説明

発光素子

蛍光体を含む発光体層(2)と、少なくとも2つの電極(6,7)を含む発光素子(1)であって、前記発光素子(1)は異なる誘電率を有する少なくとも2種の電気的絶縁体層(2,9)を含み、前記電気的絶縁体層(2,9)の1つは前記発光体層(2)であり、前記2つの電極(6,7)のうちいずれかの電極は、前記絶縁体層のいずれかと接して形成されている。これにより、沿面放電を利用して発光でき、製造コストが安く、発光効率が良好であり、大画面ディスプレイを作製した際の消費電力が小さい発光素子を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光素子に関するものである。特に構成が簡単で製造が容易であり、かつ低消費電力である大画面ディスプレイの単位画素を構成する発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大型のフラットディスプレイとして液晶ディスプレイやプラズマディスプレイが広く使用されるようになってきているが、さらに高画質、高効率であるディスプレイを追求する開発が進められている。このようなディスプレイの候補として、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や電界放出ディスプレイ(FED)がある。非特許文献1にはELDについて、概ね次のように記載されている。前者は発光層である蛍光体に絶縁層を介して電界を加える構造を基本とするものであり、分散型と薄膜型が知られている。分散型は不純物のCuなどを添加したZnSの粒子を有機物バインダー中に分散させ、この上に絶縁層を形成し、上下の電極で挟持する構造を有する。不純物は蛍光体粒子中にpn接合を形成し、電界が印加されると接合面に発生する高電界により放出された電子が加速されたのち、正孔と再結合して発光する。後者は発光層であるMnドープZnSなどの蛍光体薄膜が絶縁体層を介して電極を配置する構造を有している。絶縁体層が存在することにより発光層には高電界を印加することが可能となり、電界で加速された放出電子が発光中心を励起し発光する。一方、FEDは真空容器中に電子放出素子とこれに対向させた蛍光体よりなる構造を有し、電子放出素子より真空中に放出された電子を加速して蛍光体層に照射し発光させるものである。
【0003】
いずれのデバイスも電子放出が発光のきっかけとなるため、低電圧、高効率で電子を放出する技術が重要である。このような技術として強誘電体の分極反転による電子放出が着目されている。例えば、下記非特許文献2には、図20で示すように、一方の面に設置された平面電極32と他方の面に設置された格子状電極33を有するPZTセラミック31を真空容器36中でグリッド電極35を介して白金電極34に対向させ、電極間にパルス電圧を印加することにより、電子が放出されることを提案している。37は排気口である。同提案によれば、容器内の圧力は1.33Pa(10−2Torr)であり、大気圧では放電しないと記載されている。
【0004】
強誘電体の分極反転により放出される電子を真空容器中で加速し、蛍光体層を発光させること、あるいはこの発光を用いたディスプレイは、下記特許文献1や下記特許文献2にも記載されているが、基本的な構成は非特許文献2の白金電極に代えて、蛍光体層を有する電極とする構成により、蛍光体層を発光させるものである。
【0005】
一方、強誘電体の分極反転による放出電子を非真空中で用いた発光素子は例えば、下記特許文献3に電気発光面光源素子として開示されている。この素子は、図21に示すように、基板45上に下部電極42、強誘電体薄膜41、上部電極43、キャリア増倍層48、発光層44、透明電極46の順で形成されており、上部電極は開口部47を有している。下部電極と上部電極間の印加電圧パルスを反転させることにより電子が上部電極開口部よりキャリア増倍層に放出され、さらに透明電極に印加された正の電圧により加速され、電子を増倍しつつ発光層に達して発光する。キヤリア増倍層は誘電率が比較的低く、かつ発光層で放出される発光波長を吸収しないバンドギャップを有する半導体で構成されていることが記載されている。この素子は、一種のELDと考えることができる。また、特許文献4には、スパッタにより形成された蛍光体からなる発光層を表裏の絶縁層で挟持してパルス電界を印加する構成において、一方の絶縁体が強誘電体薄膜からなる構成が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平07−64490号公報
【特許文献2】米国特許第5453661号明細書
【特許文献3】特開平06−283269号公報
【特許文献4】特開平08−083686号公報
【非特許文献1】松本正一編著、「電子ディスプレイ」、オーム社、平成7年7月7日、p.113−125
【非特許文献2】Jun−ichi Asano他,’Field−Exited Electron Emission from Ferroelectric Ceramic in Vacuum’Japanese Journal of Applied Physics Vol.31 Part1 p.3098−3101,Sep/1992

前記従来技術において、真空状態を必要とするものは構造が複雑でかつ大画面化が極めて困難であるといった問題がある。例えば、電界放出ディスプレイ(FED)は高い発光効率を期待できるものの、電子線を放出するための真空度の高い空間を維持ずる真空容器が必要である。このため、ディスプレイの構造が複雑となり、大画面構造の実現は困難であると考えられている。FEDについては未だに製品化されているものは存在しない。
【0007】
また、真空容器を必要としないものにプラズマディスプレイがある。プラズマディスプレイは放電エネルギーを一旦紫外光エネルギーに変換し、この紫外光が蛍光体を励起することにより発光する。蛍光体を励起する過程において、この紫外光は蛍光体以外の部材による吸収が多く、このため、発光効率を高くすることが困難であり、大画面ディスプレイとしたときの消費電力が大きいという問題がある。
【0008】
また、同じく真空容器を必要としないディスプレイにはELがあるが、無機ELは発光効率やその色再現性などに問題があり、有機ELは、液晶ディスプレイなどの製造に用いる薄膜形成プロセスを用いるため、設備が大型になるという問題がある。さらに大画面化が困難であり、未だ製品化されたものは知られていない。
【発明の開示】
【0009】
本発明の発光素子は、蛍光体を含む発光体層と、少なくとも2つの電極を含む発光素子であって、前記発光素子は異なる誘電率を有する少なくとも2種の電気的絶縁体層を含み、前記電気的絶縁体層の1つは前記発光体層であり、前記2つの電極のうちいずれかの電極は、前記絶縁体層のいずれかと接して形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の発光原理は、少なくとも2つの電極間で絶縁破壊を起こし、一次電子(e−)を発生させ、一次電子(e−)は発光層の蛍光体粒子に衝突し沿面放電となり、さらに二次電子(e−)が多数発生し、これにより雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子が励起されて発光する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の実施の形態1における発光素子の断面図。
【図2】図2は本発明の実施の形態1における発光素子の製造工程を説明するための図。
【図3】図3は本発明の実施の形態1における発光素子の製造工程を説明するための図。
【図4】図4は本発明の実施の形態1における発光素子の製造工程を説明するための図。
【図5】図5は本発明の実施の形態1における発光素子の製造工程を説明するための図。
【図6】図6は本発明の実施の形態1における多孔質発光層の断面を拡大した模式図。
【図7】図7は本発明の実施の形態2における発光素子の断面図。
【図8】図8は本発明の実施の形態3における発光素子の断面図。
【図9】図9は本発明の実施の形態4における発光素子の断面図。
【図10】図10は本発明の実施の形態4における発光素子の製造工程を説明するための図。
【図11】図11は本発明の実施の形態4における発光素子の製造工程を説明するための図。
【図12】図12は本発明の実施の形態4における発光素子の製造工程を説明するための図。
【図13】図13は本発明の実施の形態4における発光素子の製造工程を説明するための図。
【図14】図14は本発明の実施の形態5における多孔質発光層の断面を拡大した模式図。
【図15】図15は本発明の実施の形態5における多孔質発光層の断面を拡大した模式図。
【図16】図16は本発明の実施の形態6における発光素子の分解斜視図。
【図17】図17は本発明の実施の形態1における発光の作用機能を示す説明図。
【図18】図18は本発明の実施の形態7における発光素子の断面図。
【図19】図19は本発明の実施の形態8における発光素子の断面図。
【図20】図20は非特許文献2における従来例の発光素子の断面図。
【図21】図21は特許文献3における従来例の発光素子の断面図。
【図22】図22は本発明の実施の形態9における発光素子の断面図。
【図23】図23は本発明の実施の形態10における発光素子の断面図。
【図24】図24は本発明の実施の形態11における発光素子の断面図。
【図25】図25は本発明の実施の形態12における発光素子の断面図。
【図26】図26は本発明の実施の形態13における発光素子の断面図。
【図27】図27は本発明の実施の形態14における発光素子の断面図。
【図28】図28は本発明の実施の形態15における発光素子の断面図。
【図29】図29は本発明の実施の形態16における発光素子の断面図。
【図30】図30A−Fは図29に示した発光素子の製造方法を説明するための工程断面図。
【図31】図31は本発明の実施の形態17における発光素子の断面図。
【図32】図32A−Gは図31に示した発光素子の製造方法を説明するための工程断面図。
【図33】図33は本発明の実施の形態18における発光素子の断面図。
【図34】図34A−Cは図33に示した発光素子の製造方法を説明するための工程断面図。
【図35】図35は本発明の実施の形態19における発光素子の断面図。
【図36】図36A−Dは図35に示した発光素子の製造方法を説明するための工程断面図。
【図37】図37A−Cは本発明の実施の形態20における電子放出体の製造方法を説明するための工程断面図。
【図38】図38は本発明の実施の形態21における発光素子を構成する多孔質発光体の断面図。
【図39】図39は本発明の実施の形態21における発光素子を構成する多孔質発光体の断面図。
【図40】図40は本発明の実施の形態21における発光素子を構成する多孔質発光体の断面図。
【図41】図41は本発明の実施の形態21における発光素子を構成する多孔質発光体の断面の模式図。
【図42】図42は本発明の実施の形態21における発光素子を構成する多孔質発光体の断面の模式図。
【図43】図43は本発明の実施の形態22における電界放出ディスプレイの主要部の分解斜視図。
【図44】図44は本発明の実施の形態22における発光素子アレイの断面図。
【図45】図45A−Cは本発明の実施の形態23における発光素子アレイの断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の発光素子は、背面側から第一の電極と、誘電体層と、多孔質発光層と、第二の電極を少なくとも含み、前記多孔質発光層と電極の間に間隙を設けている。これにより、第一の電極と第二の電極の間に交流電界を印加すると、前記間隙で気体の絶縁破壊が起こり、一次電子の発生が促進される。この一次電子により、電極間の多孔質発光層で沿面放電が発生し、二次電子や紫外線が放出される。放出された二次電子や紫外線が多孔質発光層の発光中心を励起することにより発光する。
【0013】
前記間隙は任意のものとすることができるが、1μm以上300μm以下の範囲で設けることが好ましい。1μm未満では間隙の制御が困難となる傾向になり、300μmを超えると絶縁破壊を起こすのが困難となる傾向にある。一般的に大気中での空気の絶縁破壊は3kV/mmで、300V以上(100μmの間隙で)の電界を印加する必要がある。減圧すれば300V以下で絶縁破壊が起こるが、高電圧をかけるとセル構造の色々な箇所にダメージを生ずる。したがって、ダメージを生じない程度の電圧をかけるために前記間隔の範囲が好ましい。前記間隔は10μm以上100μm以下がより好ましい。
【0014】
本発明の発光素子は多孔質発光層での沿面放電による発光であり、多孔質発光層の形成には薄膜形成プロセス、真空系、キャリア増倍層等を必要としないので構造が簡単であり、製造が容易である。また、発光効率が良好であり、大型ディスプレイを作製した際の消費電力が比較的小さいものとなる。さらに、本発明の発光素子は多孔質発光層間に放電分離手段を設けても良く、これにより、発光の際のクロストークを回避できる。ここでクロストークとは、ある画素と隣り合う画素同士の発光が互いに影響して発光効率を落とす現象をいう。
【0015】
本発明の放電分離手段は、特に隔壁及び/又は空間等を設けて構成することが好ましい。前記多孔質発光層を分離する隔壁は、厚さ80〜300μmの電気的絶縁体とするのが好ましい。
【0016】
隔壁にする場合は、無機材料で形成するのが好ましい。無機材料としては、ガラス、セラミック、誘電体等を使用することができる。誘電体としては、Y,LiO,MgO,CaO,BaO,SrO,Al,SiO,MgTiO,CaTiO,BaTiO,SrTiO,ZrO,TiO,B,PbTiO,PbZrO,PbZrTiO(PZT)等がある。
【0017】
前記放電分離手段として空隙にする場合は、空隙距離を80〜300μmとするのが好ましい。
【0018】
前記多孔質発光層と第二の電極の間の間隙は、リブによって厚み方向に仕切っても良い。リブの壁面から、絶縁破壊による電子の発生が起こりやすいからである。リブの好ましい材質は、隔壁の材料と同じ材料から選択できる。リブ及び隔壁の表面はできるだけ平滑面であることが好ましい。平滑面であると、発生した電子がリブを伝ってホッピング(hopping)し易く、多孔質発光層の発光効率を上げることができる。
【0019】
前記発光素子内の雰囲気は、大気、酸素、窒素及び希ガスから選ばれた少なくとも1つであることが好ましい。
【0020】
前記発光素子の雰囲気は、減圧された前記気体から選ばれた少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0021】
前記多孔質発光層は、少なくとも赤(R)、緑(G)又は青(B)を発光することが好ましい。
【0022】
前記多孔質発光層は、表面に絶縁層を有する蛍光体粒子で形成されていることが好ましい。
【0023】
前記多孔質発光層は、蛍光体粒子と絶縁性繊維で形成されていることが好ましい。
【0024】
前記多孔質発光層は、表面に絶縁層を有する蛍光体粒子と絶縁性繊維で形成されていることが好ましい。
【0025】
前記多孔質発光層の見かけ気孔率は10%以上〜100%未満の範囲にあることが好ましい。多孔質発光層中(蛍光体粒子と空隙の集合体)で電子をホッピングさせるため、個々の蛍光体粒子間の空隙が電子の平均自由行程よりも短いことが必要であるが、前記範囲であれば、電子のホッピングは阻害されない。
【0026】
前記第一又は第二の電極がアドレス電極又は表示電極であることが好ましい。
【0027】
前記第二電極は透明電極であり、観察面側に配置されていることが好ましい。
【0028】
本発明の発光素子は誘電体層と多孔質発光体層と一対の電極と、他の電極を含む発光素子であって、前記多孔質発光体層は無機蛍光体粒子を含み、前記一対の電極は前記誘電体層の少なくとも一部に電界が印加されるように配置され、かつ前記他の電極は前記他の電極と前記一対の電極の少なくとも一方との間において、前記多孔質発光体層の少なくとも一部に電界が印加されるように配置されている。すなわち、例えば3端子発光素子等の多端子発光素子である。上記のように構成することにより、一対の電極間に分極反転する電界を印加すると、まず誘電体層から分極反転により一次電子の放出が起こる。その後、他の電極と前記一対の電極の少なくとも一方の間に交番電界を印加することにより、放出された一次電子が多孔質発光体層で雪崩的に沿面放電し二次電子を発生させる。最後に多量に発生した二次電子が発光中心を励起して前記多孔質発光体層が発光する。
【0029】
前記一対の電極は、誘電体層に配置されていてもよい。前記一対の電極のうち、一方は誘電体層と多孔質発光体層の境界に配置され、他方が誘電体層に配置されていてもよい。また、前記他の電極は多孔質発光体層に配置されていてもよい。また、前記一対の電極は、誘電体層と多孔質発光体層の境界を挟んで形成されていてもよい。また、前記一対の電極は、ともに誘電体層と多孔質発光体層の境界に形成されていてもよい。さらに、前記一対の電極のうち、一方の電極が誘電体層と多孔質発光体層の境界に形成され、他方の電極が誘電体層に形成されていてもよい。
【0030】
前記多孔質発光体層は、前記多孔質発光体層表面につながる連続する細孔と、前記細孔に充填されている気体と、蛍光体粒子により構成されていてもよい。前記細孔に充填されている気体は、大気、酸素、窒素及び不活性ガスの少なくとも一種類及び減圧気体から選ばれる少なくとも一つの気体とすることができる。
【0031】
前記誘電体層は、誘電体の焼結体で構成されていてもよい。また、前記誘電体層は、誘電体粒子と結合剤により構成されていてもよい。また、前記誘電体層は、薄膜で形成されていてもよい。また、前記多孔質発光体層は、蛍光体粒子と前記蛍光体粒子表面の絶縁層により構成されていてもよい。また、前記多孔質発光体層は、蛍光体粒子と絶縁性繊維により構成されていてもよい。また、前記多孔質発光体層は、蛍光体粒子と前記蛍光体粒子表面の絶縁層と絶縁性繊維により構成されていてもよい。
【0032】
前記一対の電極への分極反転のための電界の印加により、誘電体層から一次電子が放出され、放出された一次電子が多孔質発光体層で雪崩的に沿面放電し二次電子を発生させて、前記沿面放電により発生した多量の二次電子が蛍光体粒子に衝突し前記多孔質発光体層が発光するのが好ましい。前記発光を大気、酸素、窒素及び不活性ガス雰囲気中及び減圧気体から選ばれる少なくとも一種類のガス雰囲気中で実施してもよい。また、前記一対の電極間に分極が反転する電界を印加した後、他の電極と前記一対の電極の少なくとも一方の電極との間に交番電界を印加するのも好ましい。
【0033】
本発明の発光素子は多孔質発光体を含む発光素子であって、絶縁性蛍光体粒子を含む多孔質発光体からなり、前記多孔質発光体に所定以上の電界を印加して電荷移動させるように構成されている。
【0034】
また、本発明の発光素子は電子放出体、多孔質発光体及び一対の電極を含む発光素子であって、多孔質発光体は無機蛍光体粒子を含み、かつ多孔質発光体は電子放出体から発生する電子によって照射されるように電子放出体に隣接して配置され、一対の電極は前記多孔質発光体の少なくとも一部に電界が印加されるように設置して構成されている。
【0035】
上記のようにすれば、電子放出体による電子の放出を行わせ、前記一対の電極間に交番電界を印加することにより、放出された電子が多孔質発光体層で雪崩的に沿面放電を発生させる。その結果、放出された電子により発光中心を励起して前記多孔質発光体を発光させる。なお、前記の交番電界の代わりに直流電界でも差し支えない。
【0036】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
(実施の形態1)
図1乃至図6を参照しながら説明する。この例は、多孔質発光層の一方の面に誘電体層と第一の電極がそれぞれ形成され、前記多孔質発光層の前記誘電体層と前記第一の電極が形成されていない他の面に第二の電極が配置された複数個の前記多孔質発光層の集合体からなり、前記複数個の多孔質発光層間に放電分離手段を具備している。特に複数個のうちの一部の多孔質発光層が誘電体層を共有してなり、放電分離手段が隔壁で形成された発光素子である。
【0038】
図1は本実施の形態における発光素子の断面図であり、図2乃至図6は本実施の形態における発光素子の製造工程を説明するための図である。これらの図において、1は発光素子、2は多孔質発光層、3は蛍光体粒子、4は絶縁層、5は基板、6は第一の電極(背面電極),7は第二の電極(観察面電極)、8は透光性基板、9は間隙(気体層)、10は誘電体層及び11は隔壁である。
【0039】
図2に示すように、厚みが0.3〜1.0mmの誘電体10の焼結体の片面にAgペーストを30μmの厚さに焼き付けて、第一の電極6を所定の形状に形成する。次に、図3に示すようにガラス又はセラミック製の基板5上に図2で示した電極が形成された誘電体層を接着させた。
【0040】
本実施の形態では誘電体としてBaTiOを用いたが、SrTiO,CaTiO,MgTiO,PZT(PbZrTiO),PbTiOなどの誘電体を用いても同様の効果が得られる。またAl,MgO,ZrOなどの誘電体を用いても同様の効果が得られるが比誘電率が大きい前記誘電体に比べ発光度が弱くなった。これは誘電体層の厚みを薄くすることで改善できる。
【0041】
また、誘電体層にはスパッタ、CVD、蒸着等の分子堆積法又はゾル・ゲル等の薄膜形成プロセスで誘電体層を形成することもできる。誘電体層として焼結体を用いる場合には、これを基板5と兼用することができる。誘電体層の厚みは焼結体を使用した場合や,厚膜プロセスで形成した場合で極端に変わる。しかし実際には容量成分が必要であり誘電率との関係で調整する。
【0042】
次に、誘電体層10の上に図4に示すように、所定の形状に複数個の多孔質発光層2をスクリーン印刷で形成する。
【0043】
多孔質発光層2は、図6に示すように、MgO等の金属酸化物からなる絶縁層4で表面を被覆した蛍光体粒子3を下記の要領で準備する。
【0044】
蛍光体粒子3として、平均粒径が2〜3μmのBaMgAl1017:Eu2+(青),ZnSiO:Mn2+(緑),YBO:Eu3+(赤)等の無機化合物を用いることが可能である。その表面にMgOからなる絶縁層4を形成する方法はいずれの蛍光体粒子についても共通であり、具体的にはMgプレカーサー錯体溶液に蛍光体粒子3を加えて長時間にわたって攪拌してから蛍光体粒子を取り出して乾燥後、大気中において400〜600℃で熱処理することにより、MgOの均一なコーティング層、すなわち絶縁層4を蛍光体粒子3の表面に形成させた。
【0045】
本実施の形態においては上記の絶縁層4を有する蛍光体粒子50質量%に対してテルピネオール(α−テルピネオール)45質量%、エチルセルロース5質量%を混練したペーストをそれぞれの蛍光体毎に調製し、これを用いて図4に示すように、所定の形状にスクリーン印刷してから乾燥する操作を複数回にわたって繰り返し行うことにより、印刷された多孔質発光層の厚さが80〜100μmになるように調整した。
【0046】
なお、多孔質発光層から発光については図4に示すように、赤(R)、緑(G)及び青(B)の発光が得られるように、それぞれの発光色毎に多孔質発光層を順々に所定のパターン(例えば、ストライプ状)にそれぞれ印刷して、規則的に並べた多孔質発光層を形成する方法が一般的であるが、白色発光の得られる発光層を形成し、のちにカラーフィルターで色の分離を行うことにより所望の発光色が得られるようにしても差し支えない。
【0047】
上記のようにして、多孔質発光層を印刷した基板5を最終的にN雰囲気中において、400〜600℃で2〜5時間にわたって熱処理することにより、約50〜80μmの厚さの多孔質発光層2の集合体を形成した。
【0048】
また、前記ペーストは蛍光体粒子に有機バンダーや有機溶剤を加えて実施したが、蛍光体粒子にコロイダルシリカ水溶液を加えたペーストを用いても同様の効果が得られた。
【0049】
図6は本実施の形態における多孔質発光層2の断面を拡大した模式図であり、MgOからなる絶縁層4で均一に被覆された蛍光体粒子3が熱処理を施された結果、それぞれの粒子が互いに接触した状態で多孔質発光層を形成しているようすを示している。
【0050】
本実施の形態においては熱処理温度が比較的低く設定されているため、多孔質発光層の気孔率は大きくなり、その見かけ気孔率は10%以上〜100%未満の範囲である。気孔率が非常に大きくなり100%のスカスカの状態になると発光効率が低下することや多孔質発光層の内部で空気放電を発生させる原因になり好ましくない。逆に、気孔率が10%未満になると沿面放電の発生を阻害する。(沿面放電は気体(この場合空隙)と絶縁体固体(蛍光体粒子)の界面で発生します.見かけ気孔率が小さくなると空隙が存在しなくなり沿面放電が発生しにくくなります.逆に,見かけ気孔率が大きくなると前記したように電子の平均自由行程よりも大きくなるので沿面放電が発生しにくくなる)因みに、見かけ気孔率が10%以上〜100%未満の範囲では蛍光体粒子が三次元的に隣り合うように点接触している状態に近いものと推定される。
【0051】
次に、多孔質発光層2からなる集合体において、多孔質発光層の境界にガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥させる操作を複数回繰り返して、しかるのちに600℃で熱処理すると図5に示すように約80〜300μmの隔壁11が形成される。本実施の形態では隔壁11は多孔質発光層を形成してからのちに行ったが、先に隔壁を形成しても差し支えない。また、隔壁11はセラミック粒子を含有するガラスペーストや樹脂を用いて形成することも可能である。具体的には、前者ではセラミックとガラス(重量比で1:1)の混合粒子50質量%に対してα−テルピネオール50質量%を加えて混練したペーストを所定のパターンにスクリーン印刷してから乾燥することを繰り返し、印刷された厚さが約100〜350μmになるように調整し、N雰囲気中において、400〜600℃で2〜5時間にわたって熱処理することにより、約80〜300μmの厚さの隔壁11を形成することができる。後者においては熱硬化性樹脂を用いて隔壁を形成するものであり、主たるものとしてエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂の使用が可能であり、これらのうちの1つを多孔質発光層の空隙にスクリーン印刷することにより行うことができる。
【0052】
上記のようにして、隔壁11を形成してからITO(インジウムー錫酸化物合金)からなる第二の電極7が多孔質発光層に対向して位置するようにあらかじめ形成されたガラス板等の透光性基板8で多孔質発光層の集合体の全体を覆うと、図1に示すような本実施の形態における発光素子1が得られる。その際、多孔質発光層2と第二の電極7の間にはわずかな間隙が生じるようにコロイダルシリカ、水ガラス又は樹脂等を用いて透光性基板8を隔壁11の上に貼付する。多孔質発光層2と第二の電極7の間隙9の垂直方向の幅は30〜250μmの範囲が好適であり、特に40〜220μmの範囲が好ましい。上記の範囲を超えると、気体の絶縁破壊による一次電子の発生に高電圧を印加する必要があり、経済性や信頼性の理由から好ましくない。また、上記の範囲より間隔は狭くても差し支えないが、多孔質発光層を均一に満遍なく発光させるためには、多孔質発光層が第二の電極と接触しない程度の間隔が望ましい。
【0053】
なお、第二の電極としてITOからなる透光性基板8の代替として、銅の配線が施された透光性基板を使用することも可能である。銅の配線は微細なメッシュ状に形成されていて、開口率(配線が施されていない部分の全体に対する割合)は90%であり、光の透過はITO膜を有する透光性基板に比較してほとんど遜色がない。また、銅はITOに比較して、かなり低抵抗であることから発光効率の向上に大きく寄与するので好都合である。なお、微細なメッシュ状の配線を施す金属としては銅以外に金、銀、白金やアルミニウムを使用することも可能である。ただし、銅やアルミニウムの場合には酸化の可能性が有るので耐酸化の処理が必要である。
【0054】
上述のようにして、本実施の形態では多孔質発光層の一方の面に誘電体層と第一の電極がそれぞれ形成され、前記多孔質発光層の前記誘電体層と前記第一の電極が形成されていない他の面に第二の電極が配置された複数個の前記多孔質発光層の集合体からなり、前記複数個の多孔質発光層間に放電分離手段を具備してなる発光素子であって、特に前記複数個の多孔質発光層間に放電分離手段として隔壁が形成され、複数個のうちの一部の多孔質発光層が誘電体層を共有するように前記誘電体層が前記複数個のうちの一部の多孔質発光層に形成されてなる発光素子を作製することができる。
【0055】
本実施の形態においては蛍光体粒子3の表面をMgOからなる絶縁層4で被覆した。これにより、MgOは抵抗率が高く(10Ω・cm以上)、沿面放電を効率よく発生させることができる。絶縁層の抵抗率が低い場合には沿面放電が発生し難く、ときには短絡する恐れがあるため好ましくない。このような理由から抵抗率が高い絶縁性金属酸化物で被覆することが望ましい。もちろん使用する蛍光体粒子自体の抵抗率が高い場合には絶縁性金属酸化物で被覆しなくても沿面放電が容易に発生する。絶縁層としては、上記のMgO以外に、Y,LiO,CaO,BaO,SrO,Al,SiO,ZrOから選択された少なくとも1つを用いることができる。これらの酸化物の標準生成自由エネルギーΔGf0は非常に小さく(例えば、室温で−100kcal/mol以下)、安定な物質である。また、これらの絶縁層は抵抗率が高く放電が発生し易く、還元され難い物質であるため、放電に際して蛍光体粒子の還元、さらには紫外線劣化を抑制する保護膜としても優れていて、その結果蛍光体の耐久性も高くなり好都合である。
【0056】
また、絶縁層の形成には上記のゾル・ゲル法以外に化学吸着法や、CVD法、スパッタ法、蒸着法、レーザ法、剪断応力法などを用いる物理吸着法によって行うことも可能である。絶縁層は均質、均一であって剥離しないことが望ましく、絶縁層を形成する際には蛍光体の粒子を酢酸、シュウ酸、クエン酸などの弱酸溶液に浸漬し、表面に付着している不純物を洗浄することが肝要である。
【0057】
さらに、絶縁層を形成する前に蛍光体の粒子を窒素雰囲気中で200〜500℃、1〜5時間程度前処理することが望ましい。通常の蛍光体粒子は吸着水や結晶水を多量に含んでおり、このような状態で絶縁層を形成すると輝度低下や発光スペクトルのシフト等の寿命特性に好ましくない影響を及ぼすことになるからである。蛍光体の粒子を弱酸性溶液で洗浄する場合にはその後によく水洗してから上記の前処理を行う。
【0058】
また、多孔質発光層を形成する熱処理工程で留意すべきことは、熱処理温度と雰囲気である。本実施の形態では窒素雰囲気中で450〜1200℃の温度範囲で熱処理を施したために、蛍光体にドープされた希土類原子の価数に変化がなかった。しかし、この温度範囲より高温で処理するときには希土類原子の価数が変化することや絶縁層と蛍光体からなる固溶体が発生する可能性があり注意が必要である。
【0059】
また、熱処理温度の上昇と共に多孔質発光層の見かけ気孔率が小さくなることにも注意が必要であり、これらのことから判断すると最適の熱処理温度としては450〜1200℃の範囲が好ましい。熱処理雰囲気については、上述のように蛍光体粒子にドープされている希土類原子の価数に影響を及ぼさないようにするために窒素雰囲気が好ましい。
【0060】
絶縁層の厚さは本実施の形態では0.1〜2.0μm程度としたが、蛍光体粒子の平均粒径や沿面放電を効率よく発生させることを考慮して決定される。また、蛍光体の平均粒径がサブミクロンオーダーになると、比較的薄く被覆する方がよい。絶縁層が厚くなると発光スペクトルのシフト、輝度低下等が発生するため好ましくない。逆に、絶縁層が薄くなると沿面放電がやや発生し難くなることが推定される。従って、蛍光体粒子の平均粒径と絶縁層の厚さの関係は前者1に対して後者が1/10〜1/500の範囲にあることが望ましい。
【0061】
次に、この発光素子1の発光作用について図1及び図17を参照しながら説明する。
【0062】
図1に示すように発光素子1を駆動するために、第一の電極6と第二の電極7の間に交流電界を印加する。電極間6,7に誘電体層10、多孔質発光層2、間隙(気体層)9が厚さ方向に直列状に存在する。従って印加された電界は、それぞれの容量の逆数に比例し間隙9に集中する。従って間隙9で気体の絶縁破壊が起こり、図17に示す一次電子(e−)24が発生する。一次電子(e−)は多孔質発光層2の蛍光体粒子3や絶縁層4に衝突し、沿面放電となり、さらに二次電子(e−)25が多数発生する。これにより、雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。加えて、交流電界の印加により、誘電体層において分極の反転が繰り返される。それに伴って電子が発生し、多孔質発光層に電荷が注入される結果、沿面放電が発生する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。
【0063】
なお、印加する交流電界の波形を正弦波や鋸歯状波から矩形波に変えることにより、また周波数を数十Hzから数千Hz上げることで一次電子や二次電子さらに紫外線の放出が非常に激しくなり、発光輝度が向上する。また、交流電界の電圧が上昇するにつれてバースト波が発生する。バースト波の発生周波数は正弦波ではピークの直前、鋸歯状波や矩形波ではピ−ク時に発生し、バースト波の電圧を上げるに従い発光輝度が向上した。いったん沿面放電が開始されると、紫外線や可視光線も発生するので、これらの光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0064】
本実施の形態においては多孔質発光層の厚さ方向に、約0.72〜1.5kV/mmの電界(周波数:1kHz)を印加して蛍光体粒子3を発光させて、その後約0.5〜1.0kV/mmの交番電界(周波数:1kHz)を印加することにより、沿面放電を継続して行わせて蛍光体粒子3の発光を持続させた。印加する電界は大きくなると電子や紫外線の発生を促進するが、小さいとそれらの発生は不十分になる。
【0065】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%程度に低下させても発光が継続し、三色いずれの発光においても高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。
【0066】
本実施の形態においては駆動を大気中で行ったが、酸素、窒素及び不活性ガス中や減圧された気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0067】
本実施の形態の発光素子によれば、多孔質発光層での沿面放電による発光であるために、従来のように発光素子の作製に際して薄膜形成プロセスを用いることがなく、真空系やキャリア増倍層を必要としないので構造が簡単であり、製造や加工も容易である。また、発光効率が良好であり、大型ディスプレイにしたときの消費電力が比較的小さい発光素子を提供することができる。本実施の形態においては多孔質発光層の境界に放電分離手段として隔壁を設置することにより、比較的簡便な方法で発光の際のクロストークを回避することができる。
【0068】
(実施の形態2)
図7を参照しながら説明する。この例は、多孔質発光層の一方の面に誘電体層と第一の電極がそれぞれ形成され、前記多孔質発光層の前記誘電体層と前記第一の電極が形成されていない他の面に第二の電極が配置された複数個の前記多孔質発光層の集合体からなり、前記複数個の多孔質発光層間に放電分離手段を具備してなり、特に放電分離手段が隔壁である発光素子である。図7は本実施の形態における発光素子の断面図であり、1は発光素子、2は多孔質発光層、3は蛍光体粒子、4は絶縁層、5は基板、6は第一の電極(背面電極)、7は第二の電極(観察面側電極)、8は透光性基板、9は間隙(気体層)、10は誘電体層及び11は隔壁である。
【0069】
前記実施の形態1においては図1に示すように、多孔質発光層の下に形成されている誘電体層10と第一の電極6は複数個の多孔質発光層によって共有されているが、誘電体層と第一の電極は複数個の多孔質発光層にそれぞれ個別に形成することも可能である。本実施の形態おける発光素子はそのように構成され、その断面の構造を図7に示す。
【0070】
本実施の形態における発光素子は実施の形態1と同様の製造方法により作製することができる。実際には、多孔質発光層が所定のパターン状に形成されて配置される箇所に合わせて、まずAgペーストを焼き付けて第一の電極6を形成し、その上に厚膜プロセスなどにより誘電体層を形成してから、多孔質発光層をスクリーン印刷により形成すればよい。しかるのちに、実施の形態1と同様に隔壁を形成してから最終的に第二の電極を有する透光性の基板8を配置すれば、図7に示すような本実施の形態の発光素子が作製できる。
【0071】
次に、この発光素子1の発光作用について図7を参照しながら説明する。図7に示すように発光素子1を駆動するために、第一の電極6と第二の電極7の間に交流電界を印加する。交流電界の印加により、間隙9で気体の絶縁破壊が起こり、それに伴って電子が発生し、多孔質発光層に電荷が注入される結果、沿面放電が発生する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。
【0072】
なお、印加する交流電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えることにより、また周波数を数十Hzから数千Hz上げることで沿面放電による電子や紫外線の放出が非常に激しくなり、発光輝度が向上する。また、交流電界の電圧を上げるに従いバースト波が発生する。バースト波の発生周波数は正弦波ではピークの直前、ノコギリ波や矩形波ではピ−ク時に発生し、バースト波の電圧の上昇にとともに発光輝度が向上した。いったん沿面放電が開始されると、紫外線や可視光線も発生するので、これらの光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0073】
本実施の形態においては多孔質発光層の厚さに対して、約0.72〜1.5kV/mmの電界を印加して蛍光体粒子3を発光させて、その後約0.5〜1.0kV/mmの交番電界を印加することにより、沿面放電を継続して行わせて蛍光体粒子3の発光を持続させた。印加する電界は大きくなると電子や紫外線の発生を促進するが、小さいとそれらの発生は不十分になる。
【0074】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%程度に低下させても発光が継続し、三色いずれの発光においても高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。
【0075】
本実施の形態においては駆動を大気中で行ったが、酸素、窒素及び不活性ガス中や減圧された気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0076】
本実施の形態の発光素子によれば、多孔質発光層での沿面放電による発光であるために、従来のように発光素子の作製に際して薄膜形成プロセスを用いることがなく、真空系やキャリア増倍層を必要としないので構造が簡単であり、製造や加工も容易である。また、発光効率が良好であり、大型ディスプレイにしたときの消費電力が比較的小さい発光素子を提供することができる。本実施の形態においては多孔質発光層の境界に放電分離手段として隔壁を設置することにより、比較的簡便な方法で発光の際のクロストークを回避することができる。
【0077】
(実施の形態3)
図8を参照しながら、多孔質発光層の一方の面に誘電体層と第一の電極がそれぞれ形成され、前記多孔質発光層の前記誘電体層と前記第一の電極が形成されていない他の面に第二の電極が配置された複数個の前記多孔質発光層の集合体からなり、前記複数個の多孔質発光層間に放電分離手段を具備してなり、放電分離手段が導電性を有する隔壁である発光素子について説明する。
【0078】
図8は本実施の形態における発光素子の断面図であり、図において1は発光素子、2は多孔質発光層、3は蛍光体粒子、4は絶縁層、5は基板、6は第一の電極(背面電極)、7は第二の電極(観察面側電極)、8は透光性基板、9は間隙(気体層)、10は誘電体層及び11は隔壁である。
【0079】
上述のように、本実施の形態では放電分離手段として静電遮蔽や沿面放電の伸長に効果的な導電性の隔壁11を用いるものである。このような導電性の隔壁は各種の金属の析出物や堆積物により形成することが可能である。その一例として、無電解ニッケルメッキを用いて形成する方法について説明する。
【0080】
具体的な発光素子の製造方法は以下のようにして行う。まず、セラミック製の基板5の表面において隔壁を形成する箇所を除いて、それ以外の箇所にレジスト膜をスクリーン印刷により形成する。しかるのちに、基板5を塩化錫と塩化パラジウムからなる溶液に浸漬する。このような処理はキャタライジング/センシタイジング処理といわれ、前後処理を含めて市販の処理剤で容易に行うことが可能である。
【0081】
処理後にレジスト膜を剥離すると、隔壁を形成する箇所にのみパラジウムの微粒子が付着する。このようにして処理されたセラミック製の基板5を硫酸ニッケルと次亜燐酸ナトリウムを主成分とする溶液(pH4〜6)に浸漬し、90℃程度の温度で80〜300μmの厚さに金属ニッケルを析出させることにより、基板5の表面に所定の形状の隔壁11を形成することができる。上述のようにして、導電性の隔壁11を形成したセラミック製の基板5が得られる。
【0082】
しかるのちに、上記の基板5にAgペーストを焼き付けることにより第一の電極6を形成する。その際、第一の電極6が導電性隔壁11に接触しないようにわずかに間隙を設けて形成する。第一の電極6を形成してから、厚膜プロセスなどにより誘電体層10を第一の電極6の上に形成する。次に、表面が絶縁層4で均一に被覆された蛍光体粒子3を含有するペーストをスクリーン印刷し、焼成して多孔質発光体層2を所定のパターン状に形成する。最終的に第二の電極7としてのITO皮膜を表面に有するガラス製の透光性基板8で多孔質発光層の集合体の全体を覆うと図8に示すような発光素子1が得られる。なお、その際ITOからなる第二の電極と導電性の隔壁が接触しないようにわずかに間隙が設け、発光素子の駆動に際して電圧の印加の妨げにならないようにする。
【0083】
上記のようにして、本実施の形態においては多孔質発光層の一方の面に誘電体層と第一の電極がそれぞれ形成され、前記多孔質発光層の前記誘電体層と前記第一の電極が形成されていない他の面に第二の電極が配置された複数個の前記多孔質発光層の集合体からなり、前記複数個の多孔質発光層間に放電分離手段を具備してなり、特に放電分離手段が導電性を有する隔壁である発光素子が得られる。
【0084】
次に、この発光素子1の発光作用について図8を参照しながら説明する。図8の発光素子1を駆動するために、第一の電極6と第二の電極7の間に交流電界を印加する。交流電界の印加により、間隙9で気体の絶縁破壊が起こり、それに伴って電子が発生し、多孔質発光層に電荷が注入される結果、沿面放電が発生する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。
【0085】
なお、印加する交流電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えることにより、また周波数を数十Hzから数千Hz上げることで沿面放電による電子や紫外線の放出が非常に激しくなり、発光輝度が向上する。また、交流電界の電圧値を上げるに従いバースト波が発生する。バースト波の発生周波数は正弦波ではピークの直前、ノコギリ波や矩形波ではピ−ク時に発生し、バースト波の電圧を上げるに従い発光輝度が向上した。いったん沿面放電が開始されると、紫外線や可視光線も発生するので、これらの光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0086】
特に本実施の形態におけるように導電性の隔壁を形成した場合には、沿面放電が発生し易くなり駆動電圧の低減に寄与することができる。すなわち、多孔質発光層の厚さに対して、約0.58〜1.2kV/mmの電界を印加して蛍光体粒子3を発光させて、その後約0.4〜0.8kV/mmの交番電界を印加することにより、沿面放電を継続して行わせて蛍光体粒子3の発光を持続させた。印加する電界は大きくなると電子や紫外線の発生を促進するが、小さいとそれらの発生は不十分になる。
【0087】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%程度に低下させても発光が継続し、三色いずれの発光においても高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。
【0088】
本実施の形態の発光素子によれば、多孔質発光層での沿面放電による発光であるために、従来のように発光素子の作製に際して薄膜形成プロセスを用いることがなく、真空系やキャリア増倍層を必要としないので構造が簡単であり、製造や加工も容易である。また、発光効率が良好であり、大型ディスプレイにしたときの消費電力が比較的小さい発光素子を提供することができる。本実施の形態においては多孔質発光層の境界に放電分離手段として隔壁を設置することにより、比較的簡便な方法で発光の際のクロストークを回避することができる。
【0089】
(実施の形態4)
図9乃至図13を参照しながら、多孔質発光層の一方の面に誘電体層と第一の電極がそれぞれ形成され、前記多孔質発光層の前記誘電体層と前記第一の電極が形成されていない他の面に第二の電極が配置された複数個の前記多孔質発光層の集合体からなり、前記複数個の多孔質発光層間に放電分離手段を具備してなる発光素子について、特に複数個の多孔質発光層が第二の電極を共有するように配置されていて、放電分離手段が空隙である発光素子について説明する。
【0090】
図9は本実施の形態における発光素子の断面図であり、図10乃至図13は本実施の形態における発光素子の製造工程を説明するための図である。これらの図において1は発光素子、2は多孔質発光層、3は蛍光体粒子、4は絶縁層、5は基板、6は第一の電極(背面電極),7は第二の電極(観察面側電極)、8は透光性基板、9は間隙(気体層)、10は誘電体層、12は多孔質発光層を分離する空隙、15は側壁である。
【0091】
図10に示すように、ガラス又はセラミック製の基板5の片面にAgペーストを焼き付けて、第一の電極6を所定の形状に形成する。次に、図11に示すように第一の電極6の上に、厚膜プロセスなどにより誘電体層10を形成する。
【0092】
次に、誘電体層10の上に所定の形状に多孔質発光層2を形成する。その際、実施の形態1と同様にMgO等の金属酸化物からなる絶縁層4で表面を被覆した蛍光体粒子3を使用した。蛍光体粒子3として、平均粒径が2〜3μmのBaMgAl1017:Eu2+(青)、ZnSiO:Mn2+(緑)、YBO:Eu3+(赤)等の無機化合物を用いることが可能である。
【0093】
本実施の形態においては上記の絶縁層4を有する蛍光体粒子50質量%に対してα−テルピネオール45質量%、エチルセルロース5質量%を混練したペーストをそれぞれの蛍光体毎に調製し、これを誘電体層10の上にスクリーン印刷してから乾燥する操作を複数回にわたって繰り返し行うことにより、印刷された箇所の厚さが80〜100μmになるように調整した。
【0094】
上記のようにして、多孔質発光層を印刷した基板5をN雰囲気中において、400〜600℃で2〜5時間にわたって熱処理することにより、図12に示すように基板上に約50〜80μmの厚さの多孔質発光層2の集合体を形成した。
【0095】
次に、多孔質発光層2からなる集合体の境界には隔壁を設置せずに約80〜300μmの空隙12を残したままの状態にし、このような空隙を隔壁の代替として機能させることに本実施の形態の特徴がある。なお、本実施の形態においては多孔質発光層2からなる集合体の全体を囲繞するように側壁15を形成し、このように前記の集合体の周囲に巡らせた側壁で後述するように透光性基板8を支える。側壁15の形成はガラスペーストをスクリーン印刷し、乾燥させる操作を複数回繰り返し、しかるのちに600℃で焼成することにより、図13に示すように約80〜300μmの側壁15を形成する。
【0096】
また、側壁15はセラミック粒子を含有するガラスペーストや樹脂を用いて形成することも可能である。具体的には、前者ではセラミックとガラス(重量比で1:1)の混合粒子50質量%に対してα−テルピネオール50質量%を加えて混練したペーストをスクリーン印刷してから乾燥することを繰り返し、印刷された厚さが約100〜350μmになるように調整し、N2雰囲気中において、400〜600℃で2〜5時間にわたって熱処理することにより、約80〜300μmの厚さの側壁15を形成することができる。後者においては熱硬化性樹脂を用いて隔壁を形成するものであり、主たるものとしてエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂の使用が可能であり、これらのうちの1つを選択して多孔質発光層の集合体の全体を囲繞するように印刷することにより行うことができる。
【0097】
上記のようにして、側壁15を形成してのちに、ITO(インジウムー錫酸化物合金)からなる第二の電極7が形成されたガラス板等の透光性基板8を側壁15に貼付して多孔質発光層の集合体の全部を覆うと、図9に示すような本実施の形態における発光素子1が得られる。その際、図のように第二の電極7は例えばストライプ状に多孔質発光層に対向して形成されていて、複数個の多孔質発光層によって共有されている。また、多孔質発光層2と第二の電極7の間にはわずかな間隙が設けてあり、両者の間隔は30〜250μmの範囲が好適であり、特に40〜220μmの範囲が好ましい。
【0098】
なお、第二の電極としてITOからなる透光性基板8の代替として、銅、金、銀、白金及びアルミニウム等からなるメッシュ状の微細な配線がパターンニングされた基板を使用することも可能である。
【0099】
上述のようにして、多孔質発光層の一方の面に誘電体層と第一の電極がそれぞれ形成され、前記多孔質発光層の前記誘電体層と前記第一の電極が形成されていない他の面に第二の電極が配置された複数個の前記多孔質発光層の集合体からなり、前記複数個の多孔質発光層間に放電分離手段を具備してなる発光素子であって、特に第二の電極が複数個の多孔質発光層によって共有されるように配置され、放電分離手段が空隙である発光素子を作製することができる。
【0100】
次に、この発光素子1の発光作用について図9を参照しながら説明する。図9に示すように発光素子1を駆動するために、第一の電極6と第二の電極7の間に交流電界を印加する。交流電界の印加により、間隙9で気体の絶縁破壊が起こり、誘それに伴って電子が発生し、多孔質発光層に電荷が注入される結果、沿面放電が発生する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。
【0101】
なお、印加する交流電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えることにより、また周波数を数十Hzから数千Hz上げることで沿面放電による電子や紫外線の放出が非常に激しくなり、発光輝度が向上する。また、交流電界の電圧値を上げるに従いバースト波が発生する。バースト波の発生周波数は正弦波ではピークの直前、ノコギリ波や矩形波ではピ−ク時に発生し、バースト波の電圧を上げるに従い発光輝度が向上した。いったん沿面放電が開始されると、紫外線や可視光線も発生するので、これらの光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0102】
本実施の形態においては多孔質発光層の厚さに対して、約0.85〜1.8kV/mmの電界を印加して蛍光体粒子3を発光させて、その後約0.6〜1.2kV/mmの交番電界を印加することにより、沿面放電を継続して行わせて蛍光体粒子3の発光を持続させた。印加する電界は大きくなると電子や紫外線の発生を促進するが、小さいとそれらの発生は不十分になる。
【0103】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%程度に低下させても発光が継続し、三色いずれの発光においても高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。
【0104】
本実施の形態においては駆動を大気中で行ったが、酸素、窒素及び不活性ガス中や減圧された気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0105】
本実施の形態の発光素子によれば、多孔質発光層での沿面放電による発光であるために、従来のように発光素子の作製に際して薄膜形成プロセスを用いることがなく、真空系やキャリア増倍層を必要としないので構造が簡単であり、製造や加工も容易である。また、発光効率が良好であり、大型ディスプレイにしたときの消費電力が比較的小さい発光素子を提供することができる。本実施の形態においては多孔質発光層の境界に放電分離手段として空隙を設置することにより、比較的簡便な方法で発光の際のクロストークを回避することができる。
【0106】
(実施の形態5)
図14と図15を参照しながら、多孔質発光層の一方の面に誘電体層と第一の電極がそれぞれ形成され、前記多孔質発光層の前記誘電体層と前記第一の電極が形成されていない他の面に第二の電極が配置された複数個の前記多孔質発光層の集合体からなり、前記複数個の多孔質発光層間に放電分離手段を具備してなる発光素子であって、特に多孔質発光層について説明する。
【0107】
図14と図15は本実施の形態における多孔質発光層の断面を拡大した模式図である。これらの図において、2は多孔質発光層、3は蛍光体粒子、4は絶縁層、及び18は絶縁性繊維である。
【0108】
本実施の形態においては蛍光体粒子表面の絶縁層の有無によらず、蛍光体粒子とセラミックやガラス等の絶縁性繊維18からなる多孔質発光層2を形成した。
【0109】
絶縁性繊維18の一例として、SiO−Al−CaO系の繊維を使用し、その直径は0.1〜5μm、長さは0.5〜20μmであることが好ましく、この範囲のサイズの繊維を蛍光体粒子2重量部、繊維1重量部の割合で混合して用いることにより気孔率が比較的大きくなり、その結果沿面放電が多孔質発光層内部で容易に発生するようになり好ましいものとなる。本実施の形態においては多孔質発光層を形成する際に、蛍光体粒子と絶縁性繊維の混合物50質量%に対してα−テルピネオール45質量%、エチルセルロース5質量%を混練したペーストを調製し、実施の形態1と同様にペーストをパターン状にスクリーン印刷して多孔質発光層を形成した、このようにして得られた絶縁性繊維18を含有する多孔質発光層の断面を拡大した模式図を図14と図15に示す。図15は蛍光体粒子3と絶縁性繊維18からなる多孔質発光層2であり、図14は表面が絶縁層4で被覆された蛍光体粒子3と絶縁性繊維からなる多孔質発光層である。また、第一の電極、誘電体層、第二の電極及び隔壁の形成は実施の形態1と同様の方法で実施することにより、最終的に実施の形態1と同様の発光素子を作製した(図示せず)。
【0110】
絶縁性繊維としてSiO−Al−CaO系の繊維を選定した理由は、熱的、化学的に安定で抵抗率か10Ω・cm以上であること、多孔質発光層において10%以上〜100%未満の大きな見かけ気孔率が容易に得られること、及び繊維の表面で放電が発生し易く結果的に多孔質発光層全体で沿面放電の発生が可能になることからである。なお、上記の絶縁性繊維以外にSiC,ZnO,TiO,MgO,BN,Si系のものを含有する絶縁性繊維を用いてもほぼ同様の結果が得られる。
【0111】
次に、この発光素子の発光作用は実施の形態1のものと同様である。発光素子を駆動するために、第一の電極と第二の電極の間に交流電界を印加する。交流電界の印加により、間隙9で気体の絶縁破壊が起こり、それに伴って電子が発生し、多孔質発光層に電荷が注入される結果、沿面放電が発生する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。
【0112】
本実施の形態においては多孔質発光層の厚さに対して、約0.65〜1.4kV/mmの電界を印加して蛍光体粒子3を発光させて、その後約0.45〜0.90kV/mmの交番電界を印加することにより、沿面放電を継続して行わせて蛍光体粒子3の発光を持続させた。印加する電界は大きくなると電子や紫外線の発生を促進するが、小さいとそれらの発生は不十分になる。
【0113】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%程度に低下させても発光が継続し、三色いずれの発光においても高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。
【0114】
本実施の形態においては駆動を大気中で行ったが、酸素、窒素及び不活性ガス中や減圧された気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0115】
本実施の形態の発光素子によれば、多孔質発光層での沿面放電による発光であるために、従来のように発光素子の作製に際して薄膜形成プロセスを用いることがなく、真空系やキャリア増倍層を必要としないので構造が簡単であり、製造や加工も容易である。また、発光効率が良好であり、大型ディスプレイにしたときの消費電力が比較的小さい発光素子を提供することができる。本実施の形態においては多孔質発光層の境界に放電分離手段として隔壁を設置することにより、比較的簡便な方法で発光の際のクロストークを回避することができる。
【0116】
(実施の形態6)
図16を参照しながら、多孔質発光層の一方の面に誘電体層とアドレス電極がそれぞれ形成され、前記多孔質発光層の前記誘電体層と前記アドレス電極が形成されていない他の面にデータ電極が配置された複数個の前記多孔質発光層の集合体からなり、前記複数個の多孔質発光層間に放電分離手段を具備してなる発光素子について動作を説明する。
【0117】
図16は本実施の形態における発光素子の分解斜視図であり、わかり易いために放電分離手段が空隙である場合の発光素子を図示したものである。図において1は発光素子、2は多孔質発光層、5は基板、8は透光性基板、10は誘電体層、12は空隙、21はアドレス電極、22は表示電極である。
【0118】
図16に示すように、本実施の形態の発光素子1においては基板5の上にアドレス電極21が形成され、その上に誘電体層10を有する複数個の多孔質発光層2が規則的に配置されていて、R、G及びBの三色を発光する多孔質発光層のアレイが形成されている。多孔質発光層の間には空隙12が存在していて多孔質発光層2のアレイ全体を囲繞するように側壁が通常設けられる(図示せず)。透光性基板8には、表示電極22がアドレス電極21と交差するように多孔質発光層2に対向して形成されていて、このような透光性基板8を多孔質発光層のアレイ上に配置することにより、最終的に図16に示すような発光素子1が構成される。本実施の形態におけるアドレス電極と表示電極は既述した実施の形態1乃至5における第一の電極と第二の電極にそれぞれ対応させることも可能であるが、場合によっては別に設置するようにしてもよい。
【0119】
上述のように、多孔質発光層の一方の面に誘電体層とアドレス電極がそれぞれ形成され、前記多孔質発光層の前記誘電体層と前記アドレス電極が形成されていない他の面にデータ電極が配置された複数個の前記多孔質発光層の集合体からなり、前記複数個の多孔質発光層間に放電分離手段を具備してなる発光素子であって、特に放電分離手段が空隙である発光素子が得られる。
【0120】
このように構成された本実施の形態における発光素子1においては多孔質発光層に2次元の映像を表示することができる。すなわち、本実施の形態の発光素子1では所謂単純マトリックス駆動が可能であり、X電極に順次パルス信号を送り、そのタイミングに合わせてY電極にON/OFF情報を入れることによりアドレス電極と表示電極の交差する箇所の画素をON/OFFに応じて発光させて1ラインを表示する。走査パルスを順次切り替えることにより、2次元の像が表示できる。また、マトリックス状に配置された画素の1つ1つにトランジスタを置き、それぞれの画素をON/OFFすることによりアクティブ駆動も可能になる。本実施の形態においては多孔質発光層に空隙12を設けてあるため、発光のクロストークはほとんどないが、実施の形態1で既述したように、単位発光素子間に隔壁を設ければ、発光のクロストークをほぼ完全に回避させることができる。
【0121】
(実施の形態7)
本実施形態の表示装置の断面を図18に示す。本実施形態は隔壁11の間にリブ23a,23bを設けた以外は図1に示す実施形態1と同様とした。隔壁11の水平方向の厚さ:150μm、高さ270μm、リブ23a,23bの厚さ:50μm、高さ250μm、1画素の幅は100μm、多孔質発光層の厚さは230μm、間隙(気体層)9の間隔は20μm、BaTiOからなる誘電体層10の厚さは250μm、第1の電極6と第2の電極7の距離は500μmとした。
【0122】
本実施の形態においては多孔質発光層の厚さ方向に、約0.72〜1.5kV/mmの電界(周波数:1kHz)を印加して蛍光体粒子3を発光させて、その後約0.4kV/mmの交番電界(周波数:1kHz)を印加することにより、沿面放電を継続して行わせて蛍光体粒子3の発光を持続させた。印加する電界は大きくなると電子や紫外線の発生を促進するが、小さいとそれらの発生は不十分になる。
【0123】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%程度に低下させても発光が継続し、三色いずれの発光においても高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。
【0124】
本実施の形態においては駆動を大気中で行ったが、酸素、窒素及び不活性ガス中や減圧された気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0125】
(実施の形態8)
本実施形態の表示装置の断面を図19に示す。本実施形態は隔壁11をBaTiOからなる誘電体層10を切削して作成した以外は図1に示す実施形態1と同様とした。隔壁11の水平方向の厚さ:150μm、高さ270μm、1画素の幅は250μm、多孔質発光層の厚さは230μm、間隙9の間隔は20μm、BaTiOからなる誘電体層の厚さは520μm、第1と第2の電極間距離は500μmとした。
【0126】
本実施の形態においては多孔質発光層の厚さ方向に、約0.72〜1.5kV/mmの電界(周波数:1kHz)を印加して蛍光体粒子3を発光させて、その後約0.4kV/mmの交番電界(周波数:1kHz)を印加することにより、沿面放電を継続して行わせて蛍光体粒子3の発光を持続させた。印加する電界は大きくなると電子や紫外線の発生を促進するが、小さいとそれらの発生は不十分になる。
【0127】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%程度に低下させても発光が継続し、三色いずれの発光においても高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。
【0128】
本実施の形態においては駆動を大気中で行ったが、酸素、窒素及び不活性ガス中や減圧された気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0129】
(比較例1)
比較例1として積層チップコンデンサの絶縁破壊試験で使用するシリコーンオイル含漬を実施した。すなわち積層チップコンデンサでは絶縁破壊電圧を測定する場合、沿面放電が頻繁に発生し真の絶縁破壊電圧値が測定できない。そこで、素子の細孔部にシリコーンオイルを含漬させ沿面放電が発生しない状態で真の絶縁破壊電圧値を求めた。この方法を利用して図1の発光素子1の多孔質発光体層2の細孔の気体をシリコーンオイルで置換した。数分間浸漬した後に発光素子表面のシリコーンオイルを拭き取り、前記実施の形態1と同様の交番電界を印加した。
【0130】
まず、印加電圧を上げるとバースト波が発生し間隙から一次電子が放出されていることが確認できた。しかし多孔質発光体層2では沿面放電が全く発生せず。または、沿面放電が発生しても発光体層2の内部ではなく極表面部分に発生するために発光を確認できなかった。さらに印加電圧を上げ続けると多孔質発光体層2が一瞬のうちに絶縁破壊が起こり発光素子1にクラックが発生し破壊した。
【0131】
もちろん、シリコーンオイルを浸漬した発光素子1をアセトン等の有機溶剤で洗浄し、細孔部を再度気体で充填させた場合には容易に発光し回復することを確認した。もちろん細孔部を真空にしても発光した。
【0132】
また、細孔部に導電性の溶液、例えば酢酸水溶液を含漬させると、短絡が起こり全く発光しなかった。
【0133】
以上のことから本発明の構成で発光素子になる最大の特徴は発光体層2が、表面に連続した細孔を持ち、かつその細孔に気体が充填もしくは真空であるという点である。外部から放出されてきた電子が発光体層4内部に突入すると電子が細孔部分を沿って雪崩的に沿面放電を繰り返し加速される。そして加速させた電子が蛍光体粒子の発光中心に衝突し励起発光する。細孔部分にシリコーンオイルや導電性溶液が充填された状態では電子の移動が困難または短絡が発生し沿面放電が発生せず結果として発光しない。
【0134】
本実施の形態では細孔部の大きさが数百μm以下であるが、数mm以上の大きさになると空気放電に至り素子が破壊する場合が有るので注意が必要となる。経験的には蛍光体粒子3が点接触するようなパッキングである。理想的には見かけ気孔率が10%以上〜100%未満の多孔質が望ましい。
【0135】
また、前記実施の形態のように絶縁層4を設ける理由は、
a.蛍光体粒子3の表面抵抗を上げ沿面放電が発生しやすいようにするため、
b.蛍光体粒子を絶縁破壊や紫外線から保護するため、
c.MgOの様な二次電子放出作用により電子をより多く放出させ結果として沿面放電をより発生しやすいようにするためである。
【0136】
また、多孔質発光体層2の厚みは特に限定されるものではないが10μm〜3mmの範囲で発光することを確認した。もちろん短絡が発生しなければ数μmから発光するものである。
【0137】
(実施の形態9)
実施の形態9では、第一の電極6、第二の電極7が誘電体層10と多孔質発光体層2を挟んで形成される場合について、図22を参照しながら説明する。図22は本実施の形態における発光素子1の断面図である。6は第一の電極、7は第二の電極、3は蛍光体粒子、4は電気的絶縁体層、2は多孔質発光体層、10は誘電体層である。多孔質発光体層2は図6に示したように蛍光体粒子3を主成分として構成され、蛍光体粒子3の表面を絶縁体層4で被覆したものを使用した。
【0138】
蛍光体粒子3は平均粒径が2〜3μmのBaMgAl1017:Eu2+(青)、ZnSiO:Mn2+(緑)、YBO:Eu3+(赤)の3種類の無機化合物を所望の発光を得るために、それぞれ単独またはそれらを混合したものを用いることが可能である。
【0139】
本実施の形態においては前記青色の蛍光体粒子3を使用し、その表面にMgOからなる絶縁性無機物の絶縁層4を形成したものを使用した。Mgプレカーサー錯体溶液に蛍光体粒子を加えて攪拌し、取り出して乾燥した後、大気中で400〜600℃で熱処理することで、前記図6に示したMgOの均一なコーティング層を蛍光体の表面に形成させた。
【0140】
まず、本実施の形態おける発光素子の図22の製造方法について説明する。絶縁層4がコーティングされた蛍光体粒子粉末3を50質量%とコロイダルシリカ水溶液を50質量%混合しスラリー化する。次に、第二の電極7が形成された直径15mmφで厚み1mmの誘電体層10(BaTiOを主成分とする板状の焼結体、この背面にAg電極ペーストを厚み約50μmに焼付けて第一の電極6を形成した)の他の面に前記スラリーを塗布し、乾燥機で100〜150℃で10〜30分間乾燥することで、誘電体層10に厚みが約100μmの多孔質発光体層2を積層させた。さらに多孔質発光体層2の上面に透明の第二の電極(インジウム−錫酸化物合金(ITO)、厚み:約0.1μm)7が塗布された透光性基板(ガラス板)8を積層した。これにより、一対の電極6,7が誘電体層10と多孔質発光体層2を挟んで形成された発光素子1を得た。
【0141】
次に、この発光素子1の発光作用について図22及び図17を参照しながら説明する。図22に示すように発光素子1を駆動するために、第一の電極6と第二の電極7の間に交流電界を印加する。電圧の印加により、誘電体層10で分極反転により一次電子(e−)24が放出される。この際、紫外線や可視光線が発生する。一次電子(e−)は多孔質発光層2の蛍光体粒子3や絶縁層4に衝突し、沿面放電となり、さらに二次電子(e−)25が多数発生する。これにより、雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。加えて、交流電界の印加により、誘電体層において分極の反転が繰り返される。それに伴って電子が発生し、多孔質発光層に電荷が注入される結果、沿面放電が発生する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。
【0142】
なお、印加する交流電界の波形を正弦波や鋸歯状波から矩形波に変えることにより、また周波数を数十Hzから数千Hz上げることで沿面放電による電子や紫外線の放出が非常に激しくなり、発光輝度が向上する。また、交流電界の電圧が上昇するにつれてバースト波が発生する。バースト波の発生周波数は正弦波ではピークの直前、鋸歯状波や矩形波ではピ−ク時に発生し、バースト波の電圧を上げるに従い発光輝度が向上した。いったん沿面放電が開始されると、紫外線や可視光線も発生するので、これらの光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0143】
本実施の形態においては交流電源を用いて誘電体層10の厚みに対して約0.5〜1.0kV/mmの電圧を印加すると分極反転による一次電子放出(e−)24と沿面放電による二次電子(e−)25が発生し、続いて発光が開始された。また放電時の電流値は0.1mA以下であった。また、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%に低下させても発光が継続し、高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。また、2〜5lm/w程度の発光効率を持った発光デバイスを作製できることが可能となった。
【0144】
また、本実施の形態においては駆動を大気中で行ったが、酸素、窒素及び不活性ガス中や、減圧気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0145】
本実施の形態における発光素子1は、構造的に無機EL(ELD)に近い構造であるが、構成やメカニズムが全く異なるものである。まず構成に関して前記背景技術で記載したように無機ELに使用される蛍光体はZnS:Mn2+、GaP:Nなどに代表されるように半導体からなる発光体であるが、本実施の形態9における蛍光体粒子は絶縁体または半導体のいずれでもよい。すなわち、極端に抵抗値の低い半導体の蛍光体粒子を用いる際においても、絶縁性無機物である絶縁層4で均一に被覆されているために短絡することなく沿面放電が継続して発光させることができる。また、蛍光体層に関して無機ELではサブミクロン〜数μmの厚みに対して本実施の形態9では数μm〜数百μmの多孔質体である。また、本実施の形態9では発光体層が多孔質である点である。
【0146】
多孔質の形態については、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察した結果から蛍光体粒子が点接触した程度のパッキングである。
【0147】
また、蛍光体粒子として現行のプラズマディスプレイ(PDP)で使用されている紫外線発光の粉体を用いたが、陰極線管(CRT)で使用されているZnS:Ag(青)やZnS:Cu、Au,Al(緑)、Y:Eu(赤)でも同様の発光を確認した。CRT用の蛍光体では抵抗値が低いために沿面放電が発生しにくいが,絶縁層4でコーティングすると沿面放電が起こりやすくなり発光しやすくなった。
【0148】
また、本発明は誘電体の分極反転で放出される電子を基点として雪崩的に沿面放電が発生し発光に至る発光素子である。従って分極反転以外に電子を衝突させる新たな機能を有するシステムを多孔質発光体層2に付加すれば容易に発光するものと予想される。
【0149】
なお、本実施の形態においては蛍光体粒子3のスラリーを作製するに当たり、コロイダルシリカ水溶液を使用したが、有機溶剤を使用しても同様の結果が得られることを確認した。蛍光体粒子50質量%に対してα−テレピネオール45質量%、エチルセルロース5質量%を混練したスラリーを使用し、誘電体層10の表面にスクリーン印刷を行い、大気中で400〜600℃、10〜60分熱処理することで数μm〜数十μmの厚みの多孔質発光体層23を作製することができる。この場合、熱処理温度を上げすぎると蛍光体の変質が起こりやすいので温度管理と熱処理雰囲気管理が重要となる。なお、この有機系スラリーに無機繊維18を含有させても同様の結果が得られる。
【0150】
また、本実施の形態では誘電体としてBaTiOを用いたが、SrTiO,CaTiO,MgTiO,PZT(PbZrTiO),PbTiOなどの誘電体を用いても同様の効果が得られることを確認した。また誘電体層には焼結体を使用してもよいし、スパッタ、CVD、蒸着、ゾル・ゲル等の薄膜形成プロセスで得られた誘電体層を利用してもよい。
【0151】
本実施の形態においては誘電体層として焼結体を使用したが、誘電体の粉体と結合剤からなる構成を採用しても発光が可能である。すなわち、Al金属基板上に、BaTiO粉末40質量%に対してガラス粉末15質量%を混合した粉体にα−テレピネオール40質量%、エチルセルロース5質量%を混練したスラリーを塗布し、乾燥後大気中において400〜600℃で熱処理することにより、誘電体粒子と結合剤から構成される誘電体層を用いることも可能である。
【0152】
また、本実施の形態では青色の蛍光体粒子を用いたが、赤または緑を用いても同様の効果が有ることが分かった。なお青、赤、緑の混合粒子でも同様の効果があった。
【0153】
本実施の形態の発光素子によれば、沿面放電による発光であるために、従来のような蛍光体層形成に薄膜形成プロセスを用いることがなく、真空系やキャリア倍増層を必要としないので構造が簡単であり、加工も容易である。
【0154】
また,電極7にITOを使用したが,ITOの代替として、銅の配線が施された透光性基板を使用することも可能である。銅の配線は微細なメッシュ状に形成されていて、開口率(配線が施されていない部分の全体に対する割合)は90%であり、光の透過はITO膜を有する透光性基板に比較してほとんど遜色がない。また、銅はITOに比較して、かなり低抵抗であることから発光効率の向上に大きく寄与するので好都合である。なお、微細なメッシュ状の配線を施す金属としては銅以外に金、銀、白金やアルミニウムを使用することも可能である。
【0155】
(実施の形態10)
次に実施の形態10について、図23を用いて製造方法と発光作用について説明する。図22と同一の符号の説明は省略することがある。前記図22で使用した第一の電極6が形成されている誘電体10の他の面にメッシュ状(約5〜10メッシュ)のAgペーストを印刷、焼き付けて、第二の電極7を形成した。その後、第二の電極7の上面に前記同様に蛍光体粒子粉末3とコロイダルシリカ水溶液のスラリーを塗布し、乾燥機で100〜150℃で10〜30分間乾燥することで、誘電体層10の表面に厚みが約100μmの多孔質発光体層2を積層させた。これにより、第二の電極7が誘電体層10と多孔質発光体層2の間に形成され、第一の電極6が誘電体層10を挟んで外側に形成された発光素子1を得た。発光方法は図22の場合と同様に、第一の電極6と第二の電極7の間に交流電界を印加する。電圧の印加により、誘電体層10で分極反転により一次電子(e−)24が放出される。この際、紫外線や可視光線が発生する。一次電子(e−)は多孔質発光層2の蛍光体粒子3や絶縁層4に衝突し、沿面放電となり、さらに二次電子(e−)25が多数発生する。これにより、雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。加えて、交流電界の印加により、誘電体層において分極の反転が繰り返される。それに伴って電子が発生し、多孔質発光層に電荷が注入される結果、沿面放電が発生する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。
【0156】
もちろん図22の時同様に印加する交番電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えたり、周波数を数十Hzから数千Hz上げることで分極反転時の電子放出や沿面放電がより激しく起こり発光輝度が向上する。また、交番電界の電圧値を上げるに従いバースト波が発生する。バースト波は誘電体層10の分極反転時に発生するもので、発生周波数は正弦波ではピークの直前、ノコギリ波や矩形波ではピ−ク時に発生し、バースト波のピーク電圧を上げるに従い発光輝度が向上した。
【0157】
いったん沿面放電が開始されると上述したように連鎖的に放電が繰り返され、絶えず紫外線や可視光線を発生するので、光線による蛍光体粒子2の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0158】
図23の場合では、誘電体層10の厚みに対して約0.7〜1.2kV/mmの電圧を印加すると、分極反転による図17に示す一次電子放出(e−)24と沿面放電による二次電子(e−)25が発生し、続いて発光が開始された。
【0159】
図22と図23の発光の違いは前者では多孔質発光体層2で沿面放電が激しく発生しやすいが、後者では沿面放電の発生が若干弱り輝度も若干弱った。
【0160】
また、図23でメッシュ状の第二の電極7にした理由は、分極反転で発生した図17に示す一次電子(e−)24が多孔質発光体層2に放出されやすいようにするためであり、均一厚さの電極7を形成してしまうと図17に示す一次電子(e−)24が多孔質発光体層2に放出されにくくなるためである。
【0161】
また、図23の場合では絶縁層4として予め、MgOなどのコーティングを実施しなかったが、バインダーとして使用したコロイダルシリカが絶縁層4として機能した。
【0162】
(実施の形態11)
次に、一対の電極6,7が共に誘電体層10と多孔質発光体層2の境界に形成される場合について図24を用いて説明する。図24は本実施の形態11における発光素子1の断面図である。6は第一の電極、7は第二の電極、3は蛍光体粒子、2は多孔質発光体層、10は誘電体層である。多孔質発光体層2は蛍光体粒子3、セラミック繊維18を主成分とするものから構成されている。蛍光体粒子3は平均粒径が2〜3μmのBaMgAl1017:Eu2+(青)、ZnSiO:Mn2+(緑)、YBO:Eu3+(赤)の3種類の無機化合物を所望の発光を得るために、それぞれ単独またはそれらを混合したものを用いる。
【0163】
次に図24の製造方法と発光作用について説明する。まず、前記図22で使用した誘電体焼結体10の一方の面にAgペーストを塗布焼き付けて一対の電極6,7を形成する。次に蛍光体粒子45質量%と無機繊維粉10質量%とα−テレピネオール40質量%、エチルセルロース5質量%を混練したスラリーを塗布し、乾燥後、大気中で400〜600℃で熱処理して、誘電体層10に厚みが約50μmの多孔質発光体層2を積層させる。これにより一対の電極6,7が共に誘電体層10と多孔質発光体層2の境界に形成された発光素子1を得る。
【0164】
発光方法は図22の場合と同様に、第一の電極6と第二の電極7の間に交流電界を印加する。電圧の印加により、誘電体層10で分極反転により一次電子(e−)24が放出される。この際、紫外線や可視光線が発生する。一次電子(e−)は多孔質発光層2の蛍光体粒子3やセラミック繊維18に衝突し、沿面放電となり、さらに二次電子(e−)25が多数発生する。これにより、雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。加えて、交流電界の印加により、誘電体層において分極の反転が繰り返される。それに伴って電子が発生し、多孔質発光層に電荷が注入される結果、沿面放電が発生する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。
【0165】
もちろん印加する交番電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えたり、周波数を数十Hzから数千Hz上げることで分極反転時の電子放出や沿面放電がより激しく起り発光輝度が向上する。また、交番電界の電圧値を上げるに従いバースト波が発生する。バースト波は誘電体層10の分極反転時に発生するもので、発生周波数は正弦波ではピークの直前、ノコギリ波や矩形波ではピ−ク時に発生し、バースト波のピーク電圧を上げるに従い発光輝度が向上した。
【0166】
いったん沿面放電が開始されると上述したように連鎖的に放電が繰り返され、絶えず紫外線や可視光線を発生するので、光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0167】
本実施の形態においては交流電源を用いて誘電体の厚みに対して約0.7〜1.2kV/mmの電圧を印加すると分極反転による電子放出と沿面放電が発生し、続いて発光が開始された。また、図24は一対の電極が共に誘電体層と多孔質発光体層の境界に形成されている場合でもある。
【0168】
(実施の形態12)
図25を参照しながら本発明における実施の形態12、すなわち一対の電極6と7が誘電体層の上面に配置されていて、この一対の電極を介して多孔質発光体層2が積層され、この多孔質発光体層2の上面に他の電極70が配置されている場合について説明する。
【0169】
図25は本実施の形態における発光素子1の断面図である。6と7は一対の電極であり、6は第一の電極、7は第二の電極、3は蛍光体粒子、4は電気的絶縁体層、2は多孔質発光体層、10は誘電体層および70は第三の電極である。多孔質発光体層は図6に示したように蛍光体粒子3またはこれを主成分とするものから構成されていて、本実施の形態においては蛍光体粒子3の表面を絶縁体層4で被覆したものを使用した。
【0170】
蛍光体粒子3は平均粒径が2〜3μmのBaMgAl1017:Eu2+(青)、ZnSiO:Mn2+(緑)、YBO:Eu3+(赤)の3種類の無機化合物を所望の発光を得るために、それぞれ単独またはそれらを混合したものを用いる。
【0171】
本実施の形態においては前記青色の蛍光体粒子3を使用し、その表面にMgOからなる絶縁性無機物の絶縁体層4を形成したものを使用した。Mgプレカーサー錯体溶液に蛍光体粒子11を加えて長時間にわたって攪拌し、取り出して乾燥後、大気中において400〜600℃で熱処理することにより、MgOの均一なコーティング層、すなわち絶縁体層4を蛍光体粒子3の表面に形成させた。
【0172】
まず、図25に示す本実施の形態12おける発光素子の製造方法について説明する。絶縁体層4がコーティングされた蛍光体粒子3を50質量%とコロイダルシリカ水溶液を50質量%混合してスラリー化する。次に、第一の電極6と第二の電極7が形成された直径15mmφで厚み1mmの誘電体層10(BaTiOを主成分とする板状の焼結体で、その上面にAg電極ペーストを厚さ30μmに焼き付けて第一の電極6と第二の電極7を形成したもの)に一対の電極、すなわち第一の電極6と第二の電極7を介して前記スラリーを塗布し、乾燥機で100〜150℃の温度で10〜30分間乾燥することにより、誘電体層10に厚さが約100μmの多孔質発光体層2を積層させた。さらに、多孔質発光体層2の上面に透明電極(インジウム−錫酸化物合金(ITO)、厚さ0.1μm)70が塗布されたガラス(図示せず)を積層した。これにより一対の電極6,7が誘電体層10と多孔質発光体層2の境界に形成され、第三の電極70が多孔質発光体の上面に形成された図25に示すような発光素子1を得た。その際、後述するように、多孔質発光体層として蛍光体粒子粉末を担持させた無機繊維板を利用してもよい。
【0173】
次に、この発光素子1の発光作用について説明する。第一の電極6と第二の電極7の間に交流電界を印加する。電圧の印加により、誘電体層10で分極反転により図17に示す一次電子(e−)24が放出される。この際、紫外線や可視光線が発生する。その後、他の電極、すなわち電極70と前記一対の電極の少なくとも一方の間に交番電界を印加することにより,図17に示す一次電子(e−)24は多孔質発光層2の蛍光体粒子3や絶縁層4に衝突し、沿面放電となり、さらに図17に示す二次電子(e−)25が多数発生する。これにより、雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。加えて、交流電界の印加により、誘電体層において分極の反転が繰り返される。それに伴って電子が発生し、多孔質発光層に電荷が注入される結果、沿面放電が発生する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。
【0174】
このとき印加する交番電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えることにより、また周波数を数十Hzから数千Hz上げることで分極反転時の電子放出や沿面放電がより激しく生じ、発光輝度が向上する。
【0175】
また、交番電界の電圧値を上げるに従いバースト波が発生する。バースト波は誘電体層10の分極反転時に発生するもので、発生周波数は正弦波ではピークの直前、ノコギリ波や矩形波ではピ−ク時に発生し、バースト波の電圧を上げるに従い発光輝度が向上した。いったん沿面放電が開始されると上述したように連鎖的に放電が繰り返され、絶えず紫外線や可視光線を発生するので、光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0176】
本実施の形態においては分極反転に際して、誘電体層10の厚みに対して約0.65〜1.3kV/mmの電界を印加する。その後、交流電源を用いて発光素子1の厚さに対して約0.5〜1.0kV/mmの交番電界を印加させることにより、一次電子放出と沿面放電が発生し、続いて発光が開始された。なお、分極反転の際に印加する電界は大きい方が電子の発生を促進するが、小さすぎると電子の放出は不十分になる。
【0177】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であった。また、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%に低下させても発光が継続し、高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。青色換算で、2〜5lm/Wの発光効率を持った発光デバイスを作製することが可能となった。
【0178】
本実施の形態12においては駆動を大気中で行ったが、酸素、窒素及び不活性ガス中や、減圧気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0179】
本実施の形態12における発光素子1は、構造的に無機EL(ELD)に近い構造であるが、構成やメカニズムが全く異なる。まず、構成に関しては既に背景技術で記載したように無機ELに使用される蛍光体はZnS:Mn2+、GaP:Nなどに代表されるように半導体からなる発光体であるが、本実施の形態1における蛍光体粒子は絶縁体または半導体のいずれでもよい。すなわち、極端に抵抗値の低い半導体の蛍光体粒子を用いる際においても、既述したように蛍光体粒子3が絶縁性無機物である絶縁体層4で均一に被覆されているために短絡することなく沿面放電により継続して発光させることができる。また、蛍光体層に関して無機ELではサブミクロン〜数μmの厚みであるのに対して、本実施の形態では数μm〜数百μmの多孔質体である。さらに、本実施の形態では発光体層が多孔質である点である。
【0180】
多孔質の形態については、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察した結果から蛍光体粒子が点接触した程度のパッキングである。
【0181】
また、蛍光体粒子として現行のプラズマディスプレイ(PDP)で使用されている紫外線発光の粉体を用いたが、陰極線管(CRT)で使用されているZnS:Ag(青)やZnS:Cu、Au,Al(緑)、Y:Eu(赤)でも同様の発光を確認した。CRT用の蛍光体では抵抗値が低いために沿面放電が発生しにくい、従って蛍光体の表面を絶縁層4でコーティングすることで沿面放電の発生を容易にさせ発光させることが望ましい。
【0182】
本発明は誘電体の分極反転で放出される一次電子を基点として雪崩的に沿面放電し二次電子が多量に発生し発光に至る発光素子である。従って、分極反転以外に電子を衝突させる新たな機能を有するシステムを多孔質発光体層2に付加すれば容易に発光するものと予想される。
【0183】
なお、本実施の形態においては蛍光体粒子3のスラリーを作製するに当たり、コロイダルシリカ水溶液を使用したが、有機溶剤を使用しても同様の結果が得られることを確認した。蛍光体粒子50質量%に対してα−テレピネオール45質量%、エチルセルロース5質量%を混練したスラリーを使用し、誘電体層10の表面にスクリーン印刷を行い、大気中で400〜600℃、10〜60分熱処理することで数μm〜数十μmの厚みの多孔質発光体層23を作製することができる。この場合、熱処理温度を上げすぎると蛍光体の変質が起こりやすいので温度管理と熱処理雰囲気管理が重要となる。なお、この有機系スラリーに無機繊維18を含有させても同様の結果が得られる。
【0184】
また、本実施の形態では誘電体としてBaTiOを用いたが、SrTiO,CaTiO,MgTiO,PZT(PbZrTiO),PbTiOなどの誘電体を用いても同様の効果が得られることを確認した。また誘電体層には焼結体を使用してもよいし、スパッタ、CVD、蒸着、ゾル・ゲル等の薄膜形成プロセスで得られた誘電体層を利用してもよい。
【0185】
本実施の形態においては誘電体層として焼結体を使用したが、誘電体の粉体と結合剤からなる構成を採用しても発光が可能である。すなわち、Al金属基板上に、BaTiO粉末40質量%に対してガラス粉末15質量%を混合した粉体にα−テレピネオール40質量%、エチルセルロース5質量%を混練したスラリーを塗布し、乾燥後大気中において400〜600℃で熱処理することにより、誘電体粒子と結合剤から構成される誘電体層を用いることも可能である。
【0186】
また、本実施の形態では青色の蛍光体粒子を用いたが、赤または緑を用いても同様の効果が有ることが分かった。なお青、赤、緑の混合粒子でも同様の効果があった。本実施の形態の発光素子によれば、沿面放電による発光であるために、従来のような蛍光体層形成に薄膜形成プロセスを用いることがなく、真空系やキャリア倍増層を必要としないので構造が簡単であり、加工も容易である。
【0187】
電極70にITOを使用したが,ITOの代替として、銅の配線が施された透光性基板を使用することも可能である。銅の配線は微細なメッシュ状に形成されていて、開口率(配線が施されていない部分の全体に対する割合)は90%であり、光の透過はITO膜を有する透光性基板に比較してほとんど遜色がない。また、銅はITOに比較して、かなり低抵抗であることから発光効率の向上に大きく寄与するので好都合である。なお、微細なメッシュ状の配線を施す金属としては銅以外に金、銀、白金やアルミニウムを使用することも可能である。
【0188】
(実施の形態13)
次に、実施の形態13について、図26を参照しながら製造方法と発光作用について説明する。本実施の形態においては誘電体層10を挟んで下面に第一の電極6と、上面に第二の電極7をそれぞれ形成した。図1と同一の符号の説明は省略することがある。実施の形態12において使用したものと同様の誘電体10を用いて、その上面の中央部に第二の電極7、下面の全面に第一の電極6をAgペーストの印刷と焼付けにより、実施の形態12と同様にしてそれぞれ形成した。その後、第二の電極7の表面に実施の形態12で用いた蛍光体粒子3を含有するスラリーを塗布し、乾燥機で100〜150℃の温度において10〜30分間乾燥することで、誘電体層10に厚さが約100μmの多孔質発光体層2を積層させた。その後、実施の形態12と同様に多孔質発光体層2の上面に透明電極70(インジウム−錫酸化物合金(ITO)、厚さ0.1μm)が塗布されたガラス板(図示せず)を積層した。その結果、一対の電極6,7が誘電体層10の両面に形成され、この誘電体10の上面に第二の電極7を介して多孔質発光体層2が積層され、さらにその多孔質発光体の上面に第三の電極70が形成されている図26に示すような断面の構造を有する発光素子1を得た。
【0189】
発光素子1を駆動するために、第一の電極6と第二の電極7の間に交流電界を印加する。電圧の印加により、誘電体層10で分極反転により一次電子(e−)24が放出される。この際、紫外線や可視光線が発生する。その後、第三の電極70と前記一対の電極の少なくとも一方の間に交番電界を印加することにより,一次電子(e−)は多孔質発光層2の蛍光体粒子3や絶縁層4に衝突し、沿面放電となり、さらに二次電子(e−)25が多数発生する。これにより、雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。加えて、交流電界の印加により、誘電体層において分極の反転が繰り返される。それに伴って電子が発生し、多孔質発光層に電荷が注入される結果、沿面放電が発生する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。
【0190】
本実施の形態13においては、上述したように実施の形態12の場合と同様に印加する交番電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えることや周波数を数十Hzから数千Hz上げることで分極反転時の電子放出や沿面放電がより激しく発生し、発光輝度が向上する。また、交番電界の電圧値を上げるに従いバースト波が発生する。バースト波は誘電体層10の分極反転時に発生するもので、発生周波数は正弦波ではピークの直前、ノコギリ波や矩形波ではピ−ク時に発生し、バースト波のピーク電圧を上げるに従い発光輝度が向上した。
【0191】
いったん沿面放電が開始されると連鎖的に放電が繰り返され、絶えず紫外線や可視光線を発生するので、光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0192】
本実施の形態13においては誘電体層10の厚さに対して約0.84〜1.4kV/mmの電圧を第一の電極6と第二の電極7に印加することにより分極反転により一次電子の放出が行われ、しかる後に、第一の電極6または第二の電極7のいずれか一方と電極70に発光素子1の厚さに対して約0.7〜1.2kV/mmの交番電界を印加することにより沿面放電し二次電子が多量に発生し、続いて発光が開始された。
【0193】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%に低下させても発光が継続し、高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。青色換算で、2〜5lm/Wの発光効率を持った発光デバイスを作製することが可能となった。
【0194】
本実施の形態13の発光素子おいては図26に示すように、誘電体層10の上面に形成する第二の電極7は全面に形成するのではなく部分的に形成する。これは分極反転により放出される一次電子が電極自体によって遮蔽されることを抑制し、多孔質発光体層2に効率よく導入させるためである。なお、上述のように部分的に電極を形成する代わりに、メッシュ状の電極にしてもよく、分極反転で発生した電子が円滑に多孔質発光体層2に放出される形状のものであればよい。
【0195】
なお、図26において交番電圧を印加する際、第一の電極6と第三の電極70の間に印加する場合と、第二の電極7と第三の電極70の間に印加する場合では輝度はほとんど変わらなかった。
【0196】
(実施の形態14)
次に、図27を参照しながら実施の形態14、すなわち一対の電極6,7が誘電体層10の下面に配置されていて、上面に多孔質発光体層2が積層され、この多孔質発光体層2の上面に第三の電極70が配置されている場合について説明する。
【0197】
本実施の形態においては既述した実施の形態12と同様に蛍光体粒子の表面を絶縁層4で被覆したものを使用した。すなわち、蛍光体粒子はMgOの均一なコーティング層をその表面に形成させた。
【0198】
本実施の形態おける発光素子の製造方法について図27を参照しながら説明する。絶縁体層4で均一に被覆された蛍光体粒子11を50質量%とコロイダルシリカ水溶液を50質量%混合しスラリー化する。次に第一の電極6と第二の電極7が形成された直径15mmφで厚み1mmの誘電体層10(BaTiOを主成分とする板状の焼結体で、その下面にAg電極ペーストを30μmの厚さになるように焼付けて第一の電極6と第二の電極7を形成したもの)の上面に前記スラリーを塗布し、乾燥機を用いて100〜150℃の温度で10〜30分間乾燥することで、誘電体層10に厚さが約100μmの多孔質発光体層2を積層させた。その後、多孔質発光体層2の上面に透明電極(インジウム−錫酸化物合金(ITO)、厚さ0.1μm)70が塗布されたガラス(図示せず)を積層した。その結果、一対の電極6,7が誘電体層10の下面に形成され、誘電体層10の上面には多孔質発光体層2が積層され、さらに、多孔質発光体層2の上面には第三の電極70が形成された図27に示すような発光素子1を得た。
【0199】
次に、この発光素子1の発光作用について説明する。第一の電極6と第二の電極7の間に交流電界を印加する。電圧の印加により、誘電体層10で分極反転により一次電子(e−)24が放出される。この際、紫外線や可視光線が発生する。その後、第三の電極70と前記一対の電極6,7の少なくとも一方の間に交番電界を印加することにより,一次電子(e−)は多孔質発光層2の蛍光体粒子3や絶縁層4に衝突し、沿面放電となり、さらに二次電子(e−)25が多数発生する。これにより、雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。加えて、交流電界の印加により、誘電体層において分極の反転が繰り返される。それに伴って電子が発生し、多孔質発光層に電荷が注入される結果、沿面放電が発生する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。
【0200】
このとき印加する交番電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えること、または周波数を数十Hzから数千Hz上げることにより分極反転時の電子放出や沿面放電が一層激しく生じ、発光輝度が向上した。
【0201】
また、交番電界の電圧値を上げるに従いバースト波が発生する。バースト波は誘電体層10の分極反転時に発生するもので、発生周波数は正弦波ではピークの直前、ノコギリ波や矩形波ではピ−ク時に発生し、バースト波の電圧を上げるに従い発光輝度が向上した。
【0202】
いったん沿面放電が開始されると上述したように連鎖的に放電が繰り返され、絶えず紫外線や可視光線を発生するので、光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0203】
本実施の形態14においては分極反転に際し、誘電体層10の厚みに対して約0.4〜0.8kV/mmの電界を印加し、その後、交流電源を用いて発光素子1の厚さに対して約0.5〜1.0kV/mmの交番電界を印加させることにより、一次電子放出と沿面放電が発生し、続いて発光が開始された。なお、分極反転において印加する電界は大きい方が電子の発生を促進するが、小さすぎると電子の放出は不十分になる。
【0204】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であった。また、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%に低下させても発光が継続し、高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。青色換算で、2〜5lm/Wの発光効率を持った発光デバイスを作製することが可能となった。
【0205】
(実施の形態15)
図28を参照しながら本発明の実施の形態15について説明する。本実施の形態は第一の電極6が誘電体層10の下面に配置され、この誘電体層10の上面に多孔質発光体層2が積層され、この多孔質発光体層2の上面に第二の電極7と第三の電極70が配置されている。
【0206】
本実施の形態15においては既述した実施の形態12と同様に蛍光体粒子の表面を絶縁層4で被覆したものを使用した。すなわち、MgOの均一なコーティング層を青色蛍光体粒子の表面に実施の形態12と同様の方法で形成させた。
【0207】
本実施の形態15おける発光素子の製造方法については、まず上述の絶縁層4で均一に被覆された蛍光体粒子3を50質量%とコロイダルシリカ水溶液を50質量%混合しスラリーを作製する。次に第一の電極6が形成された直径15mmφで厚さ1mmの誘電体層10(BaTiOを主成分とする板状の焼結体で、その下面にAg電極ペーストを30μmの厚さに焼付けて第一の電極6を形成したもの)の上面に前記スラリーを塗布し、乾燥機で100〜150℃、10〜30分間乾燥することで、誘電体層10に厚さが約100μmの多孔質発光体層2を積層させた。さらに、多孔質発光体層2の上面にAg電極ペーストを厚さ30μmになるように焼付けて、第二の電極7を多孔質発光体層2の表面の一部に形成し、その後、透明電極(インジウム−錫酸化物合金(ITO)、厚さ0.1μm)70が部分的に塗布されたガラス板(図示せず)を積層した。その結果、一対の電極のうちの第一の電極7が誘電体層10の下面に形成され、誘電体層10の上面には多孔質発光体層2が積層され、その上面には第二の電極7と、さらに第三の電極70が形成され、図28の断面構造を有する発光素子1を得た。
【0208】
次に、この発光素子1の発光作用について説明する。第一の電極6と第二の電極7の間に交流電界を印加する。電圧の印加により、誘電体層10で分極反転により一次電子(e−)24が放出される。この際、紫外線や可視光線が発生する。その後、他の電極、すなわち電極70と前記一対の電極の少なくとも一方の間に交番電界を印加することにより,一次電子(e−)は多孔質発光層2の蛍光体粒子3や絶縁層4に衝突し、沿面放電となり、さらに二次電子(e−)25が多数発生する。これにより、雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。加えて、交流電界の印加により、誘電体層において分極の反転が繰り返される。それに伴って電子が発生し、多孔質発光層に電荷が注入される結果、沿面放電が発生する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子や紫外線が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。
【0209】
このとき印加する交番電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えること、または周波数を数十Hzから数千Hz上げることにより分極反転時の電子放出や沿面放電が一層激しく起り発光輝度が向上する。
【0210】
また、交番電界の電圧値を上げるに従いバースト波が発生する。バースト波は誘電体層10の分極反転時に発生するもので、発生周波数は正弦波ではピークの直前、ノコギリ波や矩形波ではピ−ク時に発生し、バースト波の電圧を上げるに従い発光輝度が向上した。いったん沿面放電が開始されると上述したように連鎖的に放電が繰り返され、絶えず紫外線や可視光線を発生するので、光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0211】
本実施の形態においては分極反転に際し、誘電体層10の厚みに対して約0.5〜1.0kV/mmの電界を印加し、その後、交流電源を用いて発光素子1の厚さに対して約0.5〜1.0kV/mmの交番電界を印加させることにより、一次電子放出と沿面放電し二次電子が多量に発生し、続いて発光が開始された。なお、分極反転において印加する電界は大きい方が電子の発生を促進するが、小さすぎると電子の放出は不十分になる。
【0212】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であった。また、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%に低下させても発光が継続し、高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。青色換算で、2〜5lm/Wの発光効率を持った発光デバイスを作製することが可能となった。
【0213】
(実施の形態16)
図29と図30を参照しながら、本実施の形態における電子放出体、多孔質発光体及び一対の電極を含む発光素子について説明する。本実施の形態の発光素子は多孔質発光体が無機蛍光体粒子を含み、かつ多孔質発光体が電子放出体から発生する電子によって照射されるように電子放出体に隣接して配置され、一対の電極が前記多孔質発光体の少なくとも一部に電界が印加されるように設置されている。特に、電子放出体がカソード電極、ゲート電極、及び前記2つの電極の間に介在させたスピント型エミッタを含んでなり、カソード電極とゲート電極の間にゲート電圧を印加することにより、前記スピント型エミッタから放出される電子を多孔質発光体に照射して前記多孔質発光体を発光させる発光素子について説明する。
【0214】
図29は本実施の形態における発光素子の断面図であり、1は全体の厚みが約2mmの発光素子、2は厚みが約30μmの多孔質発光体層、3は平均粒径が2μmの蛍光体粒子、4は蛍光体粒子表面の厚みが0.5μmの絶縁層、100は底面が1μm、高さが1μmの三角錐方のスピント型エミッタ、6は厚みが200nmの第一の電極、7は厚みが200nmの第二の電極、111は厚みが150nmのアノード電極、112は厚みが150nmのカソード電極、113は厚みが200nmのゲート電極、116は厚みが1μmの絶縁層、117は厚みが1.1mmの基板、119は厚みが1.1mmの電子放出体である。
【0215】
まず、本実施の形態における発光素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。図30A−Fは図29に示した発光素子の製造方法を説明するための図であり、図30Aに示すように、ガラスの基板117の表面にAuを蒸着してカソード電極112を形成する。カソード電極112にはAuの代りに、Ag、Al又はNiを蒸着させてもよい。また、基板117はガラス以外にセラミックであってもよい。
【0216】
次に、図30Bに示すように絶縁層116を形成するために、カソード電極112の上にスクリーン印刷法により、ガラスペーストを印刷し、乾燥させて580℃で焼成する。なお、絶縁層116の形成はガラスペーストをスクリーン印刷する代わりに、SiOをカソード電極上にスパッタリングにより被覆してから、フォトレジストとフォトマスクを用いて、UV露光してから現像し、エッチングすることによりSiOの絶縁層116を選択的に形成させる所謂フォトリソグラフィの技法を用いて行うことも可能である。
【0217】
次に、図30Cに示すようにAlをスパッタリング成膜してからフォトリソグラフィの技法を用いて、絶縁層116の上にAlからなるゲート電極113を形成する。なお、ゲート電極用金属はAlの代わりに、Niを用いることも可能である。
【0218】
その後、図30Eに示すようにスピント型エミッタをゲート電極113の間の窪みに2段階蒸着方式により形成する。具体的には、図30Cに示す基板を約20°の角度に傾斜させて蒸着装置にセットし、前記の基板を回転させながら犠牲材料としてのAlを蒸着する。これにより、Alは図30Dに示すようにゲート電極113を被覆するように蒸着され、厚み200nmのAl層118が形成され、カソード電極112上には蒸着されない。続いて、エミッタとしてMoを垂直蒸着すると、ゲート電極113の間の窪みに自己整合的に入り込むように蒸着され、三角錐状のMoのスピント型エミッタが形成される。その後、ゲート電極113上の犠牲層やMoをリフトオフし、またMoエミッタは蒸着の際に酸化されるので、550℃の温度で焼成することにより、最終的に図30Eに示すように、Moスピント型エミッタ100がゲート電極113の間の窪みに形成されたガラス基板が得られる。なお、エミッタ材料としてはMoの以外にNb、Zr、Ni、モリブデン鋼などの金属も使用に供することができ、またこれらのエミッタの作製は上述のMoエミッタを作製した方法に準じて行うことができる。
【0219】
本実施の形態における多孔質発光体2は蛍光体粒子3又はこれを主成分とするものから構成されていて、本実施の形態においては蛍光体粒子3の表面を絶縁層4で被覆したものを使用した。
【0220】
蛍光体粒子3は、例えば平均粒径が2〜3μmのBaMgAl1017:Eu2+(青)、ZnSiO:Mn2+(緑)、YBO:Eu3+(赤)の3種類の無機化合物を所望の発光を得るために、それぞれ単独又はそれらを混合したものを用いることが可能である。
【0221】
本実施の形態においては前記青色の蛍光体粒子3を使用し、その表面にMgOからなる絶縁性無機物の絶縁層4を形成した。具体的には、Mgプレカーサー錯体溶液に蛍光体粒子3を加えて長時間にわたって攪拌し、取り出して乾燥後、大気中において400〜600℃で熱処理することにより、MgOの均一なコーティング層、すなわち絶縁層4を蛍光体粒子3の表面に形成した。上述の絶縁体層4がコーティングされた蛍光体粒子3を50質量%とコロイダルシリカ水溶液を50質量%混合してスラリー化する。
【0222】
次に、無機繊維からなるセラミック板(厚さが約1mm、Al−CaO−SiO系で空隙率が約45%のセラミック繊維板)を前記スラリーに浸漬して100〜150℃の温度で10〜30分間乾燥することにより、セラミック板に蛍光体粒子の粉末を担持させる。その後、その両面にAg電極ペーストを厚さ30μmに焼き付けて第一の電極6と第二の電極7を形成した。このようにして得られたセラミック繊維板を図30Fに示すように、電子放出体119にコロイダルシリカ、水ガラス又はエポキシ樹脂を用いて貼付する。次に、多孔質発光体2の上面に透明なアノード電極(インジウム−錫酸化物合金(ITO)、厚さ15μm)111が塗布されたガラス(図示せず)を積層することにより、図29に示すように電子放出体119の上に多孔質発光体2が形成され、かつ所定の位置に電極が配置されてなる発光素子1が得られる。なお、発光素子1の電極について、第一の電極6及び第二の電極7は、アノード電極111として用いる透明電極ITOの抵抗値が高いために補助電極として挿入している。このため、アノード電極111と第二の電極7を共通にすることやゲート電極113と第一の電極6を共通にすることも可能である。
【0223】
また、エミッタから放出される電子の軌道が大きくずれるのを防ぐために、ゲート電極上にAgペーストをスクリーン印刷し、集束電極を設置してもよい。
【0224】
次に、本実施の形態における発光素子1の発光作用について説明する。
【0225】
発光素子1を駆動するために、まず図29のアノード電極111とカソード電極112の間及びゲート電極113とカソード電極112の間にそれぞれ800V、80Vの直流電界を印加することにより、スピント型エミッタ100から図の矢印の方向に一次電子を放出させる。印加する電界は大きい方が電子の発生を促進するが、小さすぎると電子の放出は不十分になる。
【0226】
上述のようにして一次電子を放出させるとともに、第一の電極6と第二の電極7の間に交番電界を印加する。電荷の移動に伴い放出された一次電子は雪崩的に増倍されて多孔質発光体2の内部で沿面放電が発生するようになる。沿面放電は連鎖的に継続して生じ、蛍光体粒子の周りで電荷移動が発生し、さらに加速された電子が発光中心に衝突し多孔質発光体2が励起されて発光する。その際、紫外線や可視光線も発生し、紫外線によっても励起発光する。
【0227】
また、印加する交番電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えることにより、さらに周波数を数十Hzから数千Hz上げることで、電子放出や沿面放電がより激しく生じ、その結果、発光輝度が向上する。
【0228】
いったん沿面放電が開始されると連鎖的に放電が繰り返され、絶えず紫外線や可視光線を発生するので、光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0229】
具体的には、交流電源を用いて多孔質発光体1の厚さに対して約0.5〜1.0kV/mmの交番電界を印加することにより、電荷の移動とともに沿面放電が発生し、続いて発光が開始された。なお、その際印加する電界は大きい方が電子の発生を促進するが、小さすぎると電子の放出は不十分になる。
【0230】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%に低下させても発光が継続し、高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。このようにして、青色換算で、2.0lm/Wの発光効率、輝度200cd/m、コントラスト500:1の特性を持った発光デバイスを作製できた。
【0231】
本実施の形態においては駆動を大気中で行ったが、酸素、窒素及び不活性ガス中や、減圧気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0232】
本実施の形態における発光素子1は、構造的に無機EL(ELD)に近い構造であるが、構成やメカニズムが全く異なるものである。まず、構成に関しては既に背景技術で記載したように無機ELに使用される蛍光体はZnS:Mn2+、GaP:Nなどに代表されるように半導体からなる発光体であるが、実施の形態における蛍光体粒子は絶縁体又は半導体のいずれでもよいが絶縁性蛍光体粒子の方が好ましい。すなわち、極端に抵抗値の低い半導体の蛍光体粒子を用いる際においても、既述したように蛍光体粒子が絶縁性無機物である絶縁層で均一に被覆することによって短絡することなく沿面放電により継続して発光させることができるからである。また、蛍光体層に関して無機ELではサブミクロン〜数μmの厚みであるのに対して、本実施の形態では数μm〜数百μmの多孔質体である。さらに、本実施の形態における特徴は発光体が多孔質である点である。
【0233】
多孔質の形態については、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察した結果から蛍光体粒子が点接触した程度のパッキングである。
【0234】
また、蛍光体粒子として現行のプラズマディスプレイ(PDP)で使用されている紫外線発光の粉体を用いたが、陰極線管(CRT)で使用されているZnS:Ag(青)やZnS:Cu、Au,Al(緑)、Y:Eu(赤)でも同様の発光を確認できた。
【0235】
本発明は電子放出体119で放出される電子に基づいて、雪崩的に沿面放電が発生し発光に至る発光素子であり、電子を照射させる新規な電子放出体を本発明の多孔質発光体2と組み合わせれば容易に発光させることができるものと推定される。
【0236】
なお、本実施の形態においては蛍光体粒子3のスラリーを作製するに当たり、コロイダルシリカ水溶液を使用したが、有機溶剤を使用しても同様の結果が得られることを確認した。蛍光体粒子50質量%に対してα−テレピネオール45質量%、エチルセルロース5質量%を混練したスラリーを作製し、上述のセラミック繊維板に浸漬させ、熱処理によって脱脂してもよい。
【0237】
また、本実施の形態では青色の蛍光体粒子を用いたが、赤又は緑を用いても同様の結果が得られることが判明した。なお青、赤、緑の混合粒子においても同様の結果が得られた。なお、本実施の形態においては第一の電極6と第二の電極7の間に交番電界を印加したが直流電界でも差し支えない。
【0238】
本実施の形態の発光素子によれば、沿面放電による発光であるために、従来のような蛍光体層形成に薄膜形成プロセスをほとんど用いることがなく、真空系やキャリア増倍層を必要としないので構造が簡単であり加工も容易である。
【0239】
(実施の形態17)
図31と図32A−Gを参照しながら、本実施の形態における電子放出体、多孔質発光体及び一対の電極を含む発光素子について説明する。本実施の形態の発光素子は多孔質発光体が無機蛍光体粒子を含み、かつ多孔質発光体が電子放出体から発生する電子によって照射されるように電子放出体に隣接して配置され、一対の電極が多孔質発光体の少なくとも一部に電界が印加されるように設置されてなるものである。特に、電子放出体がカソード電極、ゲート電極、前記2つの電極の間に介在させたカーボンナノチューブを含んでなり、カソード電極と前記ゲート電極の間にゲート電圧を印加することにより、カーボンナノチューブから放出される電子を多孔質発光体に照射して前記多孔質発光体を発光させる発光素子について説明する。
【0240】
図31は本実施の形態における発光素子の断面図であり、1は発光素子、2は多孔質発光体、3は蛍光体粒子、4は絶縁層、6は第一の電極、7は第二の電極、111はアノード電極、112はカソード電極、113はゲート電極、116は絶縁層、117は基板及び127はカーボンナノチューブである。
【0241】
まず、本実施の形態における発光素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。図32A−Gは図31に示した発光素子の製造方法を説明するための図であり、図32Aに示すように、ガラスの基板117の表面にAuを蒸着してカソード電極112を形成する方法は既述の実施の形態16と同様にして行う。なお、本実施の形態における基板はガラス以外にセラミックであってもよい。次に、図32Bに示すように絶縁層116をカソード電極112の上に形成させる方法及び図32Cに示すように、絶縁層116の上にAlからなるゲート電極113を形成する方法についても既述した実施の形態16と同様にして行う。
【0242】
次に、カーボンナノチューブ50質量%に対してα−テレピネオール45質量%、エチルセルロース5質量%を混練したペーストをスクリーン印刷により図32Dに示すように、ゲート電極113の間の窪みに落とし込む。乾燥後、N雰囲気中において400℃で熱処理することにより、図32Eに示すようにカーボンナノチューブが上記の窪みに堆積する。しかるのちに、粘着フィルムをカーボンナノチューブの表面に接着させてから剥離する方法により、カーボンナノチューブの配向処理を行うと、図32Fに示すような電子放出体として好ましい形態である垂直配向されたカーボンナノチューブが形成される。
【0243】
なお、上述のゲート電極を形成した基板に感光性カーボンナノチューブペーストをコーティングし、フォトマスクを用いて露光し現像することによりカーボンナノチューブをパターンニングすることも可能である。また、カーボンナノチューブの垂直配向のためのプロセスとしてレーザー照射法を用いることもできる。具体的には、上記のカーボンナノチューブを含有するペーストを用いてカーボンナノチューブ膜を形成した後に、レーザーを照射してカーボンナノチューブ膜に含まれる有機樹脂をバーンアウトすることにより、膜表面にカーボンナノチューブを露出させるとともに起毛させる方法である。
【0244】
次に、既述の実施の形態16と同様に、無機繊維からなるセラミック板(厚さが約1mm、Al−CaO−SiO系で空隙率が約45%のセラミック繊維板)に蛍光体粒子粉末を担持させたものを作製し、その両面にAg電極ペーストを厚さ30μmに焼き付けて第一の電極6と第二の電極7を形成した。このようにして得られたセラミック繊維板を図32Gに示すように、電子放出体119にコロイダルシリカ、水ガラス又はエポキシ樹脂を用いて貼付する。しかるのちに、多孔質発光体2の上面に透明なアノード電極(インジウム−錫酸化物合金(ITO)、厚さ15μm)111が塗布されたガラス(図示せず)を積層することにより、電子放出体119の上に多孔質発光体2が形成され、かつ所定の位置に電極が配置されてなる図31に示すような本実施の形態における発光素子1が得られる。
【0245】
次に、発光素子1の発光作用について説明する。発光素子1を駆動するために、まず図31のアノード電極111とカソード電極112の間及びゲート電極113とカソード電極112の間にそれぞれ750、80Vの直流電界を印加することにより、カーボンナノチューブから図の矢印の方向に電子を放出させる。
【0246】
上述のようにして電子を放出させるとともに、第一の電極6と第二の電極7の間に交番電界を印加する。電荷の移動に伴い放出された電子は雪崩的に増倍されて多孔質発光体2の内部で沿面放電が発生するようになる。沿面放電は連鎖的に継続して生じ、蛍光体粒子の周りで電荷移動が発生し、さらに加速された電子が発光中心に衝突し多孔質発光体2が励起されて発光する。その際、紫外線や可視光線も発生し、紫外線によっても励起発光する。
【0247】
また、印加する交番電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えることにより、さらに周波数を数十Hzから数千Hz上げることで電子放出や沿面放電がより激しく生じ、その結果発光輝度が向上する。
【0248】
いったん沿面放電が開始されると、上述したように連鎖的に放電が繰り返され、絶えず紫外線や可視光線を発生するので、光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0249】
具体的には、交流電源を用いて多孔質発光体1の厚さに対して約0.5〜1.0kV/mmの交番電界を印加することにより、電荷の移動とともに沿面放電が発生し、続いて発光が開始された。なお、その際印加する電界は大きい方が電子の発生を促進するが、小さすぎると電子の放出は不十分になる。
【0250】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%に低下させても発光の継続が確認された。
【0251】
本実施の形態においては駆動を大気中で行ったが、酸素、窒素及び不活性ガス中や、減圧気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0252】
また、本実施の形態では青色の蛍光体粒子を用いたが、赤又は緑を用いても同様の結果が得られることが判明した。なお青、赤、緑の混合粒子においても同様の結果が得られた。
【0253】
本実施の形態の発光素子によれば、沿面放電による発光であるために、従来のような蛍光体層形成に薄膜形成プロセスをほとんど用いることがなく、真空系やキャリア増倍層を必要としないので構造が簡単であり加工も容易である。
【0254】
(実施の形態18)
図33と図34A−Cを参照しながら、本実施の形態における電子放出体、多孔質発光体及び一対の電極を含む発光素子について説明する。本実施の形態の発光素子は多孔質発光体が無機蛍光体粒子を含み、かつ多孔質発光体が電子放出体から発生する電子によって照射されるように電子放出体に隣接して配置され、一対の電極が前記多孔質発光体の少なくとも一部に電界が印加されるように設置されてなるものである。特に、電子放出体が表面伝導型電子放出素子であって、金属酸化膜に微細な間隙を設け、金属酸化膜に予め配備した電極に電圧を印加することによって、前記の間隙に電界を印加し、間隙から発生した電子を多孔質発光体に照射させてなる発光素子について説明する。
【0255】
図33は本実施の形態における発光素子の断面図であり、1は発光素子、2は多孔質発光体、3は蛍光体粒子、4は絶縁層、6は第一の電極、7は第二の電極、117は基板、130は間隙、131はPdO超微粒子膜、及び132はPt電極である。
【0256】
まず、本実施の形態における発光素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。図34A−Cは図33に示した本実施の形態における発光素子の製造方法を説明するための図である。図34Aに示すように、セラミック基板17の表面にPtペーストをスクリーン印刷によるパターンニングでPt電極132を小さな間隙を設けた状態で基板上に形成する。次に、図34Bに示すように、インクジェットプリンティングによりPdOインクでPt電極132をブリッジするように被覆し、焼成してPdO超微粒子膜131をPt電極132上に形成する。続いて、電気的処理を施すことにより、図34Cに示すようにPdO超微粒子膜31に亀裂を発生させ10nm程度の微細な間隙30を形成する。このようにして本実施の形態の電子放出体が構成されていることから、フォトリソグラフィのプロセスを使わず、工程数も比較的少なくなり経済性やディスプレイの大型化の点できわめて優れている。
【0257】
次に、既述した実施の形態16と同様に、無機繊維からなるセラミック板(厚さが約1mm、Al−CaO−SiO系で空隙率が約45%のセラミック繊維板)に蛍光体粒子粉末を担持させたものを作製し、その両面にAg電極ペーストを30μmの厚さに焼き付けて第一の電極6と第二の電極7をそれぞれ形成する。得られたセラミック繊維板を図33に示すように、電子放出体119にコロイダルシリカ、水ガラス又はエポキシ樹脂を用いて貼付する。
【0258】
このようにして、電子放出体119の上に多孔質発光体2が配置され、かつ所定の位置に電極が配備された図33に示すような本実施の形態における発光素子1が得られる。
【0259】
次に、この発光素子1の発光作用について説明する。発光素子1を駆動するために、まず図33に示す2つのpt電極132間に12〜16Vの直流電圧を印加すると、一方の電極から10nmのスリットを介してトンネル効果によって図の矢印の方向に電子が放出され、多孔質発光体2へ照射される。
【0260】
上述のようにして電子を放出させるとともに、第一の電極6と第二の電極7の間に交番電界を印加する。電荷の移動に伴い放出された電子は雪崩的に増倍されて多孔質発光体2の内部で沿面放電が発生するようになる。沿面放電は連鎖的に継続して生じ、蛍光体粒子の周りで電荷移動が発生し、さらに加速された電子が発光中心に衝突し多孔質発光体2が励起されて発光する。その際、紫外線や可視光線も発生し、紫外線によっても励起発光する。
【0261】
また、印加する交番電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えることにより、さらに周波数を数十Hzから数千Hz上げることで電子放出や沿面放電がより激しく生じ、その結果発光輝度が向上する。
【0262】
いったん沿面放電が開始されると、上述したように連鎖的に放電が繰り返され、絶えず紫外線や可視光線を発生するので、光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0263】
具体的には、交流電源を用いて多孔質発光体2の厚さに対して約0.5〜1.0kV/mmの交番電界を印加させることにより、電荷の移動と沿面放電が発生し、続いて発光が開始された。なお、その際印加する電界は大きい方が電子の発生を促進するが、小さすぎると電子の放出は不十分になる。
【0264】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%に低下させても発光の継続が確認された。
【0265】
本実施の形態においては駆動を大気中で行ったが、酸素、窒素及び不活性ガス中や、減圧気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0266】
また、蛍光体粒子として現行のプラズマディスプレイ(PDP)で使用されている紫外線発光の粉体を用いたが、陰極線管(CRT)で使用されているZnS:Ag(青)やZnS:Cu、Au,Al(緑)、Y:Eu(赤)でも同様の発光を確認できた。
【0267】
本発明は電子放出体119で放出される電子を基点として雪崩的に沿面放電が発生し発光に至る発光素子であり、電子を照射させる新規な機能を有するデバイスを多孔質発光体2に付加すれば容易に発光するものと予想される。
【0268】
また、本実施の形態では青色の蛍光体粒子を用いたが、赤又は緑を用いても同様の結果が得られることが判明した。なお青、赤、緑の混合粒子においても同様の結果が得られた。
【0269】
本実施の形態の発光素子によれば、沿面放電による発光であるために、従来のような蛍光体層形成に薄膜形成プロセスをほとんど用いることがなく、真空系やキャリア増倍層を必要としないので構造が簡単であり加工も容易である。
【0270】
なお、本実施の形態で記述した電子放出体を用いる代わりに、類似の電子放出体として絶縁層を2つの電極で挟持し、両電極に電界を印加することにより、電子を放出させることもできる。具体的には、上部電極としてIr−Pt−Au合金、カソード電極としてAl、絶縁層としてAlをそれぞれ使用し、絶縁層を2つの電極で挟持して電極間に電界を印加すると上部電極から電子が放出されるので、このような電子放出体を用いて多孔質発光体に照射させる仕組みにすることにより発光素子を作製することも可能である。
【0271】
(実施の形態19)
図35と図36A−Dを参照しながら、本実施の形態における電子放出体、多孔質発光体及び一対の電極を含む発光素子について説明する。本実施の形態の発光素子は多孔質発光体が無機蛍光体粒子を含み、かつ多孔質発光体が電子放出体から発生する電子によって照射されるように電子放出体に隣接して配置され、一対の電極が前記多孔質発光体の少なくとも一部に電界が印加されるように設置されている。特に、電子放出体がポリシリコン薄膜、シリコン微結晶、シリコン微結晶の表面に形成された酸化膜を含んでなり、電子放出体への電圧の印加により放出される電子を多孔質発光体に照射して多孔質発光体を発光させる発光素子について説明する。
【0272】
図35は本実施の形態における発光素子の断面図であり、1は発光素子、2は多孔質発光体、3は蛍光体粒子、4は絶縁層、6は第一の電極、7は第二の電極、112はカソード電極、119は電子放出体、141は金属薄膜電極、145はポリシリコン及び147はシリコン微結晶である。図36A−Dは図35に示した発光素子の製造方法を説明するための図であり、図36Aに示すように、ガラスの基板143の表面にAuを蒸着してフォトリソグラフィの技法により、カソード電極112をパターンニングして形成する。続いて、図36Bに示すように、柱状ポリシリコンをプラズマCVD法で形成する。
【0273】
次に、図36Cに示すようにカソード電極112上のポリシリコン145をポーラス化し、ナノシリコン微結晶147を形成する。具体的にはフッ酸とエチルアルコールの混合溶液に基板を浸漬して、基板を正極にして対極としてのPtを負極にして、その間に電圧を印加するとカソード電極112上にシリコン微結晶が形成される。
【0274】
次に、基板143を洗浄してから硫酸溶液に浸漬し、やはり基板を正極、Ptを負極にして電圧を印加するとポリシリコン145とシリコン微結晶の表面がともに酸化される。最終的に、図36Dに示すようにAu合金、Ag合金などの金属薄膜電極141をスパッタリングして設け、フォトエッチングでパターンニングすることにより電子放出体119が得られる。このように本実施の形態における電子放出体の製造方法は比較的工程数が少なく、ウエットプロセスを用いて作製できることから経済性にも優れたものである。
【0275】
次に、既述した実施の形態11と同様に、無機繊維からなるセラミック板(厚さが約1mm、Al−CaO−SiO系で空隙率が約45%のセラミック繊維板)に蛍光体粒子粉末を担持させたものを作製し、その両面にAg電極ペーストを厚さ30μmに焼き付けて第一の電極6と第二の電極7を形成した。このようにして得られたセラミック繊維板を図35に示すように、電子放出体119にコロイダルシリカ、水ガラス又はエポキシ樹脂を用いて貼付する。
【0276】
上述の工程によって、電子放出体119の上に多孔質発光体2が配置され、かつ所定の位置に電極が配備されてなる本実施の形態における図35の発光素子1が得られる。
【0277】
次に、この発光素子1の発光作用について説明する。発光素子1を駆動するために、まず図35の金属薄膜電極141とカソード電極112の間に15〜20Vの直流電界を印加することにより、カソード電極から電子がシリコン微結晶をトンネリングし、表面の酸化膜によって加速されて多孔質発光体中に放出される。
【0278】
上述のようにして電子を放出させるとともに、第一の電極6と第二の電極7の間に交番電界を印加する。電荷の移動に伴い放出された電子は雪崩的に増倍されて多孔質発光体2の内部で沿面放電が発生するようになる。沿面放電は連鎖的に継続して生じ、蛍光体粒子の周りで電荷移動が発生し、さらに加速された電子が発光中心に衝突し多孔質発光体2が励起されて発光する。その際、紫外線や可視光線も発生し、紫外線によっても励起発光する。
【0279】
また、印加する交番電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えることにより、さらに周波数を数十Hzから数千Hz上げることで電子放出や沿面放電がより激しく生じ、その結果、発光輝度が向上する。
【0280】
いったん沿面放電が開始されると、上述したように連鎖的に放電が繰り返され、絶えず紫外線や可視光線を発生するので、光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0281】
本実施の形態においては、交流電源を用いて多孔質発光体2の厚さに対して約0.5〜1.0kV/mmの交番電界を印加させることにより、電荷の移動と沿面放電が発生し、続いて発光が開始された。なお、その際印加する電界は大きい方が電子の発生を促進するが、小さすぎると電子の発生は不十分になる。
【0282】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%に低下させても発光の継続が確認された。
【0283】
本実施の形態においては駆動を大気中で行ったが、酸素、窒素及び不活性ガス中や、減圧気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0284】
また、本実施の形態では青色の蛍光体粒子を用いたが、赤又は緑を用いても同様の結果が得られることが判明した。なお青、赤、緑の混合粒子においても同様の結果が得られた。
【0285】
本実施の形態の発光素子によれば、沿面放電による発光であるために、従来のような蛍光体層形成に薄膜形成プロセスをほとんど用いることがなく、真空系やキャリア増倍層を必要としないので構造が簡単であり加工も容易である。
【0286】
(実施の形態20)
図37A−Cを参照しながら、本実施の形態における発光素子の一部を構成している電子放出体について説明する。本実施の形態における電子放出体は既述したカーボンナノチューブの代りに、ウィスカーエミッタを用いてなるものである。
【0287】
図37A−Cは本実施の形態における電子放出体の製造方法を説明するための図であり、112はカソード電極、113はゲート電極、116は絶縁層、117は基板、155は有機金属錯体ガス、157はウィスカーエミッタである。図37Aに示すように、ガラスの基板117の表面にAuを蒸着してカソード電極112を形成し、その上に絶縁層116、さらに絶縁層116の上にゲート電極113を形成する方法については既述の実施の形態19と同様にして行う。次に、図37Bに示すようにCVD法でウィスカーエミッタを形成する。具体的にはAl:Zn有機金属錯体ガス155を大量にカソード電極に向かってシャワーする。その際、一定のガス量以上になると熱酸化したAl:ZnO膜が垂直方向成長するようになる。さらに、原料ガスを増やすと膜の先端が鋭利になって数nmレベルまで先鋭化する。このため、Al:ZnOウィスカーが自己整合的にパターンニングと垂直配向が行われる。原料ガスの投入量、成膜温度、成膜時間に注意しながら、成膜することにより、図37Cに示すようにAl:ZnOウィスカーエミッタ157を有する電子放出体が得られる。
【0288】
次に、既述した実施の形態11と同様の方法で無機繊維からなるセラミック板(厚さが約1mm、Al−CaO−SiO系で空隙率が約45%のセラミック繊維板)に蛍光体粒子粉末を担持させた多孔質発光体を作製し、所定の電極を配備して上述の電子放出体の上に積層することにより、発光素子(図示せず)が得られる。
【0289】
次に、この発光素子1の発光作用について説明する。発光素子を駆動するために、まずアノード電極とカソード電極の間及びゲート電極とカソード電極の間にそれぞれ850、80Vの直流電界を印加することにより、ウィスカーエミッタから電子を放出させる。
【0290】
上述のようにして電子を放出させるとともに、第一の電極と第二の電極の間に交番電界を印加する。電荷の移動に伴い放出された電子は雪崩的に増倍されて多孔質発光体の内部で沿面放電が発生するようになる。沿面放電は連鎖的に継続して生じ、蛍光体粒子の周りで電荷移動が発生し、さらに加速された電子が発光中心に衝突し多孔質発光体が励起されて発光する。その際、紫外線や可視光線も発生し、紫外線によっても励起発光する。
【0291】
また、印加する交番電界の波形を正弦波やノコギリ波から矩形波に変えることにより、さらに周波数を数十Hzから数千Hz上げることで、電子放出や沿面放電がより激しく生じ、その結果発光輝度が向上する。
【0292】
いったん沿面放電が開始されると、上述したように連鎖的に放電が繰り返され、絶えず紫外線や可視光線を発生するので、光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0293】
具体的には、交流電源を用いて多孔質発光体の厚さに対して約0.5〜1.0kV/mmの交番電界を印加させることにより、電荷の移動と沿面放電が発生し、続いて発光が開始された。なお、その際印加する電界は大きい方が電子の発生を促進するが、小さすぎると電子の放出は不十分になる。また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%に低下させても発光の継続が確認された。
【0294】
本実施の形態においては駆動を大気中で行ったが、酸素、窒素及び不活性ガス中や、減圧気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0295】
また、本実施の形態では青色の蛍光体粒子を用いたが、赤又は緑を用いても同様の結果が得られることが判明した。なお青、赤、緑の混合粒子においても同様の結果が得られた。
【0296】
本実施の形態の発光素子によれば、沿面放電による発光であるために、従来のような蛍光体層形成に薄膜形成プロセスをほとんど用いることがなく、真空系やキャリア増倍層を必要としないので構造が簡単であり加工も容易である。
【0297】
なお、上述の電子放出体において、ウィスカーエミッタの代わりに、炭化珪素又はダイアモンド薄膜などを用いることも可能であり、これらの材料においても上述のカソード電極とゲート電極の間にゲート電圧を印加することにより、そこから電子を放出させて多孔質発光体に照射させることもできる。
【0298】
(実施の形態21)
本実施の形態においては図38乃至図40を参照しながら、電子放出体、多孔質発光体及び一対の電極を含む発光素子において、特に多孔質発光体に電界を印加するために設置される一対の電極について説明する。
【0299】
図38乃至図40は発光素子の一部分を構成する多孔質発光体の断面図であり、2は多孔質発光体、3は蛍光体粒子、4は絶縁層、6は第一の電極、及び7は第二の電極である。図38に示す多孔質発光体は既述の実施の形態16と同様に、青色の蛍光体粒子3を使用し、その表面にMgOからなる絶縁性無機物の絶縁層4を形成したものを使用した。具体的には、Mgプレカーサー錯体溶液に蛍光体粒子を加えて長時間にわたって攪拌してから取り出して乾燥後、大気中において400〜600℃で熱処理することにより、MgOの均一なコーティング層、すなわち絶縁層を蛍光体粒子の表面に形成させたものである。上述の絶縁体層4がコーティングされた蛍光体粒子3を50質量%とコロイダルシリカ水溶液を50質量%混合してスラリー化する。
【0300】
次に、無機繊維からなるセラミック板(厚さが約1mm、Al−CaO−SiO系で空隙率が約45%のセラミック繊維板)を前記スラリーに浸漬して120〜150℃の温度で10〜30分間乾燥することにより、セラミック板に蛍光体粒子粉末を担持させる。しかるのちに、図38に示すように、上面にAg電極ペーストを厚さ30μmに焼き付けて第一の電極6と第二の電極7を形成した。このようにして得られたセラミック繊維板を、電子放出体にコロイダルシリカ、水ガラス又はエポキシ樹脂を用いて貼付することにより、本発明の発光素子(図示せず)が得られる。
【0301】
また、既述した実施の形態1においては図38に示すように、多孔質発光体の上面と下面に対向して第一の電極6と第二の電極7を形成したが、図39に示すように、上下両面に襷がけに形成することも可能である。
【0302】
次に、図40に示すように、第一の電極6と第二の電極7をともに多孔質発光体2に埋設させて形成する場合について説明する。MgOからなる絶縁層4で表面が被覆された蛍光体粒子3をポリビニルアルコール5質量%と混合し造粒した後、成型用金型を用いて約50MPaの圧力で板状に成形した。次に、窒素雰囲気中450〜1200℃で2〜5時間熱処理を行い、板状の多孔質発光体2を作製した。多孔質発光体の見かけ気孔率が10%未満になると、沿面放電が発光体の表面でしか発生しなくなり発光効率が低いものとなる。そのため、見かけ気孔率が10%以上の多孔質構造を有する多孔質発光体が望ましい。また、発光体の気孔があまりにも大きく気孔率が過大になると、発光効率が低下することや沿面放電が発生しにくくなることが予想されるので、理想的には見かけ気孔率が10%以上〜100%未満が好適である。
【0303】
上記のようにして得られた板状の多孔質発光体2の表面にAg電極ペーストを厚さ30μmに焼き付けて第一の電極6と第二の電極7を形成した。しかるのちに、上述の絶縁層4でコーティングされた蛍光体粒子3を50質量%とコロイダルシリカ水溶液を50質量%混合してスラリー化したものを電極が形成された上記の多孔質発光体の表面に塗布し、120〜150℃の温度で10〜30分間乾燥する。こうすることにより、図40に示すように第一の電極6と第二の電極7がともに埋設された多孔質発光体が得られる。
【0304】
なお、蛍光体粒子の表面にMgOの絶縁層を形成する方法は次のように行ってもよい。まず、金属アルコキシドであるMg(OC粉末(1モル比)にCHCOOH(10モル比)、HO(50モル比)及びCOH(50モル比)からなる溶液を室温で攪拌しながらよく混合し、ほぼ透明なゾル・ゲル溶液を調製する。これに平均粒径が2〜3μmのBaMgAl1017:Eu2+(青)、ZnSiO:Mn2+(緑)、YBO:Eu3+(赤)のなどの蛍光体粒子(2モル比)を上述のゾル・ゲル溶液中に攪拌しながら少しずつ加えて混合する。この操作を一日継続して行ってから混合溶液を遠心分離し、粉体をセラミックス製のバットに取り、150℃で一昼夜乾燥させた。
【0305】
次に、乾燥後の粉体を大気中で400〜600℃、2〜5時間仮焼することにより、蛍光体粒子の表面にMgOからなる均一な絶縁層を形成させることができた。
【0306】
絶縁層の厚さは、蛍光体粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果、0.1〜2.0μmであった。上述のように絶縁層の被覆は、蛍光体粒子を金属アルコキシド溶液に浸漬して行うこと、既述したように金属錯体溶液を用いて行うこと、又は蒸着、スパッタ又はCVDにより行うことなどがいずれも可能である。
【0307】
また、絶縁層として用いる金属酸化物は、Y,LiO,MgO,CaO,BaO,SrO,Al,SiO,MgTiO,CaTiO,BaTiO,SrTiO,ZrO,TiO,B等が知られていて、これらのうちの少なくとも1種類を用いて絶縁層を形成することが望ましい。
【0308】
特に、気相法で絶縁層を形成する際には蛍光体粒子を窒素雰囲気中で200〜500℃、1〜5時間程度前処理することが望ましく、通常蛍光体粒子は吸着水や結晶水を多量に含んでおり、このような状態で絶縁層を形成すると、輝度低下や発光スペクトルのシフトなどの寿命特性に影響を及ぼすことになり好ましくない。
【0309】
なお、絶縁層の厚さは0.1〜2.0μm程度としたが、蛍光体粒子の平均粒径や沿面放電の発生状況を考慮して決定され、平均粒径がサブミクロンオーダーの場合には非常に薄いコーティング層を形成する必要があるものと考えられる。
【0310】
絶縁層の厚さが大きくなると発光スペクトルのシフト、輝度低下、電子の遮蔽の点から好ましくない。また、絶縁層が薄くなると沿面放電の継続的な発生がやや難しくなることが予想される。したがって、蛍光体粒子の平均粒径と絶縁層の厚さの関係は前者1に対して後者は1/10〜1/500の範囲にあることが好ましい。
【0311】
また、蛍光体粒子がそれぞれ金属酸化物からなる絶縁層で被覆されていることが好ましいが、実際には2,3の蛍光体粒子が凝集した状態で被覆されている。このように蛍光体粒子が多少凝集した状態でコーティングされていても発光のようすにほとんど影響は認められない。
【0312】
こうして得られた多孔質発光体を用いて、本発明の発光素子を作製したところ、高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光素子が得られることを確認した。
【0313】
なお、絶縁層4で表面を被覆された蛍光体粒子3を作製する際、沿面放電の発生を助長するために、絶縁性繊維18を混合して、多孔質発光体2を作製することもできる。その際に用いる絶縁性繊維18としては、SiO−Al−CaO系の電気的絶縁性繊維などが好適である。このようにして得られた多孔質発光体の断面の模式図を図41に示す。また、絶縁層4で被覆された蛍光体粒子3を熱処理する代わりに簡便な方法として蛍光体粒子3と絶縁性繊維18の混合物を用いることも可能である。図42は蛍光体粒子3と絶縁性繊維18の混合物から得られた多孔質発光体の断面の模式図である。
【0314】
(実施の形態22)
本実施の形態においては既述した本発明の多孔質発光体とスピント型エミッタを含む電子放出体を組み合わせて作製した電界放出ディスプレイ(FED)の構造の概要について図面を用いて説明する。
【0315】
図43は本実施の形態における電界放出ディスプレイの主要部の分解斜視図であり、図44は本実施の形態におけるスピント型エミッタを用いた発光素子のアレイの断面図である。図43において、2は多孔質発光体、119は電子放出体、170は電界放出ディスプレイ、171はゲートライン、172はカソードライン、173はアノード基板、174はカソード基板である。図44において、1は発光素子、2は多孔質発光体、3は蛍光体粒子、4は絶縁層、100はスピント型エミッタ、111はアノード電極、112はカソード電極、113はゲート電極、116は絶縁体、117は基板、175はスペーサである。
【0316】
図43に示すように、本実施の形態における電界放出ディスプレイ170においては電子放出体119を搭載するカソード基板174の上に多孔質発光体2を有するアノード基板173を対向させて積層してある。カソード基板174には互いに直交したゲートライン171とカソードライン172の2層の配線が形成されていて、その交点に電子放出体119が形成されている。こうすることにより、本実施の形態における電界放出ディスプレイ170においてはCRTのように電子ビームを偏向することなく蛍光面に2次元の映像を表示することができる。
【0317】
実施の形態16において説明したように、スピント型エミッタ100を用いる電子放出体119では、円錐形状のスピント型エミッタ100とそれを取り囲むようにして形成された電子の引き出し電圧を印加するためのゲート電極113から構成されている。
【0318】
電子をエミッタから放出させる際にはゲートに正電位、エミッタに負電位を印加する。円錐形状のエミッタの先端部分には強い電界の集中が生じ、そこから電子が多孔質発光体2の方向に放出される。Moスピント型エミッタでは15〜80Vの電圧で電子が放出される。また、実際のディスプレイパネルにおいては1画素あたり複数個のエミッタを対応させて形成し、エミッタの動作状況に高い冗長性を持たせることができる。こうすることにより、この種の素子に特有の電流変動も統計的に平均化されるために安定した画素発光が得られる。また、マトリックス駆動は所謂単純マトリックス駆動が可能であり、ゲートライン171に正の走査パルスを加えつつエミッタライン172に負のデータ電圧を与えて同時に1ラインを表示させる。走査パルスを順次切り替えることにより、2次元の像が表示できる。なお、マトリックス状に配置された画素の1つ1つにトランジスタを置き、それぞれの画素をON−OFFすることによりアクティブ駆動も可能である。
【0319】
一例として、複数個のスピント型エミッタ100を形成し、それぞれのエミッタに対応するように多孔質発光体2を積層させた発光素子の断面を図44に示す。その際、図示したように発光のクロストークを回避するために、多孔質発光体2にスペーサ175を形成する方が望ましい。なお、本実施の形態における電界放出ディスプレイでは電子放出体119としてスピント型エミッタ100を用いたものについて記述したが、必ずしもこれに限るものではなく、電子を放出せる機能を有するものであれば本発明の多孔質発光体と組み合わせることにより、電界放出ディスプレイを作製することが可能である。
【0320】
(実施の形態23)
図45A−Cは本実施の形態における発光素子の断面図であり、これらの図において1は発光素子、2は多孔質発光体層、3は蛍光体粒子、4は絶縁層、5は基板、6は第一の電極、7は第二の電極、8は透光性基板、9は気体層、10は誘電体層及び11は隔壁である。
【0321】
図45Aの発光素子の製造方法は以下の通りである。先ず、厚さが0.3〜1.0mmの誘電体10の焼結体の片面にAgペーストを30μmの厚さに焼き付けて、所定の形状の第一の電極6を形成する。次に、ガラス又はセラミック製の基板5上に前記の第一の電極が形成された側を接着させる。誘電体は実施の形態1で既述したものがいずれも使用に供することができる。
【0322】
次に、実施の形態1と同様にしてMgO等の金属酸化物からなる絶縁層4で表面を被覆した蛍光体粒子3を準備する。蛍光体粒子3として、平均粒径が2〜3μmのBaMgAl1017:Eu2+(青)、ZnSiO:Mn2+(緑)、YBO:Eu3+(赤)等の無機化合物を用いることが可能である。
【0323】
本実施の形態においてはMgOからなる絶縁層4で表面が被覆された蛍光体粒子3をポリビニルアルコール5質量%と混合し造粒した後、成型用金型を用いて約50MPaの圧力で板状に成形した。こうして得られた成型体を窒素雰囲気中450〜1200℃で2〜5時間熱処理を行い、板状の多孔質発光体2を作製した。
【0324】
多孔質発光体の見かけ気孔率が10%未満になると、多孔質発光体層に電子が衝突した際、多孔質発光体層の表面では発光するが、電子が発光層の内部までは注入されないため層内ではほとんど発光しないので発光効率が低いものとなる。そのため放電により発生した電子が多孔質発光体層の内部へ円滑に注入されるように、本実施の形態における多孔質発光体の見かけ気孔率は10%以上の多孔質構造を有するものであることが望ましい。また、多孔質発光体の見かけ気孔率がきわめて大きくなると、かえって発光効率が低下することや多孔質発光体層の内部において沿面放電が発生しにくくなるため見かけ気孔率は10%以上〜100%未満の範囲が好適である。特に、50〜100%未満の範囲が好ましい。
【0325】
上記のようにして得られた板状の多孔質発光体2を誘電体層10にガラスペーストを用いて貼付する。その際、ガラスペーストは多孔質発光体層の両端の位置にスクリーン印刷し、ここへ多孔質発光体層を接着する。その後、580℃で熱処理すると多孔質発光層は気体層が介在する状態で誘電体層10と接着させることができる。
【0326】
次に、ITO(インジウム−錫酸化物合金)からなる第二の電極7が多孔質発光体層に対向して位置するようにあらかじめ形成されたガラス板等の透光性基板8で多孔質発光体層を覆うと、図45Aに示す発光素子1が得られる。その際、多孔質発光体層2と第二の電極7の間には気体の存するわずかな間隙が生じるように、ガラスペースト、コロイダルシリカ、水ガラス又は樹脂等を用いて透光性基板8を熱処理により貼付する。これにより、図45Aに示すように多孔質発光体層の上下に気体層が存する状態で、多孔質発光体層の両端部が隔壁11として機能するガラスペースト等で接着される。
【0327】
本実施の形態における特徴である多孔質発光体層の上下の両側に存する気体層、すなわち多孔質発光体層2と誘電体層10の間に介在する気体層と多孔質発光体層と第二の電極の間に介在する気体層の厚さは共に20〜250μmの範囲が好適であり、特に30〜220μmが最も好ましい範囲である。上記の範囲より大きくなると、放電の発生に高電圧を印加する必要があり、経済性の理由から好ましくない。また、上記の範囲より気体層の厚さは薄くても差し支えがなく、気体の平均自由行程以上であれば実質的に問題はないが、気体層が非常に薄くなると発光素子の作製の工程で厚さの制御がやや難しくなる。
【0328】
なお、本実施の形態における多孔質発光体層の上下に存する気体層の厚さは必ずしも同じである必要はない。しかし、発光体層の上下2箇所に気体層を設ける場合には、それぞれの気体層の厚さは図1のように発光体層の片側の1箇所だけに気体層がある場合に比較して、やや狭く設定する方が好ましい。気体層の厚さが大きくなると、放電に際して比較的高い電圧を印加する必要があり、経済性の点から好ましくない。
【0329】
上述したように本実施の形態においては多孔質発光体層の上下に気体層を設けることに特徴があり、一対の電極である第一の電極と第二の電極に交流電界を印加すると上下の気体層で同時に放電する結果、電子が多孔質発光体層の上下から放出されて発光体層へ効率よく注入される。すなわち、印加する交流電界を徐々に大きくし、気体層に絶縁破壊電圧以上の電圧が印加されると放電が起こるようになり、気体層で電子が増倍されて、多孔質発光体に電子が衝突し多孔質発光体層の発光中心が電子で励起されて発光する。このように気体層は電子供給源として作用していて、発生した電子は多孔質発光体層の上下から注入され、発光体層の全体で沿面放電を発生させながら層内部を雪崩のように通過する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。このように多孔質発光体層の上下から電子が効率的に注入される結果、実施の形態1で記述したように発光体層の片側から電子が注入される場合に比較して、本実施の形態における多孔質構造を有する発光体層においては層全体が満遍なく均一に効率よく発光し、その結果輝度は格段に高くなる。
【0330】
上述のようにして、本実施の形態においては気体層と前記気体層に接触する多孔質発光体層と前記気体層及び前記多孔質発光体層とに電界を印加するための少なくとも一対の電極とを有する発光素子で、特に多孔質発光体層の一方の面に気体層を介して、誘電体層と電界を印加するための一対の電極の内の第一の電極が配置され、前記多孔質発光体層の前記誘電体層と前記第一の電極が配置されていない他の面に前記一対の電極の内の第二の電極が気体層を介して配置された発光素子が作製できる。
【0331】
また、本実施の形態においては図45Bに示すように、多孔質発光体層2,2と誘電体層10の間には気体層9からなる間隙を設けずに、多孔質発光体層2,2と電極6,7の間にそれぞれ気体層9,9からなる間隙を設けても差し支えない。
【0332】
このようにすれば、気体層9,9とこれに接触する多孔質発光体層2,2とに一対の電極6,7から電界を印加することにより、多孔質発光体層2,2を発光できる。
【0333】
本実施の形態においては、多孔質発光体層を形成する熱処理工程で特に留意すべきことは、熱処理温度と雰囲気である。本実施の形態では窒素雰囲気中で450〜1200℃の温度範囲で熱処理を施したために、蛍光体にドープされた希土類原子の価数に変化がなかった。しかし、この温度範囲より高温で処理するときには希土類原子の価数が変化することや絶縁層と蛍光体からなる固溶体が発生する可能性があり注意が必要である。熱処理雰囲気については、上述のように蛍光体粒子にドープされている希土類原子の価数に影響を及ぼさないようにするために窒素雰囲気が好ましい。
【0334】
絶縁層の厚さは本実施の形態では0.1〜2.0μm程度としたが、蛍光体粒子の平均粒径や沿面放電を効率よく発生させることを考慮して決定される。また、蛍光体の平均粒径がサブミクロンオーダーになると、比較的薄く被覆する方がよい。絶縁層が厚くなると発光スペクトルのシフト、輝度低下等が発生するため好ましくない。逆に、絶縁層が薄くなると沿面放電がやや発生し難くなることが推定される。従って、蛍光体粒子の平均粒径と絶縁層の厚さの関係は前者1に対して後者が1/10〜1/500の範囲にあることが望ましい。
【0335】
次に、この発光素子1の発光作用について説明する。
【0336】
図に示すように発光素子1を駆動するために、第一の電極6と第二の電極7の間に交流電界を印加する。印加する交流電界を徐々に大きくし、気体層に絶縁破壊電圧以上の電圧が印加されると放電が起こるようになり、電子が気体層で増倍されて、それが多孔質発光体に衝突し発光体層の発光中心が電子で励起されて発光する。このように、気体層は電子供給源として作用していて、本実施の形態においては発生した電子は多孔質発光体層の上下から注入され、多孔質からなる発光体層の全体で沿面放電を発生させながら発光体層の内部を雪崩れるように通過する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。このように本実施の形態においては多孔質発光体層の上下から電子が注入される結果、実施の形態1で記述した発光素子のように発光体層の片側からしか電子が注入されない場合に比較して、多孔質発光体層は層全体が満遍なく均一に効率よく発光し、輝度は著しく大きくなる。
【0337】
また、本実施の形態においては見かけ気孔率が10%以上〜100%未満の多孔質発光体を使用しているため、多孔質構造を有していない通常の発光体層ではその表面では発光するが、層の内部ではほとんど発光しないのに対して、本実施の形態における多孔質からなる発光体層では層の表面のみならず発光体層の内部でも発光するために発光効率がきわめて良好なものになる。このように多孔質層の場合には、その多孔質構造のために放電により生じた電子が層の内部まで円滑に注入され、層全体で沿面放電が発生して発光し、その結果高輝度の発光が得られる。
【0338】
また、本実施の形態において使用する多孔質発光体はその見かけ気孔率が10%以上の多孔質構造を有するものであることが望ましい。また、発光体の見かけ気孔率がきわめて大きくなると、かえって発光効率が低下することや多孔質発光体層の内部において沿面放電が発生しにくくなることなどの理由から、望ましい見かけ気孔率は10以上〜100%未満の範囲である。特に、50〜100%未満が最も好ましい。
【0339】
なお、印加する交流電界の波形を正弦波や鋸歯状波から矩形波に変えることにより、また周波数を数十Hzから数千Hz上げることで沿面放電による電子の放出が非常に激しくなり、発光輝度が向上する。また、交流電界の電圧が上昇するにつれてバースト波が発生する。バースト波の発生周波数は正弦波ではピークの直前、鋸歯状波や矩形波ではピ−ク時に発生し、バースト波の電圧を上げるに従い発光輝度が向上した。いったん沿面放電が開始されると、紫外線や可視光線も発生するので、これらの光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0340】
本実施の形態における図45Aと図45Bの発光素子では多孔質発光体層の厚さに対して、それぞれ約0.79〜1.7、0.75〜1.6kV/mmの電界を印加して蛍光体粒子3を発光させて、その後はそれぞれ約0.55〜1.1、0.52〜1.0kV/mmの交番電界を印加することにより、沿面放電を継続して行わせて蛍光体粒子3の発光を持続させた。印加する電界は大きくなると電子の発生を促進するが、小さいとそれらの発生は抑制される。気体層に存在する気体が空気の場合、少なくともその絶縁破壊電圧である約0.3kV/mmの電圧を印加する必要がある。
【0341】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%程度に低下させても発光が継続し、三色いずれの蛍光体粒子の発光においても高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。本実施の形態においては駆動を大気中で行ったが、希ガスや加圧又は負圧の状態にされた気体中で実施しても同様に発光することを確認した。
【0342】
本実施の形態の発光素子によれば、厚膜プロセス等により多孔質発光体層を形成しているため、従来のように発光素子の作製に際して薄膜形成プロセスを用いることがなく、真空系やキャリア増倍層を必要としないので構造が簡単であり、製造や加工も容易である。また、放電で発生した電子が多孔質発光体層にその両面から発光層に衝突すること、発光体の構造が多孔質体であるため衝突した電子が発光体層の内部まで沿面放電を発生しながら円滑に注入されるので非常に高輝度の発光を得ることが可能になる。通常の多孔質でない発光体ではその表面だけで発光するのに対して、本実施の形態の多孔質発光体層では上述のように層全体が満遍なく発光するため、高輝度になることに特徴がある。また、プラズマディスプレイで行われている紫外線による蛍光体の発光と比較すると発光効率がきわめて良好である。さらに、大型ディスプレイで使用する際の消費電力が比較的小さい発光素子を提供することができる。多孔質発光体層の両端に放電分離手段として隔壁を設置することにより、発光のクロストークを容易に回避することが可能である。
【0343】
次に図45Cは、図45A−Bの発光素子において多孔質発光体層2と第一の電極6の間に介在する誘電体層10を設けなかったこと以外は同様のものである。
【0344】
図45Cの発光素子の製造方法は以下のようである。先ず、ガラス又はセラミック製の基板5の片面にAgペーストを30μmの厚さに焼き付けて、第一の電極6を所定の形状に形成する。
【0345】
次に、実施の形態1と同様にしてMgO等の金属酸化物からなる絶縁層4で表面を被覆した蛍光体粒子3を準備する。蛍光体粒子3として、平均粒径が2〜3μmのBaMgAl1017:Eu2+(青)、ZnSiO:Mn2+(緑)、YBO:Eu3+(赤)等の無機化合物を用いることが可能である。
【0346】
本実施の形態においては実施の形態3と同様に、MgOからなる絶縁層4で表面が被覆された蛍光体粒子3をポリビニルアルコール5質量%と混合し造粒した後、成型用金型を用いて約50MPaの圧力で板状に成形した。こうして得られた成型体を窒素雰囲気中450〜1200℃で2〜5時間熱処理を行い、板状の多孔質発光体2を作製した。
【0347】
上記のようにして得られた板状の多孔質発光体2の両端を基板5の電極側にガラスペーストを用いて貼付する。具体的には、図45Cに示すようにガラスペーストをスクリーン印刷し、多孔質発光体層を接着してから580℃で熱処理を施すと、多孔質発光体層2は第一の電極との間にわずかに気体層からなる間隙を設けた状態で固着される。多孔質発光体層2と第一の電極6の間に存する気体層の厚さは20〜250μmの範囲が好適であり、特に30〜220μmの範囲が好ましい。上記の範囲を超えると、放電の発生に高電圧を印加する必要があり、経済性の理由から好ましくない。また、上記の範囲より気体層は薄くても差し支えなく、気体の平均自由行程を越えていればよい。
【0348】
次に、ITO(インジウムー錫酸化物合金)からなる第二の電極7が多孔質発光体層に対向して位置するようにあらかじめ形成されたガラス板等の透光性基板8で多孔質発光体層を覆うと、図45Cに示すような本実施の形態における発光素子1が得られる。その際、多孔質発光体層2と第二の電極7の間には気体層からなるわずかな間隙が生じるようにコロイダルシリカ、水ガラス又は樹脂等を用いて透光性基板8を熱処理により貼付する。多孔質発光体層2と第二の電極7の隙間の厚さは上述の多孔質発光体層と第一の電極の間の隙間の厚さと必ずしも同じである必要はないが、ほぼ同様の厚さに設定すればよい。
【0349】
上述のように、本実施の形態においては多孔質発光体層の両面に設置されている第一の電極と第二の電極の間にそれぞれわずかな間隙を設けることに特徴があり、このようにして多孔質発光体層と一対の電極の間には希ガス、大気、酸素、窒素又はそれらの混合ガスからなる気体層をそれぞれ介在させる。このような発光素子の一対の電極に交流電界を印加すると、気体層に絶縁破壊電圧以上の電圧が印加されると放電が起こるようになり、その際気体層で電子が増倍されて、多孔質発光体に電子が衝突し発光体層の発光中心が電子で励起されて発光する。このように、気体層は電子供給源として作用し、発生した電子は発光体層に衝突し、層の内部まで注入され発光体層の全体で沿面放電を発生しながら雪崩れるように通過する。沿面放電は電界が印加されている間は継続して生じ、雪崩的に発生した電子が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。このように本実施の形態においては電子が多孔質発光体層の両側から供給され発光体層の内部まで円滑に満遍なく注入される結果、実施の形態1のように多孔質発光体の片側から電子が注入される場合に比較して、発光体層は層全体が均一に効率よく発光し、しかも発光の輝度は高くなる。
【0350】
なお、本実施の形態においては蛍光体粒子3の表面をMgOからなる絶縁層4で被覆したものを使用したが、MgOは抵抗率が高く(10Ω・cm以上)、沿面放電を効率よく発生させることができるようになるからである。絶縁層の抵抗率が低い場合には沿面放電が発生し難く、ときには短絡するおそれがあるため好ましくない。このような理由から抵抗率が高い絶縁性金属酸化物で被覆することが望ましい。もちろん使用する蛍光体粒子自体の抵抗率が高い場合には絶縁性金属酸化物で被覆しなくても沿面放電が容易に発生する。絶縁層としては、上記のMgO以外に、Y,LiO,CaO,BaO,SrO,Al,SiO,ZrOから選択された少なくとも1つを用いることができる。これらの酸化物の標準生成自由エネルギーΔGは非常に小さく(例えば、室温で−100kcal/mol以下)、安定な物質である。また、これらの絶縁層は抵抗率が高く、還元され難い物質であるため、電子による蛍光体粒子の還元や劣化を抑制する保護膜としても優れていて、その結果蛍光体の耐久性も高くなり好都合である。
【0351】
また、絶縁層の形成には上記のゾル・ゲル法以外に化学吸着法や、CVD法、スパッタ法、蒸着法、レーザ法、剪断応力法などを用いる物理吸着法によって行うことも可能である。絶縁層は均質、均一であって剥離しないことが望ましく、絶縁層を形成する際には蛍光体の粒子を酢酸、シュウ酸、クエン酸などの弱酸溶液に浸漬し、表面に付着している不純物を洗浄することが肝要である。
【0352】
さらに、絶縁層を形成する前に蛍光体の粒子を窒素雰囲気中で200〜500℃、1〜5時間程度前処理することが望ましい。通常の蛍光体粒子は吸着水や結晶水を多量に含んでおり、このような状態で絶縁層を形成すると輝度低下や発光スペクトルのシフト等の寿命特性に好ましくない影響を及ぼすことになるからである。蛍光体の粒子を弱酸性溶液で洗浄する場合にはその後によく水洗してから上記の前処理を行う。
【0353】
次に、この発光素子1の発光作用について図45Cを参照しながら説明する。図に示すように発光素子1を駆動するために、第一の電極6と第二の電極7の間に交流電界を印加する。その際、発光素子は石英管中に挿入し、NeとXeの混合ガスをわずかに加圧の状態で封入した。印加する交流電界を徐々に大きくし、気体層に絶縁破壊電圧以上の電圧が印加されると放電が発生するようになり、電子が気体層で増倍されて、それが多孔質発光体に衝突し多孔質発光体層の発光中心が電子で励起されて発光する。このように、気体層は電子供給源として作用していて、発生した電子は多孔質発光体層の両側から層の内部へ注入され、多孔質発光体層の全体で沿面放電を起こしながら発光体層を雪崩れるように通過する。沿面放電は電界が印加されている間、継続して生じ、その際雪崩的に発生した電子が蛍光体の発光中心に衝突し、蛍光体粒子3が励起されて発光する。本実施の形態においては多孔質発光体層の上部と下部の両側から電子が注入される結果、実施の形態1で記述したように一方から電子が注入される場合に比較して、多孔質発光体層は層全体が満遍なく均一に効率よく発光し、輝度は著しく高くなる。
【0354】
さらに、本実施の形態においては見かけ気孔率が10%以上〜100%未満の多孔質発光体を使用しているため、多孔質発光体でない通常の蛍光体層ではその表面では発光するが、層の内部ではほとんど発光しないのに対して多孔質発光体層においては層の表面に限らず層の内部でも発光するために発光効率がきわめて良好なものになる。これは多孔質発光体層の場合には放電により電子が層の内部へ進入し、その結果層全体で沿面放電が生じ、高輝度の発光が得られるからである。
【0355】
なお、印加する交流電界の波形を正弦波や鋸歯状波から矩形波に変えることにより、また周波数を数十Hzから数千Hz上げることで沿面放電による電子の放出が非常に激しくなり、発光輝度が向上する。また、交流電界の電圧が上昇するにつれてバースト波が発生する。バースト波の発生周波数は正弦波ではピークの直前、鋸歯状波や矩形波ではピ−ク時に発生し、バースト波の電圧を上げるに従い発光輝度が向上した。いったん沿面放電が開始されると、紫外線や可視光線も発生するので、これらの光線による蛍光体粒子3の劣化を抑制する必要があり、発光開始後には電圧を低減させる方が好ましい。
【0356】
本実施の形態においては多孔質発光体層の厚さに対して、実施の形態2の発光素子と同様に約0.57〜1.2kV/mmの電界を印加して蛍光体粒子3を発光させて、その後約0.39〜0.78kV/mmの交番電界を印加することにより、沿面放電を継続して行わせて蛍光体粒子3の発光を持続させた。発光は実施の形態2と同様に希ガスを封入していない場合に比べ電圧値で60〜80%程度に低減しても発光した。この理由は希ガスを封入することにより、放電がより発生し易い雰囲気になるためであり、また加圧にすることで輝度を著しく高くすることができた。
【0357】
また、放電時の電流値は0.1mA以下であり、発光がはじまると電圧を印加時の50〜80%程度に低下させても発光が継続し、三色いずれの蛍光体粒子の発光においても実施の形態2の発光素子と比較して高輝度、高コントラスト、高認識性、高信頼性の発光であることが確認された。
【0358】
因みに、本実施の形態における誘電体層を有していない発光素子を大気中で発光させる際には上記の希ガスを加圧の状態で封入した場合に比較すると、駆動に際して約0.89〜1.9kV/mmの比較的電界を印加して蛍光体粒子3を発光させて、その後約0.62〜1.3kV/mmの交番電界を印加することにより、沿面放電を継続して行わせて蛍光体粒子3の発光を持続させることが必要であった。
【0359】
本実施の形態の発光素子によれば、厚膜プロセス等により多孔質発光体層を形成しているため、従来のように発光素子の作製に際して薄膜形成プロセスを用いることがなく、真空系やキャリア増倍層を必要としないので構造が簡単であり、製造や加工も容易である。また、多孔質発光体層に注入される電子に基づく沿面放電による発光であることから高輝度の発光が得られ、通常の蛍光体のようにその表面だけが発光するのではなく、多孔質発光体層の全体が満遍なく発光することに特徴がある。また、プラズマディスプレイで行われている紫外線による蛍光体の発光と比較すると発光効率がきわめて良好である、さらに、大型ディスプレイで使用する際の消費電力が比較的小さい発光素子を提供することができる。多孔質発光体層の両端に放電分離手段として隔壁を設置することにより、発光のクロストークを容易に回避することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0360】
本発明にかかる発光素子は沿面放電による発光であるために、従来のような蛍光体層の形成に薄膜形成プロセス使用することがなく、また真空容器やキャリア増倍層も必要としないので製造が容易であるという特徴を有するものであり、このことから本発明の発光素子は大画面ディスプレイの単位画素を構成する発光体としても有用である。また、照明、光源などに適用される発光体としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体を含む発光体層と、少なくとも2つの電極を含む発光素子であって、
前記発光素子は異なる誘電率を有する少なくとも2種の電気的絶縁体層を含み、前記電気的絶縁体層の1つは前記発光体層であり、
前記2つの電極のうちいずれかの電極は、前記絶縁体層のいずれかと接して形成されていることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記少なくとも2つの電極は、異なる誘電率を有する電気的絶縁体の界面に形成されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記絶縁体層の別の1つは気体層、強誘電体層又は比誘電率が100以上の誘電体層である請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記強誘電体層又は誘電体層は、焼結体層、強誘電体材料又は誘電体材料を含む粒子と結合剤の混合層、及び、強誘電体材料又は誘電体材料を含む分子堆積薄膜から選ばれる少なくとも一つの層で形成されている請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記強誘電体は、さらに背後電極を有する請求項3に記載の発光素子。
【請求項6】
前記蛍光体は多孔質発光体である請求項1に記載の発光素子。
【請求項7】
前記多孔質発光体は、空気、窒素及び不活性ガスから選ばれた少なくとも1つの気体を含んでいる請求項6に記載の発光素子。
【請求項8】
前記多孔質発光体層は、前記多孔質発光体層表面につながる連続する細孔と、前記細孔に充填されている気体と、蛍光体粒子により構成されている請求項6に記載の発光素子。
【請求項9】
前記多孔質発光体は、発光体粒子又は絶縁層で被覆された発光体粒子で形成されている請求項6に記載の発光素子。
【請求項10】
前記多孔質発光体の見かけ気孔率が10%以上〜100%未満の範囲にある請求項6に記載の発光素子。
【請求項11】
前記多孔質発光体は、発光体の粒子及び絶縁層で被覆された発光体粒子から選ばれる少なくとも一つの粒子と、絶縁性繊維で形成されている請求項6に記載の発光素子。
【請求項12】
前記発光素子は、加圧、常圧又は減圧雰囲気であり、全体がシールされている請求項1に記載の発光素子。
【請求項13】
前記発光素子は、少なくとも2つの電極に直流又は交流電界を印加して沿面放電を発生させ、発光体層を発光させる請求項1に記載の発光素子。
【請求項14】
前記気体層は、厚みが1μm以上300μm以下の範囲で設けられている請求項3に記載の発光素子。
【請求項15】
前記発光体層は、さらに放電分離手段により画素ごとに複数に分割されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項16】
前記放電分離手段は、隔壁によって形成されている請求項15に記載の発光素子。
【請求項17】
前記隔壁は、無機材料で形成されている請求項15に記載の発光素子。
【請求項18】
前記放電分離手段は、空隙によって形成されている請求項15に記載の発光素子。
【請求項19】
前記気体層は、リブによって厚み方向に仕切られている請求項3に記載の発光素子。
【請求項20】
前記発光体層は、少なくとも赤(R)、緑(G)又は青(B)を別個に発光する請求項1に記載の発光素子。
【請求項21】
前記少なくとも2つの電極は前記少なくとも1つの誘電体層と発光体層を挟んで配置され、交流電界を印加することにより、前記発光体層に沿面放電を発生させ、前記発光体層を発光させる請求項1に記載の発光素子。
【請求項22】
前記少なくとも2つの電極は、アドレス電極又は表示電極である請求項1に記載の発光素子。
【請求項23】
前記少なくとも1つの電極は透明電極であり、観察面側に配置されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項24】
前記気体層は、前記発光体層と前記観察面側の透明電極との間、及び前記発光体層と背面電極との間から選ばれる少なくとも一方に形成されている請求項3に記載の発光素子。
【請求項25】
前記発光体層が多孔質発光体層であり、前記多孔質発光体層は強誘電体層に接して配置されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項26】
前記少なくとも2つの電極に印加される交番電界が前記多孔質発光体層の一部にも印加されるよう前記電極の少なくとも一つが多孔質発光体層に配置されている請求項25に記載の発光素子。
【請求項27】
前記少なくとも2つの電極が強誘電体層と多孔質発光体層を挟んで形成されている請求項25に記載の発光素子。
【請求項28】
前記少なくとも2つの電極が共に強誘電体層に形成されている請求項25に記載の発光素子。
【請求項29】
前記少なくとも2つの電極がともに強誘電体層と多孔質発光体層の境界に形成されている請求項25に記載の発光素子。
【請求項30】
前記少なくとも2つの電極のうち一方の電極が強誘電体層と多孔質発光体層の境界に形成され、他方の電極が強誘電体層に形成されている請求項25に記載の発光素子。
【請求項31】
前記電気的絶縁層の1つが強誘電体層であり、
前記少なくとも2つの電極は、一対の電極と、他の電極を含み、
前記一対の電極は前記強誘電体層の少なくとも一部に電界が印加されるように配置され、
前記他の電極は、前記一対の電極の少なくとも一方との間に存在する前記発光体層の少なくとも一部に電界が印加されるように配置されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項32】
前記発光体層に所定以上の電界を印加して電荷移動させることにより発光させる請求項1に記載の発光素子。
【請求項33】
前記発光体層に向けてさらに電子放出体を設け、前記発光体層は前記電子放出体から発生する電子によって照射されるように、前記電子放出体に隣接して配置されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項34】
前記電子放出体がカソード電極、ゲート電極、及び前記2つの電極の間に介在させたスピント型エミッタを含み、前記カソード電極と前記ゲート電極の間にゲート電圧を印加することにより、前記スピント型エミッタから放出される電子を発光体層に照射して発光させる請求項33に記載の発光素子。
【請求項35】
前記スピント型エミッタが円錐形状である請求項34に記載の発光素子。
【請求項36】
前記スピント型エミッタがモリブデン、ニオブ、ジルコニウム、ニッケル、及びモリブデン鋼から選ばれる少なくとも一種の金属で構成される請求項34に記載の発光素子。
【請求項37】
前記電子放出体がカソード電極、ゲート電極、及び前記2つの電極の間に介在させたカーボンナノチューブを含み、前記カソード電極と前記ゲート電極の間にゲート電圧を印加することにより、前記カーボンナノチューブから放出される電子を発光体層に照射して発光させる請求項33に記載の発光素子。
【請求項38】
前記電子放出体が表面伝導型電子放出素子であって、金属酸化膜に間隙を設け、前記金属酸化膜に配備した電極に電界を印加することによって、前記間隙から発生した電子を多孔質発光体に照射して発光体層を発光させる請求項33に記載の発光素子。
【請求項39】
前記電子放出体が、酸化膜を有するポリシリコンで挟持された酸化膜を有するシリコン微結晶からなり、前記酸化膜を有するシリコン微結晶に電圧を印加することにより発生させた電子を発光体層に照射して発光させる請求項33に記載の発光素子。
【請求項40】
前記電子放出体がカソード電極、ゲート電極、及び前記2つの電極の間に介在させたウィスカーエミッタを含み、前記カソード電極と前記ゲート電極の間にゲート電圧を印加することにより、前記ウィスカーエミッタから放出される電子を発光体層に照射して発光させる請求項33に記載の発光素子。
【請求項41】
前記電子放出体がカソード電極、ゲート電極、及び前記2つの電極の間に介在させた炭化珪素又はダイアモンド薄膜を含み、前記カソード電極と前記ゲート電極の間にゲート電圧を印加することにより、前記電子放出体から放出される電子を発光体層に照射して発光させる請求項33に記載の発光素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/051045
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515560(P2005−515560)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015614
【国際出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】