説明

発光装置、照明装置およびバックライト

【課題】発光時の温度上昇を抑制しつつ発光を分散させることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命で高効率な発光装置を提供する。
【解決手段】1個当たりの発光面積が2,500πμm以下の複数の棒状構造発光素子210を同一の絶縁性基板200の実装面上に100個以上配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光装置、照明装置およびバックライトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光装置としては、図36に示すように、リードフレーム701が実装されたパッケージ基板700に1個(または数個)のLEDチップ710を実装して、LEDチップ710のn型電極705とp型電極706をボンディングワイヤ711,712によりリードフレーム701に夫々接続した後、反射板721で囲まれたLEDチップ710上に蛍光体を含む樹脂722を充填し、さらにその蛍光体を含む樹脂722上に透明樹脂723を充填したものがある(例えば、非特許文献1参照)。上記LEDチップ710は、サファイア基板702上にGaNからなる半導体層703が積層され、その半導体層703に活性層704を有する。
【0003】
ここで、従来の発光装置であるLEDの放熱方法について、より模式化した図37を用いて説明する。通常、LEDチップの大きさは、例えば1辺が500μmの正方形状で厚さが10μmである(発光面積250,000μm(=500μm×500μm))。LEDチップの大きさは、LEDチップからの熱を効率的に逃がす働きをする熱伝導性基板801の厚さ(例えば100μm)より十分大きい。この場合、発光により生じた熱は、図37の断面模式図に示すように、LEDチップ802の周辺部を除いて樹脂基板800側に向かってほぼ垂直方向に流出する。なお、熱伝導性基板801は、金属膜や、絶縁膜をコーティングした金属膜が用いられる。
【0004】
このLEDチップ802の周辺部では、熱伝導性基板801において横方向の熱の流出が許されるために熱流出量が大きくなる。このとき、LEDチップ802の活性層領域(発光層領域)では、周辺部に比べて中央の領域が高温となるため、活性層の温度が上昇して発光効率が低下し、または近接する透明樹脂や蛍光体が劣化して寿命が短くなるという問題がある。
【0005】
また、上記1個(または数個)のLEDチップが搭載された発光装置では、LEDチップ毎の明るさのばらつきがそのまま発光装置の明るさのばらつきになるため、発光装置の歩留まりが悪いという問題がある。
【0006】
さらに、上記発光装置では、図39の断面模式図に示すように、基板900上に実装されたLEDチップ901の領域に光束が集中するため、LEDチップ901を覆う樹脂902が劣化して発光効率が低下すると共に寿命が短くなるという問題がある(図39では熱伝導性基板を省略)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】村上元著、「第13回 LED・LD用 半導体パッケージ技術の変遷」、Semiconductor FPD World、プレスジャーナル社、2009年5月号、p.114〜117 (図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明の課題は、発光時の温度上昇を抑制しつつ発光を分散させることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が実現できる発光装置を提供することにある。
【0009】
また、この発明のもう1つ課題は、上記発光装置を用いることにより明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が実現できる照明装置を提供することにある。
【0010】
また、この発明のもう1つ課題は、上記発光装置を用いることにより明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が実現できるバックライトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明の発光装置は、
1個当たりの発光面積が2,500πμm以下の複数の発光素子が、少なくとも第1の電極および第2の電極が形成された同一基板の実装面上に、少なくとも上記第1の電極および上記第2の電極により規定される位置に100個以上配置されていると共に、
上記複数の発光素子の発光面積の総和に対して上記基板の実装面の面積が4倍以上となるように、上記複数の発光素子が上記基板の実装面上に分散して配置されていることを特徴とする。
【0012】
ここで、上記複数の発光素子は、円形状、楕円状、正方形状、矩形状、多角形状などの平坦な発光面を有する発光素子に限らず、筒状、畝状、半球状などの曲面で形成された発光面を有する発光素子であってもよい。また、上記複数の発光素子は、基板に直接接しているか、または、基板に熱伝導体を介して接しており、その両方の接し方をした発光素子が組み合わされていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、1個当たりの発光面の面積が2,500πμm以下の複数の発光素子を同一基板の実装面上に配置することによって、発光素子が基板に直接接した状態(または熱伝導体を介して間接的に接した状態)では、発光面の中心部においても基板側への横方向の熱流出が行われて、発光面の中心部を含めて発光素子の温度が低下するので、発光時の温度上昇が抑制される。そして、そのような微細な発光素子を同一基板の実装面上に100個以上配置することにより、明るさばらつきを有する複数の発光素子を集合したときの全体の明るさのばらつきを、1つの発光素子の明るさばらつきの1/10以下に低減できる。上記発光素子の温度上昇による発光効率の低下量は素子毎にばらつくが、発光素子の1個当たりの発光面の面積を2,500πμm以下にすることより温度上昇が抑制されて、発光効率の低下量のばらつきが抑制されるので、微細な発光素子を100個以上用いることによる明るさばらつきの低減効果がさらに高まる。さらに、発光素子を微小化して、同一基板上に分散させて配置することによって、例えば1個の発光素子と同等の光量を複数の微細な発光素子で得つつ、樹脂に照射される光が分散されて光強度を弱めることができ、樹脂の劣化を抑制して長寿命化が図れる。これにより、発光時の温度上昇を抑制しつつ発光を分散させることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が実現できる。
また、複数の発光素子の発光面積の総和に対して4倍以上の面積の基板の実装面上に複数の発光素子を分散して配置することによって、発光により発光素子に生じた熱の基板側への横方向の流出が効率よく行われると共に温度分布が均一になるため、発光時の温度上昇がさらに抑制され、より長寿命化、高効率化が図れる。
また、例えば、図40,図41に示すように、1個当たりの発光面の面積が2,500πμm以下の平坦な正方形(一辺の長さa)の発光面を有する発光素子910を、正方形状の基板900上に分散して配置する。このとき、1個あたりの発光素子910の発光面積(a)に対して、1個の発光素子910が占有する基板900の面積を4倍(4a)にすると、従来の図39に示す1つの発光素子(LEDチップ901)に比べて、図40,図41に示すように、互いに隣接する発光素子910間の距離を十分に確保しつつ、発光素子910の発光を分散させて光強度を弱めて、樹脂912の劣化を抑制することができる。
【0014】
また、一実施形態の発光装置では、上記発光素子1個当たりの発光面の面積は625πμm以下である。
【0015】
上記実施形態によれば、1個当たりの発光面の面積が625πμm以下の複数の発光素子を同一基板の実装面上に配置することによって、発光面の中心部における基板側への横方向の熱流出が極めて効率的に行なわれる。したがって、発光時の温度上昇が顕著に抑制され、更なる発光装置の長寿命化と高効率化が実現する。
【0016】
また、一実施形態の発光装置では、
上記複数の発光素子は、棒状であって、
上記複数の発光素子の長手方向が上記基板の実装面に対して平行になるように、上記複数の発光素子が上記基板の実装面上に配置されている。
【0017】
上記実施形態によれば、棒状の複数の発光素子の長手方向が基板の実装面に対して平行になるように、複数の発光素子を基板の実装面上に配置することによって、径方向に対して軸方向(長手方向)の長さの比を大きくできるので、発光素子の発光面の面積が同じ条件では発光面が平坦な正方形のときよりも基板側への横方向の熱流出が効率よく行われ、発光時の温度上昇がさらに抑制され、より長寿命化、高効率化が図れる。
【0018】
また、一実施形態の発光装置では、
上記棒状の発光素子は、棒状のコアを同心状に囲む筒状の発光面を有する。
【0019】
上記実施形態によれば、棒状の発光素子が、棒状のコアを同心状に囲む筒状の発光面を有することによって、1個当たりの発光面の面積が2,500πμm以下の複数の発光素子が同一基板の実装面上に100個以上配置されているという条件の範囲内で、発光素子1個あたりの発光面の面積が増大し、所定の明るさを得るための発光素子数を削減することができ、コストを削減できる。
【0020】
また、一実施形態の発光装置では、
上記複数の発光素子は、発光ダイオードであって、
上記基板上に所定の間隔をあけて形成された上記第1の電極と上記第2の電極との間に上記複数の発光ダイオードが接続され、
上記複数の発光ダイオードは、上記第1の電極にアノードが接続されると共に上記第2の電極にカソードが接続された発光ダイオードと、上記第1の電極にカソードが接続されると共に上記第2の電極にアノードが接続された発光ダイオードとが混在して上記基板上に配置され、
交流電源によって上記第1の電極と上記第2の電極との間に交流電圧を印加して上記複数の発光ダイオードが駆動される。
【0021】
上記実施形態によれば、多数の発光ダイオードに対してアノードとカソードの向きを揃えて配置する必要がなく、工程を簡略化できる。また、上記第1,第2の電極間に接続する複数の発光ダイオードの極性を揃えて配列する必要がないので、製造時に複数の発光ダイオードの極性(向き)を揃える工程が不要となり工程を簡略化できる。また、発光ダイオードの極性(向き)を識別するために、発光ダイオードにマークを設ける必要がなく、極性識別のために発光ダイオードを特別な形状にする必要がなくなる。よって、発光ダイオードの製造工程を簡略化でき、製造コストも抑えることができる。なお、発光ダイオードのサイズが小さな場合や発光ダイオードの個数が多い場合、極性を揃えて発光ダイオードを配列するものに比べて、上記製造工程を格段に簡略化できる。
【0022】
また、一実施形態の発光装置では、
上記基板が放熱板上に取り付けられている。
【0023】
上記実施形態によれば、基板を放熱板上に取り付けることによって、さらに放熱効果が向上する。
【0024】
また、この発明の照明装置では、
上記のいずれか1つの発光装置を備えたことを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、上記発光装置を用いることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が実現できる。
【0026】
また、この発明のバックライトでは、
上記のいずれか1つの発光装置を備えたことを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、上記発光装置を用いることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が実現できる。
【発明の効果】
【0028】
以上より明らかなように、この発明の発光装置によれば、発光時の温度上昇を抑制しつつ発光を分散させることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命で高効率な発光装置を実現することができる。
【0029】
また、この発明の照明装置によれば、上記発光装置を用いることにより明るさのばらつきを低減できると共に、長寿命化と高効率化が実現できる。
【0030】
また、この発明のバックライトによれば、上記発光装置を用いることにより明るさのばらつきを低減できると共に、長寿命化と高効率化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態の発光装置に用いられる発光素子の製造方法の工程図である。
【図2】図2は図1に続く工程図である。
【図3】図3は図2に続く工程図である。
【図4】図4はこの発明の第2実施形態の発光装置に用いられる発光素子の製造方法の工程図である。
【図5】図5は図4に続く工程図である。
【図6】図6は図5に続工程図である。
【図7】図7は図6に続く工程図である。
【図8】図8は図7に続く工程図である。
【図9】図9は図8に続く工程図である。
【図10】図10は図9に続く工程図である。
【図11】図11は図10に続く工程図である。
【図12】図12は図11に続く工程図である。
【図13】図13は図12に続く工程図である。
【図14】図14は図13に続く工程図である。
【図15】図15は図14に続く工程図である。
【図16】図16は図15に続く工程図である。
【図17】図17は図16に続く工程図である。
【図18】図18はこの発明の第3実施形態の発光装置に用いる絶縁性基板の平面図である。
【図19】図19はは図18のXIX−XIX線から見た断面模式図である。
【図20】図20は上記棒状構造発光素子を配列する原理を説明する図である。
【図21】図21は上記棒状構造発光素子を配列するときに電極に与える電位を説明する図である。
【図22】図22は上記棒状構造発光素子を配列した絶縁性基板の平面図である。
【図23】図23はこの発明の第4実施形態の発光装置の製造方法の工程図である。
【図24】図24は図23に続く工程図である。
【図25】図25は図24に続く工程図である。
【図26】図26はこの発明の第5実施形態の発光装置の製造方法の工程図である。
【図27】図27は図26に続く工程図である。
【図28】図28は図27に続く工程図である。
【図29】図29は図28に続く工程図である。
【図30】図30は図29に続く工程図である。
【図31】図31は図30に続く工程図である。
【図32】図32はこの発明の第6実施形態の照明装置に用いられる発光装置の平面図である。
【図33】図33は上記発光装置の側面図である。
【図34】図34は上記発光装置を用いた照明装置の一例としてのLED電球の側面図である。
【図35】図35はこの発明の第7実施形態の発光装置を用いたバックライトの平面図である。
【図36】図36は従来の発光装置の断面図である。
【図37】図37は従来の発光装置の熱流出を説明するための断面模式図である。
【図38】図38はこの発明の発光装置の熱流出を説明するための断面模式図である。
【図39】図39は従来の発光装置の断面模式図である。
【図40】図40はこの発明の発光装置の断面模式図である。
【図41】図41はこの発明の発光装置の平面模式図である。
【図42】図42は熱シミュレーションに用いたモデルを示す図である。
【図43】図43はLEDチップの直径に対する各部の温度を示す図である。
【図44】図44はLEDチップの直径に対する発光面の中心温度を示す図である。
【図45】図45はLEDチップの直径に対する発光面の中心温度と発光面の端部温度の差を示す図である。
【図46】図46(a)は発光素子の発光面が平坦な円形状である場合を説明する図であり、図46(b)は発光素子の発光面が平坦な正方形状である場合を説明する図であり、図46(c)は円に対して面積を一定にしたままで微小な変形を加えた場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
まず、この発明の発光装置、照明装置およびバックライトの実施の形態を説明する前に、この発明の発光装置の特徴について説明する。
【0033】
この発明の発光装置は、1個当たりの発光面の面積が2,500πμm以下(より好ましくは625πμm以下)の複数の発光素子が同一基板の実装面上に100個以上配置されていることを特徴としており、上記複数の発光素子は、円形状、楕円状、正方形状、矩形状、多角形状などの平坦な発光面を有する発光素子に限らず、筒状、畝状、半球状などの曲面で形成された発光面を有する発光素子であってもよい。
【0034】
例えば、同一基板の実装面上に100個以上配置された複数の発光素子の発光面が平坦な円形状である場合、発光面の直径が100μm(面積2,500πμm=π×50×50μm)を下回ると、発光素子の発光面の任意の点から外縁までの距離が50μm未満となって、発光面の中心部においても基板側への横方向の熱流出が行われる。それゆえ、発光面の中心部を含めて発光素子の温度が低下するので、発光時の温度上昇が抑制される。図38に発光素子803の発光面の直径が100μm未満のときの熱流出を示しており、図38に示すように、発光素子803の発光面の中心部においても基板側への横方向の熱流出が行われる。
【0035】
次に、熱シミュレーションにより、平坦な円形状の発光面を持つ発光素子の動作時の温度を示す。図42は、シミュレーションに用いたモデルを示している。熱伝導性基板850は、LEDを実装する一般的な基板を想定しており、厚さ50μmのアルミニウム基板851に、厚さ50μmの絶縁のための樹脂コーティング852が被覆されている。熱導電性基板850は直径10cmとした。樹脂コーティング852上には、厚さ10μmのサファイア基板上にGaNからなる発光層が形成された、直径φのLEDチップ853が配置されている。ここで、樹脂コーティング852上に配置されるLEDチップ853の発光面の総面積(40000πμm)は、常に一定になるように制約を課した。すなわち、LEDチップ853の直径φが1/2となったときは、LEDチップ853の数を4倍に増やし、樹脂コーティング852上に略均等に配置した。これは、LEDチップ853の直径φを変えても、発生する熱量を等しくするためである。熱導電性基板850は熱抵抗Rthで室温(27℃)の外界と接続されている。この熱抵抗Rthは、熱伝導性基板850の下に敷かれる樹脂基板、放熱経路に設置される金属、放熱フィン、および放熱フィンから大気への各熱抵抗を反映するものである。
【0036】
熱シミュレーションに用いた熱伝導率は、アルミニウム基板851が237W/mK、樹脂コーティング852が0.5W/mK、サファイア基板が35W/mKである。熱抵抗Rthは75℃/Wとした。発光面の発熱密度は10W/mとした。
【0037】
図43は、熱シミュレーションにより求めた各部の温度を示すグラフである。図43において、「◆」は定常状態での発光面の中心温度(図42のAでの温度)、「×」は発光面の端部温度(図42のBでの温度)、「■」は基板温度(LEDチップ853の直下におけるアルミニウム基板851の温度(図42のCでの温度)であり、LEDチップ853の直径φ依存を示す。ここで、基板温度は直径φが変わってもそれほど変化していないが、これは総発熱量を一定としたためである。
【0038】
図44は、発光面の中心温度のみを表示したグラフである。ここで、LEDチップ853の直径が100μm(面積2,500πμm=π×50×50μm)以下になると、発光面の中心温度が急速に低下することがわかる(図44の点線で示す発光面の中心温度の低下傾向よりも温度低下が顕著になる)。これは、発光面の中心部においても基板側への横方向の熱流出が行われること、すなわち図38に表した状態が実現していることを示唆している。発光面の中心温度とは、すなわち発光素子のなかで最も高温の部分であるから、この温度を下げることは、発光素子の効率を向上させ、周囲の樹脂や蛍光体の劣化を抑制して長寿命化させたりできることを意味する。
【0039】
図45は、発光面の中心温度と発光面の端部温度の差を表示したグラフである。光面の中心温度と発光面の端部温度の差は、発光面の中心付近でどの程度熱がこもっているかを示す指標となる。ここで、LEDチップ853の直径が50μm(面積625πμm=π×25×25μm)以下となると、発光面の中心温度と発光面の端部温度の差がほぼ0となることがわかる(図44の点線で示す発光面の中心温度の低下傾向よりも温度低下がさらに顕著になる)。すなわち、LEDチップ853の直径が50μm以下のとき、発光面の中心付近で全く熱がこもらず、基板側への横方向の熱流出が極めて効率的に行なわれることを示している。したがって、発光時の温度上昇が顕著に抑制され、更なる発光装置の長寿命化と高効率化が実現する。
【0040】
ここまで、発光素子の発光面が平坦な円形状である場合を説明した(図46(a)参照)。次に、発光素子が平坦であって任意の形状をしている場合を考える。例えば、発光素子の発光面が平坦な正方形状である場合、図46(b)に示すように、発光面の一辺が50√πμm(面積2,500πμm=50√π×50√πμm)とするとき、発光素子の発光面の任意の点から外縁までの最短距離が44.31μm未満となって、発光面の中心部においても基板側への横方向の熱流出が行われる。また、図46(c)に示すように、円に対して面積を一定にしたまま、いかなる微小な変形を加えても、円の中心から外縁までの最短距離は短くなる。すなわち、発光素子の発光面が同一面積であれば平坦な円形状であるときが最も熱が逃げにくく、発光面の面積が2,500πμm以下であれば、楕円状、正方形状、矩形状、多角形状などの他の平坦な発光面では、発光素子の発光面の任意の点から外縁までの最短距離が必ず50μm未満となって、発光面の中心部においても基板側への横方向の熱流出が行われるので、発光時の温度上昇が抑制される。
【0041】
さらに、例えば、上記複数の発光素子が棒状であってかつ発光面が円筒状である場合、発光素子の長手方向が基板の実装面に対して平行になるように、発光素子を基板の実装面上に配置することによって、発光素子の発光面の任意の点から外縁までの距離は、平坦な発光面よりもはるかに短くなって発光面のどの点においても基板側への横方向(軸の両側)の熱流出が行われるので、発光時の温度上昇が効果的に抑制される。
【0042】
そして、そのような微細な発光素子を同一基板の実装面上に100個以上配置することにより、所望の光量を得て、かつ、発光時の温度上昇を抑制することができる。
【0043】
また、通常、発光素子毎の明るさばらつきは、順方向電圧(Vf)のばらつきにより50%に達することもある。従来は、点灯試験によりスペックを外れた発光素子を排除したり、同様な明るさの発光素子にグループ分けして使用したりしていた。しかしながら、X%の明るさばらつきを有する発光素子をn個集合したとき、全体の明るさのばらつきは、Y=X/√n[%]となる。すなわち、n=100のとき、夫々の発光素子が50%のばらつきをもっていても全体の明るさのばらつきは1/10の5%となってスペックを満たすことができる。これにより、夫々の発光素子の点灯試験が不要となり、コストを削減できる。
【0044】
また、従来は発光素子が発する光により発光素子を覆う樹脂が劣化し、寿命が短いという問題があったが、この発明では、発光素子を微小化し、同一基板の実装面上に分散させて配置することによって、例えば1個の発光素子と同等の光量を複数の微細な発光素子で得つつ、樹脂に照射される光が分散されて光強度を弱めることができ、樹脂の劣化を抑制して長寿命化が図れる。
【0045】
このようにして、この発明の発光装置では、発光時の温度上昇を抑制しつつ発光を分散させることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が実現できる。
【0046】
以下、この発明の発光装置、照明装置およびバックライトを図示の実施の形態により詳細に説明する。この実施形態では、Siをドープしたn型GaNとMgをドープしたp型GaNとを用いるが、GaNにドーピングする不純物はこれに限らない。
【0047】
〔第1実施形態〕
図1〜図3はこの発明の第1実施形態の発光装置に用いられる発光素子の製造方法の工程図を示している。図1に示すn型GaN基板1上に、図2に示すように、エピタキシャル成長によりp型InGaNからなる量子井戸層2を成膜した後、上記量子井戸層2上にエピタキシャル成長によりp型GaN層3を成膜する。
【0048】
次に、図3に示すように、量子井戸層2とp型GaN層3が形成されたn型GaN基板1を、ダイシングにより発光素子の一例としての複数の半導体チップ10に分割する。この分割された半導体チップ10は、1辺が50√πμm以下の正方形状で厚さが10μmとし、発光面が平坦な正方形状をしている。ここで、1個当たりの半導体チップ10の発光面積は2,500πμm(=50√π×50√πμm)以下(より好ましくは625πμm以下)となる。また、量子井戸層2は、InGaN層とp型GaN層の間に電子ブロック層としてp型AlGaN層を入れてもよい。また、GaNの障壁層とInGaNの量子井戸層を交互に積層した多重量子井戸構造であってもよい。
【0049】
そして、この第1実施形態の発光装置では、図3に示す半導体チップ10を同一基板の実装面上に略均等に分散して100個以上配置する。
【0050】
上記発光装置によれば、1個当たりの発光面の面積が2,500πμm以下(より好ましくは625πμm以下)の複数の半導体チップ10を同一基板の実装面上に配置することによって、発光面の中心部においても基板側への横方向の熱流出が行われて、発光面の中心部を含めて発光素子の温度が低下するので、発光時の温度上昇が抑制される。そして、そのような微細な半導体チップ10を同一基板の実装面上に100個以上配置することにより、明るさばらつきを有する複数の半導体チップ10を集合したときの全体の明るさのばらつきを、1つの半導体チップ10の明るさばらつきの1/10以下に低減できる。上記半導体チップ10の温度上昇による発光効率の低下量は素子毎にばらつくが、半導体チップ10の1個当たりの発光面の面積を2,500πμm以下(より好ましくは625πμm以下)にすることより温度上昇が抑制されて、発光効率の低下量のばらつきが抑制されるので、微細な半導体チップ10を100個以上用いることによる明るさばらつきの低減効果がさらに高まる。
【0051】
さらに、半導体チップ10を微小化して、同一基板の実装面上に分散させて配置することによって、例えば1個の発光素子と同等の光量を複数の微細な半導体チップ10で得つつ、樹脂に照射される光が分散されて光強度を弱めることができ、樹脂の劣化を抑制して長寿命化が図れる。
【0052】
このようにして、上記発光装置によれば、発光時の温度上昇を抑制しつつ発光を分散させることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が実現することができる。
【0053】
ここで、複数の半導体チップ10の発光面積の総和に対して4倍以上の面積の基板上に複数の発光素子を略均等に分散して配置することによって、発光により発光素子に生じた熱の横方向への流出が効率よく行われるため、発光時の温度上昇がさらに抑制され、より長寿命化、高効率化が図れる。
【0054】
上記第1実施形態では、発光面が平坦な正方形状の発光素子を用いたが、この発明の発光素子はこれに限らず、円形状、楕円状、矩形状、多角形状などの平坦な発光面を有する発光素子でもよい。
【0055】
〔第2実施形態〕
図4〜図17はこの発明の第2実施形態の発光素子の製造方法を順に示す工程図である。
【0056】
この第2実施形態では、まず、図4に示すように、用意したサファイア基板101を洗浄する。
【0057】
次に、図5に示すように、サファイア基板101上にn型GaN膜102を成膜する。
【0058】
次に、図6に示すように、n型GaN膜102上にマスク層103をデポジションによって形成する。このマスク層103は、例えば、SiNまたはSiOで作製される。
【0059】
次に、上記マスク層103上にレジスト層105を塗布し、露光および現像(デベロップ)を行い、さらに、ドライエッチングを行って、図7に示すように、レジスト層105およびマスク層103に穴105A,103Aを形成する。この穴105A,103Aによって、n型GaN膜102の一部102Aが露出している。上記マスク層103が成長マスクとなり、マスク層103に形成された穴103Aが成長穴となる。
【0060】
次に、触媒金属形成工程において、図8に示すように、レジスト層105上および穴103Aに露出したn型GaN膜102の一部102A上に触媒金属106を蒸着(デポジション)させる。この触媒金属106としては、例えば、Ni、Feなどを採用できる。
【0061】
次に、リフトオフにより、レジスト層105およびレジスト層105上の触媒金属106を除去し、図9に示すように、n型GaN膜102の一部102A上の触媒金属106を残し、次に、洗浄を行う。
【0062】
次に、半導体コア形成工程において、図10に示すように、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)装置を用いて、n型GaNを結晶成長させて触媒金属106の存在下で断面ほぼ六角形の棒状の半導体コア107を形成する。この棒状の半導体コア107は、例えば、長さ25μmに成長させる。成長温度を800℃程度に設定し、成長ガスとしてトリメチルガリウム(TMG)およびアンモニア(NH)を使用し、n型不純物供給用にシラン(SiH)を、さらにキャリアガスとして水素(H)を供給することによって、Siを不純物としたn型GaNの半導体コア107を成長させることができる。ここで、n型GaNは、六方晶系の結晶成長となり、サファイア基板101表面に対して垂直方向をc軸方向にして成長させることにより、六角柱形状の半導体コアが得られる。成長方向や成長温度などの成長条件に依存するが、成長させる半導体コアの直径が数10nmから数100nm程度の小さい場合に断面がほぼ円形に近い形状になりやすい傾向があり、直径が0.5μm程度から数μmに大きくなると断面がほぼ六角形で成長させることが容易になる傾向がある。
【0063】
上記レジスト層105の穴105A,マスク層103の穴103Aを複数個形成し、この複数個の穴105A,103Aに露出した複数箇所のn型GaN膜102の一部102Aに触媒金属106を形成して、複数本の棒状の半導体コア107を形成する。
【0064】
次に、図11に示すように、MOCVDにより、n型GaNからなる半導体コア107およびマスク層103を覆うように、p型InGaNからなる量子井戸層108を成膜する。この量子井戸層108は、発光波長に応じて設定温度を750℃にし、キャリアガスに窒素(N)、成長ガスにTMGおよびNH、トリメチルインジウム(TMI)を供給することで、n型GaNの半導体コア107上およびマスク層103上にp型InGaNからなる量子井戸層108を形成することができる。なお、この量子井戸層は、InGaN層とp型GaN層の間に電子ブロック層としてp型AlGaN層を入れてもよい。また、GaNの障壁層とInGaNの量子井戸層を交互に積層した多重量子井戸構造であってもよい。
【0065】
次に、半導体層形成工程において、図11に示すように、MOCVDにより、量子井戸層108の全面にp型GaNからなる半導体層110を形成する。この半導体層110は、設定温度を900℃にし、成長ガスとしてTMGおよびNHを使用し、p型不純物供給用にCpMgを用いることによってp型GaNからなる半導体層110を形成できる。
【0066】
上記MOCVDによる量子井戸層108および半導体層110の成長において、触媒金属106を付けた状態で成膜するので、半導体コア107の側面107Bを覆う部分の成長速度に比べて、触媒金属106と半導体コア107の先端面107Aとの間の部分の成長速度が速く、例えば10〜100倍になる。具体的一例として、触媒金属106が付着した箇所のGaNの成長速度が50〜100μm/時であるのに対して、触媒金属が付着していない箇所のGaNの成長速度は1〜2μm/時になる。よって、量子井戸層108,半導体層110は、その先端部108A,110Aの膜厚が、側面部108B,110Bの膜厚に比べて厚くなる。
【0067】
次に、図12に示すように、触媒金属除去工程において、半導体コア107上の触媒金属106をエッチングにより除去した後に洗浄を行い、アニールにより半導体層110を活性にする。ここで、上記半導体コア107の先端面107Aを覆う量子井戸層108,半導体層110の先端部108A,110Aの肉厚が半導体コア107の側面107Bを覆う量子井戸層108,半導体層110の側面部108B,110Bの肉厚よりも厚いので、金属除去面のダメージや欠陥がPN接合に悪影響を及ぼし難くなる。また、エッチングの際に半導体コア107が半導体層110から露出することを防止できる。
【0068】
次に、図13に示すように、p型GaNからなる半導体層110の全面に導電膜111を形成する。この導電膜111の材質は、ポリシリコン,ITO(錫添加酸化インジウム)等を採用できる。この導電膜111の膜厚は例えば200nmとする。そして、上記導電膜111を成膜後、500℃から600℃で熱処理を行うことで、p型GaNからなる半導体層110と導電膜111とのコンタクト抵抗を下げることができる。なお、導電膜111は、これに限らず、例えば厚さ5nmのAg/NiまたはAu/Niの半透明の積層金属膜などを用いてもよい。この積層金属膜の成膜には蒸着法あるいはスパッタ法を用いることができる。さらに、より導電層の抵抗を下げるために、ITOによる導電膜上にAg/NiまたはAu/Niの積層金属膜を積層してもよい。
【0069】
次に、図14に示すように、ドライエッチングのRIE(反応性イオンエッチング)により、半導体コア107上およびマスク層103上で横方向に延在する部分の導電膜111を除去する。また、上記RIEにより、半導体コア107の先端面107A上を覆う半導体層110の先端部110Aを或る厚さ分だけ除去する。また、上記RIEにより、マスク層103上で導電膜111を越えて横方向に延在する領域の半導体層110を除去する。また、上記RIEにより、マスク層103上で導電膜111を越えて横方向に延在する領域の量子井戸層108を除去する。
【0070】
前述の如く、上記RIEの前には、量子井戸層108の先端部108Aの膜厚は、側面部108Bの膜厚に比べて十分に厚く、半導体層110の先端部110Aの膜厚が側面部110Bの膜厚に比べて十分に厚いので、上記RIEの後に、先端部で半導体コア107が露出することはない。したがって、上記RIEにより、半導体コア107の先端面を覆う量子井戸層108,半導体層110と、半導体コア107の側面を覆う量子井戸層108,半導体層110,導電膜111とが残る。
【0071】
次に、図15に示すように、エッチングにより、マスク層103(図14に示す)を除去する。このマスク層103が酸化シリコン(SiO)あるいは窒化シリコン(Si)で構成されている場合、フッ酸(HF)を含んだ溶液を用いることにより、容易に半導体コア107および半導体コア107を覆う半導体層110,導電膜111の部分に影響を与えずにマスク層103をエッチングできる。また、CFやXeFを用いたドライエッチングにより、容易に半導体コア107および半導体コア107を覆う半導体層110,導電膜111の部分に影響を与えずにマスク層103をエッチングすることができる。これにより、半導体コア107は、サファイア基板101側の露出部分107Cの外周面が露出する。
【0072】
次に、図16に示すように、RIE(反応性イオンエッチング)により、下地n型GaN膜102をエッチングして、サファイア基板101表面を露出させる。これにより、半導体コア107に連なるn型GaNからなる段部102Bが形成される。ここで、先端面107A上の半導体層110と量子井戸層108の厚さが下地n型GaN膜102の厚さに比べて十分に厚くなるようにしているので、上記RIEにより、半導体コア107の先端面107Aが露出しないようにできる。
【0073】
これにより、上記n型GaNからなる半導体コア107とp型InGaNからなる量子井戸層108とp型GaNからなる半導体層110および導電膜111,n型GaNからなる段部102Bで構成される棒状構造の発光素子がサファイア基板101上に形成される。
【0074】
次に、切り離し工程において、イソプロピルアルコール(IPA)水溶液中に基板を浸し、超音波(例えば数10KHz)を用いて下地基板(サファイア基板101)を基板平面に沿って振動させることにより、下地基板上に立設する半導体コア107を折り曲げるように、量子井戸層108と半導体層110,導電膜111に覆われた半導体コア107に対して応力が働いて、図17に示すように、量子井戸層108と半導体層110,導電膜111に覆われた半導体コア107が下地基板から切り離される。
【0075】
こうして、下地基板から切り離なされた微細な棒状構造発光素子を製造することができる。
【0076】
また、上記半導体コア107を超音波を用いて基板から切り離したが、これに限らず、切断工具を用いて半導体コアを基板から機械的に折り曲げることによって切り離してもよい。この場合、簡単な方法で基板上に設けられた微細な複数の棒状構造発光素子を短時間で切り離すことができる。
【0077】
さらに、上記棒状構造発光素子は、半導体層110が半導体コア107の外周面から半径方向外向に結晶成長し、径方向の成長距離が短くかつ欠陥が外向に逃げるため、結晶欠陥の少ない半導体層110により半導体コア107を覆うことができる。したがって、特性の良好な棒状構造発光素子を実現することができる。
【0078】
この発光素子の製造方法によれば、下地基板から切り離された微細な棒状構造発光素子100を製造することができる。また、上記サファイア基板101を再利用できる。また、上記棒状構造発光素子100は、使用する半導体の量を少なくでき、発光素子を用いた装置の薄型化と軽量化が可能となると共に、半導体層110で覆われた半導体コア107の全周から光が放出されることにより発光領域が広くなるので、発光効率が高く省電力な発光装置,バックライト,照明装置および表示装置などを実現することができる。また、図16に示すように、RIE(反応性イオンエッチング)により、下地n型GaN膜102をエッチングして段部102Bを形成したが、この下地n型GaN膜102のエッチングを省略して段部102Bのない下地n型GaN膜102から半導体コア107を切り離して、段部102Bを有していない棒状構造発光素子を作製してもよい。
【0079】
ここで、棒状構造発光素子100の直径を1μm、長さを25μmとしているので、1個当たりの棒状構造発光素子100の発光面積すなわち量子井戸層108の面積は、略(25×π×(0.5)μm−(露出部分107Cの外周面積))となる(2,500πμm以下)。
【0080】
そして、この第2実施形態の発光装置は、図17に示す棒状構造発光素子100の長手方向が基板(図示せず)の実装面に対して平行になるように、棒状構造発光素子100を同一基板の実装面上に略均等に分散して100個以上配置する。
【0081】
上記発光装置によれば、1個当たりの発光面の面積が2,500πμm以下(より好ましくは625πμm以下)の複数の棒状構造発光素子100を同一基板の実装面上に配置することによって、発光面の中心部においても基板側への横方向の熱流出が行われて、発光面の中心部を含めて発光素子の温度が低下するので、発光時の温度上昇が抑制される。そして、そのような微細な棒状構造発光素子100を同一基板の実装面上に100個以上配置することにより、明るさばらつきを有する複数の棒状構造発光素子100を集合したときの全体の明るさのばらつきを、1つの棒状構造発光素子100の明るさばらつきの1/10以下に低減できる。上記棒状構造発光素子100の温度上昇による発光効率の低下量は素子毎にばらつくが、棒状構造発光素子100の1個当たりの発光面の面積を2,500πμm以下(より好ましくは625πμm以下)にすることより温度上昇が抑制されて、発光効率の低下量のばらつきが抑制されるので、微細な棒状構造発光素子100を100個以上用いることによる明るさばらつきの低減効果がさらに高まる。
【0082】
さらに、棒状構造発光素子100を微小化して、同一基板の実装面上に分散させて配置することによって、例えば1個の発光素子と同等の光量を複数の微細な棒状構造発光素子100で得つつ、樹脂に照射される光が分散されて光強度を弱めることができ、樹脂の劣化を抑制して長寿命化が図れる。
【0083】
このようにして、上記発光装置によれば、発光時の温度上昇を抑制しつつ発光を分散させることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が実現することができる。
【0084】
ここで、複数の棒状構造発光素子100の発光面積の総和に対して4倍以上の面積の基板(図示せず)上に複数の棒状構造発光素子100を略均等に分散して配置することによって、発光により棒状構造発光素子100に生じた熱の基板側への横方向の流出が効率よく行われるため、発光時の温度上昇がさらに抑制され、より長寿命化、高効率化が図れる。
【0085】
また、複数の棒状構造発光素子100の長手方向が基板(図示せず)の実装面に対して平行になるように、複数の棒状構造発光素子100を基板の実装面上に配置することによって、径方向に対して軸方向(長手方向)の長さの比を大きくできるので、発光面の面積が同じ条件では発光面が正方形のときよりも基板側への横方向の熱流出が効率よく行われ、発光時の温度上昇がさらに抑制され、より長寿命化、高効率化が図れる。
【0086】
また、棒状の棒状構造発光素子100が、棒状の半導体コア107を同心状に囲む筒状の発光面(量子井戸層108)を有することによって、1個当たりの発光面の面積が2,500πμm以下(より好ましくは625πμm以下)の複数の棒状構造発光素子100が同一基板の実装面上に100個以上配置されているという条件の範囲内で、棒状構造発光素子100の1個あたりの発光面の面積が増大し、所定の明るさを得るための発光素子数を削減することができ、コストを削減できる。
【0087】
また、棒状の棒状構造発光素子100が、p型の棒状の半導体コア107と、その半導体コア107の外周を覆うように形成されたn型の筒状の半導体層110とを有し、半導体コア107の一端側が露出していることによって、半導体コア107の一端側の露出部分107Cに一方の電極を接続し、半導体コア107の他端側の半導体層110に電極を接続することが可能となり、両端に電極を離して接続でき、半導体層110に接続する電極と半導体コア107の露出部分107Cが短絡するのを防ぐので、配線が容易にできる。
【0088】
なお、上記半導体コア107の露出部分107Cと半導体層110に覆われた被覆部分のそれぞれの断面は六角形状に限るものではなく、他の多角形や円形の断面形状でもよく、また、半導体コアの露出部分と被覆部分とが異なる断面形状であってもよい。
【0089】
また、この実施形態の発光素子の製造方法によれば、上記n型の半導体コア107の先端面107Aだけでなく側面107Bにもp型の半導体層110を形成するので、pn接合の面積を大きくでき、発光面積を大きくすることができ、発光効率を向上できる。また、上記触媒金属106を用いてn型の半導体コア107を形成するので、n型の半導体コア107の成長速度を速くできる。このため、半導体コア107を従来に比べ短時間で長くでき、n型の半導体コア107の長さと比例関係になる発光面積を一層大きくすることができる。また、上記n型の半導体コア107の先端面107Aおよび側面がp型の半導体層110で覆われるので、p型の半導体層110のための電極とn型の半導体コア107とが短絡することを防止できる。
【0090】
また、この実施形態の発光素子の製造方法によれば、触媒金属106を残した状態でp型の量子井戸層108,p型の半導体層110を形成するので、n型の半導体コア107の形成とp型の量子井戸層108,p型の半導体層110の形成とを同一製造装置内で連続して行うことができる。よって、工程削減、製造時間の短縮ができる。また、上記n型の半導体コア107を形成後、この半導体コア107を製造装置外に出す必要が無いので、n型の半導体コア107の表面にコンタミが付着しないようにでき、素子特性を改善できる。また、上記n型の半導体コア107の形成とp型の量子井戸層108,p型の半導体層110の形成とを連続して行うことができるので、大きな温度変化や成長の停止などを回避して結晶性を改善でき、素子特性を改善できる。また、上記n型の半導体コア107を形成した直後に触媒金属106を除去するエッチングを行わないことで、n型の半導体コア107の表面(すなわち、p型の半導体層110との界面)へのダメージを無くすることができ、素子特性を改善できる。
【0091】
また、この実施形態では、サファイア基板101上に触媒金属106を付けたままでn型の半導体コア107とp型の半導体層110を順に形成するので、触媒金属106に接する部分の成長速度が触媒金属106に接しない部分の成長速度に比べて格段に(例えば10〜100倍)速くなる。したがって、寸法の縦横比が高い発光素子を作製できる。この第2実施形態では、一例として、棒状構造発光素子100の直径を1μm、長さを25μmとしている。また、上記触媒金属106下でn型の半導体コア107とp型の半導体層110とを連続して積層できるので、PN接合部の欠陥を少なくすることができる。
【0092】
また、この実施形態の製造方法によれば、マスク層103を除去して、半導体コア107のサファイア基板101側の露出部分107Cを露出させるので、半導体層110のエッチング量を少なくできる。また、上記棒状構造発光素子100は、半導体コア107に連なるn型GaNからなる段部102Bによって、半導体コア107に対して容易にコンタクトを取ることができる。また、上記棒状構造発光素子100は、量子井戸層108により発光効率を向上できる。
【0093】
また、上記実施形態では、サファイア基板101上にn型GaN膜102を成膜したが、サファイア基板101上にn型GaN膜102を成膜する工程をなくして、サファイア基板101上に直接にマスク層103を形成してもよい。また、上記実施形態では、触媒金属除去工程において、半導体コア107上の触媒金属106をエッチングにより除去したが、この触媒金属除去工程をなくして、触媒金属106を残したままで導電膜111を形成してもよい。また、上記実施形態では、図14に示すように、RIEによって、導電膜111,p型GaNからなる半導体層110,量子井戸層108をエッチングしたが、このRIEによるエッチング工程をなくし、次のマスク層103を除去する工程において、各層一斉リフトオフによりマスク層103を除去してもよい。
【0094】
また、上記第2実施形態では、MOCVD装置を用いて半導体コア107を結晶成長させたが、MBE(分子線エピタキシャル)装置などの他の結晶成長装置を用いて半導体コアを形成してもよい。また、成長穴を有する成長マスクを用いて半導体コアを基板上に結晶成長させたが、基板上に金属種を配置して、金属種から半導体コアを結晶成長させてもよい。
【0095】
また、上記第2実施形態では、半導体層110に覆われた半導体コア107を、超音波を用いてサファイア基板101から切り離したが、これに限らず、切断工具を用いて半導体コアを基板から機械的に折り曲げて切り離してもよい。この場合、簡単な方法で基板上に設けられた微細な複数の棒状構造発光素子を短時間で切り離すことができる。
【0096】
〔第3実施形態〕
【0097】
図18はこの発明の第3実施形態の発光装置の製造方法に用いる絶縁性基板の平面図を示している。なお、この第3実施形態の発光装置に用いられる棒状構造発光素子は、第1,第2実施形態の発光素子を用いてもよいし、他の棒状の発光素子を用いてもよい。
【0098】
この第3実施形態の発光装置では、図18に示すように、まず、基板作成工程において、実装面に、第1,第2の電極の一例としての金属電極201,202を形成した絶縁性基板200を作成する。絶縁性基板200はガラス、セラミック、酸化アルミニウム、樹脂のような絶縁体、またはシリコンのような半導体表面にシリコン酸化膜を形成し、表面が絶縁性を有するような基板である。ガラス基板を用いる場合は、表面にシリコン酸化膜、シリコン窒化膜のような下地絶縁膜を形成するのが望ましい。
【0099】
上記金属電極201,202は、印刷技術を利用して所望の電極形状に形成している。なお、金属膜および感光体膜を一様に積層し、所望の電極パターンを露光し、エッチングして形成してもよい。
【0100】
図18では省略されているが、金属電極201,202には外部から電位を与えられるように、パッドを形成している。
【0101】
次に、配列工程において、金属電極201,202が対向する部分(配列領域)に棒状構造発光素子を配列する。図18では、図を見やすくするため、棒状構造発光素子を配列する配列領域を9×3個としているが、実際は100個以上の任意の個数の配列領域とする。
【0102】
図19は図18のXIX−XIX線から見た断面模式図である。
【0103】
まず、塗布工程において、図19に示すように、絶縁性基板200上に、棒状構造発光素子210を含んだイソプロピルアルコール(IPA)211を薄く塗布する。IPA211の他に、エチレングリコール、プロピレングリコール、メタノール、エタノール、アセトン、またはそれらの混合物でもよい。あるいは、IPA211は、他の有機物からなる液体、水などを用いることができる。
【0104】
ただし、液体を通じて金属電極201,202間に大きな電流が流れてしまうと、金属電極201,202間に所望の電圧差を印加できなくなってしまう。そのような場合には、金属電極201,202を覆うように、絶縁性基板200表面全体に、10nm〜30nm程度の絶縁膜をコーティングすればよい。
【0105】
棒状構造発光素子210を含むIPA211を塗布する厚さは、次に棒状構造発光素子210を配列する工程で、棒状構造発光素子210が配列できるよう、液体中で棒状構造発光素子210が移動できる厚さである。したがって、IPA211を塗布する厚さは、棒状構造発光素子210の太さ以上であり、例えば、数μm〜数mmである。塗布する厚さは薄すぎると、棒状構造発光素子210が移動し難くなり、厚すぎると、液体を乾燥する時間が長くなる。また、IPAの量に対して、棒状構造発光素子210の量は、1×104本/cm3〜1×107本/cm3が好ましい。
【0106】
棒状構造発光素子210を含むIPA211を塗布するために、棒状構造発光素子210を配列させる金属電極の外周囲に枠を形成し、その枠内に棒状構造発光素子210を含むIPA211を所望の厚さになるように充填してもよい。しかしながら、棒状構造発光素子210を含むIPA211が粘性を有する場合は、枠を必要とせずに、所望の厚さに塗布することが可能である。
【0107】
IPAやエチレングリコール、プロピレングリコール、…、またはそれらの混合物、あるいは、他の有機物からなる液体、または水などの液体は、棒状構造発光素子210の配列工程のためには粘性が低いほど望ましく、また加熱により蒸発しやすい方が望ましい。
【0108】
次に、金属電極201,202間に電位差を与える。この第3実施形態では、1Vの電位差とするのが適当であった。金属電極201,202の電位差は、0.1〜10Vを印加することができるが、0.1V以下では棒状構造発光素子210の配列が悪くなり、10V以上では金属電極間の絶縁が問題になり始める。したがって、1〜5Vが好ましく、更には1V程度とするのが好ましい。
【0109】
図20は上記棒状構造発光素子210が金属電極201,202上に配列する原理を示している。図20に示すように、金属電極201に電位VLを印加し、金属電極202に電位VR(VL<VR)を印加すると、金属電極201には負電荷が誘起され、金属電極202には正電荷が誘起される。そこに棒状構造発光素子210が接近すると、棒状構造発光素子210において、金属電極201に近い側に正電荷が誘起され、金属電極202に近い側に負電荷が誘起される。この棒状構造発光素子210に電荷が誘起されるのは静電誘導による。すなわち、電界中に置かれた棒状構造発光素子210は、内部の電界が0となるまで表面に電荷が誘起されることによる。その結果、各電極と棒状構造発光素子210との間に静電力により引力が働き、棒状構造発光素子210は、金属電極201,202間に生じる電気力線に沿うと共に、各棒状構造発光素子210に誘起された電荷がほぼ等しいので、電荷による反発力により、ほぼ等間隔に一定方向に規則正しく配列する。しかしながら、例えば、第2実施形態に示す棒状構造発光素子では、半導体層110に覆われた半導体コア107の露出部分側の向きは一定にならず、ランダムになる。
【0110】
以上のように、棒状構造発光素子210が金属電極201,202間に発生した外部電場により、棒状構造発光素子210に電荷を発生させ、電荷の引力により金属電極201,202に棒状構造発光素子210を吸着させるので、棒状構造発光素子210の大きさは、液体中で移動可能な大きさであることが必要である。したがって、棒状構造発光素子210の大きさは、液体の塗布量(厚さ)により変化する。液体の塗布量が少ない場合は、棒状構造発光素子210はナノオーダーサイズでなければならないが、液体の塗布量が多い場合は、マイクロオーダーサイズであってもかまわない。
【0111】
棒状構造発光素子210が電気的に中性ではなく、正または負に帯電している場合は、金属電極201,202間に静的な電位差(DC)を与えるだけでは、棒状構造発光素子210を安定して配列することができない。例えば、棒状構造発光素子210が正味として正に帯電した場合は、正電荷が誘起されている金属電極202との引力が相対的に弱くなる。そのため、棒状構造発光素子210の配列が非対象になる。
【0112】
そのような場合は、図21に示すように、金属電極201,202間にAC電圧を印加することが好ましい。図21においては、金属電極202に基準電位を、金属電極201には振幅VPPL/2のAC電圧を印加している。こうすることにより、棒状構造発光素子210が帯電している場合でも、配列を対象に保つことができる。なお、この場合の金属電極202に与える交流電圧の周波数は、10Hz〜1MHzとするのが好ましく、50Hz〜1kHzとするのが最も配列が安定し、より好ましい。さらに、金属電極201,202間に印加するAC電圧は、正弦波に限らず、矩形波、三角波、ノコギリ波など、周期的に変動するものであればよい。なお、VPPLは1V程度とするのが好ましかった。
【0113】
次に、金属電極201,202上に、棒状構造発光素子210を配列させた後、絶縁性基板200を加熱することにより、液体を蒸発させて乾燥させ、棒状構造発光素子210を金属電極201,202間の電気力線に沿って等間隔に配列させて固着させる。
【0114】
図22は上記棒状構造発光素子210を配列した絶縁性基板200の平面図を示している。なお、図22では、図を見やすくするために棒状構造発光素子210の数を少なくしているが、実際は100個以上の棒状構造発光素子210が同一の絶縁性基板200上に配置されている。
【0115】
図22に示す棒状構造発光素子210を配列した絶縁性基板200を、液晶表示装置などのバックライトに用いることにより、薄型化と軽量化が可能でかつ発光効率が高く省電力なバックライトを実現することができる。また、この棒状構造発光素子210を配列した絶縁性基板200を照明装置として用いることにより、薄型化と軽量化が可能でかつ発光効率が高く省電力な照明装置を実現することができる。
【0116】
上記棒状構造発光素子210のpnの極性は、一方に揃っておらず、ランダムに配列されている。このため、駆動時は交流電圧により駆動されて、異なる極性の棒状構造発光素子210が交互に発光することになる。
【0117】
また、上記発光装置の製造方法によれば、独立した電位が夫々与えられる2つの金属電極201,202を単位とする配列領域が形成された絶縁性基板200を作成し、その絶縁性基板200上に、1個当たりの発光面積が2,500πμm以下(より好ましくは625πμm以下)の複数の棒状構造発光素子210を含んだ液体を塗布する。その後、2つの金属電極201,202に独立した電圧を夫々印加して、微細な棒状構造発光素子210を2つの金属電極201,202により規定される位置に配列させる。これにより、上記棒状構造発光素子210を所定の絶縁性基板200上に容易に配列させることができる。
【0118】
したがって、従来のように発光ダイオードを1つ1つ基板上の所定の位置に配置する必要がなく、多数の微細な発光ダイオードを精度よく所定の位置に配置させることができる。
【0119】
この発光装置の製造方法によって、発光時の温度上昇を抑制しつつ発光を分散させることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が可能な発光装置を製造することができる。
【0120】
また、上記発光装置の製造方法では、使用する半導体の量を少なくできる。さらに、上記棒状構造発光素子210は、半導体層で覆われた半導体コアの側面全体から光が放出されることにより発光領域が広くなるので、発光効率が高く省電力な発光装置を実現することができる。
【0121】
また、上記発光装置では、複数の棒状構造発光素子210の発光面積の総和に対して4倍以上の面積の絶縁性基板200の実装面上に複数の発光素子を略均等に分散して配置することによって、発光により発光素子に生じた熱の横方向への流出が効率よく行われるため、発光時の温度上昇がさらに抑制され、より長寿命化、高効率化が図れる。
【0122】
また、複数の棒状構造発光素子210の長手方向が絶縁性基板200の実装面に対して平行になるように、棒状構造発光素子210を絶縁性基板200の実装面上に配置することによって、径方向に対して軸方向(長手方向)の長さの比を大きくできるので、発光面の面積が同じ条件では発光面が正方形のときよりも絶縁性基板200への横方向の熱流出が効率よく行われ、発光時の温度上昇がさらに抑制され、より長寿命化、高効率化が図れる。また、この発光装置の製造方法は、電極間に電圧を印加することによる物体の分極を利用しているため、棒状構造発光素子の両端を分極させるのに都合がよく、棒状構造発光素子に対して相性がよい。
【0123】
また、上記棒状構造発光素子210は、発光ダイオードであって、金属電極201(第1の電極)にアノードがされると共に金属電極202(第2の電極)にカソードが接続された発光ダイオードと、金属電極201(第1の電極)にカソードが接続されると共に金属電極202(第2の電極)にアノードが接続された発光ダイオードとが混在して絶縁性基板200上に配置されることになる。そして、この発光装置では、交流電源によって金属電極201(第1の電極)と金属電極202(第2の電極)との間に交流電圧を印加して複数の発光ダイオードを駆動することによって、多数の発光ダイオードに対してアノードとカソードの向きを揃えて配置する必要がなく、工程を簡略化できる。
【0124】
また、少なくとも金属電極201(第1の電極)および金属電極202(第2の電極)を、複数の棒状構造発光素子210を駆動するための電極として用いることによって、配線工程を簡略化してコストを削減できる。
【0125】
上記第3実施形態の発光装置の製造方法では、棒状構造発光素子を用いたが、発光素子はこれに限らず、円形状、楕円状、正方形状、矩形状、多角形状などの平坦な発光面を有し、その発光面が基板に対して平行になるように実装面上に配置される形態の発光素子でもよい。しかしながら、この第3実施形態の発光装置の製造方法は、電極間に電圧を印加することによる物体の分極を利用するので、分極させるのに好都合な棒状の発光素子が望ましい。
【0126】
〔第4実施形態〕
図23〜図25はこの発明の第4実施形態の発光装置の製造方法の工程図を示している。
【0127】
この第4実施形態の発光装置の製造方法は、第2実施形態のような棒状構造発光素子を同一基板の実装面上に100個以上配置するものである。この発光装置の製造方法に用いる棒状構造発光素子は、第1導電型の棒状の半導体コアと、その半導体コアの外周を覆うように形成された第2導電型の筒状の半導体層とを有し、棒状の発光素子の半導体コアの一端側が露出しているものであればよい。
【0128】
上記第4実施形態の発光装置の製造方法では、図23に示すように、まず、基板作成工程において、実装面に第1,第2の電極の一例としての金属電極301,302を形成した絶縁性基板300を作成する。
【0129】
次に、配列工程において、絶縁性基板300上に、長手方向が絶縁性基板300の実装面に対して平行になるように100個以上の棒状構造発光素子310を配置する。この配列工程では、第3実施形態の発光装置の製造方法と同様の方法を用いて、金属電極301,302上に、液体中の棒状構造発光素子310を配列させた後、絶縁性基板300を加熱することにより、液体を蒸発させて乾燥させ、棒状構造発光素子310を金属電極301,302間の電気力線に沿って等間隔に配列させて固着させる。
【0130】
上記棒状構造発光素子310は、棒状のn型GaNからなる半導体コア311と、上記半導体コア311の一端側の部分を覆わないで露出部分311aとするように、半導体コア311の露出部分311a以外の被覆部分311bを覆うp型GaNからなる半導体層312とを備えている。上記棒状構造発光素子310の一端側の露出部分311aを金属電極301に接続すると共に、棒状構造発光素子310の他端側の半導体層312を金属電極302に接続する。
【0131】
次に、図24に示すように、絶縁性基板300上に層間絶縁膜303を形成し、その層間絶縁膜303をパターンニングして金属電極301上と金属電極302上にコンタクトホール303aを夫々形成する。
【0132】
次に、図25に示すように、2つのコンタクトホール303aを埋めるように金属配線304,305を形成する。
【0133】
このようにして、絶縁性基板300の実装面上に配置された100個以上の棒状構造発光素子310を一括して配置すると共に、複数の棒状構造発光素子310に金属配線を一括して接続することができる。ここで、棒状構造発光素子310の1個当たりの発光面積を2,500πμm以下(より好ましくは625πμm以下)とする。また、図23〜図25では、棒状構造発光素子310の中央部が絶縁性基板300から浮いた状態で示されているが、実際は、棒状構造発光素子310は、第3実施形態の棒状構造発光素子の配列方法におけるIPA水溶液の乾燥時に、絶縁性基板300表面と棒状構造発光素子310の隙間の液滴が蒸発により縮小するときに発生するスティクションにより中央部分が撓んで絶縁性基板300上に接している。なお、棒状発光素子310が直接絶縁性基板300上に接しない場合であっても、層間絶縁膜303を介して絶縁性基板300と接することとなる。
【0134】
なお、棒状構造発光素子310の中央部分と絶縁性基板300との間に、棒状構造発光素子310を支持するように金属部を設けて、棒状構造発光素子310の中央部分が金属部を介して絶縁性基板300に接するようにしてもよい。
【0135】
上記発光装置の製造方法によれば、従来のように発光ダイオードを1つ1つ基板上の所定の位置に配置する必要がなく、多数の微細な発光ダイオードを精度よく所定の位置に配置させることができ、発光時の温度上昇を抑制しつつ発光を分散させることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が可能な発光装置を製造することができる。
【0136】
上記発光装置では、複数の棒状構造発光素子310の発光面積の総和に対して4倍以上の面積の絶縁性基板300の実装面上に複数の棒状構造発光素子310を略均等に分散して配置することによって、発光により発光素子に生じた熱の基板側への横方向の流出が効率よく行われるため、発光時の温度上昇がさらに抑制され、より長寿命化、高効率化が図れる。
【0137】
また、複数の棒状構造発光素子310の長手方向が絶縁性基板300の実装面に対して平行になるように、棒状構造発光素子310を絶縁性基板300の実装面上に配置することによって、径方向に対して軸方向(長手方向)の長さの比を大きくできるので、発光面の面積が同じ条件では発光面が正方形のときよりも絶縁性基板300側への横方向の熱流出が効率よく行われ、発光時の温度上昇がさらに抑制され、より長寿命化、高効率化が図れる。また、この発光装置の製造方法は、電極間に電圧を印加することによる物体の分極を利用しているため、棒状構造発光素子の両端を分極させるのに都合がよく、棒状構造発光素子に対して相性がよい。
【0138】
また、上記複数の棒状構造発光素子310は、露出部分311aがアノード、被覆部分311bがカソードの発光ダイオードであって、金属電極301(第1の電極)にアノードがされると共に金属電極302(第2の電極)にカソードが接続された発光ダイオードと、金属電極301(第1の電極)にカソードが接続されると共に金属電極302(第2の電極)にアノードが接続された発光ダイオードとが混在して絶縁性基板300上に配置されことになる。そして、この発光装置では、交流電源によって金属電極301(第1の電極)と金属電極302(第2の電極)との間に交流電圧を印加して複数の発光ダイオードを駆動することによって、多数の発光ダイオードに対してアノードとカソードの向きを揃えて配置する必要がなく、工程を簡略化できる。
【0139】
また、棒状構造発光素子310が、棒状の半導体コア311を同心状に囲む筒状の発光面を有することによって、1個当たりの発光面の面積が2,500πμm以下(より好ましくは625πμm以下)の複数の棒状構造発光素子310が同一絶縁性基板300の実装面上に100個以上配置されているという条件の範囲内で、棒状構造発光素子310の1個あたりの発光面の面積が増大し、所定の明るさを得るための発光素子数を削減することができ、コストを削減できる。
【0140】
また、棒状構造発光素子310が、p型の棒状の半導体コア311と、その半導体コア311の外周を覆うように形成されたn型の筒状の半導体層312とを有し、半導体コア311の一端側が露出していることによって、半導体コア311の一端側の露出部分311aに一方の電極を接続し、半導体コア107の他端側の半導体層312に電極を接続することが可能となり、両端に電極を離して接続でき、半導体層312に接続する電極と半導体コア311の露出部分311aが短絡するのを防ぐので、配線が容易にできる。
【0141】
〔第5実施形態〕
図26〜図31はこの発明の第5実施形態の発光装置の製造方法の工程図を示している。なお、図26〜図30では、発光装置の一部のみを示し、図31で発光装置の全体像を示している。
【0142】
この第5実施形態の発光装置の製造方法は、第2実施形態のような棒状構造発光素子を同一基板の実装面上に100個以上配置するものである。この発光装置の製造方法に用いる棒状構造発光素子は、第1導電型の棒状の半導体コアと、その半導体コアの外周を覆うように形成された第2導電型の筒状の半導体層とを有し、棒状の発光素子の半導体コアの一端側が露出しているものであればよい。
【0143】
この第4実施形態の発光装置の製造方法では、図26の断面図および図27の平面図に示すように、まず、基板作成工程において、実装面に第1,第2の電極の一例としての金属電極401,402が形成された絶縁性基板400を作成する。
【0144】
次に、配列工程において、絶縁性基板400上に、長手方向が絶縁性基板400の実装面に対して平行になるように複数の棒状構造発光素子410を配置する。この配列工程では、第3実施形態の発光装置の製造方法と同様の方法を用いて、金属電極401,402上に、液体中の棒状構造発光素子410を配列させた後、絶縁性基板400を加熱することにより、液体を蒸発させて乾燥させ、棒状構造発光素子410を金属電極401,402間の電気力線に沿って等間隔に配列させる。
【0145】
上記棒状構造発光素子410は、棒状のn型GaNからなる半導体コア411と、上記半導体コア411の一端側の部分を覆わないで露出部分411aとするように、半導体コア411の露出部分411a以外の被覆部分411bを覆うp型GaNからなる半導体層412とを備えている。上記棒状構造発光素子410の一端側の露出部分411aを金属電極401に導電性接着剤などの金属インクからなる接着部403により接続すると共に、棒状構造発光素子410の他端側の半導体層412を金属電極402に導電性接着剤などの金属インクからなる接着部404により接続する。ここで、金属インクは、インクジェット法などにより絶縁性基板400上の所定の箇所に塗布する。
【0146】
次に、図28の平面図および図29の断面図に示すように、絶縁性基板400上の複数の棒状構造発光素子410が配置された領域に蛍光体420を選択的に塗布する(蛍光体塗布工程)。ここで、蛍光体は、インクジェット法などにより絶縁性基板400上の所定の領域に塗布する。なお、絶縁性基板400上の複数の棒状構造発光素子410が配置された領域に、蛍光体を含む透明樹脂を選択的に塗布してもよい。
【0147】
次に、図30に示すように、蛍光体420の塗布後に、絶縁性基板400上に透明樹脂からなる保護膜421を形成する。
【0148】
このようにして、絶縁性基板400の実装面上に複数の棒状構造発光素子410を一括して配置すると共に、複数の棒状構造発光素子410に金属配線を一括して接続することができる。
【0149】
そして、基板分割工程において、図31の平面図に示すように、絶縁性基板400を複数の分割基板430に分割する。ここで、複数の分割基板430の夫々は、この発明の発光装置であって、棒状構造発光素子410が100個以上有するように、絶縁性基板400から分割される。
【0150】
なお、上記基板分割工程において、絶縁性基板400を少なくとも2種類以上の形状が異なる分割基板に分割してもよい。
【0151】
この発光装置の製造方法では、棒状構造発光素子410の1個当たりの発光面積を2,500πμm以下(より好ましくは625πμm以下)とする。また、図26, 図29,図30では、棒状構造発光素子410の中央部が絶縁性基板400から浮いた状態で示されているが、実際は、棒状構造発光素子410は、第3実施形態の棒状構造発光素子の配列方法におけるIPA水溶液の乾燥時に、絶縁性基板400表面と棒状構造発光素子410の隙間の液滴が蒸発により縮小するときに発生するスティクションにより中央部分が撓んで絶縁性基板400上に接している。
【0152】
なお、棒状構造発光素子410の中央部分と絶縁性基板400との間に、棒状構造発光素子410を支持するように金属部を設けて、棒状構造発光素子410の中央部分が金属部を介して絶縁性基板400に接するようにしてもよい。
【0153】
上記発光装置の製造方法によれば、従来のように発光素子を1つ1つ基板上の所定の位置に配置する必要がなく、多数の微細な発光素子を精度よく所定の位置に配置させることができ、発光時の温度上昇を抑制しつつ発光を分散させることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が可能な発光装置を製造することができる。
【0154】
上記発光装置では、複数の棒状構造発光素子410の発光面積の総和に対して4倍以上の面積の絶縁性基板400の実装面上に複数の棒状構造発光素子410を略均等に分散して配置することによって、発光により棒状構造発光素子410に生じた熱の基板側への横方向の流出が効率よく行われるため、発光時の温度上昇がさらに抑制され、より長寿命化、高効率化が図れる。
【0155】
また、複数の棒状構造発光素子410の長手方向が絶縁性基板300の実装面に対して平行になるように、棒状構造発光素子410を絶縁性基板400の実装面上に配置することによって、径方向に対して軸方向(長手方向)の長さの比を大きくできるので、発光面の面積が同じ条件では発光面が平坦な正方形のときよりも基板側への横方向の熱流出が効率よく行われ、発光時の温度上昇がさらに抑制され、より長寿命化、高効率化が図れる。また、この発光装置の製造方法は、電極間に電圧を印加することによる物体の分極を利用しているため、棒状構造発光素子の両端を分極させるのに都合がよく、棒状構造発光素子に対して相性がよい。
【0156】
また、上記棒状構造発光素子410は、露出部分411aがアノード、被覆部分411bがカソードの発光ダイオードであって、金属電極401(第1の電極)にアノードがされると共に金属電極402(第2の電極)にカソードが接続された発光ダイオードと、金属電極401(第1の電極)にカソードが接続されると共に金属電極402(第2の電極)にアノードが接続された発光ダイオードとが混在して絶縁性基板400上に配置されことになる。そして、この発光装置では、交流電源によって金属電極401(第1の電極)と金属電極402(第2の電極)との間に交流電圧を印加して複数の発光ダイオードを駆動することによって、多数の発光ダイオードに対してアノードとカソードの向きを揃えて配置する必要がなく、工程を簡略化できる。
【0157】
また、上記発光装置の製造方法において、複数の棒状構造発光素子410を絶縁性基板400上に配列させる配列工程の後、基板分割工程において絶縁性基板400を、100個以上の棒状構造発光素子410が夫々配置された複数の分割基板430に分割することにより、各工程を流動する基板数を少なくして大幅にコストを削減できる。
【0158】
また、絶縁性基板400上に複数の棒状構造発光素子410を配列した後、絶縁性基板400上の複数の棒状構造発光素子410が配置された領域に蛍光体420を選択的に塗布することによって、材料費で大きな比率を占める蛍光体の使用量を減らしてコストを削減できる。
【0159】
また、棒状の棒状構造発光素子410が、棒状の半導体コア411を同心状に囲む筒状の発光面を有することによって、1個当たりの発光面の面積が2,500πμm以下(より好ましくは625πμm以下)の複数の棒状構造発光素子410が同一絶縁性基板400の実装面上に100個以上配置されているという条件の範囲内で、棒状構造発光素子410の1個あたりの発光面の面積が増大し、所定の明るさを得るための発光素子数を削減することができ、コストを削減できる。
【0160】
〔第6実施形態〕
図32はこの発明の第6実施形態の照明装置に用いられる発光装置の平面図を示し、図33は上記発光装置の側面図を示している。
【0161】
この第6実施形態の照明装置に用いられる発光装置500は、図32,図33に示すように、正方形状の放熱板501上に、100個以上の棒状構造発光素子(図示せず)が配置された円形状の絶縁性基板502が実装されている。ここで、円形状の絶縁性基板502は、第5実施形態の発光装置の製造方法を用いて製造された100個以上の棒状構造発光素子が配置された分割基板である。
【0162】
図34は図32,図33に示す発光装置500を用いた照明装置の一例としてのLED電球510の側面図を示している。このLED電球510は、図34に示すように、外部のソケットに嵌めて商用電源に接続するための電源接続部としての口金511と、その口金511に一端が接続され、他端が徐々に拡径する円錐形状の放熱部512と、放熱部512の他端側を覆う透光部513とを備えている。上記放熱部512内に、絶縁性基板502を透光部513側に向けて発光装置500を配置している。
【0163】
上記構成の照明装置によれば、図32,図33に示す発光装置500を用いることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が図れる照明装置を実現することができる。
【0164】
また、上記複数の棒状構造発光素子が配置された絶縁性基板502を放熱板501上に取り付けることによって、さらに放熱効果が向上する。
【0165】
〔第7実施形態〕
図35はこの発明の第7実施形態の発光装置を用いたバックライトの平面図を示している。
【0166】
この第7実施形態のバックライト600は、図35に示すように、放熱板の一例としての長方形状の支持基板601上に、複数の発光装置602が互いに所定の間隔をあけて格子状に実装されている。ここで、発光装置602は、第5実施形態の発光装置の製造方法を用いて製造された100個以上の棒状構造発光素子が配置された分割基板である。
【0167】
上記構成のバックライトによれば、発光装置602を用いることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が図れるバックライトを実現することができる。
【0168】
また、上記発光装置602を支持基板601上に取り付けることによって、さらに放熱効果が向上する。
【0169】
上記第1〜第7実施形態では、発光ダイオードを発光素子として用いた発光装置、発光装置の製造方法、照明装置およびバックライトについて説明したが、この発明の発光素子は発光ダイオードに限らず、半導体レーザー、有機EL(Electro Luminescence:エレクトロ・ルミネッセンス)、無機EL(真性EL)などの発光素子を用いた発光装置、発光装置の製造方法、照明装置およびバックライトにこの発明を適用してもよい。
【0170】
また、上記第2実施形態では、半導体コアおよび半導体層に、GaNを母材とする半導体を用いたが、GaAs,AlGaAs,GaAsP,InGaN,AlGaN,GaP,ZnSe,AlGaInPなどを母材とする半導体を用いた発光素子にこの発明を適用してもよい。また、半導体コアをn型とし、半導体層をp型としたが、導電型が逆の棒状構造発光素子にこの発明を適用してもよい。また、断面が六角形の棒状の半導体コアを有する棒状構造発光素子について説明したが、これに限らず、断面が円形や楕円の棒状であってもよいし、断面が他の多角形状の棒状の半導体コアを有する棒状構造発光素子にこの発明を適用してもよい。
【0171】
また、上記第2実施形態では、棒状構造発光素子の直径を1μmとし長さを10μm〜30μmのマイクロオーダーサイズとしたが、直径または長さのうちの少なくとも直径が1μm未満のナノオーダーサイズの素子でもよく、発光面積が2,500πμm以下(より好ましくは625πμm以下)であればよい。上記棒状構造発光素子の半導体コアの直径は500nm以上かつ100μm以下が好ましく、数10nm〜数100nmの棒状構造発光素子に比べて半導体コアの直径のばらつきを抑えることができ、発光面積すなわち発光特性のばらつきを低減でき、歩留まりを向上できる。
【0172】
なお、棒状構造発光素子の発光面積の下限を規定するとすれば、3.14×10−3μmである(直径1nm、長さ1μmの棒状の半導体コアの外周に筒状に発光面を形成したときの面積)。または、発光素子が正方形の板状であれば、一辺が56nmである。いずれの形状の発光素子もこれ以下のサイズは形成が困難である。また、同一基板の実装面上に配置する発光素子の個数の上限を規定するとすれば、1億個であり、これ以上は歩留まりを保って配列させるのが困難である。
【0173】
また、上記第2実施形態では、MOCVD装置を用いて半導体コアやキャップ層を結晶成長させているが、MBE(分子線エピタキシャル)装置などの他の結晶成長装置を用いて半導体コアやキャップ層を形成してもよい。
【0174】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0175】
また、この発明の発光装置は、
1個当たりの発光面の面積が900πμm以下の複数の発光素子が同一基板の実装面上に100個以上配置されていることを特徴とする。
【0176】
ここで、上記複数の発光素子は、円形状、楕円状、正方形状、矩形状、多角形状などの平坦な発光面を有する発光素子に限らず、筒状、畝状、半球状などの曲面で形成された発光面を有する発光素子であってもよい。また、上記複数の発光素子は、基板に直接接しているか、または、基板に熱伝導体を介して接しており、その両方の接し方をした発光素子が組み合わされていてもよい。
【0177】
上記構成によれば、1個当たりの発光面の面積が900πμm以下の複数の発光素子を同一基板の実装面上に配置することによって、発光素子が基板に直接接した状態(または熱伝導体を介して間接的に接した状態)では、発光面の中心部においても基板側への横方向の熱流出が行われて、発光面の中心部を含めて発光素子の温度が低下するので、発光時の温度上昇が抑制される。そして、そのような微細な発光素子を同一基板の実装面上に100個以上配置することにより、明るさばらつきを有する複数の発光素子を集合したときの全体の明るさのばらつきを、1つの発光素子の明るさばらつきの1/10以下に低減できる。上記発光素子の温度上昇による発光効率の低下量は素子毎にばらつくが、発光素子の1個当たりの発光面の面積を900πμm以下にすることより温度上昇が抑制されて、発光効率の低下量のばらつきが抑制されるので、微細な発光素子を100個以上用いることによる明るさばらつきの低減効果がさらに高まる。さらに、発光素子を微小化して、同一基板上に分散させて配置することによって、例えば1個の発光素子と同等の光量を複数の微細な発光素子で得つつ、樹脂に照射される光が分散されて光強度を弱めることができ、樹脂の劣化を抑制して長寿命化が図れる。これにより、発光時の温度上昇を抑制しつつ発光を分散させることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が実現できる。
【0178】
また、一実施形態の発光装置では、
上記基板の実装面の面積は、上記複数の発光素子の発光面積の総和に対して4倍以上であって、
上記複数の発光素子は、上記基板の実装面上に略均等に分散して配置されている。
【0179】
上記実施形態によれば、複数の発光素子の発光面積の総和に対して4倍以上の面積の基板の実装面上に複数の発光素子を略均等に分散して配置することによって、発光により発光素子に生じた熱の基板側への横方向の流出が効率よく行われると共に温度分布が均一になるため、発光時の温度上昇がさらに抑制され、より長寿命化、高効率化が図れる。
【0180】
また、例えば、図40,図41に示すように、1個当たりの発光面の面積が900πμm以下の平坦な正方形(一辺の長さa)の発光面を有する発光素子910を、正方形状の基板900上に略均等に分散して配置する。このとき、1個あたりの発光素子910の発光面積(a)に対して、1個の発光素子910が占有する基板900の面積を4倍(4a)にすると、従来の図39に示す1つの発光素子(LEDチップ901)に比べて、図40,図41に示すように、互いに隣接する発光素子910間の距離を十分に確保しつつ、発光素子910の発光を分散させて光強度を弱めて、樹脂912の劣化を抑制することができる。
【0181】
また、一実施形態の発光装置では、
上記複数の発光素子は、棒状であって、
上記複数の発光素子の長手方向が上記基板の実装面に対して平行になるように、上記複数の発光素子が上記基板の実装面上に配置されている。
【0182】
上記実施形態によれば、棒状の複数の発光素子の長手方向が基板の実装面に対して平行になるように、複数の発光素子を基板の実装面上に配置することによって、径方向に対して軸方向(長手方向)の長さの比を大きくできるので、発光素子の発光面の面積が同じ条件では発光面が平坦な正方形のときよりも基板側への横方向の熱流出が効率よく行われ、発光時の温度上昇がさらに抑制され、より長寿命化、高効率化が図れる。
【0183】
また、一実施形態の発光装置では、
上記棒状の発光素子は、棒状のコアを同心状に囲む筒状の発光面を有する。
【0184】
上記実施形態によれば、棒状の発光素子が、棒状のコアを同心状に囲む筒状の発光面を有することによって、1個当たりの発光面の面積が900πμm以下の複数の発光素子が同一基板の実装面上に100個以上配置されているという条件の範囲内で、発光素子1個あたりの発光面の面積が増大し、所定の明るさを得るための発光素子数を削減することができ、コストを削減できる。
【0185】
また、一実施形態の発光装置では、
上記複数の発光素子は、発光ダイオードであって、
上記基板上に所定の間隔をあけて形成された第1の電極と第2の電極との間に上記複数の発光ダイオードが接続され、
上記複数の発光ダイオードは、上記第1の電極にアノードが接続されると共に上記第2の電極にカソードが接続された発光ダイオードと、上記第1の電極にカソードが接続されると共に上記第2の電極にアノードが接続された発光ダイオードとが混在して上記基板上に配置され、
交流電源によって上記第1の電極と上記第2の電極との間に交流電圧を印加して上記複数の発光ダイオードが駆動される。
【0186】
上記実施形態によれば、多数の発光ダイオードに対してアノードとカソードの向きを揃えて配置する必要がなく、工程を簡略化できる。また、上記第1,第2の電極間に接続する複数の発光ダイオードの極性を揃えて配列する必要がないので、製造時に複数の発光ダイオードの極性(向き)を揃える工程が不要となり工程を簡略化できる。また、発光ダイオードの極性(向き)を識別するために、発光ダイオードにマークを設ける必要がなく、極性識別のために発光ダイオードを特別な形状にする必要がなくなる。よって、発光ダイオードの製造工程を簡略化でき、製造コストも抑えることができる。なお、発光ダイオードのサイズが小さな場合や発光ダイオードの個数が多い場合、極性を揃えて発光ダイオードを配列するものに比べて、上記製造工程を格段に簡略化できる。
【0187】
また、一実施形態の発光装置では、
上記基板が放熱板上に取り付けられている。
【0188】
上記実施形態によれば、基板を放熱板上に取り付けることによって、さらに放熱効果が向上する。
【0189】
また、この発明の発光装置の製造方法では、
1個当たりの発光面積が900πμm以下の複数の発光素子が同一基板の実装面上に100個以上配置されている発光装置を製造する発光装置の製造方法であって、
少なくとも第1の電極および第2の電極を上記実装面に有する上記基板を作成する基板作成工程と、
上記基板上に上記複数の発光素子を含んだ溶液を塗布する塗布工程と、
少なくとも上記第1の電極と上記第2の電極に電圧を印加して、上記複数の発光素子を少なくとも上記第1の電極および上記第2の電極により規定される位置に配列させる配列工程と
を有することを特徴とする。
【0190】
上記構成によれば、少なくとも第1の電極および第2の電極を実装面に有する基板を作成し、その基板上に微細な複数の発光素子を含んだ液体を塗布する。その後、少なくとも第1の電極と第2の電極に電圧を印加して、微細な複数の発光素子を少なくとも第1の電極および第2の電極により規定される位置に配列させる。これにより、上記複数の発光素子を基板上の所定の位置に容易に配列させることができる。したがって、従来のように発光ダイオードを1つ1つ基板上の所定の位置に配置する必要がなく、多数の微細な発光ダイオードを精度よく所定の位置に配置させることができる。
【0191】
この発光装置の製造方法によって、発光時の温度上昇を抑制しつつ発光を分散させることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が可能な発光装置を実現することができる。また、上記発光装置の製造方法では、微細な複数の発光素子のみに半導体を用いることによって、使用する半導体の量を少なくできる。
【0192】
また、一実施形態の発光装置の製造方法では、
上記配列工程の後、上記基板を複数の分割基板に分割する基板分割工程を有し、
上記複数の分割基板上の夫々には、100個以上の上記発光素子が配置されている。
【0193】
上記実施形態によれば、大面積の基板上に複数の発光素子を配列しておき、その基板を100個以上の発光素子が夫々配置された複数の分割基板に分割するので、各工程を流動する基板数を少なくして大幅にコストを削減できる。
【0194】
また、一実施形態の発光装置の製造方法では、
少なくとも上記第1の電極および上記第2の電極は、上記複数の発光素子を駆動するための電極として用いられる。
【0195】
上記実施形態によれば、少なくとも第1の電極および第2の電極を、複数の発光素子を駆動するための電極として用いることによって、配線工程を簡略化してコストを削減できる。
【0196】
また、一実施形態の発光装置の製造方法では、
上記配列工程の後、上記基板上の上記複数の発光素子が配置された領域に蛍光体を選択的に塗布する蛍光体塗布工程を有する。
【0197】
上記実施形態によれば、基板上に複数の発光素子を配列した後、基板上の複数の発光素子が配置された領域に蛍光体を選択的に塗布することによって、材料費で大きな比率を占める蛍光体の使用量を減らしてコストを削減できる。
【0198】
また、一実施形態の発光装置の製造方法では、
上記複数の発光素子は、棒状であって、
上記複数の発光素子の長手方向が上記基板の実装面に対して平行になるように、上記複数の発光素子が上記基板の実装面上に配置されている。
【0199】
上記実施形態によれば、この発光装置の製造方法は、電極間に電圧を印加することによる物体の分極を利用しているため、棒状の発光素子の両端を分極させるのに都合がよく、棒状の発光素子に対して相性がよい。
【0200】
また、一実施形態の発光装置の製造方法では、
上記棒状の発光素子は、棒状のコアを同心状に囲む筒状の発光面を有する。
【0201】
上記実施形態によれば、棒状の発光素子が棒状のコアを同心状に囲む筒状の発光面を有することによって、1個当たりの発光面の面積が900πμm以下の複数の発光素子が同一基板の実装面上に100個以上配置されているという条件の範囲内で、発光素子1個あたりの発光面の面積が増大し、所定の明るさを得るための発光素子数を削減できる。
【0202】
また、一実施形態の発光装置の製造方法では、
上記棒状の発光素子は、第1導電型の棒状の半導体コアと、その半導体コアの外周を覆うように形成された第2導電型の筒状の半導体層とを有し、
上記棒状の発光素子の上記半導体コアの一端側が露出している。
【0203】
上記実施形態によれば、棒状の発光素子が、第1導電型の棒状の半導体コアと、その半導体コアの外周を覆うように形成された第2導電型の筒状の半導体層とを有し、半導体コアの一端側が露出していることによって、半導体コアの一端側の露出部分に一方の電極を接続し、半導体コアの他端側の半導体層に電極を接続することが可能となり、両端に電極を離して接続でき、半導体層に接続する電極と半導体コアの露出部分が短絡するのを防ぐので、配線が容易にできる。
【0204】
また、この発明の照明装置では、
上記のいずれか1つの発光装置を備えたことを特徴とする。
【0205】
上記構成によれば、上記発光装置を用いることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が実現できる。
【0206】
また、この発明のバックライトでは、
上記のいずれか1つの発光装置を備えたことを特徴とする。
【0207】
上記構成によれば、上記発光装置を用いることにより、明るさのばらつきが少なくかつ長寿命化と高効率化が実現できる。
【符号の説明】
【0208】
1…n型GaN基板
2…量子井戸層
3…p型GaN層
10…半導体チップ
100…棒状構造発光素子
101…サファイア基板
102…n型GaN膜
103…マスク層
105…レジスト層
106…触媒金属
107…半導体コア
108…量子井戸層
110…半導体層
111…導電膜
200…絶縁性基板
201,202…金属電極
210…棒状構造発光素子
211…IPA
300…絶縁性基板
310…棒状構造発光素子
301,302…金属電極
303…層間絶縁膜
304,305…金属配線
311…半導体コア
311a…露出部分
311b…被覆部分
312…半導体層
400…絶縁性基板
410…棒状構造発光素子
401,402…金属電極
403,404…接着部
411…半導体コア
411a…露出部分
411b…被覆部分
412…半導体層
420…蛍光体
421…保護膜
430…発光装置
500…発光装置
510…LED電球
511…口金
512…放熱部
513…透光部
600…バックライト
601…支持基板
602…発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個当たりの発光面積が2,500πμm以下の複数の発光素子が、少なくとも第1の電極および第2の電極が形成された同一基板の実装面上に、少なくとも上記第1の電極および上記第2の電極により規定される位置に100個以上配置されていると共に、
上記複数の発光素子の発光面積の総和に対して上記基板の実装面の面積が4倍以上となるように、上記複数の発光素子が上記基板の実装面上に分散して配置されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
上記発光素子1個当たりの発光面の面積は625πμm以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光装置において、
上記複数の発光素子は、棒状であって、
上記複数の発光素子の長手方向が上記基板の実装面に対して平行になるように、上記複数の発光素子が上記基板の実装面上に配置されていることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発光装置において、
上記棒状の発光素子は、棒状のコアを同心状に囲む筒状の発光面を有することを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1つに記載の発光装置において、
上記複数の発光素子は、発光ダイオードであって、
上記基板上に所定の間隔をあけて形成された上記第1の電極と上記第2の電極との間に上記複数の発光ダイオードが接続され、
上記複数の発光ダイオードは、上記第1の電極にアノードが接続されると共に上記第2の電極にカソードが接続された発光ダイオードと、上記第1の電極にカソードが接続されると共に上記第2の電極にアノードが接続された発光ダイオードとが混在して上記基板上に配置され、
交流電源によって上記第1の電極と上記第2の電極との間に交流電圧を印加して上記複数の発光ダイオードが駆動されることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1つに記載の発光装置において、
上記基板が放熱板上に取り付けられていることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1つに記載の発光装置を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1つに記載の発光装置を備えたことを特徴とするバックライト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2011−205106(P2011−205106A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96368(P2011−96368)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【分割の表示】特願2010−292712(P2010−292712)の分割
【原出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】