癌の検出および処置
本発明は、メラノーマおよび皮膚癌の検出および処置のための方法および組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、メラノーマおよび皮膚癌細胞においてBCSC−1発現が変化しており、これがこのような状態のための有効な検出方法およびキットのデザインを可能とする、ということを開示する。本発明は、メラノーマおよび皮膚癌細胞におけるBCSC−1の回復または増加する発現は、腫瘍形成性を抑制しそしてメラノーマおよび皮膚癌の処置のための新規で有効なアプローチを表すことも示す。本発明は、メラノーマおよび皮膚癌の存在、段階またはタイプを検出するためならびにそれらへのいかなる素因も検出するために使用されうる。本発明は、任意の哺乳動物被検体、特にヒト被検体において使用されうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラノーマおよび皮膚癌の検出および処置のための方法および組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、メラノーマおよび皮膚癌細胞においてBCSC−1発現が変化しており、これがこのような状態(conditions)のための検出方法およびキットのデザインを可能とする、ということを開示する。本発明は、メラノーマおよび皮膚癌細胞におけるBCSC−1の回復または増加する発現は、腫瘍形成性(tumorigenicity)を抑制しそしてメラノーマおよび皮膚癌の処置のための新規なかつ有効なアプローチを表すことも示す。本発明は、メラノーマおよび皮膚癌の存在、段階またはタイプを検出するたためならびにそれらへのいかなる素因も検出するために使用されうる。本発明は、任意の哺乳動物被検体、特にヒト被検体において使用されうる。
【0002】
メラノーマは、広範囲に及ぶ転移疾患を引き起こす傾向を有する進行性癌である。診断は早期の段階で必須である。何故ならば、今日まで唯一の成功する処置は、まだ皮膚に制限されているときに腫瘍を切除することであるからである。都合の悪いことに、メラノーマは、慣用の化学療法に対して大いに抵抗性であり、そして転移メラノーマに対する新規な処置が緊急に必要とされる。
【0003】
着色した皮膚病変(pigmented skin lesions)およびメラノーマの遺伝子発現プロファイリングを研究するために、良性の母斑および転移メラノーマの選択的スプライシングの全体的解析を、DATAS技術を使用して研究した。良性母斑と転移メラノーマ間の217のディファレンシャルに発現されたクローンを含む良性母斑〜転移メラノーマのためのDATASライブラリーをこの方法により発生させた。アポトーシス、細胞サイクル、代謝等におけるそれらの関与に基づいてメラノーマ進行に関与することができるいくつかのクローンがリアルタイムPCRによりスクリーニングされた。これらの遺伝子の中でも、本発明者等は、BCSC−1(Martin et al. PNAS 2003)が転移メラノーマを有する患者において一貫してダウンレギュレーシヨンされることを確認した。
【0004】
本発明者等は、更に良性母斑、異形母斑(atypical nevus)、原発性メラノーマ(primary melanoma)または転移メラノーマを有する患者からの70の皮膚生検のコホートにおいてリアルタイムPCRによりBCSC−1の発現を調査した。結果は、BCSC−1発現が健康なドナーと比較してすべてのメラノーマ患者において減少することを示した。これらの結果は、解析されたメラノーマ細胞系およびすべてのメラノーマ患者において確かめられた。
【0005】
重要なことに、BCSC−1遺伝子がメラノーマ細胞系において異所性に(ectopically)発現されたとき、メラノーマ細胞は、増殖を停止しそしてアポトーシスを受けた。これらの細胞におけるBCSCタンパク質の発現はウエスタンブロットにより確かめられた。
【0006】
更に、本発明者等は、インビボ(in vivo)注入されると、BCSC−1は転移メラノーマのマウスモデルにおける肺転移の数を減少させることも示した。
【0007】
結論として、本発明は、BCSC−1が皮膚癌においてダウンレギュレーションされることおよび該癌細胞におけるBCSC−1発現の誘導が腫瘍進行の阻害をもたらすことを示す。これらのデータは、BCSC−1がメラノーマおよび皮膚癌の病原において極めて重大な役割を演じそして新規な予後マーカーおよびメラノーマおよび皮膚癌のための薬物開発のための価値あるターゲットを表すことを示す。
【0008】
本発明の第1の目的は、被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体からのサンプルにおける変化したBCSC−1遺伝子発現の存在をインビトロ(in vitro)またはエキソビボ(ex vivo)で検出し、このような変化したBCSC−1遺伝子発現の存在は該被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法にある。
【0009】
この方法の特定の態様に従えば、変化した発現は、上記サンプルにおけるBCSC−1遺伝子の減少した発現、なお更に好ましくは該サンプルにおけるBCSC−1遺伝子の長いアイソフォームの減少した発現である。
【0010】
本発明の他の目的は、被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体からのサンプルにおけるBCSC−1遺伝子またはタンパク質の長いアイソフォームの(相対的)量をインビトロまたはエキソビボで決定し、このような量が該被検体における癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法にある。特定の態様においては、決定された量を、コントロールもしくは平均値と比較するかまたはコントロールサンプルにおいて測定された値と比較する。他の態様においては、BCSC−1の長いアイソフォーム/BCSC−1の短いアイソフォームの比が決定され、そしてこのような比の任意の減少は、このような癌の存在を示す。このような方法は、任意の癌、特に充実性癌(solid cancers)を検出するのに使用されうる。
【0011】
これについて、本発明の他の目的は、被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、BCSC−1の長いアイソフォーム/BCSC−1の短いアイソフォームの比をインビトロまたはエキソビボで決定し、コントロールの状態または参照もしくは平均値と比較してこのような比の減少が、このような癌の存在を示すことを含む方法にある。このような方法は、任意の癌、特に充実性癌を検出するのに使用されうる。
【0012】
本発明の他の目的は、被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体に由来する流体サンプルにおけるBCSC−1タンパク質の(相対的)量をインビトロまたはエキソビボで決定し、このような量は該被検体における癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法にある。典型的には、BCSC−1タンパク質の長いアイソフォームの(相対的)量を決定し、コントロールもしくは参照値と比較してこのような量の減少は癌の存在を示す。典型的な態様においては、流体サンプルは、全血、血清、血漿、尿等に由来する(例えば希釈、濃縮、精製、分離等により)。このような方法は、任意の癌、特に充実性癌を検出するのに使用されうる。
【0013】
本発明の更なる目的は、被検体におけるメラノーマおよび皮膚癌の処置の有効性を評価する方法であって、該処置の前および後の被検体からのサンプルにおけるBCSC−1遺伝子発現を比較し(インビトロまたはエキソビボ)、増加した発現は処置に対するポジティブな応答を示すことを含む方法にある。
【0014】
本発明は、メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬の製造のためのBCSC−1タンパク質またはBCSC−1タンパク質をコードする核酸の使用、および対応する処置方法にも関する。
【0015】
本発明は、メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬組成物の製造のためのBCSC−1アゴニストの使用、および対応する処置方法にも関する。
【0016】
本発明の更なる局面は、メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬組成物の製造のためのBCSC−1遺伝子発現を刺激する化合物の使用、および対応する処置方法にある。
【0017】
本発明は、メラノーマまたは皮膚癌を処置することを必要としている被検体においてメラノーマまたは皮膚癌を処置する方法であって、有効量の上記した化合物を該被検体に投与することを含む方法にもある。好ましい態様においては、被検体は、変化したBCSC−1遺伝子発現を有する。
【0018】
本発明は、更にメラノーマまたは皮膚癌に対する生物学的に活性な化合物を選択する方法であって、BCSC−1発現または活性を模倣するか(mimic)または刺激する化合物を選択する工程を含む方法に関する。
【0019】
特定の態様においては、前記方法は、試験化合物を、レポーター構築物を含む組換え宿主細胞と接触させ、該レポーター構築物はBCSC−1遺伝子プロモーターのコントロール下のレポーター遺伝子を含んでおり、そしてレポーター遺伝子の発現を刺激する試験化合物を選択することを含む。
【0020】
皮膚癌は、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、メルケル癌(Merkel carcinoma)、原発性皮膚リンパ腫、および皮膚または関連した表面組織の任意の他の細胞増殖疾患から選ばれうる。
【0021】
BCSC−1遺伝子発現は、配列決定、選択的ハイブリダイゼーション、選択的増幅および/または特異的リガンド結合によるなどの当技術分野でそれ自体既知の任意の技術により検出されうる。特定の態様においては、本発明は、BCSC−1の長いアイソフォームの検出、または長いアイソフォームと短いアイソフォームの識別または長いアイソフォーム/短いアイソフォームの比の測定を可能とする試薬および/または技術を使用する。
【0022】
本発明の更なる局面は、BCSC−1の長いアイソフォームの(特異的)増幅を可能とするかまたは長いアイソフォームと短いアイソフォームを識別することを可能とする核酸プライマーにある。
【0023】
本発明の更なる局面は、BCSC−1の長いアイソフォームに(特異的に)ハイブリダイゼーションするかまたは長いアイソフォームと短いアイソフォームを識別することを可能とする核酸プローブにある。
【0024】
本発明の更なる局面は、BCSC−1タンパク質の長いアイソフォームに(特異的に)結合するかまたは長いアイソフォームと短いアイソフォームを識別することを可能とする抗体(その誘導体およびハイブリドーマを産生する誘導体を含む)にある。
【0025】
本発明は、更に、上記したプライマー、プローブまたは抗体を含むキットに関する。このようなキットは、容器または支持体、および/または増幅、ハイブリダイゼーションもしくは結合反応を行うための試薬を含むことができる。
【0026】
本発明の特定の局面は、BCSC−1の少なくとも1つの長いアイソフォームを特異的に検出するようにデザインされる、プライマー、プローブおよび/または抗体を含む物質の組成物にある。
【0027】
発明の詳細な説明
メラノーマの発生は増加している。それは広範囲に及び疾患を引き起こす傾向を有する進行性の癌である。全体的な遺伝子発現の研究に基づく新規な方法が、メラノーマ発癌性の基礎をなす事象を理解するために必要である。
【0028】
図1に開示されたとおり、良性母斑(左)、形成異常母斑(dysplastic naevus)(中心)および悪性メラノーマ(右)間の移行を、形態学技術を使用して解析することができる。しかしながら、これらの移行を支配する分子事象については部分的にしか理解されていない。
【0029】
良性母斑とメラノーマ間の移行を支配する分子事象を同定するために、本発明者等は、DATS(選択的スプライシングによる転写物のディファレンシャル解析)と呼ばれる遺伝子プロファイリング技術を使用して着色したメラノーマにおける選択的スプライシングを研究することを選んだ。この全体的な遺伝子発現解析によって、本発明者等は、腫瘍関連スプライシング事象から生じる新規な配列を導いた。良性母斑(ネガティブコントロール)および異なる段階の着色した皮膚病変の生検を含む総計70人の患者の生検から抽出されたRNAのリアルタイム半定量的RT−PCRを使用して、本発明者等は、転移疾患を有する患者からのBCSC−1は選択的にダウンレギュレーションされることを示すことができた。
【0030】
更に、本発明者等は、BCSC−1の長いアイソフォームは、メラノーマにおいて選択的にダウンレギュレーションされ、一方短いアイソフォームは実質的に影響を受けないということを確かめることができた。
【0031】
更に、メラノーマ細胞系においてHAでタグ付けされたBCSC−1をコードするレンチウイルスベクターからの異所発現は、これらの細胞の増殖の強い減少を誘導した。
【0032】
総合すると、本発明者等の結果は、メラノーマおよび皮膚癌において選択的にダウンレギュレーションされる新規な遺伝子(BCSC−1)を同定する。この遺伝子の選択された「長い」アイソフォーム(c.f)のみが転移メラノーマにおいてダウンレギュレーションされたが、「短い」アイソフォームは影響を受けず、転移腫瘍における紛失しているアイソフォームを検出するためのより特異的な診断ツールを開発する可能性を開く。最後に、異所発現は、転移メラノーマ細胞系の細胞増殖を遅くしたが、これはBCSC−1が転移疾患進行における機能的な役割を有することを示唆する。
【0033】
したがって、本発明は、メラノーマおよび皮膚癌の診断および処置のためならびに治療的に活性な薬物のスクリーニングのためにBCSC−1遺伝子および対応する発現産物を使用することを提唱する。本発明は、種々の被検体、特に成人および子供を含むヒトにおいて使用することができる。
【0034】
定義
本発明に関連して、用語「BCSC−1遺伝子」は、コード配列、非コード配列、転写および/または翻訳をコントロールする調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター等)ならびにすべての対応する発現産物、例えばRNAs(例えば、mRNAs)を含む、細胞または生物におけるすべてのBCSC−1ヌクレオチド配列を表す。用語「遺伝子」は、ゲノムDNA(gDNA)、相補性DNA(cDNA)、合成もしくは半合成DNAを含む任意タイプのコード核酸、ならびに任意の形態の対応するRNAを含むとみなされるべきである。用語遺伝子は、特に組換え核酸、即ち、例えば配列をアセンブリング、切断、ライゲーションまたは増幅することにより人工的に創生された任意の非天然に存在する核酸分子を含む。遺伝子は、一本鎖などの他の形態を意図することができるけれども、典型的には二本鎖である。遺伝子は、種々のソースから得ることができ、そしてDNAライブラリーをスクリーニングすることによりまたは種々の天然のソースからの増幅によるなどの当技術分野で知られている種々の技術に従って得られうる。組換え核酸は、化学合成、遺伝子工学、酵素技術またはその組み合わせを含む慣用の技術により調製されうる。
【0035】
BCSC−1遺伝子配列は、NM_014622およびNM_198315などの遺伝子バンクに見出されうる。エキソン境界が太字で表わされておりそして開始コドンおよび停止コドンが下線を引かれている配列番号14も参照されたい。
【0036】
用語「BCSC−1遺伝子」は、上記した任意のコード配列の任意の変異体、フラグメントまたはアナログを含む。このような変異体は、例えば個体間のアレル変動(例えば多形)、突然変異したアレル、選択的スプライシング形態等による天然に存在する変異体を含む。用語変異体は、他のソースまたは生物からのBCSC−1遺伝子配列も含む。変異体は、好ましくは上記したコード配列と実質的に相同性である、即ち、上記したコード配列と少なくとも約65%、典型的には少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、さらに好ましくは少なくとも約95%のヌクレオチド配列同一性を示す。BCSC−1遺伝子の変異体およびアナログは、典型的にはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下に上記した配列(またはその相補性鎖)にハイブリダイゼーションする核酸配列を含む。
【0037】
典型的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、30℃以上、好ましくは35℃以上、更に好ましくは42℃以上の温度および/または約500mM未満、好ましくは200mM未満の塩度を含む。ハイブリダイゼーション条件は、温度、塩度および/またはSDS、SSCなどの他の試薬の濃度等を改変することにより当業者により調節されうる。
【0038】
BCSC−1遺伝子のフラグメントは、上記した配列の少なくとも約8個の連続したヌクレオチド、好ましくは少なくとも約15、更に好ましくは少なくとも約20のヌクレオチド、更に好ましくは少なくとも30のヌクレオチドの任意の部分を表す。フラグメントは、8〜100のヌクレオチド、好ましくは15〜100ヌクレオチド、更に好ましくは20〜100ヌクレオチドのすべての可能なヌクレオチド長さを含む。
【0039】
選択的スプライシングから生じるBCSC−1遺伝子のいくつかのアイソフォームが存在する。この点で、BCSC−1の長いアイソフォームおよび短いアイソフォームは、それらが保持しているエキソン(の数)に依存して定義されうる。更に詳しくは、BCSC−1ゲノムDNAは、選択的にスプライシングされうる18のエキソンを含む。各エキソンの位置は、配列番号14に示されそして下記の表により要約されており、この表において位置は配列番号14のcDNA配列に関して与えられる。
【0040】
【表1】
【0041】
本発明に関連して、長いBCSC−1アイソフォームは、エキソン13〜18の少なくとも1つのヌクレオチド配列または対応するアミノ酸配列を含むアイソフォームである。短いBCSC−1アイソフォームは、エキソン13〜18のいずれか1つのヌクレオチド配列または対応するアミノ酸配列を含まないアイソフォームである。長いBCSC−1アイソフォームの例は、エキソン1〜13、1〜14、1〜15、1〜16、1〜17または1〜18のヌクレオチド配列または対応するアミノ酸配列を含む。これに関して、長いアイソフォームは、エキソン11〜18のすべてを含有するNM_014622において表わされる。同様に、エキソン8〜16の欠失を含むがエキソン18を含有するAY366504およびAY366507において表されたアイソフォームは、本発明の文脈では、長いアイソフォームである。長いアイソフォームの他の例はAY366508に開示されている。
【0042】
BCSC−1タンパク質は、上記したBCSC−1遺伝子によりコードされている任意のタンパク質またはポリペプチドを表す。用語「ポリペプチド」は、アミノ酸のストレッチを含む任意の分子を指す。この用語は、ペプチドおよびタンパク質などの種々の長さの分子を含む。ポリペプチドは、グリコシル化および/またはアセチル化および/または化学反応またはカップリングなどにより改変され得、そして1つまたは複数の非天然または合成アミノ酸を含有することができる。BCSC−1ポリペプチドの特定の例は、NM_014622またはNM_198315において表された配列のすべてまたは一部を含む(配列番号13参照)。
【0043】
検出/診断
本発明は、今や被検体におけるBCSC−1遺伝子アイソフォームの監視に基づく診断を提供する。本発明に関連して、用語「診断」は、成人または子供における早期段階、前兆段階および後期段階を含む種々の段階での検出、監視、投薬、比較等を含む。診断は、典型的には、予後、発生の素因または危険の評価、最も適切な処置を規定するための被検体の特徴付け(薬理遺伝学)等を含む。
【0044】
本発明の一般的目的は、被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体からのサンプルにおける変化した長いアイソフォームBCSC−1遺伝子発現の存在をインビトロまたはエキソビボで検出し、このような変化した長いアイソフォームBCSC−1遺伝子発現の存在が該被検体における癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法にある。
【0045】
本発明の更なる一般的局面は、被検体における癌、特に充実性癌を検出する方法であって、被検体からのサンプルにおけるBCSC−1の長いアイソフォームを検出し、その減少した発現は癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法である。
【0046】
本発明の特定の目的は、被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体からのサンプルにおける変化したBCSC−1遺伝子発現の存在をインビトロまたはエキソビボで検出し、このような変化したBCSC−1遺伝子発現の存在が該被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法にある。
【0047】
本発明の更なる目的は、被検体からのサンプルを提供する第1工程を含む上記した方法である。
【0048】
処置もしくは薬物に対する応答または処置もしくは薬物に対する副作用を解析しそして予測する診断は、個体が特定の処置薬物により処置されるべきであるかどうかを決定するのに使用されうる。例えば、個体が特定の薬物による処置にポジティブに応答する可能性を診断が示すならば、その薬物を個体に投与することができる。反対に、個体が特定の薬物による処置にネガティブに応答しそうであることを診断が示すならば、別のコースの処置を処方することができる。ネガティブな応答は有効な応答の不存在または毒性副作用の存在として定義されうる。
【0049】
変化したBCSC−1発現は、例えばRNAまたはポリペプチドのレベルで、当技術分野でそれ自体既知の任意の技術により決定されうる。
【0050】
本発明に開示されたとおり、BCSC−1発現は、メラノーマまたは皮膚癌細胞において変化する。更に詳しくは、BCSC−1の発現レベルは、非癌性皮膚細胞または平均値と比較して、メラノーマまたは皮膚癌細胞において減少する。なお更に詳しくは、長いBCSC−1アイソフォームの発現レベルは、非癌性細胞または平均値と比較して、癌細胞において減少する。したがって、好ましい態様においては、本発明の方法は、BCSC−1遺伝子、特にその長いアイソフォームの発現レベルの減少を検出する工程を含む。典型的な態様においては、この方法は、サンプル中のBCSC−1RNAまたはポリペプチド種、特にサンプル中のBCSC−1RNAまたはポリペプチドの長いアイソフォームの(相対的)量を決定する段階と、該量を、参照もしくは平均値またはコントロール組織(例えば、非癌性細胞)において測定した値と比較する工程を含み、より低い値は癌を示す。更なる特定の態様においては、この方法は、それぞれ、長いBCSC−1RNAまたはタンパク質アイソフォーム/短いBCSC−1RNAまたはタンパク質アイソフォームの比を決定することを含み、コントロール/参照値またはサンプルに比較してこのような比の任意の変異は癌の存在を示す。いくつかの長いアイソフォームの(相対的)量を決定することができるけれども、1つのみの長いアイソフォームの量を測定するかまたは1つの長いアイソフォーム/1つの短いアイソフォームの比を決定すれば十分である。このような測定は、例えば対応するプローブもしくはプライマーを使用するエキソン13、14、15、16、17もしくは18の検出または下記するとおりその特異的リガンドを使用するコードされているアミノ酸残基の検出に基づくことができる。
【0051】
更に、本発明は、BCSC−1遺伝子のまたはポリペプチド内の癌関連の構造的変化の検出も包含する。BCSC−1遺伝子またはポリペプチドのこのような変化は、単独のまたは種々の組み合わせにおける、コード領域および/または非コード領域における任意の形態の突然変異、欠失、転位および/または挿入であることができる。更に詳しくは、突然変異は、点突然変異を含む。欠失は、遺伝子のコード部分または非コード部分における2つ以上の残基の任意の領域、例えば2残基から全体の遺伝子までの領域を包含することができる。より大きい欠失も起こりうるけれども、典型的な欠失は、約50未満の連続した塩基対のドメイン(イントロン)または反復配列またはフラグメントなどのより小さい領域に影響を与える。挿入は、遺伝子のコード部分または非コード部分におけ1つまたは複数の残基の付加を包含することができる。挿入は、典型的には、遺伝子における1〜50塩基対の付加を含むことができる。転位は、配列の反転を含む。BCSC−1の構造的変化は、停止コドンの創生、フレームシフト突然変異、アミノ酸置換、特定のRNAスプライシングもしくはプロセシング、産物不安定性、トランケーションされたポリペプチド産生等をもたらすことができる。この変化は、変化した、機能、安定性、ターゲティングまたは構造を伴うBCSC−1ポリペプチドの産生をもたらすことができる。
【0052】
配列決定、ハイブリダイゼーション、増幅および/または特異的リガンド(抗体など)への結合を含む当技術分野で知られている種々の技術を、変化したBCSC−1発現を検出または定量するのに使用することができる。他の適当な方法は、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)、アレル特異的増幅、サザーンブロット(DNAsについて)、ノーザンブロット(RNAsについて)、一本鎖コンフォメーション解析(SSCA)、PFGE、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、ゲル移動、クランプド変性ゲル電気泳動(clamped denaturing gel electrophoresis)、ヘテロ二本鎖解析、RNase保護、化学的ミスマッチ開裂、FLISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫酵素アッセイ(IEMA)を含む。
【0053】
増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)および核酸配列をベースとする増幅(NASBA)によるなどの当技術分野で知られている種々の技術に従って行うことができる。これらの技術は、市販の試薬およびプロトコールを使用して行うことができる。好ましい技術は、アレル特異的PCRまたはPCR−SSCPを使用する。増幅は、通常反応を開始するために特異的核酸プライマーの使用を必要とする。
【0054】
BCSC−1遺伝子またはRNAからの配列を増幅するために有用な核酸プライマーは、BCSC−1遺伝子またはRNAの一部に対して相補性でありそして特異的にハイブリダイゼーションする。BCSC−1遺伝子またはRNAのすべてまたは一部に対して使用されうるプライマーは、BCSC−1自体の配列に基づいてデザインされうる。
【0055】
本発明で使用するための最も好ましいプライマーは、BCSC−1の長いアイソフォームの増幅を可能とする、即ち、BCSC−1遺伝子またはRNAエキキソン13〜18のいずれか1つ内に位置した配列に対して相補性でありそして特異的にハイブリダイゼーションする配列を含有する。
【0056】
これに関して、本発明は、核酸プライマーであって、BCSC−1遺伝子またはRNAのエキソン13〜18のいずれか1つ内に位置した配列に対して相補性でありそして特異的にハイブリダイゼーションする核酸プライマーにも関する。このようなプライマーの使用は、サンプル中のBCSC−1またはRNAの長いアイソフォームの検出を可能とする。
【0057】
本発明の典型的なプライマーは、長さ約5〜60ヌクレオチド、更に好ましくは長さが約8〜約25ヌクレオチドの一本鎖核酸分子である。配列は、BCSC−1遺伝子の配列から直接誘導されうる。高い特異性を確実にするために、完全な相補性が好ましい。しかしながら、あるミスマッチは許容されうる。
【0058】
このようなプライマーの特定の例は、実験の部において表1に開示されている(配列番号1〜12)。
【0059】
本発明は、被検体における癌の存在もしくは癌への素因を検出する方法または癌の処置に対する被検体の応答を評価する方法における上記した核酸プライマーまたは核酸プライマーの対の使用にも関する。
【0060】
他の態様において、検出は選択的ハイブリダイゼーションを使用する技術により行われる。
【0061】
特定の検出技術は、BCSC−1遺伝子またはRNAに対して特異的な核酸プローブの使用、次いでハイブリッドの存在および/または(相対的)量の検出を含む。プローブは、懸濁しているかまたは基材もしくは支持体に固定化される(核酸アレイまたはチップ技術におけるように)ことができる。プローブは、典型的にはハイブリッドの検出を容易にするために標識される。
【0062】
これについて、本発明の特定の態様は、被検体からのサンプルを、BCSC−1の長いアイソフォームに対して特異的な核酸プローブと接触させ、そしてハイブリッドの形成を評価することを含む。特定の態様においては、この方法は、サンプルを、それぞれ、BCSC−1の種々の長いアイソフォームに対して特異的なプローブの組と、同時に接触させることを含む。
【0063】
本発明の状況において、プローブは、BCSC−1遺伝子もしくはRNA(のターゲット部分)に対して相補性でありそしてBCSC−1もしくはRNA(のターゲット部分)と特異的ハイブリダイゼーションすることができそしてサンプル中のその存在もしくはその(相対的)量を検出するために適当なポリヌクレオチド配列を指す。プローブは、好ましくはBCSC−1またはRNAの配列に対して完全に相補性である。プローブは、典型的には、長さが8〜1000ヌクレオチド、例えば10〜800、更に好ましくは15〜700、典型的には20〜500の一本鎖核酸を含む。より長いプローブも使用することができることは理解されるべきである。本発明の好ましいプローブは、BCSC−1遺伝子またはRNAのエキソン13〜18のいずれか1つ内に含有されている領域に特異的にハイブリダイゼーションすることができる長さが8〜500ヌクレオチドの一本鎖核酸分子である。
【0064】
特異性は、ターゲット配列に対するハイブリダイゼーションが、非特異的ハイブリダイゼーションにより発生されるシグナルとは区別されうる特異的シグナルを発生することを示す。完全に相補性の配列は、本発明に従うプローブをデザインするのに好ましい。しかしながら、ある程度のミスマッチは、特異的シグナルが非特異的ハイブリダイゼーションから識別されうる限り許容されうることは理解されるべきである。
【0065】
プローブの配列は、本願で提供されたBCSC−1およびRNAの配列に由来することができる。プローブのヌクレオチド置換および化学的改変を行うことができる。このような化学的改変は、ハイブリッドの安定性を増加させるため(例えば、インターカレーティング基)またはプローブを標識するために行うことができる。標識の典型的な例は、放射能、蛍光、ルミネセンス、酵素標識等を含むがこれらに限定されない。
【0066】
本発明は、被検体における癌の進行の存在、タイプまたは段階を検出する方法または癌処置に対する被検体の応答を評価する方法において上記した核酸プローブの使用にも関する。
【0067】
本発明は、上記したプローブを含む核酸チップにも関する。このようなチップは、当技術分野で知られた技術によりin situでまたはクローンを堆積することにより作成することができ、そして典型的には(ガラス、ポリマー、金属等)スライドなどのマトリックス上にディスプレイされている核酸のアレイを含む。
【0068】
上記したとおり、BCSC−1遺伝子発現の変化は、BCSC−1ポリペプチドの存在または(相対的)量を検出することにより検出することもできる。これに関して、本発明の特定の態様は、サンプル(血液、血漿、血清等などの生物学的流体を含むことができる)を、BCSC−1ポリペプチドに対して特異的なリガンドと接触させそして複合体の形成を決定することを含む。
【0069】
特異的抗体などの異なるタイプのリガンドを使用することができる。特定の態様においては、サンプルをBCSC−1ポリペプチドに対して特異的な抗体と接触させそして免疫複合体の形成が決定される。ELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫酵素アッセイ(IEMA)などの免疫複合体を検出するための種々の方法を使用することができる。
【0070】
本発明の状況において、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体および実質的に同じ抗原特異性を有するその任意のフラグメントまたは誘導体を表す。フラグメントは、Fab、Fab’2、CDR領域等を含む。誘導体は一本鎖抗体、ヒト化抗体、多官能性抗体等を含む。
【0071】
最も好ましいリガンドは、BCSC−1の長いアイソフォームに対して特異的であり、即ち、エキソン13〜18のいずれか1つによりコードされたアミノ酸配列内に含有されたエピトープに結合する。
【0072】
BCSC−1ポリペプチドに対して特異的な抗体は、BCSC−1ポリペプチドに選択的に結合する抗体を表す。更に詳しくは、それはBCSC−1ポリペプチドまたはそのエピトープ含有フラグメントに対して生じた抗体を表す。他の抗原に対する非特異的結合が起こりうるけれども、ターゲットBCSC−1ポリペプチドへの結合がより高いアフィニティーで起こりそして非特異的結合から信頼可能に識別されうる。
【0073】
特定の態様においては、この方法は、被検体からのサンプルをBCSC−1ポリペプチドに対して特異的な抗体(でコーティングされた支持体)と接触させそして免疫複合体の存在を決定することを含む。特定の態様においては、サンプルを、異なるBCSC−1アイソフォームに対して特異的な種々の抗体(でコーティングされた支持体)と、同時にまたは並行してまたは順次に接触させることができる。
【0074】
他の特異的態様においては、本発明は、被検体における癌の存在または癌の素因を検出する方法であって、被検体からのサンプル(血液、血漿、血清等などの生物学的流体を含むことができる)をBCSC−1ポリペプチドの長いアイソフォームに対して特異的なリガンドとインビトロまたはエキソビボで接触させそして形成された複合体の(相対的)量を決定し、このような量は癌の存在または癌への素因を示すことを含む方法に関する。
【0075】
本発明は、被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出する方法または癌処置に対する被検体の応答を評価する方法におけるリガンド、好ましくは抗体、上記したそのフラグメントまたは誘導体の使用にも関する。
【0076】
本発明は、被検体からのサンプルにおいてBCSC−1遺伝子、RNAまたはポリペプチドの存在または(相対的)量を検出するための製品および試薬を含む診断キットにも関する。本発明に従う該診断キットは、本発明に記載された任意のプライマー、任意のプライマーの対、任意の核酸プローブ、および/または任意のリガンド、好ましくは抗体を含む。本発明に従う該診断キットは、更にハイブリダイゼーション、増幅または抗原−抗体免疫反応を行うための試薬および/またはプロトコールを含むことができる。
【0077】
本発明の診断方法は、インビトロ、エキソビボまたはインビボで、好ましくはインビトロまたはエキソビボで行うことができる。それらは、被検体からのサンプルを使用してBCSC−1遺伝子発現の任意の変化を評価する。サンプルは、核酸またはポリペプチドを含有する被検体に由来する任意の生物学的サンプルであることができる。このようなサンプルの例は、流体、組織、細胞サンプル、器官、生検等を含む。最も好ましいサンプルは、組織生検、例えば皮膚癌細胞、組織またはサンプルである。サンプルは、慣用の技術に従って採集され得そして診断のために直接使用されるかまたは貯蔵されうる。サンプルは、試験するための核酸またはポリペプチドの利用性を確実にするかまたは改良するために、本方法を行う前に処理されうる。処理は、例えば、溶解(例えば機械的、物理的、化学的等)、遠心等を含む。また、核酸および/またはポリペプチドは、慣用の技術により予備精製または濃縮されることができおよび/または複雑さを減少させることができる。核酸およびポリペプチドを、酵素、または他の化学的もしくは物理的処理により処理してそのフラグメントを産生させることもできる。特許請求の範囲に記載の方法の高い感度を考慮すると、非常に少量のサンプルがアッセイを行うのに十分である。
【0078】
示されたとおり、サンプルを、好ましくは、プローブ、プライマーまたはリガンドなどの試薬と接触させて、BCSC−1遺伝子またはRNAまたはポリペプチドの存在および/または(相対的)量を評価する。接触は、プレート、チューブ、ウエル、ガラス等などの任意の適当な装置において行うことができる。特定の態様においては、接触は、核酸7アレイもしくは特異的リガンドアレイなどの試薬でコーティングされた基材上で行われる。基材は、固体または半固体基材、例えばガラス、プラスチック、ナイロン、紙、金属、ポリマー等を含む任意の支持体であることができる。基材は、スライド、膜、ビーズ、カラム、ゲル等などの種々の形態およびサイズであることができる。接触は、試薬とサンプルの核酸またはポリペプチド間で複合体が形成されるための適当な条件下になされうる。
【0079】
サンプル中の変化したBCSC−1発現の発見は、メラノーマまたは皮膚癌の進行の存在、タイプまたは段階を示す。変化したBCSC−1発現の存在の決定は、より効果的でかつ特注の適切な治療介入のデザインも可能とする。前兆レベルでのこの決定は、予防治療方式が適用されることを可能とする。
【0080】
薬物スクリーニング
本発明は、薬物候補またはリードのスクリーニングのための新規なターゲットおよび方法も提供する。この方法は、結合アッセイおよび/または機能的アッセイを含み、そしてインビトロ、細胞系、動物等において行うことができる。
【0081】
これに関して、本発明の目的は、メラノーマまたは皮膚癌に対する生物学的に活性な化合物を選択する方法であって、BCSC−1発現または活性を模倣するかまたは刺激する化合物を選択する工程を含む方法にある。
【0082】
本発明の更なる目的は、メラノーマまたは皮膚癌に対する生物学的に活性な化合物を選択する方法であって、試験化合物をレポーター構築物を含む組換え宿主細胞と接触させ、該レポーター構築物はBCSC−1遺伝子プロモーターのコントロール下のレポーター遺伝子を含み、そしてレポーター遺伝子の発現を刺激する試験化合物を選択することを含む方法である。
【0083】
本発明の特定の目的は、メラノーマまたは皮膚癌に対して活性な化合物を選択する方法であって、試験化合物をBCSC−1遺伝子またはポリペプチドとインビトロで接触させ、そしてそれぞれ該試験化合物の該BCSC−1遺伝子またはポリペプチドに結合する能力を決定することを含む方法にある。該遺伝子またはポリペプチドへの結合は、化合物の、前記標的の活性をモデュレーションする能力、従ってメラノーマまたは皮膚癌に導く経路に影響を与える能力に関する指示を与える。好ましくは、BCSC−1ポリペプチドは長いアイソフォームである。
【0084】
結合の決定は、試験化合物の標識、標識された参照リガンドとの競合等によるなどの種々の技術により行うことができる。
【0085】
本発明の更なる目的は、メラノーマまたは皮膚癌に対して活性な化合物を選択する方法であって、試験化合物をBCSC−1ポリペプチドとインビトロで接触させそして該試験化合物の該ポリペプチドの活性をモデュレーションする能力を決定することを含む方法にある。好ましくは、BCSC−1ポリペプチドは長いアイソフォームである。
【0086】
本発明の更なる目的は、生物学的に活性な化合物を選択する方法であって、試験化合物をBCSC−1遺伝子とインビトロで接触させ、そして該試験化合物の該遺伝子の長いアイソフォームの発現をモデュレーションする能力を決定することを含む、方法にある。
【0087】
スクリーニングする特定の態様において、モデュレーションは活性化である。
【0088】
上記スクリーニングアッセイは、プレート、チューブ、ディッシュ、フラスコ等などの任意の適当な装置において行うことができる。典型的には、アッセイをマルチウエルプレートにおいて行う。いくつかの試験化合物を並行してアッセイすることができる。更に、試験化合物は、種々の起源、性質および組成であることができる。それは、単離されているかまたは他の物質との混合物中の任意の有機または無機物質、例えば脂質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、小分子等であることができる。化合物は、例えば、産物のコンビナトリアルライブラリーのすべてまたは一部であることができる。
【0089】
医薬組成物、治療
本発明の更なる目的は、(i)BCSC−1ポリペプチドの長いアイソフォームまたはそれをコードする核酸または、下記するベクターもしくは組換え宿主細胞および(ii)薬学的に許容されうる担体またはビヒクルを含む医薬組成物である。
【0090】
本発明は、被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌を処置する方法であって、該被検体に上記した組成物を投与することを含む、方法にも関する。
【0091】
本発明は、被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌を処置する方法であって、該被検体に有効量のBCSC−1ポリペプチドの長いアイソフォームを投与することを含む、方法にも関する。
【0092】
本発明は、メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬の製造のためのBCSC−1タンパク質またはBCSC−1タンパク質をコードする核酸の使用にも関する。好ましくは、BCSC−1タンパク質は長いアイソフォームである。
【0093】
本発明は、癌を処置するための医薬の製造のための長いBCSC−1タンパク質アイソフォームの使用にも関する。
【0094】
本発明は、メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬組成物の製造のためのBCSC−1アゴニストの使用にも関する。
【0095】
本発明は、メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬組成物の製造のためのBCSC−1遺伝子発現を刺激する化合物の使用を更に包含する。
【0096】
本発明の状況において、用語「処置」は、腫瘍進行の阻害、腫瘍増殖の阻害、腫瘍サイズの減少、腫瘍細胞の腫瘍形成性の抑制、疾患の進行の遅延を含む。
【0097】
皮膚癌は、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、メルケル癌、原発性皮膚リンパ腫(primary cutaneous lymphoma)および皮膚または関連した表面組織の任意の他の細胞増殖疾患から選択されうる。
【0098】
実験の部に示されたとおり、皮膚癌細胞にBCSC−1の長いアイソフォームを供給すると、腫瘍増殖が抑制される。被検体へのこのような機能の供給は、遺伝子もしくはタンパク質治療によりまたはBCSC−1ポリペプチド活性をモデュレーションするかまたは模倣する化合物(例えば、上記スクリーニングアッセイにおいて同定されたアゴニスト)を投与することにより達成されうる。特に、BCSC−1遺伝子は、例えばウイルスベクターまたはプラスミドを使用してそれを必要としている被検体の細胞に導入されうる。アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスを含むレトロウイルスなどの種々のウイルスをベースとするビヒクルを使用することができる。例えば、US Patents 6,069,134および6,143,290は、癌抑制遺伝子を癌性細胞に移行および発現させるためのヒトアデノウイルスの使用を説明する。遺伝子は、裸のDNAとして導入されることもできる。遺伝子は、レシピエント宿主細胞のゲノムに組み込まれるようにまたは染色体外に残るように与えられうる。組み込みは、ランダムにまたは正確に規定された部位で、例えば相同的組み換えにより行うことができる。更に、技術は、遺伝子ガン、リポソーム媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション等を含む。遺伝子治療は、直接遺伝子注入によりまたは機能的BCSC−1タンパク質ポリペプチドを発現するエキソビボで調製された遺伝的に改変された細胞を投与することにより達成されうる。タンパク質治療は、当技術分野でそれ自体既知の技術に従って達成されることもできる。このようなタンパク質治療は、BCSC−1が分泌されたタンパク質であることを考慮すると特に適している。遺伝子治療の目的で、BCSC−1遺伝子の典型的な用量は、104〜109BCSC−1発現ベクター間に含まれる。タンパク質治療の目的で、BCSC−1タンパク質の典型的な用量は、用量当たり1ng〜100mg間に含まれる。一般に、疾患にかかった細胞内の細胞増殖の減少または阻害を達成するために、治療的有効量が投与される。用量は、病態の重篤さ、プロトコール、患者等に基づいて医師により調節されうることは理解されるべきである。
【0099】
BCSC−1タンパク質およびBCSC−1発現ベクターまたは細胞は、経口的、全身的、局所的および非経口的(例えば、皮下に、腹腔内に、血管内に等)を含むがそれらに限定されない種々の方法において投与されうる。1つの態様において、化合物は、腫瘍の部位または付近に(除去された腫瘍の部位に)直接に、例えば術中にまたは腫瘍への直接アクセスを可能とする他の手段(例えばカテーテル)により、適用される。
【0100】
ベクターおよび組換え細胞
本発明の更なる局面は、診断、治療またはスクリーニングにおいて使用するための新規な産物にある。
【0101】
更に詳しくは、本発明の更なる目的は、BCSC−1ポリペプチド、好ましくはその長いアイソフォームをコードする核酸を含むベクターである。このベクターは、クローニングベクター、または更に好ましくは発現ベクター、即ち、コンピテントな宿主細胞において該ベクターからのBCSC−1ポリペプチドの発現を引き起こす調節配列を含むベクターであることができる。
【0102】
これらのベクターは、インビトロ、エキソビボまたはインビボでBCSC−1ポリペプチドを発現するため、トランスジェニックまたは「ノックアウト」非ヒト動物を創生するため、核酸を増幅するため、アンチセンスRNAsを発現するため等に使用されうる。
【0103】
本発明のベクターは、典型的には、調節配列、例えばプロモーター、polyA等に作用可能に連結された(operably linked)本発明に従うBCSC−1コード配列を含む。用語「作用可能に連結された」は、調節配列がコード配列の発現(例えば転写)を引き起こすようにコード配列と調節配列が機能的に関連していることを示す。ベクターは、1つまたは複数の複製起点および/または選択可能なマーカーを更に含むことができる。プロモーター領域は、コード配列に対して同種であるか異種であることができ、そして任意の適切な宿主細胞において、インビボ使用のためを含む、遍在性、構成的、調節されたおよび/または組織特異的発現を与えることができる。プロモーターの例は、バクテリアプロモーター(T7、pTAC、Trpプロモーター等)、ウイルスプロモーター(LTR、TK、CMV−IE等)、哺乳動物遺伝子プロモーター(アルブミン、PGK等)等を含む。
【0104】
ベクターは、プラスミド、ウイルス、コスミド、ファージ、BAC、YAC等であることができる。プラスミドベクターは、pBluescript、pUC、pBR等などの市販のベクターから作成されうる。ウイルスベクターは、当技術分野で知られている組換えDNA技術に従って、バキュロウイルス、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、アデノウイルス、AAVs等から産生されうる。
【0105】
組換えウイルスは、好ましくは複製欠損性であり、なお更に好ましくは、E1欠損および/またはE4欠損アデノウイルス、Gag欠損、pol欠損および/またはenv欠損レトロウイルス、Rep欠損および/またはCap欠損AAVsから選ばれる。このような組換えウイルスは、当技術分野で知られている技術により、例えばパッケージング細胞をトランスフェクションすることによりまたはヘルパープラスミドまたはウイルスによる一過性トランスフェクションにより産生されうる。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例は、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞等を含む。このような複製欠損組換えウイルスを産生するための詳細なプロトコールは、例えばWO95/14785、WO96/22378、US5,882,877、US6,013,516、US4,861,719、US5,278,056、WO94/19478において見出されうる。
【0106】
本発明の更なる目的は、上記した組換えBCSC−1遺伝子またはベクターを含む組換え宿主細胞にある。適当な宿主細胞は、原核細胞(例えばバクテリア)および真核細胞(例えば酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等)を含むが、それらに限定されない。特定の例は、E.coli、KluveromycesもしくはSaccharomyces酵母、哺乳動物細胞系(例えば、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞等)ならびに一次もしくは樹立された哺乳動物細胞培養物(例えば繊維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞等から作製された)を含む。
【0107】
本発明は、本発明に従ってBCSC−1ポリペプチドを発現する組換え宿主細胞を作製するための方法であって、(i)コンピテント宿主細胞に上記した組換え核酸またはベクターをインビトロまたはエキソビボで導入し、(ii)得られた組換え宿主細胞をインビトロまたはエキソビボで培養し、そして(iii)場合により、BCSC−1ポリペプチドを発現する細胞を選択することを含む、方法にも関する。
【0108】
このような組換え宿主細胞は、BCSC−1ポリペプチドの産生のためおよび下記する活性分子のスクリーニングのために使用されうる。このような細胞は皮膚癌研究のためのモデル系としても使用できる。このような細胞は、適当な培養装置(プレート、フラスコ、ディッシュ、チューブ、パウチ等)において、適当な培養培地、例えばDMEM、RPMI、HAM等内に維持することができる。
【0109】
本発明の更なる局面および利点は、下記の実験の部に開示されるであろう。これらは説明しているものとみなされるべきであり、本願の範囲を限定するものではない。
【0110】
実験の部
物質および方法
1.RNA抽出およびcDNA合成
全RNAをメラノーマの異なる段階のメラノーマを有する70人の患者からの凍結させた皮膚組織および正常な母斑組織から単離した。全RNA1μgを使用して、供給者の教示に従ってランダムヘキサマーおよびSupercriptII逆転写酵素(Invitrogen)を使用してcDNAを合成した。
【0111】
2.リアルタイム半定量的RT−PCR
プライマーの異なる組み合わせを使用してBCSC−1の異なるエキソンについてcDNAを増幅した。アンプリコンは、可能な場合にはエキソン境界にわたって設計されそして、配列はBLASTによりヒトゲノムに対してアライメントされて、それらが試験されるべき遺伝子に対して特異的であることを確実にする。使用されたプライマーの配列は、表1に示される。各設計の有効性は、cDNAの逐次希釈により試験された。オリゴヌクレオチドPCR反応(10ul容積)は、希釈されたcDNA、2×SYBR Green Master Mix(Applied Biosystem)、300nMのフォアードプライマーおよびリバースプライマーを含有していた。PCRを、下記のパラメーター:50℃で2分間、95℃で10分間、および40サイクルの95℃15秒−60℃1分、によりSDS7900HT機器(Applied Biosystems)で行った。各反応を384ウエルプレートで6回反復して行った。生のCt値(raw Ct values)はSDS2.2(Applied Biosystems) で得られた。4つの異なるハウスキーピング遺伝子を、GenNormソフトウエアで行われる正規化のために使用した。相対的発現を、正常な組織(良性母斑)における平均発現と比較して腫瘍における発現の比として計算した。
【0112】
下記はBCSC−1研究に使用されたオリゴヌクレオチドである。
【0113】
【表2】
【0114】
3.BCSC−1をコードするレンチウイルスベクターの構築および作製
HAタンパク質配列でタグ付けされたBCSC−1のアイソフォームFの完全なコード配列を、2つの異なるレンチウイルスベクター(D.Trono, EPFL, Epalinges, Switzerlandからの寄贈品)に挿入しそしてPGK IRES NeoおよびPWIR GFPプラスミドから改変した(Naldini et al., 1996; Salmon et al., 2000)。293T細胞系およびHela細胞系を、10%FCSを補充されたダルベッコの改変イーグル培地で培養した。標準プロトコールに従って293T細胞の一過性トランスフェクションにより、組換えレンチウイルスを産生した。簡単に言えば、サブコンフルーエントな(subconfluent)293T細胞を、リン酸カルシウム沈殿により、プラスミドベクター(PGK BCSC Ires Neo/PWIR BCSC GFP)20μg、pCMV−デルタR8.91、15μgおよびpMD2G−VSVG5μgでコトランスフェクションした。16時間後に、培地を変え、そして組換えレンチウイルスベクターを24時間後に回収した。すべての試験FACS、ウエスタンブロットおよび細胞トランスダクションは以前に記載されたのと同様であった(Arrighi et al., 2004)。
【0115】
B−実施例
実施例1−BCSC−1発現が皮膚癌において変化しているということの同定
遺伝子プロファイリング技術DATAS(選択的スプライシングによる転写物のディファレンシャル解析(Differential Analysis of Transcripts with Alternative Splicing)(Schweighoffer et al., 2000))は、2つの条件間でディファレンシャルに発現される選択的にスプライシングされた配列のライブラリーの単離を可能とし、該ライブラリーは次いでアレイを構築するためまたはターゲット遺伝子を単離するために使用されうる。
【0116】
DATASは、2つの異なる集団(良性母斑対転移メラノーマ)からの全RNAを抽出し、次いでメッセンジャーRNAを単離する(Dynabeads oligodT-Dynalを使用して)ことにより達成される。ビオチニル化オリゴヌクレオチドdTを使用してmRNAに対して逆転写を行って、第1鎖cDNAを発生させる。1つの集団からのmRNAと他の集団からのcDNAとのクロスハイブリダイゼーションは、ヘテロ二本鎖(heteroduplex)を生じさせ、これをストレプトアビジンコーティングされたビーズを使用して単離する。RNaseH処置を使用して、ヘテロ二本鎖におけるcDNAにハイブリダイゼーションしないmRNAのループを開放する。選択的にスプライシングされた配列をコードするこれらのmRNAループを5つの縮重プライマーによるRT−PCRに付し、次いでATクローニングベクター(TOPO, Incitrogen)においてPCR産物をクローニングする。すべてのクローンにおけるcDNAインサートは、T7プライマーを使用するPCRにより増幅される。最終の結果は、所与の条件に対して独特の選択的にスプライシングされたmRNA配列のライブラリーである。配列決定の後にDATASクローンをバイオインフォマチック解析に付してそれらの元の遺伝子を同定する。これは、高い正確度でもって、あるタイプのスプライシング事象(エキソンスキッピング、イントロン保持、新規なエキソンの存在、選択的スプライシング部位使用)の解析を可能とする。
【0117】
本発明者等は、良性母斑を提示している健康な患者の集団および転移メラノーマに罹患している患者の集団から得られた組織に関してDATASプロファイリングアッセイを行った。本発明者等は、良性母斑グループからの11人の患者および転移メラノーマグループからの10人の患者を使用して組織に関するDATASライブラリーを構築した。80μgの全RNAのプールが、各集団について利用可能であり、それからmRNA 1.6μgを抽出した:800ngはcDNA合成のために使用されそして800ngはmRNAとして保持された。すべてのRNA組織サンプルの質および量は、Agilant Bioanalyserを使用して決定された。良好な品質の全RNAサンプルのみがDATASのために使用された。
【0118】
総計755のクローンが組織RNAに関するDATASから得られた。クローンの約25%は、状態mRNA転移メラノーマ/cDNA良性母斑から得られ、クローンの残りの75%は状態mRNA良性母斑/cDNA転移メラノーマから得られた。インサートの平均サイズは、300bpと500bpの間にある。配列決定の後に、個々のクローンを前記のとおりにプロセシングしそして解析した。配列決定された755クローンの内、217フラグメントが非重複性でありそして未知の遺伝子配列を含有していた。
【0119】
本発明者等がDATAS解析から得た217クローンから、本発明者等は、潜在的に関心のある性質を有するそれらの約10を選択しそしてメラノーマ細胞性病変からの生検から抽出されたRNAに関するリアルタイム半定量的RT−PCRを行った。この第2スクリーンから、本発明者等は潜在的に興味深い候補としてBCSC−1を同定した。
【0120】
実施例2:BCSC−1発現はメラノーマ患者においてダウンレギュレーションされる
BCSC−1の遺伝子発現を、良性母斑(ネガティブコントロール)および異なる段階の着色した皮膚病変の生検を含む総計70人の患者の生検から抽出されたRNAのリアルタイム半定量的RT−PCRにより決定した。結果は、転移メラノーマを有するすべての患者は、良性母斑サンプルにおけるBCSCの平均発現と比較して有意なより低い発現を有することを示した(図2)。ある転移生検において、BCSCの発現は良性母斑の平均発現の値より20倍低い値に達する。異形母斑の生検は、良性母斑より高いBCSCの発現を示し、そして原発性メラノーマおよびリンパ節からの生検の両方共良性母斑よりも類似したBCSCの発現を示した。
【0121】
実施例3:BCSC−1の長いアイソフォームはメラノーマにおいて選択的にダウンレギュレーションされる
7つの異なるアイソフォームがBCSC−1遺伝子について記載された(図3A参照)。本発明者等は、プライマーの異なる組み合わせを使用してBCSC−1発現の更に特異的な解析を行って、どのアイソフォームがダウンレギュレーションされたかを決定した。結果は、同じタンパク質をコードするより長いアイソフォームcおよびfが、メラノーマ患者において選択的にダウンレギュレーションされることを示した(図3B)。
【0122】
実施例4:BCSC−1発現は、メラノーマ患者およびメラノーマ細胞系においてダウンレギュレーションされる
先の結果を確かめるために、皮膚病変からの生検のより大きいコホートにおいて新たなリアルタイムPCR実験を行った。先の結果と一致して、転移病変を有するすべての患者は、健康なドナーにおける平均発現と比較してBCSC−1のより低い発現を有していた(図4A)。
更に、メラノーマ細胞のいくつかの細胞系を、BCSC−1の発現について試験した(図4B)。結果は、すべてのメラノーマ細胞系が健康なドナーより有意に低い発現を有することを示した。SK−Mel23(L1)などのいくらかの細胞系において、BCSC−1の発現は検出できず、そして試験された原発性メラノーマの2つの細胞系のみが良性母斑よりも類似したBCSC−1の発現を示す。
【0123】
実施例5:BCSC−1の異所発現は、メラノーマ細胞増殖を減少させる
PGK BCSC Ires NeoまたはPWIR BCSC GFPベクターを使用してSK−Mel23およびHela細胞をトランスダクションしてBCSC−1の発現を誘導した。更に、対応する空のベクターでトランスダクションされた細胞をネガティブコントロールとして使用した。
【0124】
結果は、メラノーマ細胞系SK−Mel23におけるBCSC−1の異所発現は、細胞の増殖を顕著に減少させることを示した(図5)。BCSC−1の発現は、抗HA抗体を使用してウエスタンブロットおよびリアルタイムPCR(図6)により確かめた。BCSC−1の異所発現のこの効果はHelaなどの他の非メラノーマ細胞系においては観察されなかった。
【0125】
実施例6:BCSC−1の異所発現は、メラノーマ細胞増殖を妨害する
メラノーマ細胞系をレンチベクターでトランスダクションしてBCSC−1遺伝子の長いアイソフォーム(Iso F)の異所発現を誘導した。図7に示された結果は、トランスダクションされた転移メラノーマ細胞MewoおよびSK23(図7A)および原発性メラノーマ細胞Me257(図7B)は、ネガティブコントロールおよび空のベクターまたはBCSC−1の短いアイソフォーム(Iso A)でトランスダクションされた細胞と比較して増殖を停止または顕著に減少させることを示す。この効果は、空のベクターまたはBCSC−1の短いアイソフォームでトランスダクションされた細胞においては観察されなかった。
【0126】
実施例7:BCSC−1は、細胞サイクルのG2−M相においてメラノーマ細胞を妨害する
本発明者等は、BCSC−1の抗増殖効果は、トランスダクションされた細胞の細胞サイクルの妨害によるものでありうるかどうかを調べた。BrdUおよび7−AAD染色を使用して、本発明者等は、細胞サイクルのG0/G1(R3)、S(R4)、G2−M(R5)相における細胞の百分率およびアポトーシス細胞(R6)の百分率を決定することができた。FACSプロフィルは、図8Aに示されそして百分率値は図8Bに示される。結果は、BCSC−1の長いアイソフォーム(iso F)でトランスダクションされた細胞はG2−M相において妨害することを示す。この効果は、トランスダクションされていない細胞および空のベクターまたはBCSC−1の短いアイソフォーム(iso A)でトランスダクションされた細胞においては観察されず、その場合に細胞は細胞サイクルのG0/G1およびS相に主として分布している。
【0127】
実施例8:BCSC−1をコードするHelaは、細胞サイクルのG2およびM相において阻止される
本発明者等は、DAPIおよびチューブリン抗体による免疫蛍光染色を行って、G2−Mのどの段階でBCSC−1の異所発現により誘導される細胞サイクルの妨害が生じるかを決定した。本発明者等は、トランスダクションされていない細胞または空のベクターもしくはBCSC−1の短いアイソフォームでトランスダクションされた細胞において、クロマチンの凝縮を伴うおよび有糸分裂の異なる相にある細胞の高い百分率の存在を観察した(図9A)。しかしながら、本発明者等は、細胞がBCSC−1の長いアイソフォームでトランスダクションされたとき有糸分裂における細胞を観察しなかった(図9B)。本発明者等は、BCSC−1の異所発現が細胞サイクルのG2およびM相の間で妨害を誘導し、細胞における有糸分裂を回避すると結論付けることができる。
【0128】
実施例9:BCSC−1は転移メラノーマのマウスモデルにおいて肺転移の数を減少させる
BCSC−1のインビボ効果を調べるために、本発明者等は、空のベクターまたは長いアイソフォームBCSC−1ベクター(104〜107細胞について約500ngのウイルス粒子)でトランスダクションされたB16メラノーマ細胞を静脈内に注入した。15日後、これらの細胞は、肺において転移を生じ、そして転移は数えることができる(図10A)。空のベクターでトランスダクションされたB16を注入されたマウス(n=10)または長いBCSC−1ベクターでトランスダクションされたB16を注入されたマウス(n=6)からの肺による転移の数は図10Bに示される。本発明者等は、空のトランスダクションされた細胞を注入されたマウスと比較して、BCSC−1でトランスダクションされた細胞を注入されたマウスにおける肺転移の数の減少を観察した。
【0129】
BCSC−1のタンパク質配列(配列番号13)
【表3】
BCSC−1のcDNA配列(NM 014622)−配列番号14
【表4】
【0130】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】着色した皮膚病変の進行モデルを示す。
【図2】BCSC−1発現はメラノーマ患者においてダウンレギュレーションされる。良性母斑またはメラノーマ皮膚病変を有する患者からの皮膚生検におけるBCSC−1遺伝子のリアルタイムPCRによるRNA発現。ゼロ値は、良性母斑を有する患者(健康なドナー)におけるこの遺伝子の平均発現を表す。転移メラノーマを有するすべての患者は、健康なドナーの平均発現値と比較してより低い発現(20倍以下低い)を示す。
【図3A】BCSC−1の長いアイソフォームは、メラノーマ患者において選択的にダウンレギュレーションされる。BCSC−1遺伝子のいくつかのアイソフォームが記載されている。異なるエキソンのリアルタイムPCR解析は、長いアイソフォームに専ら存在するエキソン(エキソン13〜18)は、メラノーマ患者において減少したエキソンであることを示す。
【図3B】BCSC−1の長いアイソフォームは、メラノーマ患者において選択的にダウンレギュレーションされる。BCSC−1遺伝子のいくつかのアイソフォームが記載されている。異なるエキソンのリアルタイムPCR解析は、長いアイソフォームに専ら存在するエキソン(エキソン13〜18)は、メラノーマ患者において減少したエキソンであることを示す。
【図4A】BCSC−1発現は、メラノーマ患者およびメラノーマ細胞系においてダウンレギュレーションされる。結果は、患者のより大きいコホートにおいておよびメラノーマ細胞系においても確かめられた。BCSC−1遺伝子のより長いアイソフォームの発現はメラノーマ患者およびメラノーマ細胞系において顕著に減少する。
【図4B】BCSC−1発現は、メラノーマ患者およびメラノーマ細胞系においてダウンレギュレーションされる。結果は、患者のより大きいコホートにおいておよびメラノーマ細胞系においても確かめられた。BCSC−1遺伝子のより長いアイソフォームの発現はメラノーマ患者およびメラノーマ細胞系において顕著に減少する。
【図5】BCSC−1の異所発現は、メラノーマ細胞増殖を減少させる。メラノーマ細胞系は、BCSC−1をコードするレンチベクターでトランスダクションされた。BCSC−1を発現するメラノーマ細胞は、ネガティブコントロールと比較してそれらの増殖を停止するかまたは顕著に減少させる。この効果は、やはりBCSCベクターでトランスダクションされた非メラノーマ細胞系(Hela)においては観察されない。
【図6】BCSC−1の異所発現は、ウエスタンブロットおよびリアルタイムPCRにより確認される。(左)BCSC−1タンパク質の産生は、12日目に、BCSC−1をコードするレンチウイルスベクターの増加する用量(2および20μl)でトランスダクションされたSK−Mel23細胞において抗HA抗体を使用するウエスタンブロットにより確認されるが、空のベクター(C−)でトランスダクションされた細胞においては確認されない。BCSC−1の長いアイソフォームおよび短いアイソフォームの両ベクターでトランスフェクションされた293T細胞をポジティブコントロールとして使用して、やはり抗HA抗体によりBCSC−1を検出する。(右)リアルタイムPCRは、SK−Mel23細胞が、トランスダクションの前およびそれらが空のベクターでトランスダクションされるとき8日目に、BCSC−1の検出可能なレベルを発現しないことを示した。しかしながら、BCSC−1ベクターでトランスダクションされたSK−Mel23細胞は高いレベルのBCSC−1mRNAを発現する。
【図7】BCSC−1の異所発現はメラノーマ細胞系増殖を妨害する。
【図8】BCSC−1は、細胞サイクルのG2−M相においてメラノーマ細胞を妨害する。
【図9】BCSC−1をコードするHelaは、細胞サイクルのG2およびM相において阻止される。A)BCSC−1の短いアイソフォームでトランスダクションされたHela細胞;B)BCSC−1の長いアイソフォームでトランスダクションされたHela細胞。
【図10】BCSC−1は、転移メラノーマのマウスモデルにおいて肺転移の数を減少させる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラノーマおよび皮膚癌の検出および処置のための方法および組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、メラノーマおよび皮膚癌細胞においてBCSC−1発現が変化しており、これがこのような状態(conditions)のための検出方法およびキットのデザインを可能とする、ということを開示する。本発明は、メラノーマおよび皮膚癌細胞におけるBCSC−1の回復または増加する発現は、腫瘍形成性(tumorigenicity)を抑制しそしてメラノーマおよび皮膚癌の処置のための新規なかつ有効なアプローチを表すことも示す。本発明は、メラノーマおよび皮膚癌の存在、段階またはタイプを検出するたためならびにそれらへのいかなる素因も検出するために使用されうる。本発明は、任意の哺乳動物被検体、特にヒト被検体において使用されうる。
【0002】
メラノーマは、広範囲に及ぶ転移疾患を引き起こす傾向を有する進行性癌である。診断は早期の段階で必須である。何故ならば、今日まで唯一の成功する処置は、まだ皮膚に制限されているときに腫瘍を切除することであるからである。都合の悪いことに、メラノーマは、慣用の化学療法に対して大いに抵抗性であり、そして転移メラノーマに対する新規な処置が緊急に必要とされる。
【0003】
着色した皮膚病変(pigmented skin lesions)およびメラノーマの遺伝子発現プロファイリングを研究するために、良性の母斑および転移メラノーマの選択的スプライシングの全体的解析を、DATAS技術を使用して研究した。良性母斑と転移メラノーマ間の217のディファレンシャルに発現されたクローンを含む良性母斑〜転移メラノーマのためのDATASライブラリーをこの方法により発生させた。アポトーシス、細胞サイクル、代謝等におけるそれらの関与に基づいてメラノーマ進行に関与することができるいくつかのクローンがリアルタイムPCRによりスクリーニングされた。これらの遺伝子の中でも、本発明者等は、BCSC−1(Martin et al. PNAS 2003)が転移メラノーマを有する患者において一貫してダウンレギュレーシヨンされることを確認した。
【0004】
本発明者等は、更に良性母斑、異形母斑(atypical nevus)、原発性メラノーマ(primary melanoma)または転移メラノーマを有する患者からの70の皮膚生検のコホートにおいてリアルタイムPCRによりBCSC−1の発現を調査した。結果は、BCSC−1発現が健康なドナーと比較してすべてのメラノーマ患者において減少することを示した。これらの結果は、解析されたメラノーマ細胞系およびすべてのメラノーマ患者において確かめられた。
【0005】
重要なことに、BCSC−1遺伝子がメラノーマ細胞系において異所性に(ectopically)発現されたとき、メラノーマ細胞は、増殖を停止しそしてアポトーシスを受けた。これらの細胞におけるBCSCタンパク質の発現はウエスタンブロットにより確かめられた。
【0006】
更に、本発明者等は、インビボ(in vivo)注入されると、BCSC−1は転移メラノーマのマウスモデルにおける肺転移の数を減少させることも示した。
【0007】
結論として、本発明は、BCSC−1が皮膚癌においてダウンレギュレーションされることおよび該癌細胞におけるBCSC−1発現の誘導が腫瘍進行の阻害をもたらすことを示す。これらのデータは、BCSC−1がメラノーマおよび皮膚癌の病原において極めて重大な役割を演じそして新規な予後マーカーおよびメラノーマおよび皮膚癌のための薬物開発のための価値あるターゲットを表すことを示す。
【0008】
本発明の第1の目的は、被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体からのサンプルにおける変化したBCSC−1遺伝子発現の存在をインビトロ(in vitro)またはエキソビボ(ex vivo)で検出し、このような変化したBCSC−1遺伝子発現の存在は該被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法にある。
【0009】
この方法の特定の態様に従えば、変化した発現は、上記サンプルにおけるBCSC−1遺伝子の減少した発現、なお更に好ましくは該サンプルにおけるBCSC−1遺伝子の長いアイソフォームの減少した発現である。
【0010】
本発明の他の目的は、被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体からのサンプルにおけるBCSC−1遺伝子またはタンパク質の長いアイソフォームの(相対的)量をインビトロまたはエキソビボで決定し、このような量が該被検体における癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法にある。特定の態様においては、決定された量を、コントロールもしくは平均値と比較するかまたはコントロールサンプルにおいて測定された値と比較する。他の態様においては、BCSC−1の長いアイソフォーム/BCSC−1の短いアイソフォームの比が決定され、そしてこのような比の任意の減少は、このような癌の存在を示す。このような方法は、任意の癌、特に充実性癌(solid cancers)を検出するのに使用されうる。
【0011】
これについて、本発明の他の目的は、被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、BCSC−1の長いアイソフォーム/BCSC−1の短いアイソフォームの比をインビトロまたはエキソビボで決定し、コントロールの状態または参照もしくは平均値と比較してこのような比の減少が、このような癌の存在を示すことを含む方法にある。このような方法は、任意の癌、特に充実性癌を検出するのに使用されうる。
【0012】
本発明の他の目的は、被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体に由来する流体サンプルにおけるBCSC−1タンパク質の(相対的)量をインビトロまたはエキソビボで決定し、このような量は該被検体における癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法にある。典型的には、BCSC−1タンパク質の長いアイソフォームの(相対的)量を決定し、コントロールもしくは参照値と比較してこのような量の減少は癌の存在を示す。典型的な態様においては、流体サンプルは、全血、血清、血漿、尿等に由来する(例えば希釈、濃縮、精製、分離等により)。このような方法は、任意の癌、特に充実性癌を検出するのに使用されうる。
【0013】
本発明の更なる目的は、被検体におけるメラノーマおよび皮膚癌の処置の有効性を評価する方法であって、該処置の前および後の被検体からのサンプルにおけるBCSC−1遺伝子発現を比較し(インビトロまたはエキソビボ)、増加した発現は処置に対するポジティブな応答を示すことを含む方法にある。
【0014】
本発明は、メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬の製造のためのBCSC−1タンパク質またはBCSC−1タンパク質をコードする核酸の使用、および対応する処置方法にも関する。
【0015】
本発明は、メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬組成物の製造のためのBCSC−1アゴニストの使用、および対応する処置方法にも関する。
【0016】
本発明の更なる局面は、メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬組成物の製造のためのBCSC−1遺伝子発現を刺激する化合物の使用、および対応する処置方法にある。
【0017】
本発明は、メラノーマまたは皮膚癌を処置することを必要としている被検体においてメラノーマまたは皮膚癌を処置する方法であって、有効量の上記した化合物を該被検体に投与することを含む方法にもある。好ましい態様においては、被検体は、変化したBCSC−1遺伝子発現を有する。
【0018】
本発明は、更にメラノーマまたは皮膚癌に対する生物学的に活性な化合物を選択する方法であって、BCSC−1発現または活性を模倣するか(mimic)または刺激する化合物を選択する工程を含む方法に関する。
【0019】
特定の態様においては、前記方法は、試験化合物を、レポーター構築物を含む組換え宿主細胞と接触させ、該レポーター構築物はBCSC−1遺伝子プロモーターのコントロール下のレポーター遺伝子を含んでおり、そしてレポーター遺伝子の発現を刺激する試験化合物を選択することを含む。
【0020】
皮膚癌は、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、メルケル癌(Merkel carcinoma)、原発性皮膚リンパ腫、および皮膚または関連した表面組織の任意の他の細胞増殖疾患から選ばれうる。
【0021】
BCSC−1遺伝子発現は、配列決定、選択的ハイブリダイゼーション、選択的増幅および/または特異的リガンド結合によるなどの当技術分野でそれ自体既知の任意の技術により検出されうる。特定の態様においては、本発明は、BCSC−1の長いアイソフォームの検出、または長いアイソフォームと短いアイソフォームの識別または長いアイソフォーム/短いアイソフォームの比の測定を可能とする試薬および/または技術を使用する。
【0022】
本発明の更なる局面は、BCSC−1の長いアイソフォームの(特異的)増幅を可能とするかまたは長いアイソフォームと短いアイソフォームを識別することを可能とする核酸プライマーにある。
【0023】
本発明の更なる局面は、BCSC−1の長いアイソフォームに(特異的に)ハイブリダイゼーションするかまたは長いアイソフォームと短いアイソフォームを識別することを可能とする核酸プローブにある。
【0024】
本発明の更なる局面は、BCSC−1タンパク質の長いアイソフォームに(特異的に)結合するかまたは長いアイソフォームと短いアイソフォームを識別することを可能とする抗体(その誘導体およびハイブリドーマを産生する誘導体を含む)にある。
【0025】
本発明は、更に、上記したプライマー、プローブまたは抗体を含むキットに関する。このようなキットは、容器または支持体、および/または増幅、ハイブリダイゼーションもしくは結合反応を行うための試薬を含むことができる。
【0026】
本発明の特定の局面は、BCSC−1の少なくとも1つの長いアイソフォームを特異的に検出するようにデザインされる、プライマー、プローブおよび/または抗体を含む物質の組成物にある。
【0027】
発明の詳細な説明
メラノーマの発生は増加している。それは広範囲に及び疾患を引き起こす傾向を有する進行性の癌である。全体的な遺伝子発現の研究に基づく新規な方法が、メラノーマ発癌性の基礎をなす事象を理解するために必要である。
【0028】
図1に開示されたとおり、良性母斑(左)、形成異常母斑(dysplastic naevus)(中心)および悪性メラノーマ(右)間の移行を、形態学技術を使用して解析することができる。しかしながら、これらの移行を支配する分子事象については部分的にしか理解されていない。
【0029】
良性母斑とメラノーマ間の移行を支配する分子事象を同定するために、本発明者等は、DATS(選択的スプライシングによる転写物のディファレンシャル解析)と呼ばれる遺伝子プロファイリング技術を使用して着色したメラノーマにおける選択的スプライシングを研究することを選んだ。この全体的な遺伝子発現解析によって、本発明者等は、腫瘍関連スプライシング事象から生じる新規な配列を導いた。良性母斑(ネガティブコントロール)および異なる段階の着色した皮膚病変の生検を含む総計70人の患者の生検から抽出されたRNAのリアルタイム半定量的RT−PCRを使用して、本発明者等は、転移疾患を有する患者からのBCSC−1は選択的にダウンレギュレーションされることを示すことができた。
【0030】
更に、本発明者等は、BCSC−1の長いアイソフォームは、メラノーマにおいて選択的にダウンレギュレーションされ、一方短いアイソフォームは実質的に影響を受けないということを確かめることができた。
【0031】
更に、メラノーマ細胞系においてHAでタグ付けされたBCSC−1をコードするレンチウイルスベクターからの異所発現は、これらの細胞の増殖の強い減少を誘導した。
【0032】
総合すると、本発明者等の結果は、メラノーマおよび皮膚癌において選択的にダウンレギュレーションされる新規な遺伝子(BCSC−1)を同定する。この遺伝子の選択された「長い」アイソフォーム(c.f)のみが転移メラノーマにおいてダウンレギュレーションされたが、「短い」アイソフォームは影響を受けず、転移腫瘍における紛失しているアイソフォームを検出するためのより特異的な診断ツールを開発する可能性を開く。最後に、異所発現は、転移メラノーマ細胞系の細胞増殖を遅くしたが、これはBCSC−1が転移疾患進行における機能的な役割を有することを示唆する。
【0033】
したがって、本発明は、メラノーマおよび皮膚癌の診断および処置のためならびに治療的に活性な薬物のスクリーニングのためにBCSC−1遺伝子および対応する発現産物を使用することを提唱する。本発明は、種々の被検体、特に成人および子供を含むヒトにおいて使用することができる。
【0034】
定義
本発明に関連して、用語「BCSC−1遺伝子」は、コード配列、非コード配列、転写および/または翻訳をコントロールする調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター等)ならびにすべての対応する発現産物、例えばRNAs(例えば、mRNAs)を含む、細胞または生物におけるすべてのBCSC−1ヌクレオチド配列を表す。用語「遺伝子」は、ゲノムDNA(gDNA)、相補性DNA(cDNA)、合成もしくは半合成DNAを含む任意タイプのコード核酸、ならびに任意の形態の対応するRNAを含むとみなされるべきである。用語遺伝子は、特に組換え核酸、即ち、例えば配列をアセンブリング、切断、ライゲーションまたは増幅することにより人工的に創生された任意の非天然に存在する核酸分子を含む。遺伝子は、一本鎖などの他の形態を意図することができるけれども、典型的には二本鎖である。遺伝子は、種々のソースから得ることができ、そしてDNAライブラリーをスクリーニングすることによりまたは種々の天然のソースからの増幅によるなどの当技術分野で知られている種々の技術に従って得られうる。組換え核酸は、化学合成、遺伝子工学、酵素技術またはその組み合わせを含む慣用の技術により調製されうる。
【0035】
BCSC−1遺伝子配列は、NM_014622およびNM_198315などの遺伝子バンクに見出されうる。エキソン境界が太字で表わされておりそして開始コドンおよび停止コドンが下線を引かれている配列番号14も参照されたい。
【0036】
用語「BCSC−1遺伝子」は、上記した任意のコード配列の任意の変異体、フラグメントまたはアナログを含む。このような変異体は、例えば個体間のアレル変動(例えば多形)、突然変異したアレル、選択的スプライシング形態等による天然に存在する変異体を含む。用語変異体は、他のソースまたは生物からのBCSC−1遺伝子配列も含む。変異体は、好ましくは上記したコード配列と実質的に相同性である、即ち、上記したコード配列と少なくとも約65%、典型的には少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、さらに好ましくは少なくとも約95%のヌクレオチド配列同一性を示す。BCSC−1遺伝子の変異体およびアナログは、典型的にはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下に上記した配列(またはその相補性鎖)にハイブリダイゼーションする核酸配列を含む。
【0037】
典型的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、30℃以上、好ましくは35℃以上、更に好ましくは42℃以上の温度および/または約500mM未満、好ましくは200mM未満の塩度を含む。ハイブリダイゼーション条件は、温度、塩度および/またはSDS、SSCなどの他の試薬の濃度等を改変することにより当業者により調節されうる。
【0038】
BCSC−1遺伝子のフラグメントは、上記した配列の少なくとも約8個の連続したヌクレオチド、好ましくは少なくとも約15、更に好ましくは少なくとも約20のヌクレオチド、更に好ましくは少なくとも30のヌクレオチドの任意の部分を表す。フラグメントは、8〜100のヌクレオチド、好ましくは15〜100ヌクレオチド、更に好ましくは20〜100ヌクレオチドのすべての可能なヌクレオチド長さを含む。
【0039】
選択的スプライシングから生じるBCSC−1遺伝子のいくつかのアイソフォームが存在する。この点で、BCSC−1の長いアイソフォームおよび短いアイソフォームは、それらが保持しているエキソン(の数)に依存して定義されうる。更に詳しくは、BCSC−1ゲノムDNAは、選択的にスプライシングされうる18のエキソンを含む。各エキソンの位置は、配列番号14に示されそして下記の表により要約されており、この表において位置は配列番号14のcDNA配列に関して与えられる。
【0040】
【表1】
【0041】
本発明に関連して、長いBCSC−1アイソフォームは、エキソン13〜18の少なくとも1つのヌクレオチド配列または対応するアミノ酸配列を含むアイソフォームである。短いBCSC−1アイソフォームは、エキソン13〜18のいずれか1つのヌクレオチド配列または対応するアミノ酸配列を含まないアイソフォームである。長いBCSC−1アイソフォームの例は、エキソン1〜13、1〜14、1〜15、1〜16、1〜17または1〜18のヌクレオチド配列または対応するアミノ酸配列を含む。これに関して、長いアイソフォームは、エキソン11〜18のすべてを含有するNM_014622において表わされる。同様に、エキソン8〜16の欠失を含むがエキソン18を含有するAY366504およびAY366507において表されたアイソフォームは、本発明の文脈では、長いアイソフォームである。長いアイソフォームの他の例はAY366508に開示されている。
【0042】
BCSC−1タンパク質は、上記したBCSC−1遺伝子によりコードされている任意のタンパク質またはポリペプチドを表す。用語「ポリペプチド」は、アミノ酸のストレッチを含む任意の分子を指す。この用語は、ペプチドおよびタンパク質などの種々の長さの分子を含む。ポリペプチドは、グリコシル化および/またはアセチル化および/または化学反応またはカップリングなどにより改変され得、そして1つまたは複数の非天然または合成アミノ酸を含有することができる。BCSC−1ポリペプチドの特定の例は、NM_014622またはNM_198315において表された配列のすべてまたは一部を含む(配列番号13参照)。
【0043】
検出/診断
本発明は、今や被検体におけるBCSC−1遺伝子アイソフォームの監視に基づく診断を提供する。本発明に関連して、用語「診断」は、成人または子供における早期段階、前兆段階および後期段階を含む種々の段階での検出、監視、投薬、比較等を含む。診断は、典型的には、予後、発生の素因または危険の評価、最も適切な処置を規定するための被検体の特徴付け(薬理遺伝学)等を含む。
【0044】
本発明の一般的目的は、被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体からのサンプルにおける変化した長いアイソフォームBCSC−1遺伝子発現の存在をインビトロまたはエキソビボで検出し、このような変化した長いアイソフォームBCSC−1遺伝子発現の存在が該被検体における癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法にある。
【0045】
本発明の更なる一般的局面は、被検体における癌、特に充実性癌を検出する方法であって、被検体からのサンプルにおけるBCSC−1の長いアイソフォームを検出し、その減少した発現は癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法である。
【0046】
本発明の特定の目的は、被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体からのサンプルにおける変化したBCSC−1遺伝子発現の存在をインビトロまたはエキソビボで検出し、このような変化したBCSC−1遺伝子発現の存在が該被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法にある。
【0047】
本発明の更なる目的は、被検体からのサンプルを提供する第1工程を含む上記した方法である。
【0048】
処置もしくは薬物に対する応答または処置もしくは薬物に対する副作用を解析しそして予測する診断は、個体が特定の処置薬物により処置されるべきであるかどうかを決定するのに使用されうる。例えば、個体が特定の薬物による処置にポジティブに応答する可能性を診断が示すならば、その薬物を個体に投与することができる。反対に、個体が特定の薬物による処置にネガティブに応答しそうであることを診断が示すならば、別のコースの処置を処方することができる。ネガティブな応答は有効な応答の不存在または毒性副作用の存在として定義されうる。
【0049】
変化したBCSC−1発現は、例えばRNAまたはポリペプチドのレベルで、当技術分野でそれ自体既知の任意の技術により決定されうる。
【0050】
本発明に開示されたとおり、BCSC−1発現は、メラノーマまたは皮膚癌細胞において変化する。更に詳しくは、BCSC−1の発現レベルは、非癌性皮膚細胞または平均値と比較して、メラノーマまたは皮膚癌細胞において減少する。なお更に詳しくは、長いBCSC−1アイソフォームの発現レベルは、非癌性細胞または平均値と比較して、癌細胞において減少する。したがって、好ましい態様においては、本発明の方法は、BCSC−1遺伝子、特にその長いアイソフォームの発現レベルの減少を検出する工程を含む。典型的な態様においては、この方法は、サンプル中のBCSC−1RNAまたはポリペプチド種、特にサンプル中のBCSC−1RNAまたはポリペプチドの長いアイソフォームの(相対的)量を決定する段階と、該量を、参照もしくは平均値またはコントロール組織(例えば、非癌性細胞)において測定した値と比較する工程を含み、より低い値は癌を示す。更なる特定の態様においては、この方法は、それぞれ、長いBCSC−1RNAまたはタンパク質アイソフォーム/短いBCSC−1RNAまたはタンパク質アイソフォームの比を決定することを含み、コントロール/参照値またはサンプルに比較してこのような比の任意の変異は癌の存在を示す。いくつかの長いアイソフォームの(相対的)量を決定することができるけれども、1つのみの長いアイソフォームの量を測定するかまたは1つの長いアイソフォーム/1つの短いアイソフォームの比を決定すれば十分である。このような測定は、例えば対応するプローブもしくはプライマーを使用するエキソン13、14、15、16、17もしくは18の検出または下記するとおりその特異的リガンドを使用するコードされているアミノ酸残基の検出に基づくことができる。
【0051】
更に、本発明は、BCSC−1遺伝子のまたはポリペプチド内の癌関連の構造的変化の検出も包含する。BCSC−1遺伝子またはポリペプチドのこのような変化は、単独のまたは種々の組み合わせにおける、コード領域および/または非コード領域における任意の形態の突然変異、欠失、転位および/または挿入であることができる。更に詳しくは、突然変異は、点突然変異を含む。欠失は、遺伝子のコード部分または非コード部分における2つ以上の残基の任意の領域、例えば2残基から全体の遺伝子までの領域を包含することができる。より大きい欠失も起こりうるけれども、典型的な欠失は、約50未満の連続した塩基対のドメイン(イントロン)または反復配列またはフラグメントなどのより小さい領域に影響を与える。挿入は、遺伝子のコード部分または非コード部分におけ1つまたは複数の残基の付加を包含することができる。挿入は、典型的には、遺伝子における1〜50塩基対の付加を含むことができる。転位は、配列の反転を含む。BCSC−1の構造的変化は、停止コドンの創生、フレームシフト突然変異、アミノ酸置換、特定のRNAスプライシングもしくはプロセシング、産物不安定性、トランケーションされたポリペプチド産生等をもたらすことができる。この変化は、変化した、機能、安定性、ターゲティングまたは構造を伴うBCSC−1ポリペプチドの産生をもたらすことができる。
【0052】
配列決定、ハイブリダイゼーション、増幅および/または特異的リガンド(抗体など)への結合を含む当技術分野で知られている種々の技術を、変化したBCSC−1発現を検出または定量するのに使用することができる。他の適当な方法は、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)、アレル特異的増幅、サザーンブロット(DNAsについて)、ノーザンブロット(RNAsについて)、一本鎖コンフォメーション解析(SSCA)、PFGE、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、ゲル移動、クランプド変性ゲル電気泳動(clamped denaturing gel electrophoresis)、ヘテロ二本鎖解析、RNase保護、化学的ミスマッチ開裂、FLISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫酵素アッセイ(IEMA)を含む。
【0053】
増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)および核酸配列をベースとする増幅(NASBA)によるなどの当技術分野で知られている種々の技術に従って行うことができる。これらの技術は、市販の試薬およびプロトコールを使用して行うことができる。好ましい技術は、アレル特異的PCRまたはPCR−SSCPを使用する。増幅は、通常反応を開始するために特異的核酸プライマーの使用を必要とする。
【0054】
BCSC−1遺伝子またはRNAからの配列を増幅するために有用な核酸プライマーは、BCSC−1遺伝子またはRNAの一部に対して相補性でありそして特異的にハイブリダイゼーションする。BCSC−1遺伝子またはRNAのすべてまたは一部に対して使用されうるプライマーは、BCSC−1自体の配列に基づいてデザインされうる。
【0055】
本発明で使用するための最も好ましいプライマーは、BCSC−1の長いアイソフォームの増幅を可能とする、即ち、BCSC−1遺伝子またはRNAエキキソン13〜18のいずれか1つ内に位置した配列に対して相補性でありそして特異的にハイブリダイゼーションする配列を含有する。
【0056】
これに関して、本発明は、核酸プライマーであって、BCSC−1遺伝子またはRNAのエキソン13〜18のいずれか1つ内に位置した配列に対して相補性でありそして特異的にハイブリダイゼーションする核酸プライマーにも関する。このようなプライマーの使用は、サンプル中のBCSC−1またはRNAの長いアイソフォームの検出を可能とする。
【0057】
本発明の典型的なプライマーは、長さ約5〜60ヌクレオチド、更に好ましくは長さが約8〜約25ヌクレオチドの一本鎖核酸分子である。配列は、BCSC−1遺伝子の配列から直接誘導されうる。高い特異性を確実にするために、完全な相補性が好ましい。しかしながら、あるミスマッチは許容されうる。
【0058】
このようなプライマーの特定の例は、実験の部において表1に開示されている(配列番号1〜12)。
【0059】
本発明は、被検体における癌の存在もしくは癌への素因を検出する方法または癌の処置に対する被検体の応答を評価する方法における上記した核酸プライマーまたは核酸プライマーの対の使用にも関する。
【0060】
他の態様において、検出は選択的ハイブリダイゼーションを使用する技術により行われる。
【0061】
特定の検出技術は、BCSC−1遺伝子またはRNAに対して特異的な核酸プローブの使用、次いでハイブリッドの存在および/または(相対的)量の検出を含む。プローブは、懸濁しているかまたは基材もしくは支持体に固定化される(核酸アレイまたはチップ技術におけるように)ことができる。プローブは、典型的にはハイブリッドの検出を容易にするために標識される。
【0062】
これについて、本発明の特定の態様は、被検体からのサンプルを、BCSC−1の長いアイソフォームに対して特異的な核酸プローブと接触させ、そしてハイブリッドの形成を評価することを含む。特定の態様においては、この方法は、サンプルを、それぞれ、BCSC−1の種々の長いアイソフォームに対して特異的なプローブの組と、同時に接触させることを含む。
【0063】
本発明の状況において、プローブは、BCSC−1遺伝子もしくはRNA(のターゲット部分)に対して相補性でありそしてBCSC−1もしくはRNA(のターゲット部分)と特異的ハイブリダイゼーションすることができそしてサンプル中のその存在もしくはその(相対的)量を検出するために適当なポリヌクレオチド配列を指す。プローブは、好ましくはBCSC−1またはRNAの配列に対して完全に相補性である。プローブは、典型的には、長さが8〜1000ヌクレオチド、例えば10〜800、更に好ましくは15〜700、典型的には20〜500の一本鎖核酸を含む。より長いプローブも使用することができることは理解されるべきである。本発明の好ましいプローブは、BCSC−1遺伝子またはRNAのエキソン13〜18のいずれか1つ内に含有されている領域に特異的にハイブリダイゼーションすることができる長さが8〜500ヌクレオチドの一本鎖核酸分子である。
【0064】
特異性は、ターゲット配列に対するハイブリダイゼーションが、非特異的ハイブリダイゼーションにより発生されるシグナルとは区別されうる特異的シグナルを発生することを示す。完全に相補性の配列は、本発明に従うプローブをデザインするのに好ましい。しかしながら、ある程度のミスマッチは、特異的シグナルが非特異的ハイブリダイゼーションから識別されうる限り許容されうることは理解されるべきである。
【0065】
プローブの配列は、本願で提供されたBCSC−1およびRNAの配列に由来することができる。プローブのヌクレオチド置換および化学的改変を行うことができる。このような化学的改変は、ハイブリッドの安定性を増加させるため(例えば、インターカレーティング基)またはプローブを標識するために行うことができる。標識の典型的な例は、放射能、蛍光、ルミネセンス、酵素標識等を含むがこれらに限定されない。
【0066】
本発明は、被検体における癌の進行の存在、タイプまたは段階を検出する方法または癌処置に対する被検体の応答を評価する方法において上記した核酸プローブの使用にも関する。
【0067】
本発明は、上記したプローブを含む核酸チップにも関する。このようなチップは、当技術分野で知られた技術によりin situでまたはクローンを堆積することにより作成することができ、そして典型的には(ガラス、ポリマー、金属等)スライドなどのマトリックス上にディスプレイされている核酸のアレイを含む。
【0068】
上記したとおり、BCSC−1遺伝子発現の変化は、BCSC−1ポリペプチドの存在または(相対的)量を検出することにより検出することもできる。これに関して、本発明の特定の態様は、サンプル(血液、血漿、血清等などの生物学的流体を含むことができる)を、BCSC−1ポリペプチドに対して特異的なリガンドと接触させそして複合体の形成を決定することを含む。
【0069】
特異的抗体などの異なるタイプのリガンドを使用することができる。特定の態様においては、サンプルをBCSC−1ポリペプチドに対して特異的な抗体と接触させそして免疫複合体の形成が決定される。ELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫酵素アッセイ(IEMA)などの免疫複合体を検出するための種々の方法を使用することができる。
【0070】
本発明の状況において、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体および実質的に同じ抗原特異性を有するその任意のフラグメントまたは誘導体を表す。フラグメントは、Fab、Fab’2、CDR領域等を含む。誘導体は一本鎖抗体、ヒト化抗体、多官能性抗体等を含む。
【0071】
最も好ましいリガンドは、BCSC−1の長いアイソフォームに対して特異的であり、即ち、エキソン13〜18のいずれか1つによりコードされたアミノ酸配列内に含有されたエピトープに結合する。
【0072】
BCSC−1ポリペプチドに対して特異的な抗体は、BCSC−1ポリペプチドに選択的に結合する抗体を表す。更に詳しくは、それはBCSC−1ポリペプチドまたはそのエピトープ含有フラグメントに対して生じた抗体を表す。他の抗原に対する非特異的結合が起こりうるけれども、ターゲットBCSC−1ポリペプチドへの結合がより高いアフィニティーで起こりそして非特異的結合から信頼可能に識別されうる。
【0073】
特定の態様においては、この方法は、被検体からのサンプルをBCSC−1ポリペプチドに対して特異的な抗体(でコーティングされた支持体)と接触させそして免疫複合体の存在を決定することを含む。特定の態様においては、サンプルを、異なるBCSC−1アイソフォームに対して特異的な種々の抗体(でコーティングされた支持体)と、同時にまたは並行してまたは順次に接触させることができる。
【0074】
他の特異的態様においては、本発明は、被検体における癌の存在または癌の素因を検出する方法であって、被検体からのサンプル(血液、血漿、血清等などの生物学的流体を含むことができる)をBCSC−1ポリペプチドの長いアイソフォームに対して特異的なリガンドとインビトロまたはエキソビボで接触させそして形成された複合体の(相対的)量を決定し、このような量は癌の存在または癌への素因を示すことを含む方法に関する。
【0075】
本発明は、被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出する方法または癌処置に対する被検体の応答を評価する方法におけるリガンド、好ましくは抗体、上記したそのフラグメントまたは誘導体の使用にも関する。
【0076】
本発明は、被検体からのサンプルにおいてBCSC−1遺伝子、RNAまたはポリペプチドの存在または(相対的)量を検出するための製品および試薬を含む診断キットにも関する。本発明に従う該診断キットは、本発明に記載された任意のプライマー、任意のプライマーの対、任意の核酸プローブ、および/または任意のリガンド、好ましくは抗体を含む。本発明に従う該診断キットは、更にハイブリダイゼーション、増幅または抗原−抗体免疫反応を行うための試薬および/またはプロトコールを含むことができる。
【0077】
本発明の診断方法は、インビトロ、エキソビボまたはインビボで、好ましくはインビトロまたはエキソビボで行うことができる。それらは、被検体からのサンプルを使用してBCSC−1遺伝子発現の任意の変化を評価する。サンプルは、核酸またはポリペプチドを含有する被検体に由来する任意の生物学的サンプルであることができる。このようなサンプルの例は、流体、組織、細胞サンプル、器官、生検等を含む。最も好ましいサンプルは、組織生検、例えば皮膚癌細胞、組織またはサンプルである。サンプルは、慣用の技術に従って採集され得そして診断のために直接使用されるかまたは貯蔵されうる。サンプルは、試験するための核酸またはポリペプチドの利用性を確実にするかまたは改良するために、本方法を行う前に処理されうる。処理は、例えば、溶解(例えば機械的、物理的、化学的等)、遠心等を含む。また、核酸および/またはポリペプチドは、慣用の技術により予備精製または濃縮されることができおよび/または複雑さを減少させることができる。核酸およびポリペプチドを、酵素、または他の化学的もしくは物理的処理により処理してそのフラグメントを産生させることもできる。特許請求の範囲に記載の方法の高い感度を考慮すると、非常に少量のサンプルがアッセイを行うのに十分である。
【0078】
示されたとおり、サンプルを、好ましくは、プローブ、プライマーまたはリガンドなどの試薬と接触させて、BCSC−1遺伝子またはRNAまたはポリペプチドの存在および/または(相対的)量を評価する。接触は、プレート、チューブ、ウエル、ガラス等などの任意の適当な装置において行うことができる。特定の態様においては、接触は、核酸7アレイもしくは特異的リガンドアレイなどの試薬でコーティングされた基材上で行われる。基材は、固体または半固体基材、例えばガラス、プラスチック、ナイロン、紙、金属、ポリマー等を含む任意の支持体であることができる。基材は、スライド、膜、ビーズ、カラム、ゲル等などの種々の形態およびサイズであることができる。接触は、試薬とサンプルの核酸またはポリペプチド間で複合体が形成されるための適当な条件下になされうる。
【0079】
サンプル中の変化したBCSC−1発現の発見は、メラノーマまたは皮膚癌の進行の存在、タイプまたは段階を示す。変化したBCSC−1発現の存在の決定は、より効果的でかつ特注の適切な治療介入のデザインも可能とする。前兆レベルでのこの決定は、予防治療方式が適用されることを可能とする。
【0080】
薬物スクリーニング
本発明は、薬物候補またはリードのスクリーニングのための新規なターゲットおよび方法も提供する。この方法は、結合アッセイおよび/または機能的アッセイを含み、そしてインビトロ、細胞系、動物等において行うことができる。
【0081】
これに関して、本発明の目的は、メラノーマまたは皮膚癌に対する生物学的に活性な化合物を選択する方法であって、BCSC−1発現または活性を模倣するかまたは刺激する化合物を選択する工程を含む方法にある。
【0082】
本発明の更なる目的は、メラノーマまたは皮膚癌に対する生物学的に活性な化合物を選択する方法であって、試験化合物をレポーター構築物を含む組換え宿主細胞と接触させ、該レポーター構築物はBCSC−1遺伝子プロモーターのコントロール下のレポーター遺伝子を含み、そしてレポーター遺伝子の発現を刺激する試験化合物を選択することを含む方法である。
【0083】
本発明の特定の目的は、メラノーマまたは皮膚癌に対して活性な化合物を選択する方法であって、試験化合物をBCSC−1遺伝子またはポリペプチドとインビトロで接触させ、そしてそれぞれ該試験化合物の該BCSC−1遺伝子またはポリペプチドに結合する能力を決定することを含む方法にある。該遺伝子またはポリペプチドへの結合は、化合物の、前記標的の活性をモデュレーションする能力、従ってメラノーマまたは皮膚癌に導く経路に影響を与える能力に関する指示を与える。好ましくは、BCSC−1ポリペプチドは長いアイソフォームである。
【0084】
結合の決定は、試験化合物の標識、標識された参照リガンドとの競合等によるなどの種々の技術により行うことができる。
【0085】
本発明の更なる目的は、メラノーマまたは皮膚癌に対して活性な化合物を選択する方法であって、試験化合物をBCSC−1ポリペプチドとインビトロで接触させそして該試験化合物の該ポリペプチドの活性をモデュレーションする能力を決定することを含む方法にある。好ましくは、BCSC−1ポリペプチドは長いアイソフォームである。
【0086】
本発明の更なる目的は、生物学的に活性な化合物を選択する方法であって、試験化合物をBCSC−1遺伝子とインビトロで接触させ、そして該試験化合物の該遺伝子の長いアイソフォームの発現をモデュレーションする能力を決定することを含む、方法にある。
【0087】
スクリーニングする特定の態様において、モデュレーションは活性化である。
【0088】
上記スクリーニングアッセイは、プレート、チューブ、ディッシュ、フラスコ等などの任意の適当な装置において行うことができる。典型的には、アッセイをマルチウエルプレートにおいて行う。いくつかの試験化合物を並行してアッセイすることができる。更に、試験化合物は、種々の起源、性質および組成であることができる。それは、単離されているかまたは他の物質との混合物中の任意の有機または無機物質、例えば脂質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、小分子等であることができる。化合物は、例えば、産物のコンビナトリアルライブラリーのすべてまたは一部であることができる。
【0089】
医薬組成物、治療
本発明の更なる目的は、(i)BCSC−1ポリペプチドの長いアイソフォームまたはそれをコードする核酸または、下記するベクターもしくは組換え宿主細胞および(ii)薬学的に許容されうる担体またはビヒクルを含む医薬組成物である。
【0090】
本発明は、被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌を処置する方法であって、該被検体に上記した組成物を投与することを含む、方法にも関する。
【0091】
本発明は、被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌を処置する方法であって、該被検体に有効量のBCSC−1ポリペプチドの長いアイソフォームを投与することを含む、方法にも関する。
【0092】
本発明は、メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬の製造のためのBCSC−1タンパク質またはBCSC−1タンパク質をコードする核酸の使用にも関する。好ましくは、BCSC−1タンパク質は長いアイソフォームである。
【0093】
本発明は、癌を処置するための医薬の製造のための長いBCSC−1タンパク質アイソフォームの使用にも関する。
【0094】
本発明は、メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬組成物の製造のためのBCSC−1アゴニストの使用にも関する。
【0095】
本発明は、メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬組成物の製造のためのBCSC−1遺伝子発現を刺激する化合物の使用を更に包含する。
【0096】
本発明の状況において、用語「処置」は、腫瘍進行の阻害、腫瘍増殖の阻害、腫瘍サイズの減少、腫瘍細胞の腫瘍形成性の抑制、疾患の進行の遅延を含む。
【0097】
皮膚癌は、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、メルケル癌、原発性皮膚リンパ腫(primary cutaneous lymphoma)および皮膚または関連した表面組織の任意の他の細胞増殖疾患から選択されうる。
【0098】
実験の部に示されたとおり、皮膚癌細胞にBCSC−1の長いアイソフォームを供給すると、腫瘍増殖が抑制される。被検体へのこのような機能の供給は、遺伝子もしくはタンパク質治療によりまたはBCSC−1ポリペプチド活性をモデュレーションするかまたは模倣する化合物(例えば、上記スクリーニングアッセイにおいて同定されたアゴニスト)を投与することにより達成されうる。特に、BCSC−1遺伝子は、例えばウイルスベクターまたはプラスミドを使用してそれを必要としている被検体の細胞に導入されうる。アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスを含むレトロウイルスなどの種々のウイルスをベースとするビヒクルを使用することができる。例えば、US Patents 6,069,134および6,143,290は、癌抑制遺伝子を癌性細胞に移行および発現させるためのヒトアデノウイルスの使用を説明する。遺伝子は、裸のDNAとして導入されることもできる。遺伝子は、レシピエント宿主細胞のゲノムに組み込まれるようにまたは染色体外に残るように与えられうる。組み込みは、ランダムにまたは正確に規定された部位で、例えば相同的組み換えにより行うことができる。更に、技術は、遺伝子ガン、リポソーム媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション等を含む。遺伝子治療は、直接遺伝子注入によりまたは機能的BCSC−1タンパク質ポリペプチドを発現するエキソビボで調製された遺伝的に改変された細胞を投与することにより達成されうる。タンパク質治療は、当技術分野でそれ自体既知の技術に従って達成されることもできる。このようなタンパク質治療は、BCSC−1が分泌されたタンパク質であることを考慮すると特に適している。遺伝子治療の目的で、BCSC−1遺伝子の典型的な用量は、104〜109BCSC−1発現ベクター間に含まれる。タンパク質治療の目的で、BCSC−1タンパク質の典型的な用量は、用量当たり1ng〜100mg間に含まれる。一般に、疾患にかかった細胞内の細胞増殖の減少または阻害を達成するために、治療的有効量が投与される。用量は、病態の重篤さ、プロトコール、患者等に基づいて医師により調節されうることは理解されるべきである。
【0099】
BCSC−1タンパク質およびBCSC−1発現ベクターまたは細胞は、経口的、全身的、局所的および非経口的(例えば、皮下に、腹腔内に、血管内に等)を含むがそれらに限定されない種々の方法において投与されうる。1つの態様において、化合物は、腫瘍の部位または付近に(除去された腫瘍の部位に)直接に、例えば術中にまたは腫瘍への直接アクセスを可能とする他の手段(例えばカテーテル)により、適用される。
【0100】
ベクターおよび組換え細胞
本発明の更なる局面は、診断、治療またはスクリーニングにおいて使用するための新規な産物にある。
【0101】
更に詳しくは、本発明の更なる目的は、BCSC−1ポリペプチド、好ましくはその長いアイソフォームをコードする核酸を含むベクターである。このベクターは、クローニングベクター、または更に好ましくは発現ベクター、即ち、コンピテントな宿主細胞において該ベクターからのBCSC−1ポリペプチドの発現を引き起こす調節配列を含むベクターであることができる。
【0102】
これらのベクターは、インビトロ、エキソビボまたはインビボでBCSC−1ポリペプチドを発現するため、トランスジェニックまたは「ノックアウト」非ヒト動物を創生するため、核酸を増幅するため、アンチセンスRNAsを発現するため等に使用されうる。
【0103】
本発明のベクターは、典型的には、調節配列、例えばプロモーター、polyA等に作用可能に連結された(operably linked)本発明に従うBCSC−1コード配列を含む。用語「作用可能に連結された」は、調節配列がコード配列の発現(例えば転写)を引き起こすようにコード配列と調節配列が機能的に関連していることを示す。ベクターは、1つまたは複数の複製起点および/または選択可能なマーカーを更に含むことができる。プロモーター領域は、コード配列に対して同種であるか異種であることができ、そして任意の適切な宿主細胞において、インビボ使用のためを含む、遍在性、構成的、調節されたおよび/または組織特異的発現を与えることができる。プロモーターの例は、バクテリアプロモーター(T7、pTAC、Trpプロモーター等)、ウイルスプロモーター(LTR、TK、CMV−IE等)、哺乳動物遺伝子プロモーター(アルブミン、PGK等)等を含む。
【0104】
ベクターは、プラスミド、ウイルス、コスミド、ファージ、BAC、YAC等であることができる。プラスミドベクターは、pBluescript、pUC、pBR等などの市販のベクターから作成されうる。ウイルスベクターは、当技術分野で知られている組換えDNA技術に従って、バキュロウイルス、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、アデノウイルス、AAVs等から産生されうる。
【0105】
組換えウイルスは、好ましくは複製欠損性であり、なお更に好ましくは、E1欠損および/またはE4欠損アデノウイルス、Gag欠損、pol欠損および/またはenv欠損レトロウイルス、Rep欠損および/またはCap欠損AAVsから選ばれる。このような組換えウイルスは、当技術分野で知られている技術により、例えばパッケージング細胞をトランスフェクションすることによりまたはヘルパープラスミドまたはウイルスによる一過性トランスフェクションにより産生されうる。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例は、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞等を含む。このような複製欠損組換えウイルスを産生するための詳細なプロトコールは、例えばWO95/14785、WO96/22378、US5,882,877、US6,013,516、US4,861,719、US5,278,056、WO94/19478において見出されうる。
【0106】
本発明の更なる目的は、上記した組換えBCSC−1遺伝子またはベクターを含む組換え宿主細胞にある。適当な宿主細胞は、原核細胞(例えばバクテリア)および真核細胞(例えば酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等)を含むが、それらに限定されない。特定の例は、E.coli、KluveromycesもしくはSaccharomyces酵母、哺乳動物細胞系(例えば、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞等)ならびに一次もしくは樹立された哺乳動物細胞培養物(例えば繊維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞等から作製された)を含む。
【0107】
本発明は、本発明に従ってBCSC−1ポリペプチドを発現する組換え宿主細胞を作製するための方法であって、(i)コンピテント宿主細胞に上記した組換え核酸またはベクターをインビトロまたはエキソビボで導入し、(ii)得られた組換え宿主細胞をインビトロまたはエキソビボで培養し、そして(iii)場合により、BCSC−1ポリペプチドを発現する細胞を選択することを含む、方法にも関する。
【0108】
このような組換え宿主細胞は、BCSC−1ポリペプチドの産生のためおよび下記する活性分子のスクリーニングのために使用されうる。このような細胞は皮膚癌研究のためのモデル系としても使用できる。このような細胞は、適当な培養装置(プレート、フラスコ、ディッシュ、チューブ、パウチ等)において、適当な培養培地、例えばDMEM、RPMI、HAM等内に維持することができる。
【0109】
本発明の更なる局面および利点は、下記の実験の部に開示されるであろう。これらは説明しているものとみなされるべきであり、本願の範囲を限定するものではない。
【0110】
実験の部
物質および方法
1.RNA抽出およびcDNA合成
全RNAをメラノーマの異なる段階のメラノーマを有する70人の患者からの凍結させた皮膚組織および正常な母斑組織から単離した。全RNA1μgを使用して、供給者の教示に従ってランダムヘキサマーおよびSupercriptII逆転写酵素(Invitrogen)を使用してcDNAを合成した。
【0111】
2.リアルタイム半定量的RT−PCR
プライマーの異なる組み合わせを使用してBCSC−1の異なるエキソンについてcDNAを増幅した。アンプリコンは、可能な場合にはエキソン境界にわたって設計されそして、配列はBLASTによりヒトゲノムに対してアライメントされて、それらが試験されるべき遺伝子に対して特異的であることを確実にする。使用されたプライマーの配列は、表1に示される。各設計の有効性は、cDNAの逐次希釈により試験された。オリゴヌクレオチドPCR反応(10ul容積)は、希釈されたcDNA、2×SYBR Green Master Mix(Applied Biosystem)、300nMのフォアードプライマーおよびリバースプライマーを含有していた。PCRを、下記のパラメーター:50℃で2分間、95℃で10分間、および40サイクルの95℃15秒−60℃1分、によりSDS7900HT機器(Applied Biosystems)で行った。各反応を384ウエルプレートで6回反復して行った。生のCt値(raw Ct values)はSDS2.2(Applied Biosystems) で得られた。4つの異なるハウスキーピング遺伝子を、GenNormソフトウエアで行われる正規化のために使用した。相対的発現を、正常な組織(良性母斑)における平均発現と比較して腫瘍における発現の比として計算した。
【0112】
下記はBCSC−1研究に使用されたオリゴヌクレオチドである。
【0113】
【表2】
【0114】
3.BCSC−1をコードするレンチウイルスベクターの構築および作製
HAタンパク質配列でタグ付けされたBCSC−1のアイソフォームFの完全なコード配列を、2つの異なるレンチウイルスベクター(D.Trono, EPFL, Epalinges, Switzerlandからの寄贈品)に挿入しそしてPGK IRES NeoおよびPWIR GFPプラスミドから改変した(Naldini et al., 1996; Salmon et al., 2000)。293T細胞系およびHela細胞系を、10%FCSを補充されたダルベッコの改変イーグル培地で培養した。標準プロトコールに従って293T細胞の一過性トランスフェクションにより、組換えレンチウイルスを産生した。簡単に言えば、サブコンフルーエントな(subconfluent)293T細胞を、リン酸カルシウム沈殿により、プラスミドベクター(PGK BCSC Ires Neo/PWIR BCSC GFP)20μg、pCMV−デルタR8.91、15μgおよびpMD2G−VSVG5μgでコトランスフェクションした。16時間後に、培地を変え、そして組換えレンチウイルスベクターを24時間後に回収した。すべての試験FACS、ウエスタンブロットおよび細胞トランスダクションは以前に記載されたのと同様であった(Arrighi et al., 2004)。
【0115】
B−実施例
実施例1−BCSC−1発現が皮膚癌において変化しているということの同定
遺伝子プロファイリング技術DATAS(選択的スプライシングによる転写物のディファレンシャル解析(Differential Analysis of Transcripts with Alternative Splicing)(Schweighoffer et al., 2000))は、2つの条件間でディファレンシャルに発現される選択的にスプライシングされた配列のライブラリーの単離を可能とし、該ライブラリーは次いでアレイを構築するためまたはターゲット遺伝子を単離するために使用されうる。
【0116】
DATASは、2つの異なる集団(良性母斑対転移メラノーマ)からの全RNAを抽出し、次いでメッセンジャーRNAを単離する(Dynabeads oligodT-Dynalを使用して)ことにより達成される。ビオチニル化オリゴヌクレオチドdTを使用してmRNAに対して逆転写を行って、第1鎖cDNAを発生させる。1つの集団からのmRNAと他の集団からのcDNAとのクロスハイブリダイゼーションは、ヘテロ二本鎖(heteroduplex)を生じさせ、これをストレプトアビジンコーティングされたビーズを使用して単離する。RNaseH処置を使用して、ヘテロ二本鎖におけるcDNAにハイブリダイゼーションしないmRNAのループを開放する。選択的にスプライシングされた配列をコードするこれらのmRNAループを5つの縮重プライマーによるRT−PCRに付し、次いでATクローニングベクター(TOPO, Incitrogen)においてPCR産物をクローニングする。すべてのクローンにおけるcDNAインサートは、T7プライマーを使用するPCRにより増幅される。最終の結果は、所与の条件に対して独特の選択的にスプライシングされたmRNA配列のライブラリーである。配列決定の後にDATASクローンをバイオインフォマチック解析に付してそれらの元の遺伝子を同定する。これは、高い正確度でもって、あるタイプのスプライシング事象(エキソンスキッピング、イントロン保持、新規なエキソンの存在、選択的スプライシング部位使用)の解析を可能とする。
【0117】
本発明者等は、良性母斑を提示している健康な患者の集団および転移メラノーマに罹患している患者の集団から得られた組織に関してDATASプロファイリングアッセイを行った。本発明者等は、良性母斑グループからの11人の患者および転移メラノーマグループからの10人の患者を使用して組織に関するDATASライブラリーを構築した。80μgの全RNAのプールが、各集団について利用可能であり、それからmRNA 1.6μgを抽出した:800ngはcDNA合成のために使用されそして800ngはmRNAとして保持された。すべてのRNA組織サンプルの質および量は、Agilant Bioanalyserを使用して決定された。良好な品質の全RNAサンプルのみがDATASのために使用された。
【0118】
総計755のクローンが組織RNAに関するDATASから得られた。クローンの約25%は、状態mRNA転移メラノーマ/cDNA良性母斑から得られ、クローンの残りの75%は状態mRNA良性母斑/cDNA転移メラノーマから得られた。インサートの平均サイズは、300bpと500bpの間にある。配列決定の後に、個々のクローンを前記のとおりにプロセシングしそして解析した。配列決定された755クローンの内、217フラグメントが非重複性でありそして未知の遺伝子配列を含有していた。
【0119】
本発明者等がDATAS解析から得た217クローンから、本発明者等は、潜在的に関心のある性質を有するそれらの約10を選択しそしてメラノーマ細胞性病変からの生検から抽出されたRNAに関するリアルタイム半定量的RT−PCRを行った。この第2スクリーンから、本発明者等は潜在的に興味深い候補としてBCSC−1を同定した。
【0120】
実施例2:BCSC−1発現はメラノーマ患者においてダウンレギュレーションされる
BCSC−1の遺伝子発現を、良性母斑(ネガティブコントロール)および異なる段階の着色した皮膚病変の生検を含む総計70人の患者の生検から抽出されたRNAのリアルタイム半定量的RT−PCRにより決定した。結果は、転移メラノーマを有するすべての患者は、良性母斑サンプルにおけるBCSCの平均発現と比較して有意なより低い発現を有することを示した(図2)。ある転移生検において、BCSCの発現は良性母斑の平均発現の値より20倍低い値に達する。異形母斑の生検は、良性母斑より高いBCSCの発現を示し、そして原発性メラノーマおよびリンパ節からの生検の両方共良性母斑よりも類似したBCSCの発現を示した。
【0121】
実施例3:BCSC−1の長いアイソフォームはメラノーマにおいて選択的にダウンレギュレーションされる
7つの異なるアイソフォームがBCSC−1遺伝子について記載された(図3A参照)。本発明者等は、プライマーの異なる組み合わせを使用してBCSC−1発現の更に特異的な解析を行って、どのアイソフォームがダウンレギュレーションされたかを決定した。結果は、同じタンパク質をコードするより長いアイソフォームcおよびfが、メラノーマ患者において選択的にダウンレギュレーションされることを示した(図3B)。
【0122】
実施例4:BCSC−1発現は、メラノーマ患者およびメラノーマ細胞系においてダウンレギュレーションされる
先の結果を確かめるために、皮膚病変からの生検のより大きいコホートにおいて新たなリアルタイムPCR実験を行った。先の結果と一致して、転移病変を有するすべての患者は、健康なドナーにおける平均発現と比較してBCSC−1のより低い発現を有していた(図4A)。
更に、メラノーマ細胞のいくつかの細胞系を、BCSC−1の発現について試験した(図4B)。結果は、すべてのメラノーマ細胞系が健康なドナーより有意に低い発現を有することを示した。SK−Mel23(L1)などのいくらかの細胞系において、BCSC−1の発現は検出できず、そして試験された原発性メラノーマの2つの細胞系のみが良性母斑よりも類似したBCSC−1の発現を示す。
【0123】
実施例5:BCSC−1の異所発現は、メラノーマ細胞増殖を減少させる
PGK BCSC Ires NeoまたはPWIR BCSC GFPベクターを使用してSK−Mel23およびHela細胞をトランスダクションしてBCSC−1の発現を誘導した。更に、対応する空のベクターでトランスダクションされた細胞をネガティブコントロールとして使用した。
【0124】
結果は、メラノーマ細胞系SK−Mel23におけるBCSC−1の異所発現は、細胞の増殖を顕著に減少させることを示した(図5)。BCSC−1の発現は、抗HA抗体を使用してウエスタンブロットおよびリアルタイムPCR(図6)により確かめた。BCSC−1の異所発現のこの効果はHelaなどの他の非メラノーマ細胞系においては観察されなかった。
【0125】
実施例6:BCSC−1の異所発現は、メラノーマ細胞増殖を妨害する
メラノーマ細胞系をレンチベクターでトランスダクションしてBCSC−1遺伝子の長いアイソフォーム(Iso F)の異所発現を誘導した。図7に示された結果は、トランスダクションされた転移メラノーマ細胞MewoおよびSK23(図7A)および原発性メラノーマ細胞Me257(図7B)は、ネガティブコントロールおよび空のベクターまたはBCSC−1の短いアイソフォーム(Iso A)でトランスダクションされた細胞と比較して増殖を停止または顕著に減少させることを示す。この効果は、空のベクターまたはBCSC−1の短いアイソフォームでトランスダクションされた細胞においては観察されなかった。
【0126】
実施例7:BCSC−1は、細胞サイクルのG2−M相においてメラノーマ細胞を妨害する
本発明者等は、BCSC−1の抗増殖効果は、トランスダクションされた細胞の細胞サイクルの妨害によるものでありうるかどうかを調べた。BrdUおよび7−AAD染色を使用して、本発明者等は、細胞サイクルのG0/G1(R3)、S(R4)、G2−M(R5)相における細胞の百分率およびアポトーシス細胞(R6)の百分率を決定することができた。FACSプロフィルは、図8Aに示されそして百分率値は図8Bに示される。結果は、BCSC−1の長いアイソフォーム(iso F)でトランスダクションされた細胞はG2−M相において妨害することを示す。この効果は、トランスダクションされていない細胞および空のベクターまたはBCSC−1の短いアイソフォーム(iso A)でトランスダクションされた細胞においては観察されず、その場合に細胞は細胞サイクルのG0/G1およびS相に主として分布している。
【0127】
実施例8:BCSC−1をコードするHelaは、細胞サイクルのG2およびM相において阻止される
本発明者等は、DAPIおよびチューブリン抗体による免疫蛍光染色を行って、G2−Mのどの段階でBCSC−1の異所発現により誘導される細胞サイクルの妨害が生じるかを決定した。本発明者等は、トランスダクションされていない細胞または空のベクターもしくはBCSC−1の短いアイソフォームでトランスダクションされた細胞において、クロマチンの凝縮を伴うおよび有糸分裂の異なる相にある細胞の高い百分率の存在を観察した(図9A)。しかしながら、本発明者等は、細胞がBCSC−1の長いアイソフォームでトランスダクションされたとき有糸分裂における細胞を観察しなかった(図9B)。本発明者等は、BCSC−1の異所発現が細胞サイクルのG2およびM相の間で妨害を誘導し、細胞における有糸分裂を回避すると結論付けることができる。
【0128】
実施例9:BCSC−1は転移メラノーマのマウスモデルにおいて肺転移の数を減少させる
BCSC−1のインビボ効果を調べるために、本発明者等は、空のベクターまたは長いアイソフォームBCSC−1ベクター(104〜107細胞について約500ngのウイルス粒子)でトランスダクションされたB16メラノーマ細胞を静脈内に注入した。15日後、これらの細胞は、肺において転移を生じ、そして転移は数えることができる(図10A)。空のベクターでトランスダクションされたB16を注入されたマウス(n=10)または長いBCSC−1ベクターでトランスダクションされたB16を注入されたマウス(n=6)からの肺による転移の数は図10Bに示される。本発明者等は、空のトランスダクションされた細胞を注入されたマウスと比較して、BCSC−1でトランスダクションされた細胞を注入されたマウスにおける肺転移の数の減少を観察した。
【0129】
BCSC−1のタンパク質配列(配列番号13)
【表3】
BCSC−1のcDNA配列(NM 014622)−配列番号14
【表4】
【0130】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】着色した皮膚病変の進行モデルを示す。
【図2】BCSC−1発現はメラノーマ患者においてダウンレギュレーションされる。良性母斑またはメラノーマ皮膚病変を有する患者からの皮膚生検におけるBCSC−1遺伝子のリアルタイムPCRによるRNA発現。ゼロ値は、良性母斑を有する患者(健康なドナー)におけるこの遺伝子の平均発現を表す。転移メラノーマを有するすべての患者は、健康なドナーの平均発現値と比較してより低い発現(20倍以下低い)を示す。
【図3A】BCSC−1の長いアイソフォームは、メラノーマ患者において選択的にダウンレギュレーションされる。BCSC−1遺伝子のいくつかのアイソフォームが記載されている。異なるエキソンのリアルタイムPCR解析は、長いアイソフォームに専ら存在するエキソン(エキソン13〜18)は、メラノーマ患者において減少したエキソンであることを示す。
【図3B】BCSC−1の長いアイソフォームは、メラノーマ患者において選択的にダウンレギュレーションされる。BCSC−1遺伝子のいくつかのアイソフォームが記載されている。異なるエキソンのリアルタイムPCR解析は、長いアイソフォームに専ら存在するエキソン(エキソン13〜18)は、メラノーマ患者において減少したエキソンであることを示す。
【図4A】BCSC−1発現は、メラノーマ患者およびメラノーマ細胞系においてダウンレギュレーションされる。結果は、患者のより大きいコホートにおいておよびメラノーマ細胞系においても確かめられた。BCSC−1遺伝子のより長いアイソフォームの発現はメラノーマ患者およびメラノーマ細胞系において顕著に減少する。
【図4B】BCSC−1発現は、メラノーマ患者およびメラノーマ細胞系においてダウンレギュレーションされる。結果は、患者のより大きいコホートにおいておよびメラノーマ細胞系においても確かめられた。BCSC−1遺伝子のより長いアイソフォームの発現はメラノーマ患者およびメラノーマ細胞系において顕著に減少する。
【図5】BCSC−1の異所発現は、メラノーマ細胞増殖を減少させる。メラノーマ細胞系は、BCSC−1をコードするレンチベクターでトランスダクションされた。BCSC−1を発現するメラノーマ細胞は、ネガティブコントロールと比較してそれらの増殖を停止するかまたは顕著に減少させる。この効果は、やはりBCSCベクターでトランスダクションされた非メラノーマ細胞系(Hela)においては観察されない。
【図6】BCSC−1の異所発現は、ウエスタンブロットおよびリアルタイムPCRにより確認される。(左)BCSC−1タンパク質の産生は、12日目に、BCSC−1をコードするレンチウイルスベクターの増加する用量(2および20μl)でトランスダクションされたSK−Mel23細胞において抗HA抗体を使用するウエスタンブロットにより確認されるが、空のベクター(C−)でトランスダクションされた細胞においては確認されない。BCSC−1の長いアイソフォームおよび短いアイソフォームの両ベクターでトランスフェクションされた293T細胞をポジティブコントロールとして使用して、やはり抗HA抗体によりBCSC−1を検出する。(右)リアルタイムPCRは、SK−Mel23細胞が、トランスダクションの前およびそれらが空のベクターでトランスダクションされるとき8日目に、BCSC−1の検出可能なレベルを発現しないことを示した。しかしながら、BCSC−1ベクターでトランスダクションされたSK−Mel23細胞は高いレベルのBCSC−1mRNAを発現する。
【図7】BCSC−1の異所発現はメラノーマ細胞系増殖を妨害する。
【図8】BCSC−1は、細胞サイクルのG2−M相においてメラノーマ細胞を妨害する。
【図9】BCSC−1をコードするHelaは、細胞サイクルのG2およびM相において阻止される。A)BCSC−1の短いアイソフォームでトランスダクションされたHela細胞;B)BCSC−1の長いアイソフォームでトランスダクションされたHela細胞。
【図10】BCSC−1は、転移メラノーマのマウスモデルにおいて肺転移の数を減少させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体からのサンプルにおける変化したBCSC−1遺伝子発現の存在をインビトロまたはエキソビボで検出し、このような変化したBCSC−1遺伝子発現の存在が該被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法。
【請求項2】
前記サンプルにおけるBCSC−1遺伝子の減少した発現が、前記被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルにおけるBCSC−1遺伝子の長いアイソフォームの減少した発現が、前記被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを示す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
長いアイソフォームがエキソン13、14、15、16、17または18を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
被検体におけるメラノーマおよび皮膚癌の処置の有効性を評価する方法であって、該処置の前および後の被検体からのサンプルにおけるBCSC−1遺伝子発現を比較し、増加した発現は処置に対するポジティブな応答を示すことを含む方法。
【請求項6】
BCSC−1遺伝子発現を、配列決定、選択的ハイブリダイゼーション、選択的増幅および/または特異的リガンド結合により検出する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
癌が、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、メルケル癌、メラノーマである、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
BCSC−1の長いアイソフォームの増幅を可能とする核酸プライマー。
【請求項9】
BCSC−1の長いアイソフォームに特異的に結合する核酸プローブ。
【請求項10】
BCSC−1タンパク質の長いアイソフォームに特異的に結合する抗体。
【請求項11】
それぞれ、請求項8〜10のいずれか1つに記載のプライマー、プローブまたは抗体を含むキット。
【請求項12】
メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬の製造のためのBCSC−1タンパク質またはBCSC−1タンパク質をコードする核酸の使用。
【請求項13】
メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬組成物の製造のためのBCSC−1アゴニストの使用。
【請求項14】
メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬組成物の製造のためのBCSC−1遺伝子発現を刺激する化合物の使用。
【請求項15】
メラノーマまたは皮膚癌に対する生物学的に活性な化合物を選択する方法であって、BCSC−1発現または活性を模倣するかまたは刺激する化合物を選択する工程を含む方法。
【請求項16】
メラノーマまたは皮膚癌に対する生物学的に活性な化合物を選択する方法であって、試験化合物を、レポーター構築物を含む組換え宿主細胞と接触させ、該レポーター構築物はBCSC−1遺伝子プロモーターのコントロール下のレポーター遺伝子を含んでおり、そしてレポーター遺伝子の発現を刺激する試験化合物を選択することを含む方法。
【請求項17】
被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体からのサンプルにおけるBCSC−1遺伝子またはタンパク質の長いアイソフォームの(相対的)量をインビトロまたはエキソビボで決定し、このような量が該被検体における癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法。
【請求項18】
被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体に由来する流体サンプルにおけるBCSC−1タンパク質の(相対的)量をインビトロまたはエキソビボで決定し、このような量が該被検体における癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法。
【請求項1】
被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体からのサンプルにおける変化したBCSC−1遺伝子発現の存在をインビトロまたはエキソビボで検出し、このような変化したBCSC−1遺伝子発現の存在が該被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法。
【請求項2】
前記サンプルにおけるBCSC−1遺伝子の減少した発現が、前記被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルにおけるBCSC−1遺伝子の長いアイソフォームの減少した発現が、前記被検体におけるメラノーマまたは皮膚癌の存在、段階またはタイプを示す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
長いアイソフォームがエキソン13、14、15、16、17または18を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
被検体におけるメラノーマおよび皮膚癌の処置の有効性を評価する方法であって、該処置の前および後の被検体からのサンプルにおけるBCSC−1遺伝子発現を比較し、増加した発現は処置に対するポジティブな応答を示すことを含む方法。
【請求項6】
BCSC−1遺伝子発現を、配列決定、選択的ハイブリダイゼーション、選択的増幅および/または特異的リガンド結合により検出する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
癌が、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、メルケル癌、メラノーマである、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
BCSC−1の長いアイソフォームの増幅を可能とする核酸プライマー。
【請求項9】
BCSC−1の長いアイソフォームに特異的に結合する核酸プローブ。
【請求項10】
BCSC−1タンパク質の長いアイソフォームに特異的に結合する抗体。
【請求項11】
それぞれ、請求項8〜10のいずれか1つに記載のプライマー、プローブまたは抗体を含むキット。
【請求項12】
メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬の製造のためのBCSC−1タンパク質またはBCSC−1タンパク質をコードする核酸の使用。
【請求項13】
メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬組成物の製造のためのBCSC−1アゴニストの使用。
【請求項14】
メラノーマまたは皮膚癌を処置するための医薬組成物の製造のためのBCSC−1遺伝子発現を刺激する化合物の使用。
【請求項15】
メラノーマまたは皮膚癌に対する生物学的に活性な化合物を選択する方法であって、BCSC−1発現または活性を模倣するかまたは刺激する化合物を選択する工程を含む方法。
【請求項16】
メラノーマまたは皮膚癌に対する生物学的に活性な化合物を選択する方法であって、試験化合物を、レポーター構築物を含む組換え宿主細胞と接触させ、該レポーター構築物はBCSC−1遺伝子プロモーターのコントロール下のレポーター遺伝子を含んでおり、そしてレポーター遺伝子の発現を刺激する試験化合物を選択することを含む方法。
【請求項17】
被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体からのサンプルにおけるBCSC−1遺伝子またはタンパク質の長いアイソフォームの(相対的)量をインビトロまたはエキソビボで決定し、このような量が該被検体における癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法。
【請求項18】
被検体における癌の存在、段階またはタイプを検出するための方法であって、被検体に由来する流体サンプルにおけるBCSC−1タンパク質の(相対的)量をインビトロまたはエキソビボで決定し、このような量が該被検体における癌の存在、段階またはタイプを示すことを含む方法。
【図3A】
【図7】
【図1】
【図2】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図7】
【図1】
【図2】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−529869(P2009−529869A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558942(P2008−558942)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001721
【国際公開番号】WO2007/105114
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(599022270)エグゾニ・テラピューティック・ソシエテ・アノニム (12)
【氏名又は名称原語表記】EXONHIT THERAPEUTICS SA
【出願人】(508278240)オピトー・ユニヴェルシテール・ドゥ・ジュネーブ (1)
【氏名又は名称原語表記】HOPITAUX UNIVERSITAIRES DE GENEVE
【出願人】(502151956)ユニヴェルシテ・ドゥ・ジュネーブ (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE GENEVE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001721
【国際公開番号】WO2007/105114
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(599022270)エグゾニ・テラピューティック・ソシエテ・アノニム (12)
【氏名又は名称原語表記】EXONHIT THERAPEUTICS SA
【出願人】(508278240)オピトー・ユニヴェルシテール・ドゥ・ジュネーブ (1)
【氏名又は名称原語表記】HOPITAUX UNIVERSITAIRES DE GENEVE
【出願人】(502151956)ユニヴェルシテ・ドゥ・ジュネーブ (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE GENEVE
【Fターム(参考)】
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