫瘍を治療するためにヘマトポルフィリンおよび関連化合物を使用して開発されたが、それは、これらの化合物が、(腫瘍のような)迅速に分裂する細胞に局在化するようであったためである。次いで、腫瘍に光が照射され得る。光はヘマトポルフィリンより吸収され、腫瘍が破壊される。それ以来、PDTは、動脈硬化巣、再狭窄、血流中の感染、慢性関節リウマチ、乾癬の治療のため、そして必ずしも腫瘍に限定されない眼状態の治療において有用であることが示されている。
【0006】
磁気共鳴画像法(「MRI」)における常磁性金属イオン、ランタノイド、ガドリニウムの使用は、よく立証されている。例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第20040204344号(特許文献3)およびその中の参照を参照のこと。常磁性金属キレートGd(III)-DTPA、Gd(III)-DOTA、およびそれらの誘導体は、周囲の水プロトンの緩和速度を増加させ、MRI用の造影剤として使用されている(1)。
【0007】
しかしながら、低分子量造影剤は、疾患組織を正常組織から効果的に識別することができない。画像コントラスト増強を改良するために、ポリ(アミノ酸)(2、3)、多糖(4、5)、デンドリマー(6〜8)、およびタンパク質(9、10)を含む医用ポリマーとこれらのGd(III)キレートを接合することにより、高分子Gd(III)錯体が開発されている。これらの高分子薬剤は、動物モデルにおいて、血液プール画像化および癌画像化のための優れたコントラスト増強を示した。残念ながら、高分子薬剤の臨床的な適用は、MRI検査後の遅い排泄(11、12)および薬剤の代謝によって放出されるGd(III)イオンの可能性のある不都合な副作用(13〜15)によって制限されている。
【0008】
最近、高分子Gd(III)錯体のクリアランスを容易にするためのいくつかの努力がなされた。例えば、腎尿細管再吸収の阻止により腎クリアランスを容易にするために、リジンが、デンドリマーに基づく高分子薬剤と同時注射された(16)。Zheng-Rong Luは、分解性スペーサーを含むそのようなポリ(L-グルタミン酸)Gd(III)-DOTAコンジュゲートの一例を報告しており、その論文は参照により本明細書に組み入れられる(17)。しかしながら、このアプローチは、比較的高い分子量の高分子のクリアランスは容易にすることができない。MRI検査後のGd(III)錯体のクリアランスを加速し、かつ高分子造影剤の可能性のある副作用(side affects)を減少させるためには、高分子Gd(III)錯体の革新的な設計が必要とされる。
【0009】
LITT(レーザー誘導間質温熱療法(Laser-Induced Interstitial Thermotherapy))またはRFA(高周波アブレーション(Radio Frequency Ablation))のような癌のための現在利用可能なMRIガイド下療法は、侵襲性であり、不均一な病変を治療することが困難であること、および皮膚熱傷による安全性の懸念のような、問題のある短所を有する。
【0010】
また、現在使用されている低分子量造影剤は、特に腫瘍においては、速いクリアランス、低い緩和度、およびより低いコントラスト増強を有する。従って、現在、高分子量造影剤が、(EPR効果のため)受動的に腫瘍を標的とするためにより一般的に使用されている。これらのより高い分子量の造影剤は、腫瘍において、より高い緩和度を示し、従って、より良好なコントラスト増強を示す。
【0011】
【特許文献1】米国特許出願第20020095197号
【特許文献2】米国特許第6,825,343号
【特許文献3】米国特許第20040204344号
【非特許文献1】Hsi R.A.,Rosenthal D.I.,Glatstein E.,"Photodynamic therapy in the treatment of cancer:current state of the art,"Drugs 1999,57(5):725-734
【非特許文献2】Moore J.V.,West C.M.L.,Whitehurst C.,"The biology of photodynamic therapy,"Phys.Med.Biol.1997;42:913-935
【非特許文献3】Oleinick N.L.,Evans H.H.,"The photobiology of photodynamic therapy:cellular targets and mechanisms,"Radiat Res.1998;150:S146-56
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は、MRIガイド下光線力学的癌療法による癌治療のための新技術を含む。一つの態様において、この技術は、MRI造影剤により標識されたポリマー-光増感剤コンジュゲートの投与、コントラスト増強MRIによる腫瘍または癌組織の検出および位置の特定、ならびに腫瘍または癌組織(これらに制限はされない)のような標的組織へのレーザーの照射を含む。送達されたレーザー・エネルギーは、標的組織に集積した光増感剤を活性化し、標的細胞死および治療をもたらすであろう。本明細書に開示されたようなこの方法は、画像ガイド下アブレーションを含む他の画像ガイド下療法と比較して、より非侵襲性である。本発明は、MRI造影剤により標識されたポリマー-光増感剤コンジュゲートの使用、およびコントラスト増強MRIと光線力学的療法との組み合わせを含んでいる。
【0013】
ポリマー骨格に共有結合的に付着した光増感薬(Mesochlorin e6)および造影剤(DOTA-Gd)を含有している高分子量ポリ-L-グルタミン酸(PLGA)-ガドリニウム(「Gd」)錯体の合成が、本明細書に開示される。これらの錯体は、当領域において現在使用されている他の錯体と比較して遅延の後に腫瘍における有意なコントラスト促進を示し、MRIガイド下PDTのために使用され得る。
【0014】
コントラスト増強MRIは、非侵襲性の腫瘍検出のための有効なアプローチである。光線力学的療法(PDT)は、癌のような疾患の治療において臨床的に使用されている療法である。本発明の態様は、MRIガイド下光線力学的療法を提供するために、コントラスト増強MRIとPDTとを組み合わせる。
【0015】
本発明の一つの局面において、薬物送達系は、ポリマー、タンパク質、リポソーム、ナノ粒子を含む薬物担体、Gd、Fe、Mn錯体、または酸化鉄粒子を含むMRI造影剤;光増感剤または腫瘍ターゲティング剤のような組織ターゲティング剤を含有している。送達系は、標的組織へ造影剤および光増感剤を輸送し、次いで、その組織がコントラスト増強MRIにより対象において位置が特定される。レーザー・ビームが標的組織部位に向けられる。レーザー・エネルギーは光増感剤を活性化し、それが、一つの態様において、標的の細胞および組織を死滅させるかまたは破壊する高度に反応性の種を発生させる。
【0016】
一つの例示的な態様において、方法は、癌または腫瘍細胞を治療するために使用される。しかしながら、本発明の方法は、MRIによりターゲティングされた標的組織の光線力学的癌治療に制限されない。それは、陽電子放射型断層撮影(PET)および単光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)によりターゲティングされた光線力学的治療のためにも使用され得る。PETおよびSPECTガイド下療法において、当業者は、送達系において(MRI造影剤を)PETおよびSPECTのプローブに置換することができる。
【0017】
例示的な態様において、光増感剤コンジュゲートは、乳癌細胞を検出し治療するために使用される。その他の例示的な態様において、本発明の方法は、乳癌細胞、膵臓癌細胞、前立腺癌細胞、皮膚癌細胞、および本発明の方法を使用して治療され得るその他の悪性病変を検出し治療するために使用される。
【0018】
もう一つの態様において、対象における標的組織の治療において有用な、新規の、光増感剤と接合したMRI造影剤の合成の方法が提供される。
【0019】
発明の詳細な説明
「治療」とは、本明細書において使用されるように、標的組織内の細胞の数の減少、または標的組織のサイズ、形、もしくは質量の減少を与える、エネルギー源を使用した照射と併せた、ある用量のポリマー-光増感剤コンジュゲートの提供(provision)を含むものと定義される。腫瘍または癌細胞の治療とは、本明細書において使用されるように、生存可能な癌または腫瘍細胞のサイズ、形、質量、生存率、または数の減少を可能にする、レーザー・エネルギーを使用した照射と併せた、ある用量のポリマー-光増感剤コンジュゲートの提供(provision)を含むものと定義される。
【0020】
本明細書において使用されるように、「有効量」とは、対象における疾患状態を改善、防止、または治療するのに有効な、対象に投与されるポリマー-光増感剤コンジュゲートおよびレーザー・エネルギーの量を意味する。
【0021】
本発明の目的のために許容される薬学的担体には、薬物、宿主、または薬物送達装置を含む材料に悪影響を及ぼさない担体が含まれる。適当な薬学的担体には、滅菌水、生理食塩水、デキストロース、デキストロースを含む水または生理食塩水、(ヒマシ油1モル当たり約30〜35モルのエチレンオキシドを組み合わせた)ヒマシ油およびエチレンオキシドの縮合生成物、液体酸、低級アルカノール、脂肪酸のモノまたはジグリセリドのような乳化剤を含む、トウモロコシ油、落花生油、ゴマ油等のような油;またはホスファチド、例えば、レシチン等;単独の、またはレシチン、ポリオキシエチレン・ステアレートのような適当な分散剤を含む、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリ(ビニルピロリドン)の存在下でのグリコール、ポリアルキレン・グリコール、水性媒体等が含まれる。担体は、浸透増強剤およびポリマー-光増感剤コンジュゲートと共に、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤等のような佐剤を含有していてもよい。
【0022】
一般に、本発明の様々な態様は、光線力学的療法のための新規のポリマー-光増感薬コンジュゲートに関する。本発明のさらなる態様は、一般に、高分子量ポリマー-光増感薬コンジュゲートに関する。一態様において、高分子または高分子量ポリマーは、光線力学的療法のための常磁性標識されたポリマー・コンジュゲートである。一つの態様において、常磁性標識されたポリマー・コンジュゲートは、常磁性標識されたポリ-(L-グルタミン酸)-Mce6である。一態様において、接合されたポリマーは、PLGA-Mce6-[(Gd-DOTA))-ヘキサン・ジアミン]を含む。しかしながら、当業者は、本発明の様々な態様において機能するであろうその他のポリマー-光増感薬コンジュゲートを容易に同定すると思われる。
【0023】
前述のように、光線力学的療法(PDT)は、当技術分野において一般的であり、一般に、米国特許第5,829,448号、米国特許第5,736,563号、米国特許第5,630,996号、米国特許第5,482,698号、および米国特許第6,889,723号(これらの全ての内容が、あたかも本明細書に完全に記述されているかのように、参照により本明細書に組み入れられる)に開示されたもののようなPDTの様々な方法が、本発明の態様と共に使用され得る。一態様において、本発明のPDTはMRIガイド下療法であり、ポリマー-光増感薬コンジュゲートの態様はコントラスト増強型である。一態様において、MRI造影剤により標識されたポリマー-光増感薬コンジュゲートである。さらなる態様は、陽電子放射型断層撮影(PET)および単光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)によりターゲティングされた光線力学的治療を含む。PETおよびSPECTガイド下療法において、当業者は、送達系においてMRI造影剤をPETおよびSPECTのプローブに置換することができる。
【0024】
本発明は、(MRI造影剤のような)造影剤および光増感剤を含有している送達系;コントラスト増強MRIまたはその他の画像モダリティによる患者における標的組織の正確な位置付け;ならびに標的組織へのレーザー・エネルギーの画像ガイド下照射を含む。これは、対象における腫瘍組織の正確な位置付けおよびPDTによる標的組織の非侵襲性の治療を可能にする。
【0025】
従って、一つの態様において、本発明の薬物送達系は、ポリマー、タンパク質、リポソーム、ナノ粒子を含む薬物担体、Gd、Fe、Mn錯体、または酸化鉄粒子(これらに制限はされない)のようなMRI造影剤;光増感剤または腫瘍ターゲティング剤のようなその他の組織ターゲティング剤を含む。
【0026】
一態様において、送達系は、造影剤および光増感剤を、標的部位へと、または標的部位の近傍へと輸送または運搬する。一態様において、送達系は、標的組織および/または標的細胞である標的部位に運搬される。
【0027】
さらなる態様は、当技術分野において一般的な手段および/または方法によって標的組織の位置を特定する。一態様において、標的部位は、コントラスト増強MRIまたはその他の型のMRIにより位置が特定される。その他の態様は、標的部位に送達系を向ける。
【0028】
次いで、レーザー、その他のエネルギー・パルス、ビーム、および/または光手段(photo means)のようなエネルギー源が、標的部位に向けられる/適用される/照明する。エネルギー・パルスは、光増感剤を活性化し、それにより、標的部位を死滅させ、かつ/または破壊する。一態様において、エネルギー・パルスは、光増感剤による、標的部位を死滅させ、かつ/または固定化する反応種の発生を開始させるかまたは引き起こす。
【0029】
従って、本発明の方法の様々な態様は、一般に、対象において、またはインビトロで標的部位を死滅させるかまたは破壊する方法を含み、その方法は、造影剤および光増感剤を含む送達系を、薬学的に有効な量で、対象に、またはインビトロで投与する工程;送達系を標的組織に運搬する工程;画像モダリティにより標的組織の位置を特定する工程;ならびに標的組織を照明し、標的部位を死滅させるかまたは破壊する工程を含む。さらなる態様は、対象の標的部位を美容的に治療する方法を含み、その方法は、造影剤および光増感剤を含む送達系を、薬学的に有効な量、対象に投与する工程;送達系を標的組織に運搬する工程;ならびに標的組織を照明し、標的部位を治療する工程を含む。
【0030】
本発明の送達系は、当技術分野において公知の任意の方法および/またはアプリケータによって投与され得る。一つの態様において、本発明の送達系は、注射により、例えば、注射器、注射針なしのインジェクター等により投与される。別の態様において、本発明の送達系は、注入(pouring)、塗布(wiping)、塗沫(smearing)等のような適用によって投与される。別の態様において、本発明の送達系は、経口投与される。
【0031】
一態様において、薬学的に有効な量の送達系を対象に投与する工程は、薬学的に有効な量の磁気共鳴画像法造影剤により標識されたポリマー-光増感コンジュゲートを投与することを含む。一態様において、薬学的に有効な量の磁気共鳴画像法造影剤により標識されたポリマー-光増感コンジュゲートは、ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)-ヘキサンジアミン]である。
【0032】
様々な態様は、癌および/または腫瘍細胞のような悪性の細胞、奇胎、いぼ、増殖物(growths)等(これらに制限はされない)のような所望の組織または細胞を治療するかまたはそれらの治療を提供するために使用される方法および/または系を含む。
【0033】
本発明のもう一つの態様において、対象における標的組織の治療において有用な、新規の、光増感剤に接合したMRI造影剤の合成の方法が、提供される。本発明の一つの局面において、本発明の錯体は、腫瘍細胞または癌細胞のような急速に分裂している細胞を標的とする。本発明のもう一つの局面において、本発明の錯体は、光増感剤に連結されたプローブの同一性に基づき、その他の組織特異的な細胞を標的とし得る。従って、本発明の態様は、腫瘍もしくは癌組織または癌細胞の治療のための薬学的に許容される組成物の使用を含む。
【0034】
例示的なコンジュゲートの合成の方法は、以下の工程を含む:以下の工程を含む、ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)-ヘキサンジアミン]を合成する方法:
γ-ベンジル・グルタメートをトリホスゲンと反応させ、γ-ベンジル・グルタメートのN-カルボキシ無水物を形成させる工程;
γ-ベンジル・グルタメートのN-カルボキシ無水物をトリブチルアミンと反応させ、ポリ-(ベンジル・グルタメート)を形成させる工程;
ポリ(ベンジル・グルタメート)を臭化水素とを反応させ、ポリ-(L-グルタメート)を形成させる工程;
ポリ-(L-グルタメート)をN-ヒドロキシスクシンイミドと反応させ、ポリ-(L-グルタミン酸)-N-ヒドロキシ・スクシンイミドを形成させる工程;
ポリ-(L-グルタミン酸)-N-ヒドロキシ・スクシンイミドを(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネートおよび1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート-ヘキサンジアミンと反応させる工程;ならびに
ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)-ヘキサンジアミン]をガドリニウム・アセテートと反応させる工程。
【0035】
当業者は、本発明の方法が癌細胞または腫瘍組織を標的とすることのみに制限されず、任意の悪性病変等も標的とすることを理解すると思われる。当技術分野には、対象におけるその他の組織を標的とするために有用な、本明細書に記載されたものに類似したその他の化学物質が存在する。同様に、当業者は、特定の化合物の合成の具体例の他に、本発明の様々な態様が、合成の方法および多数の利用可能な化合物を全て含むものであることが容易に明白であることを理解するであろう。
【0036】
高分子量ポリ-グルタミン酸ポリマーは、コントラスト増強の増加によって示される腫瘍組織におけるより高い緩和度およびより高い集積を、2時間と比較して、24時間後に示す。腫瘍内または腫瘍周辺のポリマーの量は、画像モダリティ等の使用により照射されるべき正確な腫瘍体積の決定を補助し得る。従って、治療の時間は、悪性病変のサイズ、照明、エネルギー・ビーム、および/またはパルスの強度、組織における悪性病変の深さ、組織における悪性病変の組成等に依って変動し得る。一態様において、悪性病変は、約1〜約25分間、650nmのレーザーにより治療される。しかしながら、一般に、レーザーが、ビーム幅および/または時間(これらに制限はされない)のような正確なパラメーターの範囲内で使用された場合に周囲の組織に過度の傷害を引き起こさない限り、任意のサイズおよび/または強度のレーザーが、様々な態様により使用され得、かつ/または使用されるよう修飾され得る。
【0037】
様々な態様において、投与された送達系が標的部位の位置を特定するための時間が与えられるまで、標的部位の照明は遅延する。一態様において、0.1時間〜36時間の遅延が起こる。別の態様において、約1時間〜24時間の遅延が起こる。別の態様において、約18時間の遅延が起こる。
【0038】
一態様において、本発明のポリマー-光増感剤コンジュゲートは、複数の用量で投与される。様々なその他の態様において、標的部位は、複数回、または複数の手順を通して照明され得る。
【0039】
様々な態様において、標的部位の画像が撮影される。一態様において、画像は送達媒体の投与前に撮影される。別の態様において、画像は送達媒体の投与時に撮影される。別の態様において、複数の画像が様々な時点で撮影される。様々な態様において、画像は、データを提供するため、方向を提供するため、進行をモニタリングするため等に使用される。
【0040】
本発明のもう一つの例示的な態様において、使用されるポリマーは、造影剤としてのDOTA-Gdおよび光増感薬としてのMse6を含むポリ-(L-グルタミン酸)である。
【0041】
本発明は、とりわけ、癌の治療において有用な薬学的組成物を調製する方法を開示する。一態様において、組成物はPLGA-Mce6-[(Gd-DOTA)]を含む。一態様において、組成物は化合物PLGA-Mce6-[-1,6-ヘキサンジアミン-(Gd-DOTA)]を含む。様々なPLGA-Mce6-(Gd-DOTA)コンジュゲートは、治療後の残存するGd錯体の対象からの迅速な排除を可能にするジスルフィド・リンカーを造影剤とポリマー担体との間に含有している。(コンジュゲートの生分解性特徴を提供するジスルフィド結合の形成に関しては、参照17、Lu,et al.を参照のこと。)これに類似したその他の生分解性リンカーは、当技術分野において公知であり、当業者は、コンジュゲートに生分解性特性を提供するために、その他のそのようなリンカーを代用し得ることが理解される。そのような生分解性ポリマー・コンジュゲートは、本発明に包含され、本発明のさらなる例示的な態様を構成する。
【0042】
従って、本発明の様々な態様は、薬学的に許容される量の化合物ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)-ヘキサンジアミン]を含む、対象における標的組織の治療において有用な薬学的組成物を含む。
【0043】
さらなる態様は、標的部位の治療のための薬品の製造における、ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[1,6-ヘキサンジアミン-(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)]を含む薬学的に許容される組成物の使用を含む。
【0044】
さらなる態様は、標的部位の位置を特定または探索するための、薬学的に有効な量の磁気共鳴画像法造影剤により標識されたポリマー-光増感コンジュゲートの使用を含む。一つの態様において、薬剤は、ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[1,6-ヘキサンジアミン-(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)]である。
【0045】
本発明のさらなる態様は、様々な系を含む。一つの態様において、磁気共鳴画像化造影剤、光増感剤、および画像モダリティを含む、標的組織の位置を特定するための系が開示される。別の態様において、磁気共鳴画像法造影剤;光増感剤、画像モダリティ;およびレーザーを含む、標的部位を治療するための系が開示される。本発明の系のさらなる態様は、送達媒体の適用のためのアプリケータを含み得る。
【0046】
本発明を制限することなく、本発明をさらに例示するため、以下の例示的な実施例が提供される。
【0047】
実施例
材料および方法
γ-ベンジル・グルタメートは、VWR(West Chester,PA)のため購入された。特別乾燥(Extra dry)溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、および塩化メチレンは、Arcos Organics,NJから購入された。Meso chlorin e6およびCyclenは、Macrocyclic Incから購入された。Gd(OAc)3およびジ-tert-ブチルジカルボネート(t-boc)、tert-ブチルブロモアセテート、N-エチルジイソプロピルアミン、およびモノ-boc-1,6-ジアミノヘキサンは、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から購入された。[1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl](EDC)は、TCI America(Portland,OR)から購入された。シリカゲル、メッシュ・サイズ230〜400は、Natland International Corp.,NCから購入された。全ての溶媒が、Fisher Scientificから購入され、特記しない限り、さらなる精製なしに使用された。Spectra/Por再生セルロース膜(MWCO=16〜18kDa)は、Spectrum Laboratories(Rancho Dominguez,CA)から購入された。PD-10脱塩カラムは、Amersham Bioscience(Uppsala,Sweden)から購入された。
【0048】
細胞系(MDA-MB-231)、2μMグルタミンおよびトリプシンを含有しているLH-15培地は、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas VA)から購入された。雌nu/nu胸腺欠損マウスは、NCI(Frederick,MD)から購入された。動物は、IACUC、University of Utah guidelinesに従って維持された。
【0049】
分子量決定は、UVおよび屈折率の検出器が装備されているSuperdex 200/Superose 6カラムを含むAKTA FPLC系(Amersham Biosciences Corp.,Piscataway,NJ)でのサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって実施された。FPLCカラムは、ポリ[N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]標準により較正された。1H NMRスペクトルは、25℃で、400MHzで、Varian INOVA 400で取得された。ESI-MSスペクトルは、University of Utah Mass Spectrometry and Proteonomic Core Facilityで、PE Sciex API III Mass Spectrometerで取得された。Meso chlorin含有量は、Cary Win UV-Vis分光計で決定された。Gd含有量は、誘導結合アルゴン・プラズマ発光分析法(Inductively Coupled argon Plasma-Optical Emission Spectrometer)(ICP-OES)(Perkin Elmer,Norwalk,CT,Optima 3100XL)を使用して決定された。最終的なコンジュゲートについてのT1緩和度測定は、標準的なインバージョン・リカバリー・シーケンス(inversion recovery sequence)を使用してSiemens Trio 3T MRIスキャナで取得された。光線力学的療法は、Diode Odysseyレーザー(650nm)(CAO Group,UT)を介して実施された。
【0050】
A. 常磁性標識された薬物-ポリマー錯体の合成
1. ポリ-(L-グルタミン酸)活性エステル(PLGA-OSu)の合成
a. ポリ-L-グルタミン酸(PLGA)の合成
高分子量ポリ-(L-グルタミン酸)は、以前に記載された方法によって合成された。簡単に説明すると、合成の第一工程は、THF(15ml)中でのγ-ベンジル・グルタメート(15g、0.06mol)のトリホスゲン(9.37g、0.03mol)との反応によるN-カルボキシ無水物の形成を含んでいた。反応をN2下で50℃で3時間実施し、NCAを沈殿させるためにn-ヘキサン(150ml)へ反応混合物を注入した。酢酸エチル(10ml)への溶解およびn-ヘキサン中での再沈殿により、生成物を再結晶化した。γ-ベンジル・グルタメートのNCAは、高い収率および純度で入手された。M.P=110℃
【0051】
高分子量ポリ-(ベンジル-γ-グルタメート)[PBLG]の合成のため、開始剤としてジクロロメタン中のトリブチルアミン10%溶液を使用した(M/I=100/1)、18mlの酢酸エチル:ジクロロメタン混合物(1:6v/v)中でのNCA(3G、11.4mol)の反応によって、開環重合を実施した。反応を、30Cで3時間およびR.Tで24時間、維持した。PBLGをメタノール:エーテル(2:1)混合物中で沈殿させ、ろ過し、エーテルで洗浄し、真空乾燥させた。
【0052】
最終工程は、ポリ-L-グルタミン酸が析出するまで、溶液にHBrを通すことによる、ジクロロメタンに溶解したPBLG(300ml中1.0gm)上のベンジル基の除去を含んでいた。HBrガスは、テトラリンおよび臭素の反応により発生させた。PLGAを、アセトンを使用してさらに精製した。分子量決定は、UVおよび屈折率(RI)の検出器が装備されたSuperdex 200カラムでのSECを使用して実施された。RIピークに相当するUVピークの欠如により、PLGAのほぼ完全な脱保護が確認された。
【0053】
b. PLGA-OSuの合成
ポリ-(L-グルタミン酸)をN-ヒドロキシ・スクシンイミド(NHS)と反応させ、コハク酸エステル形成させた。簡単に説明すると、PLGAおよびNHSをDMFに溶解させ、反応を開始させるためにカップリング剤EDCを添加した。活性エステルをアセトン中で沈殿させ、真空下で乾燥させた。エステルの存在は、NMRによって確認された。
【0054】
2. Gd-DOTA-1,6-ジアミノヘキサン(リンカー)の合成
a.DO3Aの合成
DO3Aは、高純度のDO3Aを入手するためわずかに変更された以前に記載された方法に従い、2工程で、cyclenを介して合成された。
【0055】
第一工程において、cyclen(1.72gm、10mmol)およびDIPEA(10eq、100mmol、12.9gm)を、80mlのクロロホルムに溶解させた。完全に溶解した後、反応混合物を2工程でクロロホルム中でtert-ブチル・ブロモアセテートと反応させた。一回目の添加のため、40mlのクロロホルムに溶解したtert-ブチル・ブロモアセテート(2eq、20mmol、3.92gm)を、絶えず攪拌しながら溶液へ滴下にて添加することにより反応させた。完全な添加の後、反応物を12時間撹拌した。二回目の添加のため、20mlに溶解したtert-ブチル・ブロモアセテート(1eq、10mmol、1.96gm)を、反応混合物に滴下にて添加した。反応物をR.Tでさらに18時間撹拌した。溶液を真空で濃縮し、固体を最少量の塩化メチレンに溶解させ、さらなる精製のためシリカゲル・カラムに適用した。溶出剤系として酢酸エチル:メタノール(100%、50:1、20:1、および10:1)を使用した勾配溶出を実施した。TB-cyclen(tert-ブチル保護cyclen)は20:1画分に入手された。
【0056】
TB cyclenを最少量の冷トリフルオロ酢酸を使用して脱保護し(25℃、一夜)、DO3Aを形成させた。生成物をジエチルエーテルを使用して精製した。
【0057】
b. N-boc-1,6-ジアミノヘキサン・ブロモアセテート(中間体)の合成
1工程の過程において、N-boc-1,6-ジアミノヘキサン(1gm、4mmol)を、ジクロロメタン(30ml)中のブロモ酢酸のN-ヒドロキシ・スクシンイミド・エステル(1.32gm、5mmol)と0℃で反応させた。完全な添加の後、反応物を25Cで24時間撹拌した。NaOH(2×50ml)および水(2×50ml)での洗浄、有機溶媒での抽出により精製され、乾燥するまで濃縮されたブロモアセテート・エステル。
【0058】
c. 合成DOTA-1,6-ジアミノヘキサン
20mlのメタノール:トリエチルアミン溶媒混合物(2:1)および過剰のK2CO3(2.76gm、20mmol)の中でのDO3A(0.7gm、2mmol)のN-boc-1,6-ジアミノヘキサン・ブロモアセテート(1.36gm、4mmol)との反応により、リンカーを合成した。反応を室温で24時間実施した。溶媒を蒸発させ、生成物を水に溶解させ、希HClで酸性化した。全ての酸を塩に変換し、KBrのような無機塩を溶解させるため、pHは、2〜3の間に調整した。水性溶液を真空で蒸発させ、リンカーをメタノール:トリエチルアミン(2:1)混合物から塩として抽出した。
【0059】
3. Gd(III)-DOTA-リンカー-PLGAおよびGd-DOTA-リンカー-PLGA-Mce6錯体の合成
a. DOTA-リンカー-PLGAおよびDOTA-リンカー-PLGA-Mce6コンジュゲートの合成
PLGA活性エステル(PLGA-NHS、200mg、542mmol)を、meso chlorin e6(24mg、37mmol)と共にDMF(3ml)に溶解させ、30分間反応させた。次いで、DOTA-リンカー(300mg、600mmol)を溶液に添加した。反応を開始させるために各添加の後に過剰のDMAPを組み込んだ。反応を室温で24時間実施した。反応終了後、DMFを真空下で蒸発させ、残さを水に溶解させた。対照として使用するためのDOTA-リンカー-PLGAコンジュゲートを、Mce6を添加せずに、同様にして合成した。Gd(III)によるポリマー・コンジュゲートの錯体化を、さらなる精製なしに実施した。
【0060】
b. Gd(III)-DOTA-リンカー-PLGA-Mce6(Pol1)およびGd(III)-DOTA-リンカー-PLGA(Pol2)の合成
DI水中のポリマー・コンジュゲートの水性溶液を、pH8で、過剰のGd(III)アセテートと反応させた。一夜撹拌した後、希NaOHにより溶液のpHを11に増加させることにより、過剰のGdをGd2O3として析出させた。酸化物を析出させ、溶液のpHを5.5〜6の間に調整した。最終的な溶液を、真空下で濃縮し、カラムに適用した。溶出液を凍結乾燥した。
【0061】
B. 常磁性標識されたポリマー-光増感剤コンジュゲートの特徴決定(表1)
分子量の決定
ポリマー錯体の分子量は、AKTA FPLC系(Amersham Inc)でのサイズ排除クロマトグラフィを使用して決定された。錯体は、TRIS緩衝液pH7.4に溶解させられ、0.2μ膜でろ過された後、カラムに適用された。
【0062】
緩和度の決定
ポリマー錯体Pol1およびPol2のT1緩和度は、22〜1600msの変動するTIにより、標準的なインバージョン・リカバリー・シーケンスを使用して、Siemens Trio 3Tスキャナで決定された。
【0063】
Gd含有量の決定
Pol1およびPol2含有量のGd(III)は、標準曲線を構築するためにGd標準を使用して、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-OES)により決定された。
【0064】
Mce6含有量の決定
Pol1についてのMeso chlorin e6含有量は、UV分光測光法により決定された。Mce6標準ポリマー・コンジュゲート溶液がメタノールで調製され、UV吸光度が650nmで測定された。
【0065】
C. 細胞培養
MDA-MB-231(ATCC)ヒト乳癌細胞系を、5%CO2で、2mMグルタミンおよび10%FBSを含むLH-15培養培地で培養した。細胞をコンフルエンスで採集し、トリパンブルーで染色した後に計数した。腫瘍モデルを作製するため、動物1匹当たり2×106個の細胞を注射した。
【0066】
D. 動物モデル
6週齢の雌胸腺欠損nu/nuマウスを、NCI(Frederick,MD)から購入した。腫瘍モデルを作製するため、各マウスの側腹部に、100μlのBD MATRIGEL、EHSマウス肉腫から抽出された可溶化(solubulized)された基底膜調製物と混合された100μlの培養培地の中の2×106個のMB-231細胞を皮下注射した。磁気共鳴画像法および光線力学的療法の研究は、25〜40mm3の平均腫瘍サイズで実施された。
【0067】
(表1)Gd(ICP)およびMeso Chlorin(UV)の含有量の決定
(データは図6に例示された結果において使用されたマウスに関するものである)
【0068】
実施例I
動物腫瘍モデル試験
異種移植片を作製するため、6匹の雌胸腺欠損nu/nuマウスに、MDA-MB231ヒト乳癌細胞(ATCC)を注射した。約1〜3×106個の細胞をMATRIGEL(BD Biosciences)と混合し、各マウスに注射した。マウスを腫瘍増殖に関して観察した。腫瘍体積をディジタル・ノギスを使用して測定した。腫瘍体積がおよそ20mm3になった時点で、マウスを画像法および療法のために選択した。
【0069】
実施例II
動物モデルの磁気共鳴画像法およびコンジュゲートの投与
MR画像法をSiemens Trio 3T MRIスキャナで実施した。麻酔薬(80mg/kg体重のケタミンおよび12mg/kg体重のキシラジンの混合物)の腹腔内または筋肉注射により、動物に麻酔をかけた。
【0070】
画像化の目的のため、動物をヒト用リスト・コイル(human wrist coil)に置き、コントラスト前画像(薬物および造影剤を含有しているポリマー・キレート系の注射前)を、3D FLASH(Fast Low Angle Shot)シーケンスを使用して入手した。
【0071】
コントラスト前画像を入手した後、高分子錯体を、0.09mmol Gd/kg体重および6mg/kgのMce6の用量で、尾静脈注射により注射した。画像取得は、注射後5、30、60、120分、および24時間目に設定された。動物画像法は多相T1加重シーケンスを使用して実施された。反復時間は、それぞれ、4〜8cm FIV(視野)と一致する約6ミリ秒〜2ミリ秒であり、各動物について組織薄片の厚さは0.5mmを選択した。画像化容量は、注射前に、そして注射後に迅速に連続して取得された。取得は、各々、約30秒を必要とした。
【0072】
類似した投薬量が、ヒトのような他の対象において有効であると予想される。ヒトにおいて、投薬量は、例えば、0.01〜0.03mmol Gd/kg体重を含み得る。同様に、例えば、1〜10mg/kg体重のMce6を含み得る投薬量が、ヒトのような他の対象において有効であると予想される。しかしながら、投薬量は、ルーチンの実験により決定されるように調整してもよい。
【0073】
実施例III
動物モデルにおける標的組織の特異的な照明
コントラスト増強が観察された後、Mce6の励起波長に相当する650nmの波長のレーザーを使用して腫瘍を照射した。
【0074】
腫瘍内の高分子錯体の位置および集積を、MRIで観察した。次いで、注射後2時間目および18時間目に、220mW/cm2のエネルギーの入力および照射のため0.5mmのアパーチャーにより波長650nmの光(Denlaser)を使用して腫瘍を照射した。照射の時間は15分であった。次いで、無関係の照射を回避するため、マウスを直接光から隔離し、腫瘍体積の減少を測定した。
【0075】
結果は、注射前、注射後5、30、60、120分、および24時間目の胸腺欠損nu/nuマウスにおける腫瘍の画像を示す、図6の磁気共鳴画像に示される。組織薄片は、マウス1については心臓および腫瘍を別々に通っており、マウス2については心臓および腫瘍を同時に通っている。両方のマウスにおいて、24時間目の画像は、コントラスト前と比較して腫瘍を通るコントラスト増強を示しており、注射後5分目の心臓にもコントラスト増強が存在する。計6匹のマウスが上記の方法論を使用して調査され、全て、類似した結果を与えた。これらの結果は、コンジュゲートが24時間以内に標的組織に局在化し得ることを示している。
【0076】
実施例IV
実施例VIIのためのポリマー・コンジュゲートおよび対照の合成および物理化学的特徴決定
Mce6およびGd(III)DOTA(Pol1およびPol3)またはGd(III)DOTAのみ(Pol2)を含有しているポリ-(-グルタミン酸)コンジュゲートを、同一分子量Mw=82kDaのPLGAから合成した。薬物および造影剤の異なる比率を、両方の活性モエティのための最適の含有量を有する最終的なコンジュゲートを作製するため、評価した(示されていない)。Meso chlorin e6は、その疎水性の性質、およびより良好な光の透過に至るより高い光の波長において励起される可能性のために使用された。臨床的に認可されている造影剤Gd-DOTAは、非環式金属キレートと比較してより高い安定性のために選ばれた。ポリマー・コンジュゲートおよび対照についての分子量、PDI、meso chlorin e6およびGdの含有量、ならびに緩和度を含む物理化学的特徴決定は、下記表2に与えられる。薬物を含むポリマー・コンジュゲートおよび薬物を含まないポリマー・コンジュゲートは、低分子量カウンターパートと比較して、より高い緩和度を示した。
【0077】
(表2)(結果は図7〜10におけるマウスに関するものである)
【0078】
MR画像法
Pol1およびPol2により、マウス6匹の2つの群においてコントラスト増強が観察された。図7および図8は、それぞれ腫瘍および心臓を通る2D冠状MR画像を示す。図7の上パネルはPol1によるマウスを表し、下のパネルはPol2によるマウスを表す。図8の上パネルはPol1によるマウスを表し、下のパネルはPol2によるマウスを表す。Pol1およびPol2の両方について、注射後5分目に、腫瘍、心臓、および肝臓(示されないデータ)を含む全ての組織に、コントラスト前と比較して増加したコントラストが存在した。心臓においては、全ての時点で、対照に、より高いコントラストが存在し、腫瘍組織においては、全ての時点で、両方に、類似した増強が観察された。心臓におけるより高いシグナルは、対照ポリマーの高分子量画分によるものかもしれない。
【0079】
両方のポリマーについての腫瘍組織におけるシグナル強度の半定量的評価は、注射後2時間目までに、増加したコントラストを示した。2時間目のコントラスト前と比較した両方の群についての腫瘍のシグナル強度の増加は100%である。注射後18時間目のシグナル強度は、Pol1およびPol2の両方についてコントラスト前より少なくとも30%高かった。IDLを使用したシグナル強度の定量的評価を、半定量分析から入手されたデータを確証するために実施した。
【0080】
光線力学的療法の効力
第1の群に属するマウスについての腫瘍体積の減少、6匹のマウスがポリマー-薬物-CA(薬物)を受容し、6匹のマウスがポリマー-CAコンジュゲート(対照)を受容した。
【0081】
図11は、Pol1を受容したマウスについて腫瘍体積の減少または腫瘍増殖の遅延が観察され、Pol2を注射されたマウス(対照群)が腫瘍の迅速な増加を示したことを例示している。薬物群のマウス6匹中4匹が、実験期間(90日)の後、生存していた。対照群のマウス6匹中5匹が、体重の10%より大きな腫瘍を有しており、屠殺された。
【0082】
治療後のMR画像化
治療されたマウスおよび治療されていないマウスについての腫瘍取り込みの違いを決定するために、治療後のMR画像法のため、高分子量造影剤(Gd-DTPA)-シスチン・コポリマー(GDCP)を使用した。この薬剤は、類似した腫瘍モデルにおいて血管形成中の血管において比較的強いコントラスト増強を生じることが以前の研究において示されている。ポリマーの分子量および緩和度は、Pol1のものに類似しており、34kDaおよび5.33mM-1sec-1であった。
【0083】
図9は、注射後2、5、10、15、30分目の、GDCCを受容したマウスの3D MIPエコーMR画像を例示している。図10は、注射後2、5、10、15、30分目の、GDCCを受容したマウスの2DスピンエコーMR画像を例示している。両方の群のマウスについて、腫瘍は、周縁部増強を示した。しかしながら、対照群のマウスは、治療の欠如を示すより高いコントラスト増強を示した。
【0084】
結果
薬物を受容したマウスにおける腫瘍体積の減少は、対照と有意に異なっていた。さらに、上記の結果は、例えば、MRIから入手された動的なデータを使用して、照射の時間が決定され調整され得、増強された部位特異的光線力学的療法のための増加した効力に至ることを例示している。
【0085】
本明細書に引用された公開、特許、および特許出願を含む全ての参照は、あたかも各参照が参照により組み入れられると個々に具体的に示され、完全に本明細書に記述されたかのような程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0086】
本発明はある種の態様において記載されているが、本発明は、さらに、この開示の本旨および範囲の中で修飾され得る。従って、本願は、その一般的な原理を使用した本発明の任意の変動、使用、または適応を包含するものとする。さらに、本願は、本発明が関係する技術分野における公知のまたは慣習的な実務の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるような、本発明の開示からのそのような逸脱を包含するものとする。
【0087】
参照
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】ポリ-L-グルタミン酸の合成。γ-ベンジル・グルタメートを、50℃で3時間、テトラヒドロフラン(「THF」)中でトリホスゲンと反応させ、次いで、24時間-20℃に冷却して、γ-ベンジル・グルタメートのN-カルボキシ無水物(「NCA」)を生成させる。次いで、この生成物を、ジクロロメタンおよびエチルアセトアセテート(「EtOAc」、1:6、v:v)の中でトリブチルアミンと反応させ、ポリ-(ベンジル・グルタミン酸)を生成させる。次いで、ポリ-(ベンジル・グルタミン酸)を、3時間、臭化水素(Br2+テトラリン)と共にインキュベートし、72時間撹拌し、ポリ-(L-グルタミン酸)を得る。
【図2】ポリ-L-グルタミン酸活性エステルの合成。ポリ(L-グルタミン酸)(「PLGA」、MW 67kDa、810mg)を、2.166gのN-ヒドロキシ・スクシンイミド(「NHS」、MW 115、グルタミン酸モノマーに基づき3×モル)と共に、4mlのN,N-ジメチルホルムアミド(「DMF」)に溶解させる。最少量のDMFが使用される。DMFへのPLGA(約1時間)およびNHSの完全な溶解の後、3.61gの1-エチル-3-(3-ジメチル・アミノプロピル)カルボジイミド(「EDC」、MW 191、3×モル)を添加する。反応物を24時間撹拌し、反応の完了の後、DMFを蒸発させる。反応混合物をアセトンの中で沈殿させ、真空下で乾燥させ、核磁気共鳴(「NMR」)により分析する。
【図3】PLGA-Mce6-DOTA-Gd錯体の合成。PLGA-NHS、mesochlorin e6((2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオン酸、「Mce6」)、および1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート(「DOTA」)-ヘキサンジアミンを、24時間、ジメチルアミノピリジン(「DMAP」)およびDMFの中でインキュベートする。DMFを蒸発させ、コンジュゲートを0.1N NaOHを使用して水に溶解させ、pH11に調整する。Mce6およびその他の未反応成分を抽出し、生成物を過剰のGd(OAc)3と反応させる。24時間の反応の後、エチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)を添加し、生成物を精製し、凍結乾燥する。(下記実施例I参照)
【図4】ポリマー-Gd錯体の分子量の決定。ポリマー-Gd錯体の溶出を示す溶出像のプロット、ミリ-吸光(absorbane)単位(「mAU」)対時間(分)。試料は、30%アセトニトリルを含むトリス緩衝液で、0.5ml/分で、セファロース6サイズ排除ゲルFPLCカラム(Pharmacia)に適用された。
【図5】ポリマー-Gd錯体の緩和度の決定。T1対[Gd](mM)のプロットは、ポリマー-Gd錯体の緩和度の決定を可能にする。水性溶液中の様々な濃度のポリマー-Gd錯体のT1を、室温で、LX8.4オペレーティング・システムを有する1.5T GE NV/CViスキャナで、B1均一性補正ルック・ロッカー(homogeneity corrected Look-Locker)技術を使用して測定した(18)。かさ高い(bulky)水分子の協調は、Gd(III)錯体の緩和度にとって重大である。
【図6】注射前、注射後5、30、60、120分、および24時間目の腫瘍(胸腺欠損nu/nuマウス)のMRI。組織薄片は、マウス1については心臓および腫瘍を別々に通っており、マウス2については心臓および腫瘍を同時に通っている。両方のマウスにおいて、24時間目の画像は、コントラスト前と比較して腫瘍を通るコントラスト増強を示しており、注射後5分目に心臓にコントラスト増強が存在している。
【図7】腫瘍細胞を通る、Mce6(Pol1、上パネル)および対照(Pol2、下パネル)を含むポリマーを受容した動物についての2D冠状MR画像。
【図8】心臓細胞を通る、Mce6(Pol1、上パネル)および対照(Pol2、下パネル)を含むポリマーを受容した動物についての2D冠状MR画像。
【図9】Mce6(Pol1、上パネル)および対照(Pol2、下パネル)を含むポリマー・コンジュゲートを受容した動物についての3D MIP画像。
【図10】治療後の腫瘍組織における造影剤の集積を示すPol1(上パネル)およびPol2(下パネル)についての2Dスピンエコー画像。
【図11】光線力学的療法の効力の例示。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、対象において、またはインビトロで標的部位を死滅させるかまたは破壊する方法:
造影剤および光増感剤を含む送達系を、薬学的に有効な量で、対象に、またはインビトロで投与する工程;
送達系を標的組織に運搬する工程;
画像モダリティにより標的組織の位置を特定する工程;ならびに
標的組織を照明し、標的部位を死滅させるかまたは破壊する工程。
【請求項2】
薬学的に有効な量の送達系を対象に、またはインビトロで投与する工程が、薬学的に有効な量の磁気共鳴画像法造影剤により標識されたポリマー-光増感コンジュゲートを投与することを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
薬学的に有効な量の送達系を対象に投与する工程が、ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[1,6-ヘキサンジアミン-(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)]を対象に投与することを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
造影剤が磁気共鳴画像法造影剤である、請求項1の方法。
【請求項5】
標的組織の位置を特定する工程が、磁気共鳴画像法(MRI)を使用することを含む、請求項1の方法。
【請求項6】
PLGA-Mce6-[(Gd-DOTA)]を含む化合物。
【請求項7】
生分解性リンカーと組み合わせた請求項6の化合物。
【請求項8】
標的部位の処置のための医薬の製造における、造影剤および光増感剤を含む薬学的に許容される送達系の使用。
【請求項9】
標的部位の位置を特定または探索するための、薬学的に有効な量の磁気共鳴画像法造影剤により標識されたポリマー-光増感コンジュゲートの使用。
【請求項10】
標的部位の位置を特定または探索するための、ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[1,6-(ヘキサンジアミン-(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)]の使用。
【請求項11】
磁気共鳴画像法光増感造影剤およびアプリケータを含む、標的組織の位置を特定するための系。
【請求項12】
磁気共鳴画像法光増感造影剤;
アプリケータ;および
レーザー
を含む、標的組織を治療するための系。
【請求項13】
以下の工程を含む、対象の標的部位を美容的に治療する方法:
造影剤および光増感剤を含む送達系を、薬学的に有効な量で、対象に投与する工程;
送達系を標的組織に運搬する工程;ならびに
標的組織を照明し、標的部位を治療する工程。
【請求項1】
以下の工程を含む、対象において、またはインビトロで標的部位を死滅させるかまたは破壊する方法:
造影剤および光増感剤を含む送達系を、薬学的に有効な量で、対象に、またはインビトロで投与する工程;
送達系を標的組織に運搬する工程;
画像モダリティにより標的組織の位置を特定する工程;ならびに
標的組織を照明し、標的部位を死滅させるかまたは破壊する工程。
【請求項2】
薬学的に有効な量の送達系を対象に、またはインビトロで投与する工程が、薬学的に有効な量の磁気共鳴画像法造影剤により標識されたポリマー-光増感コンジュゲートを投与することを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
薬学的に有効な量の送達系を対象に投与する工程が、ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[1,6-ヘキサンジアミン-(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)]を対象に投与することを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
造影剤が磁気共鳴画像法造影剤である、請求項1の方法。
【請求項5】
標的組織の位置を特定する工程が、磁気共鳴画像法(MRI)を使用することを含む、請求項1の方法。
【請求項6】
PLGA-Mce6-[(Gd-DOTA)]を含む化合物。
【請求項7】
生分解性リンカーと組み合わせた請求項6の化合物。
【請求項8】
標的部位の処置のための医薬の製造における、造影剤および光増感剤を含む薬学的に許容される送達系の使用。
【請求項9】
標的部位の位置を特定または探索するための、薬学的に有効な量の磁気共鳴画像法造影剤により標識されたポリマー-光増感コンジュゲートの使用。
【請求項10】
標的部位の位置を特定または探索するための、ポリ-(L-グルタミン酸)-(2S,3S)-18-カルボキシ-20-(カルボキシメチル)-8,13-ジエチル-3,7,12,17-テトラメチル-クロリン-2-プロピオネート-[1,6-(ヘキサンジアミン-(Gd-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラアセテート)]の使用。
【請求項11】
磁気共鳴画像法光増感造影剤およびアプリケータを含む、標的組織の位置を特定するための系。
【請求項12】
磁気共鳴画像法光増感造影剤;
アプリケータ;および
レーザー
を含む、標的組織を治療するための系。
【請求項13】
以下の工程を含む、対象の標的部位を美容的に治療する方法:
造影剤および光増感剤を含む送達系を、薬学的に有効な量で、対象に投与する工程;
送達系を標的組織に運搬する工程;ならびに
標的組織を照明し、標的部位を治療する工程。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−522666(P2008−522666A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544609(P2007−544609)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/044012
【国際公開番号】WO2006/060797
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(507007522)ユニバーシティー オブ ユタ リサーチ ファンデーション (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/044012
【国際公開番号】WO2006/060797
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(507007522)ユニバーシティー オブ ユタ リサーチ ファンデーション (2)
【Fターム(参考)】
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