発光装置及び電子機器
【課題】発光素子に対する温度の影響を極力排除し、かつ、構成の簡易な発光装置を提供する。また、無駄な電力消費量の低減を図る。
【解決手段】発光装置は、基板上に形成される複数の有機EL素子(8S)と、これらの各々を駆動し、かつ、電流が流されることによって有機EL素子の発熱量に応じた熱を発する発熱素子を少なくとも含む駆動回路(11S)と、少なくとも、前記発熱素子に電流が流れるかどうかについて、前記駆動回路を制御する制御手段(CU)と、を備え、前記制御手段は、通常モードの場合、前記発光素子が非発光の際に前記発熱素子に電流を流し、かつ、省エネ運転モードの場合、前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さないように、前記駆動回路を制御する。
【解決手段】発光装置は、基板上に形成される複数の有機EL素子(8S)と、これらの各々を駆動し、かつ、電流が流されることによって有機EL素子の発熱量に応じた熱を発する発熱素子を少なくとも含む駆動回路(11S)と、少なくとも、前記発熱素子に電流が流れるかどうかについて、前記駆動回路を制御する制御手段(CU)と、を備え、前記制御手段は、通常モードの場合、前記発光素子が非発光の際に前記発熱素子に電流を流し、かつ、省エネ運転モードの場合、前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さないように、前記駆動回路を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンスにより発光する発光装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で軽量な発光源として、OLED(organic light emitting diode)、すなわち有機EL(electro luminescent)素子が注目を集めている。有機EL素子は、有機材料で形成された少なくとも一層の有機発光層を画素電極と対向電極とで挟んだ構造を有する。有機EL素子は、これら画素電極及び対向電極間に所定の電流が供給されることによって発光する。
【0003】
このような有機EL素子を含む発光装置は、例えば、タンデム方式や4サイクル方式等のラインプリンタ等の画像形成装置用のプリンタヘッドに利用される。ここで画像形成装置とは、例えば前記のプリンタヘッドに加えて、感光体ドラム等の像担持体、帯電器、現像器、及び転写器等を備える。像担持体は、帯電器によって帯電された後、プリンタヘッドの一部を構成する有機EL素子から発した光に曝される。この露光によって、像担持体の表面には静電潜像が形成される。この後、当該静電潜像は、現像器から供給されるトナーによって現像され、このトナーが転写器によって紙等の被転写媒体に転写される。これにより、被転写媒体上には、所望の画像が形成されることになる。
【0004】
このような画像形成装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開2007−66952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような画像形成装置におけるプリンタヘッド、即ち発光装置は、一般に、その温度に応じて発光状態が変化する特性をもつ。例えば、前記有機EL素子において、輝度特性、あるいは電流特性が異なる場合がある。また、例えば、前記の両電極間に電圧が印加されて発光が開始されてから、その輝度が所定値に達するまでの時間は、前記有機発光層の温度が低いと長く、高いと短い。したがって、例えば、前記画像形成装置において同階調の画像を形成しようとしても、運転開始直後の時点とその後一定時間経過した時点とにおいて形成した被転写媒体上の画像の階調が異なる、といった不具合が発生しうることになる。前者の時点では未だ有機発光層は冷えており、後者の時点では暖められているからである。
なお、前述の有機EL素子は、温度に応じた発光状態の変化が、他の発光素子に比べて、顕著であるため、上述の問題はより深刻となる。
【0006】
前述の特許文献1では、このような不具合に対処するべく、「各発光素子を加熱する加熱手段」を備えている(特許文献1の〔請求項1〕、〔図3〕等)。これによれば、各発光素子は、加熱手段によって所定の温度となるよう暖められることになるから、たしかに、前記の不具合を一定程度解消することは可能である。
しかしながら、かかる手段では、「加熱手段」それ自体を別途に設ける必要が生じ、更には、この加熱手段が発熱するのに必要なエネルギを供給するための手段等もまた、別途に設ける必要がある。このように、特許文献1の開示の技術によれば、総じて、発光装置の構成が複雑化してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、発光素子に対する温度の影響を極力排除し、かつ、構成の簡易な発光装置及び電子機器を提供することを課題とする。
また、本発明は、そのような課題を解決する発光装置において新たに生じる問題の不具合をこうむらないような発光装置及び電子機器を提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の観点に係る発光装置は、上述した課題を解決するため、基板と、前記基板上に形成される複数の発光素子と、前記複数の発光素子の各々を駆動し、かつ、電流が流されることによって前記発光素子の発熱量に応じた熱を発する発熱素子を少なくとも含む駆動回路と、少なくとも、前記発熱素子に電流が流れるかどうかについて、前記駆動回路を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、第1の場合において、前記発光素子が非発光の際に前記発熱素子に電流を流し、かつ、第2の場合において、前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さないように、前記駆動回路を制御する。
【0009】
本発明によれば、まず、発熱素子を含む駆動回路が備えられているので、従来のように、発光素子を加熱するための加熱手段等を特別に設ける必要がない。したがって、当該発光装置の構成は極めて簡易化される。また、本発明では、発光素子は、その非発光の際に、前記発熱素子から発した熱を受け得るので、その際に予想される当該発光素子の温度低下が防がれる結果、当該発光素子の温度が比較的安定する。したがって、本発明に係る発光装置は、周囲の環境温度、当該発光装置の運用時間等の相違によって生じる温度の相違の影響を殆ど受けず、殆ど常に、所望の発光輝度を維持し得る。
ただ、この場合、新たな問題、即ち、発光素子が発光時には当該発光素子によって電力が消費され、また、非発光時には発熱素子によって電力が消費されることとなる結果、発光装置は、常に、電力を消費することとなってしまう問題が生じる。
この点、本発明では、「第2の場合」においては、発光素子が非発光であっても、発熱素子に電流が流れないようになっている。したがって、本発明においては、その分の消費電力の低減が図られるのである。
なお、「発熱素子」とは、具体的には例えば、発光素子の定電流源となる薄膜トランジスタ等、発光素子の駆動に不可欠的回路要素が該当しうる。ただし、場合によっては、発熱それ自体を目的とする素子を設けるのでもよい。また、発熱素子の数は、1つの駆動回路につき1つあればよいが、2つ以上あってもよい。
【0010】
この発明の発光装置では、前記駆動回路は、前記複数の発光素子の各々に対応する複数の駆動回路からなり、前記複数の駆動回路の各々は、前記発熱素子として、前記発光素子に直列に接続され、当該発光素子の定電流源として機能する駆動用トランジスタ、を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、発熱素子が発光素子を駆動するための必要な回路要素と兼用とされるので、発光装置の構成の更なる簡易化が達成される。
なお、駆動回路が、本態様のような回路構成を備える場合において、前述の、「第1の場合」、即ち「発光素子が非発光の際に前記発熱素子に電流を流」す、を実現するための、より具体的な構成については、後述する「発熱用トランジスタ」や「スイッチングトランジスタ」を当該回路構成に併設する構成の他、種々の構成があり得る。
【0011】
この「駆動用トランジスタ」を含む態様では、前記駆動用トランジスタが電気的に接続された電源線と、前記電源線上に設けられる第1スイッチ手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記電源線が切断されるように前記第1スイッチ手段を制御する、ように構成してもよい。
これによれば、前述の、「第2の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さない」という状態を、好適に実現することができる。
【0012】
あるいは、「駆動用トランジスタ」を含む態様では、前記発光素子を介して前記駆動用トランジスタと電気的に接続された共通線と、前記共通線上に設けられる第2スイッチ手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記共通線が切断されるように前記第2スイッチ手段を制御する、ように構成してもよい。
これによっても、前述の、「第2の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さない」という状態を、好適に実現することができる。
【0013】
さらに、「駆動用トランジスタ」を含む態様では、前記駆動用トランジスタのソースに電気的に接続された電源線と、前記駆動用トランジスタのドレインに前記発光素子を介して電気的に接続された共通線と、を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記第1の場合に比べて、前記共通線の電圧を高めるように、前記駆動回路を制御する、ように構成してもよい。
これによれば、前述の、「第2の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さない」という状態を、好適に実現することができる。
また、かかる態様では、前述した、「第1スイッチ手段」、あるいは「第2スイッチ手段」といった特別な要素を特に設ける必要がないから、その分、構成の簡易化が達成される。
【0014】
あるいは、「駆動用トランジスタ」を含む態様では、前記駆動用トランジスタのソースに電気的に接続された電源線と、前記駆動用トランジスタのドレインに前記発光素子を介して電気的に接続された共通線と、を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記第1の場合に比べて、前記電源線の電圧を低めるように、前記駆動回路を制御する、ように構成してもよい。
これによっても、前述の、「第2の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さない」という状態を、好適に実現することができる。
また、かかる態様によっても、前述した、「第1スイッチ手段」、あるいは「第2スイッチ手段」といった特別な要素を特に設ける必要がないから、その分、構成の簡易化が達成される。
さらに、この態様において、発熱素子における発熱を殆ど完全に停止させるためには、前記駆動用トランジスタのゲート・ソース間電圧が0V以下となるように、当該電源線の電圧が低められるようにするのが好ましい。この場合、一般に、電圧調整の幅は、前述の共通線の電圧を高める態様におけるそれに比べると小さくて済むから、制御が容易という点で、当該態様よりも有利ということができる。
【0015】
また、前記発光装置では、前記駆動回路の各々は、前記発熱素子として、前記駆動用トランジスタに加え、前記発光素子及び前記駆動用トランジスタと並列に接続され、前記発光素子で生成される単位時間当たりの発熱量に応じた発熱が生じる電流が流れるように制御される発熱用トランジスタ、を更に含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述の、「第1の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際に前記発熱素子に電流を流」す、という状態を、好適に実現することができる。
なお、この場合、前述の駆動用トランジスタのソースが前記電源線に接続されるのであれば、当該発熱用トランジスタのソースもまた当該電源線に接続され、あるいは、駆動用トランジスタのドレインが前記共通線に接続されるのであれば、当該発熱用トランジスタのドレインもまた当該共通線に接続されるのが好ましい。これによれば、駆動用トランジスタに加えて、かかる発熱用トランジスタに対しても、前述した、「第2の場合」を好適に実現する各態様の適用が可能となるからである。そして、その適用の結果によれば、両トランジスタにおける電力消費が防止されるのだから、消費電力低減という効果は更に実効的に奏される。
【0016】
あるいは、前記発光装置では、前記駆動回路の各々は、前記発熱素子として、前記駆動用トランジスタに加え、前記発光素子とは並列に、かつ、前記駆動用トランジスタとは直列に接続され、前記駆動用トランジスタに流れる電流を前記発光素子に流すかどうかを決めるスイッチングトランジスタ、を更に含む、ように構成してもよい。
この態様によっても、前述の、「第1の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際に前記発熱素子に電流を流」す、という状態を、好適に実現することができる。
【0017】
この「スイッチングトランジスタ」を含む態様では、前記駆動用トランジスタのゲートに電気的に接続され、当該駆動用トランジスタで生成される電流の大きさを定める信号を運ぶ制御線を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記第1の場合におけるのとは異なるように、前記信号の有無及び程度を制御する、ように構成してもよい。
これによれば、前述の、「第2の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さない」という状態を、好適に実現することができる。
また、かかる態様では、前述の「電源線」や「共通線」の電圧を調整する各態様に比べると、制御が比較的容易になるという利点が得られる。
【0018】
また、「スイッチングトランジスタ」を含む態様では、前記制御手段は、第3の場合において、前記第1の場合及び前記第2の場合に比べて、前記駆動用トランジスタに流れる電流量が増大するように、前記信号の程度を制御する、ように構成してもよい。
これによれば、第3の場合において、駆動用トランジスタは比較的活発に発熱する。したがって、発光素子は、この駆動用トランジスタの熱を受けて比較的速やかに昇温することになる。このような「第3の場合」は、例えば当該発光装置の始動時に適用されて好適である。というのも、その場合、発光素子は、いわば冷えきった状態にあるからである。要するに、本構成は、当該発光装置のウォームアップのために最適な構成の1つを提供する。
なお、本構成にいう「第3の場合」に係る制御が実行されるのも、前記の第1及び第2の場合と同様、好適には、発光素子が非発光の際、であるのが好ましい。
【0019】
また、本発明の発光装置では、前記制御手段は、第3の場合において、前記第1の場合及び前記第2の場合に比べて、前記電源線の電圧を高めるように、前記駆動回路を制御する、ように構成してもよい。
この態様によれば、第3の場合において、駆動用トランジスタは比較的活発に発熱する。したがって、発光素子は比較的速やかに昇温することになる。このような「第3の場合」は、例えば当該発光装置の始動時に適用されて好適である。というのも、その場合、発光素子は、いわば冷えきった状態にあるからである。要するに、本構成は、当該発光装置のウォームアップのために最適な構成の1つを提供する。
なお、本構成にいう「第3の場合」に係る制御が実行されるのも、前記の第1及び第2の場合と同様、好適には、発光素子が非発光の際、であるのが好ましい。
また、本態様は、「前記発光素子を介して前記駆動用トランジスタと電気的に接続された共通線と、前記共通線上に設けられる第2スイッチ手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記共通線が切断されるように前記第2スイッチ手段を制御する」態様であって、その中の駆動用トランジスタが電気的に電源線とも接続される態様に対しても、当然適用可能である。
【0020】
あるいは、本発明の発光装置では、前記制御手段は、第3の場合において、前記第1の場合及び前記第2の場合に比べて、前記共通線の電圧を低めるように、前記駆動回路を制御する、ように構成してもよい。
この態様によっても、第3の場合において、駆動用トランジスタは比較的活発に発熱し、またしたがって、発光素子は比較的速やかに昇温することになる。
なお、本態様は、「前記駆動用トランジスタが電気的に接続された電源線と、前記電源線上に設けられる第1スイッチ手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記電源線が切断されるように前記第1スイッチ手段を制御する」態様であって、その中の駆動用トランジスタが電気的に共通線とも接続される態様に対しても、当然適用可能である。
【0021】
また、本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、上述した各種の発光装置を備える。
本発明の電子機器は、上述した各種の発光装置、即ち温度の影響を受けずに発光輝度を維持し得る発光装置を備えているので、殆ど常に、高品質な画像を形成することが可能な電子機器を提供することができる。
また、本発明の電子機器では、消費電力低減効果の享受が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下では、本発明に係る実施の形態について図1乃至図5を参照しながら説明する。なお、これらの図面及びそれ以外の図面で以下に参照する各図面においては、各部の寸法の比率が実際のものとは適宜に異ならせてある場合がある。
図1は、発光装置10を光ヘッド(発光装置)として用いる画像形成装置の部分的な構成を示す斜視図である。同図に示すように、この画像形成装置は、発光装置10、集束性レンズアレイ15、感光体ドラム110、及び制御部CUを含む。
【0023】
このうち発光装置10は、図1中長手方向に沿って配列された複数の有機EL素子(発光素子)を備える。これら有機EL素子の各々は、図1中下方に向けて光を出射する(図中破線参照)。この光は、すぐ後に述べる集束性レンズアレイ15に入射する。
【0024】
集束性レンズアレイ15は発光装置10と感光体ドラム110との間に配置される。集束性レンズアレイ15は、各々の光軸を発光装置10に向けた姿勢でアレイ状に配列された多数の屈折率分布型レンズを含む。発光装置10の各有機EL素子からの出射光は集束性レンズアレイ15の各屈折率分布型レンズを透過したうえで感光体ドラム110の外表面に到達する。
なお、この集束性レンズアレイ15としては、具体的には例えば、日本板硝子株式会社から入手可能なSLA(セルフォック・レンズ・アレイ)を用いることができる(セルフォック:SELFOCは日本板硝子株式会社の登録商標)。これを用いれば、発光装置10からの光は、感光体ドラム110の上で、正立等倍結像する。
【0025】
感光体ドラム110は略円柱形状をもつ。その中心軸には、回転軸が備えられている。感光体ドラム110は、この回転軸を中心として記録材(被転写媒体)が搬送される方向である副走査方向に回転する(図中の矢印参照)。なお、回転軸の延在方向は、主走査方向に一致する。
このような感光体ドラム110及び前記の発光装置10は、当該感光体ドラム110の回転タイミングと発光装置10の各有機EL素子の発光タイミングとの間に所定の関係が成立するように、制御される。例えば、主走査方向に沿っては、形成しようとする画像の1ライン分の明暗に応じて、各有機EL素子の発光・非発光が制御され、副走査方向に沿っては、1ライン分の画像に関する感光工程が完了した後に感光体ドラムが所定の角度だけ回転するように、当該感光体ドラムの回転が制御される。このようにして、感光ドラム110の外表面には、所望の画像に応じた潜像(静電潜像)が形成される。
【0026】
制御部CUは、いずれも図示しない、CPU(Central Process Unit)、必要な情報を記憶するRAM(Random Access Memory)、及び当該画像形成装置を運用する上で必要なプラグラム等を格納するROM(Read Only Memory)等を備える。前述の感光体ドラム110の回転タイミングと発光装置10の発光タイミングとの同期も、この制御部CUによってはかられる。
また、この制御部CUは、後述するように、複数の有機EL素子の各々の発光タイミングと、発熱用トランジスタにおける電流印加タイミングとの関係設定に係る制御等をも行う。
そのほか、当該制御部CUは、本実施形態に係る画像形成装置を構成する各種要素が調和的に動作するように、当該各種要素の動作を司る。
【0027】
さらに、この制御部CUは、本実施形態に係る発光装置10に関し、後述する3つの運転モード間の切替に係る制御をも行う。
より具体的には、図2に示すように、制御部CUは、発光装置10に電圧を供給する電源回路PWに制御信号を供給する。
このうち発光装置10は、駆動回路11S及び有機EL素子8Sを備えている。前者は後者を駆動するため当該後者に電流を供給する。なお、発光装置10は、前述のように複数の有機EL素子をもつが、ここでいう「有機EL素子8S」(特に「8S」なる符合)は、そのような複数の有機EL素子を一体的に表現するものとして使用されている。「駆動回路11S」(特に「11S」なる符合)についても、同様である。なお、この発光装置10についてのより詳細な構成については、後に改めて述べる。
【0028】
一方、電源回路PWは、それぞれ異なる3つの値をもつ電圧Vel1,Vel2及びVel3を駆動回路110に供給することが可能である。また、この電源回路PWはモード切替回路MXを備えている。モード切替回路MXは、前記制御信号の内容に従って、電圧切替動作を電源回路PW本体に指示する。電源回路PWは、モード切替回路MXによる前記電圧切替動作の結果に従い、前記3つの電圧のうちいずれか1つを発光装置10に供給する。
このような3つの値をもつ電圧Vel1,Vel2及びVel3間の切替が、如何なる意義を有するかについては、後に改めて説明する。
【0029】
前述の発光装置10は、より詳細には、図3に示すような構造を持つ。図3において、発光装置10は、素子基板7及びカバー基板12を備えている。このうち素子基板7は、同図に示すように、平面視して略長方形状をもつ板状の部材である。この素子基板7は、例えばガラスや石英、プラスチックなどの透光性材料で作られる。
【0030】
この素子基板7の上には、複数の有機EL素子8及び複数の駆動回路11等が形成されている。なお、図3において示されている有機EL素子8の数、及び、駆動回路11の数は、単なる一例を示しているに過ぎない。これらを実際にいくつか設けるかは、本発明の本質に関わらない。
【0031】
有機EL素子8は、相互に対向する2つの電極、及び、これら2つの電極間に少なくとも有機発光層を含む発光機能層を備えている(いずれも不図示)。前記2つの電極のうち一方の電極には、共通線16が接続され、他方の電極には駆動素子を介して電源線14が接続される(このうち駆動素子については図3において不図示。これについては、すぐ後に図4を参照して説明する。)。
また、発光機能層に含まれる有機発光層は正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から構成されている。発光機能層は、前記有機発光層のほか、電子ブロック層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び正孔ブロック層の一部又は全部を備えていてもよい。
本実施形態において、この有機EL素子8は、図3に示すように、素子基板7の長手方向に延びる直線に沿うように、千鳥足状に配列されている。ここで「直線」とは、図3においてはたまたま、共通線16がそれになぞらえられる。また、「千鳥足状」に配列されるとは、端から順番に有機EL素子に1,2,3,…と番号を振るとするなら、奇数番目は当該直線を基準として図3中上側、偶数番目は当該直線を基準として図3中下側に配置される、というような配列、を含意する。
【0032】
駆動回路11は、有機EL素子8を駆動する。より詳しくは、図4に示すように、駆動回路11は、駆動用トランジスタTdr1と発熱用トランジスタTconとを備えている。
このうち駆動用トランジスタTdr1は、前述で「駆動素子」と述べたものに該当し、有機EL素子8と電源線14との間に介在して、電源線14から有機EL素子8への通電の有無及び程度を制御する。その通電は、駆動用トランジスタTdr1のゲートに入力される発光信号Data1のレベルに応じる。なお、電源線14は、図2に示した電源回路PWから電圧の供給を受ける。
【0033】
一方、発熱用トランジスタTconは、前述の有機EL素子8及び駆動用トランジスタTdr1と並列に接続されている。すなわち、発熱用トランジスタTconのソースは電源線14に接続され、そのドレインは有機EL素子8を構成する両電極のうち駆動用トランジスタTdr1が接続されていない方の電極に接続されている。また、発熱用トランジスタTconのゲートは、発熱信号X Dataが供給される制御線に接続されている。
【0034】
このような発熱用トランジスタTconは、前記発熱信号X Dataのレベルに応じて、有機EL素子8で生成される単位時間当たりの発熱量に応じた発熱が生じる電流が流される。
これをよりよく実現するため、具体的には例えば、駆動用トランジスタTdr1及び発熱用トランジスタTconの特性は、各々のゲートに同レベルの信号が供給されたときに流れる電流Ioled及びIconの各値がほぼ同じになるように設定されていると好ましい。あるいは、駆動用トランジスタTdr1の発熱も考慮に入れるなら、電流Iconの値は、電流Ioledの値よりも一定程度小さくてもよい。あるいは、電流Ioledの一部は光エネルギに変換され、それは発熱には寄与しないこと、そして、その場合における有機EL素子8と発熱用トランジスタTconとの熱エネルギを等価にすること、をも考慮に入れるなら、やはり、電流Iconの値は、電流Ioledの値よりも一定程度小さくてもよい。
【0035】
また、駆動回路11は、例えば図5に示すようなタイミングチャートに従って動作する。なお、この場合、駆動用トランジスタTdr1と発熱用トランジスタTconとは、それぞれ飽和領域において使用されることが前提とされている。
図5において、発光信号Data1は一定周期をもつ矩形波状の信号である。他方、発熱信号X Dataは、発光信号Data1がLレベルのときHレベルとなり、HレベルのときLレベルとなるような、矩形波状の信号である。発光信号Data1が、Lレベルにあるとき、有機EL素子8には、駆動用トランジスタTdr1の飽和電流たる電流Ioledが流れる。したがって、この際、有機EL素子8は発光するとともに発熱する。他方、発熱信号X DataがLレベルにあるとき、有機EL素子8には電流が流れず、発熱用トランジスタTconをその飽和電流たる電流Iconが流れる。したがって、この際、発熱用トランジスタTconは発熱する。
ここで、発光信号Data1及び発熱信号X Dataは、上述のように相補的であるから、有機EL素子8が発熱する時には発熱用トランジスタTconは発熱せず、有機EL素子8が発熱しない時には発熱用トランジスタTconは発熱する、という関係が成立する。
なお、電流Ioledの値と電流Iconの値との和は、図5において常に一定である(図中“Ito”参照。)。
【0036】
なお、前述の発光信号Data1及び発熱信号X Dataは、図1ないし図2の制御部CUによって発せられる。
また、図4に示す駆動回路11において、発熱するのは発熱用トランジスタTconのみに限られない。すなわち、駆動用トランジスタTdr1もまた、電流が流れれば当然発熱する。したがって、本発明にいう「発熱素子」には、前記の発熱用トランジスタTconのみならず、駆動用トランジスタTdr1もまた、その該当性を有する。
【0037】
以上のような回路構成をもつ駆動回路11は、図3に示すように、前述の千鳥足状に配列された複数の有機EL素子8を挟み込むように配列される。より具体的には、これら複数の駆動回路11は、図3では上側に位置する第1の駆動回路群11aと、下側に位置する第2の駆動回路群11bとに分かたれて配置される。これら第1及び第2の駆動回路群11a及び11bは、ともに共通線16に沿って並び、かつ、両者が当該共通線16及び複数の有機EL素子8の双方を共に挟んで対向するように配置される。
【0038】
また、複数の駆動回路11は、図3に示すように、ダミー駆動回路11D1乃至11D4を備えている。これら4つのダミー駆動回路11D1乃至11D4のうち、ダミー駆動回路11D1は、第1の駆動回路群11a中、図中最左端に位置づけられ、ダミー駆動回路11D2は、同最右端に位置づけられている。また、ダミー駆動回路11D3は、第2の駆動回路群11b中、図中最左端に位置づけられ、ダミー駆動回路11D4は、同最右端に位置づけられている。
ここでダミー駆動回路11D1乃至11D4とは、図4でいえば、有機EL素子8、駆動用トランジスタTdr1及び発熱用トランジスタTconのうち、例えば最前者のみを備えていない回路構成を持つ駆動回路である。つまり、かかるダミー駆動回路11D1乃至11D4では、発熱信号X Dataのレベルに応じて、主に、発熱用トランジスタTconによる発熱のみが生じるのである。
なお、ダミー駆動回路11D1乃至11D4は、場合により、有機EL素子8に加えて、駆動用トランジスタTdr1の設置を省略した回路構成を備えていてもよい。
【0039】
図3に示すカバー基板12は、素子基板7と同様、平面視して略長方形状をもつ板状の部材である。ただし、このカバー基板12は、素子基板7に比べて、その平面視した場合の面積が一回り小さい。カバー基板12は、素子基板7上の有機EL素子8及び駆動回路11を覆うように設置されるが、前者の面積が後者のそれよりも一回り小さいため、素子基板7には余剰の領域が生じる。この領域には、例えば駆動回路11と、図2に示した電源回路PWとを接続するための入出力端子等が設けられる。
このカバー基板12は、有機EL素子8に対して水分が浸入することを防止する機能をもつ。なお、このような機能は素子基板7においてもまた果たしえる。結局、有機EL素子8は、図3の紙面を貫く方向に沿って、素子基板7及びカバー基板12双方によって挟み込まれる状態におかれることで、水分、あるいはその他の埃等の進入という観点からみて、ほぼ完全に封止される。
このようなカバー基板12は、例えばガラス、あるいは適当な金属材料から作られる。
【0040】
なお、これら素子基板7及びカバー基板12からなる、発光装置10全体の大きさは、例えば、その長さ(図3でいえばその左右方向の長さ)が330〜350mm、幅(図3でいえばその上下方向の長さ)が10〜30mm、厚さ(図3でいえばその紙面垂直方向の長さ)が1〜5mm、等とされて好適である。この具体例によれば、前記記録材(被転写媒体)のサイズが“A3サイズ”である場合にも対応可能である。
【0041】
以下では、以上のような構成を備える発光装置10の作用効果について、既に参照した図面に加えて、図6及び図7を参照しながら説明する。
発光装置10は、上述のように、複数の有機EL素子8と、これら各々に対応する、発熱用トランジスタTconを含む駆動回路11を複数備えている。そして、これも上述のように、有機EL素子8の発光時(即ち、発熱時)は、発熱用トランジスタTconは発熱せず、有機EL素子8の非発光時は、発熱用トランジスタTconは発熱する。
【0042】
このようにして有機EL素子8及び駆動回路11によって発せられた熱は、周囲に輻射され、また、素子基板7の表面及び内部を伝導する。したがって、これら有機EL素子8及び駆動回路11から熱が発せられる場合においては、その熱の影響が及ぶ領域(以下、これを「加熱領域」ということがある。)が、画定され得る。ちなみに、駆動回路11に関する加熱領域の画定に当たっては、ダミー駆動回路11D1乃至11D4の存在も当然考慮に入れられる。
【0043】
このような加熱領域が画定される結果、当該の発光素子10全体の観点からみた温度安定領域RTPが画定され得る(図中その内部にハッチングをかけた破線の囲み参照)。この温度安定領域RTPは、以下のような背景を持つ。
(1) 複数の有機EL素子8の各々は、画像形成装置の運転期間中、発光及び未発光(消灯)を繰り返すが、前者の場合、当該各々の周囲(即ち、当該有機EL素子に関する加熱領域の範囲)の温度は上昇し、後者の場合、当該温度は低下する。
(2) もっとも、この後者の場合、本実施形態では、発熱用トランジスタTconが発熱するので、駆動回路11に関する加熱領域に含まれる範囲においては、前記の温度の低下分が補われるように、熱の供給が行われる。
(3) 上記の(1)及び(2)は適宜繰り返されることになるが、それによれば、温度が一定の範囲からは外れない安定した領域が生まれる。
(3´) なお、有機EL素子8の発光を安定させるという観点からみれば、直接には関係ない事項ではあるが、発熱用トランジスタTconが発熱しない時、この発熱用トランジスタTconは有機EL素子の発熱の影響を受ける。そうすると、当該発熱用トランジスタTconを含む一定の領域もまた、温度が一定の範囲からは外れない。
(4) 以上の(3)及び(3´)によって規定される領域が、温度安定領域RTPである。
(5) この温度安定領域RTPは、本実施形態において、前記の発熱中心CD1(あるいは、前記の発熱中心CC1及びCC2を結ぶ線分の中間点)を中心にもつ。
【0044】
そして、本実施形態においては、このような温度安定領域RTPは、図6に示すように、複数の有機EL素子8全体を好適に包み込むような範囲をもつ。
このようなことから、本実施形態によれば、有機EL素子8の周囲の温度は極めて安定する。また、当該有機EL素子8それ自体の温度もまた安定し、もって、その発光状態も常に所定の状態に維持され得ることになる。
したがって、本実施形態に係る発光装置10は、周囲の環境温度、当該発光装置10の運用時間、あるいは複数の有機EL素子8それぞれの発光頻度等の相違によって生じる温度の相違の影響を殆ど受けず、殆ど常に、所望の発光輝度を維持し得る。
よってまた、本実施形態に係る画像形成装置は、殆ど常に、品質の安定した画像を形成することが可能になる。
【0045】
ただ、この場合、消費電力量の問題が生じる。というのも、有機EL素子8が発光時には当該有機EL素子8によって電力が消費され、また、非発光時には発熱用トランジスタTconによって電力が消費されることとなる結果、発光装置10は、常に、電力を消費することとなってしまうからである。
ここで、前述した3つの値をもつ電圧Vel1,Vel2及びVel3の意義が明らかとなる。すなわち、本実施形態に係る画像形性装置は、これら3つの電圧Vel1,Vel2及びVel3それぞれに対応する3つの運転モードに従って運転される。3つの運転モードとは、第1に「通常運転モード」、第2に「省エネ運転モード」、第3に「暖機運転モード」である。
【0046】
まず、「通常運転モード」とは、感光体ドラム110の表面に形成しようとする画像に応じて各有機EL素子8が発光及び非発光(消灯)を比較的頻繁に繰り返すとともに、上述のように、有機EL素子8が非発光の際には発熱用トランジスタTconに電流が流れて発熱するというモードである。この場合、制御部CUは、電源回路PWから第1の電圧Vel1が駆動回路11に供給されるような制御信号を発する。この第1の電圧Vel1は、有機EL素子8の発光及び発熱用トランジスタTconの発熱に好適な値をもつ。
結局、制御部CUは、この通常運転モードにおいて、自ら発する制御信号を通じ、かつ、電源回路PWを介して、間接的に駆動回路11を制御することで、有機EL素子8が非発光の際に発熱用トランジスタTconを発熱させる。
【0047】
また、「省エネ運転モード」とは、有機EL素子8が非発光の際にも、発熱用トランジスタTconに電流を流さないようにするというモードである。この場合、制御部CUは、駆動回路PWから第2の電圧Vel2が駆動回路11に供給されるような制御信号を発する。この第2の電圧Vel2の値は、第1の電圧Vel1の値に比べて小さい(Vel2<Vel1)。より具体的に、好適には、この第2の電圧Vel2の値は、発熱用トランジスタTcon、あるいは駆動用トランジスタTdr1のゲート・ソース間の電圧が0V以下となるように、定められる。
結局、制御部CUは、この省エネ運転モードにおいて、自ら発する制御信号を通じ、かつ、電源回路PWを介して、間接的に駆動回路11を制御することで、有機EL素子8が非発光の際にも発熱用トランジスタTconを発熱させない。
そして、このような省エネ・運転モードによれば、有機EL素子8における電力消費も、発熱用トランジスタTconにおける電力消費も発生しないことになる。
【0048】
さらに、「暖機運転モード」とは、前述の2つの運転モード時における場合よりも、より大きな電流が発熱用トランジスタTconに流れるようにするというモードである。この場合、制御部CUは、電源回路PWから第3の電圧Vel3が駆動回路11に供給されるような制御信号を発する。この第3の電圧Vel3は、前述の第1の電圧Vel1に比べて、大きい(Vel3>Vel1。なお、これにより結局、Vel2<Vel1<Vel3が成立する。)。この第3の電圧Vel3の値は、基本的に自由に定められ得るが、発熱用トランジスタTconの破壊をもたらすような値等が許されないことは言うまでもない。
結局、制御部CUは、自ら発する制御信号を通じ、かつ、電源回路PWを介して、間接的に駆動回路11を制御することで、発熱用トランジスタTconは比較的激しく発熱する。
そして、このような暖機運転モードによれば、有機EL素子8は、その比較的激しく発熱する発熱用トランジスタTconの熱を受けることで、比較的速やかに昇温することになる。
なお、この運転モードにある場合においては、図5に示す発熱信号X Dataは、一定時間、Lレベルを維持し、かつ、発光信号Dataは同時間、Hレベルを維持することが好ましい。ここで一定時間とは、有機EL素子8が所定の温度に到達するまでの時間を基準として定められ得る。
【0049】
これら3つの運転モードは、例えば図7に示すように、時間の進行に従い適宜選択される。この図7において、横軸は時間であり、縦軸は、複数の駆動回路11のうちある1つの駆動回路11に着目した場合における、当該駆動回路11中に存する1個の発熱用トランジスタTconの発熱量を表している。
【0050】
まず、画像形成装置の運転開始時点(横軸の原点)では、制御部CUは、「暖機運転モード」を選択する。この時点においては、有機EL素子8はいわば冷えきった状態にあるため、ここで即座に画像形成を行ってしまえば、当該画像と後に形成される画像(有機EL素子8が暖まった状態で形成される画像)との間に、階調の相違が生じる、等といった不具合が発生しかねない。そこで、「暖機運転モード」により、有機EL素子8を所定の温度まで即座に昇温させることが好ましいのである。この期間中、発熱用トランジスタTconは比較的激しく発熱する。
なお、図7に示す「暖機運転モード」におけるTconの発熱曲線は、当該期間中、図5に示す発熱信号X Dataが常にLレベルであり、発光信号Dataが常にHレベルである場合の一例を示している。したがって、当該期間中、有機EL素子8は発光しない。
【0051】
続いて、制御部CUは、「通常運転モード」を選択する。この運転モードにある期間中は、有機EL素子8は、図6を参照して説明したように、温度安定領域RTPにいわば包みこまれるかの如き状態に置かれ、その温度は極めて安定する。一方、この期間中、当該1個の発熱用トランジスタTconは、自身に対応する有機EL素子8の発光又は非発光に応じて、発熱せず又は発熱する。
【0052】
続いて、制御部CUは、「省エネ運転モード」を選択する。他のモードからこの運転モードに入るかどうかの基準は様々に定められ得るが、例えば、ユーザ自身による当該モードへの移行指令が制御部CUに対してなされた場合とか、直前の画像形成が終了してから一定時間経過してもユーザから何らの指令もなされない場合等が考えられる。この期間中は、有機EL素子8が非発光状態にあっても、発熱用トランジスタTconは発熱しない。したがって、発光装置10における電力消費は生じない。
なお、図7においては、この「省エネ運転モード」が明けた直後に、再び、「通常運転モード」が続く例が示されているが、当該「省エネ運転モード」が比較的長期間に亘って続行していたような場合には、始動時と同様、有機EL素子8は冷えているはずであるから、当該「省エネ運転モード」が明けた直後に、「暖機運転モード」が始まるようになっていてもよい。
【0053】
このような本実施形態に係る発光装置10ないし画像形成装置によれば、次のような効果がもたらされる。
(1) まず、本実施形態においては、全体的にみて、消費電力の低減を実現することができる。
かかる効果は、仮に、前記の「省エネ運転モード」が存在せず、画像形成装置の本体電源が投入されている以上は、あくまで「通常運転モード」による運転を行うとする場合を想定するなら、より明らかに把握される。ちなみに、図7の「省エネ運転モード」の期間にあたる部分においては、そのような場合(即ち、「省エネ運転モード」が存在しないと仮定した場合)、発熱用トランジスタTconは依然発熱をし続けることを破線にて示しておいた。本実施形態では、この期間中、発熱量は(少なくとも理論的には)“0”であるから、両者間の電力消費量には顕著な差が出る。
【0054】
(2) 本実施形態では、前記「省エネ運転モード」に加えて、「暖機運転モード」が存在するため、画像形成装置の本体電源投入直後、有機EL素子8は速やかに所定の温度に到達することが可能であるから、装置運用の初期段階から既に、発光装置10の発光輝度は一定の範囲に収まり得る。したがって、本実施形態に係る画像形成装置は、当該初期段階からして既に、高品質の画像を形成することができる。
また、有機EL素子8が速やかに所定の温度に到達した後には、当該有機EL素子8は図6に示した温度安定領域RTPにいわば包みこまれるかの如き状態に置かれ得るのであるから、結局、本実施形態によれば、画像形成装置を運用する全期間において、当該高品質の画像を一定して形成し続けることができる。
【0055】
(3) 本実施形態では、「省エネ運転モード」あるいは「暖機運転モード」を実現するために、電源線14に供給すべき電圧の値を調整する手法をとっているため、電圧調整の幅は比較的小さくて済む等、比較的容易な制御で、前記3つのモード間の移行を行うことができる。
【0056】
(4) 本実施形態の発光装置10は、有機EL素子8を駆動するための駆動回路11それ自体が発熱源となって、当該有機EL素子8を加熱する。すなわち、本実施形態によれば、従来のように、有機EL素子8を加熱するための加熱手段等を特別に設ける必要がない。したがって、当該発光装置10の構成は極めて簡易化される。
【0057】
(5) 本実施形態の発光装置10は、前述のようにダミー駆動回路11D1乃至11D4を備えていることから、これがない場合に比べて、有機EL素子8の温度を安定させる効果が更に実効的に奏される。なぜなら、これらダミー駆動回路11D1乃至11D4の存在によって、直線に沿って並ぶ複数の有機EL素子8の両端付近に位置する有機EL素子8もまた、発熱用トランジスタTconが発する熱を安定的に受けることが可能になるからである(図6参照)。
また、そもそも、本実施形態の発光装置10では、発熱源たる駆動回路11が、複数の有機EL素子8を挟み込むようにして配置されていることから(図3及び図6参照)、当該複数の有機EL素子8の温度を安定させる効果がより実効的に奏される。
これらのことは、上述の「暖機運転モード」において、複数の有機EL素子8全部の速やかな昇温を実現するのに大きく貢献する。
【0058】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明に係る発光装置は、上述した形態に限定されることはなく、各種の変形が可能である。
<変形例1>
上述の実施形態では、駆動回路11は、図4を参照して説明したように、駆動用トランジスタTdr1及び発熱用トランジスタTconを含む形態となっているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、駆動回路は、図8に示すように構成され得る。この図8において、駆動回路11Aは、駆動用トランジスタTdr2及びスイッチングトランジスタTswを含む。
【0059】
このうち駆動用トランジスタTdr2は、有機EL素子8と直列に接続される。より詳細には、この駆動用トランジスタTdr2は、そのソースが電源線14に接続され、そのドレインが有機EL素子8に接続される。
かかる駆動用トランジスタTdr2は、その飽和領域において使用され、定電流源として機能する。そのゲートには基準信号Vrefが入力され、当該駆動用トランジスタTdr2は、この基準信号Vrefのレベルに応じた電流を生成する。
なお、図8において、駆動用トランジスタTdr2は常時定電流源として機能することから、有機EL素子8の発光の如何に関わらず、殆ど常に発熱するということになる。
【0060】
一方、スイッチングトランジスタTswは、有機EL素子8とは並列に、かつ、駆動用トランジスタTdr2とは直列に接続される。
かかるスイッチングトランジスタTswは、その線形領域において使用され、駆動用トランジスタTdr2に流れる電流を、有機EL素子8に流すかどうかを決める。この決定は、制御信号Data2のレベルに応じる。つまり、スイッチングトランジスタTswは、制御信号Data2のレベルに応じて、ON状態又はOFF状態をとる。
なお、一般に、薄膜トランジスタで観測される抵抗値と、有機EL素子で観測される抵抗値とは、前者が後者よりも遥かに小さいため、前述のような回路構成において、スイッチングトランジスタTswがONとなれば、駆動用トランジスタTdr2で生成された電流は、有機EL素子8の側には殆ど流れず、スイッチングとランジスタTswの側にその大部分が流れる、ということが言い得る。
【0061】
このような駆動回路11Aは、例えば図9に示すようなタイミングチャートに従って動作する。
この図9において、制御信号Data2は、Hレベル及びLレベルを一定周期で繰り返す矩形波状の信号である。スイッチングトランジスタTswは、かかる制御信号Data2がHレベルにある場合にONとなり、Lレベルにある場合にOFFとなる。
したがって、後者の場合には、有機EL素子8には、駆動用トランジスタTdr2の飽和電流たる電流Ioledが流れる。この際、有機EL素子8は発光するとともに発熱する。なお、上で一般論として言及した薄膜トランジスタと有機EL素子との抵抗値に関する知見に従えば、両者が直列に接続されていて同じ電流が流れている状況においては、有機EL素子の発する熱量の方が、薄膜トランジスタの発する熱量よりも遥かに大きくなる、ということが言い得る。したがって、有機EL素子8が発光している場合においては、これと駆動用トランジスタTdr2との相対的な関係からいえば、前者のみが発熱し、後者は発熱していない、ということも言い得る。
他方、前者の場合(即ち、スイッチングトランジスタTswがONの場合)には、有機EL素子8には電流が流れない。ただ、この場合においても、定電流源たる駆動用トランジスタTdr2は発熱しているので、この未発光状態にある有機EL素子8は、当該駆動用トランジスタTdr2から発せられた熱を受けることになる。
【0062】
なお、前述の制御信号Data2は、図1の制御部CUによって発せられる。
また、図8に示す駆動回路11Aにおいて、発熱するのは駆動用トランジスタTdr2のみに限られない。すなわち、スイッチングトランジスタTswもまた、電流が流れれば当然発熱する(この場合の「電流」とは、駆動用トランジスタTdr2の飽和電流たる電流Iconである。つまり、Icon≒Ioledである。)。したがって、本発明にいう「発熱素子」には、前記の駆動用トランジスタTdr2のみならず、スイッチングトランジスタTswもまた、その該当性を有する。なお、電流Ioledの値と電流Iconの値との和は、図9において常に一定である(図中“Ito”参照。)。
【0063】
このような形態となる駆動回路11Aでは、前述の基準信号Vrefのレベルが、上述した3つの運転モードの相違に基づいて定められる。例えば、図9を参照して説明したような「通常運転モード」において、基準電圧Vrefとして第1電圧Vref1が印加されるとしたなら、「省エネ・運転モード」では、第2電圧Vref2(Vref2>Vref1)が印加され、「暖機運転モード」では、第3電圧Vref3(Vref3<Vref1)が印加される、というようである。
このような変形例1であっても、上述した実施形態によって奏された各種の作用効果と本質的に相違のない作用効果が奏されることは明白である。
【0064】
<変形例2>
上述の実施形態では、3つの運転モードを実現するために、電源線14に供給すべき電圧の値を調整する手法をとっているが、本発明は、かかる形態に限定されない。かかる手法以外にも、(i)共通線16の電圧を高める、(ii)電源線14上に機械式スイッチや大面積の電子式スイッチを設ける、(iii)共通戦16上に機械式スイッチや大面積の電子式スイッチを設ける、等といった各種の手法を採用することができる。
上記のうち(i)を採用する場合は、「通常運転モード」において、電圧Vct1が供給されるとしたなら、「省エネ運転モード」では電圧Vct2(Vct2>Vct1)が供給され、「暖気運転モード」では電圧Vct3(Vct3<Vct1)が供給される、というようにする。なお、この(i)を採用した場合の具体的な構成は、図2と殆ど同じであり、同図における符号を若干書き換えれば(例えば“Vel1”とあるのを、“Vct1”と書き換える等)、当該構成は図示されたに等しい。
【0065】
また、(ii)あるいは(iii)を採用する場合は、例えば図10に示すような構成となる。この図10において、電源回路PWと発光装置10の駆動回路11Sとの間は、電圧供給線VFによって接続されている。ここで電圧供給線VFとは、図3や図4でいう電源線14又は共通線16を意味する。スイッチSWは、この電圧供給線VFの上に設けられている。そして、制御部CUは、このスイッチSWの開閉を制御信号によって制御する。
これによると、VctあるいはVelに係る電圧供給は遮断され得ることになるので、その場合、図3の駆動用トランジスタTdr1あるいは発熱用トランジスタTconは発熱しないことになる。つまり、スイッチSWによって、「省エネ運転モード」が実現されることになる。なお、いまの説明からも明らかなように、この手法は、「省エネ運転モード」を実現するための手法であり、「暖機運転モード」への対応はできない。
【0066】
以上の(i)乃至(iii)の手法、あるいは上述の実施形態における手法(電源線14の電圧変更に係る手法)は、各々個別に採用することが可能であるほか、場合によっては併用することが可能である(特に、上記(ii)及び(iii)を採用する場合、上述のように「暖機運転モード」は実現されないので、当該場合であって、「暖機運転モード」をも実現したいという場合には、その他の手法を併用することは必須である。)。
また、上記においては、前記(i)乃至(iii)に係る手法が、前記実施形態(図3等)に適用される場合について説明しているが、それのみならず、すぐ上での述べた<変形例1>に対しても適用可能であるのは当然である。さらに、そのような場合における前記各手法の併用も可能である。
【0067】
このように、前記の3つの運転モードを実現するためには、上述したような様々な手法を採用することができるが、その中においても、前記実施形態における電源線14の電圧を調整する手法(以下、便宜上「第1手法」という。)、あるいは<変形例1>における基準電圧Vrefを調整する手法(以下、便宜上「第2手法」という。)は、上記(ii)及び(iii)に係る手法において必要なスイッチSWを設ける必要がない分、発光装置ないし画像形成装置の構成を簡易化することができるという利点がある。また、前述の第1手法及び第2手法を比べた場合には、システムの根幹ともいえる電源電圧を変更する場合に比べて、駆動用トランジスタTdr2のゲート電圧を変更することの方が、若干制御が容易ということができるから、第2手法の方がより有利ということができる。
【0068】
以上述べた各種の変形例1乃至4のほか、本発明は、下記のような変形例をも含む。
(1) 上述した各実施形態に係る発光装置は、ボトムエミッションタイプであるが(図1参照)、本発明に係る発光装置は、トップエミッションタイプであってもよい。あるいは、デュアルエミッションタイプであってもよい。
(2) 上述した各実施形態に係る発光装置は、有機EL装置であるが、本発明に係る発光装置は、無機EL装置であってもよい。
【0069】
<応用>
次に、本発明に係る発光装置を適用した応用例(電子機器)について説明する。
【0070】
<画像形成装置>
以上の各態様に係る発光装置は、電子写真方式を利用した画像形成装置における像担持体に潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして利用され得る。画像形成装置の例としては、プリンタ、複写機の印刷部分及びファクシミリの印刷部分がある。図11は、発光装置10をライン型の光ヘッドとして用いた画像形成装置の一例を示す縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
【0071】
この画像形成装置では、同様な構成の4個の有機ELアレイ10K,10C,10M,10Yが、同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K,110C,110M,110Yの露光位置にそれぞれ配置されている。有機ELアレイ10K,10C,10M,10Yは、以上に例示した何れかの態様に係る発光装置10である。
【0072】
図11に示すように、この画像形成装置には、駆動ローラ121と従動ローラ122とが設けられており、これらのローラ121,122には無端の中間転写ベルト120が巻回されて、矢印に示すようにローラ121,122の周囲を回転させられる。図示しないが、中間転写ベルト120に張力を与えるテンションローラなどの張力付与手段を設けてもよい。
【0073】
この中間転写ベルト120の周囲には、外周面に感光層を有する4個の感光体ドラム110K,110C,110M,110Yが互いに所定の間隔をおいて配置される。添え字K,C,M,Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの顕像を形成するために使用されることを意味している。他の部材についても同様である。感光体ドラム110K,110C,110M,110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0074】
各感光体ドラム110(K,C,M,Y)の周囲には、コロナ帯電器111(K,C,M,Y)と、有機ELアレイ10(K,C,M,Y)と、現像器114(K,C,M,Y)が配置されている。コロナ帯電器111(K,C,M,Y)は、対応する感光体ドラム110(K,C,M,Y)の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ10(K,C,M,Y)は、感光体ドラムの帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。各有機ELアレイ10(K,C,M,Y)は、複数の発光素子Pの配列方向が感光体ドラム110(K,C,M,Y)の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数の発光素子Pによって感光体ドラムに光を照射することにより行う。現像器114(K,C,M,Y)は、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラムに顕像すなわち可視像を形成する。
【0075】
このような4色の単色顕像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各顕像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写されることにより、中間転写ベルト120上で重ね合わされ、この結果としてフルカラーの顕像が得られる。中間転写ベルト120の内側には、4つの一次転写コロトロン(転写器)112(K,C,M,Y)が配置されている。一次転写コロトロン112(K,C,M,Y)は、感光体ドラム110(K,C,M,Y)の近傍にそれぞれ配置されており、感光体ドラム110(K,C,M,Y)から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写コロトロンの間を通過する中間転写ベルト120に顕像を転写する。
【0076】
最終的に画像を形成する対象としてのシート102は、ピックアップローラ103によって、給紙カセット101から1枚ずつ給送されて、駆動ローラ121に接した中間転写ベルト120と二次転写ローラ126の間のニップに送られる。中間転写ベルト120上のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート102の片面に一括して二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることでシート102上に定着される。この後、シート102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙カセット上へ排出される。
【0077】
次に、本発明に係る画像形成装置の他の実施の形態について説明する。図12は、発光装置10をライン型の光ヘッドとして用いた他の画像形成装置の縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したロータリ現像式のフルカラー画像形成装置である。図12に示す画像形成装置において、感光体ドラム165の周囲には、コロナ帯電器168、ロータリ式の現像ユニット161、有機ELアレイ167、中間転写ベルト169が設けられている。
【0078】
コロナ帯電器168は、感光体ドラム165の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ167は、感光体ドラム165の帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。有機ELアレイ167は、以上に例示した各態様の発光装置10であり、複数の発光素子Pの配列方向が感光体ドラム165の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、これらの発光素子Pから感光体ドラム165に光を照射することにより行う。
【0079】
現像ユニット161は、4つの現像器163Y,163C,163M,163Kが90°の角間隔をおいて配置されたドラムであり、軸161aを中心にして反時計回りに回転可能である。現像器163Y,163C,163M,163Kは、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ、黒のトナーを感光体ドラム165に供給して、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラム165に顕像すなわち可視像を形成する。
【0080】
無端の中間転写ベルト169は、駆動ローラ170a、従動ローラ170b、一次転写ローラ166及びテンションローラに巻回されて、これらのローラの周囲を矢印に示す向きに回転させられる。一次転写ローラ166は、感光体ドラム165から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写ローラ166の間を通過する中間転写ベルト169に顕像を転写する。
【0081】
具体的には、感光体ドラム165の最初の1回転で、有機アレイ167によりイエロー(Y)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Yにより同色の顕像が形成され、さらに中間転写ベルト169に転写される。また、次の1回転で、有機アレイ167によりシアン(C)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Cにより同色の顕像が形成され、イエローの顕像に重なり合うように中間転写ベルト169に転写される。そして、このようにして感光体ドラム165が4回転する間に、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の顕像が中間転写ベルト169に順次重ね合わせられ、この結果フルカラーの顕像が転写ベルト169上に形成される。最終的に画像を形成する対象としてのシートの両面に画像を形成する場合には、中間転写ベルト169に表面と裏面の同色の顕像を転写し、次に中間転写ベルト169に表面と裏面の次の色の顕像を転写する形式で、フルカラーの顕像を中間転写ベルト169上で得る。
【0082】
画像形成装置には、シートが通過させられるシート搬送路174が設けられている。シートは、給紙カセット178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出され、搬送ローラによってシート搬送路174を進行させられ、駆動ローラ170aに接した中間転写ベルト169と二次転写ローラ171の間のニップを通過する。二次転写ローラ171は、中間転写ベルト169からフルカラーの顕像を一括して静電的に吸引することにより、シートの片面に顕像を転写する。二次転写ローラ171は、図示しないクラッチにより中間転写ベルト169に接近及び離間させられるようになっている。そして、シートにフルカラーの顕像を転写する時に二次転写ローラ171は中間転写ベルト169に当接させられ、中間転写ベルト169に顕像を重ねている間は二次転写ローラ171から離される。
【0083】
以上のようにして画像が転写されたシートは定着器172に搬送され、定着器172の加熱ローラ172aと加圧ローラ172bの間を通過させられることにより、シート上の顕像が定着する。定着処理後のシートは、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印Fの向きに進行する。両面印刷の場合には、シートの大部分が排紙ローラ対176を通過した後、排紙ローラ対176が逆方向に回転させられ、矢印Gで示すように両面印刷用搬送路175に導入される。そして、二次転写ローラ171により顕像がシートの他面に転写され、再び定着器172で定着処理が行われた後、排紙ローラ対176でシートが排出される。
【0084】
図11及び図12に例示した画像形成装置は、発光素子を露光手段として利用しているので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。なお、以上に例示した以外の電子写真方式の画像形成装置にも本発明の発光装置を採用することができる。例えば、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムから直接シートに顕像を転写するタイプの画像形成装置や、モノクロの画像を形成する画像形成装置にも本発明に係る発光装置を応用することが可能である。
【0085】
また、本発明に係る発光装置は、上述のような「画像形成装置」に、その適用範囲は限定されない。例えば、前記以外の各種の電子機器における照明装置としても、本発明に係る発光装置は採用される。このような電子機器としては、例えば、ファクシミリ、複写機、複合機、プリンタなどが挙げられる。これらの電子機器には、複数の発光素子を面状に配列した発光装置が好適に採用される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の発光装置を光ヘッドとして含む画像形成装置の一部の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の発光装置のブロック図である。
【図3】図1の発光装置の平面図であって、特に素子基板上に配列された有機EL素子及びその駆動回路の配列態様例を示す図である。
【図4】図3の駆動回路の回路構成例を示す図である。
【図5】図4の駆動回路を動作させるためのタイミングチャートの一例である。
【図6】図3の素子基板における発熱の様子を説明するための図である。
【図7】図1の画像形成装置における3つの運転モードと、ある1個の発熱用トランジスタTconの発熱量との関係を示すグラフであって、横軸は時間、縦軸は当該発熱量を表すものである。
【図8】図4と同趣旨の図であって、同図とは別の回路構成例を示す図である。
【図9】図8の駆動回路を動作させるためのタイミングチャートの一例である。
【図10】図1とは異なる形態をとる発光装置のブロック図である。
【図11】画像形成装置の一例を示す縦断面図である。
【図12】画像形成装置の別例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0087】
10……発光装置、7……素子基板、12……カバー基板、8……有機EL素子(発光素子)、Tdr1、Tdr2……駆動用トランジスタ、Tcon……発熱用トランジスタ、Tsw……スイッチングトランジスタ、11、11A……駆動回路、11D1〜11D4……ダミー駆動回路、11a……第1の駆動回路群、11b……第2の駆動回路群、16……共通線、RTP……温度安定領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンスにより発光する発光装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で軽量な発光源として、OLED(organic light emitting diode)、すなわち有機EL(electro luminescent)素子が注目を集めている。有機EL素子は、有機材料で形成された少なくとも一層の有機発光層を画素電極と対向電極とで挟んだ構造を有する。有機EL素子は、これら画素電極及び対向電極間に所定の電流が供給されることによって発光する。
【0003】
このような有機EL素子を含む発光装置は、例えば、タンデム方式や4サイクル方式等のラインプリンタ等の画像形成装置用のプリンタヘッドに利用される。ここで画像形成装置とは、例えば前記のプリンタヘッドに加えて、感光体ドラム等の像担持体、帯電器、現像器、及び転写器等を備える。像担持体は、帯電器によって帯電された後、プリンタヘッドの一部を構成する有機EL素子から発した光に曝される。この露光によって、像担持体の表面には静電潜像が形成される。この後、当該静電潜像は、現像器から供給されるトナーによって現像され、このトナーが転写器によって紙等の被転写媒体に転写される。これにより、被転写媒体上には、所望の画像が形成されることになる。
【0004】
このような画像形成装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開2007−66952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような画像形成装置におけるプリンタヘッド、即ち発光装置は、一般に、その温度に応じて発光状態が変化する特性をもつ。例えば、前記有機EL素子において、輝度特性、あるいは電流特性が異なる場合がある。また、例えば、前記の両電極間に電圧が印加されて発光が開始されてから、その輝度が所定値に達するまでの時間は、前記有機発光層の温度が低いと長く、高いと短い。したがって、例えば、前記画像形成装置において同階調の画像を形成しようとしても、運転開始直後の時点とその後一定時間経過した時点とにおいて形成した被転写媒体上の画像の階調が異なる、といった不具合が発生しうることになる。前者の時点では未だ有機発光層は冷えており、後者の時点では暖められているからである。
なお、前述の有機EL素子は、温度に応じた発光状態の変化が、他の発光素子に比べて、顕著であるため、上述の問題はより深刻となる。
【0006】
前述の特許文献1では、このような不具合に対処するべく、「各発光素子を加熱する加熱手段」を備えている(特許文献1の〔請求項1〕、〔図3〕等)。これによれば、各発光素子は、加熱手段によって所定の温度となるよう暖められることになるから、たしかに、前記の不具合を一定程度解消することは可能である。
しかしながら、かかる手段では、「加熱手段」それ自体を別途に設ける必要が生じ、更には、この加熱手段が発熱するのに必要なエネルギを供給するための手段等もまた、別途に設ける必要がある。このように、特許文献1の開示の技術によれば、総じて、発光装置の構成が複雑化してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、発光素子に対する温度の影響を極力排除し、かつ、構成の簡易な発光装置及び電子機器を提供することを課題とする。
また、本発明は、そのような課題を解決する発光装置において新たに生じる問題の不具合をこうむらないような発光装置及び電子機器を提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の観点に係る発光装置は、上述した課題を解決するため、基板と、前記基板上に形成される複数の発光素子と、前記複数の発光素子の各々を駆動し、かつ、電流が流されることによって前記発光素子の発熱量に応じた熱を発する発熱素子を少なくとも含む駆動回路と、少なくとも、前記発熱素子に電流が流れるかどうかについて、前記駆動回路を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、第1の場合において、前記発光素子が非発光の際に前記発熱素子に電流を流し、かつ、第2の場合において、前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さないように、前記駆動回路を制御する。
【0009】
本発明によれば、まず、発熱素子を含む駆動回路が備えられているので、従来のように、発光素子を加熱するための加熱手段等を特別に設ける必要がない。したがって、当該発光装置の構成は極めて簡易化される。また、本発明では、発光素子は、その非発光の際に、前記発熱素子から発した熱を受け得るので、その際に予想される当該発光素子の温度低下が防がれる結果、当該発光素子の温度が比較的安定する。したがって、本発明に係る発光装置は、周囲の環境温度、当該発光装置の運用時間等の相違によって生じる温度の相違の影響を殆ど受けず、殆ど常に、所望の発光輝度を維持し得る。
ただ、この場合、新たな問題、即ち、発光素子が発光時には当該発光素子によって電力が消費され、また、非発光時には発熱素子によって電力が消費されることとなる結果、発光装置は、常に、電力を消費することとなってしまう問題が生じる。
この点、本発明では、「第2の場合」においては、発光素子が非発光であっても、発熱素子に電流が流れないようになっている。したがって、本発明においては、その分の消費電力の低減が図られるのである。
なお、「発熱素子」とは、具体的には例えば、発光素子の定電流源となる薄膜トランジスタ等、発光素子の駆動に不可欠的回路要素が該当しうる。ただし、場合によっては、発熱それ自体を目的とする素子を設けるのでもよい。また、発熱素子の数は、1つの駆動回路につき1つあればよいが、2つ以上あってもよい。
【0010】
この発明の発光装置では、前記駆動回路は、前記複数の発光素子の各々に対応する複数の駆動回路からなり、前記複数の駆動回路の各々は、前記発熱素子として、前記発光素子に直列に接続され、当該発光素子の定電流源として機能する駆動用トランジスタ、を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、発熱素子が発光素子を駆動するための必要な回路要素と兼用とされるので、発光装置の構成の更なる簡易化が達成される。
なお、駆動回路が、本態様のような回路構成を備える場合において、前述の、「第1の場合」、即ち「発光素子が非発光の際に前記発熱素子に電流を流」す、を実現するための、より具体的な構成については、後述する「発熱用トランジスタ」や「スイッチングトランジスタ」を当該回路構成に併設する構成の他、種々の構成があり得る。
【0011】
この「駆動用トランジスタ」を含む態様では、前記駆動用トランジスタが電気的に接続された電源線と、前記電源線上に設けられる第1スイッチ手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記電源線が切断されるように前記第1スイッチ手段を制御する、ように構成してもよい。
これによれば、前述の、「第2の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さない」という状態を、好適に実現することができる。
【0012】
あるいは、「駆動用トランジスタ」を含む態様では、前記発光素子を介して前記駆動用トランジスタと電気的に接続された共通線と、前記共通線上に設けられる第2スイッチ手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記共通線が切断されるように前記第2スイッチ手段を制御する、ように構成してもよい。
これによっても、前述の、「第2の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さない」という状態を、好適に実現することができる。
【0013】
さらに、「駆動用トランジスタ」を含む態様では、前記駆動用トランジスタのソースに電気的に接続された電源線と、前記駆動用トランジスタのドレインに前記発光素子を介して電気的に接続された共通線と、を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記第1の場合に比べて、前記共通線の電圧を高めるように、前記駆動回路を制御する、ように構成してもよい。
これによれば、前述の、「第2の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さない」という状態を、好適に実現することができる。
また、かかる態様では、前述した、「第1スイッチ手段」、あるいは「第2スイッチ手段」といった特別な要素を特に設ける必要がないから、その分、構成の簡易化が達成される。
【0014】
あるいは、「駆動用トランジスタ」を含む態様では、前記駆動用トランジスタのソースに電気的に接続された電源線と、前記駆動用トランジスタのドレインに前記発光素子を介して電気的に接続された共通線と、を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記第1の場合に比べて、前記電源線の電圧を低めるように、前記駆動回路を制御する、ように構成してもよい。
これによっても、前述の、「第2の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さない」という状態を、好適に実現することができる。
また、かかる態様によっても、前述した、「第1スイッチ手段」、あるいは「第2スイッチ手段」といった特別な要素を特に設ける必要がないから、その分、構成の簡易化が達成される。
さらに、この態様において、発熱素子における発熱を殆ど完全に停止させるためには、前記駆動用トランジスタのゲート・ソース間電圧が0V以下となるように、当該電源線の電圧が低められるようにするのが好ましい。この場合、一般に、電圧調整の幅は、前述の共通線の電圧を高める態様におけるそれに比べると小さくて済むから、制御が容易という点で、当該態様よりも有利ということができる。
【0015】
また、前記発光装置では、前記駆動回路の各々は、前記発熱素子として、前記駆動用トランジスタに加え、前記発光素子及び前記駆動用トランジスタと並列に接続され、前記発光素子で生成される単位時間当たりの発熱量に応じた発熱が生じる電流が流れるように制御される発熱用トランジスタ、を更に含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述の、「第1の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際に前記発熱素子に電流を流」す、という状態を、好適に実現することができる。
なお、この場合、前述の駆動用トランジスタのソースが前記電源線に接続されるのであれば、当該発熱用トランジスタのソースもまた当該電源線に接続され、あるいは、駆動用トランジスタのドレインが前記共通線に接続されるのであれば、当該発熱用トランジスタのドレインもまた当該共通線に接続されるのが好ましい。これによれば、駆動用トランジスタに加えて、かかる発熱用トランジスタに対しても、前述した、「第2の場合」を好適に実現する各態様の適用が可能となるからである。そして、その適用の結果によれば、両トランジスタにおける電力消費が防止されるのだから、消費電力低減という効果は更に実効的に奏される。
【0016】
あるいは、前記発光装置では、前記駆動回路の各々は、前記発熱素子として、前記駆動用トランジスタに加え、前記発光素子とは並列に、かつ、前記駆動用トランジスタとは直列に接続され、前記駆動用トランジスタに流れる電流を前記発光素子に流すかどうかを決めるスイッチングトランジスタ、を更に含む、ように構成してもよい。
この態様によっても、前述の、「第1の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際に前記発熱素子に電流を流」す、という状態を、好適に実現することができる。
【0017】
この「スイッチングトランジスタ」を含む態様では、前記駆動用トランジスタのゲートに電気的に接続され、当該駆動用トランジスタで生成される電流の大きさを定める信号を運ぶ制御線を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記第1の場合におけるのとは異なるように、前記信号の有無及び程度を制御する、ように構成してもよい。
これによれば、前述の、「第2の場合」、即ち「前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さない」という状態を、好適に実現することができる。
また、かかる態様では、前述の「電源線」や「共通線」の電圧を調整する各態様に比べると、制御が比較的容易になるという利点が得られる。
【0018】
また、「スイッチングトランジスタ」を含む態様では、前記制御手段は、第3の場合において、前記第1の場合及び前記第2の場合に比べて、前記駆動用トランジスタに流れる電流量が増大するように、前記信号の程度を制御する、ように構成してもよい。
これによれば、第3の場合において、駆動用トランジスタは比較的活発に発熱する。したがって、発光素子は、この駆動用トランジスタの熱を受けて比較的速やかに昇温することになる。このような「第3の場合」は、例えば当該発光装置の始動時に適用されて好適である。というのも、その場合、発光素子は、いわば冷えきった状態にあるからである。要するに、本構成は、当該発光装置のウォームアップのために最適な構成の1つを提供する。
なお、本構成にいう「第3の場合」に係る制御が実行されるのも、前記の第1及び第2の場合と同様、好適には、発光素子が非発光の際、であるのが好ましい。
【0019】
また、本発明の発光装置では、前記制御手段は、第3の場合において、前記第1の場合及び前記第2の場合に比べて、前記電源線の電圧を高めるように、前記駆動回路を制御する、ように構成してもよい。
この態様によれば、第3の場合において、駆動用トランジスタは比較的活発に発熱する。したがって、発光素子は比較的速やかに昇温することになる。このような「第3の場合」は、例えば当該発光装置の始動時に適用されて好適である。というのも、その場合、発光素子は、いわば冷えきった状態にあるからである。要するに、本構成は、当該発光装置のウォームアップのために最適な構成の1つを提供する。
なお、本構成にいう「第3の場合」に係る制御が実行されるのも、前記の第1及び第2の場合と同様、好適には、発光素子が非発光の際、であるのが好ましい。
また、本態様は、「前記発光素子を介して前記駆動用トランジスタと電気的に接続された共通線と、前記共通線上に設けられる第2スイッチ手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記共通線が切断されるように前記第2スイッチ手段を制御する」態様であって、その中の駆動用トランジスタが電気的に電源線とも接続される態様に対しても、当然適用可能である。
【0020】
あるいは、本発明の発光装置では、前記制御手段は、第3の場合において、前記第1の場合及び前記第2の場合に比べて、前記共通線の電圧を低めるように、前記駆動回路を制御する、ように構成してもよい。
この態様によっても、第3の場合において、駆動用トランジスタは比較的活発に発熱し、またしたがって、発光素子は比較的速やかに昇温することになる。
なお、本態様は、「前記駆動用トランジスタが電気的に接続された電源線と、前記電源線上に設けられる第1スイッチ手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記第2の場合において、前記電源線が切断されるように前記第1スイッチ手段を制御する」態様であって、その中の駆動用トランジスタが電気的に共通線とも接続される態様に対しても、当然適用可能である。
【0021】
また、本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、上述した各種の発光装置を備える。
本発明の電子機器は、上述した各種の発光装置、即ち温度の影響を受けずに発光輝度を維持し得る発光装置を備えているので、殆ど常に、高品質な画像を形成することが可能な電子機器を提供することができる。
また、本発明の電子機器では、消費電力低減効果の享受が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下では、本発明に係る実施の形態について図1乃至図5を参照しながら説明する。なお、これらの図面及びそれ以外の図面で以下に参照する各図面においては、各部の寸法の比率が実際のものとは適宜に異ならせてある場合がある。
図1は、発光装置10を光ヘッド(発光装置)として用いる画像形成装置の部分的な構成を示す斜視図である。同図に示すように、この画像形成装置は、発光装置10、集束性レンズアレイ15、感光体ドラム110、及び制御部CUを含む。
【0023】
このうち発光装置10は、図1中長手方向に沿って配列された複数の有機EL素子(発光素子)を備える。これら有機EL素子の各々は、図1中下方に向けて光を出射する(図中破線参照)。この光は、すぐ後に述べる集束性レンズアレイ15に入射する。
【0024】
集束性レンズアレイ15は発光装置10と感光体ドラム110との間に配置される。集束性レンズアレイ15は、各々の光軸を発光装置10に向けた姿勢でアレイ状に配列された多数の屈折率分布型レンズを含む。発光装置10の各有機EL素子からの出射光は集束性レンズアレイ15の各屈折率分布型レンズを透過したうえで感光体ドラム110の外表面に到達する。
なお、この集束性レンズアレイ15としては、具体的には例えば、日本板硝子株式会社から入手可能なSLA(セルフォック・レンズ・アレイ)を用いることができる(セルフォック:SELFOCは日本板硝子株式会社の登録商標)。これを用いれば、発光装置10からの光は、感光体ドラム110の上で、正立等倍結像する。
【0025】
感光体ドラム110は略円柱形状をもつ。その中心軸には、回転軸が備えられている。感光体ドラム110は、この回転軸を中心として記録材(被転写媒体)が搬送される方向である副走査方向に回転する(図中の矢印参照)。なお、回転軸の延在方向は、主走査方向に一致する。
このような感光体ドラム110及び前記の発光装置10は、当該感光体ドラム110の回転タイミングと発光装置10の各有機EL素子の発光タイミングとの間に所定の関係が成立するように、制御される。例えば、主走査方向に沿っては、形成しようとする画像の1ライン分の明暗に応じて、各有機EL素子の発光・非発光が制御され、副走査方向に沿っては、1ライン分の画像に関する感光工程が完了した後に感光体ドラムが所定の角度だけ回転するように、当該感光体ドラムの回転が制御される。このようにして、感光ドラム110の外表面には、所望の画像に応じた潜像(静電潜像)が形成される。
【0026】
制御部CUは、いずれも図示しない、CPU(Central Process Unit)、必要な情報を記憶するRAM(Random Access Memory)、及び当該画像形成装置を運用する上で必要なプラグラム等を格納するROM(Read Only Memory)等を備える。前述の感光体ドラム110の回転タイミングと発光装置10の発光タイミングとの同期も、この制御部CUによってはかられる。
また、この制御部CUは、後述するように、複数の有機EL素子の各々の発光タイミングと、発熱用トランジスタにおける電流印加タイミングとの関係設定に係る制御等をも行う。
そのほか、当該制御部CUは、本実施形態に係る画像形成装置を構成する各種要素が調和的に動作するように、当該各種要素の動作を司る。
【0027】
さらに、この制御部CUは、本実施形態に係る発光装置10に関し、後述する3つの運転モード間の切替に係る制御をも行う。
より具体的には、図2に示すように、制御部CUは、発光装置10に電圧を供給する電源回路PWに制御信号を供給する。
このうち発光装置10は、駆動回路11S及び有機EL素子8Sを備えている。前者は後者を駆動するため当該後者に電流を供給する。なお、発光装置10は、前述のように複数の有機EL素子をもつが、ここでいう「有機EL素子8S」(特に「8S」なる符合)は、そのような複数の有機EL素子を一体的に表現するものとして使用されている。「駆動回路11S」(特に「11S」なる符合)についても、同様である。なお、この発光装置10についてのより詳細な構成については、後に改めて述べる。
【0028】
一方、電源回路PWは、それぞれ異なる3つの値をもつ電圧Vel1,Vel2及びVel3を駆動回路110に供給することが可能である。また、この電源回路PWはモード切替回路MXを備えている。モード切替回路MXは、前記制御信号の内容に従って、電圧切替動作を電源回路PW本体に指示する。電源回路PWは、モード切替回路MXによる前記電圧切替動作の結果に従い、前記3つの電圧のうちいずれか1つを発光装置10に供給する。
このような3つの値をもつ電圧Vel1,Vel2及びVel3間の切替が、如何なる意義を有するかについては、後に改めて説明する。
【0029】
前述の発光装置10は、より詳細には、図3に示すような構造を持つ。図3において、発光装置10は、素子基板7及びカバー基板12を備えている。このうち素子基板7は、同図に示すように、平面視して略長方形状をもつ板状の部材である。この素子基板7は、例えばガラスや石英、プラスチックなどの透光性材料で作られる。
【0030】
この素子基板7の上には、複数の有機EL素子8及び複数の駆動回路11等が形成されている。なお、図3において示されている有機EL素子8の数、及び、駆動回路11の数は、単なる一例を示しているに過ぎない。これらを実際にいくつか設けるかは、本発明の本質に関わらない。
【0031】
有機EL素子8は、相互に対向する2つの電極、及び、これら2つの電極間に少なくとも有機発光層を含む発光機能層を備えている(いずれも不図示)。前記2つの電極のうち一方の電極には、共通線16が接続され、他方の電極には駆動素子を介して電源線14が接続される(このうち駆動素子については図3において不図示。これについては、すぐ後に図4を参照して説明する。)。
また、発光機能層に含まれる有機発光層は正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から構成されている。発光機能層は、前記有機発光層のほか、電子ブロック層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び正孔ブロック層の一部又は全部を備えていてもよい。
本実施形態において、この有機EL素子8は、図3に示すように、素子基板7の長手方向に延びる直線に沿うように、千鳥足状に配列されている。ここで「直線」とは、図3においてはたまたま、共通線16がそれになぞらえられる。また、「千鳥足状」に配列されるとは、端から順番に有機EL素子に1,2,3,…と番号を振るとするなら、奇数番目は当該直線を基準として図3中上側、偶数番目は当該直線を基準として図3中下側に配置される、というような配列、を含意する。
【0032】
駆動回路11は、有機EL素子8を駆動する。より詳しくは、図4に示すように、駆動回路11は、駆動用トランジスタTdr1と発熱用トランジスタTconとを備えている。
このうち駆動用トランジスタTdr1は、前述で「駆動素子」と述べたものに該当し、有機EL素子8と電源線14との間に介在して、電源線14から有機EL素子8への通電の有無及び程度を制御する。その通電は、駆動用トランジスタTdr1のゲートに入力される発光信号Data1のレベルに応じる。なお、電源線14は、図2に示した電源回路PWから電圧の供給を受ける。
【0033】
一方、発熱用トランジスタTconは、前述の有機EL素子8及び駆動用トランジスタTdr1と並列に接続されている。すなわち、発熱用トランジスタTconのソースは電源線14に接続され、そのドレインは有機EL素子8を構成する両電極のうち駆動用トランジスタTdr1が接続されていない方の電極に接続されている。また、発熱用トランジスタTconのゲートは、発熱信号X Dataが供給される制御線に接続されている。
【0034】
このような発熱用トランジスタTconは、前記発熱信号X Dataのレベルに応じて、有機EL素子8で生成される単位時間当たりの発熱量に応じた発熱が生じる電流が流される。
これをよりよく実現するため、具体的には例えば、駆動用トランジスタTdr1及び発熱用トランジスタTconの特性は、各々のゲートに同レベルの信号が供給されたときに流れる電流Ioled及びIconの各値がほぼ同じになるように設定されていると好ましい。あるいは、駆動用トランジスタTdr1の発熱も考慮に入れるなら、電流Iconの値は、電流Ioledの値よりも一定程度小さくてもよい。あるいは、電流Ioledの一部は光エネルギに変換され、それは発熱には寄与しないこと、そして、その場合における有機EL素子8と発熱用トランジスタTconとの熱エネルギを等価にすること、をも考慮に入れるなら、やはり、電流Iconの値は、電流Ioledの値よりも一定程度小さくてもよい。
【0035】
また、駆動回路11は、例えば図5に示すようなタイミングチャートに従って動作する。なお、この場合、駆動用トランジスタTdr1と発熱用トランジスタTconとは、それぞれ飽和領域において使用されることが前提とされている。
図5において、発光信号Data1は一定周期をもつ矩形波状の信号である。他方、発熱信号X Dataは、発光信号Data1がLレベルのときHレベルとなり、HレベルのときLレベルとなるような、矩形波状の信号である。発光信号Data1が、Lレベルにあるとき、有機EL素子8には、駆動用トランジスタTdr1の飽和電流たる電流Ioledが流れる。したがって、この際、有機EL素子8は発光するとともに発熱する。他方、発熱信号X DataがLレベルにあるとき、有機EL素子8には電流が流れず、発熱用トランジスタTconをその飽和電流たる電流Iconが流れる。したがって、この際、発熱用トランジスタTconは発熱する。
ここで、発光信号Data1及び発熱信号X Dataは、上述のように相補的であるから、有機EL素子8が発熱する時には発熱用トランジスタTconは発熱せず、有機EL素子8が発熱しない時には発熱用トランジスタTconは発熱する、という関係が成立する。
なお、電流Ioledの値と電流Iconの値との和は、図5において常に一定である(図中“Ito”参照。)。
【0036】
なお、前述の発光信号Data1及び発熱信号X Dataは、図1ないし図2の制御部CUによって発せられる。
また、図4に示す駆動回路11において、発熱するのは発熱用トランジスタTconのみに限られない。すなわち、駆動用トランジスタTdr1もまた、電流が流れれば当然発熱する。したがって、本発明にいう「発熱素子」には、前記の発熱用トランジスタTconのみならず、駆動用トランジスタTdr1もまた、その該当性を有する。
【0037】
以上のような回路構成をもつ駆動回路11は、図3に示すように、前述の千鳥足状に配列された複数の有機EL素子8を挟み込むように配列される。より具体的には、これら複数の駆動回路11は、図3では上側に位置する第1の駆動回路群11aと、下側に位置する第2の駆動回路群11bとに分かたれて配置される。これら第1及び第2の駆動回路群11a及び11bは、ともに共通線16に沿って並び、かつ、両者が当該共通線16及び複数の有機EL素子8の双方を共に挟んで対向するように配置される。
【0038】
また、複数の駆動回路11は、図3に示すように、ダミー駆動回路11D1乃至11D4を備えている。これら4つのダミー駆動回路11D1乃至11D4のうち、ダミー駆動回路11D1は、第1の駆動回路群11a中、図中最左端に位置づけられ、ダミー駆動回路11D2は、同最右端に位置づけられている。また、ダミー駆動回路11D3は、第2の駆動回路群11b中、図中最左端に位置づけられ、ダミー駆動回路11D4は、同最右端に位置づけられている。
ここでダミー駆動回路11D1乃至11D4とは、図4でいえば、有機EL素子8、駆動用トランジスタTdr1及び発熱用トランジスタTconのうち、例えば最前者のみを備えていない回路構成を持つ駆動回路である。つまり、かかるダミー駆動回路11D1乃至11D4では、発熱信号X Dataのレベルに応じて、主に、発熱用トランジスタTconによる発熱のみが生じるのである。
なお、ダミー駆動回路11D1乃至11D4は、場合により、有機EL素子8に加えて、駆動用トランジスタTdr1の設置を省略した回路構成を備えていてもよい。
【0039】
図3に示すカバー基板12は、素子基板7と同様、平面視して略長方形状をもつ板状の部材である。ただし、このカバー基板12は、素子基板7に比べて、その平面視した場合の面積が一回り小さい。カバー基板12は、素子基板7上の有機EL素子8及び駆動回路11を覆うように設置されるが、前者の面積が後者のそれよりも一回り小さいため、素子基板7には余剰の領域が生じる。この領域には、例えば駆動回路11と、図2に示した電源回路PWとを接続するための入出力端子等が設けられる。
このカバー基板12は、有機EL素子8に対して水分が浸入することを防止する機能をもつ。なお、このような機能は素子基板7においてもまた果たしえる。結局、有機EL素子8は、図3の紙面を貫く方向に沿って、素子基板7及びカバー基板12双方によって挟み込まれる状態におかれることで、水分、あるいはその他の埃等の進入という観点からみて、ほぼ完全に封止される。
このようなカバー基板12は、例えばガラス、あるいは適当な金属材料から作られる。
【0040】
なお、これら素子基板7及びカバー基板12からなる、発光装置10全体の大きさは、例えば、その長さ(図3でいえばその左右方向の長さ)が330〜350mm、幅(図3でいえばその上下方向の長さ)が10〜30mm、厚さ(図3でいえばその紙面垂直方向の長さ)が1〜5mm、等とされて好適である。この具体例によれば、前記記録材(被転写媒体)のサイズが“A3サイズ”である場合にも対応可能である。
【0041】
以下では、以上のような構成を備える発光装置10の作用効果について、既に参照した図面に加えて、図6及び図7を参照しながら説明する。
発光装置10は、上述のように、複数の有機EL素子8と、これら各々に対応する、発熱用トランジスタTconを含む駆動回路11を複数備えている。そして、これも上述のように、有機EL素子8の発光時(即ち、発熱時)は、発熱用トランジスタTconは発熱せず、有機EL素子8の非発光時は、発熱用トランジスタTconは発熱する。
【0042】
このようにして有機EL素子8及び駆動回路11によって発せられた熱は、周囲に輻射され、また、素子基板7の表面及び内部を伝導する。したがって、これら有機EL素子8及び駆動回路11から熱が発せられる場合においては、その熱の影響が及ぶ領域(以下、これを「加熱領域」ということがある。)が、画定され得る。ちなみに、駆動回路11に関する加熱領域の画定に当たっては、ダミー駆動回路11D1乃至11D4の存在も当然考慮に入れられる。
【0043】
このような加熱領域が画定される結果、当該の発光素子10全体の観点からみた温度安定領域RTPが画定され得る(図中その内部にハッチングをかけた破線の囲み参照)。この温度安定領域RTPは、以下のような背景を持つ。
(1) 複数の有機EL素子8の各々は、画像形成装置の運転期間中、発光及び未発光(消灯)を繰り返すが、前者の場合、当該各々の周囲(即ち、当該有機EL素子に関する加熱領域の範囲)の温度は上昇し、後者の場合、当該温度は低下する。
(2) もっとも、この後者の場合、本実施形態では、発熱用トランジスタTconが発熱するので、駆動回路11に関する加熱領域に含まれる範囲においては、前記の温度の低下分が補われるように、熱の供給が行われる。
(3) 上記の(1)及び(2)は適宜繰り返されることになるが、それによれば、温度が一定の範囲からは外れない安定した領域が生まれる。
(3´) なお、有機EL素子8の発光を安定させるという観点からみれば、直接には関係ない事項ではあるが、発熱用トランジスタTconが発熱しない時、この発熱用トランジスタTconは有機EL素子の発熱の影響を受ける。そうすると、当該発熱用トランジスタTconを含む一定の領域もまた、温度が一定の範囲からは外れない。
(4) 以上の(3)及び(3´)によって規定される領域が、温度安定領域RTPである。
(5) この温度安定領域RTPは、本実施形態において、前記の発熱中心CD1(あるいは、前記の発熱中心CC1及びCC2を結ぶ線分の中間点)を中心にもつ。
【0044】
そして、本実施形態においては、このような温度安定領域RTPは、図6に示すように、複数の有機EL素子8全体を好適に包み込むような範囲をもつ。
このようなことから、本実施形態によれば、有機EL素子8の周囲の温度は極めて安定する。また、当該有機EL素子8それ自体の温度もまた安定し、もって、その発光状態も常に所定の状態に維持され得ることになる。
したがって、本実施形態に係る発光装置10は、周囲の環境温度、当該発光装置10の運用時間、あるいは複数の有機EL素子8それぞれの発光頻度等の相違によって生じる温度の相違の影響を殆ど受けず、殆ど常に、所望の発光輝度を維持し得る。
よってまた、本実施形態に係る画像形成装置は、殆ど常に、品質の安定した画像を形成することが可能になる。
【0045】
ただ、この場合、消費電力量の問題が生じる。というのも、有機EL素子8が発光時には当該有機EL素子8によって電力が消費され、また、非発光時には発熱用トランジスタTconによって電力が消費されることとなる結果、発光装置10は、常に、電力を消費することとなってしまうからである。
ここで、前述した3つの値をもつ電圧Vel1,Vel2及びVel3の意義が明らかとなる。すなわち、本実施形態に係る画像形性装置は、これら3つの電圧Vel1,Vel2及びVel3それぞれに対応する3つの運転モードに従って運転される。3つの運転モードとは、第1に「通常運転モード」、第2に「省エネ運転モード」、第3に「暖機運転モード」である。
【0046】
まず、「通常運転モード」とは、感光体ドラム110の表面に形成しようとする画像に応じて各有機EL素子8が発光及び非発光(消灯)を比較的頻繁に繰り返すとともに、上述のように、有機EL素子8が非発光の際には発熱用トランジスタTconに電流が流れて発熱するというモードである。この場合、制御部CUは、電源回路PWから第1の電圧Vel1が駆動回路11に供給されるような制御信号を発する。この第1の電圧Vel1は、有機EL素子8の発光及び発熱用トランジスタTconの発熱に好適な値をもつ。
結局、制御部CUは、この通常運転モードにおいて、自ら発する制御信号を通じ、かつ、電源回路PWを介して、間接的に駆動回路11を制御することで、有機EL素子8が非発光の際に発熱用トランジスタTconを発熱させる。
【0047】
また、「省エネ運転モード」とは、有機EL素子8が非発光の際にも、発熱用トランジスタTconに電流を流さないようにするというモードである。この場合、制御部CUは、駆動回路PWから第2の電圧Vel2が駆動回路11に供給されるような制御信号を発する。この第2の電圧Vel2の値は、第1の電圧Vel1の値に比べて小さい(Vel2<Vel1)。より具体的に、好適には、この第2の電圧Vel2の値は、発熱用トランジスタTcon、あるいは駆動用トランジスタTdr1のゲート・ソース間の電圧が0V以下となるように、定められる。
結局、制御部CUは、この省エネ運転モードにおいて、自ら発する制御信号を通じ、かつ、電源回路PWを介して、間接的に駆動回路11を制御することで、有機EL素子8が非発光の際にも発熱用トランジスタTconを発熱させない。
そして、このような省エネ・運転モードによれば、有機EL素子8における電力消費も、発熱用トランジスタTconにおける電力消費も発生しないことになる。
【0048】
さらに、「暖機運転モード」とは、前述の2つの運転モード時における場合よりも、より大きな電流が発熱用トランジスタTconに流れるようにするというモードである。この場合、制御部CUは、電源回路PWから第3の電圧Vel3が駆動回路11に供給されるような制御信号を発する。この第3の電圧Vel3は、前述の第1の電圧Vel1に比べて、大きい(Vel3>Vel1。なお、これにより結局、Vel2<Vel1<Vel3が成立する。)。この第3の電圧Vel3の値は、基本的に自由に定められ得るが、発熱用トランジスタTconの破壊をもたらすような値等が許されないことは言うまでもない。
結局、制御部CUは、自ら発する制御信号を通じ、かつ、電源回路PWを介して、間接的に駆動回路11を制御することで、発熱用トランジスタTconは比較的激しく発熱する。
そして、このような暖機運転モードによれば、有機EL素子8は、その比較的激しく発熱する発熱用トランジスタTconの熱を受けることで、比較的速やかに昇温することになる。
なお、この運転モードにある場合においては、図5に示す発熱信号X Dataは、一定時間、Lレベルを維持し、かつ、発光信号Dataは同時間、Hレベルを維持することが好ましい。ここで一定時間とは、有機EL素子8が所定の温度に到達するまでの時間を基準として定められ得る。
【0049】
これら3つの運転モードは、例えば図7に示すように、時間の進行に従い適宜選択される。この図7において、横軸は時間であり、縦軸は、複数の駆動回路11のうちある1つの駆動回路11に着目した場合における、当該駆動回路11中に存する1個の発熱用トランジスタTconの発熱量を表している。
【0050】
まず、画像形成装置の運転開始時点(横軸の原点)では、制御部CUは、「暖機運転モード」を選択する。この時点においては、有機EL素子8はいわば冷えきった状態にあるため、ここで即座に画像形成を行ってしまえば、当該画像と後に形成される画像(有機EL素子8が暖まった状態で形成される画像)との間に、階調の相違が生じる、等といった不具合が発生しかねない。そこで、「暖機運転モード」により、有機EL素子8を所定の温度まで即座に昇温させることが好ましいのである。この期間中、発熱用トランジスタTconは比較的激しく発熱する。
なお、図7に示す「暖機運転モード」におけるTconの発熱曲線は、当該期間中、図5に示す発熱信号X Dataが常にLレベルであり、発光信号Dataが常にHレベルである場合の一例を示している。したがって、当該期間中、有機EL素子8は発光しない。
【0051】
続いて、制御部CUは、「通常運転モード」を選択する。この運転モードにある期間中は、有機EL素子8は、図6を参照して説明したように、温度安定領域RTPにいわば包みこまれるかの如き状態に置かれ、その温度は極めて安定する。一方、この期間中、当該1個の発熱用トランジスタTconは、自身に対応する有機EL素子8の発光又は非発光に応じて、発熱せず又は発熱する。
【0052】
続いて、制御部CUは、「省エネ運転モード」を選択する。他のモードからこの運転モードに入るかどうかの基準は様々に定められ得るが、例えば、ユーザ自身による当該モードへの移行指令が制御部CUに対してなされた場合とか、直前の画像形成が終了してから一定時間経過してもユーザから何らの指令もなされない場合等が考えられる。この期間中は、有機EL素子8が非発光状態にあっても、発熱用トランジスタTconは発熱しない。したがって、発光装置10における電力消費は生じない。
なお、図7においては、この「省エネ運転モード」が明けた直後に、再び、「通常運転モード」が続く例が示されているが、当該「省エネ運転モード」が比較的長期間に亘って続行していたような場合には、始動時と同様、有機EL素子8は冷えているはずであるから、当該「省エネ運転モード」が明けた直後に、「暖機運転モード」が始まるようになっていてもよい。
【0053】
このような本実施形態に係る発光装置10ないし画像形成装置によれば、次のような効果がもたらされる。
(1) まず、本実施形態においては、全体的にみて、消費電力の低減を実現することができる。
かかる効果は、仮に、前記の「省エネ運転モード」が存在せず、画像形成装置の本体電源が投入されている以上は、あくまで「通常運転モード」による運転を行うとする場合を想定するなら、より明らかに把握される。ちなみに、図7の「省エネ運転モード」の期間にあたる部分においては、そのような場合(即ち、「省エネ運転モード」が存在しないと仮定した場合)、発熱用トランジスタTconは依然発熱をし続けることを破線にて示しておいた。本実施形態では、この期間中、発熱量は(少なくとも理論的には)“0”であるから、両者間の電力消費量には顕著な差が出る。
【0054】
(2) 本実施形態では、前記「省エネ運転モード」に加えて、「暖機運転モード」が存在するため、画像形成装置の本体電源投入直後、有機EL素子8は速やかに所定の温度に到達することが可能であるから、装置運用の初期段階から既に、発光装置10の発光輝度は一定の範囲に収まり得る。したがって、本実施形態に係る画像形成装置は、当該初期段階からして既に、高品質の画像を形成することができる。
また、有機EL素子8が速やかに所定の温度に到達した後には、当該有機EL素子8は図6に示した温度安定領域RTPにいわば包みこまれるかの如き状態に置かれ得るのであるから、結局、本実施形態によれば、画像形成装置を運用する全期間において、当該高品質の画像を一定して形成し続けることができる。
【0055】
(3) 本実施形態では、「省エネ運転モード」あるいは「暖機運転モード」を実現するために、電源線14に供給すべき電圧の値を調整する手法をとっているため、電圧調整の幅は比較的小さくて済む等、比較的容易な制御で、前記3つのモード間の移行を行うことができる。
【0056】
(4) 本実施形態の発光装置10は、有機EL素子8を駆動するための駆動回路11それ自体が発熱源となって、当該有機EL素子8を加熱する。すなわち、本実施形態によれば、従来のように、有機EL素子8を加熱するための加熱手段等を特別に設ける必要がない。したがって、当該発光装置10の構成は極めて簡易化される。
【0057】
(5) 本実施形態の発光装置10は、前述のようにダミー駆動回路11D1乃至11D4を備えていることから、これがない場合に比べて、有機EL素子8の温度を安定させる効果が更に実効的に奏される。なぜなら、これらダミー駆動回路11D1乃至11D4の存在によって、直線に沿って並ぶ複数の有機EL素子8の両端付近に位置する有機EL素子8もまた、発熱用トランジスタTconが発する熱を安定的に受けることが可能になるからである(図6参照)。
また、そもそも、本実施形態の発光装置10では、発熱源たる駆動回路11が、複数の有機EL素子8を挟み込むようにして配置されていることから(図3及び図6参照)、当該複数の有機EL素子8の温度を安定させる効果がより実効的に奏される。
これらのことは、上述の「暖機運転モード」において、複数の有機EL素子8全部の速やかな昇温を実現するのに大きく貢献する。
【0058】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明に係る発光装置は、上述した形態に限定されることはなく、各種の変形が可能である。
<変形例1>
上述の実施形態では、駆動回路11は、図4を参照して説明したように、駆動用トランジスタTdr1及び発熱用トランジスタTconを含む形態となっているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、駆動回路は、図8に示すように構成され得る。この図8において、駆動回路11Aは、駆動用トランジスタTdr2及びスイッチングトランジスタTswを含む。
【0059】
このうち駆動用トランジスタTdr2は、有機EL素子8と直列に接続される。より詳細には、この駆動用トランジスタTdr2は、そのソースが電源線14に接続され、そのドレインが有機EL素子8に接続される。
かかる駆動用トランジスタTdr2は、その飽和領域において使用され、定電流源として機能する。そのゲートには基準信号Vrefが入力され、当該駆動用トランジスタTdr2は、この基準信号Vrefのレベルに応じた電流を生成する。
なお、図8において、駆動用トランジスタTdr2は常時定電流源として機能することから、有機EL素子8の発光の如何に関わらず、殆ど常に発熱するということになる。
【0060】
一方、スイッチングトランジスタTswは、有機EL素子8とは並列に、かつ、駆動用トランジスタTdr2とは直列に接続される。
かかるスイッチングトランジスタTswは、その線形領域において使用され、駆動用トランジスタTdr2に流れる電流を、有機EL素子8に流すかどうかを決める。この決定は、制御信号Data2のレベルに応じる。つまり、スイッチングトランジスタTswは、制御信号Data2のレベルに応じて、ON状態又はOFF状態をとる。
なお、一般に、薄膜トランジスタで観測される抵抗値と、有機EL素子で観測される抵抗値とは、前者が後者よりも遥かに小さいため、前述のような回路構成において、スイッチングトランジスタTswがONとなれば、駆動用トランジスタTdr2で生成された電流は、有機EL素子8の側には殆ど流れず、スイッチングとランジスタTswの側にその大部分が流れる、ということが言い得る。
【0061】
このような駆動回路11Aは、例えば図9に示すようなタイミングチャートに従って動作する。
この図9において、制御信号Data2は、Hレベル及びLレベルを一定周期で繰り返す矩形波状の信号である。スイッチングトランジスタTswは、かかる制御信号Data2がHレベルにある場合にONとなり、Lレベルにある場合にOFFとなる。
したがって、後者の場合には、有機EL素子8には、駆動用トランジスタTdr2の飽和電流たる電流Ioledが流れる。この際、有機EL素子8は発光するとともに発熱する。なお、上で一般論として言及した薄膜トランジスタと有機EL素子との抵抗値に関する知見に従えば、両者が直列に接続されていて同じ電流が流れている状況においては、有機EL素子の発する熱量の方が、薄膜トランジスタの発する熱量よりも遥かに大きくなる、ということが言い得る。したがって、有機EL素子8が発光している場合においては、これと駆動用トランジスタTdr2との相対的な関係からいえば、前者のみが発熱し、後者は発熱していない、ということも言い得る。
他方、前者の場合(即ち、スイッチングトランジスタTswがONの場合)には、有機EL素子8には電流が流れない。ただ、この場合においても、定電流源たる駆動用トランジスタTdr2は発熱しているので、この未発光状態にある有機EL素子8は、当該駆動用トランジスタTdr2から発せられた熱を受けることになる。
【0062】
なお、前述の制御信号Data2は、図1の制御部CUによって発せられる。
また、図8に示す駆動回路11Aにおいて、発熱するのは駆動用トランジスタTdr2のみに限られない。すなわち、スイッチングトランジスタTswもまた、電流が流れれば当然発熱する(この場合の「電流」とは、駆動用トランジスタTdr2の飽和電流たる電流Iconである。つまり、Icon≒Ioledである。)。したがって、本発明にいう「発熱素子」には、前記の駆動用トランジスタTdr2のみならず、スイッチングトランジスタTswもまた、その該当性を有する。なお、電流Ioledの値と電流Iconの値との和は、図9において常に一定である(図中“Ito”参照。)。
【0063】
このような形態となる駆動回路11Aでは、前述の基準信号Vrefのレベルが、上述した3つの運転モードの相違に基づいて定められる。例えば、図9を参照して説明したような「通常運転モード」において、基準電圧Vrefとして第1電圧Vref1が印加されるとしたなら、「省エネ・運転モード」では、第2電圧Vref2(Vref2>Vref1)が印加され、「暖機運転モード」では、第3電圧Vref3(Vref3<Vref1)が印加される、というようである。
このような変形例1であっても、上述した実施形態によって奏された各種の作用効果と本質的に相違のない作用効果が奏されることは明白である。
【0064】
<変形例2>
上述の実施形態では、3つの運転モードを実現するために、電源線14に供給すべき電圧の値を調整する手法をとっているが、本発明は、かかる形態に限定されない。かかる手法以外にも、(i)共通線16の電圧を高める、(ii)電源線14上に機械式スイッチや大面積の電子式スイッチを設ける、(iii)共通戦16上に機械式スイッチや大面積の電子式スイッチを設ける、等といった各種の手法を採用することができる。
上記のうち(i)を採用する場合は、「通常運転モード」において、電圧Vct1が供給されるとしたなら、「省エネ運転モード」では電圧Vct2(Vct2>Vct1)が供給され、「暖気運転モード」では電圧Vct3(Vct3<Vct1)が供給される、というようにする。なお、この(i)を採用した場合の具体的な構成は、図2と殆ど同じであり、同図における符号を若干書き換えれば(例えば“Vel1”とあるのを、“Vct1”と書き換える等)、当該構成は図示されたに等しい。
【0065】
また、(ii)あるいは(iii)を採用する場合は、例えば図10に示すような構成となる。この図10において、電源回路PWと発光装置10の駆動回路11Sとの間は、電圧供給線VFによって接続されている。ここで電圧供給線VFとは、図3や図4でいう電源線14又は共通線16を意味する。スイッチSWは、この電圧供給線VFの上に設けられている。そして、制御部CUは、このスイッチSWの開閉を制御信号によって制御する。
これによると、VctあるいはVelに係る電圧供給は遮断され得ることになるので、その場合、図3の駆動用トランジスタTdr1あるいは発熱用トランジスタTconは発熱しないことになる。つまり、スイッチSWによって、「省エネ運転モード」が実現されることになる。なお、いまの説明からも明らかなように、この手法は、「省エネ運転モード」を実現するための手法であり、「暖機運転モード」への対応はできない。
【0066】
以上の(i)乃至(iii)の手法、あるいは上述の実施形態における手法(電源線14の電圧変更に係る手法)は、各々個別に採用することが可能であるほか、場合によっては併用することが可能である(特に、上記(ii)及び(iii)を採用する場合、上述のように「暖機運転モード」は実現されないので、当該場合であって、「暖機運転モード」をも実現したいという場合には、その他の手法を併用することは必須である。)。
また、上記においては、前記(i)乃至(iii)に係る手法が、前記実施形態(図3等)に適用される場合について説明しているが、それのみならず、すぐ上での述べた<変形例1>に対しても適用可能であるのは当然である。さらに、そのような場合における前記各手法の併用も可能である。
【0067】
このように、前記の3つの運転モードを実現するためには、上述したような様々な手法を採用することができるが、その中においても、前記実施形態における電源線14の電圧を調整する手法(以下、便宜上「第1手法」という。)、あるいは<変形例1>における基準電圧Vrefを調整する手法(以下、便宜上「第2手法」という。)は、上記(ii)及び(iii)に係る手法において必要なスイッチSWを設ける必要がない分、発光装置ないし画像形成装置の構成を簡易化することができるという利点がある。また、前述の第1手法及び第2手法を比べた場合には、システムの根幹ともいえる電源電圧を変更する場合に比べて、駆動用トランジスタTdr2のゲート電圧を変更することの方が、若干制御が容易ということができるから、第2手法の方がより有利ということができる。
【0068】
以上述べた各種の変形例1乃至4のほか、本発明は、下記のような変形例をも含む。
(1) 上述した各実施形態に係る発光装置は、ボトムエミッションタイプであるが(図1参照)、本発明に係る発光装置は、トップエミッションタイプであってもよい。あるいは、デュアルエミッションタイプであってもよい。
(2) 上述した各実施形態に係る発光装置は、有機EL装置であるが、本発明に係る発光装置は、無機EL装置であってもよい。
【0069】
<応用>
次に、本発明に係る発光装置を適用した応用例(電子機器)について説明する。
【0070】
<画像形成装置>
以上の各態様に係る発光装置は、電子写真方式を利用した画像形成装置における像担持体に潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして利用され得る。画像形成装置の例としては、プリンタ、複写機の印刷部分及びファクシミリの印刷部分がある。図11は、発光装置10をライン型の光ヘッドとして用いた画像形成装置の一例を示す縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
【0071】
この画像形成装置では、同様な構成の4個の有機ELアレイ10K,10C,10M,10Yが、同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K,110C,110M,110Yの露光位置にそれぞれ配置されている。有機ELアレイ10K,10C,10M,10Yは、以上に例示した何れかの態様に係る発光装置10である。
【0072】
図11に示すように、この画像形成装置には、駆動ローラ121と従動ローラ122とが設けられており、これらのローラ121,122には無端の中間転写ベルト120が巻回されて、矢印に示すようにローラ121,122の周囲を回転させられる。図示しないが、中間転写ベルト120に張力を与えるテンションローラなどの張力付与手段を設けてもよい。
【0073】
この中間転写ベルト120の周囲には、外周面に感光層を有する4個の感光体ドラム110K,110C,110M,110Yが互いに所定の間隔をおいて配置される。添え字K,C,M,Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの顕像を形成するために使用されることを意味している。他の部材についても同様である。感光体ドラム110K,110C,110M,110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0074】
各感光体ドラム110(K,C,M,Y)の周囲には、コロナ帯電器111(K,C,M,Y)と、有機ELアレイ10(K,C,M,Y)と、現像器114(K,C,M,Y)が配置されている。コロナ帯電器111(K,C,M,Y)は、対応する感光体ドラム110(K,C,M,Y)の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ10(K,C,M,Y)は、感光体ドラムの帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。各有機ELアレイ10(K,C,M,Y)は、複数の発光素子Pの配列方向が感光体ドラム110(K,C,M,Y)の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数の発光素子Pによって感光体ドラムに光を照射することにより行う。現像器114(K,C,M,Y)は、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラムに顕像すなわち可視像を形成する。
【0075】
このような4色の単色顕像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各顕像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写されることにより、中間転写ベルト120上で重ね合わされ、この結果としてフルカラーの顕像が得られる。中間転写ベルト120の内側には、4つの一次転写コロトロン(転写器)112(K,C,M,Y)が配置されている。一次転写コロトロン112(K,C,M,Y)は、感光体ドラム110(K,C,M,Y)の近傍にそれぞれ配置されており、感光体ドラム110(K,C,M,Y)から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写コロトロンの間を通過する中間転写ベルト120に顕像を転写する。
【0076】
最終的に画像を形成する対象としてのシート102は、ピックアップローラ103によって、給紙カセット101から1枚ずつ給送されて、駆動ローラ121に接した中間転写ベルト120と二次転写ローラ126の間のニップに送られる。中間転写ベルト120上のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート102の片面に一括して二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることでシート102上に定着される。この後、シート102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙カセット上へ排出される。
【0077】
次に、本発明に係る画像形成装置の他の実施の形態について説明する。図12は、発光装置10をライン型の光ヘッドとして用いた他の画像形成装置の縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したロータリ現像式のフルカラー画像形成装置である。図12に示す画像形成装置において、感光体ドラム165の周囲には、コロナ帯電器168、ロータリ式の現像ユニット161、有機ELアレイ167、中間転写ベルト169が設けられている。
【0078】
コロナ帯電器168は、感光体ドラム165の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ167は、感光体ドラム165の帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。有機ELアレイ167は、以上に例示した各態様の発光装置10であり、複数の発光素子Pの配列方向が感光体ドラム165の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、これらの発光素子Pから感光体ドラム165に光を照射することにより行う。
【0079】
現像ユニット161は、4つの現像器163Y,163C,163M,163Kが90°の角間隔をおいて配置されたドラムであり、軸161aを中心にして反時計回りに回転可能である。現像器163Y,163C,163M,163Kは、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ、黒のトナーを感光体ドラム165に供給して、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラム165に顕像すなわち可視像を形成する。
【0080】
無端の中間転写ベルト169は、駆動ローラ170a、従動ローラ170b、一次転写ローラ166及びテンションローラに巻回されて、これらのローラの周囲を矢印に示す向きに回転させられる。一次転写ローラ166は、感光体ドラム165から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写ローラ166の間を通過する中間転写ベルト169に顕像を転写する。
【0081】
具体的には、感光体ドラム165の最初の1回転で、有機アレイ167によりイエロー(Y)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Yにより同色の顕像が形成され、さらに中間転写ベルト169に転写される。また、次の1回転で、有機アレイ167によりシアン(C)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Cにより同色の顕像が形成され、イエローの顕像に重なり合うように中間転写ベルト169に転写される。そして、このようにして感光体ドラム165が4回転する間に、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の顕像が中間転写ベルト169に順次重ね合わせられ、この結果フルカラーの顕像が転写ベルト169上に形成される。最終的に画像を形成する対象としてのシートの両面に画像を形成する場合には、中間転写ベルト169に表面と裏面の同色の顕像を転写し、次に中間転写ベルト169に表面と裏面の次の色の顕像を転写する形式で、フルカラーの顕像を中間転写ベルト169上で得る。
【0082】
画像形成装置には、シートが通過させられるシート搬送路174が設けられている。シートは、給紙カセット178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出され、搬送ローラによってシート搬送路174を進行させられ、駆動ローラ170aに接した中間転写ベルト169と二次転写ローラ171の間のニップを通過する。二次転写ローラ171は、中間転写ベルト169からフルカラーの顕像を一括して静電的に吸引することにより、シートの片面に顕像を転写する。二次転写ローラ171は、図示しないクラッチにより中間転写ベルト169に接近及び離間させられるようになっている。そして、シートにフルカラーの顕像を転写する時に二次転写ローラ171は中間転写ベルト169に当接させられ、中間転写ベルト169に顕像を重ねている間は二次転写ローラ171から離される。
【0083】
以上のようにして画像が転写されたシートは定着器172に搬送され、定着器172の加熱ローラ172aと加圧ローラ172bの間を通過させられることにより、シート上の顕像が定着する。定着処理後のシートは、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印Fの向きに進行する。両面印刷の場合には、シートの大部分が排紙ローラ対176を通過した後、排紙ローラ対176が逆方向に回転させられ、矢印Gで示すように両面印刷用搬送路175に導入される。そして、二次転写ローラ171により顕像がシートの他面に転写され、再び定着器172で定着処理が行われた後、排紙ローラ対176でシートが排出される。
【0084】
図11及び図12に例示した画像形成装置は、発光素子を露光手段として利用しているので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。なお、以上に例示した以外の電子写真方式の画像形成装置にも本発明の発光装置を採用することができる。例えば、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムから直接シートに顕像を転写するタイプの画像形成装置や、モノクロの画像を形成する画像形成装置にも本発明に係る発光装置を応用することが可能である。
【0085】
また、本発明に係る発光装置は、上述のような「画像形成装置」に、その適用範囲は限定されない。例えば、前記以外の各種の電子機器における照明装置としても、本発明に係る発光装置は採用される。このような電子機器としては、例えば、ファクシミリ、複写機、複合機、プリンタなどが挙げられる。これらの電子機器には、複数の発光素子を面状に配列した発光装置が好適に採用される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の発光装置を光ヘッドとして含む画像形成装置の一部の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の発光装置のブロック図である。
【図3】図1の発光装置の平面図であって、特に素子基板上に配列された有機EL素子及びその駆動回路の配列態様例を示す図である。
【図4】図3の駆動回路の回路構成例を示す図である。
【図5】図4の駆動回路を動作させるためのタイミングチャートの一例である。
【図6】図3の素子基板における発熱の様子を説明するための図である。
【図7】図1の画像形成装置における3つの運転モードと、ある1個の発熱用トランジスタTconの発熱量との関係を示すグラフであって、横軸は時間、縦軸は当該発熱量を表すものである。
【図8】図4と同趣旨の図であって、同図とは別の回路構成例を示す図である。
【図9】図8の駆動回路を動作させるためのタイミングチャートの一例である。
【図10】図1とは異なる形態をとる発光装置のブロック図である。
【図11】画像形成装置の一例を示す縦断面図である。
【図12】画像形成装置の別例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0087】
10……発光装置、7……素子基板、12……カバー基板、8……有機EL素子(発光素子)、Tdr1、Tdr2……駆動用トランジスタ、Tcon……発熱用トランジスタ、Tsw……スイッチングトランジスタ、11、11A……駆動回路、11D1〜11D4……ダミー駆動回路、11a……第1の駆動回路群、11b……第2の駆動回路群、16……共通線、RTP……温度安定領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成される複数の発光素子と、
前記複数の発光素子の各々を駆動し、かつ、電流が流されることによって前記発光素子の発熱量に応じた熱を発する発熱素子を少なくとも含む駆動回路と、
少なくとも、前記発熱素子に電流が流れるかどうかについて、前記駆動回路を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
第1の場合において、前記発光素子が非発光の際に前記発熱素子に電流を流し、かつ、
第2の場合において、前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さないように、
前記駆動回路を制御する、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記複数の発光素子の各々に対応する複数の駆動回路からなり、
前記複数の駆動回路の各々は、
前記発熱素子として、
前記発光素子に直列に接続され、当該発光素子の定電流源として機能する駆動用トランジスタ、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記駆動用トランジスタが電気的に接続された電源線と、
前記電源線上に設けられる第1スイッチ手段と、
を更に備え、
前記制御手段は、前記第2の場合において、
前記電源線が切断されるように前記第1スイッチ手段を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子を介して前記駆動用トランジスタと電気的に接続された共通線と、
前記共通線上に設けられる第2スイッチ手段と、
を更に備え、
前記制御手段は、前記第2の場合において、
前記共通線が切断されるように前記第2スイッチ手段を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記駆動用トランジスタのソースに電気的に接続された電源線と、
前記駆動用トランジスタのドレインに前記発光素子を介して電気的に接続された共通線と、
を更に備え、
前記制御手段は、前記第2の場合において、
前記第1の場合に比べて、前記共通線の電圧を高めるように、前記駆動回路を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項6】
前記駆動用トランジスタのソースに電気的に接続された電源線と、
前記駆動用トランジスタのドレインに前記発光素子を介して電気的に接続された共通線と、
を更に備え、
前記制御手段は、前記第2の場合において、
前記第1の場合に比べて、前記電源線の電圧を低めるように、前記駆動回路を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項7】
前記駆動回路の各々は、前記発熱素子として、前記駆動用トランジスタに加え、
前記発光素子及び前記駆動用トランジスタと並列に接続され、前記発光素子で生成される単位時間当たりの発熱量に応じた発熱が生じる電流が流れるように制御される発熱用トランジスタ、
を更に含む、
ことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記駆動回路の各々は、前記発熱素子として、前記駆動用トランジスタに加え、
前記発光素子とは並列に、かつ、前記駆動用トランジスタとは直列に接続され、前記駆動用トランジスタに流れる電流を前記発光素子に流すかどうかを決めるスイッチングトランジスタ、
を更に含む、
ことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記駆動用トランジスタのゲートに電気的に接続され、当該駆動用トランジスタで生成される電流の大きさを定める信号を運ぶ制御線を更に備え、
前記制御手段は、前記第2の場合において、
前記第1の場合におけるのとは異なるように、前記信号の有無及び程度を制御する、
ことを特徴とする請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記制御手段は、第3の場合において、
前記第1の場合及び前記第2の場合に比べて、前記駆動用トランジスタに流れる電流量が増大するように、前記信号の程度を制御する、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記制御手段は、第3の場合において、
前記第1の場合及び前記第2の場合に比べて、前記電源線の電圧を高めるように、前記駆動回路を制御する、
ことを特徴とする請求項2,3,5乃至10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記制御手段は、第3の場合において、
前記第1の場合及び前記第2の場合に比べて、前記共通線の電圧を低めるように、前記駆動回路を制御する、
ことを特徴とする請求項2,4乃至10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発光装置を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成される複数の発光素子と、
前記複数の発光素子の各々を駆動し、かつ、電流が流されることによって前記発光素子の発熱量に応じた熱を発する発熱素子を少なくとも含む駆動回路と、
少なくとも、前記発熱素子に電流が流れるかどうかについて、前記駆動回路を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
第1の場合において、前記発光素子が非発光の際に前記発熱素子に電流を流し、かつ、
第2の場合において、前記発光素子が非発光の際にも前記発熱素子に電流を流さないように、
前記駆動回路を制御する、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記複数の発光素子の各々に対応する複数の駆動回路からなり、
前記複数の駆動回路の各々は、
前記発熱素子として、
前記発光素子に直列に接続され、当該発光素子の定電流源として機能する駆動用トランジスタ、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記駆動用トランジスタが電気的に接続された電源線と、
前記電源線上に設けられる第1スイッチ手段と、
を更に備え、
前記制御手段は、前記第2の場合において、
前記電源線が切断されるように前記第1スイッチ手段を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子を介して前記駆動用トランジスタと電気的に接続された共通線と、
前記共通線上に設けられる第2スイッチ手段と、
を更に備え、
前記制御手段は、前記第2の場合において、
前記共通線が切断されるように前記第2スイッチ手段を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記駆動用トランジスタのソースに電気的に接続された電源線と、
前記駆動用トランジスタのドレインに前記発光素子を介して電気的に接続された共通線と、
を更に備え、
前記制御手段は、前記第2の場合において、
前記第1の場合に比べて、前記共通線の電圧を高めるように、前記駆動回路を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項6】
前記駆動用トランジスタのソースに電気的に接続された電源線と、
前記駆動用トランジスタのドレインに前記発光素子を介して電気的に接続された共通線と、
を更に備え、
前記制御手段は、前記第2の場合において、
前記第1の場合に比べて、前記電源線の電圧を低めるように、前記駆動回路を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項7】
前記駆動回路の各々は、前記発熱素子として、前記駆動用トランジスタに加え、
前記発光素子及び前記駆動用トランジスタと並列に接続され、前記発光素子で生成される単位時間当たりの発熱量に応じた発熱が生じる電流が流れるように制御される発熱用トランジスタ、
を更に含む、
ことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記駆動回路の各々は、前記発熱素子として、前記駆動用トランジスタに加え、
前記発光素子とは並列に、かつ、前記駆動用トランジスタとは直列に接続され、前記駆動用トランジスタに流れる電流を前記発光素子に流すかどうかを決めるスイッチングトランジスタ、
を更に含む、
ことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記駆動用トランジスタのゲートに電気的に接続され、当該駆動用トランジスタで生成される電流の大きさを定める信号を運ぶ制御線を更に備え、
前記制御手段は、前記第2の場合において、
前記第1の場合におけるのとは異なるように、前記信号の有無及び程度を制御する、
ことを特徴とする請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記制御手段は、第3の場合において、
前記第1の場合及び前記第2の場合に比べて、前記駆動用トランジスタに流れる電流量が増大するように、前記信号の程度を制御する、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記制御手段は、第3の場合において、
前記第1の場合及び前記第2の場合に比べて、前記電源線の電圧を高めるように、前記駆動回路を制御する、
ことを特徴とする請求項2,3,5乃至10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記制御手段は、第3の場合において、
前記第1の場合及び前記第2の場合に比べて、前記共通線の電圧を低めるように、前記駆動回路を制御する、
ことを特徴とする請求項2,4乃至10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発光装置を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−107245(P2009−107245A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282893(P2007−282893)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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