癌治療のためのドック・ロック(DNL)ワクチン
本発明は、ドック・ロック技術を使用して抗癌ワクチン用DNL複合体を形成するための方法および組成物に関する。好ましい実施形態では、抗癌ワクチン用DNL複合体は、AD(アンカードメイン)部分およびCD20のような異種抗原に付着され、DDD(二両化およびドッキングドメイン)部分に付着される抗CD74抗体またはその抗原結合フラフメントのような樹状細胞抗体部分を含み、ここで2複製のDDD部分が、AD部分に結合する二量体を形成し、結果としてDNL複合体が生じる。抗癌ワクチン用DNL複合体は、CD138negCD20+MM幹細胞のような癌細胞を発現する異種抗原に対抗する免疫反応を誘発し、癌細胞のアポトーシスを誘発し、かつ癌細胞の増殖を阻害するかまたは排除することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法35条119(e)に基づき、2008年8月20日に出願された米国特許仮出願番号第61/090,487号の優先権を主張し、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、多発性骨髄腫のような癌を治療するために、樹状細胞により、in vivoにて抗原を標的とするワクチンの設計および生成に関する。好ましい実施形態では、ワクチンは、ドック・ロック(DNL)法により生成され、ここでエフェクター部分は、AKAPタンパク質由来のアンカードメイン(AD)、並びにプロテインキナーゼA(PKA)由来の二量体化およびドッキングドメイン(DDD)部分に付着させる。DNL複合体は、DDD部分が自発的に二量体化してAD部分に結合すると生成され、結果としてDDDおよびAD結合エフェクターの間が2:1の化学量論比を持つ複合体となる。より好ましい実施形態では、エフェクター部分は、抗CD74抗体およびCD20異種抗原のような腫瘍関連異種抗原を含む。最も好ましい実施形態では、抗CD74抗体はhLL1抗体である。DNLコンストラクトは、多発性骨髄腫(MM)のような癌に対抗するワクチンを生成するため、および多発性骨髄腫または他のCD20を発現する癌を伴う患者のCD20陽性癌細胞のような腫瘍抗原を発現する細胞に対抗して免疫反応を誘発するため、医薬組成物を調製するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄における腫瘍性形質細胞のクローン増殖により特徴付けられる血液系腫瘍である。多くの化学療法剤に反応するものの、MMは標準的療法または大用量の化学療法でも生き残り、化学療法剤に耐性を持つMM癌幹細胞の少数集団が存続することに起因して、ほぼ不治のままであり、患者の大多数は最終的に再発する(Reeceら,Leuk Lymphoma,2008,49:1470−85)。この少数のMM癌幹細胞は、微小残存病変を構成して再発を引き起こし、結局は治療が全て失敗に終わる。従って、MM癌幹細胞を根絶するにはMMの長期にわたる抑制または治療でさえ提供する場合がある。
【0004】
最近では、特徴的な形質細胞表面抗原CD138を発現しないが、B細胞抗原CD20を発現する少数集団のクローン形質B細胞がMM患者のMM細胞株および原発性骨髄の両方から同定された(Matsuiら,Blood 2004,103:2332−6)。この少数集団の細胞は、複数の臨床治療用の抗ミエローマ剤に耐性を持ち、in vitro(Matsuiら,Blood 2004,103:2332−6;Matsuiら,Cancer Res.2008,68:190−7)、および3D培養モデル(Kirshnerら,Blood 2008,112:2935−45)にてクローン原性増殖することができ、in vitroと、第一次移植および第二次移植の両方にて、移植が行われたNOD/SCIDマウスと、においてMM細胞へと分化することができる(Matsuiら,Cancer Res.2008,68:190−7)。従って、これらCD138negCD20+細胞は、推定的に多発性骨髄腫癌幹細胞を提示することを示唆している(HuffおよびMatsui,J Clin Oncol.2008,26:2895−900)。
【0005】
他の癌幹細胞と同様に、MM癌幹細胞は多様な化学療法剤に難治性であり、腫瘍の再増殖および再発の原因になる(HuffおよびMatsui,J Clin Oncol.2008,26:2895−900;YangおよびChang,Cancer Invest.2008,26:741−55)。MM幹細胞のような癌幹細胞を選択的に標的とし、根絶することができる戦略およびアプローチが必要である。癌幹細胞の多剤耐性を有する理由から、免疫療法およびワクチン接種は、特に標準的治療および/または幹細胞移植後の、腫瘍量が大幅に減少したときにこれらの細胞を根絶する可能性のある治療法を提供し得る。多発性骨髄腫の治療を目的とする、特に、MM癌幹細胞に対抗する免疫反応を誘発し、MM癌幹細胞を阻害または根絶することができる有効な組成物、並びに免疫療法およびワクチン接種が必要である。さらには、一般的な癌の治療を目的とする有効な組成物、並びに免疫療法およびワクチン接種法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、MM幹細胞のような癌幹細胞に対抗するワクチンのための方法および組成物を開示し、当該方法および組成物は、ドック・ロック(DNL)法(Changら、2007,Clin Cancer Res 13:5586s−91s)を使用して調製される。DNL技術は、in vivoでの適用に適した、安定し、一定の種々の複合体を生成するために使用されてきた。好ましい実施形態では、DNL複合体は、二量体化およびドッキングドメイン(DDD)部分またはアンカードメイン(AD)部分に付着するhLL1抗体のような抗CD74抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む。DDD部分は自発的に二量化し、各DDD二量体はAD部分に結合する。より好ましい実施形態では、以下の発明を実施するための形態で説明するように、相補的なAD部分またはDDD部分はCD20異種抗原に付着し、抗CD74部分およびCD20異種抗原部分を含むDNL複合体の構造になる。しかし、当業者は、癌に応じて、異なる異種抗原および/または抗体もしくは抗体フラグメントが使用されてよいことを理解するだろう。抗体成分は、樹状細胞(DC)のような抗原提示細胞(APC)にDNL複合体を向け、一方、異種抗原の成分が、標的抗原を発現する細胞に対抗する免疫反応を呼び起こすように処理される。
【0007】
抗体または抗体フラグメントに対して異なる構造および異なる比率の標的抗原(例えばCD20)を備えるさまざまな種類のDNL複合体は、米国特許第7,550,143号(28段落30行目から44段落28行目まで参照により本明細書に組み込まれる)、米国特許第7,521,056号(58段落1行目から84段落45行目まで参照により本明細書に組み込まれる)、米国特許第7,534,866号(31段落1行目から36段落38行目まで参照により本明細書に組み込まれる)、米国特許第7,527,787号(61段落51行目から94段落65行目まで参照により本明細書に組み込まれる)、および米国特許出願公報第2009/006082号(段落[0035]から[0097]まで参照により本明細書に組み込まれる)に開示された方法および組成物のように、請求する方法および組成物の範囲内で構築され、使用されてよい。三量体、四量体、五量体、六量体、および他の構造体から成るDNL複合体が、先に記載した査定済み特許に報告されている。
【0008】
最も好ましい実施形態では、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、軽鎖可変の相補性決定領域(CDR)配列CDR1(RSSQSLVHRNGNTYLH;配列番号1)、CDR2(TVSNRFS;配列番号2)、およびCDR3(SQSSHVPPT;配列番号3)、並びに重鎖可変領域のCDR配列CDR1(NYGVN;配列番号4)、CDR2(WINPNTGEPTFDDDFKG;配列番号5)、およびCDR3(SRGKNEAWFAY;配列番号6)を備えるヒト化またはキメラのLLl抗CD74抗体もしくはそれらの抗原結合性フラグメントを含む。請求するDNL複合体における使用に適したヒト化LL1(hLL1)抗CD74抗体は、米国特許第7,312,318号に開示されており、当該内容の35段落1行目から42段落27行目まで、かつ図1から図4までが参照により本明細書に組み込まれる。代替的に、他の抗CD74抗体、または他のAPCもしくはDC関連抗原に対抗する抗体が使用されてよい。
【0009】
マウスCD20配列(配列番号:7)のような、抗癌ワクチン用のDNL複合体における使用に適したさまざまなCD20異種抗原配列が当技術分野で知られている。使用できる可能性のある他のCD20のアミノ酸配列は、技術者であれば、米国生物工学情報センター(NCBI)のタンパク質データベース(NCBI目録第NP 031667;P19437;AAA37394;BAE47068;ABA29631;BAD77809を参照されたい)のような、周知されている公共のデータベースを介して容易に入手できる。配列本明細書ではマウスCD20配列を記載しているが、技術者であれば、CD20のアミノ酸配列が知られており、幅広い種から容易に入手でき、かつ抗癌ワクチン用のDNL複合体に組み込むことができることを理解するだろう。しかし、技術者であれば、他の腫瘍関連抗原(TAA)が当技術分野で知られており、異なるTAAを発現する腫瘍に対抗する免疫反応を誘起するように、DNL複合体において使用されてよいことを理解するだろう。
【0010】
使用できる可能性のある公知のTAAは、限定されないが、炭酸脱水酵素IX、αフェトプロテイン、α−アクチニン−4、A3、A33抗体に特異的な抗原、ART−4、B7、Ba733、BAGE、BrE3−抗原、CA125、CAMEL、CAP−I、CASP−8/m、CCCL19、CCCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CDl1A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a−e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、CDK−4/m、CDKN2A、大腸−特異的抗原−p(CSAp)、CEA(CEACAM5)、CEACAM6、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP−1、EGP−2、ELF2−M、Ep−CAM、FIt−1、Flt−3、葉酸受容体、G250抗原、GAGE、gpl00、GROB、HLA−DR、HMl.24、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)およびそのサブユニット、HER2/neu、HMGB−1、低酸素誘導因子(HIF−I)、HSP70−2M、HST−2、Ia、IGF−1R、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、IL−2、IL−4R、IL−6R、IL−13R、IL−15R、IL−17R、IL−18R、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−17、IL−18、IL−25、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、KC4−抗原、KS−1−抗原、KS1−4、Le−Y、LDR/FUT、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、MAGE、MAGE−3、MART−1、MART−2、NY−ESO−1、TRAG−3、mCRP、MCP−1、MIP−1A、MIP−1B、MIF、MUCl、MUC2、MUC3、MUC4、MUM−1/2、MUM−3、NCA66、NCA95、NCA90、PAM−4抗体に特異的な抗原、胎盤増殖因子、p53、前立腺酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、PlGF、ILGF、ILGF−1R、IL−6、IL−25、RS5、RANTES、T101、SAGE、S100、サバイビン、サバイビン−2B、TAC、TAG−72、テネシン、TRAIL受容体、TNF−α、Tn抗原、Thomson−Friedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、VEGFR、ED−Bフィブロネクチン、WT−1、17−1A−抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管新生マーカー、bcl−2、bcl−6、Kras、cMET、癌遺伝子マーカー、および癌遺伝子産物(例えばSensiら,Clin Cancer Res 2006,12:5023−32;Parmianiら、J Immunol 2007,178:1975−79;Novellinoら,Cancer Immunol Immunother 2005,54:187−207を参照されたい)を含む。マウスタンパク質のアミノ酸配列のような、異種抗原のアミノ酸配列は、NCBIタンパク質データベースのような公共データベースから容易に獲得できるだろう。
【0011】
技術者であれば、知られている他の抗体またはそれらの抗原結合性フラグメントが、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトに組み込まれる可能性があることをさらに理解するだろう。好ましい実施形態では、抗体は、APC、より好ましくは樹状細胞によって発現された抗原に結合する。当技術分野で知られている樹状細胞に関連する種々の抗原は、限定されないが、CD209(DC−SIGN)、CD34、CD74、CD205、TLR2(toll様受容体2)、TLR4、TLR7、TLR9、BDCA−2、BDCA−3、BDCA−4、およびHLA−DRを含む。好ましい実施形態では、標的抗原はCD74である。しかし、樹状細胞と関連すると知られている他の種類の標的抗原、および、そのような任意の別の抗原を標的とする抗体を組み込んだ抗癌ワクチン用DNLコンストラクトが、請求する方法および組成物において使用されてよい。幾つかの実施形態では、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、抗CD74抗体またはその抗原結合性フラグメント、および別の抗樹状細胞抗体またはフラグメントを含み得る。抗癌ワクチン用DNLコンストラクトにおいて使用され得る例示的な抗体は、限定されないがhLL1(抗CD74、米国特許第7,312,318号)およびhL243(抗HLA−DR、米国特許出願第11/368,296号)を含み、各実施例部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
キメラ抗体の使用は、ヒト抗体の定常領域配列を保有し、従ってマウス抗体と同程度に強いヒト抗マウス抗体(HAMA)反応を誘発しないため好ましい。ヒト化抗体の使用は、HAMA反応を誘起する可能性をさらに引き下げるため、より一層好ましい。以下に考察するように、対応するヒト抗体のフレームワークおよび定常領域配列と、マウスのフレームワークおよび定常領域配列を置換することによりマウス抗体をヒト化する技術は、当技術分野で周知されており、多くのマウス抗癌用抗体に適用されてきた。抗体ヒト化は、1つ以上のヒトフレームワークのアミノ酸残基を親マウスのフレームワーク領域配列に由来する、対応する残基と置換することも含み得る。また、下記に考察するように、ヒト抗体を産生する技術も周知されており、そのような抗体は、対象の抗癌ワクチン用コンストラクトに組み込まれてよい。
【0013】
特定の実施形態では、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、抗癌ワクチン用コンストラクトを投与する前か、同時か、または投与した後に、少なくとも1つの治療薬と併用して投与されてよい。好ましい実施形態では、治療薬は、抗癌ワクチン用の前に投与される。しかし、別の実施形態では、治療薬は、DNLコンストラクトとともに同時投与されてよく、または抱合されてよい。以下により詳細に考察するように、当技術分野で知られている任意の治療薬は、限定されないが、放射性核種、免疫調節剤、抗血管新生薬、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ホルモン、薬物、プロドラッグ、酵素、オリゴヌクレオチド、siRNA、アポトーシス促進剤、光活性治療薬、細胞毒薬物、化学療法剤、毒物、または他の抗体もしくはそれらの抗原結合性フラグメントを含む、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトと併せて使用されてよい。
【0014】
好ましい実施形態では、治療薬は薬物または毒物のような細胞毒薬物である。薬物は、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、ゲムシタビン、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、白金配位化合物、ビンカアルカロイド、置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモンアンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、SN−38、ドキソルビシンおよびそれらの類似体、代謝拮抗剤、アルキル化剤、有糸分裂阻害薬、抗血管新生薬、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP90)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、HDAC阻害剤、アポトーシス促進剤、メトトレキサート、CPT−11、並びにそれらの組み合わせから成る群から選択されることも好ましい。
【0015】
別の好ましい実施形態では、治療薬は、リシン、アブリン、α毒素、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNase)、デオキシリボヌクレアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素および緑膿菌内毒素、並びにそれらの組み合わせから成る群から選択される毒物である。または、免疫調節剤は、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0016】
他の好ましい実施形態では、治療薬は、111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Au、および211Pb、並びにそれらの組み合わせから成る群から選択される放射性核種である。オージェ放出粒子を伴って、実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。例えば、Co−58、Ga−67、Br−80m、Tc−99m、Rh−103m、Pt−109、In−111、Sb−119、1−125、Ho−161、Os−189m、およびIr−192が挙げられる。有利にβ粒子を放出する核種の崩壊エネルギーは、好ましくは<1,000keV、より好ましくは<100keV、最も好ましくは<70keVである。α粒子を生成しながら実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。そのような放射性核種は、限定されないが、Dy−152、At−211、Bi−212、Ra−223、Rn−219、Po−215、Bi−211、Ac−225、Fr−221、At−217、Bi−213、およびFm−255を含む。有利にα粒子を放出する放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは2,000〜10,000keV、より好ましくは3,000〜8,000keV、最も好ましくは4,000〜7,000keVである。有用な、可能性のある追加的放射性同位元素は、11C、13N、15O、75Br、198Au、224Ac、126I、133I、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、197Pt、109Pd、105Rh、142Pr、143Pr、161Tb、166Ho、199Au、57Co、58Co、51Cr、59Fe、75Se、201Tl、225Ac、76Br、169Ybなどを含む。他の実施形態では、治療薬は、色素原および色素から成る群から選択される光活性治療薬である。
【0017】
代替的に、治療薬は、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、δ−V−ステロイド異性化酵素、酵母アルコール脱水素酵素、αグリセロリン酸脱水素酵素、トリオースリン酸異性化酵素、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコース酸化酵素、βガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼから成る群から選択される酵素である。そのような酵素は、例えば、比較的非毒性形態で投与されるプロドラッグと併用して使用されてよく、酵素により標的部位にて細胞毒薬物へと変換され得る。他の代替的な手段では、薬物は、対象の内因性酵素により、毒性を下げて変換されるが、治療用酵素により細胞毒性へと再変換されてもよい。
【0018】
好ましい実施形態では、抗癌ワクチン用DNL複合体は、多発性骨髄腫の治療に有用であるが、技術者であれば、CD20/抗CD74コンストラクトがB細胞リンパ腫、B細胞白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、びまん性B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫のような、他の形態のCD20+癌のような、他の種類の病気に対して潜在的に有用であり得ることを理解するだろう。CD20以外の腫瘍関連異種抗原が使用される場合、技術者は、TAAに関連する任意の種類の癌が、請求するDNL複合体を使用して標的とされ得ることを理解するだろう。
【0019】
さらに他の実施形態は、抗体−DDD融合タンパク質もしくは異種抗原−DDD融合タンパク質、または抗体−AD融合タンパク質もしくは異種抗原−AD融合タンパク質のような融合タンパク質をコードするDNA配列、当該DNA配列を含むベクターおよび宿主細胞、並びに抗癌ワクチン用DNLコンストラクトを産生する融合タンパク質を作製する方法に関する。関連する実施形態は、抗癌ワクチン用DNLコンストラクト、抗体−DDD融合タンパク質もしくは異種抗原−DDD融合タンパク質、または抗体−AD融合タンパク質もしくは異種抗原−AD融合タンパク質を作製するに有用な融合タンパク質を含む。別の実施形態では、DNL複合体のサブユニット成分は、例えば、抗体または抗体フラグメントおよびDDDペプチド、またはCD20異種抗原およびADペプチドの化学的架橋により形成され得る。特定の実施形態については、融合タンパク質または化学的に架橋した抱合体は、診断薬のようなレポーター部分に付着され得る。種々の診断薬は、放射性核種、コントラスト剤、蛍光剤、化学発光剤、生物発光剤、常磁性イオン、酵素、および光活動性診断薬などが当技術分野で知られている。
【0020】
好ましくは、診断薬は、20〜4,000keVの間のエネルギーを持つ放射性核種、または110In、111In、177Lu、l8F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154−158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、または他のγ-、β-、もしくは陽電子放射体から成る群から選択される放射性核種である。
【0021】
診断薬は、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジウム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、およびエルビウム(III)のような常磁性イオン、またはバリウム、ジアトリゾ酸、ヨード化ケシ油エチルエステル、クエン酸ガリウム、イオカルミン酸、イオセタム酸、イオダミド、イオジパミド、ヨードキサム酸、イオグラミド、イオヘキソール、イオパミドール、イオパノ酸、イオプロセム酸、ヨーセファム酸、イオセル酸、イオスラミドメグルミン、イオセメチン酸、イオタズル、イオテトル酸、イオタラム酸、イオトロクス酸、イオキサグル酸、イオキソトリゾ酸、イポダート、メグルミン、メトリザミド、メトリゾ酸、プロピリオドン、および塩化タリウムのような放射線不透過性物質も好ましい。
【0022】
さらに他の実施形態では、診断薬は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド、およびフルオレサミンから成る群から選択される蛍光標識化合物、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルから成る群から選択される化学発光標識化合物、またはルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリンから成る群から選択される生物発光化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】ヒト血液のDCサブセット、B細胞、および単球におけるhLL1の特異的結合を示す図である。
【図1B】ヒト血液のDCサブセット、B細胞、および単球におけるhLL1の特異的結合を示す図である。
【図1C】ヒト血液のDCサブセット、B細胞、および単球におけるhLL1の特異的結合を示す図である。
【図2A】ヒト単球に由来する未熟DC対成熟DCにおけるCD74発現、および当該DCを用いたhLL1の結合効率を示す図である。
【図2B】ヒト単球に由来する未熟DC対成熟DCにおけるCD74発現、および当該DCを用いたhLL1の結合効率を示す図である。
【図2C】ヒト単球に由来する未熟DC対成熟DCにおけるCD74発現、および当該DCを用いたhLL1の結合効率を示す図である。
【図3A】B細胞の悪性Daudi細胞および正常なDCに関するhLL1細胞毒性効果の対象比較を示す図である。
【図3B】B細胞の悪性Daudi細胞および正常なDCに関するhLL1細胞毒性効果の対象比較を示す図である。
【図3C】B細胞の悪性Daudi細胞および正常なDCに関するhLL1細胞毒性効果の対象比較を示す図である。
【図3D】B細胞の悪性Daudi細胞および正常なDCに関するhLL1細胞毒性効果の対象比較を示す図である。
【図4A】hLL1によるDCの構造上の成熟の増進抑制を示す図である。
【図4B】hLL1によるDCの構造上の成熟の増進抑制を示す図である。
【図5A】DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す図である。
【図5B】DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す図である。
【図5A1】DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す図である。
【図5A2】DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す図である。
【図5B1】DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す図である。
【図5B2】DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す図である。
【図6】hLL1治療したDCがTh1エフェクター細胞へと好ましく分化することによるナイーブCD4+T細胞両極性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本明細書で使用するように、内容が単数のみであると明確にしない限り、「1つ(a)」、「1つの(an)」、および「前記(the)」という用語は、単数または複数を指す。
【0025】
本明細書で使用するように、「約」という用語は、値のプラスマイナス10%の範囲にあることを意味する。例えば、「約100」とは、90〜110の間の任意の数を指す。
【0026】
抗体とは、全長の(例えば、正常の免疫グロブリン遺伝子フラグメントの組み換えプロセスにより自然に発生または形成される)免疫ブログリン分子(例えばIgG抗体)、または抗体フラグメントなどの免疫ブログリン分子の免疫活性、抗原結合部分を指す。
【0027】
抗体フラグメントは、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどのような抗体の一部分である。構造に関わらず、抗体フラグメントは、正常な抗体に認識される同一の抗原と結合する。そのため、当該用語は「抗原結合抗体フラグメント」と同意語として使用される。「抗体フラグメント」という用語は、軽鎖および重鎖の可変領域がペプチドのリンカー(「scFvタンパク質)により連結される、さまざまな領域の重鎖および軽鎖、並びに組み換え一本鎖のポリペプチド分子から成る「Fv」フラグメントのような、可変領域から成る単離されたフラグメントも含む。本明細書で使用するように、「抗体フラグメント」という用語は、Fcフラグメントまたは単一のアミノ酸残基のように、抗原結合活性を持たない抗体部分を含まない。例えば、単一ドメインの抗体フラグメントのような他の抗体フラグメントは、当技術分野で知られており、請求するコンストラクトに使用されてよい(例えば、Muyldermansら,TIBS 26:230−235、2001;Yauら,J Immunol Method 281:161−75、2003;Maassら,J Immunol Method 324:13−25、2007を参照されたい)。
【0028】
抗体融合タンパク質という用語は、組み換えにより産生された抗原結合分子を指し、同一または異なる特異性を有する同一または異なる単鎖の抗体または抗体フラグメントのセグメントが連結される。融合タンパク質の原子価は、融合タンパク質が単一の抗原またはエピトープを有する結合アームまたは結合部位の数、すなわち一価、二価、三価、または多価を示す。抗体融合タンパク質の多価性により、複数の相互作用を利用して抗原に結合することができ、従って抗原に結合する結合力を高めることができることを意味する。特異性は、抗体融合タンパク質が結合できる抗原またはエピトープの数、すなわち単一特異性、二特異性、三特異性、多特異性を示す。これらの定義を用いると、天然抗体、例えばIgGは、2つの結合アームを有する二価であるが、1つのエピトープに結合するので単一特異性である。単一特異性で多価の融合タンパク質は、1つのエピトープに対し2つ以上の結合部位を有するが、1つのエピトープにしか結合しない。融合タンパク質は、単一抗体成分、異種抗体成分または複数の複製物の同一抗体成分の、多価的な組み合わせまたは多特異的な組み合わせを備え得る。融合タンパク質は、付加的に抗体または抗体フラグメントおよび治療薬を含み得る。そのような融合タンパク質に適している治療薬の例は、免疫調節剤および免疫調節毒物を含む。好ましい毒物の1つは、リボヌクレアーゼ(RNase)、好ましくは組み換えRNaseを含む。しかし、用語は限定されるものではなく、種々のタンパク質またはペプチドのエフェクターが融合タンパク質に組み込まれてよい。限定されるものではないが、別の例では、融合タンパク質は、以下に考察するようなDNLコンストラクトを産生するAD配列またはDDD配列を含んでよい。
【0029】
キメラ抗体とは、1つの種に由来する抗体、好ましくはげっ歯類の抗体の相補性決定領域(CDR)を備える可変ドメインを含有し、抗体分子の定常ドメインはヒト抗体に由来する組み換えタンパク質である。動物を適用する場合、キメラ抗体の定常ドメインは、ネコまたはイヌのような他種の抗体に由来してよい。
【0030】
ヒト化抗体は組み換えタンパク質であり、1つの種、例えばげっ歯類の抗体に由来する抗体のCDRが、げっ歯類の抗体の重鎖および軽鎖の可変鎖から、ヒトの重鎖および軽鎖可変ドメイン(例えばフレームワーク領域配列)に移植される。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体の定常ドメインに由来する。特定の実施形態では、親(げっ歯類)抗体に由来する限定した数のフレームワーク領域のアミノ酸残基が、ヒト抗体フレームワーク領域配列へと置換され得る。
【0031】
ヒト抗体は、例えば、抗原性誘発に応える特異的ヒト抗体を産生するように「遺伝子操作」されたトランスジェニックマウスから獲得された抗体である。この技術では、ヒト重鎖および軽鎖の遺伝子座の要素は、内因性マウスの重鎖および軽鎖の遺伝子座の標的破壊を含有する胚幹細胞株に由来するマウスの株に導入される。トランスジェニックマウスは、特定の抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、マウスはヒト抗体を分泌するハイブリドーマを産生させるために使用することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を獲得する方法は、Greenら,Nature Genet.7:13(1994),Lonbergら,Nature 368:856(1994)、およびTaylorら,Int.Immun.6:579(1994)により説明されている。完全ヒト抗体が、遺伝子または染色体トランスフェクション法とともにファージ提示技術によって構築することもでき、それら全ては当技術分野で知られている。予防接種を受けていないドナーの免疫ブログリン可変ドメインの遺伝子レパートリーからin vitroにてヒト抗体およびそのフラグメントを作製することについては、例えば、McCaffertyら,Nature348:552−553(1990)を参照されたい。この技術では、抗体の可変ドメイン遺伝子は、線維状のバクテリオファージの主要または微量どちらかの外被タンパク質遺伝子へとフレーム内にてクローンニングされ、ファージ粒子の表面上で、機能的抗体フラグメントとして提示される。線維状の粒子は、一本鎖DNAのファージゲノムの複製を含有しているので、抗体の機能的特性に基づく選択は、その特性を提示する抗体をコードする遺伝子を選択することになる。この方法では、ファージは幾つかのB細胞特性を模倣する。ファージ提示は種々の構成で行うことができ、概説として、例えば、JohnsonおよびChiswell,Current Opiniion in Structural Biology 3:5564−571(1993)を参照されたい。ヒト抗体は、in vitroで活性化させたB細胞から生成されてもよい。米国特許第5,567,610号および米国特許第5,229,275号を参照されたく、それらの実施例部分は参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
図1は、ヒト血液のDCサブセット、B細胞、および単球におけるhLL1の特異的結合を示す。(A)異なるAPCサブセットに対するゲート戦略。(B)APCにおけるCD74発現。(C)細胞上のhLL1の結合効率。数値は平均蛍光強度を示す。
図2は、ヒト単球に由来する未熟DC対成熟DCにおけるCD74発現、および当該DCを用いたhLL1の結合効率を示す。ヒト単球に由来するDC(hGM−CSFおよびhIL−4の存在下で培養5日後)は、FITC標識した抗CD74抗体またはAlexaFluor488標識したhLL1を用いて染色し、併せてHLA−DRおよびCD83に対して蛍光標識したmAbsを用いて染色した。HLA−DR陽性細胞をゲートおよび分析した。(A)未熟DCおよびLPS成熟DCにおけるCD74発現。(B)未熟DC対LPS成熟DCのhLL1結合。(C)未熟DCおよびLPS成熟DCにおけるCD83、HLA−DR、CD74、およびhLL1結合の発現比較。
図3は、B細胞の悪性Daudi細胞および正常なDCに関するhLL1細胞毒性効果の対象比較を示す。(A)DaudiおよびDCに関するhLL1の効果比較(B)広範な用量におけるDCの細胞生存に関するhLL1の効果。(C)Daudi細胞に関するhLL1の細胞毒性効果(D)顕微鏡画像は、DC生存率に関してhLL1の効果が無いことを示す。
図4は、hLL1によるDCの構造上の成熟の増進抑制を示す。hGM−CSFおよびhIL−4の存在下で、ヒト単球に由来する5日後のDCからHLA−DR陽性細胞集団をゲートした。(A)フローサイトメトリーにより抗原提示分子HLA−DR、副刺激分子CD54およびCD86の発現を測定した。(B)抗原提示分子HLA−DR、副刺激分子CD54およびCD86の発現レベル。
図5は、DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す。CFSE標識した同種異系PBMCを用いて、8日(A)または11日(B)にわたりhLL1治療したDCを共培養した。CD4に対してPercp抱合したmAbを用いて拡大したT細胞を染色した。全T細胞、CD4+T細胞、およびCD4−T細胞の細胞増殖を分析した。
図6は、hLL1治療したDCがTh1エフェクター細胞へと好ましく分化することによるナイーブCD4+T細胞両極性を示す。電磁ビーズ(MACS)を用い、枯渇カラムを使用してヒトPBMCから単離したナイーブCD4+T細胞を、hLL1治療した同種異系DCとともに共培養した。異なる時間点(11日目、13日目、18日目)にて細胞を採取し、PMAおよびイオノマイシンを用いて刺激し、蛍光標識したhIFN−gammaおよびhIL−4抗体を用いて染色し、細胞内サイトカインを用いて分析した。Th1/Th2/Th0細胞集団をゲートし、分析した。hLL1治療したDCまたはGAH架橋してhLL1治療したDCにより刺激したT細胞におけるフローサイトカイン産生を測定した。(C)DC/T培養の異なるに日数後における、GAHによる架橋の有り無しでの、2人のドナーにおけるTh1反応のデータを示す。(D)hLL1によるTh1集団の増加に対する線量効果曲線。
【0033】
多発性骨髄腫および他の癌を治療するワクチン
CD20は通常、B細胞株期の細胞に発現する。最近では、CD20がMM細胞株または臨床検体から単離した少数集団のMM細胞において発現し、当該CD20は特徴的な形質細胞表面抗原CD138を発現しないがコロニー形成する高い潜在力を有し、かつ多様な臨床用抗骨髄腫薬に耐性を持つことが報告された(Matsuiら、Blood 2004,103:2332−6;Matsuiら、Cancer Res.2008,68:190−7)。これらCD20+CD138-細胞は、in vitroおよび3−D培養モデルにおいてクローン性増殖することができ(Kirshnerら、Blood 2008,112:2935−45)、in vitroと、一次移植および二次移植の間、移植したNOD/SCIDマウスモデルとにおいてMM細胞へと分化させることができる。従って、これらCD138negCD20+細胞は、推定的な多発性骨髄腫癌幹細胞を提示することが示唆されてきた。
【0034】
癌の免疫療法のために、免疫寛容を絶つ手段として異種抗原を用いて免疫化すること
多くの腫瘍関連抗原(TAA)は、本質的に免疫原性ではない組織分化抗原を提示する。高い親和性を備えるこれらTAA/自己抗原を認識するT細胞は、胸腺にてクローン的に欠落するか、末梢にてアネルギー化される。しかし、異種抗原を用いた免疫化により、相同性の自己抗原に対抗する免疫寛容を克服できることが示されてきた。第一相臨床試験では、組み換えマウスPAPにより活性させた樹状細胞を用いて免疫化した21人の前立腺癌の患者のうち11人の患者は、相同性の自己抗原に反応するI型T細胞増殖性応答を発達させ、6人の患者は、以前まで進行していた前立腺癌が臨床的に安定した(Fongら、J Immunol.2001,167(12):7150−6)。これらの結果は、異種抗原による免疫化がヒトの自己抗原に対する寛容性を遮断させることができ、結果として臨床的に著しい抗腫瘍効果を与えることを証明している。
【0035】
免疫療法の標的およびMMに対するワクチン接種としてのCD20
前述のように、CD20はMM癌幹細胞の証明となる。自己抗原は、ほとんどの分化段階で正常なB細胞に発現するが、免疫寛容に起因してワクチン戦略により標的することが理論的に困難である。しかし、B細胞リンパ腫の腫瘍に挑むモデル作りにおいて、CD20に対抗する異種DNAワクチンにより、成功したワクチン接種が実現されてきた。B細胞に対抗する自己免疫は、CD20を標的とするワクチンにより誘発することができたが、B細胞プールは主要組織および決定組織ではなく、系統の前駆細胞から補充することができるため、大きな問題を起こすものではない。これらを考慮すると、CD20を標的とする治療ワクチンは、MM癌幹細胞の選択的根絶に有効である。
【0036】
MM幹細胞を根絶する潜在的モダリティとしてのモノクローナル抗CD20抗体
CD20+MM前駆細胞の発見は、MM患者におけるリツキシマブ、抗CD20モノクローナル抗体の有効性を試験する、幾つかの小規模な臨床治験を促進させてきた。Kapoorら(Br J Haematol.2008,141:135−48)により概説されているように、リツキシマブを用いた抗CD20治療は、多発性骨髄腫を伴うCD20+患者のおよそ10%において部分的に反応を引き出す。また、10カ月〜27カ月の期間にわたり、CD20+患者の50%〜57%において疾患が安定化するという予備的証拠がある(Kapoorら(Br J Haematol.2008,141:135−48)。さらに、Berguaら(Leukemia.2008,22:1082−3)による症例報告では、リツキシマブが化学療法と併用して使用され、免疫表現型、または骨髄穿刺もしくは骨髄生検のいずれかにて治療後の微小残存病変は見出されず、CD20+形質細胞が消滅したことを実証した。これらの結果は、大規模な臨床治験を納得させ、骨髄腫におけるこの戦略の役割を確立させている。CTL反応を誘発するので、ワクチンアプローチは、CD20MM幹細胞に対抗するモノクローナル抗体治療を補うことが予想される。
【0037】
ワクチン接種および免疫寛容を絶つ効率的な戦略としての、in vivoにおける樹状細胞および他抗原提示細胞に対する抗原の標的
プロフェッショナルな抗原提示細胞として、樹状細胞(DC)は先天性免疫および獲得性免疫の編成において極めて重要な役割を果たし、効果的なワクチンを作製するために利用されてきた(Vulinkら,Adv Cancer Res.2008,99:363−407;O’Neillら,Mol Biotechnol.2007,36:131−41)。In vivoにて、DCに対して抗原を標的とすることにより、骨の折れる高価なex vivoでの抗原負荷および培養を避け、DCに基づいた免疫療法を大規模に適用することを促すことができるので、DCに基づいたワクチン接種への有望なアプローチを意味する(Tackenら、Nat Rev Immunol.2007,7:790−802)。より著しくは、in vivoにおいてDCを標的とするワクチン接種は、抗腫瘍免疫反応を引き出すことに一層効率的であり、動物モデルにおいて腫瘍増殖を制御することに一層効果的である(Kretz−Rommelら,J Immunother 2007, 30:715−726)。DCに加え、B細胞もTh1/Th2細胞を初回刺激し(Morrisら,J Immunol.1994,152:3777−3785;Constant,J Immunol.1999,162:5695−5703)、相互提示を介してCD8T細胞を活性化することができる可能性のある、別の種類の抗原提示細胞である(Heitら,J Immunol.2004,172:1501−1507;Yanら,Int Immunol.2005,17:869−773)。in vivoにおいてB細胞に対して抗原を標的とすることによりMUClの免疫寛容を絶つことが近頃報告された(Dingら,Blood 2008,112:2817−25)。
【0038】
ワクチン接種を標的とする可能性のある受容体としてのCD74
マンノース受容体のようなDC上に発現した幾つかの受容体は、in vivoにおいて抗原を標的とする対象として使用されてきた(Heら,J.Immunol 2007,178,6259−6267;Ramakrishnaら、J.Immunol.2004,172,2845−2852)、CD205(Bonifazら,J Exp Med.2004,199:815−24)、DC−SIGN(Tackenら,Blood 2005,106:1278−85)、およびLOXl(Deinesteら,Immunity 2002,17,353−362)など。CD74はMHC IIを正しくフォールディングし、エンドソームにMHCII−CD74複合体を標的させるのに必須のII型内在性膜タンパク質である(Steinら,Clin Cancer Res.2007,13:5556s−5563s;Matzaら,Trends Immunol.2003, 24(5):264−8)。CD74発現は、DCに制限されないが、ほとんど全ての抗原提示細胞に見出される(Freudenthalら,Proc Natl Acad Sci USA.1990,87:7698−702;Clarkら,J Immunol.1992,148(11):3327−35)。APCにおけるCD74の広範な発現は、B細胞のような他のAPCに抗原を標的とすることが免疫寛容を絶つと報告されてきたので、骨髄DCでのただ1つの発現に対して幾つかの有利性を提供し得(Dingら,Blood 2008,112:2817−25)、相互提示抗原ナイーブCD8T細胞へと形質細胞様のDC相互提示抗原に標的する。より重要なことに、CD74も濾胞状DCに発現し(Clarkら,J Immunol.1992,148(11):3327−35)、B細胞に対して抗原提示するに重要なDCサブセットである(Tewら,Immunol Rev.1997,156:39−52)。この発現プロファイルにより、CD74は、in vivoにおいて標的とするワクチン接種のための優秀な候補となる。
【0039】
ドック・ロック技術プラットフォームの新規標的ツールとしてのヒト化抗CD74モノクローナル抗体hLL1
以下にさらに詳細に考察するDNL技術は、任意選択したエフェクター部分を共有結合性複合体または非共有結合性複合体へと実質的に結合させる手段を提供する(Goldenbergら,J Nucl Med.2008,49:158−63;Rossiら,Proc Natl Acad Sci USA.2006,103(18):6841−6)。DNL法は、癌胎児性抗原(CEA)と反応するFabフラグメントを含有する幾つかの三価、二価特異的結合タンパク質を生成させ、プレターゲティング戦略を介して改善した癌画像診断、放射性免疫療法に成功的に使用されてきた(Goldenbergら,J Nucl Med.2008,49:158−63)。
【0040】
hLL1は、ヒトCD74に対抗するヒト化モノクローナル抗体である(Leungら,Mol Immunol.1995,32:1416−1427;Losmanら,Cancer 1997,80:2660−2666;Steinら、Blood 2004,104:3705−11)。第二抗体による架橋結合の存在下では、このMAbは、B細胞悪性腫瘍に対抗する細胞毒性を示す。裸のhLL1もMMマウスモデルの腫瘍増殖を制御することができる。しかし、出願人らの最近のデータでは、架橋結合の有り無しで、hLL1はヒト単球由来のDCに対抗する細胞毒性が無いことを実証している。しかし、出願人らの準備中のデータでは、hLL1が血中のDCおよびB細胞の異なるサブセットを効率的に結合させることができることを示している。hLL1は、アジュバンド活性を有し、標的ツールとして使用するにふさわしい候補であり得ることを示唆しながら、DC成熟を適度に誘発し、Th1エフェクター細胞へとナイーブT細胞分化を極性化することができる。これにより、DNLによりもたらしたhLL1抗体を介して、APCを標的とするDNLに基づいた腫瘍用ワクチンを構築することが可能となり、かつ実現することができる。
【0041】
癌幹細胞を選択的に除去する免疫療法
癌幹細胞は自己複製することができ、無制限に増殖する能力を保有し、多様な治療手段に耐性を持つ。癌幹細胞が免疫療法に対して感応性である場合、差し迫った興味深い質問が挙げられる。白血病の症例では、CD8(+)非主要組織適合性の抗原特異的細胞毒性Tリンパ球クローンはヒト急性骨髄性白血病の幹細胞を排除することができることが報告された(Bonnetら、Proc Natl Acad Sci U.S.A.1999,96:8639−8644)。つい最近では、Rosinskiら(Blood 2008,111:4817−26)により、DDX36をコードするH−Yエピトープが白血病性幹細胞により発現され、DDX36特異的CTLにより認識することができ、NOD/SCIDマウスにおいてヒト急性白血病の移植を防ぐことができることが報告された(Rosinskiら,Blood 2008,111:4817−26)。別の報告では、NOD/SCIDγcnullマウスへのmHA骨髄性白血病の幹細胞の移植は、mHA特異的CTLクローンを用い、in vitroにおけるプレインキュベーションにより完全に阻害されることを示している(Kawaseら,Blood 2007,110:1055−63)。これらの結果は、免疫療法が、この悪性腫瘍の長期間にわたる抑制または治療でさえ実現するということに必要とされる、MM幹細胞を含む癌幹細胞を選択的に根絶する可能性のある、効果的な手段であるという見込みを浮き彫りにしている。
【0042】
ドック・ロック(DNL)法
DNL法は、cAMP依存的タンパク質キナーゼ(PKA)の調節(R)サブユニットとAキナーゼアンカータンパク質(AKAP)のアンカードメイン(AD)との間に生じる特異的なタンパク質/タンパク質の相互作用を利用する(Baillieら,FEBS Letters.2005;579:3264.WongおよびScott,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2004;5:959)。Rサブユニットへの二次メッセンジャーcAMPの結合により引き起こされる、最もよく研究されたシグナル伝達経路の1つにおいて中心的な役割を果たすPKAは、1968年に、まずウサギ骨格筋から単離された(Walshら,J.Biol.Chem.1968;243:3763)。ホロ酵素の構造は、Rサブユニットにより不活性型に保持された2つの触媒サブユニットから成る(Taylor,J.Biol.Chem.1989;264:8443)。PKAのアイソザイムは2種類のRサブユニット(RIおよびRII)を用いて認められ、各種類はαアイソフォームおよびβアイソフォームを有する(Scott,Pharmacol.Ther.1991;50:123)。Rサブユニットは、安定した二量体としてのみ単離され、二量化ドメインは最初の44アミノ末端残基から成ることが示された(Newlonら,Nat.Struct.Biol.1999;6:222)。RサブユニットへのcAMPの結合により、セリン/スレオニンキナーゼ活性の広域スペクトルに対して活発な触媒サブユニットを遊離させ、これがAKAPとのそのドッキングを介してPKAの区分を通って選択した基質へと配向させる(Scottら,J Biol.Chem.1990;265;21561)。
【0043】
最初のAKAPである微小管結合タンパク質−2が1984年に特性が明らかになってから(Lohmannら,Proc.Natl.Acad.Sci USA.1984;81:6723)、細胞膜、アクチン細胞骨格、核、ミトコンドリア、および小胞体を含むさまざまな細胞内部位に局在する、50を上回るAKAPが、酵母からヒトに及ぶ種の多種多様な構造体を用いて同定されてきた(WongおよびScott,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2004;5:959)。PKAについての、AKAPのADは、14〜18残基の両親媒性ヘリックスである(Carrら,J.Biol.Chem.1991;266:14188)。ADのアミノ酸配列は、個体のAKAPにおいてかなりばらつきがあり、2〜90nMに及ぶRII二量体についての結合親和性も報告されている(Altoら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2003;100:4445)。興味深いことに、AKAPは二量体Rサブユニットにしか結合しないようである。ヒトRIIαについて、ADは23アミノ末端残基により形成された疎水性表面に結合する(ColledgeおよびScott,Trends Cell Biol.1999;6:216)。従って、ヒトRIIαの二量体形成ドメインおよびAKAP結合ドメインは、どちらも同じN末端44アミノ酸配列内に位置し(Newlonら,Nat.Struct.Biol.1999;6:222;Newlonら、EMBO J.2001;20:1651)、本明細書ではDDDと呼ぶ。
【0044】
ヒトRIIαのDDDおよびリンカーモジュールとしてのAKAPのAD
以下にAおよびBと呼ぶ任意の2つの実体を非共有結合性複合体へとドッキングして、ジスフィルド結合の形成を促す戦略的位置においてDDDおよびAD両方にシステイン残基を導入することにより、さらに安定した繋留構造へとロックする、優れた一対のリンカーモジュールとしてヒトRIIαのDDDおよびAKAPのADを利用するプラットフォーム技術を開発した。「ドック・ロック」アプローチの一般的方法論は以下の通りである。実体Aは、Aの前駆物質にDDD配列を連結させることにより構築され、結果として以下に本明細書でaと呼ばれる第1コンポーネントになる。DDD配列は自発的な二量体の形成に影響を与えるので、従ってAはa2から構成される。実体BはBの前駆物質にAD配列を連結させることにより構築され、結果として以下に本明細書でbと呼ばれる第2コンポーネントになる。a2に含有されるDDDの二量体モチーフは、bに含有されるAD配列に結合させるためのドッキング部位を作り出し、従って、a2およびbの迅速な結合を促してa2bから構成される二成分の三量体複合体を形成する。この結合の事象は、ジスフィルド架橋を介して2つの実体を共有結合的に固定する後の反応によって不可逆的に産生され、これにより最初の結合相互作用による反応性のチオール基が、DDDおよびAD上に近接して集まって部位特異的にライゲーションするので、効果的な局所集中するという原理に基づき非常に効果的に生じる(Chmuraら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2001;98:8480)
【0045】
好ましい実施形態では、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、a2b構造の変異に基づき、hLL1抗体またはフラグメントのような抗CD74抗体またはF(ab’)2もしくはF(ab)2抗体フラグメントの各重鎖は、そのC末端にてAD部分の1つの複製に付着する。抗体またはフラグメントごとに重鎖が2つあるので、抗体またはフラグメントごとに2つのAD部分が存在する。CD20異種抗原は、相補的にDDD部分に付着する。DDD部分の二量化後、各DDD二量体は、IgG抗体またはF(ab’)2もしくはF(ab)2フラグメントに付着するようにAD部分の1つに結合し、結果としてIgGまたはF(ab’)2もしくはF(ab)2ユニットごと、化学量論的に4つのCD20異種抗原になる。しかし、技術者であれば、AD配列へのCD20の付着およびDDD部分への抗CD74MAbまたはフラグメントの付着のような別の複合体が利用されてよく、結果として化学量論的に異なるエフェクター部分になることを理解するだろう。例えば、IgG抗体またはF(ab’)2フラグメントの各重鎖のC末端にDDD配列を付着させ、CD20異種抗原にAD配列を付着させることにより、DNL複合体は、1つのCD20分子と1つの抗CD74抗体またはフラグメントとを含んで構築されてよい。
【0046】
2つの前駆物質の官能基から離れてDDDおよびADを付着させることにより、そのような部位特異的なライゲーションは、2つの前駆物質の本来の活性を防ぐようになるものと予想される。このアプローチは、実質的にモジュラーであり、可能性として、部位特異的および共有結合的に広範な物質を連結させることができる。
【0047】
以下の実施例で例示されるような好ましい実施形態では、エフェクター部分はタンパク質またはペプチドであり、DDDユニットまたはADユニットに連結させて融合タンパク質またはペプチドを形成することができる。目的の融合タンパク質をコードする合成二本鎖核酸を産生する核酸合成、ハイブリダイゼーション、および/または増幅を含む、融合タンパク質を作製するための種々の方法が知られている。そのような二本鎖核酸は、標準的な分子生物学の技術を用いて、融合タンパク質を産生する発現ベクター内に挿入され得る(例えばSambrookら,Molecular Cloning,A laboratory manual,2nd Ed,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,1989を参照されたい)。そのような好ましい実施形態では、AD部分および/またはDDD部分は、エフェクタータンパク質またはペプチドのN末端またはC末端のどちらかに付着されてよい。しかし、技術者であれば、エフェクター部分へのAD部分またはDDD部分の付着部位は、その生理学的活性に関わるエフェクター部分のエフェクター部分およびその一部(単数および複数)の化学的性質に依存して変化させてよいことを理解するだろう。例えば、AD部分またはDDD部分は、抗原結合活性を維持しながら抗体または抗体フラグメントのN末端またはC末端のどちらかに付着され得るが、C末端位置への付着はAD部分またはDDD部分を抗原結合部位から離れて位置決めを行い、結果として一層強力な相互結合作用をもたらすようである(例えばChangら,Clin Cancer Res 2007,13:5586s−91s)。さまざまなエフェクター部分の部位特異的付着は、二価架橋結合試薬および/または他の化学的抱合技術の使用のように、当技術分野で知られている技術を使用して行われてよい。
【0048】
抗体および抗体フラグメント
さまざまな実施形態では、抗体または抗体の抗原結合性フラグメントは、抗癌ワクチン用のDNL複合体に組み込まれ得る。抗原結合性抗体フラグメントは、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどのように当技術分野で周知されており、そのように知られている任意のフラグメントが使用されてよい。本明細書で使用するように、抗原結合性抗体フラグメントとは、未変化の抗体または親抗体により認識される同一抗原と結合する抗体の任意のフラグメントを指す。実質的に目的とする任意の抗体またはフラグメントを抱合させる、ADおよび/またはDDD調製する技術が知られている(例えば米国特許第7,527,787号)。
【0049】
「裸の」抗体またはそのフラグメントと言われる、治療薬に抱合されていない抗体またはそのフラグメントが使用されてよい。別の実施形態では、抗体またはフラグメントは、1つ以上治療薬のおよび/または診断薬に抱合されてよい。そのような広範な種類の治療薬および診断薬は、以下で詳細に考察するように当技術分野で知られており、そのように知られている任意の治療薬または診断薬が使用されてよい。
【0050】
CD74のような実質的に任意の標的抗原に対抗するモノクローナル抗体を調製する技術は、当技術分野で周知されている。例えば、KohlerおよびMilstein,Nature 256:495(1975),並びにColiganら(eds.),CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,VOL.1,pages2.5.1−2.6.7(John Wiley&Sons 1991))を参照されたい。簡単に述べると、モノクローナル抗体は、抗原を含む組成物を用いてマウスに注入することと、Bリンパ球を獲得するために脾臓を取り出すことと、ハイブリドーマを産生するように骨髄腫細胞を用いてBリンパ球を融合することと、ハイブリドーマをクローニングすることと、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択することと、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、ハイブリドーマ培養から抗体を単離することとにより獲得できる。
【0051】
MAbは、既に確立された種々の技術によりハイブリドーマ培養から単離し、精製することができる。そのような単離技術は、タンパク質Aセルファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーを含む。例えば、Coliganの2.7.1ページ〜2.7.12ページと2.9.1ページ〜2.9.3ページとを参照されたい。また、Bainesら、in METHODs IN MOLECULAR BIOLOGY,VOL.10,79ページ〜104ページの“Purification of Immunoglobulin G(IgG),”(The Humana Press,Inc.1992)も参照されたい。
【0052】
まず免疫原に対する抗体を生じさせた後、抗体を配列決定し、続いて組み換え技術により調製することができる。マウス抗体および抗体フラグメントのヒト化およびキメラ化は、当業者に周知されている。使用する抗体成分は、マウス定常領域の免疫原性と結合する可能性のある問題が取り払われたヒト化、キメラ、またはヒト抗体に由来する。
【0053】
キメラ抗体
キメラ抗体は、ヒト抗体の可変領域が例えば、マウス抗体の相補性決定領域(CDR)を含むマウス抗体の可変領域に置換されている組み換えタンパク質である。キメラ抗体は、対象に投与されると、低い免疫原性および高い安定性を呈する。マウス免疫ブログリンの可変ドメインをクローニングする一般的な技術は、例えばOrlandiら、Proc.Nat’l Acad.Sci USA 86:3833(1989)に開示されている。キメラ抗体を構築する技術は、当業者に周知されている。一例として、Leungら、Hybridoma13:469(1994)は、マウスLL2のVκおよびVHドメイン、抗CD22モノクローナル抗体をコードするDNA配列をそれぞれヒトκおよびIgGI定常領域ドメインと組み合わせることによりLL2キメラを産生させた。
【0054】
ヒト化抗体
ヒト化MAb産生する技術は、当技術分野で周知されている(例えばJonesら、Nature 321:522(1986),Riechmannら,Nature 332:323(1988),Verhoeyenら、Science 239:1534(1988),Carterら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4285(1992),Sandhu,Crit.Rev.Biotech.12:437(1992),およびSingerら,J.lmmun.150:2844(1993)を参照されたい)。キメラまたはマウスのモノクローナル抗体は、マウス免疫ブログリンの重鎖および軽鎖の可変鎖由来のマウスCDRをヒト抗体の対応する可変ドメインに移植することによりヒト化され得る。キメラモノクローナル抗体のマウスのフレームワーク領域(FR)も、ヒトFR配列と置換される。単にヒトFRにマウスCDRを移植するだけでは、抗体親和性が低下するか、失われてしまうという結果に陥ることがあり、マウス抗体の本来の親和性を回復させるために付加的な修飾が必要な場合がある。これは、そのエピトープに良好な結合親和性を持つ抗体を獲得するように、FR領域にある1つ以上のヒト残基をマウスの対応物と置換することにより成し遂げることができる。例えば、Tempestら、Biotechnology 9:266(1991)およびVerhoeyenら、Science 239:1534(1988)を参照されたい。一般的に、これらマウスの対応物と異なり、1つ以上のCDRのアミノ酸残基に近接または接触して配置されたヒトFRのアミノ酸残基は、置換の候補であろう。
【0055】
ヒトLL1(hLL1)抗CD74抗体は、米国特許第7,312,318号により開示されており、35段落1行目から42段落27行目まで、および図1から図4までが参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
ヒト抗体
組み合わせアプローチまたはヒト免疫ブログリンの遺伝子座を用いて形質変換したトランジェニック動物のどちらかを使用して完全ヒト抗体を産生する方法は、当技術分野で知られている(例えばManciniら,2004,New Microbiol.27:315−28;ConradおよびScheller,2005,Comb.Chem.High Throughput Screen.8:117−26;BrekkeおよびLoset,2003,Curr.Opin.Phamacol.3:544−50)。完全ヒト抗体はまた、遺伝子形質変換法または染色体変換法とともに、ファージ提示技術により構築することもでき、これら全てが当技術分野で知られている。例えば、McCaffertyら、Nature 348:552−553(1990)を参照されたい。そのような完全ヒト抗体は、キメラまたはヒト化抗体よりも少ない副作用さえ呈し、in vivoにおいて本質的に内在性のヒト抗体として機能すると予想される。特定の実施形態では、請求する方法および手順は、そのような技術により産生されるヒト抗体を利用してよい。
【0057】
1つの代替的な手段では、ファージ提示技術はヒト抗体を生成するために使用されてよい(例えばDantas−Barbosaら、2005,Genet.MoI Res.4:126−40)。ヒト抗体は健常なヒト、または癌のような特定の疾患状態を呈するヒトから生成させてよい(Dantas−Barbosaら、2005)。疾患を持つ個体からヒト抗体を構築する有利性は、循環する抗体レパートリーが、疾患関連抗原に対抗する抗体に向かって偏り得ることである。
【0058】
限定されない、この方法論の一例では、Dantas−Barbosaら(2005)により骨肉種の患者に由来するヒトFab抗体フラグメントのファージ提示ライブラリーが構築された。一般的に、総RNAは循環血中のリンパ球から獲得された(同著者)。組み換えFabはμ鎖、γ鎖、およびκ鎖の抗体レパートリーからクローニングされ、ファージ提示ライブラリーに挿入された(同著者)。RNAはcDNAへと変換され、重鎖および軽鎖の免疫ブログリン配列に対する特異的プライマーを使用してFabのcDNAライブラリーを作製するために使用される(Marksら、1991,J MoI.Biol.222:581−97)。ライブラリー構築はAndris−Widhopfら(2000,In:Pharge Display Laboratory Manual,Barbasら(eds),1st edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY pp.9.1〜9.22)に従い行われた。最終的なFabフラグメントは制限酵素を用いて消化され、ファージ提示ライブラリーを作製するためにバクテリオファージゲノムに挿入された。そのようなライブラリーは、当技術分野で知られているような準的なファージ提示方法によりスクリーニングされ得る(例えばPasqualiniおよびRuoslahti,1996,Nature 380:364−366;Pasqualini,1999,The Quart.J.Nucl.Med.43:159−162を参照されたい)。
【0059】
ファージ提示は、種々のフォーマットにて行うことができ、それらの概説として、例えばJohnsonおよびChiswell,Current Opinion in Structural Biology 3:5564−571(1993を)参照されたい。ヒト抗体は、in vitroにおいて活性化したB細胞により生成されてもよい。米国特許第5,567,610号および米国特許第5,229,275号を参照されたく、それら全体は参照により本明細書に組み込まれる。技術者であれば、これらの技術が例示的なものであり、ヒト抗体または抗体フラグメントを作製およびスクリーニングする、知られている任意の方法が利用されてよいことを理解するだろう。
【0060】
別の代替的な手段では、ヒト抗体を産生するように遺伝子改変されたトランジェニック動物は、標準的な免疫化プロトコルを使用して、本質的に任意の免疫原性の標的に対して抗体を生成するために使用されてよい。トランスジェニックマウスからヒト抗体を獲得する方法は、Greenら、Nature Genet.7:13(1994),Lonbergら、Nature 368:856(1994),およびTaylorら、Int. Immun.6:579(1994)により開示されている。限定されないそのようなシステムの例は、Abgenix(Fremont,CA)のXenoMouse(登録商標)(例えばGreenら、1999,J.Immunol.Methods 231:11−23)である。XenoMouse(登録商標)および類似の動物では、マウス抗体の遺伝子は、不活性化され、機能的なヒト抗体遺伝子により置換され、一方、残りのマウス免疫システムはインタクトなままである。
【0061】
XenoMouse(登録商標)は、アクセサリー遺伝子および制御配列とともに、可変領域配列の大部分を含む、ヒトIgHおよびIgkappa遺伝子座の一部を含有する生殖系列を形成したYAC(酵母人工染色体)を用いて形質転換された。ヒト可変領域レパートリーは、B細胞を産生する抗体を生成するために使用され得、公知の技術によりハイブリドーマへとプロセシングされ得る。標的抗原を用いて免疫化されたXenoMouse(登録商標)は、正常の免疫反応によりヒト抗体を産生し、先に考察した標準的な技術により採取および/または産生させ得る。種々のXenoMouse(登録商標)株が利用でき、その各々は異なるクラスの抗体を産生することができる。遺伝子導入により産生されたヒト抗体は、正常のヒト抗体の薬物動態特性を保持しながら、治療可能性を示した(Greenら,1999)。技術者であれば、請求する組成物および方法はXenoMouse(登録商標)のシステムの使用に限定されるものではなく、ヒト抗体を産生するように遺伝子改変された任意のトランジェニック動物を利用してよいことを理解するだろう。
【0062】
抗体フラグメント
特異的なエピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術により生成することができる。抗体フラグメントはF(ab’)2、Fab’、F(ab)2、Fab、Fv、sFvなどのような抗体の抗原結合タンパク質である。F(ab’)2フラグメントは抗体分子のペプシン消化により産生することができ、Fab’フラグメントはF(ab’)2フラグメントのジスフィルド架橋を減少させることにより生成することができる。代替的に、Fab’の発現ライブラリーを構築することができ(Huseら,1989,Science,246:1274−1281)、それにより所望の特性を用いてモノクローナルFab’フラグメントを迅速かつ容易に同定することができる。F(ab)2フラグメントはジスフィルド還元により獲得された抗体およびFabフラグメントのパパイン分解により生成され得る。
【0063】
単鎖のFv分子(scFv)は、VLドメインおよびVHドメインを備える。VLドメインおよびVHドメインは、標的結合部位を形成するように結合する。これら2つのドメインは、ペプチドリンカー(L)によりさらに共有結合的に連結される。scFv分子を作製し、好適なペプチドリンカーを設計する方法は、米国特許第4,704,692号、米国特許第4,946,778号、R.RaagおよびM.Whitlow,“Single Chain Fvs”FASEB Vol 9:73−80(1995)、並びにR.E.BirdおよびB.W.Walker,“Single Chain Antibody Variable Regions,”TIBTECH,VoI 9:132−137(1991)に説明されている。
【0064】
単一ドメイン抗体を作製する技術も、例えば、Cossinsら(2006,Prot Express Purif 51:253−259)に説明されるように、当技術分野で知られている。単一ドメイン抗体(VHH)は、標準的な免疫化技術により、例えばラクダ、アルパカ、またはラマから獲得され得る(例えばMuyldermansら、TIBS 26:230−235,2001;Yauら,J Immunol Methods 281:161−75,2003;Maassら,J Immunol Methods 324:13−25,2007を参照されたい)。VHHは、強力な抗原結合能力を有し、従来のVH−VLペアを寄せ付けない新規のエピトープと相互作用することができる可能性を有する(Muyldermansら,2001)。アルパカ血清中のIgGは、約50%ラクダ科の重鎖がIgGのみの抗体を含有する(HCAb)(Maassら2007)。アルパカはTNF−αのような公知の抗原を用いて免疫化され得、VHHは単離させて標的抗原に結合および中和させることができる(Maassら,2007)。実質的に全てのアルパカVHHコーディング配列を増幅させるPCRプライマーが同定されており、コンストラクトアルパカVHHファージ提示ライブラリーを構築するために使用され得、これは当技術分野で周知されている標準的なバイオパニング技術により、抗体フラグメントを単離するために使用することができる。(Maassら,2007)。
【0065】
抗体フラグメントは、完全長の抗体のタンパク質加水分解性、またはそのフラグメントをコードするDNAを持つ大腸菌もしくは別の宿主での発現により調製することができる。抗体フラグメントは、従来方法により、完全長の抗体のペプシンまたはパパイン消化により獲得することができる。これらの方法は、例えば、Goldenberg、米国特許第4,036,945号および米国特許第4,331,647号、並びにそれらに含まれた参考文献により説明されている。また、Nisonoffら,Arch Biochem.Biophys.89:230(1960);Porter,Biochem.J.73:119(1959),Edelmanら,in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL.1,ページ422(Academic Press 1967),およびColiganの2.8.1ページ〜2.8.10ページと2.10.ページ〜2.10.4.ページを参照されたい。
【0066】
公知の抗体
特定の実施形態では、CD74に加えて、他の抗原性標的に対抗する抗体が抗癌ワクチン用DNL複合体に組み込まれ得る。腫瘍関連抗原に対抗する種々様々な抗体が知られており、商業上の供給源から獲得されてよい。例えば、ハイブリドーマ株を分泌するいくつかの抗体はアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC,Manassas,VA)から入手できる。例えば米国特許第7,312,318号;米国特許第7,282,567号;米国特許第7,151,164号;米国特許第7,074,403号;米国特許第7,060,802号;米国特許第7,056,509号;米国特許第7,049,060号;米国特許第7,045,132号;米国特許第7,041,803号;米国特許第7,041,802号;米国特許第7,041,293号;米国特許第7,038,018号;米国特許第7,037,498号;米国特許第7,012,133号;米国特許第7,001,598号;米国特許第6,998,468号;米国特許第6,994,976号;米国特許第6,994,852号;米国特許第6,989,241号;米国特許第6,974,863号;米国特許第6,965,018号;米国特許第6,964,854号;米国特許第6,962,981号;米号国特許第6,962,813号;米国特許第6,956,107号;米国特許第6,951,924号;米国特許第6,949,244号;米国特許第6,946,129号;米国特許第6,943,020号;米国特許第6,939,547号;米国特許第6,921,645号;米国特許第6,921,645号;米国特許第6,921,533号;米国特許第6,919,433号;米国特許第6,919,078号;米国特許第6,916,475号;米国特許第6,905,681号;米国特許第6,899,879号;米国特許第6,893,625号;米国特許第6,887,468号;米国特許第6,887,466号;米国特許第6,884,594号;米国特許第6,881,405号;米国特許第6,878,812号;米国特許第6,875,580号;米国特許第6,872,568号;米国特許第6,867,006号;米国特許第6,864,062号;米国特許第6,861,511号;米国特許第6,861,227号;米国特許第6,861,226号;米国特許第6,838,282号;米国特許第6,835,549号;米国特許第6,835,370号;米国特許第6,824,780号;米国特許第6,824,778号;米国特許第6,812,206号;米国特許第6,793,924号;米国特許第6,783,758号;米国特許第6,770,450;米国特許第6,767,711号;米国特許第6,764,688号;米国特許第6,764,681号;米国特許第6,764,679号;米国特許第6,743,898号;米国特許第6,733,981号;米国特許第6,730,307号;米国特許第6,720,15号;米国特許第6,716,966号;米国特許第6,709,653号;米国特許第6,693,176号;米国特許第6,692,908号;米国特許第6,689,607号;米国特許第6,689,362号;米国特許第6,689,355号;米国特許第6,682,737号;米国特許第6,682,736号;米国特許第6,682号,734号;米国特許第6,673,344号;米国特許第6,653,104号;米国特許第6,652,852号;米国特許第6,635,482号;米国特許第6,630,144号;米国特許第6,610,833号;米国特許第6,610,294号;米国特許第6,605,441号;米国特許第6,605,279号;米国特許第6,596,852号;米国特許第6,592,868号;米国特許第6,576,745号;米国特許第6,572;856号;米国特許第6,566,076号;米国特許第6,562,618号;米国特許第6,545,130号;米国特許第6,544,749号;米国特許第6,534,058号;米国特許第6,528,625号;米国特許第6,528,269号;米国特許第6,521,227号;米国特許第6,518,404号;米国特許第6,511,665号;米国特許第6,491,915号;米国特許第6,488,930号;米国特許第6,482,598号;米国特許第6,482,408号;米国特許第6,479,247号;米国特許第6,468,531号;米国特許第6,468,529号;米国特許第6,465,173号;米国特許第6,461,823号;米国特許第6,458,356号;米国特許第6,455,044号;米国特許第6,455,040号;米国特許第6,451,310号;米国特許第6,444,206号;米国特許第6,441,143号;米国特許第6,432,404号;米国特許第6,432,402号;米国特許第6,419,928号;米国特許第6,413,726号;米国特許第6,406,694号;米国特許第6,403,770号;米国特許第6,403,091号;米国特許第6,395,276号;米国特許第6,395,274号;米国特許第6,387,350号;米国特許第6,383,759号;米国特許第6,383,484号;米国特許第6,376,654号;米国特許第6,372,215号;米国特許第6,359,126号;米国特許第6,355,481号;米国特許第6,355,444号;米国特許第6,355,245号;米国特許第6,355,244号;米国特許第6,346,246号;米国特許第6,344,198号;米国特許第6,340,571号;米国特許第6,340,459号;米国特許第6,331,175号;米国特許第6,306,393号;米国特許第6,254,868号;米国特許第6,187,287号;米国特許第6,183,744号;米国特許第6,129,914号;米国特許第6,120,767号;米国特許第6,096,289号;米国特許第6,077,499号;米国特許第5,922,302号;米国特許第5,874,540号;米国特許第5,814,440号;米国特許第5,798,229号;米国特許第5,789,554号;米国特許第5,776,456号;米国特許第5,736,119号;米国特許第5,716,595号;米国特許第5,677,136号;米国特許第5,587,459号;米国特許第5,443,953号;米国特許第5,525,338号を参照されたい。これらは例示にすぎず、種々様々な他の抗体およびそれらのハイブリドーマが当技術分野で知られている。技術者であれば、ほぼ全ての腫瘍関連抗原に対抗する抗体配列または抗体分泌ハイブリドーマが、選択した疾患に関連する目的の抗原に対抗する抗体について、ATCC、NCBI、および/またはUSPTOのデータベースから単に検索するだけで獲得することができ得ることを理解するだろう。クローニングした抗体の抗原結合ドメインは、当技術分野で周知されている標準的な技術を使用して、発現ベクターへと増幅され、切り出され、結合され、適応する宿主細胞へと形質転換され、そしてタンパク質を産生するために使用されてよい。
【0067】
アミノ酸置換
特定の実施形態では、開示する方法および組成物は、1つ以上の置換アミノ酸残基を用いたタンパク質またはペプチドの産生および使用に関する。例えば、以下の実施例で考察するように、AD部分および/またはDDD部分の配列は、DNL複合体形成および/またはDNL複合体のin vivoにおける安定性を改善するように変化させてよい。他の実施形態では、天然、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体の構造的、物理的、および/または治療的特徴は、1つ以上のアミノ酸残基を置換することにより最適化されてよい。例えば、ヒト化抗体の機能的特徴は、限定数のヒトフレームワーク領域(FR)のアミノ酸を、対応する親マウス抗体のFRアミノ酸と置換することにより向上され得ることが当技術分野で周知されている。これは、フレームワーク領域のアミノ酸残基がCDR残基にごく近接しているときに特に当てはまる。
【0068】
他の場合、標的抗原に対する結合親和性のような抗体の治療的特性、その標的抗原からの抗体の解離またはオフ率、あるいは抗体によるCDC(補体依存型の細胞毒性)またはADCC(抗体依存型の細胞毒性)の導入の効果性でさえも、限定数のアミノ酸置換により最適化されてよい。
【0069】
技術者であれば、一般的に、アミノ酸置換は典型的には、アミノ酸を比較的類似する特性の別のアミノ酸(すなわち、同類のアミノ酸置換)と置換することに関することを知っているだろう。タンパク質構造および機能について、さまざまなアミノ酸の特性およびアミノ酸置換の効果が、当技術分野における広範な研究および情報の対象になっている。
【0070】
例えば、アミノ酸の疎水性親水性の指標が検討されてよい(Kyte&Doolittle,1982,J.Mol.Biol,157:105−132)。アミノ酸の関連する疎水性親水性特性は、結果生じるタンパク質の二次構造に関与しており、次に他の分子とのタンパク質の相互作用を規定する。各アミノ酸は、疎水性および電荷特性に基づいて疎水性親水性の指標が割り当てられ(Kyte&Doolittle,1982)これらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)である。同類置換の作製では、疎水性親水性の指標は、±2内のアミノ酸の使用が好ましく、±1内が一層好ましく、±0.5内がさらに好ましい。
【0071】
アミノ酸置換は、アミノ酸残基の親水性が考慮されてもよい(例えば米国特許第4,554,101号)。親水性の値は、アミノ酸残基:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0);グルタミン酸(+3.0);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5+−.1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)に割り当てられた。アミノ酸を類似する他の親水基と置換することは好ましい。
【0072】
他に考慮すべきはアミノ酸側鎖の大きさを含む。例えばアミノ酸をグリシンまたはセリンのような小型の側鎖と置換すること、アミノ酸を例えばトリプトファンまたはチロシンのようなかさ高い側鎖と置換することは一般的に好ましくない。
【0073】
タンパク質二次構造についてさまざまなアミノ酸残基の影響も考慮される。実証的研究により、αヘリックス、βシート、または逆向ターンの二次構造を採択するタンパク質ドメインの性質について、異なるアミノ酸残基の影響が特定されており、当技術分野で知られている(例えばChou&Fasman,1974,Biochemistry,13:222−245;1978,Ann.Rev.Biochem.,47:251−276;1979,Biophys.J.,26:367−384を参照されたい)。
【0074】
そのような考慮および広範な実証的研究に基づいて、同類アミノ酸置換の表が構築されており、当技術分野で知られている。例えば、アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;バリン、ロイシンおよびイソロイシンである。代替的に、アラニン(A)ロイシン、イソロイシン、バリン;アルギニン(R)グルタミン、アスパラギン、リジン;アスパラギン(N)ヒスチジン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、グルタミン;アスパラギン酸(D)アスパラギン、グルタミン酸;システイン(C)アラニン、セリン;グルタミン(Q)グルタミン酸、アスパラギン;グルタミン酸(E)グルタミン、アスパラギン酸;グリシン(G)アラニン;ヒスチジン(H)アスパラギン、グルタミン、リジン、アルギニン;イソロイシン(I)バリン、メチオニン、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン;ロイシン(L)バリン、メチオニン、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン;リジン(K)グルタミン、アスパラギン、アルギニン;メチオニン(M)フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン;フェニルアラニン(F)ロイシン、バリン、イソロイシン、アラニン、チロシン;プロリン(P)アラニン;セリン(S)、スレオニン;スレオニン(T)セリン;トリプトファン(W)フェニルアラニン、チロシン;チロシン(Y)トリプトファン、フェニルアラニン、スレオニン、セリン;バリン(V)イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、アラニンである。
【0075】
他に考慮されるアミノ酸置換は、残基がタンパク質内に在るか暴露溶剤であるかどうかを含む。内部残基について、同類置換は、アスパラギン酸およびアスパラギン;セリンおよびスレオニン;セリンおよびアラニン;スレオニン及びアラニン、アラニンおよびグリシン;イソロイシンおよびバリン;バリンおよびロイシン;ロイシンおよびイソロイシン;ロイシンおよびメチオニン;フェニルアラニンおよびチロシン;チロシンおよびトリプトファンを含む(例えばrockefeller.eduのPROWLウェブサイトを参照されたい)。暴露溶剤の残基について、同類置換は、アスパラギン酸およびアスパラギン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;グルタミン酸およびグルタミン;グルタミン酸およびアラニン;グリシンおよびアスパラギン;アラニンおよびプロリン;アラニンおよびグリシン;アラニンおよびセリン;アラニンおよびリジン;セリンおよびスレオニン;リジンおよびアルギニン;バリンおよびロイシン;ロイシンおよびイソロイシン;イソロイシンおよびバリン;フェニルアラニンおよびチロシンを含む(例えばrockefeller.eduのPROWLウェブサイトを参照されたい)。PAM250スコアリング・マトリクス、Dayhoffマトリクス、Granthamマトリクス、McLach1anマトリクス、Doolittleマトリクス、Henikoffマトリクス、Miyataマトリクス、Fitchマトリクス、Jonesマトリクス、Raoマトリクス、Levinマトリクス、およびRislerマトリクスのようなさまざまなマトリクスが、アミノ酸置換の選択を支援するように構築されてきた(例えばrockefeller.eduのPROWLウェブサイトを参照されたい)。
【0076】
アミノ酸置換の決定には、正電荷の残基(例えばヒスチジン、アルギニン、およびリジン)と負電荷の残基(例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸)との間のイオン結合(塩橋)、または近接するシステイン残基間のジスフィルド結合の形成のような、分子間結合または分子内結合の存在を検討してもよい。
【0077】
コードされたタンパク質配列において、他の任意のアミノ酸について任意のアミノ酸を置換する方法は周知されており、技術者にとっては、例えば部位特異的変異誘発の技術か、またはアミノ酸置換をコードし、発現ベクターのコンストラクトへとスプライシングするオリゴヌクレオチドの合成および集合による通例の実験方法事項である(例えばSambrookら,Molecular Cloning,A laboratory manual,2nd Ed,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,1989.)。
【0078】
治療薬
特定の実施形態では、細胞毒薬物、抗血管新生薬、アポトーシス促進剤、抗生物質、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、ケモカイン、薬物、プロドラッグ、毒物、酵素、または他の試薬のような治療薬が、本明細書で説明する抗癌ワクチン用DNL複合体に対する補助療法として使用されてよい。有用な薬物は、有糸分裂阻害薬、抗キナーゼ、アルキル化、代謝拮抗薬、抗生物質、アルカロイド、抗血管新生、アポトーシス促進剤、およびそれらの併用から成る群から選択される薬理学的特性を保有し得る。
【0079】
有用な例示的薬物は、5−フルオロウラシル、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン−1、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10−ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、コックス2抑制剤、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬、イリノテカン(CPT−11)、SN−38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2―ピロリノドキソルビシン(2P−DOX)、シアノ−モルフォリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エストラムスチン、エピドフィロトキシン(epidophyllotoxin)、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、リン酸エトポシド、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’−O−ジオレイル−フロクスウリジン(FUdR−dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、L−アスパラギナーゼ、レナリドマイド、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、ペントスタチン、PSI−341、ラロキシフェン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソール、テモゾロミド(DTICの水性型)、トランスプラチン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビンカアルカロイドを含んでよい。
【0080】
有用な毒素は、リシン、アブリン、α毒素、サポリン、オンコナーゼなどのリボヌクレアーゼ(RNase)、デオキシリボヌクレアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素、および緑膿菌内毒素を含んでよい。
【0081】
特定の実施形態では、治療薬は免疫調節剤でよい。免疫調節剤は、提示されると、身体の免疫システムを変えるか、抑制するか、または刺激する薬剤である。免疫調節剤有用免疫調節剤は、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせを含んでよい。腫瘍壊死因子(TNF)のようなリンホトキシン、インターロイキン(IL)のような造血性因子、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)のようなコロニー刺激因子、インターフェロンα、β、γのようなインターフェロン、およびS1因子と呼ばれる幹細胞増殖因子が特に有用である。
【0082】
さまざまな実施形態では、治療薬は、リンホカイン、モノカインのようなサイトカイン、増殖因子、および従来のポリペプチドホルモンを1つ以上含んでよい。サイトカインには、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンのような成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;レラキシン;プロレラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)のような糖タンパク質ホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体化ホルモン(LHのような)糖タンパク質ホルモン;胎盤増殖因子(PIGF)、幹細胞増殖因子;プロスタグランジン、線維芽細胞増殖因子;プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子−αおよび−β;ミュラー管抑制因子;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−βのような神経増殖因子;血小板増殖因子;TGF−αおよびTGF−βのような形質転換増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子−Iおよび−II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導性因子;インターフェロン−α、−β、−γのようなインターフェロン;マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF);IL−I、IL−lα、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12;IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−21、IL−25のようなインターロイキン(IL)、LIF、kit−リガンドまたはFLT−3、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子(TNF−αのようなTNF)、およびLTを含む。有用なケモカインは、RANTES、MCAF、MIPl−alpha、MIPl−Beta、およびIP−10を含んでよい。
【0083】
アンジオスタチン、バスキュロスタチン(baculostatin)、カンスタチン、スマピン、抗VEGF抗体、抗PIGFペプチドおよび抗体、抗血管性増殖因子抗体、抗Flk−1抗体、抗Fit−1抗体およびペプチド、抗Kras抗体、抗cMET抗体、抗MIF(マクロファージ遊走阻止因子)抗体、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤、インターフェロン、インターロイキン12、IP−10、Gro−β、トロンボスポンジン、2−メトキシエストラジオール、プロリフェリン関連タンパク質、カルボキシアミドトリアゾール、CMlOl、マリマスタット、ペントサンポリ硫酸、アンジオポエチン−2、インターフェロン−alpha、ハービマイシンA、PNU145156E、16Kプロラクチンフラグメント、リノマイド(ロキニメックス)、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン、TNP−470、エンドスタチン、パクリタキセル、アキュチン、アンジオスタチン、シドホビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM−1470、血小板第4因子、またはミノサイクリンを含む抗血管新生薬は有用である。
【0084】
他の有用な治療薬は、bcl−2またはp53のような、好ましくは癌遺伝子および癌遺伝子産物に対して向けられるオリゴヌクレオチド、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでよい。治療学的オリゴヌクレオチドはsiRNAの形態が好ましい。
【0085】
診断薬
診断薬は、放射性核種、放射線造影剤、常磁性イオン、金属、蛍光ラベル、化学発光ラベル、超音波造影剤、および光活性化剤から成る群から選択されてよい。そのような診断薬は周知されており、そのような任意の診断薬が使用されてよい。限定されない診断薬の例は、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154−158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、または他のγ放射体、β放射体、陽電子放射体のような放射性核種を含んでよい。有用な常磁性イオンは、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジウム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、またはエルビウム(III)を含んでよい。金属コントラスト剤は、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、またはビスマス(III)を含んでよい。超音波コントラスト剤は、ガス充填したリポソームのようなリポソームを含んでよい。放射線不透過性診断薬は、バリウム化合物、ガリウム化合物、およびタリウム化合物のような化合物から選択されてよい。種々様々な蛍光ラベルは当技術分野で知られており、限定されないがフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、O−フタルアルデヒド、およびフルオレサミンを含む。有用な化学発光ラベルは、ルミノール、イソルミノール、芳香族系アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、またはシュウ酸エステルを含んでよい。
【0086】
免疫複合体
特定の実施形態では、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、1つ以上の治療薬または診断薬と抱合させてよい。治療薬は同一である必要はなく、例えば薬物および放射性同位体のように異なっていてもよい。例えば、131Iは、抗体または融合タンパク質のチロシン、およびリジン残基のイプシロンアミノ基に付着させた薬物に組み込むことができる。治療薬および診断薬は、例えば、還元型のSH基および/または炭水化物側鎖を加えることもできる。抗体または融合タンパク質を用いた、共有結合性または非共有結合性抱合体の治療薬または診断薬を作製する広範な方法は当技術分野で知られており、そのような任意の方法が利用されてよい。
【0087】
治療薬または診断薬は、ジスフィルド結合の形成を介して還元型の抗体成分のヒンジ領域に付着させることができる。代替的に、そのような薬剤は、N−サクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)のようなヘテロ二機能架橋剤を使用して不着させることができるYuら、Int.J.Cancer 56:244(1994)。そのように抱合する一般的な技術は、当技術分野で周知されている。例えば、Wong,CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS−LINKING(CRC Press 1991);Upeslacisら、“Modification of Antibodies by Chemical Methods,”in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONs,Birchら(eds.),187−230ページ (Wiley−Liss,Inc.1995);Price,“Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies,”in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION,Ritterら(eds.),60−84ページ (Cambridge University Press 1995)を参照されたい。代替的に、治療薬または診断薬は、炭水化物部分を介して抗体のFc領域に抱合することができる。炭水化物群は、チオール基に結合される同一薬剤のローディングを高めるために使用することができ、または糖鎖は、異なる治療薬または診断薬を結合させるように使用することができる。
【0088】
抗体の炭水化物部分を介して抗体成分にペプチド抱合する方法は当業者に周知されている。例えば、Shihら、Int.J.Cancer 47:832(1988);Shihら、Int.J.Cancer 46:1101(1990);およびShihら、米国特許第5,057,313号を参照されたく、それら全内容は参照により本明細書に組み込まれる。一般的な方法は、少なくとも1つの遊離型アミン官能基を有する担体ポリマーを持った酸化型の炭水化物部分を有する抗体成分の反応に関わる。この反応により、まずシッフ塩基(イミン)結合が生じ、還元によって二級アミンへと安定化させて最終的な抱合体を形成させることができる。
【0089】
免疫複合体の抗体成分として使用される抗体が抗体フラグメントである場合、Fc領域は無くてもよい。しかし、炭水化物部分を完全長の抗体または抗体フラグメントの軽鎖可変領域に導入することは可能である。例えば、Leungら、J.Immunol 154:5919(1995);Hansenら、米国特許第5,443,953号(1995),Leungら、米国特許第6,254,868号を参照されたく、それら全内容が参照により本明細書に組み込まれる。改変した糖鎖は、治療薬または診断薬を加えるために使用することができる。
【0090】
幾つかの実施形態では、抗体、抗体フラグメントまたは融合タンパク質にキレート剤を付着してよく、放射性核種のような治療薬または診断薬をキレートさせるために使用されてよい。例示的なキレート剤は、限定されないがDTPA(Mx−DTPAなど)、DOTA、TETA、NETA、またはNOTA含む。タンパク質に金属または他のリガンドを付着させるためにキレート剤を抱合し、使用する方法は当技術分野で周知されている(例えば米国特許出願第12/112,289号を参照されたく、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0091】
特定の実施形態では、放射性金属または常磁性イオンは、イオンを結合させる多様なキレート基に付着され得る、長い尾部を有する試薬と反応させることによりタンパク質またはペプチドに付着されてよい。そのような尾部は、この目的に有用だと知られているポリリジン、多糖類のようなポリマー、または例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス−チオセミカルバゾン、ポリオキシムなどの基のような、キレート基に結合させることができるペンダント基を有する他の誘導体化したか、もしくは誘導体化できる鎖である。
【0092】
キレート剤は、米国特許第4,824,659号に開示されるような抗体またはペプチドに直接連結されてよく、当該内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。特に有用な金属キレートの併用は、2−ベンジルDTPA並びにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体を含み、放射性イメージングには、125I、131I、123I、124I、62Cu、64Cu、18F、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、11C、13N,15O、76Brのような、一般的に60keV〜4,000keVに及ぶエネルギーの診断用同位元素とともに使用される。同一のキレートは、マンガン、鉄、およびガドリニウムのような非放射性金属を用いて複合されるとMRIに有用である。NOTA、DOTA、およびTETAのような大環状のキレートは、種々の金属および放射性金属、特に、ガリウム、イットリウム、および銅それぞれの放射性核種に有用である。そのような金属キレート複合体は、目的の金属へとリングの大きさを仕立てることにより非常に安定的に作製することがでる。放射免疫療法(RAIT)用223Raのような、安定的に核種を結合させることを目的とする大環状ポリエーテルのような他のリング型キレートが網羅されている。
【0093】
つい最近では、PET走査技術において、例えば、F−18のアルミニウムのような金属または他の原子と反応させる、有用な18F標識化方法が開示された18F−Al抱合体は、DOTA、NOTA、またはNETAのようなキレート基と複合され得、直接抗体に付着されるか、またはプレターゲッティング法において標識標的が可能なコンストラクトに使用される。そのようなF18標識化は、2008年4月30日に出願された米国特許出願第12/112,289号に開示されており、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
薬物療法の方法
さまざまな実施形態は、ヒト、イヌおよびネコのような家庭用ペットまたはコンパニオンペットのような哺乳類などの対象における多発性骨髄腫のような癌を治療する方法に関する。方法は、対象に、治療的に有効量の抗癌ワクチン用DNLコンストラクトを投与することを含み得る。好ましい実施形態では、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、以下の実施例にてさらに詳細に説明するような、抗CD74抗体またはそのフラグメントおよびCD20異種抗原を含有する。
【0095】
抗癌ワクチン用DNLコンストラクトの投与は、標的細胞の表面上で別の抗原と結合または反応する治療的に有効量の別の抗体を同時的または経時的に投与することにより追加することができる。好ましい追加のMAbは、CD209(DC−SIGN)、CD34、CD74、CD205、TLR2(toll様受容体2)、TLR4、TLR7、TLR9、BDCA−2、BDCA−3、BDCA−4、およびHLA−DRと反応するMAbから成る群から選択される、少なくとも1つのヒト化MAb、キメラMAb、またはヒトMAbを含む。有用なさまざまな抗体は、先に考察したように当業者に知られている。例えば、Ghetieら、Cancer Res.48:2610(1988);Hekmanら、Cancer Immunol.Immunother.32:364(1991);Longo,Curr.Opin.Oncol.8:353(1996)、米国特許第5,798,554号;米国特許第6,187,287号;米国特許第6,306,393号;米国特許第6,676,924号;米国特許第7,109,304号;米国特許第7,151,164号;米国特許第7,230,084号;米国特許第7,230,085号;米国特許第7,238,785号;米国特許第7,238,786号;米国特許第7,282,567号;米国特許第7,300,655号;米国特許第7,312,318号;並びに米国特許出願公開第20080131363号;米国特許出願公開第20080089838号;米国特許出願公開第20070172920号;米国特許出願公開第20060193865号;米国特許出願公開第20060210475号;米国特許出願公開第20080138333号;および米国特許出願公開第20080146784号を参照されたく、引用した各特許および特許出願の実施例部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
別の実施形態では、CD209(DC−SIGN)、CD34、CD205、TLR2(toll様受容体2)、TLR4、TLR7、TLR9、BDCA−2、BDCA−3、BDCA−4、またはHLA−DRのような別の樹状細胞抗原に対抗する抗体またはそのフラグメントは、DNL複合体の抗CD74抗体に置換されてよい。そのような抗体は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関または抗体を販売するベンダーのような公共の情報源から獲得され得る。例えば、CD209(DC−SIGN)、CD34、BDCA−2、TLR2、TLR4、TLR7、およびTLR9に対抗する抗体は、Santa Cruz Biotechnology,Inc.(Santa Cruz,CA)から購入され得る。CD205およびBDCA−3に対抗する抗体は、Miltenyi Biotec Inc.(Auburn,CA)から購入され得る。抗体を販売する他の数多くの供給源が技術者に知られている。
【0097】
抗癌ワクチン用DNLコンストラクト治療は、少なくとも1つの治療薬の同時的または経時的投与とともにさらに追加することができる。多発性骨髄腫を治療するために使用される治療薬は、デキサメタゾン、サリドマイド/デキサメタゾン、シクロホスファミド、VAD(ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびデキサメタゾン)、DVd(DOXIL(登録商標)(PEG化ドキソルビシン)、ビンクリスチン、小規模計画のデキサメタゾン)、BCNU、メルファラン、カルムスチン、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標))、プレドニゾン、およびコルチコステロイドを含む。個々の治療薬は、CP(シクロホスファミド、プレドニゾン)、CT(シクロホスファミド、サリドマイド)、VBMCP(ビンクリスチン、BCNU、メルファラン、シクロホスファミド、メルファラン、VMCP(ビンクリスチン、メルファラン、シクロホスファミド、プレドニゾン)、DT−PACE(デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド)、MPT(メルファラン、プレドニゾン、サリドマイド)、CVAD(シクロホスファミドおよびVAD)、EDAP(エトポシド、デキサメタゾン、シタラビン、シスプラチン)、MTD(メルファラン、サリドマイド、デキサメタゾン)、VT(VELCADE(登録商標)、サリドマイド)、VDT(VELCADE(登録商標)、ドキソルビシン、サリドマイド)、VADT(VELCADE(登録商標)、アドリアマイシン、サリドマイド、デキサメタゾン)、またはDCEP(デキサメタゾン、シクロホスファミド、エトポシド、シスプラチン)のような当技術分野で知られている治療薬を単独で、またはさまざまに併用して使用してよい。
【0098】
幹細胞を移植する前の多発性骨髄腫の化学療法は、導入療法と呼ばれる。本明細書で記載する特定の化学療法剤は、他の導入療法よりも一層適している。MM用の導入療法に有用な化学療法の例は、デキサメタゾン、サリドマイド/デキサメタゾン、シクロホスファミド、VAD、およびDVdを含む。MMは、しばしば化学療法に耐性を持つので、治療薬の投与は、従来の化学療法で使用する用量よりも高容量になる場合がある。そのような高用量の化学療法は、大抵は骨髄毒性に至り、幹細胞移植と併せて使用されることがよくある。MMの化学療法について、用量およびスケジュールは当技術分野で周知されており、そのように知られている任意の用量および/またはスケジュールは、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトの投与と併せて利用されてよい。
【0099】
DNLワクチンがMMに加えて他の種類の癌に使用される場合、他の化学療法レジメンが知られている。例えば、「CVB」(1.5g/m2のシクロホスファミド、200〜400mg/m2のエトポシド、および150mg−200mg/m2のカルムスチン)が非ホジキンリンパ腫を治療するための使用されるレジメンである。Pattiら、Eur.J.Haematol.51:18(1993)。他の適した併用化学療法レジメンは当業者に周知されている。例えば、Freedmanら,“Non−Hodgkin’s Lymphomas,”in CANCER MEDICINE,VOLUME 2,3rd Edition,Hollandら(eds.),2028〜2068ページ(Lea&Febiger 1993)を参照されたい。例として、中程度の非ホジキンリンパ腫(NHL)を治療する第一世代の化学療法レジメンは、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジン、およびプレドニゾン)、およびCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)を含む。有用な第二世代の化学療法レジメンは、m−BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾン、およびロイコボリン)であり、適した第三世代レジメンはMACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン、およびロイコボリン)である。他の種類の癌に対して有用な化学療法剤は、限定されないが、5−フルオロウラシル、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン−1、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10−ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、コックス2抑制剤、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬、イリノテカン(CPT−11)、SN−38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2―ピロリノドキソルビシン(2P−DOX)、シアノ−モルフォリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エストラムスチン、エピドフィロトキシン(epidophyllotoxin)、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、リン酸エトポシド、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’−O−ジオレイル−フロクスウリジン(FUdR−dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、L−アスパラギナーゼ、レナリドマイド、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ニトロソウレア、フェニルブチレート、プリカマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、ペントスタチン、PSI−341、ラロキシフェン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソール、テモゾロミド(DTICの水性型)、トランスプラチン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビンカアルカロイドを含む。
【0100】
調合
抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、薬理学的に有用な組成物を調製する公知の方法に従って調合することができ、それにより抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、薬理学的に適した賦形剤を用いて混合物に混合される。無菌リン酸緩衝食塩水は薬理学的に適した賦形剤の一例である。他の適した賦形剤は当業者に周知されている。例えば、Anselら、PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,5th Edition(Lea&Febiger 1990),およびGennaro(ed.),REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition(Mack Publishing Company 1990)、並びにそれらの改訂版を参照されたい。
【0101】
抗癌ワクチンは、例えばボーラス投与または持続投与による静脈内投与用に調合することができる。注射用の製剤は、保存剤を加えたアンプルまたは複数回投与用の容器などの単位剤形で提供することができる。組成物は、油性または水性のビヒクル状態の懸濁液、溶解液、または乳濁液のような形態を用いることができ、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤のような調合用の薬剤を包含させることができる。代替的に、活性成分は、使用前に無菌の脱パイロゲン水などの適したビヒクルを用いて構築するために粉末状にすることができる。
【0102】
追加の薬理学的方法は、抗癌ワクチンが作用する持続期間を制御するために用いられ得る。制御用放出製剤は、複合体へのポリマーの使用を介して調製させるか、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトを吸着させることができる。例えば、生体適合性ポリマーは、ポリ(エチレン酢酸ビニル共重合体)でできたマトリクス、並びにステアリン酸二量体およびセバシン酸のポリ酸無水物共重合体マトリクスを含む(Sherwoodら,Bio/Technology 10:1446(1992))。そのようなマトリクスから遊離する割合は、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトの分子量、マトリクス内の抗癌ワクチンの量、および分散粒子の大きさに依存する。Saltzmanら、Biophys.J.55:163(1989);Sherwoodら,上記を参照されたい。他の固形の剤形は、AnselらPHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,5th Edition(Lea&Febiger 1990),およびGennaro(ed.),REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition(Mack Publishing Company 1990)、並びにそれらの改訂版に説明されている。
【0103】
抗癌ワクチン用DNLコンストラクトはまた、哺乳類の皮下に投与されてもよく、または他の非経口経路でも投与されてよい。さらに、投与は持続投与でよく、または単回もしくは複数回の急速投与でよい。好ましくは、抗癌ワクチンは、皮下注射による単回または複数回の急速投与として投与される。
【0104】
一般的に、ヒトに投与される抗癌ワクチン用DNLコンストラクトの用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、一般的な医学的状態、およびそれまでの医療経緯病歴のような要因次第で変わるだろう。単回投与として約1mg/kg〜25mg/kgの範囲の抗癌ワクチン用DNLコンストラクト用量をレシピエントに提供することが望ましいが、しかしながら、より少量またはより多量の用量も、状況に応じた指示がある場合に投与されてよい。70kgの患者には1〜20mg/kgの用量であるが、例えば、1.7mの患者には70〜1,400mgまたは41〜824mg/m2用量である。用量は、免疫反応を誘発するため、必要に応じて繰り返されてよい。
【0105】
好ましい実施形態では、ワクチンDNLコンストラクトは、癌の治療に有用である。癌の例は、限定されないが、細胞腫、リンパ腫、神経膠芽腫、メラノーマ、肉腫、および白血病、ミエローマ、つまりリンパ系腫瘍を含む。そのような癌のより詳細な例を下記に記載し、これらは扁平上皮癌(例えば上皮の扁平上皮癌)、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、星状細胞腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌を含む胃の癌つまり胃癌、膵癌、多型性神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌,肝臓癌、肝細胞癌、神経内分泌腫瘍、甲状腺髄様癌、分化型の甲状腺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌つまり子宮癌、唾液腺細胞腫、腎臓癌つまり腎癌、前立腺癌、外陰癌、肛門癌、陰茎癌と同様に頭頸部癌を含む。「癌」という用語は、原発性悪性細胞または腫瘍(例えば、細胞が元々悪性または腫瘍である部位以外の対象の身体部位に遊走しなかった細胞または腫瘍)、および二次的な悪性細胞または腫瘍(例えば転移により発症した腫瘍、最初の腫瘍部位と異なる二次的部位への悪性細胞または腫瘍細胞の転移)を含む。
【0106】
癌または悪性腫瘍の他の例は、限定されないが、急性小児リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、成人(原発性)肝細胞癌、成人(原発性)肝癌、成人急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝癌、成人軟部組織肉腫、エイズ関連リンパ腫、エイズ関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、腎盂癌および尿管癌、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫、子宮頸癌、小児(原発性)肝細胞癌、小児(原発性)肝癌、小児急性リンパ性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹神経膠腫、小児小脳星細胞腫、小児大脳星細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視床下部および視覚路神経膠腫、小児リンパ性白血病、小児髄芽腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児松果体およびテント上原始神経外胚葉腫瘍、小児原発性肝癌、小児横紋筋肉腫、小児軟部組織肉腫、小児視覚路および視床下部神経膠腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、膵内分泌部島細胞細胞腫、子宮内膜癌、上衣腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫および関連腫瘍、外分泌膵癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞性腫瘍、肝臓外胆管癌、眼癌、女性の乳癌、ゴーシェ病、胆汁膀胱癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、胃腸腫瘍、胚細胞性腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸癌、眼内メラノーマ、島細胞癌、島細胞膵癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、口唇癌および口腔癌、肝癌、肺癌、リンパ球増殖性疾患、マクログロブリン血症、男性の乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽腫、メラノーマ、中皮腫、転移性潜在性原発性の扁平上皮性頸部癌、転移性原発性の扁平上皮性頸部癌、転移性の扁平上皮性頸部癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、骨髄異形成症候群、骨髄性の白血病、骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌および副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、潜在性原発性転移性の扁平上皮性頸部癌、中咽頭癌、骨/悪性線維性肉腫、骨肉種/悪性線維性組織球腫、骨の骨肉種/悪性線維性組織球腫、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞性腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵癌、パラプロテイン血症、真性多血症、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂癌および尿管癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮性頸部癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉および松果体腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、移行細胞性腎盂癌および尿管癌、移行性腎盂癌および尿管癌、絨毛性腫瘍、尿管および腎盂の細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、腟癌、視覚路および視床下部性神経膠腫、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、並びに、腫瘍症に加え、先に記載した臓器系にある、他の任意の過剰増殖性疾患を含む。
【0107】
本明細書で説明し、請求する方法および組成物は、限定されるものではないが、先に説明した疾患悪性状態または前癌状態を治療し、腫瘍性状態または悪性状態の進行を防ぐために使用されてよい。そのような使用とは、公知の状態、または進行に先立って、腫瘍症または癌、特に、過形成、化生、または最も詳細には異形成から成る非腫瘍性細胞増殖が発症したと予想される状態での使用を指す(そのような異常な増殖状態の概説は、RobbinsおよびAngell,Basic Pathology,2d Ed.,W.B.Saunders Co.,Philadelphia,pp.68−79(1976)を参照されたい)。
【0108】
異形成は、癌の前兆であることが頻繁にあり、主に上皮に認められる。これは最も秩序の無い非腫瘍性細胞増殖の形態であり、各細胞の均一性および細胞の構造上の位置の欠損を伴う。特徴的な異形成は、慢性的な刺激つまり炎症の存在によって生じる。治療できる異形成疾患は、限定されないが、無汗性外胚葉異形成症、前後異形成、窒息性胸郭異形成、心房指状異形成、気管支肺異形成、大脳異形成、頸部異形成、軟骨外胚葉異形成、鎖骨頭蓋異形成、先天性外胚葉異形成、頭蓋骨幹異形成、頭蓋骨軟骨異形成、頭蓋骨幹端異形成、象牙質異形成、骨幹異形成、外胚葉異形成、エナメル質異形成、脳−眼部異形成、骨端欠損異形成、多発性骨端、点状軟骨異形成症、上皮異形成、顔面生殖異形成、下顎の家族性線維性異形成、家族性白色襞性異形成、線維筋性異形成、骨の線維性異形成、セメント質骨異形成、遺伝性腎臓−網膜異形成、発汗外胚葉性異形成、無汗性外胚葉異形成、リンパ性減少性胸腺異形成、乳腺異形成、下顎顔面異形成、骨幹端異形成、Mondini異形成、単骨性線維性骨異形成、粘膜上皮異形成、多発性骨端異形成、眼耳脊椎異形成、眼歯指異形成、眼脊椎異形成、歯原性異形成、眼下顎異形成(opthalmomandibulomelic dysplasia)、根尖性セメント質異形成、多発性線維性異形成、偽軟骨発育不全性脊椎骨端異形成、網膜異形成、中隔視神経異形成、脊椎骨端異形成、および心室橈骨異形成を含む。
【0109】
治療できるさらなる前腫瘍疾患は、限定されないが、良性悪性増殖疾患(例えば、良性腫瘍、線維嚢胞性状態、組織肥大、腸ポリープまたは腺腫、および食道異形成)、白板症、角化症、ボーエン病、農夫の皮膚病(Farmer’sSkin)、日光口唇炎、および日光性角化症を含む。
【0110】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、癌、詳細には先に記載した癌の増殖、進行、および/または転移を阻害するために使用される。
【0111】
さらなる過剰増殖疾患、疾患、および/または状態は、限定されないが、白血病(急性白血病(例えば急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球、前骨髄球、骨髄単球性、単球性、および赤白血病を含む)、慢性白血病(例えば慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病))、真性多血症、リンパ腫(例えばホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病のような悪性腫瘍および関連疾患、並びに限定されないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺細胞腫、嚢腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、睾丸腫瘍、肺癌、肺小細胞癌、膀胱癌、上皮細胞腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、希突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、および網膜芽細胞腫のような肉腫および細胞腫を含む固形腫瘍の進行および/または転移を含む。
【0112】
キット
さまざまな実施形態は患者の病変組織を標的とするか、または診断するのに適した要素を包含するキットに関係し得る。例示的なキットは、本明細書で説明した少なくとも1つ以上の抗癌ワクチン用コンストラクトを包含してよい。投与するための要素を包含する組成物は、経口送達するように、消化管を介した送達用に調合されていない場合、何らかの他の経路を介してキット要素を送達することができる機器が含まれてよい。非経口投与のような適用するためのある種の機器は、対象の身体内に組成物を注入する注射器である。吸入機器が使用されてもよい。特定の実施形態では、治療薬は、無菌の液剤または凍結乾燥製剤を包含する、予め充填した注射器または自動注射ペンの形態で提供されてよい。
【0113】
キット要素は一緒に梱包されるか、または2つ以上の容器に分けて梱包されてよい。幾つかの実施形態では、容器は、再構成に適した、無菌の凍結乾燥製剤の組成物を含めたバイアルでよい。キットは、他の試薬を再構成および/または希釈するに適した1つ以上の緩衝剤を含めてもよい。使用され得る他の容器は、限定されないが、パウチ、トレー、ボックス、チューブなどを含む。キット要素は、容器内が無菌で梱包され得、維持され得る。含むことができる別の要素は、使用に際し、キットを使用する者への取扱説明書である。
【0114】
発現ベクター
さらに他の実施形態は、抗癌ワクチン用のコンストラクトまたはその成分の融合タンパク質をコードする核酸を含むDNA配列に関する。融合タンパク質は、以下の実施例でより詳細に考察するような、DNLコンストラクトの形成に利用されるADペプチドおよびDDDペプチドのような、異なるペプチドまたはタンパク質に付着された抗CD74抗体またはCD20異種抗原を含む。代替的に、コードされた融合タンパク質は、異なる抗体または異種抗原に付着されたDDD部分またはAD部分を含んでよい。
【0115】
さまざまな実施形態は、DNAコード配列を含む発現ベクターに関連する。ベクターは、キメラ、ヒト化、またはヒト可変領域配列に付着され得るヒト免疫ブログリンの軽鎖定常部および重鎖定常部、並びにヒンジ領域をコードする配列を含み得る。ベクターは、選択した宿主細胞、エンハンサー、シグナル、またはリーダー配列にてコードされたタンパク質(単数または複数)を発現するプロモータを付加的に含む。特に有用なベクターは、pdHL2またはGSである。より好ましくは、軽鎖定常部および重鎖定常部、並びにヒンジ領域は、ヒトEUミエローマの免疫ブログリンに由来し、アロタイプ位置にて、随意に、少なくとも1つのアミノ酸が異なるIgG1アロタイプに認められるものに変化され、EUメンバーシステムに基づくEU重鎖のうち、随意に253個のアミノ酸がアラニンに置換されてよい。Edelmanら、Pr oc.Natl.Acad.Sci USA 63:78−85(1969)を参照されたい。他の実施形態では、IgGl配列は、IgG4配列に変換され得る。
【0116】
技術者であれば、操作されたタンパク質を発現するように発現コンストラクト遺伝子操作し、宿主細胞に挿入する方法は、当技術分野で周知されており、通例の実験事項であることを理解するだろう。宿主細胞およびクローンニングした抗体またはフラグメントを発現させる方法は、例えば2005年7月25日に出願された米国特許出願第11/187,863号、2005年10月20日に出願された米国特許出願第11/253,666号、および2006年7月14日に出願された米国特許出願第11/487,215号に説明されており、各実施例部分は参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
実施例
以下の実施例は解説のために提供するものであり、本発明の請求に限定されるものではない。
【0118】
実施例1.ドック・ロック(DNL)コンストラクトの調製
DDDおよびAD融合タンパク質
DNL技術は、実質的に任意の抗体またはそれらのフラグメントもしくは他のエフェクター部分を含む、二量体、三量体、四量体、六量体などを作製するために使用できる。特定の好ましい実施形態では、IgG抗体、F(ab’)2抗体フラグメント、およびCD20異種抗原のような異種抗原は、二量体化およびドッキングドメイン(DDD)配列またはアンカードメイン(AD)配列のいずれかを含む融合タンパク質として産生されてよい。好ましい実施形態では、DDD部分およびAD部分は、融合タンパク質として産生されるが、技術者であれば、化学的架橋結合のような他の抱合方法が、請求する方法および組成物の範囲内で利用されてよいことを理解するだろう。
【0119】
DNLコンストラクトは、例えば、抗CD74抗体のFab−DDD融合タンパク質をCD20−AD融合タンパク質と結合させることにより形成されてよい。代替的に、コンストラクトは、IgG−AD融合タンパク質をCD20−DDD融合タンパク質と結合させて作製されてよい。技術は限定されるものではなく、有用な任意のタンパク質またはペプチドが、DNLコンストラクトに組み込まれるAD融合タンパク質またはDDD融合タンパク質として産生されてよい。化学的架橋結合を利用する場合、ADおよびDDD抱合体は、タンパク質またはペプチドに限定されるものではなく、当技術分野で知られている任意の架橋結合を使用してAD配列またはDDD配列に架橋され得る、任意の分子を含む。
【0120】
独立したトランジェニック細胞株は、各DDD融合タンパク質またはAD融合タンパク質として発達し得る。産生すると、分子は、所望する場合に精製するか、または細胞培養上清液で維持することができる。以下の産物では、任意のDDD−融合タンパク質分子は、DNLコンストラクトを生成するように任意のAD−融合タンパク質分子と結合させることができる。異なる種類のコンストラクト、異なるAD配列またはDDD配列が利用されてよい。例示的なDDD配列およびAD配列は以下に記載する。
DDDl:SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号10)
DDD2:CGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号11)
ADl:QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号12)
AD2:CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(配列番号13)
【0121】
発現ベクター
プラスミドベクターpdHL2は、いくつかの抗体および抗体に基づくコンストラクトを産生させるために使用されてきた。Gilliesら、J Immunol Methods(1989),125:191−202;Losmanら、Cancer(Phila)(1997),80:2660−6を参照されたい。ジシストロニックな哺乳類の発現ベクターは、IgGの重鎖および軽鎖の合成を目的とする。ベクター配列は、多くの異なるIgG−pdHL2コンストラクトについては、可変ドメイン(VHおよびVL)配列に相違があるだけで、大部分は同じである。当業者に知られている分子生物学的手段を使用して、これらのIgG発現ベクターは、Fab−DDD発現ベクターまたはFab−AD発現ベクターへと変換することができる。Fab−DDD発現ベクターを生成させるために、ヒンジ、重鎖のCH2およびCH3ドメインについてのコード配列は、ヒンジの最初の4残基、14残基のGly−Serリンカー、およびヒトRIIα(DDD1を指す)の最初の44残基をコードする配列と置換される。Fab−AD発現ベクターを生成させるために、ヒンジ、IgGのCH2およびCH3ドメインについての配列は、ヒンジの最初の4残基、15残基のGly−Serリンカー、および17残基のAKAP−IS(AD1を指す)と呼ばれる合成ADと置換され、これはバイオインフォマティクスおよびペプチド配列技術を使用して生成され、非常に高い親和性(0.4nM)でRIIα二量体を結合させることが示された。Altoら、Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A(2003),100:4445−50を参照されたい。
【0122】
2つのシャトルベクターは、以下に説明するように、Fab−DDD1発現ベクターまたはFab−AD1発現ベクターのどちらかにIgG−pdHL2ベクターを変換させることを促すように設計した。
【0123】
CH1の調製
CH1ドメインは、テンプレートとしてpdHL2プラスミドベクターを使用し、PCRにより増幅させた。左側PCRプライマーは、CH1ドメインの上流(5’)末端およびSacII制限酵素部位から成り、これはCH1コード配列の5’になる。右側のプライマーは、ヒンジ(PKSC(配列番号29)の最初の4残基をコードし、続いて4つのグリシンおよび1つのセリンをコードし、最後はBamHI制限酵素部位を持つ2つのコドン(GS)をコードする配列から成る。PGEMT(登録商標)PCRクローニングベクター(PROMEGA(登録商標),Inc.)に410bpのPCRアンプライマーをクローンニングし、T7(5’)の方向に挿入するため、クローンをスクリーニングした。
【0124】
(G4S)2DDD1(配列番号14として開示する(G4S)2)から成る構築物
リンカーペプチドの11残基に先行してDDD1のアミノ酸配列をコードするために、まずBamHI制限酵素部位を持つ2つのコドンを用いて、SigmaのGENOSYS(登録商標)(Haverhill,UK)により(G4S)2DDD1(配列番号14として開示する(G4S)2)と命名した二本鎖のオリゴヌクレオチドを合成した。終止コドンおよびEagI制限酵素部位は3’末端に付加される。コードされたポリペプチド配列を以下に示す。
GSGGGGSGGGGSHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号15)
【0125】
3’末端で30塩基対分重複する、RIIA1−44topおよびRIIA1−44bottomと命名した2つのオリゴヌクレオチドを合成(SigmaのGENOSYS(登録商標))し、174bpのDDD1配列のうち中心の154塩基対を含むように結合させた。オリゴヌクレオチドをアニールし、Taqポリメラーゼを用いてプライマー伸長反応に晒した。プライマー伸長後、PCRにより二本鎖を増幅させた。PGEMT(登録商標)にアンプライマーをクローンニングし、T7(5’)の方向に挿入するためスクリーニングした。
【0126】
(G4S)2‐AD1(配列番号14として開示する(G4S)2)から成る構築物
AD1のアミノ酸配列をコードするため、リンカーペプチドの11残基のまえに、BamHI制限酵素部位を持つ最初の2つのコドンを用いて、SigmaのGENOSYS(登録商標)により(G4S)2‐AD1(配列番号14として開示する(G4S)2)と命名した二本鎖のオリゴヌクレオチドを合成した。終止コドンおよびEagI制限酵素部位は3’末端に付加される。コードされたポリペプド配列を以下に示す。
GSGGGGSGGGGSQIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号16)
【0127】
AKAP−IS TopおよびAKAP−IS Bottomと命名した、上記のペプチド配列をコードする2つの重複する相補的なオリゴヌクレオチドを合成し、アニールした。PCRにより二本鎖を増幅させた。PGEMT(登録商標)ベクターにアンプライマーをクローンニングし、T7(5’)の方向に挿入するためスクリーニングした。
【0128】
DDD1のCH1とのライゲーション
BamHI制限酵素およびNotI制限酵素を用いてPGEMT(登録商標)からDDD1配列をコードする190bpのフラグメントを切り出し、次いでシャトルベクターCH1−DDD1−PGEMT(登録商標)を生成させるためにCH1−PGEMT(登録商標)にライゲーションさせた。
【0129】
AD1のCH1とのライゲーション
BamHI制限酵素およびNotI制限酵素を用いてPGEMT(登録商標)からAD1配列を含む110bpのフラグメントを切り出し、次いでシャトルベクターCH1−AD1−PGEMT(登録商標)を生成させるためにCH1−PGEMT(登録商標)の同じ部位にライゲーションさせた。
【0130】
pdHL2に基づくベクターへのCH1−DDD1またはCH1−AD1のクローニング
このモジュラー設計を用いて、CH1−DDD1またはCH1−AD1のどちらかをpdHL2ベクターにある任意のIgGコンストラクトに組み込むことができる。重鎖定常ドメイン全体は、pdHL2由来のSacII/EagI制限フラグメント(CH1−CH3)を取り除き、それをpGemTシャトルベクターそれぞれから切り出されたCH1−DDDlまたはCH1−ADlのSacII/EagIフラグメントと置換することにより上述のコンストラクトの1つと置換される。
【0131】
h679−Fd−ADl−pdHL2の構築
h679−Fd−ADl−pdHL2は、14アミノ酸残基でできたフレキシブルなGly/SerペプチドスペーサーによりFdのCH1ドメインのカルボキシル基末端に連結されたAD1を持つh679Fabを産生させるための発現ベクターである。SacIIおよびEagIを用いてCH1−ADl−SV3シャトルベクターから切り出したCH1−ADlフラグメントと、SacII/EagIフラグメントを置換することによりh679の可変ドメインを含むpdHL2に基づくベクターをh679−Fd−ADl−pdHL2に変換した。
【0132】
DDD1−Fd−hMN−14−pdHL2の構築
C−DDD1−Fd−hMN−14−pdHL2は、融合タンパク質C−DDD1−Fab−hMN−14という2つの複製を含む安定な二量体を産生させるための発現ベクターであり、ここでDDD1は、フレキシブルなペプチドスペーサーによりCH1のカルボキシル基末端にてhMN−14Fabに連結される。SacIIおよびEagIを用いてCH1−DDD1−SV3シャトルベクターから切り出したCH1−CH3ドメインを取り除き、CH1−DDD1フラグメントを挿入するため、SacIIおよびEagI制限酵素を用いて消化させることにより、hMN−14IgGを産生させるために使用したプラスミドベクターhMN−14(I)−pdHL2をC−DDDl−Fd−hMN−14−pdHL2へと変換させた。
【0133】
同様の技術は、hLL1、hLL2、hPAM4、hRl、hRS7、hMN−14、hMN−15、hA19、hA20、および他の多くの抗体のような、知られている種々様々な抗体のFabを発現するプラスミドを産生させるために利用されてきた。一般的に、配列をコードする抗体可変領域は、pdHL2発現ベクターに提示され、発現ベクターは、先に説明したAD融合タンパク質またはDDD融合タンパク質を産生するために変換された。
【0134】
C−DDD2−Fd−hMN−l4−pdHL2の構築
C−DDD2−Fd−hMN−14−pdHL2は、C−DDD2−Fab−hMN−14を産生させるための発現ベクターであり、14アミノ酸残基のGly/SerペプチドリンカーによりhMN−14のFdのカルボキシル基末端に付加されたDDD2の二量化およびドッキングドメインを保有する。分泌された融合タンパク質は、DDD2ドメインとの非共有結合的な相互作用により保持されたhMN−14Fabという2つの同じ複製から構成される。
【0135】
発現ベクターは以下のように操作した。リンカーペプチド(GGGGSGGGCG、配列番号17)、およびDDD2の1−13残基の部分についてコード配列を含む、2つの重複する優遇的なオリゴヌクレオチドを合成的に作製した。オリゴヌクレオチドをアニールし、T4PNKを用いてリン酸化し、結果として、制限酵素BamHIおよびPstIそれぞれを用いて消化したDNAとライゲーションするのに適した5’末端および3’末端でオーバーハングさせた。
【0136】
シャトルベクターCH1−DDD2−PGEMT(登録商標)を生成させるために、シャトルベクターCH1−DDD1−PGEMT(登録商標)と二本鎖DNAをライゲーションしョンし、これはBamHIおよびPstIを用いて消化することにより調製した。SacIIおよびEagIを用いてCH1−DDD2−PGEMT(登録商標)から507bpのフラグメント切り出し、IgG発現ベクターhMN−14(I)−pdHL2とライゲーションし、これはSacIIおよびEagIを用いた消化により調製した。最終的な発現コンストラクトはC−DDD2−Fd−hMN−14−pdHL2と命名した。類似の技術が、いくつかの異なるヒト化抗体のFabフラグメントからDDDD2−融合タンパク質を生成させるために利用されてきた。
【0137】
h679−Fd−AD2−pdHL2の構築
h679−Fd−AD2−pdHL2は、h679−Fab−AD2を産生させる発現ベクターであり、14アミノ酸残基のGly/SerペプチドリンカーによりCH1ドメインのカルボキシル基末端に付加されるAD2のアンカードメイン配列を保有する。AD2はAD1のアンカードメイン配列の前に1つのシステイン残基を、該ドメインの後に別の1つのシステイン残基を有する。
【0138】
発現ベクターは以下のように操作した。AD2のコード配列およびリンカー配列の部分を含む、2つの重複する優遇的なオリゴヌクレオチドを合成的に作製した。オリゴヌクレオチドをアニールし、T4PNKを用いてリン酸化し、結果として、制限酵素BamHIおよびSpeIそれぞれを用いて消化したDNAとライゲーションするのに適した5’末端および3’末端でオーバーハングさせた。
【0139】
シャトルベクターCH1−AD2−PGEMT(登録商標)を生成させるために、シャトルベクターCH1−AD1−PGEMT(登録商標)に二本鎖DNAをライゲーションし、これはBamHIおよびSpeIを用いて消化することにより調製した。SacIIおよびEagI制限酵素を持つシャトルベクターからCH1およびAD2コード配列を包含する429塩基対のフラグメントを切り出し、h679−pdHL2ベクターにライゲーションし、同じ酵素を用いた消化により調製した。最終的な発現ベクターはh679−Fd−AD2−pdHL2である。
【0140】
TF2三量体DNLコンストラクトの生成
TF2と命名した三量体DNLコンストラクトを、C−DDD2−Fab−hMN−14をh679−Fab−AD2と反応させることにより獲得した。以下のように、TF2試験的なバッチを、>90%の収率で生成させた。タンパク質L−精製C−DDD2−Fab−hMN−14(200mg)をh679−Fab−AD2(60mg)と1.4:1のモル比で混合した。総タンパク質濃度は、1mMのEDTAを含むPBS中で1.5mg/mlであった。続くステップはTCEP還元、HICクロマトグラフィー、DMSO酸化、およびIMP291アフィニティークロマトグラフィーを伴った。TCEPの添加前に、SE−HPLCは、a2bを形成するという証拠を示さなかった。5mMのTCEPの添加により、二成分構造と予想される157kDaのタンパク質と一致するa2b複合体の形成に、迅速に至った。IMP291アフィニティークロマトグラフィー(不図示)により、TF2を均一近くまで精製した。IMP291は、679のFabが結合するHSGハプテンを含む合成ペプチドである(Rossiら、2005,Clin Cancer Res 11:7122s−29s)。IMP291の結合しなかった分画のSE−HPLC分析により、産物からa4、a2、および遊離κ鎖が取り除かれたことが実証された(不図示)。
【0141】
非還元的なSDS−PAGE分析により、TF2の大部分は、IgGに近い相対的移動度を持つ、大きな共有結合性構造として存在することが実証された(不図示)。還元的SDS−PAGEは、TF2の構成ポリペプチドを表すバンドのみが明確である(不図示)ので、非還元性ゲル中の任意の付加的なバンドは、産物に関していることを示す(不図示)。しかし、4種類の各ペプチドの相対的移動度は非常に近似しており、分解できなかった。MALDI−TOF質量分析(不図示)では、156,434 Daの単一ピークが示されたが、これはTF2の計算上の質量(157,319 Da)の99.5%の範囲内にある。
【0142】
TF2の機能性を、BIACORE(登録商標)分析により測定した。TF2、C−DDDl−hMN−14+h679−ADl(非共有結合性a2b複合体の対照サンプルとして使用)、またはC−DDD2−hMN−14+h679−AD2(還元されていないa2成分およびb成分の対照サンプルとして使用)を1μg/ml(総タンパク質)に希釈し、HSGを用いて固定化したセンサーチップ上を通過させた。TF2についての反応は、2種類の対照サンプルのおよそ二倍であり、対照サンプル中のh679−Fab−AD成分だけがセンサーチップ上に結合したまま残るであろうことを示した。次に、WI2IgGの注入では、さらなるシグナル応答性によって示されるように、hMN−14の抗イディオタイプ抗体により、TF2だけがh679−Fab−ADと強く結合するDDD−Fab−hMN−14を有していたことが実証された。センサーチップ上に固定されたTF2へのWI2の結合により生じる反応性のさらなる増加は、2つの完全に機能的な結合部位に相当しており、各々はC−DDD2−Fab−hMN−14の1つのサブユニットに提供されていた。これは、WI2の2つのFabフラグメントに結合するTF2の能力により確認された(不図示)。
【0143】
実施例2.CH3−AD2−IgG発現ベクター
任意のIgG−pdHL2ベクターの、CH3−AD2−IgG−pdHL2ベクターへの転換を促進させるためにプラスミドシャトルベクターを作製した。Fc(CH2ドメインおよびCH3ドメイン)について、テンプレートとしてpdHL2ベクターを使用し、かつ次のオリゴヌクレオチドプライマーを使用してPCRにより遺伝子を増幅した。
Fc BglII 左側
AGATCTGGCGCACCTGAACTCCTG(配列番号8)
Fc Bam− EcoRI 右側
GAATTCGGATCCTTTACCCGGAGACAGGGAGAG(配列番号9)
【0144】
pGemT PCRクローニングベクター内にアンプライマーをクローニングした(Promega)。XbaIおよびBamHIを用いてpGemTからFc挿入フラグメントから切り出し、XbaIおよびBamHIを用いてh679−Fab−AD2−pdHL2(Rossiら,Proc Natl Acad Sci USA 2006,103:6841−6)を消化させることにより調製したAD2−pdHL2とライゲーションさせ、シャトルベクターFc−AD2−pdHL2を生成させた。IgG−pdHL2発現ベクターをCH3−AD2−IgG−pdHL2発現ベクターへと変換するため、前者から861bpのBsrG I/Nde I制限フラグメントを切り出し、Fc−AD2−pdHL2ベクターから切り出した952bpのBsrG I/Nde I制限フラグメントと置換した。以下は、組み換えヒト化IgG−AD2モジュールを作製するために生成し、使用したCH3−AD2−IgG−pdHL2発現ベクターリストの一部である。
CH3−AD2−IgG−hA20(抗CD20)
CH3−AD2−IgG−hLL2(抗CD22)
CH3−AD2−IgG−hL243(抗HLA−DR)
CH3−AD2−IgG−hLL1(抗CD74)
CH3−AD2−IgG−hRl(抗IGF−lR)
CH3−AD2−IgG−h734(抗インジウムDTPA)
【0145】
実施例3.CH3−AD2−IgGの作製
好適なCH3−AD2−IgG分泌細胞株のトランスフェクションおよび選択
全ての細胞株をハイブリドーマSFM(Invitrogen,Carlsbad CA)において増殖させた。SalI制限酵素を用いた消化によりCH3−AD2−IgG−pdHL2ベクター(30μg)を線状化し、エレクトロポレーション(450ボルト、25μF)によりSp2/0−Agl4(2.8×106細胞)へとトランスフェクトさせた。pdHL2ベクターは、クローン選択とともにメトトレキサート(MTX)を用いて遺伝子増幅ができるジヒドロ葉酸還元用の遺伝子を含む。
【0146】
次のトランスフェクションで、96ウェルのプレートに細胞を蒔き、0.2μMのMTXを含む培地でトランスジェニッククローンを選択した。特異的な抗イディオタイプMAbでコーティングした96ウェルのマイクロタイタープレートを使用し、サンドウィッチELISAにより、CH3−AD2−IgG産生力についてクローンをスクリーニングした。推定クローンの条件培地をマイクロプレートのウェルに移し、西洋わさびペルオキシターゼ抱合したヤギ抗ヒトIgGのF(ab’)2を用いて融合タンパク質の検出を行った(Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,PA)。最も高いシグナルを出したウェルを拡大し、最終的に産物として使用した。
【0147】
CH3−AD2−IgGモジュールの作製および精製
融合タンパク質の産物のため、2×105細胞/mlでローラーボトル培養を播種し、細胞生存率が25%以下に落ちるまで、ローラーボトルインキュベータ中、5%のCO2のもと、37℃でインキュベートした(〜10日)。遠心分離により培養ブロスを清澄させ、濾過し、限外濾過法により50倍まで濃縮した。CH3−AD2−IgG分子の精製のため、濃縮した上清液をタンパク質A(MAB Select)のアフィニティーカラムにロードした。PBSを用いてベースラインまでカラムを洗浄し、0.1Mのグリシン、pH2.5を用いて融合タンパク質を溶出した。
【0148】
実施例4.DDD2−mCD20(136−178)の生成およびDDD2−mCD20(136−l78)−pdHL2の構築
DDD2−mCD20(136−178)−pdHL2は、DDD2−mCD20(136−178)用の発現ベクターであり、これはDDD2−リンカー−mCD20(136−178)−HHHHHH(配列番号30として開示されるHHHHHH)を含む。マウスCD20(mCD20)の細胞外ドメインは、mCD20(136−178)と呼び、以下に示す配列のアミノ酸残基136〜178を含む。
TLSHFLKMRRLELIQTSKPYVDIYDCEPSNSSEKNSPSTQYCN(配列番号18)
【0149】
マウスCD20異種抗原のアミノ酸配列を以下に示す。
MSGPFPAEPTKGPLAMQPAPKVNLKRTSSLVGPTQSFFMRESKALGAVQIMNGLFHITLGGLLMIPTGVFAPICLSVWYPLWGGIMYIISGSLLAAAAEKTSRKSLVKAKVIMSSLSLFAAISGIILSIMDILNMTLSHFLKMRRLELIQTSKPYVDIYDCEPSNSSEKNSPSTQYCNSIQSVFLGILSAMLISAFFQKLVTAGIVENEWKRMCTRSKSNVVLLSAGEKNEQTIKMKEEIIELSGVSSQPKNEEEIEIIPVQEEEEEEAEINFPAPPQEQESLPVENEIAP(配列番号7)
【0150】
テンプレートとして全長マウスCD20のcDNAクローンを使用し、PCRによりBamHlおよびXho1制限酵素部位に隣接したmCD20(136−178)のヌクレオチド配列を含むDNAセグメントを獲得した。2つのプライマーを以下に示す。
上流プライマー:BamHI_mCD20プライマー(30塩基長)
5’−GGATCCACACTTTCTCATTTTTTAAAAATG(配列番号31)
下流プライマー:XhoI mCD20プライマー(30塩基長)
5’−CTCGAGGTTACAGTACTGTGTAGATGGGGA(配列番号32)
【0151】
PCRアンプライマー(141bp)をPGEMT(登録商標)ベクター(PROMEGA(登録商標))にクローニングする。XbaIおよびBamHI制限酵素を用いた消化によりアンプライマーとライゲーションするためにDDD2−pdHL2哺乳類の発現ベクター、例えば、N−DDD2−hG−CSF−His−pdHL2を調製する。XbaIおよびBamHIを用いてPGEMT(登録商標)からmCD20アンプライマーを切り出し、DDD2−pdHL2ベクターにライゲーションし、発現ベクターDDD2−mCD20(l36〜178)−pdHL2を生成させる。
【0152】
DDD2−mCD20(136−178)を発現するクローンを獲得するためのトランスフェクションおよびスクリーニング
SalI酵素を用いた消化によりベクターDDD2−mCD20(136−178)を線状化し、エレクトロポレーションにより安定的にSpESF骨髄腫細胞にトランスフェクトする(例えば米国特許第7,537,930号を参照されたく、その実施例部分は参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかのクローンは、ELISAにより、検出可能レベルのDDD2−mCD20(136−178)を有することが認められ、その中から最も産生能が高いクローンを選択し、続いて5週間にわたり、0.1〜0.8μMまでメトトレキサート(MTX)濃度を増加させながら増幅させる。この時点で、限定希釈によりサブクローニングし、最も産能が高いサブクローンを拡大する。
【0153】
0.8μMのMTXを含む総量20Lの無血清ハイブリドーマSFMを含む34個のローラーボトルまでクローンを拡大し、末端培養への到達を許す。遠心分離により上清液を清澄させ、濾過する(0.2μM)。1X結合緩衝液(10mMのイミダゾール、0.5MのNaCl、50mMのNaH2PO4、pH7.5)にディアフィルター(diafiltered)し、固定金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって精製するために310mLまで濃縮させる。濃縮物を30mLのNi−NTAカラムにロードし、0.02%のTween20を加えた500mLのIX結合緩衝液を用いて洗浄し、次いで290mL(30mMのイミダゾール、0.02%のTween20、0.5MのNaCl、50mMのNaH2PO4、pH7.5)を用いて洗浄する。110mL(250mMのイミダゾール、0.02%のTween20、150mMのNaCl、50mMのNaH2PO4、pH7.5)を用いて生成物を溶出する。還元条件のもと、DDD2−mCD20(136−178)の純度をSDS−PAGEにより評価する。
【0154】
実施例5.4複製のmCD20(136−178)に連結させたhLL1IgGを含む74−mCD20DNLワクチンの生成
実施例2および実施例3で説明したように、CH3−AD2−IgG−hLL1(抗CD74)を産生させる。コンストラクトは、hLL1IgGの各重鎖のC末端に付着させたAD2部分を含む。DDD2−mCD20(136−178)は、実施例4で説明したように産生させる。DNL反応は、1mMの還元グルタチオンを含むPBS中で、hLL1IgG−AD2およびDDD2−mCD20(136−178)を混合することにより行われる。翌日、酸化型グルタチオンを2mMの終末濃度に添加し、24時間後、反応混合物をタンパク質Aカラム上で精製させる。この実施形態では、各AD2部分に2複製のDDD2−mCD20付着させ、結果として、1つのhLL1 IgG部分および4つのmCD20異種抗原部分を含むDNL複合体が生じる。
【0155】
代替的な実施形態では、hLL1のFabをDDD2に連結させ、mCD20(136−178)をAD2に連結させる。先に説明したように、DNLコンストラクトの形成は、結果としてhLL1−F(ab)2−mCD20(136−178)と命名されたMMワクチンとなり、これはhLL1の2つのFab部分に付着された単一のmCD20(136−178)を含む。AD2−mCD20(136−178)の生成は、実施例6に説明する。
【0156】
MMを伴う対象に74−mCD20(136−178)またはhLL1−F(ab)2−mCD20(136−178)投与することにより、CDl38negCD20+と推定されるMM幹細胞に対抗する免疫反応を誘発する。免疫反応は、対象のMM疾患細胞を減少または除去するのに効果的である。
【0157】
実施例6.組み換えAD2−mCD20(136−178)の生成
【0158】
AD2−mCD20(l36〜178)−pdHL2は、組み換えAD2−mCD20(136〜178)用の発現ベクターであり、AD2−リンカー−mCD20(136〜178)−HHHHHH(配列番号30として開示したHHHHHH)を含む。テンプレートとして全長マウスCD20cDNAクローンを使用し、かつ以下に示す2つのプライマーを使用して、PCRによりBgl2およびEag1制限酵素部位に隣接したmCD20(136〜178)のヌクレオチド配列を含むDNAセグメントを獲得した。
上流プライマー:Bgl2_mCD20プライマー(30塩基長)
5’−AGATCTACACTTTCTCATTTTTTAAAAATG(配列番号33)
下流プライマー:Eag1_mCD20プライマー(48塩基長)
5’CGGCCGTCAGTGGTGGTGGTGGTGGTGGTTACAGTACTGTGTAGATGG(配列番号34)
【0159】
PCRアンプライマー(162bp)をPGEMT(登録商標)ベクター(PROMEGA(登録商標))にクローニングした。AD2−pdHL2哺乳類発現ベクター、例えば、N−AD2−hトンスフェリン−ヒスチジンpdHL2は、Bgl2制限酵素およびEag1制限酵素によるアンプライマーを用いたライゲーションのために調製される。Bgl2およびEag1を用いてPGEMT(登録商標)からmCD20アンプライマーを切り出し、発現ベクターAD2−mCD20(136〜l78)−pdHL2を生成させるためにAD2−pdHL2ベクターにライゲーションさせる。実施例4で説明したように、AD2−mCD20(136〜178)を発現するクローンを獲得し、Ni選択を使用してAD2−mCD20(136〜178)培養物の上清から精製する。
【0160】
実施例7.ADおよびDDD配列変異体
特定の好ましい実施形態では、先に説明したように、AD2(配列番号13)およびDDDD2(配列番号11)のアミノ酸配列を含むDNL複合体にAD配列およびDDD配列を組み込む。しかし、別の実施形態では、AD部分および/またはDDD部分の配列変異は、サイトカイン−MAbDNL複合体の構築に利用してよい。ADドメインおよびDDDドメインの構造機能の関係が研究されてきた(例えばBurns−Hamuroら,2005,Protein Sci 14:2982−92;Carrら,2001,J Biol Chem 276:17332−38;Altoら,2003,Proc Natl Acad Sci USA 100:4445−50;Hundsruckerら,2006,Biochem J 396:297−306;Stokkaら,2006,Biochem J 400:493−99;Goldら,2006,Mol Cell 24:383−95;Kindermanら,2006,Mol Cell 24:397−408を参照されたい)。
【0161】
例えば、Kindermanら(2006)は、AD−DDD結合の相互作用の結晶構造を試験し、含有していたいくつかの保存アミノ酸残基を含むヒトDDD配列は、下記の配列番号10で下線を付けた二量体形成またはAKAP結合のどちらかに重要であるという結論に至った(Kindermanら、2006の図1を参照されたい)。技術者であれば、DDD配列の配列変異を設計することにおいて、二量化およびAKAP結合に重要性が低い残基として保存アミノ酸置換を作製できつつも、下線を付けた残基が変化してしまうことは回避することを理解するだろう。
プロテインキナーゼAのヒトDDD配列
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号10)
【0162】
Altoら(2003)は、DDDについて0.4nMの結合定数を持つ、AKAP−IS(配列番号12)と呼ばれるRII選択的AD配列を設計するため、さまざまなAKAPタンパク質のAD配列のバイオインフォマティクス分析を行った。AKAP−IS配列をPKAに結合するAKAPのペプチドアンタゴニストとして設計した。置換基がDDへの結合を減らす傾向のあるAKAP−IS配列の残基を、以下の配列番号12にて下線を付けた。
【0163】
AKAP−IS配列
QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号12)
同様に、Gold(2006)は、RIアイソフフォームと比較してPKAのRIIアイソフォームについて、5桁の大きさの高い選択性を示すSuperAKAP−IS配列(配列番号19)を発生させるために結晶学およびペプチヂスクリーニングを利用した。下線を付けた残基は、AKAP−IS配列に関連するアミノ酸置換の位置を示し、RIIaのDDD部分への結合を増加した。この配列では、N末端のQ残基は残基数4として番号が付され、C末端のA残基の残基数は20として番号が付されている。置換がRIIaの親和性に作用するように作製できた残基は8、11、15、16、18、19、および20(Goldら,2006)であった。別の特定の実施形態では、SuperAKAP−IS配列は、サイトカイン−MAbのDNLコンストラクトを調製するために、AKAP−ISのAD部分配列に置換してよいことが想定される。AKAP−IS AD配列に置換される他の代替的な配列は、配列番号20〜配列番号22に示す。AKAP−IS配列に関する置換基は下線を付ける。配列番号19に示すAKAP−IS配列と同様に、AD部分も追加のN末端残基のシステインおよびグリシン、並びにC末端残基グリシンおよびシステインを含んでよいことが見込まれる。
SuperAKAP−IS
QIEYVAKQIVDYAIHQA(配列番号19)
代替的なAKAP配列
QIEYKAKQIVDHAIHQA(配列番号20)
QIEYHAKQIVDHAIHQA(配列番号21)
QIEYVAKQIVDHAIHQA(配列番号22)
【0164】
Stokkaら(2006)はまた、配列番号23〜配列番号25に示す、PKAに結合するAKAPのペプチド競合物を開発した。Ht31(配列番号23)、RIAD(配列番号24)、およびPV−38(配列番号25)としてペプチドアンタゴニストを設計した。Ht−31ペプチドは、PKAのRIIアイソフォームに高い親和性を提示し、RIADおよびPV−38は、RIに高い親和性を示した。
Ht31
DLIEEAASRIVDAVIEQVKAAGAY(配列番号23)
RIAD
LEQYANQLADQIIKEATE(配列番号24)
PV−38
FEELAWKIAKMIWSDVFQQC(配列番号25)
【0165】
Hundsruckerら(2006)は、PKAのRII型のDDDに対して0.4nMと同程度に低い結合定数を用いて、PKAに結合するAKAPについてさらに他のペプチド競合物を開発した。様々なAKAP拮抗ペプチドの配列がHundsruckerら(参照により本明細書に組み込まれる)の表1に提示されている。異なるAKAPタンパク質のADドメイン中に高く保存された残基は、AKAP IS配列(配列番号12)として参照するとともに下線を付けて以下に示す。残基は、C末端のアラニン残基の付加を持つ、Altoら(2003)により認められた残基と同じである(Hundsruckerら(2006)の図4を参照されたく、該内容は参照により本明細書に組み込まれる)。RIIのDDD配列に特定の高い親和性を持つペプチドアンタゴニストの配列は、配列番号26〜28に示す。
AKAP−IS
QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号12)
AKAP7δ−wt−pep
PEDAELVRLSKRLVENAVLKAVQQY(配列番号26)
AKAP7δ−L304T−pep
PEDAELVRTSKRLVENAVLKAVQQY(配列番号27)
AKAP7δ−L308D−pep
PEDAELVRLSKRDVENAVLKAVQQY(配列番号28)
【0166】
Carrら(2001)は、ヒトおよび非ヒトタンパク質由来の異なるAKAP結合DDD配列と異なるDDD部分のうち、最も高く保存されると予想されるDDD配列中に同定した残基との間の配列相同性の程度を試験した。これらは、配列番号10のヒトPKA RIIa DDD配列として参照するとともに下線を付けて示す。とりわけ保存された残基は、さらにイタリック体で示す。同一ではないものの、重複する残基はAKAPタンパク質への結合に重要であることがKindermanら(2006)により示唆された。
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号10)
【0167】
技術者であれば、本明細書で説明したように、一般的に、異なるタンパク質に由来するDDD配列およびAD配列に高度に保存されたアミノ酸残基は、アミノ酸置換を作製時に一定のままであることが好ましいアミノ酸残基であり、高度でなく保存された残基は、ADおよび配列/またはDDD配列の配列変異を産生させるように、一層容易に変化し得ることを理解するだろう。
【0168】
技術者であれば、DNLコンストラクトの抗体部分またはリンカー部分にある、これらおよび他のアミノ酸置換が、結果生じるDNLコンストラクトの治療的特性および/または薬物動態的特性を向上させるために利用されてよいことを理解するだろう。
【0169】
実施例8.DCに関するhLL1の効果−APCの異なるサブセットを持つhLL1の結合効率
初期の研究により、CD74は、血中DC、B細胞、単球を含むほとんどの抗原提示細胞に発現することが実証された。APC中のCD74の発現プロファイルをさらに特徴付けるため、我々は、ヒトPBMCおよびin vitroにおいて、単球由来のDCの異なるサブセットにおけるCD74の発現を試験した。図1Aに示すゲート戦略を使用して、我々は、血中のDCサブセット、骨髄DC1(MDCl)およびDC2(MDC2)、並びに形質細胞様DC(PDC)の全ては、MDC2が最も高いレベルのCD74を発現させながら(図1B)CD74を発現させることを見出した。CD74は、LPS成熟DCよりもはるかに高いレベルで単球由来の未熟DC中でも発現した(図2A)。CD74発現プロファイルと一致して、hLL1は、血中DCサブセット、B細胞、単球、および単球由来の未熟DC(図1C、図2B)と効率的に結合したが、LPS成熟DC(図2B、図2C)とは結合しなかった。これらAPCサブセットにおけるhLL1の結合効率は、それらのCD74発現レベルとよく相関している。これらのデータにより、ドック・ロック技術による標的ビヒクルとしてhLL11を使用したAPCへの抗原のin vivoの基盤が提供される。
【0170】
正常DCではなく、CD74を発現する悪性B細胞に関するhLL1の細胞毒性効果
図1Aおよび図1Bに示すように、CD74は、hLL1が効率的に結合しつつ、未熟DCにて高く発現するので、CD74を発現するB細胞リンパ腫に在る(Steinら,Blood 2004,104:3705−11)ことが既に示されているように、hLL1がDC中に同じ細胞毒性を有するかを疑った。このために、MTS分析および顕微イメージングを使用し、B細胞悪性Daudi細胞およびヒト単球由来のDCの細胞生存率についてhLL1の効果を並べて比較した。結果は、GAH(ヤギ抗ヒト抗体)、hLL1架橋結合用の第2抗体の存在下にて、DCではなくDaudi細胞の細胞生存率を著しく減少させ(図3A)、これは先に示したように、高いレベルのCD74を正常に発現させることを実証した。顕微イメージングは、GAHと架橋したhLL1を用いて治療されたDaudi細胞は、凝集および収縮するようになり、DCは同じように治療した後、正常な形態を維持したことを示す(図3C、図3D)。GAHと架橋したhLL1によるDaudi細胞に対抗する細胞毒性は、Steinら(2004)による初期の研究と一致し、in vitroおよびin vivoにおいてB細胞悪性腫瘍に対して細胞毒性を有することを示した。DCに関し、hLL1とGAHとを合わせた細胞毒性による欠失をアポトーシス分析でさらに実証し、これは低二倍体の核集団がGHAと架橋したhLL1による影響は受けないことを示した(不図示)。
【0171】
DCについてhLL1の細胞毒性の欠失をさらに確認するため、我々はフローサイトメトリーを使用してアポトーシス分析を行った。hLL1治療した未熟DCから核を獲得し、フローサイトメトリー分析のためにPIを用いて染色した。PIを足した粒子をまずゲートし、SSCの低粒子をゲートアウトすることにより壊死組織片を排除した。アポトーシスについて、低二倍体各集団を測定することにより、結果ゲートした核を分析した(図2A)。結果は、架橋結合(GAH、F(ab’)2 GAH IgG Fcγ特異的)について、第2mAb(20μg/ml)の有り無しで、2人のドナーにおけるDCアポトーシスの影響が全く無かった(図2B、図2C)ことを実証している。正常な樹状細胞に対してほとんど細胞毒性を有さないB細胞悪性腫瘍もまたCD74の表面抗原を発現することを実証した。
【0172】
hLL1によるDC構成の成熟の増大を緩和すること
【0173】
ヒトIgGは、FcRライゲーションを介してDCと相互作用することができ、FcRのサブタイプ(単数または複数)するに依存するDCの成熟に逆作用を有する。ヒト化IgGとしてのhLL1は、CD74だけでなく、DC上に発現したFcRを介してもヒトDCと相互作用し得る。このため、我々は、hLL1がCD74もしくはFcRまたは両方との相互作用を介してDCの機能に影響を与えうるのであろうと推測した。このことを調査するため、hGM−CSFおよびhIL−4の存在下、単球のin vitro培養において、DC構成の成熟についてhLL1の効果を試験した。
【0174】
DC成熟は、通常、その形態学的変化に反映されるため、我々はまた、hLL1治療がDCの形態に何らかの効果を有するかを試験した。図3Bに示されるように、さまざまな日数について異なる用量、GAH架橋結合の有り無しでは、hLL1で治療したDCは、健常かつインタクトであると見受けられた。hLL1治療したDCは線維状細胞と特徴のある幾らかのわずかな形態学的変化を示し、これはLPS治療したDC(不図示)に類似するが該DCよりも明らかに少ない。
【0175】
成熟DCは、主に抗原提示分子および副刺激分子発現の情報制御、変化したサイトカイン産生、並びに向上したT細胞刺激能力において未熟DCとは異なるので、次に我々はhLL1が、DCにおけるHLA−DR分子および副刺激分子、CD54およびCD86の発現について何らかの効果を有するかを調査した(図4)。結果は、hLL1が、0.05〜5μg/mlの範囲のhLL1濃度内では、用量に依存する方法でHLA−DR、CD54およびCD86を上方制御することができたことを示す(図4A)。しかし、効果は強力ではなく、HLA−DR分子および副刺激分子のように、CD54およびCD86の発現は、0μg/mlに比べて5μg/mlのhLL1では10%上方制御しただけだった(図4B)。最も高い濃度(50μg/ml)では、HLA−DR、CD54およびCD86の発現は、5μg/mlのhLL1に比べてさらに上方制御することはなく、わずかに減少した(図4B)。これらの結果は、hLL1が強くはないものの、DC構成の成熟を向上させることができたことを示している。
【0176】
hLL1治療したDCによるT細胞拡大に著しい影響は無い
未熟DCおよび成熟DCの機能的な違いとは、成熟DCが、T細胞増殖および拡大を刺激する、強力な能力を有することである。DCにおいて、HLA−DR、CD54およびCD86発現の発現を上方制御することにより、構成の成熟を高めることができるので(図4B)、我々は、このDCが成熟するという効果が、DCにより向上したT細胞拡大によって反映させることができるかどうかを測定した。図5に示されるように、0.05〜50μg/mlのhLL1で治療したDCは、全T細胞、CD4+T細胞、およびCD4−T細胞を含め、DCを媒介したT細胞拡大に影響を与えなかった(図5)。この結果は、hLL1により向上したDC構成の成熟が、向上したT細胞の刺激力へと変えるほど強くなかったことを示唆している。
【0177】
hLL1治療したDCによりTh1エフェクター細胞に向かうナイーブCD4+T細胞の極性化
しかし、DCは別の重要な機能、つまり異なるエフェクター細胞、Th1、Th2、Th17とともに、新規に定義されたTh17−1細胞へと分化させるナイーブCD4T細胞の極性化を有する。Th1細胞は、細胞内の病原体および癌に対抗する細胞性免疫に必須である一方で、Th2細胞の誘導は体液性免疫に関与する。IL−17を産生するTh17およびTh17−1細胞は、特定の病原体および自己免疫性の炎症に対し、免疫における多様な機能を有する他の極性化した細胞集団である。これらのエフェクター細胞の極性化は、主としてDCにより分泌されたサイトカイン、いわゆる「シグナル3」を介し、DC/T細胞シナプスのT細胞に提提示される。CD4+ナイーブT細胞は、異なるエフェクター機能を媒介するTh1、TH2、およびTnp細胞へと分化することができ、該エフェクのターのうち、Th1エフェクター細胞は、癌および感染症に対抗するCTL反応を維持するのに必須の役割を果たす。我々は、0.05〜50μg/mlのhLL1が、DC構成の成熟を用量に依存する方法ではなく、弱いながらも向上させることができるが、この濃度のhLL1を用いて治療したDCは、DCを媒介したT細胞拡大に影響を与えなかったことを示す(図5)。次に、我々は、hLL1治療したDCがCD4+ナイーブT細胞の極性化に影響を与えることができるかに興味を抱いた。図5に示されるように、hLL1治療したDCは、より多くのTH1エフェクター細胞、およびより少ないTH2およびTnp細胞へと分化するようにCD4+ナイーブT細胞を極性化させた。これらの結果は、DCがhLL1によって機能的に調節され得ることを示す。Th1は腫瘍および感染症に対抗する獲得免疫に重要な役割を果たすので、hLL1は、ワクチン接種で使用する際にアジュバント様の活性を有する。
【0178】
実施例9.in vitroにおける74−mCD20の特性−74−mCD20によるヒトPBMCにおけるhCD20特異的免疫の誘発
CD20は、B細胞上に発現する正常な自己抗原であり、該抗原は、免疫寛容に起因してワクチン戦略による標的が治療的に困難である。しかし、CD20に対する特異的なT細胞性免疫反応は、ヒトCD20のミニ遺伝子(Palombaら,Clin Cancer Res 2005;11:370−9)、またはヒトCD20の細胞外ドメインおよびQS21アジュバントを備える担体タンパク質を含む抱合体(Robertsら,Blood 2002;99:3748−55)をコードする細胞外ドメインを用いたワクチン接種により、担癌マウスにおいて実現できた。他の幾つかの報告では、動物モデルとともに患者におけるMUClについて示されるように、異種抗原を使用して免疫寛容を断つ実現可能性も実証されている(Dingら,Blood 2008;112:2817−25;Soaresら,J Immunol 2001;166:6555−63)(Ramanathanら,Cancer Immunol Immunother 2005;54:254−64)。74−mCD20が成功するようにhCD20特異的免疫を誘発し、CD20の免疫寛容を克服することができたかを試験するため、以下の実験を行う。
【0179】
hGM−CSFおよびhIL−4の存在下にて、5日間にわたって培養することにより、PBMCからヒトDCを生成させる。未熟DCを74−mCD20にロードし、LPSとIFN−gammaとを合わせることにより成熟させる。成熟DCは、10日間にわたり自己PBMCを刺激するために使用する。ロードした同じDCを用いて毎週2回、再刺激を行う。最後の再刺激後、局在化したCD20陽性MM癌幹細胞により刺激してから、サイトカイン反応(IFN−gamma)を測定することによりそれらの抗原特異性のためにT細胞を試験する。対照として、CD20陰性MM細胞を使用する。T細胞は、CD20陽性MM癌幹細胞に対して陽性反応を示すが、対照のCD20陰性MM細胞には反応を示さない。
【0180】
in vitroにおけるさまざまな抗原提示細胞の74−mCD20の特異的結合、内面化、および細胞内の位置
我々の準備中のデータでは、hLL1が、骨髄性DClおよび骨髄性DC2、形質細胞様DC、B細胞および単球を含むAPCと効率的かつ特異的に結合することが示された。74−mCD20が、hLL1単独としてAPCとの結合に同じ効率性および特異性を有することを確認するため、以下の実験を行った。
【0181】
74−mCD20および対照のMl−mCD20(4複製のmCD20に連結された抗MUCl抗体hPAM4を含む)を使用する。結合分析を以下のように行った。手短にいうと、ZENON(商標)ALEXA FLUOR(登録商標)488ヒトIgG標識キット(INVITROGEN(登録商標))を用い、製造者の説明書に従って15μgの74−mCD20またはMl−mCD20を標識する。標識した調製物を、以下に説明するようにヒトPBMCを染色するために使用する。
【0182】
FICOLL−PAQUE(商標)を使用してバフィーコートから単離したヒトPBMCを、ヒトFcR遮断試薬(Miltenyi Biotec,1:20希釈)を用い、4℃で10分間処置する。特異的に標識したmAbを用いて洗浄した細胞を染色し、フローサイトメトリー(FACSCALIBUR(登録商標))により分析する。研究用に使用した、標識したmAbsは、FITC標識した抗CD74mAb ALEXA FLUOR(登録商標)488標識した74−mCD20;ALEXA FLUOR(登録商標)488標識したMl−mCD20;PE−抱合した抗CD19mAb(B細胞用);PE−抱合した抗CD14mAb(単球用);およびBDCA−Iに対するAPC−抱合したmAb(MDCl用)、BDCA−2(PDC用)、またはBDCA−3(MDC2用)を含む。B細胞、単球、MDC1、MDC2、およびPDCの同定にゲート戦略を使用する。平均蛍光強度
および表面マーカーを発現する陽性細胞集団について、FlowJoソフトウェアによりデータを分析した。
【0183】
MHCクラスIIの提示およびMHCクラスIの交差提示のさらなるプロセシングについて、74−mCD20がエンドソームに内在化するか確かめるため、以下の実験を行った。74−mCD20またはMl−mCD20をヒトPBMCと混合し、4℃で1時間インキュベートし、広範囲の洗浄を行う。次いで細胞を37℃まで移し、異なる時間点(0、15、30、または45分)で固定し、透過処理をするか、または処理せずにALEXA FLUOR(登録商標)標識した抗ヒトIgG二次的抗体を用いて染色する。フローサイトメトリーにより平均蛍光を測定し、さまざまな時間点において記録した固定細胞および透過性細胞(内在化および表面結合)から固定細胞(表面結合)中の平均蛍光を差し引いて、内在化した抗体の量を算出する。
【0184】
結果は、74−mCD20DNL複合体が、hLL1単独としてのAPCとの結合について同じ効率性および特異性を有することを示す。
【0185】
実施例10.74−mCD20によるInVivoにおけるhCD20特異的免疫反応の誘発
照射した新生仔Rag2−/−γc−/−マウスにCD34+ヒト臍帯血細胞(HLA A1健常ドナー)を肝内注射し、ヒトT細胞、B細胞、DC細胞を含む再構成させたヒト適応型免疫システム用の動物モデルを作製し、一次リンパ器官および二次リンパ器官を構築する(Huffら,J Clin Oncol.2008,26:2895−900;YangおよびChang,Cancer Invest.2008,26:741−55)。これらのマウスは、Hu−Rag2−/−γc−/−マウスと呼ばれる。
【0186】
74−mCD20により誘発された免疫反応を評価するため、in vivoにおけるDC成熟用のCpG(マウス毎に50μg)を併用するか、または併用せずに、74−mCD20またはMl−mCD20(マウス毎に50μg)を用いて、Rag2−/−γc−/−マウスに再構築させたヒトCD34+細胞を毎週3回免疫化させる。最後の免疫化から5日後、フローサイトメトリーを用いた細胞内サイトカイン染色により評価するようなサイトカイン(IFN−gamma)を産生させるため、各動物の脾細胞を単離し、HLA適合MM癌幹細胞を再刺激する。ターゲット細胞としてのMM癌幹細胞を用いたカルセインAM遊離分析により、MM癌幹細胞に対抗する特異的細胞毒性評価する。電磁ビーズを使用して、MM細胞株RPMI18226からCD20+MM癌幹細胞を単離する。アルデヒド脱水素酵素を用いた染色により幹細胞特性を検証する。結果は、74−mCD20がin vivoにおいて抗hCD20特異的免疫反応を誘発することができることを示す。
【0187】
実施例11.MM癌幹細胞に対抗する74−mCD20の治療可能性:In VivoにおけるhPBMC/NOD/SCIDマウスモデルまたは養子移入の評価
74−mCD20の治療効果をin vivoにおいて評価する最善の方法は、MM増殖およびヒト適応型免疫システムの発生の両方を支援できるように動物モデルを免疫化することである。ヒトCD34+細胞により再構築したRag2−/−γc−/−マウスは、MM増殖を支援しないという免疫性に優れているので、MM幹細胞に対抗する74−mCD20の治療効果を試験するためにhPBMC/NOD/SCIDマウスモデルを使用する。NOD/SCIDマウスは、Matsuiらにより、クローン性の多発性骨髄腫幹細胞を移植するために使用されてきた(Blood 2004,103:2332−6;CancerRes 2008,68:190−7)。
【0188】
NOD/SCIDマウスは、腫瘍細胞およびhPBMCの共移植により、治療効果を評価するためにも使用される。注入する細胞数を注意深く調節することにより、このモデルは腫瘍増殖およびhPBMC移植の両方を支援することができ、in vivoにおいてDC−SIGNを標的とするワクチンの効果を試験するために使用されてきた。
【0189】
4週〜6週齢のメスのNOD/SCIDマウス(Jackson Laboratories,Barr Harbor,Maine)を300cGy(137Cs gamma照射器を使用して、84cGy/分)で照射する。12〜16時間後、背部の尾静脈から局在化したCD20+MM癌幹細胞(200万)を注入する。一方、ヒトPBMC(300万)、未熟DC(3万)、およびDNLワクチンの混合物をマウスの皮下に注入する。特定の時間点(日)に、マウスを安楽死させ、長管骨から骨髄を採取し、ヒトCD138+MM細胞の染色により移植および治療効果を測定した。
【0190】
74−mCD20の治療可能性をさらに評価するためMM幹細胞に対抗する、ワクチンにより誘発した細胞毒性を試験するため、養子導入による代替的な方法を使用した。先に説明したように、74−mCD20を用いてヒトCD34+細胞により再構築したRag2−/−γc−/−マウスを免疫化する。脾細胞を採取し、CD20+MM癌幹細胞を移植したNOD/SCIDマウスに尾静脈から注入する。特定の時間点(日)に、マウスを安楽死させ、長管骨から骨髄を採取し、ヒトCD138+MM細胞の染色により移植および治療効果を測定した。結果によれば、74−mCD20は、in vivoにおいてCD20+MM幹細胞に対抗する免疫反応を誘発することができることが確認される。
【0191】
実施例12.DDD2−mPAPおよびDNLワクチン複合体の生成
【0192】
実施例4の方法に従い、マウス前立腺酸性ホスファターゼからDDD2抱合したPAP異種抗原を生成させる。PAP異種抗原を用いた樹状細胞に基づくワクチン接種の効果は、既に開示されている(Fongら,J Immunol 2001,167:7150−56)。実施例4に説明したようにDDD2−mPAP−pdHL2発現ベクターを構築し、実施例4に従い、細胞培養中にDDD2−mPAP異種抗原融合タンパク質を発現させる。マウス前立腺酸性ホスファターゼ配列は、例えば、NCBIデータベースの登録番号AAF23171に開示されている。実施例4に説明したように、免疫金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によりDDD2−mPAP−6ヒスチジン融合タンパク質を発現させ、精製する。
【0193】
実施例5の方法に従って、複製のCH3−AD2−IgG−hLL1(抗CD74)および4複製のDDD2−mPAPを含むDNLコンストラクトを調製する。hLL1IgG部分はhLL1 IgGの各重鎖のC末端に付着されたAD2配列を含む。DNL反応は、1mMの還元グルタチオンを含んだPBSで、hLL1 IgG−AD2およびDDD2−mPAPを混合させることにより行った。翌日、2mMの最終濃度に酸化型グルタチオンを添加し、24時間後、タンパク質Aカラム上で反応混合物を精製する。2複製のDDD2−mPAPを各AD2部分に付着させ、1つのhLL1 IgG部分および4つのmPAP異種抗原部分を含むDNL複合体が生じる。
【0194】
前立腺癌誘発を伴う対象にDNLワクチン抗CD74−mPAPを投与することにより、前立腺癌幹細胞性を発現するPAPに対抗する免疫反応を誘発する。免疫反応は、対象の前立腺癌細胞を減少または排除するのに効果的である。
【0195】
実施例13.DDD2−mEGFRおよびDNLワクチン複合体の生成
実施例4の方法に従って、マウスEGFRからDDD2抱合したEGFR異種抗原を生成する。体液性免疫反応の誘発時におけるEGFR異種抗原の効果は、既に開示されている(Fangら,Int J Mol Med 2009,23:181−88)。マウスEGFRの細胞外ドメインを含むDDD2−mEGFR−pdHL2発現ベクターは、実施例4で説明したように構築し、DDD2−mEGFR異種抗原の融合は、実施例4に従い、細胞培養にてタンパク質を発現させる。マウスEGFR配列は、例えば、NCBIデータベースにて、登録番号AAG43241で開示されている。DDD2−mEGFR−6ヒスチジンを融合タンパク質を発現させ、実施例4で説明した免疫金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)により精製する。
【0196】
実施例5の方法に従い、1複製のCH3−AD2−IgG−hLL1(抗CD74)および4複製のDDD2−mEGFRを含むDNLコンストラクトを調製する。hLL1IgG部分は、hLL1 IgGの各重鎖のC末端に付着されたAD2配列を含む。DNL反応は、1mMの還元型グルタチオンを含むPBS中にてhLL1 IgG−AD2およびDDD2−mEGFRを混合させることにより行われる。翌日、2mMの最終濃度および反応混合物に添加した酸化型グルタチオンを、24時間後、タンパク質Aカラム上で精製させる。2複製のDDD2−mEGFRを各AD2部分に付着させ、結果として1つのhLL1 IgG部分および4つのmEGFR異種抗原部分を含むDNL複合体が生じる。
【0197】
EGFRを発現するNSCLCを伴う対象にDNLワクチン抗CD74−mEGFRを投与することにより、EGFRを発現する癌幹細胞に対抗する免疫反応を誘発する。免疫反応は、対象のEGFR陽性癌細胞を減少または除去するのに効果的である。
【0198】
技術者であれば、種々様々な腫瘍関連抗原に対応する異種抗原部分を組み込む、DNLに基づいたワクチンが、本明細で開示した技術に従って構築され、利用されてよいことを理解するだろう。
【0199】
本明細書で開示し、請求したあらゆる組成物および方法は、本開示を鑑みると必要以上の実験無しに作製し、使用することができる。組成物および方法は、好ましい実施形態の観点から説明したが、当業者であれば、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱すること無く、本明細書で説明した組成物および方法に対し、かつ方法の工程または工程の順序において、その変形を適用し得ることが明らかである。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連する特定の薬剤は、同一または類似する結果を達成させながら、本明細書で説明した薬剤と置換されてよい。当業者には明らかな、そのように類似するあらゆる置換および修飾は、付属する請求の範囲により定義するように、本発明の精神、範囲、および概念内にあるとみなされる。
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法35条119(e)に基づき、2008年8月20日に出願された米国特許仮出願番号第61/090,487号の優先権を主張し、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、多発性骨髄腫のような癌を治療するために、樹状細胞により、in vivoにて抗原を標的とするワクチンの設計および生成に関する。好ましい実施形態では、ワクチンは、ドック・ロック(DNL)法により生成され、ここでエフェクター部分は、AKAPタンパク質由来のアンカードメイン(AD)、並びにプロテインキナーゼA(PKA)由来の二量体化およびドッキングドメイン(DDD)部分に付着させる。DNL複合体は、DDD部分が自発的に二量体化してAD部分に結合すると生成され、結果としてDDDおよびAD結合エフェクターの間が2:1の化学量論比を持つ複合体となる。より好ましい実施形態では、エフェクター部分は、抗CD74抗体およびCD20異種抗原のような腫瘍関連異種抗原を含む。最も好ましい実施形態では、抗CD74抗体はhLL1抗体である。DNLコンストラクトは、多発性骨髄腫(MM)のような癌に対抗するワクチンを生成するため、および多発性骨髄腫または他のCD20を発現する癌を伴う患者のCD20陽性癌細胞のような腫瘍抗原を発現する細胞に対抗して免疫反応を誘発するため、医薬組成物を調製するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄における腫瘍性形質細胞のクローン増殖により特徴付けられる血液系腫瘍である。多くの化学療法剤に反応するものの、MMは標準的療法または大用量の化学療法でも生き残り、化学療法剤に耐性を持つMM癌幹細胞の少数集団が存続することに起因して、ほぼ不治のままであり、患者の大多数は最終的に再発する(Reeceら,Leuk Lymphoma,2008,49:1470−85)。この少数のMM癌幹細胞は、微小残存病変を構成して再発を引き起こし、結局は治療が全て失敗に終わる。従って、MM癌幹細胞を根絶するにはMMの長期にわたる抑制または治療でさえ提供する場合がある。
【0004】
最近では、特徴的な形質細胞表面抗原CD138を発現しないが、B細胞抗原CD20を発現する少数集団のクローン形質B細胞がMM患者のMM細胞株および原発性骨髄の両方から同定された(Matsuiら,Blood 2004,103:2332−6)。この少数集団の細胞は、複数の臨床治療用の抗ミエローマ剤に耐性を持ち、in vitro(Matsuiら,Blood 2004,103:2332−6;Matsuiら,Cancer Res.2008,68:190−7)、および3D培養モデル(Kirshnerら,Blood 2008,112:2935−45)にてクローン原性増殖することができ、in vitroと、第一次移植および第二次移植の両方にて、移植が行われたNOD/SCIDマウスと、においてMM細胞へと分化することができる(Matsuiら,Cancer Res.2008,68:190−7)。従って、これらCD138negCD20+細胞は、推定的に多発性骨髄腫癌幹細胞を提示することを示唆している(HuffおよびMatsui,J Clin Oncol.2008,26:2895−900)。
【0005】
他の癌幹細胞と同様に、MM癌幹細胞は多様な化学療法剤に難治性であり、腫瘍の再増殖および再発の原因になる(HuffおよびMatsui,J Clin Oncol.2008,26:2895−900;YangおよびChang,Cancer Invest.2008,26:741−55)。MM幹細胞のような癌幹細胞を選択的に標的とし、根絶することができる戦略およびアプローチが必要である。癌幹細胞の多剤耐性を有する理由から、免疫療法およびワクチン接種は、特に標準的治療および/または幹細胞移植後の、腫瘍量が大幅に減少したときにこれらの細胞を根絶する可能性のある治療法を提供し得る。多発性骨髄腫の治療を目的とする、特に、MM癌幹細胞に対抗する免疫反応を誘発し、MM癌幹細胞を阻害または根絶することができる有効な組成物、並びに免疫療法およびワクチン接種が必要である。さらには、一般的な癌の治療を目的とする有効な組成物、並びに免疫療法およびワクチン接種法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、MM幹細胞のような癌幹細胞に対抗するワクチンのための方法および組成物を開示し、当該方法および組成物は、ドック・ロック(DNL)法(Changら、2007,Clin Cancer Res 13:5586s−91s)を使用して調製される。DNL技術は、in vivoでの適用に適した、安定し、一定の種々の複合体を生成するために使用されてきた。好ましい実施形態では、DNL複合体は、二量体化およびドッキングドメイン(DDD)部分またはアンカードメイン(AD)部分に付着するhLL1抗体のような抗CD74抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む。DDD部分は自発的に二量化し、各DDD二量体はAD部分に結合する。より好ましい実施形態では、以下の発明を実施するための形態で説明するように、相補的なAD部分またはDDD部分はCD20異種抗原に付着し、抗CD74部分およびCD20異種抗原部分を含むDNL複合体の構造になる。しかし、当業者は、癌に応じて、異なる異種抗原および/または抗体もしくは抗体フラグメントが使用されてよいことを理解するだろう。抗体成分は、樹状細胞(DC)のような抗原提示細胞(APC)にDNL複合体を向け、一方、異種抗原の成分が、標的抗原を発現する細胞に対抗する免疫反応を呼び起こすように処理される。
【0007】
抗体または抗体フラグメントに対して異なる構造および異なる比率の標的抗原(例えばCD20)を備えるさまざまな種類のDNL複合体は、米国特許第7,550,143号(28段落30行目から44段落28行目まで参照により本明細書に組み込まれる)、米国特許第7,521,056号(58段落1行目から84段落45行目まで参照により本明細書に組み込まれる)、米国特許第7,534,866号(31段落1行目から36段落38行目まで参照により本明細書に組み込まれる)、米国特許第7,527,787号(61段落51行目から94段落65行目まで参照により本明細書に組み込まれる)、および米国特許出願公報第2009/006082号(段落[0035]から[0097]まで参照により本明細書に組み込まれる)に開示された方法および組成物のように、請求する方法および組成物の範囲内で構築され、使用されてよい。三量体、四量体、五量体、六量体、および他の構造体から成るDNL複合体が、先に記載した査定済み特許に報告されている。
【0008】
最も好ましい実施形態では、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、軽鎖可変の相補性決定領域(CDR)配列CDR1(RSSQSLVHRNGNTYLH;配列番号1)、CDR2(TVSNRFS;配列番号2)、およびCDR3(SQSSHVPPT;配列番号3)、並びに重鎖可変領域のCDR配列CDR1(NYGVN;配列番号4)、CDR2(WINPNTGEPTFDDDFKG;配列番号5)、およびCDR3(SRGKNEAWFAY;配列番号6)を備えるヒト化またはキメラのLLl抗CD74抗体もしくはそれらの抗原結合性フラグメントを含む。請求するDNL複合体における使用に適したヒト化LL1(hLL1)抗CD74抗体は、米国特許第7,312,318号に開示されており、当該内容の35段落1行目から42段落27行目まで、かつ図1から図4までが参照により本明細書に組み込まれる。代替的に、他の抗CD74抗体、または他のAPCもしくはDC関連抗原に対抗する抗体が使用されてよい。
【0009】
マウスCD20配列(配列番号:7)のような、抗癌ワクチン用のDNL複合体における使用に適したさまざまなCD20異種抗原配列が当技術分野で知られている。使用できる可能性のある他のCD20のアミノ酸配列は、技術者であれば、米国生物工学情報センター(NCBI)のタンパク質データベース(NCBI目録第NP 031667;P19437;AAA37394;BAE47068;ABA29631;BAD77809を参照されたい)のような、周知されている公共のデータベースを介して容易に入手できる。配列本明細書ではマウスCD20配列を記載しているが、技術者であれば、CD20のアミノ酸配列が知られており、幅広い種から容易に入手でき、かつ抗癌ワクチン用のDNL複合体に組み込むことができることを理解するだろう。しかし、技術者であれば、他の腫瘍関連抗原(TAA)が当技術分野で知られており、異なるTAAを発現する腫瘍に対抗する免疫反応を誘起するように、DNL複合体において使用されてよいことを理解するだろう。
【0010】
使用できる可能性のある公知のTAAは、限定されないが、炭酸脱水酵素IX、αフェトプロテイン、α−アクチニン−4、A3、A33抗体に特異的な抗原、ART−4、B7、Ba733、BAGE、BrE3−抗原、CA125、CAMEL、CAP−I、CASP−8/m、CCCL19、CCCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CDl1A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a−e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、CDK−4/m、CDKN2A、大腸−特異的抗原−p(CSAp)、CEA(CEACAM5)、CEACAM6、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP−1、EGP−2、ELF2−M、Ep−CAM、FIt−1、Flt−3、葉酸受容体、G250抗原、GAGE、gpl00、GROB、HLA−DR、HMl.24、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)およびそのサブユニット、HER2/neu、HMGB−1、低酸素誘導因子(HIF−I)、HSP70−2M、HST−2、Ia、IGF−1R、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、IL−2、IL−4R、IL−6R、IL−13R、IL−15R、IL−17R、IL−18R、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−17、IL−18、IL−25、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、KC4−抗原、KS−1−抗原、KS1−4、Le−Y、LDR/FUT、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、MAGE、MAGE−3、MART−1、MART−2、NY−ESO−1、TRAG−3、mCRP、MCP−1、MIP−1A、MIP−1B、MIF、MUCl、MUC2、MUC3、MUC4、MUM−1/2、MUM−3、NCA66、NCA95、NCA90、PAM−4抗体に特異的な抗原、胎盤増殖因子、p53、前立腺酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、PlGF、ILGF、ILGF−1R、IL−6、IL−25、RS5、RANTES、T101、SAGE、S100、サバイビン、サバイビン−2B、TAC、TAG−72、テネシン、TRAIL受容体、TNF−α、Tn抗原、Thomson−Friedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、VEGFR、ED−Bフィブロネクチン、WT−1、17−1A−抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管新生マーカー、bcl−2、bcl−6、Kras、cMET、癌遺伝子マーカー、および癌遺伝子産物(例えばSensiら,Clin Cancer Res 2006,12:5023−32;Parmianiら、J Immunol 2007,178:1975−79;Novellinoら,Cancer Immunol Immunother 2005,54:187−207を参照されたい)を含む。マウスタンパク質のアミノ酸配列のような、異種抗原のアミノ酸配列は、NCBIタンパク質データベースのような公共データベースから容易に獲得できるだろう。
【0011】
技術者であれば、知られている他の抗体またはそれらの抗原結合性フラグメントが、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトに組み込まれる可能性があることをさらに理解するだろう。好ましい実施形態では、抗体は、APC、より好ましくは樹状細胞によって発現された抗原に結合する。当技術分野で知られている樹状細胞に関連する種々の抗原は、限定されないが、CD209(DC−SIGN)、CD34、CD74、CD205、TLR2(toll様受容体2)、TLR4、TLR7、TLR9、BDCA−2、BDCA−3、BDCA−4、およびHLA−DRを含む。好ましい実施形態では、標的抗原はCD74である。しかし、樹状細胞と関連すると知られている他の種類の標的抗原、および、そのような任意の別の抗原を標的とする抗体を組み込んだ抗癌ワクチン用DNLコンストラクトが、請求する方法および組成物において使用されてよい。幾つかの実施形態では、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、抗CD74抗体またはその抗原結合性フラグメント、および別の抗樹状細胞抗体またはフラグメントを含み得る。抗癌ワクチン用DNLコンストラクトにおいて使用され得る例示的な抗体は、限定されないがhLL1(抗CD74、米国特許第7,312,318号)およびhL243(抗HLA−DR、米国特許出願第11/368,296号)を含み、各実施例部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
キメラ抗体の使用は、ヒト抗体の定常領域配列を保有し、従ってマウス抗体と同程度に強いヒト抗マウス抗体(HAMA)反応を誘発しないため好ましい。ヒト化抗体の使用は、HAMA反応を誘起する可能性をさらに引き下げるため、より一層好ましい。以下に考察するように、対応するヒト抗体のフレームワークおよび定常領域配列と、マウスのフレームワークおよび定常領域配列を置換することによりマウス抗体をヒト化する技術は、当技術分野で周知されており、多くのマウス抗癌用抗体に適用されてきた。抗体ヒト化は、1つ以上のヒトフレームワークのアミノ酸残基を親マウスのフレームワーク領域配列に由来する、対応する残基と置換することも含み得る。また、下記に考察するように、ヒト抗体を産生する技術も周知されており、そのような抗体は、対象の抗癌ワクチン用コンストラクトに組み込まれてよい。
【0013】
特定の実施形態では、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、抗癌ワクチン用コンストラクトを投与する前か、同時か、または投与した後に、少なくとも1つの治療薬と併用して投与されてよい。好ましい実施形態では、治療薬は、抗癌ワクチン用の前に投与される。しかし、別の実施形態では、治療薬は、DNLコンストラクトとともに同時投与されてよく、または抱合されてよい。以下により詳細に考察するように、当技術分野で知られている任意の治療薬は、限定されないが、放射性核種、免疫調節剤、抗血管新生薬、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ホルモン、薬物、プロドラッグ、酵素、オリゴヌクレオチド、siRNA、アポトーシス促進剤、光活性治療薬、細胞毒薬物、化学療法剤、毒物、または他の抗体もしくはそれらの抗原結合性フラグメントを含む、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトと併せて使用されてよい。
【0014】
好ましい実施形態では、治療薬は薬物または毒物のような細胞毒薬物である。薬物は、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、ゲムシタビン、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、白金配位化合物、ビンカアルカロイド、置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモンアンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、SN−38、ドキソルビシンおよびそれらの類似体、代謝拮抗剤、アルキル化剤、有糸分裂阻害薬、抗血管新生薬、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP90)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、HDAC阻害剤、アポトーシス促進剤、メトトレキサート、CPT−11、並びにそれらの組み合わせから成る群から選択されることも好ましい。
【0015】
別の好ましい実施形態では、治療薬は、リシン、アブリン、α毒素、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNase)、デオキシリボヌクレアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素および緑膿菌内毒素、並びにそれらの組み合わせから成る群から選択される毒物である。または、免疫調節剤は、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0016】
他の好ましい実施形態では、治療薬は、111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Au、および211Pb、並びにそれらの組み合わせから成る群から選択される放射性核種である。オージェ放出粒子を伴って、実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。例えば、Co−58、Ga−67、Br−80m、Tc−99m、Rh−103m、Pt−109、In−111、Sb−119、1−125、Ho−161、Os−189m、およびIr−192が挙げられる。有利にβ粒子を放出する核種の崩壊エネルギーは、好ましくは<1,000keV、より好ましくは<100keV、最も好ましくは<70keVである。α粒子を生成しながら実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。そのような放射性核種は、限定されないが、Dy−152、At−211、Bi−212、Ra−223、Rn−219、Po−215、Bi−211、Ac−225、Fr−221、At−217、Bi−213、およびFm−255を含む。有利にα粒子を放出する放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは2,000〜10,000keV、より好ましくは3,000〜8,000keV、最も好ましくは4,000〜7,000keVである。有用な、可能性のある追加的放射性同位元素は、11C、13N、15O、75Br、198Au、224Ac、126I、133I、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、197Pt、109Pd、105Rh、142Pr、143Pr、161Tb、166Ho、199Au、57Co、58Co、51Cr、59Fe、75Se、201Tl、225Ac、76Br、169Ybなどを含む。他の実施形態では、治療薬は、色素原および色素から成る群から選択される光活性治療薬である。
【0017】
代替的に、治療薬は、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、δ−V−ステロイド異性化酵素、酵母アルコール脱水素酵素、αグリセロリン酸脱水素酵素、トリオースリン酸異性化酵素、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコース酸化酵素、βガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼから成る群から選択される酵素である。そのような酵素は、例えば、比較的非毒性形態で投与されるプロドラッグと併用して使用されてよく、酵素により標的部位にて細胞毒薬物へと変換され得る。他の代替的な手段では、薬物は、対象の内因性酵素により、毒性を下げて変換されるが、治療用酵素により細胞毒性へと再変換されてもよい。
【0018】
好ましい実施形態では、抗癌ワクチン用DNL複合体は、多発性骨髄腫の治療に有用であるが、技術者であれば、CD20/抗CD74コンストラクトがB細胞リンパ腫、B細胞白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、びまん性B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫のような、他の形態のCD20+癌のような、他の種類の病気に対して潜在的に有用であり得ることを理解するだろう。CD20以外の腫瘍関連異種抗原が使用される場合、技術者は、TAAに関連する任意の種類の癌が、請求するDNL複合体を使用して標的とされ得ることを理解するだろう。
【0019】
さらに他の実施形態は、抗体−DDD融合タンパク質もしくは異種抗原−DDD融合タンパク質、または抗体−AD融合タンパク質もしくは異種抗原−AD融合タンパク質のような融合タンパク質をコードするDNA配列、当該DNA配列を含むベクターおよび宿主細胞、並びに抗癌ワクチン用DNLコンストラクトを産生する融合タンパク質を作製する方法に関する。関連する実施形態は、抗癌ワクチン用DNLコンストラクト、抗体−DDD融合タンパク質もしくは異種抗原−DDD融合タンパク質、または抗体−AD融合タンパク質もしくは異種抗原−AD融合タンパク質を作製するに有用な融合タンパク質を含む。別の実施形態では、DNL複合体のサブユニット成分は、例えば、抗体または抗体フラグメントおよびDDDペプチド、またはCD20異種抗原およびADペプチドの化学的架橋により形成され得る。特定の実施形態については、融合タンパク質または化学的に架橋した抱合体は、診断薬のようなレポーター部分に付着され得る。種々の診断薬は、放射性核種、コントラスト剤、蛍光剤、化学発光剤、生物発光剤、常磁性イオン、酵素、および光活動性診断薬などが当技術分野で知られている。
【0020】
好ましくは、診断薬は、20〜4,000keVの間のエネルギーを持つ放射性核種、または110In、111In、177Lu、l8F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154−158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、または他のγ-、β-、もしくは陽電子放射体から成る群から選択される放射性核種である。
【0021】
診断薬は、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジウム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、およびエルビウム(III)のような常磁性イオン、またはバリウム、ジアトリゾ酸、ヨード化ケシ油エチルエステル、クエン酸ガリウム、イオカルミン酸、イオセタム酸、イオダミド、イオジパミド、ヨードキサム酸、イオグラミド、イオヘキソール、イオパミドール、イオパノ酸、イオプロセム酸、ヨーセファム酸、イオセル酸、イオスラミドメグルミン、イオセメチン酸、イオタズル、イオテトル酸、イオタラム酸、イオトロクス酸、イオキサグル酸、イオキソトリゾ酸、イポダート、メグルミン、メトリザミド、メトリゾ酸、プロピリオドン、および塩化タリウムのような放射線不透過性物質も好ましい。
【0022】
さらに他の実施形態では、診断薬は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド、およびフルオレサミンから成る群から選択される蛍光標識化合物、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルから成る群から選択される化学発光標識化合物、またはルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリンから成る群から選択される生物発光化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】ヒト血液のDCサブセット、B細胞、および単球におけるhLL1の特異的結合を示す図である。
【図1B】ヒト血液のDCサブセット、B細胞、および単球におけるhLL1の特異的結合を示す図である。
【図1C】ヒト血液のDCサブセット、B細胞、および単球におけるhLL1の特異的結合を示す図である。
【図2A】ヒト単球に由来する未熟DC対成熟DCにおけるCD74発現、および当該DCを用いたhLL1の結合効率を示す図である。
【図2B】ヒト単球に由来する未熟DC対成熟DCにおけるCD74発現、および当該DCを用いたhLL1の結合効率を示す図である。
【図2C】ヒト単球に由来する未熟DC対成熟DCにおけるCD74発現、および当該DCを用いたhLL1の結合効率を示す図である。
【図3A】B細胞の悪性Daudi細胞および正常なDCに関するhLL1細胞毒性効果の対象比較を示す図である。
【図3B】B細胞の悪性Daudi細胞および正常なDCに関するhLL1細胞毒性効果の対象比較を示す図である。
【図3C】B細胞の悪性Daudi細胞および正常なDCに関するhLL1細胞毒性効果の対象比較を示す図である。
【図3D】B細胞の悪性Daudi細胞および正常なDCに関するhLL1細胞毒性効果の対象比較を示す図である。
【図4A】hLL1によるDCの構造上の成熟の増進抑制を示す図である。
【図4B】hLL1によるDCの構造上の成熟の増進抑制を示す図である。
【図5A】DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す図である。
【図5B】DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す図である。
【図5A1】DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す図である。
【図5A2】DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す図である。
【図5B1】DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す図である。
【図5B2】DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す図である。
【図6】hLL1治療したDCがTh1エフェクター細胞へと好ましく分化することによるナイーブCD4+T細胞両極性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本明細書で使用するように、内容が単数のみであると明確にしない限り、「1つ(a)」、「1つの(an)」、および「前記(the)」という用語は、単数または複数を指す。
【0025】
本明細書で使用するように、「約」という用語は、値のプラスマイナス10%の範囲にあることを意味する。例えば、「約100」とは、90〜110の間の任意の数を指す。
【0026】
抗体とは、全長の(例えば、正常の免疫グロブリン遺伝子フラグメントの組み換えプロセスにより自然に発生または形成される)免疫ブログリン分子(例えばIgG抗体)、または抗体フラグメントなどの免疫ブログリン分子の免疫活性、抗原結合部分を指す。
【0027】
抗体フラグメントは、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどのような抗体の一部分である。構造に関わらず、抗体フラグメントは、正常な抗体に認識される同一の抗原と結合する。そのため、当該用語は「抗原結合抗体フラグメント」と同意語として使用される。「抗体フラグメント」という用語は、軽鎖および重鎖の可変領域がペプチドのリンカー(「scFvタンパク質)により連結される、さまざまな領域の重鎖および軽鎖、並びに組み換え一本鎖のポリペプチド分子から成る「Fv」フラグメントのような、可変領域から成る単離されたフラグメントも含む。本明細書で使用するように、「抗体フラグメント」という用語は、Fcフラグメントまたは単一のアミノ酸残基のように、抗原結合活性を持たない抗体部分を含まない。例えば、単一ドメインの抗体フラグメントのような他の抗体フラグメントは、当技術分野で知られており、請求するコンストラクトに使用されてよい(例えば、Muyldermansら,TIBS 26:230−235、2001;Yauら,J Immunol Method 281:161−75、2003;Maassら,J Immunol Method 324:13−25、2007を参照されたい)。
【0028】
抗体融合タンパク質という用語は、組み換えにより産生された抗原結合分子を指し、同一または異なる特異性を有する同一または異なる単鎖の抗体または抗体フラグメントのセグメントが連結される。融合タンパク質の原子価は、融合タンパク質が単一の抗原またはエピトープを有する結合アームまたは結合部位の数、すなわち一価、二価、三価、または多価を示す。抗体融合タンパク質の多価性により、複数の相互作用を利用して抗原に結合することができ、従って抗原に結合する結合力を高めることができることを意味する。特異性は、抗体融合タンパク質が結合できる抗原またはエピトープの数、すなわち単一特異性、二特異性、三特異性、多特異性を示す。これらの定義を用いると、天然抗体、例えばIgGは、2つの結合アームを有する二価であるが、1つのエピトープに結合するので単一特異性である。単一特異性で多価の融合タンパク質は、1つのエピトープに対し2つ以上の結合部位を有するが、1つのエピトープにしか結合しない。融合タンパク質は、単一抗体成分、異種抗体成分または複数の複製物の同一抗体成分の、多価的な組み合わせまたは多特異的な組み合わせを備え得る。融合タンパク質は、付加的に抗体または抗体フラグメントおよび治療薬を含み得る。そのような融合タンパク質に適している治療薬の例は、免疫調節剤および免疫調節毒物を含む。好ましい毒物の1つは、リボヌクレアーゼ(RNase)、好ましくは組み換えRNaseを含む。しかし、用語は限定されるものではなく、種々のタンパク質またはペプチドのエフェクターが融合タンパク質に組み込まれてよい。限定されるものではないが、別の例では、融合タンパク質は、以下に考察するようなDNLコンストラクトを産生するAD配列またはDDD配列を含んでよい。
【0029】
キメラ抗体とは、1つの種に由来する抗体、好ましくはげっ歯類の抗体の相補性決定領域(CDR)を備える可変ドメインを含有し、抗体分子の定常ドメインはヒト抗体に由来する組み換えタンパク質である。動物を適用する場合、キメラ抗体の定常ドメインは、ネコまたはイヌのような他種の抗体に由来してよい。
【0030】
ヒト化抗体は組み換えタンパク質であり、1つの種、例えばげっ歯類の抗体に由来する抗体のCDRが、げっ歯類の抗体の重鎖および軽鎖の可変鎖から、ヒトの重鎖および軽鎖可変ドメイン(例えばフレームワーク領域配列)に移植される。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体の定常ドメインに由来する。特定の実施形態では、親(げっ歯類)抗体に由来する限定した数のフレームワーク領域のアミノ酸残基が、ヒト抗体フレームワーク領域配列へと置換され得る。
【0031】
ヒト抗体は、例えば、抗原性誘発に応える特異的ヒト抗体を産生するように「遺伝子操作」されたトランスジェニックマウスから獲得された抗体である。この技術では、ヒト重鎖および軽鎖の遺伝子座の要素は、内因性マウスの重鎖および軽鎖の遺伝子座の標的破壊を含有する胚幹細胞株に由来するマウスの株に導入される。トランスジェニックマウスは、特定の抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、マウスはヒト抗体を分泌するハイブリドーマを産生させるために使用することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を獲得する方法は、Greenら,Nature Genet.7:13(1994),Lonbergら,Nature 368:856(1994)、およびTaylorら,Int.Immun.6:579(1994)により説明されている。完全ヒト抗体が、遺伝子または染色体トランスフェクション法とともにファージ提示技術によって構築することもでき、それら全ては当技術分野で知られている。予防接種を受けていないドナーの免疫ブログリン可変ドメインの遺伝子レパートリーからin vitroにてヒト抗体およびそのフラグメントを作製することについては、例えば、McCaffertyら,Nature348:552−553(1990)を参照されたい。この技術では、抗体の可変ドメイン遺伝子は、線維状のバクテリオファージの主要または微量どちらかの外被タンパク質遺伝子へとフレーム内にてクローンニングされ、ファージ粒子の表面上で、機能的抗体フラグメントとして提示される。線維状の粒子は、一本鎖DNAのファージゲノムの複製を含有しているので、抗体の機能的特性に基づく選択は、その特性を提示する抗体をコードする遺伝子を選択することになる。この方法では、ファージは幾つかのB細胞特性を模倣する。ファージ提示は種々の構成で行うことができ、概説として、例えば、JohnsonおよびChiswell,Current Opiniion in Structural Biology 3:5564−571(1993)を参照されたい。ヒト抗体は、in vitroで活性化させたB細胞から生成されてもよい。米国特許第5,567,610号および米国特許第5,229,275号を参照されたく、それらの実施例部分は参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
図1は、ヒト血液のDCサブセット、B細胞、および単球におけるhLL1の特異的結合を示す。(A)異なるAPCサブセットに対するゲート戦略。(B)APCにおけるCD74発現。(C)細胞上のhLL1の結合効率。数値は平均蛍光強度を示す。
図2は、ヒト単球に由来する未熟DC対成熟DCにおけるCD74発現、および当該DCを用いたhLL1の結合効率を示す。ヒト単球に由来するDC(hGM−CSFおよびhIL−4の存在下で培養5日後)は、FITC標識した抗CD74抗体またはAlexaFluor488標識したhLL1を用いて染色し、併せてHLA−DRおよびCD83に対して蛍光標識したmAbsを用いて染色した。HLA−DR陽性細胞をゲートおよび分析した。(A)未熟DCおよびLPS成熟DCにおけるCD74発現。(B)未熟DC対LPS成熟DCのhLL1結合。(C)未熟DCおよびLPS成熟DCにおけるCD83、HLA−DR、CD74、およびhLL1結合の発現比較。
図3は、B細胞の悪性Daudi細胞および正常なDCに関するhLL1細胞毒性効果の対象比較を示す。(A)DaudiおよびDCに関するhLL1の効果比較(B)広範な用量におけるDCの細胞生存に関するhLL1の効果。(C)Daudi細胞に関するhLL1の細胞毒性効果(D)顕微鏡画像は、DC生存率に関してhLL1の効果が無いことを示す。
図4は、hLL1によるDCの構造上の成熟の増進抑制を示す。hGM−CSFおよびhIL−4の存在下で、ヒト単球に由来する5日後のDCからHLA−DR陽性細胞集団をゲートした。(A)フローサイトメトリーにより抗原提示分子HLA−DR、副刺激分子CD54およびCD86の発現を測定した。(B)抗原提示分子HLA−DR、副刺激分子CD54およびCD86の発現レベル。
図5は、DC媒介したT細胞増殖に関してhLL1の著しい影響が無いことを示す。CFSE標識した同種異系PBMCを用いて、8日(A)または11日(B)にわたりhLL1治療したDCを共培養した。CD4に対してPercp抱合したmAbを用いて拡大したT細胞を染色した。全T細胞、CD4+T細胞、およびCD4−T細胞の細胞増殖を分析した。
図6は、hLL1治療したDCがTh1エフェクター細胞へと好ましく分化することによるナイーブCD4+T細胞両極性を示す。電磁ビーズ(MACS)を用い、枯渇カラムを使用してヒトPBMCから単離したナイーブCD4+T細胞を、hLL1治療した同種異系DCとともに共培養した。異なる時間点(11日目、13日目、18日目)にて細胞を採取し、PMAおよびイオノマイシンを用いて刺激し、蛍光標識したhIFN−gammaおよびhIL−4抗体を用いて染色し、細胞内サイトカインを用いて分析した。Th1/Th2/Th0細胞集団をゲートし、分析した。hLL1治療したDCまたはGAH架橋してhLL1治療したDCにより刺激したT細胞におけるフローサイトカイン産生を測定した。(C)DC/T培養の異なるに日数後における、GAHによる架橋の有り無しでの、2人のドナーにおけるTh1反応のデータを示す。(D)hLL1によるTh1集団の増加に対する線量効果曲線。
【0033】
多発性骨髄腫および他の癌を治療するワクチン
CD20は通常、B細胞株期の細胞に発現する。最近では、CD20がMM細胞株または臨床検体から単離した少数集団のMM細胞において発現し、当該CD20は特徴的な形質細胞表面抗原CD138を発現しないがコロニー形成する高い潜在力を有し、かつ多様な臨床用抗骨髄腫薬に耐性を持つことが報告された(Matsuiら、Blood 2004,103:2332−6;Matsuiら、Cancer Res.2008,68:190−7)。これらCD20+CD138-細胞は、in vitroおよび3−D培養モデルにおいてクローン性増殖することができ(Kirshnerら、Blood 2008,112:2935−45)、in vitroと、一次移植および二次移植の間、移植したNOD/SCIDマウスモデルとにおいてMM細胞へと分化させることができる。従って、これらCD138negCD20+細胞は、推定的な多発性骨髄腫癌幹細胞を提示することが示唆されてきた。
【0034】
癌の免疫療法のために、免疫寛容を絶つ手段として異種抗原を用いて免疫化すること
多くの腫瘍関連抗原(TAA)は、本質的に免疫原性ではない組織分化抗原を提示する。高い親和性を備えるこれらTAA/自己抗原を認識するT細胞は、胸腺にてクローン的に欠落するか、末梢にてアネルギー化される。しかし、異種抗原を用いた免疫化により、相同性の自己抗原に対抗する免疫寛容を克服できることが示されてきた。第一相臨床試験では、組み換えマウスPAPにより活性させた樹状細胞を用いて免疫化した21人の前立腺癌の患者のうち11人の患者は、相同性の自己抗原に反応するI型T細胞増殖性応答を発達させ、6人の患者は、以前まで進行していた前立腺癌が臨床的に安定した(Fongら、J Immunol.2001,167(12):7150−6)。これらの結果は、異種抗原による免疫化がヒトの自己抗原に対する寛容性を遮断させることができ、結果として臨床的に著しい抗腫瘍効果を与えることを証明している。
【0035】
免疫療法の標的およびMMに対するワクチン接種としてのCD20
前述のように、CD20はMM癌幹細胞の証明となる。自己抗原は、ほとんどの分化段階で正常なB細胞に発現するが、免疫寛容に起因してワクチン戦略により標的することが理論的に困難である。しかし、B細胞リンパ腫の腫瘍に挑むモデル作りにおいて、CD20に対抗する異種DNAワクチンにより、成功したワクチン接種が実現されてきた。B細胞に対抗する自己免疫は、CD20を標的とするワクチンにより誘発することができたが、B細胞プールは主要組織および決定組織ではなく、系統の前駆細胞から補充することができるため、大きな問題を起こすものではない。これらを考慮すると、CD20を標的とする治療ワクチンは、MM癌幹細胞の選択的根絶に有効である。
【0036】
MM幹細胞を根絶する潜在的モダリティとしてのモノクローナル抗CD20抗体
CD20+MM前駆細胞の発見は、MM患者におけるリツキシマブ、抗CD20モノクローナル抗体の有効性を試験する、幾つかの小規模な臨床治験を促進させてきた。Kapoorら(Br J Haematol.2008,141:135−48)により概説されているように、リツキシマブを用いた抗CD20治療は、多発性骨髄腫を伴うCD20+患者のおよそ10%において部分的に反応を引き出す。また、10カ月〜27カ月の期間にわたり、CD20+患者の50%〜57%において疾患が安定化するという予備的証拠がある(Kapoorら(Br J Haematol.2008,141:135−48)。さらに、Berguaら(Leukemia.2008,22:1082−3)による症例報告では、リツキシマブが化学療法と併用して使用され、免疫表現型、または骨髄穿刺もしくは骨髄生検のいずれかにて治療後の微小残存病変は見出されず、CD20+形質細胞が消滅したことを実証した。これらの結果は、大規模な臨床治験を納得させ、骨髄腫におけるこの戦略の役割を確立させている。CTL反応を誘発するので、ワクチンアプローチは、CD20MM幹細胞に対抗するモノクローナル抗体治療を補うことが予想される。
【0037】
ワクチン接種および免疫寛容を絶つ効率的な戦略としての、in vivoにおける樹状細胞および他抗原提示細胞に対する抗原の標的
プロフェッショナルな抗原提示細胞として、樹状細胞(DC)は先天性免疫および獲得性免疫の編成において極めて重要な役割を果たし、効果的なワクチンを作製するために利用されてきた(Vulinkら,Adv Cancer Res.2008,99:363−407;O’Neillら,Mol Biotechnol.2007,36:131−41)。In vivoにて、DCに対して抗原を標的とすることにより、骨の折れる高価なex vivoでの抗原負荷および培養を避け、DCに基づいた免疫療法を大規模に適用することを促すことができるので、DCに基づいたワクチン接種への有望なアプローチを意味する(Tackenら、Nat Rev Immunol.2007,7:790−802)。より著しくは、in vivoにおいてDCを標的とするワクチン接種は、抗腫瘍免疫反応を引き出すことに一層効率的であり、動物モデルにおいて腫瘍増殖を制御することに一層効果的である(Kretz−Rommelら,J Immunother 2007, 30:715−726)。DCに加え、B細胞もTh1/Th2細胞を初回刺激し(Morrisら,J Immunol.1994,152:3777−3785;Constant,J Immunol.1999,162:5695−5703)、相互提示を介してCD8T細胞を活性化することができる可能性のある、別の種類の抗原提示細胞である(Heitら,J Immunol.2004,172:1501−1507;Yanら,Int Immunol.2005,17:869−773)。in vivoにおいてB細胞に対して抗原を標的とすることによりMUClの免疫寛容を絶つことが近頃報告された(Dingら,Blood 2008,112:2817−25)。
【0038】
ワクチン接種を標的とする可能性のある受容体としてのCD74
マンノース受容体のようなDC上に発現した幾つかの受容体は、in vivoにおいて抗原を標的とする対象として使用されてきた(Heら,J.Immunol 2007,178,6259−6267;Ramakrishnaら、J.Immunol.2004,172,2845−2852)、CD205(Bonifazら,J Exp Med.2004,199:815−24)、DC−SIGN(Tackenら,Blood 2005,106:1278−85)、およびLOXl(Deinesteら,Immunity 2002,17,353−362)など。CD74はMHC IIを正しくフォールディングし、エンドソームにMHCII−CD74複合体を標的させるのに必須のII型内在性膜タンパク質である(Steinら,Clin Cancer Res.2007,13:5556s−5563s;Matzaら,Trends Immunol.2003, 24(5):264−8)。CD74発現は、DCに制限されないが、ほとんど全ての抗原提示細胞に見出される(Freudenthalら,Proc Natl Acad Sci USA.1990,87:7698−702;Clarkら,J Immunol.1992,148(11):3327−35)。APCにおけるCD74の広範な発現は、B細胞のような他のAPCに抗原を標的とすることが免疫寛容を絶つと報告されてきたので、骨髄DCでのただ1つの発現に対して幾つかの有利性を提供し得(Dingら,Blood 2008,112:2817−25)、相互提示抗原ナイーブCD8T細胞へと形質細胞様のDC相互提示抗原に標的する。より重要なことに、CD74も濾胞状DCに発現し(Clarkら,J Immunol.1992,148(11):3327−35)、B細胞に対して抗原提示するに重要なDCサブセットである(Tewら,Immunol Rev.1997,156:39−52)。この発現プロファイルにより、CD74は、in vivoにおいて標的とするワクチン接種のための優秀な候補となる。
【0039】
ドック・ロック技術プラットフォームの新規標的ツールとしてのヒト化抗CD74モノクローナル抗体hLL1
以下にさらに詳細に考察するDNL技術は、任意選択したエフェクター部分を共有結合性複合体または非共有結合性複合体へと実質的に結合させる手段を提供する(Goldenbergら,J Nucl Med.2008,49:158−63;Rossiら,Proc Natl Acad Sci USA.2006,103(18):6841−6)。DNL法は、癌胎児性抗原(CEA)と反応するFabフラグメントを含有する幾つかの三価、二価特異的結合タンパク質を生成させ、プレターゲティング戦略を介して改善した癌画像診断、放射性免疫療法に成功的に使用されてきた(Goldenbergら,J Nucl Med.2008,49:158−63)。
【0040】
hLL1は、ヒトCD74に対抗するヒト化モノクローナル抗体である(Leungら,Mol Immunol.1995,32:1416−1427;Losmanら,Cancer 1997,80:2660−2666;Steinら、Blood 2004,104:3705−11)。第二抗体による架橋結合の存在下では、このMAbは、B細胞悪性腫瘍に対抗する細胞毒性を示す。裸のhLL1もMMマウスモデルの腫瘍増殖を制御することができる。しかし、出願人らの最近のデータでは、架橋結合の有り無しで、hLL1はヒト単球由来のDCに対抗する細胞毒性が無いことを実証している。しかし、出願人らの準備中のデータでは、hLL1が血中のDCおよびB細胞の異なるサブセットを効率的に結合させることができることを示している。hLL1は、アジュバンド活性を有し、標的ツールとして使用するにふさわしい候補であり得ることを示唆しながら、DC成熟を適度に誘発し、Th1エフェクター細胞へとナイーブT細胞分化を極性化することができる。これにより、DNLによりもたらしたhLL1抗体を介して、APCを標的とするDNLに基づいた腫瘍用ワクチンを構築することが可能となり、かつ実現することができる。
【0041】
癌幹細胞を選択的に除去する免疫療法
癌幹細胞は自己複製することができ、無制限に増殖する能力を保有し、多様な治療手段に耐性を持つ。癌幹細胞が免疫療法に対して感応性である場合、差し迫った興味深い質問が挙げられる。白血病の症例では、CD8(+)非主要組織適合性の抗原特異的細胞毒性Tリンパ球クローンはヒト急性骨髄性白血病の幹細胞を排除することができることが報告された(Bonnetら、Proc Natl Acad Sci U.S.A.1999,96:8639−8644)。つい最近では、Rosinskiら(Blood 2008,111:4817−26)により、DDX36をコードするH−Yエピトープが白血病性幹細胞により発現され、DDX36特異的CTLにより認識することができ、NOD/SCIDマウスにおいてヒト急性白血病の移植を防ぐことができることが報告された(Rosinskiら,Blood 2008,111:4817−26)。別の報告では、NOD/SCIDγcnullマウスへのmHA骨髄性白血病の幹細胞の移植は、mHA特異的CTLクローンを用い、in vitroにおけるプレインキュベーションにより完全に阻害されることを示している(Kawaseら,Blood 2007,110:1055−63)。これらの結果は、免疫療法が、この悪性腫瘍の長期間にわたる抑制または治療でさえ実現するということに必要とされる、MM幹細胞を含む癌幹細胞を選択的に根絶する可能性のある、効果的な手段であるという見込みを浮き彫りにしている。
【0042】
ドック・ロック(DNL)法
DNL法は、cAMP依存的タンパク質キナーゼ(PKA)の調節(R)サブユニットとAキナーゼアンカータンパク質(AKAP)のアンカードメイン(AD)との間に生じる特異的なタンパク質/タンパク質の相互作用を利用する(Baillieら,FEBS Letters.2005;579:3264.WongおよびScott,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2004;5:959)。Rサブユニットへの二次メッセンジャーcAMPの結合により引き起こされる、最もよく研究されたシグナル伝達経路の1つにおいて中心的な役割を果たすPKAは、1968年に、まずウサギ骨格筋から単離された(Walshら,J.Biol.Chem.1968;243:3763)。ホロ酵素の構造は、Rサブユニットにより不活性型に保持された2つの触媒サブユニットから成る(Taylor,J.Biol.Chem.1989;264:8443)。PKAのアイソザイムは2種類のRサブユニット(RIおよびRII)を用いて認められ、各種類はαアイソフォームおよびβアイソフォームを有する(Scott,Pharmacol.Ther.1991;50:123)。Rサブユニットは、安定した二量体としてのみ単離され、二量化ドメインは最初の44アミノ末端残基から成ることが示された(Newlonら,Nat.Struct.Biol.1999;6:222)。RサブユニットへのcAMPの結合により、セリン/スレオニンキナーゼ活性の広域スペクトルに対して活発な触媒サブユニットを遊離させ、これがAKAPとのそのドッキングを介してPKAの区分を通って選択した基質へと配向させる(Scottら,J Biol.Chem.1990;265;21561)。
【0043】
最初のAKAPである微小管結合タンパク質−2が1984年に特性が明らかになってから(Lohmannら,Proc.Natl.Acad.Sci USA.1984;81:6723)、細胞膜、アクチン細胞骨格、核、ミトコンドリア、および小胞体を含むさまざまな細胞内部位に局在する、50を上回るAKAPが、酵母からヒトに及ぶ種の多種多様な構造体を用いて同定されてきた(WongおよびScott,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2004;5:959)。PKAについての、AKAPのADは、14〜18残基の両親媒性ヘリックスである(Carrら,J.Biol.Chem.1991;266:14188)。ADのアミノ酸配列は、個体のAKAPにおいてかなりばらつきがあり、2〜90nMに及ぶRII二量体についての結合親和性も報告されている(Altoら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2003;100:4445)。興味深いことに、AKAPは二量体Rサブユニットにしか結合しないようである。ヒトRIIαについて、ADは23アミノ末端残基により形成された疎水性表面に結合する(ColledgeおよびScott,Trends Cell Biol.1999;6:216)。従って、ヒトRIIαの二量体形成ドメインおよびAKAP結合ドメインは、どちらも同じN末端44アミノ酸配列内に位置し(Newlonら,Nat.Struct.Biol.1999;6:222;Newlonら、EMBO J.2001;20:1651)、本明細書ではDDDと呼ぶ。
【0044】
ヒトRIIαのDDDおよびリンカーモジュールとしてのAKAPのAD
以下にAおよびBと呼ぶ任意の2つの実体を非共有結合性複合体へとドッキングして、ジスフィルド結合の形成を促す戦略的位置においてDDDおよびAD両方にシステイン残基を導入することにより、さらに安定した繋留構造へとロックする、優れた一対のリンカーモジュールとしてヒトRIIαのDDDおよびAKAPのADを利用するプラットフォーム技術を開発した。「ドック・ロック」アプローチの一般的方法論は以下の通りである。実体Aは、Aの前駆物質にDDD配列を連結させることにより構築され、結果として以下に本明細書でaと呼ばれる第1コンポーネントになる。DDD配列は自発的な二量体の形成に影響を与えるので、従ってAはa2から構成される。実体BはBの前駆物質にAD配列を連結させることにより構築され、結果として以下に本明細書でbと呼ばれる第2コンポーネントになる。a2に含有されるDDDの二量体モチーフは、bに含有されるAD配列に結合させるためのドッキング部位を作り出し、従って、a2およびbの迅速な結合を促してa2bから構成される二成分の三量体複合体を形成する。この結合の事象は、ジスフィルド架橋を介して2つの実体を共有結合的に固定する後の反応によって不可逆的に産生され、これにより最初の結合相互作用による反応性のチオール基が、DDDおよびAD上に近接して集まって部位特異的にライゲーションするので、効果的な局所集中するという原理に基づき非常に効果的に生じる(Chmuraら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2001;98:8480)
【0045】
好ましい実施形態では、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、a2b構造の変異に基づき、hLL1抗体またはフラグメントのような抗CD74抗体またはF(ab’)2もしくはF(ab)2抗体フラグメントの各重鎖は、そのC末端にてAD部分の1つの複製に付着する。抗体またはフラグメントごとに重鎖が2つあるので、抗体またはフラグメントごとに2つのAD部分が存在する。CD20異種抗原は、相補的にDDD部分に付着する。DDD部分の二量化後、各DDD二量体は、IgG抗体またはF(ab’)2もしくはF(ab)2フラグメントに付着するようにAD部分の1つに結合し、結果としてIgGまたはF(ab’)2もしくはF(ab)2ユニットごと、化学量論的に4つのCD20異種抗原になる。しかし、技術者であれば、AD配列へのCD20の付着およびDDD部分への抗CD74MAbまたはフラグメントの付着のような別の複合体が利用されてよく、結果として化学量論的に異なるエフェクター部分になることを理解するだろう。例えば、IgG抗体またはF(ab’)2フラグメントの各重鎖のC末端にDDD配列を付着させ、CD20異種抗原にAD配列を付着させることにより、DNL複合体は、1つのCD20分子と1つの抗CD74抗体またはフラグメントとを含んで構築されてよい。
【0046】
2つの前駆物質の官能基から離れてDDDおよびADを付着させることにより、そのような部位特異的なライゲーションは、2つの前駆物質の本来の活性を防ぐようになるものと予想される。このアプローチは、実質的にモジュラーであり、可能性として、部位特異的および共有結合的に広範な物質を連結させることができる。
【0047】
以下の実施例で例示されるような好ましい実施形態では、エフェクター部分はタンパク質またはペプチドであり、DDDユニットまたはADユニットに連結させて融合タンパク質またはペプチドを形成することができる。目的の融合タンパク質をコードする合成二本鎖核酸を産生する核酸合成、ハイブリダイゼーション、および/または増幅を含む、融合タンパク質を作製するための種々の方法が知られている。そのような二本鎖核酸は、標準的な分子生物学の技術を用いて、融合タンパク質を産生する発現ベクター内に挿入され得る(例えばSambrookら,Molecular Cloning,A laboratory manual,2nd Ed,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,1989を参照されたい)。そのような好ましい実施形態では、AD部分および/またはDDD部分は、エフェクタータンパク質またはペプチドのN末端またはC末端のどちらかに付着されてよい。しかし、技術者であれば、エフェクター部分へのAD部分またはDDD部分の付着部位は、その生理学的活性に関わるエフェクター部分のエフェクター部分およびその一部(単数および複数)の化学的性質に依存して変化させてよいことを理解するだろう。例えば、AD部分またはDDD部分は、抗原結合活性を維持しながら抗体または抗体フラグメントのN末端またはC末端のどちらかに付着され得るが、C末端位置への付着はAD部分またはDDD部分を抗原結合部位から離れて位置決めを行い、結果として一層強力な相互結合作用をもたらすようである(例えばChangら,Clin Cancer Res 2007,13:5586s−91s)。さまざまなエフェクター部分の部位特異的付着は、二価架橋結合試薬および/または他の化学的抱合技術の使用のように、当技術分野で知られている技術を使用して行われてよい。
【0048】
抗体および抗体フラグメント
さまざまな実施形態では、抗体または抗体の抗原結合性フラグメントは、抗癌ワクチン用のDNL複合体に組み込まれ得る。抗原結合性抗体フラグメントは、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどのように当技術分野で周知されており、そのように知られている任意のフラグメントが使用されてよい。本明細書で使用するように、抗原結合性抗体フラグメントとは、未変化の抗体または親抗体により認識される同一抗原と結合する抗体の任意のフラグメントを指す。実質的に目的とする任意の抗体またはフラグメントを抱合させる、ADおよび/またはDDD調製する技術が知られている(例えば米国特許第7,527,787号)。
【0049】
「裸の」抗体またはそのフラグメントと言われる、治療薬に抱合されていない抗体またはそのフラグメントが使用されてよい。別の実施形態では、抗体またはフラグメントは、1つ以上治療薬のおよび/または診断薬に抱合されてよい。そのような広範な種類の治療薬および診断薬は、以下で詳細に考察するように当技術分野で知られており、そのように知られている任意の治療薬または診断薬が使用されてよい。
【0050】
CD74のような実質的に任意の標的抗原に対抗するモノクローナル抗体を調製する技術は、当技術分野で周知されている。例えば、KohlerおよびMilstein,Nature 256:495(1975),並びにColiganら(eds.),CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,VOL.1,pages2.5.1−2.6.7(John Wiley&Sons 1991))を参照されたい。簡単に述べると、モノクローナル抗体は、抗原を含む組成物を用いてマウスに注入することと、Bリンパ球を獲得するために脾臓を取り出すことと、ハイブリドーマを産生するように骨髄腫細胞を用いてBリンパ球を融合することと、ハイブリドーマをクローニングすることと、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択することと、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、ハイブリドーマ培養から抗体を単離することとにより獲得できる。
【0051】
MAbは、既に確立された種々の技術によりハイブリドーマ培養から単離し、精製することができる。そのような単離技術は、タンパク質Aセルファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーを含む。例えば、Coliganの2.7.1ページ〜2.7.12ページと2.9.1ページ〜2.9.3ページとを参照されたい。また、Bainesら、in METHODs IN MOLECULAR BIOLOGY,VOL.10,79ページ〜104ページの“Purification of Immunoglobulin G(IgG),”(The Humana Press,Inc.1992)も参照されたい。
【0052】
まず免疫原に対する抗体を生じさせた後、抗体を配列決定し、続いて組み換え技術により調製することができる。マウス抗体および抗体フラグメントのヒト化およびキメラ化は、当業者に周知されている。使用する抗体成分は、マウス定常領域の免疫原性と結合する可能性のある問題が取り払われたヒト化、キメラ、またはヒト抗体に由来する。
【0053】
キメラ抗体
キメラ抗体は、ヒト抗体の可変領域が例えば、マウス抗体の相補性決定領域(CDR)を含むマウス抗体の可変領域に置換されている組み換えタンパク質である。キメラ抗体は、対象に投与されると、低い免疫原性および高い安定性を呈する。マウス免疫ブログリンの可変ドメインをクローニングする一般的な技術は、例えばOrlandiら、Proc.Nat’l Acad.Sci USA 86:3833(1989)に開示されている。キメラ抗体を構築する技術は、当業者に周知されている。一例として、Leungら、Hybridoma13:469(1994)は、マウスLL2のVκおよびVHドメイン、抗CD22モノクローナル抗体をコードするDNA配列をそれぞれヒトκおよびIgGI定常領域ドメインと組み合わせることによりLL2キメラを産生させた。
【0054】
ヒト化抗体
ヒト化MAb産生する技術は、当技術分野で周知されている(例えばJonesら、Nature 321:522(1986),Riechmannら,Nature 332:323(1988),Verhoeyenら、Science 239:1534(1988),Carterら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4285(1992),Sandhu,Crit.Rev.Biotech.12:437(1992),およびSingerら,J.lmmun.150:2844(1993)を参照されたい)。キメラまたはマウスのモノクローナル抗体は、マウス免疫ブログリンの重鎖および軽鎖の可変鎖由来のマウスCDRをヒト抗体の対応する可変ドメインに移植することによりヒト化され得る。キメラモノクローナル抗体のマウスのフレームワーク領域(FR)も、ヒトFR配列と置換される。単にヒトFRにマウスCDRを移植するだけでは、抗体親和性が低下するか、失われてしまうという結果に陥ることがあり、マウス抗体の本来の親和性を回復させるために付加的な修飾が必要な場合がある。これは、そのエピトープに良好な結合親和性を持つ抗体を獲得するように、FR領域にある1つ以上のヒト残基をマウスの対応物と置換することにより成し遂げることができる。例えば、Tempestら、Biotechnology 9:266(1991)およびVerhoeyenら、Science 239:1534(1988)を参照されたい。一般的に、これらマウスの対応物と異なり、1つ以上のCDRのアミノ酸残基に近接または接触して配置されたヒトFRのアミノ酸残基は、置換の候補であろう。
【0055】
ヒトLL1(hLL1)抗CD74抗体は、米国特許第7,312,318号により開示されており、35段落1行目から42段落27行目まで、および図1から図4までが参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
ヒト抗体
組み合わせアプローチまたはヒト免疫ブログリンの遺伝子座を用いて形質変換したトランジェニック動物のどちらかを使用して完全ヒト抗体を産生する方法は、当技術分野で知られている(例えばManciniら,2004,New Microbiol.27:315−28;ConradおよびScheller,2005,Comb.Chem.High Throughput Screen.8:117−26;BrekkeおよびLoset,2003,Curr.Opin.Phamacol.3:544−50)。完全ヒト抗体はまた、遺伝子形質変換法または染色体変換法とともに、ファージ提示技術により構築することもでき、これら全てが当技術分野で知られている。例えば、McCaffertyら、Nature 348:552−553(1990)を参照されたい。そのような完全ヒト抗体は、キメラまたはヒト化抗体よりも少ない副作用さえ呈し、in vivoにおいて本質的に内在性のヒト抗体として機能すると予想される。特定の実施形態では、請求する方法および手順は、そのような技術により産生されるヒト抗体を利用してよい。
【0057】
1つの代替的な手段では、ファージ提示技術はヒト抗体を生成するために使用されてよい(例えばDantas−Barbosaら、2005,Genet.MoI Res.4:126−40)。ヒト抗体は健常なヒト、または癌のような特定の疾患状態を呈するヒトから生成させてよい(Dantas−Barbosaら、2005)。疾患を持つ個体からヒト抗体を構築する有利性は、循環する抗体レパートリーが、疾患関連抗原に対抗する抗体に向かって偏り得ることである。
【0058】
限定されない、この方法論の一例では、Dantas−Barbosaら(2005)により骨肉種の患者に由来するヒトFab抗体フラグメントのファージ提示ライブラリーが構築された。一般的に、総RNAは循環血中のリンパ球から獲得された(同著者)。組み換えFabはμ鎖、γ鎖、およびκ鎖の抗体レパートリーからクローニングされ、ファージ提示ライブラリーに挿入された(同著者)。RNAはcDNAへと変換され、重鎖および軽鎖の免疫ブログリン配列に対する特異的プライマーを使用してFabのcDNAライブラリーを作製するために使用される(Marksら、1991,J MoI.Biol.222:581−97)。ライブラリー構築はAndris−Widhopfら(2000,In:Pharge Display Laboratory Manual,Barbasら(eds),1st edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY pp.9.1〜9.22)に従い行われた。最終的なFabフラグメントは制限酵素を用いて消化され、ファージ提示ライブラリーを作製するためにバクテリオファージゲノムに挿入された。そのようなライブラリーは、当技術分野で知られているような準的なファージ提示方法によりスクリーニングされ得る(例えばPasqualiniおよびRuoslahti,1996,Nature 380:364−366;Pasqualini,1999,The Quart.J.Nucl.Med.43:159−162を参照されたい)。
【0059】
ファージ提示は、種々のフォーマットにて行うことができ、それらの概説として、例えばJohnsonおよびChiswell,Current Opinion in Structural Biology 3:5564−571(1993を)参照されたい。ヒト抗体は、in vitroにおいて活性化したB細胞により生成されてもよい。米国特許第5,567,610号および米国特許第5,229,275号を参照されたく、それら全体は参照により本明細書に組み込まれる。技術者であれば、これらの技術が例示的なものであり、ヒト抗体または抗体フラグメントを作製およびスクリーニングする、知られている任意の方法が利用されてよいことを理解するだろう。
【0060】
別の代替的な手段では、ヒト抗体を産生するように遺伝子改変されたトランジェニック動物は、標準的な免疫化プロトコルを使用して、本質的に任意の免疫原性の標的に対して抗体を生成するために使用されてよい。トランスジェニックマウスからヒト抗体を獲得する方法は、Greenら、Nature Genet.7:13(1994),Lonbergら、Nature 368:856(1994),およびTaylorら、Int. Immun.6:579(1994)により開示されている。限定されないそのようなシステムの例は、Abgenix(Fremont,CA)のXenoMouse(登録商標)(例えばGreenら、1999,J.Immunol.Methods 231:11−23)である。XenoMouse(登録商標)および類似の動物では、マウス抗体の遺伝子は、不活性化され、機能的なヒト抗体遺伝子により置換され、一方、残りのマウス免疫システムはインタクトなままである。
【0061】
XenoMouse(登録商標)は、アクセサリー遺伝子および制御配列とともに、可変領域配列の大部分を含む、ヒトIgHおよびIgkappa遺伝子座の一部を含有する生殖系列を形成したYAC(酵母人工染色体)を用いて形質転換された。ヒト可変領域レパートリーは、B細胞を産生する抗体を生成するために使用され得、公知の技術によりハイブリドーマへとプロセシングされ得る。標的抗原を用いて免疫化されたXenoMouse(登録商標)は、正常の免疫反応によりヒト抗体を産生し、先に考察した標準的な技術により採取および/または産生させ得る。種々のXenoMouse(登録商標)株が利用でき、その各々は異なるクラスの抗体を産生することができる。遺伝子導入により産生されたヒト抗体は、正常のヒト抗体の薬物動態特性を保持しながら、治療可能性を示した(Greenら,1999)。技術者であれば、請求する組成物および方法はXenoMouse(登録商標)のシステムの使用に限定されるものではなく、ヒト抗体を産生するように遺伝子改変された任意のトランジェニック動物を利用してよいことを理解するだろう。
【0062】
抗体フラグメント
特異的なエピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術により生成することができる。抗体フラグメントはF(ab’)2、Fab’、F(ab)2、Fab、Fv、sFvなどのような抗体の抗原結合タンパク質である。F(ab’)2フラグメントは抗体分子のペプシン消化により産生することができ、Fab’フラグメントはF(ab’)2フラグメントのジスフィルド架橋を減少させることにより生成することができる。代替的に、Fab’の発現ライブラリーを構築することができ(Huseら,1989,Science,246:1274−1281)、それにより所望の特性を用いてモノクローナルFab’フラグメントを迅速かつ容易に同定することができる。F(ab)2フラグメントはジスフィルド還元により獲得された抗体およびFabフラグメントのパパイン分解により生成され得る。
【0063】
単鎖のFv分子(scFv)は、VLドメインおよびVHドメインを備える。VLドメインおよびVHドメインは、標的結合部位を形成するように結合する。これら2つのドメインは、ペプチドリンカー(L)によりさらに共有結合的に連結される。scFv分子を作製し、好適なペプチドリンカーを設計する方法は、米国特許第4,704,692号、米国特許第4,946,778号、R.RaagおよびM.Whitlow,“Single Chain Fvs”FASEB Vol 9:73−80(1995)、並びにR.E.BirdおよびB.W.Walker,“Single Chain Antibody Variable Regions,”TIBTECH,VoI 9:132−137(1991)に説明されている。
【0064】
単一ドメイン抗体を作製する技術も、例えば、Cossinsら(2006,Prot Express Purif 51:253−259)に説明されるように、当技術分野で知られている。単一ドメイン抗体(VHH)は、標準的な免疫化技術により、例えばラクダ、アルパカ、またはラマから獲得され得る(例えばMuyldermansら、TIBS 26:230−235,2001;Yauら,J Immunol Methods 281:161−75,2003;Maassら,J Immunol Methods 324:13−25,2007を参照されたい)。VHHは、強力な抗原結合能力を有し、従来のVH−VLペアを寄せ付けない新規のエピトープと相互作用することができる可能性を有する(Muyldermansら,2001)。アルパカ血清中のIgGは、約50%ラクダ科の重鎖がIgGのみの抗体を含有する(HCAb)(Maassら2007)。アルパカはTNF−αのような公知の抗原を用いて免疫化され得、VHHは単離させて標的抗原に結合および中和させることができる(Maassら,2007)。実質的に全てのアルパカVHHコーディング配列を増幅させるPCRプライマーが同定されており、コンストラクトアルパカVHHファージ提示ライブラリーを構築するために使用され得、これは当技術分野で周知されている標準的なバイオパニング技術により、抗体フラグメントを単離するために使用することができる。(Maassら,2007)。
【0065】
抗体フラグメントは、完全長の抗体のタンパク質加水分解性、またはそのフラグメントをコードするDNAを持つ大腸菌もしくは別の宿主での発現により調製することができる。抗体フラグメントは、従来方法により、完全長の抗体のペプシンまたはパパイン消化により獲得することができる。これらの方法は、例えば、Goldenberg、米国特許第4,036,945号および米国特許第4,331,647号、並びにそれらに含まれた参考文献により説明されている。また、Nisonoffら,Arch Biochem.Biophys.89:230(1960);Porter,Biochem.J.73:119(1959),Edelmanら,in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL.1,ページ422(Academic Press 1967),およびColiganの2.8.1ページ〜2.8.10ページと2.10.ページ〜2.10.4.ページを参照されたい。
【0066】
公知の抗体
特定の実施形態では、CD74に加えて、他の抗原性標的に対抗する抗体が抗癌ワクチン用DNL複合体に組み込まれ得る。腫瘍関連抗原に対抗する種々様々な抗体が知られており、商業上の供給源から獲得されてよい。例えば、ハイブリドーマ株を分泌するいくつかの抗体はアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC,Manassas,VA)から入手できる。例えば米国特許第7,312,318号;米国特許第7,282,567号;米国特許第7,151,164号;米国特許第7,074,403号;米国特許第7,060,802号;米国特許第7,056,509号;米国特許第7,049,060号;米国特許第7,045,132号;米国特許第7,041,803号;米国特許第7,041,802号;米国特許第7,041,293号;米国特許第7,038,018号;米国特許第7,037,498号;米国特許第7,012,133号;米国特許第7,001,598号;米国特許第6,998,468号;米国特許第6,994,976号;米国特許第6,994,852号;米国特許第6,989,241号;米国特許第6,974,863号;米国特許第6,965,018号;米国特許第6,964,854号;米国特許第6,962,981号;米号国特許第6,962,813号;米国特許第6,956,107号;米国特許第6,951,924号;米国特許第6,949,244号;米国特許第6,946,129号;米国特許第6,943,020号;米国特許第6,939,547号;米国特許第6,921,645号;米国特許第6,921,645号;米国特許第6,921,533号;米国特許第6,919,433号;米国特許第6,919,078号;米国特許第6,916,475号;米国特許第6,905,681号;米国特許第6,899,879号;米国特許第6,893,625号;米国特許第6,887,468号;米国特許第6,887,466号;米国特許第6,884,594号;米国特許第6,881,405号;米国特許第6,878,812号;米国特許第6,875,580号;米国特許第6,872,568号;米国特許第6,867,006号;米国特許第6,864,062号;米国特許第6,861,511号;米国特許第6,861,227号;米国特許第6,861,226号;米国特許第6,838,282号;米国特許第6,835,549号;米国特許第6,835,370号;米国特許第6,824,780号;米国特許第6,824,778号;米国特許第6,812,206号;米国特許第6,793,924号;米国特許第6,783,758号;米国特許第6,770,450;米国特許第6,767,711号;米国特許第6,764,688号;米国特許第6,764,681号;米国特許第6,764,679号;米国特許第6,743,898号;米国特許第6,733,981号;米国特許第6,730,307号;米国特許第6,720,15号;米国特許第6,716,966号;米国特許第6,709,653号;米国特許第6,693,176号;米国特許第6,692,908号;米国特許第6,689,607号;米国特許第6,689,362号;米国特許第6,689,355号;米国特許第6,682,737号;米国特許第6,682,736号;米国特許第6,682号,734号;米国特許第6,673,344号;米国特許第6,653,104号;米国特許第6,652,852号;米国特許第6,635,482号;米国特許第6,630,144号;米国特許第6,610,833号;米国特許第6,610,294号;米国特許第6,605,441号;米国特許第6,605,279号;米国特許第6,596,852号;米国特許第6,592,868号;米国特許第6,576,745号;米国特許第6,572;856号;米国特許第6,566,076号;米国特許第6,562,618号;米国特許第6,545,130号;米国特許第6,544,749号;米国特許第6,534,058号;米国特許第6,528,625号;米国特許第6,528,269号;米国特許第6,521,227号;米国特許第6,518,404号;米国特許第6,511,665号;米国特許第6,491,915号;米国特許第6,488,930号;米国特許第6,482,598号;米国特許第6,482,408号;米国特許第6,479,247号;米国特許第6,468,531号;米国特許第6,468,529号;米国特許第6,465,173号;米国特許第6,461,823号;米国特許第6,458,356号;米国特許第6,455,044号;米国特許第6,455,040号;米国特許第6,451,310号;米国特許第6,444,206号;米国特許第6,441,143号;米国特許第6,432,404号;米国特許第6,432,402号;米国特許第6,419,928号;米国特許第6,413,726号;米国特許第6,406,694号;米国特許第6,403,770号;米国特許第6,403,091号;米国特許第6,395,276号;米国特許第6,395,274号;米国特許第6,387,350号;米国特許第6,383,759号;米国特許第6,383,484号;米国特許第6,376,654号;米国特許第6,372,215号;米国特許第6,359,126号;米国特許第6,355,481号;米国特許第6,355,444号;米国特許第6,355,245号;米国特許第6,355,244号;米国特許第6,346,246号;米国特許第6,344,198号;米国特許第6,340,571号;米国特許第6,340,459号;米国特許第6,331,175号;米国特許第6,306,393号;米国特許第6,254,868号;米国特許第6,187,287号;米国特許第6,183,744号;米国特許第6,129,914号;米国特許第6,120,767号;米国特許第6,096,289号;米国特許第6,077,499号;米国特許第5,922,302号;米国特許第5,874,540号;米国特許第5,814,440号;米国特許第5,798,229号;米国特許第5,789,554号;米国特許第5,776,456号;米国特許第5,736,119号;米国特許第5,716,595号;米国特許第5,677,136号;米国特許第5,587,459号;米国特許第5,443,953号;米国特許第5,525,338号を参照されたい。これらは例示にすぎず、種々様々な他の抗体およびそれらのハイブリドーマが当技術分野で知られている。技術者であれば、ほぼ全ての腫瘍関連抗原に対抗する抗体配列または抗体分泌ハイブリドーマが、選択した疾患に関連する目的の抗原に対抗する抗体について、ATCC、NCBI、および/またはUSPTOのデータベースから単に検索するだけで獲得することができ得ることを理解するだろう。クローニングした抗体の抗原結合ドメインは、当技術分野で周知されている標準的な技術を使用して、発現ベクターへと増幅され、切り出され、結合され、適応する宿主細胞へと形質転換され、そしてタンパク質を産生するために使用されてよい。
【0067】
アミノ酸置換
特定の実施形態では、開示する方法および組成物は、1つ以上の置換アミノ酸残基を用いたタンパク質またはペプチドの産生および使用に関する。例えば、以下の実施例で考察するように、AD部分および/またはDDD部分の配列は、DNL複合体形成および/またはDNL複合体のin vivoにおける安定性を改善するように変化させてよい。他の実施形態では、天然、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体の構造的、物理的、および/または治療的特徴は、1つ以上のアミノ酸残基を置換することにより最適化されてよい。例えば、ヒト化抗体の機能的特徴は、限定数のヒトフレームワーク領域(FR)のアミノ酸を、対応する親マウス抗体のFRアミノ酸と置換することにより向上され得ることが当技術分野で周知されている。これは、フレームワーク領域のアミノ酸残基がCDR残基にごく近接しているときに特に当てはまる。
【0068】
他の場合、標的抗原に対する結合親和性のような抗体の治療的特性、その標的抗原からの抗体の解離またはオフ率、あるいは抗体によるCDC(補体依存型の細胞毒性)またはADCC(抗体依存型の細胞毒性)の導入の効果性でさえも、限定数のアミノ酸置換により最適化されてよい。
【0069】
技術者であれば、一般的に、アミノ酸置換は典型的には、アミノ酸を比較的類似する特性の別のアミノ酸(すなわち、同類のアミノ酸置換)と置換することに関することを知っているだろう。タンパク質構造および機能について、さまざまなアミノ酸の特性およびアミノ酸置換の効果が、当技術分野における広範な研究および情報の対象になっている。
【0070】
例えば、アミノ酸の疎水性親水性の指標が検討されてよい(Kyte&Doolittle,1982,J.Mol.Biol,157:105−132)。アミノ酸の関連する疎水性親水性特性は、結果生じるタンパク質の二次構造に関与しており、次に他の分子とのタンパク質の相互作用を規定する。各アミノ酸は、疎水性および電荷特性に基づいて疎水性親水性の指標が割り当てられ(Kyte&Doolittle,1982)これらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)である。同類置換の作製では、疎水性親水性の指標は、±2内のアミノ酸の使用が好ましく、±1内が一層好ましく、±0.5内がさらに好ましい。
【0071】
アミノ酸置換は、アミノ酸残基の親水性が考慮されてもよい(例えば米国特許第4,554,101号)。親水性の値は、アミノ酸残基:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0);グルタミン酸(+3.0);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5+−.1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)に割り当てられた。アミノ酸を類似する他の親水基と置換することは好ましい。
【0072】
他に考慮すべきはアミノ酸側鎖の大きさを含む。例えばアミノ酸をグリシンまたはセリンのような小型の側鎖と置換すること、アミノ酸を例えばトリプトファンまたはチロシンのようなかさ高い側鎖と置換することは一般的に好ましくない。
【0073】
タンパク質二次構造についてさまざまなアミノ酸残基の影響も考慮される。実証的研究により、αヘリックス、βシート、または逆向ターンの二次構造を採択するタンパク質ドメインの性質について、異なるアミノ酸残基の影響が特定されており、当技術分野で知られている(例えばChou&Fasman,1974,Biochemistry,13:222−245;1978,Ann.Rev.Biochem.,47:251−276;1979,Biophys.J.,26:367−384を参照されたい)。
【0074】
そのような考慮および広範な実証的研究に基づいて、同類アミノ酸置換の表が構築されており、当技術分野で知られている。例えば、アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;バリン、ロイシンおよびイソロイシンである。代替的に、アラニン(A)ロイシン、イソロイシン、バリン;アルギニン(R)グルタミン、アスパラギン、リジン;アスパラギン(N)ヒスチジン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、グルタミン;アスパラギン酸(D)アスパラギン、グルタミン酸;システイン(C)アラニン、セリン;グルタミン(Q)グルタミン酸、アスパラギン;グルタミン酸(E)グルタミン、アスパラギン酸;グリシン(G)アラニン;ヒスチジン(H)アスパラギン、グルタミン、リジン、アルギニン;イソロイシン(I)バリン、メチオニン、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン;ロイシン(L)バリン、メチオニン、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン;リジン(K)グルタミン、アスパラギン、アルギニン;メチオニン(M)フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン;フェニルアラニン(F)ロイシン、バリン、イソロイシン、アラニン、チロシン;プロリン(P)アラニン;セリン(S)、スレオニン;スレオニン(T)セリン;トリプトファン(W)フェニルアラニン、チロシン;チロシン(Y)トリプトファン、フェニルアラニン、スレオニン、セリン;バリン(V)イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、アラニンである。
【0075】
他に考慮されるアミノ酸置換は、残基がタンパク質内に在るか暴露溶剤であるかどうかを含む。内部残基について、同類置換は、アスパラギン酸およびアスパラギン;セリンおよびスレオニン;セリンおよびアラニン;スレオニン及びアラニン、アラニンおよびグリシン;イソロイシンおよびバリン;バリンおよびロイシン;ロイシンおよびイソロイシン;ロイシンおよびメチオニン;フェニルアラニンおよびチロシン;チロシンおよびトリプトファンを含む(例えばrockefeller.eduのPROWLウェブサイトを参照されたい)。暴露溶剤の残基について、同類置換は、アスパラギン酸およびアスパラギン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;グルタミン酸およびグルタミン;グルタミン酸およびアラニン;グリシンおよびアスパラギン;アラニンおよびプロリン;アラニンおよびグリシン;アラニンおよびセリン;アラニンおよびリジン;セリンおよびスレオニン;リジンおよびアルギニン;バリンおよびロイシン;ロイシンおよびイソロイシン;イソロイシンおよびバリン;フェニルアラニンおよびチロシンを含む(例えばrockefeller.eduのPROWLウェブサイトを参照されたい)。PAM250スコアリング・マトリクス、Dayhoffマトリクス、Granthamマトリクス、McLach1anマトリクス、Doolittleマトリクス、Henikoffマトリクス、Miyataマトリクス、Fitchマトリクス、Jonesマトリクス、Raoマトリクス、Levinマトリクス、およびRislerマトリクスのようなさまざまなマトリクスが、アミノ酸置換の選択を支援するように構築されてきた(例えばrockefeller.eduのPROWLウェブサイトを参照されたい)。
【0076】
アミノ酸置換の決定には、正電荷の残基(例えばヒスチジン、アルギニン、およびリジン)と負電荷の残基(例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸)との間のイオン結合(塩橋)、または近接するシステイン残基間のジスフィルド結合の形成のような、分子間結合または分子内結合の存在を検討してもよい。
【0077】
コードされたタンパク質配列において、他の任意のアミノ酸について任意のアミノ酸を置換する方法は周知されており、技術者にとっては、例えば部位特異的変異誘発の技術か、またはアミノ酸置換をコードし、発現ベクターのコンストラクトへとスプライシングするオリゴヌクレオチドの合成および集合による通例の実験方法事項である(例えばSambrookら,Molecular Cloning,A laboratory manual,2nd Ed,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,1989.)。
【0078】
治療薬
特定の実施形態では、細胞毒薬物、抗血管新生薬、アポトーシス促進剤、抗生物質、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、ケモカイン、薬物、プロドラッグ、毒物、酵素、または他の試薬のような治療薬が、本明細書で説明する抗癌ワクチン用DNL複合体に対する補助療法として使用されてよい。有用な薬物は、有糸分裂阻害薬、抗キナーゼ、アルキル化、代謝拮抗薬、抗生物質、アルカロイド、抗血管新生、アポトーシス促進剤、およびそれらの併用から成る群から選択される薬理学的特性を保有し得る。
【0079】
有用な例示的薬物は、5−フルオロウラシル、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン−1、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10−ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、コックス2抑制剤、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬、イリノテカン(CPT−11)、SN−38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2―ピロリノドキソルビシン(2P−DOX)、シアノ−モルフォリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エストラムスチン、エピドフィロトキシン(epidophyllotoxin)、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、リン酸エトポシド、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’−O−ジオレイル−フロクスウリジン(FUdR−dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、L−アスパラギナーゼ、レナリドマイド、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、ペントスタチン、PSI−341、ラロキシフェン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソール、テモゾロミド(DTICの水性型)、トランスプラチン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビンカアルカロイドを含んでよい。
【0080】
有用な毒素は、リシン、アブリン、α毒素、サポリン、オンコナーゼなどのリボヌクレアーゼ(RNase)、デオキシリボヌクレアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素、および緑膿菌内毒素を含んでよい。
【0081】
特定の実施形態では、治療薬は免疫調節剤でよい。免疫調節剤は、提示されると、身体の免疫システムを変えるか、抑制するか、または刺激する薬剤である。免疫調節剤有用免疫調節剤は、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせを含んでよい。腫瘍壊死因子(TNF)のようなリンホトキシン、インターロイキン(IL)のような造血性因子、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)のようなコロニー刺激因子、インターフェロンα、β、γのようなインターフェロン、およびS1因子と呼ばれる幹細胞増殖因子が特に有用である。
【0082】
さまざまな実施形態では、治療薬は、リンホカイン、モノカインのようなサイトカイン、増殖因子、および従来のポリペプチドホルモンを1つ以上含んでよい。サイトカインには、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンのような成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;レラキシン;プロレラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)のような糖タンパク質ホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体化ホルモン(LHのような)糖タンパク質ホルモン;胎盤増殖因子(PIGF)、幹細胞増殖因子;プロスタグランジン、線維芽細胞増殖因子;プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子−αおよび−β;ミュラー管抑制因子;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−βのような神経増殖因子;血小板増殖因子;TGF−αおよびTGF−βのような形質転換増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子−Iおよび−II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導性因子;インターフェロン−α、−β、−γのようなインターフェロン;マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF);IL−I、IL−lα、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12;IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−21、IL−25のようなインターロイキン(IL)、LIF、kit−リガンドまたはFLT−3、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子(TNF−αのようなTNF)、およびLTを含む。有用なケモカインは、RANTES、MCAF、MIPl−alpha、MIPl−Beta、およびIP−10を含んでよい。
【0083】
アンジオスタチン、バスキュロスタチン(baculostatin)、カンスタチン、スマピン、抗VEGF抗体、抗PIGFペプチドおよび抗体、抗血管性増殖因子抗体、抗Flk−1抗体、抗Fit−1抗体およびペプチド、抗Kras抗体、抗cMET抗体、抗MIF(マクロファージ遊走阻止因子)抗体、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤、インターフェロン、インターロイキン12、IP−10、Gro−β、トロンボスポンジン、2−メトキシエストラジオール、プロリフェリン関連タンパク質、カルボキシアミドトリアゾール、CMlOl、マリマスタット、ペントサンポリ硫酸、アンジオポエチン−2、インターフェロン−alpha、ハービマイシンA、PNU145156E、16Kプロラクチンフラグメント、リノマイド(ロキニメックス)、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン、TNP−470、エンドスタチン、パクリタキセル、アキュチン、アンジオスタチン、シドホビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM−1470、血小板第4因子、またはミノサイクリンを含む抗血管新生薬は有用である。
【0084】
他の有用な治療薬は、bcl−2またはp53のような、好ましくは癌遺伝子および癌遺伝子産物に対して向けられるオリゴヌクレオチド、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでよい。治療学的オリゴヌクレオチドはsiRNAの形態が好ましい。
【0085】
診断薬
診断薬は、放射性核種、放射線造影剤、常磁性イオン、金属、蛍光ラベル、化学発光ラベル、超音波造影剤、および光活性化剤から成る群から選択されてよい。そのような診断薬は周知されており、そのような任意の診断薬が使用されてよい。限定されない診断薬の例は、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154−158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、または他のγ放射体、β放射体、陽電子放射体のような放射性核種を含んでよい。有用な常磁性イオンは、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジウム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、またはエルビウム(III)を含んでよい。金属コントラスト剤は、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、またはビスマス(III)を含んでよい。超音波コントラスト剤は、ガス充填したリポソームのようなリポソームを含んでよい。放射線不透過性診断薬は、バリウム化合物、ガリウム化合物、およびタリウム化合物のような化合物から選択されてよい。種々様々な蛍光ラベルは当技術分野で知られており、限定されないがフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、O−フタルアルデヒド、およびフルオレサミンを含む。有用な化学発光ラベルは、ルミノール、イソルミノール、芳香族系アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、またはシュウ酸エステルを含んでよい。
【0086】
免疫複合体
特定の実施形態では、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、1つ以上の治療薬または診断薬と抱合させてよい。治療薬は同一である必要はなく、例えば薬物および放射性同位体のように異なっていてもよい。例えば、131Iは、抗体または融合タンパク質のチロシン、およびリジン残基のイプシロンアミノ基に付着させた薬物に組み込むことができる。治療薬および診断薬は、例えば、還元型のSH基および/または炭水化物側鎖を加えることもできる。抗体または融合タンパク質を用いた、共有結合性または非共有結合性抱合体の治療薬または診断薬を作製する広範な方法は当技術分野で知られており、そのような任意の方法が利用されてよい。
【0087】
治療薬または診断薬は、ジスフィルド結合の形成を介して還元型の抗体成分のヒンジ領域に付着させることができる。代替的に、そのような薬剤は、N−サクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)のようなヘテロ二機能架橋剤を使用して不着させることができるYuら、Int.J.Cancer 56:244(1994)。そのように抱合する一般的な技術は、当技術分野で周知されている。例えば、Wong,CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS−LINKING(CRC Press 1991);Upeslacisら、“Modification of Antibodies by Chemical Methods,”in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONs,Birchら(eds.),187−230ページ (Wiley−Liss,Inc.1995);Price,“Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies,”in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION,Ritterら(eds.),60−84ページ (Cambridge University Press 1995)を参照されたい。代替的に、治療薬または診断薬は、炭水化物部分を介して抗体のFc領域に抱合することができる。炭水化物群は、チオール基に結合される同一薬剤のローディングを高めるために使用することができ、または糖鎖は、異なる治療薬または診断薬を結合させるように使用することができる。
【0088】
抗体の炭水化物部分を介して抗体成分にペプチド抱合する方法は当業者に周知されている。例えば、Shihら、Int.J.Cancer 47:832(1988);Shihら、Int.J.Cancer 46:1101(1990);およびShihら、米国特許第5,057,313号を参照されたく、それら全内容は参照により本明細書に組み込まれる。一般的な方法は、少なくとも1つの遊離型アミン官能基を有する担体ポリマーを持った酸化型の炭水化物部分を有する抗体成分の反応に関わる。この反応により、まずシッフ塩基(イミン)結合が生じ、還元によって二級アミンへと安定化させて最終的な抱合体を形成させることができる。
【0089】
免疫複合体の抗体成分として使用される抗体が抗体フラグメントである場合、Fc領域は無くてもよい。しかし、炭水化物部分を完全長の抗体または抗体フラグメントの軽鎖可変領域に導入することは可能である。例えば、Leungら、J.Immunol 154:5919(1995);Hansenら、米国特許第5,443,953号(1995),Leungら、米国特許第6,254,868号を参照されたく、それら全内容が参照により本明細書に組み込まれる。改変した糖鎖は、治療薬または診断薬を加えるために使用することができる。
【0090】
幾つかの実施形態では、抗体、抗体フラグメントまたは融合タンパク質にキレート剤を付着してよく、放射性核種のような治療薬または診断薬をキレートさせるために使用されてよい。例示的なキレート剤は、限定されないがDTPA(Mx−DTPAなど)、DOTA、TETA、NETA、またはNOTA含む。タンパク質に金属または他のリガンドを付着させるためにキレート剤を抱合し、使用する方法は当技術分野で周知されている(例えば米国特許出願第12/112,289号を参照されたく、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0091】
特定の実施形態では、放射性金属または常磁性イオンは、イオンを結合させる多様なキレート基に付着され得る、長い尾部を有する試薬と反応させることによりタンパク質またはペプチドに付着されてよい。そのような尾部は、この目的に有用だと知られているポリリジン、多糖類のようなポリマー、または例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス−チオセミカルバゾン、ポリオキシムなどの基のような、キレート基に結合させることができるペンダント基を有する他の誘導体化したか、もしくは誘導体化できる鎖である。
【0092】
キレート剤は、米国特許第4,824,659号に開示されるような抗体またはペプチドに直接連結されてよく、当該内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。特に有用な金属キレートの併用は、2−ベンジルDTPA並びにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体を含み、放射性イメージングには、125I、131I、123I、124I、62Cu、64Cu、18F、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、11C、13N,15O、76Brのような、一般的に60keV〜4,000keVに及ぶエネルギーの診断用同位元素とともに使用される。同一のキレートは、マンガン、鉄、およびガドリニウムのような非放射性金属を用いて複合されるとMRIに有用である。NOTA、DOTA、およびTETAのような大環状のキレートは、種々の金属および放射性金属、特に、ガリウム、イットリウム、および銅それぞれの放射性核種に有用である。そのような金属キレート複合体は、目的の金属へとリングの大きさを仕立てることにより非常に安定的に作製することがでる。放射免疫療法(RAIT)用223Raのような、安定的に核種を結合させることを目的とする大環状ポリエーテルのような他のリング型キレートが網羅されている。
【0093】
つい最近では、PET走査技術において、例えば、F−18のアルミニウムのような金属または他の原子と反応させる、有用な18F標識化方法が開示された18F−Al抱合体は、DOTA、NOTA、またはNETAのようなキレート基と複合され得、直接抗体に付着されるか、またはプレターゲッティング法において標識標的が可能なコンストラクトに使用される。そのようなF18標識化は、2008年4月30日に出願された米国特許出願第12/112,289号に開示されており、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
薬物療法の方法
さまざまな実施形態は、ヒト、イヌおよびネコのような家庭用ペットまたはコンパニオンペットのような哺乳類などの対象における多発性骨髄腫のような癌を治療する方法に関する。方法は、対象に、治療的に有効量の抗癌ワクチン用DNLコンストラクトを投与することを含み得る。好ましい実施形態では、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、以下の実施例にてさらに詳細に説明するような、抗CD74抗体またはそのフラグメントおよびCD20異種抗原を含有する。
【0095】
抗癌ワクチン用DNLコンストラクトの投与は、標的細胞の表面上で別の抗原と結合または反応する治療的に有効量の別の抗体を同時的または経時的に投与することにより追加することができる。好ましい追加のMAbは、CD209(DC−SIGN)、CD34、CD74、CD205、TLR2(toll様受容体2)、TLR4、TLR7、TLR9、BDCA−2、BDCA−3、BDCA−4、およびHLA−DRと反応するMAbから成る群から選択される、少なくとも1つのヒト化MAb、キメラMAb、またはヒトMAbを含む。有用なさまざまな抗体は、先に考察したように当業者に知られている。例えば、Ghetieら、Cancer Res.48:2610(1988);Hekmanら、Cancer Immunol.Immunother.32:364(1991);Longo,Curr.Opin.Oncol.8:353(1996)、米国特許第5,798,554号;米国特許第6,187,287号;米国特許第6,306,393号;米国特許第6,676,924号;米国特許第7,109,304号;米国特許第7,151,164号;米国特許第7,230,084号;米国特許第7,230,085号;米国特許第7,238,785号;米国特許第7,238,786号;米国特許第7,282,567号;米国特許第7,300,655号;米国特許第7,312,318号;並びに米国特許出願公開第20080131363号;米国特許出願公開第20080089838号;米国特許出願公開第20070172920号;米国特許出願公開第20060193865号;米国特許出願公開第20060210475号;米国特許出願公開第20080138333号;および米国特許出願公開第20080146784号を参照されたく、引用した各特許および特許出願の実施例部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
別の実施形態では、CD209(DC−SIGN)、CD34、CD205、TLR2(toll様受容体2)、TLR4、TLR7、TLR9、BDCA−2、BDCA−3、BDCA−4、またはHLA−DRのような別の樹状細胞抗原に対抗する抗体またはそのフラグメントは、DNL複合体の抗CD74抗体に置換されてよい。そのような抗体は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関または抗体を販売するベンダーのような公共の情報源から獲得され得る。例えば、CD209(DC−SIGN)、CD34、BDCA−2、TLR2、TLR4、TLR7、およびTLR9に対抗する抗体は、Santa Cruz Biotechnology,Inc.(Santa Cruz,CA)から購入され得る。CD205およびBDCA−3に対抗する抗体は、Miltenyi Biotec Inc.(Auburn,CA)から購入され得る。抗体を販売する他の数多くの供給源が技術者に知られている。
【0097】
抗癌ワクチン用DNLコンストラクト治療は、少なくとも1つの治療薬の同時的または経時的投与とともにさらに追加することができる。多発性骨髄腫を治療するために使用される治療薬は、デキサメタゾン、サリドマイド/デキサメタゾン、シクロホスファミド、VAD(ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびデキサメタゾン)、DVd(DOXIL(登録商標)(PEG化ドキソルビシン)、ビンクリスチン、小規模計画のデキサメタゾン)、BCNU、メルファラン、カルムスチン、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標))、プレドニゾン、およびコルチコステロイドを含む。個々の治療薬は、CP(シクロホスファミド、プレドニゾン)、CT(シクロホスファミド、サリドマイド)、VBMCP(ビンクリスチン、BCNU、メルファラン、シクロホスファミド、メルファラン、VMCP(ビンクリスチン、メルファラン、シクロホスファミド、プレドニゾン)、DT−PACE(デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド)、MPT(メルファラン、プレドニゾン、サリドマイド)、CVAD(シクロホスファミドおよびVAD)、EDAP(エトポシド、デキサメタゾン、シタラビン、シスプラチン)、MTD(メルファラン、サリドマイド、デキサメタゾン)、VT(VELCADE(登録商標)、サリドマイド)、VDT(VELCADE(登録商標)、ドキソルビシン、サリドマイド)、VADT(VELCADE(登録商標)、アドリアマイシン、サリドマイド、デキサメタゾン)、またはDCEP(デキサメタゾン、シクロホスファミド、エトポシド、シスプラチン)のような当技術分野で知られている治療薬を単独で、またはさまざまに併用して使用してよい。
【0098】
幹細胞を移植する前の多発性骨髄腫の化学療法は、導入療法と呼ばれる。本明細書で記載する特定の化学療法剤は、他の導入療法よりも一層適している。MM用の導入療法に有用な化学療法の例は、デキサメタゾン、サリドマイド/デキサメタゾン、シクロホスファミド、VAD、およびDVdを含む。MMは、しばしば化学療法に耐性を持つので、治療薬の投与は、従来の化学療法で使用する用量よりも高容量になる場合がある。そのような高用量の化学療法は、大抵は骨髄毒性に至り、幹細胞移植と併せて使用されることがよくある。MMの化学療法について、用量およびスケジュールは当技術分野で周知されており、そのように知られている任意の用量および/またはスケジュールは、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトの投与と併せて利用されてよい。
【0099】
DNLワクチンがMMに加えて他の種類の癌に使用される場合、他の化学療法レジメンが知られている。例えば、「CVB」(1.5g/m2のシクロホスファミド、200〜400mg/m2のエトポシド、および150mg−200mg/m2のカルムスチン)が非ホジキンリンパ腫を治療するための使用されるレジメンである。Pattiら、Eur.J.Haematol.51:18(1993)。他の適した併用化学療法レジメンは当業者に周知されている。例えば、Freedmanら,“Non−Hodgkin’s Lymphomas,”in CANCER MEDICINE,VOLUME 2,3rd Edition,Hollandら(eds.),2028〜2068ページ(Lea&Febiger 1993)を参照されたい。例として、中程度の非ホジキンリンパ腫(NHL)を治療する第一世代の化学療法レジメンは、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジン、およびプレドニゾン)、およびCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)を含む。有用な第二世代の化学療法レジメンは、m−BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾン、およびロイコボリン)であり、適した第三世代レジメンはMACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン、およびロイコボリン)である。他の種類の癌に対して有用な化学療法剤は、限定されないが、5−フルオロウラシル、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン−1、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10−ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、コックス2抑制剤、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬、イリノテカン(CPT−11)、SN−38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2―ピロリノドキソルビシン(2P−DOX)、シアノ−モルフォリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エストラムスチン、エピドフィロトキシン(epidophyllotoxin)、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、リン酸エトポシド、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’−O−ジオレイル−フロクスウリジン(FUdR−dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、L−アスパラギナーゼ、レナリドマイド、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ニトロソウレア、フェニルブチレート、プリカマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、ペントスタチン、PSI−341、ラロキシフェン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソール、テモゾロミド(DTICの水性型)、トランスプラチン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビンカアルカロイドを含む。
【0100】
調合
抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、薬理学的に有用な組成物を調製する公知の方法に従って調合することができ、それにより抗癌ワクチン用DNLコンストラクトは、薬理学的に適した賦形剤を用いて混合物に混合される。無菌リン酸緩衝食塩水は薬理学的に適した賦形剤の一例である。他の適した賦形剤は当業者に周知されている。例えば、Anselら、PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,5th Edition(Lea&Febiger 1990),およびGennaro(ed.),REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition(Mack Publishing Company 1990)、並びにそれらの改訂版を参照されたい。
【0101】
抗癌ワクチンは、例えばボーラス投与または持続投与による静脈内投与用に調合することができる。注射用の製剤は、保存剤を加えたアンプルまたは複数回投与用の容器などの単位剤形で提供することができる。組成物は、油性または水性のビヒクル状態の懸濁液、溶解液、または乳濁液のような形態を用いることができ、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤のような調合用の薬剤を包含させることができる。代替的に、活性成分は、使用前に無菌の脱パイロゲン水などの適したビヒクルを用いて構築するために粉末状にすることができる。
【0102】
追加の薬理学的方法は、抗癌ワクチンが作用する持続期間を制御するために用いられ得る。制御用放出製剤は、複合体へのポリマーの使用を介して調製させるか、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトを吸着させることができる。例えば、生体適合性ポリマーは、ポリ(エチレン酢酸ビニル共重合体)でできたマトリクス、並びにステアリン酸二量体およびセバシン酸のポリ酸無水物共重合体マトリクスを含む(Sherwoodら,Bio/Technology 10:1446(1992))。そのようなマトリクスから遊離する割合は、抗癌ワクチン用DNLコンストラクトの分子量、マトリクス内の抗癌ワクチンの量、および分散粒子の大きさに依存する。Saltzmanら、Biophys.J.55:163(1989);Sherwoodら,上記を参照されたい。他の固形の剤形は、AnselらPHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,5th Edition(Lea&Febiger 1990),およびGennaro(ed.),REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition(Mack Publishing Company 1990)、並びにそれらの改訂版に説明されている。
【0103】
抗癌ワクチン用DNLコンストラクトはまた、哺乳類の皮下に投与されてもよく、または他の非経口経路でも投与されてよい。さらに、投与は持続投与でよく、または単回もしくは複数回の急速投与でよい。好ましくは、抗癌ワクチンは、皮下注射による単回または複数回の急速投与として投与される。
【0104】
一般的に、ヒトに投与される抗癌ワクチン用DNLコンストラクトの用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、一般的な医学的状態、およびそれまでの医療経緯病歴のような要因次第で変わるだろう。単回投与として約1mg/kg〜25mg/kgの範囲の抗癌ワクチン用DNLコンストラクト用量をレシピエントに提供することが望ましいが、しかしながら、より少量またはより多量の用量も、状況に応じた指示がある場合に投与されてよい。70kgの患者には1〜20mg/kgの用量であるが、例えば、1.7mの患者には70〜1,400mgまたは41〜824mg/m2用量である。用量は、免疫反応を誘発するため、必要に応じて繰り返されてよい。
【0105】
好ましい実施形態では、ワクチンDNLコンストラクトは、癌の治療に有用である。癌の例は、限定されないが、細胞腫、リンパ腫、神経膠芽腫、メラノーマ、肉腫、および白血病、ミエローマ、つまりリンパ系腫瘍を含む。そのような癌のより詳細な例を下記に記載し、これらは扁平上皮癌(例えば上皮の扁平上皮癌)、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、星状細胞腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌を含む胃の癌つまり胃癌、膵癌、多型性神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌,肝臓癌、肝細胞癌、神経内分泌腫瘍、甲状腺髄様癌、分化型の甲状腺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌つまり子宮癌、唾液腺細胞腫、腎臓癌つまり腎癌、前立腺癌、外陰癌、肛門癌、陰茎癌と同様に頭頸部癌を含む。「癌」という用語は、原発性悪性細胞または腫瘍(例えば、細胞が元々悪性または腫瘍である部位以外の対象の身体部位に遊走しなかった細胞または腫瘍)、および二次的な悪性細胞または腫瘍(例えば転移により発症した腫瘍、最初の腫瘍部位と異なる二次的部位への悪性細胞または腫瘍細胞の転移)を含む。
【0106】
癌または悪性腫瘍の他の例は、限定されないが、急性小児リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、成人(原発性)肝細胞癌、成人(原発性)肝癌、成人急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝癌、成人軟部組織肉腫、エイズ関連リンパ腫、エイズ関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、腎盂癌および尿管癌、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫、子宮頸癌、小児(原発性)肝細胞癌、小児(原発性)肝癌、小児急性リンパ性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹神経膠腫、小児小脳星細胞腫、小児大脳星細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視床下部および視覚路神経膠腫、小児リンパ性白血病、小児髄芽腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児松果体およびテント上原始神経外胚葉腫瘍、小児原発性肝癌、小児横紋筋肉腫、小児軟部組織肉腫、小児視覚路および視床下部神経膠腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、膵内分泌部島細胞細胞腫、子宮内膜癌、上衣腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫および関連腫瘍、外分泌膵癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞性腫瘍、肝臓外胆管癌、眼癌、女性の乳癌、ゴーシェ病、胆汁膀胱癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、胃腸腫瘍、胚細胞性腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸癌、眼内メラノーマ、島細胞癌、島細胞膵癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、口唇癌および口腔癌、肝癌、肺癌、リンパ球増殖性疾患、マクログロブリン血症、男性の乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽腫、メラノーマ、中皮腫、転移性潜在性原発性の扁平上皮性頸部癌、転移性原発性の扁平上皮性頸部癌、転移性の扁平上皮性頸部癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、骨髄異形成症候群、骨髄性の白血病、骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌および副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、潜在性原発性転移性の扁平上皮性頸部癌、中咽頭癌、骨/悪性線維性肉腫、骨肉種/悪性線維性組織球腫、骨の骨肉種/悪性線維性組織球腫、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞性腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵癌、パラプロテイン血症、真性多血症、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂癌および尿管癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮性頸部癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉および松果体腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、移行細胞性腎盂癌および尿管癌、移行性腎盂癌および尿管癌、絨毛性腫瘍、尿管および腎盂の細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、腟癌、視覚路および視床下部性神経膠腫、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、並びに、腫瘍症に加え、先に記載した臓器系にある、他の任意の過剰増殖性疾患を含む。
【0107】
本明細書で説明し、請求する方法および組成物は、限定されるものではないが、先に説明した疾患悪性状態または前癌状態を治療し、腫瘍性状態または悪性状態の進行を防ぐために使用されてよい。そのような使用とは、公知の状態、または進行に先立って、腫瘍症または癌、特に、過形成、化生、または最も詳細には異形成から成る非腫瘍性細胞増殖が発症したと予想される状態での使用を指す(そのような異常な増殖状態の概説は、RobbinsおよびAngell,Basic Pathology,2d Ed.,W.B.Saunders Co.,Philadelphia,pp.68−79(1976)を参照されたい)。
【0108】
異形成は、癌の前兆であることが頻繁にあり、主に上皮に認められる。これは最も秩序の無い非腫瘍性細胞増殖の形態であり、各細胞の均一性および細胞の構造上の位置の欠損を伴う。特徴的な異形成は、慢性的な刺激つまり炎症の存在によって生じる。治療できる異形成疾患は、限定されないが、無汗性外胚葉異形成症、前後異形成、窒息性胸郭異形成、心房指状異形成、気管支肺異形成、大脳異形成、頸部異形成、軟骨外胚葉異形成、鎖骨頭蓋異形成、先天性外胚葉異形成、頭蓋骨幹異形成、頭蓋骨軟骨異形成、頭蓋骨幹端異形成、象牙質異形成、骨幹異形成、外胚葉異形成、エナメル質異形成、脳−眼部異形成、骨端欠損異形成、多発性骨端、点状軟骨異形成症、上皮異形成、顔面生殖異形成、下顎の家族性線維性異形成、家族性白色襞性異形成、線維筋性異形成、骨の線維性異形成、セメント質骨異形成、遺伝性腎臓−網膜異形成、発汗外胚葉性異形成、無汗性外胚葉異形成、リンパ性減少性胸腺異形成、乳腺異形成、下顎顔面異形成、骨幹端異形成、Mondini異形成、単骨性線維性骨異形成、粘膜上皮異形成、多発性骨端異形成、眼耳脊椎異形成、眼歯指異形成、眼脊椎異形成、歯原性異形成、眼下顎異形成(opthalmomandibulomelic dysplasia)、根尖性セメント質異形成、多発性線維性異形成、偽軟骨発育不全性脊椎骨端異形成、網膜異形成、中隔視神経異形成、脊椎骨端異形成、および心室橈骨異形成を含む。
【0109】
治療できるさらなる前腫瘍疾患は、限定されないが、良性悪性増殖疾患(例えば、良性腫瘍、線維嚢胞性状態、組織肥大、腸ポリープまたは腺腫、および食道異形成)、白板症、角化症、ボーエン病、農夫の皮膚病(Farmer’sSkin)、日光口唇炎、および日光性角化症を含む。
【0110】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、癌、詳細には先に記載した癌の増殖、進行、および/または転移を阻害するために使用される。
【0111】
さらなる過剰増殖疾患、疾患、および/または状態は、限定されないが、白血病(急性白血病(例えば急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球、前骨髄球、骨髄単球性、単球性、および赤白血病を含む)、慢性白血病(例えば慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病))、真性多血症、リンパ腫(例えばホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病のような悪性腫瘍および関連疾患、並びに限定されないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺細胞腫、嚢腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、睾丸腫瘍、肺癌、肺小細胞癌、膀胱癌、上皮細胞腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、希突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、および網膜芽細胞腫のような肉腫および細胞腫を含む固形腫瘍の進行および/または転移を含む。
【0112】
キット
さまざまな実施形態は患者の病変組織を標的とするか、または診断するのに適した要素を包含するキットに関係し得る。例示的なキットは、本明細書で説明した少なくとも1つ以上の抗癌ワクチン用コンストラクトを包含してよい。投与するための要素を包含する組成物は、経口送達するように、消化管を介した送達用に調合されていない場合、何らかの他の経路を介してキット要素を送達することができる機器が含まれてよい。非経口投与のような適用するためのある種の機器は、対象の身体内に組成物を注入する注射器である。吸入機器が使用されてもよい。特定の実施形態では、治療薬は、無菌の液剤または凍結乾燥製剤を包含する、予め充填した注射器または自動注射ペンの形態で提供されてよい。
【0113】
キット要素は一緒に梱包されるか、または2つ以上の容器に分けて梱包されてよい。幾つかの実施形態では、容器は、再構成に適した、無菌の凍結乾燥製剤の組成物を含めたバイアルでよい。キットは、他の試薬を再構成および/または希釈するに適した1つ以上の緩衝剤を含めてもよい。使用され得る他の容器は、限定されないが、パウチ、トレー、ボックス、チューブなどを含む。キット要素は、容器内が無菌で梱包され得、維持され得る。含むことができる別の要素は、使用に際し、キットを使用する者への取扱説明書である。
【0114】
発現ベクター
さらに他の実施形態は、抗癌ワクチン用のコンストラクトまたはその成分の融合タンパク質をコードする核酸を含むDNA配列に関する。融合タンパク質は、以下の実施例でより詳細に考察するような、DNLコンストラクトの形成に利用されるADペプチドおよびDDDペプチドのような、異なるペプチドまたはタンパク質に付着された抗CD74抗体またはCD20異種抗原を含む。代替的に、コードされた融合タンパク質は、異なる抗体または異種抗原に付着されたDDD部分またはAD部分を含んでよい。
【0115】
さまざまな実施形態は、DNAコード配列を含む発現ベクターに関連する。ベクターは、キメラ、ヒト化、またはヒト可変領域配列に付着され得るヒト免疫ブログリンの軽鎖定常部および重鎖定常部、並びにヒンジ領域をコードする配列を含み得る。ベクターは、選択した宿主細胞、エンハンサー、シグナル、またはリーダー配列にてコードされたタンパク質(単数または複数)を発現するプロモータを付加的に含む。特に有用なベクターは、pdHL2またはGSである。より好ましくは、軽鎖定常部および重鎖定常部、並びにヒンジ領域は、ヒトEUミエローマの免疫ブログリンに由来し、アロタイプ位置にて、随意に、少なくとも1つのアミノ酸が異なるIgG1アロタイプに認められるものに変化され、EUメンバーシステムに基づくEU重鎖のうち、随意に253個のアミノ酸がアラニンに置換されてよい。Edelmanら、Pr oc.Natl.Acad.Sci USA 63:78−85(1969)を参照されたい。他の実施形態では、IgGl配列は、IgG4配列に変換され得る。
【0116】
技術者であれば、操作されたタンパク質を発現するように発現コンストラクト遺伝子操作し、宿主細胞に挿入する方法は、当技術分野で周知されており、通例の実験事項であることを理解するだろう。宿主細胞およびクローンニングした抗体またはフラグメントを発現させる方法は、例えば2005年7月25日に出願された米国特許出願第11/187,863号、2005年10月20日に出願された米国特許出願第11/253,666号、および2006年7月14日に出願された米国特許出願第11/487,215号に説明されており、各実施例部分は参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
実施例
以下の実施例は解説のために提供するものであり、本発明の請求に限定されるものではない。
【0118】
実施例1.ドック・ロック(DNL)コンストラクトの調製
DDDおよびAD融合タンパク質
DNL技術は、実質的に任意の抗体またはそれらのフラグメントもしくは他のエフェクター部分を含む、二量体、三量体、四量体、六量体などを作製するために使用できる。特定の好ましい実施形態では、IgG抗体、F(ab’)2抗体フラグメント、およびCD20異種抗原のような異種抗原は、二量体化およびドッキングドメイン(DDD)配列またはアンカードメイン(AD)配列のいずれかを含む融合タンパク質として産生されてよい。好ましい実施形態では、DDD部分およびAD部分は、融合タンパク質として産生されるが、技術者であれば、化学的架橋結合のような他の抱合方法が、請求する方法および組成物の範囲内で利用されてよいことを理解するだろう。
【0119】
DNLコンストラクトは、例えば、抗CD74抗体のFab−DDD融合タンパク質をCD20−AD融合タンパク質と結合させることにより形成されてよい。代替的に、コンストラクトは、IgG−AD融合タンパク質をCD20−DDD融合タンパク質と結合させて作製されてよい。技術は限定されるものではなく、有用な任意のタンパク質またはペプチドが、DNLコンストラクトに組み込まれるAD融合タンパク質またはDDD融合タンパク質として産生されてよい。化学的架橋結合を利用する場合、ADおよびDDD抱合体は、タンパク質またはペプチドに限定されるものではなく、当技術分野で知られている任意の架橋結合を使用してAD配列またはDDD配列に架橋され得る、任意の分子を含む。
【0120】
独立したトランジェニック細胞株は、各DDD融合タンパク質またはAD融合タンパク質として発達し得る。産生すると、分子は、所望する場合に精製するか、または細胞培養上清液で維持することができる。以下の産物では、任意のDDD−融合タンパク質分子は、DNLコンストラクトを生成するように任意のAD−融合タンパク質分子と結合させることができる。異なる種類のコンストラクト、異なるAD配列またはDDD配列が利用されてよい。例示的なDDD配列およびAD配列は以下に記載する。
DDDl:SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号10)
DDD2:CGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号11)
ADl:QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号12)
AD2:CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(配列番号13)
【0121】
発現ベクター
プラスミドベクターpdHL2は、いくつかの抗体および抗体に基づくコンストラクトを産生させるために使用されてきた。Gilliesら、J Immunol Methods(1989),125:191−202;Losmanら、Cancer(Phila)(1997),80:2660−6を参照されたい。ジシストロニックな哺乳類の発現ベクターは、IgGの重鎖および軽鎖の合成を目的とする。ベクター配列は、多くの異なるIgG−pdHL2コンストラクトについては、可変ドメイン(VHおよびVL)配列に相違があるだけで、大部分は同じである。当業者に知られている分子生物学的手段を使用して、これらのIgG発現ベクターは、Fab−DDD発現ベクターまたはFab−AD発現ベクターへと変換することができる。Fab−DDD発現ベクターを生成させるために、ヒンジ、重鎖のCH2およびCH3ドメインについてのコード配列は、ヒンジの最初の4残基、14残基のGly−Serリンカー、およびヒトRIIα(DDD1を指す)の最初の44残基をコードする配列と置換される。Fab−AD発現ベクターを生成させるために、ヒンジ、IgGのCH2およびCH3ドメインについての配列は、ヒンジの最初の4残基、15残基のGly−Serリンカー、および17残基のAKAP−IS(AD1を指す)と呼ばれる合成ADと置換され、これはバイオインフォマティクスおよびペプチド配列技術を使用して生成され、非常に高い親和性(0.4nM)でRIIα二量体を結合させることが示された。Altoら、Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A(2003),100:4445−50を参照されたい。
【0122】
2つのシャトルベクターは、以下に説明するように、Fab−DDD1発現ベクターまたはFab−AD1発現ベクターのどちらかにIgG−pdHL2ベクターを変換させることを促すように設計した。
【0123】
CH1の調製
CH1ドメインは、テンプレートとしてpdHL2プラスミドベクターを使用し、PCRにより増幅させた。左側PCRプライマーは、CH1ドメインの上流(5’)末端およびSacII制限酵素部位から成り、これはCH1コード配列の5’になる。右側のプライマーは、ヒンジ(PKSC(配列番号29)の最初の4残基をコードし、続いて4つのグリシンおよび1つのセリンをコードし、最後はBamHI制限酵素部位を持つ2つのコドン(GS)をコードする配列から成る。PGEMT(登録商標)PCRクローニングベクター(PROMEGA(登録商標),Inc.)に410bpのPCRアンプライマーをクローンニングし、T7(5’)の方向に挿入するため、クローンをスクリーニングした。
【0124】
(G4S)2DDD1(配列番号14として開示する(G4S)2)から成る構築物
リンカーペプチドの11残基に先行してDDD1のアミノ酸配列をコードするために、まずBamHI制限酵素部位を持つ2つのコドンを用いて、SigmaのGENOSYS(登録商標)(Haverhill,UK)により(G4S)2DDD1(配列番号14として開示する(G4S)2)と命名した二本鎖のオリゴヌクレオチドを合成した。終止コドンおよびEagI制限酵素部位は3’末端に付加される。コードされたポリペプチド配列を以下に示す。
GSGGGGSGGGGSHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号15)
【0125】
3’末端で30塩基対分重複する、RIIA1−44topおよびRIIA1−44bottomと命名した2つのオリゴヌクレオチドを合成(SigmaのGENOSYS(登録商標))し、174bpのDDD1配列のうち中心の154塩基対を含むように結合させた。オリゴヌクレオチドをアニールし、Taqポリメラーゼを用いてプライマー伸長反応に晒した。プライマー伸長後、PCRにより二本鎖を増幅させた。PGEMT(登録商標)にアンプライマーをクローンニングし、T7(5’)の方向に挿入するためスクリーニングした。
【0126】
(G4S)2‐AD1(配列番号14として開示する(G4S)2)から成る構築物
AD1のアミノ酸配列をコードするため、リンカーペプチドの11残基のまえに、BamHI制限酵素部位を持つ最初の2つのコドンを用いて、SigmaのGENOSYS(登録商標)により(G4S)2‐AD1(配列番号14として開示する(G4S)2)と命名した二本鎖のオリゴヌクレオチドを合成した。終止コドンおよびEagI制限酵素部位は3’末端に付加される。コードされたポリペプド配列を以下に示す。
GSGGGGSGGGGSQIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号16)
【0127】
AKAP−IS TopおよびAKAP−IS Bottomと命名した、上記のペプチド配列をコードする2つの重複する相補的なオリゴヌクレオチドを合成し、アニールした。PCRにより二本鎖を増幅させた。PGEMT(登録商標)ベクターにアンプライマーをクローンニングし、T7(5’)の方向に挿入するためスクリーニングした。
【0128】
DDD1のCH1とのライゲーション
BamHI制限酵素およびNotI制限酵素を用いてPGEMT(登録商標)からDDD1配列をコードする190bpのフラグメントを切り出し、次いでシャトルベクターCH1−DDD1−PGEMT(登録商標)を生成させるためにCH1−PGEMT(登録商標)にライゲーションさせた。
【0129】
AD1のCH1とのライゲーション
BamHI制限酵素およびNotI制限酵素を用いてPGEMT(登録商標)からAD1配列を含む110bpのフラグメントを切り出し、次いでシャトルベクターCH1−AD1−PGEMT(登録商標)を生成させるためにCH1−PGEMT(登録商標)の同じ部位にライゲーションさせた。
【0130】
pdHL2に基づくベクターへのCH1−DDD1またはCH1−AD1のクローニング
このモジュラー設計を用いて、CH1−DDD1またはCH1−AD1のどちらかをpdHL2ベクターにある任意のIgGコンストラクトに組み込むことができる。重鎖定常ドメイン全体は、pdHL2由来のSacII/EagI制限フラグメント(CH1−CH3)を取り除き、それをpGemTシャトルベクターそれぞれから切り出されたCH1−DDDlまたはCH1−ADlのSacII/EagIフラグメントと置換することにより上述のコンストラクトの1つと置換される。
【0131】
h679−Fd−ADl−pdHL2の構築
h679−Fd−ADl−pdHL2は、14アミノ酸残基でできたフレキシブルなGly/SerペプチドスペーサーによりFdのCH1ドメインのカルボキシル基末端に連結されたAD1を持つh679Fabを産生させるための発現ベクターである。SacIIおよびEagIを用いてCH1−ADl−SV3シャトルベクターから切り出したCH1−ADlフラグメントと、SacII/EagIフラグメントを置換することによりh679の可変ドメインを含むpdHL2に基づくベクターをh679−Fd−ADl−pdHL2に変換した。
【0132】
DDD1−Fd−hMN−14−pdHL2の構築
C−DDD1−Fd−hMN−14−pdHL2は、融合タンパク質C−DDD1−Fab−hMN−14という2つの複製を含む安定な二量体を産生させるための発現ベクターであり、ここでDDD1は、フレキシブルなペプチドスペーサーによりCH1のカルボキシル基末端にてhMN−14Fabに連結される。SacIIおよびEagIを用いてCH1−DDD1−SV3シャトルベクターから切り出したCH1−CH3ドメインを取り除き、CH1−DDD1フラグメントを挿入するため、SacIIおよびEagI制限酵素を用いて消化させることにより、hMN−14IgGを産生させるために使用したプラスミドベクターhMN−14(I)−pdHL2をC−DDDl−Fd−hMN−14−pdHL2へと変換させた。
【0133】
同様の技術は、hLL1、hLL2、hPAM4、hRl、hRS7、hMN−14、hMN−15、hA19、hA20、および他の多くの抗体のような、知られている種々様々な抗体のFabを発現するプラスミドを産生させるために利用されてきた。一般的に、配列をコードする抗体可変領域は、pdHL2発現ベクターに提示され、発現ベクターは、先に説明したAD融合タンパク質またはDDD融合タンパク質を産生するために変換された。
【0134】
C−DDD2−Fd−hMN−l4−pdHL2の構築
C−DDD2−Fd−hMN−14−pdHL2は、C−DDD2−Fab−hMN−14を産生させるための発現ベクターであり、14アミノ酸残基のGly/SerペプチドリンカーによりhMN−14のFdのカルボキシル基末端に付加されたDDD2の二量化およびドッキングドメインを保有する。分泌された融合タンパク質は、DDD2ドメインとの非共有結合的な相互作用により保持されたhMN−14Fabという2つの同じ複製から構成される。
【0135】
発現ベクターは以下のように操作した。リンカーペプチド(GGGGSGGGCG、配列番号17)、およびDDD2の1−13残基の部分についてコード配列を含む、2つの重複する優遇的なオリゴヌクレオチドを合成的に作製した。オリゴヌクレオチドをアニールし、T4PNKを用いてリン酸化し、結果として、制限酵素BamHIおよびPstIそれぞれを用いて消化したDNAとライゲーションするのに適した5’末端および3’末端でオーバーハングさせた。
【0136】
シャトルベクターCH1−DDD2−PGEMT(登録商標)を生成させるために、シャトルベクターCH1−DDD1−PGEMT(登録商標)と二本鎖DNAをライゲーションしョンし、これはBamHIおよびPstIを用いて消化することにより調製した。SacIIおよびEagIを用いてCH1−DDD2−PGEMT(登録商標)から507bpのフラグメント切り出し、IgG発現ベクターhMN−14(I)−pdHL2とライゲーションし、これはSacIIおよびEagIを用いた消化により調製した。最終的な発現コンストラクトはC−DDD2−Fd−hMN−14−pdHL2と命名した。類似の技術が、いくつかの異なるヒト化抗体のFabフラグメントからDDDD2−融合タンパク質を生成させるために利用されてきた。
【0137】
h679−Fd−AD2−pdHL2の構築
h679−Fd−AD2−pdHL2は、h679−Fab−AD2を産生させる発現ベクターであり、14アミノ酸残基のGly/SerペプチドリンカーによりCH1ドメインのカルボキシル基末端に付加されるAD2のアンカードメイン配列を保有する。AD2はAD1のアンカードメイン配列の前に1つのシステイン残基を、該ドメインの後に別の1つのシステイン残基を有する。
【0138】
発現ベクターは以下のように操作した。AD2のコード配列およびリンカー配列の部分を含む、2つの重複する優遇的なオリゴヌクレオチドを合成的に作製した。オリゴヌクレオチドをアニールし、T4PNKを用いてリン酸化し、結果として、制限酵素BamHIおよびSpeIそれぞれを用いて消化したDNAとライゲーションするのに適した5’末端および3’末端でオーバーハングさせた。
【0139】
シャトルベクターCH1−AD2−PGEMT(登録商標)を生成させるために、シャトルベクターCH1−AD1−PGEMT(登録商標)に二本鎖DNAをライゲーションし、これはBamHIおよびSpeIを用いて消化することにより調製した。SacIIおよびEagI制限酵素を持つシャトルベクターからCH1およびAD2コード配列を包含する429塩基対のフラグメントを切り出し、h679−pdHL2ベクターにライゲーションし、同じ酵素を用いた消化により調製した。最終的な発現ベクターはh679−Fd−AD2−pdHL2である。
【0140】
TF2三量体DNLコンストラクトの生成
TF2と命名した三量体DNLコンストラクトを、C−DDD2−Fab−hMN−14をh679−Fab−AD2と反応させることにより獲得した。以下のように、TF2試験的なバッチを、>90%の収率で生成させた。タンパク質L−精製C−DDD2−Fab−hMN−14(200mg)をh679−Fab−AD2(60mg)と1.4:1のモル比で混合した。総タンパク質濃度は、1mMのEDTAを含むPBS中で1.5mg/mlであった。続くステップはTCEP還元、HICクロマトグラフィー、DMSO酸化、およびIMP291アフィニティークロマトグラフィーを伴った。TCEPの添加前に、SE−HPLCは、a2bを形成するという証拠を示さなかった。5mMのTCEPの添加により、二成分構造と予想される157kDaのタンパク質と一致するa2b複合体の形成に、迅速に至った。IMP291アフィニティークロマトグラフィー(不図示)により、TF2を均一近くまで精製した。IMP291は、679のFabが結合するHSGハプテンを含む合成ペプチドである(Rossiら、2005,Clin Cancer Res 11:7122s−29s)。IMP291の結合しなかった分画のSE−HPLC分析により、産物からa4、a2、および遊離κ鎖が取り除かれたことが実証された(不図示)。
【0141】
非還元的なSDS−PAGE分析により、TF2の大部分は、IgGに近い相対的移動度を持つ、大きな共有結合性構造として存在することが実証された(不図示)。還元的SDS−PAGEは、TF2の構成ポリペプチドを表すバンドのみが明確である(不図示)ので、非還元性ゲル中の任意の付加的なバンドは、産物に関していることを示す(不図示)。しかし、4種類の各ペプチドの相対的移動度は非常に近似しており、分解できなかった。MALDI−TOF質量分析(不図示)では、156,434 Daの単一ピークが示されたが、これはTF2の計算上の質量(157,319 Da)の99.5%の範囲内にある。
【0142】
TF2の機能性を、BIACORE(登録商標)分析により測定した。TF2、C−DDDl−hMN−14+h679−ADl(非共有結合性a2b複合体の対照サンプルとして使用)、またはC−DDD2−hMN−14+h679−AD2(還元されていないa2成分およびb成分の対照サンプルとして使用)を1μg/ml(総タンパク質)に希釈し、HSGを用いて固定化したセンサーチップ上を通過させた。TF2についての反応は、2種類の対照サンプルのおよそ二倍であり、対照サンプル中のh679−Fab−AD成分だけがセンサーチップ上に結合したまま残るであろうことを示した。次に、WI2IgGの注入では、さらなるシグナル応答性によって示されるように、hMN−14の抗イディオタイプ抗体により、TF2だけがh679−Fab−ADと強く結合するDDD−Fab−hMN−14を有していたことが実証された。センサーチップ上に固定されたTF2へのWI2の結合により生じる反応性のさらなる増加は、2つの完全に機能的な結合部位に相当しており、各々はC−DDD2−Fab−hMN−14の1つのサブユニットに提供されていた。これは、WI2の2つのFabフラグメントに結合するTF2の能力により確認された(不図示)。
【0143】
実施例2.CH3−AD2−IgG発現ベクター
任意のIgG−pdHL2ベクターの、CH3−AD2−IgG−pdHL2ベクターへの転換を促進させるためにプラスミドシャトルベクターを作製した。Fc(CH2ドメインおよびCH3ドメイン)について、テンプレートとしてpdHL2ベクターを使用し、かつ次のオリゴヌクレオチドプライマーを使用してPCRにより遺伝子を増幅した。
Fc BglII 左側
AGATCTGGCGCACCTGAACTCCTG(配列番号8)
Fc Bam− EcoRI 右側
GAATTCGGATCCTTTACCCGGAGACAGGGAGAG(配列番号9)
【0144】
pGemT PCRクローニングベクター内にアンプライマーをクローニングした(Promega)。XbaIおよびBamHIを用いてpGemTからFc挿入フラグメントから切り出し、XbaIおよびBamHIを用いてh679−Fab−AD2−pdHL2(Rossiら,Proc Natl Acad Sci USA 2006,103:6841−6)を消化させることにより調製したAD2−pdHL2とライゲーションさせ、シャトルベクターFc−AD2−pdHL2を生成させた。IgG−pdHL2発現ベクターをCH3−AD2−IgG−pdHL2発現ベクターへと変換するため、前者から861bpのBsrG I/Nde I制限フラグメントを切り出し、Fc−AD2−pdHL2ベクターから切り出した952bpのBsrG I/Nde I制限フラグメントと置換した。以下は、組み換えヒト化IgG−AD2モジュールを作製するために生成し、使用したCH3−AD2−IgG−pdHL2発現ベクターリストの一部である。
CH3−AD2−IgG−hA20(抗CD20)
CH3−AD2−IgG−hLL2(抗CD22)
CH3−AD2−IgG−hL243(抗HLA−DR)
CH3−AD2−IgG−hLL1(抗CD74)
CH3−AD2−IgG−hRl(抗IGF−lR)
CH3−AD2−IgG−h734(抗インジウムDTPA)
【0145】
実施例3.CH3−AD2−IgGの作製
好適なCH3−AD2−IgG分泌細胞株のトランスフェクションおよび選択
全ての細胞株をハイブリドーマSFM(Invitrogen,Carlsbad CA)において増殖させた。SalI制限酵素を用いた消化によりCH3−AD2−IgG−pdHL2ベクター(30μg)を線状化し、エレクトロポレーション(450ボルト、25μF)によりSp2/0−Agl4(2.8×106細胞)へとトランスフェクトさせた。pdHL2ベクターは、クローン選択とともにメトトレキサート(MTX)を用いて遺伝子増幅ができるジヒドロ葉酸還元用の遺伝子を含む。
【0146】
次のトランスフェクションで、96ウェルのプレートに細胞を蒔き、0.2μMのMTXを含む培地でトランスジェニッククローンを選択した。特異的な抗イディオタイプMAbでコーティングした96ウェルのマイクロタイタープレートを使用し、サンドウィッチELISAにより、CH3−AD2−IgG産生力についてクローンをスクリーニングした。推定クローンの条件培地をマイクロプレートのウェルに移し、西洋わさびペルオキシターゼ抱合したヤギ抗ヒトIgGのF(ab’)2を用いて融合タンパク質の検出を行った(Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,PA)。最も高いシグナルを出したウェルを拡大し、最終的に産物として使用した。
【0147】
CH3−AD2−IgGモジュールの作製および精製
融合タンパク質の産物のため、2×105細胞/mlでローラーボトル培養を播種し、細胞生存率が25%以下に落ちるまで、ローラーボトルインキュベータ中、5%のCO2のもと、37℃でインキュベートした(〜10日)。遠心分離により培養ブロスを清澄させ、濾過し、限外濾過法により50倍まで濃縮した。CH3−AD2−IgG分子の精製のため、濃縮した上清液をタンパク質A(MAB Select)のアフィニティーカラムにロードした。PBSを用いてベースラインまでカラムを洗浄し、0.1Mのグリシン、pH2.5を用いて融合タンパク質を溶出した。
【0148】
実施例4.DDD2−mCD20(136−178)の生成およびDDD2−mCD20(136−l78)−pdHL2の構築
DDD2−mCD20(136−178)−pdHL2は、DDD2−mCD20(136−178)用の発現ベクターであり、これはDDD2−リンカー−mCD20(136−178)−HHHHHH(配列番号30として開示されるHHHHHH)を含む。マウスCD20(mCD20)の細胞外ドメインは、mCD20(136−178)と呼び、以下に示す配列のアミノ酸残基136〜178を含む。
TLSHFLKMRRLELIQTSKPYVDIYDCEPSNSSEKNSPSTQYCN(配列番号18)
【0149】
マウスCD20異種抗原のアミノ酸配列を以下に示す。
MSGPFPAEPTKGPLAMQPAPKVNLKRTSSLVGPTQSFFMRESKALGAVQIMNGLFHITLGGLLMIPTGVFAPICLSVWYPLWGGIMYIISGSLLAAAAEKTSRKSLVKAKVIMSSLSLFAAISGIILSIMDILNMTLSHFLKMRRLELIQTSKPYVDIYDCEPSNSSEKNSPSTQYCNSIQSVFLGILSAMLISAFFQKLVTAGIVENEWKRMCTRSKSNVVLLSAGEKNEQTIKMKEEIIELSGVSSQPKNEEEIEIIPVQEEEEEEAEINFPAPPQEQESLPVENEIAP(配列番号7)
【0150】
テンプレートとして全長マウスCD20のcDNAクローンを使用し、PCRによりBamHlおよびXho1制限酵素部位に隣接したmCD20(136−178)のヌクレオチド配列を含むDNAセグメントを獲得した。2つのプライマーを以下に示す。
上流プライマー:BamHI_mCD20プライマー(30塩基長)
5’−GGATCCACACTTTCTCATTTTTTAAAAATG(配列番号31)
下流プライマー:XhoI mCD20プライマー(30塩基長)
5’−CTCGAGGTTACAGTACTGTGTAGATGGGGA(配列番号32)
【0151】
PCRアンプライマー(141bp)をPGEMT(登録商標)ベクター(PROMEGA(登録商標))にクローニングする。XbaIおよびBamHI制限酵素を用いた消化によりアンプライマーとライゲーションするためにDDD2−pdHL2哺乳類の発現ベクター、例えば、N−DDD2−hG−CSF−His−pdHL2を調製する。XbaIおよびBamHIを用いてPGEMT(登録商標)からmCD20アンプライマーを切り出し、DDD2−pdHL2ベクターにライゲーションし、発現ベクターDDD2−mCD20(l36〜178)−pdHL2を生成させる。
【0152】
DDD2−mCD20(136−178)を発現するクローンを獲得するためのトランスフェクションおよびスクリーニング
SalI酵素を用いた消化によりベクターDDD2−mCD20(136−178)を線状化し、エレクトロポレーションにより安定的にSpESF骨髄腫細胞にトランスフェクトする(例えば米国特許第7,537,930号を参照されたく、その実施例部分は参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかのクローンは、ELISAにより、検出可能レベルのDDD2−mCD20(136−178)を有することが認められ、その中から最も産生能が高いクローンを選択し、続いて5週間にわたり、0.1〜0.8μMまでメトトレキサート(MTX)濃度を増加させながら増幅させる。この時点で、限定希釈によりサブクローニングし、最も産能が高いサブクローンを拡大する。
【0153】
0.8μMのMTXを含む総量20Lの無血清ハイブリドーマSFMを含む34個のローラーボトルまでクローンを拡大し、末端培養への到達を許す。遠心分離により上清液を清澄させ、濾過する(0.2μM)。1X結合緩衝液(10mMのイミダゾール、0.5MのNaCl、50mMのNaH2PO4、pH7.5)にディアフィルター(diafiltered)し、固定金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって精製するために310mLまで濃縮させる。濃縮物を30mLのNi−NTAカラムにロードし、0.02%のTween20を加えた500mLのIX結合緩衝液を用いて洗浄し、次いで290mL(30mMのイミダゾール、0.02%のTween20、0.5MのNaCl、50mMのNaH2PO4、pH7.5)を用いて洗浄する。110mL(250mMのイミダゾール、0.02%のTween20、150mMのNaCl、50mMのNaH2PO4、pH7.5)を用いて生成物を溶出する。還元条件のもと、DDD2−mCD20(136−178)の純度をSDS−PAGEにより評価する。
【0154】
実施例5.4複製のmCD20(136−178)に連結させたhLL1IgGを含む74−mCD20DNLワクチンの生成
実施例2および実施例3で説明したように、CH3−AD2−IgG−hLL1(抗CD74)を産生させる。コンストラクトは、hLL1IgGの各重鎖のC末端に付着させたAD2部分を含む。DDD2−mCD20(136−178)は、実施例4で説明したように産生させる。DNL反応は、1mMの還元グルタチオンを含むPBS中で、hLL1IgG−AD2およびDDD2−mCD20(136−178)を混合することにより行われる。翌日、酸化型グルタチオンを2mMの終末濃度に添加し、24時間後、反応混合物をタンパク質Aカラム上で精製させる。この実施形態では、各AD2部分に2複製のDDD2−mCD20付着させ、結果として、1つのhLL1 IgG部分および4つのmCD20異種抗原部分を含むDNL複合体が生じる。
【0155】
代替的な実施形態では、hLL1のFabをDDD2に連結させ、mCD20(136−178)をAD2に連結させる。先に説明したように、DNLコンストラクトの形成は、結果としてhLL1−F(ab)2−mCD20(136−178)と命名されたMMワクチンとなり、これはhLL1の2つのFab部分に付着された単一のmCD20(136−178)を含む。AD2−mCD20(136−178)の生成は、実施例6に説明する。
【0156】
MMを伴う対象に74−mCD20(136−178)またはhLL1−F(ab)2−mCD20(136−178)投与することにより、CDl38negCD20+と推定されるMM幹細胞に対抗する免疫反応を誘発する。免疫反応は、対象のMM疾患細胞を減少または除去するのに効果的である。
【0157】
実施例6.組み換えAD2−mCD20(136−178)の生成
【0158】
AD2−mCD20(l36〜178)−pdHL2は、組み換えAD2−mCD20(136〜178)用の発現ベクターであり、AD2−リンカー−mCD20(136〜178)−HHHHHH(配列番号30として開示したHHHHHH)を含む。テンプレートとして全長マウスCD20cDNAクローンを使用し、かつ以下に示す2つのプライマーを使用して、PCRによりBgl2およびEag1制限酵素部位に隣接したmCD20(136〜178)のヌクレオチド配列を含むDNAセグメントを獲得した。
上流プライマー:Bgl2_mCD20プライマー(30塩基長)
5’−AGATCTACACTTTCTCATTTTTTAAAAATG(配列番号33)
下流プライマー:Eag1_mCD20プライマー(48塩基長)
5’CGGCCGTCAGTGGTGGTGGTGGTGGTGGTTACAGTACTGTGTAGATGG(配列番号34)
【0159】
PCRアンプライマー(162bp)をPGEMT(登録商標)ベクター(PROMEGA(登録商標))にクローニングした。AD2−pdHL2哺乳類発現ベクター、例えば、N−AD2−hトンスフェリン−ヒスチジンpdHL2は、Bgl2制限酵素およびEag1制限酵素によるアンプライマーを用いたライゲーションのために調製される。Bgl2およびEag1を用いてPGEMT(登録商標)からmCD20アンプライマーを切り出し、発現ベクターAD2−mCD20(136〜l78)−pdHL2を生成させるためにAD2−pdHL2ベクターにライゲーションさせる。実施例4で説明したように、AD2−mCD20(136〜178)を発現するクローンを獲得し、Ni選択を使用してAD2−mCD20(136〜178)培養物の上清から精製する。
【0160】
実施例7.ADおよびDDD配列変異体
特定の好ましい実施形態では、先に説明したように、AD2(配列番号13)およびDDDD2(配列番号11)のアミノ酸配列を含むDNL複合体にAD配列およびDDD配列を組み込む。しかし、別の実施形態では、AD部分および/またはDDD部分の配列変異は、サイトカイン−MAbDNL複合体の構築に利用してよい。ADドメインおよびDDDドメインの構造機能の関係が研究されてきた(例えばBurns−Hamuroら,2005,Protein Sci 14:2982−92;Carrら,2001,J Biol Chem 276:17332−38;Altoら,2003,Proc Natl Acad Sci USA 100:4445−50;Hundsruckerら,2006,Biochem J 396:297−306;Stokkaら,2006,Biochem J 400:493−99;Goldら,2006,Mol Cell 24:383−95;Kindermanら,2006,Mol Cell 24:397−408を参照されたい)。
【0161】
例えば、Kindermanら(2006)は、AD−DDD結合の相互作用の結晶構造を試験し、含有していたいくつかの保存アミノ酸残基を含むヒトDDD配列は、下記の配列番号10で下線を付けた二量体形成またはAKAP結合のどちらかに重要であるという結論に至った(Kindermanら、2006の図1を参照されたい)。技術者であれば、DDD配列の配列変異を設計することにおいて、二量化およびAKAP結合に重要性が低い残基として保存アミノ酸置換を作製できつつも、下線を付けた残基が変化してしまうことは回避することを理解するだろう。
プロテインキナーゼAのヒトDDD配列
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号10)
【0162】
Altoら(2003)は、DDDについて0.4nMの結合定数を持つ、AKAP−IS(配列番号12)と呼ばれるRII選択的AD配列を設計するため、さまざまなAKAPタンパク質のAD配列のバイオインフォマティクス分析を行った。AKAP−IS配列をPKAに結合するAKAPのペプチドアンタゴニストとして設計した。置換基がDDへの結合を減らす傾向のあるAKAP−IS配列の残基を、以下の配列番号12にて下線を付けた。
【0163】
AKAP−IS配列
QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号12)
同様に、Gold(2006)は、RIアイソフフォームと比較してPKAのRIIアイソフォームについて、5桁の大きさの高い選択性を示すSuperAKAP−IS配列(配列番号19)を発生させるために結晶学およびペプチヂスクリーニングを利用した。下線を付けた残基は、AKAP−IS配列に関連するアミノ酸置換の位置を示し、RIIaのDDD部分への結合を増加した。この配列では、N末端のQ残基は残基数4として番号が付され、C末端のA残基の残基数は20として番号が付されている。置換がRIIaの親和性に作用するように作製できた残基は8、11、15、16、18、19、および20(Goldら,2006)であった。別の特定の実施形態では、SuperAKAP−IS配列は、サイトカイン−MAbのDNLコンストラクトを調製するために、AKAP−ISのAD部分配列に置換してよいことが想定される。AKAP−IS AD配列に置換される他の代替的な配列は、配列番号20〜配列番号22に示す。AKAP−IS配列に関する置換基は下線を付ける。配列番号19に示すAKAP−IS配列と同様に、AD部分も追加のN末端残基のシステインおよびグリシン、並びにC末端残基グリシンおよびシステインを含んでよいことが見込まれる。
SuperAKAP−IS
QIEYVAKQIVDYAIHQA(配列番号19)
代替的なAKAP配列
QIEYKAKQIVDHAIHQA(配列番号20)
QIEYHAKQIVDHAIHQA(配列番号21)
QIEYVAKQIVDHAIHQA(配列番号22)
【0164】
Stokkaら(2006)はまた、配列番号23〜配列番号25に示す、PKAに結合するAKAPのペプチド競合物を開発した。Ht31(配列番号23)、RIAD(配列番号24)、およびPV−38(配列番号25)としてペプチドアンタゴニストを設計した。Ht−31ペプチドは、PKAのRIIアイソフォームに高い親和性を提示し、RIADおよびPV−38は、RIに高い親和性を示した。
Ht31
DLIEEAASRIVDAVIEQVKAAGAY(配列番号23)
RIAD
LEQYANQLADQIIKEATE(配列番号24)
PV−38
FEELAWKIAKMIWSDVFQQC(配列番号25)
【0165】
Hundsruckerら(2006)は、PKAのRII型のDDDに対して0.4nMと同程度に低い結合定数を用いて、PKAに結合するAKAPについてさらに他のペプチド競合物を開発した。様々なAKAP拮抗ペプチドの配列がHundsruckerら(参照により本明細書に組み込まれる)の表1に提示されている。異なるAKAPタンパク質のADドメイン中に高く保存された残基は、AKAP IS配列(配列番号12)として参照するとともに下線を付けて以下に示す。残基は、C末端のアラニン残基の付加を持つ、Altoら(2003)により認められた残基と同じである(Hundsruckerら(2006)の図4を参照されたく、該内容は参照により本明細書に組み込まれる)。RIIのDDD配列に特定の高い親和性を持つペプチドアンタゴニストの配列は、配列番号26〜28に示す。
AKAP−IS
QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号12)
AKAP7δ−wt−pep
PEDAELVRLSKRLVENAVLKAVQQY(配列番号26)
AKAP7δ−L304T−pep
PEDAELVRTSKRLVENAVLKAVQQY(配列番号27)
AKAP7δ−L308D−pep
PEDAELVRLSKRDVENAVLKAVQQY(配列番号28)
【0166】
Carrら(2001)は、ヒトおよび非ヒトタンパク質由来の異なるAKAP結合DDD配列と異なるDDD部分のうち、最も高く保存されると予想されるDDD配列中に同定した残基との間の配列相同性の程度を試験した。これらは、配列番号10のヒトPKA RIIa DDD配列として参照するとともに下線を付けて示す。とりわけ保存された残基は、さらにイタリック体で示す。同一ではないものの、重複する残基はAKAPタンパク質への結合に重要であることがKindermanら(2006)により示唆された。
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号10)
【0167】
技術者であれば、本明細書で説明したように、一般的に、異なるタンパク質に由来するDDD配列およびAD配列に高度に保存されたアミノ酸残基は、アミノ酸置換を作製時に一定のままであることが好ましいアミノ酸残基であり、高度でなく保存された残基は、ADおよび配列/またはDDD配列の配列変異を産生させるように、一層容易に変化し得ることを理解するだろう。
【0168】
技術者であれば、DNLコンストラクトの抗体部分またはリンカー部分にある、これらおよび他のアミノ酸置換が、結果生じるDNLコンストラクトの治療的特性および/または薬物動態的特性を向上させるために利用されてよいことを理解するだろう。
【0169】
実施例8.DCに関するhLL1の効果−APCの異なるサブセットを持つhLL1の結合効率
初期の研究により、CD74は、血中DC、B細胞、単球を含むほとんどの抗原提示細胞に発現することが実証された。APC中のCD74の発現プロファイルをさらに特徴付けるため、我々は、ヒトPBMCおよびin vitroにおいて、単球由来のDCの異なるサブセットにおけるCD74の発現を試験した。図1Aに示すゲート戦略を使用して、我々は、血中のDCサブセット、骨髄DC1(MDCl)およびDC2(MDC2)、並びに形質細胞様DC(PDC)の全ては、MDC2が最も高いレベルのCD74を発現させながら(図1B)CD74を発現させることを見出した。CD74は、LPS成熟DCよりもはるかに高いレベルで単球由来の未熟DC中でも発現した(図2A)。CD74発現プロファイルと一致して、hLL1は、血中DCサブセット、B細胞、単球、および単球由来の未熟DC(図1C、図2B)と効率的に結合したが、LPS成熟DC(図2B、図2C)とは結合しなかった。これらAPCサブセットにおけるhLL1の結合効率は、それらのCD74発現レベルとよく相関している。これらのデータにより、ドック・ロック技術による標的ビヒクルとしてhLL11を使用したAPCへの抗原のin vivoの基盤が提供される。
【0170】
正常DCではなく、CD74を発現する悪性B細胞に関するhLL1の細胞毒性効果
図1Aおよび図1Bに示すように、CD74は、hLL1が効率的に結合しつつ、未熟DCにて高く発現するので、CD74を発現するB細胞リンパ腫に在る(Steinら,Blood 2004,104:3705−11)ことが既に示されているように、hLL1がDC中に同じ細胞毒性を有するかを疑った。このために、MTS分析および顕微イメージングを使用し、B細胞悪性Daudi細胞およびヒト単球由来のDCの細胞生存率についてhLL1の効果を並べて比較した。結果は、GAH(ヤギ抗ヒト抗体)、hLL1架橋結合用の第2抗体の存在下にて、DCではなくDaudi細胞の細胞生存率を著しく減少させ(図3A)、これは先に示したように、高いレベルのCD74を正常に発現させることを実証した。顕微イメージングは、GAHと架橋したhLL1を用いて治療されたDaudi細胞は、凝集および収縮するようになり、DCは同じように治療した後、正常な形態を維持したことを示す(図3C、図3D)。GAHと架橋したhLL1によるDaudi細胞に対抗する細胞毒性は、Steinら(2004)による初期の研究と一致し、in vitroおよびin vivoにおいてB細胞悪性腫瘍に対して細胞毒性を有することを示した。DCに関し、hLL1とGAHとを合わせた細胞毒性による欠失をアポトーシス分析でさらに実証し、これは低二倍体の核集団がGHAと架橋したhLL1による影響は受けないことを示した(不図示)。
【0171】
DCについてhLL1の細胞毒性の欠失をさらに確認するため、我々はフローサイトメトリーを使用してアポトーシス分析を行った。hLL1治療した未熟DCから核を獲得し、フローサイトメトリー分析のためにPIを用いて染色した。PIを足した粒子をまずゲートし、SSCの低粒子をゲートアウトすることにより壊死組織片を排除した。アポトーシスについて、低二倍体各集団を測定することにより、結果ゲートした核を分析した(図2A)。結果は、架橋結合(GAH、F(ab’)2 GAH IgG Fcγ特異的)について、第2mAb(20μg/ml)の有り無しで、2人のドナーにおけるDCアポトーシスの影響が全く無かった(図2B、図2C)ことを実証している。正常な樹状細胞に対してほとんど細胞毒性を有さないB細胞悪性腫瘍もまたCD74の表面抗原を発現することを実証した。
【0172】
hLL1によるDC構成の成熟の増大を緩和すること
【0173】
ヒトIgGは、FcRライゲーションを介してDCと相互作用することができ、FcRのサブタイプ(単数または複数)するに依存するDCの成熟に逆作用を有する。ヒト化IgGとしてのhLL1は、CD74だけでなく、DC上に発現したFcRを介してもヒトDCと相互作用し得る。このため、我々は、hLL1がCD74もしくはFcRまたは両方との相互作用を介してDCの機能に影響を与えうるのであろうと推測した。このことを調査するため、hGM−CSFおよびhIL−4の存在下、単球のin vitro培養において、DC構成の成熟についてhLL1の効果を試験した。
【0174】
DC成熟は、通常、その形態学的変化に反映されるため、我々はまた、hLL1治療がDCの形態に何らかの効果を有するかを試験した。図3Bに示されるように、さまざまな日数について異なる用量、GAH架橋結合の有り無しでは、hLL1で治療したDCは、健常かつインタクトであると見受けられた。hLL1治療したDCは線維状細胞と特徴のある幾らかのわずかな形態学的変化を示し、これはLPS治療したDC(不図示)に類似するが該DCよりも明らかに少ない。
【0175】
成熟DCは、主に抗原提示分子および副刺激分子発現の情報制御、変化したサイトカイン産生、並びに向上したT細胞刺激能力において未熟DCとは異なるので、次に我々はhLL1が、DCにおけるHLA−DR分子および副刺激分子、CD54およびCD86の発現について何らかの効果を有するかを調査した(図4)。結果は、hLL1が、0.05〜5μg/mlの範囲のhLL1濃度内では、用量に依存する方法でHLA−DR、CD54およびCD86を上方制御することができたことを示す(図4A)。しかし、効果は強力ではなく、HLA−DR分子および副刺激分子のように、CD54およびCD86の発現は、0μg/mlに比べて5μg/mlのhLL1では10%上方制御しただけだった(図4B)。最も高い濃度(50μg/ml)では、HLA−DR、CD54およびCD86の発現は、5μg/mlのhLL1に比べてさらに上方制御することはなく、わずかに減少した(図4B)。これらの結果は、hLL1が強くはないものの、DC構成の成熟を向上させることができたことを示している。
【0176】
hLL1治療したDCによるT細胞拡大に著しい影響は無い
未熟DCおよび成熟DCの機能的な違いとは、成熟DCが、T細胞増殖および拡大を刺激する、強力な能力を有することである。DCにおいて、HLA−DR、CD54およびCD86発現の発現を上方制御することにより、構成の成熟を高めることができるので(図4B)、我々は、このDCが成熟するという効果が、DCにより向上したT細胞拡大によって反映させることができるかどうかを測定した。図5に示されるように、0.05〜50μg/mlのhLL1で治療したDCは、全T細胞、CD4+T細胞、およびCD4−T細胞を含め、DCを媒介したT細胞拡大に影響を与えなかった(図5)。この結果は、hLL1により向上したDC構成の成熟が、向上したT細胞の刺激力へと変えるほど強くなかったことを示唆している。
【0177】
hLL1治療したDCによりTh1エフェクター細胞に向かうナイーブCD4+T細胞の極性化
しかし、DCは別の重要な機能、つまり異なるエフェクター細胞、Th1、Th2、Th17とともに、新規に定義されたTh17−1細胞へと分化させるナイーブCD4T細胞の極性化を有する。Th1細胞は、細胞内の病原体および癌に対抗する細胞性免疫に必須である一方で、Th2細胞の誘導は体液性免疫に関与する。IL−17を産生するTh17およびTh17−1細胞は、特定の病原体および自己免疫性の炎症に対し、免疫における多様な機能を有する他の極性化した細胞集団である。これらのエフェクター細胞の極性化は、主としてDCにより分泌されたサイトカイン、いわゆる「シグナル3」を介し、DC/T細胞シナプスのT細胞に提提示される。CD4+ナイーブT細胞は、異なるエフェクター機能を媒介するTh1、TH2、およびTnp細胞へと分化することができ、該エフェクのターのうち、Th1エフェクター細胞は、癌および感染症に対抗するCTL反応を維持するのに必須の役割を果たす。我々は、0.05〜50μg/mlのhLL1が、DC構成の成熟を用量に依存する方法ではなく、弱いながらも向上させることができるが、この濃度のhLL1を用いて治療したDCは、DCを媒介したT細胞拡大に影響を与えなかったことを示す(図5)。次に、我々は、hLL1治療したDCがCD4+ナイーブT細胞の極性化に影響を与えることができるかに興味を抱いた。図5に示されるように、hLL1治療したDCは、より多くのTH1エフェクター細胞、およびより少ないTH2およびTnp細胞へと分化するようにCD4+ナイーブT細胞を極性化させた。これらの結果は、DCがhLL1によって機能的に調節され得ることを示す。Th1は腫瘍および感染症に対抗する獲得免疫に重要な役割を果たすので、hLL1は、ワクチン接種で使用する際にアジュバント様の活性を有する。
【0178】
実施例9.in vitroにおける74−mCD20の特性−74−mCD20によるヒトPBMCにおけるhCD20特異的免疫の誘発
CD20は、B細胞上に発現する正常な自己抗原であり、該抗原は、免疫寛容に起因してワクチン戦略による標的が治療的に困難である。しかし、CD20に対する特異的なT細胞性免疫反応は、ヒトCD20のミニ遺伝子(Palombaら,Clin Cancer Res 2005;11:370−9)、またはヒトCD20の細胞外ドメインおよびQS21アジュバントを備える担体タンパク質を含む抱合体(Robertsら,Blood 2002;99:3748−55)をコードする細胞外ドメインを用いたワクチン接種により、担癌マウスにおいて実現できた。他の幾つかの報告では、動物モデルとともに患者におけるMUClについて示されるように、異種抗原を使用して免疫寛容を断つ実現可能性も実証されている(Dingら,Blood 2008;112:2817−25;Soaresら,J Immunol 2001;166:6555−63)(Ramanathanら,Cancer Immunol Immunother 2005;54:254−64)。74−mCD20が成功するようにhCD20特異的免疫を誘発し、CD20の免疫寛容を克服することができたかを試験するため、以下の実験を行う。
【0179】
hGM−CSFおよびhIL−4の存在下にて、5日間にわたって培養することにより、PBMCからヒトDCを生成させる。未熟DCを74−mCD20にロードし、LPSとIFN−gammaとを合わせることにより成熟させる。成熟DCは、10日間にわたり自己PBMCを刺激するために使用する。ロードした同じDCを用いて毎週2回、再刺激を行う。最後の再刺激後、局在化したCD20陽性MM癌幹細胞により刺激してから、サイトカイン反応(IFN−gamma)を測定することによりそれらの抗原特異性のためにT細胞を試験する。対照として、CD20陰性MM細胞を使用する。T細胞は、CD20陽性MM癌幹細胞に対して陽性反応を示すが、対照のCD20陰性MM細胞には反応を示さない。
【0180】
in vitroにおけるさまざまな抗原提示細胞の74−mCD20の特異的結合、内面化、および細胞内の位置
我々の準備中のデータでは、hLL1が、骨髄性DClおよび骨髄性DC2、形質細胞様DC、B細胞および単球を含むAPCと効率的かつ特異的に結合することが示された。74−mCD20が、hLL1単独としてAPCとの結合に同じ効率性および特異性を有することを確認するため、以下の実験を行った。
【0181】
74−mCD20および対照のMl−mCD20(4複製のmCD20に連結された抗MUCl抗体hPAM4を含む)を使用する。結合分析を以下のように行った。手短にいうと、ZENON(商標)ALEXA FLUOR(登録商標)488ヒトIgG標識キット(INVITROGEN(登録商標))を用い、製造者の説明書に従って15μgの74−mCD20またはMl−mCD20を標識する。標識した調製物を、以下に説明するようにヒトPBMCを染色するために使用する。
【0182】
FICOLL−PAQUE(商標)を使用してバフィーコートから単離したヒトPBMCを、ヒトFcR遮断試薬(Miltenyi Biotec,1:20希釈)を用い、4℃で10分間処置する。特異的に標識したmAbを用いて洗浄した細胞を染色し、フローサイトメトリー(FACSCALIBUR(登録商標))により分析する。研究用に使用した、標識したmAbsは、FITC標識した抗CD74mAb ALEXA FLUOR(登録商標)488標識した74−mCD20;ALEXA FLUOR(登録商標)488標識したMl−mCD20;PE−抱合した抗CD19mAb(B細胞用);PE−抱合した抗CD14mAb(単球用);およびBDCA−Iに対するAPC−抱合したmAb(MDCl用)、BDCA−2(PDC用)、またはBDCA−3(MDC2用)を含む。B細胞、単球、MDC1、MDC2、およびPDCの同定にゲート戦略を使用する。平均蛍光強度
および表面マーカーを発現する陽性細胞集団について、FlowJoソフトウェアによりデータを分析した。
【0183】
MHCクラスIIの提示およびMHCクラスIの交差提示のさらなるプロセシングについて、74−mCD20がエンドソームに内在化するか確かめるため、以下の実験を行った。74−mCD20またはMl−mCD20をヒトPBMCと混合し、4℃で1時間インキュベートし、広範囲の洗浄を行う。次いで細胞を37℃まで移し、異なる時間点(0、15、30、または45分)で固定し、透過処理をするか、または処理せずにALEXA FLUOR(登録商標)標識した抗ヒトIgG二次的抗体を用いて染色する。フローサイトメトリーにより平均蛍光を測定し、さまざまな時間点において記録した固定細胞および透過性細胞(内在化および表面結合)から固定細胞(表面結合)中の平均蛍光を差し引いて、内在化した抗体の量を算出する。
【0184】
結果は、74−mCD20DNL複合体が、hLL1単独としてのAPCとの結合について同じ効率性および特異性を有することを示す。
【0185】
実施例10.74−mCD20によるInVivoにおけるhCD20特異的免疫反応の誘発
照射した新生仔Rag2−/−γc−/−マウスにCD34+ヒト臍帯血細胞(HLA A1健常ドナー)を肝内注射し、ヒトT細胞、B細胞、DC細胞を含む再構成させたヒト適応型免疫システム用の動物モデルを作製し、一次リンパ器官および二次リンパ器官を構築する(Huffら,J Clin Oncol.2008,26:2895−900;YangおよびChang,Cancer Invest.2008,26:741−55)。これらのマウスは、Hu−Rag2−/−γc−/−マウスと呼ばれる。
【0186】
74−mCD20により誘発された免疫反応を評価するため、in vivoにおけるDC成熟用のCpG(マウス毎に50μg)を併用するか、または併用せずに、74−mCD20またはMl−mCD20(マウス毎に50μg)を用いて、Rag2−/−γc−/−マウスに再構築させたヒトCD34+細胞を毎週3回免疫化させる。最後の免疫化から5日後、フローサイトメトリーを用いた細胞内サイトカイン染色により評価するようなサイトカイン(IFN−gamma)を産生させるため、各動物の脾細胞を単離し、HLA適合MM癌幹細胞を再刺激する。ターゲット細胞としてのMM癌幹細胞を用いたカルセインAM遊離分析により、MM癌幹細胞に対抗する特異的細胞毒性評価する。電磁ビーズを使用して、MM細胞株RPMI18226からCD20+MM癌幹細胞を単離する。アルデヒド脱水素酵素を用いた染色により幹細胞特性を検証する。結果は、74−mCD20がin vivoにおいて抗hCD20特異的免疫反応を誘発することができることを示す。
【0187】
実施例11.MM癌幹細胞に対抗する74−mCD20の治療可能性:In VivoにおけるhPBMC/NOD/SCIDマウスモデルまたは養子移入の評価
74−mCD20の治療効果をin vivoにおいて評価する最善の方法は、MM増殖およびヒト適応型免疫システムの発生の両方を支援できるように動物モデルを免疫化することである。ヒトCD34+細胞により再構築したRag2−/−γc−/−マウスは、MM増殖を支援しないという免疫性に優れているので、MM幹細胞に対抗する74−mCD20の治療効果を試験するためにhPBMC/NOD/SCIDマウスモデルを使用する。NOD/SCIDマウスは、Matsuiらにより、クローン性の多発性骨髄腫幹細胞を移植するために使用されてきた(Blood 2004,103:2332−6;CancerRes 2008,68:190−7)。
【0188】
NOD/SCIDマウスは、腫瘍細胞およびhPBMCの共移植により、治療効果を評価するためにも使用される。注入する細胞数を注意深く調節することにより、このモデルは腫瘍増殖およびhPBMC移植の両方を支援することができ、in vivoにおいてDC−SIGNを標的とするワクチンの効果を試験するために使用されてきた。
【0189】
4週〜6週齢のメスのNOD/SCIDマウス(Jackson Laboratories,Barr Harbor,Maine)を300cGy(137Cs gamma照射器を使用して、84cGy/分)で照射する。12〜16時間後、背部の尾静脈から局在化したCD20+MM癌幹細胞(200万)を注入する。一方、ヒトPBMC(300万)、未熟DC(3万)、およびDNLワクチンの混合物をマウスの皮下に注入する。特定の時間点(日)に、マウスを安楽死させ、長管骨から骨髄を採取し、ヒトCD138+MM細胞の染色により移植および治療効果を測定した。
【0190】
74−mCD20の治療可能性をさらに評価するためMM幹細胞に対抗する、ワクチンにより誘発した細胞毒性を試験するため、養子導入による代替的な方法を使用した。先に説明したように、74−mCD20を用いてヒトCD34+細胞により再構築したRag2−/−γc−/−マウスを免疫化する。脾細胞を採取し、CD20+MM癌幹細胞を移植したNOD/SCIDマウスに尾静脈から注入する。特定の時間点(日)に、マウスを安楽死させ、長管骨から骨髄を採取し、ヒトCD138+MM細胞の染色により移植および治療効果を測定した。結果によれば、74−mCD20は、in vivoにおいてCD20+MM幹細胞に対抗する免疫反応を誘発することができることが確認される。
【0191】
実施例12.DDD2−mPAPおよびDNLワクチン複合体の生成
【0192】
実施例4の方法に従い、マウス前立腺酸性ホスファターゼからDDD2抱合したPAP異種抗原を生成させる。PAP異種抗原を用いた樹状細胞に基づくワクチン接種の効果は、既に開示されている(Fongら,J Immunol 2001,167:7150−56)。実施例4に説明したようにDDD2−mPAP−pdHL2発現ベクターを構築し、実施例4に従い、細胞培養中にDDD2−mPAP異種抗原融合タンパク質を発現させる。マウス前立腺酸性ホスファターゼ配列は、例えば、NCBIデータベースの登録番号AAF23171に開示されている。実施例4に説明したように、免疫金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によりDDD2−mPAP−6ヒスチジン融合タンパク質を発現させ、精製する。
【0193】
実施例5の方法に従って、複製のCH3−AD2−IgG−hLL1(抗CD74)および4複製のDDD2−mPAPを含むDNLコンストラクトを調製する。hLL1IgG部分はhLL1 IgGの各重鎖のC末端に付着されたAD2配列を含む。DNL反応は、1mMの還元グルタチオンを含んだPBSで、hLL1 IgG−AD2およびDDD2−mPAPを混合させることにより行った。翌日、2mMの最終濃度に酸化型グルタチオンを添加し、24時間後、タンパク質Aカラム上で反応混合物を精製する。2複製のDDD2−mPAPを各AD2部分に付着させ、1つのhLL1 IgG部分および4つのmPAP異種抗原部分を含むDNL複合体が生じる。
【0194】
前立腺癌誘発を伴う対象にDNLワクチン抗CD74−mPAPを投与することにより、前立腺癌幹細胞性を発現するPAPに対抗する免疫反応を誘発する。免疫反応は、対象の前立腺癌細胞を減少または排除するのに効果的である。
【0195】
実施例13.DDD2−mEGFRおよびDNLワクチン複合体の生成
実施例4の方法に従って、マウスEGFRからDDD2抱合したEGFR異種抗原を生成する。体液性免疫反応の誘発時におけるEGFR異種抗原の効果は、既に開示されている(Fangら,Int J Mol Med 2009,23:181−88)。マウスEGFRの細胞外ドメインを含むDDD2−mEGFR−pdHL2発現ベクターは、実施例4で説明したように構築し、DDD2−mEGFR異種抗原の融合は、実施例4に従い、細胞培養にてタンパク質を発現させる。マウスEGFR配列は、例えば、NCBIデータベースにて、登録番号AAG43241で開示されている。DDD2−mEGFR−6ヒスチジンを融合タンパク質を発現させ、実施例4で説明した免疫金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)により精製する。
【0196】
実施例5の方法に従い、1複製のCH3−AD2−IgG−hLL1(抗CD74)および4複製のDDD2−mEGFRを含むDNLコンストラクトを調製する。hLL1IgG部分は、hLL1 IgGの各重鎖のC末端に付着されたAD2配列を含む。DNL反応は、1mMの還元型グルタチオンを含むPBS中にてhLL1 IgG−AD2およびDDD2−mEGFRを混合させることにより行われる。翌日、2mMの最終濃度および反応混合物に添加した酸化型グルタチオンを、24時間後、タンパク質Aカラム上で精製させる。2複製のDDD2−mEGFRを各AD2部分に付着させ、結果として1つのhLL1 IgG部分および4つのmEGFR異種抗原部分を含むDNL複合体が生じる。
【0197】
EGFRを発現するNSCLCを伴う対象にDNLワクチン抗CD74−mEGFRを投与することにより、EGFRを発現する癌幹細胞に対抗する免疫反応を誘発する。免疫反応は、対象のEGFR陽性癌細胞を減少または除去するのに効果的である。
【0198】
技術者であれば、種々様々な腫瘍関連抗原に対応する異種抗原部分を組み込む、DNLに基づいたワクチンが、本明細で開示した技術に従って構築され、利用されてよいことを理解するだろう。
【0199】
本明細書で開示し、請求したあらゆる組成物および方法は、本開示を鑑みると必要以上の実験無しに作製し、使用することができる。組成物および方法は、好ましい実施形態の観点から説明したが、当業者であれば、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱すること無く、本明細書で説明した組成物および方法に対し、かつ方法の工程または工程の順序において、その変形を適用し得ることが明らかである。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連する特定の薬剤は、同一または類似する結果を達成させながら、本明細書で説明した薬剤と置換されてよい。当業者には明らかな、そのように類似するあらゆる置換および修飾は、付属する請求の範囲により定義するように、本発明の精神、範囲、および概念内にあるとみなされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)DDD(二量化およびドッキングドメイン)部分に付着され、前記DDD部分がプロテインキナーゼAの二量化およびドッキングドメイン由来のペプチド配列を有する、樹状細胞に結合する抗体部分と、
b)AKAP(Aキナーゼアンカータンパク質)のアンカードメイン由来のペプチド配列を有する、AD(アンカードメイン)部分に付着された異種抗原部分とを備え、
前記DDD部分が、DNL複合体を形成するために、前記AD部分に結合する二量体を形成するDNL(ドック・ロック)抗癌ワクチン用複合体。
【請求項2】
前記抗体部分が、抗CD74抗体またはそれらの抗原結合性フラグメントである請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項3】
前記異種抗原が、炭酸脱水酵素IX、αフェトプロテイン、α−アクチニン−4、A3、A33抗体に特異的な抗原、ART−4、B7、Ba 733、BAGE、BrE3−抗原、CA125、CAMEL、CAP−1、CASP−8/m、CCCL19、CCCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a−e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、CDK−4/m、CDKN2A、大腸特異的抗原−p(CSAp)、CEA(CEACAM5)、CEACAM6、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP−1、EGP−2、ELF2−M、Ep−CAM、Flt−1、Flt−3、葉酸受容体、G250抗原、GAGE、gp100、GROB、HLA−DR、HM1.24、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)およびそのサブユニット、HER2/neu、HMGB−1、低酸素誘導因子(HIF−I)、HSP70−2M、HST−2、Ia、IGF−IR、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、IL−2、IL−4R、IL−6R、IL−13R、IL−15R、IL−17R、IL−18R、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−17、IL−18、IL−25、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、KC4−抗原、KS−1−抗原、KS1−4、Le−Y、LDR/FUT、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、MAGE、MAGE−3、MART−1、MART−2、NY−ESO−1、TRAG−3、mCRP、MCP−1、MIP−1A、MIP−1B、MIF、MUCl、MUC2、MUC3、MUC4、MUM−1/2、MUM−3、NCA66、NCA95、NCA90、PAM−4抗体に特異的な抗原、胎盤増殖因子、p53、前立腺酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、PlGF、ILGF、ILGF−IR、IL−6、IL−25、RS5、RANTES、T101、SAGE、S100、サバイビン、サバイビン−2B、TAC、TAG−72、テネシン、TRAIL受容体、TNF−α、Tn抗原、Thomson−Friedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、VEGFR、ED−Bフィブロネクチン、WT−1、17−lA−抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管新生マーカー、bcl−2、bcl−6、Kras、cMET、癌遺伝子マーカー、および癌遺伝子産物から成る群から選択される請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項4】
前記異種抗原が、CD20である請求項2に記載のDNL複合体。
【請求項5】
前記DDD部分および前記AD部分の間に、さらにジスフィルド結合を含む請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項6】
前記DDD部分が、配列番号11および配列番号10から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項7】
前記DDD部分が、配列番号11のアミノ酸配列を含む請求項6に記載のDNL複合体。
【請求項8】
前記AD部分が、配列番号13、配列番号12、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、および配列番号28から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項9】
前記AD部分が、配列番号13の前記アミノ酸配列を含む請求項8に記載のDNL複合体。
【請求項10】
前記抗体部分が、IgG抗体および抗原結合抗体フラグメントから成る群から選択される請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項11】
前記抗体部分が、軽鎖可変の相補性決定領域(CDR)配列CDR1(RSSQSLVHRNGNTYLH;配列番号1)、CDR2(TVSNRFS;配列番号2)、およびCDR3(SQSSHVPPT;配列番号3)、並びに重鎖可変領域CDR配列CDR1(NYGVN;配列番号4)、CDR2(WINPNTGEPTFDDDFKG;配列番号:5)、およびCDR3(SRGKNEAWFAY;配列番号6)を含むヒト化またはキメラのLL1抗CD74抗体もしくはそれらの抗原結合性フラグメントである、請求項10に記載のDNL複合体。
【請求項12】
前記CD20異種抗原部分が、前記配列番号:7のアミノ酸配列を含む請求項4に記載のDNL複合体。
【請求項13】
DDD部分に付着された前記抗CD74抗体部分が第1融合タンパク質を形成し、AD部分に付着された前記CD20異種抗原が第2融合タンパク質を形成する請求項4に記載のDNL複合体。
【請求項14】
前記DNL複合体が、CD138negCD20+MM幹細胞に対抗する免疫反応を誘発することができる、抗癌ワクチンに使用される請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項15】
前記抗体部分が、CD209(DC−SIGN)、CD34、CD74、CD205、TLR2(toll様受容体2)、TLR4、TLR7、TLR9、BDCA−2、BDCA−3、BDCA−4、およびHLA−DRから成る群から選択される抗原に結合する請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項16】
c)AD部分に付着され、前記AD部分がAKAP(Aキナーゼアンカータンパク質)のアンカードメイン由来のペプチド配列を有する、樹状細胞に結合する抗体部分と、
d)プロテインキナーゼAの二量化およびドッキングドメインに由来するペプチド配列を有するDDD部分に付着される異種抗原部分とを含み、
前記DDD部分が前記DNL複合体を形成するように前記AD部分に結合する二量体を形成する、DNL抗癌ワクチン用の複合体。
【請求項17】
前記抗体部分の各重鎖がそのC末端にてAD部分に付着され、前記複合体が1つの抗体部分および4つの異種抗原部分を含む請求項16に記載のDNL複合体。
【請求項18】
前記抗体部分が、CD209(DC−SIGN)、CD34、CD74、CD205、TLR2(toll様受容体2)、TLR4、TLR7、TLR9、BDCA−2、BDCA−3、BDCA−4、およびHLA−DRから成る群から選択される抗原に結合する請求項16に記載のDNL複合体。
【請求項19】
前記抗体部分が、CD74に結合する請求項16に記載のDNL複合体。
【請求項20】
前記抗体部分が、軽鎖可変の相補性決定領域(CDR)配列CDR1(RSSQSLVHRNGNTYLH;配列番号1)、CDR2(TVSNRFS;配列番号2)、およびCDR3(SQSSHVPPT;配列番号3)、並びに重鎖可変領域CDR配列CDR1(NYGVN;配列番号4)、CDR2(WINPNTGEPTFDDDFKG;配列番号:5)、およびCDR3(SRGKNEAWFAY;配列番号6)を含むヒト化またはキメラのLL1抗CD74抗体もしくはそれらの抗原結合性フラグメントである請求項19に記載のDNL複合体。
【請求項21】
前記異種抗原が、炭酸脱水酵素IX、αフェトプロテイン、α−アクチニン−4、A3、A33抗体に特異的な抗原、ART−4、B7、Ba 733、BAGE、BrE3−抗原、CA125、CAMEL、CAP−1、CASP−8/m、CCCL19、CCCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a−e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、CDK−4/m、CDKN2A、大腸特異的抗原−p(CSAp)、CEA(CEACAM5)、CEACAM6、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP−1、EGP−2、ELF2−M、Ep−CAM、Flt−1、Flt−3、葉酸受容体、G250抗原、GAGE、gp100、GROB、HLA−DR、HM1.24、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)およびそのサブユニット、HER2/neu、HMGB−1、低酸素誘導因子(HIF−1)、HSP70−2M、HST−2、Ia、IGF−1R、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、IL−2、IL−4R、IL−6R、IL−13R、IL−15R、IL−17R、IL−18R、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−17、IL−18、IL−25、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、KC4−抗原、KS−1−抗原、KS1−4、Le−Y、LDR/FUT、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、MAGE、MAGE−3、MART−1、MART−2、NY−ESO−1、TRAG−3、mCRP、MCP−1、MIP−1A、MIP−1B、MIF、MUCl、MUC2、MUC3、MUC4、MUM−1/2、MUM−3、NCA66、NCA95、NCA90、PAM−4抗体に特異的な抗原、胎盤増殖因子、p53、前立腺酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、PlGF、ILGF、ILGF−IR、IL−6、IL−25、RS5、RANTES、T101、SAGE、S100、サバイビン、サバイビン−2B、TAC、TAG−72、テネシン、TRAIL受容体、TNFα、Tn抗原、Thomson−Friedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、VEGFR、ED−Bフィブロネクチン、WT−1、17−lA−抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管新生マーカー、bcl−2、bcl−6、Kras、cMET、癌遺伝子マーカー、および癌遺伝子産物から成る群から選択される請求項16に記載のDNL複合体。
【請求項22】
前記異種抗原が、CD20である請求項16に記載のDNL複合体。
【請求項23】
癌を治療する方法であって、
a)請求項1に係る抗癌ワクチン用のDNL複合体を獲得することと、
b)癌を伴う対象に前記複合体を投与することとを含む方法。
【請求項24】
前記癌が、上皮癌、間葉性癌、血液性癌、神経性癌、細胞腫、メラノーマ、肉腫、神経芽細胞腫、白血病、リンパ腫、神経膠腫、およびミエローマから成る群から選択される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記異種抗原がCD20であり、前記抗体部分が抗CD74抗体またはその抗原結合性フラグメントである請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記癌が、B細胞癌である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記癌が、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、びまん性B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫から成る群から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記癌が、多発性骨髄腫である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象に1つ以上の治療薬を投与することをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記治療薬が、前記抗癌ワクチン用のDNL複合体の前か同時的に、前記対象に投与される請求項39に記載の方法。
【請求項31】
前記治療薬が、前記抗癌ワクチン用のDNL複合体に付加される請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記治療薬が、放射性核種、免疫調節剤、抗血管新生薬、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ホルモン、薬物、プロドラッグ、酵素、オリゴヌクレオチド、siRNA、アポトーシス促進剤、光活動性治療薬、細胞毒薬物、化学療法剤、毒素、他の抗体およびそれらの抗原結合性フラグメントから成る群から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記薬物が、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、ゲムシタビン、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、白金配位化合物、ビンカアルカロイド、置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモンアンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、SN−38、ドキソルビシンおよびそれらの類似体、代謝拮抗剤、アルキル化剤、有糸分裂阻害薬、抗血管新生薬、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP90)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、HDAC阻害剤、アポトーシス促進剤、メトトレキサート、およびCPT−11から成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記毒素が、リシン、アブリン、α毒素、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNase)、デオキシリボヌクレアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素、および緑膿菌内毒素から成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記放射性核種が、111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、152Dy、166Dy、161Ho、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Au、211Pb、58Co、80mBr、99mTc、103mRh、109Pt、119Sb、189mOs、192Ir、219Rn、215Po、221Fr、217At、255Fm、11C、13N、15O、75Br、224Ac、126I、133I、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、197Pt、143Pr、57Co、51Cr、75Se、201Tl、76Br、および169Ybから成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記酵素が、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、δ−V−ステロイド異性化酵素、酵母アルコール脱水素酵素、αグリセロリン酸脱水素酵素、トリオースリン酸異性化酵素、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコース酸化酵素、βガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼから成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記免疫調節剤が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、および「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子から成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記サイトカインが、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、副甲状腺、チロキシン、インスリン、プロインスリン、レラキシン、プロレラキシン、糖タンパク質卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体化ホルモン(LH)、胎盤増殖因子(PIGF)、幹細胞増殖因子、プロスタグランジン、線維芽細胞増殖因子、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質、腫瘍壊死因子−α、腫瘍壊死因子β、ミュラー管抑制因子、マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、NGFβ、血小板増殖因子、TGF−α、TGF−β、インスリン様増殖因子−I、インスリン様増殖因子−II、エリスロポエチン(EPO)、骨誘導性因子、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、IL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−21、IL−25、LIF、FLT−3、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、TNF−α、およびLTから成る群から選択される請求項37に記載の方法。
【請求項39】
CD138negCD20+MM幹細胞に対抗する免疫反応を誘発することをさらに含む請求項28に記載の方法。
【請求項40】
CD138negCD20+MM幹細胞のアポトーシスを誘発することをさらに含む請求項28に記載の方法。
【請求項41】
前記投与が、MM幹細胞を阻害または根絶するのに効果的である請求項28に記載の方法。
【請求項42】
癌を治療する方法であって、
a)請求項16に係る抗癌ワクチン用のDNL複合体を獲得することと、
b)癌を伴う患者に前記複合体を投与することとを含む方法。
【請求項1】
a)DDD(二量化およびドッキングドメイン)部分に付着され、前記DDD部分がプロテインキナーゼAの二量化およびドッキングドメイン由来のペプチド配列を有する、樹状細胞に結合する抗体部分と、
b)AKAP(Aキナーゼアンカータンパク質)のアンカードメイン由来のペプチド配列を有する、AD(アンカードメイン)部分に付着された異種抗原部分とを備え、
前記DDD部分が、DNL複合体を形成するために、前記AD部分に結合する二量体を形成するDNL(ドック・ロック)抗癌ワクチン用複合体。
【請求項2】
前記抗体部分が、抗CD74抗体またはそれらの抗原結合性フラグメントである請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項3】
前記異種抗原が、炭酸脱水酵素IX、αフェトプロテイン、α−アクチニン−4、A3、A33抗体に特異的な抗原、ART−4、B7、Ba 733、BAGE、BrE3−抗原、CA125、CAMEL、CAP−1、CASP−8/m、CCCL19、CCCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a−e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、CDK−4/m、CDKN2A、大腸特異的抗原−p(CSAp)、CEA(CEACAM5)、CEACAM6、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP−1、EGP−2、ELF2−M、Ep−CAM、Flt−1、Flt−3、葉酸受容体、G250抗原、GAGE、gp100、GROB、HLA−DR、HM1.24、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)およびそのサブユニット、HER2/neu、HMGB−1、低酸素誘導因子(HIF−I)、HSP70−2M、HST−2、Ia、IGF−IR、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、IL−2、IL−4R、IL−6R、IL−13R、IL−15R、IL−17R、IL−18R、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−17、IL−18、IL−25、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、KC4−抗原、KS−1−抗原、KS1−4、Le−Y、LDR/FUT、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、MAGE、MAGE−3、MART−1、MART−2、NY−ESO−1、TRAG−3、mCRP、MCP−1、MIP−1A、MIP−1B、MIF、MUCl、MUC2、MUC3、MUC4、MUM−1/2、MUM−3、NCA66、NCA95、NCA90、PAM−4抗体に特異的な抗原、胎盤増殖因子、p53、前立腺酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、PlGF、ILGF、ILGF−IR、IL−6、IL−25、RS5、RANTES、T101、SAGE、S100、サバイビン、サバイビン−2B、TAC、TAG−72、テネシン、TRAIL受容体、TNF−α、Tn抗原、Thomson−Friedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、VEGFR、ED−Bフィブロネクチン、WT−1、17−lA−抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管新生マーカー、bcl−2、bcl−6、Kras、cMET、癌遺伝子マーカー、および癌遺伝子産物から成る群から選択される請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項4】
前記異種抗原が、CD20である請求項2に記載のDNL複合体。
【請求項5】
前記DDD部分および前記AD部分の間に、さらにジスフィルド結合を含む請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項6】
前記DDD部分が、配列番号11および配列番号10から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項7】
前記DDD部分が、配列番号11のアミノ酸配列を含む請求項6に記載のDNL複合体。
【請求項8】
前記AD部分が、配列番号13、配列番号12、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、および配列番号28から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項9】
前記AD部分が、配列番号13の前記アミノ酸配列を含む請求項8に記載のDNL複合体。
【請求項10】
前記抗体部分が、IgG抗体および抗原結合抗体フラグメントから成る群から選択される請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項11】
前記抗体部分が、軽鎖可変の相補性決定領域(CDR)配列CDR1(RSSQSLVHRNGNTYLH;配列番号1)、CDR2(TVSNRFS;配列番号2)、およびCDR3(SQSSHVPPT;配列番号3)、並びに重鎖可変領域CDR配列CDR1(NYGVN;配列番号4)、CDR2(WINPNTGEPTFDDDFKG;配列番号:5)、およびCDR3(SRGKNEAWFAY;配列番号6)を含むヒト化またはキメラのLL1抗CD74抗体もしくはそれらの抗原結合性フラグメントである、請求項10に記載のDNL複合体。
【請求項12】
前記CD20異種抗原部分が、前記配列番号:7のアミノ酸配列を含む請求項4に記載のDNL複合体。
【請求項13】
DDD部分に付着された前記抗CD74抗体部分が第1融合タンパク質を形成し、AD部分に付着された前記CD20異種抗原が第2融合タンパク質を形成する請求項4に記載のDNL複合体。
【請求項14】
前記DNL複合体が、CD138negCD20+MM幹細胞に対抗する免疫反応を誘発することができる、抗癌ワクチンに使用される請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項15】
前記抗体部分が、CD209(DC−SIGN)、CD34、CD74、CD205、TLR2(toll様受容体2)、TLR4、TLR7、TLR9、BDCA−2、BDCA−3、BDCA−4、およびHLA−DRから成る群から選択される抗原に結合する請求項1に記載のDNL複合体。
【請求項16】
c)AD部分に付着され、前記AD部分がAKAP(Aキナーゼアンカータンパク質)のアンカードメイン由来のペプチド配列を有する、樹状細胞に結合する抗体部分と、
d)プロテインキナーゼAの二量化およびドッキングドメインに由来するペプチド配列を有するDDD部分に付着される異種抗原部分とを含み、
前記DDD部分が前記DNL複合体を形成するように前記AD部分に結合する二量体を形成する、DNL抗癌ワクチン用の複合体。
【請求項17】
前記抗体部分の各重鎖がそのC末端にてAD部分に付着され、前記複合体が1つの抗体部分および4つの異種抗原部分を含む請求項16に記載のDNL複合体。
【請求項18】
前記抗体部分が、CD209(DC−SIGN)、CD34、CD74、CD205、TLR2(toll様受容体2)、TLR4、TLR7、TLR9、BDCA−2、BDCA−3、BDCA−4、およびHLA−DRから成る群から選択される抗原に結合する請求項16に記載のDNL複合体。
【請求項19】
前記抗体部分が、CD74に結合する請求項16に記載のDNL複合体。
【請求項20】
前記抗体部分が、軽鎖可変の相補性決定領域(CDR)配列CDR1(RSSQSLVHRNGNTYLH;配列番号1)、CDR2(TVSNRFS;配列番号2)、およびCDR3(SQSSHVPPT;配列番号3)、並びに重鎖可変領域CDR配列CDR1(NYGVN;配列番号4)、CDR2(WINPNTGEPTFDDDFKG;配列番号:5)、およびCDR3(SRGKNEAWFAY;配列番号6)を含むヒト化またはキメラのLL1抗CD74抗体もしくはそれらの抗原結合性フラグメントである請求項19に記載のDNL複合体。
【請求項21】
前記異種抗原が、炭酸脱水酵素IX、αフェトプロテイン、α−アクチニン−4、A3、A33抗体に特異的な抗原、ART−4、B7、Ba 733、BAGE、BrE3−抗原、CA125、CAMEL、CAP−1、CASP−8/m、CCCL19、CCCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a−e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、CDK−4/m、CDKN2A、大腸特異的抗原−p(CSAp)、CEA(CEACAM5)、CEACAM6、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP−1、EGP−2、ELF2−M、Ep−CAM、Flt−1、Flt−3、葉酸受容体、G250抗原、GAGE、gp100、GROB、HLA−DR、HM1.24、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)およびそのサブユニット、HER2/neu、HMGB−1、低酸素誘導因子(HIF−1)、HSP70−2M、HST−2、Ia、IGF−1R、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、IL−2、IL−4R、IL−6R、IL−13R、IL−15R、IL−17R、IL−18R、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−17、IL−18、IL−25、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、KC4−抗原、KS−1−抗原、KS1−4、Le−Y、LDR/FUT、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、MAGE、MAGE−3、MART−1、MART−2、NY−ESO−1、TRAG−3、mCRP、MCP−1、MIP−1A、MIP−1B、MIF、MUCl、MUC2、MUC3、MUC4、MUM−1/2、MUM−3、NCA66、NCA95、NCA90、PAM−4抗体に特異的な抗原、胎盤増殖因子、p53、前立腺酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、PlGF、ILGF、ILGF−IR、IL−6、IL−25、RS5、RANTES、T101、SAGE、S100、サバイビン、サバイビン−2B、TAC、TAG−72、テネシン、TRAIL受容体、TNFα、Tn抗原、Thomson−Friedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、VEGFR、ED−Bフィブロネクチン、WT−1、17−lA−抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管新生マーカー、bcl−2、bcl−6、Kras、cMET、癌遺伝子マーカー、および癌遺伝子産物から成る群から選択される請求項16に記載のDNL複合体。
【請求項22】
前記異種抗原が、CD20である請求項16に記載のDNL複合体。
【請求項23】
癌を治療する方法であって、
a)請求項1に係る抗癌ワクチン用のDNL複合体を獲得することと、
b)癌を伴う対象に前記複合体を投与することとを含む方法。
【請求項24】
前記癌が、上皮癌、間葉性癌、血液性癌、神経性癌、細胞腫、メラノーマ、肉腫、神経芽細胞腫、白血病、リンパ腫、神経膠腫、およびミエローマから成る群から選択される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記異種抗原がCD20であり、前記抗体部分が抗CD74抗体またはその抗原結合性フラグメントである請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記癌が、B細胞癌である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記癌が、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、びまん性B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫から成る群から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記癌が、多発性骨髄腫である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象に1つ以上の治療薬を投与することをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記治療薬が、前記抗癌ワクチン用のDNL複合体の前か同時的に、前記対象に投与される請求項39に記載の方法。
【請求項31】
前記治療薬が、前記抗癌ワクチン用のDNL複合体に付加される請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記治療薬が、放射性核種、免疫調節剤、抗血管新生薬、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ホルモン、薬物、プロドラッグ、酵素、オリゴヌクレオチド、siRNA、アポトーシス促進剤、光活動性治療薬、細胞毒薬物、化学療法剤、毒素、他の抗体およびそれらの抗原結合性フラグメントから成る群から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記薬物が、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、ゲムシタビン、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、白金配位化合物、ビンカアルカロイド、置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモンアンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、SN−38、ドキソルビシンおよびそれらの類似体、代謝拮抗剤、アルキル化剤、有糸分裂阻害薬、抗血管新生薬、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP90)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、HDAC阻害剤、アポトーシス促進剤、メトトレキサート、およびCPT−11から成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記毒素が、リシン、アブリン、α毒素、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNase)、デオキシリボヌクレアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素、および緑膿菌内毒素から成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記放射性核種が、111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、152Dy、166Dy、161Ho、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Au、211Pb、58Co、80mBr、99mTc、103mRh、109Pt、119Sb、189mOs、192Ir、219Rn、215Po、221Fr、217At、255Fm、11C、13N、15O、75Br、224Ac、126I、133I、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、197Pt、143Pr、57Co、51Cr、75Se、201Tl、76Br、および169Ybから成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記酵素が、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、δ−V−ステロイド異性化酵素、酵母アルコール脱水素酵素、αグリセロリン酸脱水素酵素、トリオースリン酸異性化酵素、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコース酸化酵素、βガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼから成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記免疫調節剤が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、および「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子から成る群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記サイトカインが、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、副甲状腺、チロキシン、インスリン、プロインスリン、レラキシン、プロレラキシン、糖タンパク質卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体化ホルモン(LH)、胎盤増殖因子(PIGF)、幹細胞増殖因子、プロスタグランジン、線維芽細胞増殖因子、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質、腫瘍壊死因子−α、腫瘍壊死因子β、ミュラー管抑制因子、マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、NGFβ、血小板増殖因子、TGF−α、TGF−β、インスリン様増殖因子−I、インスリン様増殖因子−II、エリスロポエチン(EPO)、骨誘導性因子、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、IL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−21、IL−25、LIF、FLT−3、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、TNF−α、およびLTから成る群から選択される請求項37に記載の方法。
【請求項39】
CD138negCD20+MM幹細胞に対抗する免疫反応を誘発することをさらに含む請求項28に記載の方法。
【請求項40】
CD138negCD20+MM幹細胞のアポトーシスを誘発することをさらに含む請求項28に記載の方法。
【請求項41】
前記投与が、MM幹細胞を阻害または根絶するのに効果的である請求項28に記載の方法。
【請求項42】
癌を治療する方法であって、
a)請求項16に係る抗癌ワクチン用のDNL複合体を獲得することと、
b)癌を伴う患者に前記複合体を投与することとを含む方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5A1】
【図5A2】
【図5B】
【図5B1】
【図5B2】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5A1】
【図5A2】
【図5B】
【図5B1】
【図5B2】
【公表番号】特表2012−500286(P2012−500286A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523987(P2011−523987)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/054441
【国際公開番号】WO2010/022225
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(510116495)アイビーシー ファーマスーティカルズ,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/054441
【国際公開番号】WO2010/022225
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(510116495)アイビーシー ファーマスーティカルズ,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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