説明

発光型有機EL表示パネル

【課題】 電極、補助電極、有機EL層と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差に起因した不要な視認を防抑制ることができる、発光型の有機EL表示パネルを提供する。
【解決手段】 少なくとも透明な第1の支持体、第1の電極、有機EL層、第2の電極、第2の支持体を、この順に積層し、且つ、第1の電極と第2の電極との間に、発光領域を開口し、非発光領域を覆うように、区画された絶縁層を形成し、第1の支持体側を発光取り出し側(観察者側とも言う)とする、発光型有機EL表示パネルであって、前記第2の電極、補助電極、前記有機EL層の1以上と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差による視認を抑制するための、視認抑制層を配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、POP(Point Of Purchase advertising )などに使用される発光型の有機EL表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ装置の軽量大型化、精細化に伴い、各種タイプの表示パネルが開発されている中、個々の文字や図柄を高輝度で安定に示す表示パネルとして、POP等に、発光型の有機EL表示パネルが、固体素子であって、且つ、自己発光である、等のメリット面から、用いられるようになってきた。
【0003】
有機EL表示パネルに用いられる表示デバイスは、有機EL表示デバイスとも呼ばれ、蛍光材料として有機化合物を用いた有機EL層を用いる有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子とも言う)を発光素子とするものである。
有機EL素子は、対向する2つの電極から注入された正孔および電子が発光層内で結合し、そのエネルギーで発光層中の蛍光物質を励起し、蛍光物質に応じた色の光を発光する素子で、自己発光性であるため視認性が高く、また完全固体素子であるため耐衝撃性に優れている等の特徴があるが、特に、印加電圧10V弱という低電圧であっても高輝度な発光が実現するなど発光効率が高いこと、単純な素子構造で発光が可能であること、輝度が高く長寿命であること等の利点がある。
また、有機EL素子は、主に陽極と陰極との間に正孔輸送層、発光層及び電子注入層が形成された積層構造で、各層は、ナノメートル単位の膜厚で形成可能なので、素子の薄型化及び軽量化が容易であるという利点がある。
さらに、それらの各層は、高分子材料を溶解させた塗布液を塗布することにより製作できるので、紙への印刷法を応用した製法やインクジェット法を応用した製法を適用可能であること等の利点もある。
【0004】
該有機EL表示パネルに用いられる表示デバイスとしての有機EL表示デバイスは、通常、基材上に第1の電極、有機EL層、第2の電極を、この順に積層し、且つ、該第1の電極側の外側に透明な第1の支持体を配し、該第2の電極側の外側に第2の支持体を配し、第1の電極と第2の電極とにより所定の1以上のエリアを選択的に発光させるもので、該第1の支持体側を発光取り出し側(観察者側とも言う)としている。
例えば、図10に示すような構成の、第2電極25側を陰極とし、第1の支持体11側を発光取り出し側(観察者側とも言う)とする、ボトムエミッション型のエリア発光型有機EL表示パネルが挙げられる。
尚、EL層とは、エレクトロルミネッセンス層のことで、ここでは、電極間の発光に寄与するための1層以上の層構成を言い、有機発光体層を必須とし、有機発光体(有機蛍光発光体とも言う)を専ら含む有機発光体層からなる第1の形態、有機発光体層と、その陽極側の正孔輸送層と、その陰極側の電子輸送層とからなる第2の形態、正孔輸送層の性質を兼ね備えた有機発光体層と、その陰極側の電子輸送層とからなるが第3の形態、電子輸送層の性質を兼ね備えた有機発光体層と、その陽極側の正孔輸送層とからなる第4の形態が挙げられる。
例えば、エリア発光型有機EL表示パネルとしては、絶縁層をパターニングし、発光エリア全体を均一に発光するタイプや、アクティブマトリクスやパッシブマトリクスで有機ELを発光させ、複雑な回路を使用し濃淡階調を制御しているタイプのものもある。
発光エリア全体を均一に発光するタイプについては、特開2004−111158号公報(特許文献1)、特開2002−231446号公報(特許文献2)に記載がある。
【特許文献1】特開2004−111158号公報
【特許文献2】特開2002−231446号公報
【0005】
このようなエリア発光型有機EL表示パネルに用いられる有機EL表示デバイスにおいては、例えば、図10に示すような、第2電極25側を陰極とし、第1の支持体11側を発光取り出し側(観察者側とも言う)とする、ボトムエミッション型の場合、構成する第2電極(陰極)25および補助電極27は、反射率が高い金属材料であるために、その形成領域外とでは反射率に大きな差があるために視認しやすく、また、その色味が金属光沢色を帯びているため、これを形成していない周囲と比べて視認しやすく、更にまた、構成する有機EL層40においても、わずかに色を帯びているため、有機EL層40形成領域以外と比べて視認しやすいという問題があった。
このため、例えば、発光を選択させる選択単位のエリア(画素とも言う)を大きくしポスター媒体として有機EL表示デバイスを使用する場合、上記の課題があるためアイキャッチ効果として劣るものとなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、最近では、POP等に、単純な発光型の有機EL表示パネルが、固体自発光というメリット面から、用いられるようになってきたが、このような発光型有機EL表示パネルに用いられる有機EL表示デバイスにおいては、例えば、ボトムエミッション型の場合、構成する陰極、補助電極、有機EL層と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差に起因して、視認しやすいという問題があり、この対応が求められていた。
本発明はこれに対応するもので、構成する電極、補助電極、有機EL層と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差に起因した不要な視認を抑制することができる、発光型の有機EL表示パネルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発光型有機EL表示パネルは、少なくとも透明な第1の支持体、第1の電極、有機EL層、第2の電極、第2の支持体を、この順に積層し、且つ、第1の電極と第2の電極との間に、発光領域を開口し、非発光領域を覆うように、区画された絶縁層を形成し、第1の支持体側を発光取り出し側(観察者側とも言う)とする、発光型有機EL表示パネルであって、前記第2の電極、補助電極、前記有機EL層の1以上と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差による視認を抑制するための、視認抑制層を配設していることを特徴とするものである。
【0008】
そして、上記の発光型有機EL表示パネルであって、前記視認抑制層は、1 層以上の層からなる遮光層で、非発光領域と、有機EL層と第2の電極のいずれかが積層されていない領域とを遮蔽するように、第1の電極より発光取り出し側に配設されていることを特徴とするものである。
前記視認抑制層は、第1の支持体上に配設されていることを特徴とするものである。
あるいは、前記視認抑制層は、前記第1の支持体の外側に配した透明な第3の支持体の一方の面に配設され、且つ、視認抑制層を配設した第3の支持体を第1の支持体に貼り合わせていることを特徴とするものである。
また、上記いずれかの発光型有機EL表示パネルであって、前記遮光層の遮蔽率は、JIS K7136に規定される全光線透過率T(%)を用いて(100- T)で表され、80%以上であることを特徴とするものである。
尚、ここでは、全光線透過率T(%)の測定を濁度計(NDH2000 日本電色工業株式会社)にて行っている。
また、上記いずれかの発光型有機EL表示パネルであって、非発光時における前記第1の支持体を通した遮光層の開口部と遮光層との明度の差については、色相と彩度とを示すL*a*b色度図の値で、各色発光部において、明度L*の差が60以下であることを特徴とするものである。
尚、ここでは、L*a*b色度図の値は、分光光度計(GRETAG Spectrolino 株式会社きもと)により測定している。
また、上記いずれか1項に記載の発光型有機EL表示パネルであって、視認抑制層の外側に、発光部、非発光部全面を覆うようにして、円偏光板を貼り合わせていることを特徴とするものである。
また、上記いずれかの発光型有機EL表示パネルであって、前記視認抑制層には、少なくとも1以上からなる透明保護層が積層されていることを特徴とするものである。
尚、ここでは、外側とは、発光側とは反対側を意味し、内側とは発光側を意味する。
【0009】
あるいは、上記請求項1に記載の発光型有機EL表示パネルであって、前記視認抑制層を、第2の電極の外側領域(非電極部領域)に、第2の電極と同じ材料で、配設していることを特徴とするものである。
【0010】
また、上記いずれかの発光型有機EL表示パネルであって、前記第2の電極が透明性のものであることを特徴とするものである。
【0011】
また、上記いずれかの発光型有機EL表示パネルであって、前記第1の支持体、第2の支持体、第3の支持体は、可撓性のプラスチック基材であることを特徴とするものである。
【0012】
また、上記いずれかの発光型有機EL表示パネルであって、パッシブマトリックス型であることを特徴とするものである。
あるいは、上記いずれかの発光型有機EL表示パネルであって、アクティブマトリックス型であることを特徴とするものである。
【0013】
また、上記いずれかの発光型有機EL表示パネルであって、有機発光ポスターであることを特徴とするものである。
【0014】
また、上記いずれかの発光型有機EL表示パネルであって、カラーフィルタ層を備えていることを特徴とするものであり、前記カラーフィルタ層と前記透明電極との間に色変換蛍光体層を備えることを特徴とするものである。
【0015】
(作用)
本発明の発光型有機EL表示パネルは、このような構成にすることにより、構成する電極、補助電極、有機EL層と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差に起因した不要な視認を抑制することができる、発光型の有機EL表示パネルの提供を可能としている。
詳しくは、第2の電極、補助電極、前記有機EL層の1以上と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差による視認を抑制するための、視認抑制層を配設していることにより、これを達成している。
具体的には、記視認抑制層は、1 層以上の層からなる遮光層で、非発光領域と、有機EL層と第2の電極のいずれかが積層されていない領域とを遮蔽するように、第1の電極より発光取り出し側に配設されている請求項2の発明の形態、あるいは、前記視認抑制層を、第2電極の外側領域に、第2の電極と同じ材料で、配設している請求項9の発明の形態が挙げられる。
請求項2の発明の形態の場合、第2の電極、有機EL層、補助電極と、それらの周辺との視認を抑制することができ、請求項9の発明の形態の場合には、第2の電極、補助電極とこれらの周辺との視認を抑制することができる。
【0016】
請求項2の発明の形態としては、前記視認抑制層は、第1の支持体上に配設されている、請求項3の発明の形態、前記視認抑制層は、前記第1の支持体の外側に配した透明な第3の支持体の一方の面に配設され、且つ、視認抑制層を配設した第3の支持体を第1の支持体に貼り合わせている、請求項4の発明の形態が挙げられる。
請求項3の発明の形態は、第3の支持体を必要としない利点がある。
請求項4の発明の形態は、第3の支持体を必須とする。
請求項3の発明の形態については、更に、視認抑制層が、第1支持体の内側、第1の支持体上に配設されている形態と、視認抑制層が、第1の支持体の外側、第1の支持体上に配設されている形態が挙げられる。
請求項4の発明の形態については、更に、前記視認抑制層が、透明な第3の支持体の外側の面に配設されている形態と、透明な第3の支持体の内側の面に配設されている形態が挙げられる。
【0017】
特に、前記遮光層の遮蔽率は、JIS K7136に規定される全光線透過率T(%)を用いて(100- T)で表され、80%以上である、請求項5の発明の形態にすることにより、構成する電極、補助電極、有機EL層と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差に起因した不要な視認を有効に抑制することができるものとしている。
80%〜85%では、デバイスを50cm以内から見ると、わずかに視認できるが、50cmより遠くに離れて見ると視認を抑制することができる。
遮蔽率85%以上では、第2電極、有機EL、補助電極は完全に遮蔽され、充分に視認を抑制することができた。
80%未満の場合、50cmより遠くに離れて見ても、視認できてしまう。
【0018】
更に、非発光時における前記第1の支持体を通した遮光層の開口部と遮光層との明度の差としては、色相と彩度とを示すL*a*b色度図の値で、各色発光部において、明度L*の差が60以下である、請求項6の発明の形態にすることにより、視認の抑制効果を十分にしている。
明度L*の差が40以下の時、遮光層と遮光層の開口部の色差が小さいため、遮光層の色は目立たない。
明度L*の差が40より大で、50以下の時、デバイスを50cm以内から見ると、遮光層の色がわずかに目立ってしまう。
しかし50cmより遠くから見ると、遮光層の色は目立たない。
明度L*の差が50より大で、60以下の時、デバイスを100cm以内から見ると、遮光層の色がわずかに目立ってしまう。
しかし100cm以上から見ると、遮光層の色は目立たない。
明度L*の差が60より大の時、遮光層と遮光層の開口部の色差が大きいため、デバイスを100cmより遠くに離れて見ても、遮光層の色が目立ってしまう。
よってどの距離から見ても遮光層の色が目立ってしまう。
【0019】
また、視認抑制層の外側に、発光部、非発光部全面を覆うようにして、円偏光板を貼り合わせている、請求項6の発明の形態にすることにより、視認抑制層により覆われた領域以外の表示領域における不要な視認であるエッジ視認をぼかすのに有効である。
【0020】
前記視認抑制層には、少なくとも1以上からなる透明保護層が積層されている、請求項8の発明の形態にすることにより、視認抑制層を保護できるものとしている。
【0021】
また、前記第2の電極が透明性のものである、請求項10の発明の形態にすることにより、第2の電極の視認を確実に抑制できるものとしている。
【0022】
また、前記第1の支持体、第2の支持体、第3の支持体は、可撓性のプラスチック基材である、請求項11の発明の形態にすることにより、熱変化や外力に対応できるものとし、その用途を広くしている。
【0023】
また、パッシブマトリックス型である形態や、アクティブマトリックス型である形態が挙げられる。
【0024】
特に、有機発光ポスターである場合には、有効である。
【0025】
カラーフィルタ層を備えている形態が挙げられ、該カラーフィルタ層と前記透明電極との間に色変換蛍光体層を備えている形態が挙げられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記のように、構成する電極、補助電極、有機EL層と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差に起因した不要な視認を抑制することができる、発光型の有機EL表示パネルの提供を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第1の例の概略断面図で、図1(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第2の例の概略断面図で、図2(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第3の例の概略断面図で、図2(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第4の例の概略断面図で、図3(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第5の例の概略断面図で、図3(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第6の例の概略断面図で、図4(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第7の例の概略断面図で、図4(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第8の例の概略断面図で、図5(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第9の例の概略断面図で、図5(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第10の例の概略断面図で、図6(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第11の例の概略断面図で、図6(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第12の例の概略断面図で、図7(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第13の例の概略断面図で、図7(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第14の例の概略断面図で、図8(a)は、図1(a)に示す第1の例の発光型有機EL表示パネルの有機EL表示デバイス本体の積層構成を概略的に示した断面図で、図8(b)は絶縁層のパターニングを分かり易く示した発光部の拡大断面図で、図9(a)〜図9(d)は発光部の有機EL層の積層構成を概略的に示した断面図である。 図1〜図9中、11は第1の支持体、12は第2の支持体、20は第1の電極(ここでは、陽極)、25は第2の電極(ここでは、陰極)、27は補助電極、30は絶縁層、40は有機EL層、50は封止材、60は発光領域、65は第2電極領域、70、70Aは視認抑制層、72は透明保護層、75は偏光板(円偏光板とも言う)、80は有機EL表示デバイス本体(表示パネル本体とも言う)、81は発光部、82は可撓性基材(ここでは第2の支持体とも言う)、83はバリア層、84は第1電極(ここでは陽極)、85は有機EL層、85aは有機発光体層、86は第2電極(ここでは陰極)、87はバリア層、88は可撓性封止基材(ここでは第2の支持体とも言う)、89は絶縁層(絶縁層部とも言い、ここではフォトレジスト)、89Aは開口部、90は封止剤、91は正孔輸送層、92は有機発光体層、93は電子輸送層、94は有機発光体層兼正孔輸送層、95は電子輸送層兼有機発光体層である。
【0028】
はじめに、本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第1の例を、図1(a)に基づいて説明する。
第1の例の発光型有機EL表示パネルは、透明な第1の支持体11、第1の電極20、有機EL層40、第2の電極25、第2の支持体12を、この順に積層し、且つ、第1の電極20と第2の電極25との間に、発光時に発光を阻止できる厚さで、発光領域を開口し、非発光領域を覆うように、発光領域を決めるパターニングされた絶縁層30を積層し、第1の支持体11側を発光取り出し側(観察者側とも言う)とする、エリア発光型の有機EL表示パネルである。
そして、特に、第2の電極25、補助電極27、有機EL層40と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差による視認を抑制するための、遮光層からなる視認抑制層70を、発光取り出し側である透明な第1の支持体11の発光側とは反対側に配設している。 第1の例では、視認抑制層70は、1層以上の層からなる遮光層で、非発光領域と、有機EL層40と第2の電極25のいずれかが積層されていない領域とを遮蔽するように、第1の支持体11の発光側とは反対側、第1の支持体11上に配設されている。
このようにすることにより、構成する第2の電極25、補助電極27、有機EL層40と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差に起因した不要な視認を抑制することを可能としている。
遮光層70としては、1層以上の層からなり、例えば、クロム等の金属膜やその酸化物や酸化窒化物をスパッタリングや蒸着等により1層以上成膜した金属膜や着色インク膜が用いられる。
金属膜からなる遮光層の場合、成膜時に選択的に成膜してパターニングして、あるいは、成膜後パターニングして配設する。
また、着色インク膜の遮光層の場合、印刷法やフォトリソ法によりパターニングして配設する。
着色インクとしては、例えば、黒色の顔料あるいはアルミ等の粒子を分散させたインキを用いる。
JIS K7136に規定される全光線透過率T(%)を用いて(100- T)で表される、遮光層の遮蔽率は、80%以上、好ましくは85%以上であることが、視認の抑制効果の面で好ましい。
また、非発光時における前記第1の支持体11を通した遮光層の開口部と遮光層との明度の差としては、色相と彩度とを示すL*a*b色度図の値で、各色発光部において、明度L*の差が60以下、好ましくは50以下、さらに好ましくは40以下であることが、視認の抑制効果の面で好ましい。
尚、第1の例の発光型の有機EL表示パネルは、図10に示す従来のエリア発光型有機EL表示パネルにおいて、発光側とは反対側の、第1の支持体11上に遮光層からなる視認抑制層70を配設したものである。
【0029】
第1の例の発光型有機EL表示パネルの有機EL表示デバイス本体の積層構成を概略的に示した断面図は、図8(a)のようになる。
第1の支持体11、第2の支持体としては、ここでは、可撓性のプラスチック基材が用いているが、これに限定はされない。
可撓性のプラスチック基材である場合、熱変化や外力に対応できるものとし、その用途を広くしている。
また、絶縁層のパターニングを分かり易く示した発光部の拡大断面図は、図8(b)のようになる。
パターニングされた絶縁層30は、所定形状の発光領域を画定するもので、発光領域あるい発光領域以外の非発光領域が、例えば、文字、図形、記号又はそれらの結合からなる表示パターンを表す。
絶縁層89(図1(a)の30に相当)の開口部89Aが発光領域に相当し、それ以外の絶縁層30が覆う領域は非発光領域となる。
第1の例においては、第1電極11と有機EL層40との間に絶縁層30を配設しているが、有機EL層40と第2電極12との間に上記パターニングされた絶縁層30を配設している形態も挙げられる。
【0030】
次に、他の各部について、図8を参照にして説明する。
(可撓性基材82)
図8に示す可撓性基材82は、図1(a)に示す支持体11に相当するもので、ここでは、図1(a)に示す支持体11を可撓性基材82とも言う。
可撓性基材82(図1(a)に示す支持体11に相当)は、第1の例の発光型有機EL表示パネルにおいて、観察者側の表面に設けられるものである。
そのため、この可撓性基材82は、有機EL層40が発光することにより発光表示領域又は非発光領域として表示する文字、図形、記号又はこれらの結合等からなる表示パターン(以下、「文字等」という。)を観察者が容易に視認することができる程度の透明性を有している。
可撓性基材82としては、フィルム状の樹脂製基材、または、厚さ100μm程度またはそれ以下の薄板ガラスに保護プラスチック板若しくは保護プラスチック層を設けたものが用いられる。
こうした基材は、可撓性に優れ、丸めたり曲げたりすることができるので、多様な対象物に装着又は設置できる発光表示パネル用の基材として好ましく用いられる。
【0031】
可撓性基材82を形成する樹脂材料としては、形成後の状態で発光表示パネル用基材として十分な可撓性を有するものであれば特に限定されないが、具体的には、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。
この他の樹脂材料であっても、発光表示パネル用として使用できる条件を満たす高分子材料であれば使用可能であり、また上記した樹脂の出発原料であるモノマーを2種類以上用いて共重合させて得られる共重合体であってもよい。
【0032】
これらの樹脂製基材のうち、耐溶媒性と耐熱性のよいもの、また、その用途にもよるが水蒸気や酸素等のガスバリアー性のよいものであればより好ましい。
ガスバリア性のよい樹脂材料を使用する場合には後述するバリア層83を省略することもできるが、本例の発光表示パネルにおいては、バリア層83を形成した可撓性基材2を用いることが好ましい。
可撓性基材は、厚さ50〜200μmのフィルム状基材となるように押出し成形等により製造される。
【0033】
また、厚さ100μm程度またはそれ以下の薄板ガラスに保護プラスチック板若しくは保護プラスチック層を設けたものは、可撓性に優れ、丸めたり曲げたりすることができるので、可撓性基材82として好ましく用いられる。
このとき、保護プラスチック板若しくは保護プラスチック層にガスバリアー性のよいものを用いることがより好ましい。
【0034】
可撓性基材82の厚さを上記範囲内とすることにより、発光表示パネルに好ましいフレキシビリティを付与できる。
得られた発光表示パネルを複雑な形状に設置する場合や携帯機器の表示装置として用いる場合においては、発光表示パネルの厚さを50μm乃至100μm〜400μmと薄くすることができるので、丸めたり曲げたりする広告用の発光表示パネル特有の薄さを実現できる。
【0035】
(バリア層83)
バリア層83は、有機EL層85の寿命や発光性能に悪影響を及ぼす湿気(水蒸気)や酸素を遮断するよう作用する層である。
バリア層83は、本発明の発光表示パネルにおいて必須の層ではないが、上述した可撓性基材82と第1電極84との間に好ましく形成される層である。
このバリア層83においても、上述の可撓性基材と同様に、透明性を有していることが必要である。
【0036】
バリア層83としては、無機酸化物の薄膜が好ましく適用される。
無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム又は酸化カリウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
中でも、酸化ケイ素、酸化アルミニウム又は酸化チタンが好ましく使用される。また、無機酸化物以外のものとしては、窒化ケイ素を挙げることができる。
本例のエリア発光型有機EL表示パネルに設けられるバリア層83の厚は、0.01〜0.5μmであることが好ましい。
【0037】
バリア層83は、上述した可撓性基材82(図1(a)の第1の支持体11に相当)と第1電極84(図1(a)の第1の電極20に相当)との間、例えば可撓性基材82上に反応性スパッタリング法や真空蒸着法等の物理蒸着法により形成される。
バリア層83の成膜装置としては、上述したフィルム状の可撓性基材82をロール・トゥ・ロールで搬送しながら物理蒸着できる蒸着装置が用いられる。
【0038】
(第1電極84、第2電極86)
図8に示す第1電極84、第2電極86は、それぞれ、図1(a)に示す第1の電極20、第2の電極25に相当するもので、ここでは、図1(a)に第1の電極20、第2の電極25を、ここでは、第1電極84、第2電極86とも言う。
第1電極84と第2電極86は、後述する有機EL層85に電場を与えるために設けられる必須の層である。
有機EL層85から見て可撓性基材82側に設けられる電極を第1電極84とし、可撓性封止基材88側に設けられる電極を第2電極86としている。
透明性については、ここでは、上述の可撓性基材82やバリア層83と同様、第1電極84が透明性を有しているが、これに限定されない。
第1電極84と第2電極86の両方が光透過性を有するように構成される形態も挙げられる。
第2電極86については、必ずしも透明である必要はないが、図8(a)の観察者側とは反対側の背面からも文字等を表示したい場合には、第2電極86も透明であることが好ましい。
【0039】
第1電極84としては、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、金又はポリアニリン等の薄膜電極材料を挙げることができる。 中でも、透明酸化物である酸化インジウム錫(ITO)と酸化インジウム亜鉛(IZO)が好ましく用いられる。
【0040】
第2電極86としては、上述した酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、金又はポリアニリン等からなる透明電極材料の他、マグネシウム合金(MgAg等)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMg等)又は金属カルシウム等を挙げることができる。
第2電極86にも透明性が要求される場合には、第1電極84と同じ透明電極が形成される。
【0041】
なお、第1電極84、第2電極86を、それぞれ、陽極、陰極としているが、これに限定されない。
第1電極84、第2電極86の何れが陽極であっても陰極であってもよい。
陽極とする場合には、正孔を注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料(例えば、酸化インジウム錫(ITO))で形成することが好ましく、陰極とする場合には、電子を注入し易いように仕事関数の小さい導電性材料(例えば、金属カルシウム)で形成することが好ましい。
【0042】
第1電極84と第2電極86の厚さは、何れも0.005〜0.5μmであることが好ましく、通常、スパッタリング法や真空蒸着法等により有機EL層85に隣接するように設けられる。
【0043】
第1電極84と第2電極86は、全面に形成されていても、有機EL層85が形成される位置に対応するようにパターン状に形成されていてもよい。
パターン状の電極は、全面に形成した後、感光性レジストを用いてエッチングすることにより形成される。
【0044】
(有機EL層85)
図8に示す有機EL層85は、図1(a)に示す有機EL層40に相当するもので、図1(a)に示す有機EL層40を有機EL層85とも言う。
有機EL層85は、発光表示パネルにおける必須の層である。
有機EL層85の構成としては、図9(a)〜図9(d)に示すような種々の層構成のものが挙げられる。
【0045】
図9(a)に示す有機EL層85は、有機発光体(有機蛍光発光体ともいう。)を専ら含む有機発光体層85aが有機EL層85として電極間に形成されている態様であり、図9(b)に示す有機EL層85は、有機発光体層92の陽極側に正孔輸送材料からなる正孔輸送層91が形成され、有機発光体層92の陰極側に電子輸送材料からなる電子輸送層93が形成された態様であり、図9(c)に示す有機EL層85は、正孔輸送層の性質を兼ね備えた有機発光体層94が形成され、その有機発光体層94の陰極側に電子輸送層93が形成された態様であり、図9(d)に示す有機EL層85は、電子輸送層の性質を兼ね備えた有機発光体層95が形成され、その有機発光体層95の陽極側に正孔輸送層91が形成されている態様である。
【0046】
また、図示しないが、有機EL層85は、正孔輸送材料と有機発光体の両方を少なくとも混合して形成された正孔輸送材料/有機発光体の混合層と、電子輸送層との積層構造であってもよく、また、有機発光体と電子輸送材料の両方を少なくとも混合して形成された有機発光体/電子輸送材料の混合層と、正孔輸送層との積層構造であってもよい。
さらに、有機EL層85は、正孔輸送材料、有機発光体及び電子輸送材料の三者が少なくとも混合された混合層からなっていてもよい。
【0047】
有機発光体を含有する有機発光体層92には、有機EL層として一般に使用されているアゾ系化合物が使用されるが、他の有機発光体を加えたアゾ系化合物を用いてもよい。
そうした他の有機発光体としては、ピレン、アントラセン、ナフタセン、フェナントレン、コロネン、クリセン、フルオレン、ペリレン、ペリノン、ジフェニルブタジエン、クマリン、スチリル、ピラジン、アミノキノリン、イミン、ジフェニルエチレン、メロシアニン、キナクリドン若しくはルブレン、又はこれらの誘導体等、有機発光体として通常使用されるものを挙げることができる。
有機発光体層は、こうした化合物を含有した有機発光体層形成用塗液を用いて形成される。
【0048】
正孔輸送材層91の料としては、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポリフィリン、オキサジアゾール、トリフェニルアミン、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、ピラゾリン、テトラヒドロイミダゾール、ヒドラゾン、スチルベン若しくはブタジエン、又はこれらの誘導体等、正孔輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。 また、正孔輸送層形成用組成物として市販されている、例えばポリ(3、4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(略称PEDOT/PSS、バイエル社製、商品名;Baytron P AI4083、水溶液として市販。)等も正孔輸送層の材料として使用することができる。
正孔輸送層91は、こうした化合物を含有した正孔輸送層形成用塗液を用いて形成される。
【0049】
電子輸送層93の材料としては、アントラキノジメタン、フルオレニリデンメタン、テトラシアノエチレン、フルオレノン、ジフェノキノンオキサジアゾール、アントロン、チオピランジオキシド、ジフェノキノン、ベンゾキノン、マロノニトリル、ニジトロベンゼン、ニトロアントラキノン、無水マレイン酸若しくはペリレンテトラカルボン酸、又はこれらの誘導体等、電子輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。
電子輸送層93は、こうした化合物を含有した電子輸送層形成用塗液を用いて形成される。
【0050】
有機EL層85の形成は、例えば図9に例示したような積層態様に応じて、上述した有機発光体層形成用塗液、正孔輸送層形成用塗液及び電子輸送層形成用塗液を隔壁により区分けされた所定の位置に注入して行われる。
注入手段としては、ディスペンサを用いて滴下するディスペンサ法、インクジェット法、スピンコーティング法、印刷法等を挙げることができる。
本例においては、EL層の形成がグラビア印刷、オフセット・グラビア印刷、インクジェット印刷等の印刷法により、ロール・ツー・ロールの製造条件下で行われることが好ましい。
特に、インクジェット印刷法で塗り分け印刷する方法は、基材に接触することなく塗布できるので基材にダメージを与えないこと、および、版が必要なく自由度が高いことから好ましく適用される。
これらの印刷法で有機EL層85を形成することにより、より生産性を向上させることができる。
注入された各塗液は、通常の手段に従い、真空熱処理等の加熱処理が施される。
上述した各積層態様からなる有機EL層85の厚さとしては、0.1〜2.5μmの範囲内であることが好ましい。
【0051】
なお、隔壁(図示しない。)は、発光表示パネルの平面上に発光色毎に区分けする領域を形成するものである。
隔壁で区分けされた領域には、有機EL層85の構成態様に応じて、正孔輸送層形成用塗液、有機発光体層形成用塗液、電子輸送層形成用塗液等が注入される。
隔壁材料としては、従来より隔壁材料として使用されている各種の材料、例えば、感光性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。
隔壁の形成手段としては、採用される隔壁材料に適した手段で形成でき、例えば、厚膜印刷法を用いたり、感光性レジストを用いたパターニングにより形成することができる。
【0052】
(封止剤90)
封止剤90は、上述した可撓性封止材のことであり、有機EL層85を含む発光部(有機EL素子とも言う)81と可撓性封止基材88との間に、空隙が存在しないようにすること及び封止性を向上させることを目的として、好ましく設けられるものである。
封止剤90としては、通常使用されている各種のものを使用できるが、エポキシ樹脂系の熱硬化型接着剤やアクリル樹脂系のUV硬化型接着剤を好ましく使用できる。
【0053】
なお、封止剤90は、その種類によってはバリア性を兼ね備えているので、後述する可塑性封止基材88とバリア層87を設けることなく、発光部81の一方の側(観察者側の反対)をこの封止剤のみで構成してもよい。
【0054】
封止剤90は、発光部(有機EL素子)81上の全面に直接塗布して形成しても、可撓性封止基材88上に塗布形成した後に、その封止剤面を発光部81上に貼り合わせるようにして形成してもよい。
封止剤は、空隙を埋めることができる範囲内でできるだけ薄く形成されることが好ましく、その厚さ等は適宜調整される。
硬化手段は熱硬化型であるかUV硬化型であるかにより異なり、それぞれの硬化条件に基づいて硬化させることができる。
【0055】
この封止剤90は、発光部(有機EL素子)81全面に設けることが好ましい。
ガラス基板へ施しているような従来の枠状塗布の場合には、封止基材を貼り合わせた後にパネルを曲げるなどの力を加えると封止基材の中央付近が素子と接触することがあるが、封止剤90を全面に設けることによりこのような不具合を抑制できる。
したがって、封止剤を全面に形成して得られた有機ELディスプレイは、その内部に空隙が存在していないので、丸めたり曲げたりした場合であっても不要な歪みや張力の発生を防ぐことができ、有機EL素子内部の異常接触等の問題を抑制することができる。
また、封止剤自体がバリア性を有しているので、封止剤を全面に設けて密閉度を高めることにより、透湿性・通気性を更に抑えることができ、素子の保護性を向上させることができる。
【0056】
(バリア層87)
このバリア層87は、本例の発光表示パネルにおいて必須の層ではないが、図8に示すように、可撓性封止基材88(図1(a)の第2の支持体12に相当)側に好ましく設けられる層である。
このバリア層87は、可撓性封止基材88と第2電極86との間、より具体的には、可撓性封止基材88と前述した封止剤90との間に形成され、上述したバリア層83と同じ作用効果を発揮する。
また、使用する材料についても特に限定されないが、上述のバリア層83と同じものを好ましく用いることができる。
【0057】
バリア層87は、後述する可撓性封止基材88上に、反応性スパッタリング法や真空蒸着法等の物理蒸着法により形成される。
バリア層87の成膜装置としては、後述するフィルム状の可撓性封止基材88をロール・トゥ・ロールで搬送しながら物理蒸着できる蒸着装置が用いられる。
【0058】
(可撓性封止基材88)
図8に示す可撓性封止基材88は、図1(a)に示す第2の支持体12に相当するもので、図1(a)に示す第2の支持体12を可撓性封止基材88とも言う。
可撓性封止基材88は、上述した可撓性封止材のことであり、本発明の発光表示パネルにおいて、図8に示すように、観察者側とは反対側の表面に設けられるものである。
本例の発光表示パネルが片面側のみから観察される場合には可撓性封止基材88に透明性は要求されないが、両面側から観察されるような場合には可撓性封止基材88が透明性を有していることが好ましい。
透明な可撓性封止基材88とすることにより、背面側からも文字等を観察者が容易に視認することができる。
【0059】
可撓性封止基材88としては、フィルム状の樹脂製基材が用いられる。
フィルム状の樹脂製基材は、可撓性に優れ、丸めたり曲げたりすることができるので、多様な対象物に装着又は設置できる発光表示パネル用の基材として好ましく用いられる。 その形成材料及び形成方法については、上述した可撓性基材82と同じなので、ここでは省略する。
なお、可撓性封止基材88の厚さについても、上述の可撓性基材82と同様、50〜200μmであることが好ましく、発光表示パネルに好ましいフレキシビリティを付与できる。
【0060】
(絶縁層89)
図8に示す絶縁層89は、図1(a)に示す絶縁層30に相当するもので、図1(a)に示す絶縁層30を絶縁層89とも言う。
絶縁層89は、上述した第1電極84と第2電極86との間に所定の絵柄に対応したけ以上の開口を有するパターンで形成される。
形成された絶縁層89は、所定形状の発光表示領域を画定する。
そして、その発光表示領域が、文字、図形、記号又はそれらの結合からなる表示パターンを構成したり、その発光可能領域以外の非発光領域が、文字、図形、記号又はこれらの結合からなる表示パターンを構成する。
【0061】
すなわち、両極間に設けられた絶縁層89は、両極間に印加された電圧を遮断するので、その両極間に有機EL素子が形成されている場合であっても、その領域での発光を妨げるように作用する。
したがって、絶縁層89がパターン形成された領域は、非発光領域となり、その結果、発光領域を画定することとなる。
一方、絶縁層89が形成されていない発光領域では、有機EL層の両側には両電極が接触しているので、両極から電圧が加えられた有機EL素子は発光し、訴求効果を発揮するよう作用する。
【0062】
絶縁層89により画定される発光領域又は非発光領域としては、文字、図形、記号又はこれらの結合からなる表示パターンであることが好ましい。
そうした表示パターンが表示されるように絶縁層を形成すれば、文字、図形、記号又はこれらの結合等からなる特定の表示パターンに優れた訴求効果を与えることができる。
【0063】
また、有機EL層形成用塗液、正孔輸送層形成用塗液及び電子輸送層形成用塗液をディスペンサを用いて滴下するディスペンサ法、インクジェット法、スピンコーティング法、印刷法等によりドットで隔壁された所定の位置に注入することで、多色発光することができる。
【0064】
こうした絶縁層89は、第1電極84側に積層させても第2電極86側に積層させても何れでもよく、特に限定されない。
使用されるレジスト材料は、通常透明であるので、パターン化しても視認性はほとんどなく、その絶縁層89自体が発光表示パネルの視認性に影響を与えることはない。
【0065】
以下に、絶縁層89による表示パターンの形成方法について詳しく説明する。
絶縁層89を形成するための材料としては、レジスト材料として使用されている感光性樹脂組成物が好ましく用いられる。
感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物でもネガ型感光性樹脂組成物でもよい。ポジ型感光性樹脂組成物としては、例えば、光分解可溶型のキノンジアジド系感光性樹脂等を主成分とするものが挙げられる。
また、ネガ型感光性樹脂組成物としては、例えば、光分解架橋型のアジド系感光性樹脂、光分解不溶型のジアゾ系感光性樹脂、光二量化型のシンナメート系感光性樹脂、光重合型の不飽和ポリエステル系感光性樹脂、光重合型のアクリレート樹脂又はカチオン重合系樹脂等を成分とするものが挙げられる。
これらの感光性樹脂組成物には、光重合開始剤や増感色素等を必要に応じて配合することもできる。
【0066】
絶縁層89は、上述した感光性樹脂組成物を何れかの電極の全面に塗布し、パターン露光、現像を行って、所定のパターンに形成される。
具体的には、先ず、上述した感光性樹脂組成物をスピンコート法により電極全面に形成し、その感光性樹脂組成物をマスクパターンで露光する。
露光は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク又はメタルハライドランプ等の光源が用いられ、0.1〜10,000mJ/cm2 、好ましくは10〜1,000mJ/cm2 の紫外線照射により行われる。
【0067】
ポジ型感光性樹脂組成物を用いた場合には、露光部が可溶化するので、現像することにより露光部が溶解除去される。
そして、露光されていない部分が、所定パターンの絶縁層として残る。
一方、ネガ型感光性樹脂組成物を用いた場合には、露光部が不溶化するので、現像することにより露光されない部分が溶解除去される。
そして、露光された部分が、所定パターンの絶縁層として残る。
絶縁層の厚さは、その絶縁層を構成する樹脂固有の絶縁抵抗に応じて任意に調整されるが、通常は、0.5〜3.0μmの範囲内である。
【0068】
以上、本例のエリア発光型有機EL表示パネルについて説明したが、本発明の目的及び効果を損なわない範囲であれば、上述した層以外の機能層が設けられている形態でも構わない。
そうした機能層としては、通常の有機EL素子又は発光表示パネルに用いられている低屈折率層、反射層、光吸収層等が挙げられる。
【0069】
そして、本発明の発光型有機EL表示パネルは、全体の厚さが400μm以下好ましくは200μm以下、50μm以上となるように、上述した基材の厚さや層の厚さが調整されていることが好ましい。
そうした範囲内の厚さを有する発光型有機EL表示パネルには、フレキシブルで、丸めたり曲げたりすることができ、電飾パネルとして視聴する場合には、複雑な形状に設置等することもできる。
発光型有機EL表示パネルの厚さが400μmを超えると、やや柔軟性に劣ることがある。
また、発光型有機EL表示パネルにの厚さが50μm未満では、バリア性の低下やプロセス間の熱や応力による影響を受けやすい。
【0070】
本例の発光型有機EL表示パネルにおいては、有機EL層85の一方の側にある少なくとも可撓性基材11及び第1電極20からなる積層構造と、他方の側にある少なくとも第2電極25及び可撓性封止材88からなる積層構造とが、同一又は近似する膨張係数を有することが好ましい。
こうすることにより、発光表示パネルの製造工程中に加熱等の外的要因が加わったとしても、それにより発光表示パネルが歪む等の悪影響が現れにくくなる。
ここで、有機EL層85の一方の側にある積層構造と他方の側にある積層構造を、積層数、材質及び厚さ等において同一又は実質的に同一にすることにより、製造工程中に加わる外的要因が加わったとしても、その両側に生じる歪みが均衡化されるので、得られた発光表示パネルが歪む等の悪影響を低減することができる。
【0071】
また、発光型有機EL表示パネルの製造工程において、各層を湿式法で形成することにより、連続製造が可能になるので、市場に受け入れられやすい価格設定で市場供給可能な発光表示パネルを提供できる。
例えば、連続蒸着法でバリア層83、87を形成した可撓性基材2と可撓性封止基材88を予め準備しておき、その可撓性基材82のバリア層83側に第1電極84をスパッタリング法で形成し、その第1電極84上に有機EL層85を印刷法で形成し、その有機EL層85上に第2電極86を真空蒸着法で形成し、その第2電極86上に封止剤90を塗布形成し、その封止剤90上にバリア層87を備えた可撓性封止基材88を設ける。
こうした湿式法を多くの工程で採用することにより、生産性に優れたロール・トゥ・ロール連続製造法で発光表示パネルを製造できる。
【0072】
次に、本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第2の例を、図1(b)に基づいて説明する。
第2の例の発光型有機EL表示パネルは、第1の例の発光型有機EL表示パネルにおいて、視認抑制層70が配設された第1の支持体11の発光側とは反対側に、発光部、非発光部全面を覆うように円偏光板75を貼り合わせているものである。
このようにすることにより、第1の例のように、構成する第1の電極20、補助電極27、有機EL層40と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差に起因した不要な視認を抑制し、更に、視認抑制層70により覆われた領域以外の表示領域における不要な視認であるエッジ視認をぼかすことを可能としている。
偏光板75としては、通常、市販の円偏光板が用いられる。
偏光板75以外の各部は、第1の例と同じで、説明を省く。
【0073】
次に、本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第3の例、第4の例を、図2に基づいて説明する。
図2(a)に示す本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第3の例、図2(b)に示す本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第4の例は、それぞれ、図1(a)に示す第1の例の発光型有機EL表示パネル、図1(b)に示す第2の例の発光型有機EL表示パネルにおいて、それぞれ、遮光層からなる視認抑制層70を、第1の支持体11の内側(発光部側)に配したものである。
各部は、第1の例、第2の例と同じで、説明を省く。
【0074】
次に、本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第5の例、第6の例を、図3に基づいて説明する。
図3(a)に示す本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第5の例、図3(b)に示す本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第6の例は、それぞれ、図1(a)に示す第1の例の発光型有機EL表示パネル、図1(b)に示す第2の例の発光型有機EL表示パネルにおいて、遮光層からなる視認抑制層70に、少なくとも1 以上からなる透明保護層72が積層されているものである。
透明保護層72を配していることにより、遮光層の保護を確実にしている。
透明保護層72としては、透明でエリア発光型の有機EL表示パネルとしての機能を損なわず、耐性があり、使い易いものであれば特に限定されないが、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。この他の樹脂材料であっても、有機発光デバイス用として使用できる高分子材料であれば、使用可能である。ディスペンサを用いて滴下するディスペンサ法、インクジェット法、スピンコーティング法、印刷法等により塗布形成を行った。
透明保護層72以外の各部は、第1の例、第2の例と同じで、説明を省く。
【0075】
次に、本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第7の例、第8の例を、図4に基づいて説明する。
図4(a)に示す本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第7の例、図4(b)に示す本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第8の例は、それぞれ、図3(a)に示す第5の例の発光型有機EL表示パネル、図3(b)に示す第6の例の発光型有機EL表示パネルにおいて、これらの、遮光層からなる視認抑制層70に代え、それぞれ、遮光層からなる視認抑制層70を、第1の支持体11の発光側とは反対側に配した透明な第3の支持体13の一方の面に配設し、且つ、第3の支持体13の視認抑制層70が配設されている該一方の面側と第1の支持体11とを、貼り合せているものである。
第7の例、第8の例の場合は、透明な第3の支持体13が、遮光層からなる視認抑制層70を保護している。
第3の支持体13としては、第1の支持体と同じものが適用できる。
他の各部については、先に述べた、第1の例〜第6の例と同様のものが用いられ、ここでは、説明を省く。
【0076】
次に、本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第9の例、第10の例を、図5に基づいて、また、第11の例、第12の例を、図6に基づいて、説明する。
図5(a)に示す本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第9の例、図5(b)に示す本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第10の例は、それぞれ、図3(a)に示す第5の例の発光型有機EL表示パネル、図3(b)に示す第6の例の発光型有機EL表示パネルにおいて、これらの、遮光層からなる視認抑制層70に代え、それぞれ、遮光層からなる視認抑制層70を、第1の支持体11の発光側とは反対側に配した透明な第3の支持体13の一方の面に配設し、且つ、第3の支持体13の視認抑制層70が配設されていない他方の面側と第1の支持体11とを、貼り合せているものである。 また、図6(a)に示す本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第11の例、図6(b)に示す本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第12の例は、それぞれ、図5(a)に示す第9の例の発光型有機EL表示パネル、図5(b)に示す第10の例の発光型有機EL表示パネルにおいて、遮光層からなる視認抑制層70に、少なくとも1 以上からなる透明保護層72が積層されているものである。
透明保護層72を配していることにより、遮光層の保護を確実にしている。
尚、各部については、先に述べた、第1の例〜第6の例と同様のものが用いられ、ここでは、説明を省く。
【0077】
次に、本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第13の例、第14の例を、図7に基づいて説明する。
図7(a)に示す本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第13の例は、図1(a)に示す第1の例の発光型有機EL表示パネルにおいて、その遮光層からなる視認抑制層70に代え、第2電極の外側領域に、第2の電極と同じ材料で視認抑制層70Aを配設しているものである。
このようにすることにより、第2の電極25、補助電極27とこれらの周辺との視認を抑制することができる。
また、図7(b)に示す本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第14の例は、図1(b)に示す第2の例の発光型有機EL表示パネルにおいて、その遮光層からなる視認抑制層70に代え、第2電極の外側領域に、第2の電極と同じ材料で視認抑制層70Aを配設しているものである。
このようにすることにより、第2の電極25、補助電極27とこれらの周辺との視認を抑制し、更に、不要な視認であるエッジ視認をぼかすことを可能としている。
尚、各部については、先に述べた、第1の例〜第6の例と同様のものが用いられ、ここでは、説明を省く。
【0078】
上記各形態は1例でこれに限定されない。
上記第1の例〜第14の例に他の機能層を付加しても、同様の作用効果が得られるものであれば、これらに限定されない。
また、本発明は、パッシブマトリックス型、アクティブマトリックス型の場合のPOP(Point Of Purchase advertising )などにも適用できる。
勿論、カラーフィルタ層を備えた発光型有機EL表示パネル、更に、カラーフィルタ層と前記透明電極との間に色変換蛍光体層を備えた発光型有機EL表示パネルにも適用できる。
【0079】
[実施例]
以下、本発明の発光表示パネルについて具体的な実施例を挙げて説明する。
(実施例1)
先ず、以下のようにして、図10に示す、従来のエリア発光型有機EL表示パネル(以下、これを有機EL表示デバイス本体と言う)を作製した後、これを用いて、その第1の支持体上に遮光層からなる視認抑制層70を配設して、図1(a)に示す第1の例のエリア発光型有機EL表示パネルを作製した。
遮光層からなる視認抑制層70の配設は、MIR9100 ミラーシルバー(帝国インキ製造株式会社製)をスクリーン印刷法にてパターニングして配設した。
遮光層の遮蔽率は99%としたが、第2電極、補助電極、有機EL層と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差に起因した不要な視認を抑制することができた。
遮光層の遮蔽率は、JIS K7136に規定される全光線透過率T(%)を用いて(100- T)で表されるもので、全光線透過率の測定は、支持体に遮光層を形成し、支持体側から光を照射し、濁度計(日本電色工業株式会社、NDH2000)にて測定を行った。
尚、各種の遮蔽率の場合について、その視認の抑制効果を評価したが、表1から、遮光層の遮へい率は、80%以上、好ましくは85%以上であることが、視認の抑制効果の面で好ましいことが分かる。
遮蔽率85%以上では、第2電極、有機EL、補助電極は完全に遮蔽され、充分に視認を抑制することができた。
80〜85%では、デバイスを50cm以内から見ると、わずかに視認できる。
80%以下の場合、50cm以上離れて見ても、視認できてしまう。
また、円偏光板を視認抑制層上に貼り合わせると遮蔽効果する。
また、非発光時における前記第1の支持体11を通した遮光層の開口部と遮光層との色度の差と視認抑制効果の関係を、各色の発光部について調べてみたが、表2(円偏光板なし 図4(a )で評価)から、非発光時における前記第1の支持体11を通した遮光層の開口部と遮光層との明度L*の差が60以下、好ましくは50以下、さらに好ましくは40以下であることが、視認抑制効果の面で好ましいことが分かる。
明度L*の差が40以下の時、遮光層と遮光層の開口部の色差が小さいため、遮光層の色は目立たない。(評価4)
明度L*の差が40より大で、50以下の時、デバイスを50cm以内から見ると、遮光層の色がわずかに目立ってしまうが、50cmより遠くから見ると、遮光層の色は目立たない。(評価3)
明度L*の差が50より大で、60以下の時、デバイスを100cm以内から見ると、遮光層の色がわずかに目立ってしまう。
しかし、100cm以上から見ると、遮光層の色は目立たない。(評価2)
明度L*の差が60以上の時、遮光層と遮光層の開口部の色差が大きいため、デバイスを100cm以上離れて見ても、遮光層の色が目立ってしまう。(評価1)
また、円偏向板を入れると、明度L*の差が小さくなり、遮光層と遮光層の見分けはつき難くなる。

【表1】

但し、50cm以内でも視認できない場合○、50cm以内で視認でき、50cm以上離れると視認でない場合を△、50cm以上離れても視認できる場合×としている。

【表2】

尚、視認性の評価については、評価4は、50cm以内でもほとんど色味の差の見分けがつかない場合で、評価3は、50cm以内でもやや色味の差の見分けがつき、50cmより遠くに離れると目立たない場合で、評価2は、100cm以内で色味の差がわずかに目だってしまい、100cmより遠くに離れると目立たない場合で、評価1は、100cmより遠くに離れても色味の差が目だってしまう場合である。
評価1〜評価4の4段階で4が最も良い。
また、ここでの明度の差は、色相と彩度とを示すL*a*b色度図の値で、R、G、Bの各色の発光部で測定した遮光層と遮光層の開口との明度L*の差である。
【0080】
<有機EL表示デバイス本体の作製>
図1(a)、図8に基づいて有機EL表示デバイス本体の作製を説明する。
ポリエーテルサルホン樹脂を押出し成形してなる厚さ100μmの可撓性基材82(図1(a)の第1の支持体11に相当)上に、連続蒸着装置でSiONからなる厚さ0.1μmのバリア層83を形成した。
その可撓性基材82のバリア層83側に、ITOからなる厚さ0.1μmの透明電極をイオンプレーティング法により膜厚200nmの酸化インジウムスズ(ITO)電極膜を形成し、このITO電極膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、ITO電極膜のエッチングを行って、幅2.2mmのストライプ形状の透明電極層を4mmピッチで10本形成した。
次いで、陽極上に厚さ0.5μmの銀を真空蒸着法により積層させて補助電極(図1(a)の27)を形成した。
その陽極、補助電極上に、フォトレジストからなる厚さ1μmの絶縁層をスピンコート法により形成した。
絶縁層89のパターニングは、洗浄処理と紫外線プラズマ洗浄を施し、その後、ネガ型感光性樹脂をスピンコート法で塗布し、フォトリソグラフィープロセスでパターニングして、各透明電極層上に2mm×2mmの発光エリア(開口部)が4mmピッチで存在するような絶縁層(厚み1μm)を形成した。
絶縁層のパターン(図1(a)の絶縁層30に相当)が形成された陽極上に、正孔輸送材料及び赤色有機発光材料からなる厚さ150nmの有機EL層85(図1(a)の有機EL層40に相当)を印刷法で形成した。
その有機EL層の上に電子注入層を形成した。
赤色発光層を形成した面側に、2.2mm幅のストライプ状の開口部を4mmピッチで備えたメタルマスクを、この開口部が上記のストライプ形状の透明電極層と直交し、かつ、上記の絶縁層の発光エリア(開口部)上に位置するように配置した。
次に、このマスクを介して真空蒸着法によりカルシウムを蒸着(蒸着速度=0.1nm/秒)して成膜して電子注入層(厚み10nm)を4mmピッチで10本形成した。
次に、電子注入層の形成に用いたメタルマスクをそのまま使用して、真空蒸着法によりアルミニウムを蒸着(蒸着速度=0.4nm/秒)して成膜した。
これにより、電子注入層上に、アルミニウムからなる幅2.2mmのストライプ形状の電極層(厚み300nm)を形成した。
その陰極上に、熱硬化型エポキシ樹脂からなる封止剤を厚さ150μm程度となるようにスクリーン印刷法で形成した。
その封止剤上に、バリア層を備えた可撓性封止基材88(図1(a)の第2の支持体12に相当)を設けた。
なお、バリア層87を備えた可撓性封止基材88は、予めポリエーテルサルホン樹脂を押出し成形してなる厚さ100μmの可撓性封止基材88上に、連続蒸着装置でSiONからなる厚さ0.1μmのバリア層87を形成したものを用いた。
この有機EL表示パネルについて、1000cd/m2 の時の発光効率と、定電流駆動時に発光輝度が半減するまでの時間を素子寿命として評価したところ、発光効率が1.0cd/A、素子寿命が10万時間であった。
尚、素子寿命は、初期の輝度が100cd/m2 となるように電流値を設定し、その電流で連続駆動させ、50cdに半減するまでの時間で評価した。
このようにして、発光型有機EL表示デバイス本体を作製した。
実施例1においては、構成する第2の電極25、補助電極27、有機EL層40と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差に起因した不要な視認を抑制することをでき、更に、絵柄層77が絵柄層より下層(第2の支持体側)の色に影響され目立たなくなるという問題や、遮光層からなる視認抑制層70の開口のエッジが目立つという問題を解決できた。
【0081】
(実施2)
実施例の発光型の有機EL表示パネルを用いて、視認抑制層70が配設された第1の支持体11の発光側とは反対側に、発光部、非発光部全面を覆うように偏光板75を貼り合わせ、図1(b)に示す第2の例の発光型の有機EL表示パネルを作製した。
偏光板75として、市販の円偏光板を用いた。
この場合、視認抑制層70により覆われた領域以外の表示領域における不要な視認であるエッジ視認をぼかすことができた。
【0082】
(実施例3)
実施例1における有機EL表示デバイス本体を用いて、遮光層からなる視認抑制層70を、前記第1の支持体11の発光側とは反対側に配した第3の支持体13の一方の面に配設し、該第3の支持体13の視認抑制層70が配設されている一方の面側と第1の支持体とを、貼り合せて、図4(a)に示す第7の発光型の有機EL表示パネルを作製したもので、第3の支持体としては、第1の支持体と同じ材質で厚さが0.1μmのものを用い、この一面に、実施例1と同様に遮蔽率99%の遮光層からなる視認抑制層を形成したものである。
第2電極、補助電極、有機EL層と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差に起因した不要な視認を抑制することができた。
【0083】
(実施例4)
実施例3の発光型の有機EL表示パネルを用いて、視認抑制層70が配設された第1の支持体11の発光側とは反対側に、発光部、非発光部全面を覆うように偏光板75を貼り合わせ、図4(b)に示す第8の例の発光型の有機EL表示パネルを作製した。
偏光板75として、市販の円偏光板を用いた。
この場合、視認抑制層70により覆われた領域以外の表示領域における不要な視認であるエッジ視認をぼかすことができた。
【0084】
(実施例5)
実施例1における有機EL表示デバイス本体の作製方法と同様にして、図7(a)に示す第13の例の発光型有機EL表示パネルを作製したが、実施例5においては、第2の電極を作製する際に、その外側領域に、第2の電極と同じく、同じ材料で一体的に形成した。
このようにすることにより、第2の電極25、補助電極27とこれらの周辺との視認を抑制することができた。
【0085】
(実施例6)
実施例5と同様にして作製した発光型の有機EL表示パネルを用いて、視認抑制層70が配設された第1の支持体11の発光側とは反対側に、発光部、非発光部全面を覆うように偏光板75を貼り合わせ、図7(b)に示す第14の例の発光型の有機EL表示パネルを作製した。
ここでも、偏光板75として、市販の円偏光板を用いた。
この場合、視認抑制層70により覆われた領域以外の表示領域における不要な視認であるエッジ視認をぼかすことができた。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第1の例の概略断面図で、図1(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第2の例の概略断面図である。
【図2】図2(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第3の例の概略断面図で、図2(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第4の例の概略断面図である。
【図3】図3(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第5の例の概略断面図で、図3(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第6の例の概略断面図である。
【図4】図4(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第7の例の概略断面図で、図4(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第8の例の概略断面図である。
【図5】図5(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第9の例の概略断面図で、図5(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第10の例の概略断面図である。
【図6】図6(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第11の例の概略断面図で、図6(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第12の例の概略断面図である。
【図7】図7(a)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第13の例の概略断面図で、図7(b)は本発明の発光型有機EL表示パネルの実施の形態の第14の例の概略断面図である。
【図8】図8(a)は、図1(a)に示す第1の例の発光型有機EL表示パネルの有機EL表示デバイス本体の積層構成を概略的に示した断面図で、図8(b)は絶縁層のパターニングを分かり易く示した発光部の拡大断面図である。
【図9】図9(a)〜図9(d)は発光部の有機EL層の積層構成を概略的に示した断面図である。
【図10】従来のエリア発光型有機EL表示パネルの1例の概略断面図である。
【符号の説明】
【0087】
11 第1の支持体
12 第2の支持体
20 第1の電極(ここでは、陽極)
25 第2の電極(ここでは、陰極)
27 補助電極
30 絶縁層
40 有機EL層
50 封止材
60 発光領域
65 第2電極領域
70、70A 視認抑制層
72 透明保護層
75 偏光板(円偏光板とも言う)
80 有機EL表示デバイス本体(表示パネル本体とも言う)
81 発光部
82 可撓性基材(ここでは第2の支持体とも言う)
83 バリア層
84 第1電極(ここでは陽極)
85 有機EL層
85a 有機発光体層
86 第2電極(ここでは陰極)
87 バリア層
88 可撓性封止基材(ここでは第2の支持体とも言う)
89 絶縁層(絶縁層部とも言い、ここではフォトレジスト)
89A 開口部
90 封止剤
91 正孔輸送層
92 有機発光体層
93 電子輸送層
94 有機発光体層兼正孔輸送層
95 電子輸送層兼有機発光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも透明な第1の支持体、第1の電極、有機EL層、第2の電極、第2の支持体を、この順に積層し、且つ、第1の電極と第2の電極との間に、発光領域を開口し、非発光領域を覆うように、区画された絶縁層を形成し、第1の支持体側を発光取り出し側(観察者側とも言う)とする、発光型有機EL表示パネルであって、前記第2の電極、補助電極、前記有機EL層の1以上と、それらの周囲との、反射率の差や色合いの差による視認を抑制するための、視認抑制層を配設していることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の発光型有機EL表示パネルであって、前記視認抑制層は、1 層以上の層からなる遮光層で、非発光領域と、有機EL層と第2の電極のいずれかが積層されていない領域とを遮蔽するように、第1の電極より発光取り出し側に配設されていることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項3】
請求項2に記載の発光型有機EL表示パネルであって、前記視認抑制層は、第1の支持体上に配設されていることを特徴とする発光型有機ELパネル。
【請求項4】
請求項2に記載の発光型有機EL表示パネルであって、前記視認抑制層は、前記第1の支持体の外側に配した透明な第3の支持体の一方の面に配設され、且つ、視認抑制層を配設した第3の支持体を第1の支持体に貼り合わせていることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の発光型有機EL表示パネルであって、前記遮光層の遮蔽率は、JIS K7136に規定される全光線透過率T(%)を用いて(100- T)で表され、80%以上であることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれか1項に記載の発光型有機EL表示パネルであって、非発光時における前記第1の支持体を通した遮光層の開口部と遮光層との明度の差については、色相と彩度とを示すL*a*b色度図の値で、各色発光部において、明度L*の差が60以下であることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれか1項に記載の発光型有機EL表示パネルであって、視認抑制層の外側に、発光部、非発光部全面を覆うようにして、円偏光板を貼り合わせていることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項8】
請求項2ないし7のいずれか1項に記載の発光型有機EL表示パネルであって、前記視認抑制層には、少なくとも1以上からなる透明保護層が積層されていることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項9】
請求項1に記載の発光型有機EL表示パネルであって、前記視認抑制層を、第2の電極の外側領域(非電極部領域)に、第2の電極と同じ材料で、配設していることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の発光型有機EL表示パネルであって、前記第2の電極が透明性のものであることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の発光型有機EL表示パネルであって、前記第1の支持体、第2の支持体、第3の支持体は、可撓性のプラスチック基材であることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の発光型有機EL表示パネルであって、パッシブマトリックス型であることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の発光型有機EL表示パネルであって、アクティブマトリックス型であることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の発光型有機EL表示パネルであって、有機発光ポスターであることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の発光型有機EL表示パネルであって、カラーフィルタ層を備えていることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。
【請求項16】
請求項15に記載の発光型有機EL表示パネルであって、前記カラーフィルタ層と前記透明電極との間に色変換蛍光体層を備えていることを特徴とする発光型有機EL表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−277270(P2008−277270A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71190(P2008−71190)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】