説明

発光型表示装置を備える文書

本発明は、画像データ106を記憶する電子記憶装置104を備える文書であって、画像データを再生する発光型表示装置110を備え、該表示装置に電気エネルギーを供給するエネルギー供給手段112、114、116;128を備え、表示装置上に配置されている光学層118を備え、該光学層は少なくとも1つの画像を有し、該光学層は、表示装置に電気エネルギーが供給されないときに画像が視覚的に知覚可能であるように形成されている、文書に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光型表示装置を備える文書、特に重要文書又はセキュリティ文書に関する。
【背景技術】
【0002】
集積電子回路を備える文書自体は、当該技術水準から様々な形態で既知である。たとえば、重要文書及びセキュリティ文書は、主に紙ベースの形態で、たとえば紙幣として、電子パスポートとして、又はプラスチックベースのチップカードとして、特にいわゆるスマートカードとして、接触型、非接触型、又はデュアルインタフェース型に実装されて存在している。これに関しては、特に特許文献1を参照されたい。
【0003】
特に、このような文書のための様々な無線検出システムが当該技術水準から既知であり、これらのシステムは無線周波数識別(RFID)システムとも呼ばれる。既知のRFIDシステムは概して、少なくとも1つのトランスポンダ及び送受信装置を備える。トランスポンダは、RFIDマーカ、RFIDチップ、RFIDタグ、RFIDラベル、又は無線マーカとも呼ばれる。送受信装置は、読み取り装置、読み取り機、又はリーダとも呼ばれる。さらに、多くの場合、サーバ、サービス、及び、たとえばレジシステム又は在庫管理システムのような他のシステムと、いわゆるミドルウェアを介して統合することが意図されている。
【0004】
非接触型トランスポンダ、たとえばRFIDトランスポンダ上に記録されているデータは無線波を介して使用可能になる。これは、周波数が低い場合は近距離場を介して誘導的に生じ、周波数が高い場合は遠距離電磁場を介して生じる。読み取り装置とRFIDトラスポンダとの通信におけるデータの伝送は無線波を介して行われる。システムに応じて、伝送は近距離場又は遠距離場を介して行われる。
【0005】
RFIDトランスポンダは通常、キャリア若しくはハウジング内に収容されているか又は基板上に印刷されているマイクロチップ及びアンテナを備える。アクティブRFIDトランスポンダは、パッシブトランスポンダとは異なり、さらにたとえば蓄電池のようなエネルギー源を使用する。
【0006】
RFIDトランスポンダは、たとえば電子財布を実現するために又は電子チケット発行のために、特にチップカード内で様々な文書に使用可能である。さらに、これらのRFIDトランスポンダは、たとえば重要文書及びセキュリティ文書、特に紙幣及び証明書のような紙又はプラスチックに一体化される。
【0007】
特許文献2から、たとえば、積層プラスチック及び/又は射出成形プラスチックから成る身分証明セキュリティカードが既知であり、このカードは、RFID方式を実施するためのアンテナを備える集積半導体を備える。さらに、特許文献3から、たとえばパスポートのような、トランスポンダ装置を備えるブック型重要文書が既知である。
【0008】
このようなセキュリティ文書又は重要文書は、たとえば特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18から既知であるように、一体化されている表示装置を備えることができる。
【0009】
セキュリティ文書又は重要文書は、接触型インタフェース若しくは非接触型インタフェース、たとえばRFIDインタフェース、又は、チップカード端末との有線通信も無線通信も可能にするインタフェースを備えることができる。後者の場合、いわゆるデュアルインタフェースチップカードという用語も使用される。チップカード通信のプロトコル及び方式は、たとえば規格ISO 7816、ISO 14443、ISO 15763において定義されている。
【0010】
特許文献19から、表示装置を備える文書が既知である。表示装置は、3次元画像の自動立体生成のための光学層を有する。光学層は印刷することができる。光学層は、表示層による第1の画像の再生時に、光学層の第2の画像の印刷された画素が良好に視覚的に知覚可能であり、それによって、3次元画像を自動立体生成することができるように形成されている。この場合、表示層の画像も、印刷された画像も、表示層の動作中に同時に見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2005 025 806号明細書
【特許文献2】独国実用新案登録第201 00 158号公報
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2004 008 841号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10 2005 030 626号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10 2005 030 627号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第10 2005 030 628号明細書
【特許文献7】国際公開WO2004/080100号パンフレット
【特許文献8】欧州特許第1 023 692号明細書
【特許文献9】独国特許第102 15 398号明細書
【特許文献10】欧州特許第1 173 825号明細書
【特許文献11】欧州特許第1 230 617号明細書
【特許文献12】欧州特許第1 303 835号明細書
【特許文献13】欧州特許第1 537 528号明細書
【特許文献14】国際公開WO03/030096号パンフレット
【特許文献15】欧州特許第0 920 675号明細書
【特許文献16】米国特許第6,019,284号明細書
【特許文献17】米国特許出願第6,402,039号明細書
【特許文献18】国際公開WO99/38117号パンフレット
【特許文献19】国際公開WO2007/048855号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これに対して、本発明は、表示装置を備える、改良された文書、特に重要文書又はセキュリティ文書を作製するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の課題は、請求項1に記載の特徴によって解決される。本発明の実施の形態は、従属項において提示されている。
【0014】
本発明の実施の形態によれば、文書は、画像データを記憶する電子記憶装置を有する。画像データは、単一の画像、複数の画像、又は画像シーケンスを含むことができる。代替的に、記憶装置は、画像データを生成するデータ及び/又はアルゴリズムを含むことができる。
【0015】
ここで、「画像データ」は、表示装置上での再生に適している全てのデータを意味する。特に、画像データは、人物の1つ若しくは複数の写真、特に顔画像を含むことができ、且つ/又は、テキスト情報、光学的に機械読み取り可能な情報、1次元若しくは2次元バーコード等とすることができる。
【0016】
文書は、画像データを再生する発光型表示装置を有する。発光型表示装置は、放射型表示装置、すなわち、放射源として作用するディスプレイを意味する。このような発光型ディスプレイは特に、暗闇においても良好に読み取り可能であるという利点を有する。ただし、画像データの表示のために放射エネルギーを放出することを可能にするために、発光型ディスプレイはエネルギー供給を必要とする。したがって、文書は、表示装置に電気エネルギーを供給するエネルギー供給手段を有する。
【0017】
表示装置の上方に光学層が配置されている。光学層は少なくとも1つの画像を有する。光学層は、表示装置に電気エネルギーが供給されないときに、画像が最適に視覚的に知覚可能であるように形成されている。すなわち、光学層は、表示装置がオンに切り替えられているとき、すなわち放射エネルギーを放出するとき、全く又はほとんど視覚的に知覚可能でなく、これに対して、表示装置に電気エネルギーが供給されないとき、すなわち実質的に放射エネルギーを放出しないとき、視覚的に知覚可能であるように形成されている。
【0018】
換言すると、光学層は、表示装置がオフに切り替えられているときに該表示装置によって形成される暗い、特に黒い背景の前方において良好に視覚的に知覚可能であり、これに対して、表示装置がオンに切り替えられているときに該表示装置によって形成されるような明るい発光する背景の前方では全く又はほとんど視覚的に知覚可能でないように形成されている。
【0019】
光学層をこのように形成することは特に、表示装置に電気エネルギーが供給されないか又は供給することができないときにおいても、表示装置の領域において画像を見ることができるという利点を有する。文書がたとえば、電子パスポート、身分証明書、又は運転免許証のようなID文書である場合、表示装置のためのエネルギー供給が利用可能でないときも視覚的検査が可能である。
【0020】
本発明の一実施の形態によれば、発光型表示装置は、表示装置に電気エネルギーが供給されないときに、光学層に対して黒い背景を形成するように形成されている。この場合、黒い、すなわち入射する放射を吸収する背景によって、黒い背景の前方に存在する光学層が最も良く見えるようになる。
【0021】
本発明の一実施の形態によれば、表示装置は、OLEDディスプレイ又はバックライトディスプレイであり、たとえば液晶ディスプレイである。このようなディスプレイは、電気エネルギー供給がない場合は暗くなっている、すなわち、光学層に対して放射吸収背景を形成し、それによって、光学層は、補助手段を用いずとも、人間の目に十分なコントラストで知覚可能である。
【0022】
本発明のさらなる一実施の形態によれば、バックライトと、その後ろに黒い背景とを有する透明な双安定ディスプレイが用いられる。ディスプレイは黒い背景の前で黒か又は透明に見えるため、示される画像は、バックライトがなければ、全く又は非常に制限された状態でしか知覚可能でない。この実施の形態は、第2の画像を観察することを可能にするには、バックライトにエネルギーを供給するだけでよく、これに対して、ディスプレイの駆動は、表示される内容を変えるためにのみ必要とされるという利点を有する。
【0023】
本発明の一実施の形態によれば、光学層は、ホログラム、特に特有の(individuelles: individual)体積ホログラムである。ホログラムのコントラスト、及びひいては視認性は、背景に大きく依存する。特に、表示装置をオフに切り替えることによって利用可能となるような黒い背景によって、ホログラムの卓越した視認性が可能となる。これに対して、表示装置をオンに切り替えることによって実現されるような自己放射背景によって、ホログラムの視認性が劇的に低下し、それによって、ホログラムは全く又はほとんど視覚的に知覚可能でなくなる。
【0024】
これは、一方では、表示装置に電気エネルギーが供給されない場合に、ホログラムが視覚的に知覚可能であり、それによって、たとえばこの場合においても文書の視覚的試験が可能であり、他方では、表示装置に電気エネルギーが供給される場合に、ホログラムが全く又はほとんど、表示装置上での画像データの画像再生を妨げないか又は悪化させないという利点を有する。
【0025】
ここで、ホログラムは、10%から50%の低い回折効率、ひいては画像輝度を示すように実現することができる。黒い背景の前方では、ホログラムは依然として良好に視認可能であるが、そうでない場合は、視認可能でない。これはたとえば、材料がたとえば10μmの適切な膜厚を有すると共に、たとえば0.03の達成可能な屈折率変調を有する場合の波長多重化によって首尾よく行われる。たとえば赤、緑、及び青のスペクトル領域における適切な波長の波長多重化を使用することによって、画像を真正の色印象でホログラムとして記憶することがこの方法で同時に可能となる。
【0026】
ホログラムは好ましくは個別化されているが、特有に、たとえば認証番号の形態で存在することもできるし、全文書に対して同一である静的パターンを設けられることもできる。特に好ましいのは、意味があるように文書内に一体化することができるこれらの組み合わせである。たとえば、独国特許出願公開第102007016777.8号明細書は、セキュリティフィルム、たとえば体積ホログラムをディスプレイモジュールの上へ施すこと、及び、モジュールの交換に対する保護としての、文書の隣接する部分を記載している。この場合、個別化されている特有のホログラムの組み合わせは、すなわち、たとえば、写真領域及びパターン上のホログラフィック写真、ディスプレイモジュールの縁領域、並びにそれに隣接する、文書本体の領域によって覆われて形成することができる。
【0027】
ホログラムは、表示面よりも大きく、カード本体内に完全に入ることができるか、又は、表示装置だけでなく、カード本体に接着することができる。表示装置は文書内に一体化することができ、文書は、ホログラム及び表示装置を覆う全体的なカバーフィルムを提供することができる。特に、ホログラムは、表示装置に直接的に接着することはできず、たとえば文書の表面にわたって全面的に接着することができる。対応して、これは、たとえば印刷のような、画像を施す他の技術に適用される。
【0028】
本発明の一実施の形態によれば、ホログラムは表示装置に接着されている。このためには、様々な接着剤、特に、同一出願人による独国特許出願公開第10 2006 048 646.9号明細書に開示されている接着剤層が適している。文書の構成に応じて、ホログラムは、直接ではなく、側方において距離を置いて文書に接着することもでき、詳細には、ホログラムの関連する部分が依然として表示装置の上方に存在するようになっている。
【0029】
さらに、続いて、傷に強い層を、たとえばラッカ又はフィルムの形態で施し、それによって、文書の有効期間中に光学層が摩耗してしまうのを防止することができる。
【0030】
一実施の形態によれば、光学層は液晶着色剤を有する。この実施の形態では、液晶着色剤が、暗い背景の前方では良好に視認可能であり、これに対して、自ら発光する背景の前方では全く又はほとんど視認可能でないという特性を有することを本発明は利用する。特に、着色剤は、コレステリック液晶を含むものとすることができる。
【0031】
本発明の一実施の形態によれば、光学層は、コレステリックポリマー、すなわち、コレステリック液晶相を形成するポリマーを含む。
【0032】
本発明の一実施の形態によれば、光学層は、マイカ粒子を含む着色剤を有する。マイカ粒子は、二酸化チタン(TiO)及び/又は二酸化ケイ素(SiO)によって被覆することができる。マイカ系のこのような着色剤は、非常にはっきりとしたコントラスト性質を有する、すなわち、暗い背景の前方では良好に視覚的に知覚可能であり、自ら発光する背景の前方では全く又はほとんど視覚的に知覚可能でない。
【0033】
本発明の一実施の形態によれば、光学層は、たとえば20%未満、特に10%未満、好ましくは5%未満の低い着色剤被覆率で施される着色剤を有する。「着色剤被覆率」とは、ここでは、着色剤によって覆われる像点の面積と像点の全面積との比率、すなわち、着色剤で覆われている像点の面積の百分率を意味する。着色剤を施すために、まず、インクジェット着色剤を用いて低い着色剤被覆率で透明フィルムを印刷することができる。そして、透明フィルムはディスプレイ上に施される。
【0034】
一実施の形態によれば、光学層を形成する着色剤は、印刷技術によって、特にデジタル印刷によって施される。
【0035】
本発明の一実施の形態によれば、着色剤は、熱転写印刷、熱昇華印刷、インクジェット印刷、又は他の個別化技術によって表示装置上に施される。
【0036】
本発明の一実施の形態によれば、画像データは、光学層が有するものと同じ画像を含む。これは、表示装置に電気エネルギーが供給されないときにも、この画像が視覚的に知覚可能であるという利点を有する。
【0037】
本発明の一実施の形態によれば、画像データは、光学層の画像とは異なる画像を含む。ここで、画像データの再生が光学層の画像によって損なわれないということが特に有利である。これは、光学層の画像が発光型表示装置の光で隠され(ueberstrahlt: outshined)、それによって、この画像が全く又はほとんど視覚的に知覚可能でなくなるためである。
【0038】
本発明の一実施の形態によれば、文書はID文書である。ID文書の視覚的検査のために、光学層は、顔画像、好ましくは、文書の所有者の正面顔画像を有する。画像データは、同一の画像、若しくは文書の所持者の別の正面顔画像、及び/又は、1つ若しくは複数の側面顔画像を含むことができる。表示装置に電気エネルギーが供給される場合、画像データ内に保存されている顔画像を画像シーケンスの形態で出力することができる。
【0039】
異なる視点に基づく重要文書又はセキュリティ文書の所有者の画像を有する画像シーケンスの再生は、単一の2次元画像の静的表示に対して、重要文書又はセキュリティ文書の所持者の検証をより確実にするという利点を有する。すなわち、多くの場合、証明書に通常含まれる正面顔画像だけでは、文書所有者の確実な検証には最適でないということが分かっている。したがって、たとえば国境の役人や警察による視覚的検証においても、読み取り装置を用いた機械的検証においても確実性を高めるために、本発明によれば、画像シーケンス内の所有者の少なくとも2つの画像が連続して表示装置上に再生される。これによって、機械的検証において、特に低い本人拒否率(FRR)及び他人受入率(FAR)を達成することができる。さらなる利点は、複数の視点を使用することによって所有者の検証が容易になるということである。
【0040】
本発明の一実施の形態によれば、文書は、たとえば一次電池、すなわちバッテリ、又は、二次電池、すなわち再充電可能な蓄電池、電荷蓄積器としてのコンデンサ等のようなエネルギー蓄積装置を備える。エネルギー蓄積装置が早々に空になってしまうのを回避するために、表示装置に電気エネルギーを永続的に供給することはない。エネルギー供給をオンに切り替えるために、文書は、たとえば押しボタン等のような操作素子を有し、それによって、操作素子を操作することによって、表示装置のためのエネルギー供給をオン及びオフに切り替えることができる。ここで、有利には、特に、エネルギー供給がオフに切り替えられているか又はエネルギー蓄積装置が空である場合でも、光学層の画像に起因して文書の視覚的検査が可能である。
【0041】
本発明の一実施の形態によれば、文書は、電気エネルギーを外部エネルギー源から供給するインタフェースを有する。電気エネルギーの供給は、容量性結合又は誘導性結合に基づいて接触を伴って又は接触を伴わずに(アンテナは必ずしも無線とは限らない!)行うことができる。好ましくは、電磁結合が使用される。たとえば、インタフェースは、電気エネルギーを供給するアンテナ又はコイルを備えることができる。
【0042】
本発明の一実施の形態によれば、インタフェースが通信インタフェースとして形成されている。したがって、この場合、インタフェースは、エネルギーを供給する役割だけでなく、外部エネルギー源を形成する読み取り装置とのデータ交換の役割も果たす。特に、エネルギーの供給及びデータ交換は、RFID方式に従って、たとえばISO14443に準拠して行うことができる。
【0043】
本発明の一実施の形態によれば、文書は、重要文書又はセキュリティ文書、特に、たとえば身分証明書、パスポート又は運転免許証、資格証明書、クレジットカード、貨物運送状、査証等のようなID文書である。
【0044】
本発明の一実施の形態によれば、文書は、紙ベース且つ/又はプラスチックベースである文書本体を有する。特に、文書はチップカードとすることができる。
【0045】
本発明の複数の実施の形態によれば、画像は表示装置の前方に配置されており、該表示装置は、オフに切り替えられている状態では黒いか暗く、したがって画像のコントラストを強める。ここで、画像の配置及びサイズ、並びに、文書の側方構成に関しては様々な可能性がある。画像は、表示装置の表示面とユーザの目との間の光路内に存在するように、文書本体に接して又は文書本体内に配置しなければならない。画像を有する光学層は、したがって、表示装置と一致する必要はなく、表示面とは異なるサイズを有し、且つ/又は、側方において表示面から隔たることもできる。表示面と光学層との間に1つ又は複数の中間層が存在することができる。
【0046】
本発明の複数の実施の形態によれば、表示装置はカード内に埋め込まれている。その上方に、たとえばPCフィルムが存在し、文書の上には、たとえば写真、3Dのドイツ国章、ホログラフィック機械可読ゾーン(holografischer Machine Readable Zone: holographic machine readable zone)(MRZ)等を含むようなイデンティグラム(Identigram)が全面にわたって施されている。
【0047】
本発明の複数の実施の形態によれば、イデンティグラムのホログラフィック写真は表示装置の上方に存在している。該ホログラフィック写真は、たとえば表示装置に接着することができる。
【0048】
本発明の複数の実施の形態によれば、表示装置に電気エネルギーが供給され、それによって、画像データの再生が画像を光で隠すとき、画像は視覚的に知覚可能でない。光で隠される「画像」は、ここでは、光学層が有する全体画像の一部も意味する、すなわち、文書は、全体画像の一部が光によって隠され、他の部分はそうではないように形成することができる。したがって、全体画像の一部が視覚的に知覚可能であり続けることが可能であり、これに対して、表示装置に電気エネルギーが供給され、それによって、光が放出するときには、部分画像は視覚的に知覚可能でない。したがって、「画像」はここでは、光学層が有する全体画像の部分画像も意味する。
【0049】
さらに、本発明の実施形態を、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】一体型エネルギー蓄積装置を備える、本発明による文書の一実施形態のブロック図である。
【図2】インタフェースを備える、本発明による文書の一実施形態の平面図である。
【図3】本発明による文書及び読み取り装置のさらなる一実施形態のブロック図である。
【図4】表示装置によって再生される画像シーケンスの概略図である。
【図5】2つの異なる時点における、本発明による文書の一実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下の複数の実施形態の互いに一致する要素はそれぞれ、同じ参照符号を付されている。
【0052】
図1は文書100を示す。文書100は、重要文書又はセキュリティ文書、特に、たとえば電子パスポート、身分証明書、ビザ等のようなID文書とすることができるが、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、出入許可証等とすることもできる。文書100は、紙ベース且つ/又はプラスチックベースで形成することができる文書本体102を有する。特に、文書100は、たとえばチップカードのようなブック形状又はカード形状の文書とすることができる。
【0053】
文書100は、画像データ106を記憶する電子記憶装置104を有する。画像データは、1つ又は複数の画像、特に、文書の所持者の1つ又は複数の顔画像を含むことができる。
【0054】
文書100は、表示装置110のための駆動装置108を形成する集積電子回路を有する。電子記憶装置104、駆動装置108、及び/又は表示装置110は、1つ若しくは複数の別個の電子部品又は単一の一体型電子部品として形成することができる。
【0055】
文書100は、たとえば一次電池又は二次電池のようなエネルギー蓄積装置112を有する。エネルギー供給のオン及びオフの切り替えを可能にするために、文書100はさらに、たとえばボタン114のような操作素子を有する。該操作素子の操作によって、スイッチ116が開閉される。スイッチ116を介してエネルギー蓄積装置112と駆動装置108とを接続することができる。この操作素子は、摩耗のないセンサとして実現することもできる。
【0056】
表示装置110は、エネルギー供給がオフのとき、すなわち、スイッチ116が開いているとき、暗い、好ましくは黒の背景を有するように形成されている。これに対して、エネルギー供給がオンのとき、すなわち、スイッチ116が閉じているとき、表示装置110は、画像データ106の再生のために放射源として作用する、すなわち表示装置110は自己発光する。換言すると、表示装置110は発光型表示装置である。たとえば、表示装置110は、バックライトを有する液晶ディスプレイであるか、又はOLEDディスプレイである。
【0057】
表示装置110上には光学層118があり、該光学層を通じて、ユーザ120が表示装置110を観察することが可能である。光学層118は少なくとも1つの画像を有する。光学層118は、表示装置110が電気エネルギーを供給されていないとき、すなわちスイッチ116が開いているときに、画像が、ユーザ120によって視覚的に良好に知覚可能であるように形成されている。表示装置110がオフのときにのみ、この表示装置は光学層118に対して暗い背景を提供し、それによって、光学層118の画像が、十分なコントラストと共にユーザ120によって視覚的に知覚可能になる。
【0058】
これに対して、表示装置110がオンのとき、該表示装置は、光学層118の画像を光で隠し、それによって、該画像は、全く又はほとんどユーザ120が知覚することができなくなる。
【0059】
特に、光学層118は、ホログラム、特に、文書100の所持者の顔画像を有する特有の体積ホログラムとすることができる。ホログラムは、表示装置110に接着することができる。
【0060】
光学層118は、プリントとすることもできる。プリントは、液晶着色剤、特にコレステリック液晶ポリマーから成ることができる。光学層118を形成するプリントは、マイカ粒子を含む着色剤によっても実現することができる。マイカ粒子は、二酸化チタン及び/又は二酸化ケイ素によって被覆することができる。
【0061】
さらに、プリントは着色剤によって実現することができる。該着色剤は、20%未満の低い着色剤被覆率で表示装置110上に施されており、それによって、表示装置がオンに切り替えられることによって、明るく発光する背景を形成する場合に、プリントは視覚的に全く又はほとんど知覚することができなくなる。
【0062】
プリントは様々な個別化技術によって、たとえばデジタル印刷、熱転写印刷、熱昇華、インクジェット印刷、及び同様の方法によって表示装置に施すことができる。
【0063】
エネルギー蓄積装置112が早々に空になってしまうのを防止するために、たとえば文書100の視覚的検査を可能にするために画像データ106を表示装置110上に再生する必要があるときのみ、ユーザはボタン114を操作し、それによって、スイッチ116を閉じる。制御を行った後、ボタン114を再び操作し、それによって、スイッチ116を再び開く。
【0064】
代替的に、スイッチ116は、操作後、たとえば数秒の特定の所定時間にわたって、閉じた位置にとどまり、それによって、後に自ら再び開くように形成することもできる。これによって、スイッチ116を開くためにボタン114を再び操作する必要がなくなる。特に、スイッチ116は、単安定マルチバイブレータとして実現することができる。
【0065】
エネルギー蓄積装置112が空の場合でも、文書100の視覚的検査、詳細には光学層118を示す画像を用いた検査は可能である。
【0066】
図2は、本発明による文書100のさらなる一実施形態の平面図を示す。この実施形態では、文書100は、チップカード、たとえばいわゆるスマートカードとして形成されている。文書100は、集積電子回路を備えるチップモジュール122を有する。該集積電子回路は、たとえば、電子記憶装置104及び駆動装置108(図1の実施形態を参照されたい)を実装する。チップモジュール122は、接触型、非接触型、又はいわゆるデュアルインタフェース型インタフェースを備えることができる。チップモジュール122はたとえば、文書本体102のキャビティ内に埋め込まれている。
【0067】
文書本体102はたとえば、上に光学層118を有する表示装置110が存在するさらなるキャビティを有する。表示装置110は、チップモジュール122の集積電子回路によって駆動される。代替的には、表示装置110は、文書100の対応するキャビティ内で、チップモジュール122から独立して機能すると共に自身の駆動装置及び画像データ記憶装置を備える完全に別個の装置として形成されている。
【0068】
好ましくは、表示装置110のエネルギー供給は少なくとも、チップモジュール122から行われる。これは、チップモジュールが、文書100のための読み取り装置、すなわちいわゆるチップカード端末が利用することができるような外部エネルギー源と、自身のインタフェースを介して接続可能であるためである。
【0069】
図2の実施形態では、光学層118は、人物の顔画像によって形成される。この顔画像は、特有の体積ホログラムの形態で表示装置110上に施すことができる。これは、たとえば接着促進層によって体積ホログラムを固定することによって行われる。顔画像は、表示装置110に印刷することもできる。印刷のために、液晶着色剤、特に、コレステリック液晶相を有するポリマーを使用することができる。さらに、顔画像は、マイカ系着色剤、特に、被覆されたマイカ粒子、特に二酸化チタン及び/又は二酸化ケイ素によって被覆されたマイカ粒子を有する着色剤を用いて施すことができる。着色剤は、低い着色剤被覆率で施されるインクジェット用インクとすることもできる。
【0070】
顔画像は、様々な個別化技術によって、たとえばデジタル印刷、熱転写印刷、熱昇華、インクジェット印刷、及び同様の方法によって表示装置に施すことができる。
【0071】
チップモジュール122のインタフェースを介してエネルギーを文書100に供給しない限り、表示装置110は暗いままである。ユーザが正面から文書100を見るとき、この暗い背景の前方で、光学層118、すなわちここでは顔画像はユーザ120(図1を参照されたい)から良く見える。これは、文書100の視覚的制御が常に、詳細には、文書100のための読み取り装置が利用可能でない場合でも可能であるという利点を有する。
【0072】
これに対して、文書のための読み取り装置が利用可能である場合、読み取り装置から電気エネルギーがチップモジュール122のインタフェースを介して供給され、それによって、直接的に且つ/又は間接的に駆動装置108を介して表示装置110にエネルギーが供給され、これによって、画像データ106(図1を参照されたい)が再生される。表示装置110は放射源として作用する。表示装置110によって形成される明るい背景の前方では、光学層118の顔画像は全く又はほとんどユーザ120が視覚的に知覚することができない。これは、この顔画像が、表示装置110の画像再生によって光で隠されてしまうためである。
【0073】
表示装置110が再生することができる画像データ106は、光学層118が含む顔画像と同一の顔画像とすることができ、且つ/又は、1つ若しくは複数の他の画像、たとえば、様々な視点からの同一人物の2つ以上の顔画像、及び/又は、平文で読み取り可能なテキスト情報、及び/又は、たとえば1次元若しくは2次元のバーコードのような光学的に機械読み取り可能な情報とすることができる。画像データ106が複数の画像を含む場合、電気エネルギーがチップモジュール122のインタフェースを介して供給されると即座に、これらの画像は、同時に且つ/又は連続して表示装置110上で再生されることができる。
【0074】
図3は、本発明による文書100のさらなる一実施形態を示す。
【0075】
この実施形態では、文書100は、読み取り装置132、たとえばいわゆるチップカード端末の対応するインタフェース130を用いてデータを交換するためのインタフェース128を有する。インタフェース128及び130は、接触型、非接触型、又はデュアルインタフェース型インタフェースとして形成することができる。インタフェース130は、通信接続の確立の他に、電気エネルギーを文書100のインタフェース128に供給する役割も果たす。これによって、該文書に電気エネルギーを供給することができる。
【0076】
図3の実施形態では、画像データ106は、画像B1、B2、及びB3から成る画像シーケンスを含む。電気エネルギーがインタフェース128に供給されると即座に、駆動装置108は画像データ106にアクセスし、画像データB1、B2、B3を連続して繰り返し再生するために表示装置110を駆動する。
【0077】
図4は、画像B1、B2、B3の表示装置110上での再生の経時的推移を示す。時間間隔T1の間、画像データ106の画像B1が表示装置110上で再生される。後続する時間間隔T2の間、画像データ106の画像B2が再生され、それに続く時間間隔T3の間、画像データ106の画像B3が再生される。画像B1、B2、B3のこの再生シーケンスは、電気エネルギーがインタフェース128に供給される限り、繰り返すことができる。時間間隔T1からT3は、同じか又は異なる長さを有することができる。たとえば、各時間間隔の長さは0.5秒から2秒の間にある。
【0078】
画像B1は、人物の左側の横顔とすることができ、画像B2は正面の顔画像、画像B3は右側の顔画像とすることができる。画像B1、B2、B3が同一の人物の顔画像であり、顔画像は、それぞれ異なる視点から記録されていることが特に有利である。これは、これによって文書所持人の検証が容易になるためである。
【0079】
図5は、表示装置110のためのエネルギー供給が利用可能でない時点Tオフと、画像データ106の表示装置110上での再生のためのエネルギー供給が利用可能である時点Tオンとにおける文書100の一実施形態を示す。すなわち、時点Tオンにおいては、図1の実施形態ではスイッチ116が閉じているか、又は、図3の実施形態ではエネルギーがインタフェース128に供給される。
【0080】
この実施形態では、画像B2は画像データ106内に存在するのみでなく、光学層118も形成する。すなわち、画像B2は、ホログラムとして表示装置110上に存在するか、又は、たとえば表示装置110上に印刷される。
【0081】
時点Tオフでは、表示装置110は暗い背景を形成し、それによって、光学層118の画像B2が視覚的に良好に認識可能である。これに対して、時点Tオンにおいては、表示装置110に電気エネルギーが供給され、それによって、画像データ106、すなわち、画像シーケンスB1、B2、B3が繰り返し再生され、図5に示される時点T1では、ちょうど画像B1が再生される。このとき、光学層の画像B2は知覚可能でない。これは、表示装置110が再生する画像B1によって画像B2が光で隠されるためである。
【符号の説明】
【0082】
100 文書
102 文書本体
104 電子記憶装置
106 画像データ
108 駆動装置
110 表示装置
112 エネルギー蓄積装置
114 ボタン
116 スイッチ
118 光学層
120 ユーザ
122 チップモジュール
128 インタフェース
130 インタフェース
132 読み取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データ(106)を記憶する電子記憶装置(104)を備える文書であって、
前記画像データを再生する発光型の表示装置(110)と、
前記表示装置に電気エネルギーを供給するエネルギー供給手段(112、114、116;128)と、
前記表示装置の前方に配置されている光学層(118)と
を備え、
前記光学層は少なくとも1つの画像を有し、前記表示装置に前記電気エネルギーが供給されないときに前記画像が視覚的に知覚可能であるように形成されている、文書。
【請求項2】
前記表示装置は黒い背景を有する、請求項1に記載の文書。
【請求項3】
前記光学層はホログラムを含み、該ホログラムは好ましくは、10%から50%の回折効率を有する、請求項1又は2に記載の文書。
【請求項4】
前記ホログラムは前記表示装置に接着されている、請求項3に記載の文書。
【請求項5】
前記光学層は液晶着色剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の文書。
【請求項6】
前記液晶着色剤は、コレステリック液晶を有する顔料を含む、請求項5に記載の文書。
【請求項7】
前記光学層はマイカ粒子を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の文書。
【請求項8】
前記マイカ粒子は、二酸化チタン及び/又は二酸化ケイ素によって被覆されている、請求項7に記載の文書。
【請求項9】
前記光学層は、20%未満、特に10%未満、好ましくは5%未満の着色剤被覆率で前記表示装置に施されている着色剤を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の文書。
【請求項10】
前記光学層は印刷されている、請求項5から9のいずれか一項に記載の文書。
【請求項11】
前記光学層は個別化されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の文書。
【請求項12】
前記画像は顔画像である、請求項1から11のいずれか一項に記載の文書。
【請求項13】
前記画像データは、1つ又は複数の顔画像を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の文書。
【請求項14】
前記画像データは画像シーケンスを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の文書。
【請求項15】
前記画像は、第1の視点に基づく顔画像であり、前記画像データは、少なくとも第2の視点に基づく顔画像を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の文書。
【請求項16】
前記エネルギー供給手段はエネルギー蓄積装置(112)を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の文書。
【請求項17】
前記エネルギーの供給をオンに切り替える操作手段(116)を備える、請求項16に記載の文書。
【請求項18】
前記エネルギー供給手段は、前記電気エネルギーを外部エネルギー源(132)から供給するように形成されている、請求項1から17のいずれか一項に記載の文書。
【請求項19】
前記文書は、外部読み取り装置(132)との通信のための通信インタフェース(128)を備え、該通信インタフェースによって前記エネルギー供給手段は形成される、請求項1から18のいずれか一項に記載の文書。
【請求項20】
重要文書又はセキュリティ文書、特に、たとえば身分証明書、パスポート、査証、運転免許証、社員証、資格証明書、クレジットカード、銀行カード、貨物運送状等である、請求項1から19のいずれか一項に記載の文書。
【請求項21】
前記文書は、紙、およびプラスチックの少なくとも一方をベースにして形成されている文書本体(102)を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の文書。
【請求項22】
チップカードである、請求項1から21のいずれか一項に記載の文書。
【請求項23】
前記表示装置に前記電気エネルギーが供給され、それによって、前記画像データの再生が前記画像を光で隠すとき、前記画像は視覚的に知覚可能でありうる、請求項1から22のいずれか一項に記載の文書。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−517808(P2011−517808A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550099(P2010−550099)
【出願日】平成21年1月2日(2009.1.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050014
【国際公開番号】WO2009/112290
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(599147447)ブンデスドルケライ ゲーエムベーハー (21)
【氏名又は名称原語表記】BUNDESDRUKEREI GMBH
【Fターム(参考)】