説明

発光式鉄道用看板

【課題】ブレーキ操作に関する判断を行うべき位置に列車が到達する前に列車運転士に対し注意喚起を行う鉄道用看板において、視認性を向上させる。
【解決手段】発光式鉄道用看板Kは、表記部分1aを低光反射面、その他を高光反射面1bとした反射表示部1と点滅発光器10とを備える。点滅発光器10の点滅により周囲の風景と同化するのが妨げられ、前照灯の光で反射表示部1が発光するから、遠方から容易に視認できる。ブレーキ操作に関する判断を行うべき位置に列車が到達するまでに列車運転士が目視できる位置に設置したので、時間的余裕を持って注意喚起がなされる。高光反射面1bの面積比率を大きくしたので発光面積が大きくなり夜間時視認性に優れる。点滅発光器10を電池電源で動作させるので配線工事が不要になる。点滅発光器10の高さ位置を列車運転士の目線高さ位置よりも低くしたので、列車運転士に眩しさを与えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の運転士に対し注意喚起するための鉄道用看板に関し、特に、ブレーキ操作に関する判断を行うべき位置に列車が到達する前に注意喚起を行うものであって、運転士からの視認性を向上させることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路に沿って設置される標識や看板において、視認性を向上させる工夫を施したものが特許文献1に記載されている。同特許文献1に記載の標識灯は、面光源である電場発光板の発光面に、文字又は模様を打ち抜いた反射シートを貼着して成り、通常は、電場発光板により、反射シートの打ち抜き部分である文字又は模様が浮き出るように発光し、列車の前照灯(ヘッドライト)等の光が当たったときには、反射シートが電場発光板よりも明るく反射するというものである。
【特許文献1】実公昭41−6681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の標識灯は、昼間の列車走行時は前照灯を点灯させていても、反射シートが反射する光はあまり目立たない。しかも電場発光板の発光強度はそれほど強くないとされている。そのため、標識灯の設置場所によって、昼間は沿線風景と同化し、視認しにくくなることがあると思われる。一方、夜間には、列車前照灯の光が当たるまでは反射シートからの反射光が得られないので、上記標識灯を線路の曲線部に設置した場合、列車が接近するまで上記標識灯を視認するのが困難である。なお特許文献1には、上記標識灯をどのような位置に設置するか、また、どのような内容の注意喚起に用いるかについて全く記載されていない。
【0004】
ところで列車を運転するにあたり、列車を駅プラットホームの適正位置に停車させるには、駅に到達する一定距離以上手前でブレーキ操作を開始する必要がある。しかるに、駅手前の線路が湾曲しているため、駅にかなり接近するまで駅プラットホームを目視できない状況であったり、夜間において駅構内の照明が暗いためプラットホームの端部位置を視認しにくい状況の場合には、駅までの距離を正確に把握できず、ブレーキ操作の判断が遅れて列車の停車位置不良を招くという問題があった。あるいは列車運転士において、停車駅であることを失念したり又は通過駅であると錯誤することにより、ブレーキ操作の判断を誤って、列車の停車位置不良を招く可能性もある。線路沿線に設置されている従来の標識は視認性が低く、特に夜間は発見が困難な場合があり、上に述べたような状況に対して列車の停止位置不良を回避する機能を持つものではなかった。また、前記特許文献1に記載の標識灯も上記問題を解決できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の問題を解決するために創案した本発明に係る発光式鉄道用看板の特徴とするところは、請求項1に記載する如く、文字・記号又は図柄等から成る表記部分を高光反射面と低光反射面との組み合わせで形成した反射表示部と、電池を電源とし前記反射表示部とは別に設けられた点滅発光器とを備え、列車運転士がブレーキ操作に関する判断を行うべき位置に列車が到達するまでに列車運転士から目視できる位置に設置され、前記反射表示部は低光反射面よりも高光反射面の占める面積比率が大きいように構成され、前記点滅発光器の高さ位置が列車運転士の目線高さ位置よりも低くなるように設定されていることである。
【0006】
本発明に係る発光式鉄道用看板は、請求項2に記載する如く、駅プラットホームの端部又はその近傍に設置することが考えられる。
【0007】
駅に至るまでの線路が湾曲しており、列車運転士がブレーキ操作に関する判断を行うべき列車位置からは駅プラットホームを目視できない場合、本発明に係る発光式鉄道用看板は、請求項3に記載する如く、上記列車位置に到達するまでに列車運転士から目視できる位置に設置し、前記反射表示部は駅の存在を列車運転士に喚起する表示を備えるものとすればよい。
【0008】
本発明に係る発光式鉄道用看板は、請求項4に記載する如く、ブレーキの制動性能試験を行うべき区間に設置される場合、前記反射表示部は制動性能試験の実施を喚起する表示を備えているものとすればよい。
【0009】
また本発明に係る発光式鉄道用看板は、請求項5に記載する如く、前記反射表示部を、文字又は記号から成る表記部分が低光反射面で形成し、その他の部分を高光反射面で形成することが考えられる。
【0010】
さらに本発明に係る発光式鉄道用看板は、請求項6に記載する如く、前記点滅発光器の電源となる電池を、太陽電池と蓄電池との組み合わせで構成することが考えられる。
【発明の効果】
【0011】
鉄道用看板で列車運転士に対し確実に注意喚起を行うためには、列車運転士が決して見落とすことなく看板の存在を発見できること、及び、列車運転士の看板目視時間を十分に確保できることが条件であると考えられる。
本発明に係る発光式鉄道用看板は、文字・記号又は図柄等から成る表記部分が形成された反射表示部と、反射表示部とは別に設けた点滅発光器とを備えており、反射表示部は列車前照灯の光が当たったときにその反射光で表記内容を表示し、他方、点滅発光器は前照灯の照射にかかわらず点滅発光する。従って、昼間にあっては、点滅発光器の点滅により周囲の風景と同化するのが妨げられ、遠方からでも看板を発見して、看板の存在及びその位置を容易に確認することができる。また夜間にあって、列車前照灯の光の反射光を目視できるようになる前には、点滅発光器の点滅により遠方からでも看板の存在を容易に視認でき、前照灯からの光の反射光を目視できるようになった後は、反射表示部が発光した状態を明確に視認することができる。このように本発明によれば、列車が看板位置に到達する前に、あらかじめ列車運転士に看板の存在を確実に認識させるので、看板の見落としが防止され、また看板の表記内容を確認するのに十分な目視時間を確保することが可能である。それ故、列車運転士に対し十分な注意喚起を行えるから、列車運転士が停車駅であることを失念したり通過駅であると錯誤したりするのを防止することができる。
【0012】
しかも本発明では、上に述べた如く視認性が非常に優れている発光式鉄道用看板の設置位置を、列車運転士がブレーキ操作に関する判断を行うべき位置に列車が到達するまでに列車運転士から目視できる位置としたので、列車運転士に対し時間的余裕を持って所要の注意喚起がなされる。その結果、ブレーキ操作に関する判断を時機に遅れることなく適切に行うことができるから、列車停止位置不良の問題を解消できる。ところで列車運転士がブレーキ操作に関する判断を行うべき位置とは、次駅が停車駅か通過駅であるかを列車運転士が判断し、停車駅の場合は停止位置不良を回避するためブレーキ操作を開始すべき位置である。本発明に係る看板は、当該位置に設置するのが好ましいが、状況によっては列車運転士からの視認性を確保するため、当該位置の前後へ移動させて設置することも妨げない。さらには、当該位置とその前又は後の複数個所に設置することも考えられる。本発明に係る看板をブレーキ操作開始位置の前後に移動させて設置したときは、その旨を列車運転士が認識できるよう、駅からの距離を付記する等の適宜処置を施すことが望ましい。
【0013】
本発明に係る発光式鉄道用看板は、反射表示部における高光反射面の占める面積比率が低光反射面よりも大きくなるよう構成することにより、列車前照灯の光を反射するときの発光面積が大きくなり、夜間時の視認性に優れる。
また、点滅発光器を電池電源で動作するものとしたので、商用電源や配線工事が不要になり、その結果、設置作業が非常に容易になる。
さらに、点滅発光器の高さ位置を列車運転士の目線高さ位置よりも低くなるように設定して、点滅発光器からの投射光が列車運転士に眩しさ与えることがないようにしたので、列車運転に支障をきたすおそれがない。
【0014】
請求項2に係る本発明によれば、発光式鉄道用看板を駅プラットホームの端部又はその近傍に設置することにより、列車運転士に駅の存在を認識させると共に、夜間において駅構内の照明が暗くてもプラットホームの端部位置を明示することができるから、ブレーキ操作の判断が容易になり、列車停止位置を誤ることがなくなる。
【0015】
請求項3に係る本発明によれば、駅に至るまでの線路が湾曲しており駅プラットホームを目視できない場合において、ブレーキ操作に関する判断を行うべき位置に列車が到達するまでに列車運転士から目視できる位置に発光式鉄道用看板を設置し、その反射表示部は駅の存在を列車運転士に喚起する表示を備えるものとしたので、列車運転士は、駅を直接目視できない位置であっても、昼夜を問わず、本発明に係る発光式鉄道用看板を視認することにより、ブレーキ操作に関する判断を行うべき列車位置よりも手前で、駅の存在を認識すると共に注意喚起を受けることができる。従って、駅の所要距離手前においてブレーキ操作を実行できるから、列車停止位置不良を防止することができる。
【0016】
請求項4に係る本発明によれば、発光式鉄道用看板をブレーキの制動性能試験を行うべき区間に設置し、反射表示部は制動性能試験の実施を喚起する表示を備えるものとしたので、列車運転士は必ず当該看板を目視して注意喚起を受けるから、列車の運転開始後、必要とされるブレーキ試験の実行を失念するのが防止される。その結果、ブレーキの制動性能を的確に把握できるから、停止位置不良が防止される。
【0017】
請求項5に係る本発明によれば、発光式鉄道用看板の反射表示部における文字又は記号から成る表記部分を低光反射面で形成し、その他の部分を高光反射面で形成したので、前照灯の光が照射されたときに、比較的面積の小さい表記部分が暗く表示され、表記部分以外の広い領域が発光するから、夜間時視認性が向上する。
【0018】
請求項6に係る本発明によれば、発光式鉄道用看板における点滅発光器の電源となる電池を、太陽電池と蓄電池との組み合わせから成るものとしたので、電池の劣化等に伴う保守を除けば、電池の交換が通常は不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る発光式鉄道用看板(以下「本発明看板」と言う)は、列車運転士に注意喚起を行う補助看板類として使用するほか、鉄道標識として使用することが考えられるものであって、図1に示すように、文字・記号・図柄等から成る表記部分1aを有する反射表示部1の上に、発光素子11を用いて構成した点滅発光器10が配置され、これらを支柱20等に固定して所要個所に設置される。本例における本発明看板Kの正面形状は、反射表示部1が長方形、点滅発光器10が円形である。また、これらを正面視したときの外形寸法の一例を示せば、反射表示部1は縦1000mm横400〜500mm、点滅発光器10は直径300mmである。但し、これらの寸法は単なる例示であり、視認性や建築限界等を考慮して、適宜変更することを妨げない。
【0020】
反射表示部1は、基板2の表面に光反射性に優れた反射材3を貼り付けて成るものである。基板2の材質は、ある程度の強度を持ち耐候性を備えることが望ましく、例えばアルミ・鉄・ステンレス等の金属、プラスチック、セラミック、木材等が挙げられる。また、軽量化しても曲げ強度を確保するため、裏面側に複数の補強用リブ4を起立形成してもよい。反射材3には光の反射率が高く、しかも耐候性を有していることが必要であり、このような素材として、例えばダイヤモンドグレードシート(住友スリーエム株式会社製)が挙げられる。なお、反射材3の表面を蛍光性顔料を用いて着色し、輝度を向上させることもできる。本例では蛍光黄色を採用した。
【0021】
本例の表記部分1aは、蛍光色に着色した反射材3から文字・記号等の形状を切り抜くことにより形成される。従って表記1aは、黒抜き文字として認識される。当該表記1aは、昼間であれば、列車が本発明看板Kに一定距離まで接近することにより、列車運転士が容易に読み取ることができる。夜間は、列車が遠方にあり、反射表示部1の反射光を視認できるようになるまでは、図2(A)に示すように、主として点滅発光器10の点滅発光が視認され、表記1aの内容を明確に認識できない。しかし列車がある程度接近して、反射表示部1が前照灯の照射光を反射するようになったときには、図2(B)に示すように、光を反射して明るく発光する高光反射面1bの中に、低光反射面である表記部分1aが黒い文字として視認されるので、表記1aの内容を容易に読み取ることができる。
【0022】
反射表示部1に表示される表記内容は、本発明看板Kの設置目的、すなわち列車運転士に対し注意喚起する内容に応じて決定される。具体例を示せば、図1(A)の「駅名」、図3(A)の「停車?」、図3(B)の「ブレーキ試験」等が挙げられる。「駅名」を表記した本発明看板Kは、駅プラットホームの端部又はその近傍に設置される。「停車?」を表記した本発明看板Kは、駅から所定距離だけ離れた線路沿いに設置される。「ブレーキ試験」を表記した本発明看板Kは、ブレーキの制動性能試験を行うべき区間に設置される。また本例では、「ブレーキ試験」の表記中、「試験」の表記部分1cを赤色に着色した。このように、表記1aの一部の着色を異ならせて、視認性をより向上させることも可能である。なお、本発明看板Kに付す表記1aは、上記に限定されるものではなく、実施の状況に応じ適宜の変更が可能である。
【0023】
点滅発光器10は、表面側へ一定状態に配列した複数の発光素子11と、これら発光素子11の発光動作を制御する裏面側の制御部12と、電池電源とを備える。また所望により、表面における発光素子11以外の部分(図面では周縁部及び中央部)に、反射表示部1に用いたのと同じ又は類似の反射材13,14を配置してもよい。発光素子11は輝度が高く消費電力が小さいものが望ましく、例えばLED(発光ダイオード)や有機EL素子等を使用することが考えられる。発光素子11の使用個数や配列には特に制限はない。発光素子11の色は、一色でも複数色でもよい。制御部12は、発光素子11へ電力を断続的に供給することにより所定の時間間隔で点滅発光させるものであり、発光素子11に対する印加電圧・通電間隔(点滅時間)・通電時間(通電比)などを制御する。なお、電圧・通電時間・通電間隔等の設定値は、設置環境や実施状況に応じ適宜変更することが可能である。発光素子11の点滅動作は、24時間連続して行うことを想定しているが、列車が全く通行することのない時間帯が確定している等の事情に応じて、タイマー制御により、点滅発光を一時休止する時間帯を設けることも可能である。電池は制御部12が収納されるケーシング内に同梱してもよく、別に独立させて設けてもよい。配線工事を不要にするため電池電源としたが、これを太陽電池と蓄電池との組み合わせで構成すれば、故障や性能劣化が生じたとき以外は原則として電池の交換が不要となるので、保守の負担が軽減される。
【0024】
反射表示部1と点滅発光器10とは支柱20に取り付けられるが、図1(B)に、その取付手段として、適宜の締結具5を、反射表示部1における基板2のリブ4や点滅発光器10における制御部12のケーシングへ、支柱20を挟んでネジ6で固定する構造を例示した。取付手段はかかる構造に限定されるものではないが、支柱20に対する反射表示部1及び点滅発光器10の相対位置は変更可能であることが望ましい。さらに設置状況によっては、反射表示部1及び点滅発光器10を、既設の電柱やフェンス等に取り付ける場合もある。
【0025】
点滅発光器10の高さ位置は、発光素子11の投射光がなるべく列車運転士に眩しさを感じさせないようにするため、列車運転士の目線高さよりも低くなるよう通常は2m以下に設定する。また図示は省略するが、点滅発光器10を、反射表示部1の側方に配置する構成も考えられる。
【0026】
列車をプラットホームに停車させるにあたり、停止位置不良を起こす代表的な理由は、ブレーキ操作の誤りである。列車をプラットホームの適正位置に停車させるには、駅よりも所定距離手前(在来線では通常400m程度)において列車運転士がブレーキ操作を開始する必要があるが、ブレーキ操作の開始が遅れた場合は、列車がプラットホームの適正位置を通過して停止することになる。列車運転士のブレーキ操作が遅れる原因はいくつか考えられ、その一つとして、図4に例示する如く、駅よりも手前側の線路Sが湾曲しており、しかも湾曲部Rの側方に木立や家屋等の障害物Dが存在しているため、駅にかなり接近するまでプラットホームPを目視できず、ブレーキ操作を開始すべき位置Qの把握が困難な場合が挙げられる。また、駅手前の線路が直線であっても、夜間には駅構内及び駅周辺の照明が暗いために、ブレーキ操作を開始すべき列車位置からはプラットホームの端部を確認できず、駅の存在又は駅までの距離を把握できない場合がある。あるいは列車運転士が、停車駅であるとの認識を失念したり通過駅であると錯誤したりすることにより、停止位置不良を招く場合も考えられる。さらには、列車の運転開始後に行うべきブレーキ試験を忘れたために、ブレーキの制動性能が低下しているのに気づかず、その結果、通常のブレーキ操作では列車をプラットホームの適正位置に停止させることができないで通過させてしまうおそれもあった。
【0027】
本発明看板Kは、その設置位置及び表記内容を適切に設定することにより、前記の列車停止位置不良の問題を解消することができる。駅プラットホームの端部に、図1及び2に示すような本発明看板Kを設置することにより、昼間はもとより夜間にあっても、プラットホームの端部位置を、ブレーキ操作を開始すべき列車位置よりも十分に遠方から視認することができる。よってブレーキ操作の開始が遅れることがないので、列車をプラットホームの適正位置に確実に停車させることができる。
【0028】
駅手前の線路が図4に示すように湾曲しており、障害物Dのため、駅よりも約400mほど手前であるブレーキ操作を開始すべき位置Qに達するか又は当該位置Qを通過しなければ、列車運転士が駅を目視できない状況の場合は、図3(A)に示す「停車?」を表記した本発明看板Kを、ブレーキ操作を開始すべき位置Q、及び/又は列車Tが当該位置Qよりも手前に在るときから当該位置Qに到達するまで列車運転士が目視し続けられる位置に設置する。これにより列車運転士は、駅を目視できなくても、上記看板Kを発見することによって、駅の存在及び列車Tから駅までの距離を同時に認識できる。従って列車運転士は、駅が所定距離内に存在することを知ると共に、当該駅が停車駅であるか通過駅であるかの確認を促すよう注意喚起される。その結果、列車運転士は必要なブレーキ操作を適切な時機に開始できるから、停止位置不良を回避できる。
【0029】
何らかの理由により列車のブレーキ性能が低下すると、列車運転士がブレーキ操作を適切に行ったとしても、列車をプラットホームの適正位置に停車させるのが困難になる。この問題を回避するため、列車の運転開始後、ブレーキの制動性能試験を行うことが定められている。しかるに列車運転士がブレーキ制動性能試験の実施を失念した場合は、ブレーキ性能の低下に気づかず、停止位置不良を引き起こす可能性がある。そこで、図3(B)に示す「ブレーキ試験」を表記した本発明看板Kを、列車運転開始後にブレーキの制動性能試験を行うべき区間に設置して、列車運転士にブレーキ試験を確実に実施させるように注意喚起を行えば、ブレーキ性能の低下に基づく列車の停止位置不良の問題を解消できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る発光式鉄道用看板の一実施形態を示すものであって、図(A)は正面側から見た斜視図、図(B)は背面側から見た斜視図である。
【図2】本発明に係る発光式鉄道用看板の一実施形態を示すものであって、図(A)は夜間において光を反射していない状態の正面図、図(B)は夜間において光を反射している状態の正面図である。
【図3】本発明に係る発光式鉄道用看板の異なる実施形態を示すものであって、図(A)は線路湾曲部に設置される本発明看板の正面図、図(B)はブレーキの制動性能試験を実施すべき区間に設置される本発明看板の正面図である。
【図4】本発明に係る発光式鉄道用看板の設置状況を概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
K…発光式鉄道用看板 1…反射表示部 1a…表記部分(低光反射面) 1b…高光反射面 2…基板 3…反射材 4…リブ 10…点滅発光器 11…発光素子 12…制御部 13,14…反射材 20…支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字・記号又は図柄等から成る表記部分を高光反射面と低光反射面との組み合わせで形成した反射表示部と、電池を電源とし前記反射表示部とは別に設けられた点滅発光器とを備える鉄道用看板であって、列車運転士がブレーキ操作に関する判断を行うべき位置に列車が到達するまでに列車運転士から目視できる位置に設置され、前記反射表示部は低光反射面よりも高光反射面の占める面積比率が大きいように構成され、前記点滅発光器の高さ位置が列車運転士の目線高さ位置よりも低くなるように設定されていることを特徴とする発光式鉄道用看板。
【請求項2】
駅プラットホームの端部又はその近傍に設置されている請求項1に記載した発光式鉄道用看板。
【請求項3】
駅に至るまでの線路が湾曲しており、列車運転士がブレーキ操作に関する判断を行うべき列車位置からは駅プラットホームを目視できない場合において、上記列車位置に到達するまでに列車運転士から目視できる位置に設置され、前記反射表示部は駅の存在を列車運転士に喚起する表示を備えている請求項1に記載した発光式鉄道用看板。
【請求項4】
ブレーキの制動性能試験を行うべき区間に設置され、前記反射表示部は制動性能試験の実施を喚起する表示を備えている請求項1に記載した発光式鉄道用看板。
【請求項5】
前記反射表示部は、文字又は記号から成る表記部分が低光反射面で形成され、その他の部分が高光反射面で形成されている請求項1乃至4のいずれかに記載した発光式鉄道用看板。
【請求項6】
前記点滅発光器の電源となる電池は、太陽電池と蓄電池との組み合わせから成る請求項1乃至5のいずれかに記載した発光式鉄道用看板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−290569(P2008−290569A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137911(P2007−137911)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【Fターム(参考)】