説明

【課題】本発明は、OBCAMおよびNTM遺伝子と関係がある癌の診断、予後および治療の方法を提供する。本発明の方法は、卵巣癌および結腸直腸癌に非常に適している。
【解決手段】患者の癌を診断する方法であって、
(i)患者から核酸を含むサンプルを得るステップ、および
(ii)前記核酸を
(a)OBCAM遺伝子もしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、OBCAMのcDNAもしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、それらの相補体、あるいは
(b)NTM遺伝子もしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、NTMのcDNAもしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、それらの相補体、あるいは
(c)(a)と(b)の両方
と接触させるステップを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癌、特に卵巣癌および結腸直腸癌に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は重大な疾患であり、主たる死因である。近年、いくつかの癌の診断および治療においては進展があるが、診断および治療を改善する必要性が依然として存在する。
【0003】
癌は遺伝性疾患であり、たいていの場合、1つまたは複数の遺伝子の変異と関係がある。ヒトゲノム中には約30〜40,000個の遺伝子が存在すると考えられているが、これらの遺伝子の一握りのみが癌と関係があることが示されている。現在同定されている遺伝子よりも多くの遺伝子が、癌と関係があることが発見されるであろうことが推量されるが、分子の分析技法が利用可能であるにもかかわらず、この分野の進歩は依然として遅い。これは、今日までに同定されている遺伝子のさまざまな構造および機能のためである可能性があり、このことは、癌遺伝子が多くの形をとり、多くの異なる機能を有することができることを示唆している。
【0004】
卵巣癌は、西側の世界では婦人科学上の悪性腫瘍の最も頻度の高い死因であり、イングランドおよびウェールズでは5,500の新しい症例が毎年発生する。卵巣癌は、アメリカ人女性の癌による死亡の第4の最も一般的な原因である。上皮性卵巣癌を有する大部分の患者は、この疾患の進行段階にある。したがって、白金及びタクソールなどの新しい薬剤の導入にもかかわらず、充分な外科手術及び化学療法の後での、5年の生存率はわずか30%である(Advanced Ovarian Cancer Trialists Group(1991)BMJ 303、884-893;Ozols(1995)Semin Oncol.22、61-66)。しかしながら、第I段階の疾患(卵巣に限る)を有する患者は、5年の生存率が70%であり良い。したがって、生存に対する有意な影響を与えるために、転移前に癌を検出するための技法を有することが望ましい。
【0005】
上皮性卵巣癌は、卵巣癌の70〜80%を構成し、局所的な良性腫瘍、および境界的な悪性の可能性の新生物から侵襲性腺癌の範囲に及ぶ、広範囲の病巣を含む。組織学的に、一般的な上皮性卵巣癌は、いくつかのタイプ、すなわち漿液性、ムチン性、子宮内膜性、明細胞、混合上皮性、および未分化腫瘍に分類される。組織学的なサブタイプの異質性は、腹膜および尿生殖器系の残り部分と共通な発生源を共有する、卵巣表面のミュラー型上皮の後形質の可能性を反映する。生殖細胞、性策/基質腫瘍、および肉腫は、卵巣癌の残りである。上皮性卵巣癌の組織発生的および生物学的性質は、このような腫瘍の分化またはそれらの進行に貢献する可能性がある分子遺伝学的変化と同様に、あまり理解されていない。排卵に関する疫学的要因は重要であるようであり、卵巣上皮細胞は、分裂および増殖による成長のいくつかの過程を経て、上皮表面の傷を癒す。これらのことによって、上皮封入のう胞の分化がもたらされ、明白な悪性腫瘍がそれらから生じる可能性がある(Fathalla(1971)Lancet 2、163)。
【0006】
卵巣癌のスクリーニングの概要は、Bell et al(1998)Health Technology Assessment 2、1-50中に与えられている。
【0007】
腫瘍の遺伝的変化は、癌の分化に関して重要である。多くの染色体領域(染色体3、5、6、8、11、13、17、18、22およびX)は、突発性卵巣癌の腫瘍の進行と関連がある、腫瘍抑制遺伝子を含むことが示されてきているが、p53遺伝子(染色体アーム17p)のみが、頻繁に変異することが見出されてきている(Shelling et al(1995)Br.,T.Cancer 72、521-527)。それぞれ1994年および1996年に単離された、BRCA1遺伝子(染色体アーム17q)およびBRCA2遺伝子(染色体アーム13q)は、家族性乳癌/卵巣癌を有する一部分の患者で変異する(Ford & Easton(1995)Br.J.Cancer 72、805-812)。家族性の卵巣癌は、卵巣腫瘍全体のわずか5〜10%を占める。突発性卵巣癌を有する患者からの腫瘍では、BRCA1遺伝子のわずか5つの変異体、BRCA2遺伝子の4つの変異体が報告されてきており(Takahashi et al(1995)Cancer Res.55、2998-3002;Takahashi et al(1996)Cancer Res.56、2738-2741)、これらは突発性卵巣癌においては珍しいことが示唆される。ミスマッチ修復遺伝子の変異は、10%の頻度で報告されてきている(Tangi et al(1996)Cancer Res.56、2501-2505;Fujita et al(1995)Int.J.Cancer 64、361-366;Orth et al(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91、9495-9499)。したがって、突発性卵巣癌の腫瘍の進行において、より重要である可能性がある遺伝子は、いまだ完全には特徴付けられていない。
【0008】
WO96/05306、WO96/05307およびWO96/05308は、ヒトの乳癌および卵巣癌の素因である遺伝子(BRCA1)を単離および検出するために使用される、方法および物質に関するものであり、その遺伝子のいくつかの変異対立遺伝子は、癌、特に乳癌および卵巣癌に対する罹患性を引き起こすと言われている。
【0009】
腫瘍抑制活性は、染色体11上にコードされていることが示唆されてきている(Tanaka et al(1991)Nature 349、340-342;Rimessi et al(1994)Oncogene 9、3467-3474;Satoh et al(1993)Mol.Carcinogenesis 7、157-164;Yoshida et al(1994)Mol.Carcinogenesis 9、114-121;Gabra et al(1996)Int.J.Oncol.8、625-631;Gabra et al(1996)Cancer Res.56、950-954;Gabra et al(1995)Br.J.Cancer 72、367-375;EP0727486;Gabra et al(1998)Proc.AACR 39、Abstract#4236;and Gabra et al(1998)Br J.Cancer 78、Poster P185)が、これらの論文はいずれも、候補となる遺伝子を同定していない。
【0010】
大腸の結腸直腸腫瘍は、西側の世界ではヒトの癌による死亡率の頻度の高い死因であり、英国では1年当たり約19,000人が死んでいる。
【0011】
結腸直腸の大部分の癌は、腺癌である(Jass and Morson(1987)J.Clin.Pathol.40、1016-1023;Morson(1974)Proc.R.Soc.Med.67、451-457)。文献は、結腸直腸癌腫の真の起源に関して意見が分かれたままであり、癌腫が、既存の良性新生物(腺腫と呼ばれる)中、腺腫〜癌腫配列と呼ばれているものの中(Muto et al(1975)Cancer 30、2251-2270)から、あるいは腺腫段階なしで(新しい)全身の異形成の領域を介して、生じる可能性があることが提案されてきている。いくつかの結腸直腸癌は腺腫に由来することが考えられるが、大部分の腺腫は、癌腫を進行させるために出現するわけではなく、実際退行させる可能性さえある(Knoernschild(1963)Surg.Forum XIV 137-138)。環境、食生活、年齢および性別に関する証拠によって、これらはすべて結腸直腸癌に関する危険因子であることが示唆されるが、いずれの場合もこれらの因子の関与が確認されていないため、結腸直腸癌腫の形成に関する根底の遺伝基盤が示唆される。大部分の結腸直腸癌は、明白な遺伝性症候群とは関連がないが、家族性大腸ポリポーシス(FPC)、ガードナー症候群、遺伝性非結腸直腸癌ポリポーシス(HNPCC)およびターコット症候群を含めた、遺伝形が存在する。
【0012】
いくつかの癌遺伝子、および腫瘍抑制遺伝子は、結腸直腸の腫瘍形成において明確な役割を果たすことが現在示されているが、一方で他の遺伝子座では、LOHと結腸直腸癌の間の相関関係は、充分には定義されていない。特に、Barx2遺伝子は、卵巣癌および結腸直腸癌と関連がある11q24-q25LOH領域において、候補となる腫瘍抑制物質であることが見出された(WO00/77252)。
【0013】
IgLON(免疫グロブリンLAMP、OBCAM、およびニューロトリミン)は、免疫グロブリン(Ig)ドメイン含有細胞接着性分子のファミリー、Igドメイン含有タンパク質(IgSF)のIgスーパーファミリーの一部である。IgLONはLAMP(膜タンパク質と結合した大脳辺縁系)、OBCAM/OPCML(オピオイド結合細胞接着性分子、以前はGP55Aと呼ばれた)、およびニューロトリミン(ヒトのNTMまたはHNT、またはヒヨコのCEPU-1)からなる。近年、IgLONファミリーは、ラットのニューロトラクチンを含むことが示されてきている(LONのkilon-Kindredはヒヨコの相同体である)。IgLONはすべてが細胞外タンパク質であり、それら自体は膜タンパク質ではなく、実際には細胞膜と直接接触さえする。その代りにIgLONは、タンパク質のC末端近くにアンカー結合した、GPI(グリコシルホスファチジルイノシトール)によって細胞膜に結合し、次いでこれが細胞膜に挿入される。したがって、今だ同定されていないGタンパク質シグナル経路とのトランスおよびシス相互作用によって、核へのシグナリング、次にIgLONの結合が行われると仮定される(Clarke and Moss(1997)Eur.J.Neurosci.9:334-41)。
【0014】
OBCAMおよびNTMをコードする遺伝子は、染色体11の11q24-q25領域に位置している。2つの遺伝子は、それぞれヌクレオチドおよびアミノ酸レベルで、約80%および76%の同一性を共有している。マウスでは、両方のタンパク質が異なる遺伝子によってもコードされており、これらの遺伝子は、マウス染色体9の近位端上、ヒト染色体11q24-q25と遺伝子が同じ染色体上にある領域に集まっているようである。したがって、これらの非常に関連した遺伝子は、ヒトとマウスの分岐よりも少なくとも前に起こった、先祖代代の遺伝子複製事象の結果として生じた可能性が最も高いようである(Struyk AF et al(1995)J.Neurosci 15(3):2141-56)。
【0015】
IgLONの機能は、ニューロン軸策の誘導、および脳の発達における細胞間の接触の脈絡において主に記載されてきている。IgLONファミリーのメンバーは、1つの細胞タイプで同時に発現させることができ、細胞表面上のそれらの相対的なレベル、および結果として生じる異好性の相互作用、さらに同性の相互作用は、IgLONの機能を説明する際に重要である可能性がある。膜の面でのホモダイマー化(三量体化も)は、NTMのシス相互作用の特徴である(Gil et al(1998)J.Neuroscience 18:9312-9325)。IgLONファミリーのメンバーが癌と関連があることは、以前には示唆されておらず、特にIgLONファミリーのメンバーが、腫瘍抑制遺伝子である可能性があることは、以前には示唆されていない。
【0016】
驚くことに、11q24-q25に位置するBarx2腫瘍抑制物質に加えて、この領域内の2つの他の遺伝子が、癌中でメチル化、変異および/または欠失することが現在見出されている。OBCAMおよびNTM遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子として、卵巣癌および結腸直腸癌と関連していると考えられる。
【0017】
この予期せぬ観察結果によって、癌、特に卵巣癌および結腸直腸癌を診断および治療する新しい方法が与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】WO96/05306
【特許文献2】WO96/05307
【特許文献3】WO96/05308
【特許文献4】EP0727486
【特許文献5】WO00/77252
【特許文献6】米国特許第5,445,934号
【特許文献7】WO96/31622
【特許文献8】WO95/22058
【特許文献9】David他の米国特許第4,376,110号および第4,486,530号
【特許文献10】米国特許第5,252,479号
【特許文献11】PCT公開出願WO93/07282
【特許文献12】1984年9月13日に公開された、Geysen、PCT公開出願WO84/03564
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Advanced Ovarian Cancer Trialists Group(1991)BMJ 303、884-893;Ozols(1995)Semin Oncol.22、61-66
【非特許文献2】Fathalla(1971)Lancet 2、163
【非特許文献3】Bell et al(1998)Health Technology Assessment 2、1-50
【非特許文献4】Shelling et al(1995)Br.,T.Cancer 72、521-527
【非特許文献5】Ford & Easton(1995)Br.J.Cancer 72、805-812
【非特許文献6】Takahashi et al(1995)Cancer Res.55、2998-3002
【非特許文献7】Takahashi et al(1996)Cancer Res.56、2738-2741
【非特許文献8】Tangi et al(1996)Cancer Res.56、2501-2505
【非特許文献9】Fujita et al(1995)Int.J.Cancer 64、361-366
【非特許文献10】Orth et al(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91、9495-9499
【非特許文献11】Tanaka et al(1991)Nature 349、340-342
【非特許文献12】Rimessi et al(1994)Oncogene 9、3467-3474
【非特許文献13】Satoh et al(1993)Mol.Carcinogenesis 7、157-164
【非特許文献14】Yoshida et al(1994)Mol.Carcinogenesis 9、114-121
【非特許文献15】Gabra et al(1996)Int.J.Oncol.8、625-631
【非特許文献16】Gabra et al(1996)CancerRes.56、950-954
【非特許文献17】Gabra et al(1995)Br.J.Cancer 72、367-375
【非特許文献18】Gabra et al(1998)Proc.AACR 39、Abstract #4236
【非特許文献19】Gabra et al(1998)Br J.Cancer 78、Poster P185
【非特許文献20】Jass and Morson(1987)J.Clin.Pathol.40、1016-1023
【非特許文献21】Morson(1974)Proc.R.Soc.Med.67、451-457
【非特許文献22】Muto et al(1975)Cancer 30、2251-2270
【非特許文献23】Knoernschild(1963)Surg.Forum XIV 137-138
【非特許文献24】Clarke and Moss(1997)Eur.J.Neurosci.9:334-41
【非特許文献25】Struyk AF et al(1995)J.Neurosci 15(3):2141-56
【非特許文献26】Gil et al(1998)J.Neuroscience 18:9312-9325
【非特許文献27】Molecular Cloning、a laboratory manual、2nd edition、Sambrook他(eds)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、USA
【非特許文献28】Jacobs et al(1988)Nucl.Acids Res.16、4637
【非特許文献29】Tyagi & Kramer(1996)Nature Biotechnology 14、303-308
【非特許文献30】「Laboratory Protocols for Mutation Detection」1996、ed.Landegren、Oxford University Press
【非特許文献31】PCR;Saiki et al(1988)Science 239、487-491
【非特許文献32】Compton(1991)Nature 350、91-92
【非特許文献33】AIDS(1993)、Vol 7(Suppl,2)
【非特許文献34】Walker et al(1992)Nucl.Acids Res.20、1691-1696
【非特許文献35】Balaguer et al(1991)「Quantification of DNA sequences obtained by polymerase chain reaction using a bioluminescence adsorbent」Anal.Biochem.195、105-110
【非特許文献36】Dilesare et al(1993)「A high-sensitivity electrochemiluminescence-based detection system for automated PCR product quantitation」BioTechniques15、152-157
【非特許文献37】Herman et al(1996)Proc.Nad.Acad.Sci.USA 93、9821-9826
【非特許文献38】Maekawa et al(2001)Clin Chem Lab Med Feb;39(2):121-8
【非特許文献39】Maekawa M et al(1999)Biochem Biophys Res Commun 262(3):671-6
【非特許文献40】Monoclonal Antibodies:A manual of techniques、H Zola(CRC Press、1988)
【非特許文献41】Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and applications、J G R Hurrell(CRC Press、1982)
【非特許文献42】Feng et al(1997)Nature Biotechnology 15、866-870
【非特許文献43】Nabel(1992)Hum.Gene Ther.3、399-410
【非特許文献44】Erickson et al(1990)Science 249、527-533
【非特許文献45】Wells(1991)Methods Enzymol.202、390-411
【非特許文献46】Knudsen AG、1971 Proc Natl Acad Sci 68(4)p820-823
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の態様は、
患者の癌を診断する方法であって、
(i)患者から核酸を含むサンプルを得るステップ、および
(ii)前記核酸を
(a)OBCAM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、あるいはOBCAMのcDNA、またはその変異対立遺伝子、またはその相補体と選択的にハイブリダイズする核酸、または
(b)NTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、あるいはNTMのcDNA、またはその変異対立遺伝子、またはその相補体と選択的にハイブリダイズする核酸、または
(c)(a)と(b)両方と、接触させるステップを含む方法を提供する。
【0021】
本発明の第2の態様は、
患者の癌の特定の結末の相対的な見通しを予測する方法であって、
(i)患者から核酸を含むサンプルを得るステップ、および
(ii)前記核酸を
(a)OBCAM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、あるいはOBCAMのcDNA、またはその変異対立遺伝子、またはその相補体と選択的にハイブリダイズする核酸、または
(b)NTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、あるいはNTMのcDNA、またはその変異対立遺伝子、またはその相補体と選択的にハイブリダイズする核酸、または
(c)(a)と(b)両方と、接触させるステップを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】物理的な位置に従って編成した、NTMおよびOBCAM遺伝子を含む11q25領域のBAC近辺の地図である。関連マイクロサテライトマーカーの相対的な位置を示す。目盛り付けはしていない。
【図2】Barx2領域(領域2)を示す染色体11q24-q25上の離れたLOH領域と、OBCAM/NTM領域(領域5)の関係を示す図である。
【図3】卵巣癌および結腸直腸癌の動原体からテロメアーの、図2に関するマイクロサテライトマーカーのLOH率を示す図である。
【図4】マーカーをどのように記録したかを示し、それぞれのマーカーの情報を与える例の数のパーセンテージとして、LOHに関する例の数を述べる図である。66%(43/65)の卵巣腫瘍、および69%(27/39)の結腸直腸腫瘍が、11q24-q25領域内で少なくとも1つの遺伝子座に関するLOHを有していた。それぞれの群の8つの腫瘍が、情報を与えるすべての遺伝子座においてLOHを有していた。
【図5】D11S4085のLOHの例、血液中の2つの対立遺伝子が保持されている2例、および卵巣癌組織中の対立遺伝子の完全な消失を示す図である。 D11S4085におけるLOHの概略のこの例は、側面のマイクロサテライトマーカーD11S874(動原体)およびD11S969(テロメアー)において、異型接合性が保持されていることを示す。PCR(蛍光染料で標識したそれぞれのマーカーに関して、1つのプライマーを用いる)によって、卵巣癌を有する2人の患者からの正常(N)および腫瘍(T)DNAから、マーカーを増幅させた。PCR産物(蛍光標識したもの)を、AB1310 Genetic Analyzer上で大きさによって分離し、レーザーおよびデータによって検出し、ABI GeneScanソフトウェアで分析した。ピーク値は、2人の患者、患者1および患者2の正常および腫瘍DNA中の、それぞれのマーカーに関する対立遺伝子の型を表す。それぞれの患者の、NとTの間のD11S4085に関する対立遺伝子の型を比較することによって、正常なDNA中に存在する2つの対立遺伝子(異型接合性)が示されるが、一方で腫瘍DNA中にはただ1つの対立遺伝子が存在し、異型接合性の消失が起こったことが示される。いずれの例でも、対立遺伝子の消失は完全なものであり、腫瘍サンプル中での異型接合性の欠如が示される。これによって、D11S4085の消失は、卵巣癌の発癌の初期事象であることが示唆される。対照的に、2つの側面のマーカーの異型である対立遺伝子の型は、2人の患者それぞれの正常と腫瘍の間で変わらず、異型接合性の保持が表される。
【図6】OBCAMおよびニューロトリミンに関してメチル化状態を示す、卵巣癌の13の症例の代表的サンプル、および個体中およびサンプル全体の、一致率および不一致率を示す図である。 M=メチル化 U=非メチル化 C=一致 D=不一致
【図7A】ヒトOBCAMのcDNAのヌクレオチド配列、およびコードされているアミノ酸配列を示す図である。この配列は、GenBankのデータベース項目番号NM_002545に対応する。
【図7B】図7Aの続きである。
【図7C】図7Bの続きである。
【図8A】ヒトニューロトリミン(NTM)のcDNAのヌクレオチド配列、およびコードされているアミノ酸配列を示す図である。この配列は、GenBankのデータベース項目番号NM_016522に対応する。
【図8B】図8Aの続きである。
【図9A】NTMイソ型の配列を示す図である。正常なヒト卵巣表面上皮の主要な形は、+33bp形(約69%)である。+69bp形は、約4%を形成するデータベースの野生型配列と比較した、少数のイソ型である(約19%)他の代替的な形である。他の少数のイソ型は、他の108bpを含み、これが未熟なタンパク質の翻訳停止をもたらし、切断型NTMタンパク質イソ型を生成させると予想される。 +33bp形は、33bpの挿入ヌクレオチド配列を含み、これはNTM遺伝子中の1つの他のエクソンに由来する。このエクソンは、69bpの挿入に貢献する(以下参照)、2つのエクソンのうちの1つである。示すのは、ヒトニューロトリミンの卵巣表面上皮の+33bpイソ型の、タンパク質が翻訳された(ヌクレオチド配列の下)ヌクレオチド配列である。他の33bpのヌクレオチド配列、および生成するインフレームの11個のアミノ酸を、野生型ヒトNTM配列(Genbank NM_015622)の脈絡において太字下線で示す。停止コドンは*によって示す。インフレーム挿入によって、NTMタンパク質:EVKTTALTPWKのC末端の近くに、他の11個のアミノ酸が含まれる結果となる。 +69bp形は、69bpの挿入ヌクレオチド配列を含み、これはNTM遺伝子中の2つの他のエクソンのスプライシングに由来する。示すのは、ヒトNTMの卵巣表面上皮の+69bpイソ型の、タンパク質が翻訳された(ヌクレオチド配列の下)ヌクレオチド配列である。他の69bpのヌクレオチド配列、および生成するインフレームの23個のアミノ酸を、野生型ヒトNTM配列(Genbank NM_015622)の脈絡において太字下線で示す。停止コドンは*によって示す。インフレーム挿入によって、NTMタンパク質:ELNEPTSSTLLQEVKTTALTPWKのC末端の近くに、他の23個のアミノ酸が含まれる結果となる。 +108bp形は、108bpの挿入ヌクレオチド配列を含み、これはNTM遺伝子中の3つの他のエクソンのスプライシングに由来する。示すのは、ヒトNTMの卵巣表面上皮の+108bpイソ型の、タンパク質が翻訳された(ヌクレオチド配列の下)ヌクレオチド配列である。他の108bpのヌクレオチド配列は、未熟なタンパク質の翻訳停止をもたらし、カルボキシ末端にGPIアンカー結合部位が欠けている、切断型NTMタンパク質イソ型を生成させると予想される。したがって切断型タンパク質は、GPIアンカーを介して細胞膜に結合することはないと予想される。したがってこのイソ型は、可溶形のNTMを表すことができ、これは細胞外に位置する可能性があり、おそらくGPI結合型NTMの正常な機能を害するか調節する可能性がある。他の108bpのヌクレオチド配列、およびタンパク質翻訳は、野生型ヒトNTM配列(Genbank NM_015622)の脈絡において太字下線で示す。停止コドンは*によって示す。
【図9B】図9Aの続きである。
【図9C】図9Bの続きである。
【図10】IgLONが正常な卵巣中で高度に発現されることを示す図である。 多数の組織のcDNA群(BD Clontech)の、OBCAMおよびNTMの完全長コード配列のRT-PCR、さらにICRF Medical Oncology Unit、Edinburgh、UKにおいて調製された正常な卵巣サンプル。脳中、および内輪で調製した(すなわちClontechのcDNA群ではない)正常な卵巣サンプルにおいて、両方の遺伝子の最も強い発現が観察される。 プライマー配列: OBCAM: OPCML Fi:5'-AGTTGTGGCTGTCGAGAATG-3' 20'mer nucs34-53 OPCML R1:5'-TCAGAGGACCTAGGATTTCT-3' 20'mer nucs1110-1091 NM_002545から付番したOBCAMヌクレオチド NTM: NTM F2:5'-AGTTGTGGCTGTCGAGAATG-3' nucs248-267 NTM R1:5'-AGAGGTTGCACGATGCAGCT-3' nucs1600-1581 NM_016522から付番したNTMヌクレオチド
【図11】IgLONの再発現を示す図である。 MDAMB23.1およびT47D癌細胞株を、アザシチジンの存在(+)または不在(-)下において4日間、さらにTSA(Aza/TSA)で4日間培養した。OBCAMおよびNTMのRT-PCRによって、MDAMB23.1細胞株中でのOBCAMの再発現、およびMDAMB23.1およびT47D細胞株中でのNTMの再発現が示される。逆転写酵素から対照を引いたものが含まれる。NTMのRT-PCRによって、多数のニューロトリミンイソ型の再発現が示される。 使用したプライマーは以下のものであった: OBCAM: OPCML F4:5'-TACCATAGATGACCGGGTAA-3'nucs:221-240 OPCML R6:5'-TTCCGCACATCGGGCGCAGC-3'nucs:694-675 NM_002545から付番したOBCAMヌクレオチド NTM: NTM F3:5'-ACATGACTATGGGAACTACA-3'nucs1125-1144 NTM R2:5'- GGAAGTGGCACTCACATCAA-3'nucs1315-1296 NM_016522から付番したNTMヌクレオチド
【図12A】OBCAMおよびNTM遺伝子のメチル化の検出において有用な、代表的なプライマーを示す図である。
【図12B】図12Aの続きである。
【図13】5'-アザ2'-デオキシチジン(AZA)への暴露の後の、SKNV3.3細胞中のOBCAMの脱メチル化および再発現を示す図である。CONは、対照の未処理SKNV3.3細胞である。Mixは、鋳型DNA以外のすべての成分を含む、対照のPCR反応混合物である。 上側パネル:20μMの5'-アザ2'-デオキシチジンの存在(AZA)または不在(CON)で培養4日後に、SKNV3.3細胞から調製した一本鎖cDNAのOBCAM RT-PCR。Mixは、鋳型DNA以外のすべての反応成分を含む、対照のPCR反応混合物を指す。次いでOBCAMのPCR産物を、ナイロン膜上に移し、OBCAMプローブとハイブリダイズさせた。OBCAMの発現は、AZAへの暴露の後に明らかに認められるが、対照の細胞中には不在である。下側パネル:サンプルの完全性のための対照としての、小さな細胞株の一本鎖cDNAのアクチンRT-PCR。アクチンの発現は、処理および未処理SKNV3.3細胞で同等である。
【図14】OBCAMのSKNV3.3細胞へのトランスフェクションによって、ヌードマウスの皮下の腫瘍増殖が抑制されることを示す図である。 OBCAMセンストランスフェクトおよび対照SKNV3.3細胞の皮下注射の後の、ヌードマウスの腫瘍の平均腫瘍体積(cm3)のグラフ。腫瘍体積は、4週間の間、週に一度測定した。皮下の腫瘍増殖の違いは、統計的に有意である。
【図15】OBCAMのSKNV3.3細胞へのトランスフェクションによって、細胞の凝集が増大することを示す図である。 血球計を用いて時間間隔で測定した、OBCAMセンストランスフェクション、OBCAMアンチセンストランスフェクション、および親SKNV3.3細胞の培養物中に残っている、単細胞の数のグラフ。OBCAMの発現によって、培養物中に残っている単細胞の数の減少がもたらされ、観察される高い細胞の凝集率が平衡化する。
【図16A】ヒトOBCAM遺伝子の、予想されるエクソン構造を示す図である。 エクソン配列を太線で強調し、エクソン側面のイントロン配列は単なる文字中にある。ヌクレオチド番号は、以下のようにGenBankのデータベース配列に対応するものに関するものである。エクソン1はAC027631.4を指し;エクソン2はAC012234.6を指し;エクソン3〜7はAP000843.3を指す。エクソン1のヌクレオチド配列は、GenBank受託番号AC027631.4の入手可能なHuman Genome Project Sequenceが欠けているために、エクソン/イントロン1境界を含む領域内では不完全である。SSCPEのセンスおよびアンチセンスPCRプライマーは、それぞれ一本および二本の下線で強調する。予想されるエクソンの大きさを与える。
【図16B】図16Aの続きである。
【図16C】図16Bの続きである。
【図16D】図16Cの続きである。
【図17】PE04が、エクソン2のOBCAMの体細胞変異体を含むことを示す図である。 塩基配列決定プライマーとしてOBCAMEX2Flを使用して得た、PE04およびPE04線維芽細胞のDNAからの、OBCAMエクソン2F1/RlSSCPEのPCR産物の配列追跡ファイル。PE04線維芽細胞は、印をつけた位置(*)でCヌクレオチドが同型であり、PE04はこの位置で異型であり、CおよびG対立遺伝子を有する。
【図18】PE04が、OBCAMの体細胞ミスセンス変異体を含むことを示す図である。 ヌクレオチド配列PE04OBCAMEX2FI/R1SSCPEPCR産物から同定した、2つの対立遺伝子のEx-Pasy翻訳によって、プロリン(P)からアルギニン(R)へのミスセンス変異が予想される。ヌクレオチド位置75365(AP000843.3)/334(NM_002545.2)での、cからgへの体細胞のヌクレオチドの変化によって、OBCAMの第1の免疫グロブリンドメイン内の位置95(未熟タンパク質の番号)での、アミノ酸の置換:アルギニン(R)からプロリン(P)がもたらされる。 PE04線維芽細胞は、野生型プロリン対立遺伝子が同型であり、一方PE04(およびPEO1およびPE01CDDP)は、野生型および変異配列が異型であり、野生型プロリンと体細胞アルギニンミスセンス変異体の両方を含む。野生型とは、GenBank配列中に含まれる参照配列を指す。 野生型OBCAM、および体細胞変異体を含む配列のヌクレオチド配列を、それらのそれぞれのタンパク質翻訳(一文字のアミノ酸コード)の下にそれぞれ示す。影響を受けたヌクレオチドおよびアミノ酸を、太字で示す。野生型とは、GenBankデータベース(NM_002545.2およびAP000843.3)中に含まれる参照配列を指す。
【図19】OBCAMのCpGアイランドの重亜硫酸塩による塩基配列決定を示す図である。 ヌクレオチド53134-54032(GenBank受託番号AC027631.4)に対応する、OBCAMの予想されるCpGアイランドのヌクレオチド配列を示す。重亜硫酸ナトリウムで改変させたメチル化(M)または非メチル化(U)DNAからの、529bpの産物を特異的に増幅させるために設計した、PCRプライマーの位置をイタリックで示し、それらの配列を以下で詳細に述べる。増幅させたPCR産物は太字で示し、周囲の配列は単なる文字中にある。CpGからのメチル化可能なCヌクレオチドは、下線で示す。 プライマー: 重亜硫酸ナトリウムで改変させたメチル化DNAに特異的なもの: OBCAM FlM:5'-AGGCGTTTAGTGGAGGGGTACGGGC-3' OBCAM R3M:5'-TCCCGATACCGCCTCGAAACGAACG-3' 重亜硫酸ナトリウムで改変させた非メチル化DNAに特異的なもの: OBCAM FlU:5'-AGGTGTTTAGTGGAGGGGTATGGGT-3' OBCAM R3U:5'-TCCCAATACCACCTCAAAACAAACA-3'
【図20】OBCAMのCpGアイランドが、卵巣腫瘍中ではメチル化状態であり、正常な卵巣中では非メチル化状態であることを示す図である。
【図21】SKNV3.3中でのOBCAMの発現によって、ヌードマウスの腫瘍形成がほぼ完全になくなることを示す図である。 SKNV3.3親細胞株、および2例のOBCAMトランスフェクト再発現SKNV3.3細胞株を、ヌードマウスに腹膜内(i.p.)注射した。:マウス1匹あたりの1回の注射で、細胞株を3つ注射した。65日後、マウスを殺傷し、腹腔から腫瘍を除去し写真を撮った。i.p注射した腹腔に存在した腫瘍の合計量は、親SKNV3.3細胞と比較して、OBCAMトランスフェクトSKNV3.3細胞を注射したマウス中では大幅に少ない。この図は、3匹のSKNV3.3を注射したマウスから、およびOBCAMトランスフェクトSKNV3.3細胞を注射した5匹のマウス:3匹は1つのOBCAMトランスフェクト細胞株からのもの、および2匹は第2のOBCAMトランスフェクト細胞株からのものから除去した、すべての腫瘍を示す。第2のOBCAMトランスフェクトSKNV3.3細胞株を注射した第3のマウスでは、腫瘍は識別できなかった。OBCAMを発現する腫瘍の腹膜内での広がり、その後のOBCAMのトランスフェクションも、親SKNV3.3細胞(示さず)と比較して大幅に低下する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
OBCAMまたはNTMの変異、または活性の欠如の識別は、予後(すなわち結果と関連付けること)に関して、遺伝子療法またはアゴニスト/擬似治療(以下参照)による治療に、患者が適している可能性があるかどうか判定する際に、非常に有用であると考えられる。特に、異型接合性の消失によるOBCAMの活性の欠如は、たとえば卵巣癌の初期事象であると考えられる。NTMの異型接合性の消失は、卵巣癌中のOBCAMの消失より後に起こると考えられる。したがって、OBCAMの活性の欠如または変異を識別することによって、癌の発症の可能性に関して充分に情報を与えることができ、一方OBCAMおよびNTMの分析、および両方の遺伝子の活性の欠如または変異(欠失など)の識別(たとえばメチル化分析、またはLOH分析による)によって、疾患の進行の程度に関する結論を与えることができ、この場合、同じ患者に異なる回数で方法を行う。
【0024】
以下でさらに論じるように、OBCAMまたはNTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子、またはその相補体と選択的にハイブリダイズする核酸は、ひとたび前記遺伝子を改変処理、たとえば以下でさらに論じるように、重亜硫酸塩またはメチル化感受性制限酵素を用いた処理に曝すと、前記遺伝子とハイブリダイズすることができる。したがって、本発明の第1または第2の態様の方法は、患者からの前記核酸を試験核酸と接触させる前に、患者からの前記核酸を改変処理、たとえば重亜硫酸塩処理に曝すステップをさらに含むことができる。
【0025】
卵巣癌の早期検出は非常に有用である。なぜならこの癌タイプは、腫瘍発達の後期段階まで無症候性のままであるからである。
【0026】
患者はヒト患者であることが好ましく、一般に、OBCAMおよびNTMに関する参照は、ヒトOBCAMおよびヒトNTMをそれぞれ参照する。
【0027】
OBCAMまたはNTM遺伝子、またはそれらの一部分は、他の適切なヒト遺伝子ライブラリー、標準的なコスミドなど、または酵母菌人工染色体(YAC)またはP1-人工染色体(PAC)ライブラリーから容易に得ることができることは、当業者により容易に理解されるであろう。OBCAMまたはNTMのcDNAをプローブとして使用して、それぞれOBCAMまたはNTM遺伝子の、すべてまたは一部分を同定することができる。
【0028】
OBCAMのcDNA配列は、受託番号NM_002545でGenBankから公に入手可能である。この配列は、図7にも示す。ラットおよびウシ中のOBCAMに関する他の配列は、以下の受託番号M88711(Rattus noevegicus)およびX12672(Bos taurus)でGenBankから入手可能である。
【0029】
遺伝子のゲノム構造は、cDNA配列、たとえばGenBankのcDNA配列を、GenBankデータベースからのゲノムBACクローンの配列と比較することによって、決定することができる。以下のBACまたはPACクローンは、OBCAM遺伝子:AC027631(ただし、GenBankのこの配列は、染色体18を参照して誤って注釈を施されている;この配列中に含まれるマーカーは、すべて染色体11である)、AC027631、AC012234、AP000843およびAP000912を含む。HGSプロジェクトの一部分として関連する配列決定センターから、これらを得ることができる。
【0030】
OBCAM遺伝子は、染色体11上にD11S4085遺伝マーカーを含むと考えられる。実施例中にさらに詳細に記載するように、D11S4085マーカーは、卵巣癌および結腸直腸癌中の染色体11の1つの対立遺伝子から失われたものとして同定されている(それぞれ56%(24/43)および32%(8/25)の症例)。D11S4085マーカーは、D11S1320マーカーとテロマー化して位置することが知られている。D11S4085マーカーはイントロン的であり、OBCAMの第2のイントロン、約300〜600kb、D11S1320とテロマー化している。したがって、本発明の第1または第2の態様の代替実施形態では、ステップ(ii)のパート(a)を、以下のように表すことができる:
「マイクロサテライトであるマーカーD11S4085を含むポリヌクレオチド、またはその変異対立遺伝子、またはその相補体と選択的にハイブリダイズする核酸、または」
【0031】
この場合ポリヌクレオチドは、D11S4085マーカーを含む任意のポリヌクレオチドであってよい。ポリヌクレオチドはOBCAM遺伝子の少なくとも一部分を含むことが好ましく、OBCAM遺伝子全体を含むことがより好ましい。さらに好ましくは、ポリヌクレオチドは染色体11、またはその一部分であり、その一部分は少なくとも100、500、5000、10000または50000個のヌクレオチド長である。好ましくは、ポリヌクレオチド部分は、D11S4085マーカーのいずれかの側に、染色体11の少なくとも50、100、2500、5000または25000個の連続したヌクレオチドを含むものである。
【0032】
D11S4085は、OBCAMのイントロン2内のゲノム配列の側面に位置する。これはBACAC012234上にある。イントロン2の一部のヌクレオチド配列を、図16A〜Dに示す。しかしながら、図16A〜Dはイントロン/エクソン境界のみを示し、完全長のイントロンは示さないので、マーカーD11S4085はこの図中には示さない。
【0033】
したがって、以下の「OBCAM遺伝子」に関する参照事項は、前で定義したD11S4085マーカーを含むポリヌクレオチドに関する参照事項であることは理解されるであろう。
【0034】
NTMのcDNA配列は、受託番号NM_016522でGenBankから公に入手可能である。この配列は、図8にも示す。ラット中のNTMに関する他の配列は、受託番号NM-017354(Rattus norvegicus)でGenBankから入手可能である。
【0035】
遺伝子のゲノム構造は、cDNA配列、たとえばGenBankのcDNA配列を、GenBankデータベースからのゲノムBACクローンの配列と比較することによって、決定することができる。以下のBACまたはPACクローンは、NTM遺伝子:AC012134、AC018368およびAP0000912を含む。HGSプロジェクトの一部分として関連する配列決定センターから、これらを得ることができる。
【0036】
他のNTMのcDNA配列は、WO00/61754のクローン11753149.0.6および11753149.0.37、およびWO99/46281のPRO337の配列を含むことができる。
【0037】
図9A〜Cに示す他のNTMのcDNA配列を、我々は決定している。これらの配列は、たとえばヒト卵巣の表面上皮中に見られる。ヒト卵巣の表面上皮における主要な形は、「+33bp」形であるようである。「+69bp」形は、他の代替形である。両方の形は共に、図8に示す配列中、および前に参照したデータベースの項目中よりもヒト卵巣の表面上皮中に豊富であるようである。他の形は「+108bp」形であり、これは追加の108bpを含み、これによって未熟なタンパク質の翻訳停止がもたらされ、カルボキシ末端にGPIアンカー結合部位が欠けている切断型NTMタンパク質イソ型が生成すると予想される。したがって、切断型タンパク質は、GPIアンカーによって細胞膜に結合することはないと予想される。したがって、このイソ型はNTMの可溶形であってよく、これは細胞外に位置する可能性があり、GPI結合型NTMの正常な機能を害するかあるいは調節する可能性がある。
【0038】
したがって、本発明の第1または第2の態様に関しては、NTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、あるいはNTMのcDNA、またはその変異対立遺伝子、またはその相補体と選択的にハイブリダイズする核酸は、+33bpおよび/または+69bpおよび/または+108bpのNTM遺伝子またはcDNA、またはその相補体とハイブリダイズすることが好ましい(特に卵巣の癌に関しては)。
【0039】
一実施形態では、前記核酸が、+33bpおよび/または+69bpおよび/または+108bp形のNTM遺伝子またはcDNA、またはそれらの相補体とハイブリダイズすることが好ましい。他の実施形態では、さらに前記核酸が、「正常な」またはデータベースのNTM遺伝子または図8のcDNA配列によって例示されるcDNA配列と、ハイブリダイズしないことが好ましい可能性がある。
【0040】
任意の事象において、OBCAMまたはNTMのcDNAは、よく知られている技法、およびそれぞれ図7および8または9にプローブとして示す、ゲノムクローンの一部分、またはOBCAMまたはNTMのcDNA配列の一部分を使用して、ヒトcDNAライブラリーから容易に得ることができる。適切なヒトcDNAライブラリーは、ヒト卵巣またはヒト卵巣組織、またはヒト脳またはヒトリンパ芽球状から単離したmRNAから作製したライブラリーであるが、異なる組織特異的なNTMのイソ型が、非卵巣組織中に存在してよい。ひとたびOBCAMまたはNTMのcDNAまたは遺伝子、またはその断片が前記のように同定されると、そのヌクレオチド配列は、たとえばサンガーのジデオキシ塩基配列決定法、または当分野でよく知られている他の方法を使用して、容易に決定することができる。
【0041】
OBCAMまたはNTM遺伝子は「野生型」遺伝子として存在する可能性があり、あるいはそれは、前述の野生型遺伝子と配列が異なる、変異対立遺伝子として存在する可能性があることは理解されるであろう。「変異対立遺伝子」によって、OBCAMまたはNTMポリペプチドの機能または発現の変化をもたらす配列だけでなく、OBCAMまたはNTMポリペプチドの機能または発現に対してまったく影響がないか、あるいはごくわずかな影響がある、アリール型変異体(または多型)が含まれる。したがって、本発明の方法において選択的にハイブリダイズする核酸は、野生型OBCAMまたはNTM遺伝子の配列、または野生型OBCAMまたはNTMのcDNA配列(またはmRNA配列)と選択的にハイブリダイズする核酸、およびそれらの変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸を含む。さらに、本明細書でより詳細に記載するように、当業者がOBCAMまたはNTM遺伝子の変異対立遺伝子、およびそれらの多型を容易に同定することができることは容易に理解されるであろう。
【0042】
OBCAM遺伝子の変異対立遺伝子の一例は、実施例5に記載し、この場合エクソン2中のシトシンヌクレオチド(図7に示すGenBankの項目番号NM_002545の位置334におけるもの;図18中には変異体が示される)が、グアニンとして存在する。この変異体は、卵巣癌細胞株PE01およびPE04中で見られるが、PE01およびPE04として同じ患者から単離した繊維芽細胞のDNA中には見られない。変異によって、コードされているアミノ酸配列の変化が生じ、卵巣癌細胞株中では、「野生型」プロリン残基がアルギニンに置換される(図18)。
【0043】
「ポリペプチドOBCAMまたはNTM」によって、我々は、その配列がそれぞれ図7、または8または9に与えるアミノ酸配列を含むか、あるいはそれらからなり、あるいはその配列がそれぞれ図7、または8または9中でコード領域として示されるヌクレオチド配列、またはその天然変異体によってコードされている、ポリペプチドを含むことにする。OBCAMポリペプチドは、そのアミノ酸配列が図7に与える配列を含む、ポリペプチドであることが好ましい。NTMポリペプチドは、そのアミノ酸配列が図8または9に与える配列を含む、ポリペプチドであることが好ましい。
【0044】
「ポリペプチドOBCAMまたはNTM」によって、我々は、連続した50個のアミノ酸残基部分、またはそれぞれ図7、または図8または9に与えるポリペプチド配列の天然変異体を含む、任意の天然に存在するポリペプチドも含むことにする。ポリペプチドは、ヒトのポリペプチドであることが好ましい。
【0045】
「OBCAMまたはNTMポリペプチドの発現の変化」によって、それぞれOBCAMまたはNTMポリペプチドの発現の変化をもたらす、OBCAMまたはNTM遺伝子の任意の変化が含まれる。たとえば、OBCAMまたはNTM遺伝子の転写の変化によって、それぞれOBCAMまたはNTMポリペプチドの発現の変化がもたらされるであろう。同様に、OBCAMまたはNTMのmRNAの翻訳の変化によって、それぞれOBCAMまたはNTMポリペプチドの発現の変化がもたらされるであろう。
【0046】
OBCAMまたはNTMのタンパク質コード配列の変異によって、それぞれOBCAMまたはNTMタンパク質の機能の消失がもたらされる可能性があり、同様に、機能の消失は、OBCAMまたはNTM遺伝子の転写サイレンシング、または優性ネガティブ変異の存在によるものである可能性がある。
【0047】
前に定義した本発明の方法は、試験サンプルからの結果と、対照サンプルから、たとえば、知られている非癌性(正常)サンプルなどから、あるいは知られている癌性サンプルからの結果を、直接的または間接的に比較することを含むことができることは理解されるであろう。
【0048】
本発明の方法において有用である核酸は、OBCAMまたはNTMのcDNA、またはその変異対立遺伝子、またはその相補体と選択的にハイブリダイズする核酸として、容易に定義することができることは理解されるであろう。さらに本発明の方法は、遺伝子またはcDNAの源が何であれ、OBCAMまたはNTMの遺伝子またはcDNA、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸を使用することを含む。変異OBCAM対立遺伝子の一例を図18に示し、前にさらに詳細に記載する。この変異体と選択的にハイブリダイズする核酸は、図7、16および18に示す配列を使用して、容易に決定することができる。
【0049】
「選択的にハイブリダイズする」によって、核酸が前記DNAまたはcDNAと充分なヌクレオチド配列類似性があり、したがってこの核酸は、適度あるいは非常に厳密な条件下でハイブリダイズすることができることが意味される。当分野でよく知られているように、核酸のハイブリダイゼーションの厳密度は、ハイブリダイゼーションが起こる核酸の長さ、ハイブリダイズする配列の同一性の程度などの要因、および温度、イオン強度、および配列のCGまたはAT含有率などの要因に依存している。したがって、前記選択的にハイブリダイズすることができる任意の核酸が、本発明を実施する際に有用である。選択的にハイブリダイズする核酸は、ヒトOBCAMまたはNTM遺伝子、またはcDNAに選択的にハイブリダイズすることが好ましい。
【0050】
前記DNAまたはcDNA(ヒトDNAまたはcDNAなど)に選択的にハイブリダイズすることができる核酸には、核酸の少なくとも一部および前記DNAまたはcDNAについて、95%を超える配列同一性、好ましくは98%を超える配列同一性、より好ましくは99%を超える配列同一性を有する核酸がある。よく知られているように、ヒト遺伝子は通常はイントロンを含み、したがって、たとえば前記ヒトDNA中の遺伝子に由来する、mRNAまたはcDNAは、その全長は前記ヒトDNAとは完全には一致しないと思われるが、それでもこれは前記ヒトDNAと選択的にハイブリダイズすることができる核酸であると思われる。したがって、具体的には本発明は、OBCAMまたはNTMcDNAに選択的にハイブリダイズするが、OBCAMまたはNTM遺伝子にはハイブリダイズすることができない、あるいはこの逆の核酸を含む。たとえば、OBCAMまたはNTM遺伝子のイントロン-エクソン境界に広がる核酸は、それぞれOBCAMまたはNTMcDNAに選択的にハイブリダイズすることができない。OBCAM遺伝子のイントロン-エクソン境界は図16A〜Dに示し、すべてのイントロンのヌクレオチド配列は不完全である。
【0051】
選択的なハイブリダイゼーションをもたらす、典型的な適度あるいは非常に厳密なハイブリダイゼーション条件は当分野でよく知られており、たとえば、参照により本明細書に組み込んである、Molecular Cloning、a laboratory manual、2nd edition、Sambrook他(eds)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、USA中に記載された条件がある。
【0052】
核酸がナイロン膜上に固定され、プローブの核酸が500以上の塩基または塩基対であるときの、典型的なハイブリダイゼーション溶液の一例は以下のものである:
6×SSC(生理的食塩水、クエン酸ナトリウム)
0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
100μg/mlの変性、分画したサケ精液のDNA
【0053】
ハイブリダイゼーションは68℃で行う。核酸を固定したナイロン膜は68℃において1×SSCで、あるいはさらに高い厳密度のために0.1×SSCで洗浄することができる。
【0054】
20×SSCは、以下の方法で調製することができる。175.3gのNaClおよび88.2gのクエン酸ナトリウムを800mlのH2Oに溶かす。NaOHの10N溶液数滴を用いて、pHを7.0に調節する。H2Oを用いて、体積を1リットルに調節する。等分試料に分配する。オートクレーブ処理によって滅菌する。
【0055】
核酸がナイロン膜上に固定され、プローブが15個と50個の間の塩基のオリゴヌクレオチドであるときの、典型的なハイブリダイゼーション溶液の一例は以下のものである:
3.0M塩化トリメチルアンモニウム(TMACl)
0.01Mリン酸ナトリウム(pH6.8)
1mm EDTA(pH7.6)
0.5%SDS
100μg/mlの変性、分画したサケ精液のDNA
0.1脱脂粉乳
【0056】
ハイブリダイゼーションの最適温度は、通常は所与の鎖長のTiより5℃低い温度を選択する。Tiとは、プローブとその標的配列の間で形成されるハイブリッドの、不可逆的な融解温度である。Jacobs et al(1988)Nucl.Acids Res.16、4637は、Tiの決定を論じている。3M TMACl中の17量体について奨励されているハイブリダイゼーション温度は48〜50℃であり、19量体については、それは55〜57℃であり、20量体については、それは58〜66℃である。
【0057】
「選択的にハイブリダイズする核酸」によって、以下でより詳細に記載するシステム、特にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの、よく知られている任意の増幅システムにより、前記ヒトDNAの領域からDNAを増幅させる核酸も含まれる。PCR増幅に関する適切な条件は、以下の適切な1×増幅用緩衝液中での増幅を含む:
10×増幅用緩衝液は500mMのKCIである;100mM Tris.Cl(室温でpH8.3);15mM Mg Cl2;0.1%ゼラチン。
【0058】
適切な変性剤または手順(95℃に加熱するなど)を使用して、二本鎖DNAの鎖を分離する。
【0059】
適切には、増幅のアニーリング部分は37℃と60℃の間、好ましくは50℃である。
【0060】
本発明の方法において有用である核酸はRNAまたはDNAであってよいが、DNAが好ましい。本発明の方法において有用である核酸は二本鎖または一本鎖であってよいが、核酸の増幅反応などのいくつかの条件下では、一本鎖の核酸が好ましい。
【0061】
本発明の方法において有用である核酸は、それが二本鎖である場合、100kbなど非常に大きくてよい。たとえば、このような大きな核酸は、FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)分析で使用するための、プローブを作製するための鋳型として有用である。典型的には、FISHで使用する標識したプローブは、ニックトランスレーション、またはゲノムクローンからのランダムなプライマーの作製(適切なPACクローン中の挿入など)によって一般的には作製される。ひとたび作製されると、これらのプローブは、ヌクレオチド約50〜1000個の長さである。前に記載したニックトランスレーションまたはランダムなプライマーの伸長用の、鋳型として使用することがより好ましい。しかしながら、核酸が10000個より少ない、より好ましくは1000個より少ない、さらに好ましくは10個から100個、さらに好ましくは15個から30個の塩基対(核酸が二本鎖である場合)または塩基(核酸が一本鎖である場合)である場合、いくつかの診断、プローブまたは増幅目的には、その核酸が好ましい。以下により詳細に記載するように、ポリメラーゼ連鎖反応において使用するのに適した、一本鎖DNAのプライマーが特に好ましい。
【0062】
本発明の方法において使用するための核酸は、OBCAMまたはNTM遺伝子、またはOBCAMまたはNTMのcDNAまたはmRNA、またはこれらの変異体にハイブリダイズすることができる核酸である。この遺伝子の断片および変形、およびこの遺伝子によってコードされているmRNAから誘導可能なcDNAも、本発明の方法において使用するための好ましい核酸である。
【0063】
遺伝子そのものと選択的にハイブリダイズする核酸、またはその変異体が非常に有用であることは明らかである。遺伝子の断片は、本発明の方法で使用するのに好ましい。大きな断片の酵素による分解または化学的分解によって、断片を作製することができ、あるいは断片を化学的に合成することができる。「遺伝子」によって、イントロンおよびエクソンだけでなく、イントロンおよびエクソンと関連があり、物理的に近い調節領域、特に5'領域〜5'の大部分のエクソンも含まれる。「物理的に近い」によって、50kb以内、好ましくは10kb以内、より好ましくは5kb以内、さらに好ましくは2kb以内が意味される。OBCAMおよびNTM遺伝子の塩基プロモーターおよび調節要素には、転写開始部位またはコード領域の始点からの200〜400までの塩基対が存在すると考えられる。しかしながら、組織特異的または誘導要素は、コード領域(エクソン)のいずれかの方向に50kbであってよく、あるいはイントロン中に存在してよい。OBCAMおよびNTM遺伝子のこのような要素は同定することができ、あるいは調節タンパク質の結合の部位を示す、DNAse過敏反応部位(サザンブロットで検出)の近くに位置することができる。
【0064】
あるいは、上流のゲノムDNA(すなわち、5'の大部分のエクソンの上流)、および、たとえば、レポーター酵素としてβガラクトシダーゼを使用して、レポーター構築体を生成させることができる。一連の欠失およびフットプリント法を使用して、調節領域を同定することもできる。
【0065】
NTMCpGアイランドは、ATG翻訳開始部位と重複しており、約1.1kbの長さである。OBCAMCpGアイランドは、翻訳開始部位の約500bp上流であり、約900bpの長さである。NTMまたはOBCAM遺伝子のメチル化状態を調べるとき(以下でさらに論じるように)、選択した遺伝子のCpGアイランドと選択的にハイブリダイズする核酸が、非常に有用である可能性がある。
【0066】
遺伝子の「断片」によって、(一本鎖であろうと二本鎖であろうと)少なくともヌクレオチド15個の長さの遺伝子の任意の部分が含まれるが、より好ましくは、断片は少なくともヌクレオチド20個の長さ、最も好ましくは少なくともヌクレオチド50個の長さであり、少なくともヌクレオチド100個の長さであってよく、あるいは少なくともヌクレオチド500個の長さであってよい。断片は50kbを超えないことが好ましく、100kbを超えないことがより好ましい。
【0067】
遺伝子の「変異体」によって、一部分であれ完全長であれ、あるいはmRNAの任意の接合変異体からコピーされたものであれ、cDNAが具体的には含まれる。我々は、本来の遺伝子と比較して、遺伝子またはその断片中あるいはcDNA中に、ヌクレオチドの置換(逆位を含む)、挿入および欠失が存在する、核酸も具体的には含める。変異体および断片の両方は、その意図する目的;探索、増幅または診断目的に従って選択し、短いが高度の配列同一性(たとえば、少なくとも80%、90%、95%または99%)を有する断片が、一般には必要とされるであろう。OBCAM遺伝子(および対応するcDNA)の変異体の一例には、図7で付番し図18に示すヌクレオチド334においてシトシンがグアニンに置換された変異体がある。
【0068】
本発明の方法で使用するための核酸が、遺伝子またはcDNAの一部分を増幅させるために使用することができるオリゴヌクレオチドプライマーである場合、それが特に好ましい。
【0069】
本発明の方法で使用するための好ましい核酸は、OBCAMまたはNTM遺伝子またはcDNAと選択的にハイブリダイズし、他の遺伝子またはcDNAとはハイブリダイズしない核酸である。このような選択的にハイブリダイズする核酸は、たとえばそれぞれ図7および8または9に記載したように、核酸がOBCAMまたはNTMのcDNAとハイブリダイズするかどうかを参照することによって、容易に得ることができる。
【0070】
第1および第2の態様の方法を使用して、任意の前記遺伝子またはcDNAの変異の有無を検出することが好ましい。言い換えれば、変異体遺伝子またはcDNAが存在するかどうかである。患者からの核酸中の、図7で付番したOBCAMのヌクレオチド334に対応するヌクレオチドが、図7中のヌクレオチドと同じであるか、あるいはそうではないかを判定することが、より好ましい。このような判定は、本発明のポリヌクレオチドを使用して、以下に記載するように行うことができる。
【0071】
本発明の方法は任意の癌に関して適しているが、癌が卵巣、結腸直腸の癌、または他の一般的な腺癌、乳、肺、前立腺および頚部の癌などである場合、本発明の方法が好ましい。さらに、OBCAMに関する方法は、白血病にも適しており、NTMに関する方法は膵臓および白血病に適している。これらの方法は、卵巣または結腸の癌に関して特に適しており、方法がOBCAM遺伝子またはcDNA、またはD11S4085マーカーを含むポリヌクレオチドと選択的にハイブリダイズする核酸に関するものであるとき、これらの方法は卵巣癌に関して最も適しており、方法がNTM遺伝子またはcDNAと選択的にハイブリダイズする核酸に関するものであるとき、結腸直腸癌に関して最も適している。本発明の方法が予後の方法、および診断を助長する方法を含むことは、理解されるであろう。患者の管理または治療の行程を決定する際に、内科医または外科医にとって本発明の方法が有用であることも、理解されるであろう。
【0072】
患者は、癌または腫瘍が発見されているか、あるいはそれが疑われる任意の個人であってよい。特に好ましい患者は、超音波によって同定される骨盤付近の塊を有する患者、および/またはCA125のレベルがわずかに上昇した患者である。CA125は、Muc16として近年同定された血清中の糖ペプチドであり、卵巣癌用だけではなく、卵巣腫瘍の臨床管理において主に使用される腫瘍マーカーである。
【0073】
OBCAMまたはNTM遺伝子の変異は、突発性の癌だけではなく家族性の癌において起こる可能性があるので、患者に由来する核酸を含む任意のサンプルは、本発明の方法において有用であると考えられるが、しかしながら、癌が疑われるか、あるいは癌が発見される可能性があるか発見されている組織のサンプルに核酸が由来する場合は、それが好ましい。たとえば、癌が疑われるか、あるいは癌が発見される可能性があるか発見されている組織が卵巣である場合、核酸を含むサンプルが患者の卵巣に由来する場合、それが好ましい。卵巣のサンプルは、外科手術による切除、腹壁切除および生検、内視鏡検査および生検、および画像誘導による生検によって得ることができる。超音波、またはテクネチウム-99標識抗体、または卵巣に選択的に結合または位置する抗体断片によって、画像を生じさせることができる。よく知られているモノクローナル抗体HMFG1は、卵巣癌を画像化するための適切な抗体である。腹水/腹膜腔液、および腹膜サンプルは、外科手術または腹壁切除によって得ることができる。同様に、癌が疑われるか、あるいは癌が発見される可能性があるか発見されている組織が結腸である場合、核酸を含むサンプルが患者の結腸などに由来する場合、それが好ましい。結腸サンプルは、結腸切除によって得ることができる。
【0074】
OBCAMまたはNTMを分析するために、有益である可能性がある他のサンプルには、リンパ節、血液、血清、および転移の可能性がある部位、実際に転移した部位、たとえば骨がある。たとえば潜在性の疾患、たとえば無症候性の卵巣癌の早期診断のために、サンプルは血液またはリンパ節であることが、特に好ましい。
【0075】
サンプルは、たとえば組織の生検により、患者に直接由来するものであってよく、あるいは、たとえば組織からの細胞は組織から身体の他の部分に移動しているので、患者の組織から離れた部位に由来するものであってよい。あるいは、たとえば患者からの組織または細胞はin vitroで培養することができ、あるいは異種移植モデルにおいて培養することができ;あるいは核酸サンプルは、患者からの起源の核酸から(in vitroまたはin vivoで)複製されたサンプルであってよいという意味で、サンプルは患者に間接的に由来するものであってよい。したがって、患者に由来する核酸は、患者の内部に物理的に存在していた可能性はあるが、あるいは患者の内部に物理的に存在した核酸からコピーされた可能性がある。腫瘍組織は原発性腫瘍から、あるいは転移物から採取することができる。
【0076】
本発明の有用な方法は、任意の適切なサンプルにおける、OBCAMまたはNTM遺伝子の変異の分析、またはOBCAMまたはNTM遺伝子の有無の検出を含むことは理解されるであろう。適切にはサンプルは、患者から新鮮に得られたサンプルであってよく、あるいはサンプルは組織サンプル、たとえばサンプルのライブラリー中に保たれたサンプルであってよい。
【0077】
好都合には、前記ヒトDNAに選択的にハイブリダイズすることができ、本発明の方法において使用する核酸は、検出可能な標識をさらに含む。
【0078】
「検出可能な標識」によって、よく知られている方法を使用して核酸分子中に容易に取り込ませることができる、32P、33Pまたは35Sなどの任意の好都合な放射性標識が含まれる;核酸中に容易に取り込ませることができる、任意の好都合な蛍光または化学発光標識も含まれる。さらに、「検出可能な標識」という語は、他の部分(ストレプトアビジンとの結合によって検出することができるビオチンなど)との結合によって検出することができる部分;無色の化合物を有色の化合物に転換する能力、あるいはこの逆の能力によって検出することができる(たとえば、アルカリホスファターゼは無色のo-ニトロフェニルホスフェートを有色のo-ニトロフェノールに転換することができる)、酵素などの部分も含む。好都合には、核酸プローブは固定配列中のある位置を占めていてよく、核酸が前記ヒトDNAの領域にハイブリダイズするかどうかは、固定配列中のハイブリダイゼーションの位置を参照することによって判定することができる。検出可能な標識は、Tyagi & Kramer(1996)Nature Biotechnology 14、303-308中に記載されたような、蛍光体-発光抑制剤の対であってもよい。
【0079】
癌の危険群に入る患者の前駆症状をスクリーニングするために、前述の方法を使用することができることは、理解されるであろう。スクリーニングするための危険度の高い患者は、50才を超える患者、または高い罹患性をもたらす遺伝子(たとえばBRCA1、BRCA2またはp53の素因型)を保有する患者、乳/卵巣癌の家族歴を有する患者、冒された血縁者がいる患者、未産婦、および初潮と閉経の間の長い時間間隔を有する女性を含む。同様に、卵巣腫瘍または結腸腫瘍などの腫瘍を病理学的に分類するために、本発明の方法を使用することができる。
【0080】
好都合には、本発明の第1、第2および第3の態様の方法では、前記選択的ハイブリダイゼーションが可能な核酸(検出可能な標識で標識したもの、または標識しないもの)を、ハイブリダイゼーション条件下で、患者に由来する核酸と接触させる。適切なハイブリダイゼーション条件は、前に記載した条件を含む。
【0081】
患者に由来する核酸を含むサンプルが、問題の組織または細胞タイプの実質的に純粋なサンプルではない場合、前記組織または細胞のサンプルを富裕化させることが好ましい。たとえば、血液サンプルなどのサンプル中の卵巣細胞の富裕化は、たとえば細胞選別法、卵巣細胞に選択的な抗体、または上皮細胞に選択的な少なくとも1つの抗体を使用する、蛍光活性化細胞選別(FACS)などを使用して行うことができる。たとえば、Cam 5.2、anticytokeratin7/8、from Becton Dickinson、2350 Qume Drive、San Jose、California、USAが有用である可能性がある。
【0082】
好ましい実施形態では、本発明は、初期の卵巣疾患または他の腫瘍タイプに関する、診断用血液検査を提供する。血液検査によって、OBCAMおよび/またはNTMに関して、たとえばこれらの遺伝子の片方または両方のメチル化状態に関して、少数の循環腫瘍細胞を分析することができる。
【0083】
前記サンプルの源は、固定パラフィン包埋標本、および新鮮または凍結組織も含めて、前に論じた生検物質および腫瘍サンプルも含む。患者からの核酸サンプルは、OBCAMまたはNTMと選択的にハイブリダイズする核酸と接触させる前に、処理することができる。たとえば、患者からの核酸サンプルは、選択的増幅、逆転写、固定(配列特異的な固定など)、または検出可能なマーカーの取り込みによって、処理することができる。
【0084】
本発明の方法が、OBCAMまたはNTM遺伝子のメチル化、変異、またはその有無の検出を判定することを含む場合、それが特に好ましい。
【0085】
本発明の第1または第2の態様の方法は、直接的な塩基配列決定;PCR増幅させたエクソンの直接的な塩基配列決定;関連領域内の関連位置においてハイブリダイズさせるために設計した、オリゴヌクレオチドプローブのデファレンシャルハイブリダイゼーション(このハイブリダイゼーションは、当分野でよく知られているいわゆる「チップ」システムにおいて、固定型オリゴヌクレオチドプローブを使用することが好都合である);変性ゲル電気泳動、次に適切な制限酵素による消化、次に関連DNA領域を増幅させることが好ましい;S1ヌクレアーゼによる配列分析;非変性ゲル電気泳動、次に関連DNA領域を増幅させることが好ましい;従来のRFLP(制限断片の長さ多型)アッセイ;ヘテロ二本鎖分析;オリゴヌクレオチドを使用する選択的DNA増幅;分裂間期染色体の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH);特定の変異に関するARMS-PCR(増幅拒否性変異系-PCR);ハイブリダイズした核酸中のミスマッチ部位での切断(その切断は化学的または酵素によるものである);SSCP一本鎖の立体配座多型またはDGGE(不連続または変性勾配ゲル電気泳動);アニーリングした正常の/変異したPCRにより増幅させたDNA中の、ミスマッチを検出するための分析;および、タンパク質切断のアッセイ(エクソンの翻訳及び転写、変異により停止コドンが導入される場合、切断型タンパク質産物が生成すると思われる)を含めた、関連領域内の1つまたは複数の関連位置におけるDNAの塩基配列決定を含むことができる。たとえば切断I酵素を使用して、主要配列の変化から生じる一本鎖DNAの二次構造の変化を検出するなど、他の方法を使用することができる。このシステムは、Gibco BRL、Life Technologies、3 Fountain Drive、Inchinnan Business Park、Paisley PA49RF、Scotlandから市販されている。
【0086】
本発明の方法は、「DNAチップ」上で行うこともできることは理解されるであろう。このような「チップ」は、米国特許第5,445,934号(Affymetrix;プローブアレイ)、WO96/31622(Oxford;プローブアレイ、およびリガーゼまたはポリメラーゼによる伸長)、およびWO95/22058(Affymax;オリゴマー基質、および検出するアレイ中の位置に結合する蛍光標識された標的)に記載されており、これらはすべて参照によって本明細書に組み込まれている。
【0087】
変異検出の詳細な方法は、HUGO(Human Genome Organisation)によって、「Laboratory Protocols for Mutation Detection」1996、ed.Landegren、Oxford University Pressに記載されている。
【0088】
非常に大きい(500bp以上)欠失または挿入を検出するために、RFLPが使用される場合、それが好ましい。本発明の方法用に、サザンブロットを使用することができる。
【0089】
小さな変化、3〜4bpを超える欠失または挿入を検出するためには、小さな領域(最大300bp)のPCR増幅が、好ましい可能性がある。増幅させた配列は塩基配列決定用ゲル上で分析することができ、小さな変化(最少の大きさが3〜4bp)は目に見える状態にすることができる。適切なプライマーは、本明細書に記載したように設計する。
【0090】
さらに、サザンブロット分析またはPCRを使用することによって、制限酵素変異部位を検出することができる。たとえば、ゲノムDNAの制限酵素による消化の変異部位を分析するために、ゲル電気泳動、サザンブロット、およびハイブリダイゼーション特異的プローブ(たとえば、OBCAMまたはNTMのcDNAまたは遺伝子に由来する任意の適切な断片)。
【0091】
たとえば、変異部位を分析するために、PCRによるDNA増幅、制限酵素による消化、臭化エチジウム、銀染色によるゲルの検出、またはPCRにおける放射性ヌクレオチドまたは蛍光プライマーの取り込みを使用する。
【0092】
他の適切な方法は、特定の変異事象用の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)の開発を含む。同様の方法が、卵巣または結腸組織などの適切な組織の、RNAおよびcDNAに使用される。
【0093】
OBCAMおよび/またはNTM遺伝子の任意の部分の、変異を検出することは有用であるが、遺伝子のエクソン中の変異が検出される場合、それが好ましく、変異がコードされている意味を変える変異である場合、それがさらに好ましい。これらの変異の検出は、本発明の好ましい態様である。OBCAM遺伝子のエクソン2(GenBankの項目番号NM_002545で付番したヌクレオチド334)における、シトシンからグアニンへの変異の一例は、実施例5に記載する。
【0094】
本発明の方法は、異型接合性の消失(LOH;1コピーの消失を示す)を調べることも含む。LOHは診断用の充分な指標である可能性があり;第2の対立遺伝子の変異/消失を調べることは、必要ではない可能性がある。遺伝子のLOHは、遺伝子のコード配列、およびイントロンの多型性を使用して検出することができる。腫瘍細胞のLOHは、どんな源からのものであれ、血液と比較すると、診断ツールとして有用である。たとえばそれは、腫瘍が進行し、より厳しい治療を必要とすることを示すことができる。
【0095】
本発明の前述の方法において使用するのに、特に好ましい核酸は、核酸を増幅させるのに適したプライマーからなる群から選択される核酸である。
【0096】
プライマーは、OBCAMまたはNTM遺伝子またはcDNA配列を示す図面のいずれかに示すヌクレオチド配列とハイブリダイズする、プライマーからなる群から選択することが適切である。プライマーがOBCAMまたはNTM遺伝子のイントロンとハイブリダイズする場合、あるいはプライマーが、他の遺伝子またはcDNAからではなくOBCAMまたはNTM遺伝子またはcDNAからDNAの合成を引き起こすプライマーである場合、それが特に好ましい。OBCAM遺伝子のイントロン-エクソン境界は、図16A〜Dに示す。
【0097】
ポリメラーゼ連鎖反応において使用するのに適したプライマー(PCR;Saiki et al(1988)Science 239、487-491)が好ましい。適切なPCRプライマーは、以下の諸性質を有していてよい:
【0098】
オリゴヌクレオチドの5'端の配列は、増幅させる標的配列と一致している必要はないことはよく知られている。
【0099】
PCRプライマーは、特にその3'端には、2塩基より長い任意の互いに相補的な構造を含まないことが普通である。なぜならこの特徴は、「プライマー二量体」と呼ばれる人工的産物の形成を促進する可能性があるからである。2つのプライマーの3'端がハイブリダイズすると、これらは「プライマー化された鋳型」複合体を形成し、プライマーの伸張によって、「プライマー二量体」と呼ばれる短い重複産物がもたらされる。
【0100】
プライマー中の内部二次構造は、回避すべきである。対称性PCRに関しては、いずれの塩基も長い伸張部を有していない両方のプライマーについて、40〜60%のG+C含有率がしばしば勧められる。DNAプローブのハイブリダイゼーションの研究に関して使用される、古典的な融解温度の計算によって、所与のプライマーは特定の温度でアニールするはずであり、あるいは72℃という伸張温度によってプライマー/鋳型ハイブリッドが時期尚早に解離するであろうことがしばしば予測される。実際ハイブリッドは、単純なTm計算によって一般的に予測するよりも、PCR法において効果的である。
【0101】
最適なアニーリング温度は経験的に決定することができ、予測した温度よりも高くてよい。Taq DNAポリメラーゼは37〜55℃の領域で活性があり、したがってプライマーの伸張がアニーリングステップ中に起こり、ハイブリッドが安定化するであろう。プライマーの濃度は、従来の(対称性)PCRでは等しく、典型的には0.1〜1μMの範囲である。
【0102】
ポリメラーゼ連鎖反応、QBレプリカーゼおよびリガーゼ連鎖反応を含めた、任意の核酸増幅プロトコルを、本発明の方法において使用することができる。さらに、3SRとも呼ばれるNASBA(増幅に基づく核酸配列)をCompton(1991)Nature 350、91-92およびAIDS(1993)、Vol 7(Suppl,2)に記載されたように使用することができ、S108またはSDA(鎖置換増幅)をWalker et al(1992)Nucl.Acids Res.20、1691-1696に記載されたように使用することができる。その簡潔性のために、ポリメラーゼ連鎖反応が特に好ましい。
【0103】
本発明の1対の適切な核酸をPCRにおいて使用するとき、ゲル電気泳動および臭化エチジウム染色によって、その産物を検出することが好都合である。DNAのアガロースゲル電気泳動および臭化エチジウム染色を使用し、DNA増幅の産物を検出するための代替方法として、増幅させたDNAにプローブとしてハイブリダイズすることができる、標識したオリゴヌクレオチド使用することが好都合である。増幅がPCRによるものであるとき、オリゴヌクレオチドプローブは、2つのプライマーによって定義される内部プライマー配列にハイブリダイズする。オリゴヌクレオチドプローブは、10個と50個の間のヌクレオチド長、より好ましくは15個と30個の間のヌクレオチド長である。プローブは、標準的な技法を使用して、32P、33Pおよび35Sなどの放射性核種で標識することができ、あるいは蛍光染料で標識することができる。オリゴヌクレオチドプローブを蛍光的に標識するとき、増幅させたDNA産物は溶液中で検出することができる(たとえば、Balaguer et al(1991)「Quantification of DNA sequences obtained by polymerase chain reaction using a bioluminescence adsorbent」Anal.Biochem.195、105-110およびDilesare et al(1993)「A high-sensitivity electrochemiluminescence-based detection system for automated PCR product quantitation」BioTechniques15、152-157を参照のこと)。
【0104】
PCR産物は、プローブを使用して検出することもでき、プローブは蛍光体と抑制物質の対を有していてよく、または固形担体に結合してよく、またはビオチンタグを有していてよく、あるいは捕獲プローブと検出プローブの組み合わせを使用して、PCR産物を検出することができる。
【0105】
蛍光体と抑制物質の対は、PCR反応(たとえばRT-PCR)の定量測定に特に適している。適切なプローブを使用する蛍光性の分極化を使用して、PCR産物を検出することもできる。
【0106】
オリゴヌクレオチドプライマーは、たとえば固相ホスホルアミダイトの化学的性質を使用する、当分野でよく知られている方法を使用して合成することができる。
【0107】
本発明は、癌を診断するかあるいは癌を予知する、あるいは癌に対する罹患性を判定する方法における、あるいはこれらの方法を行うための試薬の製造における、OBCAMまたはNTM遺伝子、または(前に記載した)マイクロサテライトD11S4085を含むポリヌクレオチド、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、またはOBCAMまたはNTMのcDNA、またはその変異対立遺伝子、またはその相補体と選択的にハイブリダイズする核酸の使用を提供する。
【0108】
さらに本発明は、前記OBCAMおよび/またはNTM遺伝子の有無、または変異を判定する方法を提供する。この方法は、患者からの適切なサンプルを使用することが好ましい。適切な変異の一例は、実施例5に記載し図18に示す、OBCAM中のヌクレオチド334におけるシトシンからグアニンへの変異を含む。
【0109】
本発明の方法は、OBCAMおよび/またはNTM遺伝子中の、変異を検出することを含む。
【0110】
本発明の方法は、変異によって引き起こされる制限酵素切断部位の違いを利用することができる。非変性ゲルを使用して、適切な制限酵素を用いた消化によって生じる、異なる長さの断片を検出することができる。
【0111】
「適切な制限酵素」は、変異した配列ではなく野生型の配列を認識し切断する、あるいはその逆の酵素である。制限酵素によって認識され切断される(あるいはそうではない場合もある)配列は、変異の結果として存在することができるか、あるいは配列は、PCR反応においてミスマッチしたオリゴヌクレオチドを使用して、正常あるいは変異対立遺伝子に導入することができる。酵素がDNAのみをまれに切断する場合、言い換えると、酵素がごくまれに存在する配列を認識する場合、このことは好都合である。
【0112】
他の方法では、野生型の遺伝子型または変異した遺伝子型のいずれかと一致する(すなわちハイブリダイズする)が、両方とは一致しない、PCRプライマーの対を使用する。したがって、増幅されたDNAが生じるかどうかは、野生型または変異した遺伝子型(したがって表現型)を示す。しかしながら、この方法は、技術的な失敗によるものであると思われる負の結果(すなわち、増幅されたDNAが存在しないこと)を利用するものである。したがってこの方法は、あまり信頼性がなく、かつ/あるいは追加の対照実験を必要とする可能性がある。好ましい実施形態では、プライマー対の1つは、図7で付番したヌクレオチド334を含むOBCAM遺伝子の一部分、またはOBCAMのcDNAの対応する部分と選択的にハイブリダイズする。
【0113】
好ましい方法は、同様のPCRプライマーであるが、野生型または変異した配列の1つとだけハイブリダイズするプライマーを使用し、通常ではそこに存在しない制限部位を、野生型または変異した配列中に導入する。
【0114】
前記選択的にハイブリダイズする核酸は、OBCAMおよびNTM遺伝子の両方と選択的にハイブリダイズすることができることは理解されるであろう。なぜなら、これら2つの遺伝子は、染色体11上で互いに比較的近位に位置するからである。図lに示すように、これら2つの遺伝子は、おそらく互いに隣接して位置している。
【0115】
OBCAMおよび/またはNTM遺伝子、またはOBCAMまたはNTMのcDNAと選択的にハイブリダイズする核酸は、いくつかの目的に有用である。
【0116】
ゲノムDNAとのサザンハイブリダイゼーションにおいて、前ですでに論じた点変異を検出するためのRNase保護法において、核酸を使用することができる。プローブを使用して、PCR増幅産物を検出することができる。プローブを使用して、他の技法を使用するサンプル中のOBCAMまたはNTM遺伝子またはmRNAとのミスマッチを検出することもできる。ミスマッチは、酵素(たとえば、S1ヌクレアーゼまたはリソルバーゼ)、化学物質(たとえば、ヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムおよびピペリジン)、または完全に一致したハイブリッドと比較したミスマッチしたハイブリッドの電気泳動による移動の変化のいずれかを使用して、検出することができる。これらの技法は、当分野ではよく知られている。一般にプローブは、OBCAMおよび/またはNTM遺伝子をコードする配列と相補的であるが、いくつかのイントロンのためのプローブも企図される。一式の核酸プローブを使用して、野生型OBCAMおよび/またはNTM遺伝子の変異の消失を検出するための、キットを構成することができる。このキットにより、OBCAMおよび/またはNTM遺伝子全体とのハイブリダイゼーションが可能である。プローブは互いに重複しているか、あるいは隣接していてよい。好ましい実施形態では、プローブは、図7で付番したヌクレオチド334、またはOBCAMのcDNAの対応するヌクレオチドを含む、(たとえば、前に記載したように増幅させた後の)OBCAM遺伝子の一部分を検出する。
【0117】
リボプローブを使用してmRNAとのミスマッチを検出する場合、それはヒトOBCAMまたはNTM遺伝子のmRNAと相補的である。したがってリボプローブは、それがOBCAMまたはNTM遺伝子によってコードされているタンパク質をコードしていない点において、アンチセンスプローブである。なぜならそれは、センス鎖と正反対の極性であるからである。一般にリボプローブは標識、たとえば放射活性標識されており、標識は当分野で知られている任意の手段によって行うことができる。リボプローブを使用してDNAとのミスマッチを検出する場合、それはいずれかの極性、センスまたはアンチセンスであってよい。同様に、DNAプローブを使用してミスマッチを検出することもできる。
【0118】
核酸プローブは、OBCAMまたはNTM遺伝子の変異対立遺伝子とも相補的であってよい。ミスマッチではなくハイブリダイゼーションに基づいて、他の患者中の類似の変異を検出するために、これらの核酸プローブは有用である。前述のように、OBCAMおよびNTM遺伝子プローブを、ゲノムDNAとのサザンハイブリダイゼーションで使用して、欠失および挿入など全体的な染色体の変化を検出することもできる。
【0119】
本発明の診断および予後法に従って、野生型遺伝子の機能の消失、または変化を検出することができる。その消失は、挿入、欠失、または点変異事象のいずれかによるものである可能性がある。ただ1つの対立遺伝子が変異する場合、初期の新生物状態が示される可能性がある。しかしながら、両方の対立遺伝子が変異する場合は、したがって悪性状態が示される、すなわち悪性の確率が高まることが示される。したがって、このような変異を発見することによって、診断および予後の情報が与えられる。検出されていないOBCAMまたはNTM遺伝子の対立遺伝子(たとえば、姉妹染色体〜遺伝子が欠失している染色体上のもの)を、挿入、わずかな欠失、および点変異などの他の変異に関して、スクリーニングすることができる。遺伝子の1つのコピー(対立遺伝子)の変異を検出することが有用であると我々は考えている。たとえば、GenBank受託番号NM_002545で付番したシトシン334における、OBCAM遺伝子の変異は、卵巣癌の発達の初期事象として観察される。第2の対立遺伝子の消失が、発癌のために必要である可能性がある。第2のコピーが全体的な機構によって常に失われる場合、これは検出するための有用な事象であると思われる。遺伝子のいくつかの変異は、残りの対立遺伝子に対して優性ネガティブ効果がある可能性がある。非機能遺伝子の産物をもたらす変異は、悪性状態すなわち悪性の確率の増大をもたらす可能性もある。変異事象(点変異、欠失、挿入など)は、遺伝子のプロモーター中などの調節領域で起こり、これによってmRNAの発現の消失または低下がもたらされる可能性がある。点変異も、正確なRNAのプロセッシングを無効にし、OBCAMまたはNTM遺伝子産物の発現の消失または変化、または非機能的であるかあるいは発現が変化したOBCAMまたはNTMポリペプチドをもたらす可能性がある。試験サンプル中のOBCAMまたはNTMのmRNAの量を定量化し、対照サンプル中に存在する量と比較する場合、それが好ましい。試験サンプル中のOBCAMまたはNTMのmRNAの接合型または構造を決定し、対照サンプル中に存在するものと比較する場合も、それが好ましい。しかしながら、OBCAMまたはNTMの発現を検出することは、あまり好ましくない。
【0120】
サンプル組織の単位質量当たりあるいはサンプル細胞の単位数当たりの、OBCAMまたはNTMのmRNAの量を決定し、これを知られている正常な組織の単位質量または正常な細胞の単位数当たりと比較することが適切である。たとえばノーザンブロットまたは定量RT-PCRを使用して、RNAを定量化することができる。
【0121】
遺伝子はそれぞれ2つの対立遺伝子を有しており、両方の対立遺伝子を改変することは、1つの対立遺伝子を改変するよりも、細胞の挙動に対して大きな影響がある可能性があることは理解されるであろう。少なくとも、1つの変異対立遺伝子が、改変されたコード配列をもたらす変異体を有することは予想される。コード配列以外の第2の対立遺伝子の改変は、調節領域の完全または部分的な遺伝子の欠失、および消失または変異を含んでよい。
【0122】
前述のように、OBCAMおよびNTMの対立遺伝子の消失または不活性化を判定することが、有用である可能性がある。なぜなら、OBCAMの消失または不活性化は、NTMの消失または不活性化より初期の事象である可能性があり、2つのうちのいずれかの消失または不活性化の有無を判定することによって、癌の進行の段階に関する情報を与えることができるからである。たとえば、NTM中ではなくOBCAM中で欠失(または他の消失または不活性化)が認められる患者は、OBCAMとNTMの両方で消失または不活性化が認められる患者よりも、初期の段階の癌を有する可能性がある。たとえば、後のNTMのLOHはOBCAMのLOHの場合ほぼ独占的に起こり、NTMのLOHのみが起こることはほとんどないと考えられる。高段階、または等級、または逆生存率と、相関関係がある可能性がある。結腸直腸癌に関しては、OBCAMとニューロトリミンLOHの比は、それぞれ約32%と50%であると考えられる。
【0123】
癌または前癌疾患の状態の進行は、NTMの消失または不活性化、さらにOBCAMの消失または不活性化を検出することによって示すことができるので、したがって、本発明の第1または第2の態様の方法を、同じ患者に2回以上行うことが有用である可能性がある。
【0124】
したがって、本発明は、患者の癌疾患の進行、たとえば腫瘍の進行を判定する方法であって、
(i)患者のOBCAM遺伝子が失われているかあるいは不活性化している患者から、サンプルの核酸を得るステップ、
(ii)前記核酸を、NTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、あるいはNTMのcDNA、またはその変異対立遺伝子、またはその相補体と選択的にハイブリダイズする核酸と接触させるステップを含む方法も提供する。
【0125】
サンプルは、癌が発見されているか疑われる組織からのサンプルであることが好ましく、サンプルは卵巣または直腸からのものであることがより好ましい。
【0126】
任意の癌または前癌疾患の状態の進行、または変化に関するこのような情報は、治療の有効性を監視する際に、正確な状態を診断する際に、あるいは患者の特定の結末の相対的な見通しを予後または予測する際に、内科医にとって有用である可能性がある。
【0127】
本発明は以下の方法も含む:切断型遺伝子産物、または基質の結合などの変化した性質を同定するために、OBCAMおよび/またはNTM遺伝子のin vitroでの転写および翻訳;タンパク質の発現が低下/消失している、あるいはタンパク質の分布が細胞内または細胞表面で変化している、細胞を同定するために、組織切片の免疫組織化学法;および前に記載した領域の変異を検出する前の、ランダムなプライマーを使用するRT-PCRの使用。OBCAMまたはNTMポリペプチドの変化した分布をスクリーニングする場合、それが好ましい。
【0128】
検出することが有用である可能性がある変異の一例は、実施例5に記載するOBCAMポリペプチド中のプロリンからアルギニンへの変異である。変異する残基は第1の免疫グロブリンドメイン中に位置し、OBCAMポリペプチドの立体配座の変化をもたらす可能性がある。この変異は癌の指標、特に卵巣癌の初期の指標であると考えられる。OBCAMポリペプチドのこのような変異は、野生型(すなわち、プロリンからアルギニンへの変異がない)と変異体を区別することができる、抗体を使用して検出することができる。このような抗体は、以下でさらに詳細に記載する。
【0129】
本発明の方法は、OBCAMまたはNTM遺伝子の不活性化を、そのDNAのメチル化状態を調べることによって検出することも含む。OBCAMまたはNTM遺伝子のDNAのメチル化は、Herman et al(1996)Proc.Nad.Acad.Sci.USA 93、9821-9826中に記載された技法などの、標準的な技法を使用して評価することができる。OBCAMまたはNTM遺伝子のDNAの異常なメチル化は、それらの不活性化と関連している可能性がある。
【0130】
当業者には知られているように、CpGアイランドと呼ばれる、5'〜グアニンに位置するシトシンの領域が、多くの遺伝子の調節領域中に存在する。これらのシトシンは、正常な条件下では一般に非メチル化状態である。しかしながらこれらのシトシンは、癌と関連があるいくつかの遺伝子中においてメチル化状態になる可能性がある。これらのメチル化遺伝子は、二対立遺伝子のメチル化によるこの両方の結果として、あるいは第2の不活性化機構(たとえばLOHまたは変異)と組み合わさって、抑制される可能性がある。メチル化特異的PCR(MS-PCR)は、重硫酸ナトリウムを使用する改変によって、ゲノムDNA中の非メチル化シトシンのウラシルへの脱アミノ化を含む。メチル化シトシンが、重硫酸ナトリウムによって脱アミノ化することはない。調査中のゲノムDNAのメチル化状態に応じて、ミスマッチが生じるようにプライマーを設計する。典型的な実験は、同じ鋳型を使用する2つのPCR反応を含む。1つの実験は、改変型メチル化DNAにアニーリングさせるプライマーを使用し、もう一方の実験は、改変型非メチル化DNAにアニーリングさせ、MS-PCRによりそれぞれメチル化および非メチル化DNAに関する、特異的な結合を生み出すように設計したプライマーを使用する。MS-PCR産物の塩基配列決定によって、試験中の遺伝子のCpGアイランドのメチル化度がさらに確認される。適切なプライマーの例を、実施例12に示す。
【0131】
以下の参照文献は、MS-PCRに関するものである:Maekawa et al(2001)Clin Chem Lab Med Feb;39(2):121-8;Maekawa M et al(1999)Biochem Biophys Res Commun 262(3):671-6。
【0132】
実施例は、OBCAMまたはNTM遺伝子のメチル化状態とその発現レベルの間に相関関係があり、OBCAMまたはNTM発現の下方制御は、OBCAMまたはNTMのメチル化と相関関係があることを示す。したがって本発明は、OBCAMまたはNTM遺伝子のメチル化度または程度を評価することによって、OBCAMまたはNTMの発現レベルを判定する方法、および患者の癌の特定の結末の相対的な見通しを診断または予測する際に、この情報を使用する方法を含む。
【0133】
本発明の他の態様は、患者の癌を診断する方法であって、
(i)患者からのOBCAMおよび/またはNTM遺伝子を含むサンプルを得るステップ、
(ii)OBCAMおよび/またはNTM遺伝子のメチル化度を判定するステップ、
(iii)患者のサンプルからのOBCAMおよび/またはNTM遺伝子のメチル化度を、対照サンプルのメチル化度と比較するステップ、および
(iv)対照サンプルと比較して、患者のサンプルがより高いメチル化度のOBCAMおよび/またはNTM遺伝子を有する場合、これが癌を示すステップを含む方法を提供する。
【0134】
メチル化度を判定することによって、メチル化の有無、たとえば個々の残基または領域上のメチル化の有無を判定することが含まれる。したがって、たとえば、プライマー領域のメチル化は、前に記載したMS-PCRを使用して生成物の有無によって検出することができ、一方、生成物の塩基配列決定によって、介在(増幅)領域中の潜在的なメチル化部位がメチル化されるかどうか、あるいはどのくらいの数メチル化されるか(さらにそれゆえ、脱アミノ剤、またはたとえば重亜硫酸塩処理などの処理の結果として変異する)を示すことができる。
【0135】
患者のサンプルがOBCAMおよび/またはNTM遺伝子のメチル化を示すが、一方で対照サンプルは、OBCAMおよび/またはNTM遺伝子のメチル化を全く示さないかわずかに示す場合、これは癌を示す。メチル化は、本質的に「全か無か」方式で起こる可能性があると考えられる。
【0136】
本発明の他の態様は、癌患者の特定の結末の相対的な見通しを予測する方法であって、
(i)患者からのOBCAMおよび/またはNTM遺伝子を含むサンプルを得るステップ、
(ii)OBCAMおよび/またはNTM遺伝子のメチル化度を判定するステップ、
(iii)患者のサンプルからのOBCAMおよび/またはNTM遺伝子のメチル化度を、対照サンプルのメチル化度と比較するステップ、および
(iv)対照サンプルと比較して、患者のサンプルがより高いメチル化度のOBCAMおよび/またはNTM遺伝子を有する場合、これが首尾の良い結果の可能性が低いことを示すステップを含む方法を提供する。
【0137】
「対照サンプル」によって我々は、非腫瘍サンプル、または腫瘍性である可能性があるが、患者のサンプル中で疑われるものよりも発達の初期の段階にあるサンプルの意味を含ませることにする。
【0138】
対照サンプルは、非腫瘍サンプルであることが好ましい。腫瘍の進行を測定する場合、対照サンプルが発達の初期の段階からの、典型的には同じ患者からの腫瘍サンプルである場合、それが好ましい可能性がある。
【0139】
疾患または腫瘍の進行は、NTMのみのメチル化度を判定することによって確認することができ、あるいはNTMとOBCAMの両方のメチル化度を判定することによって確認することができる。メチル化度は、NTMとOBCAMの両方において判定することが好ましい。「進行」によって我々は、腫瘍が悪性になる可能性の増大を含ませることにする。
【0140】
明らかな進行経路を有する結腸直腸癌と異なり、卵巣癌には、検出可能な前悪性/悪性の変化がない。したがって、卵巣疾患の進行は、たとえば予後を悪化させ局所への広がりが増す一層攻撃的な腫瘍を指す。
【0141】
LOHは、NTMのLOHより前のOBCAMのLOHとは一時的に別のものであるようである。OBCAMおよびNTMに関してメチル化を一時的に定義することもできるが、実施例1で論じるように、メチル化が起こる場合は、それは両方の遺伝子中で同時に起こることがより一般的である。
【0142】
NTMにおける任意のメチル化、または事前にOBCAMのみがメチル化した、NTMにおける他のメチル化を確認することによって、NTMにおけるメチル化が確認されなかった段階からの、疾患または腫瘍の進行を示すことができる。
【0143】
したがって、本発明の他の態様は、患者の癌疾患の進行、たとえば腫瘍の進行を判定する方法であって、
(i)NTM遺伝子を含む患者からサンプルを得るステップであって、患者のOBCAM遺伝子がメチル化しているステップ、
(ii)NTM遺伝子のメチル化度を判定するステップ、
(iii)患者のサンプルからのNTM遺伝子のメチル化度を、対照サンプルのメチル化度と比較するステップ、
および、対照サンプルと比較して、患者のサンプルからのNTMのメチル化度が高い場合、これが疾患または腫瘍の進行を示すステップを含む方法を提供する。
【0144】
腫瘍は良性または悪性であってよい。前に記載したように、本発明の第1および第2の態様に関しては、腫瘍が卵巣または結腸直腸腫瘍である場合、それが好ましく、サンプルが、癌が疑われるか腫瘍は発見されている組織のサンプルである場合も、それが好ましい。
【0145】
核酸間のメチル化の違いを判定するための方法は当分野でよく知られており、(a)メチル化感受性である1つのヌクレオチドプライマー伸長剤(Ms-SNuPE)を使用すること;(b)サザンブロット分析による、メチル化感受性制限酵素を用いたゲノムDNAの消化、および(c)PCR増幅の前に、メチル化感受性制限酵素を用いたゲノムDNAの消化を利用する、PCR系メチル化アッセイを含む。前述の方法を行い、その後DNAを消化または重亜硫酸塩により転換することができる。重亜硫酸塩処理によって、核酸サンプル中において非メチル化シトシンのウラシルへの転換が引き起こされるが、メチル化シトシンの(チミンへの)脱アミノ化は引き起こされない。
【0146】
本発明の他の態様は、ヒトDNAの関連領域の有無、または変異を検出するためのシステム(あるいは、パーツのキットと名付けることも可能であると思われる)を提供し、このシステムはヒトDNAの関連領域、およびヌクレオシド三リン酸またはデオキシヌクレオシド三リン酸、またはこれらの誘導体と選択的にハイブリダイズすることができる核酸を含む。ヒトDNAの関連領域と選択的にハイブリダイズすることができる好ましい核酸は、前述の好ましい核酸と同じである。「ヒトDNAの関連領域」は、OBCAMまたはNTM遺伝子、またはOBCAMまたはNTMのcDNAを含む。ヒトDNAの関連領域は、本明細書で定義するOBCAMまたはNTM遺伝子であることが好ましい。
【0147】
したがって本発明は、OBCAMまたはNTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、およびOBCAMまたはNTM遺伝子中の変異体を検出するための手段であって、前記変異体が、癌細胞中で見られるOBCAMまたはNTMの変異体である手段を含むパーツのキットを提供する。
【0148】
「変異」によって、挿入、置換および欠失が含まれる。核酸が選択的にハイブリダイズすることができる変異の一例は、図7で付番したヌクレオチド334における、OBCAMのシトシンのグアニンへの変異である。
【0149】
「ヌクレオシド三リン酸またはデオキシヌクレオシド三リン酸、またはそれらの誘導体」によって、任意の天然に存在するヌクレオシド三リン酸またはデオキシヌクレオシド三リン酸、ATP、GTP、CTP、およびUTP、dATPdGTP、dCTP、TTPなど、および非天然誘導体、チオリン酸結合を含む誘導体(たとえばαS誘導体)などが含まれる。
【0150】
ヌクレオシド三リン酸またはデオキシヌクレオシド三リン酸、またはそれらの誘導体は、たとえば32P、33Pまたは35Sで放射標識されているか、あるいはで化学蛍光性化合物またはジゴキシゲニン標識されていることが、好都合である。
【0151】
デオキシヌクレオチドは、PCRで使用するための、希釈するのに適した濃度であることが好都合である。
【0152】
したがって本発明は、前記ヒトDNAの関連領域と選択的にハイブリダイズすることができる核酸、および前記領域の有無、または変異を検出するための手段を含むパーツのキットを含む。前記領域の有無、または変異を検出するための手段には、たとえば診断用制限酵素、または変異特異的核酸プローブなどがある。
【0153】
本発明の他の態様は、
(a)OBCAM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、またはOBCAMのcDNA、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、または
(b)重亜硫酸塩処理したメチル化OBCAM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、または
(c)重亜硫酸塩処理した非メチル化OBCAM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、または
(d)(a)および(b)、または(a)および(c)、または(b)および(c)、または(a)、(b)および(c)
および重亜硫酸塩の源を含むパーツのキットを提供する。
【0154】
本発明は、
(a)NTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、またはNTMのcDNA、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、または
(b)重亜硫酸塩処理したメチル化NTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、または
(c)重亜硫酸塩処理した非メチル化NTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、または
(d)(a)および(b)(a)および(b)、または(a)および(c)、または(b)および(c)、または(a)、(b)および(c)
および重亜硫酸塩の源を含むパーツのキットをさらに提供する。
【0155】
本発明のキットは、以下でさらに論じるように、増幅反応(たとえばPCR反応)を行うための手段、および/または増幅産物の塩基配列を決定するための手段をさらに含むことができ、これらの手段によって増幅体、たとえばPCR産物中のメチル化CpGの有無を示すことができる。
【0156】
重亜硫酸塩の源を含むこれらのキットは、対照のメチル化DNAをさらに含むことが好都合である。このような対照のDNAは、少なくとも1つのシトシンにおいてメチル化することが知られており、試験DNAと陽性比較することができる。任意のメチル化させたヒトDNA、たとえば酵素による方法を使用して人工的にメチル化させたDNAを使用することができる。血液に由来するDNAは、有用である可能性がある。なぜならこれは、再生可能な源であるからである。メチル化させたヒトDNAは、Intergen(Purchase、New York、USA/Oxford、UK):CpGenome Universal Methylated DNA Cat.No.S7821から市販されている。
【0157】
これらのキットはDNAポリメラーゼも含むことも好都合である。DNAポリメラーゼは、配列分析の前に、重亜硫酸塩で改変させたDNAを増幅させるのに有用である。DNAの改変における重亜硫酸塩の使用、およびDNAのメチル化状態を調べる際の後のDNA増幅は、前および実施例中に記載する。
【0158】
本発明の他の態様は、DNAの関連領域の有無、または変異を検出するためのシステムを提供し、このシステムは、ヒトDNAの関連領域と選択的にハイブリダイズすることができる核酸、および核酸を改変する酵素を含む。ヒトDNAの関連領域と選択的にハイブリダイズすることができる好ましい核酸は、前述の好ましい核酸と同じである。
【0159】
「変異」によって、挿入、置換(塩基転換含む)および欠失が含まれる。
【0160】
「核酸を改変する酵素」によって、RNAまたはDNA分子を改変することができる任意の酵素が含まれる。
【0161】
好ましい酵素は、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、ポリヌクレオチドキナーゼまたは制限エンドヌクレアーゼからなる群から選択される。特に好ましい酵素は、TaqDNAポリメラーゼなどの、熱安定性のDNAポリメラーゼである。二次構造、たとえばミスマッチを認識する、CleavaseIなどのヌクレアーゼも、有用である可能性がある。
【0162】
遺伝子の変異を検出することは、患者のための適切な治療、たとえばOBCAMおよび/またはNTM遺伝子療法を決定するために有用であろう(以下参照)。遺伝子の変異を検出することは、腫瘍がこの共通の特性を有しており、さまざまな治療に対する予後または応答に関する群として分析することができる、患者の亜群を識別するために、有用である可能性がある。OBCAMの変異の一例を、実施例5に記載し図18に示す。
【0163】
遺伝子の変異は、いくつかの治療に対する応答または耐性と関連がある可能性があり、さまざまな療法に対する感度が知られている細胞株を使用して、あるいは臨床的な相関関係の研究によって、これを調べることができる。
【0164】
一群のマーカーおよび試験体の一部として、遺伝子を使用することが考えられ、その併せた結果が療法に向けられると思われる。片方または両方の遺伝子の変異を検出することは、疾患の広がりおよび重度を調べるために、有用である可能性がある。
【0165】
遺伝子の変異が1つの腫瘍では共通であるが、他の腫瘍ではそうではない場合、遺伝子の分析は、鑑別診断するために有用である可能性がある。たとえば、胃腸起源の二次的な腫瘍は卵巣中に頻繁に見られ、真の卵巣起源の腫瘍と区別することが困難である。
【0166】
本発明の他の態様は、
患者の癌を診断する方法であって、
(i)患者に由来するタンパク質を含むサンプルを得るステップ、および
(ii)(a)OBCAMポリペプチドの相対量、または細胞内位置、または物理的形状、あるいはOBCAMポリペプチドの相対活性、または活性の変化、または変化した活性、または
(b)NTMポリペプチドの相対量、または細胞内位置、または物理的形状、あるいはNTMポリペプチドの相対活性、または活性の変化、または変化した活性、または
(c)(a)と(b)両方を判定するステップを含む方法を提供する。
【0167】
本発明の他の態様は、
患者の癌の特定の結末の相対的な見通しを予測する方法であって、
(i)患者に由来するタンパク質を含むサンプルを得るステップ、および
(ii)(a)OBCAMポリペプチドの相対量、または細胞内位置、または物理的形状、あるいはOBCAMポリペプチドの相対活性、または活性の変化、または変化した活性、または
(b)NTMポリペプチドの相対量、または細胞内位置、または物理的形状、あるいはNTMポリペプチドの相対活性、または活性の変化、または変化した活性、または
(c)(a)と(b)両方を判定するステップを含む方法を提供する。
【0168】
本発明の方法は、試験サンプル中のOBCAMおよび/またはNTMポリペプチド、またはその変異体の測定および検出、およびそれらを対照サンプルと比較することも含む。ポリペプチドの変化した活性を検出することも、有用である可能性がある。試験サンプル中のOBCAMおよび/またはNTMポリペプチド(またはその変異体)に関して得られる測定値と、知られている非癌性(正常)細胞に由来するか、あるいは知られている癌性細胞に由来する可能性がある、対照サンプルの均等な測定値を比較することができることは理解されるであろう。
【0169】
患者に由来するタンパク質を含むサンプルは、癌が疑われるか、または癌が発見される可能性があるかあるいは発見されている組織のサンプルであることが好都合である。これらの方法は任意の癌に使用することができるが、卵巣の癌、結腸直腸癌、および他の一般的な腺癌、乳、肺または上部胃腸管の癌などに関して特に適しており、これらの方法は卵巣の癌または結腸直腸癌に関して特に適している。適切なサンプルを得る方法は、初期の方法に関して記載されている。
【0170】
OBCAMおよび/またはNTMポリペプチドを検出することを含む本発明の方法は、腫瘍サンプルのパラフィン包埋切片を含むサンプルなどの、組織サンプルに関して特に有用である。
【0171】
OBCAMまたはNTMポリペプチドの相対量、または細胞内位置、または物理的形状は、任意の適切な方法で決定することができる。
【0172】
OBCAMのポリペプチド配列は、受託番号NM_002545で、GenBankのデータライブラリー中に与えられる(図7参照)。NTMのポリペプチド配列は、受託番号NM_016522で、GenBankのデータライブラリー中に与えられる(図8および9参照)。NTMのポリペプチド配列は、WO00/61754のクローン11753149.0.6および11753149.0.37、およびWO99/46281のPR0337によってコードされている、配列も含むことができる。
【0173】
「物理的形状」の決定により我々は、ポリペプチドの配列の決定、たとえば図7に示す野生型配列と患者からのサンプル中に存在するポリペプチドの配列の間の、挿入、欠失、置換などの違いの存在を決定することを含ませることにする。OBCAMの場合、ポリペプチドが変異体、実施例5に記載する変異体などであるかどうかを決定することは、有用である可能性がある。なぜなら、このような変異体は、情報を与えることができるからである。たとえば、患者からのサンプルが、残基95(図7に示す未熟ポリペプチドにおいて、およびGenBankの受託番号NP_002536の対応するタンパク質の参照配列において付番したもの)がプロリンではなくアルギニンである、変異体OBCAMを含むことを判定することによって、卵巣癌を示すことができる。この変異体は、卵巣癌の初期段階から検出可能であると考えられるので、それを検出することによって、その患者の特定の結末の相対的な見通しの、迅速な診断、予後および決定が可能であり、これらすべてによって、より適切な治療を選択することができ、その患者の好ましい結末の確率が高まる。
【0174】
OBCAMまたはNTMポリペプチドの相対量、または細胞内位置、または物理的形状を、OBCAMまたはNTMポリペプチドに選択的に結合するか、あるいはOBCAMまたはNTMポリペプチドの変異形に選択的に結合する、分子を使用して決定する場合、それが好ましい。当業者に知られているように、OBCAMおよびNTMは両方ともに細胞外のものであり、分泌型細胞接着分子であり、したがって成熟した野生型分子は一般には細胞内に存在しない。OBCAMまたはNTMに選択的に結合するか、あるいはOBCAMまたはNTMの変異体に選択的に結合する分子は、抗体であることが適切である。抗体は、OBCAMまたはNTMポリペプチドの天然変異体または断片に結合することもできる。
【0175】
OBCAMまたはNTMに対する抗体は、当分野でよく知られている方法によって作製することができる。
【0176】
使用する抗体がOBCAMまたはNTMに選択的である場合、それが好ましい。「OBCAMまたはNTMに選択的である」によって我々は、それらはOBCAMまたはNTMには結合するが、他のポリペプチドには実質的に結合しないことを意味することにする。抗体はOBCAMまたはNTMポリペプチドのみに選択的に結合することが好ましく、抗体はOBCAMとNTMの片方にのみ結合し、両方には結合しないことがより好ましい。
【0177】
OBCAMまたはNTMの変異形に選択的に結合することができる抗体は、たとえばOBCAMまたはNTMの変化したアミノ酸あるいはそれ以外の場合は改変領域を含むペプチドを使用することによって、あるいはOBCAMまたはNTMポリペプチドの一部分を発現し、変化したアミノ酸あるいはそれ以外の場合は改変領域を含む融合タンパク質を使用することによって、作製することができる。
【0178】
それに対する抗体を作製することが有用である可能性があり、選択的に結合することができる、変異OBCAM(すなわち、変異OBCAM)ポリペプチド配列の一例を実施例5に記載し、変異した残基のすぐ周辺のアミノ酸配列を、図18に示す。この変異したアミノ酸配列は、図7で付番した、未熟(すなわち、まだシグナルペプチドが結合している)ポリペプチドの残基95に対応する。残基95は、OBCAMの第1の免疫グロブリンドメイン中に位置すると考えられる。
【0179】
いずれの場合も、遺伝コードに基づいて、アミノ酸配列の変化を容易に推測することができる。本明細書で開示する、変異OBCAMまたはNTMポリペプチドに選択的である抗体は、本発明の他の態様を形成する。
【0180】
抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであってよい。適切なモノクローナル抗体は、知られている技法、たとえばMonoclonal Antibodies:A manual of techniques、H Zola(CRC Press、1988)中、およびMonoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and applications、J G R Hurrell(CRC Press、1982)中に開示された技法によって作製することができ、この両方は参照によって本明細書に組み込んである。
【0181】
「OBCAMポリペプチドの相対量」によって、知られている正常な組織の単位質量当たりあるいは正常な細胞の単位数当たりの、OBCAMポリペプチドの量と比較した、サンプル組織の単位質量当たりあるいはサンプル細胞の単位数当たりの、OBCAMポリペプチドの量が意味される。任意の適切なタンパク質定量法を使用して、相対量を決定することができる。特に、抗体を使用する場合、OBCAMの量は、定量ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着定量アッセイ(ELISA)、または定量免疫組織化学法を含めた方法を使用して決定することが好ましい。同様に、「NTMポリペプチドの相対量」によって、OBCAMに関して前に記載したように、サンプルなどの単位質量当たりのNTMポリペプチドの量が意味される。
【0182】
腫瘍状態の病巣を、野生型OBCAMまたはNTMポリペプチドの変化に基づいて、検出することもできる。このような変化は、従来の技法に従って、配列分析により決定することができる。より好ましくは、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)を使用して、OBCAMまたはNTMポリペプチド、またはそれに由来するペプチドの違い、または不在を検出する。抗体は、本明細書で論じるように作製することができる。
【0183】
抗体を産生または精製するための他の技法は、当分野ではよく知られており、任意のこのような技法を選択して、本発明で特許請求する調製物を得ることができる。本発明の好ましい実施形態では、抗体によって、OBCAMまたはNTMタンパク質を溶液から免疫沈降させ、かつポリアクリルアミドゲルのウエスタンまたは免疫ブロットで、OBCAMまたはNTMタンパク質と反応させる。他の好ましい実施形態では、免疫細胞化学技法を使用して、抗体によって、パラフィンまたは凍結組織切片中のOBCAMまたはNTMタンパク質を検出する。
【0184】
OBCAMまたはNTMまたはその変異体を検出するための方法に関する、好ましい実施形態には、モノクローナルおよび/またはポリクローナルを使用するサンドウィッチアッセイを含めて、酵素結合免疫吸着定量アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、イムノラジオメトリックアッセイ(IRMA)、および免疫酵素アッセイ(IEMA)がある。代表的なサンドウィッチアッセイは、参照によってここに組み込んである、David他の米国特許第4,376,110号および第4,486,530号によって記載されている。
【0185】
OBCAMまたはNTMの細胞内位置は、免疫細胞化学などの分野で知られている方法を使用して、容易に決定することができ、これらの方法では、標識した抗体(たとえば、放射活性または蛍光標識した抗体)を使用して、OBCAMまたはNTMと結合させ、細胞内でのその位置を顕微鏡によって決定する。たとえば、この方法を使用して、OBCAMまたはNTMが細胞質または原形質膜中に位置するかどうか、あるいは両方の区分に位置する場合は、それぞれの区分に位置するOBCAMまたはNTMの比率を決定することができる。非癌性の、正常な対照サンプルと比較した、試験サンプル中のOBCAMまたはNTMの位置の変化は、癌状態を示す可能性がある。
【0186】
変化した細胞内の分布を検出するための方法には、免疫組織化学法(IHC;たとえば、一次抗体を認識する抗体、すなわち二次抗体を酵素、蛍光タグ、放射性同位体で標識する場合)、およびIHC染色した切片のコンピュータ支援の画像分析がある。
【0187】
OBCAMまたはNTMの相対活性は、サンプル組織の単位質量当たりあるいはサンプル細胞の単位数当たりの、OBCAMまたはNTMポリペプチドの活性を測定し、この活性を、知られている正常な組織の単位質量当たりあるいは正常な細胞の単位数当たりの、OBCAMまたはNTMポリペプチドの活性と比較することによって、決定することができる。相対量は、OBCAMまたはNTMの活性の任意の適切なアッセイを使用して、決定することができる。アッセイは、OBCAMまたはNTMポリペプチドの活性に選択的であることが好ましい。
【0188】
NTMおよびOBCAM遺伝子の活性には、腫瘍抑制活性、神経軸策の支持、細胞凝集の促進、およびまだ明確には定義されていない細胞シグナル機能がある。
【0189】
本発明は、変異OBCAMまたはNTMポリペプチド、またはその断片と反応する抗体であって、前記変異OBCAMまたはNTMポリペプチドが、癌細胞中で見られる変異体である抗体も提供する。抗体は、野生型OBCAMまたはNTMポリペプチドとは反応しないことが好ましい。このような抗体は、診断アッセイおよび本発明の方法において有用であり、たとえばその配列が変異OBCAMまたはNTMポリペプチドに由来するペプチドを、免疫原として使用して、作製することができる。OBCAM変異体の一例は、実施例5に記載し図18に示す。
【0190】
本発明は、変異OBCAMまたはNTMポリペプチドをコードする核酸と選択的にハイブリダイズする核酸であって、その変異体が、癌細胞中で見られる変異体である核酸も提供する。このような核酸は、診断アッセイおよび本発明の方法において有用である。
【0191】
罹患性の診断、決定、および結末の相対的な見通しの予想の、いくつかの核酸系の方法に関しては、これらの方法は、同等な組織、または正常すなわち疾患がないことが知られている他の源からのサンプルと比較して、試験するサンプル中で、OBCAMまたはNTM核酸の状態が(DNAであれmRNAであれ)、変わるかどうかを決定することを含むことは理解されるであろう。
【0192】
変異配列を基盤とするペプチドは、免疫応答を刺激する際に有用である可能性がある。
【0193】
本発明の他の態様は、患者の癌を治療する方法であって、OBCAMまたはNTM活性のアゴニストを患者に投与するステップを含む方法を提供する。アゴニストは、細胞膜の外面、たとえばGPIアンカーに結合すること、およびOBCAMまたはNTMの通常の標的と相互作用することによって機能することができる。アゴニストは、当業者に知られているように、抗体または抗体断片であってよく、あるいはたとえば5000Da未満の小分子であってよい。
【0194】
OBCAMおよびNTMは細胞外分子であるので、細胞膜の細胞外部分で結合することによって、その機能が復元する擬似体によって、完全長のcDNAを形質導入する遺伝子治療と、同じ効果を得ることができると思われる。言い換えると、患者中での腫瘍抑制遺伝子の機能は、小分子治療剤を患者に投与することによって、復元させることができる。
【0195】
本発明の他の態様は、患者の癌を治療する方法であって、OBCAMまたはNTM遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、またはOBCAMまたはNTMのcDNAと選択的にハイブリダイズする核酸を、患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0196】
本発明の他の態様は、患者の癌を治療する方法であって、OBCAMおよび/またはNTMポリペプチド、またはその機能変異体、または一部分または融合体をコードする核酸を、患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0197】
本発明は、OBCAMおよび/またはNTM遺伝子またはcDNAを、癌を有する患者に投与することも含む。治療される癌は、卵巣癌または結腸直腸癌であることが好ましい。
【0198】
患者に投与する核酸は、OBCAMおよび/またはNTMポリペプチド、またはその機能変異体、または一部分をコードする核酸であることが適切である。OBCAMおよび/またはNTMポリペプチドは、野生型ポリペプチド、または実質的に野生型である活性を有する変異ポリペプチドであることが好ましい。OBCAMおよび/またはNTMポリペプチドが、卵巣癌細胞などの癌細胞中に見られる変異を有するポリペプチドである場合、それはあまり好ましくない。しかしながら、このようなポリペプチドは、抗癌細胞の免疫応答を誘発する際に有用である可能性がある。したがって、本発明によって、野生型OBCAMおよび/またはNTMの機能を、変異OBCAMおよび/またはNTM対立遺伝子を保有する細胞に与える方法も提供される。このような機能を与えることによって、レシピエント細胞の新生物の増殖が抑制されるはずである。野生型OBCAMおよび/またはNTM遺伝子、またはその遺伝子の一部分は、遺伝子が染色体外の状態であるように、細胞中、ベクター中に導入することができる。このような状況では、染色体外の位置から細胞によって遺伝子が発現されるであろう。遺伝子断片が導入され、それが変異OBCAMおよび/またはNTM対立遺伝子を保有する細胞中で発現される場合、その遺伝子断片は、細胞の非新生物の増殖に必要とされる、OBCAMおよび/またはNTMタンパク質の一部分をコードしているはずである。より好ましいのは、野生型OBCAMおよび/またはNTM遺伝子、またはその一部分を、それが細胞中に存在する内生変異OBCAMおよび/またはNTM遺伝子と組み換えを起こすように、変異細胞中に導入する状況である。このような組み換えは、OBCAMおよび/またはNTM遺伝子の変異の正確さをもたらす、二重の組み換え事象を必要とする。組み換え用および染色体外での維持用の、遺伝子を導入するためのベクターは当分野で知られており、任意の適切なベクターを使用することができる。エレクトロポレーション、リン酸カルシウム共沈殿、およびウイルス形質導入などの、DNAを細胞に導入するための方法は、当分野で知られており、方法の選択は当業者の能力範囲内のことである。野生型OBCAMおよび/またはNTM遺伝子でトランスフェクトした細胞をモデル系として使用して、癌の寛解、およびそのような寛解を助長する薬剤治療を研究することができる。
【0199】
前で概略的に論じたように、適用可能である場合は、OBCAMおよび/またはNTM遺伝子または断片を遺伝子療法において使用して、癌細胞中のこのような遺伝子の発現産物の量を増大させることができる。このような遺伝子療法は、OBCAMおよび/またはNTMポリペプチドのレベルが、正常な細胞と比較して、存在しないかあるいは低下しており、あるいはそれ以外の場合は変化している、癌性細胞および非癌性細胞に使用するのに非常に適している。変異遺伝子が「正常な」レベルで発現される癌細胞中においても、OBCAMおよび/またはNTM遺伝子の発現のレベルを増大させることが有用である可能性もあるが、しかしながら遺伝子産物は完全に機能的であるわけではなく、変化した機能を有する。
【0200】
遺伝子療法は、一般に認められている方法に従って、たとえばFriedman、1991によって記載されたように行うことができる。患者の腫瘍からの細胞は、本明細書に記載した診断法によって最初に分析して、腫瘍細胞中のOBCAMおよび/またはNTMポリペプチドの生成、およびその物理的形状(すなわち、どのような変異をそれが含むか)を確認することができる。発現調節要素と関連があるOBCAMおよび/またはNTM遺伝子のコピーを含み、腫瘍細胞内で複製することができる、ウイルスまたはプラスミドベクター(以下の詳細をさらに参照のこと)を作製する。米国特許第5,252,479号およびPCT公開出願WO93/07282中に開示されたものなど、適切なベクターが知られている。したがってベクターを患者に、腫瘍の部位に局所的にあるいは全身に注射して、(他の部位に転移した可能性がある任意の腫瘍細胞に到達させる)。トランスフェクト遺伝子が、それぞれの標的腫瘍細胞のゲノムに常に取り込まれるわけではない場合、治療を周期的に繰り返さなければならない可能性がある。
【0201】
当分野で知られている遺伝子送達系は、本発明の遺伝子療法を実施する際に、有用である可能性がある。これらは、ウイルスおよび非ウイルス送達法を含む。いくつかのウイルスが遺伝子送達ベクターとして使用されてきており、パポバウイルス、たとえばSV40(Madzak et al、1992)、アデノウイルス(Berkner、1992;Berkner et al、1988;Gorziglia and Kapikian、1992;Quantin et al、1992;Rosenfeld et al、1992;Wilkinson et al、1992;Stratford-Perricaudet et al、1990)、ワクシニアウイルス(Moss、1992)、アデノ関連ウイルス(Muzyczka、1992;Ohi et al、1990)、HSVおよびEBVを含めたヘルペスウイルス(Margolskee、1992;Johnson et al、1992;Fink et al、1992;Breakfield and Geller、1987;Freese et al、1990)、および鳥類のレトロウイルス(Brandyopadhyay and Temin、1984;Petropoulos et al.、1992)、ネズミ(Miller、1992;Miller et al、1985;Sorge et al、1984;Mann and Baltimore、1985;Miller et al、1988)、およびヒト起源のもの(Shimada et al、1991;Helseth et al、1990;Page et al、1990;Buchschacher and Panganiban、1992)を含む。今日まで、大部分のヒト遺伝子療法プロトコルは、損傷したネズミのウイルスに基づくものである。
【0202】
特にOBCAMに関しては、遺伝子療法用ベクターがワクシニアウイルスベクターではないことが、好ましい可能性がある。
【0203】
当分野で知られている非ウイルス遺伝子送達法には、リン酸カルシウム共沈殿などの化学的技法(Graham and van der Eb、1973;Pellicer et al、1980);機械的技法、たとえばマイクロインジェクション(Anderson et al、1980;Gordon et al、1980;Brinster et al、1981;Constantini and Lacy、1981);リポソームを介した膜融合仲介型の送達(Felgner et al、1987;Wang and Huang、1989;Kaneda et al、1989;Stewart et al、1992;Nabel et al、1990;Lim et al、1992);および直接的なDNA摂取および受容体仲介型のDNA送達(Wolff et al、1990;Wu et al、1991;Zenke et al、1990;Wu et al、1989b;Wolff et al、1991;Wagner et al、1990;Wagner et al、1991;Cotten et al、1990;Curiel et al、1991a;Curiel et al、1991b)がある。ウイルス仲介型の遺伝子送達は、リポソーム送達を使用する直接的なin vivoの遺伝子送達と組み合わせることができ、ウイルスベクターを周囲の非分裂細胞ではなく腫瘍細胞に向けることができる。あるいは、レトロウイルスベクター生成細胞株を、腫瘍に注射することができる(Culver et al、1992)。したがって、生成細胞を注射することによって、ベクター粒子の連続的な源が与えられると思われる。手術不能な脳腫瘍を有するヒトにおいて使用するために、この技法が承認されてきている。
【0204】
他の適切な系には、Feng et al(1997)Nature Biotechnology 15、866-870によって記載された、レトロウイルス-アデノウイルスハイブリッド系、または適切な単鎖Fv断片などの標的リガンドを有するウイルス系がある。
【0205】
生物学的および物理的遺伝子送達法を組み合わせる手法では、任意の大きさのプラスミドDNAを、アデノウイルスヘキソンタンパク質に特異的なポリリシン複合抗体と組み合わせ、生成した複合体をアデノウイルスベクターに結合させる。次いでこの三分子複合体を使用して、細胞を感染させる。アデノウイルスベクターによって、結合したDNAが損傷を受ける前に、エンドソームの効率の良い結合、内在化、および分解が可能である。
【0206】
リポソーム/DNA複合体は、直接的なin vivoの遺伝子送達を仲介することができることが示されてきている。標準的なリポソーム調製では、遺伝子送達のプロセスは非特異的であり、腫瘍堆積物の局所的なin vivo摂取および発現、たとえば次に直接的なin situ投与が報告されてきている(Nabel(1992)Hum.Gene Ther.3、399-410)。
【0207】
DNAを卵巣組織、たとえば卵巣の上皮細胞に直接向ける、遺伝子送達技法が好ましい。受容体仲介型の遺伝子送達は、たとえばDNA(通常は共有結合した超らせん型プラスミドの形)をポリリシンを介してタンパク質リガンドに複合させることによって行われる。リガンドは、標的細胞/組織タイプの細胞表面上の、対応するリガンド受容体の存在に基づいて選択される。これらのリガンド-DNA複合体は、望むならば血液中に直接注射することができ、標的組織に向けられ、受容体の結合およびDNA-タンパク質複合体の内在化が起こる。細胞内でのDNAの破壊という問題を克服するために、アデノウイルスによる同時感染体を含ませて、エンドソーム機能を害することができる。
【0208】
機能的に野生型であるOBCAMおよび/またはNTMを使用する、補充遺伝子療法を使用する場合、OBCAMおよび/またはNTMのmRNAまたはポリペプチド、または機能的OBCAMおよび/またはNTMの存在を、標的腫瘍、転移部位、血清、および身体の分泌物/排泄物、たとえば尿を含めた、身体中のさまざまな部位で検出することによって、治療を監視することが有用である可能性がある。
【0209】
本発明の他の態様は、哺乳動物細胞中において、OBCAMおよび/またはNTMポリペプチド、またはそれらの機能的断片、または変異体または融合体を発現させることができる、遺伝子療法用ベクターを提供する。典型的には、OBCAMおよび/またはNTMポリペプチドの機能的断片または変異体または一部分または融合体は、それぞれ野生型OBCAMまたはNTMの腫瘍抑制活性を有する。
【0210】
OBCAMの腫瘍抑制活性は図14に示し、実施例3により詳細に記載する。
【0211】
ベクターは、ヒト細胞中で複製することができるベクターであることが好ましい。ベクターは、本発明の遺伝子療法の態様と関係がある、前でより詳細に記載したベクターであることが好ましい。
【0212】
本発明の他の態様は、患者の癌を治療する方法であって、有効量のOBCAMおよび/またはNTMポリペプチド、またはそれらの断片または変異体または融合体(またはOBCAMおよび/またはNTM活性がある他のアゴニスト、前述のもの)を患者に投与して、癌を改善するステップを含む方法を提供する。
【0213】
OBCAMまたはNTM活性を有するペプチドを、変異を有するかあるいはOBCAMまたはNTMの対立遺伝子が欠けている細胞に与えることができる。OBCAMまたはNTMタンパク質の配列は、それぞれ図7および8または9に開示する。たとえば知られている発現ベクターを使用して、細菌中のcDNA配列を発現させることによって、タンパク質を生成させることができる。あるいは、OBCAMまたはNTMポリペプチドを、OBCAM生成またはNTM生成哺乳動物細胞から抽出することができる。さらに、合成化学の技法を使用して、OBCAMまたはNTMタンパク質を合成することができる。任意のこのような技法によって、OBCAMまたはNTMタンパク質を含む本発明の調製物を与えることができる。この調製物は、他のヒトタンパク質は実質的に含まない。これは、微生物中あるいはin vitroでの合成によって行うのが最も簡単である。
【0214】
OBCAMまたはNTM遺伝子またはcDNAは、任意の適切な方法によって、発現させることができる。一般にはDNAを、発現に関して適切な方向および正しい読み枠で、プラスミドなどの発現ベクターに挿入する。必要な場合は、所望の宿主によって認識される適切な転写および翻訳を制御調節するヌクレオチド配列に、DNAを連結させることができるが、このような調節は発現ベクター中で一般的に利用可能である。次いで標準的な技法によって、ベクターを宿主に導入する。一般に、すべての宿主がベクターによって形質転換されるわけではない。したがって、形質転換された宿主細胞を選択することが必要であろう。1つの選択の技法は、形質転換された細胞において、抗生物質耐性などの選択可能な性質をコードする、任意の必要な調節要素を有するDNA配列を、発現ベクターに取り込ませることに関するものである。あるいは、このような選択可能な性質の遺伝子は、他のベクター上にあってよく、これを使用して所望の宿主細胞を同時に形質転換する。
【0215】
本発明の組み換えDNAによって形質転換された宿主細胞を、本明細書で開示する教示を鑑みて、充分な時間、当業者に知られている適切な条件下で、次いで培養して、次いで回収することができるポリペプチドの発現を可能にする。
【0216】
細菌(たとえば大腸菌およびBacillus subtilis)、酵母菌(たとえばSaccharormyces cerevisiae)、糸状菌(たとえばAspergillus)、植物細胞、動物細胞、および昆虫細胞を含めた、多くの発現系が知られている。
【0217】
ベクターは、ベクターが他の非原核細胞タイプにおける発現用に使用される場合でも、原核生物中で増殖させるためのColE1 oriなどの原核生物のレプリコンを含む。ベクターは、形質転換された大腸菌などの細菌宿主細胞中で、遺伝子の発現(転写および翻訳)を指示することができる、原核生物のプロモーターなどの適切なプロモーターを含むこともできる。
【0218】
プロモーターは、RNAポリメラーゼとの結合および転写の発生を可能にするDNA配列によって形成される、発現調節要素である。代表的な細菌宿主細胞と適合性があるプロモーター配列は、本発明のDNA断片を挿入するのに好都合な制限部位を含む、プラスミドベクター中に典型的には与えられる。
【0219】
典型的な原核生物のベクタープラスミドは、Biorad Laboratories(Richmond、CA、USA)から入手可能なpUC18、pUC19、pBR322およびpBR329、およびPharmacia、Piscataway、NJ、USAから入手可能なpTrc99AおよびpKK223-3である。
【0220】
典型的な哺乳動物細胞ベクタープラスミドは、Pharmacia、Piscataway、NJ、USAから入手可能なpSVLである。このベクターはSV40後期プロモーターを使用して、クローン遺伝子の発現、COS-1細胞などのT抗原生成細胞で見られる最高レベルの発現を誘導する。
【0221】
誘導性である哺乳動物の発現ベクターの一例はpMSGであり、これもPharmaciaから入手可能である。このベクターは、マウス乳癌腫瘍ウイルスの長端の繰り返し単位のグルココルチコイド誘導プロモーターを使用して、クローン遺伝子の発現を誘導する。
【0222】
有用な酵母菌プラスミドベクターは、pRS403-406およびpRS413-416であり、これらは一般にStratagene Cloning Systems、La Jolla、CA 92037、USAから入手可能である。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405およびpRS406は、酵母菌組み込み型プラスミド(YIp)であり、酵母菌に選択的なマーカーHIS3、TRPI、LEU2およびURA3を取り込んでいる。プラスミドpRS413-416は、酵母菌動原体プラスミド(YCp)である。
【0223】
相補的な粘着端を介してベクターにDNAを動作可能に連結させるための、さまざまな方法が開発されてきている。たとえば、相補的なホモポリマー部位を、ベクターDNAに挿入するDNA断片に加えることができる。次いでベクターおよびDNA断片を、相補的なホモポリマー尾部の間の水素結合によって連結させて、組み換えDNA分子を形成する。
【0224】
1つまたは複数の制限部位を含む合成連結剤によって、DNA断片をベクターに連結させる代替法が与えられる。前に記載したエンドヌクレアーゼによる制限消化によって生成するDNA断片は、バクテリオファージT4DNAポリメラーゼ、または大腸菌DNAポリメラーゼI、突出部、3'-5'-エキソヌクレアーゼ活性を有する3'一本鎖末端を除去し、重合活性を有する窪んだ3'-端を充填する酵素で処理する。
【0225】
したがって、これらの活性を組み合わせることによって、平滑末端型DNA断片が生成する。次いで平滑末端型断片を、平滑末端型DNA分子の連結を触媒することができる酵素、バクテリオファージT4DNAリガーゼなどの存在下において、非常にモル過剰の連結分子と共にインキュベートする。したがって、この反応の生成物は、その両端にポリマー連結配列を有するDNA断片である。したがって、これらのDNA断片は適切な制限酵素で切断され、DNA断片の末端と適合性がある末端を生成させる酵素で切断された発現ベクターに連結される。
【0226】
本発明の他の態様は、患者の癌を治療する方法であって、腫瘍細胞中に見られる変異OBCAMまたはNTMポリペプチドの機能を阻害する、あるいは野生型OBCAMまたはNTMポリペプチドの発現を上方制御する、有効量の化合物を患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0227】
本発明の方法で使用するのに適した化合物には、変異OBCAMまたはNTMの活性を阻害する抗体または断片、またはその変異体、あるいは変異OBCAMおよび/またはNTMの発現を阻害するアンチセンス分子がある。
【0228】
メチル化阻害剤も適切である(あまり好ましくはないが);以下および実施例中に記載するように、OBCAMおよびNTM遺伝子が癌ではメチル化され、メチル化阻害剤を投与することにより、このメチル化を阻害することによって、野生型遺伝子または遺伝子群の発現を上方制御することができる。メチル化阻害剤は当分野で知られており、化合物アザシチジンを含む。他のメチル化阻害剤には、5デオキシ-アザシチジン、またはDNAメチルトランスフェラーゼに対するアンチセンスオリゴがある。
【0229】
本発明の他の態様は、患者のOBCAMおよび/またはNTM遺伝子がメチル化されている癌を治療する方法であって、DNAのメチル化を低下させるかあるいは阻害する有効量の化合物を、患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0230】
以下で論じるように、メチル化を阻害することによって、その発現の低下が癌を引き起こす可能性があるOBCAMおよび/またはNTM遺伝子の発現の低下を引き起こす、メチル基を除去することができる。したがって、癌細胞中のOBCAMおよび/またはNTMのメチル化の低下によって、OBCAMおよび/またはNTMの発現が増大し、癌細胞を除去し、癌細胞の制御不能な増殖の速度を低下させることができる。
【0231】
本発明の他の態様は、細胞中のOBCAMおよび/またはNTM遺伝子の発現を増大させるための方法であって、DNAのメチル化を低下させるかあるいは阻害する、有効量の化合物を細胞に投与するステップを含む方法を提供する。
【0232】
本明細書に示す他の治療剤と組み合わせて化合物を投与することが、有益である可能性がある。
【0233】
好ましい実施形態では、細胞は患者内の細胞である。細胞が患者内の癌または腫瘍細胞である場合は、それがさらに好ましい。
【0234】
腫瘍細胞中に見られる変異OBCAMまたはNTMポリペプチドの機能を阻害する、あるいは野生型OBCAMまたはNTMポリペプチドの発現を上方制御する、あるいはそれ以外の場合はOBCAMまたはNTMのアゴニストとして作用する化合物は、スクリーニングによって得ることができる。
【0235】
OBCAMおよび/またはNTMポリペプチドを使用すること、または任意のさまざまな薬剤スクリーニング技法においてそれらの断片を結合させることによって、スクリーニング化合物を使用することができる。
【0236】
このような試験で使用する、腫瘍細胞中に見られるOBCAMおよび/またはNTMポリペプチド、またはその断片または変異体は、溶液中に遊離しているか、固形担体に固定されているか、あるいは細胞表面上に付着していてよい。薬剤スクリーニングの1つの方法は、好ましくは競合結合アッセイにおいて、ポリヌクレオチドまたは断片を発現する組み換えポリヌクレオチドによって安定して形質転換される、真核または原核宿主細胞を使用する。生存形または固定形のこのような細胞は、標準的な結合アッセイ用に使用することができる。たとえば、OBCAMまたはNTMポリペプチド、または断片と試験する物質の間の複合体の形成を測定することができ、あるいはOBCAMまたはNTMポリペプチド、または断片の間の複合体の形成の程度を調べることができ、知られているリガンドは試験する物質によって害される。
【0237】
したがって本発明は、薬剤をスクリーニングする方法であって、このような物質と、腫瘍細胞中に見られるOBCAMまたはNTMポリペプチド、またはその断片またはその変異体を接触させること、および当分野でよく知られている方法によって、(i)その物質とOBCAMまたはNTMポリペプチド、または断片または変異体の間の複合体の存在、あるいは(ii)OBCAMまたはNTMポリペプチド、または断片または変異体とリガンドの間の複合体の存在をアッセイすることを含む方法を提供する。このような競合結合アッセイでは、OBCAMまたはNTMポリペプチド、または断片または変異体を、典型的には標識する。遊離OBCAMまたはNTMポリペプチド、または断片または変異体は、タンパク質:タンパク質複合体中に存在するものから分離し、遊離(すなわち非複合体)標識の量は、それぞれ、試験する物質とOBCAMまたはNTMの結合、またはOBCAMまたはNTMとのその阻害:リガンド結合の指標である。
【0238】
変異OBCAMおよび/またはNTMの機能を正すことができる薬剤(したがって、野生型の機能が回復する)、またはその擬似野生型であるOBCAMおよび/またはNTMの機能を正すことができる薬剤は、有用であると考えられる。同様に、野生型OBCAMおよび/またはNTMの発現を促進する薬剤は、有用であると考えられる。
【0239】
野生型OBCAMおよび/またはNTMの発現は、発現の阻害剤を除去することによって、促進させることができる。たとえば、OBCAMおよびNTMの発現は、それぞれの遺伝子のCpGアイランドをメチル化することによって阻害される。アザシチジン、5デオキシ-アザシチジン、またはDNAメチルトランスフェラーゼに対するアンチセンスオリゴなどの、メチル化阻害剤を投与することによって、CpGアイランドのメチル化が妨げられ、これによって遺伝子の発現が促進される。したがって、患者の野生型OBCAMまたはNTMポリペプチドの発現を上方制御する方法は、メチル化阻害剤を投与することを含む。
【0240】
薬剤スクリーニングに関する他の技法によって、OBCAMまたはNTMポリペプチドに対して適切な結合親和性を有する化合物の、ハイスループットスクリーニングがもたらされ、これは1984年9月13日に公開された、Geysen、PCT公開出願WO84/03564中に詳細に記載されている。簡潔に述べると、多数の異なる小さなペプチド試験化合物を、プラスチック製のピンなどの固形支持体上、あるいは何か他の表面上で合成する。ペプチド試験化合物は、OBCAMまたはNTMポリペプチドと反応させ、洗浄する。次いで結合したOBCAMまたはNTMポリペプチドを、当分野でよく知られている方法によって検出する。
【0241】
精製したOBCAMまたはNTMは、前述の薬剤スクリーニング技法において使用するために、プレート上に直接コーティングすることができる。しかしながら、ポリペプチドに対する非中和抗体を使用して抗体を捕らえ、OBCAMまたはNTMポリペプチドを固相上に固定することができる。
【0242】
本発明は、競合薬剤のスクリーニングアッセイの使用も企図するものであり、OBCAMまたはNTMポリペプチドに特異的に結合することができる中和抗体が、OBCAMまたはNTMポリペプチドまたはその断片への結合に関して、試験化合物と競合する。このようにして、抗体を使用して、OBCAMまたはNTMポリペプチドの1つまたは複数の抗原決定基を共有する、任意のペプチドの存在を検出することができる。
【0243】
薬剤スクリーニングに関する他の技法は、変異OBCAMおよび/またはNTM遺伝子を有する宿主真核生物の細胞株または細胞(前に記載したものなど)の使用に関するものである。これらの宿主細胞株または細胞は、OBCAMおよび/またはNTMポリペプチドのレベルで欠陥がある。宿主細胞株または細胞は、薬剤化合物の存在下で増殖させる。宿主細胞の増殖率を測定して、その化合物がOBCAMおよび/またはNTM欠陥細胞の増殖を調節できるかどうかを判定する。
【0244】
レポーター遺伝子に動作可能に連結したOBCAMまたはNTMのプロモーター配列を利用する、スクリーニングを誘導することもできる。レポーター遺伝子の発現を選択的に増大させる化合物を、有用に選択することができる。
【0245】
追加的あるいは代替的に、合理的な薬剤設計を使用することができる。合理的な薬剤設計の目的は、生物学的に活性がある当該のポリペプチド、相互作用して、たとえば、より活性がありあるいは安定した形のポリペプチドであるか、あるいは、たとえば、in vivoでポリペプチドの機能を高めるか害する薬剤を形成する小分子(たとえば、アゴニスト、アンタゴニスト、阻害剤)の構造類似体を生成させることである。たとえばHodgson、1991を参照のこと。1つの手法では、当該のタンパク質(たとえば、OBCAMまたはNTMポリペプチド)、たとえばOBCAMまたはNTMリガンド複合体の三次元構造を、X線結晶解析法によって、コンピュータによるモデル化によって、あるいは最も典型的には手法の組み合わせによって最初に決定する。頻繁にではないが、ポリペプチドの構造に関する有用な情報を、相同タンパク質の構造に基づくモデル化によって、得ることができる。合理的な薬剤設計の一例は、HIVプロテアーゼ阻害剤の開発である(Erickson et al(1990)Science 249、527-533)。さらに、ペプチド(たとえば、OBCAMおよびNTMポリペプチド)は、アラニンスキャンによって分析される(Wells(1991)Methods Enzymol.202、390-411)。この技法では、アミノ酸残基をAlaで置換し、ペプチドの活性に対するその影響を決定する。ペプチドのそれぞれのアミノ酸残基をこのように分析して、ペプチドの重要な領域を決定する。
【0246】
機能アッセイによって選択される、標的に特異的な抗体を単離して、次いでその結晶構造を解明することも可能である。原則として、この手法によって、後の薬剤設計の基となり得る薬理作用団(pharmacophore)がもたらされる。抗イディオタイプ抗体(anti-ids)を機能的な、薬理学的に活性がある抗体にすることによって、タンパク質の結晶解析を完全に回避することが可能である。鏡像の鏡像として、anti-idsの結合部位は、元の受容体の類似体であると予想される。したがってanti-idを使用して、化学的または生物学的に生成させた群のペプチドの群から、ペプチドを同定および単離することが可能であると思われる。したがって選択したペプチドは、薬理作用団として作用すると思われる。
【0247】
したがって、たとえば改善されたOBCAMおよび/またはNTMポリペプチドの活性または安定性を有する薬剤、またはOBCAMおよび/またはNTMポリペプチド活性の阻害剤、アゴニスト、アンタゴニストなどとして作用する薬剤を設計することができる。クローンOBCAMおよびNTM配列を利用することによって、充分な量のOBCAMおよびNTMポリペプチドを利用して、X線結晶解析などの分析研究を行うことができる。さらに、本明細書で与えるOBCAMおよびNTMタンパク質配列の知識は、X線結晶解析法の代わりに、あるいはそれに加えて、コンピュータによるモデル化技法を使用する人を助けるであろう。
【0248】
変異OBCAMおよび/またはNTM対立遺伝子を保有する、細胞および動物をモデル系として使用して、治療剤としての可能性を有する物質に関して、研究および試験することができる。それらの細胞は、典型的には培養された上皮細胞である。これらの細胞は、OBCAMおよび/またはNTM変異体を有する個体、体細胞または生殖細胞のいずれかから単離することができる。あるいは、当分野でよく知られている方法を使用して、細胞株を工学処理して、OBCAMおよび/またはNTM対立遺伝子の変異を行わせることができる。試験物質を細胞に施した後に、新生物に形質転換された表現型の細胞を決定する。足場非依存性増殖、ヌードマウスの腫瘍形成、細胞の侵襲性、および増殖因子依存性を含めた、新生物に形質転換された細胞の任意の性質を評価することができる。これらの性質のそれぞれに関するアッセイは、当分野で知られている。
【0249】
治療剤の試験用の動物は、動物全体の変異誘発の後、あるいは生殖細胞または接合子を処理した後に、選択することができる。このような処理は、通常は第2の動物種からの、変異OBCAMおよび/またはNTM対立遺伝子を挿入すること、および破壊された相同遺伝子を挿入すること含む。あるいは、動物の内生のOBCAMおよび/またはNTM遺伝子は、挿入または欠失変異、あるいは従来の技法を使用する他の遺伝的改変によって、破壊することができる(Capecchi、1989;Valancius and Smithies、1991;Hasty et al、1991;Shinkai et al、1992;Mombaerts et al、1992;Philpott et al、1992;Snouwaert et al、1992;Donehower et al、1992)。試験物質を動物に投与した後に、腫瘍の増殖を評価しなければならない。試験物質が腫瘍の増殖を妨げるかあるいは抑制する場合、したがって試験物質は、本明細書で示す癌を治療するための、候補となる治療剤である。これらの動物モデルによって、潜在的な治療品用の非常に重要な試験用媒体が与えられる。
【0250】
活性OBCAMおよび/またはNTM分子を、たとえばマイクロインジェクションによって、あるいはリポソームを使用することによって、細胞に導入することができる。あるいは、いくつかの活性分子を、細胞によって活性的に、あるいは拡散によって摂取させることができる。OBCAMおよび/またはNTM遺伝子産物を細胞外に施すことは、腫瘍の増殖に影響を与えるのに充分である可能性がある。OBCAMおよび/またはNTM活性を有する分子を与えることによって、新生物状態の部分的な逆行がもたらされるはずである。OBCAMおよび/またはNTM活性を有する他の分子(たとえば、ペプチド、薬剤または有機化合物)を使用して、このような逆行に影響を与えることもできる。実質的に同じ機能を有する改変ポリペプチドも、ペプチド療法に使用される。
【0251】
本発明の他の態様は、OBCAMまたはNTMポリペプチド、またはそれらの機能変異体、または一部分または融合体をコードする核酸を含む遺伝子療法用ベクター、および薬剤として許容される担体を含む、薬剤組成物;OBCAMまたはNTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子、またはOBCAMまたはNTMのcDNA、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸を含む遺伝子療法用ベクター、および薬剤として許容される担体を含む、薬剤組成物;OBCAMまたはNTMポリペプチド、またはそれらの断片または変異体または融合体、および薬剤として許容される担体を含む、薬剤組成物を提供する。
【0252】
適切な遺伝子療法用ベクターは、前に記載したものである。適切なOBCAMおよびNTMポリペプチドは、前に記載したものである。前述のように、特にOBCAMに関しては、遺伝子療法用ベクターがワクシニアウイルスベクターではないことが好ましい。
【0253】
「薬剤として許容される」によって、調合物が滅菌されており病原体を含まないことが含まれる。適切な薬剤担体は、薬の分野ではよく知られている。
【0254】
ここで本発明を、以下の非制限的な実施例および図面を参照しながら、より詳細に記載することにする。
【実施例1】
【0255】
上皮性卵巣癌(EOC)の進行におけるOBCAMおよびNTMの役割
卵巣血液/腫瘍対DNAの11q24-q25のLOHの分析
卵巣腫瘍全体から抽出したDNAから、および適合性のある正常な対照として血液から、あるいは正常な卵巣組織からの、染色体の11q24-q25領域から選択した、蛍光標識した多型性マイクロサテライトマーカーを、PCR増幅させた。動原体〜11qterの順で使用したマーカーは、llcen-DllS910-D11S1320-DllS874-D11S4085-D11S969-11qterであった。PCR増幅産物を、GeneScanソフトウェア(PE Biosystems)を使用して、ABI 310 Genetic Analyzer上で分離させた。LOHは、正常な組織と比較した、腫瘍中の対立遺伝子間の30%以上の違いの不均衡として定義する。D11S4085で観察されるLOHの顕著な特徴は、LOHの完全性である。卵巣腫瘍のDNAが、ミクロ解剖した組織からではなく、卵巣全体から抽出されたと考えると、これは珍しい。腫瘍組織は、通常は汚染した正常細胞、たとえばストロマ細胞の一部分を含むとみなされていると思われる。しかしながら、この場合は消失が非常に完全なものであるので、我々は汚染した正常細胞の欠如から、D11S4085対立遺伝子の消失は、卵巣癌形成の過程の、非常に初期の事象であると推測することができる。
【0256】
OBCAM/NTM領域の物理的な地図化
OBCAMおよびニューロトリミンは、11q24-q25LOH関連遺伝子である。LOHの領域を同定したので、我々は次に、卵巣癌中のLOHによって破壊された領域からの遺伝子を同定しようとした。LOHの研究で使用するマーカーを含む11q24-q25領域から、BACクローンを同定するために、それらの対応するヌクレオチド配列を使用して、NCBIのGenbank HTGSデータベースをBLAST検索した。使用したマーカーの中では、D11S969以外のすべてによって、HTGSデータベースの相同性検索において、BACクローンが同定された。次いで、対応するBACクローンからのヌクレオチド配列を、UK Human Genome Mapping Project Resource Centre(HGMP-RC)の、Nucleotide Identify X(NIX)アルゴリズムを使用して分析した。NIXによって、多数の生物情報プログラムを1つのヌクレオチド配列に同時に行うこと、多数のデータベースに対するBLAST検索など、ヌクレオチドおよびタンパク質翻訳の相同性を同定すること、エクソンの予想、CpGアイランドの予想などを行うことが可能である。NIXによって我々は、重複BACクローンを取り込んでいる領域の近辺の地図を編集し、研究中にその領域の遺伝子、それらのマーカーに対する位置を同定することができる(図1)。
【0257】
NIXによって、2つの非常に関連がある遺伝子OBCAMとニューロトリミンは、LOHの領域中に存在する唯一の遺伝子であることが確認されている。最高LOHのマーカー、D11S4085はOBCAM中に含まれ、一方ニューロトリミンは、2つのマーカー:D11S1320およびD11S874に広がる。OBCAMとNTMは非常に関連があり、それぞれ約80%および76%のヌクレオチドおよびタンパク質同一性を共有している。マウスでは、そのそれぞれの相同体は、ヒト染色体11q24-q25と遺伝子が同じ染色体上にある染色体9の領域上で、互いに近くに位置している。したがって、この2つの遺伝子は、人間とマウスの分岐よりも前に起こった、遺伝子複製事象の結果として生じた可能性がある。人間では、この2つの遺伝子は、3'-3'方向、相近の転写方向に配置されている(図1)。
【0258】
OBCAMおよびNTMは、正常な卵巣表面上皮(OSE)では発現するが、卵巣癌細胞株中では発現しない。
我々は、培養した正常なヒトOSE(HOSE)、主要な手術によって除去したHOSEから、および正常な卵巣全体から、RNAを抽出した。RT-PCRによって、OBCAMおよびNTMは、主要な手術によって除去した上皮中で発現し、一方培養したHOSEでは、OBCAMではなくNTMのみの発現が検出可能であることが示された。OSEは器官全体のわずかな成分しか含んでいないにもかかわらず、卵巣全体からは両方の発現が検出可能であった。
【0259】
対照的に、卵巣、乳、肺、結腸および膵臓癌細胞株から単離したRNA群では、いかなる実質的な程度でも、いずれの遺伝子の発現も明らかではなかった。ノーザンブロットによって、すべての細胞株で発現は完全に検出不能であったが、2つ:CaOv3(卵巣)およびWX330(小細胞肺癌)は例外であり、これらではNTMの発現が容易に検出不能であった。興味深いことに、CaOv3中のNTM転写物の大きさは、完全長NTMに関して予想されたものよりも小さかった。RT-PCR分析によって、5'切断型mRNAのために、転写物は予想されたものより短いことが示されており、その正確な程度は決定されておらず、イントロンの他のプロモーターを使用することによって結合する5'変異体の結果として、生じる可能性がある。
【0260】
OBCAMおよびNTMのCpGアイランドは、細胞株中でメチル化され、発現の欠如と相関関係がある。
OBCAMおよびNTMのCpGアイランドのメチル化状態を、プライマー対を用いるMSPCRによって評価して、卵巣、乳、肺、結腸および前立腺起源である癌細胞株の範囲の、メチル化および非メチル化対立遺伝子を検出した。その結果は、表1および2に表す。我々は、RT-PCRによってOBCAMおよびNTMの発現のレベルに関して、同じ範囲の細胞株をアッセイし、それらの結果をMSPCRアッセイで決定したメチル化状態と比較した。それぞれのCpGアイランドのメチル化と、検出可能な発現の欠如の間の、相関関係が見出された;逆に、メチル化の欠如は、遺伝子の発現と相関関係がある。この相関関係の1つの例外は卵巣癌細胞株OAW28であり、これは明らかなメチル化がないにもかかわらず、いずれの遺伝子の発現も示さない。これは、この特定のアッセイにより検出することができないメチル化に、原因がある可能性がある。:それは増幅される領域の外側、あるいはMSPCRプライマーの間に存在する。なぜなら、MSPは、プライマー結合部位そのもののメチル化の有無のみを検出するからである。
【0261】
【表1】

【0262】
【表2】

【0263】
OBCAMおよびNTMは、原発性の卵巣腫瘍中でメチル化される
我々はMSPCRを行って、13の卵巣腫瘍/正常(または血液)と適合性がある対のDNA中の、OBCAMおよびNTMのメチル化および非メチル化対立遺伝子を検出した。メチル化DNA(Intergen)、および非メチル化DNA(HL60細胞株)対照サンプルを含めた、13の血液/腫瘍の対に関するMSPアッセイの代表的な組は、図3に示し、それらの結果の概要は図6に示す。NTMはOBCAMのメチル化を伴うことが多く、この2つは一致すると考えることができることを、我々は観察した。これはOBCAM(D11S4085)のLOHと関連する生存性の欠如と一致し、OBCAMの不活性化は、このプロセスの初期事象であることが示される。
【0264】
物質および方法
卵巣癌と適合性がある血液(正常)/腫瘍対サンプル
65の適合性がある血液(またはパラフィン包埋正常卵巣組織)、およびパラフィン包埋卵巣腫瘍サンプルから、製造者のプロトコル(QIAGEN)に従いQIAamp DNAミニキットを使用して、DNAを抽出した。
【0265】
異型接合性の消失の分析
11q24-q25領域からの6つの蛍光標識した多型性マイクロサテライトマーカーからの、PCR産物を、適合性がある卵巣の正常/腫瘍DNA群から、増幅させた。cen-D115910-2-D11S1320-D11S874-D1154085-Dl1S969-11qterPCR産物を分離させ、Genescanソフトウェア(PE Biosystems)を使用してABI 310 Genetic Analyzer上で分析した。
【0266】
ヒト染色体11q24-q25領域の生物情報分析:
LOHを検出するために使用する6つの多型性11q24-q25マーカーを含むBACクローンを、マーカー配列を用いるBLAST検索によって、GenBankのHigh Throughput Genomic Sequences(HTGS)データベースから同定した。次いで、同定したBACクローンからの配列を、Nucleotide Identify X(NIX)アルゴリズム(Human Genome Mapping Project Resource Centre、Hinxton、UK)を使用して分析した。このようにして、マイクロサテライトマーカーに対する知られている遺伝子の位置を詳しく調べながら、領域のBAC近辺の地図を作製した。
【0267】
逆転写酵素PCR(RT-PCR)
細胞株からの完全なRNA抽出を、TRI Reagent(Sigma、Dorset、UK)を使用して行った。一本鎖cDNA合成キット(Roche、UK)を使用して、1μgのDNaseI処理物から一本鎖cDNAを調製し、次いで2μlの等分試料を、25μlのPCR反応混合物中で鋳型として使用した。あるいは、少ない細胞数に関しては、DNaseI処理したすべてのRNAは、Absolutely RNA mini prepスピンカラム(Stratagene)を使用して調製し、一本鎖cDNAは記載したように調製した。
【0268】
組織の発現
Multiple Tissue Northern(MTN)ブロット品(Human IおよびHuman II)、およびMultiple Tissue cDNA群(Human IおよびHuman II)を、BD Clontech、Basingstoke、UKから購入した。MTNは、奨励されているようにExpressHyb緩衝液(BD Clontech)を使用して、完全長OBCAMおよびNTMのPCR増幅させたcDNAプローブとハイブリダイズさせた。ブロット品を、β-アクチン対照プローブ(BD Clontech)と再度ハイブリダイズさせた。完全長cDNA産物を増幅させるために設計した、OBCAMおよびNTMプライマー対を用いるPCRによって、MTC群をスクリーニングした。
【0269】
メチル化特異的PCR(MSPCR)
正常/卵巣腫瘍と適合性がある対(前述のもの)、および細胞株の群(卵巣、乳、肺、結腸および膵臓癌)から単離したゲノムDNAを、製造者のプロトコルに従いCpG Modificationキット(Intergen)を使用して、重亜硫酸塩処理によって改変させた。対照のメチル化DNAは、Intergenから購入した。重亜硫酸塩で改変させたDNAを、ヒトNTMおよびOBCAMのCpGアイランドのメチル化および非メチル化対立遺伝子を、それぞれ特異的に認識するプライマー対を用いて、PCR増幅させた。プライマー対および増幅条件は、以下の通りであった。
【0270】
OBCAMおよびNTMのCpGアイランド中の、CpGアイランドのメチル化度を決定するために、メチル化特異的PCRで増幅させ重亜硫酸塩処理したDNAを、pGEM-T Easy TAクローニングベクター(Promega)にサブクローニングした。それぞれのPCR産物に対応する6つのサブクローンを、標準的な方法に従ってBig Dye(PE BioSystems)の化学物質を使用して塩基配列を決定した。
【0271】
アザシチジンおよびTSAによる再発現
脱メチル化再発現の実験では、5×106個の細胞(OBCAMに関してはMDAMB23.1;ニューロトリミンに関してはMDAMB23.1およびT47D)をまき、24時間接着させたままの状態にした。細胞は1OμMのアザシチジン(Sigma)の存在下でインキュベートし、4日間の最後の24時間0.3μMのTSAを加えた。細胞を採取し、RNAを単離し、一本鎖cDNAを合成し、OBCAM、NTMおよびアクチンPCRプライマーを用いてRT-PCR反応を行った。
【0272】
OBCAMのSKOV-3へのトランスフェクション
Kozakコンセンサス配列および3'UTR重複部を含む、ヒトOBCAMの完全なコード配列を、正常なヒト卵巣表面上皮のRNAからPCR増幅させ、pGEM-T Easy TAクローニングベクター(Promega)にサブクローニングした。増幅用に使用したPCRプライマー対は以下のものである:
OPCML F1:5'-AGTTGTGGCTGTCGAGAATG-3'nucs34-53
OPCML R1:5'-TCAGAGGACCTAGGATTTCT-3'nucs1110-1091
Genbank受託番号NM_002545のmRNA(NM_002454.2参照配列)からの、ヌクレオチド番号。次いでOBCAM挿入体を、NotIで切除し、NotIで消化したpcDNA3.1Zeo哺乳動物発現ベクター(Invitrogen)に再度サブクローニングした。次いで挿入配列を、トランスフェクションで使用する前に確認した。OBCAMのセンスおよびアンチセンス構築体に対応するプラスミドDNA、および親ベクターを、標準的な方法(QIAGEN)によって作製し、PvuIで消化した。1μgおよび2μgのPvuI-線状構築体およびベクターを、リポフェクチンの存在下で、クローンSKOV-3ネオマイシン耐性細胞株SKNV3.3にトランスフェクトした。
【0273】
Zeomycin(Invitrogen)の選択
トランスフェクションの48時間後に、細胞を1:6に分け、Zeomycin抗生物質選択品の存在下で培養した。次いで個々のコロニーを、3週間の分析用に選択し、次に抗生物質の選択を行った。
【0274】
トランスフェクションによって、OBCAMアンチセンスおよびベクター対照トランスフェクタントは、OBCAMセンストランスフェクタントより早く増殖することが示され、増殖に対する機能的な抑制効果が存在することが示唆される。
【0275】
考察
我々は、65対の正常/腫瘍サンプル中の11q24-q25領域のEOCに、より高度なLOH分析を行い、OBCAM遺伝子内のマーカーD11S4085で、高率である56%のLOHを確認した。さらに、相同遺伝子、ニューロトリミン(NTMまたはNTM)内の、マーカーD11S1320およびD11S874で、40%のLOHも検出した。臨床病理学的なパラメータを分析することによって、LOHと患者の低い生存率の関係が示されることはなく、これらの遺伝子の消失は、卵巣の発癌の初期事象であることが示される。いずれも、我々の以前のLOHの研究において検出された、生存遺伝子ではないことも証明される。43の適合性がある正常/卵巣腫瘍対から単離したDNA、および6つの腫瘍のみのDNAのメチル化特異的PCRによって、OBCAMおよびNTMの76%というCpGアイランドのメチル化率、遺伝子間の86%の一致を確認した。重亜硫酸塩による塩基配列決定によって、両方の遺伝子からのCpGアイランド内で、広範囲のメチル化の存在を確認した。12のEOC株の中では、OBCAMが75%の細胞株で完全にメチル化状態であり、部分的にメチル化状態であるものは0%であり、25%は非メチル化状態であった。HNT/NTMに関しては、13のEOC株の中で、54%が完全にメチル化状態であり、23%が部分的にメチル化状態であり、23%が非メチル化状態であった。トリコスタチンA(TSA)を用いたアザシチジン処理によって、両方の遺伝子の再発現が行われ、CpGアイランドのメチル化は、これらの遺伝子の発現の欠如の根底にある機構であることの、決定的な証拠が与えられた。MS-PCRによる研究から、OBCAMのCpGアイランドのメチル化は、NTMのCpGアイランドに関して見られ、NTMメチル化が起こるための必須条件である可能性があることは明らかである。これをLOHデータと組み合わせると、2つの遺伝子の中では、疾患の初期事象において、OBCAMがより重要であることが示唆される。したがって我々は、CMVプロモーターの調節下で、OBCAMを卵巣癌細胞株SKOV-3のクローン誘導体にトランスフェクトし、以下の影響が示される。3つの観察結果によって、抑制物質としてのNTM/OBCAMの機能が示唆される。第1に、いくつかのセンスNTMトランスフェクトSKOV3
クローンは、アンチセンスクローンと比較して、腫瘍形成の抑制を示すという証拠が存在するが、SKOV3のクローンの異型接合性によって、このデータを解釈するのが難しくなった。さらに、形態学的に、センスNTMトランスフェクトSKOV3クローンに関する接触阻害があったという、いくつかの証拠が存在した。最後に我々は、アンチセンスOBCAM、およびSKOV3のベクター対照トランスフェクトクローン誘導体(SKNV3.3)が、同じSKOV3細胞株にトランスフェクトしたセンスOBCAMと比較して、速い増殖を示すことに気付いた。アンチセンスOBCAMSKOV3トランスフェクトクローン細胞株と比較して、OBCAMSKOV3トランスフェクトクローンの増殖率の、明らかな50%の低下が存在する。LOHとメチル化研究を関連付けることによって、Knudsenの腫瘍抑制遺伝子不活性化の古典的な2-ヒット機構(Knudsen AG、1971 Proc Natl Acad Sci 68(4)p820-823)に従って、2つの不活性化の存在が当てはまることに関する証拠を我々は与える。それは、ただ1つの不活性化機構(LOHまたはメチル化のいずれか)が存在する腫瘍サンプルによって我々は、OBCAM遺伝子中の変異を検出するために、これらのサンプルを標的化することができることも強調した。
【0276】
これは、任意の形の癌、あるいは実際には任意の形のヒト疾患の進行における、IgLONファミリー、特にOBCAMおよびニューロトリミンに関する、最初の記載である。
【実施例2】
【0277】
SKNV3.3はOBCAMに関してメチル化するが、OBCAMは発現しない
細胞株SKNV3.3は、卵巣癌細胞株SKOV-3のネオマイシン耐性のクローン誘導体である。我々は、定量RT-PCRによって、SKNV3.3はOBCAMを発現しないこと、かつMS-PCRによって、OBCAMのCpGアイランドがメチル化されることを示している。さらに、in vitroでSKNV3.3を5'-アザ-2'-デオキシシチジンに暴露させた後の、脱メチル化によって、OBCAMの再発現がもたらされる。したがってこれを、OBCAMの機能研究用に選択した。
【0278】
OBCAMのCpGアイランドは、MS-PCRアッセイによって判定されるように完全にメチル化される。したがって、SKNV3.3中でのOBCAMの発現は、この後生的機構によって抑制される。CpGアイランドのメチル化がOBCAMの発現を抑制する機構であることを証明するために、SKNV3.3細胞を5'-アザ-2'-デオキシシチジンに暴露させ、RT-PCR、サザンブロット、およびOBCAM特異的プローブとのハイブリダイゼーションによって、OBCAMの再発現をアッセイした。
【0279】
1×105個のSKNV3.3(6回継代)細胞を、25cn3の組織培養フラスコ中の10m1培地にまいた。この培地は24時間後に交換し、5'-アザ-2'-デオキシシチジン(Sigma A3656)を加えて、最終濃度20μMを与えた。細胞用の控えのフラスコには、アザシチジンの暴露は行わなかった(対照)。4日後、両方のフラスコからの細胞を採取し、DNaseI処理し、Absolutely RNA Miniprepキット(Stratagene)を使用して完全なRNAを調製した。一本鎖cDNA合成キット(Roche)を使用して、一本鎖cDNAを合成し、2μlの等分試料であるcDNAをRT-PCR反応当たりで使用した。
【0280】
アクチンRT-PCRを行って、対照およびアザシチジン処理したSKVN3.3細胞からの、一本鎖cDNAの完全性を確認した。アガロースゲル上に分けた、それぞれのアクチンPCR反応の等量の等分試料によって、両方のサンプルの完全性、およびサンプル当たりのcDNAの等しい濃度が確認された。
【0281】
OBCAMのRT-PCR反応:
OPCMLF4/R6のRT-PCR(474bp産物)を、25μlの反応混合物中で行った。
使用したPCRプライマーは以下のものである(GenBank受託番号NM_002545
に対応するヌクレオチド番号)
OPCML F4:5'-TACCATAGATGACCGGGTAA-3'nucs:221-240
OPCML R6:5'-TTCCGCACATCGGGCGCAGC-3'nucs:694-675
【0282】
OBCAMのPCR反応からの産物を、2%アガロースゲル上で大きさによって分け、MSIナイロン膜上で一晩サザンブロットし、次いでDNAを紫外線により膜に架橋させた。
【0283】
QIAquick PCR用精製カラム(QIAGEN)によって精製した、OBCAMエクソン2F2/OPCMLR6のPCR産物を、α32P-dCTP.PCRで標識した。PCRプライマーは以下のものであった(GenBank受託番号NM_002545に対応するヌクレオチド番号):
OBCAMエクソン2F2:5'-ATAGACCCTCGTGTGATCAT-3'nucs300-319
OPCML R6:5'-TTCCGCACATCGGGCGCAGC-3'nucs:694-675
【0284】
一晩のハイブリダイゼーションの後に、ブロット品を洗浄して、非結合プローブを除去し、ブロット品を-70℃において1時間、X線フィルムに暴露し、次いで現像した。
【0285】
OBCAMの再発現は、20μMの5'-アザ-2'-デオキシシチジンに4日間暴露させたSKNV3.3細胞において、明らかに示される。対照的に、4日後に5'-アザ-2'-デオキシシチジン処理がない対照のSKNV3.3細胞では、OBCAMの再発現は検出不能である(図13)。アクチンPCR産物を、対照および処理細胞の両方で等しい強度で増幅させて、単離RNAおよび合成した一本鎖cDNAの完全性を確認した。
【実施例3】
【0286】
SKVN3.3(SKOV3クローン誘導体)中のOBCAMの機能の研究
OBCAMのSKNV3.3へのトランスフェクション
Kozakコンセンサス配列および3'UTR重複部を含む、ヒトOBCAMの完全なコード配列を、正常なヒト卵巣表面上皮のRNAからPCR増幅させ、pGEM-T Easy TAクローニングベクターにサブクローニングした。ヌクレオチド34-1110(NM_002454.2参照配列)を増幅させるために使用した、PCRプライマー対は以下のものであった:
OPCML F1:5'-AGTTGTGGCTGTCGAGAATG-3'nucs34-53
OPCML R1:5'-TCAGAGGACCTAGGATTTCT-3'nucs1110-1091
1077bpのPCR産物を増幅させた。次いでOBCAM挿入体を、NotIで切除し、NotIで消化したpcDNA3.1Zeo(ゼオマイシン耐性)哺乳動物発現ベクター(Invitrogen)に、センスおよびアンチセンス方向に再度サブクローニングした。次いで挿入配列を、トランスフェクションで使用する前に確認した。OBCAMのセンスおよびアンチセンス構築体に対応するプラスミドDNA、および親ベクターを、標準的な方法(QIAGEN)によって作製し、PvuIで消化した。
【0287】
1μgおよび2μgのPvuI-線状構築体およびベクターを、ネオマイシン標識したSKOV3クローン誘導体細胞株、SKNV3.3にトランスフェクトした。
【0288】
細胞株は、熱失活させた10%ウシ胎児血清(FCS)、およびペニシリン(100単位/ml)ストレプトマイシン(100μg/ml)、およびG418およびZeocin(Inviirogen)を含む、RPMI1640中に、適切に保った。
【0289】
2×105個のSKNV3.3細胞を、60mm皿当たり4mlの培地にまいた。24時間後50%の集合状態になったとき、これらの細胞を、製造者のプロトコルに従いLIPOFECTIN Reagent(Life Technologies GIBCO BRL)を使用し、2μgの線状構築体:OBCAMセンスまたはアンチセンスpcDNA3.1zeo構築体、または挿入体を含まないpcDNA3.1zeoベクターを用いて、別々にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、それぞれのプレートの細胞を1:6に分け、次いで250μg/mlのゼオシンを用いてトランスフェクトした細胞を選択した。第3週に、コロニーを24ウエルプレートに拾い集め、クローン細胞株を確立した。
【0290】
OBCAMはin vitroでの増殖を抑制する:
OBCAMのSKNV3.3細胞へのトランスフェクションによって、in vitroのSKNV3.3対照細胞と比較して、抑制された増殖がもたらされる(図は示さず)。
【0291】
OBCAMは腫瘍増殖、およびin vivoでの広がりを抑制する:
対数期のSKNV3.3対照およびOBCAMトランスフェクト細胞を採取し、5×106個の細胞をヌードマウスの脇腹に腹膜内(i.p.)または皮下(s.c.)注射し、細胞株当たり6回のs.c.および3回のi.p.注射を行った。s.c.腫瘍の大きさの測定は、4週間の間週1回行った。i.p.注射によって細胞を与えたマウスを、注射後65日に殺傷し、腹腔から腫瘍を除去し、重量を測定し、写真を撮った。
【0292】
OBCAMのSKNV3.3へのトランスフェクションによって、OBCAM「センス」発現構築体(センストランスフェクタント)でトランスフェクトしたSKNV3.3細胞、および対照SKNV3.3細胞(対照)と比較して、著しく抑制された皮下の腫瘍増殖がもたらされる(図14)。
【0293】
OBCAMのSKNV3.3へのトランスフェクションによって、SKNV3.3親細胞に関して観察される腫瘍の増殖およびi.p.による広がりと比較して、腫瘍の増殖および腹膜内での広がりがほぼ完全になくなる(図21;実施例8を参照のこと)。
【0294】
OBCAMのトランスフェクションによって、細胞凝集が増大する:
対数期のSKNV3.3対照およびOBCAMトランスフェクト細胞をトリプシン処理し、10%FCSを含む培地に再懸濁させた。1×106個の細胞を1mlの培地に再懸濁させ、21ゲージニードルに通して、単細胞懸濁液の作製を確実に行った。次いで細胞懸濁液を、5%CO2中において37℃でインキュベートした。明確な時間地点で、等分試料を広口ピペットによって除去し、単細胞を血球計で計数した。
【0295】
OBCAMのSKNV3.3(センス発現構築体)へのトランスフェクションによって、対照SKNV3.3細胞に関して観察されるものと比較して、高い細胞の凝集率がもたらされる(図15)。OBCAMアンチセンス発現構築体のトランスフェクションによって、親SKNV3.3と比較して、低い細胞の凝集率がもたらされる。
【実施例4】
【0296】
ヒトOBCAM遺伝子のエクソン構造
ヒトOBCAM遺伝子のエクソン構造を、生物情報分析で決定した。ヒトOBCAMのmRNAの参照配列NM_002545.2を、BLAST2相同性検索を使用して、GenBank HTGSデータベースの入手可能なHuman Genome Projectの配列と比較した。この比較によって、OBCAMが少なくとも7つのエクソンからなることが確認された。イントロン-エクソン境界の位置によって導かれるエクソン構造を、図16A〜Dに示す。エクソン配列を黄色で強調し、エクソン側面のイントロン配列は単なる文字中にある。ヌクレオチド番号は、(その受託番号が与えられている)GenBankのデータベース配列に対応するものに関するものである。エクソン1のヌクレオチド配列は、GenBank受託番号AC027631.4の入手可能なHuman Genome Projectの配列が欠けているために、エクソン/イントロン1境界を含む領域内では不完全である。
【実施例5】
【0297】
一本鎖の立体配座の多型性に関する電気泳動(SSCPE)による、OBCAMの変異の検出
ヒトOBCAM遺伝子の構造の生物情報分析による予測の次に、OBCAM遺伝子の7つの同定したエクソンを増幅させるための、プライマーを設計した。Exon2は、SSCPE分析に有用なPCR産物の大きさに制限があるために、2つの重複プライマー組を用いて分析した。SSCPE分析において使用したDNAサンプルは、卵巣腫瘍および適合性のある正常組織をパラフィン包埋した収容型卵巣腫瘍、および卵巣癌細胞株から抽出した。
【0298】
使用したOBCAMエクソン特異的プライマーは、以下のものであった。PCR産物の大きさは、括弧内に与える。
【0299】
図16A〜Dでは、SSCPEのセンスおよびアンチセンスプライマーの位置は、それぞれ一本および二本の下線で強調している。イントロンおよびエクソン配列は、それぞれ強調していないか、あるいは太字で強調している。
【0300】
エクソン1(188bp)
OBCAMEXlF3:5'-GACCAGGACTGTGCGGCTGC-3'
nucs54514-54533AC027631.4
OPCML R3:5'-CGTCACGTTGTCCATAGCTT-3'
nucs:188-169NM_002545.2
【0301】
エクソン2/1(175bp):(GenBank AC012234.6からのヌクレオチド番号)
OBCAMEX2F1:5'-CACCACTCCCTGCCTCACTG-3'
nucs75226-75245
OBCAMEX2R1:5'-CATCCACATTTTGGATCATG-3'
nucs75400-75381
【0302】
エクソン2/2(180bp):(GenBank AC012234.6からのヌクレオチド番号)
OBCAMEX2F2:5'-ATAGACCCTCGTGTGATCAT-3
nucs75331-75350
OBCAMEX2R2:5'-TGGCAACCCCAGATCCAGCT-3'
nucs75510-75491
【0303】
エクソン3(179bp):(GenBank AP000843.3からのヌクレオチド番号)
OBCAMEMF1:5'-CAGGTATTTCTTCTATCCTG-3'
nucs37032-37051
OBCAMEX3R1:5'-GTCCTCCAGGTCAGCACCTT-3'
nucs37210-37191
【0304】
エクソン4(214bp):(GenBank AP000843.3からのヌクレオチド番号)
OBCAMEX4F1:5'-TGGTTACACAGTTTCCTGAT-3'
nucs2881-2900
OBCAMEX4R1:5'-AGAACCCCCTGGCTGCAGGT-3'
nucs3094-3075
【0305】
エクソン5(195bp):(GenBank AP000843.3からのヌクレオチド番号)
OBCAMEX5Fl:5'-GTGCGTGCATGCCTGTGCAT-3'
nucs3466-3485
OBCAMEX5Rl:5'-CAGAACTGTCCAGGTGTCAT-3'
nucs3660-3641
【0306】
エクソン6(198bp):(GenBank AP000843.3からのヌクレオチド番号)
OBCAMEX6Fl:5'-TAGCAATGTCTTCCCTCTTG-3'
nucs4028-4047
OBCAMEX6Rl:5'-GCATCCAGGCTTCCAGCACT-3'
nucs4225-4206
【0307】
エクソン7(176bp):(GenBank AP000843.3からのヌクレオチド番号)
OBCAMEX7Fl:5'-TCCTTGGGTGTATGCTAATG-3'
nucs19945-19964
OBCAMEX7R1:5'-GCGTTGCTCAGAGGACCTAG-3'
nucs20120-20101
【0308】
それぞれのOBCAMエクソンに関するSSCPEは、卵巣癌と適合性がある正常/腫瘍DNA、腫瘍DNAおよび細胞株に行った。OBCAMに関して観察される高度のLOH、およびCpGアイランドのメチル化が保たれる際には、予想される体細胞変異の頻度は低い。SSCPEおよび塩基配列決定によって検出されてきている、体細胞のミスセンス変異は以下に記載する。
【0309】
PEO卵巣癌細胞株系中の体細胞OBCAM変異
OBCAMエクソン2Fl/R1のPCR産物のSSCPEによって、疾患の過程中の卵巣癌患者に由来する一連の細胞株からのDNAの、「バンド移動」を確認した。PEO1は、疾患の過程初期の患者に由来する、プラチナ感受性卵巣癌細胞株である。プラチナ耐性細胞株PE04は、シスプラチン化学療法後の再発時の同じ患者に由来するものであった。細胞株PEOICDDPは、in-vitroでのシスプラチン暴露によりPEO1に由来するものであり、プラチナ耐性であるin-vitroモデルである。正常なDNAである線維芽細胞DNAを、同じ患者から単離し、PE04細胞株を確立した(PE04線維芽細胞)。
【0310】
PEO1、PEO1CDDP、PE04およびPE04線維芽細胞から増幅させたエクソン2Fl/R1のPCR産物を、最初のPCRで使用したのと同じプライマーを用いて、塩基配列決定した。配列追跡ファイル(図17)によって、PEO1、PEO1CDDP、およびPE04からのPCR産物中で、位置334(GenBank受託番号NM_002545、図7に示す)のCおよびGヌクレオチドの存在に対応する、異型接合性のピーク値が明らかに示される。PE04線維芽細胞からのPCR産物中で、位置334(NM_002545)は、Cが同型である(*によって印される)。野生型配列(NM_002545参照ヌクレオチド配列)は、この位置にC残基を含み、CCAコドンがCGAに変わっている。この位置を含むヌクレオチド配列の翻訳(ExPasyを使用する)によって、対応する野生型アミノ酸プロリン(P)がアルギニン(R)に変わり、これが未熟なOBCAMタンパク質配列のアミノ酸残基95に対応することが予想される(図18)。この残基は、OBCAMの第1の免疫グロブリンドメイン中に位置すると考えられる(図7およびGenBank受託番号NP_002536)。
【0311】
PE04線維芽細胞は、同型の野生型(プロリン)であり、一方PE01、PEO1CDDP、およびPE04は、異型の野生型/ミスセンス変異体(プロリン/アルギニン)である。この位置でアルギニン残基をプロリンに置換することによって、変化したOBCAM構造の立体配座、したがって変化したOBCAM機能も、もたらされる可能性がある。
【0312】
この患者の疾患の時間工程中に由来するすべての細胞株が、このミスセンス変異体を含むので、この変異はそれらの疾患過程の初期事象であったと、我々は要約することができる。正常DNAに対応するPE04線維芽細胞は野生型であるので、この変化は体細胞の事象である。
【0313】
これは、卵巣癌を含めた癌のOBCAMに関して同定された、最初の体細胞変異である。
【実施例6】
【0314】
OBCAMは正常なヒト卵巣中では非メチル化状態である
我々は、5つの正常なヒト卵巣切片から、DNAおよびRNAを抽出した。これらの切片のOBCAMのMS-PCRによって、OBCAMのCpGアイランドが非メチル化状態であることが示される。600bpの増幅させたMS-PCR産物は、58のCpGを含む。これらの正常な卵巣からのOBCAMの、MS-PCR産物全体の塩基配列決定によって、産物中にメチル化したCpGの証拠は示されなかった。
【0315】
対照的に、MS-PCRアッセイにおいてメチル化状態である卵巣癌細胞株および原発性腫瘍からの、MS-PCR産物塩基配列決定によって、増幅させたCpGアイランドの領域全体の、広範囲のメチル化が示される。
【実施例7】
【0316】
OBCAMのCpGアイランドは、卵巣腫瘍中ではメチル化状態であり、正常な卵巣中では非メチル化状態である。
2例の卵巣腫瘍から、および2例の正常な卵巣からのDNAを、重亜硫酸塩処理によって化学的に改変させた。次いで、メチル化(M)と非メチル化(U)OBCAMのCpGアイランドの重亜硫酸塩で改変されたDNAを区別するために設計したプライマーを用いて、メチル化特異的PCRを行った。529bpのメチル化または非メチル化状態の特異的なPCR産物を、前に詳しく述べたプライマーを使用して、それぞれ卵巣腫瘍または正常な卵巣のDNAから特異的に増幅させた(OBCAMのCpGアイランドの塩基配列決定)。増幅させたPCR産物は、図19のヌクレオチド25-553に対応する(OBCAMのCpGアイランドの重亜硫酸塩による塩基配列決定)。次いでPCR産物をpGEM-T Easyにサブクローニングし、次いで個々の対立遺伝子を表す個々のサブクローンを塩基配列決定し、CpGにおけるメチル化Cヌクレオチドの有無を記録した。図20は、卵巣腫瘍および正常な卵巣の例中に存在する、メチル化したCpGのCの程度を表す。ヌクレオチド番号は、図19に示すCpGのCの位置であり、CpG番号は、塩基配列決定した526bpのOBCAMのCpGアイランド中に位置するCpGの配列番号である。2例の卵巣腫瘍それぞれに関する6つの対立遺伝子、および正常な卵巣の例それぞれに関する2つの対立遺伝子の、塩基配列決定の結果を示す。黒く塗りつぶした四角はメチル化状態のCpGを表し、空白の四角は非メチル化状態のCpGを表し、縦方向の線を含む四角は、CpGのメチル化状態が決定されなかった場合を表す。図20は、CpGアイランドが卵巣腫瘍中では広範囲でメチル化状態であり、正常な卵巣中では非メチル化状態であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の癌を診断する方法であって、
(i)患者から核酸を含むサンプルを得るステップ、および
(ii)前記核酸を
(a)OBCAM遺伝子もしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、OBCAMのcDNAもしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、それらの相補体、あるいは
(b)NTM遺伝子もしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、NTMのcDNAもしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、それらの相補体、あるいは
(c)(a)と(b)の両方
と接触させるステップを含む方法。
【請求項2】
患者の癌の特定の結末の相対的な見通しを予測する方法であって、
(i)患者から核酸を含むサンプルを得るステップ、および
(ii)前記核酸を
(a)OBCAM遺伝子もしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、OBCAMのcDNAもしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、それらの相補体、あるいは
(b)NTM遺伝子もしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、NTMのcDNAもしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、それらの相補体、あるいは
(c)(a)と(b)の両方
と接触させるステップを含む方法。
【請求項3】
患者の癌疾患の進行を判定する方法であって、
(i)患者のOBCAM遺伝子が失われているかあるいは不活性化している患者から、サンプルの核酸を得るステップ、
(ii)前記核酸を、NTM遺伝子もしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、NTMのcDNAもしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、または、それらの相補体と接触させるステップを含む方法。
【請求項4】
患者からの核酸中の図7に付番したヌクレオチド334に対応するヌクレオチドが、図7のヌクレオチドと同じであるかどうかを判定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
判定が請求項56に記載の核酸に関するものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(i)患者からのNTM遺伝子を含むサンプルを得るステップ、
(ii)NTM遺伝子のメチル化度を判定するステップ、
(iii)患者のサンプルからのNTM遺伝子のメチル化度を、対照サンプルのメチル化度と比較するステップ、および
(iv)対照サンプルと比較して、患者のサンプルがより高いメチル化度のNTM遺伝子を有する場合、これが癌を示すステップ
を含む患者の癌を診断する方法。
【請求項7】
癌患者の特定の結末の相対的な見通しを予測する方法であって、
(i)患者からOBCAMまたはNTM遺伝子を含むサンプルを得るステップ、
(ii)OBCAMまたはNTM遺伝子のメチル化度を判定するステップ、
(iii)患者のサンプルからのOBCAMまたはNTM遺伝子のメチル化度を、対照サンプルのメチル化度と比較するステップ、および
(iv)対照サンプルと比較して、患者のサンプルがより高いメチル化度のOBCAMまたはNTM遺伝子を有する場合、これが良い結果の可能性が低いことを示すステップ
を含む方法。
【請求項8】
患者の癌疾患の進行を判定する方法であって、
(i)患者から、NTM遺伝子を含む患者からのサンプルを得るステップ、
(ii)NTM遺伝子のメチル化度を判定するステップ、
(iii)患者のサンプルからのNTM遺伝子のメチル化度を、対照サンプルのメチル化度と比較するステップ、
および、対照サンプルと比較して、NTMのメチル化度が増加している場合、これが疾患の進行を示すステップ
を含む方法。
【請求項9】
OBCAMまたはNTMのCpGアイランドのメチル化を分析する、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
癌または腫瘍が、卵巣癌または卵巣腫瘍、あるいは結腸癌または結腸腫瘍である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
核酸をオプション(a)に記載の核酸と接触させ、癌が卵巣癌である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
核酸をオプション(b)に記載の核酸と接触させ、癌が結腸直腸癌である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
サンプルが、癌が疑われるか、あるいは癌が発見できるかまたはすでに発見されている組織のサンプルである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
サンプルが卵巣のサンプルであり、癌が卵巣癌である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
サンプルが結腸のサンプルであり、癌が結腸直腸癌である、請求項1から9、12または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記OBCAMもしくはNTM遺伝子のDNA、または前記OBCAMもしくはNTMのcDNA配列、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、あるいはそれらの相補体が、検出可能な標識をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記選択的にハイブリダイズする核酸が一本鎖である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記選択的にハイブリダイズする核酸が、二本鎖であるときは10000より少ない塩基対、または一本鎖であるときは10000より少ない塩基を有する、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記選択的にハイブリダイズする核酸が、二本鎖であるときは1000より少ない塩基対、または一本鎖であるときは1000より少ない塩基を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ハイブリダイズする核酸が、二本鎖であるときは10〜100個の塩基対、または一本鎖であるときは10〜100個の塩基を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ハイブリダイズする核酸が、二本鎖であるときは15〜30個の塩基対、または核酸が一本鎖であるときは15〜30個の塩基を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ハイブリダイズする核酸が、OBCAMのcDNAの一部分を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項23】
前記ハイブリダイズする核酸が、NTMのcDNAの一部分を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項24】
一部分が一本鎖部分である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記一部分が、OBCAM遺伝子またはNTM遺伝子、またはOBCAMのcDNAもしくはmRNA、またはNTMのcDNAもしくはmRNAの一部分を、核酸増幅反応において増幅させることができる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
患者の癌を診断する方法であって、
(i)患者に由来するタンパク質を含むサンプルを得るステップ、および
(ii)(a)OBCAMポリペプチドの相対量、または細胞内位置、または物理的形状、あるいはOBCAMポリペプチドの相対活性、または活性変化、または変化した活性、あるいは
(b)NTMポリペプチドの相対量、または細胞内位置、または物理的形状、あるいはNTMポリペプチドの相対活性、または活性変化、または変化した活性、あるいは
(c)(a)と(b)の両方
を判定するステップを含む方法。
【請求項27】
患者の癌の特定の結末の相対的な見通しを予測する方法であって、
(i)患者に由来するタンパク質を含むサンプルを得るステップ、および
(ii)(a)OBCAMポリペプチドの相対量、または細胞内位置、または物理的形状、あるいはOBCAMポリペプチドの相対活性、または活性変化、または変化した活性、あるいは
(b)NTMポリペプチドの相対量、または細胞内位置、または物理的形状、あるいはNTMポリペプチドの相対活性、または活性変化、または変化した活性、あるいは
(c)(a)と(b)の両方
を判定するステップを含む方法。
【請求項28】
癌が卵巣癌または結腸癌である、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
サンプルが、癌が疑われるか、あるいは癌が発見できるかまたはすでに発見されている組織のサンプルである、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
サンプルが卵巣のサンプルであり、癌が卵巣癌である、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
サンプルが結腸のサンプルであり、癌が結腸直腸癌である、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
OBCAMポリペプチドの相対量、または細胞内位置を、OBCAMポリペプチド、またはその天然変異体もしくは断片に選択的に結合する分子を使用して決定する、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
NTMポリペプチドの相対量、または細胞内位置を、NTMポリペプチド、またはその天然変異体もしくは断片に選択的に結合する分子を使用して決定する、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
OBCAMまたはNTMポリペプチド、またはその天然変異体もしくは断片に選択的に結合する分子が、抗OBCAMまたは抗NTM抗体である、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
抗OBCAM抗体が請求項55で定義する抗体である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
OBCAMまたはNTMに選択的に結合する分子が、検出可能な標識を含む、請求項32から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
OBCAMまたはNTMポリペプチドの相対量、または細胞内位置を、OBCAMまたはNTMポリペプチドの活性をアッセイまたは検出することによって決定する、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
(a)OBCAM遺伝子、もしくはその変異対立遺伝子、またはOBCAMのcDNAもしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、またはそれらの相補体、あるいは
(b)NTM遺伝子、もしくはその変異対立遺伝子、またはNTMのcDNAもしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、またはそれらの相補体、あるいは
(c)(a)と(b)の両方
と選択的にハイブリダイズする核酸の使用であって、癌を診断するための試薬の製造における使用。
【請求項39】
(a)OBCAMポリペプチド、またはその天然の断片もしくは変異体、あるいは
(b)NTMポリペプチド、またはその天然の断片もしくは変異体
と選択的に結合する分子の使用であって、癌を診断するための試薬の製造における使用。
【請求項40】
癌を診断する方法における、請求項38で定義した核酸の使用。
【請求項41】
(a)OBCAMポリペプチド、またはその天然の断片もしくは変異体、あるいは
(b)NTMポリペプチド、またはその天然の断片もしくは変異体
と選択的に結合する分子の使用であって、癌を診断する方法における使用。
【請求項42】
図7で付番した残基95のプロリンがアルギニンである、OBCAMポリペプチドの変異体と、前記分子が選択的に結合する、請求項39または41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
組織サンプル中の異型接合性の消失を判定する方法であって、(i)組織に由来する核酸を含むサンプルを得るステップ、および(ii)前記核酸のマイクロサテライトのプロファイルと参照(同型接合性)組織のそれを比較するステップであって、マイクロサテライトを、
(a)OBCAM遺伝子、または
(b)NTM遺伝子、または
(c)(a)と(b)の両方
のいずれかを参照することによって選択するステップを含む方法。
【請求項44】
患者の癌を治療する方法であって、OBCAMまたはNTM遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、あるいはOBCAMまたはNTMのcDNAと選択的にハイブリダイズする核酸を、患者に投与するステップを含む方法。
【請求項45】
患者の癌を治療する方法であって、OBCAMおよび/またはNTMポリペプチド、またはそれらの機能的変異体もしくは一部分もしくは融合体をコードする核酸を、患者に投与するステップを含む方法。
【請求項46】
癌を治療するための薬剤の製造における、請求項44で定義した核酸の使用。
【請求項47】
患者の癌を治療する方法であって、有効量のOBCAMおよび/またはNTMポリペプチド、またはそれらの断片もしくは変異体もしくは融合体を患者に投与して、癌を改善するステップを含む方法。
【請求項48】
癌を治療するための薬剤の製造における、OBCAMおよび/またはNTMポリペプチド、またはそれらの断片もしくは変異体もしくは融合体の使用。
【請求項49】
患者の癌を治療する方法であって、腫瘍細胞中に見られる変異OBCAMまたはNTMポリペプチドの機能を阻害するか、あるいは野生型OBCAMまたはNTMポリペプチドの発現を上方制御する、有効量の化合物を患者に投与するステップを含む方法。
【請求項50】
患者のOBCAMおよび/またはNTM遺伝子がメチル化されている癌を治療する方法であって、OBCAMおよび/またはNTM遺伝子のDNAのメチル化を低下させるか、あるいは阻害する、有効量の化合物を患者に投与するステップを含む方法。
【請求項51】
細胞中のOBCAMおよび/またはNTM遺伝子の発現を増大させるための方法であって、DNAのメチル化を低下させるか、あるいは阻害する、有効量の化合物を細胞に投与するステップを含む方法。
【請求項52】
細胞が患者中に存在する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
癌を治療するための薬剤の製造における、変異OBCAMまたはNTMポリペプチドの機能を阻害する、あるいは野生型OBCAMまたはNTMポリペプチドの発現を上方制御する、化合物の使用。
【請求項54】
変異OBCAMもしくはNTMポリペプチド、またはその断片と反応する抗体であって、前記変異OBCAMもしくはNTMポリペプチドが、癌細胞中で見られる変異体である、および/または図9A〜Cに示す挿入アミノ酸配列を含む抗体。
【請求項55】
変異OBCAMが、図7で付番した残基95において、プロリンではなくアルギニンを有する、請求項54に記載の抗体。
【請求項56】
変異OBCAMまたはNTMポリペプチドをコードする核酸と選択的にハイブリダイズする核酸であって、前記変異OBCAMまたはNTMが、癌細胞中で見られる変異体である、および/または核酸が図9A〜Cに示す挿入配列を含む核酸。
【請求項57】
OBCAMもしくはNTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、あるいは、OBCAMもしくはNTMのcDNA、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸、およびOBCAMまたはNTM遺伝子中の変異を検出するための手段であって、前記変異が、癌細胞中で見られるOBCAMまたはNTM中の変異である手段を含むパーツのキット。
【請求項58】
遺伝子または核酸が、図7で付番したヌクレオチド334においてシトシンの代わりにグアニンを有するOBCAM変異体対立遺伝子である、請求項38に記載の使用、または請求項56に記載の核酸、または請求項57に記載のキット。
【請求項59】
(a)OBCAM遺伝子、もしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、またはOBCAMのcDNAもしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、あるいは
(b)重亜硫酸塩処理したメチル化OBCAM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、あるいは
(c)重亜硫酸塩処理した非メチル化OBCAM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、あるいは
(d)(a)および(b)、または(a)および(c)、または(b)および(c)、または(a)、(b)および(c)
ならびに重亜硫酸塩の源
を含むパーツのキット。
【請求項60】
(a)NTM遺伝子もしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、またはNTMのcDNAもしくはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、あるいは
(b)重亜硫酸塩処理したメチル化NTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、あるいは
(c)重亜硫酸塩処理した非メチル化NTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする少なくとも2つの核酸、あるいは
(d)(a)および(b)(a)および(b)、または(a)および(c)、または(b)および(c)、または(a)、(b)および(c)
ならびに重亜硫酸塩の源
を含むパーツのキット。
【請求項61】
対照のメチル化DNAをさらに含む、請求項59または60に記載のキット。
【請求項62】
DNAポリメラーゼをさらに含む、請求項59から61のいずれか一項に記載のキット。
【請求項63】
哺乳動物細胞中において、OBCAMおよび/またはNTMポリペプチド、またはそれらの機能的断片もしくは変異体もしくは融合体を発現させることができる遺伝子療法用ベクター。
【請求項64】
OBCAMもしくはNTMポリペプチド、またはそれらの機能的変異体もしくは一部分もしくは融合体をコードする核酸を含む遺伝子療法用ベクター、および薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物。
【請求項65】
OBCAMもしくはNTM遺伝子、またはその変異対立遺伝子、あるいはOBCAMもしくはNTMのcDNA、またはその変異対立遺伝子と選択的にハイブリダイズする核酸を含む遺伝子療法用ベクター、および薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物。
【請求項66】
OBCAMもしくはNTMポリペプチド、またはその断片もしくは変異体もしくは融合体、および薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物。
【請求項67】
医薬品中に使用するための、請求項63から65のいずれか一項で定義した核酸。
【請求項68】
医薬品中に使用するための、OBCAMもしくはNTMポリペプチド、またはその断片もしくは変異体もしくは融合体。
【請求項69】
OBCAMの機能を調節する化合物を同定する方法であって、OBCAM遺伝子またはcDNA、またはポリペプチド、またはそれらの一部分を試験化合物と接触させること、およびその効果を決定することを含む方法。
【請求項70】
NTMの機能を調節する化合物を同定する方法であって、NTM遺伝子またはcDNA、またはポリペプチド、またはそれらの一部分を試験化合物と接触させること、およびその効果を決定することを含む方法。
【請求項71】
サンプルが血液である、請求項1から13、16から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
癌を治療する際に有用である可能性がある化合物を同定する方法であって、請求項69または70のステップを含む方法。
【請求項73】
本明細書で開示する、癌の診断、予後または治療の任意の新規な方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図18】
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【図19】
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【図4】
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【図7A】
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【図8A】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図17】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−165473(P2009−165473A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2827(P2009−2827)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【分割の表示】特願2003−508729(P2003−508729)の分割
【原出願日】平成14年6月20日(2002.6.20)
【出願人】(598176569)キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド (57)
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
【Fターム(参考)】