説明

発光ダイオードの外部効率の向上

本開示は発光ダイオードの外部効率を向上させることに関し、また特に回折格子(280、283.286)を利用して有機発光ダイオード(200)からの光の外部結合を強化することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、その内容全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれている2007年12月17日に出願された米国特許出願第11/958,172号の利益を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本開示は、発光ダイオードの外部効率を向上させることに関し、また特に回折格子を利用して有機発光ダイオードからの光の外部結合(outcoupling)を強化することに関する。
【背景技術】
【0003】
典型的には有機発光ダイオード(OLED)は、発光層がしばしば幾つかの有機化合物の薄膜を備える1つのタイプの発光ダイオード(LED)である。発光エレクトロルミネセンス(EL)層は、異なる色の光を放射できる画素(ピクセル)のマトリックスを作成するために簡単な「印刷」方法を使用することによって極めて適した有機化合物を例えば平坦なキャリア上で行と列とに堆積することを可能にする高分子物質を含み得る。このようなシステムは、テレビのスクリーン、コンピュータ表示装置、携帯型システムスクリーン、広告および情報、指示アプリケーションなどにおいて使用され得る。OLEDはまた、一般的な空間照明用の光源においても使用され得る。OLEDは典型的には、点光源としての使用のために通常設計される有機固体ベースLEDにおけるよりも面積当たり少ない光を放射する。
【0004】
従来のLCD表示装置より優れたOLED表示装置の利点の1つは、典型的にはOLEDが機能するためにバックライトを必要としないことである。これは、OLEDがしばしば遥かに少ないパワーを引き出し、またバッテリーから電力供給されるとき、同じ充電でより長時間動作できることを意味する。またOLEDベースの表示デバイスはしばしば液晶表示装置およびプラズマ表示装置より効率的に製造され得ることも知られている。
【0005】
標準化の前にはOLED技術は、有機エレクトロルミネセンス(OEL)とも呼ばれていた。
【0006】
図1に示されているように有機LED100は、典型的には基板110、アノード120およびカソード140に加えて有機層(単数または複数)130を含む。多数の有機副層が使用されるとき、これらの副層のうちの2つは典型的には発光層および導電層と呼ばれる。これらの副層の両方が、しばしば有機分子またはポリマーから構成される。これらの選択された化合物は典型的には有機半導体とラベル付けされ、絶縁体の導電性レベルと導電体の導電性レベルとの間の範囲にある、ある一定の導電性レベルがこれらの化合物によって示される。
【0007】
OLEDはしばしば、電子燐光と呼ばれるプロセスを介して、LEDと類似の方法で光を放射する。アノードがカソードに関して正の電圧を有するようにOLEDにわたって電圧が印加されると、デバイスの中を電流が流れ始める。通常の電流の方向はアノードからカソードへの方向であるから、電子はカソードからアノードへ流れる。したがってカソードは電子を発光層に与え、アノードは導電層から電子を引き出す(本質的に、これは正孔を導電層に与えるアノードと同じである)。
【0008】
したがって短時間後に、典型的には発光層は負に帯電した電子を多く持つことになるである一方で、導電層は正に帯電した正孔の高い濃度を有する。異なる電荷に関する自然の親和性によって、これら2つの電荷は互いに引き付けられる。無機半導体とは対照的に有機半導体では、しばしば正孔の移動度が電子の移動度より大きいことは本明細書で留意されるべきである。したがってこれら2つの電荷が互いに向かって移動するので、これらの再結合は発光層において発生する可能性が高い。この再結合によって電子のエネルギーレベルに付随的低下が起こり、この低下は可視領域に存在する周波数を有する放射線の放射によって特徴付けられる、すなわち光が生成される。これが、この層が発光層と呼ばれる背景である。
【0009】
ダイオードとして、このデバイスは典型的には、アノードがカソードに関して負電位に置かれると機能しない。これは、この状態においてアノードが自分自身の方に正孔を引き寄せ、カソードが電子を引き寄せるからである。したがって電子と正孔は互いから離れるように移動し、再結合しない。
【0010】
現在の有機発光ダイオード(OLED)の外部効率はしばしば低い。放射光の大部分は、しばしば基板および周囲の空気より高い屈折率を有する有機層とアノード層とにおける内面全反射によって捕捉(トラップ)される。図1に示されているように、これらの層にほぼ垂直に放射された光だけが容易に脱出できる(経路191および192)。垂直から離れて放射された光は、脱出する可能性が低い。放射の方向に依存して光は、基板・空気の界面(経路193)において、またはアノード・基板の界面(経路194)において、または表面プラズモンとしての有機・カソードの界面(経路195)において捕捉され得る。OLEDの放射光の約50%は表面プラズモンモードになると推定されている。脱出しない光は、最終的に構造体内で吸収される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】有機発光ダイオードの一実施形態を示す概略図である。
【図2】本開示による有機発光ダイオードの一実施形態を示す概略図である。
【図3】本開示による有機発光ダイオードの一実施形態を示す概略図である。
【図4】本開示による回折格子パターンの一実施形態を示す図である。
【図5】本開示による回折格子パターンの一実施形態を示す図である。
【図6】本開示による外部結合と格子周期との間の関係を示すグラフである。
【図7】本開示による装置およびシステムの一実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記の詳細な説明では幾つかの実施形態の十分な理解を与えるために多くの詳細が説明される。しかしながら他の実施形態がこれらの詳細なしに実施され得ることは、当業者には理解される。他の事例では周知の方法、手順、構成要素および回路は、主張されている対象を不明確にしないために、詳細には説明されていない。
【0013】
下記の詳細な説明では、本説明の一部を形成する添付図面であって本発明が実施され得る実施形態の例示として示される添付図面が参照される。主張されている対象の範囲から逸脱せずに他の実施形態が利用可能であり、構造的あるいは論理的変更が行われ得ることは理解されるべきである。したがって下記の詳細な説明は限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0014】
対象の実施形態を理解する際に役立ち得る方法で種々の動作が順次に多数の個別動作として説明され得る。しかしながら説明の順序はこれらの動作が順序依存性であることを意味すると解釈されるべきではない。
【0015】
説明のために「A/B」という形の語句はAまたはBを意味する。説明のために「Aおよび/またはB」という形の語句は「(A)または(B)または(AおよびB)」を意味する。説明のために「A、BおよびCの少なくとも1つ」という形の語句は「(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)、または(A、BおよびC)」を意味する。説明のために「(A)B」という形の語句は「(B)または(AB)」であること、すなわち、Aは任意の要素であることを意味する。
【0016】
説明のために「下方に」、「上方に」、「の右に」などの語句は、相対的な用語であって、対象が何らかの絶対的方位において使用されることを必要としない。
【0017】
理解を容易にするためにこの説明は、大部分において表示技術に関連して提示される。しかしながら主張されている対象はこれに限定されず、また種々の照明の需要に、より多く関連する解決策を与えるために実施され得る。本明細書における処理および/またはディジタル「デバイス」および/または「器具」の参照は、特定の特徴要素、構造または特性、すなわちデバイスが命令および/またはプログラム可能性を実行または処理するための能力といった、また構成されるデバイスが指定された機能を実行するための能力といった、デバイス動作可能接続性が本明細書で使用されるディジタルデバイスの少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって一実施形態では、ディジタルデバイスは、汎用および/または専用コンピューティングデバイス、接続されるパソコン、ネットワークプリンタ、ネットワーク取付け記憶デバイス、インターネットプロトコル上の音声デバイス、防犯カメラ、ベビーカメラ、メディアアダプタ、エンタテインメント・パソコン、および/または少なくとも1つの実現形態にしたがって対象を実施するために適当に構成された他のネットワーク接続されるデバイス、を含み得る。しかしながらこれらは主張されている対象が限定されない処理デバイスのほんの僅かな例である。
【0018】
本説明は、語句「一実施形態において」、または各々が同じまたは異なる実施形態の1つ以上を指し得る「複数の実施形態において」を使用し得る。更に本発明の実施形態に関して使用される用語「備える」、「含む」、「有する」などは同義的なものである。
【0019】
図2は、本開示による有機発光ダイオード(OLED)200の一実施形態を示す概略図である。このOLEDは、例えば基板210、アノード層220、有機層230、およびカソード層240といった複数の層を含み得る。図2は、光が基板を通して放射される底面発光OLEDを示す。他の実施形態は、例えば上面発光OLED(光がカバーを通して放射される)、透明OLED(デバイスの上面、下面の双方を通して光を放射することが可能である)、折畳み可能OLED(基板が極めて柔軟な金属箔またはプラスチックを含み得る)、受動マトリックスOLED(カソード層、アノード層および有機層のストリップが使用され得る)、または能動マトリックスOLED(薄膜トランジスタアレイが典型的なOLED層の上にオーバーレイされ得る)などの、他の形のOLED(図示せず)を含み得る。一実施形態では、OLEDの有機層(単数または複数)は、厚さが100から500ナノメートル(nm)の間であり得る。
【0020】
一実施形態では、基板210は、ガラス、プラスチック、薄膜、セラミック、半導体、または箔を含み得る。ここでは、この基板は、実質的に光学的に透明であるが、他の実施形態では不透明な材料が使用されてもよい。一実施形態では、基板は、厚さが約1ミリメートル(mm)であって、約1.45の屈折率を含み得る。一実施形態では、基板は、LEDのその他の層の少なくとも1つを支持することが可能であり得る。
【0021】
一実施形態では、アノード210は、デバイス内を電流が流れるときに電子を除去できる(すなわち電子「正孔」を付加できる)。図2に示されている底面発光OLEDの場合には、アノードは実質的に透明であり得る。幾つかの実施形態では、透明なアノード材料は、インジウム・錫酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、および/または酸化錫を含み得るが、例えばアルミニウムまたはインジウム・ドープド亜鉛酸化物、マグネシウム・インジウム酸化物、およびニッケル・タングステン酸化物といった他の金属酸化物も使用され得る。これらの酸化物に加えて、窒化ガリウムといった金属窒化物、およびセレン化亜鉛といった金属セレン化物、および硫化亜鉛といった金属硫化物も種々の実施形態においてアノードとして使用され得る。他の実施形態ではアノードの透過特性は重要でない場合があり、例えば透明な、不透明な、あるいは反射性の材料といったいかなる導電性材料も使用され得る。これらの実施形態のための例示的導電体は、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、および白金を含み得るが、これらに限定されない。一実施形態では、アノード層は、厚さが約200ナノメートルであって、2という屈折率を持ち得る。
【0022】
一実施形態では、有機層220は、導電層および発光層といった副層(サブレイヤー)を含み得るが、幾つかの実施形態では第3または第4の有機層を含み得る。この理由から有機層は、時には有機スタックと呼ばれることもある。これらの有機層はしばしば、有機分子またはポリマーから作られる。一実施形態では、有機層は、厚さが約100〜500ナノメートルであって、約1.72の屈折率を持ち得る。
【0023】
一実施形態では、導電層は、アノードから「正孔」を輸送する有機プラスチック分子から作られ得る。OLEDで使用される1つの導電性ポリマーはポリアニリンであるが、これは単なる1つの非限定的実施形態である。種々の実施形態で使用され得る可能な材料の幾つかの例示として、芳香族第三アミン、多環式芳香族化合物、およびポリマー正孔輸送材料が挙げられる。
【0024】
一実施形態では、発光層はカソードから電子を輸送する有機プラスチック分子(導電層とは異なる有機プラスチック分子)から作られることが可能であり、電子・正孔対の再結合の結果として電子燐光が作り出される。発光層の幾つかの実施形態で使用される1つのポリマーはポリフルオレンであるが、これは単に1つの非限定的実施形態である。
【0025】
一実施形態では、発光層は単一の材料から構成され得る。他の実施形態ではこのような発光層は、発光が主としてドーパントから来る、そしていかなる色にもなり得るゲスト化合物(単数または複数)をドープされたホスト材料からなり得る。複数の色を生成するために種々のドーパントが組み合わされ得る。一実施形態では、この技法は、白色OLEDを製造するために使用され得る。一実施形態では、ドーパントは、高度に蛍光性の染料から選択され得る。他の実施形態ではドーパントは燐光性化合物を含み得る。種々の実施形態でホスト材料として使用され得る可能な材料の幾つかの例示として、トリス(8キノリノーラト)アルミニウム(III)(Alq)、8ヒドロキシキノリノール(オキシン)の金属複合体、および類似の誘導体、アントラセン誘導体、ジスチルアリレン(distyrylarylene)誘導体、ベンザゾール誘導体、またはカルバゾール誘導体が挙げられる。
【0026】
種々の実施形態において導電層および発光層は、単一層を含み得る。これらの実施形態の幾つかの変形例では、発光ドーパントは、正孔輸送材料に加えられ得る。
【0027】
他の実施形態では有機層230はまた、更なる有機層といった副層を含み得る。一実施形態では、正孔注入層が導電層の下に、または導電層の一部として加えられ得る。正孔注入層は一実施形態では、後続する有機層の薄膜形成特性を改善するために、また導電層への正孔の注入を容易にするために、役立ち得る。もう1つの実施形態では、発光層の上に電子輸送層が含まれ得る。電子輸送層は一実施形態では、電子を注入し輸送するために役立ち得る。
【0028】
一実施形態では、カソード240は、電流がデバイス内を流れるときに電子を提供し得る(すなわち電子「正孔」を除去し得る)。図2に示された底面発光OLEDの場合には、カソードは実質的に不透明であってもよい。しかしながら他の実施形態では、透明なカソードを利用することが望ましい場合もある。幾つかの実施形態ではカソード材料は、アルミニウム(Al)層によって裏打ちされたフッ化リチウム(LiF)層、マグネシウム/銀(Mg:Ag)、金属塩、または他の透明なカソードを含み得る。
【0029】
図1によって示されたように、有機層によって放射された光の大部分はLEDを離れない。この損失光を回復するための技法は、好ましくない方向に放射する光をより好ましい方向に散乱させることである。このような好ましい方向は、光がLED構造体を脱出することを可能にする。脱出しようとしない光(例えば経路193、194および195)を光が脱出することを可能にする方向(経路191および192)に散乱させることは、回折格子の使用を含み得る。
【0030】
図2を参照すると一実施形態では、基板210上に回折格子280が形成され得る。一実施形態では、この回折格子は、レリーフ格子を備え得る。この格子は、基板・アノード境界上に形成され得る。光は回折格子で反射されるか、あるいは回折格子を透過するので、光は外部結合される可能性が高くなり、それによってLED内に捕捉されて最終的に吸収されるのではなく、LEDから放射される可能性が高くなる。
【0031】
一実施形態では、基板の回折格子は、LEDのその他の層に転写され得る。基板に1つの層が加えられると、前の回折格子は新しい回折格子が最も新しい最上層の上に作成されるようにすることができる。例えばアノード・有機層境界上の回折格子(アノードの回折格子283)は、基板の回折格子280から導き出され得る。引き続いて一実施形態では、有機・カソード境界上に、回折格子(発光層の回折格子286)が形成され得る。この回折格子はまた、アノードの格子を介して基板回折格子から導き出され得る。また一実施形態では、有機・カソード境界の結合強度が、カソードの誘電率と有機層の誘電率との間の大きな差に起因して、その他の格子パターンと比較して10倍高くてもよいことにも留意されたい。幾つかの実施形態ではこれらの層の1つだけが格子を含み、その他の層は格子を含まなくてもよい。
【0032】
一実施形態では、回折格子は、図4に示されているパターンのような1次元の溝を有するパターン410を含み得る。三角形の頂点にあるエミッタに関しては、影付き三角形の方向に放射された光子だけが外部結合するために正しい方向に散乱できる。更に、または代替として、格子410はアレイ状に分配配置された一連の要素を備えることができ、このアレイではこの一連の要素は形状的に矩形、六角形、卵形および/または類似のものであり得る。一実施形態では、矩形の溝、より一般的には四辺形特性の溝を含む二重格子420が使用され得る。このような四辺形格子は、4個の影付き三角形において放射された光子を外部結合できる。更に、または代替として二重格子420は、アレイ状に分散配置された一連の要素を備えることができ、このアレイではこの一連の要素は形状的に正方形、六角形、球形および/または類似のものであり得る。もう1つの実施形態では三重格子430が使用され得る。この格子は六角形のパターンまたは特性を含むことができ、この図示の実施形態では120度の角度で傾斜した3列の線の格子パターンが使用され得る。もう一度、この六角形格子は、6個の影付き三角形において放射された光子を外部結合できる。三重格子パターンを使用すると、ほとんどいかなる方向に放射された光でもLEDから外部結合され得ることが見られ得る。更に、または代替として三重格子430は、一連の要素が形状的に正方形、六角形、球形および/または同様なものであり得るアレイ状に分散配置された一連の要素を備え得る。図5は、幾つかの実施形態において非対称の回折格子パターンが使用され得ることを示している。
【0033】
図6は、一実施形態における回折格子溝の周期の選択を示す。3つの波長が考えられている。プロット610は、470nm波長の外部結合の一実施形態を示す。プロット620は、560nm波長の外部結合の一実施形態を示す。プロット630は、660nm波長の外部結合の一実施形態を示す。これらはそれぞれ、Alq放射スペクトルによって放射された光の短波長、中波長、および長波長である。他の有機層が他の外部結合パターンを生成し得ることは理解される。
【0034】
一実施形態では、回折格子溝の周期は、実質的に0.4ミクロンであるように選択され得る。図6によって示されているように、この周期は、Alqに関する最も多量の放射光を外部結合する。もう1つの実施形態では放射エージェントおよび導波路ミクロンのスペクトルに対応する異なる周期が使用され得る。周期が回折格子、LEDまたは全表示装置を通して一致しない可能性があることも理解される。各層の回折格子が異なる周期を含み得ることも理解される。
【0035】
更なる考慮は、放射された光子が吸収される前に散乱させられることである。これは、格子との光の結合強度を指示し得る。アルミニウムカソードが使用される一実施形態では、光子は20波長以内で吸収され得る。したがって一実施形態では、光と格子とは、発光層・カソード境界に回折格子を配置することによって強く結合され得る。
【0036】
また一実施形態では、回折格子は、光子が吸収される前に格子と相互作用することを可能にするために十分にサイズ決めされた格子周期をもって作成され得る。一実施形態では、基板の回折格子は、10から20ポラリトン波長の間の格子周期を含む。
【0037】
一実施形態では、回折格子システムは、回折格子システムを持たないLEDと比較して3倍だけLEDから外部に放射される光の量を増加させることができる。もう1つの実施形態では、回折格子システムは、LEDの効率を典型的な15%から45%または50%まで向上させることができる。
【0038】
図3は、本開示による有機発光ダイオードの一実施形態を示す概略図である。要素300、310、320、330、340および380は、前に説明された図2の要素200、210、220、230、240および280に類似している。この実施形態には、図2で図示されて上記で説明された回折格子に類似した回折格子380が存在する。更に、基板・アノード境界における回折格子のリッジ(ridge)には金属ストリップ370が付加され得る。一実施形態では、これらのストリップは、更なる損失を誘発しないように極めて薄い可能性がある。ある特定の実施形態ではこれらのストリップは、厚さが約5ナノメートルであり得る。一実施形態では、これらのストリップは銀(Ag)を備え得る。しかしながらこれらは、回折格子のために使用され得る金属ストリップの単に少数の非限定的例である。
【0039】
一実施形態では、波長モードおよび表面プラズモンは、回折格子の平面において等方性的な方法で放射され得る。一実施形態では、図2の回折格子は、表面プラズモンモードおよび横方向磁気(TM)導波路モードにでは、金属表面の近く(すなわちカソード・有機境界)で強度が高いので、これら表面プラズモンモードおよび横方向磁気(TM)導波路モードを出力できる。一実施形態では、図3の金属ストリップ370を付加することにより、アノード・基板境界において導波路の(TE)モードの外部結合を強化し得る。不都合なことに導波路の横方向電気(TE)モードは金属表面の近くで低い強度を有する。したがって回折格子はこれらのモードを効率的には出力しない。
【0040】
一実施形態では、前述のような有機LEDを製造するための技法は、下記の措置を含み得る。基板が取得され得る。一実施形態では、この基板は、基板内にエッチングされた回折格子を持ち得る。基板上に回折格子を生成するためにエッチングが使用されない他の実施形態も存在し得ることは理解される。例えば一実施形態では、回折格子は、基板上に成長させられ得るか、基板に加えられ得る。
【0041】
一実施形態では、図4の図430によって図示された三重格子の特徴であるポリスチレン球の六角形アレイが作成され得る。例えばこのようなポリスチレン球の六角形アレイはポリスチレン球の単一層または単分子層を備え得る。その後、このアレイは、基板をエッチングするために使用され得る。もう1つの実施形態では格子を形成するために、例えば写真のように現像されたプレートを塩に浸漬することといった重イオン注入が使用され得る。このことから、表面レリーフエッチングが行われ得る。
【0042】
その後、LEDの他の層が基板の上面に付加され、または加えられ得る。種々の実施形態ではこれらの層が別々に形成されて、個別に、または予め形成されたグループとして、基板に付加され得る。一実施形態では、これらの層は、図2に示されたLEDの一実施形態を形成するために付加され得る。もう1つの実施形態ではこれらの層は、図3に示されたLEDの一実施形態を形成するために付加され得る。これらの層は、基板の回折格子の他の層への転写を可能にするような方法で付加され得る。すなわちこの各層は、実質的に基板の回折格子から導き出される新しい回折格子を作成するように付加され得る。
【0043】
一実施形態では、これらの層の一部は、真空蒸着または真空熱蒸着(VTE)として知られる、あるいはこれらに実質的に類似した技法を使用して付加され得る。真空蒸着の一実施形態では、真空チャンバ内で有機分子は穏やかに加熱され(気化され)、冷却された基板上に薄膜として凝結することが可能にされる。
【0044】
もう1つの実施形態ではこれらの層の一部は、有機気相蒸着(OVPD)として知られる、あるいはこれに実質的に類似した技法を使用して付加され得る。有機気相蒸着の一実施形態では、低圧の外熱式反応チャンバ(hot-walled reactor chamber)において、キャリアガスが冷却された基板上に気化された有機分子を輸送し、そこで輸送された有機分子は薄膜に凝結する。キャリアガスを使用することにより、OLEDを製造する効率を向上させることができ、製造コストが削減される。
【0045】
なおもう1つの実施形態ではこれらの層の一部は、スプラッタリングまたはインクジェット印刷として知られる、あるいはこれらに類似した技法を使用して付加され得る。一実施形態では、スプラッタリングは、ちょうどインクが印刷時に紙に噴霧されるように基板にこれらの層を噴霧することを含み得る。インクジェット技術は、OLED製造のコストを大幅に削減でき、またOLEDが80インチ・テレビスクリーンまたは電子掲示板のような大型表示用の極めて大きなフィルムに印刷されることを可能にし得る。
【0046】
本開示の一実施形態を製作または製造するために、これらの技法の1つ以上が使用され得ることが考えられる。しかしながら他の実施形態では他の技法が使用されてもよい。これらの実施形態の製造が自動化され得ることも考えられる。
【0047】
図7は、本開示による装置710およびシステム700の一実施形態を示すブロック図である。一実施形態では、本システムは、表示装置701と処理デバイス702とを含み得る。一実施形態では、この表示装置および処理デバイスは、例えばメディアデバイス、携帯電話、または他の小型デバイスのように一体化され得る。
【0048】
一実施形態では、表示装置701は、図2および3によって示され、前に詳細に論じられたように少なくとも1つのLEDを含み得る。他の実施形態ではこれらのLEDは、底面発光LEDではない他の形式のLEDを含み得るが、前述のLEDの特徴の一部を含み得る。
【0049】
一実施形態では、処理デバイス702は、オペレーティングシステム720、ビデオインタフェース750、プロセッサ730、およびメモリ740を含み得る。一実施形態では、オペレーティングシステムはシステムの使用を容易にし、またユーザインタフェースを生成することができる。プロセッサ730は、一実施形態では、オペレーティングシステムを実行または駆動することができる。メモリ740は、一実施形態では、オペレーティングシステムを記憶することができる。ビデオインタフェース750は、一実施形態では、ユーザインタフェースの表示を容易にし、また表示装置701と対話することができる。一実施形態では、ビデオインタフェースは、表示装置内に含まれ得る。
【0050】
本明細書で説明された技法は、いかなる特定のハードウエアまたはソフトウエア構成にも限定されない。これらの技法は、いかなるコンピューティング環境または処理環境においても適用可能性を見出し得る。これらの技法は、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、またはこれらの組合せにおいて実現され得る。これらの技法は、移動型または静止型コンピュータ、パーソナル・ディジタル・アシスタント、および同様のデバイスであって、各々がプロセッサ、このプロセッサによって読み取り可能またはアクセス可能な記憶媒体(揮発性および不揮発性メモリならびに/または記憶要素を含む)、少なくとも1つの入力デバイスおよび1つ以上の出力デバイスを含むデバイスなどのプログラム可能な機械上で実行するプログラムにおいて実現され得る。プログラムコードは、説明された機能を実行して出力情報を生成するために入力デバイスを使用して入力されたデータに適用される。出力情報は、1つ以上の出力デバイスに提供され得る。
【0051】
各プログラムは、処理システムと通信するためにハイレベル手順またはオブジェクト指向のプログラミング言語で実現され得る。しかしながらプログラムは、必要に応じてアセンブリ言語または機械言語で実現され得る。いずれの場合にも言語はコンパイルまたは解釈され得る。
【0052】
各々のこのようなプログラムは、記憶媒体または記憶デバイスに記憶され得る、例えばコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)、ディジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、ハードディスク、ファームウエア、不揮発性メモリ、磁気ディスク、または記憶媒体または記憶デバイスが本明細書で説明された手順を実行するためにコンピュータによって読み取られるときに、機械を構成して動作させるための汎用または専用のプログラム可能な機械によって読み取り可能である、類似の媒体またはデバイスに記憶され得る。システムはまた、このように構成された記憶媒体が特定の方法で機械を動作させるプログラムで構成された機械可読またはアクセス可能記憶媒体として実現されるとも考えられ得る。他の実施形態も下記の特許請求の範囲内にある。
【0053】
主張されている対象の幾つかの特徴が本明細書で図示され説明されてきたが、当業者には今や多くの修正、代替、変更および同等物が思い浮かぶ。したがって添付の特許請求の範囲が、主張されている対象の真の精神内に入るこのようなすべての修正と変更とをカバーするように意図されていることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放射できる発光層を含む発光ダイオード(LED)と、
前記発光層によって放射された光の散乱を少なくともある程度方向付けできる回折格子を有する基板と、を備える装置。
【請求項2】
前記装置は少なくとも部分的に前記基板の回折格子から導き出された回折格子を有するアノードを更に備え、前記アノードの回折格子は前記発光層によって放射された光の散乱を少なくともある程度方向付けでき、
前記アノードは実質的に前記発光層と前記基板との間に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記発光ダイオードは有機発光ダイオードを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記基板の回折格子は透過性回折格子を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記アノードはインジウム・錫酸化物(ITO)を含む,請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記発光層はトリス・8ヒドロキシキノリノール・アルミニウム(Alq)の層を含む,請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記装置はカソードを更に備え、前記発光層は実質的に前記カソードとアノードとの間に配置され、前記カソードは回折格子を含まない、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記基板はガラスを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記回折格子は少なくとも部分的に前記基板上にエッチングされる、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記回折格子は複数の格子を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記回折格子は実質的に四辺形の特性を有する二重格子パターンを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記回折格子は実質的に六角形の特性を有する三重格子パターンを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記基板の回折格子の周期は前記放射された光の外部結合を容易にすることができるようにサイズ決めされる、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記基板の回折格子は0.3ミクロンと0.6ミクロンとの間の格子周期を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記基板の回折格子は実質的に0.4ミクロンの格子周期を含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
基板の回折格子の格子周期の平均寸法は10ポラリトン波長より大きな格子周期を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
基板の回折格子の格子周期の前記平均寸法は10から20ポラリトン波長の間の格子周期を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記発光ダイオードにおける光の平均外部結合は前記回折格子がない場合より少なくとも3倍大きい、請求項13に記載の装置。
【請求項19】
前記発光ダイオードの外部効率は少なくとも45%である、請求項13に記載の装置。
【請求項20】
システムの使用を容易にし、またユーザインタフェースを生成できるオペレーティングシステムと、
前記オペレーティングシステムを駆動できるプロセッサと、
前記ユーザインタフェースを表示できると共に、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を備える表示装置と
を備え、
前記少なくとも1つの発光ダイオード(LED)は、
光を放射できる発光層と、
前記発光層によって放射された光の散乱を少なくともある程度方向付けできる第1の回折格子構成要素を有する基板と
を備える、システム。
【請求項21】
前記表示装置は、
少なくとも部分的に前記第1の回折格子構成要素から導き出される第2の回折格子構成要素を有するアノードを更に備え、
前記第2の回折格子構成要素は前記発光層によって放射された光の散乱を少なくともある程度方向付けでき、
前記アノードは実質的に前記発光層と前記基板との間に配置される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
発光層によって放射された光の散乱を少なくともある程度方向付けできる第1の回折格子を基板上に形成することと、
前記基板に複数の層を付加することと、を備える、発光ダイオード(LED)を製作する方法であって、
前記複数の層の1つは光を放射できる発光層を含み、
前記複数の層の1つは前記基板の第1の回折格子から少なくとも部分的に導き出された第2の回折格子を有するアノードを含み、
前記アノードの第2の回折格子は前記発光層によって放射された光の散乱を少なくともある程度方向付けできる、発光ダイオード(LED)を製作する方法。
【請求項23】
前記第1の回折格子は少なくとも部分的に前記基板上にエッチングされる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の回折格子をエッチングすることは、
前記所望の回折格子パターンの特徴であるポリスチレン球のモノレイヤーアレイを作成することと、
前記基板の前記エッチングを容易にするために前記ポリスチレン球のモノレイヤーアレイを利用することと、を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリスチレン球のモノレイヤーアレイはポリスチレン球の六角形アレイを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の回折格子は複数の格子を備える、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の回折格子は実質的に四辺形の特性を有する二重格子パターンを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の回折格子は実質的に六角形の特性を有する三重格子パターンを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
光を放射するための発光手段と、
前記発光手段によって放射された光の散乱を方向付けるための第1の回折手段と、
前記発光手段によって放射された光の散乱を方向付けるための第2の回折手段と、を備える発光ダイオード(LED)であって、
前記第2の回折手段は前記第1の回折手段から少なくとも部分的に導き出され、
前記第2の回折手段は実質的に前記発光手段と前記第1の回折手段との間に配置される、発光ダイオード(LED)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−507196(P2011−507196A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538201(P2010−538201)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/086658
【国際公開番号】WO2009/079396
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(309023036)トランスパシフィック・インフィニティ,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (6)
【Fターム(参考)】