説明

発光装置

【課題】信頼性を向上させることができ、その上、安価に製造することができる発光装置を提供する。
【解決手段】表面実装型発光装置100は、基板10と、基板10に設けられた配線パターン20と、基板10上に搭載され、配線パターン20に電気的に接続された半導体発光素子30と、半導体発光素子30を封止するドーム状蛍光体含有封止樹脂40と、基板10に取り付けられて、平面視で半導体発光素子30と重なる開口部51を有するリフレクタ50と、リフレクタ50の開口部51の内壁面を覆うと共に、一部がドーム状蛍光体含有封止樹脂40に接触する溌液層60とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、LED(発光ダイオード)搭載パッケージに溌液性コーティング材を施した表面実装型発光装置などの発光装置に関し、特に、信頼性および生産性に優れた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発光装置としては、特開2002−223005号公報(特許文献1)に開示されている。この発光装置は、図13に示すように、第1リード1001と、第2リード1002と、この第1リード1001の一端部上にマウントされた発光素子1003と、この発光素子1003を封止する透明エポキシ樹脂1004とを備えている。
【0003】
上記透明エポキシ樹脂1004の上面には、発光素子1003の出射光を放射する光放射面1004a(凸レンズ)が設けられている。
【0004】
上記第2リード1002の一端部は、ワイヤ1006を介して発光素子1003に電気的に接続されている。
【0005】
また、上記発光装置は、透明エポキシ樹脂1004の下部を覆う黒色エポキシ樹脂1005も備えている。この黒色エポキシ樹脂1005の外周部には遮光壁1005aを設けて、黒色エポキシ樹脂1005の外周の上端高さを高くしている。これにより、上記発光装置を複数配置してディスプレイ装置を製造するときに、発光装置間に充填する耐候性樹脂の液面制御が容易になる。
【0006】
他の従来の発光装置としては、特開2005−317661号公報(特許文献2)に開示されている。この発光装置は、図14に示すように、LED素子2001と、このLED素子2001を搭載する金属製の第1リードフレーム2002と、LED素子2001にワイヤ2006を介して電気的に接続される金属製の第2リードフレーム2003と、LED素子2001上に設けられた透明樹脂部2004と、LED素子2001および透明樹脂部2004の周囲を取り囲んで透明樹脂部2004よりも高い反射率を有する遮光樹脂部2005とを備える。
【0007】
上記透明樹脂部2004は、トランスファ成型法で成型されて、LED素子2001上でレンズを形成するレンズ部分2004aと、第1リードフレーム2002および第2リードフレーム2003を保持する保持部分2004bとを有する。これにより、上記第1リードフレーム2002および第2リードフレーム2003の強度を確保しながら、発光装置の小型化を図れる。
【0008】
ところで、図13に示す従来の発光装置では、透明エポキシ樹脂1004と黒色エポキシ樹脂1005との接触面積が大きくなっている。このため、上記透明エポキシ樹脂1004の熱膨張係数と黒色エポキシ樹脂1005の熱膨張係数との差により、透明エポキシ樹脂1004の剥がれが発生し易い。
【0009】
したがって、上記従来の発光装置は、故障が多くなるため、信頼性が低いという問題がある。
【0010】
また、図14に示す他の従来の発光装置は、透明樹脂部2004をトランスファ成型法で成型するため、透明樹脂部2004を得るための設備や金型代が高くなります。
【0011】
すなわち、上記他の従来の発光装置には、製造コストが高くなるとい問題がある。
【0012】
さらに、樹脂の熱膨張係数と金属の熱膨張係数との差によって、樹脂と金属との境界附近にクラックを発生しやすいので、透明樹脂部2004の肉厚や、金属製の第1リードフレーム2002および第2リードフレーム2003の材質の選定に気を付けなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−223005号公報(図6)
【特許文献2】特開2005−317661号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明の課題は、信頼性を向上させることができ、その上、安価に製造することができる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の発光装置は、
基板と、
上記基板に設けられた配線パターンと、
上記基板上に搭載され、上記配線パターンに電気的に接続された半導体発光素子と、
上記半導体発光素子を封止する封止樹脂と、
上記基板に設けられて、平面視で上記半導体発光素子と重なる開口部を有するリフレクタと、
上記リフレクタの上記開口部の内壁面を覆うと共に、少なくとも一部が上記封止樹脂に接触する溌液層と
を備えたことを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、上記溌液層がリフレクタの開口部の内壁を覆うので、封止樹脂がリフレクタに接触しないようにして、封止樹脂とリフレクタとの間における熱膨張係数などの差が大きくても、封止樹脂の剥がれを防ぐことができる。したがって、上記封止樹脂の剥がれに起因する故障を低減できるので、信頼性を向上させることができる。
【0017】
また、上記溌液層の少なくとも一部が封止樹脂に接触するので、封止樹脂は、溌液層と接触する箇所では溌液効果から、溌液層との接触角が大きくなる。したがって、上記封止樹脂を金型を用いずに例えばドーム形状にできる。したがって、上記発光装置は安価に製造することができる。
【0018】
また、上記リフレクタを設けることで、リフレクタの例えば外周部をつかむピックアップが可能となり、リフレクタの内側に位置する封止樹脂や溌液層の損傷を防ぐことができる。
【0019】
また、上記基板の半導体発光素子側の表面に対して封止樹脂の周縁部の側面がなす角度は、溌液層の濡れ性によってのみだけでなく、基板の半導体発光素子側の表面に対するリフレクタの開口部の内壁の傾斜角度を加えても調整できる。
【0020】
一実施形態の発光装置では、
上記溌液層の上記基板側の端部の内面が、上記基板の上記半導体発光素子側の表面に対して垂直またはほぼ垂直であり、かつ、上記封止樹脂の周縁部に接触する。
【0021】
上記実施形態によれば、上記溌液層の基板側の端部の内面が封止樹脂の周縁部に接触する。ここで、上記溌液層の基板側の端部の内面は、基板の半導体発光素子側の表面に対して垂直またはほぼ垂直であるので、封止樹脂の底面(基板側の面)に対する封止樹脂の周縁部の側面の角度を容易に90°またはほぼ90°にすることができる。
【0022】
したがって、上記封止樹脂の表面張力により、封止樹脂を高曲率の樹脂レンズにすることができる。
【0023】
仮に、上記溌液層の基板側の端部の内面が基板の半導体発光素子側の表面に対して傾斜しているとすれば、封止樹脂の底面(基板側の面)に対する封止樹脂の周縁部の側面の垂直度が低下してしまう。
【0024】
なお、上記リフレクタの開口部における基板側の端部の内壁も、基板の半導体発光素子側の表面に対して垂直またはほぼ垂直にしてもよい。上記リフレクタの開口部における基板側の端部の内壁も、基板の半導体発光素子側の表面に対して垂直またはほぼ垂直にした場合、溌液層の基板側の端部の内面を、基板の半導体発光素子側の表面に対して垂直またはほぼ垂直にするのが容易となる。
【0025】
一実施形態の発光装置では、
上記封止樹脂は、上記半導体発光素子の出射光を透光する透光性樹脂と、蛍光体を含む樹脂との少なくとも一方を含む。
【0026】
上記実施形態によれば、上記封止樹脂は半導体発光素子の出射光を透光する透光性樹脂を含む場合、半導体発光素子の出射光の光取り出し効率の低下を防ぐことができる。
【0027】
また、上記封止樹脂は蛍光体を含む樹脂を含む場合、半導体発光素子の出射光で蛍光体を励起して、その出射光とは異なる波長の光を蛍光体に出射させることができる。
【0028】
なお、上記蛍光体は、封止樹脂内に均一に分散させてもよいし、封止樹脂内の下部つまり半導体発光素子近傍に沈降させてもよい。
【0029】
一実施形態の発光装置では、
上記溌液層はフッ素系樹脂からなる。
【0030】
上記実施形態によれば、上記溌液層の材料として、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化))、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド(2フッ化))、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化))などといったフッ素系樹脂を用いることができる。このようなフッ素系樹脂を溌液層の材料として用いると、溌液層において十分な溌液効果が得られる。
【0031】
一実施形態の発光装置では、
上記封止樹脂は上記溌液層で取り囲まれている。
【0032】
上記実施形態によれば、上記封止樹脂を溌液層で取り囲むので、金型を用いなくても、封止樹脂を容易に例えばドーム形状にできる。
【0033】
一実施形態の発光装置では、
上記溌液層は、第1溌液層と、この第1溌液層と上記半導体発光素子との間に設けられた第2溌液層とを有する。
【0034】
上記実施形態によれば、上記第1溌液層および第2溌液層により、いわゆる2重封止樹脂を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の発光装置によれば、半導体発光素子を封止する封止樹脂と、その基板上に設けられて、平面視で半導体発光素子と重なる開口部を有するリフレクタと、このリフレクタの開口部の内壁を覆うと共に、少なくとも一部が封止樹脂に接触する溌液層とを備えるので、封止樹脂がリフレクタに接触しないようにして、封止樹脂とリフレクタとの間における熱膨張係数などの差が大きくても、封止樹脂の剥がれを防ぐことができる。したがって、上記封止樹脂の剥がれに起因する故障を低減できるので、信頼性を向上させることができる。
【0036】
また、上記溌液層の少なくとも一部が封止樹脂に接触することによって、封止樹脂と溌液層との接触角が大きくなるので、封止樹脂を金型を用いずに例えばドーム形状にできる。したがって、安価な製造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は本発明の第1実施形態の表面実装型発光装置の模式断面図である。
【図2】図2は上記第1実施形態の表面実装型発光装置の模式平面図である。
【図3A】図3Aは上記第1実施形態の表面実装型発光装置の製造方法の工程図である。
【図3B】図3Bは図3Aに続く棒状構造発光素子の製造方法の工程図である。
【図3C】図3Cは上記第1実施形態の表面実装型発光装置のリフレクタの模式斜視図である。
【図3D】図3Dは図3Bに続く棒状構造発光素子の製造方法の工程図である。
【図3E】図3Eは図3Dに続く棒状構造発光素子の製造方法の工程図である。
【図3F】図3Fは図3Eに続く棒状構造発光素子の製造方法の工程図である。
【図4】図4は上記第1実施形態の表面実装型発光装置の模式斜視図である。
【図5】図5は本発明の第2実施形態の表面実装型発光装置の模式断面図である。
【図6】図6は上記第2実施形態の表面実装型発光装置の模式平面図である。
【図7】図7は本発明の第3実施形態の表面実装型発光装置の模式断面図である。
【図8】図8は上記第3実施形態の表面実装型発光装置の模式平面図である。
【図9】図9は上記第3実施形態の変形例の表面実装型発光装置の模式断面図である。
【図10】図10は本発明の第4実施形態の表面実装型発光装置の模式平面図である。
【図11】図11は図10のF11−F11線矢視の模式断面図である。
【図12】図12は図10のF12−F12線矢視の模式断面図である。
【図13】図13は従来の発光装置の断面図である。
【図14】図14は他の従来の発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その部分の説明は繰返さない。また、図2、図3C、図4、図6、図8および図10において、ハッチングは、断面を示すために付けているのではなく、他の図との対応を分かり易くするために付けている。
【0039】
〔第1実施形態〕
図1に、本発明の第1実施形態の表面実装型発光装置100を基板10の表面に垂直な平面で切った模式断面図を示す。また、図2に、上記表面実装型発光装置100を上方から見た模式図を示す。
【0040】
上記表面実装型発光装置100は、図1,図2に示すように、基板10と、この基板10に設けられた金属製の配線パターン20と、基板10上に搭載された半導体発光素子(半導体LED(発光ダイオード)チップ)30と、この半導体発光素子30を封止するドーム状蛍光体含有封止樹脂40と、基板10に取り付けられて、平面視で半導体発光素子30と重なる開口部51を有するリフレクタ50と、このリフレクタ50の開口部51の内壁面を覆う溌液層60とを備えている。なお、上記ドーム状蛍光体含有封止樹脂40は本発明の封止樹脂の一例である。
【0041】
上記基板10は、例えばセラミックからなり、板状に形成されている。また、上記基板10の表面には半導体発光素子30の裏面が接着固定されている。この基板10の半導体発光素子30が接着固定されている表面である上面には、配線パターン20の大部分が重なっている。なお、上記基板10の材料としては、ドーム状蛍光体含有封止樹脂40の熱膨張係数および熱収縮係数に近い熱膨張係数および熱収縮係数を有する材料が好ましい。
【0042】
上記配線パターン20は、基板10の表面に沿って延びる部分と、基板10の側面に沿って延びる部分と、基板10の側面から基板10の表面と平行な方向に突出する部分とからなっている。この配線パターン20において基板10の表面に沿って延びる部分上には、接着シート80が積層されている。この接着シート80は、図示しないが、基板10の表面上にも積層されている。
【0043】
上記半導体発光素子30は、ワイヤ70を介して配線パターン20の一端部に電気的に接続されている。
【0044】
上記ドーム状蛍光体含有封止樹脂40は、ほぼ半球面を有し、蛍光体90(図1,図2では1つのみ図示)を均一に分散保持している。また、上記ドーム状蛍光体含有封止樹脂40とリフレクタ50との間には溌液層60があるので、ドーム状蛍光体含有封止樹脂40はリフレクタ50に接触していない。なお、上記ドーム状蛍光体含有封止樹脂40は半球面を有してもよい。
【0045】
上記リフレクタ50は、接着シート80によって基板10および配線パターン20に接着されている。また、上記リフレクタ50の開口部51の内壁面は基板10の厚さ方向に対して傾斜する円錐面であり、開口部51内の空間は図1中下側から図1中上側に向かって徐々に拡大している。
【0046】
上記溌液層60は開口部51の内壁面に沿って形成されており、下端部がドーム状蛍光体含有封止樹脂40の裾部に接触している。
【0047】
以下、図3A〜図3Fを用いて、上記表面実装型発光装置100の製造方法について説明する。
【0048】
まず、図3Aに示すように、基板10の表面上に複数の配線パターン20を所定間隔を空けて形成する。この複数の配線パターン20は、基板10の表面と平行な一方向に配列されている。また、各配線パターン20は、例えば厚みが70μmの金層で形成される。
【0049】
次に、上記基板10の表面および配線パターン20の所定部分上に接着シート80を積層する。
【0050】
次に、上記配線パターン20同士の間において、基板10の表面に半導体発光素子30をダイボンディングする。
【0051】
上記半導体発光素子30は、窒化ガリウム系化合物半導体よりなる青色系の半導体発光素子であり、P、N電極を同一側(図1,図3Bでは上側)に有し、チップ状に形成されている。この半導体発光素子30の出射光はピーク波長450nmの青色系の光である。
【0052】
次に、上記配線パターン20および半導体発光素子30にワイヤボンディングを行い、配線パターン20にワイヤ70で半導体発光素子30を電気的に接続する。
【0053】
次に、図3Cに示すリフレクタ50を、図3Dに示すように、基板10上に搭載し、基板10と一体化する。
【0054】
上記リフレクタ50は、Al(アルミニウム)製であって、例えば最小内径2mm程度、最大内径3mm程度のすり鉢形状の開口部51が形成されている。この開口部51の内壁面にコーティング材を塗布し、このコーティング材を乾燥させて溌液層60にしている。ここで、上記溌液層60は膜厚1μmで実質的な透過性が95%であれば、十分な光量の光を開口部51の内壁面に到達させることができる。
【0055】
上記コーティング材は、例えば、フッ素ポリマーをアセトン溶剤に添加して得られる。上記フッ素ポリマーは、アセトン溶剤に添加し、攪拌すると簡単に溶解する。また、上記フッ素ポリマーが溶解したアセトン溶剤は適度な粘度を有している。この適度な粘度を有するアセトン溶剤をコーティング材として開口部51の内壁に噴霧塗布し、乾燥により硬化させると、溌液層60が得られる。このとき、上記アセトン溶剤の塗布の完了後、塗膜を乾燥して硬化させるが、この乾燥は、常温で放置するだけでよいが、必要に応じてオーブンを使用して行ってもよい。
【0056】
上記溌液層60の材料として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化))、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド(2フッ化))、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化))などを用いてもよい。これらを溶解させるケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどがあり、また、エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどがある。
【0057】
次に、図3Eに示すように、開口部51にディスペンサ110の先端を挿入し、この先端から封止樹脂140を滴下させる。そうすると、上記開口部51の内壁面を溌液層60で覆っているので、滴下した封止樹脂140は溌液層60に接触し、基板10上でドーム形状になる。
【0058】
上記封止樹脂140には蛍光体90(1つのみ図示)を混合している。この蛍光体90は、半導体発光素子30の出射光により励起され、その出射光とは波長の異なる光を放射するものである。具体的には、上記蛍光体90は黄色系の光を放射する。この黄色系の光と、半導体発光素子30の出射光である青色系の光との混色により、白色系の光が得られる。
【0059】
また、上記封止樹脂140は、半導体発光素子30の出射光の透過率が高く、かつ、低粘度の液状の透光性樹脂であることが好ましい。本第1実施形態では、半導体発光素子30の出射光の透過率が高く、かつ、低粘度の液状である封止樹脂140としてシリコーン樹脂を用いている。
【0060】
上記封止樹脂140に分散保持される蛍光体としては、例えばBOSE(Ba、O、Sr、Si、Eu)などが好適である。また、上記BOSEの他、SOSE(Sr、Ba、Si、O、Eu)、YAG(Ce賦活イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、αサイアロン((Ca)、Si、Al、O、N、Eu)、βサイアロン(Si、Al、O、N、Eu)等も上記蛍光体として好適に用いることができる。
【0061】
次に、上記封止樹脂140を熱硬化させる。具体的には、例えば80℃から150℃のオーブンで数分間程度硬化させればよい。
【0062】
次に、上記基板10を高温条件下でアフターキュアを行う。具体的には、例えば150℃程度のオーブンで5時間程度、アフターキュアをすればよい。これにより、図3Fに示すように、ドーム状蛍光体含有封止樹脂40が基板10上に得られる。
【0063】
最後に、上記基板10をリフレクタ50と共にダイシングすると、図4に示すような表面実装型発光装置100が複数得られる。この表面実装型発光装置100において、ドーム状蛍光体含有封止樹脂40を取り囲むリフレクタ50は、ドーム状蛍光体含有封止樹脂40の表面から放射された白色系の光の一部を図4中上方へ反射する。
【0064】
上記ドーム状蛍光体含有封止樹脂40はリフレクタ50と接触していないため、半導体発光素子30から発生する熱によってドーム状蛍光体含有封止樹脂40の膨張および収縮が生じても、ドーム状蛍光体含有封止樹脂40の剥がれの発生を防ぐことができる。その結果、上記表面実装型発光装置100の故障を低減させて信頼性を向上させることができる。
【0065】
また、上記ドーム状蛍光体含有封止樹脂40の剥がれの発生を防ぐことができるので、基板10とリフレクタ50とを熱膨張係数が異なる材料で構成することができる。
【0066】
また、上述したように、ドーム状蛍光体含有封止樹脂40の形成において金型を使わないので、表面実装型発光装置100の製造コストを低く抑えることができる。
【0067】
上記表面実装型発光装置100からリフレクタ50を無くした発光装置を作成する場合、この発光装置の作製中に、作業者、冶具などがドーム状蛍光体含有封止樹脂40に接触して、ドーム状蛍光体含有封止樹脂40の表面に傷(例えば打痕)などが付いたりする不良が生じる。このため、上記表面実装型発光装置100において、光出力の低下、色度ズレの不具合が生じてしまう。
【0068】
また、作業者が上記発光装置を他の装置に実装する際にも、ピンセットなどがドーム状蛍光体含有封止樹脂40の表面に傷(例えば打痕)などをつけたりする不良が生じる。
【0069】
また、上記ピンセットなどがドーム状蛍光体含有封止樹脂40の表面に接触すると、ワイヤ70の切れや剥がれが生じて、配線パターン20と半導体発光素子30との電気的な接続が解除されるという不具合が生じる。この不具合は、上記発光装置の不点灯に繋がる。
【0070】
これに対して、上記リフレクタ50を備える表面実装型発光装置100は、表面実装型発光装置100を作製する際、および、表面実装型発光装置100を他の装置に実装する際にも、ドーム状蛍光体含有封止樹脂40の表面に傷などが付くのをリフレクタ50で防ぐことができる。したがって、上記表面実装型発光装置100の光出力の低下、色度ズレの不具合、および、ワイヤ70の切れや剥がれによる表面実装型発光装置100の不点灯の不具合を低減できる。
【0071】
上記第1実施形態において、表面実装型発光装置100は、1つの半導体発光素子30を備えていたが、複数の半導体発光素子を備えてもよい。この複数の半導体発光素子の出射光が出射光の色が同色である場合、その複数の半導体発光素子を備える発光装置を高出力の光源にすることができる。また、出射光が青色である青色系半導体発光素子、出射光が緑色である緑色系半導体発光素子、および、出射光が赤色である赤色系半導体発光素子を備える発光装置を作製した場合、封止樹脂が蛍光体を含まなくても、青色系半導体発光素子、緑色系半導体発光素子および赤色系半導体発光素子への電流配分を調整することにより、発光装置の放射光を白色などに調色できる。なお、上記青色系半導体発光素子、緑色系半導体発光素子および赤色系半導体発光素子は互いに同じ個数とするのが好ましい。
【0072】
〔第2実施形態〕
図5に、本発明の第2実施形態の表面実装型発光装置200を基板10の表面に垂直な平面で切った模式断面図を示す。また、図6に、上記表面実装型発光装置200を上方から見た模式図を示す。
【0073】
上記表面実装型発光装置200は、図5,図6に示すように、配線パターン220およびドーム状蛍光体含有封止樹脂240を備えている。この配線パターン220は、上記第1実施形態の配線パターン20と形状のみが異なるものである。なお、上記ドーム状蛍光体含有封止樹脂240は本発明の封止樹脂の一例である。
【0074】
上記ドーム状蛍光体含有封止樹脂240の下部は、蛍光体(図示せず)を高濃度で含む蛍光体含有層241となっている。また、上記ドーム状蛍光体含有封止樹脂240の下部以外の部分は、蛍光体を含まず、半導体発光素子30の発光波長に対して透明である。
【0075】
上記構成の表面実装型発光装置200によれば、ドーム状蛍光体含有封止樹脂240が蛍光体含有層241を下部に有するので、蛍光体による波長変換効率を向上できる。
【0076】
〔第3実施形態〕
図7に、本発明の第3実施形態の表面実装型発光装置300を基板10の表面に垂直な平面で切った模式断面図を示す。また、図8に、上記表面実装型発光装置300を上方から見た模式図を示す。
【0077】
上記表面実装型発光装置300は、リフレクタ350および溌液層360を備えている。
【0078】
上記リフレクタ350は、基板10に取り付けられて、平面視で半導体発光素子30と重なる開口部351を有している。この開口部351の内壁の下端部には段差部352が設けられている。この段差部352は、基板10の厚さ方向に延びる第1円筒面と、この第1円筒面の上端に内周縁が連なる環状面と、この環状面の外周縁に下端が連なって基板10の厚さ方向に延びる第2円筒面とからなっている。
【0079】
上記溌液層360は、リフレクタ350の開口部351の内壁を覆うように設けられている。これにより、上記溌液層360の内面の下部にも、段差部352に対応する段差部が形成されている。そして、上記溌液層360の下端部361の内面は基板10の厚さ方向に延びている。つまり、上記溌液層360の下端部361の内面は基板10の表面に対して垂直になっている。この溌液層360の下端部361の内面がドーム状蛍光体含有封止樹脂40の裾部に接触している。なお、上記溌液層360の下端部361の内面は基板10の表面に対してほぼ垂直にしてもよい。
【0080】
上記構成の表面実装型発光装置300によれば、溌液層360の下端部361の内面が基板10の表面に対して垂直になっているので、ドーム状蛍光体含有封止樹脂40の底面(基板10側の面)に対するドーム状蛍光体含有封止樹脂40の裾部の側面の角度αを容易に90°またはほぼ90°にすることができる。
【0081】
したがって、上記ドーム状蛍光体含有封止樹脂40の表面張力により、ドーム状蛍光体含有封止樹脂40を高曲率の樹脂レンズにすることができる。
【0082】
上記第3実施形態において、リフレクタ350および溌液層360に換えて、図9に示すリフレクタ355および溌液層365を用いてもよい。この溌液層365の下端部366の内面は基板10の表面に対して垂直またはほぼ垂直になっている。これにより、上記溌液層365でも溌液層360と同様の作用効果が得られる。
【0083】
〔第4実施形態〕
図10は、本発明の第4実施形態の表面実装型発光装置400を上方から見た模式図を示す。また、図11に、図10のF11−F11線矢視の模式断面図を示す。さらに、図12に、図10のF12−F12線矢視の模式断面図を示す。
【0084】
上記表面実装型発光装置400は、図10〜図12に示すように、基板410と、この基板410の一方の側部に固定された金属製のアノード電極420と、基板410の他方の側部に固定された金属製のカソード電極425と、基板410上に搭載された3つの半導体発光素子430と、この3つの半導体発光素子430を封止するドーム状蛍光体含有封止樹脂440と、このドーム状蛍光体含有封止樹脂440上に設けられたドーム状透光性封止樹脂445と、基板410に取り付けられて、平面視で半導体発光素子430と重なる開口部451を有する第1リフレクタ450と、基板410に取り付けられて、第1リフレクタ450の内側に位置する第2リフレクタ455と、第1リフレクタ450の開口部51の内壁面を覆う第1溌液層460と、第2リフレクタ455の半導体発光素子430側の表面を覆う第2溌液層465とを備えている。なお、上記アノード電極420およびカソード電極は本発明の配線パターンの一例である。また、上記ドーム状蛍光体含有封止樹脂440およびドーム状透光性封止樹脂445は本発明の封止樹脂の一例である。
【0085】
上記基板410は、例えばセラミックからなり、板状に形成されている。また、上記基板410の両側部には凹部を設けている。この基板410の一方の側部の凹部には、アノード電極420の大部分を嵌合させている。また、上記基板410の他方の側部の凹部には、カソード電極425の大部分を嵌合させている。また、上記基板410の表面には3つの半導体発光素子430の各裏面が接着固定されている。
【0086】
上記各半導体発光素子430は、紫外線LEDチップ(発光波長360nm)であり、アノード電極420およびカソード電極425のそれぞれにワイヤ70を介して電気的に接続されている。
【0087】
上記ドーム状蛍光体含有封止樹脂440は、蛍光体490(図10〜図12のそれぞれでは1つのみ図示)を均一に分散保持している。また、上記ドーム状蛍光体含有封止樹脂440と第2リフレクタ455との間には第2溌液層465が設けられているので、ドーム状蛍光体含有封止樹脂440は第2リフレクタ455に接触していない。また、上記蛍光体490は、半導体発光素子430の出射光に励起されてて、緑色と赤色系、または、黄緑色系、または、黄緑色と赤色系の光を放射する。
【0088】
上記ドーム状透光性封止樹脂445は、蛍光体を含んでおらず、ほぼ半球面の表面を有している。また、上記ドーム状透光性封止樹脂445は第2リフレクタ455に接触しているが、ドーム状透光性封止樹脂445と第1リフレクタ450との間には第2溌液層465が設けられているので、ドーム状透光性封止樹脂445は第1リフレクタ450に接触していない。
【0089】
上記第1リフレクタ450は、図示しない接着材によって基板410、アノード電極420およびカソード電極425に接着されている。また、上記リフレクタ450の開口部451の内壁面は円筒面である。
【0090】
上記第2リフレクタ455は、3つの半導体発光素子430を挟むように2列設けられて、3つの半導体発光素子430の配列方向と平行に延びている。上記第2リフレクタ455の上端部は半導体発光素子430側に屈曲している。
【0091】
上記第1溌液層460は、第1リフレクタ450の開口部451の内壁面を覆うように設けられている。また、上記第1溌液層460の下端部はドーム状透光性封止樹脂445の裾部に接触している。
【0092】
上記第2溌液層465は第2リフレクタ455の半導体発光素子430側の表面を覆うように設けられている。また、上記第2溌液層465の下端部はドーム状蛍光体含有封止樹脂440の裾部に接触している。
【0093】
上記構成の表面実装型発光装置400によれば、第1リフレクタ450、第2リフレクタ455、第1溌液層460および第2溌液層465を備えているので、第2溌液層465の影響を受けることなく、ドーム状蛍光体含有封止樹脂440上にドーム状透光性封止樹脂445を形成できる。
【0094】
上記第4実施形態では、ドーム状蛍光体含有封止樹脂440に蛍光体490を均一に分散保持させていたが、その蛍光体490は半導体発光素子430近傍に沈降させてもよい。
【0095】
上記第4実施形態において、第1溌液層460および第2溌液層465の材料をPTFEとすれば、紫外線による第1リフレクタ450および第2リフレクタ455の劣化を低減できるので好ましい。
【0096】
上記第1〜第4実施形態において、全部が封止樹脂に接触する溌液層を用いてもよい。
【0097】
上記第1〜第4実施形態において、例えば絶縁性のブロック材をエッチン加工して、基板兼用リフレクタを作成して、この基板兼用リフレクタを本発明の基板およびリフレクタの一例として用いてもよい。
【0098】
本発明は、上記第1〜第4実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1〜第4実施形態を適宜組み合わせたものを、本発明の一実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10,410 基板
20,220 配線パターン
30,430 半導体発光素子
40,240,440 ドーム状蛍光体含有封止樹脂
50,350,355 リフレクタ
51,351,451 開口部
60,360,365 溌液層
70 ワイヤ
80 接着シート
90,490 蛍光体
100,200,300,400 表面実装型発光装置
241 蛍光体含有層
352 段差部
361,366 下端部
420 アノード電極
425 カソード電極
445 ドーム状透光性封止樹脂
450 第1リフレクタ
455 第2リフレクタ
460 第1溌液層
465 第2溌液層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板に設けられた配線パターンと、
上記基板上に搭載され、上記配線パターンに電気的に接続された半導体発光素子と、
上記半導体発光素子を封止する封止樹脂と、
上記基板に設けられて、平面視で上記半導体発光素子と重なる開口部を有するリフレクタと、
上記リフレクタの上記開口部の内壁面を覆うと共に、少なくとも一部が上記封止樹脂に接触する溌液層と
を備えたことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
上記溌液層の上記基板側の端部の内面が、上記基板の上記半導体発光素子側の表面に対して垂直またはほぼ垂直であり、かつ、上記封止樹脂の周縁部に接触することを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光装置において、
上記封止樹脂は、上記半導体発光素子の出射光を透光する透光性樹脂と、蛍光体を含む樹脂との少なくとも一方を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の発光装置において、
上記溌液層はフッ素系樹脂からなることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の発光装置において、
上記封止樹脂は上記溌液層で取り囲まれていることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の発光装置において、
上記溌液層は、第1溌液層と、この第1溌液層と上記半導体発光素子との間に設けられた第2溌液層とを有することを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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