説明

癌の診断マーカーならびに治療の標的分子OSLC1

【課題】肺小細胞癌及び乳癌の診断のための手段を提供する。
【解決手段】下記の群より選ばれる染色体領域、遺伝子又はタンパク質からなる、肺小細胞癌又は乳癌の診断用マーカー;(1)GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10597582番目から第11121868番目までからなる塩基配列で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域、(2)TRIM33(tripartite motif 33)遺伝子、(3)BCAS2(breast carcinoma amplified sequence-2)遺伝子、(4)DENND2C(DENN/MADD domain containing 2C)遺伝子、(5)TRIM33タンパク質、(6)BCAS2タンパク質、及び(7)DENND2Cタンパク質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺小細胞癌又は乳癌の診断を行うための手段、好ましくは特定の遺伝子の増幅又は発現亢進を癌診断用マーカーとして利用する手段に関する。
また、本発明は上記の特定の遺伝子の増幅又は発現亢進を抑制することにより肺小細胞癌又は乳癌を治療する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
TRIM33(tripartite motif 33、「Ectodermin」と呼ばれる場合もある)はアルリカツメガエルの胚形成において外胚葉形成に関与する因子として同定され、中胚葉誘導因子であるSmad4をユビキチン化することにより阻害することが知られている(非特許文献1:Cell, 121, pp.87-99, 2005)。TRIM33遺伝子とがんとの関係については、TRIM33遺伝子が大腸癌において発現亢進していることが示されている(非特許文献1、Fig.7D及び7E)。また、メラノーマC32細胞株又は乳癌MB231細胞株内のTRIM33遺伝子の発現をRNA干渉法で抑制するとこれらの細胞の増殖が抑制されることが示されており(同Fig.7F及び7G)、その細胞増殖抑制はSmad4依存的であることが示されている(同Fig.7G)。
【0003】
しかしながら、上記刊行物には、乳癌細胞内においてTRIM33遺伝子の増幅又は発現亢進が生じていることについての報告はなく、TRIM33遺伝子とその他の癌(例えば肺小細胞癌など)との関係についても報告がない。また、TRIM33遺伝子は遺伝子座1p13.1に存在する遺伝子であり、乳癌においてヒトゲノム1p13領域が増幅しているとの報告もあるが(非特許文献2:Cancer Research, 60, pp.4519-4525, 2000; 非特許文献3:Cancer Genet Cytogenet, 117, pp.153-158, 2000)、これらの刊行物には乳癌において特定のTRIM33遺伝子が増幅又は発現亢進していることは示唆ないし教示されていない。
【0004】
また、癌における遺伝子発現パターンは、発生母地の組織における遺伝子発現パターンを受け継いでいることが多く、組織ごとに遺伝子の発現パターンは相違する。従って、癌種を越えて共通して変化が認められる遺伝子が存在する一方で、一般的には、癌における遺伝子発現パターンは、発生母地の組織(例えば、大腸癌や肺癌といった分類)により異なると考えられる(Molecular biology of the cell (第3版) p.1256-1257等)。かかる観点からも、非特許文献1は、TRIM33遺伝子とその他の癌(例えば、肺小細胞癌など)の関係について示唆ないし教示されていないと考える。
【非特許文献1】Cell, 121, pp.87-99, 2005
【非特許文献2】Cancer Research, 60, pp.4519-4525, 2000
【非特許文献3】Cancer Genet Cytogenet, 117, pp.153-158, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、特定の遺伝子の増幅又は発現亢進を癌診断用マーカーとして利用する手段、好ましくは肺小細胞癌又は乳癌の診断を行う手段を提供することにある。
また、本発明の別の課題は、上記の特定の遺伝子の増幅又は発現亢進を抑制することにより肺小細胞癌又は乳癌を治療する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、肺小細胞癌及び乳癌細胞においてTRIM33遺伝子が増幅しており、かつその発現が亢進していることを見出した。さらに、TRIM33遺伝子の発現レベルが乳癌の予後因子であることを見出した。また、該遺伝子を肺小細胞癌及び乳癌のマーカーとして用いることができ、その増幅又は発現亢進を例えば該遺伝子に特異的に結合可能なプローブなどを用いて検出することにより、肺小細胞癌及び乳癌を簡便かつ確実に診断できることを見出した。さらに、TRIM33遺伝子の発現を例えばRNA干渉法などの手段により阻害することによって肺小細胞癌及び乳癌細胞の増殖を顕著に抑制することができ、それによって肺小細胞癌及び乳癌を治療できることを見出した。本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
本発明者らは、ヒト肺小細胞癌由来の細胞株(LU−140)において1p13.2上の特定の領域(以下、本発明に係るアンプリコンと称することもある)が二重微染色体(double minute chromosome;dmin)で増幅していることを見出した(図1(C),(D))。さらに、本発明者らは、ヒト乳癌由来の細胞株(MCF7)においてTRIM33遺伝子が均一染色体領域(homogenously staining region;HSR)で増幅していることを見出した(図2、(A))。
【0008】
本発明に係るアンプリコンは、その本来の座位として、4種類のBACクローン(RP11−1152I1、RP11−1129E18、RP11−625J15、RP11−254K1)で実質的に示される1p13.2の染色体領域に存在する。これらのBACクローンは、ヒト血液由来の染色体から作成されたヒト染色体断片のBACライブラリー(RPCI human BAC library 11)のクローンである。BACライブラリーの各クローンは、該染色体のある断片(+鎖、−鎖)を示す。各クローン(+鎖、−鎖)の末端部分が配列解析され、その塩基配列が明らかとなっている。なお、BACライブラリーの各クローン(+鎖、−鎖)の全長塩基配列は明らかにされていない。
【0009】
RP11−1152I1(+鎖)の末端の部分塩基配列は、配列番号1に記載の塩基配列(GenBankアクセッション番号:AQ749680)である。RP11−1152I1(―鎖)の末端の部分塩基配列は、配列番号2に記載の塩基配列(GenBankアクセッション番号:AQ749954)である。
【0010】
RP11−1129E18(+鎖)領域の末端の部分塩基配列は、配列番号3に記載の塩基配列(GenBankアクセッション番号:AQ697738)である。RP11−1129E18(―鎖)領域の末端の部分塩基配列は、配列番号4に記載の塩基配列(GenBankアクセッション番号:AQ720255)である。
【0011】
RP11−625J15(+鎖)領域の末端の部分塩基配列は、配列番号5に記載の塩基配列(GenBankアクセッション番号:AQ405632)である。RP11−625J15(―鎖)領域の末端の部分塩基配列は、配列番号6に記載の塩基配列(GenBankアクセッション番号:AQ455093)である。
【0012】
RP11−254K1(+鎖)領域の末端の部分塩基配列は、配列番号7に記載の塩基配列(GenBankアクセッション番号:AQ478938)である。RP11−254K1(―鎖)領域の末端の部分塩基配列は、配列番号8に記載の塩基配列(GenBankアクセッション番号:AQ478940)である。これら4クローンは部分的に重複しているためそれらから形成されるContig配列を作成することが可能である。
【0013】
一方、International Human Genome Sequencing Consortiumは、ヒトゲノムの塩基配列を決定し、その塩基配列を公表している(Nature Vol.431、pp.931−945、2004)。NCBIは、この結果を受けて、ヒトゲノム断片のContig配列を公表している。
【0014】
GenBankアクセッション番号NT_019273.18に記載の塩基配列は、ヒト第1染色体のゲノム断片のContig配列である。RP11−1152I1、RP11−1129E18、RP11−625J15及びRP11−254K1は、GenBankアクセッション番号NT_019273.18に記載の塩基配列において、それぞれ、第10597582 番目から第10752202番目、第10746859番目から第10891175番目、第10785181番目から第10949822番目、第10934043番目から第11121868番目に相当すると考えられる。
【0015】
従って、これら4クローンからなるContig配列は、GenBankアクセッション番号NT_019273.18に記載の塩基配列の第10597582 番目から第11121868番目までの塩基配列(およそ、0.5Mbpの領域)に相当すると考えられる。
【0016】
以上のことから、本発明に係るアンプリコンは、GenBankアクセッション番号NT_019273.18に記載の塩基配列の第10597582 番目から第11121868番目までからなる塩基配列で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域と考えることができる。
【0017】
GenBankアクセッション番号NT_019273.18に記載の塩基配列の第10597582 番目から第11121868番目までからなる塩基配列で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域には、TRIM33遺伝子、BCAS2(breast carcinoma amplified sequence−2)遺伝子およびDENND2C(DENN/MADD domain containing 2C)遺伝子が配座していると考えられている。
【0018】
TRIM33遺伝子の転写領域は、GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10843084番目から10961466番目までの塩基配列で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域に配座していると考えられている。従って、TRIM33遺伝子の転写領域は、RP11−625J15及びRP11−254K1で形成されるContig配列で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域に配座していると考えられる。
【0019】
BCAS2遺伝子の転写領域は、GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第11017863番目から第11031950番目までの塩基配列で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域に配座していると考えられている。従って、BCAS2遺伝子の転写領域は、RP11−254K1で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域に配座していると考えられる。
【0020】
DENND2C遺伝子の転写領域は、GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第11033155番目から第11120417番目までの塩基配列で表されるポリヌクレオチドで実質的に示される染色体領域に配座していると考えられる。従って、DENND2C遺伝子の転写領域は、RP11−254K1で表されるポリヌクレオチドに実質的に相当する染色体領域に配座していると考えられる。
【0021】
本発明により、本発明に係るアンプリコンからなる肺小細胞癌又は乳癌の診断用マーカーが提供される。肺小細胞癌又は乳癌を発症している患者のその疾患部位は、対照となる健常者の該部位と比較して、本発明に係るアンプリコンが増幅していると考えられる。従って、ある者から分離した肺又は乳組織由来の生体試料において、健常者から分離したそれと比較して、本発明に係るアンプリコンが増幅している場合には、その者は、肺小細胞癌又は乳癌に罹患しているかまたはその可能性が高い、及び/又は、予後が不良であるまたはその可能性が高いと診断される。
【0022】
本発明に係るアンプリコンが増幅することは、該アンプリコンに含まれる部分も増幅することを意味する。従って、本発明に係るアンプリコンに含まれる部分も、肺小細胞癌又は乳癌の診断用マーカーとなることは明らかである。
【0023】
すなわち、本発明により、本発明に係るアンプリコンに含まれる部分からなる肺小細胞癌又は乳癌の診断用マーカーが提供される。本発明に係るアンプリコンに含まれる部分として、TRIM33遺伝子が配座する染色体領域、BCAS2遺伝子が配座する染色体領域、DENND2C遺伝子が配座する染色体領域、TRIM33遺伝子の転写領域が配座する染色体領域、BCAS2遺伝子の転写領域が配座する染色体領域、DENND2C遺伝子の転写領域が配座する染色体領域、TRIM33遺伝子、BCAS2遺伝子、DENND2C遺伝子が例示される。
【0024】
本発明者らは、ヒト肺小細胞癌由来の20種類の細胞株を対象として、TRIM33遺伝子、BCAS2遺伝子、DENND2C遺伝子の発現解析を行った結果、それぞれの遺伝子の発現量(各遺伝子の転写産物の量)は、健常の肺における各遺伝子の発現量と比較して、亢進していることを見出した(図1(E))。さらに、本発明者は、肺小細胞癌由来の細胞株(4種)および乳癌由来の細胞株(MCF7)を用いて、細胞内のTRIM33タンパク質量を測定した結果、ヒト肺上皮細胞株A549内のTRIM33タンパク質量と比べて、亢進していることを見出した(図2(B))。また、本発明者らは、免疫化学的手法を用いて、混合型小細胞肺癌(小細胞癌と線癌の混合)組織においては小細胞癌の部分のみに、TRIM33遺伝子の発現が亢進していることを見出した(図3)。さらに、本発明者らは、免疫化学的手法を用いて、乳癌組織においてTRIM33遺伝子の発現が亢進していることを見出した(図3)。また、乳癌組織においてTRIM33遺伝子の発現が強く検出される患者の予後は、乳癌組織においてTRIM33遺伝子の発現が検出されないまたは弱く検出される患者の予後と比較して、不良であることを見出した(図6(A)(B))。
【0025】
以上の知見から、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の転写産物及び該遺伝子がコードする蛋白質も、肺小細胞癌又は乳癌の診断用マーカーとなると考えられる。すなわち、ある者から分離した肺又は乳組織由来の生体試料において該遺伝子の発現が亢進している場合には、その者は、肺小細胞癌又は乳癌に罹患しているかまたはその可能性が高い、及び/又は、予後が不良であるまたはその可能性が高いと診断される。
【0026】
従って、本発明により、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の転写産物又は該遺伝子がコードする蛋白質からなる肺小細胞癌又は乳癌の診断用マーカーが提供される。本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子として、TRIM33遺伝子、BCAS2遺伝子、DENND2C遺伝子が例示される。
【0027】
別の観点からは、本発明により、肺小細胞肺癌又は乳癌の診断薬であってヒトを含む哺乳動物において、本発明に係るアンプリコンの増幅及び/又は該アンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進を検出することができる診断薬が提供される。好ましい態様によれば、ヒトの肺小細胞肺癌又は乳癌の診断用の上記診断薬、肺小細胞肺癌又は乳癌の存在が疑われる患者の診断用の上記診断薬、及び肺小細胞肺癌又は乳癌患者の予後診断用の上記診断薬が提供される。
【0028】
より好ましい態様によれば、ヒトから分離された生体試料において本発明に係るアンプリコンの増幅及び/又は該アンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進を検出することができる上記診断薬;GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10597582番目から第11121868番目までからなる塩基配列で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む上記診断薬;GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10597582番目から第11121868番目までからなる塩基配列若しくはその相補的塩基配列に含まれる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む上記診断薬;TRIM33遺伝子が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む上記診断薬;TRIM33遺伝子の転写領域が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む上記診断薬;TRIM33遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む上記診断薬;GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10843084番目から第10961466番目までからなる塩基配列若しくはその相補的塩基配列に含まれる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む上記診断薬;BCAS2遺伝子が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む上記診断薬;BCAS2遺伝子の転写領域が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む上記診断薬;BCAS2遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む上記診断薬;GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第11017863番目から第11031950番目までからなる塩基配列若しくはその相補的塩基配列に含まれる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む上記診断薬;DENND2C遺伝子が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む上記診断薬;DENND2C遺伝子の転写領域が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む上記診断薬;DENND2C遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む上記診断薬;GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第11033155番目から第11120417番目までからなる塩基配列若しくはその相補的塩基配列に含まれる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む上記診断薬;本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の転写産物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む上記診断薬;TRIM33遺伝子の転写産物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む上記診断薬;BCAS2遺伝子の転写産物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む上記診断薬;DENND2C遺伝子の転写産物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む上記診断薬;配列表の配列番号1〜8のうちいずれか1の塩基配列からなる核酸プローブを含む上記診断薬;配列表の配列番号9〜14のうちいずれか1の塩基配列からなるプライマーを含む上記診断薬;検出する手段が放射性同位元素標識された検出する手段である上記診断薬;本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の遺伝子産物を特異的に認識する抗体を含む上記の診断薬;TRIM33タンパク質、BCAS2タンパク質又はDENND2Cタンパク質を特異的に認識する抗体を含む上記の診断薬;モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である上記診断薬;配列表の配列番号21に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドを特異的に認識する抗体を含む上記の診断薬;及び検出する手段がエンザイムイムノアッセイ(ELISA)である上記の診断薬が提供される。
【0029】
別の観点からは、本発明により、肺小細胞癌又は乳癌の診断方法であって、ヒトから分離された生体試料において、本発明に係るアンプリコンの増幅及び/又は該アンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進、好ましくは、TRIM33遺伝子の増幅及び/又はTRIM33遺伝子の発現亢進を検出する工程を含む診断方法が提供される。例えば、このような診断方法として、肺小細胞癌又は乳癌の患者から分離された生体試料において、本発明に係るアンプリコンの増幅及び/又は該アンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進、好ましくは、TRIM33遺伝子の増幅及び/又はTRIM33遺伝子の発現亢進を検出する工程を含む、肺小細胞癌又は乳癌の予後診断方法が例示される。上記発明の好ましい態様によれば、上記のいずれかの診断薬を用いることを特徴とする上記の診断方法が提供される。
【0030】
本発明者らは、TRIM33遺伝子の発現を抑制するsiRNAにより、肺小細胞癌又は乳癌由来の細胞の増殖が阻害されることを見出した(図5)。従って、さらに別の観点からは、肺小細胞癌細胞又は乳癌細胞に対する増殖阻害作用を有する物質のスクリーニング方法であって、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子好ましくはTRIM33遺伝子の増幅及び/又は発現を抑制する作用を有する物質を選択する工程を含むスクリーニング方法が提供される。
【0031】
また、本発明により、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の増幅及び/又は発現を抑制する作用を有する物質、好ましくはTRIM33遺伝子の増幅及び/又は発現を抑制する作用を有する物質、例えば上記のスクリーニング方法によりスクリーニングされた物質を有効成分として含む肺小細胞癌又は乳癌の治療のための医薬が提供される。TRIM33遺伝子の発現を抑制する作用を有する物質として、配列表の配列番号17に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドと配列表の配列番号18に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとからなる2重鎖ポリヌクレオチド、配列表の配列番号19に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドと配列表の配列番号20に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとからなる2重鎖ポリヌクレオチドを例示することができる。
【0032】
さらに、肺小細胞癌又は乳癌、好ましくは肺小細胞癌の治療方法であって、上記の物質の治療有効量を肺小細胞癌患者又は乳癌患者、好ましくは肺小細胞癌患者に投与する工程を含む治療方法、及び上記医薬の製造のためのTRIM33遺伝子の増幅及び/又は発現を抑制する作用を有する物質の使用が本発明により提供される。
【0033】
また、本発明により、肺小細胞癌細胞又は乳癌細胞に対する増殖阻害剤であって、以下の群より選ばれる2重鎖ポリヌクレオチドを含む増殖阻害剤が提供される。(1)配列表の配列番号17に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドと配列表の配列番号18に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとからなる2重鎖ポリヌクレオチド、及び(2)配列表の配列番号19に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドと配列表の配列番号20に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとからなる2重鎖ポリヌクレオチド。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、細小細胞癌及び乳癌を簡便かつ確実に診断できる手段が提供される。本発明により、肺小細胞癌及び乳癌の治療のための医薬が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明により提供される診断用マーカーは、肺小細胞癌又は乳癌の患者において検出される癌診断用マーカーであり、本発明に係るアンプリコンの増幅及び/又は本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進を指標とする癌診断用マーカーである。
【0036】
本明細書において、「診断用マーカー」とは、ある者のある疾患の罹患の有無、その程度又はその術後の予後を判定するために用いられる生体由来物質又は該物質を起源とする物質を意味する。従って、癌診断用マーカーとは、癌の罹患の有無、その程度又はその術後の予後を判定するために用いられる生体由来物質又は該物質を起源とする物質を意味する。本発明に係る癌診断用マーカーとして好ましく肺小細胞癌又は乳癌診断用マーカーを例示できる。
【0037】
本発明により提供される診断用マーカーの具体的な態様として、本発明に係るアンプリコン若しくはその部分、又は、該アンプリコンに配座する遺伝子、該遺伝子の転写産物若しくは該遺伝子の遺伝子産物からなることを特徴としている。本発明に係るアンプリコン又はその部分が増幅しており、及び/又は該遺伝子の発現が亢進している場合には、診断対象となった個体が肺小細胞癌又は乳癌に罹患しているか、または、その可能性が高いと診断される。あるいは、本発明に係るアンプリコン又はその部分が増幅しており及び/又は該遺伝子の発現が亢進している肺小細胞癌又は乳癌の患者について、その予後は不良であるあるいはその可能性が高いと診断される。
【0038】
本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子として、例えば、TRIM33遺伝子、BCAS2遺伝子、DENND2C遺伝子が例示される。
【0039】
TRIM33遺伝子(単に「TRIM33」と標記することもある)はアフリカツメガエルの胚形成において外胚葉形成に関与する遺伝子であり、中胚葉誘導因子であるSmad4をユビキチン化することにより阻害する過程を担っている。この遺伝子の情報は当業者に利用可能である(非特許文献1:Cell、121、pp.87−99、2005)。TRIM33遺伝子は任意の哺乳類動物の染色体に存在しており、かつそれによりコードされるTRIM33タンパク質は任意の哺乳類動物において発現していることから、本発明の癌マーカーは任意の哺乳類動物において利用できるが、最も好ましい対象はヒトである。例えば、ヒト由来のTRIM33遺伝子の全長を配列表の配列番号22に例示した。
【0040】
BCAS2遺伝子は染色体1p13.3〜21の領域に配座する遺伝子であり、乳癌において増幅する遺伝子として見出された(Cancer Lett., 185, pp.219-
223, 2002)。この遺伝子の情報は当業者にとって利用可能である。例えば、GenBankアクセッション番号NM_005872にBCAS2遺伝子のORF全長の塩基配列が開示されている。
【0041】
DENND2C遺伝子の情報は当業者にとって利用可能である。例えば、GenBankアクセッション番号NM_198459にDENND2C遺伝子のORF全長の塩基配列が開示されている。
【0042】
本発明に係るアンプリコンは、ヒトを含む哺乳動物から自体公知の方法により入手可能である。具体的には、例えば、ヒトを含む哺乳動物からその細胞核を分離・精製し、その細胞核に含まれるゲノムDNAを抽出した上、該ゲノムDNAを制限酵素などにより断片化し、断片化された該ゲノムDNAをBACなどのベクターへ組み込みことによりゲノムライブラリーを作成する。このゲノムライブラリーから、本発明に係るアンプリコンを検出するためのプローブ(例えば、RP11−1152I1、RP11−1129E18、RP11−625J15、RP11−254K1等)用いて、本発明に係るアンプリコンを単離可能である。あるいは、本発明に係るアンプリコンは、GenBankアクセッション番号NT_019273.18に記載の塩基配列の第10597582 番目から第11121868番目までからなる塩基配列で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域と考えられるため、例えば、この塩基配列に基づき前記のプローブを設計することも可能である。
【0043】
本発明により提供される診断用マーカーとして、本発明に係るアンプリコンの一部又は全部を用いることができ、一部を用いる場合には、2以上の本発明に係るアンプリコンの一部を用いてもよい。
【0044】
本発明に係るアンプリコンの一部として、TRIM33遺伝子が配座する染色体領域、BCAS2遺伝子が配座する染色体領域、DENND2C遺伝子が配座する染色体領域、TRIM33遺伝子の転写領域が配座する染色体領域、BCAS2遺伝子の転写領域が配座する染色体領域、DENND2C遺伝子の転写領域が配座する染色体領域を例示できる。
【0045】
本明細書において、ある遺伝子が配座する染色体領域とは、該遺伝子が位置するゲノムの一部を意味し、該遺伝子のセンス鎖及び対応するアンチセンス鎖いずれを含むゲノム部分を意味する。本発明に係るアンプリコンの一部の入手は、本発明に係るアンプリコンの入手方法と同様に、当業者であれば実施可能である。
【0046】
本明細書において、「遺伝子」とは高分子DNAまたはRNAでの一定の領域の塩基配列により規定される遺伝の作用単位として定義され得る。真核生物の遺伝子はエキソンやイントロンを含むことができる。さらに遺伝子はプロモーターやオペレーターなどの特定の制御機能をもつ核酸上の領域も含むことができる。ある遺伝子が配座する染色体領域のセンス鎖や該遺伝子の転写産物を逆転写してなるcDNAも該遺伝子に含まれる。
【0047】
また、本発明に係るアンプリコンの一部として、本発明に係るアンプリコンを形成する1本鎖ポリヌクレオチド又はその部分ポリヌクレオチドを例示できる。
【0048】
本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の取得は、具体的には、該遺伝子の発現が確認されている適当な起源から常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該ライブラリーから、該遺伝子に特有の適当なプローブやプライマーを用いて所望のクローンを選択することにより取得可能である。遺伝子の起源としては、該遺伝子の発現が確認されている各種の細胞や組織、またはこれらに由来する培養細胞(乳癌又は肺小細胞癌由来の細胞株など)を例示できる。
これら起源からの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニング等はいずれも常法に従って実施することができる。cDNAライブラリーからの所望のクローンの選択は、例えば公知の蛋白質発現系を利用して各クローンについて発現蛋白質の確認を行い、さらに該蛋白質の機能を指標にして実施できる。TRIM33の機能として、Smad4のユビキチン化活性が例示される。
【0049】
TRIM33遺伝子のORF全長は、例えば、GenBankアクセッションナンバーNM_015906.3又は配列表の配列番号22に開示されており、これらの配列に基づいてTRIM33遺伝子に特有の適当なプローブやプライマーを設計することが可能である。このようなプライマーとして、例えば、配列表の配列番号9および10に記載の塩基配列からなるプライマーを例示できる。BCAS2遺伝子のORF全長は、例えば、NM_005872.2に開示されており、本配列に基づいてBCAS2遺伝子に特有の適当なプローブやプライマーを設計することが可能である。DENND2C遺伝子のORF全長は、例えば、NM_198459.2に開示されており、本配列に基づいてDENND2C遺伝子に特有の適当なプローブやプライマーを設計することが可能である。
【0050】
例えば、所望の遺伝子を該遺伝子の発現が確認されている各種の細胞や組織から、上記のプライマーを用いてPCR法などの汎用の手段により該遺伝子を取得することもできる。PCR法の反応条件は特に限定されず当業者が適宜選択することができるが、例えば、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒、1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応工程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができる。
【0051】
例えば、TRIM33遺伝子自体を取得する場合には、増幅されたDNA断片を大腸菌等の宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。プライマー調製及び目的遺伝子のクローニングなどの手法は当業者に周知かつ慣用であり、例えば、モレキュラークロ−ニング第2版、Current ProtocoIs in Molecular Biology.Supplementl〜38,John Wi1ey&Sons(1987−1997)等に記載の方法に準じて行うことができる。また、ヒトTRIM33遺伝子の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列からなるDNAは、例えば、化学合成、遺伝子工学的手法、又は突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法で取得することができる。例えば、TRIM33遺伝子に対して変異原となる薬剤を接触させる方法又は紫外線を照射する方法のほか、遺伝子工学的手法等を用いることができる。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異所発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、上掲モレキュラークローニング第2版に記載の方法に準じて行うことができる。BCAS2遺伝子やDENND2C遺伝子についてもTRIM33遺伝子と同様に取得され得る。
【0052】
本発明により提供される診断用マーカーとして、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子、該遺伝子の転写産物あるいは該遺伝子の遺伝子産物を用いてもよい。本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の転写産物は、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の取得と同様に取得可能である。
【0053】
本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の遺伝子産物(例えば、TRIM33タンパク質、BCAS2タンパク質、DENND2Cタンパク質など)を取得する方法は特に限定されないが、典型的には、上記の方法に従って該遺伝子を取得し、このDNAを適当な発現系に導入することにより該遺伝子産物を発現させ、適宜の方法で発現されたタンパク質を分離及び精製すればよい。ベクターの種類は特に限定されず、例えば、自立的に複製するベクター(例えばプラスミド等)、あるいは宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるベクターなどを利用できる。好ましくは発現ベクターを用いることができ、転写に必要な要素等(例えばプロモーター、ターミネーター、選択マーカー等)が機能的に連結されていることが望ましい。プロモーターは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて当業者が適宜選択することができる。該遺伝子を含む組み換えベクターを適当な宿主(例えば細菌、酵母、真菌、及び高等真核細胞等)に導入することによって形質転換体を作製することができ、得られた形質転換体を該遺伝子の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養し、発現した該遺伝子産物を当業者に利用可能な適宜の手段により分離・精製することができる。
【0054】
本発明により提供される肺小細胞肺癌又は乳癌の診断薬は、ヒトを含む哺乳動物において、本発明に係るアンプリコンの増幅及び/又は該アンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進を検出することができる診断薬であり、好ましくは、ヒトの肺小細胞癌又は乳癌の診断のための診断薬、肺小細胞癌又は乳癌の存在が疑われる患者の診断用の診断薬、ヒトから分離された生体試料において本発明に係るアンプリコンの増幅及び/又は該アンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進を検出することができる診断薬である。
【0055】
本発明に係るアンプリコンが増幅することは、該アンプリコンに含まれる部分も増幅することを意味する。従って、本発明に係るアンプリコンに含まれる部分を検出することができる診断薬も本発明に係る診断薬に含まれる。
【0056】
本明細書において、本発明に係るアンプリコンの増幅とは、本発明に係るアンプリコンのコピー数が増加することを意味する。本発明に係るアンプリコンの増幅はその本来の座位(1p13.2)における増幅に限らず、均一染色領域や二重微染色体における増幅も含まれる。本発明に係るアンプリコンの増幅の程度は、被験試料に含まれる該アンプリコンの量が対照となる健常体における該アンプリコンの量と比較して増加している限りにおいて、特に制限されない。
【0057】
本明細書において、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子とは、本発明に係るアンプリコンに内包される遺伝子を意味し、例えば、TRIM33遺伝子、BCAS2遺伝子、DENND2C遺伝子が例示される。本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進の程度は、被験試料に含まれる該遺伝子の発現が対照となる健常体における該遺伝子の発現と比べて亢進している限りにおいて、特に制限されない。
【0058】
本発明により提供される肺小細胞肺癌又は乳癌の診断薬は、肺小細胞肺癌又は乳癌の存在が疑われるヒトの診断に好適に用いられる。生体試料として、例えば、採取された血液、体液、喀痰、乳汁、生検組織、又は手術により分離された組織を例示可能である。
【0059】
本発明に係るアンプリコンの増幅を検出することができる診断薬として、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の増幅を検出することができる診断薬を例示できる。このような診断薬として、例えば、TRIM33遺伝子の増幅を検出することができる診断薬、BCAS2遺伝子の増幅を検出することができる診断薬、DENND2C遺伝子の増幅を検出することができる診断薬を例示できる。
【0060】
TRIM33遺伝子の増幅を検出することができる診断薬として、例えば、TRIM33遺伝子が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む診断薬;TRIM33遺伝子の転写領域が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む診断薬;TRIM33遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む診断薬;GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10843084番目から第10961466番目までからなる塩基配列若しくはその相補的塩基配列に含まれる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む診断薬を例示できる。より具体的には、配列表の配列番号5〜8に記載の塩基配列のうちいずれか1の塩基配列で表される核酸プローブを含む診断薬、配列表の配列番号9〜10に記載の塩基配列のうちいずれか1の塩基配列からなるプライマーを含む診断薬を例示できる。
【0061】
BCAS2遺伝子の増幅を検出することができる診断薬として、例えば、BCAS2遺伝子が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む診断薬;BCAS2遺伝子の転写領域が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む診断薬;BCAS2遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む診断薬;GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第11017863番目から第11031950番目までからなる塩基配列若しくはその相補的塩基配列に含まれる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む診断薬を例示できる。より具体的には、配列表の配列番号7〜8に記載の塩基配列のうちいずれか1の塩基配列で表される核酸プローブを含む診断薬、配列表の配列番号11〜12に記載の塩基配列のうちいずれか1の塩基配列からなるプライマーを含む診断薬を例示できる。
【0062】
DENND2C遺伝子の増幅を検出することができる診断薬として、例えば、DENND2C遺伝子が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む診断薬;DENND2C遺伝子の転写領域が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む診断薬;DENND2C遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む診断薬;GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第11033155番目から第11120417番目までからなる塩基配列若しくはその相補的塩基配列に含まれる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む診断薬を例示することができる。より具体的には、配列表の配列番号7〜8に記載の塩基配列のうちいずれか1の塩基配列で表される核酸プローブを含む診断薬、配列表の配列番号13〜14に記載の塩基配列のうちいずれか1の塩基配列からなるプライマーを含む診断薬を例示できる。
【0063】
また、本発明に係るアンプリコンの増幅を検出することができる診断薬として、本発明に係るアンプリコンとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む診断薬を例示できる。このような診断薬として、例えば、GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10597582番目から第11121868番目までからなる塩基配列若しくはその相補的塩基配列に含まれる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む診断薬を好ましく例示できる。より具体的には、配列表の配列番号1〜4に記載の塩基配列のうちいずれか1の塩基配列で表される核酸プローブを含む診断薬を好ましく例示できる。
【0064】
本発明に係る診断薬に含まれるポリヌクレオチド(核酸プローブ又はプライマーである場合も含む)の長さは、少なくとも15塩基以上であることが好ましい(Molecular Clonlng:A laboratory Manual,2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor.N.,1989;モレキュラークローニング第2版と称する場合がある)。例えば、サザンハイブリダイゼーションやノーザンハイブリダイゼーションにより本発明に係る診断用マーカーを特異的に検出する場合には、前記ポリヌクレオチドの長さは19〜40bp程度でもよい(モレキュラークローニング第2版)。また、例えば、CGH(Comparative genomic hybridization)法により本発明に係る診断用マーカーを検出する場合には、前記ポリヌクレオチドの長さとして300〜3000bp程度を好ましく例示できる(臨床FISHプロトコール―目で見る染色体・遺伝子診断法―第1版、稲澤譲治ら、1997年;臨床FISHプロトコールと称する場合がある)。
【0065】
本発明に係るアンプリコンの増幅を検出することができる診断薬を用いた本発明に係るアンプリコンの増幅の検出は、例えば、FISH法、サザンブロット法、CGHアレイ法など慣用の方法により実施可能である。例えば、CGHアレイ法を用いる場合、まず被験試料由来のDNAと対照となる正常組織由来DNAをニックトランスレーションでそれぞれFITC(緑色)とテキサスレッド(赤色)でラベリングし、双方の標識DNAの等量からなる混合溶液を調製した上、本発明に係る診断薬がラベルされているスライドグラスに本溶液を加えて競合的なハイブリダイゼーションを実施し、蛍光を検出することより実施することができる。本発明に係るアンプリコンが増幅している場合には、該当箇所において、被験試料由来のDNAを標識したFITC由来の緑色が観察される。
【0066】
本明細書において「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC、0.5% SDSおよび50% ホルムアミドの溶液中で42℃にて加温した後、0.1×SSC、0.5% SDSの溶液中で68℃にて洗浄する条件をいう。ハイブリダイゼーションするポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションする他方のポリヌクレオチドの塩基配列の相補的塩基配列を有するポリヌクレオチドでなくてもよい。ハイブリダイゼーションは、例えば、前記のモレキュラークローニング第2版や前記の臨床FISHプロトコールに記載されている方法に準じて行うことができる。
【0067】
本明細書において、「あるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域」とは、該ポリヌクレオチドとその相補的ポリヌクレオチドから形成される2本鎖ポリヌクレオチドに相当する染色体の部分を意味する。ここで「相当する」とは、完全に一致することを含み、また、高い相同性(例えば、80%以上、好ましくは、90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上)を有することも含む。
【0068】
本発明により提供される肺小細胞肺癌又は乳癌の診断薬として、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを例示できる。このような遺伝子として、例えば、TRIM33遺伝子、BCAS2遺伝子、DENND2C遺伝子を例示できる。
【0069】
TRIM33遺伝子が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドとして、TRIM33遺伝子の転写領域が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、TRIM33遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、GenBankアクセッションナンバーNT_019273に記載された塩基配列の第10847955番目から第10961382番目までからなる塩基配列若しくはその相補的塩基配列に含まれる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを例示できる。
好ましくは、TRIM33遺伝子配列、配列表の配列番号5に記載の塩基配列、配列表の配列番号6に記載の塩基配列、配列表の配列番号7に記載の塩基配列、配列表の配列番号8に記載の塩基配列、配列表の配列番号9に記載の塩基配列及び配列表の配列番号10に記載の塩基配列からなる群より選ばれるいずれか1の塩基配列若しくはその相補的塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、さらに好ましくは、配列表の配列番号5に記載の塩基配列、配列表の配列番号6に記載の塩基配列、配列表の配列番号7に記載の塩基配列、配列表の配列番号8に記載の塩基配列、配列表の配列番号9に記載の塩基配列及び配列表の配列番号10に記載の塩基配列からなる群より選ばれるいずれか1の塩基配列若しくはその相補的塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを例示できる。より具体的には、配列表の配列番号5〜8のうちいずれか1に記載の塩基配列で表される核酸プローブ、配列表の配列番号9又10に記載の塩基配列で表されるプライマーを好ましく例示することができる。
【0070】
BCAS2遺伝子が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドとして、BCAS2遺伝子の転写領域が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、BCAS2遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、GenBankアクセッションナンバーNT_019273に記載された塩基配列の第11017863番目から第11031950番目までからなる塩基配列若しくはその相補的塩基配列に含まれる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを例示できる。好ましくは、BCAS2遺伝子配列、配列表の配列番号7に記載の塩基配列、配列表の配列番号8に記載の塩基配列、配列表の配列番号11に記載の塩基配列、配列表の配列番号12に記載の塩基配列からなる群より選ばれるいずれか1の塩基配列若しくはその相補的塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを例示できる。より具体的には、配列表の配列番号7又は8に記載の塩基配列で表される核酸プローブ、配列表の配列番号11又12に記載の塩基配列で表されるプライマーを好ましく例示することができる。
【0071】
DENND2C遺伝子が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドとして、DENND2C遺伝子の転写領域が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、DENND2C遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、GenBankアクセッションナンバーNT_019273に記載された塩基配列の第11033155番目から第11120417番目までからなる塩基配列若しくはその相補的塩基配列に含まれる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを例示できる。好ましくは、DENND2C遺伝子配列、配列表の配列番号7に記載の塩基配列、配列表の配列番号8に記載の塩基配列、配列表の配列番号13に記載の塩基配列、配列表の配列番号14に記載の塩基配列からなる群より選ばれるいずれか1の塩基配列若しくはその相補的塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを例示できる。より具体的には、配列表の配列番号7又は8に記載の塩基配列で表される核酸プローブ、配列表の配列番号11又12に記載の塩基配列で表されるプライマーを好ましく例示することができる。より具体的には、配列表の配列番号7又は8に記載の塩基配列で表される核酸プローブ、配列表の配列番号13又14に記載の塩基配列で表されるプライマーを好ましく例示することができる。
【0072】
本発明により提供される肺小細胞肺癌又は乳癌の診断薬として、例えば、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の転写産物を検出することができる診断薬を例示できる。このような診断薬は、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進を検出可能である。
【0073】
このような診断薬として、例えば、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の転写産物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む診断薬を例示できる。より具体的には、TRIM33遺伝子の転写産物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド、BCAS2遺伝子の転写産物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド、DENND2C遺伝子の転写産物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドのうち少なくともいずれか1を含む診断薬を例示できる。
【0074】
本発明に係る診断薬に含まれるポリヌクレオチド(核酸プローブ又はプライマーを含む)は、本発明に係るアンプリコンの塩基配列、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の塩基配列等に基づいて設計し、慣用の方法、例えば、化学合成法により製造することが可能である。
【0075】
本発明に係る診断薬として、例えば、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の遺伝子産物を検出することができる診断薬を例示できる。本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の遺伝子産物を検出することができる診断薬として、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の遺伝子産物を認識する、好ましくは特異的に認識する抗体を含む診断薬を例示できる。本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の遺伝子産物として、TRIM33タンパク質、BCAS2タンパク質又はDENND2Cタンパク質を例示できる。具体的には、TRIM33タンパク質、好ましくは、配列表の配列番号21に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドを認識する抗体を含む診断薬を好ましく例示できる。ここでの抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれでもよく、また、2種類以上の生物種由来の抗体を組み合わせたキメラ抗体でもよい。
【0076】
抗体は、本遺伝子産物またはその断片を抗原として用いて作製できる。抗原は、少なくとも8個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも12個、さらに好ましくは15個以上のアミノ酸で構成される。本遺伝子産物に特異的な抗体を作成するためには、本遺伝子産物に固有なアミノ酸配列で表される領域を抗原として用いることが好ましい。抗体の産生には、自体公知の抗体作製法を利用できる。上記抗原を自体公知の方法により動物に投与して免疫誘導を行い、免疫誘導された動物の血清から自体公知の抗体回収法により抗体を回収するか、あるいは、抗体産生細胞を回収して自体公知の永久増殖性細胞への形質転換手段を導入することにより生産できる。
【0077】
本発明に係る診断薬に含まれるポリヌクレオチド(核酸プローブ、プライマーである場合を含む)又は抗体は、本発明に係るアンプリコンの増幅及び/又は該アンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進を検出する機能が阻害されない限りにおいて、該ポリヌクレオチド、該核酸プローブ、該プライマー又は該抗体等を、蛍光標識又は放射性同位元素などの適宜の標識により標識化することが可能である。このような標識手段は当業者に周知かつ慣用されている。
【0078】
本発明により提供される肺小細胞癌又は乳癌の診断方法は、ヒトから分離された生体試料において、本発明に係るアンプリコンの増幅及び/又は該アンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進を検出する工程を含むことを特徴としている。好ましくは、上記に説明したポリヌクレオチド、核酸プローブ、プライマーを用いて本発明に係るアンプリコンの増幅を検出する工程を含み、又は、上記に説明した抗体を用いて該アンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進を検出する工程を含む。上記の2つの工程を組合わせて、本発明に係るアンプリコンの増幅及び該アンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進を検出することも好ましい。より具体的には、TRIM33遺伝子の増幅及び/又はTRIM33遺伝子の発現亢進を検出する工程を含む上記診断方法を例示できる。
【0079】
一般的には、健常のヒト由来の生体試料を対照として用いることにより、ヒトから分離された生体試料において、本発明に係るアンプリコンの増幅及び/又は該アンプリコンに配座する遺伝子の発現亢進を検出することができる。TRIM33遺伝子の増幅及び/又はTRIM33遺伝子の発現亢進を検出する工程を含む診断方法では、典型的には、(1)ヒトから分離された生体試料に含まれるTRIM33遺伝子の量及び/又はTRIM33遺伝子の遺伝子産物の発現量を測定する工程、及び(2)上記(1)で測定したTRIM33遺伝子の量及び/又はTRIM33遺伝子の遺伝子産物の発現量と健常のヒト由来の生体試料に含まれるTRIM33遺伝子の量及び/又はTRIM33遺伝子の遺伝子産物の発現量を比較する工程を含むことが好ましい。健常のヒト由来の生体試料に含まれるTRIM33遺伝子の量及び/又はTRIM33遺伝子の遺伝子産物の発現量を標準値としてあらかじめ用意しておき、この標準値を用いて上記の工程(2)を行うこともできる。
【0080】
本発明により提供されるスクリーニング方法は、肺小細胞癌細胞又は乳癌細胞に対する増殖阻害作用を有する物質のスクリーニング方法であって、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の増幅及び/又は発現を抑制する作用を有する物質を選択する工程を含むことを特徴としている。上記の方法により選択された物質は、肺小細胞癌又は乳癌の治療のための医薬の有効成分として用いることができ、また、上記の方法により選択された物質を肺小細胞癌細胞又は乳癌細胞に対する増殖阻害剤として用いることができる。スクリーニングの対象となる物質の種類は特に制限されず、例えば、有機低分子化合物のほか、高分子化合物、無機化合物、核酸類(RNAiなどに用いる小分子RNAや非天然型塩基を含む核酸などを含む)、糖類、脂質類、又はペプチド類(オリゴペプチド又はポリペプチド類を含む)などの任意の物質が包含される。
【0081】
被験物質によるTRIM33遺伝子の増幅及び/又は発現に対する抑制作用を検出する工程を含むスクリーニング方法では、典型的には、(1)肺小細胞癌細胞又は乳癌細胞におけるTRIM33遺伝子の複製数及び/又はTRIM33遺伝子の遺伝子産物の発現量を被験物質の存在下又は非存在下で測定する工程を含むことが好ましい。肺小細胞癌細胞又は乳癌細胞としては、患者を含むヒトから分離・採取した生体試料(例えば手術により分離した癌細胞を含む組織片など)から分離された肺小細胞癌細胞又は乳癌細胞を用いてもよいが、例えば、安定にTRIM33タンパク質を発現する肺小細胞癌細胞又は乳癌細胞を樹立細胞株として調製して用いてもよい。あるいは、すでに樹立された当業者に入手可能な肺小細胞癌細胞株(例えば、LU−140)又は乳癌細胞株(MCF7)を用いてもよい。TRIM33遺伝子の遺伝子産物を測定するかわりにTRIM33遺伝子の転写産物を測定することも可能である。
【0082】
TRIM33遺伝子の複製数は、上記の核酸プローブやプライマーを用いた慣用の方法、例えば、ノーザンブロット法やCGH法により測定可能である。TRIM33遺伝子の遺伝子産物の発現量は、例えば、ウエスタンブロット法などにより検出可能である。
【0083】
本発明により提供される医薬は、肺小細胞癌又は乳癌の治療のための医薬であって、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の増幅及び/又は該遺伝子の発現を抑制する作用を有する物質を有効成分として含むことを特徴としている。TRIM33遺伝子の増幅及び/又は該遺伝子の発現を抑制する作用を有する物質を有効成分として含む上記医薬を好ましく例示できる。あるいは、例えば、上記のスクリーニング方法によりスクリーニングされた物質を有効成分として含む医薬であってもよい。本発明の医薬はヒトを含む哺乳類動物に投与することができる。また、本発明の医薬の投与形態は特に限定されず、経口的又は非経口的に投与することができる。本発明の医薬は、有効成分である物質であってもよいが、有効成分である物質とともに薬理学的及び製剤学的に許容される製剤用添加物とを含む医薬組成物を調製して投与することが望ましい。
【0084】
例えば、タンパク質を有効成分として含む本発明の医薬は、通常のタンパク質製剤の調製方法に従って製剤化することができ、ポリヌクレオチドを有効成分として含む本発明の医薬も、当業界で利用可能な手段で製剤化して用いることができる。核酸を含む本発明の医薬は、例えば、有効成分である核酸を含む組換えベクターの形態で用いることもできる。上記の組換えベクターには、有効成分である該核酸から生体内で効率的に遺伝子産物が発現されるように、遺伝子発現のために必要な、あるいは遺伝子発現を促進する各種の配列を適宜の順番で組み込んでおいてもよい。本発明の医薬がアンチセンスポリヌクレオチドを含む場合、全長も特に制限されることはない。アンチセンスポリヌクレオチドは、例えば、相補的結合が可能になるように10塩基以上、好ましくは15塩基以上のオリゴヌクレオチドであってもよい。また、本発明の医薬の有効成分として抗体、好ましくはモノクローナル抗体を用いる場合には、抗体は通常の方法で製造することができ、本発明に係るアンプリコンに配座する遺伝子の遺伝子産物、好ましくは、TRIM33タンパク質に特異的に結合可能なモノクローナル抗体も当業者の汎用の方法で製造することができる。
【0085】
肺小細胞癌細胞又は乳癌細胞に対する細胞増殖阻害剤あるいは本発明の医薬の有効成分として好ましいポリヌクレオチドとして、例えば、以下の(1)又は(2)の2重鎖ポリヌクレオチド:(1)配列表の配列番号17に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドと配列表の配列番号18に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとからなる2重鎖ポリヌクレオチド、及び(2)配列表の配列番号19に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドと配列表の配列番号20に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとからなる2重鎖ポリヌクレオチドを例示することができるが、これらに限定されることはない。
【0086】
薬理学的及び製剤学的に許容しうる製剤用添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を用いることができる。経口投与に適する医薬組成物の例としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤等を挙げることができる。非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤、点滴剤、座剤、吸入剤、経皮吸収剤、点眼剤、点耳剤、軟膏剤、クリーム剤、又は貼付剤等を挙げることができる。本発明の医薬の投与量は特に限定されず、有効成分である物質の種類、治療又は予防の目的、患者の年齢や症状、投与経路などの種々の条件に応じて適宜の投与量を選択することが可能であるが、一般的には、成人1日あたり0.001mg〜1000mg程度の投与量範囲から選択することができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
(A)材料と方法
(a)細胞株及び原発癌
合計22種のSCLC細胞株及び1種のMCF7を使用し、細胞を10%のウシ胎児血清及び100 単位/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシンを添加した適切な培地(RPMI-1640又はダルベッコ改変イーグル培地)中で維持した。10人のSCLC患者の手術中に分離された原発癌試料、及び141人の乳癌患者から手術中に分離された原発癌試料を入手した。これらの患者はいずれも術前放射線照射、化学療法、又は免疫療法を受けていなかった。
【0088】
(b)CGHアレイ分析
癌の発生や進行に重要であろうと考えられる遺伝子やSTS(sequence-tagged site)マーカーを持つ800個のBAC/PACクローンを用いてCGHアレイ(MCG Cancer Array-800)を調製し(Cancer Sci., 95, pp.559-563, 2004)、文献記載の方法に従ってハイブリダイゼーションを行った(Cancer Sci., 96, pp.100-110, 2005; Cancer Sci., 96, pp.676-683, 2005)。すなわち、各GBM細胞株からの被検DNA及び健常男性ボランティアから得た対照DNAをそれぞれCy3-dCTP又はCy5-dCTPでラベルし、Cot-1 DNAの存在下でエタノールにより沈殿させ、ハイブリダイゼーション・ミックス(50% ホルムアミド、10% 硫酸デキストラン、2×生理食塩‐クエン酸緩衝液[SSC]、4% 硫酸ドデシルナトリウム[SDS]、pH 7)で再溶解して75℃で10分間変性させた。37℃で10分間プレインキュベーションした後、アレイスライドに各反応液をそれぞれ塗布し、42℃で48〜72時間インキュベートした。
【0089】
ハイブリダイゼーションの後、スライドを50% ホルムアミド溶液で1回、50℃の2×SSC(pH 7.0)で15分間、2×SSCで1回、50℃の0.1% SDSで15分間、及び0.1% Nonidet P-40(pH 8.0)を含む0.1 mol/Lのリン酸ナトリウムバッファー中で室温下に1回(15分間)洗浄し、GenePix 4000B(Axon Instruments)でスキャンした。得られたイメージをGenePix Pro 4.1イメージングソフトウェアで分析した。アレイ全体のLog2比の2/3の平均値が0になるように蛍光比を標準化した。ゼロから有意(>2 SD)に逸脱した平均比は異常値とみなした。
【0090】
(c)蛍光in situハイブリダイゼーション
各細胞株から分裂中期染色体を調製した。先に報告した方法により(Clin. Cancer Res., 15, pp.4705-4713, 2003)、分析すべき領域付近に位置するBACをプローブとして用いてFISH分析を行った。
(d)RT-PCR
全RNAからSuperScriptTM First-Strand Synthesis System(Invitrogen)を使用して単鎖cDNAを生成させ、各遺伝子(TRIM33遺伝子、BCAS2遺伝子、又はFLJ37099遺伝子)の特異的プライマーを用いて増幅させた。cDNA合成の効率を評価するためにグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(GAPDH)を同時に増幅した。
【0091】
(e)抗TRIM33抗体の製造
キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)への結合の便宜のためにアミノ末端システインを用いて下記ペプチド(GenBankアクセッション番号:NP_056990に記載のヒトTRIM33アミノ酸配列第1114-1127番目からなるペプチドRKRLKSDERPVHIK)を合成した。このペプチドをウサギに注射により2回投与し、採血して抗血清を調製した(Operon Biotechnologies Group)。
(e)一過性トランスフェクション、ウエスタンブロット、及びコロニー形成
Mycタグを付したTRIM33(pCMV-Tag3-TRIM33)を発現するプラスミドは、TRIM33の全コード領域である上記RT-PCR産物をMycエピトープと共に真核生物発現ベクターpCMV-Tag3(Stratagene)中にインフレームでクローニングすることにより得た。コロニー形成アッセイのためpCMV-Tag3-TRIM33又は空ベクター(pCMV-Tag3-mock)をFuGENE6(ロッシュ)を用いて細胞にトランスフェクトした。文献記載の方法に従って(Cancer Sci., 94, pp.344-349, 2003)、一過性トランスフェクトした細胞におけるTRIM33タンパク質の発現をトランスフェクト後48時間に抗Myc抗体(Cell Signaling Technology)を用いたウェスタンブロッティング分析により確認した。適当な濃度のG418を用いて6ウェルプレート中で細胞を2週間インキュベートし、70%エタノールで固定してクリスタルバイオレットで染色した。
【0092】
(f)細胞増殖アッセイ
TRIM33を低発現する細胞中にそれぞれpCMV-Tag3-TRIM33又はpCMV-Tag3-mockをトランスフェクトして安定なTRIM33トランスフェクタント及びコントロールを得た。細胞増殖の測定用に96ウェルプレート中に2×103個の細胞を播種した。生細胞数は水溶性テトラゾリウム塩を用いた比色定量分析(cell counting kit-8、同仁化学研究所)により測定した。
(g)免疫組織化学
文献記載の方法に従って(Lab. Invest., 85, pp.257-266, 2005)、ホルマリン固定化パラフィン包埋組織切片を用いて間接IHC法を行った。138人の患者から切除された原発性乳癌試料から調製された組織片を用い、各腫瘍の中央部から採取した組織コア試料の組織マイクロアレイ(TMA)ブロックを調製した。TMAブロックの構築のために、それぞれ代表的な組織片から1又は2個の組織コアを採取し、Tissue Microarrayer(Beecher Instruments)を用いて受容側ブロックにこれらのコアを乗せた。直径2.0 mmのコアを使用し、受容側ブロック中でそれらが0.7〜0.8 mm離れるように配置し138コア試料を含む3個のTMAを構築した。各種濃度のエタノールで試料のパラフィンを除き再水和させた。10 mM クエン酸バッファー(pH 6.0)中で10分間マイクロ波照射する前処理により抗原を再生させた。冷却後、内在ペルオキシダーゼを封鎖するために3% 過酸化水素で切片を処理し、ついで抗ヒトTRIM33ポリクローナル抗体又は健常ウサギ血清と4℃で終夜反応させた。切片をすすぎ、ウサギEnVision+ペルオキシダーゼ(Dako)とインキュベートし、0.05% 過酸化水素及び3,3'-ジアミノベンジジンで染色し、さらにヘマトキシリンで対比染色した。LU-140細胞株を陽性対照として用いた。免疫染色における陰性対照として組織切片を一次抗体及び免疫ペプチドの混合物とインキュベートした。LU-140細胞では全ての癌細胞核で強く染色されていた(2+)。
【0093】
(h)IHC染色分析
各患者の臨床結果を知らされていない2名の病理学者によりスライドの判定を行った。すべての悪性細胞が核染色されていない場合に腫瘍をTRIM33陰性とし、50%を超える腫瘍細胞細胞において核染色が認めれた場合にその腫瘍をTRIM33陽性とした。陰性内部コントロールとして小リンパ球(p16の核染色を示さない)を使用し、下記の基準を適用した。
−:免疫反応性の腫瘍細胞は検出されない
1+:腫瘍細胞の50〜100%が弱い陽性を示す
2+:腫瘍細胞の50〜100%が強い陽性を示す
1+又は2+:TRIM33の発現異常
【0094】
(i)siRNA
先に報告された方法(Cell, 121, pp.87-99, 2005)に従ってsiRNA処理を行なった。Lipofectamine 2000 protocol(Invitrogen)を用いて2本鎖RNAオリゴマー(Sigma genosys、75ng/cm2)を各細胞にトランスフェクトした。コントロール-siRNAとしては無関係なシークエンスのRNAを用いた。
(j)BrdU分析
siRNAを媒体として24時間サイレンシングした後に96ウェル・プレート中に2×103個の細胞を播種した。細胞が付着した後、細胞を無血清で48時間維持した。細胞は無処理又は24時間サイトカイン(TGF-β1、R&D)処理のいずれかとした。BrdU取り込みのために細胞を10μM BrdUと3時間インキュベートし、BrdU labeling and Detection Kit II (Roche)の指示書に従って処理した。実験は3回繰り返した。
【0095】
(B)結果
(a)SCLC細胞株のCGHアレイ分析
22種のSCLC細胞株の全てに同一バッチのMCG Cancer Array-800スライドを用いてそれらの細胞における遺伝子複製数の変化をアッセイした。表1は22種全ての細胞株の全ゲノムの複製数の増減を示す。表2にはそれらのうちで高レベル増幅を与えたクローンを示した。全ての細胞株においてある程度の増減が認められた。CGHアレイ分析により1p、1q、3q、5p、12p、17q、20q、Xp、及びXqの複製数の増加傾向、及び3p、4q、5q、13q、17p、及び22qの複製数の低下傾向が示唆された。22種のSCLC細胞株のうち7種ににおいて高レベルの増幅が認められた(log2比>2、表2)。それら7種の遺伝子のうち2種の遺伝子MYCL1(1p34.2)及びMYC(8q24.21)の高レベルの増幅が2種の細胞株中でそれぞれ認められた。
【0096】
【表1】


【0097】
【表2】

【0098】
(b)FISH法による1p13アンプリコンの決定
1p13がSCLCにおいて顕著なDNA複製増加を与える新規な領域であることから(図1A及びB)、1p13アンプリコンのマップを作成するため、CGHアレイ分析においてこの領域での複製数の増加を与えたSCLC細胞株についてFISH試験を行った。この増幅領域をカバーする7個のFISH用BACを選択した(図1C)。4種のBAC(RP11-1152I1、RP11-1129E18、RP-11625J15、及びRP11-254K1)はLU-140中の二重微小染色体(dmin)上で増幅されたが、他の3種のBACは同一の細胞株中でdminパターンを示さず、1p13アンプリコンから外れた位置であることが示された(図1D)。このようにしてBAC RP11-1152I1とRP11-254K1において1p13アンプリコン中で最小かつ共通の被影響部位、すなわちTRIM33、BCAS2、及びFLJ37099遺伝子を有する部位を特定した。アンプリコンのサイズは500kbにすぎなかった。
【0099】
図1はSCLC細胞株中のTRIM33の増幅((A)〜(D))及び発現レベル((E))を示した図である。(A) LU-140細胞の代表的なCGHアレイイメージを示す。TRIM33の複製数の著しい増加が明瞭な緑シグナル(矢印)として検知された。(B) LU-140細胞中の第1染色体の複製数プロファイルを示す。1p13.2位におけるTRIM33の複製数比率(log2比)が著しく増加した(比率=2.4、矢印)。(C) SCLC細胞株LU-140の分裂中期染色体にハイブリダイズさせたRP11-625J15(TRIM33、緑シグナル)及びコントロールRP11-315D10(RET、赤シグナル)による代表的なFISHイメージを示す。TRIM33(緑)が二重微小染色体上で増幅されること示す。BAC RP11-315D10は同一細胞株中で2種のシグナルを与えた。(D) LU-140細胞株中の1p13.2部位のアンプリコンマップを示す。FISH試験にプローブとして使用した7種のBAC(縦のバー)及び3つの遺伝子(TRIM33、BCAS2、及びFLJ37099)の位置を示す。グラフは1個の細胞あたりの複製数、及びLU-140細胞由来の中期染色体のFISH試験によって決定されたdminの範囲を示す。
【0100】
(c)SCLC細胞株中のTRIM33の過剰発現
TRIM33、BCAS2、及びFLJ37099が増幅の個々のターゲットであるか否かを判断するために、半定量的RT-PCRによりLu-141及びS-1以外の全SCLC細胞株においてこれらの遺伝子の発現レベルを調べた。図1Eに示すように、TRIM33、BCAS2、及びFLJ37099の発現レベルは20種の細胞株のうちそれぞれ17種(85%)、4種(20%)、及び4種(20%)において正常な肺cDNAと比較して上昇しており、これらの3種の遺伝子のうちTRIM33が最も高頻度に過剰発現していた。図1(E)は RT-PCR分析で測定したSCLC細胞株及び正常肺におけるTRIM33の発現を示す。1:ACC-LC-80、2:ACC-LC-173、3:Lu-130、4:Lu134A、5:Lu134B、6:Lu-143、7:87-5、8:S-2、9:ACC-LC-5、10:ACC-LC-172、11:ACC-LC-170、12:PC-6、13:SBC-5、14:Lu-24、15:Lu-135、16:Lu-138、17:Lu-139、18:Lu-165、19:SBC-3、20:Lu-140、21:正常肺。20種の細胞株のうち17種(85.0%)においてTRIM33の過剰発現が認められた。
【0101】
(d)乳癌細胞株におけるTRIM33の増幅
乳癌細胞株での1p13の高頻度増幅が報告されている(Cancer Res., 60, pp.4519-4525, 2000)。先に報告されているCGHによりこの領域において高レベル発現を与えたMCF7乳癌細胞株(Cancer Genet. Cytogenet., 117, pp.153-158, 2000)についてFISH試験を行い、MCF7におけるTRIM33の複製数を調べた。1種のBAC(625J15)はMCF7においても相同染色領域(HSRs)として強いシグナルを与えた(図2A)
(e)SCLC及び乳癌細胞株におけるTRIM33タンパク質の過剰発現
4種のSCLC細胞株(LU-24、LU-139、LU-165、及びLU-140)、2種のNSCLC細胞株(PC-10及びA549)、及び1種の乳癌細胞株(MCF7)におけるTRIM33タンパク質の発現レベルを比較した。図2Bに示すように、LU-140及びMCF7において最大量のTRIM33が認められ、NSCLC細胞株においては最小量であった。TRIM33タンパク質の発現レベルはこの遺伝子の増幅レベルと一致した。
【0102】
図2は乳癌細胞株におけるTRIM33の増幅及び過剰発現を示した図である。(A) BAC RP11-625J15(TRIM33、緑シグナル)及びRP11-315D10(RET、赤シグナル)を用いた乳癌細胞株MCF7由来の分裂中期染色体に対する2色FISH試験の結果を示す。BAC RP11-625J15はMCF7においてHSRとして強いシグナルを与えた。BAC RP11-315D10は同一細胞株中で2種の信号を与えた。(B) 4種のSCLC、2種のNSCLC、及び1種の乳癌細胞株における蛋白抽出物の免疫ブロッティングを示す。1:Lu-24、2:Lu-139、3:Lu-165、4:Lu-140、5:A549、6:PC-10、及び7:MCF7。TRIM33タンパク質の発現レベルは、LU-140及びMCF7における該遺伝子の増幅レベルと一致した。
【0103】
(f)原発性SCLC及び乳癌腫瘍の中のTRIM33タンパク質の過剰発現
原発腫瘍においてTRIM33が過剰発現しているか否かを確認するために免疫組織化学的に10種の原発性SCLC及び141種の原発性乳癌を調べた。図3A-Dに示すように、非腫瘍対照と比較して10種のSCLC腫瘍の全て(100%)において核中でのTRIM33の高発現が認められた。混合小細胞癌(腺癌コンポーネントと複合した肺小細胞癌)の場合には小細胞癌(図3C-D)の部分でのみTRIM33が過剰発現していた。また、原発性乳癌腫瘍においては141種のうちの126種(89%)においてTRIM33の核染色が認められ、TRIM33の発現が増加していた(図3E-H)。腺管上皮内癌においてもTRIM33の核染色が認められた(図3G)。対照として正常な乳腺においては非常に弱い染色のみが認められた(図3H)。
【0104】
図3は肺の原発性小細胞癌及び乳癌におけるTRIM33タンパク質の免疫組織化学染色を示した写真である。小細胞癌における強い核染色(A-D)及び腺癌(D、矢の先端)における低発現、並びに正常肺(A及びC中の星印)における低発現を示す。侵襲性腺管細胞癌(E、F)、侵襲性小葉癌(H、矢の先端)、及び上皮内腺管癌(G)における強度の核染色、及び正常乳腺(H、矢印)における低発現を示す。
【0105】
(g)SCLCにおけるTRIM33の腫瘍形成性
SCLC細胞の細胞増殖に対するTRIM33の影響を調べる目的でTRIM33の全長配列を用いてコロニー形成アッセイを行った。図4Bに示すように、トランスフェクト及びそれに続く薬剤耐性コロニーの選択の2週間後において、空ベクターを導入した細胞に比べてTRIM33でトランスフェクトした細胞により形成された大コロニーの数が増加していた。この増殖促進作用を確認するため外因性TRIM33を安定発現するSBC-3細胞株を樹立した(SBC-3-TRIM33細胞、図4C上段)。予想のとおり、空プラスミドでトランスフェクトした細胞に比べてSBC-3-TRIM33細胞の増殖速度は非常に大きかった。
【0106】
図4は癌細胞増殖に対するTRIM33発現亢進の効果を示した図である。TRIM33 の全長配列を含みMycタグを付した構築物(pCMV-Tag3-TRIM33)又は空ベクター(pCMV-Tag3-mock、コントロール)をHeLa及びSCLC細胞株SBC-3にトランスフェクトした。(A) 50μgの蛋白抽出物及び抗Myc抗体を用いたウエスタンブロッッティングの結果を示す。pCMV-Tag3-TRIM33で一過性トランスフェクトした細胞においてMycタグ付きTRIM33タンパク質が発現していることを示す。(B)トランスフェクト及びそれに続く薬剤耐性コロニー選択の2週間後に6ウェルプレート中でTRIM33トランスフェクトHeLa及びSBC-3細胞により形成されたコロニーは空ベクターでトランスフェクトした細胞により形成されるコロニーよりも多数であった。下のグラフはコロニー形成を定量分析した結果を示す。2 mmを超えるコロニーの数をカウントして3回の独立した実験の平均±SEM(図中のバーはSEを示す)として示した。(C) pCMV-Tag3B-TRIM33でトランスフェクトしG418で選択することにより安定にTRIM33を発現するクローンとして樹立されたSBC-3細胞におけるTRIM33の該SBC-3細胞に対する増殖促進作用、及びコントロールとして空ベクター(empty)でトランスフェクトしたSBC-3細胞の結果を示す。上段は50μgの蛋白抽出物及び抗Myc-タグ抗体を用いてpCMV-Tag3B-TRIM33でトランスフェクトした2クローン(クローン1及び2)をウェスタンブロット分析した結果を示す。両クローンともMyc-タグ付きTRIM33タンパク質を発現していた。下段のグラフは安定なTRIM33発現がSBC-3細胞の増殖に及ぼす影響を示す。所定の日に細胞の生存を水溶性テトラゾリウム塩アッセイで測定した(グラフの各点は3回の独立した試験結果の平均値として示し、バーはSEを示す)。
【0107】
(h)TRIM33を標的とするsiRNAによる増殖阻害
TRIM33の抑制がSCLC又は乳癌細胞の増殖を抑制するか否かを試験する目的でTRIM33を高発現するSBC-5及びMCF7細胞においてTRIM33 siRNAの活性を調べた。TRIM33を標的とするsiRNAは内因性TRIM33タンパク質をトランスフェクトの48〜120時間において顕著に減少させたが、コントロールsiRNA又はトランスフェクト試薬では減少は認められなかった(図5A)。また、TRIM33の発現抑制によりSBC-5及びMCF7細胞の増殖が阻害された(図5B)。これらの結果はTRIM33の過剰発現がSCLC 及び乳癌細胞の増殖促進に関与していることを示しており、TRIM33の発現抑制作用を有する物質によりSCLC及び乳癌細胞の増殖を抑制できることを示している。
【0108】
(i)TGF-βが惹起する細胞分裂停止に対するTRIM33の抑制作用
TRIM33がSmadレスポンスを減じることによりTGF-βの抗増殖作用を抑制する可能性を検討するため、BrdU取り込みによりコントロール及びTRIM33-siRNA-処理MCF7細胞のDNA合成/細胞周期進行をアッセイした。TRIM33の抑制によりBrdU取り込みの基礎速度が阻害され、外因性のTGF-βにより惹起される増殖抑制作用が顕著に増強された(図5C)。この結果は、TGF-βが担う細胞増殖抑制作用をTRIM33が減弱することによりTRIM33がSCLC及び乳癌細胞に対して増殖促進作用を発揮することを示している。
【0109】
図5はTRIM33 mRNAを標的とするsiRNAによる増殖阻害作用を示した図である。TRIM33の増幅及び過剰発現を示すMCF7細胞及びTRIM33の過剰発現を示すSBC-5細胞をリポフェクタミン2000を用いてTRIM33を標的とするsiRNA又はコントロールsiRNAで処理した。(A) ウェスタンブロッティングによって決定されたTRIM33タンパク質の蛋白のレベル。75 ng/cm2のオリゴヌクレオチド(TRIM33又はコントロール)あるいはリポフェクタミン2000のみで細胞を処理し、トランスフェクトの後48及び120時間に細胞を集めた。未処理の細胞を同一条件で維持した。全細胞溶解物50μgをポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、イムノブロッティングで分析した。(B)SBC-5及びMCF7細胞の生存に対するsiRNAオリゴヌクレオチドの影響を示した。MTTアッセイによりトランスフェクト後の所定の時間に細胞の生存数を決定した。結果はリポフェクタミン単独処理(コントロール)細胞の吸光度に対するパーセントとして示し、各点は3回の独立した実験の平均値±SEで示した。(C)コントロール及びTRIM33-siRNA-処理MCF7細胞に対するTGF-βの増殖阻害作用をBrdU取り込みで測定した結果を示す。グラフはDNA合成が活発に行われている細胞の割合を示し、コントロールsiRNAで処理した細胞の吸光度に対するパーセントとして示した。結果は3回の独立した実験の平均値±SEとして示した。
【0110】
例2
(A) 材料と方法
予後因子解析
各症例をTRIM33の染色性を指標としてOSLC1 low群(-および1+)とOSLC1 high群(2+)に分類し、各群の全体生存期間(overall survival)および無憎悪期間(progression-free survival)を検討した。解析はSTAT VIEW softwareを用い、Kaplan-Meier curveを作製し、Logrank testにてp値が0.05未満を有意とした。
(B) 結果
予後におけるTRIM33の発現解析
TRIM33の発現レベルが乳癌の予後因子であるか否かに関して、前記(g)で染色した138の乳癌の症例のうち予後の明らかな134例を対象として、予後因子解析を実施した。図6(A)(B)で示されるように、全体生存期間(overall survival)および無憎悪期間(progression-free survival)のいずれも、OSLC1 high群が有意(p値:0.0285又は0.011)に予後不良であった。この結果から、TRIM33は予後予測のマーカーとして有用であると考えられた
【0111】
配列表には以下の配列を示した。
配列番号1に記載の塩基配列:RP11-1152I1プローブ, +strand, NT_019273(103893839, 120498679):10597582 - 10752202 (Length: 154621) Start: 114491420 - 114646040 (Length: 154621)
配列番号2に記載の塩基配列:RP11-1152I1プローブ, -strand,
配列番号3に記載の塩基配列:RP11-1129E18プローブ, +strand, NT_019273(103893839, 120498679): 10746859 - 10891175 (Length: 144317) Start: 114640697 - 114785013 (Length: 144317)
配列番号4に記載の塩基配列:RP11-1129E18プローブ, -strand
配列番号5に記載の塩基配列:RP11-625J15プローブ, +strand, NT_019273(103893839, 120498679): 10785181 - 10949822 (Length:164642) Start: 114679019 - 114843660 (Length: 164642)
配列番号6に記載の塩基配列:RP11-625J15プローブ, -strand
配列番号7に記載の塩基配列:RP11-254KIプローブ, +strand, NT_019273(103893839, 120498679):10934043 -11121868 (Length: 187826) Start: 114827881 - 115015706 (Length: 187826)
配列番号8に記載の塩基配列:RP11-254KIプローブ, -strand
配列番号9に記載の塩基配列:TRIM33遺伝子の発現解析に用いたFプライマー
配列番号10に記載の塩基配列:TRIM33遺伝子の発現解析に用いたRプライマー
配列番号11に記載の塩基配列:BCAS2遺伝子の発現解析に用いたFプライマー
配列番号12に記載の塩基配列:BCAS2遺伝子の発現解析に用いたRプライマー
配列番号13に記載の塩基配列:DENND2C遺伝子の発現解析に用いたFプライマー
配列番号14に記載の塩基配列:DENND2C遺伝子の発現解析に用いたRプライマー
配列番号17に記載の塩基配列:TRIM33 siRNA(1) センス鎖
配列番号18に記載の塩基配列:TRIM33 siRNA(1) アンチセンス鎖
配列番号19に記載の塩基配列:TRIM33 siRNA(2) センス鎖
配列番号20に記載の塩基配列:TRIM33 siRNA(3) アンチセンス鎖
配列番号21に記載のアミノ酸配列:TRIM33抗体の抗原
配列番号25に記載の塩基配列:GenBankアクセッション番号NT_019273.18に記載の塩基配列の第10597582 番目から第11121868番目までからなる塩基配列
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】SCLC細胞株中のTRIM33の増幅((A)〜(D))及び発現レベル((E))を示した図である。(A) LU-140細胞の代表的なCGHアレイイメージを示す。(B) LU-140細胞中の第1染色体の複製数プロファイルを示す。(C) SCLC細胞株LU-140の分裂中期染色体にハイブリダイズさせたRP11-625J15(TRIM33、緑シグナル)及びコントロールRP11-315D10(RET、赤シグナル)による代表的なFISHイメージを示す。(D) LU-140細胞株中の1p13.2部位のアンプリコンマップを示す。(E) RT-PCR分析で測定したSCLC細胞株及び正常肺におけるTRIM33の発現を示す。
【図2】乳癌細胞株におけるTRIM33の増幅及び過剰発現を示した図である。(A) BAC RP11-625J15(TRIM33、緑シグナル)及びRP11-315D10(RET、赤シグナル)を用いた乳癌細胞株MCF7由来の分裂中期染色体に対する2色FISH試験の結果を示す。(B) 4種のSCLC、2種のNSCLC、及び1種の乳癌細胞株における蛋白抽出物の免疫ブロッティングを示す。
【図3】肺の原発性小細胞癌及び乳癌におけるTRIM33タンパク質の免疫組織化学染色を示した写真である。小細胞癌における強い核染色(A-D)及び腺癌(D、矢の先端)における低発現、並びに正常肺(A及びC中の星印)における低発現を示す。侵襲性腺管細胞癌(E、F)、侵襲性小葉癌(H、矢の先端)、及び上皮内腺管癌(G)における強度の核染色、及び正常乳腺(H、矢印)における低発現を示す。
【図4】癌細胞増殖に対するTRIM33発現亢進の効果を示した図である。(A)蛋白抽出物及び抗Myc抗体を用いたウエスタンブロッッティングの結果を示す。(B)TRIM33トランスフェクトHeLa及びSBC-3細胞により形成されたコロニー数を示す。(C) 安定にTRIM33を発現するクローンとして樹立されたSBC-3細胞におけるTRIM33の該SBC-3細胞に対する増殖促進作用、及びコントロールとして空ベクター(empty)でトランスフェクトしたSBC-3細胞の結果を示す。
【図5】TRIM33 mRNAを標的とするsiRNAによる増殖阻害作用を示した図である。(A) ウェスタンブロッティングによって決定されたTRIM33タンパク質の蛋白のレベルを示す。(B)SBC-5及びMCF7細胞の生存に対するsiRNAオリゴヌクレオチドの影響を示す。(C)コントロール及びTRIM33-siRNA-処理MCF7細胞に対するTGF-βの増殖阻害作用をBrdU取り込みで測定した結果を示す。
【図6】乳癌の134症例を対象としたTRIM33の発現レベルと生存率の相関を示した図である。(A) OSLC1 high群の全体生存期間(overall survival)はOSLC1 low群のそれと比較して有意に短いことを示す。(B) OSLC1 high群の無憎悪期間(progression-free survival)も同様にOSLC1 low群のそれと比較して有意に短いことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の群より選ばれる染色体領域、遺伝子又はタンパク質からなる、肺小細胞癌又は乳癌の診断用マーカー;
(1)GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10597582番目から第11121868番目までからなる塩基配列で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域、
(2)TRIM33(tripartite motif 33)遺伝子、
(3)BCAS2(breast carcinoma amplified sequence-2)遺伝子、
(4)DENND2C(DENN/MADD domain containing 2C)遺伝子、
(5)TRIM33タンパク質、
(6)BCAS2タンパク質、及び
(7)DENND2Cタンパク質。
【請求項2】
TRIM33遺伝子又はTRIM33タンパク質からなる、肺小細胞癌又は乳癌の診断用マーカー;
【請求項3】
肺小細胞癌又は乳癌の診断薬であって、ヒトを含む哺乳類動物において下記(1)の染色体領域の増幅及び/又は下記(2)の遺伝子の発現亢進を検出することができる診断薬;
(1)GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10597582番目から第11121868番目までからなる塩基配列で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域、
(2)TRIM33(tripartite motif 33)遺伝子、BCAS2(breast carcinoma amplified sequence-2)遺伝子、又はDENND2C(DENN/MADD domain containing 2C)遺伝子。
【請求項4】
ヒトの肺小細胞癌又は乳癌の診断のための請求項3に記載の診断薬。
【請求項5】
ヒトから分離された生体試料において、下記(1)の染色体領域の増幅及び/又は下記(2)の遺伝子の発現亢進を検出することができる請求項4に記載の診断薬;
(1)GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10597582番目から第11121868番目までからなる塩基配列で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域、
(2)TRIM33(tripartite motif 33)遺伝子、BCAS2(breast carcinoma amplified sequence-2)遺伝子、又はDENND2C(DENN/MADD domain containing 2C)遺伝子。
【請求項6】
GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10597582番目から第11121868番目までからなる塩基配列で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の診断薬。
【請求項7】
GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10597582番目から第11121868番目までからなる塩基配列若しくはその相補的塩基配列に含まれる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の診断薬。
【請求項8】
TRIM33遺伝子が配座する染色体領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸プローブを含む、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の診断薬。
【請求項9】
GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10843084番目から第10961466番目までからなる塩基配列若しくはその相補的塩基配列に含まれる連続する少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15塩基からなるポリヌクレオチドを含む、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の診断薬。
【請求項10】
配列表の配列番号1〜8のうちいずれか1の塩基配列からなる核酸プローブを含む、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の診断薬。
【請求項11】
配列表の配列番号9〜14のうちいずれか1の塩基配列からなるプライマーを含む、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の診断薬。
【請求項12】
下記の群より選ばれるタンパク質を特異的に認識する抗体を含む、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の診断薬;
(1)TRIM33(tripartite motif 33)タンパク質、
(2)BCAS2(breast carcinoma amplified sequence-2)タンパク質又は
(3)DENND2C(DENN/MADD domain containing 2C)タンパク質。
【請求項13】
抗体がモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である請求項12に記載の診断薬。
【請求項14】
肺小細胞癌又は乳癌の診断方法であって、ヒトから分離された生体試料において下記(1)の染色体領域の増幅及び/又は下記(2)の遺伝子の発現亢進を検出する工程を含む診断方法;
(1)GenBankアクセッションナンバーNT_019273.18に記載された塩基配列の第10597582番目から第11121868番目までからなる塩基配列で表されるポリヌクレオチドにより実質的に示される染色体領域、
(2)TRIM33(tripartite motif 33)遺伝子、BCAS2(breast carcinoma amplified sequence-2)遺伝子、又はDENND2C(DENN/MADD domain containing 2C)遺伝子。
【請求項15】
TRIM33(tripartite motif 33)遺伝子の増幅及び/又はTRIM33遺伝子の発現亢進を検出する工程を含む、肺小細胞癌又は乳癌の診断方法。
【請求項16】
請求項3ないし13のいずれか1項に記載の診断薬を用いる請求項14又は15に記載の診断方法。
【請求項17】
肺小細胞癌細胞又は乳癌細胞に対する増殖阻害作用を有する物質のスクリーニング方法であって、下記の群より選ばれるいずれか1の遺伝子の増幅及び/又は発現を抑制する作用を有する物質を選択する工程を含む方法;
(1)TRIM33(tripartite motif 33)遺伝子、
(2)BCAS2(breast carcinoma amplified sequence-2)遺伝子、及び
(3)DENND2C(DENN/MADD domain containing 2C)遺伝子。
【請求項18】
肺小細胞癌細胞又は乳癌細胞に対する増殖阻害作用を有する物質のスクリーニング方法であって、TRIM33(tripartite motif 33)遺伝子の増幅及び/又は発現を抑制する作用を有する物質を選択する工程を含む方法。
【請求項19】
肺小細胞癌又は乳癌の治療の為の医薬であって、下記の群より選ばれるいずれか1の遺伝子の増幅及び/又は発現を抑制する作用を有する物質を有効成分として含む医薬;
(1)TRIM33(tripartite motif 33)遺伝子、
(2)BCAS2(breast carcinoma amplified sequence-2)遺伝子、及び
(3)DENND2C(DENN/MADD domain containing 2C)遺伝子。
【請求項20】
肺小細胞癌又は乳癌の治療の為の医薬であって、TRIM33(tripartite motif 33)遺伝子の増幅及び/又は発現を抑制する作用を有する物質を有効成分として含む医薬。
【請求項21】
肺小細胞癌の治療の為の医薬であって、TRIM33(tripartite motif 33)遺伝子の増幅及び/又は発現を抑制する作用を有する物質を有効成分として含む医薬。
【請求項22】
肺小細胞癌細胞又は乳癌細胞に対する増殖阻害剤であって、以下の群より選ばれる2重鎖ポリヌクレオチドを有効成分として含む増殖阻害剤;
(1)配列表の配列番号17に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドと配列表の配列番号18に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとからなる2重鎖ポリヌクレオチド、及び
(2)配列表の配列番号19に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドと配列表の配列番号20に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとからなる2重鎖ポリヌクレオチドを含む増殖阻害剤。
【請求項23】
肺小細胞癌又は乳癌の為の医薬であって、以下の群より選ばれる2重鎖ポリヌクレオチドを有効成分として含む医薬;
81)配列表の配列番号17に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドと配列表の配列番号18に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとからなる2重鎖ポリヌクレオチド、及び
(2)配列表の配列番号19に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドと配列表の配列番号20に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとからなる2重鎖ポリヌクレオチドを含む医薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−51172(P2010−51172A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342462(P2006−342462)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【Fターム(参考)】