説明

発泡ウレタン充填装置および発泡ウレタン充填用の注入ガン

【課題】原料2液をそれぞれ安定して供給でき、十分に混合し攪拌して、装置内部で固まることなく噴出させることができて、製品の品質が安定するとともに、保守管理が容易であり、また、操作が容易であり、低コストで、小型化および軽量化が容易な発泡ウレタン充填装置および注入ガンを提供する。
【解決手段】ガン本体16にブロック部材17を連結し、ブロック部材17に一対の二重管18を取り付け、先端に二股ホース28を接続し、ブロック部材17にガン本体16から加圧されたエアーを取り入れ、エアーにより二重管18の内部で原料2液をそれぞれ別々に吸い上げて霧状にし、霧状同士を二股ホース28内で混合・攪拌し噴出させるよう注入ガンを構成する。また、操作レバー21の操作だけで、加圧エアーが供給されるとともに、エアー圧によって液供給バルブ13が開き、原料2液がブロック部材17に供給されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ウレタンの原料である2種類の液体を混合し攪拌して断熱施工箇所に注入する発泡ウレタン充填装置および発泡ウレタン充填用の注入ガンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば化学プラントのタンクや配管の断熱施工現場において、断熱施工箇所に断熱材である発泡ウレタンを充填する場合に、従来の施工方法は、現場で、原料であるポリオール液(R液)とポリイソシアネート液(I液)を作業員が手作業で一回一回計量して小容器に入れ、掻き混ぜて、硬化しないうちに施工箇所に流し込むというのが一般的であった。
【0003】
しかし、このように手作業で原料の液体を一回一回計量し小容器に取って掻き混ぜるのでは、バッチ作業であって作業効率が悪く、また、計量ミスもあり、人によって掻き混ぜ具合が違うこともあって、品質にバラツキが生じ、製品不良が発生し易く、手直しのための再施工に時間がかかりコストもかかることが少なくない。そこで、原料2液を混合し攪拌して噴出させる作業を機械化することが試みられ、例えば、胴部内部を二重構造の流路とし、原料2液をポンプで定量的に供給して、胴部内部で一方の液は二重構造の外側の流路を通し、他方の液は内側の流路を通して、それぞれノズルの内部に吐出させ、ノズルの内部でそれら2液を混合し、例えばエアーを供給して攪拌し、ホースの先端から吐出するようにした注入ガンが提案されている。このエアーは、外側の流路に送り込む一方の液とともに注入ガンに供給される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−308854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
断熱施工現場において施工箇所の発泡ウレタンを充填する作業を従来のように手作業で行っていたのでは、作業効率が悪く、製品不良が発生し易くて、手直しのための再施工に時間がかりコストもかかることが少なくない。また、機械化したものでも、従来の技術では、発泡ウレタンの原料である粘度の高いポリオール液とポリイソシアネート液の2液を、完全に混合・攪拌することが難しく、そのため、製品の品質にバラツキが生じ易く、断熱効果を損なうような空洞(す)ができることもあって、再施工(手直し)が必要となってコスト高になる恐れがある。また、従来の技術では、2液が噴出前に固まって装置内部が詰まってしまう恐れがあり、2液の液量制御が互いの圧力の影響を受けることになって、安定した液量制御が難しく、2種類の液体とエアーをそれぞれ別々に操作する必要があって、操作が困難となり、また、装置が大きく、重いものとなって、移動が容易でなく、取り扱い困難なものとなる。そうした事情は、上記のように、原料の2液を二重構造の流路の内側と外側に分けて通し、ノズルの内部でそれら2液を混合し攪拌して吐出するようにした上記従来の注入ガンでも同様である。特に、この注入ガンでは、エアーで2液を攪拌する場合に、そのエアーは、外側の流路に送り込む液とともに注入ガンに供給するので、この外側の流路にエアーの圧力がかかり、その分、外側の流路に液を送り込むためのポンプ圧が大きくなって、ポンプの大型化が必要となるだけでなく、外側の流路に送り込む液の液量制御が困難となり、また、その影響で、内側の流路に送り込む液の流量制御も困難となる。
【0006】
本発明は、こうした問題を解決するためになされたもので、原料2液をそれぞれ安定して供給でき、十分に混合し攪拌して、装置内部で固まることなく噴出させることができて、製品の品質が安定するとともに、保守管理が容易であり、また、操作が容易であり、低コストで、小型化および軽量化が容易な発泡ウレタン充填装置および発泡ウレタン充填用の注入ガンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発泡ウレタン充填装置は、発泡ウレタンの原料である2種類の液体を混合し攪拌して断熱施工箇所に注入する発泡ウレタン充填装置であって、2種類の液体を別々に収容する液容器と、これらの液容器から2種類の液体をそれぞれポンプで吸い上げて別々に送る液送り装置と、加圧したエアーを送るエアー送り装置と、液送り装置から送られた2種類の液体の供給を受ける共にエアー送り装置から送られたエアーの供給を受けて、2種類の液体をエアーの流れでそれぞれ別々に吸い上げて霧状にし、霧状となったそれら2種類の液体を取替え自在な先端ノズル内で混合しエアー圧で攪拌して噴出させる注入ガンとを備えることを特徴とする。
【0008】
この発泡ウレタン充填装置は、液容器から2種類の液体がそれぞれポンプで吸い上げられて注入ガンに別々に供給され、それら2液が注入ガンの内部で加圧されて供給されるエアーの流れによってそれぞれ別々に吸い上げられて霧状となり、霧状となったそれら2液が、エアーで吹き飛ばされて先端ノズルへ流れ、先端ノズル内で混合しエアー圧で攪拌されて、先端ノズルから噴出する。
【0009】
このように、原料2液がそれぞれポンプで吸い上げられて別々に供給され、注入ガンの内部で、エアーの流れによってそれぞれ別々に吸い上げられて霧状となり、エアーで吹き飛ばされて先端ノズルへ流れ、先端ノズル内で混合しエアー圧で攪拌されることにより、原料2液は十分に混合・攪拌されて噴出される。また、原料2液はそれぞれポンプで供給されて、注入ガンの内部で、加圧されたエアーの流れによってそれぞれ別々に吸い上げられ、エアーで吹き飛ばされて別々に先端ノズルまで送られるので、2液の液量はそれぞれ互いの圧力の影響を受けることなく、ポンプ回転数の制御によって容易に制御できる。そのため、製品の品質が安定し、製品歩留まりが高くて低コストとなる。
【0010】
また、原料2液は注入ガンの内部で混合せず、先端ノズル内で混合するので、注入ガンの内部が詰まることが少なくなり、注入ガンの保守管理が容易となる。先端ノズル内で混合した2液は殆どが固まらないうちに噴出されるが、一部は先端ノズル内に残り、次第に先端ノズルが詰まる。そのため、先端ノズルは適宜新しいものに取り替えて使用する。
【0011】
この発泡ウレタン充填装置は、液容器、液送り装置、エアー送り装置および注入ガンをそれぞれコンパクトに形成し、全体として小型・軽量化することができる。そのため、例えば化学プラントにおける液化天然ガス(LNG)の大型のタンクやその配管の周りの断熱工事のような、施工現場が広範囲で、機材を、高い所や低い所を含めて広範囲に移動させながら作業しなくてはならない場合であっても、移動が容易で、効率の良い作業が可能になる。
【0012】
また、この発泡ウレタン充填装置は、エアー送り装置から送られるエアーの注入ガンへの供給を操作する一つの手動操作式のエアー供給バルブと、液送り装置からそれぞれ別々に送られる2種類の液体の注入ガンへの供給を操作する二つの空気圧操作式の液供給バルブを備え、二つの液供給バルブが、エアー供給バルブが開いて注入ガンへ供給されたエアーを動力源とし、エアー供給バルブの操作に連動して開くようにすることで、原料2液とエアーの操作を一つのバルブ操作で三ついっぺんに行うことができ、操作が容易となる。
【0013】
また、この発泡ウレタン充填装置は、液送り装置のポンプとして、例えば、操作盤および駆動装置(例えば電気モータ)を内装したダイアフラム式ポンプを使用することで、一層の小型化および軽量化を図り、一層、移動容易で取り扱い容易なものとすることができる。
【0014】
また、この発泡ウレタン充填装置は、液容器にヒータを取り付けて液温を管理することにより、液体の粘度を下げてスムーズな移送および混合を実現することができる。
【0015】
そして、この発泡ウレタン充填装置は、100V〜220Vのフリー電源を使用したり、小型発電機の使用も可能にするなど、使い勝手のよいものとすることができる。
【0016】
そして、本発明の発泡ウレタン充填用の注入ガンは、発泡ウレタンの原料である2種類の液体を混合し攪拌して噴出させ断熱施工箇所に注入する発泡ウレタン充填用の注入ガンであって、2種類の液体の供給を受ける共に加圧されたエアーの供給を受けて、2種類の液体をエアーの流れでそれぞれ別々に吸い上げて霧状にし、霧状となったそれら2種類の液体を取替え自在な先端ノズル内で混合しエアー圧で攪拌して噴出させるよう構成されたことを特徴とする。
【0017】
この注入ガンは、2種類の液体をエアーの流れでそれぞれ別々に吸い上げて霧状にし、霧状となったそれら2種類の液体を取替え自在な先端ノズル内で混合しエアー圧で攪拌して噴出させることにより、原料2液を十分に混合・攪拌して噴出することができる。また、原料2液は、注入ガンの内部で加圧されたエアーの流れによってそれぞれ別々に吸い上げ、エアーで吹き飛ばして別々に先端ノズルまで送るようにすることができ、そうすることで。2液の液量をそれぞれ互いの圧力の影響を受けることなく容易に制御できるようにすることができる。そのため、製品の品質を安定させ、製品歩留まりを高くして低コストを実現できる。
【0018】
また、この注入ガンは、原料2液が注入ガンの内部では混合せず、先端ノズル内で混合するので、注入ガンの内部が詰まることが少なくなり、注入ガンの保守管理が容易となる。また、先端ノズル内で混合した2液は殆どが固まらないうちに噴出されるが、一部は先端ノズル内に残り、次第に先端ノズルが詰まる。そのため、先端ノズルは適宜新しいものに取り替えて使用する。
【0019】
そして、この注入ガンは、特に、加圧されたエアーを取り入れて前方へ送り出すエアー流路を備えたガン本体の先端に、2種類の液体を別々に取り入れるよう形成された二つの並列空間と、ガン本体のエアー流路からエアーを取り入れて二つの並列空間へ送り出すよう形成されたエアー供給空間とを有するブロック部材が連結され、二重管が、内側の管にエアー供給空間からエアーを取り入れ外側の管に液体を取り入れて、先端側で液体をエアーの流れで吸い上げる二重構造ノズルを構成するよう、ブロック部材の二つの並列空間のそれぞれに前方から並列配置で取り外し自在に挿入固定され、二股ホースが、先端ノズルを構成するよう、二股に分かれた部分で二つの二重管の先端に取替え自在に接続されてなり、ブロック部材の二つの並列空間に別々に取り入れた2種類の液体をそれぞれの二重管の外側の管に流し、それぞれの二重管の内側の管に加圧されたエアーを流して、そのエアーの流れでそれぞれの液体を吸い上げて別々に霧状にし、霧状となったそれら2種類の液体を二股ホース内で混合しエアー圧で攪拌して噴出させるよう構成することで、原料2液をエアーの流れでそれぞれ別々に吸い上げて霧状にする効果が高まり、霧状となった原料2液を先端ノズル内で混合しエアー圧で攪拌する効果が高まって、原料2液を完全に混合・攪拌して噴出することができる。また、この場合、原料2液は、注入ガンの内部で、加圧されたエアーの流れによってそれぞれ別々に吸い上げ、エアーで吹き飛ばして別々に先端ノズルまで送るようにすることができ、そうすることで、2液の液量をそれぞれ互いの圧力の影響を受けることなく容易に制御できるようにすることができ、そのため、製品の品質を安定させ、製品歩留まりを高くして低コストを実現できる。
【0020】
また、このように構成した注入ガンは、使用後、液供給を止めて、エアーを空噴きすることにより、ブロック部材の内部に残った液体を吹き飛ばすとともに、二重管から負圧で液体を吸い出して、ブロック部材および二重管の内部が詰まらないように清掃することができ、さらに、ブロック部材から二重管を取り外し、また、ガン本体からブロック部材を取り外して、それぞれを洗浄することができ、また、パーツ取替も容易である。
【0021】
この注入ガンにおいて、ブロック部材の二つの並列空間は、液体を下方から取入れるようL型に形成され、エアー供給空間は、エアーを後ろから入れて二つの並列空間に送り出すようT型に形成されているのがよい。
【0022】
また、この注入ガンは、ブロック部材のエアー供給空間の内圧を、2種類の液体の注入ガンへの供給を操作する空気圧操作式の液供給バルブの動力源とするよう構成されているのがよい。
【発明の効果】
【0023】
以上のとおり、本発明によれば、発泡ウレタンの原料2液を、それぞれ安定して供給でき、十分に混合し攪拌して、装置内部で固まることなく噴出させることができて、製品の品質が安定するとともに、保守管理が容易であり、また、操作が容易であり、低コストで、小型化および軽量化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態の一例に係る発泡ウレタン充填装置の全体図である。
【図2】本発明の実施形態の一例に係る注入ガンの構造を示す図で、(a)は一部断面で示す平面図、(b)は一部断面で示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態の一例に係る注入ガンのブロック部材の構造を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図4】本発明の実施形態の一例に係る注入ガンの二重構造ノズルの構造を示す図で、(a)は二重構造ノズルの断面図、(b)は外側の管の単体断面図、(c)は内側の管の単体断面図である。
【図5】本発明の実施形態の一例に係る発泡ウレタン充填装置のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜図5は本発明の実施形態の一例を示している。
この実施形態の発泡ウレタン充填装置は、ポリオール液(以下、R液という。)とポリイソシアネート液(以下、I液という。)を原料として、これら2種類の液体(以下、原料2液、あるいは、単に2液という。)を混合・攪拌して断熱施工箇所に注入し、発泡・硬化させるもので、装置全体の構成は図1に示すとおりである。
【0026】
この発泡ウレタン充填装置は、原料2液(R液およびI液)をそれぞれR液タンク1(液容器)およびI液タンク2(液容器)に収容する。R液タンク1およびI液タンク2としては、例えば一斗缶を使用する。そして、これらR液タンク1およびI液タンク2には、液の粘度を下げるために、ヒータ(図示せず)を巻きつけ、液温を例えば23〜40℃程度に保持する。
【0027】
そして、この発泡ウレタン充填装置は、注入ガン3を備え、また、R液タンク1およびI液タンク2から原料2液を別々にポンプ4,4で吸い上げて注入ガン3に送り込むR液送り装置5およびI液送り装置6を備えている。
【0028】
そして、R液送り装置5およびI液送り装置6のポンプ4,4として、操作盤および駆動装置(例えばソレノイド式)を内装したダイアフラム式ポンプ(例えば、株式会社タクミナ製、商品名:ソレノイド駆動定量ポンプ、型番:PZiG−1300)を用いている。このダイアフラム式ポンプは、コンパクトで軽量なポンプであり、また、操作盤および駆動装置を内装しているので、操作盤やモータを別途設置する必要がない。そのため、発泡ウレタン充填装置のシステム全体を小型化、軽量化できる。また、このポンプは、電源フリーで、使用勝手も良い。このポンプは、無段階で回転制御が可能なため、液の混合比率を微調整できる。
【0029】
R液送り装置5およびI液送り装置6には、ポンプ4,4で送り出す液の流量を安定させるために減圧弁7およびダンパー8を設け、また、ポンプ保護のためにリリーフ弁9を設けている。
【0030】
R液送り装置5およびI液送り装置6に使用するポンプ4,4としては、ダイアフラム式ポンプ以外のポンプを用いてもよい。例えばチューブポンプを用いてもよい。チューブポンプを用いる場合も、減圧弁およびダンパーを使用して液量を安定させるようにする。その他、ギアポンプ等を用いることもできる。
【0031】
R液送り装置5およびI液送り装置6は、それぞれ、脚間にR液タンク1あるいはI液タンク2を収納可能な脚付きのフレーム10,10を有し、フレーム10,10上に、ポンプ4,4を搭載し、R液タンク1あるいはI液タンク2から液を吸い上げてポンプ4,4に吸入する吸入側の配管(図示せず)と、ポンプ4,4から吐出した液を送り出す吐出側の配管11,11を配設し、吐出側の配管11,11の途中に、リリーフ弁9,9、減圧弁7,7およびダンパー8,8を配設している。
【0032】
そして、R液送り装置5およびI液送り装置6のそれぞれの吐出側の配管11,11の出口に液送り用のホース12,12を接続し、これらのホース12,12の先端に、空気圧操作式の液供給バルブ13,13(例えば、CKD株式会社製、商品名:小型シリンダバルブNAB形、型番:NAB1−8)を取り付けている。そして、注入ガン3にR液およびI液をそれぞれ別々に供給する液供給用のホース14,14を、液供給バルブ13,13を介して液送り用のホース12,12に接続している。
【0033】
また、この発泡ウレタン充填装置は、コンプレッサーを使用して、エアー(空気)を例えば約0.4MP程度に加圧し、エアー送り用のホース41を介して注入ガン3へ送るエアー送り装置15を備えている。
【0034】
注入ガン3は、R液送り装置5およびI液送り装置6から送られた原料2液の供給を受ける共にエアー送り装置15から送られたエアーの供給を受けて、原料2液をエアーの流れによる吸い上げ効果でそれぞれ別々に吸い上げて霧状にし、霧状となった2液を混合し攪拌して噴出させ、断熱施工箇所に注入するもので、ガン本体16(エアーガン)と、ガン本体16の先端に連結された直方体形状のブロック部材17と、ブロック部材17の前方へ突出する一対の二重管18,18とで構成されている。注入ガン3の詳細構造は図2に示すとおりである。図2には、注入ガン3に供給されて混合・攪拌され噴出する原料2液と、その混合・攪拌および噴出に寄与するエアーの流れを矢印で示している、塗潰し矢印は原料2液の流れを示し、白抜き矢印はエアーの流れを示す。
【0035】
ガン本体16は、筒状の胴部19と中空状のグリップ部20とで構成され、内部に、加圧されたエアーをグリップ部20の下端から取り入れて胴部19の先端から前方へ送り出すエアー流路(図示せず)が形成されている。そして、ガン本体16には、グリップ部20の根元付近に、内部のエアー流路を開閉してエアーの供給を操作する手動操作式のエアー供給バルブ(図示せず)が設置され、このエアー供給バルブを操作する操作レバー21が胴部19に設置されている。このエアー供給バルブは、常時はバネ付勢によりエアー流路を閉じる位置に保持されるもので、開操作用のロッド22がグリップ部20の外側へスライド移動自在に突出している。そして、操作レバー21が、ロッド22の先端に対峙して、常時はバネ付勢によりロッド22から離れる位置に保持され、操作レバー21に指をかけて引くと、操作レバー21がロッド22を押し込み、エアー供給バルブが開くよう構成されている。
【0036】
ブロック部材17は、図2および図3に示すように、R液あるいはI液を別々に取り入れるよう形成された二つの並列空間23,23と、ガン本体16のエアー流路からエアーを取り入れて二つの並列空間23,23へ送り出すよう形成されたエアー供給空間24とを有している。
【0037】
ブロック部材17の二つの並列空間23,23は、R液あるいはI液を下方から取入れるよう、それぞれが下方からのキリ孔と、前方からのキリ孔とでL型に形成されている。また、エアー供給空間24は、エアーを後ろから入れて二つの並列空間23,23に送り出すよう、後方からのキリ孔と、左右側方へ貫通する貫通孔とでT型に形成されている。そして、L型の並列空間23,23を構成する下方および前方からのキリ孔には、下方からのキリ孔に、エアー送り用のホース14、14を連結するニップル装着用の雌ネジが形成され、前方からのキリ孔には、後述する二重管18,18の外側の管27,27を固定するための雌ネジが形成されている。また、T型のエアー供給空間24を構成する後方からのキリ孔と、左右側方へ貫通する貫通孔には、後方からのキリ孔に、ガン本体16の胴部19先端に連結するニップル装着用の雌ネジが形成され、貫通孔の両端に、後述するエアー圧送出用のホース25,25を連結するニップル装着用の雌ネジが形成されている。また、エアー供給空間24から二つの並列空間23,23へエアーを送り出すようエアー供給空間24の貫通孔に設けられた並列空間23,23への連通部に、後述する二重管18,18の内側の管26,26を固定するための雌ネジが形成されている。この発泡ウレタン充填装置は、液供給バルブ13,13をブロック部材17のエアー供給空間24の内圧(エアー圧)を動力源として開閉操作するもので、ブロック部材17のエアー供給空間24の貫通孔の左右両端からエアー圧を取り出し、エアー圧送出用のホース25,25を介して開閉バルブ13,13のアクチュエータに作動圧として導く。
【0038】
二重管18,18は、原料2液をエアーで吸い上げて、霧状にして吹き飛ばす二重構造ノズルを構成するもので、図2および図4に示すように、それぞれが内側の管26,26と外側の管27,27からなり、内側の管26,26にエアー供給空間24からエアーを取り入れ、外側の管27,27にR液あるいはI液を取り入れて、先端側でR液あるいはI液をエアーの流れで吸い上げるよう、ブロック部材17の二つの並列空間23,23のそれぞれに前方から並列配置で取り外し自在に挿入固定されている。二重管18,18の内側の管26,26および外側の管27,27は、例えば図4に示すように、それぞれ、内側の管26が、パイプ部材からなる管部26aとブロック体からなる固定部26bとをロウ付け等で接合一体化したものであり、外側の管27,27もまた、パイプ部材からなる管部27aとブロック体からなる固定部27bとをロウ付け等で接合一体化したものである。二重管18,18は、例えば、外側の管27,27の管部外径が5mm以下(例えば4mm)で内径が3mm、内側の管26,26の管部外径が2mmで内径が1.5mmである。
【0039】
そして、内側の管26,26の固定部26b,27bには、エアー供給空間24の貫通孔に設けられた並列空間23,23への連通部の雌ネジに螺合固定するための雄ネジが形成され、外側の管27,27の固定部27b,27bには、ブロック部材17の並列空間23,23の前方からのキリ孔に形成された雌ネジに螺合固定するための雄ネジが形成されている。これら管部26a,27aを構成するパイプ部材および固定部26b,27bを構成するブロック体は、アルミ製あるいは鋼製である。また、その他の金属材料を使用したものであってもよい。
【0040】
そして、ビニール製の二股ホース28が、二股に分かれた部分で、二つの二重管18,18の先端に取替え自在に接続されている。この二股ホース28は、霧状となった原料2液を混合し攪拌して噴出させる先端ノズルを構成するものである。
【0041】
この実施形態の発泡ウレタン充填装置は、注入ガン3を手に持ち、液供給バルブ13,13は、例えば肩にかけるとか、ポケットに入れるとかして、断熱施工現場で使用するもので、電源スイッチ(図示せず)を入れて、R液送り装置5およびI液送り装置6のポンプ4,4を作動させ、エアー送り装置15のコンプレッサーを作動させる。そして、注入ガン3を施工箇所に向け、操作レバー21を引く。その後の動作は図5に示すとおりである。図5には、発泡ウレタン充填装置の各要素(各装置ならびに各部材)をそれぞれ対応する符号によって示している。動作詳細には次のとおりである。
【0042】
操作レバー21を引くと、ガン本体16内部のエアー供給バルブが開いて、エアー送り装置15のコンプレッサーにより加圧されたエアーがガン本体16に入り、ガン本体16内部のエアー流路からブロック部材17内部のエアー供給空間24にエアーが供給される。そして、ブロック部材17内部のエアー供給空間24にエアーが供給されると、そのエアー供給空間24の内圧(エアー圧)が、二つの液供給バルブ13,13のアクチュエータに導かれ、アクチュエータが作動して、エアー供給バルブに連動して二つの液供給バルブ13,13が開く。そして、R液送り装置5およびI液供給装置6のポンプ4,4によってR液タンク1およびI液タンク2から吸い上げられたR液およびI液が、ブロック部材17の二つの液供給空間23,23にそれぞれ供給される。その際、ポンプ4,4によって吸い上げられたR液およびI液は、ポンプ4,4の回転数を制御することによって液量を調整し、減圧弁7,7およびダンパー8,8を通して流量を安定させる。また、ポンプ4,4を保護するため、リリーフ弁9によって過圧を防ぐ。
【0043】
こうしてブロック部材17にエアーが供給され、R液およびI液が供給されると、ブロック部材17の二つの並列空間23,23に別々に取り入れたR液およびI液は、それぞれの二重管18,18の外側の管27,27に流れ(内側の管26,26の外側に流れる。)、それぞれの二重管18,18の内側の管26,26に加圧されたエアーが流れて、そのエアーの流れによる吸い上げ効果でR液およびI液がそれぞれ別々に吸い上げられて霧状になり、霧状となったそれら2液が二股ホース28が構成する先端ノズル内へ吹き飛ばされ、先端ノズル内で混合しエアー圧で攪拌されて噴出する。
【0044】
この実施形態の発泡ウレタン充填装置は、原料2液がガン本体16やブロック部材17の内部では混合せず、二重管18,18の内部でも殆ど混合しないので、それらガン本体16、ブロック部材17および二重管18,18を主要部品とする注入ガン3自体が詰まることが少なくなり、注入ガン3の保守管理が容易である。
【0045】
先端ノズルを構成する二股ホース28内で混合した2液は殆どが固まらないうちに噴出される。そのため、施工中に二股ホース28が詰まってしまうようなことは殆どない。しかし、使用後は一部が残るため、次第に詰まっていく。そこで、二股ホース28は、安価に調達でき、使い捨てにできるよう、ビニール製としているのである。二股ホース28は、詰まれば新しいものに取り替える。
【0046】
また、この実施形態の発泡ウレタン充填装置は、注入ガン3のガン本体16に連結したブロック部材17に二重管18,18を取り付けて二重構造ノズルとしたことにより、原料2液をエアーの流れによる吸い上げ効果によりそれぞれ別々に吸い上げて霧状にすることができる。そして、霧状となった原料2液を二股ホース28により構成される先端ノズル内で混合しエアー圧で攪拌する効果が高まって、原料2液を完全に混合・攪拌して噴出することができ、また、原料2液は互いの圧力の影響を受けることが少なくて、ポンプ回転数の制御による液量制御が容易であり、それらの効果が相俟って製品の品質が安定し、製品歩留まりが高くて低コストとなる。
【0047】
この発泡ウレタン充填装置では、原料2液はそれぞれが霧状となり、霧状同士がエアー圧でぶつかって混合するので、十分に攪拌される。そのため、上記のような簡単な二股ホース28によって先端ノズルを構成するだけで、それ以外の特別な攪拌手段を設けていない。しかし、一層攪拌率を上げるために、例えば、二股ホース28を捻じった形にするとか、ホース内にスパイラル状のガイドを入れるとか、様々な手段を講じることもできる。
【0048】
また、この発泡ウレタン充填装置は、操作レバー21を引く一つの操作だけで、ガン本体16のエアー供給バルブが開くのに連動して二つの液供給バルブ13,13も開くのであり、原料2液とエアーの操作を一つのバルブ操作で三ついっぺんに行うことができ、操作が容易である。
【0049】
そして、この発泡ウレタン充填装置は、R液タンク1およびI液タンク2と、R液送り装置5およびI液送り装置6と、エアー送り装置15と、注入ガン3を、いずれもコンパクトに形成することができ、発泡ウレタン充填装置を全体として小型化および軽量化できる。この小型化および軽量化は、特に、液送り用のポンプ4,4として、操作盤および駆動装置を内装したダイアフラム式ポンプを使用した場合に一層容易である。発泡ウレタン充填装置は、このように小型・軽量化することで、例えば化学プラントにおける液化天然ガス(LNG)の大型のタンクやその配管の周りの断熱工事のような、施工現場が広範囲で、機材を、高い所や低い所を含めて広範囲に移動させながら作業しなくてはならない場合であっても、移動が容易で、効率の良い作業が可能になる。
【0050】
そして、この発泡ウレタン充填装置は、200V電源の他、100V電源を使用したり、小型発電機の使用も可能にするなど、使い勝手のよいものとすることができる。
【0051】
注入ガン3は、使用後、液供給を止めて、エアーを空噴きすることにより、ブロック部材17の内部に残った液体を吹き飛ばすとともに、負圧で銃管18から液を吸い出して、ブロック部材17および二重管18の内部が詰まらないように清掃することができ、さらに、ブロック部材17から二重管18を取り外し、また、ガン本体16からブロック部材17を取り外すことができるので、それぞれを取り外して洗浄することができ、また、パーツ取替も容易である。
【0052】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々に態様を変更して実施することが可能である。
【0053】
本発明は、化学プラントのタンクや配管の断熱施工に限らず、断熱材の壁の吹き付け工事等、様々な現場での断熱施工に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 R液タンク(液容器)
2 I液タンク(液容器)
3 注入ガン
4 ポンプ
5 R液送り装置
6 I液送り装置
7 減圧弁
8 ダンパー
9 リリーフ弁
13 液供給バルブ
15 エアー送り装置
16 ガン本体
17 ブロック部材
18 二重管
21 操作レバー
23 並列空間
24 エアー供給空間
25 エアー圧送出用のホース
26 内側の管
27 外側の管
28 二股ホース(先端ノズル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ウレタンの原料である2種類の液体を混合し攪拌して断熱施工箇所に注入する発泡ウレタン充填装置であって、
前記2種類の液体を別々に収容する液容器と、これらの液容器から前記2種類の液体をそれぞれポンプで吸い上げて別々に送る液送り装置と、加圧したエアーを送るエアー送り装置と、前記液送り装置から送られた2種類の液体の供給を受ける共に前記エアー送り装置から送られたエアーの供給を受けて、前記2種類の液体をエアーの流れでそれぞれ別々に吸い上げて霧状にし、霧状となったそれら2種類の液体を取替え自在な先端ノズル内で混合しエアー圧で攪拌して噴出させる注入ガンとを備えることを特徴とする発泡ウレタン充填装置。
【請求項2】
前記エアー送り装置から送られるエアーの前記注入ガンへの供給を操作する一つの手動操作式のエアー供給バルブと、前記液送り装置からそれぞれ別々に送られる前記2種類の液体の前記注入ガンへの供給を操作する二つの空気圧操作式の液供給バルブを備え、
前記二つの液供給バルブは、前記エアー供給バルブが開いて前記注入ガンへ供給されたエアーを動力源とし、前記エアー供給バルブの操作に連動して開くことを特徴とする請求項1記載の発泡ウレタン充填装置。
【請求項3】
前記液送り装置は、操作盤および駆動装置を内装したダイアフラム式ポンプを使用したものであることを特徴とする請求項1または2記載の発泡ウレタン充填装置。
【請求項4】
前記液容器にヒータが取り付けられていることを特徴とする請求項1、2または3記載の発泡ウレタン充填装置
【請求項5】
発泡ウレタンの原料である2種類の液体を混合し攪拌して噴出させ断熱施工箇所に注入する発泡ウレタン充填用の注入ガンであって、
前記2種類の液体の供給を受ける共に加圧されたエアーの供給を受けて、前記2種類の液体をエアーの流れでそれぞれ別々に吸い上げて霧状にし、霧状となったそれら2種類の液体を取替え自在な先端ノズル内で混合しエアー圧で攪拌して噴出させるよう構成されたことを特徴とする発泡ウレタン充填用の注入ガン。
【請求項6】
加圧されたエアーを取り入れて前方へ送り出すエアー流路を備えたガン本体の先端に、前記2種類の液体を別々に取り入れるよう形成された二つの並列空間と、前記ガン本体のエアー流路からエアーを取り入れて前記二つの並列空間へ送り出すよう形成されたエアー供給空間とを有するブロック部材が連結され、
二重管が、内側の管に前記エアー供給空間からエアーを取り入れ外側の管に前記液体を取り入れて、先端側で液体をエアーの流れで吸い上げる二重構造ノズルを構成するよう、前記ブロック部材の前記二つの並列空間のそれぞれに前方から並列配置で取り外し自在に挿入固定され、
二股ホースが、前記先端ノズルを構成するよう、二股に分かれた部分で前記二つの二重管の先端に取替え自在に接続されてなり、
前記ブロック部材の前記二つの並列空間に別々に取り入れた前記2種類の液体をそれぞれの二重管の外側の管に流し、それぞれの二重管の内側の管に加圧されたエアーを流して、そのエアーの流れでそれぞれの液体を吸い上げて別々に霧状にし、霧状となったそれら2種類の液体を二股ホース内で混合しエアー圧で攪拌して噴出させることを特徴とする請求項5記載の発泡ウレタン充填用の注入ガン。
【請求項7】
前記ブロック部材の二つの並列空間は、液体を下方から取入れるようL型に形成され、前記エアー供給空間は、エアーを後ろから入れて二つの並列空間に送り出すようT型に形成されていることを特徴とする請求項6記載の発泡ウレタン充填用の注入ガン。
【請求項8】
前記ブロック部材のエアー供給空間の内圧を、前記2種類の液体の注入ガンへの供給を操作する空気圧操作式の液供給バルブの動力源とするよう構成されていることを特徴とする請求項6または7記載の発泡ウレタン充填用の注入ガン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−112503(P2012−112503A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264116(P2010−264116)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(510200635)株式会社アビノ (2)
【Fターム(参考)】