発光装置
【課題】各種ごとに異なる色で発光する複数種の発光素子を具備する発光装置において、発光効率を低下させることなく、発光強度バラツキや、色バラツキを改善すること。
【解決手段】各種ごとに異なる色で発光する複数種の発光素子2を具備する発光装置において、第二電極8(半透明電極)の上面から保護層3の上面までの第一の区間と、有機層4の上面から保護層3の上面までの第二の区間と、第一電極7の上面から保護層3の上面までの第三の区間とした場合、第一〜第三の区間のうちのいずれかの区間内を伝搬する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、各区間の光学距離を設定する。
【解決手段】各種ごとに異なる色で発光する複数種の発光素子2を具備する発光装置において、第二電極8(半透明電極)の上面から保護層3の上面までの第一の区間と、有機層4の上面から保護層3の上面までの第二の区間と、第一電極7の上面から保護層3の上面までの第三の区間とした場合、第一〜第三の区間のうちのいずれかの区間内を伝搬する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、各区間の光学距離を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関するものであり、特に、各種ごとに異なる色で発光する複数種の発光素子を具備する発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、上述のエレクトロルミネッセンス発光素子(以下「発光素子」と呼称)に多くの研究者が注目しており、特に、この発光素子を画像表示装置や照明装置に適用しようとする研究が活発化している。
【0003】
一般的に、発光素子を構成する材料は、環境耐性に劣るという特性があり、外気からの適切な保護(封止)を行う必要があった。従来から、発光素子を外気から遮断して封止する手法として、封止基板を封止樹脂によって接着する手法や、発光素子を保護層で覆う手法、あるいは両者を併用する手法などが存在していた。
【0004】
これらの手法の中で、後者の手法、すなわち発光素子を保護層で覆う手法にあっては、水分や空気の遮断性の高い無機系材料を使用することができるので、発光素子の長寿命化を実現することができるという特徴があった。
【0005】
ところで、発光素子を覆う保護層の膜厚が薄い場合には水または酸素の遮断が不十分となり、一方、保護層の膜厚が厚い場合にはある程度以上の成膜時間を必要とするために製造タクトが低下するといった問題が生じる可能性があった。また、保護層の膜厚が厚い場合には、膜応力に起因する剥がれが発生する可能性があった。したがって、水または酸素の遮断を十分なものとし、製造タクトを低下させることなく、あるいは膜応力に起因する剥がれを防止するため、保護層の膜厚は、その全面を所定の範囲内(例えば300nm〜3μm)の同一膜厚で形成するのが一般的であった。
【0006】
なお、発光素子の封止を保護層によって行う従来技術として、例えば以下に示す特許文献1,2などがある。例えば、特許文献1では、屈折率が大気以上3.5以下の材料を用いて保護層による封止を行っている。また、特許文献2では、封止膜の表面に大気に接する状態で反射防止膜を備えるようにしている。
【特許文献1】特開2002−231443号公報
【特許文献2】特開2002−252082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発光素子を構成する材料をその光学的特性で2つに分けると、発光層、電荷輸送層、電荷注入層、透明電極、保護層等を構成する可視領域の波長帯で屈折率が比較的高い値を呈する透明材料と、電極や電子注入層等を構成する可視領域の波長帯で複素屈折率の実部が虚部よりも小さな値を呈する金属材料(不透明材料)と、がある。前者(透明材料)と後者(不透明材料)との境界面では大きな屈折率差があるため、大きな光反射が発生する。すなわち、後者は前者との間で、反射層として作用する。また、素子外部と接する保護層の表面でも大きな光反射が発生する。したがって、複数の反射面との間で光干渉が発生し、発光層で発生した光を素子外部に取り出す効率(以下「光取出し効率」と呼称)が各層の膜厚の差異によって変化する。
【0008】
カラー画像表示装置を、基板の反対側から光を取り出すトップエミッション型の発光素子で構成する場合、基板側から順に、不透明陽極、有機層(電荷(正孔/電子)注入層、電荷(正孔/電子)輸送層等の機能層を含む)、透明または半透明陰極、保護層の順番で構成される。なお、半透明陰極としては、金属材料を用いる場合が多く、一方、透明陰極を用いる場合には電子注入層に金属材料を使用する場合が多い。また、基板から順に、不透明陰極、有機層、透明または半透明陽極、保護層の順番で構成される場合がある。
【0009】
最近は、光を基板側と基板の反対側の両側から取り出すデュアルエミッション型の発光素子もあり、この場合は、基板側から順に、透明または半透明陽極、有機層、透明または半透明陰極、保護層の順番で構成される。また、基板側から順に、透明または半透明陰極、有機層、透明または半透明陽極、保護層の順番で構成される場合もある。
【0010】
上述のように構成された発光素子では、特に、光反射の大きな境界面が存在する。例えば、トップエミッション型で透明陰極を用いるタイプの場合では、
(a) 素子外部と接する保護層表面(保護層の上面)
(b) 保護層側の電子注入層境界面(電子注入層の上面)
(c) 発光層側の電子注入層境界面(電子注入層の下面)
(d) 発光層側の陽極境界面(陽極の上面)
のそれぞれが光反射の大きな境界面となる。
【0011】
また、例えば、トップエミッション型で半透明陰極を用いるタイプの場合では、
(a) 素子外部と接する保護層表面(保護層の上面)
(b) 保護層側の陰極境界面(陰極の上面)
(c) 発光層側の陰極境界面(陰極の下面)
(d) 発光層側の陽極境界面(陽極の上面)
のそれぞれが光反射の大きな境界面となる。
【0012】
また、例えばデュアルエミッション型で透明陽極と透明陰極を用いるタイプの場合で、電子注入層を金属材料で形成する場合では、
(a) 素子外部と接する保護層表面(保護層の上面)
(b) 保護層側の電子注入層境界面(電子注入層の上面)
(c) 発光層側の電子注入層境界面(電子注入層の下面)
(d) 基板側の陽極境界面(陽極の下面)
のそれぞれが光反射の大きな境界面となる。
【0013】
また、例えばデュアルエミッション型で透明陽極と半透明陰極を用いるタイプの場合では、
(a) 素子外部と接する保護層表面(保護層の上面)
(b) 保護層側の陰極境界面(陰極の上面)
(c) 発光層側の陰極境界面(陰極の下面)
(d) 基板側の陽極境界面(陽極の下面)
のそれぞれが光反射の大きな境界面となる。
【0014】
上記に示した各境界面において、4者の場合に共通して、発光層の膜厚を各発光素子の発光波長に合わせて異なった膜厚として調整することにより、(b)〜(c)間、(c)〜(d)および(b)〜(d)間で生ずる各発光素子の光干渉の度合いを増大させることができる。
【0015】
しかしながら、保護層の膜厚は上述したような理由により、各発光素子で一定であるために、4者の場合に共通して、(a)〜(b)間、(a)〜(c)間および(a)〜(d)の光干渉の度合いに対応させて各発光素子ごとに保護層の膜厚を調整することができない。したがって、従来の発光素子では、光取出し効率の極大となる波長が発光層で発生する光のピーク波長と大きく異なることとなり、その結果、発光強度が低下するだけでなく、色純度が悪化して色再現性が低下するといった問題点があった。
【0016】
また、従来の発光素子では、保護層の膜厚には面内バラツキがあり、保護層の平均膜厚値が光取出し効率が極大となる膜厚値からずれると、同一の膜厚バラツキであっても、大きな発光強度バラツキや、大きな色バラツキが発生するといった問題点があった。
【0017】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキを改善した発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施形態に係る発光装置は、第一電極と、光を透過する第二電極と、前記第一電極の上面と前記第二電極の下面との間に配置される発光層と、を有し、各種ごとに異なる色で発光する複数種の発光素子と、複数種の前記発光素子を共通に被覆し、前記第二電極の上面側に被着される保護層と、前記複数種の発光素子のうち、少なくとも1種の発光素子の第二電極の上面側に被着される調整層と、を備え、前記第二電極の上面側に被着される層の最上層の上面と前記第二電極の上面との間の区間を第一の区間、前記第二電極の下面と前記最上層の上面との間の区間を第二の区間、前記第一電極の上面と前記最上層の上面との間の区間を第三の区間とするとき、前記複数種の発光素子の各々に関して、第一〜第三の区間のいずれかの区間内を伝播する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、前記区間の光学距離が設定されている。
【0019】
また、本発明の他の実施形態に係る発光装置は、第一電極と、光を透過する第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に配置される発光層と、前記第一電極と前記第二電極との間に配置される反射層と、を有し、各種ごとに異なる色で発光する複数種の発光素子と、前記複数種の発光素子を共通に被覆し、前記発光素子の第二電極側に被着される保護層と、前記複数種の発光素子のうち、少なくとも1種の発光素子の第二電極の上面側に被着される調整層と、を備え、前記第二電極の上面側に被着される層の最上層の上面と前記反射層の上面との間の区間を第一の区間、前記反射層の下面と前記最上層の上面との間の区間を第二の区間、前記第一電極の上面と前記最上層の上面との間の区間を第三の区間とするとき、前記複数種の発光素子の各々に関して、前記第一〜第三の区間のいずれかの区間内を伝播する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、前記区間の光学距離が設定されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明にかかる発光装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる発光装置の構造を示す模式図であり、図9および図10は、従来技術にかかる発光装置の構造を示す模式図である。図1、図9および図10に示す発光装置は、基板の反対側から光を取り出すトップエミッション型の構造をそれぞれ示すものである。例えば、図9に示す従来技術にかかる発光装置では、基板101上に形成された複数種の発光素子102に対して封止(保護)基板104を樹脂103によって接着し、複数種の発光素子102(青色発光用の発光素子、赤色発光用の発光素子、緑色発光用の発光素子)を外気から遮断するような構成が採られている。また、図10に示す従来技術にかかる発光装置では、基板101上に形成された複数種の発光素子102が保護層105によって覆われるような構成が採られている。なお、図10に示す構成においては、発光素子の特性や寿命などに影響を与える水および酸素を十分に遮断し、製造タクトを低下させず、膜応力に起因する剥がれを防止する観点から、保護層の膜厚は、300nm〜3μmの範囲の同一膜厚で形成されるものが一般的な構成となっている。
【0023】
一方、本発明の実施の形態1にかかる発光装置は、図1に示すように、一対の電極5の間に発光層を含む多層構造の有機層4を積層してなる複数種(赤色発光用、緑色発光用、青色発光用)の発光素子2が基板18上に形成されている。一対の電極5は、光の少なくとも一部を有機層4側に反射する第一電極7と、光の少なくとも一部を透過する第二電極8とから構成される。第一電極7としては、光を反射する材料であれば、透明、半透明、不透明のいずれの導電材料であってもよいが、光の反射率を高めるためには、第一電極7を半透明電極もしくは不透明電極とすることが好ましい。また第二電極8としては、光を透過する導電材料であればいずれの材料であってもよいが、光の透過率を高めるためには、第二電極8を半透明電極、透明電極とすることが好ましい。
【0024】
第二電極8の上には調整層1が形成され、調整層1の上には調整層1および発光素子2の全体を被覆する保護層3が形成される。このように、この実施の形態1の発光装置は、後述する実施の形態2と異なり、調整層1が第二電極8と最上層である保護層3との間に形成されている。なお、一対の電極5の間に形成される各層は、有機材料以外の材料(例えば無機材料)により形成されていても構わない。
【0025】
また、図1では、有機層4が、下部から上部に向かって、例えば、電荷(正孔/電子)注入層9、電荷(正孔/電子)輸送層10、発光層16、電荷(電子/正孔)輸送層12および電荷(電子/正孔)注入層11からなる5層構造を一例として示しているが、有機層4の構造は、この5層構造に限定されるものではなく、種々の条件に応じて2層構造、3層構造や4層構造あるいは発光層のみの1層構造等、その他の構造が採用される。
【0026】
ここで、種々の条件とは、例えば、第一電極および第二電極の反射特性(不透明、半透明または透明)や、極性(陽極または陰極)や、発光色の種類(赤色、緑色、青色)などが該当する。これらの条件が異なると、各層に用いられる材料が異なる。一例を示すとすれば、Alq3(アルミノキノリール錯体)などの材料は、緑色の発光を示すとともに電子輸送性にも優れている。したがって、緑色に発光する発光素子では、発光層及び電子輸送層が、Alq3などの単一の材料で構成される場合がある。また、透明電極を用いる場合には金属の電子注入層を用いる場合が多い。
【0027】
つぎに、図1に示す発光装置を構成する各層の製造手法や、その組成などについて説明する。図1において、保護層3の材料としては、シリコン窒化膜等の水および酸素に対する透過係数の低い物質が用いられる。保護層3の膜厚は300nm〜3μm程度であり、膜厚の合計が100〜200nm程度である一対の電極5および有機層4に比してかなりの厚さを有している。したがって、保護層3の成膜においては、製造タクトを低下させないためにも高速成膜が必要となる。また、膜の緻密性や、良好なステップカバレッジ(段差被覆性)を確保する観点から、成膜手法にはCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの化学的手法が用いられる。
【0028】
なお、CVD法以外にも、例えば蒸着法を適用し、メタルマスクを用いて複数種の発光素子ごとに塗分(塗り分け)を行うことも考えられる。しかしながら、保護層に適した材料には融点、沸点の高い材料が多く、蒸着法では熱による有機層へのダメージが大きく、かつ、化学反応を伴っていないために緻密な膜形成が難しいため、CVD法が好ましい。一方、CVD法にメタルマスクを用いることも考えられるが、メタルマスクエッジにおける成膜回り込みが大きく、また、所定の磁場をかけるために、メタルマスクを固定する際に磁石使用し難いため、メタルマスクは使用しないことが好ましい。
【0029】
つぎに、透明電極、不透明電極および半透明電極の差異について説明する。透明電極は、可視光線の多くを通過させるような光特性と比較的大きな電気伝導性とを備えた材料で形成される。一方、不透明電極は、可視光線のほとんどを遮断する光特性と大きな電気伝導性とを備えた材料で形成される。半透明電極は、透明電極と不透明電極との中間的な特性を有するものであるが、可視光線を通過させるような光特性を有している必要があり、このような光特性を得るために膜厚を薄くすることで実現している。
【0030】
透明電極に好適な材料としては、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)や、IZO(Indium Zinc Oxide:インジウム亜鉛酸化物)などが代表的である。また、その膜厚として、好ましい膜厚は50nm以上であり、より好ましい膜厚は100nm〜300nmの範囲にある。また、不透明電極に好適な材料としては、例えばAlなどが代表的であり、好ましい膜厚は50nm以上であり、より好ましい膜厚は100nm〜300nmの範囲にある。また、半透明電極に好適な材料としては、例えばLiなどのアルカリ金属、Mg,Ca,Sr,Baなどのアルカリ土類金属、あるいはAl,Si,Agなどが代表的であり、好ましい膜厚は100nm以下であり、より好ましい膜厚は5nm〜50nmの範囲にある。
【0031】
調整層1は、各発光素子の発光波長において、保護層3の下に配置され、素子外部への光取出し効率が大きくなるように調整する役割を果たしている。したがって、調整層1は各発光素子の種類(発光波長)によって塗り分けを行うことができる。なお、調整層1の成膜手法としては、例えば、メタルマスクを用いた蒸着法がある。
【0032】
また、調整層1の材料としては、スチリルアリーレン、ポリシラン等の透明有機材料や酸化チタン、硫化亜鉛等の透明無機材料が好適である。これらの材料の中で、特に、有機材料は蒸着温度を低くすることができるので、基板の温度上昇による発光素子へのダメージを小さく抑えることができ、メタルマスクの温度上昇でメタルマスクが変形することに起因するパターンぼけを抑制し易いという利点を有している。
【0033】
さらに、この実施の形態の発光装置は、第二電極8に接して調整層1が形成されるので、有機層4や第二電極8の製造装置と同一チャンバまたは同一真空度の装置で調整層1を成膜することができるので、製造装置の規模がコンパクトになり、かつ、製造工程を高タクト化できるという利点も併せ有している。
【0034】
図2は、屈折率の異なる境界面に入射した入射光の反射現象を説明するための図である。同図において、屈折率n1の媒体から屈折率n2の媒体に向かって入射角θiで入射した光が、境界面において反射角θr(=θi)で反射するとき、これらのn1,n2,θiと、境界面における反射係数rとの間には、次式で示される関係が成り立つ。
【0035】
r=[n1・cos(θi)−[n22−n12・sin2(θi)]1/2]
/[n1・cos(θi)+[n22−n12・sin2(θi)]1/2]・・・(1)
特に、入射光が境界面に垂直に入射する場合には、(1)式において、θi=0°とすればよく、次式のように簡略化される。
【0036】
r=(n1−n2)/(n1+n2)
=[1−(n2/n1)]/[1+(n2/n1)] ・・・(2)
(2)式から理解されるように、境界面における屈折率比が大きいほど反射係数が大きくなる。また、境界面における屈折率の大小関係によって、境界面における反射波の位相が変化する。例えば、n1<n2の場合にはrは負の実数で区間境界面での位相変化量φは、
φ=arg(r)=π
となる。またn1>n2の場合にはrは正の実数で区間境界面での位相変化量φは、
φ=arg(r)=0
となる。
【0037】
なお、第二電極8の上面から保護層3の上面までの区間や、有機層4の上面から保護層3の上面までの区間のように、区間外に他の光反射の大きな境界面が存在する場合には、反射係数rは(1)式または(2)式のように単純ではなく、区間外の材料の屈折率と膜厚の関数式で与えられるが、区間境界面での位相変化量φが反射係数rの偏角で与えられることは共通している。
【0038】
つぎに、図1に示した発光装置において、各発光素子の種類(発光波長)ごとに調整する調整層1の好適な膜厚について説明する。図1において、第一電極7が不透明陽極、第二電極8が半透明陰極として構成されている場合、光反射の大きな境界面を列挙すると、つぎのようになる。
【0039】
(a) 素子外部と接する保護層3の表面(保護層3の上面)
(b) 第二電極8の保護層3側の境界面(第二電極8の上面)
(c) 第二電極8の有機層4側の境界面(第二電極8の下面)
(d) 第一電極7の有機層4側の境界面(第一電極7の上面)
上記に示したような各境界面において、図1に図示するように、第二電極8の上面から保護層3の上面までの区間を第一の区間とし、有機層4の上面から保護層3の上面までの区間を第二の区間とし、第一電極7の上面から保護層3の上面までの区間を第三の区間とし、それぞれの区間で光学距離L1、L2、L3を定義する。また、発光素子の発光波長をλとする。さらに、各区間の光学距離Liは、区間内の各層の屈折率niと膜厚diを用いて、次式のように表記することができる。
【0040】
Li=Σni・di ・・・(3)
いま、調整層1側から調整層1と第二電極8との境界面に光が入射して調整層1側に反射する光の位相変化φ1とするとき、上記第一の区間内の光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように光学距離L1を設定するため、調整層1の膜厚を制御する。より具体的には、例えば、赤色用、青色用、緑色用の発光素子の各々について、調整層1の膜厚が次式を満足するような膜厚に設定されていることが好適である。
【0041】
|L1+(φ1/π−2m)λ/4|<λ/8 ・・・(4)
(−π<φ1≦π、m=0,1,2,・・・)
(4)式において、φ1は境界面で反射する際の位相変化であり、mは任意の正の整数であり、(4)式を満足するmが存在すればよい。また、|α|はαの絶対値を示している。
【0042】
なお、光の進行波とは発光層から保護膜側に向けて出射される光を波動として捉えたときの表現であり、光の反射波とは区間内で反射して保護膜側に向けて出射される光を波動として捉えたときの表現である。また、右辺の「λ/8」という指標は、調整層1の膜厚が所望の膜厚に設定されているか否かを判定するためのしきい値である。(4)式の左辺がλ/8より大きくなると、区間内を伝搬する進行波と反射波との間の干渉は弱められる。
【0043】
同様に、第二電極8側から第二電極8と有機層4との境界面に光が入射して第二電極8側に反射する反射光の位相変化をφ2とするとき、上記第二の区間内の光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように光学距離L2を設定するため、調整層1の膜厚を制御する。より具体的には、例えば、赤色用、青色用、緑色用の発光素子の各々について、調整層1の膜厚が次式を満足するような膜厚に設定されていることが好適である。
【0044】
|L2+(φ2/π−2m)λ/4|<λ/8 ・・・(5)
(−π<φ2≦π、m=0,1,2,・・・)
また、有機層4側から有機層4と第一電極7との境界面に光が入射して有機層4側に反射する光の位相変化をφ3とするとき、上記第三の区間内の光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように光学距離L3を設定するため、調整層1の膜厚を制御する。より具体的には、例えば、赤色用、青色用、緑色用の発光素子の各々について、調整層1の膜厚が次式を満足するような膜厚に設定されていることが好適である。
【0045】
|L3+(φ3/π−2m)λ/4|<λ/8 ・・・(6)
(−π<φ3≦π、m=0,1,2,・・・)
なお、nは従来周知のエリプソメトリー法によって測定される。また、λは分光光度計によって測定される。更にφについては次の方法で決定される。すなわち、対応する区間外(例えばφ1を算出する場合は第一の区間外、φ2の場合は第二の区間外、φ3の場合は第三の区間外、後述するφ4の場合は第四の区間外)であって、光が通過する領域に存在する層、部材のnとdを測定し、その数値を用いて光学薄膜における特性マトリクス法によって反射係数rを算出し、かかる反射係数rの偏角をとることによって求められる。
【0046】
なお、上記の(4)〜(6)式に示される全ての条件を満たすように、調整層1の膜厚が設定されていることが、より好ましい。しかしながら、上記(4)〜(6)式に示される条件のうちのいずれか一つの条件を満足させることによっても、従来の発光装置に比して、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0047】
また、調整層1の屈折率をn1とし、調整層1に接する両側の層のうち、一方側の層である保護層3の屈折率をn2とし、他方側の層である第二電極8の屈折率をn3とするとき、これらの屈折率の間に、n3<n1<n2、またはn2<n1<n3の関係が成り立つような材料を選択することにより、第二電極8と調整層1との境界面での光反射が低下し、その結果、保護層3における光干渉が弱められるので、保護層3の膜厚変動による光取出し効率の変動を抑制することができる。表1を参照すると、第二電極8をマグネシウムにより形成し、保護層3をシリコン窒化膜により形成する場合、調整層1をシリコン酸窒化膜、アルミナ、シリコン酸化膜、フッ化アルミニウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等により形成すれば、n3<n1<n2を満足することが判る。なお、屈折率の大小は複素屈折率の実部の大小で判断される。
【表1】
【0048】
また、調整層1の屈折率n1と調整層1に接する一方側の層である保護層3の屈折率n2との間に、0.6≦(n1/n2)≦1.9の関係が成り立つような材料を選択することにより、調整層1と保護層3との境界面での光反射が低下し、その結果、保護層3における光干渉が弱められるので、保護層3の膜厚変動による光取出し効率の変動をより効果的に抑制することができる。
【0049】
なお、上述した事項は、図1において、第二電極8が半透明電極として構成されている場合における調整層1の好適な膜厚の条件について説明するものであったが、第二電極8が透明電極として構成されている場合であっても、上述の考え方を適用することができる。この場合、例えば、(4)式における位相変化φ2は、第二電極8側から電荷(電子)注入層11の下面側の境界面に光が入射して第二電極8側に反射する光の位相変化とすればよく、また、(4)式における光学距離L2は、電荷(電子)注入層11の下面から保護層3の上面までの区間の光学距離とすればよい。
【0050】
また、第二電極8が半透明陽極として構成されている場合や、透明陽極として構成されている場合についても、上述の考え方を適用することができる。例えば、第二電極8が半透明陽極として構成されている場合であれば、陰極と陽極とが入れ替わるだけであり、第二電極8が半透明陰極の場合と同様な条件となる。また、第二電極8が透明陽極として構成されている場合であれば、第二電極8が透明陰極の場合と同様な条件となる。
【0051】
一方、デュアルエミッション型の発光素子において、例えば第一電極7が透明陽極、第二電極8が半透明陰極として構成されている場合には、光反射の大きな境界面を列挙すると、以下に示すとおりである。
【0052】
(a) 素子外部と接する保護層3の表面(保護層3の上面)
(b) 第二電極8の保護層3側の境界面(第二電極8の上面)
(c) 第二電極8の有機層4側の境界面(第二電極8の下面)
(d) 第一電極7の基板18側の境界面(第一電極7の下面)
上記に示した各境界面のうち、(a)〜(c)の境界面は、第一電極7が不透明陽極、第二電極8が半透明陰極として構成されている場合の光反射の大きな境界面と同一であり、(d)の境界面のみが異なっている。そこで、第一電極7の下面から保護層3の上面までの区間を第四の区間(光学距離L4)として新たに定義する。なお、この第四の区間の光学距離L4は、当該区間内の各層の屈折率および膜厚に基づき、前述の(3)式を用いて算出することができる。
【0053】
このとき、有機層4側から第一電極8と基板18との境界面に光が入射して有機層4側に反射する光の位相変化φ4とすれば、第四の区間内の光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように光学距離L4を設定するため、調整層1の膜厚が制御されることが好ましい。例えば、赤色用、青色用、緑色用の発光素子の各々について、調整層1の膜厚が次式を満足するような厚さに設定されていることが好適である。
【0054】
|L4+(φ4/π−2m)λ/4|<λ/8 ・・・(7)
(−π<φ4≦π、m=0,1,2,・・・)
調整層1は、上記の(4)〜(7)式に示される全ての条件を満足するような膜厚に設定されていることが好ましいが、上記(4)〜(7)式に示される条件のうちのいずれか一つの条件を満足させることによっても、従来の発光装置に比して、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0055】
以上説明したように、この実施の形態の発光装置によれば、第二電極の上面から保護層の上面までを第一の区間とし、第二電極の下面から最上層の上面までを第二の区間とし、第一電極の上面から最上層の上面までを第三の区間とした場合、第一〜第三の区間のいずれかの区間内を伝搬する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように各区間の光学距離が設定されているので、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0056】
また、第一電極の下面から最上層の上面までの第四の区間とし、第一〜第四の区間のいずれかの区間内を伝搬する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、区間の光学距離が設定されているので、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。上述の式は全ての発光素子について満足することが好ましい。
【0057】
なお、調整層1の膜厚は保護層3の膜厚よりも薄い方が好ましい。その理由は、調整層1の膜厚が大きいと、均一な膜形成が困難となるため、調整層1が設けられる複数種の発光素子の全てについて、上述した式を満足することが難しくなり、生産性の低下が生じるおそれがあるからである。特に、調整層1の膜厚を保護層3の膜厚の50%以下に設定することが好ましい。
【0058】
また、本実施形態においては、調整層を3種全ての発光素子に対して設けるようにしたが、必ずしも全ての種類の発光素子に調整層を設ける必要はなく、これに代えて、調整層を1種もしくは2種の発光素子に対して設けるようにしてもよい。
【0059】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2にかかる発光装置の構造を示す模式図である。同図に示す発光装置は、調整層1が素子外部と保護層3との間に介在する場合の構造を示すものである。したがって、この実施の形態の発光装置では、実施の形態1とは異なり、調整層1が最上層として構成されている。なお、その他の構造は、実施の形態1の構造と同一あるいは同等であり、これらの各部には同一符号を付して示している。
【0060】
この実施の形態の発光装置は、上述のように、調整層1が最上層に構成されている点以外は、基本的に実施の形態1の発光装置と同等の構造を有しており、実施の形態1と同等な作用および効果を得ることができる。
【0061】
この実施の形態の発光装置では、保護層3を形成した後に調整層1を形成するため、例えば、酸素アシスト蒸着法等の手法を用いることができる。酸素アシスト蒸着法は、発光素子にダメージを与え易いという不利点を有しているが、この実施の形態の発光装置では、発光素子全体を保護層3によって被膜した後に、この酸素アシスト蒸着法を適用することができるので、発光素子へのダメージを大幅に低減できる。したがって、この実施の形態の発光装置では、緻密で透明性が高く、かつ、環境耐性に優れた調整層を成膜することができる。
【0062】
なお、調整層1の屈折率n1と、調整層1に接する両側の層のうち、一方側の層である保護層3の屈折率n2と、他方側の層となる素子外部(外気)の屈折率n3との間に、n3<n1<n2の関係が成り立つような材料を選択することにより、調整層1と素子外部との境界面での光反射が低下し、その結果、保護層3における光干渉が弱められるので、保護層3の膜厚変動による光取出し効率の変動を抑制することができる。素子外部の屈折率n3は、素子外部が大気であれば約1.0である。この場合、表1を参照すると、保護層3をシリコン窒化膜により、調整層1をシリコン酸窒化膜、アルミナ等により形成すれば、n3<n1<n2を満足する。
【0063】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3にかかる発光装置の構造を示す模式図である。同図に示す発光装置は、実施の形態1の構造において、保護層3が第一の保護層6と第二の保護層19との2層により構成されている場合の構造を示すものである。なお、その他の構造は、実施の形態1の構造と同一あるいは同等であり、これらの各部には同一符号を付して示している。
【0064】
この実施の形態の発光装置は、上述のように、保護層3が第一の保護層6と第二の保護層19との2層により構成されている以外は実施の形態1の発光装置と同等の構造を有しているので、実施の形態1と同等な作用および効果を得ることができる。
【0065】
図4において、第二の保護層19を低屈折率材料により、第一の保護層6を高屈折率材料により形成すれば、第二の保護層19によって第一の保護層6と素子外部との間の屈折率差が緩和され、第一の保護層6内の光干渉を弱めることができ、その結果、第一の保護層6の膜厚変動による光取出し効率の変動を抑制する役割を果たすことができる。
【0066】
なお、第二の保護層19は、素子外部と第一の保護層6との間の屈折率差を緩和し、第一の保護層6の光干渉を弱める作用の他に、外部から素子に向かう外部光の反射を防止するための反射防止膜として作用させることもできる。
【0067】
また、この実施の形態の発光装置では、保護層3が第一の保護層6と第二の保護層19との2層により構成されている場合の例について示したが、2層に限定されるものではなく、3層以上の多層構造を有していてもよい。特に、多層構造になるにしたがって、素子外部と発光素子との間の屈折率差の勾配を小さくすることができ、保護層内の光干渉を弱めることができるので、保護層の膜厚変動による光取出し効率の変動をより効果的に抑制することができる。
【0068】
以上説明したように、この実施の形態の発光装置によれば、外気を遮断する保護層を複数の層に構成するようにしているので、保護層の膜厚変動による光取出し効率の変動を効果的に抑制することができる。
【0069】
(実施の形態4)
図5は、本発明の実施の形態4にかかる発光装置の構造を示す模式図である。同図に示す発光装置は、図3に示す実施の形態2の構造において、発光素子2を覆う第一の保護層である保護層3と保護層3の上部に構成された調整層1とをさらに保護するための第二の保護層19をさらに備えている場合の構造を示すものである。なお、その他の構造は、実施の形態2の構造と同一あるいは同等であり、これらの各部には同一符号を付して示している。
【0070】
この実施の形態の発光装置は、図2の保護層3に相当する第一の保護層6および調整層1の両者全体を覆う第二の保護層19をさらに備えている点を除いて、実施の形態2の発光装置と同等の構造を有しているので、実施の形態2と同等な作用および効果を得ることができる。
【0071】
なお、この実施の形態の発光装置では、第一の保護層6と第二の保護層19との間に調整層1が介在するように構成される場合の例について示したが、この構成に限定されるものではなく、第二の保護層19が2層以上の多層構造を有していてもよい。この場合、多層構造になるにしたがって、素子外部と発光素子との間の屈折率差の勾配が小さくなり、保護層内の光干渉が弱められるので、第一の保護層6の膜厚変動による光取出し効率の変動をより効果的に抑制することができる。
【0072】
以上説明したように、この実施の形態の発光装置によれば、調整層を第一の保護層と第二の保護層との間に介在するようにしているので、第一の保護層の膜厚変動による光取出し効率の変動を効果的に抑制することができる。
【0073】
なお、図5において、第二の保護層19は、素子外部と第一の保護層6との間の屈折率差を緩和し、第一の保護層6の光干渉を弱める作用の他に、外部から素子に向かう外部光の反射を防止するための反射防止膜として作用させることもできる。
【0074】
(実施の形態5)
図6は、本発明の実施の形態5にかかる発光装置の構造を示す模式図である。同図に示す発光装置は、実施の形態1の構造において、第二電極8が透明電極により構成されている場合を示すものである。この場合、第二電極8に接する電荷注入層11が反射層として作用する。なお、その他の構造は、実施の形態1の構造と同一あるいは同等であり、これらの各部には同一符号を付して示している。
【0075】
透明電極である第二電極に接する電荷注入層11の材料としては、半透明電極と同様の材料が適しており、電荷注入層11の好ましい膜厚は50nm以下であり、より好ましい膜厚は1nm〜30nmの範囲にある。
【0076】
また、透明電極の屈折率が1.7〜2.3程度なのに対して、金属材料からなる電荷注入材料の屈折率(複素屈折率)は、その実部が0.01〜1程度、虚部が1〜10程度であり、透明電極よりも実部が小さく、虚部が大きな値となっている。一般に、電荷注入層11が反射層として機能するためには、第二電極8よりも複素屈折率の実部が小さい材料、または、複素屈折率の虚部が大きい材料により形成される必要がある。
【0077】
つぎに、図6に示した発光装置において、各発光素子の発光波長ごとに調整する調整層1の好適な膜厚について説明する。同図において、光反射の大きな境界面を列挙すると、つぎのようになる。
【0078】
(a) 素子外部と接する保護層3の表面(保護層3の上面)
(b) 電荷注入層11の保護層3側の境界面(電荷注入層11の上面)
(c) 電荷注入層11の有機層4側の境界面(電荷注入層11の下面)
(d) 第一電極7の有機層4側の境界面(第一電極の上面)
これらの各境界面において、図6に図示するように、電荷注入層11の上面から保護層3の上面までの第一の区間(光学距離L1)と、電荷注入層11の下面から保護層3の上面までの第二の区間(光学距離L2)と、第一電極7の上面から保護層3の上面までの第三の区間(光学距離L3)とを、(3)式に基づいてそれぞれ定義するとき、第一〜第三の区間内の光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように各区間の光学距離を設定するため、調整層1の膜厚が制御されればよい。
【0079】
また、調整層1は、各発光素子に関して、上述の(4)式〜(6)式に示される条件を満たすように、調整層1の膜厚が設定されていることが好ましいが、上記(4)式〜(6)式に示される条件のうちのいずれか一つの条件を満足させることによっても、他の実施形態と同様に、従来の発光装置に比して、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0080】
また、必ずしも全ての種類の発光素子に調整層1を設ける必要はなく、1種もしくは2種の発光素子に対して調整層1を設けるようにしてもよいことは他の実施形態と同様である。
【0081】
一方、発光素子がデュアルエミッション型の場合であって、例えば第一電極7が透明電極として構成されている場合には、光反射の大きな境界面は、つぎのようになる。
【0082】
(a) 素子外部と接する保護層3の表面(保護層3の上面)
(b) 電荷注入層11の保護層3側の境界面(電荷注入層11の上面)
(c) 電荷注入層11の有機層4側の境界面(電荷注入層11の下面)
(d) 第一電極7の基板18側の境界面(第一電極7の下面)
したがって、発光素子がデュアルエミッション型の場合には、(3)式に基づいて定義される第一電極7の下面から保護層3の上面までの第四の区間(光学距離L4)を加えた、第一〜第四の区間内の光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように各区間の光学距離を設定するため、調整層1の膜厚が制御されればよい。
【0083】
なお、第一〜第四の区間の光学距離L1〜L4は、例えば、調整層1の膜厚が上記(4)式〜(7)式を満足するような厚さに設定されていることが好ましいが、これらの膜厚条件のうちのいずれか一つの条件を満足させることによっても、他の実施形態と同様に、従来の発光装置に比して、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0084】
また、他の実施形態と同様に、必ずしも全ての種類の発光素子に調整層1を設ける必要はなく、1種もしくは2種の発光素子に対して調整層1を設けるようにしてもよい。
【0085】
以上説明したように、この実施の形態の発光装置によれば、電荷注入層の上面から保護層の上面までを第一の区間とし、電荷注入層の下面から最上層の上面までを第二の区間とし、第一電極の上面から最上層の上面までを第三の区間とした場合、第一〜第三のいずれかの区間内を伝搬する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように各区間の光学距離が設定されているので、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0086】
また、この実施の形態の発光装置によれば、第一電極の下面から最上層の上面までの第四の区間とした場合、第一〜第四のいずれかの区間内を伝搬する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように各区間の光学距離が設定されているので、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0087】
(実施例1)
つぎに、本発明の実施例1について説明する。本実施例においては、赤色用の発光素子においては調整層1がなくても光出力が最大となるように保護層3の膜厚を440nmとし、緑色用の発光素子および青色用の発光素子においては、光出力が最大となる保護層膜厚が赤色用の発光素子と同じ440nmとなるように調整層1を形成している。図7は、図1に示す発光装置の保護層膜厚に対する光出力特性を示すグラフである。図7において、「三角」でプロットした曲線は赤色の発光素子の特性を示し、「四角」でプロットした曲線は緑色の発光素子の特性を示し、「菱形」でプロットした曲線は青色の発光素子の特性を示している。なお、各層の材料および膜厚は、以下のとおりである。
【0088】
(a) 正孔注入層9:無
(b) 正孔輸送層10
材料: NPB
膜厚: 60nm(赤)、40nm(緑、青)
(c) 発光層16
ホスト材料: Alq3(赤、緑)、SDPVBi(青)
ホスト膜厚: 60nm(赤、緑)、30nm(青)
ドーパント材料: DCJTB(赤)、クマリン(緑)、スチリルアミン(青)
(d) 電子輸送層12:無
(e) 電子注入層11
材料: マグネシウム
膜厚: 10nm
(f) 陰極8
材料: ITO
膜厚: 200nm
(g) 調整層1
材料:スチリルアリーレン
膜厚:無(赤)、20nm(緑)、60nm(青)
(h) 保護層3
材料:シリコン窒化膜
膜厚:400nm
一方、図11は、赤色、緑色および青色の各発光素子のいずれも調整層を有さない場合の保護層膜厚に対する光出力特性を示す図である。図7および図11における光出力は、図5に示す赤、緑、青の最大光出力がそれぞれ“1”となるように正規化している。なお、図11に示す発光装置の各発光素子上に形成されている各保護層の膜厚が440nm[赤]、470nm[緑]、510nm[青]の時に各色の光出力が最大となっている。
【0089】
図7と図11のグラフを比較すると、図7のグラフにおける光出力の最大値Pmaxは、PRmax=1.00[赤:基準値]、PGmax=0.99[緑]、PBmax=0.98[青]であり、調整層を具備することで、最大値付近の値を維持させることができる。また、図7において、0.9×Pmax<P<Pmaxを満足する保護層の膜厚範囲Wは、WR=72nm(±8.1%)、WG=49nm(±5.4%)、WB=59nm(±6.6%)であり、かつ、赤、緑、青の全色で重なっている。一方、図11では、保護層の膜厚範囲Wが、赤と青とで全く重なっていない。このことは、発光装置において、各発光素子の発光波長ごとに調整する調整層を備えることによって、保護層の膜厚分布が±5.4%まで許容できるように改善されたことを示している。
【0090】
また、表2には、本実施例の電子注入層11、陰極8、調整層1、保護層3の屈折率と、光学距離L1示す。
【表2】
【0091】
なお、光学距離L1は電子注入層11の上面から保護層3の上面までの区間により定義される。電子注入層11を構成する材料のマグネシウムは陰極8を構成するITOに比べると屈折率が小さいため、ITOとマグネシウムとの境界面で大きな反射が発生する。また、表2を参照すると、本実施例においては赤色用の発光素子でm=4、緑色用の発光素子でm=5、青色用の発光素子でm=6のとき、|L1+(φ1/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ1≦π)を満足していることがわかる。一方、調整層1が存在しない場合は、青色用及び緑色用の発光素子において上述の式を満足するmが存在していない。それ故、図7のケースにおいては、全ての発光素子に関して進行波と反射波が互いに強度を強め合うように光学距離L1が設定されていることになり、その結果、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキが改善されている。一方、図11のケースにおいては、一部の発光素子において、進行波と反射波とが強度を強めあう関係になっておらず、発光強度のバラツキが大きくなる。
【0092】
(実施例2)
つぎに、本発明の実施例2について説明する。図8は、図4に示す発光装置の保護層膜厚に対する光出力特性を示すグラフである。図8において、「三角」でプロットした曲線は赤色の発光素子の特性を示し、「四角」でプロットした曲線は緑色の発光素子の特性を示し、「菱形」でプロットした曲線は青色の発光素子の特性を示している。なお、各層の材料および膜厚のうち、図7に示す特性の発光装置と異なるパラメータのみを示すと、つぎのようになる。
【0093】
(a) 保護層3(第一の保護層)
材料:シリコン窒化膜
膜厚:480〜600nm(図8の横軸)
(b) 調整層1
材料:スチリルアリーレン
膜厚: 10nm(赤)、無(緑)、5nm(青)
(c) 第二の保護層19
材料:シリコン酸化膜
膜厚:90nm
図8における縦軸(光出力)の最大値も、図7に示したグラフと同様に、図5に示す赤、緑、青の最大光出力がそれぞれ“1”となるように正規化している。図8と図7のグラフとを比較すると、図8のグラフにおける光出力の最大値Pmaxは、PRmax=0.88[赤]、PGmax=0.88[緑]、PBmax=0.96[青]であり、図7のグラフにおける各色の最大値に比して、やや低下している。しかしながら、図8において、0.9×Pmax<P<Pmaxを満足する保護層の膜厚範囲Wは、WR=102nm(±9.4%)、WG=95nm(±8.8%)、WB=88nm(±8.1%)であり、かつ、赤、緑、青の全色で重なっている。このことは、調整層1と第二の保護層19とを備えることによって、実施例1に示した保護層3の膜厚分布が、さらに±8.1%まで許容できるように改善されたことを示している。
【0094】
なお、上述の(4)式〜(7)式においては、境界面で反射が生ずる際の位相変化量φを考慮していたが、上記の実施例を含み、発光装置の正面輝度を重視して設計する場合には、この位相変化量φが略0であることが多い。この場合には、上述の(4)式〜(7)式は、位相変化量を考慮することなく、次式のように修正することができる。
【0095】
|L−mλ/2|<λ/8 ・・・(8)
(L=L1、L2、L3またはL4,m=0,1,2,・・・)
なお、位相変化量φが略0に限らず、例えば−π/4<φ<π/4を満足するような範囲内にとどまっている場合には、その影響度が小さくなる。したがって、このような場合であっても、上述の(8)式を用いて、調整層1の膜厚を設定することができる。
【0096】
また、発光装置の視野角依存を抑制することを重視して設計する場合には、この位相変化量が略πであることが多い。この場合は、上述の(4)式〜(7)式中の位相変化量にπを代入して、次式のように記述することができる。
【0097】
|L−(2m−1)λ/4|<λ/8 ・・・(9)
(L=L1、L2、L3またはL4,m=0,1,2,・・・)
また、位相変化量φが略πに限らず、例えば−π<φ<−3π/4または3π/4<φ<πを満足するような範囲内にとどまっている場合には、その影響度が小さくなる。したがって、このような場合であっても、上述の(9)式を用いて、調整層1の膜厚を設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上のように、この発明にかかる発光装置は、画像表示装置用の光源として有用であり、特に、この画像表示装置の発光強度バラツキや、色バラツキなどを改善したい場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図2】屈折率の異なる境界面に入射した入射光の反射現象を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態2にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態3にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態4にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態5にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図7】図1に示す発光装置の保護層膜厚に対する光出力特性を示すグラフである。
【図8】図4に示す発光装置の保護層膜厚に対する光出力特性を示すグラフである。
【図9】従来技術にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図10】従来技術にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図11】赤色、緑色および青色の各発光素子のいずれも調整層を有さない場合の保護層膜厚に対する光出力特性を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1 調整層
2,102 発光素子
3,105 保護層
4 有機層
5 一対の電極
6 第一の保護層
7 第一電極
8 第二電極
9 正孔注入層
10 正孔輸送層
11 電子注入層
12 電子輸送層
16 発光層
18,101,104 基板
19 第二の保護層
103 樹脂
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関するものであり、特に、各種ごとに異なる色で発光する複数種の発光素子を具備する発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、上述のエレクトロルミネッセンス発光素子(以下「発光素子」と呼称)に多くの研究者が注目しており、特に、この発光素子を画像表示装置や照明装置に適用しようとする研究が活発化している。
【0003】
一般的に、発光素子を構成する材料は、環境耐性に劣るという特性があり、外気からの適切な保護(封止)を行う必要があった。従来から、発光素子を外気から遮断して封止する手法として、封止基板を封止樹脂によって接着する手法や、発光素子を保護層で覆う手法、あるいは両者を併用する手法などが存在していた。
【0004】
これらの手法の中で、後者の手法、すなわち発光素子を保護層で覆う手法にあっては、水分や空気の遮断性の高い無機系材料を使用することができるので、発光素子の長寿命化を実現することができるという特徴があった。
【0005】
ところで、発光素子を覆う保護層の膜厚が薄い場合には水または酸素の遮断が不十分となり、一方、保護層の膜厚が厚い場合にはある程度以上の成膜時間を必要とするために製造タクトが低下するといった問題が生じる可能性があった。また、保護層の膜厚が厚い場合には、膜応力に起因する剥がれが発生する可能性があった。したがって、水または酸素の遮断を十分なものとし、製造タクトを低下させることなく、あるいは膜応力に起因する剥がれを防止するため、保護層の膜厚は、その全面を所定の範囲内(例えば300nm〜3μm)の同一膜厚で形成するのが一般的であった。
【0006】
なお、発光素子の封止を保護層によって行う従来技術として、例えば以下に示す特許文献1,2などがある。例えば、特許文献1では、屈折率が大気以上3.5以下の材料を用いて保護層による封止を行っている。また、特許文献2では、封止膜の表面に大気に接する状態で反射防止膜を備えるようにしている。
【特許文献1】特開2002−231443号公報
【特許文献2】特開2002−252082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発光素子を構成する材料をその光学的特性で2つに分けると、発光層、電荷輸送層、電荷注入層、透明電極、保護層等を構成する可視領域の波長帯で屈折率が比較的高い値を呈する透明材料と、電極や電子注入層等を構成する可視領域の波長帯で複素屈折率の実部が虚部よりも小さな値を呈する金属材料(不透明材料)と、がある。前者(透明材料)と後者(不透明材料)との境界面では大きな屈折率差があるため、大きな光反射が発生する。すなわち、後者は前者との間で、反射層として作用する。また、素子外部と接する保護層の表面でも大きな光反射が発生する。したがって、複数の反射面との間で光干渉が発生し、発光層で発生した光を素子外部に取り出す効率(以下「光取出し効率」と呼称)が各層の膜厚の差異によって変化する。
【0008】
カラー画像表示装置を、基板の反対側から光を取り出すトップエミッション型の発光素子で構成する場合、基板側から順に、不透明陽極、有機層(電荷(正孔/電子)注入層、電荷(正孔/電子)輸送層等の機能層を含む)、透明または半透明陰極、保護層の順番で構成される。なお、半透明陰極としては、金属材料を用いる場合が多く、一方、透明陰極を用いる場合には電子注入層に金属材料を使用する場合が多い。また、基板から順に、不透明陰極、有機層、透明または半透明陽極、保護層の順番で構成される場合がある。
【0009】
最近は、光を基板側と基板の反対側の両側から取り出すデュアルエミッション型の発光素子もあり、この場合は、基板側から順に、透明または半透明陽極、有機層、透明または半透明陰極、保護層の順番で構成される。また、基板側から順に、透明または半透明陰極、有機層、透明または半透明陽極、保護層の順番で構成される場合もある。
【0010】
上述のように構成された発光素子では、特に、光反射の大きな境界面が存在する。例えば、トップエミッション型で透明陰極を用いるタイプの場合では、
(a) 素子外部と接する保護層表面(保護層の上面)
(b) 保護層側の電子注入層境界面(電子注入層の上面)
(c) 発光層側の電子注入層境界面(電子注入層の下面)
(d) 発光層側の陽極境界面(陽極の上面)
のそれぞれが光反射の大きな境界面となる。
【0011】
また、例えば、トップエミッション型で半透明陰極を用いるタイプの場合では、
(a) 素子外部と接する保護層表面(保護層の上面)
(b) 保護層側の陰極境界面(陰極の上面)
(c) 発光層側の陰極境界面(陰極の下面)
(d) 発光層側の陽極境界面(陽極の上面)
のそれぞれが光反射の大きな境界面となる。
【0012】
また、例えばデュアルエミッション型で透明陽極と透明陰極を用いるタイプの場合で、電子注入層を金属材料で形成する場合では、
(a) 素子外部と接する保護層表面(保護層の上面)
(b) 保護層側の電子注入層境界面(電子注入層の上面)
(c) 発光層側の電子注入層境界面(電子注入層の下面)
(d) 基板側の陽極境界面(陽極の下面)
のそれぞれが光反射の大きな境界面となる。
【0013】
また、例えばデュアルエミッション型で透明陽極と半透明陰極を用いるタイプの場合では、
(a) 素子外部と接する保護層表面(保護層の上面)
(b) 保護層側の陰極境界面(陰極の上面)
(c) 発光層側の陰極境界面(陰極の下面)
(d) 基板側の陽極境界面(陽極の下面)
のそれぞれが光反射の大きな境界面となる。
【0014】
上記に示した各境界面において、4者の場合に共通して、発光層の膜厚を各発光素子の発光波長に合わせて異なった膜厚として調整することにより、(b)〜(c)間、(c)〜(d)および(b)〜(d)間で生ずる各発光素子の光干渉の度合いを増大させることができる。
【0015】
しかしながら、保護層の膜厚は上述したような理由により、各発光素子で一定であるために、4者の場合に共通して、(a)〜(b)間、(a)〜(c)間および(a)〜(d)の光干渉の度合いに対応させて各発光素子ごとに保護層の膜厚を調整することができない。したがって、従来の発光素子では、光取出し効率の極大となる波長が発光層で発生する光のピーク波長と大きく異なることとなり、その結果、発光強度が低下するだけでなく、色純度が悪化して色再現性が低下するといった問題点があった。
【0016】
また、従来の発光素子では、保護層の膜厚には面内バラツキがあり、保護層の平均膜厚値が光取出し効率が極大となる膜厚値からずれると、同一の膜厚バラツキであっても、大きな発光強度バラツキや、大きな色バラツキが発生するといった問題点があった。
【0017】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキを改善した発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施形態に係る発光装置は、第一電極と、光を透過する第二電極と、前記第一電極の上面と前記第二電極の下面との間に配置される発光層と、を有し、各種ごとに異なる色で発光する複数種の発光素子と、複数種の前記発光素子を共通に被覆し、前記第二電極の上面側に被着される保護層と、前記複数種の発光素子のうち、少なくとも1種の発光素子の第二電極の上面側に被着される調整層と、を備え、前記第二電極の上面側に被着される層の最上層の上面と前記第二電極の上面との間の区間を第一の区間、前記第二電極の下面と前記最上層の上面との間の区間を第二の区間、前記第一電極の上面と前記最上層の上面との間の区間を第三の区間とするとき、前記複数種の発光素子の各々に関して、第一〜第三の区間のいずれかの区間内を伝播する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、前記区間の光学距離が設定されている。
【0019】
また、本発明の他の実施形態に係る発光装置は、第一電極と、光を透過する第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に配置される発光層と、前記第一電極と前記第二電極との間に配置される反射層と、を有し、各種ごとに異なる色で発光する複数種の発光素子と、前記複数種の発光素子を共通に被覆し、前記発光素子の第二電極側に被着される保護層と、前記複数種の発光素子のうち、少なくとも1種の発光素子の第二電極の上面側に被着される調整層と、を備え、前記第二電極の上面側に被着される層の最上層の上面と前記反射層の上面との間の区間を第一の区間、前記反射層の下面と前記最上層の上面との間の区間を第二の区間、前記第一電極の上面と前記最上層の上面との間の区間を第三の区間とするとき、前記複数種の発光素子の各々に関して、前記第一〜第三の区間のいずれかの区間内を伝播する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、前記区間の光学距離が設定されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明にかかる発光装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる発光装置の構造を示す模式図であり、図9および図10は、従来技術にかかる発光装置の構造を示す模式図である。図1、図9および図10に示す発光装置は、基板の反対側から光を取り出すトップエミッション型の構造をそれぞれ示すものである。例えば、図9に示す従来技術にかかる発光装置では、基板101上に形成された複数種の発光素子102に対して封止(保護)基板104を樹脂103によって接着し、複数種の発光素子102(青色発光用の発光素子、赤色発光用の発光素子、緑色発光用の発光素子)を外気から遮断するような構成が採られている。また、図10に示す従来技術にかかる発光装置では、基板101上に形成された複数種の発光素子102が保護層105によって覆われるような構成が採られている。なお、図10に示す構成においては、発光素子の特性や寿命などに影響を与える水および酸素を十分に遮断し、製造タクトを低下させず、膜応力に起因する剥がれを防止する観点から、保護層の膜厚は、300nm〜3μmの範囲の同一膜厚で形成されるものが一般的な構成となっている。
【0023】
一方、本発明の実施の形態1にかかる発光装置は、図1に示すように、一対の電極5の間に発光層を含む多層構造の有機層4を積層してなる複数種(赤色発光用、緑色発光用、青色発光用)の発光素子2が基板18上に形成されている。一対の電極5は、光の少なくとも一部を有機層4側に反射する第一電極7と、光の少なくとも一部を透過する第二電極8とから構成される。第一電極7としては、光を反射する材料であれば、透明、半透明、不透明のいずれの導電材料であってもよいが、光の反射率を高めるためには、第一電極7を半透明電極もしくは不透明電極とすることが好ましい。また第二電極8としては、光を透過する導電材料であればいずれの材料であってもよいが、光の透過率を高めるためには、第二電極8を半透明電極、透明電極とすることが好ましい。
【0024】
第二電極8の上には調整層1が形成され、調整層1の上には調整層1および発光素子2の全体を被覆する保護層3が形成される。このように、この実施の形態1の発光装置は、後述する実施の形態2と異なり、調整層1が第二電極8と最上層である保護層3との間に形成されている。なお、一対の電極5の間に形成される各層は、有機材料以外の材料(例えば無機材料)により形成されていても構わない。
【0025】
また、図1では、有機層4が、下部から上部に向かって、例えば、電荷(正孔/電子)注入層9、電荷(正孔/電子)輸送層10、発光層16、電荷(電子/正孔)輸送層12および電荷(電子/正孔)注入層11からなる5層構造を一例として示しているが、有機層4の構造は、この5層構造に限定されるものではなく、種々の条件に応じて2層構造、3層構造や4層構造あるいは発光層のみの1層構造等、その他の構造が採用される。
【0026】
ここで、種々の条件とは、例えば、第一電極および第二電極の反射特性(不透明、半透明または透明)や、極性(陽極または陰極)や、発光色の種類(赤色、緑色、青色)などが該当する。これらの条件が異なると、各層に用いられる材料が異なる。一例を示すとすれば、Alq3(アルミノキノリール錯体)などの材料は、緑色の発光を示すとともに電子輸送性にも優れている。したがって、緑色に発光する発光素子では、発光層及び電子輸送層が、Alq3などの単一の材料で構成される場合がある。また、透明電極を用いる場合には金属の電子注入層を用いる場合が多い。
【0027】
つぎに、図1に示す発光装置を構成する各層の製造手法や、その組成などについて説明する。図1において、保護層3の材料としては、シリコン窒化膜等の水および酸素に対する透過係数の低い物質が用いられる。保護層3の膜厚は300nm〜3μm程度であり、膜厚の合計が100〜200nm程度である一対の電極5および有機層4に比してかなりの厚さを有している。したがって、保護層3の成膜においては、製造タクトを低下させないためにも高速成膜が必要となる。また、膜の緻密性や、良好なステップカバレッジ(段差被覆性)を確保する観点から、成膜手法にはCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの化学的手法が用いられる。
【0028】
なお、CVD法以外にも、例えば蒸着法を適用し、メタルマスクを用いて複数種の発光素子ごとに塗分(塗り分け)を行うことも考えられる。しかしながら、保護層に適した材料には融点、沸点の高い材料が多く、蒸着法では熱による有機層へのダメージが大きく、かつ、化学反応を伴っていないために緻密な膜形成が難しいため、CVD法が好ましい。一方、CVD法にメタルマスクを用いることも考えられるが、メタルマスクエッジにおける成膜回り込みが大きく、また、所定の磁場をかけるために、メタルマスクを固定する際に磁石使用し難いため、メタルマスクは使用しないことが好ましい。
【0029】
つぎに、透明電極、不透明電極および半透明電極の差異について説明する。透明電極は、可視光線の多くを通過させるような光特性と比較的大きな電気伝導性とを備えた材料で形成される。一方、不透明電極は、可視光線のほとんどを遮断する光特性と大きな電気伝導性とを備えた材料で形成される。半透明電極は、透明電極と不透明電極との中間的な特性を有するものであるが、可視光線を通過させるような光特性を有している必要があり、このような光特性を得るために膜厚を薄くすることで実現している。
【0030】
透明電極に好適な材料としては、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)や、IZO(Indium Zinc Oxide:インジウム亜鉛酸化物)などが代表的である。また、その膜厚として、好ましい膜厚は50nm以上であり、より好ましい膜厚は100nm〜300nmの範囲にある。また、不透明電極に好適な材料としては、例えばAlなどが代表的であり、好ましい膜厚は50nm以上であり、より好ましい膜厚は100nm〜300nmの範囲にある。また、半透明電極に好適な材料としては、例えばLiなどのアルカリ金属、Mg,Ca,Sr,Baなどのアルカリ土類金属、あるいはAl,Si,Agなどが代表的であり、好ましい膜厚は100nm以下であり、より好ましい膜厚は5nm〜50nmの範囲にある。
【0031】
調整層1は、各発光素子の発光波長において、保護層3の下に配置され、素子外部への光取出し効率が大きくなるように調整する役割を果たしている。したがって、調整層1は各発光素子の種類(発光波長)によって塗り分けを行うことができる。なお、調整層1の成膜手法としては、例えば、メタルマスクを用いた蒸着法がある。
【0032】
また、調整層1の材料としては、スチリルアリーレン、ポリシラン等の透明有機材料や酸化チタン、硫化亜鉛等の透明無機材料が好適である。これらの材料の中で、特に、有機材料は蒸着温度を低くすることができるので、基板の温度上昇による発光素子へのダメージを小さく抑えることができ、メタルマスクの温度上昇でメタルマスクが変形することに起因するパターンぼけを抑制し易いという利点を有している。
【0033】
さらに、この実施の形態の発光装置は、第二電極8に接して調整層1が形成されるので、有機層4や第二電極8の製造装置と同一チャンバまたは同一真空度の装置で調整層1を成膜することができるので、製造装置の規模がコンパクトになり、かつ、製造工程を高タクト化できるという利点も併せ有している。
【0034】
図2は、屈折率の異なる境界面に入射した入射光の反射現象を説明するための図である。同図において、屈折率n1の媒体から屈折率n2の媒体に向かって入射角θiで入射した光が、境界面において反射角θr(=θi)で反射するとき、これらのn1,n2,θiと、境界面における反射係数rとの間には、次式で示される関係が成り立つ。
【0035】
r=[n1・cos(θi)−[n22−n12・sin2(θi)]1/2]
/[n1・cos(θi)+[n22−n12・sin2(θi)]1/2]・・・(1)
特に、入射光が境界面に垂直に入射する場合には、(1)式において、θi=0°とすればよく、次式のように簡略化される。
【0036】
r=(n1−n2)/(n1+n2)
=[1−(n2/n1)]/[1+(n2/n1)] ・・・(2)
(2)式から理解されるように、境界面における屈折率比が大きいほど反射係数が大きくなる。また、境界面における屈折率の大小関係によって、境界面における反射波の位相が変化する。例えば、n1<n2の場合にはrは負の実数で区間境界面での位相変化量φは、
φ=arg(r)=π
となる。またn1>n2の場合にはrは正の実数で区間境界面での位相変化量φは、
φ=arg(r)=0
となる。
【0037】
なお、第二電極8の上面から保護層3の上面までの区間や、有機層4の上面から保護層3の上面までの区間のように、区間外に他の光反射の大きな境界面が存在する場合には、反射係数rは(1)式または(2)式のように単純ではなく、区間外の材料の屈折率と膜厚の関数式で与えられるが、区間境界面での位相変化量φが反射係数rの偏角で与えられることは共通している。
【0038】
つぎに、図1に示した発光装置において、各発光素子の種類(発光波長)ごとに調整する調整層1の好適な膜厚について説明する。図1において、第一電極7が不透明陽極、第二電極8が半透明陰極として構成されている場合、光反射の大きな境界面を列挙すると、つぎのようになる。
【0039】
(a) 素子外部と接する保護層3の表面(保護層3の上面)
(b) 第二電極8の保護層3側の境界面(第二電極8の上面)
(c) 第二電極8の有機層4側の境界面(第二電極8の下面)
(d) 第一電極7の有機層4側の境界面(第一電極7の上面)
上記に示したような各境界面において、図1に図示するように、第二電極8の上面から保護層3の上面までの区間を第一の区間とし、有機層4の上面から保護層3の上面までの区間を第二の区間とし、第一電極7の上面から保護層3の上面までの区間を第三の区間とし、それぞれの区間で光学距離L1、L2、L3を定義する。また、発光素子の発光波長をλとする。さらに、各区間の光学距離Liは、区間内の各層の屈折率niと膜厚diを用いて、次式のように表記することができる。
【0040】
Li=Σni・di ・・・(3)
いま、調整層1側から調整層1と第二電極8との境界面に光が入射して調整層1側に反射する光の位相変化φ1とするとき、上記第一の区間内の光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように光学距離L1を設定するため、調整層1の膜厚を制御する。より具体的には、例えば、赤色用、青色用、緑色用の発光素子の各々について、調整層1の膜厚が次式を満足するような膜厚に設定されていることが好適である。
【0041】
|L1+(φ1/π−2m)λ/4|<λ/8 ・・・(4)
(−π<φ1≦π、m=0,1,2,・・・)
(4)式において、φ1は境界面で反射する際の位相変化であり、mは任意の正の整数であり、(4)式を満足するmが存在すればよい。また、|α|はαの絶対値を示している。
【0042】
なお、光の進行波とは発光層から保護膜側に向けて出射される光を波動として捉えたときの表現であり、光の反射波とは区間内で反射して保護膜側に向けて出射される光を波動として捉えたときの表現である。また、右辺の「λ/8」という指標は、調整層1の膜厚が所望の膜厚に設定されているか否かを判定するためのしきい値である。(4)式の左辺がλ/8より大きくなると、区間内を伝搬する進行波と反射波との間の干渉は弱められる。
【0043】
同様に、第二電極8側から第二電極8と有機層4との境界面に光が入射して第二電極8側に反射する反射光の位相変化をφ2とするとき、上記第二の区間内の光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように光学距離L2を設定するため、調整層1の膜厚を制御する。より具体的には、例えば、赤色用、青色用、緑色用の発光素子の各々について、調整層1の膜厚が次式を満足するような膜厚に設定されていることが好適である。
【0044】
|L2+(φ2/π−2m)λ/4|<λ/8 ・・・(5)
(−π<φ2≦π、m=0,1,2,・・・)
また、有機層4側から有機層4と第一電極7との境界面に光が入射して有機層4側に反射する光の位相変化をφ3とするとき、上記第三の区間内の光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように光学距離L3を設定するため、調整層1の膜厚を制御する。より具体的には、例えば、赤色用、青色用、緑色用の発光素子の各々について、調整層1の膜厚が次式を満足するような膜厚に設定されていることが好適である。
【0045】
|L3+(φ3/π−2m)λ/4|<λ/8 ・・・(6)
(−π<φ3≦π、m=0,1,2,・・・)
なお、nは従来周知のエリプソメトリー法によって測定される。また、λは分光光度計によって測定される。更にφについては次の方法で決定される。すなわち、対応する区間外(例えばφ1を算出する場合は第一の区間外、φ2の場合は第二の区間外、φ3の場合は第三の区間外、後述するφ4の場合は第四の区間外)であって、光が通過する領域に存在する層、部材のnとdを測定し、その数値を用いて光学薄膜における特性マトリクス法によって反射係数rを算出し、かかる反射係数rの偏角をとることによって求められる。
【0046】
なお、上記の(4)〜(6)式に示される全ての条件を満たすように、調整層1の膜厚が設定されていることが、より好ましい。しかしながら、上記(4)〜(6)式に示される条件のうちのいずれか一つの条件を満足させることによっても、従来の発光装置に比して、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0047】
また、調整層1の屈折率をn1とし、調整層1に接する両側の層のうち、一方側の層である保護層3の屈折率をn2とし、他方側の層である第二電極8の屈折率をn3とするとき、これらの屈折率の間に、n3<n1<n2、またはn2<n1<n3の関係が成り立つような材料を選択することにより、第二電極8と調整層1との境界面での光反射が低下し、その結果、保護層3における光干渉が弱められるので、保護層3の膜厚変動による光取出し効率の変動を抑制することができる。表1を参照すると、第二電極8をマグネシウムにより形成し、保護層3をシリコン窒化膜により形成する場合、調整層1をシリコン酸窒化膜、アルミナ、シリコン酸化膜、フッ化アルミニウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等により形成すれば、n3<n1<n2を満足することが判る。なお、屈折率の大小は複素屈折率の実部の大小で判断される。
【表1】
【0048】
また、調整層1の屈折率n1と調整層1に接する一方側の層である保護層3の屈折率n2との間に、0.6≦(n1/n2)≦1.9の関係が成り立つような材料を選択することにより、調整層1と保護層3との境界面での光反射が低下し、その結果、保護層3における光干渉が弱められるので、保護層3の膜厚変動による光取出し効率の変動をより効果的に抑制することができる。
【0049】
なお、上述した事項は、図1において、第二電極8が半透明電極として構成されている場合における調整層1の好適な膜厚の条件について説明するものであったが、第二電極8が透明電極として構成されている場合であっても、上述の考え方を適用することができる。この場合、例えば、(4)式における位相変化φ2は、第二電極8側から電荷(電子)注入層11の下面側の境界面に光が入射して第二電極8側に反射する光の位相変化とすればよく、また、(4)式における光学距離L2は、電荷(電子)注入層11の下面から保護層3の上面までの区間の光学距離とすればよい。
【0050】
また、第二電極8が半透明陽極として構成されている場合や、透明陽極として構成されている場合についても、上述の考え方を適用することができる。例えば、第二電極8が半透明陽極として構成されている場合であれば、陰極と陽極とが入れ替わるだけであり、第二電極8が半透明陰極の場合と同様な条件となる。また、第二電極8が透明陽極として構成されている場合であれば、第二電極8が透明陰極の場合と同様な条件となる。
【0051】
一方、デュアルエミッション型の発光素子において、例えば第一電極7が透明陽極、第二電極8が半透明陰極として構成されている場合には、光反射の大きな境界面を列挙すると、以下に示すとおりである。
【0052】
(a) 素子外部と接する保護層3の表面(保護層3の上面)
(b) 第二電極8の保護層3側の境界面(第二電極8の上面)
(c) 第二電極8の有機層4側の境界面(第二電極8の下面)
(d) 第一電極7の基板18側の境界面(第一電極7の下面)
上記に示した各境界面のうち、(a)〜(c)の境界面は、第一電極7が不透明陽極、第二電極8が半透明陰極として構成されている場合の光反射の大きな境界面と同一であり、(d)の境界面のみが異なっている。そこで、第一電極7の下面から保護層3の上面までの区間を第四の区間(光学距離L4)として新たに定義する。なお、この第四の区間の光学距離L4は、当該区間内の各層の屈折率および膜厚に基づき、前述の(3)式を用いて算出することができる。
【0053】
このとき、有機層4側から第一電極8と基板18との境界面に光が入射して有機層4側に反射する光の位相変化φ4とすれば、第四の区間内の光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように光学距離L4を設定するため、調整層1の膜厚が制御されることが好ましい。例えば、赤色用、青色用、緑色用の発光素子の各々について、調整層1の膜厚が次式を満足するような厚さに設定されていることが好適である。
【0054】
|L4+(φ4/π−2m)λ/4|<λ/8 ・・・(7)
(−π<φ4≦π、m=0,1,2,・・・)
調整層1は、上記の(4)〜(7)式に示される全ての条件を満足するような膜厚に設定されていることが好ましいが、上記(4)〜(7)式に示される条件のうちのいずれか一つの条件を満足させることによっても、従来の発光装置に比して、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0055】
以上説明したように、この実施の形態の発光装置によれば、第二電極の上面から保護層の上面までを第一の区間とし、第二電極の下面から最上層の上面までを第二の区間とし、第一電極の上面から最上層の上面までを第三の区間とした場合、第一〜第三の区間のいずれかの区間内を伝搬する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように各区間の光学距離が設定されているので、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0056】
また、第一電極の下面から最上層の上面までの第四の区間とし、第一〜第四の区間のいずれかの区間内を伝搬する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、区間の光学距離が設定されているので、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。上述の式は全ての発光素子について満足することが好ましい。
【0057】
なお、調整層1の膜厚は保護層3の膜厚よりも薄い方が好ましい。その理由は、調整層1の膜厚が大きいと、均一な膜形成が困難となるため、調整層1が設けられる複数種の発光素子の全てについて、上述した式を満足することが難しくなり、生産性の低下が生じるおそれがあるからである。特に、調整層1の膜厚を保護層3の膜厚の50%以下に設定することが好ましい。
【0058】
また、本実施形態においては、調整層を3種全ての発光素子に対して設けるようにしたが、必ずしも全ての種類の発光素子に調整層を設ける必要はなく、これに代えて、調整層を1種もしくは2種の発光素子に対して設けるようにしてもよい。
【0059】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2にかかる発光装置の構造を示す模式図である。同図に示す発光装置は、調整層1が素子外部と保護層3との間に介在する場合の構造を示すものである。したがって、この実施の形態の発光装置では、実施の形態1とは異なり、調整層1が最上層として構成されている。なお、その他の構造は、実施の形態1の構造と同一あるいは同等であり、これらの各部には同一符号を付して示している。
【0060】
この実施の形態の発光装置は、上述のように、調整層1が最上層に構成されている点以外は、基本的に実施の形態1の発光装置と同等の構造を有しており、実施の形態1と同等な作用および効果を得ることができる。
【0061】
この実施の形態の発光装置では、保護層3を形成した後に調整層1を形成するため、例えば、酸素アシスト蒸着法等の手法を用いることができる。酸素アシスト蒸着法は、発光素子にダメージを与え易いという不利点を有しているが、この実施の形態の発光装置では、発光素子全体を保護層3によって被膜した後に、この酸素アシスト蒸着法を適用することができるので、発光素子へのダメージを大幅に低減できる。したがって、この実施の形態の発光装置では、緻密で透明性が高く、かつ、環境耐性に優れた調整層を成膜することができる。
【0062】
なお、調整層1の屈折率n1と、調整層1に接する両側の層のうち、一方側の層である保護層3の屈折率n2と、他方側の層となる素子外部(外気)の屈折率n3との間に、n3<n1<n2の関係が成り立つような材料を選択することにより、調整層1と素子外部との境界面での光反射が低下し、その結果、保護層3における光干渉が弱められるので、保護層3の膜厚変動による光取出し効率の変動を抑制することができる。素子外部の屈折率n3は、素子外部が大気であれば約1.0である。この場合、表1を参照すると、保護層3をシリコン窒化膜により、調整層1をシリコン酸窒化膜、アルミナ等により形成すれば、n3<n1<n2を満足する。
【0063】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3にかかる発光装置の構造を示す模式図である。同図に示す発光装置は、実施の形態1の構造において、保護層3が第一の保護層6と第二の保護層19との2層により構成されている場合の構造を示すものである。なお、その他の構造は、実施の形態1の構造と同一あるいは同等であり、これらの各部には同一符号を付して示している。
【0064】
この実施の形態の発光装置は、上述のように、保護層3が第一の保護層6と第二の保護層19との2層により構成されている以外は実施の形態1の発光装置と同等の構造を有しているので、実施の形態1と同等な作用および効果を得ることができる。
【0065】
図4において、第二の保護層19を低屈折率材料により、第一の保護層6を高屈折率材料により形成すれば、第二の保護層19によって第一の保護層6と素子外部との間の屈折率差が緩和され、第一の保護層6内の光干渉を弱めることができ、その結果、第一の保護層6の膜厚変動による光取出し効率の変動を抑制する役割を果たすことができる。
【0066】
なお、第二の保護層19は、素子外部と第一の保護層6との間の屈折率差を緩和し、第一の保護層6の光干渉を弱める作用の他に、外部から素子に向かう外部光の反射を防止するための反射防止膜として作用させることもできる。
【0067】
また、この実施の形態の発光装置では、保護層3が第一の保護層6と第二の保護層19との2層により構成されている場合の例について示したが、2層に限定されるものではなく、3層以上の多層構造を有していてもよい。特に、多層構造になるにしたがって、素子外部と発光素子との間の屈折率差の勾配を小さくすることができ、保護層内の光干渉を弱めることができるので、保護層の膜厚変動による光取出し効率の変動をより効果的に抑制することができる。
【0068】
以上説明したように、この実施の形態の発光装置によれば、外気を遮断する保護層を複数の層に構成するようにしているので、保護層の膜厚変動による光取出し効率の変動を効果的に抑制することができる。
【0069】
(実施の形態4)
図5は、本発明の実施の形態4にかかる発光装置の構造を示す模式図である。同図に示す発光装置は、図3に示す実施の形態2の構造において、発光素子2を覆う第一の保護層である保護層3と保護層3の上部に構成された調整層1とをさらに保護するための第二の保護層19をさらに備えている場合の構造を示すものである。なお、その他の構造は、実施の形態2の構造と同一あるいは同等であり、これらの各部には同一符号を付して示している。
【0070】
この実施の形態の発光装置は、図2の保護層3に相当する第一の保護層6および調整層1の両者全体を覆う第二の保護層19をさらに備えている点を除いて、実施の形態2の発光装置と同等の構造を有しているので、実施の形態2と同等な作用および効果を得ることができる。
【0071】
なお、この実施の形態の発光装置では、第一の保護層6と第二の保護層19との間に調整層1が介在するように構成される場合の例について示したが、この構成に限定されるものではなく、第二の保護層19が2層以上の多層構造を有していてもよい。この場合、多層構造になるにしたがって、素子外部と発光素子との間の屈折率差の勾配が小さくなり、保護層内の光干渉が弱められるので、第一の保護層6の膜厚変動による光取出し効率の変動をより効果的に抑制することができる。
【0072】
以上説明したように、この実施の形態の発光装置によれば、調整層を第一の保護層と第二の保護層との間に介在するようにしているので、第一の保護層の膜厚変動による光取出し効率の変動を効果的に抑制することができる。
【0073】
なお、図5において、第二の保護層19は、素子外部と第一の保護層6との間の屈折率差を緩和し、第一の保護層6の光干渉を弱める作用の他に、外部から素子に向かう外部光の反射を防止するための反射防止膜として作用させることもできる。
【0074】
(実施の形態5)
図6は、本発明の実施の形態5にかかる発光装置の構造を示す模式図である。同図に示す発光装置は、実施の形態1の構造において、第二電極8が透明電極により構成されている場合を示すものである。この場合、第二電極8に接する電荷注入層11が反射層として作用する。なお、その他の構造は、実施の形態1の構造と同一あるいは同等であり、これらの各部には同一符号を付して示している。
【0075】
透明電極である第二電極に接する電荷注入層11の材料としては、半透明電極と同様の材料が適しており、電荷注入層11の好ましい膜厚は50nm以下であり、より好ましい膜厚は1nm〜30nmの範囲にある。
【0076】
また、透明電極の屈折率が1.7〜2.3程度なのに対して、金属材料からなる電荷注入材料の屈折率(複素屈折率)は、その実部が0.01〜1程度、虚部が1〜10程度であり、透明電極よりも実部が小さく、虚部が大きな値となっている。一般に、電荷注入層11が反射層として機能するためには、第二電極8よりも複素屈折率の実部が小さい材料、または、複素屈折率の虚部が大きい材料により形成される必要がある。
【0077】
つぎに、図6に示した発光装置において、各発光素子の発光波長ごとに調整する調整層1の好適な膜厚について説明する。同図において、光反射の大きな境界面を列挙すると、つぎのようになる。
【0078】
(a) 素子外部と接する保護層3の表面(保護層3の上面)
(b) 電荷注入層11の保護層3側の境界面(電荷注入層11の上面)
(c) 電荷注入層11の有機層4側の境界面(電荷注入層11の下面)
(d) 第一電極7の有機層4側の境界面(第一電極の上面)
これらの各境界面において、図6に図示するように、電荷注入層11の上面から保護層3の上面までの第一の区間(光学距離L1)と、電荷注入層11の下面から保護層3の上面までの第二の区間(光学距離L2)と、第一電極7の上面から保護層3の上面までの第三の区間(光学距離L3)とを、(3)式に基づいてそれぞれ定義するとき、第一〜第三の区間内の光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように各区間の光学距離を設定するため、調整層1の膜厚が制御されればよい。
【0079】
また、調整層1は、各発光素子に関して、上述の(4)式〜(6)式に示される条件を満たすように、調整層1の膜厚が設定されていることが好ましいが、上記(4)式〜(6)式に示される条件のうちのいずれか一つの条件を満足させることによっても、他の実施形態と同様に、従来の発光装置に比して、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0080】
また、必ずしも全ての種類の発光素子に調整層1を設ける必要はなく、1種もしくは2種の発光素子に対して調整層1を設けるようにしてもよいことは他の実施形態と同様である。
【0081】
一方、発光素子がデュアルエミッション型の場合であって、例えば第一電極7が透明電極として構成されている場合には、光反射の大きな境界面は、つぎのようになる。
【0082】
(a) 素子外部と接する保護層3の表面(保護層3の上面)
(b) 電荷注入層11の保護層3側の境界面(電荷注入層11の上面)
(c) 電荷注入層11の有機層4側の境界面(電荷注入層11の下面)
(d) 第一電極7の基板18側の境界面(第一電極7の下面)
したがって、発光素子がデュアルエミッション型の場合には、(3)式に基づいて定義される第一電極7の下面から保護層3の上面までの第四の区間(光学距離L4)を加えた、第一〜第四の区間内の光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように各区間の光学距離を設定するため、調整層1の膜厚が制御されればよい。
【0083】
なお、第一〜第四の区間の光学距離L1〜L4は、例えば、調整層1の膜厚が上記(4)式〜(7)式を満足するような厚さに設定されていることが好ましいが、これらの膜厚条件のうちのいずれか一つの条件を満足させることによっても、他の実施形態と同様に、従来の発光装置に比して、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0084】
また、他の実施形態と同様に、必ずしも全ての種類の発光素子に調整層1を設ける必要はなく、1種もしくは2種の発光素子に対して調整層1を設けるようにしてもよい。
【0085】
以上説明したように、この実施の形態の発光装置によれば、電荷注入層の上面から保護層の上面までを第一の区間とし、電荷注入層の下面から最上層の上面までを第二の区間とし、第一電極の上面から最上層の上面までを第三の区間とした場合、第一〜第三のいずれかの区間内を伝搬する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように各区間の光学距離が設定されているので、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0086】
また、この実施の形態の発光装置によれば、第一電極の下面から最上層の上面までの第四の区間とした場合、第一〜第四のいずれかの区間内を伝搬する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように各区間の光学距離が設定されているので、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキを改善することができる。
【0087】
(実施例1)
つぎに、本発明の実施例1について説明する。本実施例においては、赤色用の発光素子においては調整層1がなくても光出力が最大となるように保護層3の膜厚を440nmとし、緑色用の発光素子および青色用の発光素子においては、光出力が最大となる保護層膜厚が赤色用の発光素子と同じ440nmとなるように調整層1を形成している。図7は、図1に示す発光装置の保護層膜厚に対する光出力特性を示すグラフである。図7において、「三角」でプロットした曲線は赤色の発光素子の特性を示し、「四角」でプロットした曲線は緑色の発光素子の特性を示し、「菱形」でプロットした曲線は青色の発光素子の特性を示している。なお、各層の材料および膜厚は、以下のとおりである。
【0088】
(a) 正孔注入層9:無
(b) 正孔輸送層10
材料: NPB
膜厚: 60nm(赤)、40nm(緑、青)
(c) 発光層16
ホスト材料: Alq3(赤、緑)、SDPVBi(青)
ホスト膜厚: 60nm(赤、緑)、30nm(青)
ドーパント材料: DCJTB(赤)、クマリン(緑)、スチリルアミン(青)
(d) 電子輸送層12:無
(e) 電子注入層11
材料: マグネシウム
膜厚: 10nm
(f) 陰極8
材料: ITO
膜厚: 200nm
(g) 調整層1
材料:スチリルアリーレン
膜厚:無(赤)、20nm(緑)、60nm(青)
(h) 保護層3
材料:シリコン窒化膜
膜厚:400nm
一方、図11は、赤色、緑色および青色の各発光素子のいずれも調整層を有さない場合の保護層膜厚に対する光出力特性を示す図である。図7および図11における光出力は、図5に示す赤、緑、青の最大光出力がそれぞれ“1”となるように正規化している。なお、図11に示す発光装置の各発光素子上に形成されている各保護層の膜厚が440nm[赤]、470nm[緑]、510nm[青]の時に各色の光出力が最大となっている。
【0089】
図7と図11のグラフを比較すると、図7のグラフにおける光出力の最大値Pmaxは、PRmax=1.00[赤:基準値]、PGmax=0.99[緑]、PBmax=0.98[青]であり、調整層を具備することで、最大値付近の値を維持させることができる。また、図7において、0.9×Pmax<P<Pmaxを満足する保護層の膜厚範囲Wは、WR=72nm(±8.1%)、WG=49nm(±5.4%)、WB=59nm(±6.6%)であり、かつ、赤、緑、青の全色で重なっている。一方、図11では、保護層の膜厚範囲Wが、赤と青とで全く重なっていない。このことは、発光装置において、各発光素子の発光波長ごとに調整する調整層を備えることによって、保護層の膜厚分布が±5.4%まで許容できるように改善されたことを示している。
【0090】
また、表2には、本実施例の電子注入層11、陰極8、調整層1、保護層3の屈折率と、光学距離L1示す。
【表2】
【0091】
なお、光学距離L1は電子注入層11の上面から保護層3の上面までの区間により定義される。電子注入層11を構成する材料のマグネシウムは陰極8を構成するITOに比べると屈折率が小さいため、ITOとマグネシウムとの境界面で大きな反射が発生する。また、表2を参照すると、本実施例においては赤色用の発光素子でm=4、緑色用の発光素子でm=5、青色用の発光素子でm=6のとき、|L1+(φ1/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ1≦π)を満足していることがわかる。一方、調整層1が存在しない場合は、青色用及び緑色用の発光素子において上述の式を満足するmが存在していない。それ故、図7のケースにおいては、全ての発光素子に関して進行波と反射波が互いに強度を強め合うように光学距離L1が設定されていることになり、その結果、良好な色純度および色再現性を確保し、発光強度バラツキや、色バラツキが改善されている。一方、図11のケースにおいては、一部の発光素子において、進行波と反射波とが強度を強めあう関係になっておらず、発光強度のバラツキが大きくなる。
【0092】
(実施例2)
つぎに、本発明の実施例2について説明する。図8は、図4に示す発光装置の保護層膜厚に対する光出力特性を示すグラフである。図8において、「三角」でプロットした曲線は赤色の発光素子の特性を示し、「四角」でプロットした曲線は緑色の発光素子の特性を示し、「菱形」でプロットした曲線は青色の発光素子の特性を示している。なお、各層の材料および膜厚のうち、図7に示す特性の発光装置と異なるパラメータのみを示すと、つぎのようになる。
【0093】
(a) 保護層3(第一の保護層)
材料:シリコン窒化膜
膜厚:480〜600nm(図8の横軸)
(b) 調整層1
材料:スチリルアリーレン
膜厚: 10nm(赤)、無(緑)、5nm(青)
(c) 第二の保護層19
材料:シリコン酸化膜
膜厚:90nm
図8における縦軸(光出力)の最大値も、図7に示したグラフと同様に、図5に示す赤、緑、青の最大光出力がそれぞれ“1”となるように正規化している。図8と図7のグラフとを比較すると、図8のグラフにおける光出力の最大値Pmaxは、PRmax=0.88[赤]、PGmax=0.88[緑]、PBmax=0.96[青]であり、図7のグラフにおける各色の最大値に比して、やや低下している。しかしながら、図8において、0.9×Pmax<P<Pmaxを満足する保護層の膜厚範囲Wは、WR=102nm(±9.4%)、WG=95nm(±8.8%)、WB=88nm(±8.1%)であり、かつ、赤、緑、青の全色で重なっている。このことは、調整層1と第二の保護層19とを備えることによって、実施例1に示した保護層3の膜厚分布が、さらに±8.1%まで許容できるように改善されたことを示している。
【0094】
なお、上述の(4)式〜(7)式においては、境界面で反射が生ずる際の位相変化量φを考慮していたが、上記の実施例を含み、発光装置の正面輝度を重視して設計する場合には、この位相変化量φが略0であることが多い。この場合には、上述の(4)式〜(7)式は、位相変化量を考慮することなく、次式のように修正することができる。
【0095】
|L−mλ/2|<λ/8 ・・・(8)
(L=L1、L2、L3またはL4,m=0,1,2,・・・)
なお、位相変化量φが略0に限らず、例えば−π/4<φ<π/4を満足するような範囲内にとどまっている場合には、その影響度が小さくなる。したがって、このような場合であっても、上述の(8)式を用いて、調整層1の膜厚を設定することができる。
【0096】
また、発光装置の視野角依存を抑制することを重視して設計する場合には、この位相変化量が略πであることが多い。この場合は、上述の(4)式〜(7)式中の位相変化量にπを代入して、次式のように記述することができる。
【0097】
|L−(2m−1)λ/4|<λ/8 ・・・(9)
(L=L1、L2、L3またはL4,m=0,1,2,・・・)
また、位相変化量φが略πに限らず、例えば−π<φ<−3π/4または3π/4<φ<πを満足するような範囲内にとどまっている場合には、その影響度が小さくなる。したがって、このような場合であっても、上述の(9)式を用いて、調整層1の膜厚を設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上のように、この発明にかかる発光装置は、画像表示装置用の光源として有用であり、特に、この画像表示装置の発光強度バラツキや、色バラツキなどを改善したい場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図2】屈折率の異なる境界面に入射した入射光の反射現象を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態2にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態3にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態4にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態5にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図7】図1に示す発光装置の保護層膜厚に対する光出力特性を示すグラフである。
【図8】図4に示す発光装置の保護層膜厚に対する光出力特性を示すグラフである。
【図9】従来技術にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図10】従来技術にかかる発光装置の構造を示す模式図である。
【図11】赤色、緑色および青色の各発光素子のいずれも調整層を有さない場合の保護層膜厚に対する光出力特性を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1 調整層
2,102 発光素子
3,105 保護層
4 有機層
5 一対の電極
6 第一の保護層
7 第一電極
8 第二電極
9 正孔注入層
10 正孔輸送層
11 電子注入層
12 電子輸送層
16 発光層
18,101,104 基板
19 第二の保護層
103 樹脂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極と、光を透過する第二電極と、前記第一電極の上面と前記第二電極の下面との間に配置される発光層と、を有し、各種ごとに異なる色で発光する複数種の発光素子と、
複数種の前記発光素子を共通に被覆し、前記第二電極の上面側に被着される保護層と、
前記複数種の発光素子のうち、少なくとも1種の発光素子の第二電極の上面側に被着される調整層と、を備え、
前記第二電極の上面側に被着される層の最上層の上面と前記第二電極の上面との間の区間を第一の区間、前記第二電極の下面と前記最上層の上面との間の区間を第二の区間、前記第一電極の上面と前記最上層の上面との間の区間を第三の区間とするとき、
前記複数種の発光素子の各々に関して、第一〜第三の区間のいずれかの区間内を伝播する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、前記区間の光学距離が設定されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
第一電極と、光を透過する第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に配置される発光層と、前記第一電極と前記第二電極との間に配置される反射層と、を有し、各種ごとに異なる色で発光する複数種の発光素子と、
前記複数種の発光素子を共通に被覆し、前記発光素子の第二電極側に被着される保護層と、
前記複数種の発光素子のうち、少なくとも1種の発光素子の第二電極の上面側に被着される調整層と、を備え、
前記第二電極の上面側に被着される層の最上層の上面と前記反射層の上面との間の区間を第一の区間、前記反射層の下面と前記最上層の上面との間の区間を第二の区間、前記第一電極の上面と前記最上層の上面との間の区間を第三の区間とするとき、
前記複数種の発光素子の各々に関して、前記第一〜第三の区間のいずれかの区間内を伝播する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、前記区間の光学距離が設定されていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
前記第一電極は、光を透過する材料により形成されており、且つ、前記第一電極の下面と前記最上層の上面との間の区間を第四の区間とするとき、
前記複数種の発光素子の各々に関して、前記第一〜第四の区間のいずれかの区間内を伝播する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、前記区間の光学距離が設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子の発光波長をλ、前記最上層側から前記第二電極の上面に入射した光が前記第二電極の上面で前記最上層側に反射する際の位相変化をφ1、前記第一の区間の光学距離をL1、前記第二電極の上面側から前記第二電極の下面に入射した光が前記第二電極の下面で前記第二電極の上面側に反射する際の位相変化をφ2、前記第二の区間の光学距離をL2、前記発光層側から前記第一電極の上面に入射した光が前記第一電極の上面で前記発光層側に反射する際の位相変化をφ3、前記第三の区間の光学距離をL3とするとき、下記式の少なくとも1つの式を満足する0以上の整数mが存在することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
|L1+(φ1/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ1≦π)
|L2+(φ2/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ2≦π)
|L3+(φ3/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ3≦π)
【請求項5】
前記発光素子の発光波長をλ、前記最上層側から前記反射層の上面に入射した光が前記反射層の上面で最上層側に反射する際の位相変化をφ1、前記第一の区間の光学距離をL1、前記第二電極側から前記反射層の下面に入射した光が前記反射層の下面で前記第二電極側に反射する際の位相変化をφ2、前記第二の区間の光学距離をL2、前記発光層側から前記第一電極の上面に入射する光が前記第一電極の上面で前記発光層側に反射する際の位相変化をφ3、前記第三の区間の光学距離をL3とするとき、下記式の少なくとも1つの式を満足する0以上の整数mが存在することを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
|L1+(φ1/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ1≦π)
|L2+(φ2/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ2≦π)
|L3+(φ3/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ3≦π)
【請求項6】
前記発光素子の発光波長をλ、前記最上層側から前記第二電極の上面に入射する光が前記第二電極の上面で前記最上層側に反射する際の位相変化をφ1、前記第一の区間の光学距離をL1、前記第二電極の上面側から該第二電極の下面に入射する光が前記第二電極の下面で前記第二電極の上面側に反射する際の位相変化をφ2、前記第二の区間の光学距離をL2、前記発光層側から前記第一電極の上面に入射する光が前記第一電極の上面で前記発光層側に反射する際の位相変化をφ3、前記第三の区間の光学距離をL3、前記発光層側から前記第一電極の下面に入射する光が前記第一電極の下面で前記発光層側に反射する際の位相変化をφ4、前記第四の区間の光学距離をL4とするとき、下記式の少なくとも1つの式を満足する0以上の整数mが存在することを特徴とする請求項1に係る請求項3に記載の発光装置。
|L1+(φ1/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ1≦π)
|L2+(φ2/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ2≦π)
|L3+(φ3/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ3≦π)
|L4+(φ4/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ4≦π)
【請求項7】
前記発光素子の発光波長をλ、前記最上層側から前記反射層の上面に入射する光が前記反射層の上面で前記最上層側に反射する際の位相変化をφ1、前記第一の区間の光学距離をL1、前記第二電極側から前記反射層の下面に入射する光が前記反射層の下面で前記第二電極側に反射する際の位相変化をφ2、前記第二の区間の光学距離をL2、前記発光層側から前記第一電極の上面に入射する光が前記第一電極の上面で前記発光層側に反射する際の位相変化をφ3、前記第三の区間の光学距離をL3、前記発光層側から前記第一電極の下面に入射する光が前記第一電極の下面で前記発光層側に反射する際の位相変化をφ4、前記第四の区間の光学距離をL4とするとき、下記式の少なくとも1つの式を満足する0以上の整数mが存在することを特徴とする請求項2に係る請求項3に記載の発光装置。
|L1+(φ1/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ1≦π)
|L2+(φ2/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ2≦π)
|L3+(φ3/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ3≦π)
|L4+(φ4/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ4≦π)
【請求項8】
前記調整層は前記保護層よりも厚みが小さいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項9】
前記調整層の厚みは前記保護層の厚みの略50%以下に設定されていることを特徴とする請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記調整層は前記保護層よりも前記第2の電極側に位置していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項11】
前記保護層は前記調整層よりも前記第2の電極側に位置していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項12】
前記保護層は複数層構造を有しており、前記調整層は該保護層の層間に介在されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項13】
前記調整層の屈折率n1と該調整層の両側領域の各屈折率n2、n3との間に、n3<n1<n2、またはn2<n1<n3の関係があることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項14】
前記調整層の屈折率n1と該調整層に接する一方側領域の屈折率n2との間に、0.6≦(n1/n2)≦1.9の関係があることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項15】
前記複数種の発光素子は、少なくとも青色発光素子、赤色発光素子、緑色発光素子の3種を備えていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項16】
前記発光層は、有機材料により形成されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項17】
前記調整層は、有機材料により形成されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項18】
前記保護層が多層構造を有していることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項19】
前記調整層が多層構造を有していることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項1】
第一電極と、光を透過する第二電極と、前記第一電極の上面と前記第二電極の下面との間に配置される発光層と、を有し、各種ごとに異なる色で発光する複数種の発光素子と、
複数種の前記発光素子を共通に被覆し、前記第二電極の上面側に被着される保護層と、
前記複数種の発光素子のうち、少なくとも1種の発光素子の第二電極の上面側に被着される調整層と、を備え、
前記第二電極の上面側に被着される層の最上層の上面と前記第二電極の上面との間の区間を第一の区間、前記第二電極の下面と前記最上層の上面との間の区間を第二の区間、前記第一電極の上面と前記最上層の上面との間の区間を第三の区間とするとき、
前記複数種の発光素子の各々に関して、第一〜第三の区間のいずれかの区間内を伝播する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、前記区間の光学距離が設定されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
第一電極と、光を透過する第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に配置される発光層と、前記第一電極と前記第二電極との間に配置される反射層と、を有し、各種ごとに異なる色で発光する複数種の発光素子と、
前記複数種の発光素子を共通に被覆し、前記発光素子の第二電極側に被着される保護層と、
前記複数種の発光素子のうち、少なくとも1種の発光素子の第二電極の上面側に被着される調整層と、を備え、
前記第二電極の上面側に被着される層の最上層の上面と前記反射層の上面との間の区間を第一の区間、前記反射層の下面と前記最上層の上面との間の区間を第二の区間、前記第一電極の上面と前記最上層の上面との間の区間を第三の区間とするとき、
前記複数種の発光素子の各々に関して、前記第一〜第三の区間のいずれかの区間内を伝播する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、前記区間の光学距離が設定されていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
前記第一電極は、光を透過する材料により形成されており、且つ、前記第一電極の下面と前記最上層の上面との間の区間を第四の区間とするとき、
前記複数種の発光素子の各々に関して、前記第一〜第四の区間のいずれかの区間内を伝播する光の進行波と反射波が互いに強度を強め合うように、前記区間の光学距離が設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子の発光波長をλ、前記最上層側から前記第二電極の上面に入射した光が前記第二電極の上面で前記最上層側に反射する際の位相変化をφ1、前記第一の区間の光学距離をL1、前記第二電極の上面側から前記第二電極の下面に入射した光が前記第二電極の下面で前記第二電極の上面側に反射する際の位相変化をφ2、前記第二の区間の光学距離をL2、前記発光層側から前記第一電極の上面に入射した光が前記第一電極の上面で前記発光層側に反射する際の位相変化をφ3、前記第三の区間の光学距離をL3とするとき、下記式の少なくとも1つの式を満足する0以上の整数mが存在することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
|L1+(φ1/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ1≦π)
|L2+(φ2/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ2≦π)
|L3+(φ3/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ3≦π)
【請求項5】
前記発光素子の発光波長をλ、前記最上層側から前記反射層の上面に入射した光が前記反射層の上面で最上層側に反射する際の位相変化をφ1、前記第一の区間の光学距離をL1、前記第二電極側から前記反射層の下面に入射した光が前記反射層の下面で前記第二電極側に反射する際の位相変化をφ2、前記第二の区間の光学距離をL2、前記発光層側から前記第一電極の上面に入射する光が前記第一電極の上面で前記発光層側に反射する際の位相変化をφ3、前記第三の区間の光学距離をL3とするとき、下記式の少なくとも1つの式を満足する0以上の整数mが存在することを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
|L1+(φ1/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ1≦π)
|L2+(φ2/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ2≦π)
|L3+(φ3/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ3≦π)
【請求項6】
前記発光素子の発光波長をλ、前記最上層側から前記第二電極の上面に入射する光が前記第二電極の上面で前記最上層側に反射する際の位相変化をφ1、前記第一の区間の光学距離をL1、前記第二電極の上面側から該第二電極の下面に入射する光が前記第二電極の下面で前記第二電極の上面側に反射する際の位相変化をφ2、前記第二の区間の光学距離をL2、前記発光層側から前記第一電極の上面に入射する光が前記第一電極の上面で前記発光層側に反射する際の位相変化をφ3、前記第三の区間の光学距離をL3、前記発光層側から前記第一電極の下面に入射する光が前記第一電極の下面で前記発光層側に反射する際の位相変化をφ4、前記第四の区間の光学距離をL4とするとき、下記式の少なくとも1つの式を満足する0以上の整数mが存在することを特徴とする請求項1に係る請求項3に記載の発光装置。
|L1+(φ1/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ1≦π)
|L2+(φ2/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ2≦π)
|L3+(φ3/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ3≦π)
|L4+(φ4/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ4≦π)
【請求項7】
前記発光素子の発光波長をλ、前記最上層側から前記反射層の上面に入射する光が前記反射層の上面で前記最上層側に反射する際の位相変化をφ1、前記第一の区間の光学距離をL1、前記第二電極側から前記反射層の下面に入射する光が前記反射層の下面で前記第二電極側に反射する際の位相変化をφ2、前記第二の区間の光学距離をL2、前記発光層側から前記第一電極の上面に入射する光が前記第一電極の上面で前記発光層側に反射する際の位相変化をφ3、前記第三の区間の光学距離をL3、前記発光層側から前記第一電極の下面に入射する光が前記第一電極の下面で前記発光層側に反射する際の位相変化をφ4、前記第四の区間の光学距離をL4とするとき、下記式の少なくとも1つの式を満足する0以上の整数mが存在することを特徴とする請求項2に係る請求項3に記載の発光装置。
|L1+(φ1/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ1≦π)
|L2+(φ2/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ2≦π)
|L3+(φ3/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ3≦π)
|L4+(φ4/π−2m)λ/4|<λ/8(−π<φ4≦π)
【請求項8】
前記調整層は前記保護層よりも厚みが小さいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項9】
前記調整層の厚みは前記保護層の厚みの略50%以下に設定されていることを特徴とする請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記調整層は前記保護層よりも前記第2の電極側に位置していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項11】
前記保護層は前記調整層よりも前記第2の電極側に位置していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項12】
前記保護層は複数層構造を有しており、前記調整層は該保護層の層間に介在されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項13】
前記調整層の屈折率n1と該調整層の両側領域の各屈折率n2、n3との間に、n3<n1<n2、またはn2<n1<n3の関係があることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項14】
前記調整層の屈折率n1と該調整層に接する一方側領域の屈折率n2との間に、0.6≦(n1/n2)≦1.9の関係があることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項15】
前記複数種の発光素子は、少なくとも青色発光素子、赤色発光素子、緑色発光素子の3種を備えていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項16】
前記発光層は、有機材料により形成されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項17】
前記調整層は、有機材料により形成されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項18】
前記保護層が多層構造を有していることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一つに記載の発光装置。
【請求項19】
前記調整層が多層構造を有していることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一つに記載の発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−173092(P2006−173092A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314112(P2005−314112)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]