説明

発光素子搭載用基板および発光装置

【課題】金属板を備えて放熱性を向上させ、高反射率を長期間維持できるCOB構造の発光装置の発光素子搭載用基板を提供する。
【解決手段】発光素子5を実装する発光装置50のための発光素子搭載用基板10は、金属板1と、液晶ポリマーからなる絶縁層21と、金属膜からなる導電層3と、液晶ポリマーからなる絶縁性の反射層22とを積層して備える。導電層3は絶縁層21上で互いに離間した、発光装置50の一対のリード電極31,32を形成し、反射層22は、少なくとも発光素子5の載置領域を空けて形成されて、リード電極31,32のリード部31c,32cを表面に露出させていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子が搭載されたCOB構造の発光装置、特に基板が金属製である発光装置および発光素子搭載用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等の半導体発光素子は、小型で電力効率がよく鮮やかな色に発光し、また半導体素子であるため球切れ等の心配がなく、さらに初期駆動特性が優れ、振動やオン・オフ点灯の繰返しに強いという特徴を有する。このような優れた特性を有するため、半導体発光素子を光源として搭載した発光装置は、照明器具や液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトの一般的民生用光源として、その用途に対応した構造のものが利用されている。例えば、表面にリード電極のパターンが金属膜で形成された平板形状の基板に、半導体素子を搭載してリード電極に電気的に接続し、樹脂で封止したCOB(Chip on Board)構造がある。
【0003】
COB構造の発光装置は、基板の所定の実装領域に、半導体発光素子(以下、発光素子)を搭載して発光素子の電極を基板上のリード電極(インナーリード)にワイヤボンディング等で電気的に接続し、あるいは発光素子をフリップチップ実装でリード電極に接続し、発光素子やボンディングワイヤを被覆するように実装領域を透光性樹脂等の封止部材で封止して製造される。COB構造の発光装置は、複数の発光素子をマトリクス状に配列して面状の光を照射する面状発光装置として好適である。
【0004】
このような発光装置の基板は、一般的な半導体素子のCOBパッケージ用の基板と同様に、ある程度の強度を有するセラミックスや樹脂のような絶縁性材料で形成されたものと、熱伝導性に優れた銅やアルミニウム等の金属板で形成されたものとがあり、発光装置の機能等に応じて選択される。特に近年は、LEDの高輝度・高出力化に伴い発熱が大きくなり、LEDの温度が約100℃に上昇し得ることから、高温によるLEDの破壊を防止するために、放熱手段として金属板を適用した発光装置が開発されている。
【0005】
基板表面には金属膜や導電ペースト等でリード電極等の配線が形成されるが、基板が金属板である場合は、金属膜のような導電層は基板で短絡しないように絶縁層(サブマウント基板)を介して形成する必要がある。具体的には、金属板(金属基板)に、表面に銅箔で配線パターンを形成した絶縁性のフレキシブルシート(プリント基板)を貼り付けて、銅箔表面に発光素子を実装した発光装置がある(例えば特許文献1参照)。このようなフレキシブルなプリント基板は、一般的な半導体素子の実装用基板として、実装時のはんだ付け等に対応可能な耐熱性を有し、銅等の金属材料に比較的熱膨張率の近いポリイミドで形成したフィルムの表面に、銅箔を積層したものが広く知られている。さらに、放熱性を向上させるために、発光素子の載置領域に孔を空けたプリント基板を金属板に貼り付けて、発光素子を金属板に直接にフェースアップ実装して、プリント基板表面の配線にワイヤボンディングで接続した発光装置がある(例えば特許文献2参照)。さらに、金属板をリード電極の一方として、この金属板上に、発光素子の載置領域の周囲に前記リード電極の他方の配線パターンのみを絶縁材を介して形成して、発光素子を金属板に直接にフェースアップ実装して、当該金属板と絶縁材上の配線とにワイヤボンディングで接続した発光装置がある(例えば特許文献3参照)。
【0006】
前記プリント基板におけるポリイミドフィルムと銅箔との貼合わせ、さらに金属板への貼付けには、金属への密着性に優れていることからエポキシ系熱硬化型接着剤が一般的に適用される。しかし、エポキシ樹脂は熱膨張率が銅等の金属材料と比較して極めて高く、その差により、発光装置に使用されると、ON/OFFの繰返しに伴う温度変化で熱応力が生じ、ポリイミドフィルムが金属板や配線から剥離したり、割れを生じる等の不具合が生じる虞がある。さらに、エポキシ樹脂およびポリイミドは室温近傍における熱伝導率は0.2W/m・℃程度であり、銅の約2000分の1と低い。そのため、ポリイミドフィルムが発光装置に使用された場合、金属板上に接着剤層、絶縁層(ポリイミドフィルム)、さらに接着剤層を介した配線に搭載された発光素子から発生した熱(ジュール熱)は金属板へ伝導され難く十分に放熱されずに発光素子の温度が上昇することになる。
【0007】
一方、特許文献2,3のような発光素子を金属板に直接に載置する発光装置は、フェースアップ実装対応の発光素子か上下面にパッド電極を一方ずつ備えた発光素子に限られる。また、プリント基板に形成した孔の端面で発光素子からの光が遮られて、光の取出し効率が低下する。さらに、金属板表面が発光素子の光の反射面となるので、金属板として銅板を適用して、これに最も可視光反射率の高い銀をめっきにて被覆して反射率を高くしている(特許文献3)が、発光装置の軽量化やコスト低減等のために金属板にアルミニウム板を適用しようとすると、アルミニウム板はめっき浴に溶解するので、銀めっき膜を被覆するためには前処理が必要となり、あるいは鏡面仕上げにて反射率を高くする等、製造工程が複雑化する。
【0008】
そこで、プリント基板の絶縁性のフレキシブルシートとして、熱可塑性樹脂、中でも高い耐熱性を有する液晶ポリマー(LCP)を適用して、これをシート状に成形したものを、接着剤を使用せずに熱圧着にて金属板や金属箔と貼り合わせて製造可能な発光装置用の回路基板がある(例えば特許文献4,5参照)。このような液晶ポリマーをシート状に成形した液晶ポリマーフィルムは、近年、半導体素子の搭載用のフレキシブル基板として開発され、従来のポリイミドフィルムよりも低吸収性、寸法安定性、誘電特性に優れるとされる。さらに液晶ポリマーは、ポリイミドと同様に熱膨張率が銅等の金属材料に近く、一方でポリイミドよりも弾性率が低く、さらにポリイミドと同等以上の熱伝導性を有する。したがって、液晶ポリマーフィルムは、金属板や金属箔との熱圧着が可能でかつ耐熱性に優れ、また金属板に追随して変形し易いので、金属板から剥離する等の不具合が生じ難く、さらに接着剤層がないので、発光素子から発生した熱を金属板へより効率的に伝導させて放熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−260396号公報
【特許文献2】特開2006−295085号公報
【特許文献3】特許第4349032号公報
【特許文献4】特開2009−231584号公報
【特許文献5】特許第4163228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献4,5においては、液晶ポリマーフィルムをさらに反射率の高いものを適用して、反射率の高い回路基板としている。しかしながら、比較的熱伝導率が高い材料を適用しても、反射率の高い膜を形成するためにはある程度厚膜化する必要があるため、膜としては熱伝導性が低下する。一方、液晶ポリマーフィルム上の配線等の金属膜については、一般的な発光素子用の回路基板と同様に銀をめっきにて被覆している。しかし、銀は硫黄やハロゲンと反応し易く、発光素子を封止する透光性樹脂等に含まれるこれらの成分によりめっき膜表面が黒褐色に変色して、初期反射率から劣化し易い。そこで、銀による高反射率を維持するために、発光装置に使用する封止部材に硫黄およびハロゲンを含有しない樹脂材料が開発されているが、これらの樹脂もある程度のガス透過性を有しているため、大気中の硫化物に対する遮蔽性が不完全である。
【0011】
あるいは、配線を絶縁材料で被覆して、当該絶縁材料で反射面を形成することもでき、具体的には、高反射率の面を形成するシリコーン系等の白色のソルダーレジストを塗布することが知られている。しかしながら、ソルダーレジストはエポキシ樹脂と同様に金属板等との熱膨張率の差が大きいために、発光装置に使用されると割れを生じる虞があり、また、高出力の発光素子を搭載した場合は、長期の動作において発光素子から発生した熱により劣化して反射率が低下するため、このような発光装置に使用するには耐久性が不十分である。
【0012】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、金属板を基板として放熱性に優れ、光の取出し効率に優れかつそれを長期間維持できる発光装置の発光素子搭載用基板および発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、絶縁層として金属板から剥離し難い液晶ポリマーフィルムを適用し、その熱伝導性を活かしつつ光の取出し効率を向上させるために、別の液晶ポリマーフィルムを反射層として配線上に設けることに想到した。
【0014】
すなわち本発明に係る発光素子搭載用基板は、1以上の発光素子をそれぞれの所定の載置領域上に載置して実装する発光装置に使用される配線付きの基板である。前記発光素子搭載用基板は、金属板と、液晶ポリマーからなる絶縁層と、金属膜からなる導電層と、液晶ポリマーからなる絶縁性の反射層と、をこの順に積層して備え、前記導電層は前記絶縁層上で互いに離間した前記発光装置の一対のリード電極を形成し、前記反射層は少なくとも前記載置領域を空けて形成されて前記導電層の一部を表面に露出させていることを特徴とする。前記絶縁層および前記反射層は、面方向における線膨張係数が1〜30ppm/℃であることが好ましい。
【0015】
このように、発光素子搭載用基板は、金属板を支持体として、導電層を液晶ポリマーのみで絶縁することにより、発光装置としたときに発光素子から発生する熱が効率よく放熱されて、発光素子の温度の上昇を抑制することができる。また、液晶ポリマーを金属板に近い熱膨張率とすることで、発光素子から発生する熱による温度変化で導電層が剥離する等の不具合が生じることを防止することができる。さらに、反射層を発光素子の載置領域を空けて導電層上に備えることで、導電層および発光素子と金属板との間に形成されているのは絶縁層のみなので反射層を厚膜化しても放熱性が低下せず、また発光素子の近傍に反射層の有無の境界による当該反射層の端面が形成されるものの、この端面で光が好適に反射するので光の取出し効率の低下は抑制される。さらに、導電層の多くが液晶ポリマーからなる反射層で被覆されるため、発光装置としたときに反射率の経時劣化が少ない。
【0016】
また、本発明に係る発光素子搭載用基板は、前記絶縁層および前記反射層が、それぞれシート状に成形された液晶ポリマーを熱圧着して形成されていることが好ましく、特に反射層は絶縁層が熱変形しない温度および圧力で熱圧着することを特徴とする。さらに反射層においては、シート状に成形された液晶ポリマーが反射層の形状に合わせて加工されていることが好ましい。
【0017】
このように、液晶ポリマーがシート状に成形されてから熱圧着されることで、金属板等に好適に密着されて、発光素子搭載用基板は製造が容易となる。また、反射層を形成する際の熱圧着を絶縁層が熱変形可能な温度および圧力よりも低い温度や圧力で行うことで、先に形成された絶縁層が反射層の形成時に変形することがない。さらに反射層とする液晶ポリマーが当該反射層の形状に合わせて加工されていることで、積層後に発光素子の載置領域等の部分を除去する必要がないため、反射層の加工部分の形状が損なわれることがない。
【0018】
また、本発明に係る発光素子搭載用基板は、前記導電層が、前記反射層から露出した表面に光反射率の高い金属からなるめっき膜を備えることが好ましい。
【0019】
このように、発光素子搭載用基板は、露出した表面に反射率の高い金属でめっき膜を形成することで、発光装置としたときに反射率がいっそう高いものとなる。
【0020】
また、本発明に係る発光装置は、前記本発明に係る発光素子搭載用基板と、前記発光素子搭載用基板の一対のリード電極に電気的に接続された1以上の発光素子と、前記発光素子を封止する当該発光素子が発光した光を透過させる封止部材とを備え、前記発光素子が前記発光素子搭載用基板の前記載置領域上で前記導電層の露出した表面に接触して載置されていることを特徴とする。さらに本発明に係る発光装置は、前記発光素子搭載用基板の所定の実装領域に複数の発光素子を配列されて載置されていてもよい。
【0021】
このように、発光装置は、本発明に係る発光素子搭載用基板を適用することで、耐久性に優れ、高い反射率を長期間維持できるものとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る発光素子搭載用基板によれば、COB構造の発光装置として、特に複数の発光素子を搭載する高出力型の発光装置のための放熱性のよい発光素子搭載用基板となり、このような発光素子搭載用基板を用いて製造された発光装置は、自身の発熱による温度上昇で発光素子が劣化することなく長寿命となり、また光の取出し効率に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光素子搭載用基板および発光装置の外観図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る発光素子搭載用基板および発光装置の部分断面図であり、図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る発光素子搭載用基板の製造方法の一例を説明する断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る発光素子搭載用基板および発光装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る発光素子搭載用基板および発光装置について、図面を参照して説明する。なお、本明細書における平面(上面)は、発光装置の光の照射面であり、別途記載ない限り、表面とは上面側の面を指す。以下、本発明の第1実施形態に係る発光装置およびその発光素子搭載用基板について、図1ないし図3を参照して説明する。なお、図2は、図1の部分断面図であるが、要部を詳細に表すために、図1とは寸法は一致しない。
【0025】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る発光装置50は、LED電球やスポットライト等の照明器具に用いられ、公知のCOB構造の発光装置と同様の外観とすることができる。図1に示すように、発光装置50は、概形が板状の発光素子搭載用基板10の所定の発光素子載置領域(1個分を図中に破線枠で示す)上に発光素子5,5,…が実装され、これら複数の発光素子5をまとめて囲うように形成された円環形状の枠体4の内側に透光性樹脂からなる封止部材9が充填されて発光素子5を封止している。さらに、発光装置50は、発光素子5と同様に枠体4の内側の所定の載置領域に保護素子6が実装され、また、発光素子搭載用基板10の上面の枠体4の外側に、外部から駆動電圧を印加するための一対のパッド電極(アウターリード)として、正極31および負極32の各パッド部31b,32bを備える。発光装置50は、パッド部31b,32bにて駆動電圧を印加されることにより発光素子5,5,…が発光して、これらの光が一体となって封止部材9を透過して枠体4の内側を照射領域として上方に光を照射する。したがって、本実施形態に係る発光装置50は、照射領域の形状が円形である。なお、図1に示す発光素子搭載用基板10については、図の奥(上)側半分だけ発光素子5等を実装した発光装置50として示す。同様に、図2に示す発光素子搭載用基板10については、発光素子5の2個分の載置領域を含むが、発光素子5は1個だけ実装して示す。
【0026】
(発光素子)
発光素子5は、電圧を印加することで自ら発光する半導体素子であり、窒化物半導体等から構成される発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等の公知の半導体発光素子を適用できる。例えば、発光素子5は、サファイアのような透光性の基板に、n型窒化物半導体層、活性層(発光層)、p型窒化物半導体層の、窒化物半導体の各層を順次、エピタキシャル成長させて積層した後、n型窒化物半導体層、p型窒化物半導体層にそれぞれ接続するパッド電極(n電極、p電極)を形成して製造される。本実施形態に係る発光装置50においては、発光素子5は平面視長方形であり、その長手方向に6個を並べて1列とし、短手方向に4列を並べた計24個を、向きを揃えてマトリクス状に配列される。また、発光素子5は高出力(高輝度)であり、発光装置50の照射領域における中心に集中して配列されており、発光素子5が発光した光(以下、適宜、発光素子5の光)は、封止部材9を透過しながら拡散して、照射領域全体から照射される。
【0027】
また、本実施形態に係る発光装置50に搭載された発光素子5は、図2に示すように、一対のパッド電極(p電極とn電極)を下に向けて載置されたフェースダウン実装にて発光素子搭載用基板10に実装される。すなわち、発光素子5は、フリップチップ実装対応であり、当該発光素子5の発光層から発光した光が発光素子基板(サファイア基板)を透過して、上方へ比較的多く光を出射できる構造であることが好ましい。発光素子5は、発光素子搭載用基板10の発光素子載置領域に載置される際に、当該発光素子載置領域に設けられた正極31および負極32の各リード部31c,32c表面に、後記の導電性の接合部材7によりパッド電極を接合されて電気的に接続されている。
【0028】
(保護素子)
保護素子6は、ツェナーダイオード、バリスタ、またはコンデンサ等であり、過電圧印加による発光素子5の破壊を防止するために搭載され、発光素子5と共通の電圧を印加されるように正極31および負極32に電気的に接続される。詳しくは、保護素子6は、発光素子5と同様に、フリップチップ実装にて発光素子搭載用基板10に設けられた正極31および負極32の各リード部31d,32dに接合部材7(図示省略)により接続されている。保護素子6は、発光素子5からの光をできるだけ遮らないように配置されることが好ましい。本実施形態に係る発光装置50においては、保護素子6は照射領域(枠体4の内側)に、発光素子5と距離を空けるように24個の発光素子5が配列された領域の外側に載置される。この場合、保護素子6は高さ(厚さ)が小さい(薄い)形状であることがより好ましい。あるいは、保護素子6は枠体4が形成される位置に配置されてもよく、この場合は、保護素子6の実装後に、後記するように液状やペースト状の材料を硬化させて枠体4を形成して保護素子6を埋設する。このような構造とすることで、保護素子6は照射領域の外側に載置されるため、発光素子5からの光を遮ることがなく、かつ枠体4により封止される。
【0029】
接合部材7は、発光素子5とリード部31c,32c、保護素子6とリード部31d,32dを、電気的に接続する。このような接合部材7は、一般的なフリップチップ実装対応の半導体素子の実装に適用される導電性の接合部材(ダイボンディング材)であるはんだ、銀ペースト等の導電ペースト、Au−Sn共晶合金、金バンプ等から、発光素子5および保護素子6のパッド電極形状等の仕様、さらに発光装置50の二次実装仕様に応じて選択できる。したがって、例えば発光装置50の回路基板等への二次実装にてパッド部31b,32b等がはんだ付けされる場合、接合部材7は、はんだ付けにおける温度(Pbフリー:約260℃)よりも高い耐熱性を有するAu−Sn共晶合金や金バンプが好ましい。そして接合部材7は、その材料に対応した公知の方法により発光素子5等のパッド電極とリード部31c,32c等とを接合するが、このとき接合部材7は、Au−Sn共晶合金:280〜315℃(合金組成による)、金バンプ:約200℃(超音波併用による熱圧着)の高温にそれぞれ加熱される。すなわち、発光素子搭載用基板10もかかる高温に加熱され、あるいはかかる高温の接合部材7に接触するため、発光素子搭載用基板10の特に発光素子載置領域においては、これらの一時的な高温に対する耐熱性を要する。また、接合部材7は、特に発光素子5の接続においては、発光素子5から発生した熱が当該接合部材7を介してリード部31c,32cにより多く伝導されるように、より広い面積で発光素子5と接続されることが好ましい。ただし、接合部材7は、発光素子5の載置領域(直下の領域)の多くに形成されると、発光素子5から下方に出射する光を遮ることになるため、光の取出し効率が低下しない程度に広い面積に形成されることが好ましい。このような適度に広い面積に形成し易く、かつ信頼性の高い材料として、接合部材7はAu−Sn共晶合金を適用することが特に好ましい。
【0030】
本実施形態に係る発光装置50において、発光素子搭載用基板10は、発光素子5の仕様および配列等に応じて設計される。以下、発光素子搭載用基板10について、図1および図2を参照して詳細に説明する。
【0031】
〔発光素子搭載用基板〕
本発明の第1実施形態に係る発光素子搭載用基板10は、金属板1の上面に、絶縁層21、導電層3、反射層22の順に、それぞれ所定の領域に積層されてなる。さらに本実施形態に係る発光素子搭載用基板10は、反射層22の上に枠体4を備える。ここで、導電層3は平面上で互いに離間した一対のリード電極(正極31および負極32)を形成し、正極31および負極32はさらにそれぞれリード部31c,32c,31d,32dおよびパッド部31b,32bを含む。
【0032】
(金属板)
金属板1は、発光素子搭載用基板10の基材であり、発光装置50においては発光素子5等を配置する支持体であって、かつ発光素子5から発生する熱(以下、適宜、発光素子5の熱)の放熱手段であり、図1に示すように平板形状に形成されている。詳しくは、平面視で正方形の一組の対角を円弧で切り欠いた形状である。金属板1は、一般的な半導体発光素子のCOBパッケージ用の金属製基板と同様に、アルミニウム、銅、銀、鋼等の金属または合金を、ある程度の強度を有する板厚に公知の方法で形成して製造することができ、特に軽量で加工性がよく、低コストなアルミニウムまたはその合金が好ましい。金属板1の形状および大きさは限定されず、製品としてユーザに提供する発光素子搭載用基板または発光装置の形態や用途に応じて、適宜設計される。
【0033】
(絶縁層)
絶縁層21は、金属板1の表面に形成されて、金属板1と後記の導電層3とを絶縁する層である。したがって、絶縁層21は導電層3が形成される領域には必ず形成され、当該領域よりも外側にまで形成されることが好ましい。本実施形態においては、絶縁層21は金属板1の表面全体に形成される。また、絶縁層21は、発光素子載置領域であって導電層3(リード部31c,32c)の形成されていない領域には、露出しているので、発光素子5から下方に出射した光が入射される。絶縁層21は、このような露出した領域は比較的狭いが、反射率の高い膜とすることが、発光装置50としたときに光の取出し効率をより高いものとするために好ましい。絶縁層21の厚さは特に規定しないが、発光装置50としたとき、薄過ぎると発光素子5の光を透過、吸収し、さらに金属板1と導電層3との絶縁が保持されなくなり、厚くなると発光素子5の熱が金属板1へ伝導し難くなる。したがって、絶縁層21の厚さは25〜100μm程度の範囲が好ましい。そして、本発明に係る発光素子搭載用基板10において、絶縁層21は以下の特性を示すように、後記の液晶ポリマーで形成される。
【0034】
絶縁層21は熱伝導率が高いほど好ましく、具体的には面方向または厚さ方向の一方において0.2W/m・℃以上、他方において0.2W/m・℃超であることが好ましい。より好ましくは、厚さ方向において0.2W/m・℃以上、面方向において0.6W/m・℃以上である。このような熱伝導性を有する絶縁層21であれば、発光素子搭載用基板10の中心近傍に配列された発光素子5の熱が面方向に沿って外側へ好適に伝導されつつ、深さ方向に金属板1へ伝導され、熱が、発光装置50の発光素子5が配列された領域の裏面に集中せずに外部へ放熱される。
【0035】
絶縁層21は、その熱膨張率が金属板1および導電層3と近いことが好ましく、特に本実施形態に係る発光素子搭載用基板10においては全面(金属板1の全面)に設けられているため、面方向における線膨張係数が金属板1等と差が大きいと、発光素子搭載用基板10に生じる熱応力が大きくなる。金属の線膨張係数は、例えば、アルミニウム:23.6ppm/℃、銀:18.9ppm/℃、銅:16.8ppm/℃、金:14.2ppm/℃である。したがって、絶縁層21は、面方向における線膨張係数が1〜30ppm/℃の範囲であることが好ましく、10〜30ppm/℃の範囲がさらに好ましい。
【0036】
絶縁層21は、発光素子搭載用基板10の発光装置50への組立てにおいて、当該絶縁層21上の導電層3(リード部31c,32c,31d,32d)に接合部材7を用いて発光素子5および保護素子6が実装され、さらに発光装置50が回路基板等に二次実装される際においても、導電層3のパッド部31b,32や金属板1(裏面)にはんだ付け等される場合があるため、高い耐熱性を有するものとする。具体的には、例えば接合部材7としてAu−Sn共晶合金を適用する場合は、280〜315℃の範囲における共晶温度に到達させるため、絶縁層21はかかる温度よりも高い耐熱温度(融点)を有する。さらに、絶縁層21は、後記の反射層22を熱圧着にて形成するための加熱および加圧により変形、溶融しないように、絶縁層22を形成する液晶ポリマーよりも熱変形等し難い液晶ポリマーが選択される(詳しくは後記する)。
【0037】
(導電層)
導電層3は、発光装置50の一対のリード電極を形成する正極31および負極32として、絶縁層21上に形成された互いに離間した2つの金属膜である。正極31および負極32はそれぞれ、発光装置50の外部から発光素子5の駆動電圧を印加するためのパッド部31b,32b、各発光素子5のパッド電極を電気的に接続するためのリード部31c,32cを発光素子5の搭載個数分(24対)、同じく保護素子6を接続するためのリード部31d,32dを含んで形成される。そして、正極31および負極32は、さらに発光素子5が実装されてリード部31c,32cに接続されることで、それぞれの発光素子5が直列および並列にパッド部31b,32bに電気的に接続されるような配線が形成される(図示省略)。
【0038】
パッド部31b,32bの形状および大きさならびに発光素子搭載用基板10における位置は、発光装置50において表面に露出して、外部から電気的に接続可能であれば特に限定されず、発光装置50の形態や用途に応じて適宜設計される。リード部31c,32cは、発光素子5を載置したときにパッド電極に対向して、接合部材7で接続可能な平面視形状に、各発光素子5の載置領域に形成される。また、リード部31c,32cは、接合部材7を介して接続された発光素子5から発生した熱が伝導されることで、導電層3の全体や絶縁層21を伝導して放熱され、また、発光素子5から下方に出射する光の反射面となる。保護素子6を接続するリード部31d,32dは、リード部31c,32cと同様に、保護素子6のパッド電極(図示せず)に対向するように形成される。
【0039】
ここで、同じ仕様(駆動電圧等)の発光素子5が複数個実装された発光装置50において、発光素子5を直列に接続する場合は、当該直列に接続される発光素子5の組は、その発光素子5の個数が同数に統一されているようにする。発光素子5,5,…は、組単位で並列にパッド部31b,32bに接続されて、共通の電圧を印加されるので、組毎に発光素子5の個数が異なると抵抗が異なって、組によって発光素子5の1個あたりに印加される電圧に差が生じて発光する光の光量が一様にならず、また、適正な電圧が印加されないことで早期に駆動不能に至る発光素子5が生じる虞がある。本実施形態に係る発光素子搭載用基板10は24個の発光素子5を搭載されて発光装置50となるため、例えば3個の発光素子5を一組として直列に接続されるように、隣り合うリード部31c,32cを接続し、さらに8組および保護素子6が並列にパッド部31b,32bに接続されるように配線を設ける。このように、導電層3は、正極31および負極32として、発光素子5の搭載個数や発光装置50の仕様に応じて配線形状を設計される。
【0040】
導電層3は、正極31および負極32としては、発光素子5および保護素子6を実装するためのリード部31c,32c,31d,32d、パッド部31b,32b、およびこれらを互いに接続する配線を備えていればよい。しかし、前記したようにリード部31c,32cに発光素子5が直接に接続されるため、発光素子5の熱がリード部31c,32cから効率的に発光装置50の外部に放熱されることが好ましい。そこで、金属膜からなり熱伝導性に優れた導電層3は、正極31および負極32が互いに短絡しない程度に広い面積で形成されることが好ましい。例えば、図1に示す24個の発光素子5が配列された領域の周囲に、発光装置50の照射領域の外側まで延設された幅広の配線を形成して、この幅広の配線に各リード部31c,32cおよび保護素子6のリード部31d,32dが接続されるようにすればよい。さらにこの幅広の配線は、パッド部31b,32bを内包して、発光素子搭載用基板10(金属板1)の周縁近傍まで延設されて形成されてもよい。図2に、負極32についてパッド部32bを内包する配線を示す。これにより、各発光素子5の熱が、当該発光素子5に接続するリード部31c,32cから正極31および負極32の幅広の配線を介して面方向に沿って外側へ好適に伝導されて、発光装置50の外部へ効率的に放熱される。
【0041】
導電層3は、一般的な半導体素子の配線基板に適用される金属材料を適用することができ、銅、銀、金、アルミニウム等が挙げられ、熱伝導性や加工性の点から銅が特に好ましい。また、前記した通り、箔を絶縁層21の形成時に当該絶縁層21の熱圧着にて貼り合わせてもよいし、めっきや蒸着等の公知の方法で絶縁層21の表面に成膜することもできる。導電層3の膜厚は特に限定されず、リード電極としての抵抗、発光装置50に搭載される発光素子5の駆動電圧および駆動電流等に応じて適宜設計される。そして、金属膜を例えばエッチングにて前記リード部31c,32c等を含む正極31および負極32の配線パターンを形成して、導電層3となる。なお、金属膜(箔)は、絶縁層21となる液晶ポリマーフィルムに先に貼り合わせられていてもよいし、さらに液晶ポリマーフィルム上で正極31および負極32の配線パターンが形成されてもよい。
【0042】
また、導電層3は、表面に金属めっき膜(めっき膜)3aを備えてもよい。後記するように、導電層3は、発光素子5の載置領域等を除いて反射層22で被覆されるが、この載置領域にて露出した部分すなわちリード部31c,32c,31d,32dは、発光素子5から下方に出射した光の反射面となる。したがって、発光素子5が発光する光の波長について反射率の高い金属を表面が平滑なめっき膜として設けて、発光装置50の光の取出し効率を向上させることが好ましい。このような金属材料としては、銀、ロジウム、金、アルミニウムから選択される1種の金属、または前記金属の合金が挙げられ、可視光については銀が最も反射率が高く好ましい。また、銀めっき膜の下地にニッケルめっき膜を積層してもよい(図示省略)。金属めっき膜3aは、その材料に応じて、電気めっき等の公知の方法で形成できる。また、導電層3は、図2に示すように、発光装置50において表面に露出するパッド部31b,32bにも金属めっき膜3aを備えることが好ましい。特に導電層3が銅からなる場合は、表面が酸化することではんだの濡れ性が低下して、発光装置50の二次実装においてパッド部31b,32bで実装不良に至る虞がある。パッド部31b,32bに備える金属めっき膜3aとしては、表面に信頼性を付与するため、金が特に好ましく、例えばリード部31c,32c等と共に設けた銀めっき膜の上に積層して金めっき膜を形成してもよいし、金めっき膜単層でもよい。
【0043】
金属めっき膜3aは、反射層22が形成されていない領域、すなわちリード部31c,32c,31d,32d(31d,32dは図示省略)およびパッド部31b,32bのみに設ければよいが、導電層3の全面等の反射層22に被覆される領域に設けてもよい(図4参照)。金属めっき膜3aを導電層3の全面に設ける場合は、反射層22の形成前にめっき処理を施せばよく、図2に示すように反射層22が形成されていない領域に設ける場合は、反射層22の形成後にめっき処理を施し、さらに金属めっき膜3aを形成しない部分があればめっき処理の際にマスクすればよい。例えばパッド部31b,32bのみに金めっき膜を形成する場合は、発光装置50の照射領域をマスクしてめっき処理を行う。
【0044】
(反射層)
反射層22は、発光装置50の照射領域(枠体4の内側)において、図2に示すように発光素子5から下方へ出射した光を反射して発光装置50から上方へ照射させる反射膜であり、また、導電層3に対して、発光素子5および保護素子6との電気的接続部分であるリード部31c,32c,31d,32d以外を被覆して封止部材9との接触面積を少ないものとする保護膜である。また、反射層22が発光素子5の載置領域を空けて形成されていることで、発光素子5と金属板1との間に反射層22が介在しないため、発光素子5の熱が金属板1に伝導し易い。本実施形態においては、反射層22は、発光素子5および保護素子6の載置領域(発光素子5および保護素子6の平面視形状)よりも一回り大きい孔が形成され、さらに発光素子5については、1列分(6個)を内包する細長い孔を4列分(4本)形成されている。反射層22の形成されない領域(反射層22の孔)の平面視形状は、少なくとも発光素子5等の載置領域(平面視形状)であって、発光素子5等を実装可能であれば特に限定されず、発光装置50の形態、発光素子5の実装形態や配列等に応じて適宜設計される。また、反射層22の発光素子5の載置領域における孔は、上方に拡がるように端面が垂直よりも傾斜した、テーパを付けて形成されていることが好ましい。反射層22の孔をこのようなテーパを付けた形状とすることにより、発光素子5から前記孔の端面に出射した光をより多く上方へ反射させて、光の取出し効率を向上させることができる。
【0045】
反射層22は、発光装置50の照射領域の外側(枠体4の配置領域およびその外側)においては、導電層3の発光装置50の外部との電気的接続部分であるパッド部31b,32b以外を被覆して短絡等を防止する保護膜(絶縁膜)である。すなわち、本実施形態に係る発光素子搭載用基板10においては、導電層3にパッド部31b,32bを内包して幅広の配線が形成されているため、反射層22にパッド部31b,32bの形状および位置に合わせた孔を形成して被覆することにより、外部との接続用のパッド部31b,32bが形成される。また、枠体4が光を透過する材料で形成されて内壁面が反射面にならない場合、さらに発光素子搭載用基板10(発光装置50)に枠体4を設けない場合は、発光装置50のパッド部31b,32bを除く全面が、反射層22により照射領域となる。
【0046】
反射層22の厚さは特に規定しないが、当該反射層22の下に設けられた絶縁層21と合わせて、発光素子5の光を透過せずに反射させることができる厚さとする。一方、反射層22が厚くなると、発光素子5の載置領域に形成された孔の端面で反射して当該発光素子5との間で反射を繰り返す光が多くなり、発光装置50の光の取出し効率が低下する。したがって、反射層22の厚さは10〜100μm程度の範囲が好ましい。反射層22は、高さ(厚さ)方向において、表面(上面)の位置が、実装された発光素子5の発光層よりも下となる厚さであることが特に好ましい。そして、本発明に係る発光素子搭載用基板10において、反射層22は絶縁性の反射膜として、以下の特性を示すように、液晶ポリマーで形成される。
【0047】
反射層22を形成する液晶ポリマーは、白色等の反射率が高い膜を形成するものとする。一方、反射層22は、熱伝導性は絶縁層21ほどには必要ではないが、導電層3から発光素子5の熱が伝導するので、この熱が面方向に沿って外側へ好適に伝導されるように、熱伝導率が高いことが好ましく、特に面方向において高いことが好ましい。また、反射層22は、絶縁層21と同様にその熱膨張率が金属板1および導電層3と近いことが好ましく、すなわち面方向における線膨張係数が1〜30ppm/℃の範囲であることが好ましい。
【0048】
反射層22は、絶縁層21と同様に、発光装置50への組立て、さらに発光装置50が回路基板に搭載される際の一時的な高温に対する耐熱性を要する。さらに、反射層22は、発光装置50としての長期間の動作において、発光素子5の熱で劣化して反射率が低下しないような高い耐熱性を要する。一方、反射層22は、その形成の際の加熱および加圧により、絶縁層21を変形、溶融させないような条件での熱圧着が可能な液晶ポリマーが材料に選択される(詳しくは後記する)。
【0049】
(液晶ポリマー)
ここで、絶縁層21および反射層22を形成する液晶ポリマーについて、詳細に説明する。絶縁層21および反射層22は、液晶ポリマーをシート状に成形してなる液晶ポリマーフィルム(LCPフィルム)で形成することができる。一般的に、液晶ポリマーは、当該液晶ポリマーの液晶転移点以上に加熱されると変形可能となって、温度が上昇するにしたがい硬さ(弾性率)が漸減し、融点以上で溶融する。液晶ポリマーフィルムには、融点に到達していなくても(融点未満の温度でも)厚さ方向に加圧されることで、表層が溶融して金属板1や導電層3等の金属や液晶ポリマーフィルム同士に接着する(熱圧着する)ことができるものがある。このような液晶ポリマーフィルムは、熱や圧力によって相変化をするサーモトロピック型液晶からなり、さらに本実施形態に係る発光素子搭載用基板10においては、液晶ポリマーの中でも耐熱性の高い全芳香族系が好適であり、具体的には全芳香族ポリエステルが挙げられる。このような液晶ポリマーは、通常、黄みがかった乳白色を呈するが、高い反射率とするために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム等からなる粒径0.1〜20μm程度の白色無機フィラーを添加されたものが好ましい。なお、液晶ポリマーは、成形時のピーク温度によって熱膨張率が変化するものがあり、このような液晶ポリマーを適用する場合は、絶縁層21および反射層22のそれぞれの形成における熱圧着において、前記範囲の線膨張係数となるようにピーク温度を制御する。
【0050】
絶縁層21は、金属板1に液晶ポリマーフィルム(LCPフィルム21a)を重ねて両面から加圧し、当該液晶ポリマーの融点近傍の温度に加熱することで、熱圧着(熱プレス)されて金属板1に貼り付けられて形成することができ、同時に、絶縁層21の上に設ける導電層3を形成する金属箔を貼り付けることができる。同様に、反射層22は、絶縁層21および導電層3が積層された金属板1に液晶ポリマーフィルム(LCPフィルム22a)を重ねて、熱圧着により貼り付けられて形成することができる(後記製造方法にて説明する)。このとき、先に形成された絶縁層21が変形、溶融しないように、絶縁層21、反射層22をそれぞれ形成する液晶ポリマー(LCPフィルム21a,22a)は、互いに液晶転移点等の熱的特性が異なるものを選択する。
【0051】
絶縁層21および反射層22を形成するためのLCPフィルム21a,22aは、回路基板用等に市販されている液晶ポリマーフィルムを適用でき、当該絶縁層21および反射層22に要求される特性に合った材料および厚さのものを選択する。反射層22を形成するLCPフィルム22aとしては、前記した通り、反射率の高い材料が好ましく、例えば(株)クラレ製のVecstar FB(白色、耐熱温度:300℃、熱圧着推奨条件:1MPa以上×300℃、線膨張係数:5ppm/℃、熱伝導率:(厚さ方向)0.2W/m・℃、(面方向)1.5W/m・℃)が適用できる。これに対して、絶縁層21を形成するLCPフィルム21aは、LCPフィルム22aよりも高耐熱性の、例えば多層回路基板用の高耐熱性の液晶ポリマーフィルムである(株)クラレ製のVecstar CT−Z(白色、耐熱温度:350℃、熱圧着推奨条件:4MPa以上×300〜305℃、線膨張係数:18ppm/℃、熱伝導率:(厚さ方向)0.2W/m・℃、(面方向)1.5W/m・℃)が適用できる。
【0052】
前記のLCPフィルム21a,22aの組み合わせにおいては、熱圧着温度は同程度であるが、LCPフィルム22aの方が、当該LCPフィルム22aの液晶転移点(熱変形温度)以上のある温度においてより軟化する。そこで、反射層22の形成においては、まず、LCPフィルム22aを重ねて、当該LCPフィルム22aの液晶転移点以上であって絶縁層21(LCPフィルム21a)が比較的硬い状態(好ましくは液晶転移点未満)の温度(推奨温度:150℃)に加熱して、LCPフィルム22aのみを変形し易い状態とする。このような温度下で加圧(推奨圧力:2MPa)することで、LCPフィルム22aのみを導電層3のパターンによる段差に合わせて変形させることができる。次に、絶縁層21が変形しないように圧力1MPaに低減して、熱圧着温度(300℃)に加熱することにより、LCPフィルム22aが導電層3および絶縁層21に接着されて反射層22を形成することができる。
【0053】
さらに反射層22を形成するLCPフィルム22aは、予め当該反射層22の形状に合わせて加工されている、詳しくは反射層22の平面視形状に切断されていることが好ましい(後記製造方法にて説明する)。反射層22とする液晶ポリマーの層を積層した後に加工する、具体的にはルーター加工等にて除去すると、端面にバリやスミアが発生して、これらを除去する後処理が必要となる。また、加工(除去)する領域の下に導電層3が形成されていない部分がある場合、液晶ポリマーの層は絶縁層21に直接に積層されているため、同じく液晶ポリマーからなる絶縁層21が同時に除去されないように加工することは困難である。
【0054】
(枠体)
枠体4は、発光装置50の照射領域を区画し、発光装置50の製造において、後記の透光性樹脂材料を当該枠体4の内側に充填させて封止部材9を形成するための堰として、発光素子搭載用基板10の上面に設けられる。また、枠体4は、図2に示すように、その内壁面で発光素子5から側方へ出射した光を上方へ反射させて発光装置50の光の取出し効率を向上させる。本実施形態に係る発光装置50は照射領域が円形であるため、枠体4は円環形状である。なお、枠体4は発光素子搭載用基板10に設けられていなくてもよく、発光装置50を製造する際に、例えば発光素子5および保護素子6の実装後に枠体4を形成することもできる。
【0055】
枠体4は、高さを特に限定しないが、図1および図2に示すように、内側に充填されて形成される封止部材9が発光素子5を完全に埋設して露出させない高さとなるようにする。また、枠体4は、発光素子5から側方へ出射して照射領域の外側へ向かう光をそのまま発光装置50の外に出射させないように、この外側へ向かう光を反射できる高さにすることが好ましい。
【0056】
枠体4はある程度の強度を有し、発光素子5の光や外光の透過し難い光透過率の低いかつ反射率が高い材料で形成されることが好ましい。また、枠体4は、先に当該枠体4の形状に成形されてから、発光素子搭載用基板10の上面(反射層22の表面)に貼り付けることもできるが、発光素子搭載用基板10上に液状やペースト状で成形してそのまま凝固させて形成されることが好ましい。詳しくは後記製造方法にて説明する。このような材料として、一般的な半導体発光素子のCOBパッケージに適用されるものと同様に、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂であるフェノール樹脂、エポキシ樹脂、BTレジン、PPA(ポリフタルアミド)、シリコーン等が挙げられるが、耐熱性および耐光性に優れるシリコーンが好ましい。シリコーンは硬化温度が最高で180℃程度であり、このような材料で枠体4を形成するにあたり、発光素子搭載用基板10(絶縁層21および反射層22)は十分な耐熱性を有する。また、枠体4は、反射率を高くするために白色であることが好ましく、前記のシリコーンに白色フィラーを混合した白色シリコーンが好適である。白色フィラーを混合することにより、シリコーンの高い熱膨張率を適度に低減して熱応力による不具合を防止することができる。さらに枠体4は、反射率をいっそう高くするために、前記樹脂材料に、発光素子5の光を吸収し難く、かつ母材である当該樹脂に対して屈折率差の大きい反射材料(例えばTiO2,Al23,ZrO2,MgO等)の粉末を、予め分散させて形成してもよい。
【0057】
(封止部材)
封止部材9は、発光素子5、保護素子6、反射層22から露出した導電層3すなわちリード部31c,32c,31d,32d、および発光素子5等とリード部31c,32c等との接続部を封止(埋設)して、塵芥、水分、外力等から保護するための部材であり、図1および図2に示すように、発光素子搭載用基板10上において枠体4の内側に樹脂材料を充填されて形成される。封止部材9は発光素子5等を完全に埋設すればよく、その表面形状は限定されず、例えば平坦であっても凸レンズ状であってもよく、製品としてユーザに提供する発光装置50の形態や用途に応じて適宜設計される。封止部材9は、一般的な半導体発光素子を搭載した発光装置と同様に、発光素子5の光を透過させる透光性樹脂材料で形成され、具体的には、ハイブリッドシリコーンを含めたシリコーン、エポキシ樹脂、ユリア樹脂等が挙げられるが、枠体4と同じく耐熱性および耐光性に優れるシリコーンが好ましい。また、これらの樹脂材料に、発光装置50の目的や用途に応じて蛍光物質、着色剤、光拡散剤、フィラー等を含有させてもよく、特に前記した通り、シリコーンは熱膨張率が高いため、フィラー等により熱膨張率を適度に低減することが好ましい。あるいは、封止部材9は、硬さを発光素子5等を保護できる程度に抑えて、応力緩和されるような構造とすることが好ましい。
【0058】
〔発光素子搭載用基板の製造方法〕
次に、本発明の第1実施形態に係る発光素子搭載用基板の製造方法の一例を、図3を参照して説明する。なお、図3は、簡略化のため、発光素子5の2個分の発光素子載置領域を含んで示す。発光素子搭載用基板10は、発光装置50の複数台分が面方向にマトリクス状に連結した状態で製造されてもよく、発光素子搭載用基板10の完成後、あるいはさらに発光装置50の封止部材9を形成した後に、1台ずつに発光素子搭載用基板10を切断、分離して発光装置50が完成となる。
【0059】
まず、金属板1の表面(上面)に、金属板1と同じ平面視形状の、絶縁層21用の液晶ポリマーフィルム(LCPフィルム)21aおよび導電層3用の銅箔を重ねて(図3(a)参照)、さらに熱圧着用のプレス熱盤等(図示省略)で挟んで上下から加圧しながら加熱する。圧力および温度はLCPフィルム21aに応じて設定する。この処理により、LCPフィルム21aを金属板1および銅箔に熱圧着にて密着させ、絶縁層21を形成する(図3(b)参照)。
【0060】
次に、銅箔上にレジストマスクを形成してエッチングすることにより、正極31および負極32の配線パターンを形成し、導電層3とする(図3(c)参照)。この上に、別工程で反射層22の平面視形状に加工した液晶ポリマーフィルム(LCPフィルム)22aを重ね(図3(d)参照)、さらにその上にクッション材(図示省略)を重ねて、熱圧着用のプレス熱盤等(図示省略)で挟んで上下から加圧しながらLCPフィルム22aの熱変形温度(液晶転移点)以上に加熱して、LCPフィルム22aを導電層3のパターンによる段差に合わせて変形させる。このとき、絶縁層21が変形しないような圧力および温度に設定する。また、クッション材を挟むことにより、導電層3およびLCPフィルム22aのパターン(有無)によらず、均一に加圧され、またLCPフィルム22aに形成された孔が僅かに上方に拡がるように変形させてテーパを付けることができる。なお、LCPフィルム22aを加工する際に、端面が傾斜するように打ち抜いて、孔が上方に拡がるように形成することがより好ましい。次に、絶縁層21が変形しないように圧力を下げて加圧し、LCPフィルム22aの熱圧着温度(融点近傍)に加熱して、LCPフィルム22aを導電層3および絶縁層21に熱圧着にて密着させ、反射層22を形成する(図3(e)参照)。2段階の加圧および加熱により、絶縁層21が変形せず、かつ反射層22の表面の導電層3の配線パターンによる凹凸が平坦化される。
【0061】
次に、電気めっきにて導電層3(銅箔)表面に金属めっき膜3aを形成する。このとき、反射層22により、当該反射層22が形成されていない領域、すなわちパッド部31b,32bおよびリード部31c,32c,31d,32d(31d,32dは図示省略)に金属めっき膜3aが形成される。最後に、枠体4を形成して発光素子搭載用基板10が完成する(図3(f)参照)。詳しくは、枠体4の平面視形状に合わせた環形状の吐出口(ノズル)を備えた樹脂吐出装置にて、ペースト状の樹脂材料を金属板1上(反射層22表面)の枠体4の形成位置に吐出し、熱処理等の樹脂材料に対応した処理により硬化または凝固させる。あるいは、枠体4の幅(環の太さ)に合わせた口径の吐出口で、上面に円を描きながら樹脂材料を吐出して、枠体4を形成することもできる。なお、枠体4の形成後に金属めっき膜3aを形成してもよい。
【0062】
〔発光装置の製造方法〕
本発明の第1実施形態に係る発光装置50は、発光素子搭載用基板10を用いて、発光素子をフリップチップ実装した一般的なCOB構造の発光装置と同様の方法で製造できる。すなわち、発光素子搭載用基板10上に、発光素子5および保護素子6をそれぞれの載置領域でフリップチップ実装する。詳しくは、Au−Snペーストをリード部31c,32c,31d,32dの所定箇所に塗布して、発光素子5および保護素子6を載置し、共晶温度に加熱して、共晶接合する。あるいは、発光素子5および保護素子6のパッド電極の最上層にAu−Sn合金層を予め形成したものを共晶接合することもできる。そして、枠体4の内側に透光性樹脂材料を充填し、必要に応じて熱処理や光照射等の処理により硬化して封止部材9を形成することにより、発光装置50が完成する。なお、前記したように、発光素子搭載用基板10に枠体4が設けられていない場合は、発光素子5および保護素子6の実装の前または後に枠体4を形成すればよい。あるいは発光装置50は、枠体4を設けない構成として、比較的高粘度の透光性樹脂材料を発光素子搭載用基板10の発光素子5等が配置された領域に盛り上げるように吐出し、硬化して封止部材9を形成することもできる(図示省略)。
【0063】
〔第2実施形態〕
第1実施形態に係る発光装置はフリップチップ実装型であったが、本発明に係る発光装置は、ワイヤボンディング実装型とすることもできる。以下、本発明の第2実施形態に係る発光装置およびその発光素子搭載用基板について、図4を参照して説明する。第1実施形態に係る発光装置および発光素子搭載用基板(図1、図2)と同一の要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0064】
第2実施形態に係る発光装置50Aは、ワイヤボンディング実装対応の発光素子5Aを発光素子搭載用基板10Aの発光素子載置領域にフェースアップ(FU)実装して、発光素子5Aの上面に位置するパッド電極(p電極とn電極)を、当該発光装置50Aの一対のリード電極である正極31Aおよび負極32Aにボンディングワイヤ(ワイヤ)Wにて接続し、発光素子5AおよびワイヤWを封止部材9で封止している。発光装置50Aは、当該発光装置50Aの照射領域以外における発光素子搭載用基板10Aの形状、ならびに発光素子5Aの搭載個数および配列(6個×4列=24個)は、第1実施形態に係る発光装置50と同様であるので、発光装置50と同一の外観(図1参照)である。
【0065】
(発光素子、保護素子)
発光素子5Aは、ワイヤボンディング実装対応である以外は第1実施形態と同様に公知の半導体発光素子を適用できるが、パッド電極が設けられた上面側へ比較的多く光を出射する構造であることが好ましい。発光素子5Aは、発光素子基板側の面を、一般的なフェースアップ実装対応の半導体素子の実装に適用される接合部材7Aで発光素子搭載用基板10Aに接合され、また、発光装置50Aにおける搭載個数および配列は特に規定されない。なお、保護素子6(図示省略)については、第1実施形態と同様に発光装置50Aに搭載されるが、ワイヤボンディング実装対応でもよいし、第1実施形態と同じフリップチップ実装対応でもよく、あるいは上下に電極を備えたものでもよい。
【0066】
(ワイヤ)
ワイヤWは、発光素子5Aのような電子部品を正極31Aおよび負極32Aへ電気的に接続するための導電性の配線である。ワイヤWは、ワイヤボンディングにて一般的に使用されるワイヤであり、材料としては、金、銅、白金、アルミニウムまたはそれらの合金が挙げられる。特に熱伝導率等に優れ、また発光素子5Aのパッド電極材料に一般に適用される金が好ましい。また、ワイヤWの径は特に限定されず、ワイヤWの材料、抵抗、ワイヤボンディングの条件、発光素子5Aや保護素子6の仕様等に応じて適宜選択される。
【0067】
〔発光素子搭載用基板〕
発光素子搭載用基板10Aは、発光装置50Aの照射領域における導電層3および反射層22の平面視形状以外は、第1実施形態に係る発光素子搭載用基板10と同じ構造であり、積層構造および各要素の材料、ならびに製造方法も同一である。したがって、金属板1およびその全面に形成される絶縁層21は第1実施形態にて説明した通りであるので、説明を省略する。
【0068】
(導電層)
導電層3は第1実施形態と同様に金属膜からなり、発光装置50Aの一対のリード電極を形成する正極31Aおよび負極32Aとして、絶縁層21上に形成される。前記した通り、導電層3の形状すなわち正極31Aおよび負極32Aの形状は、照射領域において第1実施形態と異なる。具体的には、正極31Aおよび負極32Aは、ワイヤボンディングによる接続のために、発光素子5Aの載置領域(発光素子5Aの直下)の外にリード部を設ける。ここで、第1実施形態のリード部31c,32cと同様に、各発光素子5Aについてリード部を一対ずつ設けることもできるが、ワイヤWとの接続のために当該リード部まで反射層22を形成せずに孔を大きくする必要があり、発光装置50Aの照射領域において導電層3が反射層22に被覆されずに露出する領域が多くなる。また、配列した発光素子5A,5A間に十分な間隔がないと、ワイヤボンディングに必要なリード部を設けることができない。本実施形態においては、図4に示すように、隣り合う発光素子5A,5Aの各パッド電極をワイヤWで直列または並列に接続し、配列の端に載置された発光素子5Aについてのみ、そのパッド電極をワイヤWで直接に正極31Aまたは負極32Aに接続できるように、24個の発光素子5Aが配列された領域(以下、適宜、発光素子5Aの配列領域)の外にリード部31e,32eを一対以上設ける(図4では負極32Aのリード部32eを示す)。なお、ワイヤWによる接続においては、第1実施形態と同様に、パッド部31b,32bに直列に接続される発光素子5Aの組は、その発光素子5Aの個数が同数に統一されているようにする。
【0069】
本実施形態においては、発光素子5Aの載置領域で当該発光素子5Aが電気的には接続されず、さらにリード部31e,32eは発光素子5Aの配列領域の外に設けられるので、前記領域において導電層3は、配線パターンに形成される必要がない。そこで、正極31Aを、負極32Aと短絡しないように、発光素子5Aの配列領域およびリード部31e(図示省略)を内包し、さらに発光装置50Aの照射領域の外側まで延設してパッド部31b(図1参照)を内包するように形成する。正極31Aに接合された発光素子5Aの熱が、当該正極31Aを伝導して効率的に発光装置50Aの外部に放熱される。なお、発光素子5Aの配列領域に設ける導電層3は負極32Aでもよく、この場合はリード部32eおよびパッド部32b(図1参照)を内包するように形成される。あるいは、発光素子5Aの配列領域において正極31Aと負極32Aとに二分して設けてもよく、正極31Aおよび負極32Aの両方から離間した金属膜としてもよい。
【0070】
また、導電層3(正極31A)は、発光素子5Aの配列領域に広く設けずに、反射層22から露出する領域においては発光素子5Aの載置領域(直下の領域)のみとして、それぞれの載置領域から反射層22に被覆される領域へ接続するように設けてもよい(図示せず)。導電層3をこのような形状としても、発光素子5Aの熱が直下の導電層3に伝導されるために効率的に放熱され、さらに反射層22から露出する導電層3の面積が少ないため、導電層3の変色による発光装置50Aの光の取出し効率の経時劣化を抑制することができる。
【0071】
導電層3は、第1実施形態と同様に、表面に金属めっき膜3aを備えてもよい。第2実施形態においても、金属めっき膜3aは、発光素子5Aの載置領域を含む反射層22で被覆されない領域、およびリード部31e,32e,31d,32dに設けることが好ましく、図4に示すように、導電層3の全面に設けてもよい。
【0072】
(反射層)
反射層22は、第1実施形態に係る発光素子搭載用基板10(図1参照)と同様に、発光素子5Aの載置領域(発光素子5Aの6個分×4本)、保護素子6の載置領域、およびパッド部31b,32bを形成する領域に加え、リード部31e,32eのワイヤWで接続される箇所を空けて形成される。
【0073】
〔発光装置の製造方法〕
本発明の第2実施形態に係る発光装置50Aは、発光素子搭載用基板10Aを用いて、発光素子をワイヤボンディング実装した一般的なCOB構造の発光装置と同様の方法で製造できる。すなわち、発光素子搭載用基板10A上に、発光素子5Aおよび保護素子6をそれぞれの載置領域で導電層3に接合する(ダイボンディング)。接合部材7Aの材料によっては、発光素子5Aおよび保護素子6を配列した後、発光素子搭載用基板10Aを加熱して接合部材7Aを硬化する、あるいは溶融して接着固定する。そして、ワイヤボンディングにより、発光素子5Aのそれぞれのパッド電極にワイヤWを接続し、リード部31e,32eへ電気的に接続する。同様に、保護素子6を接続する。そして、第1実施形態と同様に、枠体4の内側に透光性樹脂材料を充填し、硬化して封止部材9を形成することにより、発光装置50Aが完成する。
【0074】
〔第2実施形態の変形例〕
第2実施形態に係る発光素子搭載用基板10Aは、両面電極型の発光素子を搭載することもできる。例えば上面(発光装置の光の照射面)にp電極が位置する発光素子を搭載する場合は、発光素子が配列される領域の導電層3を負極32Aとして、前記領域の外に正極31Aのみについてリード部31eを設ける。発光素子のn電極を導電性の接合部材7で負極32Aに接続し、p電極をワイヤボンディングでリード部31eに接続すればよい(図示省略)。保護素子6についても、その仕様に応じてリード部31d,32dの形状を設計し、また実装方法を選択すればよい。
【0075】
前記第1、第2実施形態に係る発光装置において、発光素子は照射領域の中心に集中して配列させているが、配列および搭載個数は限定されず、1個の発光素子を搭載してもよいし、照射領域に均等に配列してもよい。同様に、発光装置の照射領域の形状は円形に限られず、したがって枠体の形状は円環形状に限られず前記照射領域に合わせて閉じた環状に形成される。また、発光素子搭載用基板の概形は平板形状に限られず、例えばプレス加工により成形した金属板を用いてもよい。これらは、製品としてユーザに提供する発光素子搭載用基板または発光装置の形態や用途に応じて、適宜設計される。
【0076】
以上、本発明に係る発光素子搭載用基板および発光装置について、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0077】
10,10A 発光素子搭載用基板
1 金属板
21 絶縁層
22 反射層
21a,22a LCPフィルム(シート状に成形された液晶ポリマー)
3 導電層
3a 金属めっき膜(めっき膜)
31,31A 正極(リード電極)
31b パッド部
31c,31e リード部
31d リード部
32,32A 負極(リード電極)
32b パッド部
32c,32e リード部
32d リード部
4 枠体
50,50A 発光装置
5,5A 発光素子
6 保護素子
7,7A 接合部材
9 封止部材
W ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の発光素子をそれぞれの所定の載置領域上に載置して実装する発光装置に使用される発光素子搭載用基板であって、
金属板と、液晶ポリマーからなる絶縁層と、金属膜からなる導電層と、液晶ポリマーからなる絶縁性の反射層と、をこの順に積層して備え、
前記導電層は、前記絶縁層上で互いに離間した前記発光装置の一対のリード電極を形成し、
前記反射層は、少なくとも前記載置領域を空けて形成されて前記導電層の一部を表面に露出させていることを特徴とする発光素子搭載用基板。
【請求項2】
前記絶縁層は、面方向における線膨張係数が1〜30ppm/℃であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子搭載用基板。
【請求項3】
前記反射層は、面方向における線膨張係数が1〜30ppm/℃であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光素子搭載用基板。
【請求項4】
前記絶縁層は、シート状に成形された液晶ポリマーを熱圧着して形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の発光素子搭載用基板。
【請求項5】
前記反射層は、シート状に成形された液晶ポリマーを、前記絶縁層が熱変形しない温度および圧力で熱圧着して形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の発光素子搭載用基板。
【請求項6】
前記シート状に成形された液晶ポリマーは、前記反射層の形状に合わせて加工されていることを特徴とする請求項5に記載の発光素子搭載用基板。
【請求項7】
前記導電層は、前記反射層から露出した表面に、光反射率の高い金属からなるめっき膜を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の発光素子搭載用基板。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の発光素子搭載用基板と、前記発光素子搭載用基板の一対のリード電極に電気的に接続された1以上の発光素子と、前記発光素子を封止する当該発光素子が発光した光を透過させる封止部材と、を備え、
前記発光素子は、前記発光素子搭載用基板の前記載置領域上で前記導電層の露出した表面に接触して載置されていることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
前記発光素子は、前記発光素子搭載用基板の所定の実装領域に複数が配列されて載置されていることを特徴とする請求項8に記載の発光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−174808(P2012−174808A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33856(P2011−33856)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】