説明

発光ダイオード信号灯

【課題】明るさを安定させることができる低コストの発光ダイオード信号灯を提供する。
【解決手段】発光ダイオードをそれぞれ備え、相互に直列に接続された対をなす複数の発光部と;定電流交流電源からの交流を直流に変換し平滑回路により平滑した出力を前記複数の発光部の直列接続の両端間に供給して点灯させる点灯回路と;オン信号をそれぞれ受けたときに、前記複数の発光部それぞれを短絡して遮断し消灯させるように前記複数の発光部毎に並列接続された点滅スイッチと;前記点滅スイッチに、オン信号を所定周期で出力する駆動信号SLaとこの駆動信号と同期しそのオンオフが逆転した他方の駆動信号SRaとをそれぞれ与えて前記複数の発光部を交互に点滅させる点滅スイッチ駆動手段と;少なくとも一方の駆動信号のオン信号の出力が他方の駆動信号のオン信号とともに所定期間休止させる休止時間αを経てから出力されるように設定する駆動信号調整手段と;を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光源としてLED(発光ダイオード)を用いた発光ダイオード信号灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発光ダイオード信号灯の一例としては、空港の滑走路やその誘導路の出入口に設置される滑走路警戒灯等の航空標識灯がある。
【0003】
このような従来のLED滑走路警戒灯では、電源として定電圧交流電源を用いたもの(例えば特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開2001−216803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の滑走路警戒灯では、既存の航空標識灯用定電流交流電源を用いずに定電圧交流電源を用いるので、新たに定電圧交流電源を設けなければならず、コストアップを招くという課題がある。
【0005】
また、定電圧交流電源を用いる場合は、複数のLEDを直列接続してなる発光ユニットをさらに対をなすように直列接続し、これらの各発光ユニットに流れる電流を自動電圧調整器により定電流に制御することにより、各発光ユニットの明るさの均一性を図る必要がある。
【0006】
一方、既存の定電流交流電源を用いた場合、電源交流を直流に変換して平滑回路により平滑した出力を、直列接続された一対の発光ユニットに給電する点灯回路を具備している。また、これら発光ユニットを交互に点滅させる複数の点滅スイッチとしてFET(電界効果形トランジスタ)を用いる場合には、発光ユニットに対して並列接続し、FETをオンさせることによって発光ユニットの両端間を短絡させて消灯する制御を行っている。ところで、この点滅スイッチのオンオフ切換動作のばらつきにより、これら点滅スイッチのオン又はオフ期間が一部重なり、一対の発光ユニットが共に消灯する無負荷状態に陥る虞がある。
【0007】
すなわち、図1(B)に示すように左右の点滅スイッチには、点灯中の発光ユニットを左右交互に周期的(例えば、1.2秒間毎)に消灯させて点滅させるためのパルス信号が点滅駆動信号SL,SRとしてそれぞれ与えられる。
【0008】
これら左右の点滅駆動信号SL,SRは、左右の発光部を交互に消灯させるために、そのオンオフが逆転している。
【0009】
しかし、これら点滅駆動信号を受けた左右の点滅スイッチの一方に、そのオンオフの切り換り動作に遅延が発生すると、そのオン期間が一部重なってしまい、発光ユニットを消灯させる遮断期間が重なり、左右の発光ユニットが共に消灯する無負荷状態が発生する虞がある。
【0010】
これら左右の発光ユニットが共に無負荷状態になると、左右の発光ユニット毎に接続された点滅スイッチがオン状態で直列接続されることとなり、平滑回路の平滑コンデンサに充填されていた電荷が点滅スイッチを介してアースへ放電されてしまう。
【0011】
このために、発光ユニットでは消灯の次の点灯瞬時の明るさの立ち上がりが平滑コンデンサの再充電時間の分だけ遅くなってしまう。すなわち、点滅の切り換り直後は左右の発光ユニットの明るさが暗く、その後、徐々に明るくなる等明るさが不安定であるという課題がある。
【0012】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、明るさを安定させることができる低コストの発光ダイオード信号灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発光ダイオード信号灯は、発光ダイオードをそれぞれ備え、相互に直列に接続された対をなす複数の発光部と;定電流交流電源からの交流を直流に変換し平滑回路により平滑した出力を前記複数の発光部の直列接続の両端間に供給して点灯させる点灯回路と;オン信号をそれぞれ受けたときに、前記複数の発光部それぞれを短絡して遮断し消灯させるように、前記複数の発光部毎に並列接続された点滅スイッチと;前記点滅スイッチに、オン信号を所定周期で出力する駆動信号とこの駆動信号と同期しそのオンオフが逆転した他方の駆動信号とをそれぞれ与えて前記複数の発光部を交互に点滅させる点滅スイッチ駆動手段と;少なくとも一方の駆動信号のオン信号の出力が他方の駆動信号のオン信号とともに所定期間休止させる休止時間を経てから出力されるように設定する駆動信号調整手段と;を具備していることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発光ダイオード信号灯は、前記複数の発光部に印加される電圧が所定値を超える過電圧であることを検出したときに、発光部への通電を遮断するように制御する電圧検出回路を具備し、前記休止時間は、この電圧検出回路の制御時間よりも短く設定されていることを特徴とする。
【0015】
なお、上記発明において、各発光部の発光ダイオードは単数でも複数でもよく、発光色もいずれでもよい。平滑回路は平滑コンデンサを具備している。また、左右一対等のように対をなす複数の発光部の交互点滅とは、左右等一対の発光部は共に所定周期で点灯と消灯を繰り返して点滅するが、一方の発光部が点灯しているときに、他方の発光部が消灯する状態をいう。
【0016】
複数の点滅スイッチは点滅駆動信号のオン信号に応じて、遮断動作を交互に所定周期で繰り返す。このために、例えば左右一対の発光部は所定周期で交互に点滅する。
【0017】
そして、これら左右の点滅駆動信号の一方には、点滅スイッチによる遮断動作を休止させる休止期間が設定されているので、左右の発光部の少なくとも一方は常に点灯する。
【0018】
したがって、左右の発光部が共に消灯する無負荷状態を回避することができる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、対をなす複数の発光部が共に消灯する無負荷状態が回避されるので、消灯後の次の点灯時の明るさの立ち上がりを早めることができ、その点灯を安定させることができる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、複数の点滅スイッチの遮断動作の休止期間中には、複数の発光部が共に点灯する。このために、これら発光部に印加される電圧が一方の印加電圧の例えば2倍となり、過電圧になる場合がある。
【0021】
この過電圧は、電圧検出回路により検出され、複数の発光部への各通電が遮断されて共に消灯されてしまうが、点滅スイッチの遮断動作の休止時間は、この電圧検出回路が過電圧を検出してから複数の発光部への通電が遮断されるまでの制御時間よりも短いので、この電圧検出回路により左右の発光部への通電が遮断されて消灯することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、これら複数の添付図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0023】
図1(A)は本発明の一実施形態に係る発光ダイオード信号灯の左右の点滅駆動信号を対比して示すタイミングチャート、図2はこの発光ダイオード信号灯の外観正面図、図3は同発光ダイオード信号灯の外観側面図、図4は同発光ダイオード信号灯の駆動回路のブロック図である。
【0024】
図2、図3に示すように発光ダイオード信号灯1は、例えば滑走路に航空機等を誘導する誘導路の出入口等所定位置の地面2に台座3を設置し、この台座3の上面中央部に、ポール4を立設し、このポール4の上端に、コ字状帯板状の支持枠5の底部中央部を固定している。
【0025】
支持枠5は、そのコ字状開口内に角筒状の灯体6の図中ほぼ下半部を収容した状態で、この灯体6の左右両側面に、左右一対のコ字状開口端部に設けた一対のヒンジピン7a,7bを取付け、灯体6を揺動可能に支持している。
【0026】
灯体6は、その正面板に、左右一対の例えば円形の照射窓8a,8bをそれぞれ配設し、これらの上側には円弧板状のフード9a,9bをそれぞれ設けることにより、左右の照射窓8a,8bに直射日光が当たって点滅のコントラストが低下するのを防止すると共に、雨水が直接照射窓8a,8bに当たるのを防止している。
【0027】
そして、灯体6は、これら左右一対の照射窓8a,8bの内側に、左右一対の発光部の一例である発光ユニット10a,10bをそれぞれ配設している。これら各発光ユニット10a,10bは複数個のLEDをそれぞれ電気的に直列に接続し、円形の照射窓8a,8bに対応させて基板上にほぼ円形に配列している。また、これら左右一対の発光ユニット10a,10bどうしは電気的に直列に接続されている。
【0028】
図4はこれら左右一対の発光ユニット10a,10bを駆動する駆動回路11の電気的構成を示すブロック図である。
【0029】
図4に示すように駆動回路11は、定電流交流電源12、その降圧トランス13、この降圧トランス13により降圧された交流を直流に変換する整流回路14、この整流回路14により変換された直流を平滑する図示しない平滑コンデンサを備えた平滑回路15、発光ユニット10a,10bの印加電圧を検出する電圧検出回路22を具備している。
【0030】
この平滑回路15の出力端側には、例えば左の発光ユニット10a、右の発光ユニット10b、点灯回路16、点灯電流検出回路17等をこの順に順次直列に接続している。これら左右の発光ユニット10a,10bには、左右一対の点滅スイッチ18a,18bをそれぞれ並列に接続している。
【0031】
これら一対の点滅スイッチ18a,18bの入力側には、出力信号を入力信号から電気的に絶縁する各絶縁スイッチ19a,19b、駆動信号調整手段の一例である点滅信号調整回路20を介して点滅スイッチ駆動手段の一例である点滅/常点切換スイッチ21の出力側を接続している。点滅/常点切換スイッチ21は、左右一対の発光ユニット10a,10bを常時点灯させる常点モードと、左右交互に点滅させる点滅モードとを選択させ、そのモードを切換える機能を有し、点滅モード選択時には、図1(A)で示すパルスの点滅駆動信号SLa,SRaを、点滅信号調整回路20、各絶縁スイッチ19a,19bを介して左右一対の点滅スイッチ18a,18bへ与え、左右の発光ユニット10a,10bを左右交互に点滅させる機能を有する。
【0032】
すなわち、図1(A)で示す左右一対の点滅駆動信号SLa,SRaはオンとオフが共に所定周期で繰り返す同期したパルス信号により構成され、左の点滅駆動信号SLaは左の点滅スイッチ10aに与えられ、右の点滅駆動信号SRaは、右の点滅スイッチ10bに与えられ、これら左右の点滅駆動信号SLa,SRaは共に同期しているが、そのオンオフ信号が逆転している。
【0033】
そして、点灯信号調整回路20は、左右一対の点滅駆動信号SLa,SRaの少なくとも一方、例えばSLaのオンパルスに、点滅スイッチ10aによる通電遮断動作を所定時間(期間)、例えば300μs停止させる、つまり休止させる休止期間αをそれぞれ設定している。
【0034】
左右一対の点滅スイッチ10a,10bは、これら左右一対の点滅駆動信号SLa,SRaを受けて、そのオンパルス時にオンパルス幅期間オンして導通(オン)し、オフパルス時にオフ期間オフして非導通(オフ)となる。
【0035】
一対の点滅スイッチ18a,18bが導通(オン)すると、点灯回路16からの直流電流がこの点滅スイッチ18a,18b側へ殆ど流れ、発光ユニット10a,10b側へ殆ど流れない遮断状態となるので、消灯される。したがって、この点滅スイッチ18a,18bのオン動作が発光ユニット10a,10bの遮断動作となる。
【0036】
これとは逆に、点滅スイッチ18a,18bが非導通(オフ)になると、点灯回路16からの直流電流は、点滅スイッチ18a,18b側へは殆ど流れず、その殆どが発光ユニット10a,10b側へ流れる。これにより、発光ユニット10a,10bが通電され、発光する。
【0037】
そして、一方の点滅駆動信号、例えばSLaには、そのオンパルスに休止期間αが設定されているので、そのオンパルス期間分だけ左の発光ユニット10aへの通電遮断動作を早く終了させてしまう。このために、左の発光ユニット10aは、その休止期間α分だけ早く点灯するので、右の点滅駆動信号SRaにより点灯を開始した右の発光ユニット10bと共に常に休止期間α分だけ点灯する。
【0038】
これにより、左右の発光ユニット10a,10bが同時に消灯する無負荷状態を回避できるので、その消灯の次の点灯瞬時の立ち上がりを早めることができ、その明るさを安定させることができる。
【0039】
また、左右の発光ユニット10a,10bが同時に点灯すると、これらに印加される電圧が例えば2倍になり、過電圧になる可能性がある。
【0040】
過電圧になると、その過電圧が電圧検出回路22により検出され、点灯回路16を介して左右の発光ユニット10a,10bへの通電が強制的に遮断され、消灯される。しかし、これら左右の発光ユニット10a,10bが同時に点灯する休止期間αは、この電圧検出回路22が過電圧を検出してから点灯回路16により左右の発光ユニット10a,10bへの通電を遮断するまでの制御時間よりも短く設定されているので、かかる過電圧による不具合を未然に防止することができる。
【0041】
さらに、発光ダイオード信号灯1の電源として定電流交流電源を使用するので、空港等の既存の定電流交流電源を使用することができ、コスト低減を図ることができる。
【0042】
また、定電流交流電源を使用すると共に、左右の発光ユニット10a,10bどうしを直列に接続し、これら各発光ユニット10a,10bの複数のLEDをそれぞれ直流に接続しているので、これらLEDの明るさを容易にほぼ均一にすることができる。
【0043】
また、左右の発光ユニット10a,10bに左右の点滅スイッチ18a,18bを並列に接続しているので、万一、左右の点滅スイッチ18a,18bが共に故障した場合には、少なくとも、これら左右の発光ユニット10a,10bの点灯を維持させることができるので、フェイルセーフを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(A)は本発明の一実施形態に係る発光ダイオード信号灯の左右の点滅駆動信号を対比して示すタイミングチャート、(B)は従来の左右点滅駆動信号のタイミングチャート。
【図2】本発明の一実施形態に係る発光ダイオード信号灯の外観正面図。
【図3】図2の側面図。
【図4】図2、図3で示す発光ダイオード信号灯の駆動回路のブロック図。
【符号の説明】
【0045】
1…発光ダイオード信号灯、8a,8b…左右の照射窓、10a,10b…左右一対の発光ユニット、11…駆動回路、12…定電流交流電源、15…平滑回路、16…点灯回路、18a,18b…左右一対の点滅スイッチ、20…点滅信号調整回路、21…点滅/常点切換スイッチ、22…電圧検出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードをそれぞれ備え、相互に直列に接続された対をなす複数の発光部と;
定電流交流電源からの交流を直流に変換し平滑回路により平滑した出力を前記複数の発光部の直列接続の両端間に供給して点灯させる点灯回路と;
オン信号をそれぞれ受けたときに、前記複数の発光部それぞれを短絡して遮断し消灯させるように、前記複数の発光部毎に並列接続された点滅スイッチと;
前記点滅スイッチに、オン信号を所定周期で出力する駆動信号とこの駆動信号と同期しそのオンオフが逆転した他方の駆動信号とをそれぞれ与えて前記複数の発光部を交互に点滅させる点滅スイッチ駆動手段と;
少なくとも一方の駆動信号のオン信号の出力が他方の駆動信号のオン信号とともに所定期間休止させる休止時間を経てから出力されるように設定する駆動信号調整手段と;
を具備していることを特徴とする発光ダイオード信号灯。
【請求項2】
前記複数の発光部に印加される電圧が所定値を超える過電圧であることを検出したときに、発光部への通電を遮断するように制御する電圧検出回路を具備し、
前記休止時間は、この電圧検出回路の制御時間よりも短く設定されていることを特徴とする請求項1記載の発光ダイオード信号灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−73645(P2010−73645A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242920(P2008−242920)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】