説明

発光装置およびその製造方法

【課題】基材として金属基板を用いた場合でも、製造コストを著しく増大させることなく、金属基板上に発光特性や信頼性に優れた有機EL素子を形成することのできる発光装置、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】発光装置1の基材は金属基板11であり、その表面に無電解めっきにより形成されたニッケルめっき層12の表面に、少なくとも有機発光層を含む機能層13、および陰極層14が順に積層されて有機EL素子10が形成されている。金属基板11は、放熱性に優れており、かつ、取り扱いが容易である。また、金属基板11は、塑性変形可能であるため、様々な形状に変形させて用いることができる。さらに、ニッケルめっき層12は、金属基板11と違って表面が平滑であるため、研磨やSOG技術により平滑化する必要がなく、ITOと同様、仕事関数が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に有機エレクトロルミネッセンス(以下「エレクトロルミネッセンス」を「EL」と略す)素子を備えた発光装置、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基材上に有機EL素子を備えた発光装置は、表示装置や照明装置などとして用いられており、かかる発光装置は、概ね、基材としてのガラス基板上に、ITO(Indium Tin Oxide)膜からなる透明な陽極層、有機発光層を含む機能層、および陰極層が順に積層された構造を備えている。また、陰極層の側にはガラス製あるいは金属製の封止部材が被せられている。かかる発光装置については、ガラス基板を使用しているため、高価であるとともに、フレキシブルに曲がる表示装置や照明装置を製造することができないという問題点がある。
【0003】
そこで、薄い金属基板(ステンレス箔)を基材として用いることが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】SID ’06 DIGESTp.1354-1357、「A 2.2 inch Top-Emission AMOLED on Flexible Metal Foil with SOG Planarization」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、金属基板の表面粗さは平均粗さで0.5〜0.1μm程度あるのに対して、有機EL素子の膜厚が0.05〜0.20μm程度であることから、発光特性や信頼性に優れた有機EL素子を製造するには、金属箔板の表面粗さを改善する事が必要である。従って、従来は、金属基板を使用する場合、平均粗さを0.05μm以下にまで鏡面研磨するか、非特許文献1のように、SOG(Spin On Glass)技術を用いて平滑化して使用していた。
【0005】
しかしながら、大面積の金属基板の表面を研磨やSOG技術で平滑化するのは極めて困難であり、たとえ可能であっても、多大な手間と相当の熟練を要する。それ故、金属基板を使用した場合、大量生産に向かず、高価になるために、商品開発できないという問題点を有している。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、基材として金属基板を用いた場合でも、製造コストを著しく増大させることなく、金属基板上に発光特性や信頼性に優れた有機EL素子を形成することのできる発光装置、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、基材上に、陽極層、少なくとも有機発光層を含む機能層、および陰極層が順に積層された有機EL素子を備えた発光装置において、前記基材は金属基板であり、前記陽極層は、当該金属基板に形成されたニッケルめっき層であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明では、基材上に、陽極層、少なくとも有機発光層を含む機能層、および陰極層が順に積層された有機EL素子を備えた発光装置の製造方法において、前記基材として金属基板を用いるとともに、当該金属基板上にニッケルめっき層を形成するめっき工程と、前記ニッケルめっき層上に前記機能層を形成する機能層形成工程と、を行なうことを特徴とする。
【0009】
本発明における「基板」とは、「比較的厚い板状部材」の意味を含む他、シート状あるいはフィルム状といった「薄い箔状部材」を含む意味である。
【0010】
本発明では、有機EL素子が形成される基材として金属基板を用いたため、基材としてガラスを用いた場合と比較して放熱性に優れており、有機EL素子の信頼性を向上することができる。また、金属基板であれば、ガラスと違って、割れないので、取り扱いが容易である。また、金属基板は、塑性変形可能であるため、様々な形状に変形させて用いることができる。また、本発明では、金属基板上にニッケルめっき層を形成し、ニッケルめっき層の上で有機EL素子を形成している。ここで、ニッケルめっき層は、金属基板と違って表面が平滑であるため、研磨やSOG技術により平滑化する必要がない。それ故、製造コストを著しく増大させることなく、平滑面上に有機EL素子を形成することができるので、発光特性や信頼性に優れた有機EL素子を形成することができる。さらに、ニッケルめっき層は、ITOと同様、仕事関数が高いので、そのまま陽極層として用いることができる。
【0011】
本発明において、前記ニッケルめっき層は、前記金属基板上に直接、形成されている構成を採用することができる。この場合、前記めっき工程では、前記金属基板にめっき処理を行って前記ニッケルめっき層を形成すればよい。
【0012】
本発明において、前記金属基板は可撓性を有していることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記めっき工程では、無電解めっきにより前記ニッケルめっき層を形成することが好ましい。このように構成すると、表面がより平滑なニッケルめっき層を形成することができる。
【0014】
本発明において、前記めっき工程では、界面活性剤を含むめっき液を用いることが好ましい。このように構成すると、表面がより平滑なニッケルめっき層を形成することができる。
【0015】
本発明において、前記機能層形成工程の後、所定形状の成形面を備えた型部材を前記金属基板の一方面側に配置した状態で、当該一方面を前記成形面に押付ける流体圧を前記金属基板に作用させて前記金属基板を変形させる成形工程を行なうことが好ましい。
【0016】
かかる成形工程では、例えば、前記機能層に対する不活性雰囲気中で、不活性ガスによって前記金属基板の他方側を加圧して前記金属基板の前記一方面側を前記成形面に押付けることが好ましい。また、前記成形工程では、前記機能層に対する不活性雰囲気中で、前記金属基板の前記一方面側を減圧して前記金属基板の前記一方面側を前記成形面に押付けてもよい。このように構成すると、成形加工を行なう際、機能層が空気中の水分や酸素で劣化することを防止することができる。
【0017】
いずれの場合も、前記機能層は、前記金属基板の他方面側に形成されていることが好ましく、このように構成すると、機能層が形成されている側が前記成形面に触れて損傷することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0019】
[発光装置の全体構成]
図1は、本発明を適用した発光装置(有機EL装置)の要部構成を模式的に示す断面図である。
【0020】
図1に示す発光装置1は、基材として金属基板11が用いられており、この金属基板11の表面側に有機EL素子10が形成されている。また、金属基板11において、有機EL素子10が形成されている側には、封止用ガラス基板20がシール材21(封止用接着剤)により貼られており、その内側には脱酸素材(図示せず)が配置されることもある。
【0021】
本形態では、金属基板11として、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、ステンレス鋼、軟鋼などが用いられており、その厚さは数十μm〜数mmと薄い。それ故、金属基板11は可撓性を備えている。
【0022】
このように構成した発光装置1において、本形態では、金属基板11の表面および裏面は、膜厚が1〜5μm、好ましくは2〜3μmのニッケルめっき層12で覆われており、ニッケルめっき層12の仕事関数は、5.22eVであり、ITOの仕事関数(4.9eV)と同等以上である。
【0023】
そこで、本形態では、ニッケルめっき層12のうち、金属基板11の表面に形成された部分が有機EL素子10の陽極層として用いられている。すなわち、金属基板11の表面側において、ニッケルめっき層12の上層には、その中央領域を囲むようにポジ型の感光性レジストやシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜15が形成されており、ニッケルめっき層12の上層のうち、層間絶縁膜15で囲まれた領域内には、少なくとも有機発光層を含む機能層13が積層され、この機能層13の上層には、陰極層14が積層されている。また、層間絶縁膜15上には、陰極層14と電気的接続する状態で陰極層配線16が形成され、その端部によって陰極層端子160が構成されている。
【0024】
本形態において、ニッケルめっき層12は、金属基板11に対して直接、電解めっきあるいは無電解めっきを行なうことにより形成された層である。但し、電解めっきでは、結晶粒界が大きくなり、無電解めっきに比して、表面粗さが粗くなる傾向にある。従って、本形態では、無電解めっきにより、ニッケルめっき層12が形成され、かかるニッケルめっき層12の平均粗さは、0.05μm以下の平滑面になっている。なお、ニッケルめっき層12には、めっきの際に用いた還元剤由来のP(リン)あるいはB(ホウ素)などが含まれている。
【0025】
有機EL素子10において、機能層13は、少なくとも有機発光層を含んでおり、例えば、以下の
正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
層構造が採用される。ここで、正孔輸送層および電子輸送層は省略された構成や、正孔注入輸送層や電子注入輸送層として、正孔注入層や電子注入層と一体化される場合がある。
【0026】
正孔注入輸送層としては、銅フタロシアニン(CuPc)などや、N、N’−ビス(3−メチルフェニル)−N、N’−ジフェニル−[1、1−ビフェニル]−4、4’−ジアミン(TPD)、N、N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N、N’−ジフェニルベンジジン(NPD)、N、N’−ジフェニル−N、N’−ビス(1−ナフチル)−(1、1’−ビフェニル)−4、4’−ジアミン(NPB)などにより形成されている。電子注入輸送層は、Alq3などによって形成されている。有機発光層は、芳香族ジメチリデン化合物、オキサジアゾール化合物、トリアゾール誘導体、チオピラジンジオキシド誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体等の蛍光性有機材料、アゾメチン亜鉛錯体、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム錯体等の蛍光性有機金属化合物等が用いられる。また、ホスト材料に蛍光色素をドーピングしたものが用いられることがあり、このようなホスト材料とドーパント材料の組み合わせとしては、例えば、トリス(8−キノリラート)アルミニウムとクマリン誘導体との組み合わせ、アントラセン誘導体とスチリルアミン誘導体との組み合わせ、アントラセン誘導体とナフタセン誘導体との組み合わせ、トリス(8−キノリラート)アルミニウムとジシアノピラン誘導体との組み合わせ、ナフタセン誘導体とジインデノペリレンとの組み合わせなどがある。
【0027】
このように構成した発光装置1は、陰極層14の側から光を出射するトップエミッション型である。すなわち、ニッケルめっき層12の一部を陽極端子120とし、この陽極端子120と陰極層端子160との間に電源により電圧を印加すると、陽極側(ニッケルめっき層12)の側から注入された正孔と、陰極層14から注入された電子とが、機能層13の有機発光層で再結合することにより発光し、陰極層14の側から出射される。このため、陰極層14としては、例えば、厚さが10nmと薄い金属膜(例えば、90重量%Mg(マグネシウム)と10重量%Ag(銀)との合金)が用いられており、かかる陰極層14によれば、光を透過可能である。なお、有機発光層から金属基板11に向けて出射された光も、ニッケルめっき層12や金属基板11で反射した後、陰極層14の側から出射される。
【0028】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の発光装置1では、有機EL素子10が形成される基材として金属基板11を用いたため、基材としてガラスを用いた場合と比較して放熱性に優れており、有機EL素子10の信頼性を向上することができる。また、金属基板11であれば、ガラスと違って、割れないので、取り扱いが容易である。また、金属基板11は、塑性変形可能であるため、様々な形状に変形させて用いることができる。
【0029】
また、本形態では、金属基板11上にニッケルめっき層12を形成し、ニッケルめっき層12を陽極層として用いて有機EL素子10を構成している。ここで、ニッケルめっき層12は、金属基板11と違って表面が平滑であるため、研磨やSOG技術により平滑化する必要がない。それ故、製造コストを著しく増大させることなく、平滑面上に有機EL素子10を形成することができるので、発光特性や信頼性に優れた有機EL素子10を形成することができる。
【0030】
さらに、ニッケルめっき層12は、ITOと同様、仕事関数が高いので、そのまま陽極層として用いることができる。
【0031】
(発光装置1の製造方法)
図2(a)〜(f)は、本形態の発光装置1の製造方法を示す工程断面図である。まず、本形態では、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、軟鋼などからなる金属基板11を準備した後、洗浄する。
【0032】
次に、図2(a)に示すめっき工程において、金属基板11にめっきを施し、金属基板11の表面および裏面にニッケルめっき層12を形成する。より具体的には、以下に示す組成
硫酸ニッケル(NiSO4) 100mol/m3
dl−リンゴ酸(C465) 150mol/m3
コハク酸ナトリウム(Na2444) 150mol/m3
次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2) 300mol/m3
サッカリンナトリウム(C74NNaO3S) 3g/L
水酸化ナトリウムによりpH=4.8に調整
のニッケル−リンめっき浴を用い、温度が80℃の条件で金属基板11に無電解めっきを行なう。ここで、サッカリンナトリウムはニッケルめっき層12表面の平滑性を高める効果を備えている。
【0033】
次に、図2(b)に示すように、金属基板11の表面側において、ニッケルめっき層12の上層のうち、有機EL素子10を形成すべき中央領域の周りに、ポジ型の感光性レジストやシリコン酸化膜により、層間絶縁膜15を形成する。例えば、金属基板11の表面側にスピンコート法により、ポジ型の感光性樹脂を塗布した後、フォトリソグラフィ技術を用いて所定の領域のみに感光性樹脂を層間絶縁膜15として残す。その際、ニッケルめっき層12の一部を陽極端子120として露出させる。
【0034】
次に、図2(c)に示すように、マスク蒸着などの方法を用いて、金属基板11の表面側にアルミニウムなどからなる陰極層配線16を形成する。なお、金属基板11の表面全体にアルミニウム膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いてアルミニウム膜をパターニングして陰極層配線16を形成してもよい。この場合に用いるエッチング液としては、ニッケルめっき層12の溶解を避けるために、例えば、5%水酸化カリウム水溶液などを用いる。
【0035】
次に、図2(d)に示す機能層形成工程において、マスク蒸着などの方法を用いて、層間絶縁膜15で囲まれた領域内に有機発光層を含む機能膜を形成する。その際に用いるマスクとしては、金属製、ガラス製、あるいはプラスチック製のものを用いることができる。本形態では、正孔注入層となる銅フタロシアニンを3nmの厚さに形成した後、その上に正孔輸送層となるべきα−NPDを50nm成膜し、さらにその上に青色有機発光層となるべきホスト材とドーパント材とを各々10nm、0.5nmずつ共蒸着した。さらに、その上に赤色有機発光層として、ホスト材とドーパント材を各々、30nm、1.5nmずつ共蒸着した。さらにその上に電子輸送層を20nm成膜した。
【0036】
次に、図2(e)に示すように、マスク蒸着などの方法を用いて、機能膜の上層に陰極層14を形成する。その結果、有機EL素子10が形成されるとともに、陰極層14は陰極層配線16に電気的に接続される。
【0037】
次に、シール材21によって、金属基板11において、有機EL素子10が形成されている側に封止用ガラス基板20を貼り合せる。なお、機能膜形成工程から封止工程までは、窒素雰囲気などといった機能膜に対する不活性ガス雰囲気で行なう。
【0038】
[発光装置1の変形例]
図3は、本発明を適用した別の発光装置1(有機EL装置)の要部構成を模式的に示す断面図である。図1に示す発光装置1では封止用ガラス基板20によって封止を行なったが、図2に示すように、金属基板11において、有機EL素子10が形成されている側を封止樹脂層25で覆い、かかる封止樹脂層24によって、機能層13を保護してもよい。その他の構成は、図1に示す発光装置1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示することにして、それらの説明を省略する。
【0039】
[発光装置1の使用例1]
図4は、本発明を適用した発光装置1を備えた液晶表示装置の要部構成を模式的に示す断面図である。図4に示す液晶表示装置50は、画素電極や画素トランジスタが形成された素子基板56と、素子基板56に対してシール材59により貼り合わされた対向基板57とを備えた液晶パネル55を備えており、液晶パネル55に対して素子基板56の側には、図1を参照して説明した発光装置1がバックライト装置として光学接着剤52により接着されている。ここで、液晶パネル55は、透過型あるいは半透過反射型の液晶装置であり、発光装置1から出射された光を変調し、対向基板57の側から出射して画像を表示する。かかる液晶表示装置は、携帯電話機などの表示部を構成する直視型表示装置などとして用いられる。
【0040】
このような構成の液晶表示装置50では、発光装置1の基材として金属基板11を用いたため、基材としてガラスを用いた場合と比較して放熱性に優れている。このため、従来の発光装置1(バックライト装置)と比較して2倍以上の寿命を有している。
【0041】
[発光装置1の使用例2]
図5(a)、(b)は、本発明を適用した発光装置1を備えた照明装置の外観図である。図5(a)に示す照明装置200は、スタンド本体210と、図1あるいは図3を参照して説明した発光装置1とを備えており、発光装置1は、図1あるいは図3に示す金属基板11が湾曲した状態で使用されている。発光装置1からの光出射側(下面側)には、湾曲した金属基板11において有機EL素子10が形成されている内側を覆うように平板状の封止用ガラス基板(図示せず)が取り付けられている。あるいは、発光装置1からの光出射側(下面側)には、湾曲した金属基板11において有機EL素子10が形成されている内側を覆うように封止用樹脂層25が形成されている。
【0042】
図5(b)に示す照明装置300は、台本体310、図1あるいは図3を参照して説明した発光装置1とを備えており、発光装置1は、図1あるいは図3に示す金属基板11が円筒状に湾曲した状態で縦置で使用されている。発光装置1からの光出射側(外面側)には、湾曲した金属基板11において有機EL素子10が形成されている外周面を覆うように封止用ガラス基板20が取り付けられている。あるいは、発光装置1からの光出射側(外面側)には、湾曲した金属基板11において有機EL素子10が形成されている外周面を覆うように封止用樹脂層25が形成されている。
【0043】
[発光装置1の成形方法]
図6(a)、(b)は、本発明を適用した発光装置1を湾曲させるための成形方法の説明図である。図7(a)、(b)は、本発明を適用した発光装置1を湾曲させるための別の成形方法の説明図である。図1〜図3を参照して説明した発光装置1を、例えば、図5(a)に示すように湾曲させるにあたっては、例えば、図6(a)に示す成形装置100を用いる。この成形装置100は、成形面111に凹湾曲部112を備えた金型110(型部材)と、この金型110の成形面111に被さるカバー120とを備え取り、カバー120は、陰極層14までを形成し終えた金属基板11の端部を金型110との間に挟んだ状態にある。ここで、カバー120には、窒素ガス導入口121が形成されている。
【0044】
このようにした成形装置100を用いて、陰極層14までを形成し終えた金属基板11を、有機EL素子10が形成される側が凹むように湾曲させるには、まず、有機EL素子10が形成されている側の表面をカバー120の向かせた状態で、カバー120と金型110との間に金属基板11を配置する。この状態で、成形装置100の内部は窒素ガスに置換されている。また、カバー120と金型110との間において、金属基板11の表面側と金属基板11の裏面側とは、金属基板11自身によって気密状態に仕切られている。
【0045】
この状態で、図6(b)に示すように、カバー120の窒素ガス導入口121から高圧の窒素ガスを導入する。その結果、金属基板11は、表面側の流体圧(窒素ガスの圧力)によって、裏面側が金型110の成形面111に押付けられる。このめ、金属基板11は、塑性変形しながら凹湾曲部112に沿って湾曲し、その後、成形装置100から取り外しても元の形状に戻らない。従って、湾曲した金属基板11において、有機EL素子10が形成されている側に封止用ガラス基板20や封止用樹脂層25を設ければ、発光装置1を形成することができる。
【0046】
また、図1〜図3を参照して説明した発光装置1を、例えば、図5(a)に示すように湾曲させるにあたっては、図7(a)に示す成形装置100を用いてもよい。この成形装置100は、成形面111に凹湾曲部112を備えた金型110(型部材)と、この金型110の成形面111に被さるカバー120とを備え取り、カバー120は、陰極層14までを形成し終えた金属基板11の端部を金型110との間に挟んだ状態にある。ここで、金型110において、凹湾曲部112の底部には吸気口115が形成されている。
【0047】
このようにした成形装置100を用いて、陰極層14までを形成し終えた金属基板11を、有機EL素子10が形成される側が凹むように湾曲させるには、まず、有機EL素子10が形成されている側の表面をカバー120の向かせた状態で、カバー120と金型110との間に金属基板11を配置する。この状態で、成形装置100の内部は窒素ガスに置換されている。また、カバー120と金型110との間において、金属基板11の表面側と金属基板11の裏面側とは、金属基板11自身によって気密状態に仕切られている。
【0048】
この状態で、図7(b)に示すように、真空ポンプによって金型110の吸気口115から、金属基板11の裏面側と凹湾曲部112とにより区画された空間内を減圧すると、金属基板11は、表面側と裏面側の圧力差によって、裏面側が金型110の成形面111に押付けられる。その結果、金属基板11は、塑性変形しながら凹湾曲部112に沿って湾曲し、その後、成形装置100から取り外しても元の形状に戻らない。従って、湾曲した金属基板11において、有機EL素子10が形成されている側に封止用ガラス基板20や封止用樹脂層25を設ければ、発光装置1を形成することができる。
【0049】
これらいずれの方法によっても、機能層13が形成されている側が成形面111に触れることがないので、有機EL素子10が損傷することを防止することができる。
【0050】
なお、図6および図7を参照して説明した成形装置100を組み合わせ、金属基板11の表面側では窒素ガスの供給により圧力を高める一方、金属基板11の裏面側で吸引を行なって減圧して、金属基板11の裏面側を金型110の成形面111に押付けてもよい。
【0051】
[その他の実施の形態]
なお、上記形態では、金属基板11の略全面に一体の有機EL素子10を形成したが、面内方向に複数の有機EL素子10を形成してもよい。また、上記形態では、金属基板11の表面に直接、ニッケルめっき層12を形成したが、例えば、金属基板11の表面に層間絶縁膜、配線層、層間絶縁膜を形成し、その上層にニッケルめっき層11を形成した構成を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を適用した発光装置(有機EL装置)の要部構成を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)〜(f)は、本形態の発光装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図3】本発明を適用した別の発光装置(有機EL装置)の要部構成を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明を適用した発光装置を備えた液晶表示装置の要部構成を模式的に示す断面図である。
【図5】(a)、(b)は、本発明を適用した発光装置を備えた照明装置の外観図である。
【図6】(a)、(b)は、本発明を適用した発光装置を湾曲させるための成形方法の説明図である。
【図7】(a)、(b)は、本発明を適用した発光装置を湾曲させるための別の成形方法の説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1・・発光装置(有機EL装置)、11・・金属基板(基材)、10・・有機EL素子、12・・ニッケルめっき層(陽極層)、13・・機能層、14・・陰極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、陽極層、少なくとも有機発光層を含む機能層、および陰極層が順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた発光装置において、
前記基材は金属基板であり、
前記陽極層は、当該金属基板に形成されたニッケルめっき層であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記ニッケルめっき層は、前記金属基板上に直接、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記金属基板は可撓性を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
基材上に、陽極層、少なくとも有機発光層を含む機能層、および陰極層が順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた発光装置の製造方法において、
前記基材として金属基板を用いるとともに、
当該金属基板上にニッケルめっき層を形成するめっき工程と、
前記ニッケルめっき層上に前記機能層を形成する機能層形成工程と
を行なうことを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記めっき工程では、前記金属基板にめっき処理を行って前記ニッケルめっき層を形成することを特徴とする請求項4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記めっき工程では、無電解めっきにより前記ニッケルめっき層を形成することを特徴とする請求項4または5に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記めっき工程では、界面活性剤を含むめっき液を用いることを特徴とする請求項4乃至6の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記機能層形成工程の後、
所定形状の成形面を備えた型部材を前記金属基板の一方面側に配置した状態で、当該一方面を前記成形面に押付ける流体圧を当該金属基板に作用させて前記金属基板を変形させる成形工程を行なうことを特徴とする請求項4乃至7の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記成形工程では、前記機能層に対する不活性雰囲気中で、不活性ガスによって前記金属基板の他方側を加圧して前記金属基板の前記一方面側を前記成形面に押付けることを特徴とする請求項8に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記成形工程では、前記機能層に対する不活性雰囲気中で、前記金属基板の前記一方面側を減圧して前記金属基板の前記一方面側を前記成形面に押付けることを特徴とする請求項8に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記機能層は、前記金属基板の他方面側に形成されていることを特徴とする請求項8乃至10の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−243772(P2008−243772A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86783(P2007−86783)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】