説明

発光装置及びそれを用いた液晶表示装置

【課題】青色半導体発光素子及び当該発光素子からの光によって高効率に発光する緑色・赤色蛍光体を用いて、色温度特性に優れた発光装置及び色再現性(NTSC比)に優れた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】発光素子による1次光の一部を吸収して、1次光よりも長い波長の2次光を発する波長変換部を備えた発光装置及び当該発光装置を用いた液晶表示装置であって、前記波長変換部は、式(1)で示される緑色系発光酸窒化物蛍光体と、式(2)で示される赤色系発光窒化物蛍光体を有している。(M11−xEu)SiAlO(1)(式中、M1はアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素)(M21−yEu)M3SiN(2)(式中、M2はアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素、M3は3価の金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次光を発する発光素子と、1次光を吸収して2次光を発する波長変換部とを備えた発光装置、更に該発光装置を用いた液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子と蛍光体を組み合わせた発光装置は、低消費電力、小型、高輝度かつ広範囲な色再現性が期待される次世代の発光装置として注目され、活発に研究、開発が行われている。
【0003】
発光素子から発せられる1次光は通常長波長の紫外線から青色の範囲、即ち380nmから480nmのものが用いられる。また、この用途に適合した様々な蛍光体を用いた波長変換部も提案されている。更に、近年には小型、中型のみならず大型LCD用バックライトの開発競争が激化している。この分野においては、様々な方式が提案されているが、明るさと色再現性(NTSC比)とを同時に満足する方式は開発されていない。
【0004】
現在は白色の発光装置としては、青色発光の発光素子(ピ−ク波長、450nm前後)とその青色により励起され黄色発光を示す3価のセリウムで付活された(Y,Gd)(Al,Ga)12蛍光体あるいは2価のユ−ロピウムで付活された(Sr,Ba)SiO蛍光体との組合せが主として用いられている。
【0005】
但し、これらの発光装置をバックライトとして用いたLCD(液晶表示装置)では、色再現性(NTSC比)は70%前後である。一方、近年各種のLCDにおいて、より色再現性の良好なものが求められている。
【0006】
さらには、最近この種の発光装置に対して変換効率(明るさ)のみならず、入力のエネルギーをより高くし、さらに明るくしようとする試みがなされている。入力エネルギーを高くした場合、波長変換部を含めた発光装置全体の効率的な放熱が必要となってくる。このために、発光装置全体の構造、材質などの開発も進められているが、動作時における発光素子および波長変換部の温度上昇は避けられないのが現状である。
【0007】
しかしながら、特に3価のセリウムで付活された(Y,Gd)(Al,Ga)12蛍光体においては、25℃での輝度(明るさ)を100%とした場合に、100℃での輝度は85%前後に低下する。また、2価のユ−ロピウムで付活された(Sr,Ba)SiO蛍光体においても、同様に低下するために、入力エネルギーを高く設定できないという技術課題を有している。したがって、この種の発光装置に対して、用いられる蛍光体の温度特性の改善も急務となっている。
【0008】
これらの技術課題に対してEuSiAlで実質的に表されるβ型SIALONである2価のユーロピウム付活酸窒化物よりなる緑色系発光蛍光体を用いることにより、色再現性(NTSC比)および温度特性の良好な発光装置が得られることが知られている。
【0009】
一方、前述のβ型SIALONである2価のユーロピウム付活酸窒化物よりなる緑色系発光蛍光体の発光のピーク波長は略530〜540nmであり、より短波長即ち515〜525nmの場合、色再現性(NTSC比)が改善される傾向にある。このような背景から小型、中型のみならず大型LCD用バックライトの色再現性(NTSC比)の改善も急務となっている。
【0010】
従来、LCDにおける色再現性(NTSC比)に着目したものとしては、特許文献1(特開2003−121838号公報)がある。そのなかで、バックライト光源として、505nmから535nmの範囲にスペクトルピ−クを有すること、及びその光源に使用する緑蛍光体の付活剤としてユウロピウム、タングステン、スズ、アンチモン、マンガンのいずれかを含むこと、更には実施例には緑色系発光蛍光体として、MgGa:Mn、ZnSiO:Mnを用いることが記載されている。しかしながら、発光素子のピ−ク波長が430nmから480nmの範囲の場合には、ユーロピウム、タングステン、スズ、アンチモン、マンガンのいずれかを含む蛍光体が全て適用されるものではない。即ち、実施例に記載されているMgGa:Mn、ZnSiO:Mnは430nmから480nmの範囲の励起光では、その発光効率は著しく低く、そのために本発明の用途において適合するものではない。
【0011】
また、特許文献2(特開2004−287323号公報)では、バックライトとして、赤発光LEDチップと緑発光LEDチップと青発光LEDチップが1パッケ−ジになったRGB−LEDの他に、3波長型蛍光管、紫外光LEDとRGB蛍光体の組合せ、有機EL光源などがあると記載されている。しかしながら、青色光を励起源とするRG蛍光体に関する具体的な開示はない。
【0012】
また、特許文献3(特開2005−255895号公報)では、β型SIALONに関し、六方晶系に属し、発光のピーク波長が525nm〜546nmにあることが、記載されている。しかしながら、色再現性(NTSC比)に関する開示はない。
【0013】
更には、特許文献4(WO2007/105631 A1号公報)では、(M,R)AlSiONなるSIALONにおいて、斜方晶系に属し、発光のピーク波長が511nm〜524nmにあることが記載されている。
【0014】
また非特許文献1(東芝レヴュー,Vol.64 No.4 pp60‐63(2009))では、SrSi13Al21なるSIALONにおいて、発光のピーク波長が520nm付近にあり、この蛍光体とシリケート系の赤色発光蛍光体とを組み合わせた場合、平均演色評価数(Ra)は82〜88であることが記載されている。しかしながら、色再現性(NTSC比)に関する記述はない。
【0015】
通常のLCDは、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)をバックライトとして用い、その光を液晶の各ピクセル(画素)毎に透過させる。各ピクセルは、光の3原色であるRGB(赤・緑・青)を透過する3つのサブピクセルを有し、各サブピクセルにはRGB(赤・緑・青)に対応するフィルタが装着されている。従って、LCDの色再現性(NTSC比)は光源のスペクトル特性とフィルタの透過スペクトル特性の組合せによって決まる。色再現性を向上させる、あるいは輝度を向上させる目的のため、フィルタとしてRGBとそれ以外の色の光を用いる例がある。例えば特許文献5(特表2004−529396号公報)では、フィルタとして少なくとも4つの原色、例えばRGB、Y(黄)およびC(シアン)を用いた例が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−121838号公報
【特許文献2】特開2004−287323号公報
【特許文献3】特開2005−255895号公報
【特許文献4】WO2007/105631 A1号公報
【特許文献5】特表2004−529396号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】東芝レヴュー(Vol.64 No.4 pp60‐63 (2009))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記技術課題を十分調査、検討及び開発を行った結果、半導体発光素子からの430nmから480nmの範囲の光によって、高効率に発光する特定の蛍光体を用いることにより、色再現性(NTSC比)の優れ、かつ温度特性の良好な発光装置、更に該発光装置を用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。ここでNTSC比とは、該液晶表示装置のXYZ表色系色度図における色再現域の、NTSC(National Television System Committee)が定めた赤(0.670,0.330)、緑(0.210,0.710)、青(0.140,0.080)の色度座標を結んで得られる三角形の面積に対する比率を表している。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は1次光を発する発光素子と、前記1次光の一部を吸収して、1次光の波長よりも長い波長を有する2次光を発する波長変換部とを備えた発光装置において、前記発光素子のピ−ク波長が430nmから480nmの範囲にあり、前記波長変換部は1種以上の蛍光体からなり、前記1種以上の蛍光体は緑色系発光蛍光体及び赤色系発光蛍光体からなり、前記緑色系発光蛍光体は、次の一般式(1)
(M11−xEu)SiAlO (1)
(式中、M1はアルカリ土類金属元素であり、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.001≦x≦0.3、0.9≦a≦1.5、4.0≦b≦6.0、0.4≦c≦1.0、6.0≦d≦11.0を満足する数である。)
で実質的に表される2価のユ−ロピウム付活酸窒化物蛍光体であり、
前記赤色系発光蛍光体は、次の一般式(2)
(M21−yEu)M3SiN (2)
(式中、M2はアルカリ土類金属元素であり、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、M3は3価の金属元素からなり、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Gd及びLuから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.001≦y≦0.10を満足する数である)
で実質的に表される2価のユ−ロピウム付活窒化物である。
【0020】
なお、一般式(1):(M11−xEu)SiAlOで実質的に表される2価のユ−ロピウム付活酸窒化物よりなる緑色系発光蛍光体において、ユーロピウム濃度(x)が0.001未満の場合、十分な明るさが得られず、0.3を超えると濃度消光などにより、明るさが大きく低下する。特性の安定性、母体の均質性から、0.005≦x≦0.1の範囲が好ましい。
【0021】
前記a、b、cおよびdの数字は、それぞれ0.9≦a≦1.5、4.0≦b≦6.0、0.4≦c≦1.0、6.0≦d≦11.0の範囲内であれば、不純物相の影響を無視でき、良好な発光特性(明るさ)を得ることが出来る。
【0022】
更には、緑色系発光蛍光体の粒子径については、メディアン径(50%D)で表した場合、10〜30μmの範囲が好ましい。10μm未満の場合、結晶成長が十分ではなく、十分な明るさが得られず、30μmを超えると、異常成長した粒子が多くなり実用的ではない。
【0023】
また、2価のユ−ロピウム付活酸窒化物よりなる緑色系発光蛍光体は、上記一般式(1)はAlの指数を1とした、あくまで一例であり、(Sr0.99Eu0.01)Si13Al221、(Sr0.95Eu0.05)Si25Al39、(Sr0.98Eu0.02)Si20Al32、(Sr0.89Ba0.01Eu0.10)Si22Al34、(Sr0.989Ca0.01Eu0.001)Si23Al37、(Sr0.97Eu0.03)16Si68Al1411108、(Sr0.96Ba0.02Eu0,02)90Si315Al7063508、(Sr0.995Eu0.005)Si16Al25、(Sr0.87Ca0.03Eu0.10)Si26Al41、(Sr0.99Eu0.01)Si21Al35などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
また、一般式(2):(M21−yEu)M3SiNで実質的に表される2価のユ−ロピウム付活窒化物よりなる赤色系発光蛍光体において、ユーロピウム濃度(y)が0.001未満の場合、十分な明るさが得られず、0.10を超えると濃度消光などにより、明るさが大きく低下する。特性の安定性、母体の均質性から、0.005≦y≦0.05の範囲が好ましい。更には、M3は3価の金属元素であり、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Gd及びLuから選ばれる少なくとも1種の元素を示すが、より一層高効率に赤色系を発光することができることから、M3はAl、Ga及びInから選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましい。
【0025】
また、赤色系発光蛍光体の粒子径については、メディアン径(50%D)で表した場合、6〜20μmの範囲が好ましい。6μm未満の場合、結晶成長が十分ではなく、十分な明るさが得られず、20μmを超えると、異常成長した粒子が多くなり、実用的ではない。
【0026】
また、2価のユ−ロピウム付活窒化物よりなる赤色系発光蛍光体としては、(Ca0.99Eu0.01)AlSiN、(Ca0.97Mg0.02Eu0.01)(Al0.99Ga0.01)SiN3、(Ca0.98Eu0.02)AlSiN、(Ca0.58Sr0.40Eu0.02)(Al0.98In0.02)SiN、(Ca0.999Eu0.001)AlSiN、(Ca0.895Sr0.100Eu0.005)AlSiN、(Ca0.79Sr0.20Eu0.01)AlSiN、(Ca0.98Eu0.02)(Al0.95Ga0.05)SiN、(Ca0.20Sr0.79Eu0.01)AlSiNなどを挙げることができるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0027】
更には、発光素子としては、窒化ガリウム(GaN)系半導体が用いられる。発光素子から発する1次光は、ピ−ク波長が430nmから480nmの範囲のものが適用される。好ましくは、440nmから470nmの範囲のものが用いられる。
【0028】
本発明の他の形態は、バックライトとフィルタを備えた液晶表示装置であって、前記バックライトは、発光素子と前記発光素子から発する1次光を吸収して第1の2次光を発する第1の蛍光体及び第2の2次光を発する第2の蛍光体を備えた波長変換部を含む発光装置を備え、前記発光素子は青色にピーク波長を有し、前記第1の蛍光体が発する2次光は波長510nm以上530nm以下にピーク波長を有し、前記第2の蛍光体が発する2次光は波長630nm以上680nm以下にピーク波長を有し、前記フィルタは、前記液晶表示装置の各ピクセルに配されたサブピクセル毎に、赤(R)、緑(G)、青(B)と黄(Y)の各色用のフィルタが平面上に配置されたものであり、前記緑色用のフィルタは波長490nm以上530nm以下に透過率のピーク波長を有することを特徴とする液晶表示装置に関する。
【0029】
前記液晶表示装置において、前記第1の蛍光体は、次の一般式(1)
(M11−xEu)SiAlO (1)
(式中、M1はアルカリ土類金属元素であり、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.001≦x≦0.3、0.9≦a≦1.5、4.0≦b≦6.0、0.4≦c≦1.0、6.0≦d≦11.0を満足する数である)
で実質的に表される2価のユ−ロピウム付活緑色系発光酸窒化物蛍光体であることが望ましい。
【0030】
更に、前記液晶表示装置において、前記第2の蛍光体は、次の一般式(2)
(M21−yEu)M3SiN (2)
(式中、M2はアルカリ土類金属元素であり、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、M3は3価の金属元素からなり、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Gd及びLuから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.001≦y≦0.10を満足する数である)
で実質的に表される2価のユ−ロピウム付活赤色系発光窒化物蛍光体からなることが望ましい。
【0031】
前記液晶表示装置は、RGB信号をRGBY信号に変換する回路とともに筐体に保持することができる。また前記液晶表示装置はリフレッシュレートが120Hz以上であるエリアアクティブ駆動であって、前記発光装置は前記リフレッシュレートに追従して前記エリアアクティブ駆動により明るさを変化させることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のような本発明の発光装置は、発光素子からの発光を効率良く吸収して高効率な白色光を発光するとともに温度特性が著しく良好である。また、それを用いたLCDは色再現性(NTSC比)が高く高精彩な画像を得ることが出来る。特に本蛍光体は、RGBYの4色のサブピクセルを有する液晶表示装置と組み合わせた場合にさらに色再現性(NTSC比)が高く、また表示画像が明るい液晶表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態の発光装置における要部の側面図である。
【図2】本発明の一実施形態の発光装置における発光スペクトル分布図である。
【図3】β型SIALON緑色系発光蛍光体を用いた発光装置における発光スペクトル分布図である。
【図4】本発明の一実施形態としての発光装置をバックライト光源として組み込んだLCDの色再現性を示す色度図である。
【図5】R(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)のサブピクセルを備えたLCDの要部を示す模式図である。
【図6】R(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)の各フィルタの透過スペクトル特性の模式図である。
【図7】本発明の一実施形態としての発光装置をバックライト光源として組み込んだR(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)のサブピクセルを備えたLCDの色再現性を示す色度図である。
【図8】本発明の一実施形態としての発光装置をバックライト光源として組み込んだR(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)のサブピクセルを備えたLCD及びそれを駆動する回路を備える液晶テレビジョンの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施例にしたがって説明する。
(実施例1)
本発明の発光装置の断面図を図1に示す。発光装置10は、パッケージ11に発光素子12が搭載されている。発光素子12として、青色である450nmにピ−ク波長を有する窒化ガリウム(GaN)系半導体を用いた。波長変換部13には、緑色系発光蛍光体14として(Sr0.99Eu0.01)Si13Al21(ピーク波長520nm前後)、赤色系発光蛍光体15として(Ca0.99Eu0.01)AlSiNなる組成のものを用い、これらの緑色系発光蛍光体と赤色系発光蛍光体とを1:0.35の割合で混合したものをシリコーン樹脂16中に分散したものを用いた。
【0035】
この波長変換部13を組み込んだ発光装置10及びこの発光装置をバックライトとして用いたLCDについて、その特性を評価した。その結果を表1に示す。また、実施例1の発光装置の発光スペクトル特性を図2に示す。
【0036】
(比較例1)
比較例1では、緑色系発光蛍光体として(Sr0.48Ba0.47Eu0.05)SiO(ピーク波長520nm前後)、赤色系発光蛍光体として(Ca0.99Eu0.01)AlSiNなる組成のものを用いた。この発光装置をバックライトとして用いたLCDについて、その特性を評価し、その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1から判るように、実施例1の発光装置は比較例1に比し、温度特性が著しく向上し、また、実施例1の発光装置をバックライトとして用いたLCDは比較例1に比し、色再現性(NTSC比)が更に向上することが判る。このように、本発明の発光装置は、各種(特に大型)LCD用バックライトとして好適な特性を有している。
【0039】
(実施例2)
発光素子として、青色である440nmにピ−ク波長を有する窒化ガリウム(GaN)系半導体を用いた。波長変換部には、緑色系発光蛍光体として(Sr0.95Eu0.05)Si21Al35(ピーク波長525nm前後)、赤色系発光蛍光体として(Ca0.980Eu0.020)AlSiNなる組成のものを用いた。これらの緑色系発光蛍光体と赤色系発光蛍光体とを実施例1と同様な方法にて波長変換部を作製し、この波長変換部を組み込んだ発光装置及びこの発光装置をバックライトとして用いたLCDについて、その特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0040】
(比較例2)
比較例2では、緑色系発光蛍光体として(Sr0.53Ba0.42Eu0.05)SiO(ピーク波長525nm前後)なる組成のものを用いた。この発光装置をバックライトとして用いたLCDについて、その特性を評価し、その結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2から判るように、実施例2の発光装置は比較例2に比し、温度特性が著しく向上するとともに、当該発光装置を用いたLCDは、色再現性(NTSC比)が更に向上していることが判る。すなわち、各種(特に大型)LCD用バックライトとして好適な特性を有している。
【0043】
(実施例3〜5、比較例3〜5)
実施例1と同様な方法にて、発光装置及びLCDを作製し、種々の特性を評価した結果を表3および表4に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
表3、4から判るように、実施例3〜5の発光装置を用いたLCDは、比較例3〜5のものに比し、色再現性(NTSC比)が更に向上し、温度特性が著しく向上することが判る。このことは、各種(特に大型)LCD用バックライトとして好適な特性を有している。
【0047】
なお、この種の発光装置に対して、用いられる蛍光体の温度特性の改善を成したものとして、前述したβ型SIALONである2価のユーロピウム付活酸窒化物よりなる緑色系発光蛍光体を用いることにより、色再現性(NTSC比)および温度特性の良好なLCDが得られることが知られている。しかしながら、前述したβ型SIALONである2価のユーロピウム付活酸窒化物よりなる緑色系発光蛍光体の発光のピーク波長は略530〜540nmであり、特に緑色域の再現性がまだ十分ではなかった。
【0048】
これに対し、本発明の蛍光体はより短波長即ち515〜525nmの発光が可能であるため、本発明の蛍光体を波長変換部に用いた発光装置をバックライト光源として組み込んだLCDは、色再現性(NTSC比)がより高い。
【0049】
図3に、β型SIALON緑色系発光蛍光体を用いた発光装置の発光スペクトル分布図を示す。図2に示した実施例1と略同じ発光色度となるよう調整して波長変換部を作成したものである。図3において、緑色帯域の発光のピークが略530〜540nmであり、図2と比較して緑色帯域の発光が長波長に寄っており、また同時に、赤色帯域の発光が抑えられてバランスし、実施例1と同じ発光色度となるものである。
【0050】
図4に、実施例1のバックライトの色再現性領域を示す色度図を示す。図中41は、ユーロピウム付活酸窒化物β型SIALON緑色系発光蛍光体を用いた発光装置をバックライト光源として組み込んだLCDの色再現域、図中40は、実施例1の発光装置をバックライト光源として組み込んだLCDの色再現域を示す。実施例1の色再現域40がβ型SIALON緑色系発光蛍光体を用いた発光装置の色再現域41と比較して特に緑色域の再現性が向上していることが分かる。
【0051】
(実施例6)
本実施例は、蛍光体として実施例1と同じものを用いているが、LCDにおけるサブピクセルがR(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)の4色となっているものを用いた。図5は、本実施例に係るLCD50の要部を示す模式図である(液晶セル内部、偏光板、導光板に付随する光学シートなど通常用いるLCD要素部材は示していない)。実施例1の蛍光体を用いた発光装置10から発した光は導光板51に導入され、導光板から上に出射した光は液晶セル52の各ピクセル53を透過する。1つのピクセル53は、4つのサブピクセルR(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)からなり、各サブピクセルは個別に駆動される。なお、1つのピクセルは、サブピクセルを上下左右に4つ並べたが、一つのピクセルにサブピクセルを4つ並列に配置するなど他の配置でも良い。
【0052】
図6は、本実施例に用いたR(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)フィルタの透過スペクトル特性を模式的に示す図である。青色LEDと蛍光体を用いた発光装置は比較的ブロードなスペクトルを有するので、R(赤)、G(緑)、B(青)の3つのフィルタだけでその領域をカバーしようとするとそれぞれのフィルタとして透過帯域の広いものを用いる必要があり、そのため色純度が低下し色再現域が低下する。Y(黄)フィルタを用いることにより、青色LEDと蛍光体を用いた発光装置のブロードなスペクトル全体を捉えて輝度を向上することができる。
【0053】
図7は、本実施例に係るLCDの色再現域70及び実施例1の色再現域40を示す色度図を示す。単に黄色のサブピクセルを加えただけでなく、それにより隣接する色である緑のサブピクセルの中心透過波長を黄色から離れるように短波長にずらし、LCDの色再現性を広げることができた。つまり、本実施例ではY(黄)フィルタを用いることにより、G(緑)フィルタとして短波長かつ狭帯域のものを用いることができた。本実施例においては、G(緑)フィルタの中心波長を520nmとした。色再現域を広くするためには、G(緑)フィルタの中心波長としては530nm以下、好ましくは520nm以下が適当である。ただし青色との重なりを少なくするためには490nm以上、好ましくは500nm以上が良い。
【0054】
なお、R(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)フィルタとの組合せに適した赤色蛍光体のピーク波長としては、LCD側で赤色フィルタを用い、蛍光体のスペクトルが長波長側にテールを引くことを考えると、波長590nm以上であれば良く、波長610nm以上であればなお良い。一方上限としては、長波長では視感度が悪いため680nm以下が適当であり、660nm以下であればなお良い。また、緑色蛍光体のピーク波長としては、緑色フィルタを短波長にして色再現域を向上できることを考えると、波長510nm以上530nm以下が良く、さらに好ましくは波長515nm以上525nm以下が良い。
【0055】
本実施例においては、導光板を用いたエッジライト型LCDとしたが、LCDの背面に本発光装置を配置し導光板を用いない背面照射型LCDとしてもよい。背面照射型LCDは、画素毎にバックライトの明るさを変調することができるため省エネルギーに優れ、また明・暗のコントラスト比を増大させることができる。
【0056】
実施例6においては、実施例1に用いた蛍光体を用いているが、実施例1以外の実施例に用いた蛍光体であってもよく、R(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)フィルタとのマッチングに優れた波長を有する蛍光体であれば、各比較例の蛍光体、その他の蛍光体であってもよい。
(実施例7)
図8に、本発明の発光装置をバックライト光源として組み込み、R(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)のサブピクセルを備えたLCD及びそれを駆動する回路を備える液晶テレビジョン80の構成図を示す。ここで実施例1の蛍光体を用いた発光装置(ただしサイド発光型でなく上面発光型のもの)をLCDパネルの背面にマトリクス状に配列し、背面からLED光を照射するエリアアクティブ型(ローカルディミング型)の液晶パネルであるLCD81を用いた画面サイズ46インチの液晶テレビジョンを作製した。LCD81は、各ピクセル82がR(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)のサブピクセルからなっている。
【0057】
外部アンテナ83から得られた放送信号を元に、R0(赤)、G0(緑)、B0(青)の信号を生成する回路84と、R0(赤)、G0(緑)、B0(青)の信号よりRGBY(赤、緑、青、黄)の信号を生成する回路85と、映像信号を元にLCD駆動信号を生成する液晶駆動回路86と、LCD81と、LCD81及び各回路を支持する筐体87を備えている。回路86において、Y(黄)信号は原則としてG(緑)信号とR(赤)信号より演算されるが、全体の表示色を最適化するためその加算比率を各信号レベルに応じて調整している(例えば完全な緑のみを表示する場合は、黄信号はゼロになる)。
【0058】
本テレビジョンにサンプル画像を表示して人間による主観的な評価を行った。特に、果物・肌色など緑色・黄色成分を多く含むサンプル画像に関して、色再現性の向上により良好な評価結果が得られた。
【0059】
動画像を滑らかに表示するため、液晶画面のリフレッシュレートは120Hzまたは240Hzとした。エリアアクティブ駆動でこのような高速のリフレッシュレートによる画像表示を行うため、各リフレッシュ毎に生成されるエリア毎の必要輝度情報に応じて、各エリアを受け持つ発光装置への駆動信号を設定する。駆動信号は、リフレッシュレートよりも高い周波数である600HzのPWM(Pulse width modulation)信号とした。
【0060】
発光装置に用いる蛍光体の応答速度はPWM信号には必ずしも追従する必要はないが、リフレッシュレートには追従する必要がある。緑色蛍光体(Sr0.99Eu0.01)Si13Al21(ピーク波長520nm前後)の1/e蛍光寿命が約1μsec、赤色蛍光体(Ca0.99Eu0.01)AlSiNも同じく、1/e蛍光寿命が約1μsecと高速であるので、240Hzのリフレッシュレートであってもエリアアクティブ駆動に追従することができた。
【0061】
LCDとしては、R(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)のサブピクセルを用いた場合としたが、別のサブピクセル、例えばW(白)、C(シアン)、M(マゼンダ)のうち1つ又は複数のサブピクセルを加えても、同様の効果を有する。他の色が加わる場合には、R0、G0、B0の信号よりその色の信号も生成する必要がある。
【0062】
なお、実施例7は液晶テレビジョンとしたが、コンピュータ用液晶モニタとしても色再現域の広いものが得られる。また、全体として高NTSC比であっても比較的低消費電力であるため、AC電源コードレスタイプの液晶モニタ・液晶テレビジョンとして好適である。
【0063】
なお、以上の各実施例における発光装置の評価にあたっては、明るさに関しては順電流(IF)20mAにて点灯し、発光装置からの光出力(光電流)を測定した。また、色度(x,y)については、発光装置から放射された光を大塚電子製MCPD−2000にて測定し、その値を求めた。また、色再現性(NTSC比)は、作成した発光装置を液晶表示装置のバックライト光源として組み込み、(株)トプコン製Bm5にて測定し、その値を求めた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明における、波長変換部を有する発光装置は、発光素子からの発光を高い効率で吸収して高効率な白色光を発光し、さらに温度特性が優れている。さらに、それを用いたLCDは色再現性(NTSC比)が高く高精彩な画像を得ることが出来る。特に本発明においては特定の蛍光体は、RGBYの4色のサブピクセルを有する液晶表示装置と組み合わせることで、色再現性(NTSC比)が高く、表示画像が明るいため、小型、中型及び大型の液晶表示装置に適用できる。
【符号の説明】
【0065】
10 発光装置、11 パッケージ、12 発光素子、13 波長変換部、14 緑色系発光蛍光体、15 赤色系発光蛍光体、16 シリコーン樹脂、40 本発明の発光装置をバックライト光源として組み込んだLCDの色再現域、41 β型SIALON緑色系発光蛍光体を用いた発光装置をバックライト光源として組み込んだLCDの色再現域、50 4色型LCD、51 導光板、52 液晶セル、53 ピクセル、70 本発明の発光装置をバックライト光源として組み込んだ4色型LCDの色再現域、80 4色型エリアアクティブ液晶テレビジョン、81 4色型LCD、82 ピクセル、83 外部アンテナ、84 R000信号生成回路、85 RGBY信号生成回路、86 液晶駆動回路、87 筐体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次光を発する発光素子と、前記1次光の一部を吸収して、1次光の波長よりも長い波長を有する2次光を発する波長変換部とを備えた発光装置において、前記波長変換部は1種以上の蛍光体からなり、前記1種以上の蛍光体は緑色系発光蛍光体及び赤色系発光蛍光体からなり、
前記緑色系発光蛍光体が、一般式(1)
(M11−xEu)SiAlO (1)
(式中、M1はアルカリ土類金属元素であり、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.001≦x≦0.3、0.9≦a≦1.5、4.0≦b≦6.0、0.4≦c≦1.0、6.0≦d≦11.0を満足する数である)で実質的に表される2価のユ−ロピウム付活酸窒化物蛍光体であり、
前記赤色系発光蛍光体が、一般式(2)
(M21−yEu)M3SiN (2)
(式中、M2はアルカリ土類金属元素であり、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、M3は3価の金属元素からなり、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Gd及びLuから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.001≦y≦0.10を満足する数である)
で表される2価のユ−ロピウム付活窒化物蛍光体であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記M1はSrであることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記緑色系発光蛍光体の発光のピーク波長が515nmから525nmの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項4】
前記M3はAl、Ga及びInから選ばれる少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子は、窒化ガリウム(GaN)系半導体であり、前記発光素子から発する1次光は、ピ−ク波長が430nmから480nmの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項6】
LCD用バックライトとして用いられることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項7】
バックライトとフィルタを備えた液晶表示装置であって、
前記バックライトは、発光素子と前記発光素子から発する1次光を吸収して第1の2次光を発する第1の蛍光体及び第2の2次光を発する第2の蛍光体を備えた波長変換部を含む発光装置を備え、
前記発光素子は青色にピーク波長を有し、
前記第1の蛍光体が発する2次光は波長510nm以上530nm以下にピーク波長を有し、
前記第2の蛍光体が発する2次光は波長630nm以上680nm以下にピーク波長を有し、
前記フィルタは、前記液晶表示装置の各ピクセルに配されたサブピクセル毎に、赤(R)、緑(G)、青(B)と黄(Y)の各色用のフィルタが平面上に配置されたものであり、
前記緑色用のフィルタは波長490nm以上530nm以下に透過率のピーク波長を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
前記第1の蛍光体が、次の一般式(1)
(M11−xEu)SiAlO (1)
(式中、M1はアルカリ土類金属元素であり、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.001≦x≦0.3、0.9≦a≦1.5、4.0≦b≦6.0、0.4≦c≦1.0、6.0≦d≦11.0を満足する数である)
で表される2価のユ−ロピウム付活緑色系発光酸窒化物蛍光体であることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記第2の蛍光体が、次の一般式(2)
(M21−yEu)M3SiN (2)
(式中、M2はアルカリ土類金属元素であり、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、M3は3価の金属元素からなり、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Gd及びLuから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.001≦y≦0.10を満足する数である)
で表される2価のユ−ロピウム付活赤色系発光窒化物蛍光体であることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
RGB信号をRGBY信号に変換する回路とともに筐体に保持されていることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
リフレッシュレートが120Hz以上であるエリアアクティブ駆動であって、前記リフレッシュレートに追従して前記エリアアクティブ駆動により明るさを変化させることを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−54659(P2011−54659A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200444(P2009−200444)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】