説明

発光シート及びその製造方法

【課題】電圧印加時に素子端部での絶縁破壊を起こすことなく、ショート等の不良も発生せず、安定した駆動を実現できる発光シート及びその効率的な製造方法を提供すること。
【解決手段】第1電極及び第2電極を有し、且つそれらの電極間に発光層が挟持された発光シートであって、該発光層の周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材が、該部材の一部が発光層から突出した状態で設置された発光シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光シート及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、ショート等の不良が発生せず、安定した駆動を実現できる発光シート、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子分野、あるいは光学分野における機能素子として、電圧を印加することにより発光する電界発光素子が知られている。この電界発光素子は、一般に発光層に、無機系電界発光材料を用いた無機電界発光素子(以下、無機EL素子と称する)と、有機系電界発光材料を用いた有機電界発光素子(以下、有機EL素子と称する)に大別することができる。
無機EL素子は、有機EL素子に比べて、高輝度の発光となりにくいものの、長期安定性に優れていると共に、高温等の苛酷な条件下でも安定して発光するという利点を有している。そのため、耐候性、耐熱性、長期安定性等が要求される分野で利用すべく、無機EL素子について研究が続けられている。
【0003】
また、無機EL素子は、印刷技術の利用により、紙や高分子フィルム上にデバイスを形成することが可能であり、可撓性が要求される電飾素子として市場を形成している。このような無機EL素子としては、背面電極に、絶縁層、発光層を形成し、その上に透明電極を設け、上下を吸湿フィルムで覆った電界発光素子が知られており、発光層はスクリーン印刷等で印刷されている(例えば特許文献1参照)。しかし、このような手法は製造工程数が多い。そのため、大量生産が可能な方法として、ロール印刷及びラミネートによって安価に無機EL素子を製造する方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−58636号公報
【特許文献2】特開2004−234942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方法により製造された無機EL素子は、素子端部で上下の電極が近接しているため、電圧の印加時に絶縁破壊が起こることがあり、しばしばショート等の不良が発生するという問題があった。
そこで、本発明は上記の問題を解決するものであり、耐電圧性が高く、ショート等の不良を抑制し得る発光シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[9]に関する。
[1]第1電極及び第2電極を有し、且つそれらの電極間に発光層が挟持された発光シートであって、
該発光層の周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材が、該部材の一部が発光層から突出した状態で設置された発光シート。
[2]第1電極及び第2電極を有し、且つそれらの電極間に発光層が挟持された発光シートであって、
該発光層の周縁部の少なくとも一部に、絶縁体からなる短絡防止部材が該部材の一部が発光層から突出した状態で設置され、
さらに、前記短絡防止部材が設置されていない又は該部材の一部が発光層から突出した状態で設置されていない発光層の周縁部上の第1電極及び/又は第2電極が切断され、発光シートに電圧を印加する回路と電気的に非接続状態である非導通部が形成された発光シート。
[3]第1電極及び/又は第2電極の切断がレーザーによるものである、上記[2]に記載の発光シート。
[4]前記短絡防止部材が、第1電極と第2電極との沿面距離の最小値が2mm以上となるように発光層から突出している、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の発光シート。
[5]前記電極の切断により、電気的に接続状態にある第1電極の導通部と第2電極の導通部との沿面距離の最小値が2mm以上となっている、上記[2]〜[4]のいずれかに記載の発光シート。
[6]前記短絡防止部材が、絶縁性を有する粘着シートである、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の発光シート。
[7]第1電極又は第2電極と発光層との間に誘電体層を有する、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の発光シート。
[8]第1電極及び第2電極を有し、且つそれらの電極間に発光層が挟持された発光シートの製造方法であって、
ロール・ツー・ロール方式で製造され、発光層の流れ方向の二辺の発光層の周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材を、その一部が発光層から突出した状態で設置し、
さらに、第1電極及び/又は第2電極を幅方向に切断し、発光シートに電圧を印加する回路と電気的に非接続状態である非導通部を形成することによる、発光シートの製造方法。
[9]第1電極及び第2電極を有し、且つそれらの電極間に発光層が挟持された発光シートの製造方法であって、
ロール・ツー・ロール方式で製造され、発光層の流れ方向の一辺の発光層の周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材をその一部が発光層から突出した状態で設置し、もう一辺の発光層の周縁部の上又は下に位置する電極を切断して、発光シートに電圧を印加する回路と電気的に非接続状態である非導通部を形成し、
さらに、第1電極及び/又は第2電極を幅方向に切断し、発光シートに電圧を印加する回路と電気的に非接続状態である非導通部を形成することによる、発光シートの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、電圧印加時に素子端部での絶縁破壊を起こすことなく、ショート等の不良が発生せず、安定した駆動を実現できる発光シート及びその効率的な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1電極基材の第1電極に枠状に短絡防止部材を貼付(設置)した状態(積層体1)を示す図である。
【図2】第2電極基材の第2電極上の右側に、縦方向に直線状に短絡防止部材を貼付(設置)した状態(積層体2)を示す図である。
【図3】積層体1の第1電極面及び短絡防止部材上に、短絡防止部材の上辺、下辺及び左辺の一部が発光層から突出するように発光層を形成した状態(積層体3)を示す図である。
【図4】積層体3に積層体2を積層させた発光シートAを示す図である。
【図5】発光シートAの横断面図である。
【図6】第1電極基材の第1電極上の左側に、縦方向に直線状に短絡防止部材を貼付(設置)した状態(積層体4)を示す図である。
【図7】第2電極基材の第2電極上の右側に、縦方向に直線状に短絡防止部材を貼付(設置)した状態(積層体5)を示す図である。
【図8】積層体4の第1電極面及び短絡防止部材上に、短絡防止部材の一部が発光層から突出するように発光層を形成した状態(積層体6)を示す図である。
【図9】積層体6に積層体5を積層させた発光シートF’を示す図である。
【図10】発光シートF’の横断面図である。
【図11】発光シートF’の第2電極をレーザー加工機で切断した発光シートFを示す図である。
【図12】発光シートFの縦断面図である。
【図13】矢印方向に向かってロールから繰り出された第1電極基材の第1電極上の左側に、縦方向に直線状に短絡防止部材を貼付(設置)した状態(積層体7)を示す図である。
【図14】ロールから繰り出された第2電極基材の第2電極上の右側に、縦方向に直線状に短絡防止部材を貼付(設置)した状態(積層体8)を示す図である。
【図15】ロールから繰り出された積層体7の第1電極面及び短絡防止部材上に、短絡防止部材の一部が発光層から突出するように発光層を形成した状態(積層体9)を示す図である。
【図16】ロールから繰り出された積層体9に積層体8を積層させた発光シートH’を示す図である。
【図17】発光シートH’の幅方向(横)断面図である。
【図18】発光シートH’の第2電極の任意の位置2箇所をレーザー加工機で切断した状態(発光シートH)を示す図である。
【図19】発光シートHの流れ方向(縦)断面図である。
【図20】発光層の「周縁部」の位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の発光シートは、第1電極及び第2電極を有し、且つそれらの電極間に発光層が挟持された発光シートであって、該発光層の周縁部(以下、発光層周縁部と称する。)に、絶縁体からなる短絡防止部材が、該部材の一部が発光層から突出した状態で設置されたものである。ここで、発光層周縁部とは、発光層の第1電極及び第2電極のいずれにも面していない側面部位であり、図20に示すように短絡防止部材が設置されていない発光シートの断面図を用いて説明すると、第1電極基材20及び第2電極基材21に挟持された発光層22の側面部位23のことである。該発光シートの平面形状に特に制限は無く、正方形、長方形、台形、菱型等の四角形、三角形、円形、楕円形、星型等のいずれであってもよい。
以下、第1電極を陰極、第2電極を陽極とし、第1基材側を背面、第2基材側を前面とする発光シートを例として説明するが、これに限定されるものではない。
【0010】
(電極用の基材)
第1電極(陰極)及び第2電極(陽極)は、それぞれ基材上に形成されることが好ましい(以下、第1電極用の基材を第1基材、第2電極用の基材を第2基材と称し、第1基材に第1電極を積層したものを第1電極基材、第2基材に第2電極を積層したものを第2電極基材と称する。)。該第1基材及び第2基材としては、例えばガラス板、プラスチックフィルムを用いることができるが、可撓性があり軽量化が可能な点でプラスチックフィルムが好ましい。該プラスチックフィルムとしては、水分を透過させないフィルム又は水分透過率の極めて低いフィルムが好ましい。また第2基材は、透明性を有することが肝要である。
このようなプラスチックフィルムの材料としては、コストや汎用性の点からポリエステル、ポリアミド等が好ましい。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等が挙げられる。またポリアミドとしては、全芳香族ポリアミド:ナイロン6、ナイロン66、ナイロン共重合体等が挙げられる。
用いる基材の厚さに特に制限はないが、通常、1〜1000μm、好ましくは5〜500μmであり、実用性の観点から、より好ましくは10〜200μmである。
なお、第1基材は特に透明である必要はない。
【0011】
第2基材は無色透明でも有色透明でもよいが、後述の発光層から発せられる光を散乱又は減衰させないという観点から、無色透明が好ましい。
また、第1基材及び第2基材は、その表面又は裏面に、必要により透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素等の無機物が好適に用いられる。該透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法等により形成することができる。
【0012】
[第1電極;陰極]
本発明の発光シートにおける第1電極(陰極)としては、陰極としての機能を有していればよく、特に制限されず、発光シートの用途に応じて、公知の陰極の中から適宜選択することができる。
第1電極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、有機導電性化合物、及びこれらの混合物等が挙げられる。
第1電極の材料の具体例としては、金、銀、鉛、アルミニウム、インジウム、イッテルビウム、及びこれらの金属とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくは混合物;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性ポリマーが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。
これらの中で、安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、又はアルミニウムと0.01〜10質量%程度のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属との合金若しくは混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金等)をいう。
【0013】
第1電極の形成方法に特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD法(化学気相成長法)、プラズマCVD法等の化学的方式、あるいは金属箔を積層する方法等の中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記第1基材上に形成することができる。
例えば、第1電極の材料として、アルミニウム等の金属等を選択する場合には、基材にその1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタする方法、金属の箔を積層する等の方法により形成することができる。
第1電極の厚さとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜50μmであり、20nm〜20μmが好ましく、50nm〜15μmがより好ましい。なお、この第1電極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。第1電極の表面抵抗率は103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。該表面抵抗率は、実施例に記載の方法により求めた値である。
【0014】
[第2電極;陽極]
本発明の発光シートにおける第2電極(陽極)としては、陽極としての機能を有し、透明電極であればよく、特に制限されず、発光シートの用途に応じて、公知の陽極の中から適宜選択することができる。
第2電極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、有機導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。
第2電極の材料の具体例としては、酸化錫、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;前記金属酸化物と前記金属との混合物又は積層物;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性ポリマー等が挙げられる。これらの中でも、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましく、透明性が高い点からITOが特に好ましい。
【0015】
第2電極は、公知の方法に従って形成することができ、例えば印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等の中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記第2基材上に形成することができる。
例えば、第2電極の材料としてITOを選択する場合には、第2電極の形成は、直流あるいは高周波スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。また、第2電極の材料として有機導電性化合物を選択する場合には、第2電極の形成は、湿式製膜法に従って行うことができる。
第2電極の厚さとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10〜1000nmであり、20〜500nmが好ましく、50〜200nmがより好ましい。
第2電極の表面抵抗率は、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。該表面抵抗率は、実施例に記載の方法により求めた値である。
【0016】
第2電極は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、無色透明が好ましい。また、該第2電極側から発光を取り出すためには、第2基材と第2電極の積層体の透過率が、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。該透過率は、実施例に記載の方法により求めた値である。
【0017】
[発光層]
本発明の発光シートにおいて、発光層は、例えば、前記第1電極もしくは第2電極上、又は後述の誘電体層上に、発光性組成物を塗工することにより形成することができる。また、発光性組成物を剥離フィルムに塗工した後、第1電極もしくは第2電極上、又は誘電体層状に転写して発光層を形成してもよい。
発光性組成物は、電界発光体及びマトリックス樹脂を含有するものを用いることができる。以下に、電界発光体及びマトリックス樹脂について、順に説明する。
【0018】
(電界発光体)
電界発光体としては、無機系電界発光材料及び有機系電界発光材料のいずれも用いることができる。本発明の発光シートの用途の観点から、長期安定性に優れる無機系電界発光材料を用いることが好ましい。
【0019】
−無機系電界発光材料−
無機系電界発光材料としては、例えば硫化亜鉛(ZnS)を母材とし、発光中心材料として銅、マンガン、フッ化テルビウム、フッ化サマリウム、フッ化ツリウムを各々添加したZnS:Cu、ZnS:Mn、ZnS:TbF3、ZnS:SmF3、ZnS:TmF3;硫化カルシウム(CaS)を母材とし、発光中心材料としてユーロピウムを添加したCaS:Eu;硫化ストロンチウム(SrS)を母材とし、発光中心材料としてセリウムを添加したSrS:Ce;あるいはCaCa24、SrCa24のようなアルカリ土類カルシウム硫化物等を母材とし、発光中心材料としてマンガン等の遷移金属や、ユーロピウム、セリウム、テルビウム等の希土類元素を添加したもの等を挙げることができる。
これらの中で、ZnS:Cuは緑色、ZnS:Mnは黄橙色、ZnS:TbF3は緑色、ZnS:SmF3、CaS:Euは赤色、ZnS:TmF3、SrS:Ceは青色に発光する。
さらには、Sc以外の希土類元素、例えばY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等をドープしたSc23からなる酸化物発光材料も挙げることができる。ドープする希土類元素としては、Ce、Sm、Eu、Tb、Tmが好ましい。ドープする希土類元素の種類により、黄色、黄色より長波長側の赤色、黄色より短波長側の緑色や青色に発光する。
本発明においては、これらの無機系電界発光材料は1種を単独で用いてもよく、必要に応じ2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
−有機系電界発光材料−
有機系電界発光材料としては、低分子型及び高分子型のいずれも使用することができ、また蛍光発光材料及び燐光発光材料のいずれも使用することができる。
低分子型有機系電界発光材料としては、例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、芳香族ジアミン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体など、オルトメタル化金属錯体[例えば、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」p.150〜232、裳華房社(1982年発行)や、H.Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、p.71〜77及びp.135〜146、Springer−Verlag社(1987年発行)等に記載されている化合物群の総称]、ポルフィリン金属錯体等が挙げられる。
【0021】
また、高分子型有機系電界発光材料としては、蛍光発光材料であるポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等を挙げることができる。
本発明においては、有機系電界発光材料として、前記の低分子型及び高分子型の中から、1種を単独で用いてもよく、2種以上を選び組み合わせて用いてもよい。
なお、発光層が有機系電界発光材料からなる層である場合、該発光層の陽極側に、正孔注入・輸送層を、陰極側に電子注入・輸送層を形成することが好ましい。
【0022】
また、発光層における該電界発光体の含有量は、無機系、有機系で異なるが、無機系の場合、発光性及び経済性のバランス等の観点から、後述するマトリックス樹脂100質量部に対して、通常、好ましくは20〜900質量部、より好ましくは30〜700質量部、さらに好ましくは40〜500質量部である。
【0023】
(マトリックス樹脂)
発光性組成物が含有するマトリックス樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリウレタン、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリスチレン、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリ塩化ビニル;ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー;シリコーン系樹脂;アクリル系樹脂;アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、常温で粘着性を有するものが好ましい。常温で粘着性を有する樹脂を用いると発光層と電極あるいは誘電体層等を押圧するだけで接合することができる。粘着性を有する樹脂としては、アクリル系樹脂が好ましい。
アクリル系樹脂としては、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、所望により用いられるカルボキシル基などの官能基を有する単量体及び他の単量体との共重合体、すなわち(メタ)アクリル酸エステル共重合体を好ましく挙げることができる。
ここで、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は30万以上が好ましく、40万〜100万がより好ましい。
発光性組成物には、所望により架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料などを添加してもよい。
【0024】
前記発光性組成物の塗工方法に特に制限はなく、従来公知の方法、例えばナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを採用することができる。
このようにして得られた発光層の厚さは、発光シートの輝度、他層との接合性の観点から、通常、0.1〜100μm、好ましくは5〜90μm、さらに好ましくは20〜80μmである。
【0025】
[誘電体層]
本発明の発光シートにおいては、第1電極と発光層との間及び/又は発光層と第2電極との間に誘電体層を設けることができる。
この誘電体層を形成する材料としては、高誘電率を有する材料が好ましく、例えばSiO2、BaTiO3、SiON、Al23、TiO2、Si34、SiAlON、Y23、Sm23、Ta25、BaTa23、PbNb23、Sr(Zr,Ti)O3、SrTiO3、PbTiO3、HfO3、Sb含有SnO2(ATO)などの無機材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エポキシ樹脂、シアノアセチルセルロースなどの有機材料を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
誘電体層が発光層と第2電極との間にある場合には、誘電体層は透明である必要があるため、上記の中でも、SiO2、Al23、Si34、Y23、Ta25、BaTa23、SrTiO3、PbTiO3等の無機材料が好ましい。誘電体層が第1電極と発光層の間にある場合には、特に透明である必要はない。
【0026】
該誘電体層は、例えば適当なバインダー中に、前記誘電体の形成材料を均質分散させたものを、従来公知の塗工法、例えばスプレー法、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などにより塗工する方法、あるいは押出し機を用いて形成することができる。バインダーは特に限定されないが、例えば前述の発光性組成物のマトリックス樹脂と同様のものを使用することができる。なお、有機材料の場合には、バインダーを用いずそのまま塗工することも可能である。
該誘電体層は、本発明の発光シートを交流で駆動させる場合において、発光層の電気伝導度が高すぎて発光層に十分な電圧を印加し難いとき、あるいは過大電流により絶縁破壊が起こる恐れがあるとき等において、それらを制御する効果を発揮する。該誘電体層の厚さは、上記効果を良好に発揮させる観点から、通常、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは10〜50μmである。
【0027】
<短絡防止部材の設置>
本発明の発光シートは、前記発光層周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材が、該部材の一部が発光層から突出した状態で設置されていることに特徴を有する。
【0028】
(短絡防止部材)
短絡防止部材としては、絶縁性を有する材料(以下、絶縁性材料と略称する。)であれば特に制限は無く、例えばY23、Al23、Si34、Ta25、PbTiO3、BaTa26、SrTiO3、雲母等の無機材料;ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、シアノエチルセルロース系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール樹脂等の各種有機系高分子材料が挙げられる。
短絡防止部材としては、前記絶縁性材料からなるシートを用いるか、又は前記ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂等からなる絶縁性材料を基材として、その上に絶縁性の粘着剤層を設けて粘着テープとしたものを好ましく利用できる。絶縁性の粘着剤層を形成する粘着剤としては、導電材料を含まないアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等、公知の粘着剤を用いることができる。また、粘着テープの厚さは10〜500μmであることが好ましい。
短絡防止部材の体積抵抗率は、好ましくは1011Ω・cm以上、より好ましくは1012Ω・cm以上である。該体積抵抗率は、実施例に記載の方法により求めた値である。
【0029】
前記短絡防止部材は、発光層周縁部を一周するように設置されていてもよいし、後述するように、発光シートの断面形状において短絡防止部材が設置されていない発光層周縁部の上又は下に位置する電極の周縁部に非導通部が形成されていることを条件として、短絡防止部材は発光層周縁部の「一部」に設置されていている状態であってもよい。「設置」とは、発光層に差し込まれた状態のみならず、発光層と電極との間に挟まれている状態や、短絡防止部材が粘着テープであれば、発光層と電極間に挟まれつつ電極に貼付された状態等も含まれる。なお、短絡防止部材が発光層と電極との間に挟まれている場合は、発光層と第1電極の間又は発光層と第2電極の間の一方のみに設置されていてもよいし、両方に設置されてもよい。
短絡防止部材の設置としては、短絡防止部材として粘着テープを用いて電極に貼付する方法が簡便であり好ましい。
ここで、「短絡防止部材が前記発光層周縁部を一周するように設置されている」というのは、短絡防止部材が全て繋がっている状態以外に、発光シートの平面に対して垂直方向から見た場合に見かけ上、発光層から突出している短絡防止部材が発光層を一周しているように見える状態も含む。見かけ上一周しているように見える状態としては、例えば、正方形の発光シートの場合において、4辺のうち2辺は、短絡防止部材が発光層と第1電極の間に形成され、残りの2辺は、発光層と第2電極の間に形成された状態等を挙げることができる。
発光層からの短絡防止部材の突出部位の長さは、好ましくは1〜15mm、より好ましくは1.5〜12mmである。この程度発光層から突出させることにより、第1電極と第2電極との沿面距離を、ショートの発生を防止するのに十分なものとすることができる。短絡防止部材を設置した場合の該沿面距離は、発光シートの外周部の任意の点において第1電極と第2電極との間の距離を発光層及び短絡防止部材の表面(発光シートが誘電体層を有する場合は誘電体層表面も含む。)に沿って測定したときの最短距離であり、例えば図5中では、3つの矢印の合計距離で表される。このようにして測定した沿面距離の最小値は、2mm以上が好ましく、2.5mm以上が好ましい。該沿面距離の最小値の上限は特に限定されないが、通常100mm程度である。
【0030】
以上のような本発明の発光シートの一例として、図4及び図5に四角形状の発光シートAを示す。図5に示すように、発光シートAは、第1電極基材1と第2電極基材3の間に発光層4が挟持され、発光層周縁部に短絡防止部材2及び短絡防止部材2’が設置(貼付)されている。図4及び図5に示すように、発光シートAにおいては、短絡防止部材2が発光シートの3辺で発光層から突出した状態で設置され、短絡防止部材2’が残りの1辺において発光層から突出した状態で設置されているため、発光シートの平面に対して垂直方向から見ると、見かけ上、発光層から突出している短絡防止部材が発光層を一周している。
本発明の発光シートが、発光層周縁部の一部に短絡防止部材の「一部」が発光層から突出した状態で設置されている場合、短絡防止部材が設置されていない又は短絡防止部材が発光層から突出した状態で設置されていない発光層周縁部の上又は下に位置する電極の周縁部には非導通部を形成する。このような発光シートの一例を、図6〜図12を用いて説明する。第1電極基材6と第2電極基材7のそれぞれの電極の縦方向に直線状に短絡防止部材8及び8’を設置した発光シートF’において、短絡防止部材8及び8’のいずれも設置されていない横方向の第1電極及び/又は第2電極を切断することにより、発光シートに電圧を印加するための回路と電気的に非接続状態(以下、単に「電気的に非接続状態」という。)である非導通部12及び12’が形成されている。こうして得られる発光シートを発光シートの平面に対して垂直方向から見ると、見かけ上、短絡防止部材と非導通部が発光層を一周している。
【0031】
なお、短絡防止部材を発光層から突出した状態で設置するに際し、第1電極及び第2電極の両者が発光層の同一縁部からそれぞれ突出した状態である場合、本発明の効果が低減する恐れがあるため、図5、10及び17に示すように、短絡防止部材を設置した発光層周縁部の上下に位置するいずれか一方の電極の末端が、発光層から8mm以上突出していないことが好ましく、5mm以上突出していないことがより好ましく、実質的に突出していない状態であることがさらに好ましい。
【0032】
(電極の切断条件)
電極の切断の方法としては特に制限は無いが、レーザー加工機を用いることが簡便であり好ましい。レーザー加工機としては特に制限は無いが、例えばYAGレーザー、CO2レーザー、エキシマレーザー、フェムト秒レーザー等が挙げられる。
レーザー出力やスキャン速度は、非導通部を形成するように適宜調節すればよいが、目安として、例えば、電極基材の基材側から切断する場合(図12参照)、電極基材の厚みが50〜100μmの範囲であれば、通常、レーザー出力30〜80W及びスキャン速度350〜700mm/sの条件で切断することが好ましい。
電極の切断位置は発光層端部より内側であればよいが、発光面積が過度に小さくなるのを防ぐために、電極の端から2〜10mmの位置が好ましく、より好ましくは3〜8mmの位置であり、さらに好ましくは4〜6mmの位置である。また、発光層の一部が切断されてもよい。なお、あらかじめ電極基材の電極側から電極を切断しておき、それから発光層と電極を接合してもよい。
切断した際の線幅は、ショート防止の観点から、通常10μm以上が好ましい。ただし、必要以上に線幅を広くしてもショート防止性能は変わらないが、発光面積が小さくなるので、線幅は10〜200μmがより好ましく、20〜180μmがさらに好ましい。
【0033】
また、前記電極の切断により、電気的に接続状態にある第1電極の導通部縁部と第2電極の導通部縁部との沿面距離の最小値(図12の発光層中に記載した2つの矢印の合計距離)が2mm以上となっていることが好ましく、2.5mm以上になっていることがより好ましい。該沿面距離の最小値の上限は特に限定されないが、通常100mm程度である。なお、該沿面距離は、電極の切断の際に一緒に切断された発光層の深さについて考慮しない値とする。
【0034】
[発光シートの製造方法]
また、本発明の発光シートの製造の実施形態に特に制限は無く、前記構成の発光シートが得られる方法であればいかなる方法であってもよい。
本発明の発光シートの製造方法の一例として、下記工程(1)又は(2)で第1積層体及び第2積層体を作製し、第1積層体の発光層側と第2積層体の第2電極側、又は第1積層体の第1電極側と第2積層体の発光層側とを、それぞれ接合する方法が挙げられる。
(1)第1基材上に第1電極及び発光層を順に形成することで第1積層体を作製し、別に第2基材上に第2電極を形成することで第2積層体を作製する工程。
(2)第1基材上に第1電極を形成することで第1積層体を作製し、別に第2基材上に第2電極及び発光層を順に形成することで第2積層体を作製する工程。
【0035】
上記工程(1)及び(2)において、短絡防止部材の設置及び電極の切断の時機は任意であり、特に制限は無いが、工程(1)では、例えば、以下の方法(1A)及び(1B)等を利用できる。
(1A)第1基材上に形成した第1電極に短絡防止部材を設置(貼付)し、次いで短絡防止部材の一部が発光層から突出するように発光層を形成して第1積層体を作製する方法であり、第1電極に設置した短絡防止部材が発光層から突出していない部位を設けた場合には、第2基材上に少なくとも第2電極を形成した後、該部位に位置する第2基材上の第2電極に短絡防止部材を設置(貼付)する方法。
(1B)第1基材上に形成した第1電極に短絡防止部材を設置(貼付)し、次いで短絡防止部材の一部が発光層から突出するように発光層を形成して第1積層体を作製する方法であり、第1電極に設置した短絡防止部材が発光層から突出していない部位を設けた場合には、第2基材上に少なくとも第2電極を形成した後、該部位に位置する第2基材上の第2電極を切断して非導通部を設ける方法。
【0036】
また、工程(2)では、例えば、以下の方法(2A)及び(2B)等を利用できる。
(2A)第2基材上に形成した第2電極に短絡防止部材を設置(貼付)し、次いで短絡防止部材の一部が発光層から突出するように発光層を形成して第2積層体を作製する方法であり、第2電極に設置した短絡防止部材が発光層から突出していない部位を設けた場合には、第1基材上に少なくとも第1電極を形成した後、該部位に位置する第1基材上の第1電極に短絡防止部材を設置(貼付)する方法。
(2B)第2基材上に形成した第2電極に短絡防止部材を設置(貼付)し、次いで短絡防止部材の一部が発光層から突出するように発光層を形成して第2積層体を作製する方法であり、第2電極に設置した短絡防止部材が発光層から突出していない部位を設けた場合には、第1基材上に少なくとも第1電極を形成した後、該部位に位置する第1基材上の第1電極を切断して非導通部を設ける方法。
【0037】
ここで、便宜上、第1積層体及び第2積層体の構成をそれぞれ下記のように記号で表す。すなわち、第1基材を「1」、第2基材を「2」で表し、第1電極を「E1」、第2電極を「E2」で表し、発光層を「L」で表し、後述の誘電体層は「D」又は「D’」で表すと、上記工程(1)を経る方法においては、第1積層体として、1−E1−Lの構成のものが得られ、第2積層体として、2−E2の構成のものが得られる。この第1積層体と第2積層体を、LとE2を対面させて接合することにより、1−E1−L−E2−2の構成の発光シートが得られる。
また、上記工程(2)を経る方法においては、第1積層体として、1−E1の構成のものが得られ、第2積層体として、2−E2−Lの構成のものが得られる。この第1積層体と第2積層体を、E1とLを対面させて接合することにより、1−E1−L−E2−2の構成の発光シートが得られる。
【0038】
また、下記工程(3)〜(12)のいずれかにより第1積層体及び第2積層体を作製し、第1積層体の誘電体層側、発光層側又は第1電極側と、第2積層体の第2電極側、発光層側又は誘電体層側とを、それぞれ接合することにより、第1電極又は第2電極と発光層との間に誘電体層を有する発光シートを得ることもできるが、特にこれらに限定されるものではない。
(3)第1基材上に第1電極、誘電体層及び発光層をこの順に形成することで第1積層体を作製し、別に第2基材上に第2電極を形成することで第2積層体を作製する工程。
(4)第1基材上に第1電極及び誘電体層を順に形成することで第1積層体を作製し、別に第2基材上に第2電極及び発光層を順に形成することで第2積層体を作製する工程。
(5)第1基材上に第1電極を形成することで第1積層体を作製し、別に第2基材上に第2電極、発光層及び誘電体層をこの順で形成することで第2積層体を作製する工程。
(6)第1基材上に第1電極、発光層及び誘電体層をこの順に形成することで第1積層体を作製し、別に第2基材上に第2電極を形成することで第2積層体を作製する工程。
(7)第1基材上に第1電極及び発光層を順に形成することで第1積層体を作製し、別に第2基材上に第2電極及び誘電体層を順に形成することで第2積層体を作製する工程。
【0039】
(8)第1基材上に第1電極を形成することで第1積層体を作製し、別に第2基材上に第2電極、誘電体層及び発光層をこの順に形成することで第2積層体を作製する工程。
(9)第1基材上に第1電極、誘電体層、発光層及び誘電体層をこの順に形成することで第1積層体を作製し、別に第2基材上に第2電極を形成することで第2積層体を作製する工程。
(10)第1基材上に第1電極、誘電体層及び発光層をこの順に形成することで第1積層体を作製し、別に第2基材上に第2電極及び誘電体層を順に形成することで第2積層体を作製する工程。
(11)第1基材上に第1電極及び誘電体層を順に形成することで第1積層体を作製し、別に第2基材上に第2電極、誘電体層及び発光層をこの順に形成することで第2積層体を作製する工程。
(12)第1基材上に第1電極を形成することで第1積層体を作製し、別に第2基材上に第2電極、誘電体層、発光層及び誘電体層をこの順に形成することで第2積層体を作製する工程。
なお、上記工程(3)〜(12)において、短絡防止部材の設置及び電極の切断の時機は任意であり、特に制限は無い。また、上記工程(9)〜(12)における第1電極側と第2電極側の誘電体層は同一であっても異なってもよい。
上記工程(1)〜(12)を経る方法における第1積層体の構成、第2積層体の構成及び得られる発光シートの構成を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
また、本発明の発光シートの生産性を向上させる観点から、ロール・ツー・ロール方式により発光シートを製造してもよい。ロール・ツー・ロール方式による本発明の発光シートの製造は、ロール状に巻き取られた長尺の電極基材を繰り出し、短絡防止部材の設置、非導通部の形成、発光層の形成、電極基材との接合、必要に応じて誘電体層の形成等を行い、ロール状に巻き取る方法である。得られた発光シートは、所望のサイズに裁断して使用することができる。
該ロール・ツー・ロール方式を採用する場合、(a)発光層の流れ方向(縦方向)の二辺の発光層周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材をその一部が発光層から突出した状態で設置し、さらに第1電極及び/又は第2電極を幅方向(横方向)に切断し、電気的に非接続状態である非導通部を形成するか、(b)発光層の流れ方向(縦方向)の一辺の発光層周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材をその一部が発光層から突出した状態で設置し、もう一辺の発光層周縁部の上又は下に位置する電極を切断して電気的に非接続状態である非導通部を形成し、さらに、第1電極及び/又は第2電極を幅方向に切断し、電気的に非接続状態である非導通部を形成する。なお、短絡防止部材の設置及び非導通部の形成の時機は特に限定されず、任意の段階で行うことができる。
【0042】
ロール・ツー・ロール方式により本発明の発光シートを製造する方法を以下により具体的に説明するが、特にこれらに限定されるものではない。
(ロール・ツー・ロール方式(I))
(i)ロール状に巻き取られた長尺の第1電極基材及び第2電極基材それぞれを繰り出し、それぞれの電極基材の流れ方向(縦方向)に沿って電極面に短絡防止部材を設置する。
(ii)第1電極基材の第1電極面側(又は第2電極基材の第2電極面側)に短絡防止部材の一部が発光層から突出するように発光層を形成する。
(iii)発光層上に第2電極基材(又は第1電極基材)を接合して長尺の発光シートとする。
(iv)長尺の発光シートの幅方向の任意の位置で第1電極及び/又は第2電極を切断し、非導通部を形成する。この際、目的とする発光シートのサイズにおける電極の端を想定して、電極の端から、好ましくは2〜10mmを残すように、より好ましくは3〜8mmを残すように、さらに好ましくは4〜6mmを残すようにして電極を切断する。
(v)ロール状に巻き取る
【0043】
(ロール・ツー・ロール方式(II))
(i)ロール状に巻き取られた長尺の第1電極基材を繰り出し、該第1電極基材の流れ方向(縦方向)の1辺を切断し、非導通部を形成してからロール上に巻き取る。なお、この場合、基材の一部を残すようにして電極を切断することが以下の(iii)の作業を容易に行う観点から、好ましい。
(ii)ロール状に巻き取られた前記長尺の第1電極基材及び/又は第2電極基材を繰り出し、電極の流れ方向の非導通部が形成されていない1辺に短絡防止部材を設置する。
(iii)第1電極基材の第1電極面側(又は第2電極基材の第2電極面側)に短絡防止部材の一部が発光層から突出するように発光層を形成する。
(iv)発光層上に第2電極基材(又は第1電極基材)を接合して長尺の発光シートとする。
(v)長尺の発光シートの幅方向の任意の位置で第1電極及び/又は第2電極を切断し、非導通部を形成する。この際、目的とする発光シートのサイズにおける電極の端を想定して、電極の端から、好ましくは2〜10mmを残すように、より好ましくは3〜8mmを残すように、さらに好ましくは4〜6mmを残すようにして電極を切断する。
(vi)ロール状に巻き取る。
【0044】
ロール・ツー・ロール方式において、上記各段階は連続して行ってもよいし、各段階で一旦ロール状に巻き取り、再度繰り出す方法を採用してもよい。また、各電極と発光層との間には必要に応じて誘電体層を形成してもよい。また、前述同様の理由で、電極を切断する際の切断幅は10〜200μmが好ましく、20〜180μmがより好ましい。
以上のようにして得られる発光シートは、電圧印加時の絶縁破壊が抑制され、ショート等の不良が発生しないために長期間の使用に耐え得るものであり、従来の発光シートに比べて信頼性に優れている。
【実施例】
【0045】
次に、図面に基づいて本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で用いた発光層中のアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで単分散ポリスチレンを基準として、重合体のポリスチレン換算で出した値である。また、第1電極と第2電極の表面抵抗率、第2電極基材の透過率及び短絡防止部材(粘着テープ)の体積抵抗率の測定は次のようにして行った。
【0046】
[第1電極及び第2電極の表面抵抗率の測定方法]
第1電極基材と第2電極基材を、23℃及び相対湿度50%の環境下に24時間放置した後、同環境下で、表面抵抗率測定装置(株式会社アドバンテスト製、商品名「R−127004」)を用いて表面抵抗率を測定した。
[第2電極基材の透過率の測定方法]
紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、商品名「UV−3101PC」)を用い、電極側からの波長550nmの光の透過率を測定した。
[短絡防止部材(粘着テープ)の体積抵抗率の測定方法]
短絡防止部材を、23℃及び相対湿度50%の環境下に24時間放置した後、同環境下で、デジタルエレクトロメーター(株式会社アドバンテスト製、商品名「R8252」)を用いて体積抵抗率を測定した。
【0047】
また、各例で用いた第1基材、第1電極、第2基材、第2電極、ラミネーター及びレーザー加工機は、下記の通りである。
【0048】
第1基材:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)
第1電極:アルミニウム箔(厚さ12μm)
以下、上記第1基材に第1電極が積層された積層体を「第1電極基材」と称する。各例では、該第1電極基材として、商品名「アルペット(登録商標)12×50」(アジヤアルミ株式会社製)を使用した。該第1電極の表面抵抗率は0.5Ω/□であった。
【0049】
第2基材:ポリエチレンテレフタレート(厚さ75μm)
第2電極:酸化インジウム錫(ITO、厚さ100nm)
以下、上記第2基材に第2電極が積層された積層体を「第2電極基材」と称する。各例では、該第2電極基材として、商品名「メタルフォースR−IT(E12)」(中井工業株式会社製)を使用した。該第2電極の表面抵抗率は102Ω/□であり、第2電極基材の波長550nmの光の透過率は89%であった。
ラミネーター:商品名「Excelam 355Q」(GMP社製)
レーザー加工機:商品名「CO2 LASER MARKER LP−ADP40」(サンクス株式会社製)
【0050】
また、各例で使用した発光層、誘電体層は、以下の通りに製造した。
(発光層)
マトリックス樹脂としてのアクリル酸n−ブチルとアクリル酸からなるアクリル酸エステル共重合体(アクリル酸n−ブチル/アクリル酸=90/10(質量比)、重量平均分子量80万)100質量部、電界発光体としてZnS・Cu系蛍光体(オスラムシルバニア社製、商品名「GG25 BlueGreen」)300質量部、ポリイソシアナート系架橋剤(東洋インキ製造株式会社製、商品名「オリバイン(登録商標)BHS8515」、固形分37.5質量%)2質量部及び溶剤としてトルエン500質量部の混合物を充分に撹拌して、発光性組成物の塗布液を調製した。
得られた塗布液を、第1の剥離フィルム(リンテック株式会社製、商品名「SP−PET3811」、各例にて、第1剥離フィルムと称する。)の剥離処理面に、ナイフコーターを用いて乾燥後の厚さが55μmとなるように塗布し、100℃で2分間加熱乾燥して発光層を形成し、発光層表面に第2の剥離フィルム(リンテック株式会社製、商品名「SP−PET3801」、各例にて、第2剥離フィルムと称する。)を貼り合わせ、両面に剥離フィルムが設けられた発光層(各例にて、発光層含有シートと称する。)を得た。
【0051】
(誘電体層)
アクリル酸n−ブチルとアクリル酸からなるアクリル酸エステル共重合体(アクリル酸n−ブチル/アクリル酸=90/10(質量比)、重量平均分子量80万)100質量部、酸化チタン(大日精化株式会社製、商品名「SZカラー#7030ホワイト」)100質量部及び溶剤としてトルエン300質量部からなる混合物を充分に撹拌し、剥離フィルム(リンテック株式会社製、商品名「SP−PET3811」)に乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布して、100℃で2分間乾燥し、剥離フィルム上に誘電体層(各例にて、誘電体層含有シートと称する。)を形成した。
【0052】
また、各例で得られた発光シートの耐圧試験及びショート発生試験は以下の通りに行った。
[耐電圧試験]
各例で得られた発光シートについて、耐電圧測定器(株式会社計測技研製、商品名「AC耐電圧試験器7220」)を用い、電流10mAにて印加電圧を1分間で0Vから1000Vまで上昇させることにより、絶縁破壊を起こす電圧を測定した。絶縁破壊を起こす電圧が大きいほど、耐電圧性に優れる。
[ショート発生試験]
各例で得られた発光シートを、AC200V及び2000Hzで駆動させたときの発光シート端部のショート発生有無を目視で確認した。なお、ショートが発生したときは、駆動直後に黒色斑点が確認された。
【0053】
実施例1
図1に示すように、B4サイズ(横364mm×縦257mm)とした第1電極基材1の第1電極面に、ラミネーターを用いて短絡防止部材2として粘着テープ[厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに厚さ24μmの粘着剤層を設けた粘着テープ(幅10mm);(リンテック株式会社製、商品名「FR1225−16」、体積抵抗率1018Ω・cm]を枠状に貼付し、積層体1を得た。ここで、粘着テープとしては、長さ339mm及び長さ237mmのものをそれぞれ2本使用して、図1に示すように枠状に貼付した。なお、積層体1の左端から短絡防止部材2の左端までの最短距離(粘着テープが貼付されていない部分の幅)を25mmとした。
また、図2に示すように、縦247mm、横364mmとした第2電極基材3の第2電極面に、ラミネーターを用いて短絡防止部材2’として粘着テープ(リンテック株式会社製、商品名「FR1225−16」、幅10mm(前出))を直線状に貼付し、積層体2とした。なお、積層体2の右端から短絡防止部材2’の右端までの最短距離(粘着テープが貼付されていない部分の幅)を25mmとした。
次に、ラミネーターを用いて、縦247mm、横334mmとした発光層含有シートの第2剥離フィルムを剥がしながら、図3に示すように、積層体1の第1電極面に、短絡防止部材2の一部が発光層から突出するように発光層4を積層して積層体3とした。この際、短絡防止部材2の発光層4から突出した部分(短絡防止部材突出部5)の長さが5mmとなるようにした(図5参照)。
次に、ラミネーターを用いて、積層体3における発光層4の第1剥離フィルムを剥がしながら、図4に示すように積層体2の第2電極面が積層体3の発光層4に接するようにして、且つ積層体2に貼付されている短絡防止部材2’が右側に位置するように積層体2と積層体3を積層して発光シートAを得た。この際、積層体2の第2電極面が積層体3の発光層4を全て覆い、且つ、積層体2側に設置された短絡防止部材2’の発光層4から突出した部分(短絡防止部材突出部5’)の長さが5mmとなるようにした(図5参照)。この発光シートAにおける第1電極と第2電極との沿面距離の最小値(以下、第1電極と第2電極との沿面距離の最小値を単に「沿面距離」と称する。)は、突出した部分の長さ(5mm)、短絡防止部材の厚さ(0.040mm)及び発光層の厚さ(0.055mm)の和によって算出され、5.095mmであった。得られた発光シートAの沿面距離、耐電圧試験結果及びショート発生試験結果を表2に示す。
【0054】
実施例2
実施例1において、短絡防止部材2及び2’として、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに厚さ24μmの粘着剤層を設けた粘着テープ(リンテック株式会社製、商品名「FR1225−25」、幅10mm、体積抵抗率1018Ω・cm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして発光シートBを得た。この発光シートBの沿面距離は5.104mmであった。
得られた発光シートBの沿面距離及び各試験結果を表2に示す。
【0055】
実施例3
実施例1において、短絡防止部材2及び2’として、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに厚さ24μmの粘着剤層を設けた粘着テープ(リンテック株式会社製、商品名「FR1225−75」、幅10mm、体積抵抗率1018Ω・cm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして発光シートCを得た。この発光シートCの沿面距離は5.154mmであった。
得られた発光シートCの沿面距離及び各試験結果を表2に示す。
【0056】
実施例4
実施例1において、短絡防止部材2及び2’の発光層から突出した部分(短絡防止部材突出部5及び5’)の長さをそれぞれ10mmとしたこと以外は実施例1と同様にして発光シートDを得た。この発光シートDの沿面距離は10.095mmであった。
得られた発光シートDの沿面距離及び各試験結果を表2に示す。
【0057】
実施例5
実施例1において、短絡防止部材2及び2’の発光層から突出した部分の長さ(短絡防止部材突出部5及び5’)をそれぞれ2.5mmとした以外は実施例1と同様にして発光シートEを得た。この発光シートEの沿面距離は2.595mmであった。
得られた発光シートEの沿面距離及び各試験結果を表2に示す。
【0058】
実施例6
図6に示すように、B4サイズとした第1電極基材6の第1電極面に、ラミネーターを用いて短絡防止部材8として粘着テープ(リンテック株式会社製、商品名「FR−1225−16」、幅10mm(前出))を貼付し、積層体4とした。なお、積層体4の左端から短絡防止部材8の左端までの最短距離(粘着テープが貼付されていない部分の幅)を25mmとした。
また、図7に示すように、B4サイズとした第2電極基材7の第2電極面に、ラミネーターを用いて短絡防止部材8’として粘着テープ(リンテック株式会社製の粘着テープ、商品名「FR1225−16」、幅10mm(前出))を貼付し、積層体5とした。積層体5の右端から短絡防止部材8’の右端までの最短距離(粘着テープが貼付されていない部分の幅)を25mmとした。
次に、ラミネーターを用いて、図8に示すように、縦257mm、横334mmとした発光層含有シートの第2剥離フィルムを剥離しながら、積層体4の第1電極面に発光層含有シートを積層し、発光層9が設けられた積層体6とした。この際、短絡防止部材8の発光層9から突出した部分(短絡防止部材突出部10)の長さが5mmとなるようにした(図10参照)。
次に、ラミネーターを用いて、図9に示すように、積層体6における発光層9の第1剥離フィルムを剥離しながら、積層体5の第2電極面が積層体6の発光層9に接するように、且つ積層体5に貼付されている短絡防止部材8’が右側に位置するように積層体5と積層体6を積層して発光シートF’とした。この際、積層体5側に貼付された短絡防止部材8’の発光層9から突出した部分(短絡防止部材突出部10’)の長さが5mmとなるようにした(図10参照)。
次に、図11に示すように、発光シートF’の第2電極基材7の縁に沿って縁から5mmの位置(レーザー切断部11及び11’)を、レーザー加工機を用いて、レーザー出力45W及びスキャン速度500mm/sの条件で切断して、図12に示す非導通部12及び12’を形成し、発光シートFを得た。なお、レーザー切断部11及び11’の幅は143μm、切断深さは76μmであった。この発光シートFの沿面距離は5.055mmであった。
得られた発光シートFの沿面距離及び各試験結果を表2に示す。
【0059】
実施例7
実施例6において、第1電極上に短絡防止部材8を設置した後、誘電体層含有シートを用いて第1電極面に発光層9と同じ形状、面積を有する誘電体層を積層し、続いて誘電体層の剥離フィルムを剥がした後、ラミネーターを用いて発光層含有シートの第2剥離フィルムを剥がしながら、誘電体層上に重なるように発光層9を積層した(つまり、第1電極と発光層9の間に誘電体層を設けた)こと以外は実施例6と同様にして発光シートGを得た。この発光シートGの沿面距離は5.065mmであった。
得られた発光シートGの沿面距離及び各試験結果を表2に示す。
【0060】
実施例8
幅300mm及び長さ100mの寸法を有する第1電極基材及び第2電極基材、並びに両面に剥離シートが設けられた幅270mm及び長さ100mの寸法を有する発光層含有シートを準備し、それぞれロール状に巻き取った。
そして、第1電極基材13をロールから繰り出しながら、ラミネーターを用いて、図13に示すように短絡防止部材15として粘着テープ[リンテック株式会社製、商品名「FR1225−16」、幅10mm(前出)]を第1電極基材の流れ方向(図13の右側の矢印の方向)に沿って第1電極面に貼付して積層体7とし、得られた積層体7をロール状に巻き取った。なお、積層体7の左端から短絡防止部材15の左端までの最短距離(粘着テープが貼付されていない部分の幅)を25mmとした。
同様にして図14に示すように、短絡防止部材15’ として粘着テープ[リンテック株式会社製、商品名「FR−1225−16」、幅10mm(前出)]を第2電極基材の流れ方向に沿って第2電極面に貼付して積層体8とし、得られた積層体8をロール状に巻き取った。なお、積層体8の右端から短絡防止部材15’の右端までの最短距離(粘着テープが貼付されていない部分の幅)を25mmとした。
【0061】
次に、積層体7をロールから繰り出すと共に、ラミネーターを用いて第2剥離フィルムを剥がしながら、発光層含有シートをロールから繰り出し、図15に示すように、積層体7の第1電極面に発光層を積層して発光層16が設けられた積層体9とし、得られた積層体9をロール状に巻き取った。この際、短絡防止部材15の発光層16から突出した部分(短絡防止部材突出部17)の長さは5mmとした。(図17参照)
次に、積層体8を繰り出すと共に、第1剥離シートを剥がしながら積層体9をロールから繰り出し、図16に示すように、積層体8の第2電極面が積層体9の発光層16に接するように、且つ積層体8に貼付した短絡防止部材15’が右側に位置するように積層して発光シートH’とし、得られた発光シートH’をロール状に巻き取った。この際、短絡防止部材15’の発光層16から突出した部分(短絡防止部材突出部17’)の長さが5mmとなるようにした(図17参照)。
次に、発光シートH’をロールから繰り出しながら、図18に示すように、発光シートH’の幅方向(レーザー切断部11及び11’)に、レーザー加工機を用いて、レーザー出力45W及びスキャン速度500mm/sの条件で第2電極基材を切断して、図19に示す非導通部19及び19’を形成し、発光シートHを得た。なお、レーザー切断部18及び18’の幅は143μm、切断深さは76μmであった。
最後に、発光シート8をシート状に幅方向に切断して、発光シートHを得た。発光シート端部からレーザー切断部18、18’までの長さは5mmとした。この発光シートHの沿面距離は5.055mmであった。
得られた発光シートHの沿面距離及び各試験結果を表2に示す。
【0062】
比較例1
実施例1において、第1電極及び第2電極に短絡防止部材2及び2’を貼付しなかったこと以外は実施例1と同様にして発光シートIを得た。この発光シートIの沿面距離は0.055mmであった。
得られた発光シートIの沿面距離及び各試験結果を表2に示す。
【0063】
比較例2
実施例6において、第1電極及び第2電極に短絡防止部材8及び8’を貼付しなかったこと以外は実施例6と同様にして発光シートJを得た。この発光シートJの沿面距離は0.055mmであった。
得られた発光シートJの沿面距離及び各試験結果を表2に示す。
【0064】
比較例3
実施例6において、発光シートF’の第2電極基材7の縁を切断せず、発光シートF’をそのまま得た。この発光シートF’の沿面距離は0.055mmであった。
得られた発光シートF’の沿面距離及び各試験結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
表2より、発光層周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材が、該部材の一部が発光層から突出した状態で設置された発光シートは、耐電圧性が高く、駆動時にショート発生が無かった(実施例1〜5参照)。
発光層周縁部の少なくとも一部に、絶縁体からなる短絡防止部材が該部材の一部が発光層から突出した状態で設置され、さらに、前記短絡防止部材が設置されていない又は該部材の一部が発光層から突出した状態で設置されていない発光層周縁部上の第1電極及び/又は第2電極が切断され、電気的に非接続状態である非導通部が形成された発光シートも、耐電圧性が高く、駆動時にショート発生が無かった(実施例6及び7参照)。
また、ロール・ツー・ロール方式で製造され、発光層の流れ方向の二辺の発光層周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材が、その一部が発光層から突出した状態で設置され、さらに、第1電極及び/又は第2電極が幅方向に切断され、電気的に非接続状態である非導通部が形成された発光シートも、耐電圧性が高く、駆動時にショート発生が無かった(実施例8参照)。
【0067】
一方、発光層周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材が全く設置されていない発光シートでは、耐電圧性が低く、且つ駆動時にショート発生があった(比較例1参照)。
また、発光層周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材が、該部材の一部が発光層から突出した状態で設置されていない発光シート(比較例2参照)、及び発光シートの平面に対して垂直方向から見て、短絡防止部材が設置されていない発光層周縁部上の第1電極及び第2電極を切断していない発光シート(比較例3参照)でも、耐電圧性が低く、且つ駆動時にショート発生があった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の発光シートは、例えば商業ビルの窓や自動車等へ設置する広告媒体、装飾用媒体、又は防犯用シート等のバックライト用等の、耐候性、耐熱性及び長期安定性等が要求される分野に有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 第1電極基材
2、2’ 短絡防止部材
3 第2電極基材
4 発光層
5、5’ 短絡防止部材突出部
6 第1電極基材
7 第2電極基材
8、8’ 短絡防止部材
9 発光層
10、10’ 短絡防止部材突出部
11、11’ レーザー切断部
12、12’ 非導通部
13 第1電極基材
14 第2電極基材
15、15’ 短絡防止部材
16 発光層
17、17’ 短絡防止部材突出部
18、18’ レーザー切断部
19、19’ 非導通部
20 第1電極基材
21 第2電極基材
22 発光層
23 発光層の側面部位(発光層周縁部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極及び第2電極を有し、且つそれらの電極間に発光層が挟持された発光シートであって、
該発光層の周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材が、該部材の一部が発光層から突出した状態で設置された発光シート。
【請求項2】
第1電極及び第2電極を有し、且つそれらの電極間に発光層が挟持された発光シートであって、
該発光層の周縁部の少なくとも一部に、絶縁体からなる短絡防止部材が該部材の一部が発光層から突出した状態で設置され、
さらに、前記短絡防止部材が設置されていない又は該部材の一部が発光層から突出した状態で設置されていない発光層の周縁部上の第1電極及び/又は第2電極が切断され、発光シートに電圧を印加する回路と電気的に非接続状態である非導通部が形成された発光シート。
【請求項3】
第1電極及び/又は第2電極の切断がレーザーによるものである、請求項2に記載の発光シート。
【請求項4】
前記短絡防止部材が、第1電極と第2電極との沿面距離の最小値が2mm以上となるように発光層から突出している、請求項1〜3のいずれかに記載の発光シート。
【請求項5】
前記電極の切断により、電気的に接続状態にある第1電極の導通部と第2電極の導通部との沿面距離の最小値が2mm以上となっている、請求項2〜4のいずれかに記載の発光シート。
【請求項6】
前記短絡防止部材が、絶縁性を有する粘着シートである、請求項1〜5のいずれかに記載の発光シート。
【請求項7】
第1電極又は第2電極と発光層との間に誘電体層を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の発光シート。
【請求項8】
第1電極及び第2電極を有し、且つそれらの電極間に発光層が挟持された発光シートの製造方法であって、
ロール・ツー・ロール方式で製造され、発光層の流れ方向の二辺の発光層の周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材を、その一部が発光層から突出した状態で設置し、
さらに、第1電極及び/又は第2電極を幅方向に切断し、発光シートに電圧を印加する回路と電気的に非接続状態である非導通部を形成することによる、発光シートの製造方法。
【請求項9】
第1電極及び第2電極を有し、且つそれらの電極間に発光層が挟持された発光シートの製造方法であって、
ロール・ツー・ロール方式で製造され、発光層の流れ方向の一辺の発光層の周縁部に、絶縁体からなる短絡防止部材をその一部が発光層から突出した状態で設置し、もう一辺の発光層の周縁部の上又は下に位置する電極を切断して、発光シートに電圧を印加する回路と電気的に非接続状態である非導通部を形成し、
さらに、第1電極及び/又は第2電極を幅方向に切断し、発光シートに電圧を印加する回路と電気的に非接続状態である非導通部を形成することによる、発光シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−44263(P2011−44263A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190356(P2009−190356)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】