説明

発光ダイオードアレイ

【課題】 発光部の形状、発光部の間隔、端部の発光部とアレイの端部の間隔などの変化を抑制すること。
【解決手段】 発光層を形成するように基板上に積層された半導体層と、前記半導体層をエッチングすることにより分離形成され一方向に配列された複数個の島状の発光部と、前記発光部の互いに対面する第1の側面を除く第2の側面を通って発光部の上面に接続された電極と、を備えた発光ダイオードアレイにおいて、前記第2の側面を順メサ面とし、前記第1の側面を順メサと逆メサの中間のメサ面としたことを特徴とする。発光部の前記第1の側面をドライエッチングによって形成し、前記第2の側面をウエットエッチングによって形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向に配列した島状の発光部を備える発光ダイオードアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
LEDプリントヘッドなどの光書き込み用の光源として用いられる発光ダイオードアレイは、例えば特許文献1、2などに開示されているように、基板表面に形成した半導体層をウエットエッチングすることによって複数の発光部を形成している。この複数の発光部は、一定の間隔を持って一方向に配列されている。そして、ウエットエッチングを利用した選択的なエッチングを利用することによって、発光部の互いに対面する側面は、逆メサ面とされ、電極を通る側面は順メサ面とされている。
【特許文献1】特公平3−63830号公報
【特許文献2】特公平5−25188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発光部の互いに対面する面を逆メサ面とすることにより、発光部の狭ピッチ化を図ることができる。しかしながら、ウエットエッチングは、そのエッチング時間のばらつきによって発光部の大きさも変化するという問題があった。同様に、エッチング時間のばらつきによって発光部の間隔や、端部の発光部とアレイの端部の間隔も変化するという問題があった。また、逆メサ部分は結晶の角度が鋭角になるので、発光部の角に欠けが生じやすくなるという課題もあった。
【0004】
そこで本発明は、発光部の形状、発光部の間隔、端部の発光部とアレイの端部の間隔などの変化を抑制することを課題の1つとする。また、発光部の欠けの発生を抑制することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項1に記載のように、発光層を形成するように基板上に積層された半導体層と、前記半導体層をエッチングすることにより分離形成され一方向に配列された複数個の島状の発光部と、前記発光部の互いに対面する第1の側面を除く第2の側面を通って発光部の上面に接続された電極と、を備えた発光ダイオードアレイにおいて、前記第2の側面を順メサ面とし、前記第1の側面を順メサと逆メサの中間のメサ面としたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に記載のように、発光部の前記第1の側面をドライエッチングによって形成し、前記第2の側面をウエットエッチングによって形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、品質の良い発光ダイオードアレイを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る発光ダイオードアレイの実施形態につき、図面に沿って具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る発光ダイオードアレイ1の一部(一方の端部)を示す上面図、図2は、図1のS1−S2に沿った断面図、図3は、図1の発光部の拡大図、図4は、図3のS1−S3に沿った断面図、図5は、図3のS4−S5に沿った断面図である。
【0009】
発光ダイオードアレイ1は、基板部2の上面部に、例えば、メサエッチングにより互いに分離独立するように形成した島状の複数個の発光部3を一方向に配列して備えている。
【0010】
基板部2は、基板4の上にN型半導体層5、発光層6、P型半導体層7、絶縁膜8をこの順に積層している。基板部2は、その表側と裏側に、それぞれ電極用の金属膜9,10を形成している。基板4は、半導体あるいは絶縁性のものを用いることができる。
【0011】
図1において、発光部3の配列方向(紙面の左右方向)であるX方向は、その方向に沿って基板部2をウエットエッチングした際に順メサのエッチング溝が表れる順メサ方向である。X方向に直交する方向(紙面の上下方向)であるY方向は、その方向に沿って基板をウエットエッチングした際に逆メサのエッチング溝が表れる逆メサ方向である。順メサ方向及び逆メサ方向は、発光ダイオードアレイ1が形成される基板の表面に平行な方向である。
【0012】
島状の発光部3は、X方向と平行な側面をウエットエッチングすることによって、図4に示すように順メサ面11,12としている。また、島状の発光部3は、Y方向と平行な側面をドライエッチングすることによって、図5に示すように、順メサ面と逆メサ面の中間の形態をとる垂直な面13,14としている。
【0013】
発光部3の上面に位置する金属膜9は、P型半導体層に接続されてP型電極15を構成する。絶縁膜8には、金属膜9とP型半導体層7を連絡する開口8Aが形成されている。発光部3の上面に位置する金属膜9は、その一部が光取り出し窓16を形成するために開口されている。この例は、1つの発光部に2個の窓16を形成しているが、1つの発光部3に1つの窓としても良い。
【0014】
発光部3とはなれた基板部2の上面に位置する金属膜9は、ワイヤボンド用のパッド電極17を構成する。P型電極15とパッド電極17は、金属膜で構成された配線用のパターン18で連絡されている。配線用のパターン18は、発光部3のP型電極15から順メサ面12を通ってパッド電極17へ引き出されている。
【0015】
発光部3の順メサ面12を配線用のパターン18が通るので、パターンの角度の急激な変化が少なくなり、パターン断線の発生が抑制される。発光部3のX方向と平行な側面(順メサ面)は、パターンの引き出し方向とその反対側の両方の側面11,12が金属膜9で覆われている。発光部のY方向と平行な側面(垂直面)13,14は、金属膜で覆うことが望ましいが、膜付けが困難な場合は、膜なしとしても良い。
【0016】
隣接する発光部3の互いに対面する側面13,14を、ドライエッチングによって形成しているので、ウエットエッチングに比べて精度よく加工することができる。特に、発光部3の一対の側面を順メサ面と逆メサ面の中間の面(ほぼ垂直な面)としているので、発光部3の上面部の角度を逆メサ面(鋭角)の場合に比べて、大きくすることができ、角部分における結晶の欠けの発生を抑制して結晶品質を高めることができる。
【0017】
上記の発光ダイオードアレイ1は例えば以下の工程によって形成することができる。
【0018】
まず、最初の工程として、N型GaAsから成る基板4上に、N型AlGaAsから成るNクラッド層5、AlGaAs活性層(発光層)6、P型AlGaAsから成るPクラッド層7を順次エピタキシャル成長させる。ここで、N型GaAsから成る基板4上に、N型GaAsから成るNバッファ層、分布ブラッグ反射層(Distributed Bragg Reflector;DBR)を順に形成しても良い。また、Pクラッド層7の上に、P型GaAsから成るPコンタクト層を形成しても良い。
【0019】
エピタキシャル成長方法としては、例えば、VPE(気相エピタキシャル)法、MOVDE(有機金属気相エピタキシャル)法、MOCVD(有機金属化学気相デポジション)法、MBE(分子線エピタキシャル)法、MOMBE(有機金属分子線エピタキシャル)法、CBE(化学ビームエピタキシャル)法等を用いることができる。
【0020】
尚、Nクラッド層5、AlGaAs活性層6、Pクラッド層7におけるAl(アルミニウム)の混晶比は、所望する発光波長に応じて適宜決定される。また、上記内容は一例であり、P型基板を用いることや、AlGaAs以外の材料を用いることも可能である。いずれにせよ、PN接合を形成するべくPN層(上記例では、Nクラッド層5とPクラッド層7)を基板に積層すればよい。
【0021】
次に、メサエッチングにより、発光部3を形成する。この発光部3は、例えば、ウエットエッチング工程とドライエッチング工程により形成される。
【0022】
ウエットエッチングには、例えば、燐酸系エッチャントを用いる。また、エッチング条件は、メサエッチングでの異方性エッチングが顕著に現れるように調整する。このウエットエッチング工程を経て、発光部3が島状に分離される前の一列に繋がった外形が形成される。
【0023】
ドライエッチングには、例えば、ICPドライエッチング装置を用いる。このドライエッチング工程を経て、発光部が互いに分離された飛び飛びの発光部3の外形が形成される。
【0024】
次に、上記発光部3が形成された基板部2の表面全体に絶縁膜8を形成する。この絶縁膜8は、例えばSi膜で形成される。但し、絶縁層8として、SiO膜やAl膜などを用いても構わない。
【0025】
次に、コンタクトホール8Aの形成を行う。コンタクトホール8Aは、例えば、CFプラズマエッチングにより形成される。
【0026】
次に、リフトオフ法等を用いてP電極15、パッド電極17、配線パターン18を形成する。P電極15は、コンタクトホール8Aの上面にも形成され、このコンタクトホール8Aを介して電流が流れることになる。このP型電極15の材料としては、例えば、Ti・Au・Zn・Au(総厚1μm)等のAu合金が使用される。P電極15は、上述したように、発光部3の上面と順メサ面11,12をも覆っている。
【0027】
次に、N電極層10を形成する。N電極層10は、基板4の下面に形成され、材料としては、Au・Te・Sn・Au(総厚0.8μm)等のAu合金が使用される。
【0028】
最後に、ダイシング法あるいはスクライブ法を用いて基板部2をX方向とY方向に順次分離し、個々の発光ダイオードアレイ1に分割する。
【0029】
複数の発光ダイオードアレイ1をその発光部3が一列になるように配線パターン(不図示)上に一列に配置し、裏面電極10を銀ペーストなどの導電材料にて接続し配線パターンに接続する。パッド電極に駆動用IC(不図示)の出力をワイヤーボンド線(不図示)を用いて接続する。駆動用ICを介してパッド電極に一定の電位を加えると、発光部3が発光する。発光した光は、発光窓16を介してアレイ1の上面と垂直な方向に取り出される。
【0030】
上記実施形態は、発光ダイオードアレイ1が島状の複数個の発光部3を一方向に配列した例を示したが、発光部3の配列を1列以外にも、2列や3列などの複数列としてもよい。また、パッド電極17への配線パターン18を発光部3の列に対して一方向に引き出した形態としているが、発光部3の列に対して交互に千鳥状に引き出すことも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る発光ダイオードアレイは、モノリシック発光ダイオードアレイとして好適であり、LED(発光ダイオード)プリンタのプリンタヘッド等の光源として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る発光ダイオードアレイの要部上面図である。
【図2】図1のS1−S2に沿った断面図である。
【図3】図1の発光部の拡大図である。
【図4】図3のS1−S3に沿った断面図である。
【図5】図3のS4−S5に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 発光ダイオードアレイ
2 基板部
3 発光部
4 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を形成するように基板上に積層された半導体層と、前記半導体層をエッチングすることにより分離形成され一方向に配列された複数個の島状の発光部と、前記発光部の互いに対面する第1の側面を除く第2の側面を通って発光部の上面に接続された電極と、を備えた発光ダイオードアレイにおいて、前記第2の側面を順メサ面とし、前記第1の側面を順メサと逆メサの中間のメサ面としたことを特徴とする発光ダイオードアレイ。
【請求項2】
発光部の前記第1の側面をドライエッチングによって形成し、前記第2の側面をウエットエッチングによって形成したことを特徴とする請求項1記載の発光ダイオードアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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