説明

発光装置

【課題】赤みを有するように演色性が調整された光を発光することができる発光装置を得ること。
【解決手段】
外部から電力が供給される回路基板2と、回路基板2の上に電気的に接合され、回路基板2からの電力により発光する発光ダイオード3と、発光ダイオード3を囲むように回路基板2の上に設けられ、上端部が、発光ダイオード3の上端部よりも上側に配置されるハウジング4とを備える発光装置1において、ハウジング4の上に、蛍光を発光する第1蛍光層11と、第1蛍光層11よりも長波長の蛍光を発光する第2蛍光層12とを備える蛍光積層体5を、第2蛍光層12がハウジング4の上に配置され、第1蛍光層11が第2蛍光層12の上に積層されるように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードを備える発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、青色光を受けて黄色光を発光するYAG系蛍光体で青色発光ダイオードを被覆し、青色発光ダイオードからの青色光と、YAG系蛍光体の黄色光とを混色させて白色光を得る白色発光ダイオードが知られている。
【0003】
また、白色発光ダイオードとして、例えば、青色発光LEDなどの放射源と、放射源の表面上に配列される第1蛍光材料と、第1蛍光材料の表面上に堆積される第2蛍光材料とを備える照明システムが開示されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0004】
この照明システムでは、青色光を受けて緑色光または黄色光を放出する緑色/黄色放出ガーネットの多結晶セラミックからなる第1蛍光材料の表面に、青色光を受けて赤色光を放出する赤色放出蛍光体粉末からなる第2蛍光材料を付着させている。そして、青色発光LEDから放出された青色光、第1蛍光材料によって放出される緑色光、および、第2蛍光材料によって放出される赤色光を混合することにより、‘太陽状’スペクトルに近似したカラーレンダリングインデックス(演色指数)を有する白色光を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−534863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、上記した特許文献1では、‘太陽状’スペクトルに近似した白色光が得られるが、青色発光LEDから放出された青色光は、まず、第1蛍光材料によって緑色光または黄色光に変化され、その後、緑色光または黄色光が、赤色蛍光体に吸収される。
【0007】
そのため、高い演色性を得ることが困難である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、赤みを有するように演色性が調整された光を発光することができる発光装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明の発光装置は、外部から電力が供給される回路基板と、前記回路基板の上に電気的に接合され、前記回路基板からの電力により発光する発光ダイオードと、前記発光ダイオードを囲むように前記回路基板の上に設けられ、上端部が、前記発光ダイオードの上端部よりも上側に配置されるハウジングと、前記ハウジングの上に設けられる蛍光積層体とを備え、前記蛍光積層体は、蛍光を発光する第1蛍光層と、前記第1蛍光層よりも長波長の蛍光を発光する第2蛍光層とを備え、前記第2蛍光層は、前記ハウジングの上に配置され、前記第1蛍光層は、前記第2蛍光層の上に積層されていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の発光装置では、前記第1蛍光層が、蛍光体セラミックスからなり、前記第2蛍光層が、蛍光体が分散された樹脂からなることが好適である。
【0011】
また、本発明の発光装置では、前記蛍光体が、赤色の蛍光を発光する赤色蛍光体であることが好適である。
【0012】
また、本発明の発光装置では、前記赤色蛍光体が、CaAlSiN:Euであることが好適である。
【0013】
また、本発明の発光装置では、前記赤色蛍光体が、CaS:EuまたはKMF:Mn(Mは、Si、Ge、Sn、Tiのいずれかを表す。)であることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発光装置によれば、第1蛍光層よりも長波長の蛍光を発光する第2蛍光層が、ハウジングの上に配置され、その第2蛍光層の上に、蛍光を発光する第1蛍光層が積層されている。
【0015】
そのため、赤みを有するように演色性が調整された光を発光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の発光装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の発光装置に備えられる蛍光積層体を示す断面図である。
【図3】発光装置の参考例および実施例5の発光スペクトルである。
【図4】発光装置の実施例1および比較例1の発光スペクトルである。
【図5】発光装置の実施例2および比較例2の発光スペクトルである。
【図6】発光装置の実施例3および比較例3の発光スペクトルである。
【図7】発光装置の実施例4および比較例4の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の発光装置の一実施形態を示す断面図である。
【0018】
発光装置1は、図1に示すように、回路基板2、発光ダイオード3、ハウジング4および蛍光積層体5を備えている。
【0019】
回路基板2は、ベース基板6、および、ベース基板6の上面に形成される配線パターン7を備えている。回路基板2、具体的には、配線パターン7には、外部からの電力が供給される。
【0020】
ベース基板6は、平面視略矩形平板状に形成されており、例えば、アルミニウムなどの金属、例えば、アルミナなどのセラミック、例えば、ポリイミド樹脂などから形成されている。
【0021】
配線パターン7は、発光ダイオード3の端子と、発光ダイオード3に電力を供給するための電源(図示せず)の端子(図示せず)とを電気的に接続している。配線パターン7は、例えば、銅、鉄などの導体材料から形成されている。
【0022】
発光ダイオード3は、具体的には、青色発光ダイオードであり、ベース基板6の上に設けられている。各発光ダイオード3は、ワイヤ8を介して、配線パターン7に電気的に接合(ワイヤボンディング)されている。発光ダイオード3は、回路基板2からの電力により発光する。
【0023】
ハウジング4は、その上端部が発光ダイオード3の上端部よりも上側に配置されるように、ベース基板6の上面から上方に立設され、平面視において、発光ダイオード3を囲むような枠形状に形成されている。
【0024】
ハウジング4は、例えば、フィラーが添加された樹脂、セラミックスから形成されている。また、ハウジング4の反射率は、発光ダイオード3からの光に対する反射率が、例えば、70%以上、好ましくは、90%以上、より好ましくは、95%以上となるように設定される。
【0025】
なお、ハウジング4は、予め、回路基板2と一体的に、ハウジング付きの回路基板として形成することもできる。ハウジング付きの回路基板として、市販品が入手可能であり、例えば、キャビティー付き多層セラミック基板(品番:207806、住友金属エレクトロデバイス社製)などが挙げられる。
【0026】
また、ハウジング4の中には、必要により、シリコーン樹脂などの封止材が満たされている。
【0027】
蛍光積層体5は、ハウジング4の上に、ハウジング4の上端部を閉鎖するように設けられ、ハウジング4内の封止材(または、接着剤)を介してハウジング4に接着されている。また、蛍光積層体5は、第1蛍光層11と第2蛍光層12とを備え、発光ダイオード3からの光を受けて、蛍光を発光する。第2蛍光層12は、第1蛍光層11よりも長波長の蛍光を発光し、ハウジング4の上に配置されており、第1蛍光層11は、第2蛍光層12の上に積層されている。
【0028】
また、ハウジング4の上には、必要により、蛍光積層体5を被覆するように、略半球形状(略ドーム形状)のレンズ9を設置することができる。レンズ9は、例えば、シリコーン樹脂などの透明樹脂から形成されている。
【0029】
発光装置1を作製するには、まず、回路基板2にハウジング4を設ける。次いで、ハウジング4内に、発光ダイオード3を設置し、ワイヤ8で、発光ダイオード3と回路基板2とを電気的に接合する。
【0030】
次いで、ハウジング4内を必要により封止材で満たし、必要により接着剤を介して、ハウジング4の上に、第2蛍光層12がハウジング4の上に配置され、第1蛍光層11が第2蛍光層12の上に積層されるように、蛍光積層体5を設置する。
【0031】
最後に、蛍光積層体5の上に、必要により接着剤を介してレンズ9を設置して、発光装置1の作製を完了する。
【0032】
なお、ベース基板6の裏面には、必要により、ヒートシンク(図示せず)が、設けられる。
【0033】
図2は、図1の発光装置に備えられる蛍光積層体を示す断面図である。
【0034】
次いで、蛍光積層体5について、詳しく説明する。なお、以下、蛍光積層体5の説明において、方向に言及するときには、蛍光積層体5を発光装置1に搭載した状態を基準とし、紙面上側を上側、紙面下側を下側とする。
【0035】
第1蛍光層11は、蛍光体セラミックスからなり、励起光として、波長350〜480nm(近紫外線、青色光)の光の一部又は全部を吸収して励起され、励起光よりも長波長、例えば、500〜650nm(緑色光、黄色光、橙色光)の蛍光を発光する。
【0036】
第1蛍光層11を形成する蛍光体セラミックスとしては、例えば、金属酸化物などの基体材料に、例えば、セリウム(Ce)やユウロピウム(Eu)などの金属原子がドープされた蛍光体セラミックスが挙げられる。基体材料が金属酸化物であれば、容易に焼成することができ、緻密なセラミックスを得ることができる。
【0037】
蛍光体セラミックスとしては、具体的には、例えば、YAl12:Ce(YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット):Ce)(蛍光色:黄色)、(Y,Gd)Al12:Ce(蛍光色:黄色)、TbAl12:Ce(蛍光色:黄色)、LuAl12:Ce(蛍光色:緑色)、Y(Al,Ga)12:Ce(蛍光色:緑色)、CaScSi12:Ce(蛍光色:緑色)、LuCaMg(Si,Ge)12:Ce(蛍光色:橙色)などのガーネット型結晶構造を有するガーネット型蛍光体セラミックス、例えば、(Sr,Ba)SiO:Eu、CaSiOCl:Eu、SrSiO:Eu、LiSrSiO:Eu、CaSi:Euなどのシリケート蛍光体セラミックスが挙げられ、好ましくは、ガーネット型蛍光体セラミックス、より好ましくは、YAl12:Ceが挙げられる。
【0038】
なお、このような蛍光体セラミックスでは、その組成や、金属原子のドープ量などを調整することにより、発色性を調製することができる。
【0039】
第2蛍光層12は、第1蛍光層11よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体の粒子が分散された樹脂からなる。
【0040】
蛍光体としては、上記した蛍光体セラミックスと同様の組成を有する蛍光体や、赤色の蛍光を発光する赤色蛍光体などが挙げられる。好ましくは、赤色蛍光体が挙げられる。
【0041】
赤色蛍光体としては、例えば、CaAlSiN:Eu、(Ca,Sr)AlSiN:Eu、CaSi:Eu、(Ca,Sr)Si:Euなどの窒化物蛍光体、例えば、CaS:Euなどの硫化物蛍光体、例えば、(Sr,Ba)SiO:Euなどの酸化物蛍光体、KMF:Mn(Mは、Si、Ti、Zrのいずれかを表す。)などのフッ化物蛍光体などが挙げられる。好ましくは、窒化物蛍光体、硫化物蛍光体、フッ化物蛍光体が挙げられ、より好ましくは、CaAlSiN:Eu、CaS:Eu、KMF:Mn(Mは、Si、Ge、Sn、Tiのいずれかを表す。)が挙げられる。
【0042】
なお、KSiF:Mnは、Journal of Applied Physics(第104巻、023512(2008年))に記載の方法(シリコンウェハをHF/HO/KMnO溶液を用いてエッチングする方法)により合成することができる。
【0043】
蛍光体の平均粒子径は、例えば、0.1〜50μm、好ましくは、0.5〜10μmである。
【0044】
蛍光体の発光波長は、例えば、590〜650nm、好ましくは、610〜640nmである。
【0045】
樹脂としては、発光装置1の駆動時に変形や溶融などしない耐熱性を有する樹脂であれば、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられ、好ましくは、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0046】
また、シリコーン樹脂としては、好ましくは、半硬化状態を形成可能なシリコーン樹脂が挙げられ、例えば、縮合反応型シリコーン樹脂、付加反応型シリコーン樹脂が挙げられる。
【0047】
また、シリコーン樹脂としては、好ましくは、2段階以上の反応によって硬化が完了する多段階硬化型シリコーン樹脂が挙げられる。シリコーン樹脂が多段階硬化型シリコーン樹脂であれば、比較的低温でシリコーン樹脂を半硬化状態とし、さらに加熱することで、硬化反応を終了させることができる。
【0048】
多段階硬化型シリコーン樹脂としては、例えば、両末端シラノール型シリコーン樹脂、アルケニル基含有ケイ素化合物、オルガノハイドロジェンシロキサン、縮合触媒、及びヒドロシリル化触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。
【0049】
蛍光積層体5を作製するには、まず、第1蛍光層11を作製する。
【0050】
第1蛍光層11を作製するには、第1蛍光層11を形成するための蛍光層用粒子を作製する。
【0051】
蛍光層用粒子を作製するには、蛍光体セラミックスとしてYAl12:Ceを形成する場合には、例えば、硝酸イットリウム六水和物などのイットリウム含有化合物、例えば、硝酸アルミニウム九水和物などのアルミニウム含有化合物、および、例えば、硝酸セリウム六水和物などのセリウム含有化合物を、例えば、蒸留水などの溶媒に所定の割合で溶解させ、前駆体溶液を調製する。
【0052】
前駆体溶液を調製するには、イットリウム原子100モルに対して、アルミニウム原子が、例えば、120〜220モル、好ましくは、160〜180モル、セリウム原子が、例えば、0.01〜2.0モル、好ましくは、0.2〜1.5モルとなるように、イットリウム含有化合物、アルミニウム含有化合物およびセリウム含有化合物を配合し、溶媒に溶解させる。
【0053】
次いで、前駆体溶液を、噴霧しながら熱分解することにより、前駆体粒子を得る。なお、前駆体粒子は、そのまま蛍光層用粒子として用ることもできるが、好ましくは、例えば、1000〜1400℃、好ましくは、1150〜1300℃で、例えば、0.5〜5時間、好ましくは、1〜2時間、仮焼成し、蛍光層用粒子とする。
【0054】
前駆体粒子を仮焼成すれば、得られた蛍光層用粒子の結晶相を調整することができ、高密度な第1蛍光層11を得ることができる。
【0055】
得られた蛍光層用粒子の平均粒子径(自動比表面積測定装置(Micrometritics社製、モデルGemini 2365)を用いたBET(Brunauer−Emmett−Teller)法により測定する。)は、例えば、50〜10000nm、好ましくは、50〜1000nm、より好ましくは、50〜500nmである。
【0056】
蛍光層用粒子の平均粒子径が上記範囲内であると、第1蛍光層11の高密度化、焼結時の寸法安定性の向上、および、ボイドの発生の低減を実現することができる。
【0057】
また、蛍光層用粒子としては、例えば、酸化イットリウム粒子などのイットリウム含有粒子、例えば、酸化アルミニウム粒子などのアルミニウム含有粒子、例えば、酸化セリウム粒子などのセリウム含有粒子を混合した混合物を使用することもできる。
【0058】
この場合には、イットリウム原子100モルに対して、アルミニウム原子が、例えば、120〜220モル、好ましくは、160〜180モル、セリウム原子が、例えば、0.01〜2.0モル、好ましくは、0.2〜1.5モルとなるように、イットリウム含有粒子、アルミニウム含有粒子およびセリウム含有粒子を混合する。
【0059】
次いで、第1蛍光層11を作製するには、蛍光層用粒子からなるセラミックグリーン体を作製する。
【0060】
セラミックグリーン体を作製するには、例えば、蛍光層用粒子を、金型を用いてプレスする。
【0061】
このとき、まず、蛍光層用粒子を、バインダー樹脂、分散剤、可塑剤、焼結助剤などの添加剤を適宜用いて、例えば、キシレンなどの芳香族系溶媒、例えば、メタノールなどのアルコールなど、揮発性を有する溶媒に分散させて、蛍光層用粒子分散液を調製し、次いで、蛍光層用粒子分散液を乾燥させて、蛍光層用粒子と添加剤とを含有する粉末を調製し、次いで、粉末をプレスすることもできる。
【0062】
なお、蛍光層用粒子を溶媒に分散させるには、上記した添加剤以外に、加熱により分解されるものであれば特に限定されず、公知の添加剤を使用することができる。
【0063】
蛍光層用粒子を溶媒に分散させる方法としては、例えば、乳鉢、各種ミキサー、ボールミル、ビーズミルなどの公知の分散器具を用いて、湿式混合する。
【0064】
また、セラミックグリーン体を作製するには、例えば、PETフィルムなどの樹脂基材の上に、蛍光層用粒子分散液を、必要により粘度調整した後、例えば、ドクターブレード法などによりテープキャスティングするか、または押出成形し、乾燥することもできる。なお、ドクターブレード法を用いる場合には、各セラミックグリーン体の厚みは、ドクターブレードのギャップを調整することで制御する。
【0065】
なお、蛍光層用粒子分散液にバインダー樹脂などの添加剤を配合した場合には、セラミックグリーン体を焼成する前に、セラミックグリーン体を、空気中で、例えば、400〜800℃で、例えば、1〜10時間加熱し、添加剤を分解除去する脱バインダー処理を実施する。このとき、昇温速度は、例えば、0.2〜2.0℃/分である。昇温速度が上記範囲内であれば、セラミックグリーン体の変形やクラックなどを防止することができる。
【0066】
次いで、第1蛍光層11を作製するには、セラミックグリーン体を焼成する。
【0067】
焼成温度、時間および焼成雰囲気は、蛍光体によって適宜設定されるが、蛍光体がYAl12:Ceであれば、例えば、真空中、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中、または、水素、水素/窒素混合ガスなどの還元ガス中において、例えば、1500〜1800℃、好ましくは、1650〜1750℃で、例えば、0.5〜24時間、好ましくは、3〜5時間焼成する。
【0068】
なお、還元雰囲気で焼成する場合には、還元ガスとともにカーボン粒子を併用することもできる。カーボン粒子を併用すれば、さらに還元性を高めることができる。
【0069】
また、焼成温度までの昇温速度は、例えば、0.5〜20℃/分である。昇温温度が上記範囲内であれば、効率よく昇温することができながら、結晶粒(グレイン)を比較的穏やかに成長させて、ボイドの発生を抑制することができる。また、さらに蛍光体セラミックスを高密度化、透光性の向上を図るには、熱間等方加圧式焼結法(HIP法)により加圧下で焼結する。
【0070】
これにより、第1蛍光体11を得る。
【0071】
得られた第1蛍光層11の厚みは、例えば、100〜1000μm、好ましくは、150〜500μmである。
【0072】
第1蛍光層11の厚みが上記範囲内であれば、取り扱い性の向上、および、破損の防止を図ることができる。
【0073】
また、得られた第1蛍光層11の全光線透過率(at700nm)は、例えば、30〜90%、好ましくは、60〜90%である。
【0074】
また、得られた第1蛍光層11の熱伝導率は、例えば、第2蛍光層12の10倍以上、好ましくは、30倍以上、より好ましくは、50倍以上であり、具体的には、例えば、2W/m・K以上、好ましくは、6W/m・K以上、より好ましくは、10W/m・K以上である。
【0075】
次いで、蛍光積層体5を作製するには、第2蛍光層12を作製する。
【0076】
第2蛍光層12を作製するには、樹脂(または、樹脂が溶剤などに溶解された樹脂溶液)に蛍光体の粒子を分散させて蛍光体分散液を調製した後、蛍光体分散液を、PETフィルムなどの基材上に塗布、乾燥し、必要により硬化させる。
【0077】
蛍光体分散液を調製するには、樹脂(または、樹脂溶液中の樹脂分)と、蛍光体の粒子との総量に対して、蛍光体の粒子を、例えば、10〜70質量%、好ましくは、20〜80質量%配合し、混合する。
【0078】
なお、第2蛍光層12には、樹脂の代わりにガラス材料を用いることもできる。また、蛍光体分散液には、粘着性付与剤や分散剤などの公知の添加剤を適宜添加することができる。
【0079】
蛍光体の粒子の配合割合が上記範囲内であれば、第2蛍光層12の熱伝導性を向上させることができる。
【0080】
蛍光体分散液を基材上に塗布する方法としては、例えば、ドクターブレード法、グラビアコーター法、ファウンテンコーター法などの方法が挙げられる。
【0081】
より具体的には、樹脂として、半硬化状態を形成可能なシリコーン樹脂を用いる場合には、まず、シリコーン樹脂に蛍光体の粒子を分散させて、蛍光体分散液を調製する。
【0082】
次いで、蛍光体分散液を基材上に塗布した後、シリコーン樹脂が半硬化状態となるように、温度および加熱時間で加熱することにより、半硬化状態にすることにより、第2蛍光層12を、半硬化状態として得る。
【0083】
得られた第2蛍光層12の厚みは、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下、より好ましくは、20〜50μmである。
【0084】
第2蛍光層12の厚みが上記範囲内であれば、厚み方向において熱伝導性を向上させることができ、第1蛍光層11とハウジング4との間の熱伝導性を向上させることができる。また、第2蛍光層12が粘着性を有する場合には、粘着性の低下を抑制することができる。
【0085】
なお、得られた第2蛍光層12は、基材と反対側の表面が、剥離ライナーなどによって保護されていてもよい。
【0086】
次いで、蛍光積層体5を作製するには、第1蛍光層11と第2蛍光層12とを積層する。
【0087】
例えば、半硬化状態の第2蛍光層12を用いる場合には、第1蛍光層11と、半硬化状態の第2蛍光層12とを貼り合わせた後、半硬化状態の第2蛍光層12を、完全に硬化する温度および加熱時間で加熱し、完全に硬化させる。
【0088】
これにより、蛍光積層体5を得る。
【0089】
得られた蛍光積層体5の平均演色指数は、例えば、80以上、好ましくは、85以上、より好ましくは、90以上である。
【0090】
また、得られた蛍光積層体5の演色指数は、25以上、好ましくは、50以上、より好ましくは、80以上である。
【0091】
また、得られた蛍光積層体5の色温度は、例えば、2000〜8000K、好ましくは、3000〜5000Kである。
【0092】
この発光装置1によれば、第1蛍光層11よりも長波長の蛍光を発光する第2蛍光層12が、ハウジング4の上に配置され、その第2蛍光層12の上に、蛍光を発光する第1蛍光層11が積層されている。
【0093】
そのため、赤みを有するように演色性が調整された光を発光することができる。
【0094】
また、赤色蛍光体は、第1蛍光層11、特に、ガーネット型蛍光体セラミックと焼成温度が異なるため、第1蛍光層11と同時に焼成することが困難であり、しかも、焼成により酸化して発光効率が低下する場合がある。
【0095】
しかし、この発光装置1によれば、第2蛍光層12は、蛍光体の粒子が分散された樹脂から形成されている。
【0096】
そのため、第2蛍光層12に赤色蛍光体を用いた場合でも、赤色蛍光体を焼成することなく、赤色蛍光体の発光効率の低下を防止することができる。
【0097】
また、この発光装置1によれば、第1蛍光層11が、蛍光体セラミックスからなり、第2蛍光層12が、蛍光体の粒子が分散された樹脂から、厚み200μm以下に形成されている。
【0098】
そのため、第2蛍光層12からの熱を効率よく第1蛍光層11へ伝達することができるとともに、第1蛍光層11からの熱を、ハウジング4と接触されている第2蛍光層12の端部を介して、効率よくハウジング4へ伝達することができる。
【0099】
その結果、蛍光積層体5(第1蛍光層11および第2蛍光層12)の放熱性を向上させることができながら、赤みを有するように演色性が調整された光を発光することができる。
【0100】
また、この発光装置1によれば、第2蛍光層12が、第1蛍光層11とハウジング4との間に挟まれている。
【0101】
そのため、第2蛍光層12が外気に接触することを抑制することができる。これにより、第2蛍光層12に含まれる蛍光体が、CaS:EuまたはKMF:Mn(Mは、Si、Ge、Sn、Tiのいずれかを表す。)であり、耐湿熱性が劣る場合であっても、蛍光体が外気に含まれる水分と接触することを抑制することができる。
【0102】
その結果、第2蛍光層12に含まれる蛍光体の劣化を抑制することができる。
【0103】
なお、上記した実施形態では、第1蛍光層11を蛍光体セラミックスとして得たが、上記した蛍光体セラミックスと同様の組成を有する蛍光体の粉末を樹脂中に分散させた蛍光体粉末分散シートを、第1蛍光層11として用いることもできる。
【0104】
詳しくは、まず、上記した第2蛍光層12を作製する方法と同様にして、上記した蛍光体セラミックスと同様の組成を有する蛍光体の粉末を、樹脂中に分散させ、第1蛍光層11を作製する。
【0105】
次に、得られた第1蛍光層11の上に、第2蛍光層12を作製するための蛍光体分散液を塗工し、加熱して、半硬化状態の第2蛍光層12を得る。
【0106】
その後、半硬化状態の第2蛍光層12を硬化させて、第1蛍光層と第2蛍光層とが積層された蛍光積層体5を得る。
【0107】
そして、得られた蛍光積層体5を、上記したように、ハウジング4の上に設置し、発光装置1を作製する。
【0108】
また、上記した実施形態では、1つの発光ダイオード3を有する発光装置1を示しているが、発光装置1に備えられる発光ダイオード3の数は、特に限定されず、発光装置1を、例えば、複数の発光ダイオード3を、平面的(二次元的)または直線的(一次元的)に並べたアレイ状に形成することもできる。
【0109】
また、上記した実施形態では、蛍光積層体5の上に、半球状のレンズ9を設けたが、レンズ9の替わりに、例えば、マイクロレンズアレイシート、拡散シートなどを設けることもできる。
【0110】
この発光装置1は、例えば、大型液晶画面のバックライト、各種照明機器、自動車のヘッドライト、広告看板、デジタルカメラ用フラッシュ等、高輝度、高出力を必要とするパワーLED光源として好適に用いられる。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等により何ら限定されるものではない。
1.第1蛍光層の作製
(1)蛍光層用粒子の作製
硝酸イットリウム六水和物14.345g(0.14981mol)、硝酸アルミニウム九水和物23.45g(0.25mol)、硝酸セリウム六水和物0.02g(0.00019mol)を250mlの蒸留水に溶解させ、0.4Mの前駆体溶液を調製した。
【0112】
この前駆体溶液を、二流体ノズルを用いて、RF誘導プラズマ炎中に10ml/minの速度で噴霧し、熱分解することにより、前駆体粒子を得た。
【0113】
得られた前駆体粒子の結晶相は、X線回折法により分析したところ、アモルファスとYAP(イットリウム・アルミニウム・ぺロブスカイト、YAlO)結晶との混合相であった。
【0114】
また、得られた前駆体粒子の平均粒子径(自動比表面積測定装置(Micrometritics社製、モデルGemini 2365)を用いたBET(Brunauer−Emmett−Teller)法により測定した。)は、約75nmであった。
【0115】
次に、得られた前駆体粒子を、アルミナ製のるつぼに入れ、電気炉にて、1200℃で2時間仮焼成して、蛍光層用粒子を得た。
【0116】
得られた蛍光層用粒子の結晶相は、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)結晶の単一相であった。
【0117】
また、得られた蛍光層用粒子の平均粒子径は、約95nmであった。
(2)蛍光層用粒子分散液の調製
得られた蛍光層用粒子4g、バインダー樹脂として、PVB(poly(vinyl butyral−co−vinyl alcohol−co−vinyl acetate)0.21g、焼結助剤として、シリカ粉末(Cabot Corporation社製)0.012g、溶媒として、メタノール10mlを、乳鉢により混合した。
【0118】
これにより、蛍光層用粒子が分散された蛍光層用粒子分散液を調製した。
(3)セラミックグリーン体の作製
得られた蛍光層用粒子分散液をドライヤーにて乾燥し、粉末を得た。この粉末140mgを13mmΦの一軸性プレスモールド型に充填し、油圧式プレス機にて約20kNで加圧することにより、厚み約350μmのディスク状のセラミックグリーン体を得た。
(4)セラミックグリーン体の焼成
得られたセラミックグリーン体を、アルミナ製管状電気炉にて、空気中、2℃/minの昇温速度で800℃まで加熱し、バインダー樹脂などの有機成分を分解除去する脱バインダー処理を実施した。
【0119】
その後、アルミナ製管状電気炉内を、ロータリーポンプで真空排気し、1500℃で5時間焼成することで、第1蛍光層(YAG−Ceと表記する。)を蛍光体セラミックとして得た。
【0120】
得られた第1蛍光層の厚みは、283μmであった。
【0121】
また、得られた第1蛍光層の全光線透過率(at700nm)は、62%であった。なお、全光線透過率の測定方法を以下に示す。
<第1蛍光層の全光線透過率の測定>
瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製、MCPD 7000)と積分球とを具備した透過率測定ステージ(大塚電子社製)を、専用の光ファイバーを用いて接続し、波長380nmから1000nmの範囲で全光線透過率を測定した。
【0122】
詳しくは、測定時の入射光のスポットサイズを約2mmΦに調整し、第1蛍光層を設置していない状態の透過率を100%として、第1蛍光層の全光線透過率を測定した。
【0123】
第1蛍光層の吸収に伴い、全光線透過率は波長依存性を示すが、透明性(拡散性)を評価する指標として、第1蛍光層(YAG:Ce)に吸収がない波長700nmの値を採用した。
2.第2蛍光層の作製
作製例1
2.4gの熱硬化性シリコーンエラストマー樹脂(信越シリコーン社製、品番KER−2500)中に、0.6gの赤色ナイトライド蛍光体(CaAlSiN:Eu、Intematix社製、品番R6535、発光ピーク波長640nm、平均粒子サイズ15.5μm)を添加した、蛍光体濃度20質量%の蛍光体分散液を作製した。蛍光体分散液を、厚さ80μmのPETフィルム上に、アプリケーターを用いて、塗工厚み約38μmで塗工し、加熱して半硬化状態として、第2蛍光層(CaAlSiN:Eu Red powder(20wt%)と表記する。)を得た。
【0124】
作製例2
赤色ナイトライド蛍光体の配合量を1.292gとして、蛍光体濃度35質量%の蛍光体分散液を作製し、蛍光体分散液を、PETフィルム上に、塗工厚み約40μmで塗工した以外は、作製例1と同様にして、第2蛍光層(CaAlSiN:Eu Red powder(35wt%)と表記する。)を得た。
【0125】
作製例3
2.4gの熱硬化性シリコーンエラストマー樹脂(信越シリコーン社製、品番KER−2500)中に、0.27gの赤色硫化物蛍光体(CaS:Eu、発光ピーク波長 nm、平均粒子サイズ11μm)を添加した、蛍光体濃度10質量%の蛍光体分散液を作製した。蛍光体分散液を、厚さ80μmのPETフィルム上に、アプリケーターを用いて、塗工厚み約45μmで塗工し、加熱して半硬化状態として、第2蛍光層(CaS:Eu Red powder(10wt%)と表記する。)を得た。
【0126】
作製例4
2.4gの熱硬化性シリコーンエラストマー樹脂(信越シリコーン社製、品番KER−2500)中に、3.6gの赤色フッ化物蛍光体(KSiF:Mn)を添加した、蛍光体濃度60質量%の蛍光体分散液を作製した。なお、KSiF:Mnは、Journal of Applied Physics(第104巻、023512(2008年))に記載の方法(シリコンウェハをHF/HO/KMnO溶液を用いてエッチングする方法)により合成した。蛍光体分散液を、厚さ80μmのPETフィルム上に、アプリケーターを用いて、塗工厚み約175μmで塗工し、加熱して半硬化状態として、第2蛍光層(KSiF:Mn Red powder(60wt%)と表記する。)を得た。
3.蛍光積層体の作製
各作製例の第2蛍光層上に、それぞれ第1蛍光層を貼り付け、100℃で1時間、その後、150℃で1時間加熱することで、シリコーンエラストマー樹脂を硬化させた。
【0127】
その後、第2蛍光層に、第1蛍光層のサイズ(3.5mm×2.8mm)に合わせて剃刀で切込みを入れた後、第2蛍光層をPETフィルムから剥がし取ることで、第1蛍光層と第2蛍光層とが積層された蛍光積層体を得た。
4.評価用発光ダイオード素子の作製
実施例1
キャビティー付き多層セラミック基板(住友金属エレクトロデバイス社製、品番207806、外寸:3.5mm×2.8mm、キャビティー:長軸方向が2.68mm、短軸方向が1.98mm、高さ0.6mmtの略楕円形)のキャビティー内に、青色発光ダイオードチップ(クリー社製、品番C450EZ1000−0123、980μm×980μm×100μmt)をAu−Snはんだにてダイアタッチし、Au線にて発光ダイオードチップの電極から多層セラミック基板のリードフレームにワイヤボンディングすることで、青色発光ダイオードチップ1個を実装した発光ダイオードパッケージを作製した。
【0128】
キャビティー内をゲル状シリコーン樹脂で満たし、かつ、キャビティーの上端部にゲル状シリコーン樹脂を塗布し、作製例1で得られた第2蛍光層が積層された蛍光積層体を、第2蛍光層を下側にして、ゲル状シリコーン樹脂を介してキャビティーの上に設置した後、100℃で15分加熱してゲル状シリコーン樹脂を硬化させ、発光装置を作製した。
【0129】
また、多層セラミックス基板の底部に設けられている、はんだパッドに、少量のはんだペースト(製品名Chip Quik、品番SMD291SNL)を塗り、これを市販のスター型アルミ基板(Bergquist社製、製品名Thermal Clad、品番803291)の電極パターンに合わせて設置し、260℃でリフローすることにより、発光装置をスター型アルミ基板にはんだ付けした。
【0130】
さらにこのスター型アルミ基板の裏面に、熱伝導性のグリース(ITW CHEMTRONICS社製、品番CT40−5)を薄く塗り、アルミ製のヒートシンク(WAKEFIELD THERMAL SOLUTIONS社製、品番882−50AB)に前述のグリースを介して貼着した。
【0131】
実施例2
作製例2で得られた第2蛍光層が積層された蛍光積層体を、第2蛍光層を下側にしてキャビティーの上に設置した以外は、実施例1と同様にして、発光装置を作製した。
【0132】
実施例3
作製例3で得られた第2蛍光層が積層された蛍光積層体を、第2蛍光層を下側にしてキャビティーの上に設置した以外は、実施例1と同様にして、発光装置を作製した。
【0133】
実施例4
作製例4で得られた第2蛍光層が積層された蛍光積層体を、第2蛍光層を下側にしてキャビティーの上に設置した以外は、実施例1と同様にして、発光装置を作製した。
【0134】
実施例5
2.4gの熱硬化性シリコーンエラストマー樹脂(信越シリコーン社製、品番KER-2500)中に、3.6gの黄色YAG:Ce蛍光体粉末(Phosphor Tech社製、品番BYW01A、平均粒子径9μm)を添加した、蛍光体濃度60質量%の蛍光体分散液を作製した。この蛍光体分散液を、厚さ80μmのPETフィルム上に、アプリケーターを用いて、塗工厚み約45μmで塗工し、150℃にて1時間加熱して、YAG:Ce蛍光体が分散されたYAG粉末分散シートを、第1蛍光層として得た。
【0135】
次に、作製例1で調製した赤色蛍光体分散液を、同様にアプリケーターを用いて第1蛍光層(YAG粉末分散シート)上に、塗工厚み約55μmで塗工し、加熱して半硬化状態として、第2蛍光層を得た。
【0136】
その後、100℃で1時間、次いで、150℃で1時間加熱することで、熱硬化性シリコーンエラストマー樹脂を硬化させ、第1蛍光層と第2蛍光層とが積層された蛍光積層体を得た。
【0137】
そして、得られた蛍光積層体を実施例1と同様にして、キャビティーの上に設置し、発光装置を作製した。
【0138】
比較例1
作製例1で得られた第2蛍光層が積層された蛍光積層体を、第2蛍光層を上側にしてキャビティーの上に設置した以外は、実施例1と同様にして、発光装置を作製した。
【0139】
比較例2
作製例2で得られた第2蛍光層が積層された蛍光積層体を、第2蛍光層を上側にしてキャビティーの上に設置した以外は、実施例1と同様にして、発光装置を作製した。
【0140】
比較例3
作製例3で得られた第2蛍光層が積層された蛍光積層体を、第2蛍光層を上側にしてキャビティーの上に設置した以外は、実施例1と同様にして、発光装置を作製した。
【0141】
比較例4
作製例4で得られた第2蛍光層が積層された蛍光積層体を、第2蛍光層を上側にしてキャビティーの上に設置した以外は、実施例1と同様にして、発光装置を作製した。
【0142】
参考例
第1蛍光層のみをキャビティーの上に設置した以外は、実施例1と同様にして、発光装置を作製した。
5.評価
(1)発光装置の発光特性の測定
瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製、MCPD 7000)と、内径が12インチの積分球とを、専用の光ファイバーで接続し、波長380nmから1000nmの範囲で、発光装置の発光スペクトルを測定した。
【0143】
詳しくは、各実施例、各比較例および参考例で得られた発光装置を、積分球内の中心部に設置し、発光ダイオードに100mAの直流電流を印加して点灯した。発光スペクトルは、発光ダイオードの動作安定化のため、電力供給後、10秒以上経ってから記録した(図3〜図7参照)。得られた発光スペクトルから、発光装置の放射強度(mW)、発光効率(lm/W)、CIE色度(x,y)、平均演色指数Ra、演色指数R9および色温度(K)の値を算出した。結果を表1に示す。
(2)蛍光積層体表面の温度測定
各実施例、各比較例および参考例で得られた発光装置の、発光ダイオードに1Aの電流を通電した際の蛍光積層体の温度を、赤外線カメラ(FLIR Systems社製、製品名Infrared Camera A325)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0144】
【表1】

【符号の説明】
【0145】
1 発光装置
2 回路基板
3 発光ダイオード
4 ハウジング
11 第1蛍光層
12 第2蛍光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から電力が供給される回路基板と、
前記回路基板の上に電気的に接合され、前記回路基板からの電力により発光する発光ダイオードと、
前記発光ダイオードを囲むように前記回路基板の上に設けられ、上端部が、前記発光ダイオードの上端部よりも上側に配置されるハウジングと、
前記ハウジングの上に設けられる蛍光積層体と
を備え、
前記蛍光積層体は、
蛍光を発光する第1蛍光層と、
前記第1蛍光層よりも長波長の蛍光を発光する第2蛍光層と
を備え、
前記第2蛍光層は、前記ハウジングの上に配置され、
前記第1蛍光層は、前記第2蛍光層の上に積層されていることを特徴とする、発光装置。
【請求項2】
前記第1蛍光層は、蛍光体セラミックスからなり、
前記第2蛍光層は、蛍光体が分散された樹脂からなることを特徴とする、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記蛍光体は、赤色の蛍光を発光する赤色蛍光体であることを特徴とする、請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記赤色蛍光体が、CaAlSiN:Euであることを特徴とする、請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記赤色蛍光体が、CaS:EuまたはKMF:Mn(Mは、Si、Ge、Sn、Tiのいずれかを表す。)であることを特徴とする、請求項3に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−38754(P2012−38754A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174477(P2010−174477)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】