説明

癌治療

本発明は、カプセル化したオキサリプラチンを含むリポソーム、及び、カプセル化したオキサリプラチンを製造する方法に関する。本発明は、オキサリプラチンおよび別の抗癌剤を含む リポソームに関する。本発明のリポソームは、癌の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル化されたオキサリプラチン及びカプセル化されたオキサリプラチンを製造する方法に関する。オキサリプラチンリポソームは、ヒト及び動物の様々な腫瘍において殺癌細胞のために使用することができる。本発明は、また、オキサリプラチン及び別の抗癌剤を含むリポソームに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫療法、ワクチン、血管新生阻害剤、テロメレース阻害剤、アポトシス誘導剤、シグナルトランスダクション療法、遺伝子治療及び癌に対する多くのターゲット療法は、癌との戦いにおいて期待できる武器であるが、臨床応用でそれらの効果が示されているわけではない。癌研究は、大規模な投資の下に行われているが、未だ、4種の主要な腫瘍(乳癌、肺癌、直腸結腸癌、及び、前立腺癌)で、5年相対生存率は、過去25年間で大きく変わっていない。同一個体間での腫瘍の不均一性は、ターゲット療法の失敗の原因の一部である(Miklos、2005)。それゆえ、古典的な化学療法とホルモン療法(乳癌及び前立腺癌)が、放射線、外科的介入と共に、依然として非常に多くの癌患者の主な治療となっている。
【0003】
しかしながら、以前から存在する化学療法剤のデリバリとターゲッティングのナノテクノロジを用いた改良は、改善された治療を提供する。オキサリプラチンは、分子式C14Ptであって、化学名が、シス−[(1R,2R)−1,2−シクロヘキサンジアミン−N,N][オキサレイト(2−)−OO]白金である。その化学構造は、下記に示す。
【化1】

【0004】
癌治療におけるオキサリプラチンは、特定の直腸結腸癌における癌の管理に進歩をもたらした。オキサリプラチンの成功は、DNA損傷を誘導する能力にあって、その結果、大きな生成物における鎖間架橋と同様、鎖内架橋をもたらす(Takahara等)のみならず、アポトーシスをも引き起こし得る(Boulikas及びVougiouka、2003)。オキサリプラチンの白金原子は、2つの隣接するグアノシン残基の間を1,2−鎖間架橋を形成し、二重らせん構造を主溝の方向へ約30度曲げる。オキサリプラチンは、本薬剤の最終的に細胞毒性をもつ代謝物に維持されている非加水分解性のジアミノシクロヘキサン(DACH)キャリアリガンドを有している。DNAおよび他の大分子とのその反応は、DACH白金モノ付加物を放つオキサレート(蓚酸エステル)の1つ又は両方のカルボキシエステル基の加水分解により進行するか、又は、二官能性のDACH−白金付加物架橋により進行する。DACH−白金付加物の固有の化学的及び立体的な特性は、シスプラチンとの交叉耐性がないことに起因するようである(Francesco等、2002)。オキサリプラチンのアルカリ加水分解は、オキサレート単座の錯体を形成し(pKa7.23)また、2つの連続した工程により2水和物オキサリプラチン錯体を形成する。単座中間体は内因性化合物と急速に反応するようである(Jerremalm等、2003)。5’−d(CCTCTGGTCTCC)の配列をもつDNA12量体二本鎖に結合したオキサリプラチンの結晶構造が報告されている;つまり、白金原子が、2つの隣接するグアノシン残基間で1,2−細胞間架橋を形成し、主溝の方向に約30度の二重らせん構造の曲げをもたらしている。結晶学は、オキサリプラチンと二重らせんDNA構造間の相互作用を介するキラリティの重要性のための構造上の証拠を提供した(Springer等,2001)。
【0005】
しかしながら、その利点にもかかわらず、オキサリプラチンの使用は、神経毒性、血液毒性、及び、胃腸管毒性を含む副作用のユニークなパターンを伴っている。患者には、グレード3/4の好中球減少の重篤なリスクがある。悪心と嘔吐は、通常、穏やか〜中程度である。腎毒性は、軽く、水和無しにオキサリプラチンの投与が許される。ときには、腎尿細管壊死のような重篤な副作用がみられる。
【0006】
さらに、オキサリプラチンに対する細胞の抵抗性が観られる、これは、遊離オキサリプラチンの潜在的な効力を妨げるものである。抵抗性は優位性をもつ1つの腫瘍細胞が、クローン的に拡大増殖して、オキサリプラチン存在下でも増殖することができる腫瘍細胞に発展する。患者の腫瘍中でオキサリプラチンに対する抵抗性の発展を説明する幾つかのメカニズムが提案されている:
1.抵抗性細胞は、細胞膜を通って、オキサリプラチンの輸送を制限する機構が発達しており、したがって、薬剤の細胞内レベルが制限される。これは、腫瘍細胞によるオキサリプラチンへの抵抗性を獲得する最も重要な機構である。本明細書に記載したオキサリプラチンのリポソームのカプセル化は、オキサリプラチンへの抵抗性のこの機構を回避する。それは、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン製剤における融合脂質DPPGのためであり、また、正常細胞より腫瘍細胞をよりむさぼって貪食するナノ粒子サイズの薬剤(平均100nm)のためである。
2.抵抗性細胞は、オキサリプラチンを無毒化するグルタチオン、メタロチオネイン、又は、他の物質が高濃度である。
3.抵抗性細胞は、オキサリプラチンによる障害後のDNA損傷に対し、より速い修復が発達している。
4.抵抗性に関する他の機構が提案されている、その機構は、ミトコンドリアのシグナル伝達に関連するか、或いは、損傷を受けた細胞がアポトーシス(細胞死)を受けるか、又は、損傷の修復を受けるかを決定する役割をもつ核内のアポトーシス経路に関連する機構である:すなわち、腫瘍クローン(染色体の転移及び他の染色体異常をもたらす染色体の切断部位)の表現型をさらに変化させ得るDNAレベルでの突然変異が蓄積された結果をもたらすであろう損傷を修復する決定である。
【0007】
遊離薬剤オキサリプラチンの投与にとってより毒性が少なく、かつ、有効性の改善されたものの開発が、主要な課題である。このような改善は、癌治療の問題の幾つかを解決することができよう。
【0008】
リポソームは、活性薬剤をカプセル化することのできるリン脂質2重層で構成された顕微鏡的なヴィークルである。リポソームでカプセル化されたシスプラチン[レグロン社(Regulon Inc.,)、Mountain View、CA、米国6,511,676]により販売されているリポレプチン(LipoplatinR(商標))は、患者への全身分布後、主要ターゲティングの期間中、シスプラチンの腎尿細管毒性及び神経毒性を減少させた。
【0009】
オキサリプラチンは、シスプラチンとは、異なった、活性スペクトル、作用機作用、抵抗性をもつ薬剤である。オキサリプラチン付加部位は、ヌクレオチド切除修復システムにより修復される。オキサリプラチンは、グルタチオン(GSH)−関連酵素により解毒化される。ERCC1及びXPAの発現が、インビトロで6つの直腸結腸癌ライン化細胞でオキサリプラチンの感受性を予測した(Amould等、2003)。オキサリプラチンは、直腸結腸癌でシスプラチンより良い有効性が報告されている。
【0010】
シスプラチンとオキサリプラチンは、化学療法の期間中に異なる副作用をもたらす実質的に構造上の相違を有する。
【化2】

【0011】
例えば、シスプラチンの副作用は、腎毒性、末梢神経障害、聴神経障害、及び重篤な胃腸管障害である(非特許文献1,非特許文献2)。
【特許文献1】米国特許第6,511,676号
【非特許文献1】McKeage MJ: Comparative adverse effect profiles of platinum drugs. Drug Saf 13:228−44、1995、Hanigan MH
【非特許文献2】Devarajan P: Cisplatin nephrotoxicity: molecular mechanisms.Cancer Ther 1、47−61、2003
【非特許文献3】Cancer Res. 2005 May 1;65(9):365 6−63.Li C、Harris MB、Venema VJ、VenemaRC.Endostatin induces acute endothelial nitric oxide and prostacyclin release.
【非特許文献4】Biochem Biophys Res Commun.2005 Apr15;329(3):873−8.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
治療に用いる場合、また、腫瘍ターゲティングの治療、化学療法に抵抗性腫瘍をもつ患者の有効な治療をする場合には、遊離オキサリプラチンの高毒性を減少させるためオキサリプラチンの投与において困難性を緩和する必要性がある。
【0013】
さらに、異なる複数の薬剤は、腫瘍の位置付け、ステージ及び腫瘍の組織構造の観点からみると、異なる癌細胞との戦いにおいてより良い効果をもつと思われるので、1つの薬剤又は遺伝子よりも、同時投与する併用治療により行う必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、オキサリプラチンをカプセル化することにより、また、別の態様では、オキサリプラチンと別の抗癌剤をリポソームに入れることにより、このような問題を解決するか、または、少なくとも緩和することを目的としている。これは、薬剤の有効性を増強させる。
【0015】
本発明は、カプセル化されたオキサリプラチンを含むリポソームであって、そのリポソームの外膜と内膜が異なる組成の脂質からなるものであり、また、このようなリポソームの製造方法を提供する。そのリポソームは、負に荷電した(陰イオン性)頭部基をもつ脂質分子を含む。本発明は、また、オキサリプラチン及び別の薬剤をカプセル化したリポソームを提供し、また、このようなリポソームの製造方法を提供する。さらに、癌治療におけるこのようなリポソームの使用を提供する。
【0016】
第1の態様では、本発明は、オキサリプラチンを含むミセルを形成する方法であって、その方法が、オキサリプラチンの有効量と負に荷電したホスファチジールグリセロール リピッドと溶媒を組み合わせたものを含む。
【0017】
第2の態様では、本発明は、前もって製造されたリポソームまたはリピッドに本発明のオキサリプラチンミセルを併せてリポソーム中へオキサリプラチンをカプセル化する方法に関する。
【0018】
第3の態様では、本発明は、次の工程:
a)オキサリプラチンの有効量と負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドと溶媒を混合することにより、オキサリプラチンを含むミセルを形成する工程;および、
b)オキサリプラチンミセルを前もってつくったリポソームまたはリピッドに混合する工程;
を含むオキサリプラチンをリポソームにカプセル化する方法に関する。
【0019】
第4の態様では、本発明は、オキサリプラチンの有効量と負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドを含むミセルに関する。
【0020】
第5の態様は、本発明は、オキサリプラチンの有効量を含むリポソームに関するものであって、前記リポソームの内膜と外膜が異なるリピッドを含むものであることを特徴とする。本発明の他の態様は、癌治療における前記リポソームの使用に関し、また、前記リポソームの投与により癌を治療する方法に関する。
【0021】
別の態様においては、本発明は、オキサリプラチン及び別の抗癌剤の有効量を含むリポソームに関する。
【0022】
さらなる態様においては、本発明は、また、薬学的製剤、すなわち、本発明のリポソームに関する投与スケジュール、を提供する。
【0023】
関連するさらなる態様においては、シスプラチンの有効量をカプセル化しているリポソーム及びゲムシタビンの有効量との投与することを含む併用治療に関する。また、癌に侵されたヒト患者の治療用の医薬の製造におけるカプセル化したシスプラチンを含むリポソームの使用を提供し、また、前記リポソームとゲムシタビンの投与に関する併用治療により癌を治療する方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明をさらに、説明する。以下の節においては、本発明の異なる態様が、より詳細に定義されている。そこで定義された各々の態様は、それと反することが明らかに示されていない限り、如何なる他の1の態様又は複数の態様と併用することができる。特に、好ましい又は利点のあるものとして示された他の(1つ又は複数の)特徴と組み合わせることができる。
【0025】
本発明は、外膜二重層中よりも内側にあって異なる脂質組成をもつリポソームへオキサリプラチンをカプセル化する方法に関する。
【0026】
第1の態様は、本発明は、オキサリプラチンを含むミセルの形成する方法に関し、その方法は、オキサリプラチンの有効量と負に帯電したリピッドを溶媒溶液と混合することを含んでいる。そのリピッドは、負に帯電した(陰イオン性の)頭部基を含むことを特徴としている。好ましくは、そのリピッドは、ホスファチジールグリセロールリピッドである。
【0027】
好ましくは、その溶媒はエタノールである。しかしながら、当業者に公知である、炭化水素溶媒は、同様に使用することができる。メタノールは、別の適当な溶媒である。
【0028】
本明細書で用いたオキサリプラチンの語は、オキサリプラチン及びあらゆるオキサリプラチンのアナログ、又は、誘導体を指す。リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンは、また、本明細書では、そのブランド名である「リポキサール(商標)」を指す。
【0029】
本発明における負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドの用語は、負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッド又はその誘導体を指す。これらのリピッドは、そのリピッドが、負に荷電した(陰イオン性の)頭部基を含むことを特徴としている。このように、その用語は、ミセルを形成し、負に荷電した頭部基をもつあらゆるリピッドを記載するために用いられる。本発明の異なる態様の負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドは、ジパルミトイルホスファチジールグリセロール(DPPG)、ジミリストールホスファチジールグリセロール(DMPG)、ジアプロイルホスファチジールグリセロール(DCPG)、ジスステアロイルホスファチジールグリセロール(DSPG)又は、ジオレイルホスファチジールグリセロール(DOPG)から選択されることができる。好ましい態様では、負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドは、DPPGである。
【0030】
本発明のエタノール溶液は、好ましくは、20〜40%であり、より好ましくは、約30%である。負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドに対するオキサリプラチンのモル比は、1:1〜1:2の範囲である。好ましくは、その比率は、1:1である。
【0031】
本発明の第1の態様の1つの実施形態は、オキサリプラチンは、最終オキサリプラチン濃度約5mg/mlにするために、1:1〜1:2のモル比で20〜40%のエタノール中で、pH6.5〜8.0で硫酸アンモニウム緩衝液、トリス緩衝液(10〜100mM)、又は、リン酸ナトリウム緩衝液(10〜200mM)中で、DPPGと混合した。混合した液は、摂氏30〜60度で、20分〜2時間加熱した。このような条件下では、オキサリプラチン分子の正に荷電したイミノ基が、DPPG分子の負に荷電した基と相互反応して、エタノール溶液中で、逆ミセルを形成する。
【0032】
第2の態様では、本発明は、本発明のオキサリプラチンミセルを前もってつくられたリポソーム又はリピッドに混合させることを含むオキサリプラチンをリポソーム中へカプセル化する方法に関する。
【0033】
第3の態様では、本発明は、次の工程:
c)オキサリプラチンの有効量と負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドを溶媒に混合することによるオキサリプラチンを含むミセルを形成する工程;及び、
d)前記オキサリプラチンミセルを前もってつくっておいたリポソーム又はリピッドと混合する工程、
を含むオキサリプラチンをリポソーム中にカプセル化する方法に関する。
本方法の1実施形態は、前記ミセルが予め作製されたリポソームに混合される。
【0034】
前もってつくられたリポソーム又はリピッドは、本発明の方法に用いられており、したがって、本発明のリポソームは、負に及び/又は正に、荷電したリピッド、例えばホスホリピッド等、を含むことができる。多くのホスホリピッドが本発明で用いることができる。例えば、ホスファチジールコリン、ホスファチジールエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジル−エタノールアミン、ホスファチジールセリン、ホスファチジールイノシトール、リソホスファチジールコリン、ホスファチジールグリセロール、スフィンゴミエリン又はホスファチジン酸等のすべてが、本発明において用いることができることがわかった。サラミドや他のリピッド誘導体は、同様に用いることができる。リピッド膜の安定性の改善や透過性の改善のために、付加物脂溶性成分が、追加することができる、例えば、コレステロール、又は、別のステロイド、ステアリルアミン、ホスファチジン酸、ジセチルホスフェイト、トコフェロール、又はラノリン抽出物等である。
【0035】
前記リピッドは、これらの限定されるものではないが、以下の、DDAB、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド;DMRIE:N−[1−(2,3−ジミリスチルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−(2− ハイドロキシエチル)アンモニウムブロマイド;DMTAP:1,2−ジミリストイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン;DOGS: ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン;DOTAP:N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド;DOTMA:N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−n,n,n−トリメチルアンモニウムクロライド;DPTAP:1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン; DSTAP:1,2−ジステロイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン等から選択される。
【0036】
本発明の1つの実施形態では、オキサリプラチンリポソームは、DPPG、コレステロール、及び、HSPC(水素化された大豆ホスファチジールコリン)を含む。前記カプセル化は、有効性を減少させずに、細胞毒性を有する薬剤の副作用を減少させることを意図している。
【0037】
本発明のリポソーム製剤は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、又は他のあらゆるアンモニウム塩等のアンモニウム塩を含んでいる。
【0038】
本発明の負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドは、ミセルを形成するためにもちいられ、また、リポソーム膜の一部であって、細胞質ゾルへの薬剤の分配のための細胞膜の透過性を増強する利点を提供する。リポソームは、細胞の膜と融合することができ、そして、その内容物を細胞内へ放つ。このような性質は、融合性と称する。したがって、このような融合性の特質と貪食機構のために、本発明のオキサリプラチンの製剤は、腫瘍細胞の細胞膜を通過することができ、また、オキサリプラチン耐性又は薬剤耐性腫瘍の治療において利用され得る。
【0039】
別の実施形態によれば、負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドにオキサリプラチンの同様なリポソーム中への錯体は、大変高いカプセル化効率(50〜100%)をもたらし、生産物の製造中における薬剤の喪失を最小限にする。
【0040】
本発明のカプセル化の方法は、本明細書に記載したように、オキサリプラチンと負に荷電したリピッド分子間の逆ミセルの形成に基づいている。逆ミセルは、オキサリプラチンの正に荷電したアミノ基とホスファチジールグリセロールリピッドの負に荷電したリン酸基の間の静電気的相互作用により維持されている。例えば、DPPGは、ホスファチジールグリセロールリピッドの疎水性鎖をエタノール溶媒の方向へ指向しており、これによりオキサリプラチンを取り込もうとしている。前記オキサリプラチン、ホスファチジールグリセロールリピッド逆ミセルは、前もってつくられたリポソーム又はリピッドとそれらを混合することにより、リポソーム中に転換され、これは、透析され、エタノールを膜と通して除かれ、さもなければ、水で希釈され、加圧濾過での濃縮されることも、されないこともあるが、濾過により押し出される。これは、大変高い効率でオキサリプラチンを封入し、カプセル化をもたらした。製造の間にリポソームの脂質組成は、ナノ粒子の外面の脂質組成をほとんど決定される。
【0041】
本発明のリポソームを免疫監視(サーベイランス)から回避させ得るコーティング(被覆)を加えることができる。好ましくは、コーティングは、ポリマである。コーティングは、リポソームの段階または、後で、挿入的に形成されたナノヴィークルに追加される。このように本発明のリポソームは、このようなコーティングを含むことができる。本発明で用いることのできるポリマは、ポリエチレングリコール(PEG),ポリメチルエチレングリコール、ポリヒドロキシプロピレングリコール、ポリ「プロピレングリコール、ポリメチルプロピレングリコール、ポリヒドロキシプロピレンオキサイド、ポリオキシアルキレン、ポリエーテルアミンをあげることができる。追加されるポリマは、ポリビニルピロロドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリマタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシメタアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレイト、ポリヒドロキシアチルアクリレイト、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド、または、ヒアルロン酸を含んでいる。好ましいポリマは、PEGである。例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、(PEG−DSPE)は、PEGを誘導体化して、PEG−誘導体ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE)に導いた。そのポリマは、ホモポリマとして又はその阻止として、又はランダムコポリマとして用いられることができる。
【0042】
本発明で開示したリポソーム性のオキサリプラチンナのヴィークルは、ポリマコーティングのため、免疫監視を逃れることができ、長期間体液中を循環することができ、プールされた組織から腫瘍へ再分配することができ、血管新生を通じて内皮系が不完全である障害を受けた血管系と通して管外遊出によりヒト及び動物への静脈内注射後、固形腫瘍又は転移部位へ好ましくは濃縮されることができる。
【0043】
本発明で記載したカプセル化する方法の利点は、リポソームナノヴィークル中の薬剤は、漏れやすい腫瘍の血管系を通して好ましくは血管外遊外により、第一義的な腫瘍又は転移部位に到達するであろうし、このようにして抗腫瘍効果を増強する。融合性のリピッドDPPGは、腫瘍細胞膜とナノ粒子の融合を増強し、リポソームオキサリプラチンの高い取り込みは、腫瘍細胞の貪食の程度を、また増強する。
【0044】
さらに、リガンドが、本発明のリポソームのポリマコーティングに共有結合することができる。
【0045】
例えば、リガンドは、ペプチド、例えば抗体、であることができる。ペプチドは、後に挿入で挿入することができる、例えば、ペプチド−PEG−DSPE結合体のようにである。本発明のペプチドは、これらの限定されるものではないが、エンドスタチン、抗トロンビン、アナステリン、アンギオスタチン、PEX、色素上皮由来因子、トロンボスポンジン(TSP)−1及び−2の一次構造に由来するペプチドであり、及び、二重に抗腫瘍活性を発揮し得るもの:すなわち、それを介して腫瘍血管新生を制限するもの、例えば、例えば、PEG−DSPE(図17)に接するエンドスタチンの−NH末端に対応する27アミノ酸ペプチド、は、また、同一の抗血管新生ペプチド−キャリングリポソーム中にカプセル化されたオキサリプラチン分子の抗腫瘍活性を発揮させる。
【0046】
好ましいペプチドは、エンドスタチンである。エンドスタチン、基底膜コラーゲンペプチド第18の非コラーゲン性ドメイン1(NC1)の20−kDaのC−末蛋白分解性フラグメントは、細胞増殖と転移を阻害し、腫瘍血管新生と腫瘍増殖の内因性阻害物質である。エンドスタチンのインビトロ効果について報告されている多くのものを調整することについて主要な問題は、受容体の退会親和性を欠くことである。エンドスタチンに長期間接触させると、内皮細胞分裂と移動を阻害し、血管新生阻害による内皮細胞アポトシスを誘導する;エンドスタチンは、eNOSの活性化している培養ウシ動脈内皮細胞において、Ser116、Ser617、Ser635、Ser1179及びThr497での脱リン酸化において内皮細胞性の一酸化窒素合成酵素(eNOS)リン酸化を刺激した。事実、一酸化窒素(NO)は、血管新生を促進している。エンドスタチンへの内皮細胞の短期間接触は、抗血管新生をもつ長期間接触のようではなく、プロアンギオジェニック(前血管新生)である(Li等、2005)。エンドスタチンのNH2末端ドメインに対応する27アミノ酸ペプチドは、すべての抗血管新生抑制活性を引き出し、強い抗腫瘍効果をもっていた;亜鉛結合部位である3つのヒスチジンは、そのペプチドの抗癌特性に必須であった(Tjin Tham Sjin等,2005、Tjin Tham Sjin RM、 Satchi−Fainaro R、Birsner AE、Ramanujam VM、 Folkman J、Javaherian K)。エンドスタチンのNH2末端亜鉛結合部位に対応する27アミノ酸合成ペプチドは、抗腫瘍活性に関与している(非特許文献3,4)。
【0047】
ペプチドリガンドは、腫瘍細胞の表面に過剰発現した腫瘍特異抗原に由来するペプチドエピトープと特異的に相互作用し得るリガンドのペプチドライブラリの容易な選択により当業者により由来することができる。図17に示した化学PEG末端でのこれらのペプチドの結合は、オキサリプラチンのカプセル化リポソームに特異的腫瘍に指向し得ることを与えている。表1は、細胞外表面にさらされているペプチドが由来し、合成され、また、ランダムペプチドライブラリから腫瘍抗原との高親和性をもつペプチドリガンドを引き出すために利用されている腫瘍抗原を図示している。このようなペプチドリガンドは、リピッドのポリマ分子と共有結合しており、例えば、PEG−DSPEであるが、これは、リポソーム粒子で挿入されている。
【0048】
ガラクトース、マンノースのような糖鎖、モノクローナル抗体、ピリドキサールリン酸塩、ビタミンB12,シアリルルイスX,上皮細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、血管内皮細胞増殖因子、(VCAM−1)、細胞間接着因子(ICAM―1)、血小板内皮細胞増殖因子(PECAM−1)、Arg−GLy−Asp(RGD)ペプチド、又は、Asp−GLy−Arg(NGR)ペプチド、及び、モノクローナル抗体のFab’画分からなる群から選択することができる。
【0049】
1つの実施形態において、リポソームオキサリプラチン粒子は、その粒子を葉酸受容体を過剰発現している腫瘍に指向させるためにリポソーム粒子の形成後挿入されたPEG−DSPE−葉酸結合体でその表面が改良される。

【表1】

腫瘍抗原に対するペプチドは、ポリマの末端に付け加えることができる、例えば、表面特異抗原を過剰発現する標的特異腫瘍に対する特徴をナノ粒子に付与している多機能化のためのPEG−ポリマである。
【0050】
1つの実施形態では、リポソームオキサリプラチン粒子は、葉酸受容体を過剰発現している卵巣(及び他の)癌細胞に対し、オキサリプラチンのリポ−ナノ−粒子を指向する葉酸で改良される。
【0051】
別の実施形態では、リポソームオキサリプラチン粒子は、また、オキサリプラチンナノ粒子をHer2/neu過剰発現している乳癌細胞に指向するHer2/neuリガンドで改良した。
【0052】
本発明のオキサリプラチンのリポソーム製剤は、耐性腫瘍における薬剤の減少した取り込みによって引き起こされる遊離オキサリプラチンに対する耐性の問題を回避している。このように、製剤は、オキサリプラチン耐性腫瘍の治療に適用される。本発明のオキサリプラチンリポソーム製剤は、また、様々な腫瘍に対してヒト臨床試験において遊離薬剤オキサリプラチン(遊離オキサリプラチン)よりも低毒性の側面を示す。さらに、オキサリプラチンのこのようなリポソーム製剤の副作用スペクトルが遊離キサリプラチンのそれとは異なるため、本発明のキサリプラチンのリポソーム製剤は、非小細胞肺癌、乳がん、卵巣癌、頭頸部癌、転移前立腺癌及び数種の他の固形腫瘍、付け加えて直腸結腸癌及び胃癌において臨床適用上利点がある。
【0053】
1つの実施形態では、本発明のリポソームカプセル化したオキサリプラチンは、治療患者においては、ビリルビンレベル(図2)と骨転移(図3)を低くすることができる。
【0054】
別の実施形態では、本明細書に記載したリポソーム製剤は、点滴静脈内注射後のオキサリプラチンの副作用、特に胃腸管毒性を低くするために用いることができ、そして、同時にカプセル化された他の薬剤の副作用低下にとっても同様に用いることができる。
【0055】
本発明のリポソーム製剤は、好ましくは、ヒト腫瘍及びそれらの転移を目的とすることができる。
【0056】
このように、さらなる態様においては、本発明は、本明細書に記載したように、医薬としての使用のオキサリプラチンを含むリポソームに関する。
【0057】
本発明の別の態様においては、癌治療薬の製造におけるカプセル化されたオキサリプラチンを含むリポソームの使用に関する。
【0058】
本発明は、また、患者に対して本発明のカプセル化したキサリプラチンを含むリポソームを投与することを含む癌治療の方法に関する。
【0059】
直腸結腸癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、頭頸部癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、腸癌、食道癌、又は、尿路癌を含む異なるタイプの癌が治療することができる。
【0060】
リポソームは、100〜350mg/mの用量で点滴静脈内投与により毎週投与される。好ましくは、投与は、300mg/mの用量であり、しかし、他のあり得る用量は、100mg/m、150mg/m、200mg/m、又は、250mg/mの用量である。1つの実施形態では、投与は、2〜5サイクルである。各サイクルは、8〜12週であり、1又は2週間の休みが続く、好ましくは、静脈内毎週注入は、3時間である。
【0061】
別の実施形態では、投与は2週間に1度(隔週)である。
【0062】
このような上述した投与スケジュールは、本明細書に記載した併用治療として投与されたときは、同様に使用することができる。
【0063】
別の形態では、本発明は、2つの抗癌剤、キサリプラチン及び別の薬剤を含むミセル及び/又はリポソームを製造する方法に関する。その方法は、オキサリプラチンリポソームを製造に関する本明細書に記載の方法であり、ミセル又はリポソーム中に別の抗癌剤を含む工程を含んでいる。
【0064】
したがって、さらなる別の態様においては、本発明は、カプセル化されたオキサリプラチン及び抗癌剤を含むリポソームに関する。その薬剤は、したがって、同一のリポソーム内にカプセル化されている。このことは、それらが、標的へ一緒に分配され得るという利点がある。そのリポソームに1つ以上の他の抗癌剤を含むことがあり得るし、また、本発明の範囲内である。
【0065】
1つの実施形態によれば、異なる作用機作をもつ少なくとも2つの抗癌剤が、本発明の同一のリポソーム中に含まれている。それゆえ、2つの独立した機構により標的とされて、より優れた臨床成功に導いている。
【0066】
その他の抗癌剤は、白金化合物類(シスプラチン、カルボプラチン等)、代謝拮抗剤類(5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン、ペントスタチン及びメトトレキセート等)、DNAを標的としているアントラサイクリン(ドキソルビシン、エピルビシン等)、又は、DNAを標的とするか若しくはトポイソメラーゼを標的とする薬剤、又は、他の化学療法剤からなる化合物から選択されることができる。
【0067】
好ましい実施形態では、その他の薬剤は、シスプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン、ナベルビン、ドキソルビシン、イリノテカン、SN−38,ゲムシタビン、又は5−フルオロデオキシウリジンである。
【0068】
同一のリポソーム中に2つの薬剤を含むことにより、各薬剤が単独で用いられる時よりも各薬剤の低い用量で用いることができる。その2つの薬剤は相乗的に作用することができ、したがって、低い副作用で腫瘍細胞に対してより大きい損傷を与えて治癒する。
【0069】
別の好ましい実施形態では、シスプラチンとオキサリプラチンは、同一のリポソームナノカプセル中に共にカプセル化される。このように、このように、このように、同じ腫瘍細胞は、同時に両者、シスプラチンとオキサリプラチンと接触され得ることになる。シスプラチンの副作用(腎毒性、神経毒性、悪心/嘔吐)は、リポソームシスプラチンの副作用(血液毒性)とは異なっている。オキサリプラチンの副作用は、リポソームオキサリプラチンの副作用(神経障害)とは異なっている。このように同一の腫瘍細胞は、少なくとも2つ以上の独立した機構により標的とされ得る、一方、そうでなければ、(仮に、同一のリポソーム中にカプセル化されていなければ)2つの薬剤(オキサリプラチンとシスプラチン)は、ほぼ確実に異なる細胞を各々標的とするであろう)。一方、同一リポソーム中にカプセル化された異なる薬剤の併用投与は、効果を達成するより低い用量を用いることができ、その結果、各薬剤のもつ毒性を避けるか又は減少させることができる。特に、オキサリプラチンの用量を下げることにより、本発明者等は、神経毒性を抑えることができ、一方、シスプラチンの用量を下げることにより、骨髄毒性を低下させることができる。リポソームオキサリプラチンとリポソームシスプラチンを投与された神経毒性及び骨髄毒性の側面は改善され、一方、相乗的な投与後の腫瘍に対して同一か又はそれ以上の大きい損傷を被ると考えられる。このように、同一リポソーム中でのシスプラチンとオキサリプラチンの併用は、リポソーム(複数の)薬剤の副作用をより少ない条件下で、前記薬剤の低用量での投与を可能にした。
【0070】
別の実施形態では、本発明のリポソームにカプセル化されたオキサリプラチンは、本発明の方法において記載したようにオキサリプラチンとして同一リポソームオキサリプラチン粒子にカプセル化された薬剤ドキソルビシン(DOX)と組み合わせることができる。驚くべきことに、これが、オキサリプラチンの用量を低下させ、投与されたオキサリプラチンの神経毒性を低下させ、一方、DOXの用量を、また低下させる。これは、DOXの心臓毒性と他の副作用を減少させ、一方、腫瘍に対して同等又はそれ以上の大きい損傷を追わせる。
【0071】
別の実施形態では、リポソームは、オキサリプラチンと5−フルオロウラシルを含んでいる。5−フルオロウラシルとの併用におけるオキサリプラチンは、転移性の直腸結腸癌の治療で最近、是認された。しかしながら、このような薬剤の投与には、主に、各薬剤の重要な副作用に起因するものであり、それらは、本発明において記載したようにリポソームカプセル化により最少にされる。さrに、本明細書で記載したように、これらの薬剤を併用することにより、治療の効果は増強された。
【0072】
本発明は、同一リポソーム中にオキサリプラチンと抗癌遺伝子とのカプセル化に関する。このように、本発明のリポソームは、オキサリプラチンと癌遺伝子を含むことができる。その用いられる癌遺伝子は、これらの限定されるものではないが、p53、IL−2、IL−12、アンギオスタチン及びオンコスタチンを含む。
【0073】
別の態様では、本発明は、オキサリプラチンが、両薬剤が同一のリポソーム中にカプセル化されるという本明細書で特定されたように、別の薬剤又は遺伝子と一緒に投与される併用治療に関する。オキサリプラチン及び別の抗癌剤又は遺伝子を含むリポソームが、癌治療薬の製造において、又は、癌治療の方法において、使用することができる。さらに、本発明は、併用リポソームの第一(最初)の医薬上の使用に関する。
【0074】
当業者は、成分の投与スケジュール及び用量は、との他の薬剤の存在にしたがって変動するものであると理解するであろう。オキサリプラチンに関しては、本明細書に記載した用量と用量の範囲が用いることができる。さらに、リポソーム併用の投与スケジュールは、オキサリプラチン用に本明細書に記載したものである。
【0075】
1つの実施形態において、本発明のリポソームカプセル化されたオキサリプラチンは、癌患者に150〜300mg/m2毎週(第1、8,15日に)12週間単独チ用又は1g/m2のゲムシタビンの第1日、8日に、21日サイクルの併用において、又は、ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカンとの併用において投与される。
【0076】
関連した態様において、本発明は、シスプラチンが、本明細書で記載したような別の抗癌剤との兵ようにおいてカプセル化されたリポソームカプセル化シスプラチンを目的とする。シスプラチンは、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、SN−38、ゲムシタビン、5−フルオロデオキシウラシルのいずれか1つと同一リポソーム中に併用されることができる。利点は、同一の腫瘍細胞は、シスプラチンと他の1つの薬剤との同時に攻撃を受け、したがって、2つの独立した分子機構が関与するためより有効な殺細胞効果を達成する。例えば、シスプラチンは、DNA複製の停止と同様、ミトコンドリア及び核のアポトーシスへのシグナルを引き起こすであろう、一方、ドセタキセルは、チュブリン重合に働くであろう。
【0077】
有利なことに、リポソームカプセル化シスプラチンは、本明細書に記載の方法を用いて同一リポソーム中にゲムシタビンと併用してカプセル化される。
【0078】
別の態様では、本発明のリポソームを含むオキサリプラチンは、別の抗癌剤と一緒に投与することができる、しかし、他の薬剤は同一リポソーム中の一部を形成していない。その他の薬剤は、本明細書で記載されたようなものであり、好ましくは、シスプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン、ナベルビン、ドキソルビシン、イリノテカン、SN−38、又は、5−フルオロデオキシウラシルカラ選択される。
【0079】
さらに、別の態様では、本発明は、リポプラチン(商標)とゲムシタビンの併用投与に関する。このように、リポプラチン(商標)とゲムシタビンの併用は、本発明の目的である。同様に、癌を患うヒト患者の治療用医薬の製造におけるリポプラチン(商標)の使用であり、同一リポソーム中にカプセル化されていないリポプラチン(商標)と別の薬剤の投与に関する併用治療によるリポプラチン(商標)の使用を提供する。
【0080】
他の薬剤は、リポプラチン(商標)と同時に又はことなる時期に投与することができる。
【0081】
好ましくは、他の薬剤は、ゲムシタビンであり、その投与は、臨床上の改善を導く。好ましくは、治療される癌は、膵臓晩であり、しかし、直腸結腸癌、胃癌、乳癌、非小細胞性肺癌、卵巣癌、頭頸部癌、前立腺癌、睾丸癌、腸癌、膀胱癌、食道癌、又は、尿路上皮癌、のような他の癌は、治療され得る。ゲムシタビンを使用する用量は、800〜1000mg/mであり、好ましくは、1000mg/mである。リポプラチン(商標)の用量は、100〜125mg/mであり、好ましくは100mg/mである。
【0082】
リポプラチン(商標)とゲムシタビンの投与は、静脈内投与である。リポプラチン(商標)は、好ましくは、隔週に1回8時間の点滴(IV))第1日、第15日)で投与される。ゲムシタビンは、好ましくは、2週間に1回、60分間、投与される。その化合物の投与は、4週間のサイクルで行うことができる。
【0083】
本発明は、以下の図面及び実施例を参照して説明がなされている。実施例は、オキサリプラチンリポソームの投与が、臨床上の改善に導くことを示しエチル;すなわち、癌治療において臨床効果を示すことである。実施例2は、リポプラチン(商標)とゲムシタビンの投与が、臨床上有利な点をもつことを示している、したがって、臨床改善に導いている。

実施例
【実施例1】
【0084】
リポソームの製造
オキサリプラチンは、DPPG(ジパルミトイルホスファチジールグリセロール)又は他の負に荷電したリピッド分子とモル比1:2で、30%エタノール中で、0.1Mトリス塩酸緩衝液、pH7.5、5mg/mlのオキサリプラチンの最終濃度で、20〜40%エタノール中で、30〜60度摂氏で、硫酸アンモニウム(10〜200mM)存在下で、又は、トリス緩衝液(10〜100mM)、又はリン酸ナトリウム緩衝液(10〜200mM)pH6.6〜8.0で、混合し、20分から3時間インキュウベーションした。このような条件下で、オキサリプラチン分子の正に荷電したイミノ基がDPPG上の負に荷電した基と相互作用してエタノール溶液中で逆ミセルを形成する(参照、特許文献1)。得られたオキサリプラチンの−DPPGの逆ミセルは、次いで、コレステロール、ホスファチジールコリン、mPEG−(ポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、)により組成されたリポソーム中に転換され、次いで、生理食潜水に対して透析し、80〜120nmの径をもつ粒子にダウンサイズするために膜を通して押し出す。それが、最終オキサリプラチン製剤の外表面を組成を決める追加されたリポソームのリピッド組成である(図1)。
【実施例2】
【0085】
A.リポソームカプセル化したオキサリプラチンを用いた前臨床試験
I.A. 動物試験
動物試験は、2003年5月から2004年12月まで米国で行った、フランス、スイス、へラス(アテネ、パスツール研究所)で独立の研究機関で、マウス異種移植に対して行われ、単なるオキサリプラチンに対して、リポソームカプセル化したオキサリプラチンは、良好な治療を示し、遊離オキサリプラチンに比較してマウス及びラットで低い毒性特性を示し、良い耐性を示した。さらに、リポソームカプセル化オキサリプラチンは、6〜8回の静脈内投与後より、マウスにおける様々なヒト腫瘍に対し完全な消失や縮小を効果的に誘導し、オキサリプラチンよりも少ない毒性をもたらした。
【0086】
リポソームカプセル化オキサリプラチンは、16mg/kgの投与で4日間間隔で6回静脈内注射後マウスにおいてヒト乳癌を完全に消失させた。他方、遊離オキサリプラチンは、MTD(最大耐量)は、縮小をもたらしたのみで、腫瘍の完全消失はできなかった。
【0087】
遊離オキサリプラチン5mg/kg注射したマウスは、毒性のため死亡した、そこで、投与用量は、4mg/kgに下げた。リポソームによりカプセル化したオキサリプラチンの用量は、16mg/kg、i.v.であり、遊離オキサリプラチンの毒性より低いものであった。4mg/kgの遊離オキサリプラチンの抗腫瘍効果は、ヒト腫瘍の担癌動物に対して16mg/kgのリポソームによるカプセル化したオキサリプラチンの効果よりも低かった。
【0088】
前記試験動物において、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンの動物試験が、報告された。リポソームでカプセル化されたオキサリプラチン、対照として遊離オキサリプラチンのラットへの腹腔内注射(i.p.)は、注射後10分から7日までの組織の生体内分布の検討のために用いた。遊離オキサリプラチン投与後、7.5mg/ml血漿に比べて、15mg/kgの用量投与で血漿中の全白金(Pt)量の最大値は、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンの投与後14mg/ml血漿であった。このような値は、注射後10〜15分で達成された。血漿薬物動態の挙動と同様なことが、腎組織で観察された;血清と腎臓は、注射から最初の20分間、試験した全ての組織中で最も高い白金濃度であった。脾臓組織は、同用量で、注射後のさらに長期の40〜190時間の間、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンに比べて遊離オキサリプラチン投与後の白金濃度の最高値は2倍を超える値を示した。引き続きリポソームでカプセル化されたオキサリプラチンのラットへの11回の繰り返し投与をしたところ、驚くべきことに、脾臓は、検査した全ての組織で全白金量の最高値に達した(80mg/g組織)。肝臓は、遊離オキサリプラチンに対し、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチン投与後時間関数として白金蓄積の同様な薬物動態を示した。対照としてのリポプラチン(商標)は、投与10分から7日間のラット腎臓において、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンと同様の薬物動態挙動を示した。しかし、肝臓の薬物動態は、4時間までは2つの薬物は同様であったが、7日間を超えるとリポプラチン(商標)に比べて、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンは、高い蓄積があった。ラットでの全ての生化学的な検査及び血球数計測は、遊離オキサリプラチンに比べて低い骨随毒性を示した。ラットにリポソームでカプセル化されたオキサリプラチン投与においては、SGOTトランスアミナーゼ、アルカリホスファターゼ、ビリルビン、クレアチニン、血中尿素、血中尿酸レベルは、正常で肝毒性又は腎毒性が無いものと一致した。データは、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンのより延長された持続性を示す。それは、リポソームでカプセル化されたPEG化製剤と一致し、低い毒性特性を示す。
【0089】
薬物動態研究のためのラットへのリポソームでカプセル化されたオキサリプラチン注射:
薬物動態研究のために、2〜3月齢のウイスタラット雌20匹を、平均体重150gを用いた。ラットは、腹腔内に3mg/mlのリポソームでカプセル化されたオキサリプラチンを最終用量15mg/kgで注射した。2匹の動物を各時点で用いた。ラットは、注射後、7分以内、20分、1.5時間、3.75時間、24時間、40時間、90時間、及び170〜180時間後に犠牲死させた。血液は、ヘパリン処理したエッペンドルチューブで集め、遠心した。血漿中の全白金レベルは、フルナス(furnace)自動吸収機(AA700、Perkin Elmer)を用いて測定した。
【0090】
組織学的研究のためのリポソームでカプセル化されたオキサリプラチンで繰り返し注射されたラット:
本発明者らは、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンの最大耐量のラットでの繰り返し注射後種々の組織での損傷を検討することに興味があった。
【0091】
リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンの毒性研究のためのラットでの生化学的及び血液学的分析:
ラットは、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンの3mg/ml懸濁液を最終用量15又は30mg/kg腹腔内に注射された。血漿薬物動態研究用ラット血液は、骨髄、腎臓、肝臓、及び、胃腸機能と同様に、独立した顕微鏡研究所により分析された。試験されたパラメータは、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球、顆粒球、血漿板、SGOTトランスアミナーゼ、SGPTトランスアミナーゼ、アルカリ干すファターゼ、全ビリルビン量、尿素、尿酸、及びクレアチニンである。
【0092】
結果
ラットにおけるリポソームでカプセル化されたオキサリプラチンの毒性:
ラットは、遊離オキサリプラチン又はリポソームでカプセル化されたオキサリプラチンを最終用量15又は3mg/kgで注射された。30mg/kgオキサリプラチン投与群は、重症の食欲不振と重篤な体重喪失を示し;投与7日後で30mg/kgオキサリプラチン投与群で33%の体重喪失であり;7日後の全動物の平均体重は、150gから平均体重100gに低下した。一方、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンの同用量である30mg/kg注射動物は、わずか10%の体重減少をしめした(150gから7日後で平均体重135g)。
【0093】
注射後第7日で、血液が採取されて、15mg/kg処置動物からヘパリン処理又は未処理チューブに入れて、生化学的全項目と血液学的分析用に独立の臨床研究所に送った。各群で2匹の動物を用いた。表1は、2つの測定値の平均を示す。15mg/kgのオキサリプラチン群は、800,000/mmに白血球数が低下を示した(WHOによる毒性4グレードの毒性)、これに対し、リポソームでカプセル化したオキサリプラチンの処置群では、3,400,000/mm(グレード1の毒性)であった。それゆえ、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンは、遊離オキサリプラチンに比較して白血球数の大幅な低下は引き起こされなかった。血漿板は、同様に、リポソームでカプセル化したオキサリプラチンに比較してオキサリプラチンでは、より高い程度の減少であった。ヘモグロビンレベルは、両方の処理において、正常値に近かった。それゆえ、いずれの薬剤の骨髄毒性は、赤血球生成過程よりもむしろ白血球及び血小板に向けられているようであった。
ラット、i.p.投与で遊離オキサリプラチン又はリポソームでカプセル化されたオキサリプラチンのいずれかの投与した場合、SGOTトランスアミナーゼは、いずれの薬剤でもグレード2肝毒性と一致する上昇であったが、しかし、SGPTトランスアミナーゼとアルカリホスファターゼは、影響を受けず、ビリルビン、血中尿素、クレアチニンレベルは、影響を受けず(血中尿酸レベルは値がとれなかったにもかかわらず)腎毒性の無い場合と一致した。

【表2】

【0094】
ラットでの薬物動態
ラットは、5%デキストロースで3mg/mlのリポソームにカプセル化されたオキサリプラチン又は3mg/mlの遊離オキサリプラチン保存溶液から、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン又は遊離オキサリプラチンの最終濃度15mg/kgで、腹腔内に直接注射された。注射後種々の時点で、血液を採取し、血漿が分離され、全白金レベルが、薬物動態研究のために測定された。図5Aは、遊離オキサリプラチン投与後の全白金レベルの最大値が8mg全白金/ml血漿以下に対して、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン投与後の全白金レベルの最大値が14mg全白金/ml血漿以下であり、その最大値は、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン投与後20分で達したのに対し、遊離オキサリプラチン投与後では10分で達した。投与4〜5時間後では、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンでは、1mg全白金/ml血漿以下であるのに対し、遊離オキサリプラチンでは、2mg全白金/ml血漿であった。40時間後では、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンは、ゼロに消失したが、遊離オキサリプラチンでは1mg以下であり、注射後100後にゼロに消失した(図5B)。

【表3】

表3
【0095】
リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン(Lipoxal(商標))又は遊離オキサリプラチンの15mg/kg用量として計算した平均薬物動態パラメータを表2に示す。
【0096】
AUC、無限時間を外挿入する直線台形法(Gibaldi等、1982 Gibaldi M Perrier D: Noncompartmental analysis based on the statistical moment theory. In Pharmacokinetics、Gibaldi M, Perrier D (版)、pp 409−417, 2nd版 Marcel Dekker: New York、1982)を用いて測定されたAUCは、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンでは、53.7mg.h./mlであり、オキサリプラチンでは、74.4mg.h./mlであった。
【0097】
血漿中の全白金最大濃度(Cmax)は、遊離オキサリプラチンでは7.6mg/mlに対して、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンでは、14.0mg/mlであった。全身クリアランス(Cl)は、遊離オキサリプラチンでは、0.20ml/g.hであるのに対し、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンでは、0.28ml/g.hであった。これは、Cl=Di.v./AUCから計算し、Di.v.は、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン又は遊離オキサリプラチンのi.p.用量であり、AUCは、特定の用量における曲線より下の相対面積である。
【0098】
排泄速度定数は(Kel)は、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンは、0.07/時間であった。これは、下記式:
formula KeI = [Ln(Cp1)−Ln(Cp2)]/(t2−t1)
(ここで、t1及びt2は、測定の最初と最後の時点であり、Cp1及びCp2は、各々、t1及びt2時点における、血漿中の全白金濃度である。)
血漿中濃度−時間曲線の線形回帰分析により計算された。
【0099】
半減期(t1/2)は、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンでは、10.2時間であった。これは、前記式により計算された:t1/2=0.693(1/Kel)。1/Kelは、平均抵抗時間(MRT)であり、半減期(t1/2)に対する、統計的なモーメントアナロジである(Gibaldi等、1982)。
【0100】
ラット血漿中の全白金レベルは、リポプラチン(商標)、異なるリポソーム白金薬剤で最近、第III相評価にある(Stathopoulos等、2005)で処理した動物で測定された。シスプラチンのリポソーム体であるリポプラチン(商標)が、30mg/Kgの腹腔内投与された。30mg/Kgのリポプラチンを投与後、最大値は、血漿中で全白金17mg以下であり、これらは、注射後20分で到達し、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンの時間枠(タイムフレーム)と近似するものであった(図6A)。対照としてシスプラチン最大耐量である5mg/Kgがi.p.投与され、シスプラチン投与後の最高値は、〜7.5mg全白金/ml血漿であった、そして、これは、オキサリプラチンの時間枠に近似し注射後10分で達した。全ての4種の薬物は、1.5時間までは平行した薬物動態挙動を示した;しかし、リポプラチン(商標)注射5時間後で全白金2.5以下mg/ml血漿を示し、次いでオキサリプラチンによる〜2.0mg全白金/ml血漿が続き、シスプラチン1.5mg以下全白金/血漿、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンの1.0以下mg全白金/血漿であった。
【0101】
リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン又は遊離オキサリプラチンのラットi.p.点滴投与後のラット全身組織ンかの全白金の生体内分布:
【0102】
結果の正確性と、原子吸収による白金測定が相対的に容易であるため、マウス及びラットでの白金薬剤の分布を検討するのに有用である。
腎臓における白金レベル: 腎臓における全白金最高値は、15mg/kgKgオキサリプラチン投与後では〜10.5mg/g組織であるに対し、15mg/kgのリポソームにカプセル化されたオキサリプラチンでは、〜13.7mg/g組織であり、注射後7〜20分で達した(図7A)。オキサリプラチン投与後、腎臓では、約4時間で白金レベルは最小値である4.8mg/g組織に達した、そして、注射後167時間には6.9mg/g組織になり僅かに上昇した。リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン投与後においても、また、投与後20時間で腎臓内では最少の〜1mg/g組織になり、投与後188時間では、僅かに上昇し2.5mgになった。このように、投与7日までは、オキサリプラチン投与による腎臓内での白金レベルは、同量のリポソームにカプセル化されたオキサリプラチン投与に比較して、約3倍高いレベルを示した(図7B)。
【0103】
比較のために、リポプラチン(商標)30mg/kg投与は腎臓に34mg/g組織であり、シスプラチンのgmg/kg投与後では10mg/g組織であった。
【0104】
腎臓での薬物動態は、リポプラチン(商標)とリポソームにカプセル化されたオキサリプラチンの間では、近似した挙動を示した。30mg/kgのリポプラチン(商標)投与と15mg/kgのリポソームにカプセル化されたオキサリプラチン投与は、各々、最高値が、34及び14mg/g組織である。これは、共通の殻を分け合うが、しかし、異なる薬剤であるので、内部及び標的である腫瘍内では、制限し合っているという、2薬剤の腎臓での生体内分布において近似していることが支持される。腎臓での120時間後の全白金レベルは、15mg/kgのリポソームにカプセル化されたオキサリプラチン投与後に〜2.5mg/g組織であるのに対し、30mg/kgリポプラチン(商標)投与では5mg/kgであった(図3B)。投与140時間後、5mg/kgのシスプラチン投与後では〜4mg/g組織であるのに対し、15mg/kgの遊離オキサリプラチン投与は、〜7mg/g組織であった(図3B)。
【0105】
結論:
腎臓中の白金レベルは、全ラット組織において、7日後が最高値であり、肝臓及び脾臓がそれに続いた。
【0106】
肝臓中での白金濃度:
肝臓中の全白金レベルは、15mg/kgのリポソームにカプセル化したオキサリプラチン投与では、3.5mg/g組織であり、2.5分から20分にかけて投与した急速に滴下したi.p.点滴投与から7〜10分で達し、その後、5時間持続した(図8A)。反対に、同様量の遊離オキサリプラチンのラット腹腔内点滴投与は、肝臓中で近似した全白金レベル(3.0〜3.5mg/g組織)をもたらし、それは、点滴投与から約30分で達し、2時間持続し、5時間後には1.5mg/g組織に次第に減少した(図4A)。40時間後で白金レベルがゼロになる血漿はなく、リポソームにカプセル化したオキサリプラチン及び遊離オキサリプラチンの両方において170〜190時間後から2mg/g組織の白金レベルの肝臓内蓄積があった(図8B)。
【0107】
比較のために、30mg/kgのリポプラチン(商標)投与後の肝臓中全白金は、5時間以内で7mg/g組織を維持し、12時間後で4.5mg/g組織に低下し、24時間後に6.5mg/g組織に上昇し、漸次120時間後では3.5mg/g組織に減少した(図4B)。シスプラチンは、最高値が20分後で2.5mg/kgであり、5時間持続し(図4A)、24時間から150時間まで漸次1mg/kgに低下した(図8B)、以上のように、リポプラチン(商標)のパターンに近似した。
【0108】
脾臓中の全白金:
脾臓中の最高白金濃度は、15mg/kgのオキサリプラチン投与後〜5.2mg/g組織であるのに対し、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン15mg/kg投与後では3.2mg/g組織であり、最高値は、注射後15から20分で達した(図9A)。リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンに対し、オキサリプラチンは、各々、注射後5時間までは、わずかな減少が見られ、〜2及び〜4mg/g組織であった。その後、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン投与後45時間まで脾臓中の全白金濃度は4.5mg/g組織に上昇し、190時間後の〜2mg/g組織にまでの減少へと続いた。反対に、遊離オキサリプラチン投与に続いて、脾臓中では全白金の継続的な蓄積があり、168時間後で18.5mg/g組織に達した(図9B)。これは、7日後で脾臓重量の途方もない喪失を伴い、おそらく、遊離オキサリプラチンにより毒性から脾臓細胞のアポトーシス的な死という結果をもたらした。事実、試験前の平均体重150gのマウスに対して、7日後の最終体重は109gであり、脾臓重量は0.188gであった。
【0109】
リポソームにカプセル化したオキサリプラチンで処理した動物の脾臓中には、うっ血(血液の蓄積)があった。
【0110】
しかしながら、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン処理よりも遊離オキサリプラチン処理からの約1時間後の腎臓内白金ンレベルは高いものであった;12から24時間で最小になり(オキサリプラチン投与後では5mg/g組織であり、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンでは1mg/g組織である)、そして再度上昇をはじまる;処理170時間後腎臓組織は、オキサリプラチン処理で7mgPt/g組織であり、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン処理で2.5mgPt/g組織を示した(図5B)。
【0111】
リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン又は遊離オキサリプラチン投与後の全ラット組織での全白金の比較測定が図11に要約されている。オキサリプラチン15mg/kg投与後血漿内レベルは、全組織の中で全白金の最高値(14.2mg/ml)に投与後20分で達した;リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンのi.p.投与後10分内で腎臓組織は、比較し得る程高いレベルに達した(13.8mg/ml)(図10A)。次に高いレベルは、オキサリプラチン投与後の腎臓内濃度と血漿内濃度である。脾臓は、その次に高いレベル(15mg/kgのオキサリプラチン投与後5mg/g組織)であり、これは、継続的に上昇し、24時間で最高に達し、170時間後でさらに高くなった(18.5mg/g組織)。それゆえに、オキサリプラチン投与後は、最終的に卵巣、脾臓は、白金レベルを最も高いレベルで蓄積する。この点において、オキサリプラチン投与とリポソームにカプセル化されたオキサリプラチン投与後の脾臓における蓄積の間で相違が明白である(図10B)。
【0112】
4mg薬剤をi.p.投与後のラット組織(7から20分で達成)中で白金レベルの最高値(mg/ml血漿又はmg/g組織):(NDは、試験をしていない)

【表4】

表4.リポソームでカプセル化したオキサリプラチン、遊離オキサリプラチン、リポソームシスプラチン、及び、遊離シスプラチン注射、7〜20分後、5時間後、及び、5から7日後におけるラットの種々の組織での全白金レベルの比較
【0113】
腎臓、脾臓、及び肝臓は、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンで投与、5〜7日後に有意な白金レベルを示した。
脾臓、腎臓、肺及び肝臓は、遊離オキサリプラチン投与5〜7日後に、有意な白金レベルを示した。
腎臓、脾臓、及び肝臓は、リポプラチン(商標)投与、5〜7日後で有意な白金レベルを示した。
腎臓、脾臓、及び肝臓は、シスプラチン投与と、5〜7日後に、有意な白金レベルを示した。
【0114】
遊離オキサリプラチン15mg/kgのi.p.投与とリポソーム化にカプセル化したオキサリプラチン15mg/kgkgのi.p.投与後のデータを示す。
【0115】
1.全白金の血漿レベルは、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン投与後14mg/ml血漿であり、オキサリプラチン投与後の血漿中の全白金レベルは、7.6mg/ml血漿であった。このことは、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンは、オキサリプラチンに比べてより長い循環であることを示している。
【0116】
2.注射後15分から1.5時間は、遊離オキサリプラチン投与に比べて(11mg/g組織)、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン投与では、腎臓中に高いレベルであった(14mg/g組織)、しかし、1.5時間後とその後は、腎臓中のレベルは、リポソーム化されたオキサリプラチン投与に比べて(2.3mg/g組織、1.5時間後)、遊離オキサリプラチン投与が高くなった(6.7mg/g組織)。
【0117】
3.脾臓におけるレベルは、注射1.5時間後において、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチン投与(1.8mg/g組織)に比べて、遊離オキサリプラチン投与が高かった(3.8mg/g組織)。
【0118】
4.心臓におけるレベルは、2薬剤は、同程度であり、ともに低いものであった。
【0119】
血漿中の白金レベル:
血漿中の全白金の最高値は、オキサリプラチン15mg/kgi.p.投与後は、〜7.5mg/mlに対して、リポソームでカプセル化したオキサリプラチン15mg/kgのi.p.投与後は、14mg/mlであり、また、注射後7〜20分でその値に達した(図10A)。しかしながら、血漿中白金レベルは約1時間後で、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンよりも、遊離オキサリプラチンからの方がより高かった。これは、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンのレベルがゼロになる50時間後まで、及び遊離オキサリプラチンレベルがゼロになる100時間後までの残りのカーブを通して維持された。
【0120】
腎臓中の白金レベル:
腎臓中の全白金の最高値は、オキサリプラチン15mg/kgi.p.投与後は、〜10.5mg/mg組織に対して、ルポキサール15mg/kgのi.p.投与後は、13.5mg/g組織であり、また、注射後15〜20分でその値に達した(図10A)。しかしながら、遊離オキサリプラチン投与4時間で腎臓中では、4。8mg/g組織という最小値になり、投与後167時間後では僅かに上昇し6.9mg/g組織となった。リポソームでカプセル化されたオキサリプラチン投与後においては、腎臓中で投与〜20時間後で〜1mg/g組織である最少値になり、188時間後では僅かな上昇があり、2.5mg/g組織に増加した。このように、腎臓中では、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン投与〜7日での同量投与に比較して、遊離オキサリプラチン投与での白金レベルは約3倍を示した。7日後におけるラット全組織の中で、腎臓中の白金レベルは、最高値であり、肝臓、脾臓がそれに続いた。
【0121】
脾臓中の白金レベル:
脾臓中の全白金レベルは、15mg/kgの遊離オキサリプラチン投与で〜7mg/g組織に比べて、リポソームでカプセル化したオキサリプラチン15mg/kg投与後は、14mg/g組織であり、注射後15〜20分でその値に達した(図10A)。しかしながら、腎臓中での投与1時間後の白金レベルでは、リポソームでカプセル化したオキサリプラチンよりも、遊離オキサリプラチンからの値が高い。これはらは、オキサリプラチン投与後の最小値が約12〜24時間であり(5mg/g組織であり、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン投与後は1mg/g組織)、再度上昇を始める;遊離オキサリプラチン投与170時間後で、腎臓中のレベルは、7mg白金/g組織を示し、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンは、2.5mg白金/g組織を示した(図10A)。
【0122】
薬剤投与がもたらす臓器サイズの減少と重量差:
【0123】
リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン(15mg/kg)及び遊離オキサリプラチン(15mg/kg)が投与され、薬剤のi.p投与7.8及び7日後に、犠牲死させた動物は、両者の間で、体重減少、個々の臓器重量にある大きな相違を示した。

【表5】

表5.オキサリプラチン処理後、悪液質の結果としての体重減少:
リポソームオキサリプラチンの相当量を投与された動物は、全体的な重量及び臓器じゅうりょうの減少は少ないものであった。脾臓は、遊離オキサリプラチンにより最も影響を受けやすい組織のようである。
【0124】
遊離オキサリプラチン投与動物は、薬剤投与7日間で大きく体重減少を示し、体重減少は、処置時のおいて全体重の40gを超えるものと推定される。さらに、脾臓サイズの有意な減少があり、それは、白金濃度(18.5mgPt/g組織)の高い値を極端に反映している。
【0125】
遊離オキサリプラチン投与後の食欲の喪失と薬剤特性は、体重減少と脾臓サイズの減少をもたらした;このような現象は、薬剤投与7日後に犠牲死させた動物において観察され、それゆえ、i.p投与に続く、7日後では、遊離オキサリプラチンの組織チャートでは高い白金濃度値を示した。
【0126】
同様の影響が、全ての遊離オキサリプラチン組織チャートにおいて白金濃度に関する限り考えられ、7日後の時点は、濃度の増加を示している。
【0127】
5mg/kgのオキサリプラチン注射したマウスは毒性死した、このため用量は4mg/kgに下げた。リポキサール(商標)の用量は、i.v.で16mg/kgであり、毒性は、オキサリプラチンの4mg/kgより低かった。4mg/kgオキサリプラチンの抗癌効果は、ヒト腫瘍の担癌動物に16mg/kgの効果より低かった。

実施例2B
【0128】
第1相臨床試験
研究の目的は、a)副作用を予測することであり、また、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンの最大耐量(MTD)と同様に用量規定毒性(DLT)を検出することである。患者及び材料: 進行疾病をもつ全27名の患者が本研究に含まれる。全ての患者は、確立されたガイドラインに従った標準的な治療を以前に受けている。本トライアルでのエントリでは、全ての患者は、再発又は進行性の疾病である。全ての患者はステージ4(直腸結腸癌、胃癌、及び膵臓癌)の胃腸管(消化器)系癌である。本発明者らは、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンの6の異なる用量レベルを設定し、各レベルでは少なくとも3患者が含まれていた。その用量レベルは、1)100mg/m、2)150mg/m、3)200mg/m、4)250mg/m、5)300mg/m、6)350mg/m、である。8人の追加の患者が、MTDとしての300mg/mで処置された。処置は、4週間毎に、週に1度を連続した3週間で与えられた。結果:重篤な副作用は、最初の4用量(100〜250mg/m)では観られなかった。5と6のレベルでは、軽度の骨髄毒性と悪心が観られた。最も共通して観られる副作用は、グレード2の末梢神経障害であり350mg/m処置の4人全てに観察された。本発明者らは、350mg/mをDLTと、300mg/mをMTDレベルと考えた。27患者の名かで3人は、部分寛解を示し、18人が4ヶ月間、安定した疾患状態であり、平均範囲が(2〜9)であった。結論:本第1相試験では、最も共通する毒性が、300mg/m及び350mg/mの用量レベルで観られる末梢神経障害である。リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンは、よく耐えており、遊離オキサリプラチンが特別に観られている骨髄毒性と胃腸管特性等の全ての他の副作用を有意に減少している。これらの初期の結果は、治療歴のある患者でも十分な有効性を示した。
【0129】
前記の研究は、次のような第一目的をもつ、リポソームでカプセル化されたオキサリプラチン(リポキサール(商標))による臨床試験である:すなわち、a)毎週のリポキサール(商標)の漸増する投与量で、用量規定毒性(DLT)と最大耐量(MTD)を定義すること、b)治療歴のある進行した胃腸管系癌患者にリポキサール(商標)単独治療の毒性特定と薬物動態を調べることである。第二の目的は、治療効果と生存率である。
【0130】
患者及び方法:
この研究は、第1相コホート(一群)であり、リポソームにカプセル化したオキサリプラチンの用量増加試験である。本研究プロトコールは、本発明者らの所属する研究機関の審査委員会により、審査されて、承認された。制度が要求する全ての満たすインフォームドコンセントの書類が患者により読み上げられ、それらが登録状態にあるものとして署名された。
【0131】
適格基準:
全ての患者は、次の基準を満たすことが要求される。組織学的又は細胞学的に癌であることの確かな診断、二次元的に測定し得るか又は評価し得る疾病である、WHOの指定する一般状態0〜2、平均余命3ヶ月以上、標準又は初回化学療法による治療歴であること、エントリ時に、何らかの以前の細胞毒性治療に無効であったこと、の少なくとも1つであること。患者は、2又は3つの以前の(治療)コースを受けていた場合は、少なくとも3週間の治療休止期間があることの適格者であった。
【0132】
評価:
年齢が18歳以上の適格を有する患者は、WBC数3.5x10/l、好中球の絶対数1.5x10/l、血小板数100x10/l、ヘモグロビン値9g/dl、総ビリルビンレベル1.5g/dl、ALT及びASTは、肝転移が無い状態で上限2倍、確認された転移がある場合は、上限5倍、及び、クレアチニンレベルが1.5mg/dlであることにより測定される、十分な血液学的機能、腎機能、肝機能が要求される。病歴、身体的検査、生命兆候の評価、心電図、コンピュータ断層撮影(CT)(又は超音波)、が治療前に行われた。治療期間中(各コースの1日前に)血球数、血中尿素、血糖値、血清クレアチニン、尿酸試験、及び、ECGが行われた。CTスキャン評価は、少なくとも8週薬剤点滴後に行うか、又は、初期の進行中の疾病時に行った。
治療
【0133】
薬剤の特徴:
3mg/mlで、50ml毎のガラスバイアル(小瓶)で、ガラスバイアルにつき150mgのオキサリプラチンで提供された。リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンは、摂氏4度で、不透明な外観で保存しなければならない。リポソーム性薬剤の特性:リポソームにカプセル化されるオキサリプラチンは、1〜5%デキストラロースで希釈され、連続する8週間週に1度点滴静脈内投与を3時間で行う。副作用がある場合及び特別に骨髄又は神経毒性があるばあいは、治療投与は1週間遅らせる。前又は後の水分補給は必要ではない。抗悪心剤又は抗アレルギー剤のような他の薬剤がないように予防的な計画がされる。悪心又は嘔吐の場合には、制吐剤(オンダンセトロン)又は抗アレルギー剤(デキサメサゾン)が投与される。
【0134】
先行する動物試験では、400mg/mから600mg/mが、MTDとして定義された。ヒトにおいては、レベル1に対して100mg/mの用量から出発することにした。用量の増加は、1レベルにつき、50mg/mとすることにした。表1には、患者群毎のリポソームにカプセル化されたオキサリプラチンの用量増加が提示されている。
【0135】
薬剤に関連する毒性が治療の各サイクルにおいて評価されWHO基準にしたがって、等級分がされた。DLTは、患者の50%が72時間以上続く発熱を伴う好中球数<500mmを伴うものをグレード3又は4と定義した。グレード3の他の毒性及び特定の神経障害については、患者の50%以上であれば、グレード3と、またみなした。DLTよりも低いレベルである用量がMTDとして定義された。一群最小3人の患者が各用量レベルでエントリに組み込まれた。すべての3人の患者が前の用量での最初のサイクルの治療を受けた後に、次のより高いレベルへ用量増加が進めた。そして、各患者は、DLTの兆候のないことを3週間観察された。もしも、そのレベルの最初の患者が治療の3週間の期間でDLTを経験した場合は、追加の2人の患者は、所与の用量で参加した。治療は、DLTの発生により終了し、その患者は一つ低いレベルで継続した。
【0136】
薬物動態:
薬物動態研究のために、患者は、次の時間で採決された;すなわち、0(薬剤点滴前)及び点滴後2、4、8、24、48、72、120(5日)、及び、168時間(7日)後である。3mlの血液がEDTA又はヘパリン処理チューブに引き抜かれ、次いで遠心され、2℃の冷蔵し、最終的に、前白金レベルを分析する研究機関に送られた。5患者のサンプルが用いられた。白金レベルは(全量及び血清限外濾液中)が原子吸光度により測定された(Perkin Elmer AA 700 Graphite Furnace Atomic Absorption Spectrometer at Regulon A.E.)。それは、用量レベル(例えば、200mg及び300mgm2):血漿中濃度曲線から下の面積(AUC)、及びCmax(血清中の白金量の最高値)である。全身クリアランスは、CL=Div/AUCから計算されたが、ここで、Divは、リポプラチン(商標)の静脈内投与であり、AUCは、特定用量での曲線より下の面積である。Kel(排泄速度定数)は、式:
KeI=[Ln(Cp1)−Ln(Cp2)]/(t2−t1)
からの血漿中濃度−時間曲線の対数の線形回帰分析により計算したが、ここで、t1及びt2は、測定の最初と最後の時点であり、Cp1及びCp2は、各々、t1及びt2時点における、血清中の全白金濃度である。
【0137】
そのt1/2(排泄の半減期)は式t1/2=0.693(1/Kel)から計算した。1/Kelは、MRT(平均滞留時間:mean residence time)であり、半減期の統計的類似性である(Gibaldi等、1982)。事実上、MRTは、投与された量の63.2%が排泄される時間を現す。
【0138】
結果:
患者:
患者の特徴は表5に示している。合計27名の患者が登録された。年齢は32歳〜78歳であり、平均62歳であり、男性18名、女性9名である。P.S.は、0〜2である。すべての患者は、化学療法の治療歴がある。(腫瘍毎の前治療が行われていた。)
【0139】
リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンによるG.I毒性は、無視できた。抗 嘔吐剤(オンダンセトロン)無しで、悪心又は軽度の嘔吐がみられた。しかし、オンダンセトロンを使った場合は、悪心・嘔吐はみられなかった。下痢もみられなかった。グレードIの軽度の骨髄毒性(好中球減少)が患者の2(%)にのみ高用量(350mg/m)で認められた。肝毒性、腎毒性、心毒性、脱毛は、みられなかった。
【0140】
主たる副作用は、神経毒性であり、薬剤の少なくとも3回の点滴後に認められ、第3レベルと第4レベルでグレード1が、第5レベルでグレード2が、第6レベルで100%の患者にグレード2が認められた。
【0141】
このような結果に基づくと、グレード3の神経毒性は、350mg/m投与の100%の患者にみられ、用量規定毒性と考えられる。300mg/以下の用量の1つは、最大耐量(MTD)と定義された。表5は、リポソームにカプセル化されたオキサリプラチンの増量と各6レベルで投与された患者数が表されている。
【0142】
薬物動態:
その結果は、表7、図15及び16に示した。血漿中のオキサリプラチの半減期は24時間であり、尿中排泄は、7日間でまとめた。
【0143】
治療への承諾:
合計104の点滴(サイクル)が1患者あたり平均4サイクル(2〜15の範囲)で投与された。サイクル間の平均感覚は7日であった。用量の段階は、100%計画に基づいていた。グレード3又は4の血液毒性は認められなかったので、治療が遅延した患者はなかった。第4点滴サイクル又は第5点滴サイクル後に、350mを投与された患者にのみ300mgmという低用量に分類される前に、2週間の間隔をもたせた。ある患者は、4〜6サイクル後に疾病の進行のために治療を中止した。これは、17人の患者に(62.9%)の患者に適用された。12人の患者は、本研究の終了時にまだ、生存していた(44.4%)。死因は疾病の進行であった。
【0144】
治療に対する寛解:
寛解は、強度(intension)−治療ベースで分析した。完全寛解例はなかった。27人中3人(11.1%)に部分治癒が認められた。これらの患者は、胃癌が2人で、その1人には胸膜滲出があり、他には骨髄転移があった;第3の患者は、直腸癌から肝転移をもつ患者であった。部分寛解の確認は、最初の患者は、CTスキャンに基づき、第2番目の患者は骨スキャンに基づき、第3番の患者は、CTスキャンと血清ビリルビン値に基づいた。2つの図を提示した:すなわち、第2番の患者における治療前と治療後における骨スキャン(図1)と、第3番の患者における血清ビリルビンレベル曲線である。例外的に、第3番の患者は血清ビリルビンレベルが51mg/dlのときに治療され、2コースの終了後レベルは8mg/dlに低下した。5週間持続した。
【0145】
寛解の期間は、各患者毎に、各々、4、7、2ヶ月間であった。18人の患者が、安定な疾病を平均4ヶ月間は示した(2〜9月の範囲で)。5人の患者は、軽度の効果のため有効ではないと分類され、6人の患者は疾病の進行を示した。3人の寛解例のすべてにおいて、マーカCA−19−9の50%かそれ以上の減少があった。同様に、一般状態のレベルは、寛解例3人中の2人から1人に改善がみられた。
【0146】
結論:
リポソームでカプセル化されたオキサリプラチンが、本試験において単独治療で(1薬剤での治療)で胃腸管系の進行性癌をもつ患者において試験された。全ての患者は、標準的な治療歴があり、直腸結腸癌をもつ全ての患者は、遊離オキサリプラチンによる治療歴があった。このリポソームでカプセル化されたオキサリプラチンによる治療は、前臨床研究の前にのみ試験された。他の臨床試験は、これ以前には行われなかった。本臨床試験は、前臨床試験のデータに基づいて行われ、そして、リポソーム化されていないオキサリプラチン(遊離)の経験とデータに基づいて行われた。最後のものは、裸の(遊離の)オキサリプラチンに対してリポソームにカプセル化されたオキサリプラチンの類似性と相違を推測させることにおいて、本試験に焦点をあてることに主に助けとなった。G.I.と血液毒性の低下は、大きく減少した。ほとんど変わらず、維持された副作用は、神経毒性のみであった。それはしばしば見られ、薬剤用量を増加させるにつれて、多少なりとも、同じように、増加し、用量規定毒性を定義する唯一のかつ主たる基準として働いた。定義された用量のMLDは、週1回の300mg/m投与であった。リポソームでないオキサリプラチンで起こったと同様の付加的な神経毒性がまたみられた(参考文献)。有効性においては、治療歴のある難治性であることが確定した腫瘍に対して11%の寛解率が見られた。この地検のために選択されたタイプの癌は、化学療法剤に最も感受性のある癌ではない点は重要な点である。
【0147】
この研究は、MTDを設定した、また、さらなる研究は、他の薬剤との併用が特に必要である。
【0148】
結果として、この実施例は、リポソームのオキサリプラチンは、優れた認容できる薬剤であるであることを示している。300mg/m2の用量がMTDと定義された。このG.I.−管(消化管)と骨髄毒性は、オキサリプラチンの裸のタイプに比べて大変減少した。残っている唯一の副作用は、神経毒性であり、DLTを定義する1つである。
【表6】

表6.リポソームにカプセル化されたオキサリプラチン(リポキサール(商標))の用量増加。
【表7】

表7.患者の基本特性
【0149】

【表8】

表8.血漿薬物動態はパラメータは、患者におけるリポキサールを評価する。
(明細書中のパラメータの定義を参照)

【表9】


【表10】

【0150】
参考文献
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【0151】

【表11】










表11
【0152】
実施例3
【0153】
治療歴のある進行した膵臓癌患者におけるリポソームにしたシスプラチンとゲムシタビンの併用:第1〜2相試験
目的:
本明細書に記載した試験は、新しいリポソームにカプセル化したシスプラチン(リポプラチン(商標)というブランド名で生産、Mountain View, CAで製造)に基づく、第1〜2相試験である。従前の前臨床試験及び臨床試験のデータ(第1相薬物動態)は、リポプラチン(商標)とゲムシタビンの関与する併用治療法の研究へ導いた。
【0154】
患者及び方法:
ゲムシタビンの用量は、標準の1000mg/mに維持し、リポプラチン(商標)は、25mg/m〜125mg/mに増量した。治療は、ゲムシタビンを含む以前の化学療法に無効であった進行性の治療歴のある膵臓癌患者に行われた。
【0155】
125mg/mでのリポプラチン(商標)は、用量規定毒性(DLT)と、100mg/mが、最大耐量(MTD)と、1000mg/mのゲムシタビンとの併用において、定義された。初期の目的である寛解率のデータは、2/24が部分寛解(8.3%)、平均3ヶ月の期間(範囲2〜7ヶ月)の疾病安定は14患者(58.3%);8患者に臨床上の何らかの改善(33.3%)を示した。
【0156】
結論:
リポソームにカプセル化されたシスプラチンは、裸のシスプラチンに対して無毒の代替剤である。ゲムシタビンとの併用において、100mg/mのMTDをもつこと、それに、難治性膵臓癌に期待できる効果を示した。
【0157】
シスプラチン、cis−PtCl(NH)は、膀胱癌、頭部癌、頸部癌、肺癌、胃腸管癌、及び多くの他の腫瘍と同様に、睾丸腫瘍および卵巣癌の治療に世界中で使われている(文献1〜7)。これらの腫瘍に対して、大変有効であるにもかかわらず、シスプラチンは、腎毒性(文献8)、聴覚神経、神経障害、及び、悪心・嘔吐(文献7〜9)を含む重篤な副作用を伴うことがわかっている。また、シスプラチンのアナログであるカルボプラチンは、シスプラチンよりも、腎臓と神経系の毒性が著しく低い、また、悪心、嘔吐も少ない。一方、一般的には(そして、卵巣癌と非細胞肺癌に対しては確かに)、抗腫瘍効果は維持されている。しかしながら、血液学的な副作用は、シスプラチンにおけるよりも、カルボプラチンにおけう方がより頻繁である(文献10、11)。
【0158】
ヌクレオシドアナログである、ゲムシタビン(ゲムザール(商標)のブランド名で、ELi Lily社、インデアナポリス、米国)が、シスプラチンと併用により投与された、手術不可能、局所的に進行性の(非小細胞肺癌、ステージ3)又は転移(ステージ3B、4)膵臓のアデノカルシノーマをもつ患者に、第一線の治療として投与された(12〜14)。主な副作用は、骨髄毒性であった。ゲムシタビンと白金を併用を用いる利点は、白金−DNA付加体の修復に関与するDNA合成を阻害することに寄与していることである。ゲムシタビンとシスプラチンは、相乗的に働き、白金−DNA付加体の形成を増加させ、卵巣癌のライン化細胞において、リボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドプールにおける濃度および併用−依存性の変化をもたらす(15)。
【0159】
リポプラチン(商標)(レグロン社、Mountain View、CA、米国)に関する以前の研究は、次のことを示している:すなわち、低毒性である特徴、腫瘍内で濃縮される能力、免疫細胞、マクロファージから逃れること、腎臓からの遅いクリアランス、体液中からの長い循環特性、血中での半減期が36時間であること、治療上の有効性が期待されることである(16)。本第1〜2相研究において、本発明者等は、治療歴のある進行性の癌患者に対して14日毎の投与で、リポプラチン(商標)とゲムシタビンの併用の治療上の有効性と毒性特性を研究することを試みた。本研究の第一の目的は、毒性、つまり、最大耐量(MTD)を決定することであり、及び第二の目的は、寛解率と臨床上の利点を決定することである。
【0160】
患者及び方法:
18歳以上の患者であって、組織学的に又は細胞学的に膵臓のアデノカルシノーマであって、二次元的に測定可能な疾病であり、化学療法の治療歴があり、再発性であるか、又は、非寛解性の疾病であるものが、本研究で登録された。他の適格基準は、世界保健機構(WHO)の一般状態(PS)が0〜2、平均余命が少なくとも3月、骨髄予備能(顆粒球1,500/dl以上、血小板120,000/dl以上)、正常な腎(血清クレアチニン濃度、1.2mg/dl以下)、及び肝機能試験(総血清ビリルビン濃度、3mg/dl以下、血清トランスアミナーゼ及び血清中蛋白は正常)、臨床的に不安定な狭心症、又は、心筋梗塞、鬱血性心不全が、6ヶ月以前にない、中枢神経系の関与、の履歴をもたないことであること等を含んでいる。従前の外科手術は、3週間以前のものは許される。感染症、栄養失調、二次原発腫瘍(非メラノーマ、皮膚エピテリオーマ、又は、in situ頸癌は除外された。)は、本研究から除外した。すべての患者は、本研究に参加するための書面によるインフォームドコンセントが与えられた。
【0161】
治療計画:
計画は、リポプラチン(商標)をゲムシタビンと併用することであった。リポプラチン(商標)は、レグロン社(Regulon Inc.)により供給され、第1日と第15日にi.v.点滴により投与した。第1相試験で本発明者らの経験に基づいて副作用を抑制するために8時間を選んだ。ゲムシタビンは、1000mg/mの用量で第1日と第15日に500mlの正常な生理食塩水で60分、i.v.点滴により与えられ、サイクルは、4週間毎に繰り返えされた(28日間)。第1日と第15日の点滴を1サイクルとみなした。薬剤に関連した副作用から十分に回復した場合には、患者は、標準的なオンダンセトロン抗悪心剤ガすべての患者に投与された。組み替えヒト顆粒球コロニ刺激因子(rhG−CSF)の予防的な投与は認めなかった。グレード3の好中球減少の場合、ペグフィルグラスチム6mgの引き続いて点滴投与が第6日又は第7日にされ、治療が1週間延期された。治療は、少なくとも3サイクル、又は、疾病進行があるまで継続された。研究は、第1相/第2相、リポプラチン(商標)とゲムシタビンの用量増加試験である。その目的は、併用の用量規定毒性(DLT)を定めること及び最大耐量(MTD)を第2相試験に推薦する用量を定義することであり、また、膵臓癌をもつ治療歴のある患者に薬剤の有効性に関する初期データを集めることである。単独薬剤としてリポプラチン(商標)による骨髄毒性は、以前の第1相試験では、軽度とみなされた(16)。本発明者等は、リポプラチン(商標)の低用量でスタートし、骨髄毒性剤であるゲムシタビンと併用し、主に、骨髄副作用の拡大を調べるためである。リポプラチン(商標)のスタート用量は、25mg/mレベルであった(表1)。プロトコールは、病院の倫理及び科学委員会により承認された。
【0162】
用量決定基準は、血液学的パラメータに基づいた。グレード3及び4の場合は、発熱性の好中球減少の場合は、ペリフィルグラスティムの予防的投与が、記載したように、引き続き周期的に繰り返された。グレード3又は4の好中球減少の場合は、rhG−CSFの投与にもかかわらず、ゲムシタビンとリポプラチン(商標)の投与量は、引き続く点滴投与においては、25%減少させた。5日間以上続くグレード3又は4の血小板減少症の場合は、両薬剤の用量は、また、25%減少させた。毒性は、WHOガイドラインに基づきグレード分けした。
【0163】
患者評価:
治療前評価には、白血球分画、血漿板数を含む全血球数、身体的検査、標準的な生化学的検査項目(必要な場合はクレアチニン クリアランス)、血清中の癌胎児性抗原(CEA)、及び、CA19−9の決定、心電図、胸部X腺、上腹部の超音波、及び、胸部、上腹部、下腹部のコンピュータトモグラフィ(CT)スキャンを含むものである。追加的な画像検討が臨床上の指示に従って行われた。全白血球分画が、毎週行われた;グレード3又は4の好中球減少、グレード4の血漿板減少の場合は、顆粒球の絶対数1000以上、血漿板数75000/dl以上になるまで毎日調べた。詳細な医学的身体的検査は、処置の各コースの前に疾病の症候と治療毒性を記録するために完了させた。生化学的試験、ECG,血清CEA,及びCA19−9決定、胸部X腺は、6週間毎に行い、神経系の評価は、臨床検査により行った。病巣部位は、身体的に又は胸部X腺により評価可能であれば、各サイクル後に測定した。超音波又はCTスキャンによる評価し得る病巣は3治療サイクル後に評価した。
【0164】
完全寛解(CR)は、全ての測定し得る又は評価し得る疾病、兆候、症候、腫瘍に関連する生化学的変化の少なくとも4週間の消失を意味し、その期間は、新しい病巣が現れないものをいう。部分寛解(PR)は、処置前の測定値に比べて、全ての測定し得る病巣の垂直径の積の総和が50%以上の減少であり、少なくとも4週間続き、新しい病巣が現れず、既存の病巣が増大していないものと定義された。肝臓の病巣にとっては、鎖骨中線での肋骨線から肝縁部までと、剣状突起での肋骨線から肝縁部までの測定距離の和が30%以上減少していることが必要とした。安定疾病(SD)は、50%以下の減少と、全ての測定した病巣の2つの垂直径の積の和における増加が25%以下であること、また、8週間新しい病巣が現れないことと定義された。進行性疾病(PD)は、あらゆる測定し得る病巣の2つの垂直径の積が本研究のエントリ時に存していたサイズより25%以上であるか、又は、寛解した患者でも最大退縮のサイズの時、新しい腫瘍疾病の部位の出現したもの、と定義された。内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)、又は、ステントセット後の回復しないビリルビン上昇は、疾病の進行とみなされた。一般状態において2つの不利なステップ、治療前より10%以上の体重減少、又は症候の増加は、それ自体では疾病の進行を構成しないが、これらの病状の出現は、疾病拡大の新しい評価につながった。全ての寛解は、少なくとも4週間維持しなければならず、放射線専門家により独立し平行して確認された。
【0165】
結果:
患者の統計:
2003年1月から2004年12月まで、24患者(男性11名、女性13名、平均年齢66歳、範囲47〜80歳)が、本研究に登録された。患者の特徴は、表2に示している。WHO一般状態は、患者の4.2%が0であり、45.8%が1であり、50%がでであった。患者の殆どが、ステージ4(79.2%)であった。全ての患者は、治療歴をもっていた:11名の患者がゲムシタビンによる単剤治療をうけており、13名がゲムシタビンにイリノテカンの併用をうけていた。
【0166】
用量程度:
患者は、36コース(2週間毎に108の点滴)を受けており、コースの平均数は、2(1〜5の範囲)であった。24人の患者中、10人は3コースを終了した。いずれの薬剤についても減量はなく、計画した用量強度の第4用量レベルまでの(93〜100%の範囲)を受入れた。
【0167】
毒性:
神経毒性又は腎毒性は観察されなかった。2から4分間続き、自ら改善した一時的な腹痛は、リポプラチン(商標)の点滴の始めにおいて10/24患者にみられた。グレー路3の骨髄毒性が、第5レベル用量における4名の患者中の2名に認められた。発熱を伴う好中球減少は観られなかった。毒性は表3と表4に示している。レベル5の用量(リポプラチン125mg/mとゲムシタビン1000mg/m)、DLTであり、レベル4の用量は、MTDとみなされた。4人の追加された患者は、第4レベルの用量で治療された。
【0168】
治療に対する寛解:
コンピュータ断層撮影による測定し得る寛解の判断は、2人の独立した放射線専門家により、また、2人の経験ある癌専門医により行われた。完全寛解は認められなかった。PRは、6及び5ヶ月の期間内で2人の患者(8.3%)で達成された。安定疾病は、平均3ヶ月(2〜7ヶ月の範囲)で14患者(58.3%)に認められた。疼痛減少を主な理由とする臨床上の利点は、8人の患者(33.3%)に認められた。試験の終了時に、7名の患者が生存していた(29.2%)。第2線治療の開始からの平均生存期間は、4ヶ月(2〜8+月)の範囲であった。
【0169】
結論:
この新規なリポソームにカプセル化されたシスプラチン、(リポプラチン(商標))は、腎毒性を回避していることを主な特徴とするが、腎毒性は、有効性がもたらされると同時に、シスプラチンの投与でしばしばみられるものである。リポプラチン(商標)の薬物動態は、患者での臨床においても動物試験と同様に示されているように、シスプラチンとは、異なっている(16)。毒性のないことは、大きな利点であり、それは、シスプラチンが、単剤で投与されたときに示されている。本第1相及び第2相試験においては、毒性と有効性が、シスプラチンをゲムシタビンと併用投与によって検討された。ゲムシタビンの毒性は、十分に定義されており、多剤との併用した時においても一部は定義されている(5)。シスプラチンとゲムシタビンの併用が、同様に、非小細胞肺癌、尿路上皮癌、膵臓癌の治療で用いられた(5、7、12)。本研究のデータは、大変低い毒性の利点を示しているように思われる。併用による2週間毎の投与は、ゲムシタビンが1000mg/mという標準の用量を維持している場合には、リポプラチン(商標)100mg/mまでは大変よく耐えている。リポプラチン125mg/mの投与では、骨髄毒性がグレード3及び4に達した、それゆえ、この用量がDLTであるとみなされた。100mg/mのリポプラチン(商標)と1g/mのゲムシタビンが、MTDであるとみなされた。併用は、患者の目的の寛解の8.33%を、疾病の安定は、58.3%を、疼痛の緩和は33.3%を達成した。患者の全てが難治性であるか又はゲムシタビンを含む治療歴をもつ進行性であることを考慮すると、本試験でもたらされた寛解率は、リポプラチンの追加の結果であるとされるべきである。
【0170】
ゲムシタビンと併用されたリポソームにカプセル化されたシスプラチンは、2週間毎に進行性膵臓癌患者に投与され、100mg/mと1000mg/mのMTDを各々である。知慮うによく耐え、有効性は、前途有望な兆しである。
【0171】
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【0172】
【表1】


表1.リポプラチン(商標)とゲムシタビンの用量増加。
表は、用量レベル、患者数、リポプラチン(商標)(mg/m、毎週)及びゲムシタビンの投与量(mg/m、毎週)を示す。第1:4、25、1000であり、第2:4、50、1000であり、第3:4、75、1000であり、第4:4+4、100、1000であり、第5:4、125、1000である。
【0173】
【表2】

表2.基本状態(数、%)における患者の特徴
患者数%、24、100であり、年齢(yr)は、平均66(47〜80の範囲)であり、性別(男性11名45.8%;女性13名、54.2%)、一般状態(WHO)は、0が、14.2%、1が11,45.8%、2が12名、50.0%である。疾病状態は、IIIが、5名、20.8%であり、IVが19名、79.2%である。組織は、十分な分化が3名、12.5%であり、中程度の分化が、12名50.0%であり、低分化が9名、37.5%である。治療歴は、ゲムシタビン1g/mで第1、8、15日4週間毎が11名45.8%、ゲムシタビン900mg/m、第1、8日/3週間毎、プラス13名54.2%、イリノテカン300mg/m、第8日/3週間毎。
【0174】
【表3】

表3.血液学的毒性
用量レベルによる毒性リポプラチン(商標)、ゲムシタビンの毒性;最大毒性(mg/m;mg/m)、患者数、毒性タイプ。第1レベルは、25,1000であり、第2レベルは、50,1000であり、第3レベルは、75,1000であり、第4レベルは、100,1000、2/4,*2〜3,好中球、第5レベルは、125,1000、2/4、3〜4の好中球*、当初4患者。
【0175】
【表4】

表4.非血液学的毒性
用量グレード1、グレード2,グレード3,グレード4,レベルn(%)、n(%)、n(%)、n(%)、悪心5名(20.8%)、−嘔吐2名(8.3%)、脱毛14名(58.3%)、疲労8名(33.3%)、下痢2名(8.3%)、心毒性、なし;神経毒性3名、(12.5%)、血栓症の出現、4名(16.7%)。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、リポソームオキサリプラチン(黄色長方形)のスキームによる説明を示す図である。リピッド分子は、球形の親水性の頭部をもって描かれている。粒子表面上の赤色のランダム鎖は、肝臓中マクロファージによる破壊、血液中でのオプソニン化(血清蛋白及び他の高分子との相互作用)全身への分布後(100nmの小サイズ)固形腫瘍及び転移部位への侵出から逃れる能力を粒子に与えるPEG分子を表している。
【図2】図2は、直腸癌と肝転移を有する患者(TK)でのビリルビンレベルの減少である。その患者は、肝臓に由来する高い血中ビリルビンレベル(50mg/100ml)が進行している。200mg/mの用量でのリポソームオキサリプラチンの第1日、第8日、第15日、第22日の注射は、50〜12mg/mへのビリルビンの漸進的な減少をもたらした。おそらく、胆管を詰まられた肝転移における減少によるものであった。第31日と第37日の更なる治療は、ビリルビンレベルから推測される疾病の進行を阻止しなかった。
【図3】図3は、リポソームオキサリプラチン単独治療後の骨転移の減少。胃癌を患い骨転移のある患者(EK)が、7日毎に、150mg/mで治療した。生活の質(クオリティオブライフ)の有意な改善があり、痛みが多くなく、鎮痛剤の使用の減少、及び患者が毎日の自分の仕事をすることができた。
【図4】図4は、シスプラチンとオキサリプラチンを同一リポソーム粒子中へ共カプセル化、及び、ペプチド又はリスガンドにより認識される表面受容体と特定の細胞タイプに対しこれらを指向させるための挿入後の粒子のペプチド−PEG−リピッド結合体の改善。スキームは、リポソーム粒子の多機能化のため、及び、特異的な優先的指向性をもたせるためPEG分子末端に付けられたペプチド鎖(赤色)を図示する。この場合、腫瘍特異抗原は、リポソーム表面のペプチド分子により認識される。例えば、表面の外側に曝されている上皮細胞成長因子(EGFRの部分に結合し得るペプチドエピトープ)は、EGFR過剰発現腫瘍に前記リポソームを指向させる。
【図5A】図5Aは、オキサリプラチン投与後の全白金レベル(8mg以下の白金/ml)の最高値と比較した、リポソームカプセル化オキサリプラチン投与後の全白金レベル(14mg/1ml以下)の最高値を示す。これら最高値は、リポソームカプセル化オキサリプラチンでは、20分で達したのに対し、オキサリプラチンでは10分後に達した。
【図5B】図5Bは、遊離オキサリプラチン投与後100時間内までゼロ(無)に達するラット血漿中全白金レベルを示す図である。
【図6】図6は、リポプラチン(商標)で処理したの動物のラット血漿中の全白金レベルを示す図である。
【図7A】図7Aは、処理5時間までの動物の腎臓組織における全白金レベルを示す図である。
【図7B】図7Bは、処理190時間までの動物の腎臓組織における全白金レベルを示す図である。
【図8A】図8Aは、処理5時間までの動物における肝臓組織中の全白金レベルを示す図である。
【図8B】図8Bは、処理190時間までの動物における肝臓組織中の全白金レベルを示す図である。
【図9A】図9Aは、処理190時間までの動物における脾臓中の白金レベルを示す図である。
【図9B】図9Bは、処理190時間までの動物における脾臓中の白金レベルを示す図である。
【図10A】図10Aは、キサリプラチンとリポソームカプセル化キサリプラチン処理5時間後の動物における全白金分布を示す図である。
【図10B】図10Bは、オキサリプラチンとリポソームカプセル化キサリプラチン処理5時間後の動物における全白金分布を示す図である。
【図11A】図11Aは、リポソームオキサリプラチンで繰り返し投与したラット(11回)のチャートである。
【図11B】図11Bは、リポソームオキサリプラチンで繰り返し投与したラット(11回)のチャートである。
【図12】図12は、リポソームカプセル化したキサリプラチンの繰り返し投与(6回)したラットのチャートを示す図である。
【図13】図13は、リポプラチン(商標)は、16mg/Kgの用量を4日間隔で6回静脈内注射後のマウスにおけるヒト乳癌の完全消失を示すことができたことを示す図である。MTD(最大耐量)の投与は、マウスにおけるヒト乳癌に対して縮小のみをもたらしたが、消失には至らなかった。
【図14】図14は、16mg/kgのリポソームオキサリプラチン(リポキサール(商標))は、マウス木瀬のグラフトに対し、乳癌を根絶治療し最も良い効果である。4mg/kgの最大耐量のオキサリプラチンは、5mg/kgのリポキサール(商標)投与後このモデルマウスにおける低い抗腫瘍効果を示した。
【図15】図15は、リポソームカプセル化オキサリプラチンの臨床試験の結果を示す図である。
【図16】図16は、リポソームカプセル化オキサリプラチンの臨床試験の結果を示す図である。
【図17】図17は、PEG−DSPEへペプチドをカップリングする化学的方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキサリプラチンを含むミセルを形成する方法であって、オキサリプラチンの有効量及び負に荷電したホスファチジールグリセロールを溶媒に混合させることを含む方法。
【請求項2】
前記溶媒がエタノールであり、20〜40%である請求項1記載の方法。
【請求項3】
負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドが、ジパルミトイルホスファチジールグリセロール(DPPG)、ジミリストールホスファチジールグリセロール(DMPG)、ジアプロイルホスファチジールグリセロール(DCPG)、ジスステアロイルホスファチジールグリセロール(DSPG)又は、ジオレイルホスファチジールグリセロール(DOPG)である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
負に荷電したホスファチジールグリセロールが、DPGGである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
オキサリプラチンと負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドに対するモル比が1:1から2:1である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに定義されたオキサリプラチンミセルを前もってつくられたリポソーム又はリピッドと混合することを含むオキサリプラチンをリポソームへカプセル化する方法。
【請求項7】
前もってつくられたリポソーム又はリピッドが、負及び/又は正に荷電したリピッドを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
リピッドがホスフォリピッド又はその誘導体である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リピッドが、DDAB(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド);DMRIE[N−1−(2,3−ジミリスチルオキシ)プロピル−N,N−ジメチル−N−(2−ハイドロキシエチル)アンモニウムブロマイド];DMTAP(1,2−ジミリストイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン);DOGS(ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン);DOTAP[N−(1−(2,3− ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド];DOTMA{N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−n,n,n−トリメチルアンモニウムクロライド}; DPTAP(1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン)、又は、DSTAP(1,2−ジステロイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン)、である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記リポソームが、1又はそれ以上のコレステロール、ホスファチジールコリン、ホスファチジールエタノールアミン、水素化した大豆ホスファチジールコリン又はセラミドを含む請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前もってつくられたリポソームが、さらに、アンモニウム塩を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
オキシリプラチンをリポソーム中にカプセル化する方法であって、次の工程:
(e)オキサリプラチンの有効量と負に荷電したホスファチジールグリセロールを溶媒と混ぜ合せることによる、オキサリプラチンを含むミセルを形成する工程、および、
(f)前もってつくられたリポソーム又はリピッドにオキサリプラチンミセルを混ぜ合わせる工程、
を含む方法。
【請求項13】
前記溶媒が、エタノールであり、20〜40%である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
負に荷電したホスファチジールグリセロールが、DPPG、DMPG、DCPG又はDOPGである請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
負に荷電したホスファチジールグリセロールが、DPPGである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
オキサリプラチンの負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドのモル比が、1:1〜1:2である請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
リポソーム膜の表面をポリマーで被覆することをさらに含む請求項6〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
リガンドが、ポリマに結合した請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記リガンドが、前記リガンドにより認識される表面受容体をもつ特定の細胞のタイプに対してリポソームを指向(導いている)することができる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記リガンドが、ペプチドである請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記リガンドが、上皮細胞成長因子、または、そのエピトープ、エンドスタチン、アンチトロンビン、アナステリン、アンギオスタチン、PEX、又は、色素上皮由来因子から選択される請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ミセル又はリポソーム中で別の抗癌剤を含有することをさらに含む請求項1〜21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗癌剤が、シスプラチン、パクリタキセル、SN38、ドセタキセル、イリノテカン、5−フルオロデオキシウリジン又はドキソルビシンから選択される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜5の方法により得られたミセル。
【請求項25】
オキサリプラチンの有効量と負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドを含むミセル。
【請求項26】
前記ホスファチジールグリセロールリピッドが、DPPGである請求項25に記載のミセル。
【請求項27】
別の抗癌剤をさらに含む請求項25〜26のいずれか1項に記載のミセル。
【請求項28】
抗癌剤が、シスプラチン、パクリタキセル、SN38、ドセタキセル、イリノテカン、5−フルオロデオキシウリジン又はドキソルビシンから選択される請求項27に記載のミセル。
【請求項29】
請求項6〜23に記載のいずれかの方法により得られたオキサリプラチンを含むリポソーム。
【請求項30】
オキサリプラチンの有効量を含むリポソームであって、前記リポソームの内層と外層が異なるリピッドを含むリポソーム。
【請求項31】
負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドを含む請求項30に記載のリポソーム。
【請求項32】
前記ホスファチジールグリセロールリピッドが、DPPGである請求項31に記載のミセル。
【請求項33】
コレステロール、ホスファチジールコリン、ホスファチジールエタノールアミン、水素化したホスファチジールコリン、および、セラミドの1以上をさらに含む請求項32に記載のリポソーム。
【請求項34】
前記リポソームの表面が、免疫監視を逃れ得るコーティング物により被覆された請求項30〜33のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項35】
前記コーティング物がポリマである請求項34に記載のリポソーム。
【請求項36】
前記ポリマがPEGである請求項35に記載のリポソーム。
【請求項37】
リガンドが、前記ポリマに共有結合している請求項35又は36に記載のリポソーム。
【請求項38】
前記リガンドが、前記リガンドにより認識される表面受容体をもつ特定のタイプの細胞に対し、リポソームを指向することができる請求項37に記載のリポソーム。
【請求項39】
リガンドが、ペプチドである、請求項37又は38に記載のリポソーム。
【請求項40】
前記リガンドが、上皮細胞成長因子又はそのエピトープ、エンドスタチン、アンチトロンビン、アナステリン、アンギオスタチン、PEX、又は、色素上皮由来因子から選択される請求項37に記載のリポソーム。
【請求項41】
前記リポソームが、粒子径80〜120nmである請求項28〜40のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項42】
前記オキサリプラチンと他の薬剤が同一リポソーム中にカプセル化されることを特徴とする別の抗癌剤の有効量をさらに含む請求項28〜38のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項43】
前記抗癌剤が、シスプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン、ナベルビン、ドキソルビシン、イリノテカン、SN38、又は、5−フルオロデオキシウリジンから選択される請求項39に記載のリポソーム。
【請求項44】
オキサリプラチンと他の薬剤が同一リポソーム中にカプセル化されることを特徴とする抗癌遺伝子の有効量をさらに含む請求項28〜38に記載のリポソーム。
【請求項45】
抗癌遺伝子が、p53、IL−2、IL−12、アンギオスタチン、及び、オンコスタチンである請求項44に記載のリポソーム。
【請求項46】
癌治療薬としての使用のための請求項27〜45のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項47】
癌治療用薬剤の製造における請求項27〜45のいずれか1項に記載のリポソームの使用。
【請求項48】
請求項27〜45のいずれか1項に定義されたリポソームを投与することを含む癌治療方法。
【請求項49】
前記リポソームが、点滴静注で3時間による毎週投与、又は隔週投与され、オキサリプラチンが100〜350mg/mの用量である請求項46に記載の使用又は、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記用量が、100、150、200、250又は300mg/mである請求項48に記載の使用又は方法。
【請求項51】
前記用量が、300mg/mである請求項49に記載の使用又は方法。
【請求項52】
点滴が、毎週一度の3時間点滴である請求項48〜50のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項53】
投与が、2〜4サイクルであり、各サイクルが約8週間続き、サイクルの間に1週間の休みが続く、請求項48〜51のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項54】
前記癌が、直腸結腸癌、胃癌、膵臓癌、膀胱癌、乳癌、食道癌、尿路上皮癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、頭首部癌、メラノーマ、卵巣癌から選択される請求項48〜51のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項55】
前記癌が、直腸結腸癌、胃癌、又は、膵臓癌である請求項53に記載の使用又は方法。
【請求項56】
オキサリプラチンの有効量、別の抗癌剤、又は抗癌遺伝子及び負に荷電したホスファチジールグリセロールリピッドを含むリポソーム。
【請求項57】
オキサリプラチンの有効量をカプセル化しており、また、別の抗癌剤又は抗癌遺伝子をカプセル化しているリポソームを投与することを含む併用治療。
【請求項58】
前記抗癌剤が、シスプラチン、パクリタキセル、SN38、イリノテカン、5−フルオロデオキシウリジン、又は、ドキソルビシンから選択される請求項55又は56に記載のリポソーム。
【請求項59】
シスプラチンの有効量をカプセル化しているリポソームとゲムシタビンの有効量の投与を含む併用治療。
【請求項60】
ゲムシタビンが、シスプラチンのリポソームの一部を形成していない請求項58に記載の併用治療。
【請求項61】
ゲムシタビンが、シスプラチンのリポソームと同時に投与される請求項58又は60に記載の併用治療。
【請求項62】
ゲムシタビンが、シスプラチンのリポソームとは異なる時に投与される請求項58又は60に記載の併用治療。
【請求項63】
前記癌が、膵臓癌、直腸結腸癌、胃癌、乳癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、頭首部癌、前立腺癌、精巣癌、腸癌、膀胱癌、食道癌、又は、尿路上皮癌である請求項58〜62のいずれか1項に記載の併用治療。
【請求項64】
ゲムシタビンが、800〜1000mg/mの用量で投与される請求項58〜63のいずれか1項に記載の併用治療。
【請求項65】
ゲムシタビンが、点滴静脈内投与により1000mg/mの用量で投与される請求項64に記載の併用治療。
【請求項66】
ゲムシタビンが、隔週60分の点滴静脈内投与される請求項64又は65に記載の併用治療。
【請求項67】
前記シスプラチンリポソームが、100〜125mg/mの用量で点滴静脈内投与される請求項58〜66のいずれか1項に記載の併用治療。
【請求項68】
前記シスプラチンリポソームが、隔週で8時間のIV点滴静脈内投与される請求項67に記載の併用治療。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−528340(P2009−528340A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556861(P2008−556861)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【国際出願番号】PCT/GR2007/000015
【国際公開番号】WO2007/099377
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(508263888)
【Fターム(参考)】