説明

発光装置の検査方法及び作製方法

【課題】電荷発生層もしくは中間層によって仕切られた複数のEL層を一対の電極間に設けた発光素子が有する、短絡に至っていない潜在的な欠陥を検出する方法を提供することを課題とする。また、当該潜在的な欠陥を絶縁化して発光装置を作製する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】複数のEL層が電荷発生層によって仕切られた厚い層を一対の電極間に有する発光素子に導電性の異物が混入した部位は、正常な部位が発光開始する電圧より低い電圧で強く発光する。本発明の一態様は、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子に順方向に電圧を印加し、正常な部位が発光を開始する電圧よりも低い電圧で、1(cd/m)以上の輝度で光る異常な発光部位を検出する。また、当該部位にレーザ光を照射して絶縁化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の潜在的な欠陥を検出する検査方法、及び当該潜在的な欠陥を絶縁化して発光装置を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネッセンス(Electro luminescence、以下、ELとも記す)を利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これらの発光素子は一対の電極間に発光性の物質を含む層を挟んだ構成を有し、その一対の電極間に電圧を印加して、発光性の物質から発光を得るものである。
【0003】
エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子は、薄型軽量に作製できること、非常に応答速度が速いこと等が大きな特徴であり、利点である。このような自発光型の発光素子には様々な用途が考えられる。例えば、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く、バックライトが不要である等の特徴は、当該発光素子がフラットパネルディスプレイに好適であると言える。
【0004】
また、これらの発光素子は膜状に形成することが可能であるため、大きな面積を有する面状の発光を容易に得ることができる。このことは、白熱電球やLED(Light Emitting Diode)に代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
そのエレクトロルミネッセンスを利用した発光素子は、発光性の物質が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって大別できる。有機化合物を発光性の物質に用いた発光素子の発光原理を説明する。まず、発光素子の一対の電極間に電圧を印加することにより、当該一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入される。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成後、基底状態に戻る際に発光する。
【0006】
ところで、エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子のEL層は非常に薄い。EL層が薄いため、発光素子の一対の電極間に導電性の異物が混入した場合、一対の電極は短絡し易い。短絡の発生は発光素子の破壊や、発熱による発光素子の劣化や、リーク電流による消費電力の増大等の不具合を招く。
【0007】
そこで、エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子の欠陥を検出し、欠陥にレーザ光を照射して絶縁化する方法及び装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0008】
一方、エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子の発光輝度を高めるには、EL層に流す電流密度を高めればよい。しかし、大電流を流すために駆動電圧を高めれば消費電力は増大するばかりである。また、EL層に大電流を流せば、発光素子の劣化を早めることにもなる。
【0009】
そこで、複数のEL層を積層した発光素子が提案されている。特許文献2では、複数の発光ユニット(以下、本明細書においてEL層とも表記する)を有し、各発光ユニットが電極と同様にキャリアをEL層に供給する電荷発生層によって仕切られた発光素子を開示している。本明細書中では、電荷発生層は電極と同等のものであるものとし、互いに隣接する電荷発生層または電極に挟まれる領域を1つのEL層として数える。より具体的には、第1の発光ユニットの電子注入層として機能する金属ドーピング層上に5酸化バナジウムよりなる電荷発生層が設けられ、さらに当該電荷発生層上に第2の発光ユニットが設けられた構造の発光素子を開示している。特許文献2で開示される発光素子は、同じ電流密度で発光素子に電流を流した際に、1つのEL層を有する発光素子と比較して、高輝度発光することが可能である。また、一つのEL層を有する発光素子に比べ省電力で同じ輝度の発光を得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−260857号公報
【特許文献2】特開2003−272860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
複数のEL層を電荷発生層もしくは中間層により仕切って形成した積層膜は、一つのEL層で構成される発光素子のものに比べ厚い。厚い積層膜を一対の電極間に有する発光素子は一つのEL層で構成される発光素子に比べて導電性の異物が混入しても短絡し難い。しかし、導電性の異物が混入した部位は潜在的な欠陥であり、当該部位が異常発光する。そして、特性の変化が激しく、長期の使用で短絡に至る等、不具合が顕在化する恐れが強くなる。
【0012】
また、従来の顕在化した欠陥を検出する方法ではこのような潜在的な欠陥を検出し難いという問題があった。
【0013】
本発明は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって、その目的は、一対の電極間に電荷発生層もしくは中間層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子、言い換えると、一対の電極間に電荷発生層(もしくは中間層)と交互にEL層を2つ以上重ねて設けた発光素子が有する、短絡に至っていない潜在的な欠陥を検出する方法を提供することを課題の一とする。当該潜在的な欠陥を絶縁化して発光装置を作製する方法を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
複数のEL層が電荷発生層によって仕切られた厚い層を一対の電極間に設けた発光素子に導電性の異物が混入した部位は、正常な部位よりも低い電圧で強く発光する特徴を有する。言い換えると、一対の電極間に電荷発生層と交互にEL層を2つ以上重ねて設けた発光素子において、導電性の異物が混入した部位は、正常な部位よりも低い電圧で強く発光する特徴を有する。
【0015】
従って、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子、言い換えると、一対の電極間に電荷発生層と交互にEL層を2つ以上重ねて設けた発光素子に順方向に電圧を印加し、正常な部位よりも低い電圧で発光を開始する部位を検出すれば、潜在的な欠陥部位を検出できる。そして、当該部位にレーザ光を照射して当該部位を絶縁化すればよい。
【0016】
すなわち、本発明の一態様は、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子に、発光素子の光取り出し面において実質的に全面が1(cd/m)以上の輝度で発光する発光開始電圧未満の電圧を発光素子の順方向に印加し、発光素子の光取り出し面において1(cd/m)以上の輝度で発光を呈する異常発光部位を検出する発光素子の検査方法である。
【0017】
また、本発明の一態様は、電荷発生層によって仕切られた発光色が異なる複数のEL層を一対の電極間に設けた発光素子に、発光素子の光取り出し面において実質的に全面が1(cd/m)以上の輝度で発光する電圧を発光素子の順方向に印加し、発光素子の光取り出し面において色度が異なる異常発光部位を検出する発光素子の検査方法である。
【0018】
また、本発明の一態様は、発光素子の光取り出し面において実質的に全面が1(cd/m)以上の輝度で発光する発光開始電圧未満の電圧を発光素子の順方向に印加し、発光素子の光取り出し面において1(cd/m)以上の輝度の発光を呈する異常発光部位にレーザ光を照射し絶縁化する工程からなる、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子の作製方法である。
【0019】
また、本発明の一態様は、発光素子の光取り出し面において実質的に全面が1(cd/m)以上の輝度で発光する電圧を発光素子の順方向に印加し、発光素子の光取り出し面において色度が異なる異常発光部位にレーザ光を照射し絶縁化する工程からなる、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子の作製方法である。
【0020】
また、本発明の一態様は、上記方法を用いて異常発光部位を検出工程と、異常発光部位にレーザ光を照射する工程を有し、異常発光部位の検出工程の観察画像の解像度に比べ、レーザ光を照射する工程の観察画像の解像度が高いことを特徴とする一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子の作製方法である。
【0021】
また、本発明の一態様は、上記方法を用いて異常発光部位の検出工程と、異常発光部位にレーザ光を照射する工程を有し、異常発光部位の検出工程の観察画像の解像度の100倍以上、10,000倍以下の高解像度で、レーザ光を照射する工程の観察画像の解像度が高いことを特徴とする一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子の作製方法である。
【0022】
なお、本明細書において、エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子の電極もしくは中間層で挟まれるように設けられた層であって、少なくとも発光性の物質を含む層を有する層をEL層と呼ぶ。
【0023】
また、本明細書において、2つのEL層の間に接して形成する層であって、一方のEL層に正孔を注入し、他方のEL層に電子を注入する機能を有する層を中間層と呼ぶものとする。したがって、電荷発生層は中間層の一態様と呼ぶこともできる。なお、中間層は単層であっても複数の層の積層であってもよい。
【0024】
また、本明細書において、発光素子の光取り出し面が実質的全面に1(cd/m)以上の輝度で発光を始める、発光素子に加わる電圧を発光開始電圧と呼ぶものとする。
【0025】
また、本明細書において、物質Aを他の物質Bからなるマトリクス中に分散する場合、マトリクスを構成する物質Bをホスト材料と呼び、マトリクス中に分散される物質Aをゲスト材料と呼ぶものとする。なお、物質A並びに物質Bは、それぞれ単一の物質であっても良いし、2種類以上の物質の混合物であっても良いものとする。
【0026】
なお、本明細書中において、発光装置とは画像表示デバイス、もしくは光源(照明装置を含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子が形成された基板にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子が有する短絡に至っていない潜在的な欠陥を検出する方法を提供できる。また、当該潜在的な欠陥を絶縁化して発光装置を作製する方法及び当該方法を用いた発光装置の作製装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態に係わる発光素子の構造を説明する図。
【図2】実施の形態に係わる発光素子の構造を説明する図。
【図3】実施の形態に係わる発光素子を説明する図。
【図4】実施の形態に係わる異常発光する部位の検出及び修正装置を説明する図。
【図5】実施の形態に係わる異常発光する部位の検出方法を説明する図。
【図6】実施の形態に係わる異常発光する部位の修正方法を説明する図。
【図7】実施の形態に係わる発光素子の構造を説明する図。
【図8】実施の形態に係わる発光装置の構造を説明する図。
【図9】実施の形態に係わる発光装置の構造を説明する図。
【図10】実施の形態に係わる電子機器を説明する図。
【図11】実施の形態に係わる照明装置を説明する図。
【図12】実施の形態に係わる照明装置を説明する図。
【図13】実施の形態に係わる照明装置及び発光装置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態では、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子に生じる、短絡に至っていない潜在的な欠陥を検出する方法について説明する。
【0031】
一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子について、図1(A)を用いて説明する。当該発光素子は、第1の電極1001と第2の電極1002を有し、両電極間にn(nは2以上の自然数)層のEL層1003を有し、m(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層と(m+1)番目のEL層との間に、それぞれ電荷発生層1004を有する。
【0032】
また、第1の電極1001と第2の電極1002の少なくともどちらか一方は、透光性を有する導電膜を用いて形成する。
【0033】
一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子の発光機構について説明する。ここでは、図2(A)に例示した一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた2層のEL層を設けた発光素子1100を用いて当該機構を説明する。
【0034】
発光素子1100は第1のEL層1103a、第2のEL層1103b、電荷発生層1104、第1の電極1101及び第2の電極1102を有する。第1のEL層1103aは一方の面が第1の電極1101に接し、他方の面が電荷発生層1104に接している。電荷発生層1104は第1のEL層1103aと第2のEL層1103bの間に設けられ、第2のEL層1103bは一方の面が電荷発生層1104に接し、他方の面が第2の電極1102に接している。
【0035】
発光素子1100の第1の電極1101を第2の電極1102より高い電位になるよう電圧Eを加える。すなわち、第1の電極1101は陽極として機能し、第2の電極1102は陰極として機能する。充分高い電圧を印加すると、第1のEL層1103aにおいて第1の電極1101から注入した正孔と、電荷発生層1104から注入した電子が再結合し、生じたエネルギーにより第1のEL層1103a中の発光性物質が発光する。また、第2のEL層1103bにおいて電荷発生層1104から注入した正孔と、第2の電極1102から注入した電子が再結合し、生じたエネルギーにより第2のEL層1103b中の発光性物質が発光する。
【0036】
第1のEL層1103aおよび第2のEL層1103bが発する光は透光性を有する導電膜で形成された第1の電極1101または第2の電極1102のいずれか一方、または両方から取り出される。例えば、第1の電極1101のみが透光性を有する電極である場合には、発光は第1の電極1101を通って取り出される。また、第2の電極1102のみが透光性を有する電極である場合には、発光は第2の電極1102を通って取り出される。さらに、第1の電極1101および第2の電極1102がいずれも透光性を有する電極である場合には、発光は第1の電極1101および第2の電極1102を通って両方から取り出される。
【0037】
次に、一対の電極間にEL層を一つ設けた発光素子と、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子の特性について比較して説明する。
【0038】
一対の電極間にEL層を一つ設けた発光素子1300の構成を図3(A)に示す。発光素子1300は、第1の電極1301と、第2の電極1302と、発光性の有機化合物を含むEL層1303aを有している。
【0039】
また、一対の電極間に電荷発生層で仕切られた2つのEL層を設けた発光素子1400の構成を図3(B)に示す。発光素子1400は、第1の電極1401と、第2の電極1402と、発光性の有機化合物を含むEL層1403a及び1403bと、電荷発生層1404を有している。ここでは、EL層1403a及び1403bは、発光素子1300が備えるEL層1303aとおなじ構成を有するEL層である場合について説明する。もちろん、発光素子1400のEL層1403aと1403bは異なる構成のEL層であってもよい。
【0040】
発光素子1400において、第1の電極1401と電荷発生層1404でEL層1403aを挟んだ第1の領域1400aと、電荷発生層1404と第2の電極1402でEL層1403bを挟んだ第2の領域1400bは、それぞれ独立した発光素子と見なすことができる。言い換えると、発光素子1400は第1の領域1400aと第2の領域1400bを直列に接続したものである。
【0041】
発光素子1300の電圧−輝度特性の一例を図3(C)の曲線Sに示す。一対の電極間にEL層を一つ設けた発光素子1300は、発光開始電圧Eを超えると急激に発光輝度が高まる。図3(C)の曲線Sで示す素子は、発光開始電圧Eにおいて1(cd/m)の輝度で発光し、発光開始電圧Eの2倍の電圧において1万(cd/m)程度まで輝度が上昇する。なお、有機化合物を発光物質にもちいたエレクトロルミネッセンスを利用した発光素子が可視光を発する場合、発光開始電圧Eは少なくとも2(V)程度を要する。
【0042】
また、発光素子1400の電圧−輝度特性の一例を図3(C)の曲線Wに示す。発光素子1400の電圧−輝度特性(曲線W)は、発光素子1300の電圧−輝度特性(曲線S)に比べて、高電圧側にシフトする。例えば、EL層1403aと1403bが、発光素子1300が備えるEL層1303aとおなじ構成を有するEL層である場合、発光素子1400は発光素子1300を直列に接続した素子と見なせる。従って、発光素子1300の発光開始電圧Eの2倍の電圧を発光素子1400に加えると、EL層1403aと1403bがそれぞれ1(cd/m)の輝度で発光し、発光素子1400はおよそ2(cd/m)の輝度で発光する。
【0043】
すなわち、発光素子1300の発光開始電圧Eの2倍の電圧において、発光素子1300は1万(cd/m)程度の輝度で発光するが、発光素子1400は2(cd/m)で発光する。このように、一対の電極間にEL層を一つ設けた発光素子と、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子の印加電圧−発光輝度特性には、極端な違いが認められる。
【0044】
なお、発光素子1300の発光開始電圧Eの2倍の電圧を発光素子1400に印加した際に流れる電流は、発光開始電圧Eを発光素子1300に印加した際に流れる電流とほぼ同じである。従って、発光素子1400は発光素子1300に比べ、発光の電流効率を約2倍にする効果を有している。
【0045】
次に、電荷発生層によって仕切られた2つのEL層のうち一方が導電性の異物を含んでいる発光素子について、図2(B)及び図2(C)を用いて説明する。
【0046】
発光素子1200は、第1のEL層1203a、第2のEL層1203b、電荷発生層1204、第1の電極1201及び第2の電極1202と導電性の異物1206を有しており、発光素子1100と同じ構成で作製したが、導電性の異物1206が混入してしまった異常な素子である。なお、導電性の異物1206が混入した状態の発生頻度は低く、例えば図2(C)のごとく正常な部位に潜在的な欠陥が点在している。
【0047】
正常な発光素子1100に電流I(A)を流す場合、第1の領域1100aには電流I(A)を流す電圧E(V)が印加されており、第2の領域1100bには電流I(A)を流す電圧E(V)が印加されている。従って、発光素子1100の第1の電極と第2の電極間にはおよそE(V)+E(V)=E(V)の電圧が印加されている。なお、発光素子1200の各EL層が可視光を発する場合、E(V)及びE(V)はそれぞれおよそ2(V)以上であって、E(V)はその和より大きい。
【0048】
一方、導電性の異物1206を含んだ発光素子1200の場合、導電性の異物1206が電荷発生層1204と第1の電極1201を短絡し、導電性の異物1206近傍の電荷発生層1204は第1の電極1201とおよそ同電位になる。
【0049】
例えば発光素子1200にE(V)の電圧を印加した場合、正常な領域の第2のEL層1203bに印加される電圧はE(V)になる。しかし、導電性の異物1206近傍の電荷発生層1204と第2の電極1202の間の第2のEL層1203bを含む領域1200cに印加される電圧E(V)は、およそE(V)よりE(V)大きいE(V)になる。なお、領域1200aが可視光を発する構成の場合、E(V)はおよそ2(V)以上である。
【0050】
このように、領域1200cの第2のEL層1203bは、周囲よりおよそ2(V)以上高い電圧が加わるため、極めて強く発光する。従って、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子において周囲より極めて強く発光する部位を検出すれば、当該発光素子の短絡に至っていない潜在的な欠陥の位置を特定できる。
【0051】
また、発光素子1200に、0(V)から発光素子1200の正常な部分の発光開始電圧までの電圧を掃引して異常発光部位を検出する方法が特に有効である。
【0052】
発光素子1200への印加電圧が発光開始電圧に達しないとき、発光素子の正常な部分の発光輝度は1(cd/m)に満たない。しかし、領域1200cの第2のEL層1203bには、導電性の異物1206が短絡しているEL層でおこる電圧降下に相当する分だけ高い電圧が印加される。その結果、輝度1(cd/m)に満たない発光状態の正常な領域を背景に、輝度1(cd/m)を大幅に越える輝度、例えば1万(cd/m)程度の輝度、で強く発光する部位が点在することになる。
【0053】
このように、周囲に比べて極めて明るく光る場所を検出することによって、潜在的な欠陥を有する部位を特定すればよい。
【0054】
具体的には、正常な発光素子の発光開始電圧E(V)を調べ、検査する発光素子に発光開始電圧E(V)未満の第1の電圧を印加する第1のステップと、1(cd/m)以上の輝度で異常発光する部位を発光素子の光取り出し面に検出する第2のステップと、検出した異常発光する部位の座標を特定する第3のステップと、1(cd/m)以上の輝度で発光している場所を検出できなかった場合に、第1の電圧より高い電圧であって、発光開始電圧E(V)未満の第2の電圧を設定する第4のステップを順次実行し、第1のステップから第4のステップまでを繰り返すことにより、潜在的な欠陥を有する部位を特定すればよい。
【0055】
以上の通り、正常な発光素子の発光開始電圧E(V)未満の電圧を被検査発光素子に印加し、1(cd/m)以上の輝度で発光する場所を検出することにより、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子が有する、短絡に至っていない潜在的な欠陥を検出することができる。
【0056】
(実施の形態2)
本実施の形態では発光素子の潜在的な欠陥の検出方法及び絶縁化方法を発光素子の作製装置と共に説明する。
【0057】
本実施の形態で例示する発光素子の作製装置の側面図を図4に示す。発光素子の作製装置500は、検査対象である発光素子560を固定及び移動する試料台510と、発光素子560の映像を捉える検出系520と、潜在的な欠陥561を修正する照射系530と、発光素子560の光学像を検出系520に送る第1の光学系541と、照射系530からの放射光を潜在的な欠陥561に送る第2の光学系542と、放射光また詳細な光学像を送り結像する第3の光学系543と、制御系550を有する。また、本実施の形態では検査対象である発光素子560を駆動する駆動装置571および外部電源572も用いる。
【0058】
発光素子560は一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子である。なお、本実施の形態において説明する電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を有する発光素子560は潜在的な欠陥を有している。
【0059】
発光素子560は発光の取り出し面を第3の光学系543に向けて試料台510の支持機構511に固定されている。また、発光素子560は発光素子を駆動する駆動装置571と接続され、端子部565と駆動装置571を介して外部電源572と接続されている。なお、駆動装置571は制御系550と接続されている。
【0060】
試料台510のX−Y面は図4の紙面に対し垂直に広がり、図4に示す矢印ZはX−Y面に垂直なZ軸を表す。試料台510は、検査対象である発光素子560を固定し保持する支持機構511と、試料台をX−Y面内及びX−Y面に対して垂直なZ軸方向に制御して移動可能な移動機構512を有する。また、移動機構512は制御系550と接続されている。移動機構512は試料台を10μmより細かく、好ましくは2μmから0.1μmの分解能で移動が可能であるものを用いる。なお、移動機構512は試料台をX−Y面内の回転や、X−Y面に対し試料を傾斜する機構を有していても良い。
【0061】
検出系520は、撮像装置521を有する。撮像装置521は第1の光学系541及び第3の光学系543を介して、発光素子560の映像を捉える。また、撮像装置521は制御系550と接続されている。
【0062】
検出系520は、発光素子560が発する光のうち少なくとも1(cd/m)以上の発光を第1の光学系541及び第3の光学系543を介して検出できればよい。従って、高感度なCCDカメラである必要はなく、比較的安価なCCDカメラであっても撮像装置521に利用できる。
【0063】
照射系530は、レーザ装置531を有する。レーザ装置531は第2の光学系542及び第3の光学系543を介して、発光素子560にレーザ光を照射する。また、レーザ装置531は制御系550と接続されている。
【0064】
また、照射系530は好ましくはレーザ装置531が照射するレーザ光の照射位置を指し示すガイド光源を有している。ガイド光源は撮像装置521で照射位置を確認できるが、レーザ光に比べて充分に強度が弱く、発光素子に照射しても発光素子に損傷を与えることはない。
【0065】
本実施の形態で用いるレーザ装置531は、発光素子の支持体もしくは封止膜または封止基板に吸収されない波長のレーザ光を選択して用いる。例えば、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどの気体レーザ、単結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y、YVO、YAlO、GdVOに、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。また、上記固体レーザから発振される第2高調波や第3高調波、さらに高次の高調波を用いることもできる。なお、レーザ媒体が固体である固体レーザを用いると、メンテナンスフリーの状態を長く保てるという利点や、レーザ光の出力が比較的に安定している利点を有している。また、ナノ秒、ピコ秒、フェムト秒等の短時間のパルスレーザが本工程に適している。短時間のパルスレーザを用いると、多光子吸収現象を引き起こす高密度のエネルギーを発光素子の異常発光する部位に与えることができる。
【0066】
第1の光学系541は検出系520の撮像装置521と接続され、第2の光学系542は照射系530のレーザ装置531と接続されている。また、第1の光学系541は第1のシャッター541sを有し、第2の光学系542は第2のシャッター542sを有する。第1のシャッター541sと第2のシャッター542sは共に制御系550に接続されている。
【0067】
第3の光学系543は第1の光学系541と第2の光学系542に接続され、例えばハーフミラー545や集光レンズ等の光学素子を有している。また、交換可能であって倍率が異なる集光レンズを有していても良い。なお、ハーフミラー545を用いて検出系520と照射系530の光軸を一致させる方法は、装置の小型化が容易なため好ましい。
【0068】
制御系550は制御装置551と表示装置552を有する。制御装置551は移動機構512と、撮像装置521と、レーザ装置531と、第1のシャッター541s及び第2のシャッター542sと、駆動装置571と、表示装置552と少なくとも接続されている。
【0069】
また、制御装置551は画像解析装置を兼ねる。
【0070】
次に、本実施の形態で例示する発光素子の作製装置500の動作の一例を説明する。
【0071】
本実施の形態の潜在的な欠陥の検出方法の一例を図5に示す。本実施の形態の潜在的な欠陥の検出方法は、検査対象となる発光素子を試料台に固定し、光学系を調整して撮影に備える第1のステップと、発光素子に試験電圧を印加する第2のステップと、発光素子の映像データを取り込む第3のステップと、映像データを解析し1(cd/m)より高い輝度で発光している部分を検出して発光素子上の位置を特定する第4ステップと、発光素子への印加電圧と1(cd/m)より高い輝度で発光している部分の位置情報を記録する第5のステップからなる。
【0072】
第1のステップでは、検査対象となる発光素子560を試料台510に固定し、移動機構512、第1の光学系541及び第3の光学系543を調整し、発光素子560の映像を検出系520で捉える。この時、好ましくは発光素子560の発光の取り出し面の全体を捉えるように、第1の光学系541及び第3の光学系543を調整する。発光素子560の広い範囲を検査することで、検査時間を短縮できる。
【0073】
第2のステップでは、制御装置551を用いて駆動装置571から発光素子560の第1の電極と第2の電極に第1の試験電圧Ed(V)を順方向に印加する。
【0074】
第1の試験電圧Ed(V)は発光素子560の正常な部位の発光開始電圧E(V)未満とする。例えば、発光素子560が電荷発生層によって仕切られたn層のEL層を有する場合、発光開始電圧E(V)をn以上分割した電圧を第1の試験電圧Ed(V)としてもよい。
【0075】
本実施の形態では、例えば、発光開始電圧E(V)を5分割して第1の試験電圧Ed(V)=E/5(V)とし、第2の試験電圧Ed(V)をE×2/5(V)とし、第3の試験電圧Ed(V)をE×3/5(V)とし、第4の試験電圧Ed(V)をE×4/5(V)とし、第5の試験電圧Ed(V)をE(V)とした。このように、発光開始電圧E(V)までの電圧を発光素子560に段階的に印加することで、潜在的な欠陥に過剰な電流を流して発光素子560を破壊する事故を避けることができる。
【0076】
また、積層した各EL層の発光開始電圧が判っている場合は、各EL層の発光開始電圧に相当する電圧を低い順に印加し、続いて、複数のEL層の発光開始電圧を組み合わせた合計の小さい順に電圧を印加してもよい。このようにすることで、潜在的な欠陥に過剰な電流を流して発光素子560を破壊することなく、短時間に異常発光の有無を検査できる。
【0077】
第3のステップでは、発光素子560に第1の試験電圧Ed(V)を印加した状態で、発光素子560の映像を制御装置551に取り込む。具体的には、第2のシャッター542sを閉鎖し、第1のシャッター541sを開放する。撮像装置521は第3の光学系543と第1の光学系541を介して、発光素子560の映像を画像信号に変換し、制御装置551に出力する。
【0078】
輝度1(cd/m)に満たない発光状態の正常な領域を背景に、輝度1(cd/m)以上、もしくは大幅に越える輝度で発光するため異常発光する部位は検出が容易である。従って、広い領域を観察して、異常発光する部位の位置を概略特定することが可能であり、効率よく検査できる。例えば、1ピクセル当たり10μm以上1mm程度の解像度で観察すればよい。
【0079】
第4のステップでは、制御装置551が画像信号を解析して、1(cd/m)以上の輝度で異常発光する部位を検出する。また、制御装置551は映像上の位置情報を移動機構512の座標情報と重ね合わせて、試料台510上の位置情報を算出する。
【0080】
第5のステップでは、印加している第1の試験電圧Ed(V)と、異常発光する部位の位置情報を共に記録する。なお、映像、輝度及び色度を記録しても良い。
【0081】
以上の5つのステップを終えた後、第2のステップに戻り、発光素子560に印加する電圧を第2の試験電圧Ed(V)に変更する。以後、駆動電圧をEd(V)からEd(V)まで階段状に高めながら、ステップ2からステップ5を繰り返し、発光開始電圧未満で異常発光する部位の位置情報を記録する。このようにして記録した、試験電圧と異常発光する部位562a乃至562eの位置情報を図5(B)に模式的に示す。
【0082】
また、第1のステップにて、発光素子560の全景を捉えるように第1の光学系541及び第3の光学系543を調整したが、発光素子560の光取り出し面を幾つかの領域に分割して潜在的な欠陥を検出してもよい。幾つかの領域に分割することで、小型の装置を用いて大型の発光素子を検査できるため、検査装置のコストを抑制できる。また、幾つかの領域に分割すれば、倍率を高めて映像を撮影できるため、解像度が高まり微小な異常発光を捉えることができる。
【0083】
本実施の形態の潜在的な欠陥の絶縁化工程を図6に示す。潜在的な欠陥の絶縁化工程は異常発光部位の検出工程に引き続いて行うことが好ましい。引き続き行うことで、異常発光部位の位置情報を精度良く利用できる。
【0084】
異常発光部位の検査工程で得た位置情報とそれに対応する試験電圧から、異常発光する部位を修正する順番を決める。本実施の形態では、試験電圧の低い条件で検出した異常発光する部位から修正するが、互いに近い距離にある異常発光する部位を選んで順番に修正してもよい。
【0085】
第6のステップ乃至第8のステップでは、検査工程で得た異常発光の位置情報に基づいて、移動機構512を用いて発光素子560の異常発光する部位をレーザの照射位置に正確に移動する。
【0086】
第3のステップでは、検査の効率を高めるために広い領域を観察して、異常発光する部位の位置を概略特定したに過ぎない。そのため、第6のステップでは異常発光する部位をレーザの照射位置におよそ移動したのち、解像度を高めて異常発光する部位を観察して、正確にレーザの照射位置に合わせる必要がある。具体的には、第3の光学系の倍率を変更して異常発光する部位の位置を精度良く特定する。例えば、1ピクセル当たり0.1μm程度にする。
【0087】
例えば、図5(B)に示す異常発光する部位562aを絶縁化する場合、異常発光する部位562aをレーザの照射位置におよそ移動する。次に、第3の光学系543の倍率を変更して解像度を高める。
【0088】
第7のステップでは、発光素子560に異常発光する部位562aを観測した試験電圧Ed(V)以下の電圧を印加して、異常発光を観測する。撮像装置521は発光素子560の映像を第3の光学系543と第1の光学系541を介して捉え、画像信号に変換して制御装置551に出力する。
【0089】
第8のステップでは、第1のシャッター541sと第2のシャッター542sを開放し、照射系530が有するガイド光源からのガイド光を用いてレーザ装置531が照射するレーザ光の照射位置を指し示す。制御系550は移動機構512を用いて試料台510を移動し、異常発光する部位とレーザ光の照射位置を一致させる。このステップを経て、発光素子560の異常発光する部位をレーザの照射位置に正確に移動できる。
【0090】
第9のステップでは、撮像装置521にレーザ光の迷光が入射しないように第1のシャッター541sを閉鎖する。次いで、レーザ装置531から第2の光学系542及び第3の光学系543を介して、異常発光する部位にレーザ光を照射する。なお、このステップでは発光素子560への試験電圧の印加をやめても良い。
【0091】
第3の光学系543を用いて集光したレーザ光は高いエネルギー密度を有する。レーザ光が照射される微小な領域は高温になり、潜在的な欠陥561の近傍は絶縁化される。
【0092】
第10のステップでは試験電圧を印加し、異常発光する部位562aが消失していることを第11のステップで確認する。具体的には第2のシャッター542sを閉鎖し、第1のシャッター541sを開放し、発光素子560に試験電圧Ed(V)を印加して、異常発光する部位562aが消失していることを撮像して確認する。
【0093】
異常発光する部位562aが消失していない場合は、異常発光する部位の位置情報を再度収集し、第8のステップに戻って、レーザを再照射すればよい。
【0094】
異常発光する部位562aが消失している場合は、制御系550は異常発光する部位の情報に、異常発光する部位562aが消失した旨の情報を第12のステップで書き込む。次いで、第6のステップに戻って異常発光する部位の情報を参照して、次の異常発光する部位の修正に取りかかる。
【0095】
以上、第1のステップから第5のステップで検出した潜在的な欠陥を、第6のステップから第12のステップを繰り返して絶縁化する。また、制御装置551を用いて第1のステップから第12のステップまで、検出及び修正を自動的に進めても良いし、途中でオペレーターが状況を判断して検出及び修正を半自動的に進めてもよい。
【0096】
本実施の形態によれば正常な発光素子の発光開始電圧E(V)未満の電圧を被検査発光素子に印加し、1(cd/m)以上の輝度で発光する場所を検出することにより、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子が有する、短絡に至っていない潜在的な欠陥を検出することができる。
【0097】
また、輝度1(cd/m)に満たない発光状態の正常な領域を背景に、輝度1(cd/m)以上の輝度で強く発光する異常発光部位を検出するため、高感度なCCDカメラ等を必要とせず、装置を安価に作製できる。
【0098】
また、異常発光部位に1(cd/m)以上の強さの輝度があるため、異常発光する部位を広い観察範囲から検出できる。このように観察範囲が広いため、検査時間を短縮できる。
【0099】
また、本実施の形態によれば、成膜中に付着した絶縁性の異物の周囲に、膜厚が局部的に薄くなるような欠陥についても、輝度分布に異常が認められれば検出して、絶縁化できる。
【0100】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0101】
また、本実施の形態は、従来の方法と組み合わせて実施してもよい。具体的には、発光素子に逆バイアスを加えて短絡部位に電流を流し、エミッション顕微鏡を用いて発光素子を観察し、短絡部の位置を特定してもよい。なお、エミッション顕微鏡は、電流が流れた際に生じる光子の数を測定できる装置であり、顕在化している欠陥では多くの光子が検出される。多くの光子が検出される顕在化している欠陥に、レーザ光を照射し欠陥を絶縁化した後、本実施の形態に従って、潜在的な欠陥を検出すればよい。
【0102】
また、検査対象である発光素子は、一対の電極間に電荷発生層に仕切られた複数のEL層を設けた発光素子ひとつであっても良いし、複数の発光素子を線状や行列状に配置した発光装置を検査対象としてもよい。また、発光素子と駆動回路を同一基板上に搭載した発光装置であってもよい。
【0103】
また、第3の光学系543を用いず、第1の光学系541から直接観察し、第2の光学系542から直接レーザ光を照射してもよい。また、検出系520及び照射系530と発光素子560の相対的な位置を変える方法としては、発光素子560を支持している試料台510を移動する方法の他、第1の光学系541及び第2の光学系542を移動する方法であっても良く、例えば第1の光学系541及び第2の光学系542に角度可変な反射鏡を設ける方法でも良い。
【0104】
(実施の形態3)
本実施の形態では、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子の一態様について詳細に説明する。次に、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた3つの異なる発光色のEL層を設けた発光素子について説明し、その発光素子の潜在的な欠陥を検出し、修正する方法を説明する。
【0105】
一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子について、図1(A)を用いて説明する。当該発光素子は、第1の電極1001と第2の電極1002を有し、両電極間にn(nは2以上の自然数)層のEL層1003を有し、m(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層と(m+1)番目のEL層との間に、それぞれ電荷発生層1004を有する。
【0106】
電荷発生層1004は、有機化合物と金属酸化物の複合材料、金属酸化物、有機化合物とアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物との複合材料の他、これらを適宜組み合わせて形成することができる。有機化合物と金属酸化物の複合材料としては、例えば、有機化合物とVやMoOやWO等の金属酸化物を含む。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、有機化合物としては、正孔輸送性有機化合物として正孔移動度が1×10−6cm/Vs以上であるものを適用することが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0107】
なお、電荷発生層を一対の電極間を仕切って複数のEL層を設けることで、発光素子の低電流駆動が可能になるだけでなく、電荷発生層1004に用いるこれらの材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、電荷発生層1004を設けることによる駆動電圧の上昇を抑制して、発光素子を低電圧駆動することができる。
【0108】
電荷発生層1004は、第1の電極1001と第2の電極1002に電圧を印加したときに、電荷発生層1004に接して形成される一方のEL層1003に対して正孔を注入する機能を有し、他方のEL層1003に電子を注入する機能を有する。例えば、第1の電極1001が陽極であって、第2の電極1002が陰極である積層型素子において、電荷発生層1004の陰極側の面に接するEL層1003に電荷発生層1004は正孔を注入し、電荷発生層1004の陽極側の面に接するEL層1003に電荷発生層1004は電子を注入する。
【0109】
EL層1003の構成について図1(B)を用いて説明する。EL層1003は、少なくとも発光層1013を含んで形成されていればよく、発光層1013以外の機能層を含む積層構造であっても良い。発光層1013以外の機能層としては、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等を含む層を用いることができる。具体的には、発光層1013から陽極側に正孔輸送層1012及び正孔注入層1011等の機能層を、発光層1013から陰極側に電子輸送層1014及び電子注入層1015等の機能層を適宜組み合わせて用いることができる。
【0110】
以下に、EL層1003が正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を含んで構成される場合の各層を構成する物質の具体例を示す。
【0111】
正孔注入層は、正孔注入性物質を含む層である。当該正孔注入性物質としては、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ルテニウム、酸化タングステン、酸化マンガン等が挙げられる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)及び銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、並びにPEDOT/PSS(略称)等の高分子等を正孔注入性物質として用いることもできる。
【0112】
正孔輸送層は、正孔輸送性物質を含む層である、当該正孔輸送性物質としては、NPB(略称)、TPD(略称)、TCTA(略称)、TDATA(略称)、MTDATA(略称)、及び4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等の芳香族アミン化合物、並びにPCzPCA1(略称)、PCzPCA2(略称)、PCzPCN1(略称)、CBP(略称)、TCPB(略称)、及びCzPA(略称)のカルバゾール誘導体が挙げられる。また、PVK(略称)、PVTPA(略称)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)を当該正孔輸送性物質として適用することも可能である。ここに述べた物質は、主に1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。また、正孔輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層を二層以上積層したものを用いてもよい。
【0113】
発光層は、発光物質を含む層である。当該発光物質としては、以下に示す蛍光性化合物及び燐光性化合物を適用することが可能である。
【0114】
当該蛍光性化合物としては、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)などが挙げられる。
【0115】
当該燐光性化合物としては、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’−ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−(パーフルオロフェニルフェニル))ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))などが挙げられる。
【0116】
なお、発光層は、ホスト材料にこれらの発光物質を分散させた構造とすることが好ましい。ホスト材料としては、NPB(略称)、TPD(略称)、TCTA(略称)、TDATA(略称)、MTDATA(略称)、BSPB(略称)などの芳香族アミン化合物、PCzPCA1(略称)、PCzPCA2(略称)、PCzPCN1(略称)、CBP(略称)、TCPB(略称)、CzPA(略称)などのカルバゾール誘導体、及びPVK(略称)、PVTPA(略称)、PTPDMA(略称)、Poly−TPD(略称)などの高分子化合物を含む正孔輸送性物質、並びにトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]カルバゾール(略称:CO11)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、及びポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などを含む電子輸送性物質が挙げられる。
【0117】
電子輸送層は、電子輸送性物質を含む層である。当該電子輸送性物質としては、Alq(略称)、Almq(略称)、BeBq(略称)、及びBAlq(略称)などのキノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、並びにZn(BOX)(略称)及びZn(BTZ)(略称)などのオキサゾール系又はチアゾール系配位子を有する金属錯体などが挙げられる。また、金属錯体以外にも、PBD(略称)、OXD−7(略称)、CO11(略称)、TAZ(略称)、BPhen(略称)、BCP(略称)、PF−Py(略称)、PF−BPy(略称)などを当該電子輸送性物質として適用することも可能である。ここに述べた物質は、主に1×10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層を二層以上積層したものを用いてもよい。
【0118】
電子注入層は、電子注入性物質を含む層である。電子注入性物質としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物が挙げられる。また、電子輸送性物質中にアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はこれらの化合物を含有させたもの(例えば、Alq(略称)中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等)を当該電子注入性物質として適用することも可能である。この様な構造とすることにより、陰極からの電子注入効率をより高めることができる。
【0119】
またEL層と陽極又は陰極との間に電荷発生層を設けることもできる。EL層と陽極又は陰極との間に電荷発生層を設ける場合、電荷発生層は、正孔輸送性物質と、アクセプター性物質とを含む層とする。なお、電荷発生層は、同一膜中に正孔輸送性物質と、アクセプター性物質とを含有する場合だけでなく、正孔輸送性物質を含む層と、アクセプター性物質を含む層とが積層されていても良い。ただし、積層構造の場合には、アクセプター性物質を含む層が、陽極又は陰極と接する構造とする。
【0120】
EL層と陽極又は陰極との間に電荷発生層を設けることにより、電極を形成する物質の仕事関数を考慮せずに陽極又は陰極を形成することが可能になる。なお、EL層に設けられる電荷発生層は、上述の電荷発生層と同様の構成及び物質を適用することが可能である。そのため、ここでは前述の説明を援用することとする。
【0121】
なお、これらの層を適宜組み合わせて積層することにより、EL層を形成することができる。また、EL層の形成方法としては、用いる材料に応じて種々の方法(例えば、乾式法や湿式法等)を適宜選択することができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法、又はスピンコート法などを用いることができる。また、各層で異なる方法を用いて形成してもよい。
【0122】
支持体1000上に形成する第1の電極1001については特に限定はないが、陽極として利用する場合は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0123】
これらの材料は、通常スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットにより成膜できる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットにより成膜できる。その他、ゾル−ゲル法などを応用して、インクジェット法、スピンコート法などにより膜を形成してもよい。
【0124】
なお、陽極として機能する第1の電極1001上に形成するEL層1003のうち、第1の電極1001に接する層に、前述の複合材料を含む層を用いる場合には、第1の電極1001に用いる物質は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムを含む合金(AlSi)等も用いることができる。
【0125】
また、仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。
【0126】
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらを含む合金を用いて第1の電極1001を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。さらに、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0127】
第1の電極1001上に形成するEL層1003には、公知の物質を用いることができ、低分子系化合物および高分子系化合物のいずれも用いることができる。
【0128】
第2の電極1002についても特に限定はないが、陰極として機能する際は、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
【0129】
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金を用いて第2の電極1002を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0130】
なお、前述の電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を用いて第2の電極1002を形成することができる。これらの導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することができる。
【0131】
支持体1000は、発光素子の支持体として用いられる。例えばガラス、石英、プラスチックなどを用いることができる。なお、支持体1000側から発光素子の光を取り出す場合は、可視光に対する透光性を有する材料を支持体に用いる。
【0132】
ガラス基板の具体例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、若しくはアルミノシリケートガラスなど、フュージョン法やフロート法で作製される無アルカリガラス基板、セラミック基板の他、本作製工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板等を用いることができる。例えば、成分比としてホウ酸(B)よりも酸化バリウム(BaO)を多く含み、歪み点が730℃以上のガラス基板を用いると好ましい。酸化物半導体層を700℃程度の高温で熱処理する場合でも、ガラス基板が歪まないで済むからである。
【0133】
支持体1000がマザーガラスの場合、基板の大きさは、第1世代(320mm×400mm)、第2世代(400mm×500mm)、第3世代(550mm×650mm)、第4世代(680mm×880mm、または730mm×920mm)、第5世代(1000mm×1200mm、または1100mm×1250mm)、第6世代(1500mm×1800mm)、第7世代(1900mm×2200mm)、第8世代(2160mm×2460mm)、第9世代(2400mm×2800mm、または2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等とすることができる。
【0134】
また、ステンレス合金などの金属基板の表面に絶縁膜を設けた基板を適用しても良い。また、プラスチック基板は軽量である、可撓性を有している、可視光を透過する等、発光素子の基板として魅力的な特徴を有する。また、プラスチック基板に防湿性を有する層を成膜もしくは貼り付け、発光素子を水などの不純物から保護できる基板を用いてもよい。
【0135】
また、支持体1000上に下地膜として絶縁膜を形成してもよい。下地膜としては、PCVD法やスパッタリング法等を用いて、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、または窒化酸化珪素膜の単層、又は積層で形成すればよい。また、発光装置の駆動回路などが別途作製された支持体1000を用い、駆動回路に電気的に接続した第1の電極にEL層を形成してもよい。
【0136】
本実施の形態の発光素子は、第1の電極1001と第2の電極1002に与えた電位差により電流が流れ、EL層1003にて正孔と電子が再結合して発光に至る。この光を発光素子の外部に取り出すには、透光性を有する導電膜で第1の電極1001または第2の電極1002のいずれか一方、または両方を形成すればよい。
【0137】
なお、第1の電極1001のみが透光性を有する電極である場合には、EL層1003で生じた発光は第1の電極1001を通って支持体1000側から取り出される。また、第2の電極1002のみが透光性を有する電極である場合には、EL層1003で生じた発光は第2の電極1002を通って支持体1000と逆側から取り出される。さらに、第1の電極1001および第2の電極1002がいずれも透光性を有する電極である場合には、EL層1003で生じた発光は第1の電極1001および第2の電極1002を通って、支持体1000側および支持体1000と逆側の両方から取り出される。
【0138】
次に、一対の電極間に2つの電荷発生層によって仕切られた3つの異なる発光色のEL層を設けた発光素子を図7に例示する。
【0139】
発光素子1500aは、可視光を透過する支持体1000上に、可視光を透過する第1の電極1501と第2の電極1502の間に、2つの電荷発生層1504に仕切られた3つのEL層1503R、1503G及び1503Bを有しており、各層は前述の材料を用いて形成できる。
【0140】
また、発光素子1500bは、支持体1000上に、第1の電極1501と可視光を透過する第2の電極1502の間に、2つの電荷発生層1504に仕切られた3つのEL層1503R、1503G及び1503Bを有しており、各層は前述の材料を用いて形成できる。また、第2の電極1502上に可視光を透過する封止膜1509を形成してある。
【0141】
発光素子の光を取り出す側から、潜在的な欠陥を検出し、レーザ光を照射して絶縁化する方法が、発光装置の構造が簡便であり好ましい。従って、発光素子1500aは支持体1000側から潜在的な欠陥の検出及び絶縁化を行い、発光素子1500bは封止膜1509と第2の電極1502を通して潜在的な欠陥の検出及び絶縁化を行う。
【0142】
第1のEL層1503Rは赤色の光を発する発光層を有し、第2のEL層1503Gは緑色の光を発する発光層を有し、第3のEL層1503Bは青色の光を発する発光層を有する。このような発光素子1500a及び発光素子1500bは、発光素子全体としては白色光を発する。なお、各EL層の発光色及び積層の順番はこの例に限らない。
【0143】
このように異なる波長の光を発するEL層を積層すると、多様な波長の光を発する発光素子を形成できる。例えば、可視光領域の多様な波長の光を発する発光素子は演色性に優れており、照明用途に好適である。
【0144】
一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数の異なる発光色のEL層を設けた発光素子では、導電性の異物が混入した部位は輝度だけでなく色度も変化する。
【0145】
発光素子1500a及び1500bにおいて、第1のEL層1503Rに導電性の異物が混入した場合は、第1のEL層1503Rからの発光が損なわれるため緑色光と青色光の成分からなる強い発光が得られる。また、第2のEL層1503Gに導電性の異物が混入した場合は、第2のEL層1503Gからの発光が損なわれるため赤色光と青色光の成分からなる強い発光が得られる。また、第3のEL層1503Bに導電性の異物が混入した場合は、第3のEL層1503Bからの発光が損なわれるため赤色光と緑色光の成分からなる強い発光が得られる。
【0146】
また、第1のEL層1503Rと第2のEL層1503Gに渡って導電性の異物が混入した場合は、青色光の成分からなる強い発光が得られる。また、第2のEL層1503Gと第3のEL層1503Bに渡って導電性の異物が混入した場合は、赤色光の成分からなる強い発光が得られる。
【0147】
このように、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数の異なる発光色のEL層を設けた発光素子の場合、導電性の異物が混入した潜在的な欠陥は輝度だけでなく色度も変化する。従って、発光素子の光取り出し面の実質的に全面が1(cd/m)以上に発光する電圧を発光素子の順方向に印加し、色度分布の観測手段を用いて発光素子の光取り出し面を測定し、色度が異なる異常発光部位を検出すれば、導電性の異物が混入した潜在的な欠陥を検出できる。
【0148】
色度分布の観測手段としては、カラーCCDカメラなどを用いることができる。
【0149】
一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数の異なる発光色のEL層を設けた発光素子の潜在的な欠陥は、輝度または色度の違う異常発光部位として検出できる。
【0150】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
【0151】
(実施の形態4)
本実施の形態では表示装置の潜在的な欠陥を検出し、修正する方法について説明する。検査対象とする発光装置について図8及び図9を用いて説明する。
【0152】
まず、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置について説明する。図8(A)は、発光装置を示す上面図、図8(B)は図8(A)をA−A’で切断した断面図である。点線で示された401は駆動回路部(ソース側駆動回路)、402は画素部、403は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、404は封止基板、405はシール材であり、シール材405で囲まれた内側は、空間407になっている。
【0153】
なお、引き回し配線408はソース側駆動回路401及びゲート側駆動回路403に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)409からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0154】
次に、断面構造について図8(B)を用いて説明する。基板410上には駆動回路部及び複数の画素を有する画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路401と画素部402に複数形成された画素のうち一つの画素が示されている。
【0155】
なお、ソース側駆動回路401はnチャネル型TFT423とpチャネル型TFT424とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、TFTで形成される種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0156】
また、画素部402はスイッチング用TFT411と、電流制御用TFT412とそのドレインに電気的に接続された第1の電極413とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0157】
また、カバレッジを良好なものとするため、絶縁物414の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物414の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物414の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物414として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0158】
第1の電極413上には、発光物質を含む層416、および第2の電極417がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極413に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)膜、または珪素を含有したインジウムスズ酸化物膜、インジウム亜鉛酸化物(IZO)膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0159】
第1の電極413と第2の電極417の間には、電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を実施の形態3と同様に形成する。また、EL層に用いる材料としては、通常、有機化合物を単層もしくは積層で用いる場合が多いが、有機化合物からなる膜の一部に無機化合物を用いる構成も含めることとする。
【0160】
また、発光物質を含む層416は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法により形成できる。
【0161】
さらに、発光物質を含む層416上に形成される第2の電極417に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物、MgAg、MgIn、AlLi、CaF、または窒化カルシウム)が好ましい。なお、発光物質を含む層416で生じた光が陰極として機能する第2の電極417を透過させる場合には、第2の電極417として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0162】
さらにシール材405で封止基板404を基板410と貼り合わせることにより、基板410、封止基板404、およびシール材405で囲まれた空間407に発光素子418が備えられた構造になっている。なお、空間407には、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材405で充填される構成も含むものとする。
【0163】
なお、シール材405にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板404に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0164】
以上のようにして作製した、電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子の潜在的な欠陥は、実施の形態2で例示した方法および装置を用いて、検出および修正することができる。
【0165】
本発明の一態様によれば、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子が有する、短絡に至っていない潜在的な欠陥を検出できる。また、当該潜在的な欠陥を絶縁化して潜在的な欠陥が修復された発光装置を提供できる。
【0166】
次に、パッシブマトリクス型の画像表示装置について説明する。図9には本発明の一態様を適用して作製したパッシブマトリクス型の画像表示装置を示す。なお、図9(A)は、パッシブマトリクス型の画像表示装置を示す斜視図、図9(B)は図9(A)をX−Yで切断した断面図である。図9において、基板951上には、第1の電極952と第2の電極956と、それらの間に発光物質を含む層955とが設けられている。第1の電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。
【0167】
隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。
【0168】
第1の電極952と第2の電極956の間には、電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を実施の形態3と同様に形成する。
【0169】
以上のようにして作製した、電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子に、潜在的な欠陥が生じた場合、当該潜在的な欠陥を実施の形態2で例示した方法および装置を用いて、検出および修正することができる。
【0170】
本発明の一態様によれば、一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子が有する、短絡に至っていない潜在的な欠陥を検出できる。また、当該潜在的な欠陥を絶縁化して潜在的な欠陥が修復された発光装置を提供できる。
【0171】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態4に示した潜在的な欠陥が修復された発光装置をその一部に含む電子機器について説明する。実施の形態4に示した潜在的な欠陥が修復された発光装置を含む電子機器は異常発光する部位や激しい特性の変化や、長期の使用で短絡に至ったりする等の不具合が顕在化することがなく、信頼性に優れる。
【0172】
本発明の一態様の発光素子を用いて作製された発光装置を有する電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的には、Digital Versatile Disc(DVD)等)の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図10に示す。
【0173】
図10(A)は本発明の一形態に係るテレビ装置であり、筐体9101、支持台9102、表示部9103、スピーカー部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。このテレビ装置において、表示部9103は、実施の形態4で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、潜在的な欠陥が修復されているという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9103も同様の特徴を有するため、異常発光する部位や激しい特性の変化や、長期の使用で短絡に至ったりする等の不具合が顕在化することがない。このように本発明の一形態に係るテレビ装置は高信頼性が図られているので、長期間にわたって使用でき、無駄な買い換えが不要であり、資源を無駄にしない。
【0174】
図10(B)は本発明に係るコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス9206等を含む。このコンピュータにおいて、表示部9203は、実施の形態4で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、潜在的な欠陥が修復されているという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9203も同様の特徴を有するため、異常発光する部位や激しい特性の変化や、長期の使用で短絡に至ったりする等の不具合が顕在化することがない。このように本発明の一形態に係るコンピュータは高信頼性が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。
【0175】
図10(C)は本発明の一形態に係る携帯電話9300であり、筐体9301、表示部9302、スイッチ9303、接続部9304、スピーカー9305、マイク9306等を含む。表示部9302を指などで触れることで、情報を入力ことができる。また、電話を掛ける、或いはメールを打つ操作は、表示部9302を指などで触れることにより行うことができる。この携帯電話において、表示部9302は、実施の形態4で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、潜在的な欠陥が修復されているという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9302も同様の特徴を有するため、異常発光する部位や激しい特性の変化や、長期の使用で短絡に至ったりする等の不具合が顕在化することがない。このように本発明の一形態に係る携帯電話は高信頼性が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。
【0176】
図10(D)は本発明の一形態に係るカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体9503、外部接続ポート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー9507、音声入力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。このカメラにおいて、表示部9502は、実施の形態4で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、潜在的な欠陥が修復されているという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9502も同様の特徴を有するため、異常発光する部位や激しい特性の変化や、長期の使用で短絡に至ったりする等の不具合が顕在化することがない。このように本発明の一形態に係るカメラは高信頼性が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。
【0177】
以上の様に、本発明の一態様の潜在的な欠陥の検出方法及び修正方法によって製造された発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。本発明の一態様の発光素子を用いることにより、信頼性の高い電子機器を提供することが可能となる。また、潜在的な欠陥を検出し修正することにより、良品の歩留まりが高まり、生産コストを低減する効果を有する。
【0178】
また、本発明の一態様の潜在的な欠陥の検出方法及び修正方法によって製造された発光装置は、照明装置として用いることもできる。発光素子を照明装置として用いる一態様を、図11を用いて説明する。
【0179】
図11は、本発明の一形態に係る発光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図11に示した液晶表示装置は、筐体9601、液晶層9602、バックライト9603、筐体9604を有し、液晶層9602は、ドライバーIC9605と接続されている。また、バックライト9603は、本発明の一形態に係る発光装置が用いられおり、端子9606により、電流が供給されている。
【0180】
本発明の一態様の潜在的な欠陥の検出方法及び修正方法によって製造された発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることにより、信頼性の高いバックライトが得られる。また、当該発光装置は、面発光の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、当該発光装置は異常発光する部位や激しい特性の変化や、長期の使用で短絡に至ったりする等の不具合が顕在化することがなく、高信頼性が図られているので、当該発光装置を用いた液晶表示装置も信頼性が高い。
【0181】
図12は、本発明の一態様を適用した発光装置を、照明装置である電気スタンドとして用いた例である。図12に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源2002として、本発明の一態様の発光装置が用いられている。本発明の一態様の潜在的な欠陥の検出方法及び修正方法によって製造された発光装置は、異常発光する部位や激しい特性の変化や、長期の使用で短絡に至ったりする等の不具合が顕在化することがなく、高信頼性が図られているため、当該発光装置を用いた電気スタンドも信頼性が高い。
【0182】
また、図13は本発明の一態様を適用した発光装置を室内の照明装置3001として用いた例である。
【0183】
本発明の一態様の潜在的な欠陥の検出方法及び修正方法は大面積の発光装置にも適用可能であり、本発明の一態様を適用した照明装置は大面積の照明装置として用いることができる。また、本発明の一態様の発光装置は、薄型で低消費電力であるため、薄型化、低消費電力化の照明装置として用いることが可能となる。
【0184】
このように、本発明の一態様を適用した発光装置を、室内の照明装置3001として用いた部屋に、図10(A)で説明したような、本発明の一形態に係るテレビ装置3002を設置して公共放送や映画を鑑賞することができる。このような場合、両装置は信頼性が高いので長期間の使用に耐え、故障による買い換えが不要であり資源を無駄遣いすることがない。
【符号の説明】
【0185】
401 ソース側駆動回路
402 画素部
403 ゲート側駆動回路
404 封止基板
405 シール材
407 空間
408 引き回し配線
409 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
410 基板
411 スイッチング用TFT
412 電流制御用TFT
413 電極
414 絶縁物
416 発光物質を含む層
417 電極
418 発光素子
423 nチャネル型TFT
424 pチャネル型TFT
500 作製装置
510 試料台
511 支持機構
512 移動機構
520 検出系
521 撮像装置
530 照射系
531 レーザ装置
541 第1の光学系
541s 第1のシャッター
542 第2の光学系
542s 第2のシャッター
543 第3の光学系
545 ハーフミラー
550 制御系
551 制御装置
552 表示装置
560 発光素子
561 潜在的な欠陥
562a 異常発光する部位
562b 異常発光する部位
562c 異常発光する部位
562d 異常発光する部位
562e 異常発光する部位565 端子部
571 駆動装置
572 外部電源
951 基板
952 第1の電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 発光物質を含む層
956 第2の電極
1000 支持体
1001 第1の電極
1002 第2の電極
1003 EL層
1004 電荷発生層
1011 正孔注入層
1012 正孔輸送層
1013 発光層
1014 電子輸送層
1015 電子注入層
1100 発光素子
1100a 第1の領域
1100b 第2の領域
1101 第1の電極
1102 第2の電極
1103a 第1のEL層
1103b 第2のEL層
1104 電荷発生層
1200 発光素子
1200a 領域
1200c 領域
1201 第1の電極
1202 第2の電極
1203a 第1のEL層
1203b 第2のEL層
1204 電荷発生層
1206 導電性の異物
1300 発光素子
1301 第1の電極
1302 第2の電極
1303a 発光性の有機化合物を含むEL層
1400 発光素子
1400a 第1の領域
1400b 第2の領域
1401 第1の電極
1402 第2の電極
1403a 第1のEL層
1403b 第2のEL層
1404 電荷発生層
1500a 発光素子
1500b 発光素子
1501 第1の電極
1502 第2の電極
1503B EL層
1503G EL層
1503R EL層
1504 電荷発生層
1509 封止膜
2001 筐体
2002 光源
3001 照明装置
3002 テレビ装置
9101 筐体
9102 支持台
9103 表示部
9104 スピーカー部
9105 ビデオ入力端子
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングデバイス
9301 筐体
9302 表示部
9303 スイッチ
9304 接続部
9305 スピーカー
9306 マイク
9501 本体
9502 表示部
9503 筐体
9504 外部接続ポート
9505 リモコン受信部
9506 受像部
9507 バッテリー
9508 音声入力部
9509 操作キー
9510 接眼部
9601 筐体
9602 液晶層
9603 バックライト
9604 筐体
9605 ドライバーIC
9606 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子に、
前記発光素子の光取り出し面において実質的に全面が1(cd/m)以上に発光する発光開始電圧未満の電圧を前記発光素子の順方向に印加し、
前記発光素子の光取り出し面において1(cd/m)以上の発光を呈する異常発光部位を検出する発光素子の検査方法。
【請求項2】
電荷発生層によって仕切られた発光色が異なる複数のEL層を一対の電極間に設けた発光素子に、
前記発光素子の光取り出し面において実質的に全面が1(cd/m)以上に発光する電圧を前記発光素子の順方向に印加し、
前記発光素子の光取り出し面において色度が異なる異常発光部位を検出する発光素子の検査方法。
【請求項3】
発光素子の光取り出し面において実質的に全面が1(cd/m)以上に発光する発光開始電圧未満の電圧を前記発光素子の順方向に印加し、
前記発光素子の光取り出し面において1(cd/m)以上の発光を呈する異常発光部位にレーザ光を照射し絶縁化する、
一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子の作製方法。
【請求項4】
前記発光素子の光取り出し面において実質的に全面が1(cd/m)以上に発光する電圧を前記発光素子の順方向に印加し、
前記発光素子の光取り出し面において色度が異なる異常発光部位にレーザ光を照射し絶縁化する、
一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子の作製方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2記載の
前記異常発光部位の検出工程と、
前記異常発光部位にレーザ光を照射する工程を有し、
前記異常発光部位の検出工程の観察画像の解像度に比べ、レーザ光を照射する工程の観察画像の解像度が高いことを特徴とする、
一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子の作製方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2記載の
前記異常発光部位の検出工程と、
前記異常発光部位にレーザ光を照射する工程を有し、
前記異常発光部位の検出工程の観察画像の解像度の100倍以上、10,000倍以下の高解像度で、
レーザ光を照射する工程の観察画像の解像度が高いことを特徴とする
一対の電極間に電荷発生層によって仕切られた複数のEL層を設けた発光素子の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−49159(P2011−49159A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167125(P2010−167125)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】