説明

発光装置およびその製造方法

【課題】発光面積が小さく、光の取り出し効率の高く、しかも、色ムラの少ない発光装置を提供する。
【解決手段】基板上に発光素子を搭載し、発光素子上に蛍光体含有樹脂層と板状光学層を搭載する。板状光学層は、発光素子の上面より大きく、蛍光体含有樹脂層は、発光素子の側面から板状光学層の端部に向かう傾斜面を有している。蛍光体含有樹脂層の蛍光体濃度は、発光素子の周囲領域の方が、発光素子の直上領域よりも低い。発光素子の側面から出射された光は、蛍光体含有樹脂層で蛍光を生じさせながら、傾斜面で反射されて上方に向かって出射される。このとき発光素子の側面から出射された光の光路は、上面から出射された光よりも長くなるが、蛍光体濃度が周囲領域の方が低いため、色むらを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子からの光を波長変換層で変換する発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子からの光の一部を蛍光体で異なる波長の光に変換し、発光素子からの光と混合して出射する発光装置が知られている。例えば、カップ内に発光素子を配置し、カップ内を蛍光体含有樹脂で充填する構造や、カップの開口部のみを蛍光体含有樹脂層で覆う構造が知られている。また、発光素子の周囲を蛍光体含有樹脂層で被覆する構造も知られている。
【0003】
一方、発光装置(光源)からの出射光をレンズやリフレクタ等の光学系で制御する光学装置では、小型な光学系で有効に光を利用するために、発光面積の小さい発光装置(光源)を用いることが望ましい。
【0004】
特許文献1には、キャビティ内の底部を光反射性の充填物質で満たすことにより、開口の小さいキャビティ内に、充填物質の上面で湾曲した反射面を形成する構成が開示されている。
【0005】
特許文献2では、発光素子の上面に波長変換層を搭載し、発光素子および波長変換層の側面を反射部材で覆った構造が開示されている。発光素子および波長変換層の側面を反射部材で覆うことにより、発光素子および波長変換層の側面方向に放射しようとする光を側面で反射し、上面から出射させることができるため、発光面積を小さくでき、正面方向の輝度を向上させることができる。
【0006】
特許文献3の図15には、開口を有するケーシングボディ内に、複数の発光素子を所定の間隔で配列し、発光素子の上面に波長変換材を搭載し、開口を拡散層で覆った構成が開示されている。また、特許文献3の図16には、開口を波長変換層で覆った構成が開示されている。
【0007】
一方、特許文献4および5には、発光素子の上面もしくは、発光素子の上面および側面を蛍光体含有樹脂で覆い、蛍光体含有樹脂の内部の蛍光体粒子を発光素子の上面もしくは、発光素子の周囲の基板上に沈降させた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−40099号公報
【特許文献2】特開2009−218274号公報
【特許文献3】特開2008−507850号公報(図15、図16参照)
【特許文献4】特開2008−103688号公報
【特許文献5】特開2009−135136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1および3のように、発光素子をキャビティやケーシングボディの開口内に配置する構成は、キャビティの開口部が発光面となる。このため、発光面のサイズは、加工可能なキャビティの大きさによって決まるが、小さなキャビティを作成することは容易ではない。
【0010】
一方、特許文献2に記載された、発光素子および波長変換層の側面に反射部材が垂直壁になるように配置した構成は、素子または波長変換層の側面から出射される光を反射部材によって反射することで、発光面を小さくし、正面輝度を向上させている。しかし、発光素子の側面において反射部材で反射された光は、発光素子の内部に戻され、発光素子の半導体層によって吸収される。このため、発光される全光束量が低下するという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、発光面積が小さく、光の取り出し効率の高く、しかも、色ムラの少ない発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様によれば、以下のような発光装置が提供される。すなわち、基板と、該基板上に搭載された発光素子と、発光素子上に配置された蛍光体含有樹脂層と、蛍光体含有樹脂層の上に搭載された板状光学層とを有する発光装置であって、板状光学層は、発光素子の上面より大きく、蛍光体含有樹脂層は、発光素子の側面から板状光学層の端部に向かう傾斜面を有する。蛍光体含有樹脂層の蛍光体濃度は、発光素子の周囲領域の方が、発光素子の直上領域よりも低い。
【0013】
上記発光素子の直上領域の蛍光体含有樹脂層に含有される蛍光体濃度は、発光素子の上面に接する下層部の方が、板状光学層に接する上層部よりも大きい構成にすることが可能である。
【0014】
上記板状光学層は、蛍光体含有樹脂層に接する側の面の粗さが、発光素子の直上領域よりも発光素子の周囲領域の方が粗い構成にすることが可能である。
【0015】
また、本発明の第2の態様によれば、以下のような発光装置の製造方法が提供される。すなわち、基板上に配置された発光素子の上に、未硬化の樹脂に蛍光体を分散させたものを塗布する工程と、樹脂中の蛍光体を沈降させる工程と、発光素子の上面より大きい板状光学層を、樹脂の上に搭載することにより、樹脂を発光素子の周囲に広げ、発光素子の側面と板状光学層の端面を結ぶ傾斜した側面を有する蛍光体含有樹脂層を未硬化の樹脂の表面張力により形成する工程とを有する発光装置の製造方法である。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、以下のような発光装置の製造方法が提供される。すなわち、未硬化の樹脂に蛍光体を異なる濃度で分散させた2種類の蛍光体分散樹脂を用意し、基板上に配置された発光素子の上に、2種類の蛍光体分散樹脂のうち蛍光体濃度の大きいものを塗布し、その上に蛍光体濃度の薄いものを塗布する工程と、発光素子の上面より大きい板状光学層を、樹脂の上に搭載することにより、樹脂を発光素子の周囲に広げ、発光素子の側面と板状光学層の端面を結ぶ傾斜した側面を有する蛍光体含有樹脂層を未硬化の樹脂の表面張力により形成する工程とを有する発光装置の製造方法である。
【0017】
本発明の第4の態様によれば、以下のような発光装置の製造方法が提供される。すなわち、基板上に配置された発光素子の上に、未硬化の樹脂に蛍光体を分散させたものを塗布する工程と、外形が発光素子の上面より大きく、下面の外周領域が中央領域よりも粗さの粗い板状光学層を、樹脂の上に搭載することにより、樹脂を粗さの粗い外周領域に濡れ広がらせ、発光素子の側面と板状光学層の端面を結ぶ傾斜した側面を有する蛍光体含有樹脂層を未硬化の樹脂の表面張力により形成する工程とを有する発光装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発光素子の側面から出射された光を発光素子の内部に戻さず、蛍光体含有樹脂層の傾斜面で反射することができるため、光の取り出し効率が向上する。発光面は板状光学層の上面であるため、小型化できる。さらに、発光素子の側面に接する蛍光体含有樹脂層の蛍光体粒子の密度を、発光素子の直上部の蛍光体含有樹脂層の蛍光体粒子の密度よりも小さくしているため、発光される光の色ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態の発光装置の断面図。
【図2】(a)図1の発光装置の蛍光体含有樹脂層13の蛍光体133の分布を模式的に示す断面図。(b)比較例の蛍光体含有樹脂層の蛍光体の一様な分布を模式的に示す断面図。
【図3】(a)〜(f)第1の実施形態の発光装置の製造工程を示す説明図。
【図4】第3の実施形態の板状光学層14の粗面領域を示す下面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態の発光装置について説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1に、第1の実施形態の発光装置の断面図を示す。この発光装置は、発光素子11側面に近い位置に、光取り出しのための反射面を備えるとともに、蛍光体含有樹脂層13に含有される蛍光体濃度を発光素子11の直上部と発光素子11の周囲とで異ならせたものである。以下、具体的に説明する。
【0022】
図1のように、上面に配線が形成されたサブマウント基板10の上には、フリップチップタイプの発光素子11が搭載されている。本実施形態では、発光素子11が複数である場合について説明するが、発光素子11が一つであっても構わない。発光素子11が複数の場合は、所定の間隔で搭載されている。図1には、図示の都合上、発光素子11が2つの場合を示しているが、3以上の発光素子11を配置することも可能である。
【0023】
発光素子11は、複数のバンプ12によりサブマウント基板10に実装されている。発光素子11の上面には、蛍光体含有樹脂層13が配置されている。また、蛍光体含有樹脂層13は、発光素子11の側面の少なくとも一部を覆っている。
【0024】
蛍光体含有樹脂層13の上には、発光素子11の上面よりも若干大きな板状光学層14が搭載されている。発光素子11が複数である場合には、複数の発光素子11の全体を覆う大きさの板状光学層14を用いる。
【0025】
蛍光体含有樹脂層13は、発光素子11の発する光により励起されて所定波長の蛍光を発する蛍光体(例えばYAG蛍光体)を、発光素子11の発光および蛍光に対して透明な樹脂(例えばシリコーン樹脂)に分散させたものである。蛍光体含有樹脂層13には、蛍光体の他に、所定の粒径のビーズや、拡散材等を含有させることも可能である。例えば、蛍光体の最大粒径よりも粒径の大きなビーズを含有させることにより、ビーズは発光素子11の上面と板状光学層14との間に挟まれてスペーサーの役割を果たし、蛍光体含有樹脂層13の膜厚を決定する。
【0026】
板状光学層14は、発光素子11の発光および蛍光に対して透明な材料を用いる。もしくは、板状光学層14として、発光素子11の発光により励起され所定波長の蛍光を発する蛍光体プレート、蛍光セラミックならびに蛍光ガラスを用いることも可能である。
【0027】
発光素子11の外側には、枠体16が配置され、発光素子11と枠体16との間の空間は反射材料層15により充填されている。反射材料層15は、発光素子11と蛍光体含有樹脂層13と板状光学層14の外周側面を覆っている。また、反射材料層15は、バンプ12の間を埋めるように、発光素子11の底面と基板10の上面との間の空間も充填している。
【0028】
反射材料層15は、非導電性で反射率の高い材料、例えば、酸化チタンや酸化亜鉛等の反射性のフィラーを分散させた樹脂によって形成する。枠体16は、例えばセラミックリングを用いる。
【0029】
サブマウント基板10は、例えば、Auなどの配線パターンが形成されたAlNセラミックス製の基板を用いる。バンプ12としては、例えばAuバンプを用いる。発光素子11としては、所望の波長光を出射するものを用意する。例えば、青色光を発するものを用いる。
【0030】
蛍光体含有樹脂層13の形状は、発光素子11の側面と板状光学層14の端部とを結ぶ傾斜した側面(傾斜面130)を有する。また、発光素子11が複数である場合、隣接する発光素子11の間の領域では、湾曲面131を形成している。この傾斜面130および湾曲面131は、発光素子11の側面に接近しており、図1に示すように、発光素子11から側面方向に出射される光の一部を上方に向けて反射する。
【0031】
また図2(a)のように、蛍光体含有樹脂層13は、含有する蛍光体133の濃度が主平面方向に均一ではなく、発光素子11の周囲領域Bの蛍光体133の濃度が、発光素子11の直上領域Aの蛍光体濃度よりも低くなるように構成されている。また、発光素子11の直上領域Aの蛍光体133は沈降して、発光素子11の上面近傍に位置している。
【0032】
本発光装置の各部の作用について説明する。図1のように発光素子11の上面から上方へ出射される光は、蛍光体含有樹脂層13を透過する。その際、一部の光は、蛍光体に吸収され、蛍光が発せられる。発光素子11の出射光と蛍光は、板状光学層14を透過して、板状光学層14の上面(発光面)から出射される。
【0033】
発光素子11の側面から出射される光は、図1のように蛍光体含有樹脂層13に入射し、反射材料層15と蛍光体含有樹脂層13との境界の傾斜面130および湾曲面131によって上方に反射され、板状光学層14を通過して上面から出射される。これにより、発光素子11の側面から出射される光の多くは、発光素子11の内部に戻らないため、発光素子11によって吸収されない。また、発光素子11の側面と反射材料層15までの距離は短いため、蛍光体含有樹脂層13による吸収の影響もほとんど受けない。
【0034】
発光素子11の下面から出射される光は、発光素子11の底面で反射材料層15により反射されて上方に向かい、蛍光体含有樹脂層13および板状光学層14を通過して上面から出射される。
【0035】
このように、図1の発光装置は、発光素子11から出射された光を、各発光素子11の側面の周囲に近接して形成された傾斜面130および湾曲面131によって反射して上方から出射することができる。すなわち、発光素子11の周囲に傾斜面130によりキャビティを形成しているため、上方からの光の取り出し効率を向上させることができる。特に、発光素子11の側面から出射された光の多くは、発光素子11の内部に戻されることなく、蛍光体含有樹脂層13を短い距離だけ通過した後、反射材料層13により反射されて上方に向かうため、光の取り出し効率が向上する。
【0036】
このとき、図1からも明らかなように発光素子11の側面から出射される光が蛍光体含有樹脂層13を通過して上面から出射されるまでの光路長は、発光素子11の上面から出射される光が蛍光体含有樹脂層13を通過して上面から出射される光路長よりも長くなる。このため、比較例として示す図2(b)のように、蛍光体含有樹脂層13に含有される蛍光体濃度が均一である場合には、発光素子11の直上領域Aより周囲領域Bの方が、励起される蛍光体が多くなり、周囲領域Bで発せられる蛍光強度が、直上領域Aよりも大きくなる。これにより、周囲領域Bと直上領域Aとで色度の差(色むら)が生じる。一方、本実施形態では、図2(a)を用いて上述したように、発光素子11の周囲領域Bの蛍光体濃度を、直上領域Aの蛍光体濃度よりも低くしているため、周囲領域Bから発せられる蛍光強度を低減することができる。これにより、周囲領域Bと直上領域Aとの色度の差(色むら)を低減することができるため、板状光学層14の上面から一様な色度の光を出射することができる。
【0037】
なお、周囲領域Bの蛍光体濃度と直上領域Aの蛍光体濃度の比は、発光される光の色むらを確認して許容できる範囲に決定する。
【0038】
また、傾斜面130により形成されるキャビティは小径であるため、発光面積が小さくでき、小型の発光装置が提供される。よって、レンズ等の他の光学素子との結合効率が高くなる。
【0039】
本実施形態の発光装置では、蛍光体133が発光素子11の上面に沈降しているため、発光素子11の上面での蛍光体133の厚みを均一にすることができる。よって、発光素子11の直上部における発光の色ムラを低減できる。
【0040】
また、蛍光体133が沈降により発光素子11の上面に接しているため、蛍光体133が発する熱を発光素子11に効率よく伝導することができる。よって、蛍光体133の温度消光を防止できるという効果も得られる。
【0041】
本実施形態の発光装置では、発光素子11の底面側にも反射材料層15で充填することにより、発光素子11の底面と基板10の上面との間で光が繰り返し反射されて減衰するのを防止できるため、上方への光の取り出し効率を向上させることができる。
【0042】
なお、傾斜面130の形状は、図1のように平面の傾斜面に限られるものではなく、発光素子の内側に向かって凸の曲面に形成することも可能である。傾斜面130を凸の曲面に形成する場合、その曲率が5以下であることが望ましい。
【0043】
傾斜面130の下端は、必ずしも図1および図2のように発光素子11の底面と同じ高さにある必要はなく、少なくとも発光素子11の側面にあればよい。また、発光素子11は、基板10にフリップチップ実装されることが好ましい。フリップチップ実装の場合、発光面が発光素子の底面に近い位置にあるため、傾斜面130による反射を最も利用することができるためである。
【0044】
つぎに、本実施形態の発光装置の製造方法について図3(a)〜(f)を用いて説明する。まず、図3(a)のように、サブマウント基板10の上面の配線パターンに、複数のフリップチップタイプの発光素子11を所定の間隔で搭載し、バンプ12を用いて実装する。
【0045】
図3(b)のように、発光素子11の上面に、蛍光体を分散させた樹脂(未硬化)13’をディスペンサ等で適量だけポッティング(滴下)する。この状態で未硬化の蛍光体分散樹脂13’を、樹脂の粘度が低下する温度で、かつ、硬化しない温度まで加熱することにより、図3(c)のように蛍光体133を沈降させる。例えば、50〜80℃までホットプレートや高温槽で加熱する。もしくは、温度を上昇させずに、所定時間放置(例えば150分以上)することにより、蛍光体133を沈降させることも可能である。
【0046】
つぎに、図3(d)のように、未硬化の蛍光体分散樹脂13’に大きな衝撃を与えないように、コレットチャック135等を用いて板状光学層14をゆっくり接近させて蛍光体分散樹脂13’上に搭載し、板状光学層14の自重により蛍光体分散樹脂13’の上層部の蛍光体濃度の低い樹脂を押し広げる。これにより、板状光学層14の下面全体に樹脂が濡れ広がるとともに、発光素子11の側面にも樹脂が濡れ広がり、発光素子11の側面と板状光学層14の下面を接続する傾斜面130が表面張力により形成される。また、隣合う発光素子11の間隙においても、メニスカス形状の湾曲面131が形成される。
【0047】
このようにして形成した蛍光体分散樹脂13’は、蛍光体を沈降させた後、蛍光体濃度の低い上層部の樹脂を周囲に押し広げているため、発光素子11の周囲領域Bの蛍光体濃度が、発光素子11の直上領域Aの蛍光体濃度よりも低くなっている。しかも、蛍光体の沈降度合いを制御することにより、周囲領域Bに押し出される蛍光体133の量を制御できるため、周囲領域Bの蛍光体濃度を制御することができる。
【0048】
その後、蛍光体分散樹脂13’を所定硬化処理により硬化させ、蛍光体含有樹脂層13を形成する。なお、この後の工程で蛍光体含有樹脂層13の形状が変わらないのであれば、完全に硬化させず、半硬化となる条件で硬化させても良い。
【0049】
つぎに、図3(e)のように、基板10上面に枠体16を樹脂等で接着する。図3(f)のように、発光素子11、蛍光体含有樹脂層13および板状光学層14と、枠体16との間に、ディスペンサなどで反射材料(未硬化)を注入する。この際、発光素子11の下部のバンプ12の周囲にも反射材料が十分充填されるように注入する。蛍光体含有樹脂層13の傾斜面130および湾曲面131にも、反射材料(未硬化)が隙間なく密着するように充填する。最後に、反射材料を所定の硬化処理により硬化させ、反射材料層15を形成する。以上により、本実施形態の発光装置が製造される。
【0050】
このように本実施形態の製造方法によれば、蛍光体の沈降現象を利用することにより、発光素子11の周囲領域Bの蛍光体濃度が、発光素子11の直上領域Aの蛍光体濃度よりも低くなるように蛍光体含有樹脂層を形成することができる。これにより、比較的容易に、発光素子の周囲および間隙で色むらの少ない発光装置を製造することができる。
【0051】
また、蛍光体含有樹脂層の表面張力を利用して、傾斜面130および湾曲面131を形成できる。
【0052】
なお、板状光学層14は、上面および下面のいずれか一方、または両方に粗面を設けることも可能である。粗面で光散乱を生じさせることにより、色むらをさらに低減することができる。ただし、板状光学層14の上面を粗面にする場合、粗面を設ける領域のサイズ、粗面の粗さ、粗面を構成する凹凸の形状・密度などを調整し、蛍光体含有樹脂層13や反射材料層15を形成する工程で未硬化樹脂が板状光学層14の上面に這い上がってこないようにすることが望ましい。
【0053】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、沈降とは別の手法を用いて、未硬化の蛍光体含有樹脂の上層に蛍光体濃度の低い樹脂を形成する。
【0054】
具体的には、図3(b)の工程において、蛍光体含有濃度の高い未硬化樹脂と、蛍光体含有濃度の低い未硬化樹脂の2種類を用意する。まず、蛍光体含有濃度の高い未硬化樹脂を発光素子11の上面にディスペンス等により塗布し、その上に蛍光体含有濃度の低い未硬化樹脂をさらに塗布する。これにより、図3(c)のように、上層部の蛍光体含有濃度の低い蛍光体含有樹脂13’を形成することができる。
【0055】
この手法は、蛍光体濃度の異なる蛍光体含有樹脂を2種類用意する必要があるが、沈降のために加熱したり、長時間放置する必要がないため、製造時間を短縮できるというメリットがある。
【0056】
他の製造工程および完成後の発光装置の構造、作用効果については第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0057】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、図3(c)の工程で、未硬化の蛍光体含有樹脂の蛍光体濃度を層厚方向に分布させることなく、発光素子11の周囲領域Bの蛍光体濃度を直上領域Aよりも低下させる。
【0058】
すなわち、本実施形態では、図4に示すように、板状光学層14として、下面の外周領域14bを粗面にしたものを用いる。外周領域14bは、図2の蛍光体含有樹脂層13の周囲領域Bに接する領域である。
【0059】
板状光学層14の外周領域14bを粗面にすることにより、図3(b)の工程で蛍光体が分散した未硬化の樹脂13’を塗布した後、図3(c)の沈降工程を行うことなく、図3(d)の工程で板状光学層14を搭載することにより、外周領域14bの粗面に未硬化の樹脂が濡れ広がり、蛍光体濃度を低い周囲領域Bを形成することができる。これは、粗面を樹脂が濡れ広がる際に、毛細管現象により未硬化の樹脂のみが広がりやすく、蛍光体133の広がりが抑制されるためである。板状光学層14の外周領域14bの粗面の粗さを調節することにより、蛍光体133の周囲への広がり易さを制御することができるので、蛍光体含有樹脂層13の周囲領域Bの蛍光体濃度を制御できる。
【0060】
なお、板状光学層14の中央領域14a(素子11の直上領域Aに対応)についても粗面にすることが可能である。この場合、中央領域14aの粗さよりも外周領域14bの粗さを粗くすることにより、上記と同様の効果により蛍光体濃度を低い周囲領域Bを形成できる。
【0061】
板状光学層14の粗面を中央領域14aと外周領域14bとで異ならせる構成は、第1および第2の実施形態のように蛍光体含有樹脂の蛍光体濃度を層厚方向に分布させる構成と併用してもかまわない。
【符号の説明】
【0062】
10…サブマウント基板、11…発光素子、12…バンプ、13…蛍光体含有樹脂層、14…板状光学層、15…反射材料層、16…外枠、130…傾斜面、131…湾曲面、133…蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に搭載された発光素子と、前記発光素子上に配置された蛍光体含有樹脂層と、前記蛍光体含有樹脂層の上に搭載された板状光学層とを有し、
前記板状光学層は、前記発光素子の上面より大きく、前記蛍光体含有樹脂層は、前記発光素子の側面から前記板状光学層の端部に向かう傾斜面を有し、
前記蛍光体含有樹脂層の蛍光体濃度は、前記発光素子の周囲領域の方が、前記発光素子の直上領域よりも低いことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、前記発光素子の直上領域の前記蛍光体含有樹脂層に含有される蛍光体濃度は、前記発光素子の上面に接する下層部の方が、前記板状光学層に接する上層部よりも大きいことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発光装置において、前記板状光学層は、前記蛍光体含有樹脂層に接する側の面の粗さが、前記発光素子の直上領域よりも前記発光素子の周囲領域の方が粗いことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
基板上に配置された発光素子の上に、未硬化の樹脂に蛍光体を分散させたものを塗布する工程と、
前記樹脂中の蛍光体を沈降させる工程と、
前記発光素子の上面より大きい板状光学層を、前記樹脂の上に搭載することにより、前記樹脂を前記発光素子の周囲に広げ、前記発光素子の側面と前記板状光学層の端面を結ぶ傾斜した側面を有する蛍光体含有樹脂層を前記未硬化の樹脂の表面張力により形成する工程とを有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項5】
未硬化の樹脂に蛍光体を異なる濃度で分散させた2種類の蛍光体分散樹脂を用意し、基板上に配置された発光素子の上に、前記2種類の蛍光体分散樹脂のうち蛍光体濃度の大きいものを塗布し、その上に蛍光体濃度の薄いものを塗布する工程と、
前記発光素子の上面より大きい板状光学層を、前記樹脂の上に搭載することにより、前記樹脂を前記発光素子の周囲に広げ、前記発光素子の側面と前記板状光学層の端面を結ぶ傾斜した側面を有する蛍光体含有樹脂層を前記未硬化の樹脂の表面張力により形成する工程とを有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項6】
基板上に配置された発光素子の上に、未硬化の樹脂に蛍光体を分散させたものを塗布する工程と、
外形が前記発光素子の上面より大きく、下面の外周領域が中央領域よりも粗さの粗い板状光学層を、前記樹脂の上に搭載することにより、前記樹脂を前記粗さの粗い外周領域に濡れ広がらせ、前記発光素子の側面と前記板状光学層の端面を結ぶ傾斜した側面を有する蛍光体含有樹脂層を前記未硬化の樹脂の表面張力により形成する工程とを有することを特徴とする発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−156180(P2012−156180A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11820(P2011−11820)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】