発泡充填具
【課題】 構成部材の収容性を改善することのできる発泡充填具を提供する。
【解決手段】 発泡充填具11は、外部加熱により発泡する発泡部材12と、この発泡部材12を支持する支持部材13とを備えている。支持部材13は、対向する支持部14と、対向する支持部14の端部同士を連結するとともに対向する支持部14を接近させるべく弾性変形する弾性変形部15とを備えた環状に形成されている。この発泡充填具11は、車両ピラーを構成する構成部材としてのインナピラー61に固定して使用される。
【解決手段】 発泡充填具11は、外部加熱により発泡する発泡部材12と、この発泡部材12を支持する支持部材13とを備えている。支持部材13は、対向する支持部14と、対向する支持部14の端部同士を連結するとともに対向する支持部14を接近させるべく弾性変形する弾性変形部15とを備えた環状に形成されている。この発泡充填具11は、車両ピラーを構成する構成部材としてのインナピラー61に固定して使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造体に発泡体を充填する発泡充填具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両ピラー等に代表される中空構造体は、例えば車両の走行中において、内部の空気振動や中空構造体自体の振動等により異音を発生し易い傾向にある。そこで、こうした中空構造体の内部に発泡体を充填することにより、中空構造体から発生する異音を抑制する技術が提案されている。
【0003】
こうした発泡体を中空構造体に充填するには、発泡充填具が使用される(例えば特許文献1参照)。図18(a)に示すように、この種の発泡充填具51は、外部加熱により発泡する発泡部材52と、この発泡部材52を支持する支持部材53とを備えてなり、この発泡充填具51は中空構造体の内部に配置される。そして、この中空構造体が加熱されると、発泡部材から発泡体が形成され、この発泡体によって中空構造体の内部が充填される。このようにして中空構造体の内部は発泡体によって部分的に遮断されることになり、中空構造体から発生する異音が抑制されることになる。
【特許文献1】特開2005−35009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、中空構造体は通常複数の構成部材を組み合わせて形成される。例えば、車両ピラーは構成部材としてのインナピラー及びアウタピラーから構成される。こうした車両ピラーの内部に発泡充填具を装着するには、例えば図18(a)に示すように支持部材53に設けられた係合部53aをインナピラーの取付孔61aに係合することで、インナピラー61に発泡充填具51を固定する。その後、インナピラー61にアウタピラー(図示せず)を溶接等により接合する。このようにして、発泡充填具51は車両ピラーの内部に装着される。
【0005】
こうした発泡充填具51の装着過程において、複数のインナピラー61に発泡充填具51を順次固定した後、それら複数のインナピラー61を収容スペースに一時的に収容することがある。ここで、複数のインナピラー61を重ね合わせて収容すれば、より多くのインナピラー61が収容スペースに収容されるようになる。ところが、発泡充填具51が固定されたインナピラー61では、図18(b)に示すようにインナピラー61から発泡充填具51が突出することになるため、発泡充填具51が固定されている部分では、インナピラー61同士を密着した状態で重ね合わせることができなくなる。このため、所定の収容スペースに収容可能なインナピラー61の数量は減少することになる結果、インナピラー61のような構成部材の収容性が著しく低下することになってしまう。
【0006】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成部材の収容性を改善することのできる発泡充填具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、外部加熱により発泡する発泡部材と、同発泡部材を支持する支持部材とを備え、中空構造体を構成する構成部材に固定して使用され、前記発泡部材が発泡して形成される発泡体を前記中空構造体の内部に充填するための発泡充填具であって、前記支持部材は、対向する支持部と、該対向する支持部の端部同士を連結するとともに同対向する支持部を接近させるべく弾性変形する弾性変形部とを備えた環状に形成されていることを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、複数の構成部材に発泡充填具を順次固定した後、それら複数の構成部材を重ね合わせるに際し、例えば構成部材の重量等による外力が支持部に対して加わると、弾性変形部の弾性変形によって、対向する支持部が接近することになる。これにより、複数の構成部材同士の間隔は、発泡充填具が固定された部分において狭まることになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発泡充填具において、前記発泡部材は、前記支持部材に対応した環状に形成されるとともに前記弾性変形部に追従して弾性変形するように構成したことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、弾性変形部の弾性変形を阻害することなく、中空構造体の内部において、発泡部材が配置される領域を広く確保することができるようになる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発泡充填具において、前記発泡部材は、前記支持部材の外周壁面の少なくとも一部に支持され、前記支持部材において前記発泡部材が支持されている部分の周壁の高さは、前記発泡部材の周壁の高さと同じ又は前記発泡部材の周壁の高さよりも低く設定されていることを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、発泡部材が発泡(膨張)するに際し、環状をなす支持部材の内側方向と外側方向との双方への発泡(膨張)が促進される。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発泡充填具において、前記発泡部材は、前記環状をなす支持部材の軸線方向に突出して前記支持部材に支持されていることを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、発泡部材が発泡(膨張)するに際し、支持部材から突出した発泡部材では、環状をなす支持部材の内側方向への発泡(膨張)が促進されることになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、構成部材の収容性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図6に基づいて詳細に説明する。
図1(a)に示すように、発泡充填具11は外部加熱により発泡する発泡部材12と、この発泡部材12を支持する支持部材13とを備えている。この発泡充填具11は、発泡部材12が発泡して形成される発泡体によって中空構造体としての車両ピラーの内部を充填するものである。この発泡充填具11は、車両ピラーを構成する構成部材としてのインナピラー61に固定して使用される。このインナピラー61は、アウタピラーとともに中空構造体である車両ピラーを構成する。
【0015】
支持部材13は、対向する支持部14と、これら支持部14の端部同士を連結する弾性変形部15とを備えた環状に形成されている。支持部14は対向して一対設けられ、それぞれ四角柱状をなすとともに略平行に延びるように設けられている。弾性変形部15は、支持部14の両端部同士を連結すべく一対設けられている。すなわち、本実施形態の支持部材13は連続した環状に形成されている。そして、このように環状に形成された支持部材13は、弾性変形部15の弾性変形によって、対向する支持部14を接近させることができる。なお、こうした弾性変形部15の材質としては、弾性材料であれば、特に限定されないが、成形性に優れるとともに弾性力の調整が容易であるといった観点から、樹脂材料が好ましい。本実施形態の弾性変形部15及び支持部14の材質としては、合成樹脂の一種であるポリアミド系樹脂を適用している。
【0016】
こうした支持部材13に支持される発泡部材12は、外部加熱によって発泡して発泡体を形成すべく、発泡材料から形成されている。本実施形態の発泡部材12は、支持部材13に沿った環状に形成されており、弾性変形部15に追従して弾性変形するように構成されている。このように、発泡部材12が支持部材13に対応した環状に形成されることで、車両ピラーの内部において、発泡部材12が配置される領域を広く確保することができるようになる。また、発泡部材12は、弾性変形部15に追従して弾性変形する構成としているため、こうした発泡部材12を弾性変形部15に支持させた場合であっても、発泡部材12が弾性変形部15の弾性変形を阻害することはない。なお、発泡部材12は、発泡材料等を適宜設定することにより、弾性変形させることができる。
【0017】
本実施形態の発泡部材12は連続した環状に形成され、支持部材13の外周壁に支持されている。また、発泡部材12は支持部材13の軸線方向D(図1における上下方向)に突出して設けられている。詳述すると、図1(b)に示すように支持部材13において発泡部材12が支持されている部分の周壁の高さH1は、発泡部材12の周壁の高さH2よりも低く設定されている。このように、本実施形態の発泡部材12は、支持部材13の上方及び下方に突出して設けられることで、突出部12aを有して構成されている。すなわち、この突出部12aの内周壁面12bは、支持部材13によって支持されずに構成されているため、突出部12aが支持部材13の内周方向へ発泡(膨張)するに際し、その発泡は支持部材13に阻害されることはない。このため、突出部12aの発泡(膨張)は、支持部材13の外側方向に加えて、支持部材13の内側方向へも促進されることになる。
【0018】
なお、発泡部材12を構成する発泡材料は発泡体に要求される機能に応じて適宜選択すればよい。こうした発泡材料の成分としては、例えば基材、発泡剤、及び架橋剤の他、充填剤、可塑剤等が挙げられる。基材としては合成樹脂、エラストマー、ゴム等が挙げられる。合成樹脂は熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂に分類され、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、EVA(エチレン/ビニルアセテートコポリマー)等が挙げられる。エラストマーとしてはSBS(スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー)等、ゴムとしてはNR(天然ゴム)、ENR(エポキシ化天然ゴム)、EPM(エチレン/プロピレンゴム)等が挙げられる。発泡剤としてはアゾジカルボンアミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン等、架橋剤としては周知のジメチルウレア、ジシアンジアミド、充填剤としては炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フェライト、シリカ等が挙げられる。なお、発泡体に要求される機能としては、遮音機能、制振機能の他、剛性を高める機能、補強機能、吸音機能、衝撃吸収機能等が挙げられる。
【0019】
図1(a)に示すように、本実施形態の支持部材13を構成する一方の支持部14には、インナピラー61の取付孔61aに係合する係合部16が設けられ、この係合部16をインナピラー61に貫設される取付孔61aに係合させることにより、発泡充填具11はインナピラー61に固定されるように構成されている。また、図1(a)及び図1(b)に示すように、他方の支持部14には外周壁面と内周壁面とを連通する連通路14aが形成されることにより、この連通路14aを通じて発泡部材12が発泡(膨張)するように構成されている。本実施形態の連通路14aは、支持部14の長さ方向に延びる長孔状をなして形成されている。
【0020】
こうした支持部材13及び発泡部材12は、例えば射出成形によって成形される。発泡部材12を支持部材13に支持させるには、例えば支持部材13を金型のキャビティ内にインサートして発泡部材12を成形するインサート成形によって支持させてもよいし、別途成形した発泡部材12を支持部材13に嵌合させてもよい。
【0021】
さて、この発泡充填具11を使用するには、まず図2に示すように複数のインナピラー61に発泡充填具11を順次固定する。こうした複数のインナピラー61は、所定の収容スペースに一時的に収容されることになる。ここで、収容スペースにできるだけ多くのインナピラー61を収容するために、複数のインナピラー61は、それぞれ重ね合わせるようにして収容される。このとき、例えばインナピラー61の重量等による外力が支持部14に対して加わると、図3に示すように弾性変形部15の弾性変形によって、対向する支持部14が接近することになる。これにより、複数のインナピラー61同士の間隔は、発泡充填具11が固定された部分において狭まることになる。すなわち、対向する支持部14が接近した距離に応じて、複数のインナピラー61を接近させて収容することができるようになる。さらに、複数のインナピラー61を重ね合わせるに際し、インナピラー61同士に加わる衝撃は、弾性変形部15の弾性変形によって緩和されるようになる。
【0022】
こうして収容されていたインナピラー61を順次取り出すと、支持部14は外力から解放される。すると、弾性変形部15の弾性によって、対向する支持部14が離間する方向に変位することで、発泡充填具11は図4に示す形状に復元する。そして、発泡充填具11が固定されたインナピラー61には、図4及び図5に示すようにアウタピラー62がスポット溶接等によって接合されることで、中空状の車両ピラー63が形成される。このように、インナピラー61に固定されていた発泡充填具11は、車両ピラー63の内部に配置されることになる。なお、この発泡充填具11は、環状の支持部材13が車両ピラー63の内周に沿うように配置される。
【0023】
こうした車両ピラー63は、車両ボディの一部を構成し、その車両ボディには、電着塗装、焼付塗装等の塗装が施される。こうした電着塗装工程において、車両ボディは電着液が貯留される電着槽、水洗液が貯留される水洗槽等の処理槽に浸漬された後、その処理槽から引き上げられる。このとき、発泡充填具11は、全体として環状をなして構成されているため、その発泡充填具11の内側領域は空間が形成されている。このため、電着液、水洗液等の処理液はその空間を通じて車両ピラー63の長手方向に流通される結果、車両ピラー63の内部から処理液が円滑に排出されるようになる。続いて、車両の製造工程において、車両ボディが乾燥炉内で加熱される際に、発泡充填具11は所定温度で所定時間加熱される。発泡充填具11が外部から加熱されると、その外部加熱により、所定の熱量が発泡部材12に移動することにより、発泡部材12の発泡(膨張)が開始される。そして、発泡した発泡部材12が硬化することで、図6(a)及び図6(b)に示すように発泡体17が形成される。
【0024】
こうした発泡体17の形成過程において、発泡部材12が有する突出部12aは、支持部材13の上方及び下方より支持部材13の内側方向へ発泡(膨張)するようになる。このように、突出部12aでは、支持部材13の内側方向への発泡(膨張)が促進される結果、支持部材13の内側部分における発泡体17の充填が好適に行われる。さらに、発泡部材12は支持部材13に形成される連通路14aを通じて、支持部材13の内側方向へ発泡(膨張)するようになるため、この連通路14aの形成によっても支持部材13の内側部分における発泡体17の充填が好適に行われる。このように支持部材13の内側部分において発泡体17の充填が好適に行われることで、車両ピラー63の内部は的確に遮断されるようになる。そして、発泡体17が充填された車両ピラー63では、発泡体17による遮音性や制振性等が付与されることになる。
【0025】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 支持部材13は、対向する支持部14を接近させるべく弾性変形する弾性変形部15を備えた環状に形成されている。このため、複数のインナピラー61に発泡充填具11を順次固定した後、それら複数のインナピラー61を重ね合わせるに際し、例えば構成部材の重量等による外力が支持部14に対して加わると、弾性変形部15の弾性変形によって、対向する支持部14が接近することになる。これにより、複数のインナピラー61同士の間隔は、発泡充填具11が固定された部分において狭まることになる。すなわち、対向する支持部14が接近した距離に応じて、複数のインナピラー61を接近させて収容することができるようになる。従って、所定の収容スペースに収容されるインナピラー61の数量を増加させることができるようになるため、インナピラー61の収容性を改善することができる。
【0026】
さらに、複数のインナピラー61を重ね合わせるに際し、インナピラー61同士に加わる衝撃は、弾性変形部15の弾性変形によって緩和されるようになる。すなわち、支持部14にインナピラー61が衝突した場合に、弾性変形部15の弾性変形に伴い支持部14同士が接近することで、その衝突に伴う衝撃が緩和されるため、複数のインナピラー61を重ね合わせるに際し、インナピラー61の損傷を抑制することができる。
【0027】
(2) 発泡部材12は、支持部材13に対応した環状に形成されるとともに弾性変形部15に追従して弾性変形するように構成されている。このため、弾性変形部15の弾性変形を阻害することなく、車両ピラー63の内部において、発泡部材12が配置される領域を広く確保することができるようになる。このため、車両ピラー63の内部に対する発泡体17の充填性能を十分に確保しつつ、インナピラー61の収容性を改善することができる。また、こうした発泡充填具11は、全体として環状をなして構成されているため、電着塗装工程における処理液は環状の内側領域である空間を通じて、車両ピラー63の長手方向に流通されるようになる。この結果、車両ピラー63の内部における処理液の排出が良好となるため、電着塗装工程に対する発泡充填具11の影響を低減することができる。
【0028】
(3) 発泡部材12は、支持部材13の外周壁面に支持されている。そして、支持部材13において発泡部材12が支持されている部分の周壁の高さH1は、発泡部材12の周壁の高さH2よりも低く設定されている。このため、発泡部材12が発泡(膨張)するに際し、環状をなす支持部材13の内側方向と外側方向との双方への発泡(膨張)が促進される。この結果、環状の支持部材13を採用した場合でも、支持部材13の内側及び支持部材13の外側における発泡体17の充填が的確に行われるようになるため、車両ピラー63に対する発泡体17の充填性能が十分に発揮される。
【0029】
(4) 発泡部材12は、環状をなす支持部材13の軸線方向Dに突出してなる突出部12aを有している。このため、突出部12aの発泡(膨張)は、支持部材13の外側方向に加えて、支持部材13の内側方向へも促進されることになる。この結果、環状の支持部材13を採用した場合でも、支持部材13の内側における発泡体17の充填が的確に行われるようになるため、車両ピラー63に対する発泡体17の充填性能が十分に発揮される。
【0030】
(変更例)
なお、前記各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記弾性変形部15の形状を変更してもよい。例えば、図7(a)に示す弾性変形部15では、その中間部分に屈曲部15aが形成されている。この屈曲部15aは、環状をなす支持部材13の内側方向に膨出するように屈曲形成されている。こうした屈曲部15aを有する弾性変形部15は、図8に示すように支持部材13の内側に折り畳まれるようにして弾性変形する。すなわち、屈曲部15aを有する弾性変形部15によっても、上記(1)に記載の作用効果と同じ作用効果を奏する。さらに、こうした屈曲部15aを有した弾性変形部15によれば、弾性変形部15が弾性変形する際に、支持部材13の外側方向に膨出することが抑制される。このため、弾性変形部15がインナピラー61の内面に干渉することで、弾性変形部15の弾性変形が妨げられることを抑制することができる。
【0031】
・ 図7(a)及び図7(b)に示すように、前記連通路14aを省略してもよい。なお、支持部材13に連通路14aを設ける場合には、その形状、位置及び数は特に限定されない。すなわち、連通路14aは円孔状等の他の形状に変更してもよい。また、前記連通路14aは支持部14に設けられているが、例えば弾性変形部15の外周壁面と内周壁面とを連通させるべく弾性変形部15に設けてもよい。また、支持部材13に連通路14aを複数設けてもよい。
【0032】
・ 支持部材13には、その内側方向に延びるとともに発泡部材の発泡(膨張)を案内する案内突起を設けることもできる。例えば、図7(a)に示す支持部材13には、その内周壁面より突出する案内突起18が複数設けられている。詳述すると、これらの案内突起18は、支持部14の内周壁面から対向する支持部14の内周壁面に向かって延びるように突出形成されている。なお、これらの案内突起18は支持部材13と一体成形されている。そして、発泡部材12から発泡体17が形成される過程では、外部加熱によって軟化した発泡部材12がこれらの案内突起18に付着するとともにその案内突起18に沿うように発泡(膨張)するようになる。すなわち、これらの案内突起18は発泡部材12が支持部材13の内側方向へ発泡することを案内することで、そうした内側方向への発泡を促進する役割を果たす。
【0033】
そして、図9(a)及び図9(b)に示すように、案内突起18を設けた支持部材13によれば、支持部材13の内側及び支持部材13の外側における発泡体17の充填が的確に行われるようになるため、車両ピラー63に対する発泡体17の充填性能が十分に発揮される。
【0034】
なお、こうした案内突起18の形状、位置、長さ及び数は特に限定されない。すなわち、案内突起18の形状、位置及び長さは、弾性変形部15の弾性変形に伴う支持部材13の変形を阻害しないように設定すればよい。例えば、対向する支持部14から複数の案内突起18を突出させる場合には、図8に示すように案内突起18の長さを適宜設定するとともに、一方の支持部14から突出する案内突起18と、他方の支持部14から突出する案内突起18とを交互に設けることにより、支持部14同士は十分に接近されるようになる。
【0035】
・ 前記支持部材13は連続する環状に形成されているが、支持部材13を不連続な環状に形成してもよい。例えば、図10に示す支持部材13では、支持部14の一部を不連続とすることにより、末端部14bを有して構成されている。
【0036】
・ 前記支持部14は一対に限定されない。例えば、図10に示すように支持部14は、2つの支持部14に対向して一つの支持部14を設けることもできる。
・ 前記弾性変形部15は、支持部14の両端部同士を連結すべく、一対設けられているが、いずれか一方の弾性変形部15を省略することもできる。すなわち例えば、図11(a)に示す支持部材13の弾性変形部15は、対向する一対の支持部14における一端部同士を連結すべく、一つ設けられている。そして、これら支持部14の他端部には、弾性変形部15を設けずに構成されている。このように構成した場合であっても、図11(b)に示すように、複数のインナピラー61同士の間隔は、発泡充填具11が固定された部分において狭まることになるため、上記(1)に記載の作用効果と同じ作用効果を奏する。
【0037】
・ 前記発泡部材12は連続する環状に形成されているが、発泡部材12を不連続な環状に形成してもよい。例えば、図11に示す発泡部材12では、環状をなす発泡部材12の一部を不連続として構成されている。こうした不連続な環状をなす発泡部材12であっても、上記(2)に記載の作用効果と同じ作用効果を奏する。
【0038】
・ 前記支持部材13の形状を四角環状以外の多角環状や円環状等に変更してもよい。また、前記発泡部材12の形状を四角環状以外の多角環状や円環状等に変更してもよい。ここで、図12に示す車両ピラー63の断面形状は、図5に示す車両ピラー63の断面形状とは異なる。このように、例えば車両ピラー63の断面形状に応じて、支持部材13又は発泡部材12の全体形状を変更してもよい。
【0039】
・ 前記発泡部材12の断面形状は四角形状をなしているが、発泡部材12の断面形状は特に限定されない。例えば、図13(a)に示すように断面形状が台形状をなす発泡部材12を採用してもよい。
【0040】
・ 前記突出部12aを省略してもよい。すなわち、発泡部材12を支持部材13の軸線方向Dに突出させずに構成してもよい。例えば、図13(b)に示すように、支持部材13において発泡部材12が支持されている部分の周壁の高さH1と発泡部材12の周壁の高さH2とを同じ高さに設定することもできる。このように、支持部材13の周壁の高さH1と発泡部材12の周壁の高さH2との関係を「H1=H2」とした場合でも、発泡部材12が発泡(膨張)するに際し、支持部材13の内側方向への発泡はその支持部材13によって阻害されにくくなるため、環状をなす支持部材13の内側方向と外側方向との双方への発泡(膨張)が促進されることになる。
【0041】
なお、支持部材13の周壁の高さH1と発泡部材12の周壁の高さH2との関係を「H1<H2」及び「H1=H2」に設定する箇所は、発泡充填具11の少なくとも一部分であれば、上記(3)に記載の作用効果を得ることができる。
【0042】
・ 発泡部材12を支持部材13の軸線方向Dに突出させて設ける態様としては、次のような態様も挙げられる。例えば、図13(c)に示すように、支持部材13の上面又は下面に発泡部材12を設けることにより、こうした発泡部材12は支持部材13の軸線方向Dに突出することになる。この場合であっても、上記(4)の作用効果と同じ作用効果を奏する。
【0043】
・ 図13(c)に示すように、発泡部材12を前記連通路14a内に設けてもよい。
・ 前記発泡部材12の全体形状は環状に限定されない。例えば、発泡部材12の全体形状はブロック状、板状等の形状に変更することもできる。
【0044】
・ 支持部材13に支持させる発泡部材12の個数は、複数でもよい。
・ 支持部材13に対する発泡部材12の支持位置は、特に限定されない。例えば、支持部材13の内周壁面に発泡部材12を支持させてもよい。
【0045】
・ 支持部材13に対する発泡部材12の支持構造は、特に限定されない。例えば、図14(a)に示すように支持部材13に形成された嵌合突部22と、発泡部材12に形成された嵌合凹部23とを嵌合して、支持部材13に発泡部材12を支持させてもよい。また例えば、支持部材13に形成された嵌合凹部23と、発泡部材12に形成された嵌合突部22とを嵌合して、支持部材13に発泡部材12を支持させてもよい。
【0046】
・ 支持部材13は、次のようにして環状に形成することもできる。すなわち、図15(a)に示す帯状部材19から環状の支持部材13を形成する。この帯状部材19の両端には、端部同士を連結する連結手段が設けられている。図15(a)に示す帯状部材19の一端には端面から突出する連結突部20が設けられているとともに、帯状部材19の他端には端面に開口されるとともに連結突部20が嵌入される連結凹部19aが形成されている。これら連結突部20及び連結凹部19aにより連結手段が構成されている。さらに、帯状部材19には、所定の位置にて屈曲させるべく切欠部19bが長手方向に所定の間隔をおいて複数形成されている。これら切欠部19bは、それぞれ短手方向にわたって切り欠くように形成されている。こうした切欠部19bが形成されている部分は、切欠部19bが形成されていない部分よりも薄肉となる薄肉部19cとされる。
【0047】
この帯状部材19では4つの切欠部19b(薄肉部19c)を有しており、これら切欠部19b(薄肉部19c)にて帯状部材19を屈曲させると、図15(b)に示すように四角形状の支持部材13が形成される。また、連結凹部19aに対する連結突部20の嵌入により、帯状部材19の端部同士が連結されることで、支持部材13の四角形状が保持されるように構成されている。なお、この帯状部材19には、支持部14に該当する部分に係合部16が設けられることで、形成された支持部材13は係合部16を有して構成されることになる。
【0048】
・ 図15(a)に示す帯状部材19に設けられる連結手段は、次のように構成することもできる。例えば、図16(a)に示す帯状部材19の両端部分は、段差部19dを介して他の部分よりも厚さの薄い薄板状に形成された薄板部19eとして構成されている。そして、一方の薄板部19eの板面には連結突起21を突設されるとともに、他方の薄板部19eにはその連結突起21が嵌入される連結孔19fが貫設されている。そして、薄板部19eの板面同士を合わせるようにして、連結突起21を連結孔19fに嵌入させることにより、帯状部材19の両端部が連結されるように構成されている。この連結状態では、薄板部19eによって連結部分の内周壁面及び外周壁面は面一に形成されるため、こうした連結部分とすれば、発泡部材12を支持させ易い支持部材13を提供することができる。
【0049】
また例えば、図16(b)に示す帯状部材19では、一方の薄板部19eにはその板面から突出する係合部16が設けられるとともに、他方の薄板部19eにはその係合部16が挿通される挿通孔19gが貫設されている。そして、薄板部19eの板面同士を合わせるようにして、係合部16を挿通孔19gに嵌入させることにより、帯状部材19の両端部が連結されるように構成されている。こうした帯状部材19によれば、図17に示すように係合部16を利用して連結された支持部材13を得ることができる。この係合部16は、前記実施形態と同様にインナピラー61に形成された取付孔61aに係合させることにより、発泡充填具11をインナピラー61に固定する役割を果たす。すなわち、このように帯状部材19に設けられた係合部16は、帯状部材19の連結手段に加えて、取付孔61aに係合する係合手段としても機能する。
【0050】
・ 前記支持部材13を複数の部材に分割して形成してもよい。例えば、支持部14と弾性変形部15とを分割して形成し、図15に示すような連結手段によって支持部14と弾性変形部15とを連結する構成としてもよい。
【0051】
・ 前記係合部16を省略してもよい。すなわち、接着剤等の固定手段によって支持部材13をインナピラー61に固定してもよい。
・ 前記係合部16を設ける位置は、特に限定されない。例えば、弾性変形部15に係合部16を設けてもよい。なお、弾性変形部15が弾性変形するに際し、弾性変形部15と係合部16との干渉が抑制されることで、弾性変形部15の機能を十分に発揮させるという観点から、支持部14に係合部16を設けることが好ましい。
【0052】
・ 発泡充填具11が固定される構成部材としては、中空構造体を構成する構成部材であれば特に限定されず、カバー、ドアパネル、ロッカーパネル等の構成部材、建造物におけるパネル等の構成部材等が挙げられる。
【0053】
上記実施形態及び上記変更例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ) 前記環状をなす支持部材には、同支持部材の外周壁面と内周壁面とを連通する連通路が形成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発泡充填具。この構成によれば、発泡体の形成過程において、発泡部材は支持部材に形成される連通路を通じて、支持部材の内側方向へ発泡(膨張)するようになるため、支持部材の内側部分における発泡体の充填が好適に行われるようになる。
【0054】
(ロ) 前記支持部材には、同支持部材の内側方向に延びる突起が設けられている請求項1から請求項4及び上記(イ)のいずれか一項に記載の発泡充填具。この構成によれば、これらの突起は発泡部材が支持部材の内側方向へ発泡することを促進する役割を果たすため、支持部材の内側部分における発泡体の充填が好適に行われるようになる。
【0055】
(ハ) 前記支持部には、前記構成部材に係合する係合部が設けられている請求項1から請求項4、上記(イ)及び(ロ)のいずれか一項に記載の発泡充填具。この構成によれば、係合部と弾性変形部との干渉を抑制することができるため、弾性変形部の機能を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)は発泡充填具及びインナピラーを示す斜視図、(b)は(a)の1b−1b線断面図。
【図2】発泡充填具が固定されたインナピラーを示す斜視図。
【図3】発泡充填具が固定されたインナピラーの収容状態を示す模式図。
【図4】発泡充填具が装着された車両ピラーを示す斜視図。
【図5】図4の5−5線断面図。
【図6】(a)は発泡体が充填された車両ピラーを示す断面図、(b)は(a)の6b−6b線部分断面図。
【図7】(a)は変更例の発泡充填具及びインナピラーを示す斜視図、(b)は(a)の7b−7b線断面図。
【図8】変更例の発泡充填具が固定されたインナピラーの収容状態を示す模式図。
【図9】(a)は発泡体が充填された車両ピラーを示す断面図、(b)は(a)の9b−9b線部分断面図。
【図10】変更例の発泡充填具及びインナピラーを示す斜視図。
【図11】(a)は変更例の発泡充填具及びインナピラーを示す斜視図、(b)は変更例の発泡充填具が固定されたインナピラーの収容状態を示す模式図。
【図12】変更例の発泡充填具が装着された車両ピラーを示す断面図。
【図13】(a)、(b)及び(c)は、発泡部材及びその支持構造の変更例を示す断面図。
【図14】(a)及び(b)は発泡部材の支持構造における変更例を示す断面図。
【図15】(a)は変更例の支持部材を形成する帯状部材を示す斜視図、(b)は変更例の支持部材を示す斜視図。
【図16】(a)及び(b)は、帯状部材における連結手段の変更例を示す斜視図。
【図17】変更例の支持部材を示す斜視図。
【図18】(a)は従来の発泡充填具及びインナピラーを示す斜視図、(b)は従来の発泡充填具が固定されたインナピラーの収容状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0057】
D…軸線方向、H1…支持部材の周壁の高さ、H2…発泡部材の周壁の高さ、11…発泡充填具、12…発泡部材、12a…突出部、12b…内周壁面、13…支持部材、14…支持部、14a…連通路、14b…末端部、15…弾性変形部、15a…屈曲部、16…係合部、17…発泡体、18…案内突起、19…帯状部材、19a…連結凹部、19b…切欠部、19c…薄肉部、19d…段差部、19e…薄板部、19f…連結孔、19g…挿通孔、20…連結突部、21…連結突起、22…嵌合突部、23…嵌合凹部、61…インナピラー、61a…取付孔、62…アウタピラー、63…車両ピラー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造体に発泡体を充填する発泡充填具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両ピラー等に代表される中空構造体は、例えば車両の走行中において、内部の空気振動や中空構造体自体の振動等により異音を発生し易い傾向にある。そこで、こうした中空構造体の内部に発泡体を充填することにより、中空構造体から発生する異音を抑制する技術が提案されている。
【0003】
こうした発泡体を中空構造体に充填するには、発泡充填具が使用される(例えば特許文献1参照)。図18(a)に示すように、この種の発泡充填具51は、外部加熱により発泡する発泡部材52と、この発泡部材52を支持する支持部材53とを備えてなり、この発泡充填具51は中空構造体の内部に配置される。そして、この中空構造体が加熱されると、発泡部材から発泡体が形成され、この発泡体によって中空構造体の内部が充填される。このようにして中空構造体の内部は発泡体によって部分的に遮断されることになり、中空構造体から発生する異音が抑制されることになる。
【特許文献1】特開2005−35009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、中空構造体は通常複数の構成部材を組み合わせて形成される。例えば、車両ピラーは構成部材としてのインナピラー及びアウタピラーから構成される。こうした車両ピラーの内部に発泡充填具を装着するには、例えば図18(a)に示すように支持部材53に設けられた係合部53aをインナピラーの取付孔61aに係合することで、インナピラー61に発泡充填具51を固定する。その後、インナピラー61にアウタピラー(図示せず)を溶接等により接合する。このようにして、発泡充填具51は車両ピラーの内部に装着される。
【0005】
こうした発泡充填具51の装着過程において、複数のインナピラー61に発泡充填具51を順次固定した後、それら複数のインナピラー61を収容スペースに一時的に収容することがある。ここで、複数のインナピラー61を重ね合わせて収容すれば、より多くのインナピラー61が収容スペースに収容されるようになる。ところが、発泡充填具51が固定されたインナピラー61では、図18(b)に示すようにインナピラー61から発泡充填具51が突出することになるため、発泡充填具51が固定されている部分では、インナピラー61同士を密着した状態で重ね合わせることができなくなる。このため、所定の収容スペースに収容可能なインナピラー61の数量は減少することになる結果、インナピラー61のような構成部材の収容性が著しく低下することになってしまう。
【0006】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成部材の収容性を改善することのできる発泡充填具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、外部加熱により発泡する発泡部材と、同発泡部材を支持する支持部材とを備え、中空構造体を構成する構成部材に固定して使用され、前記発泡部材が発泡して形成される発泡体を前記中空構造体の内部に充填するための発泡充填具であって、前記支持部材は、対向する支持部と、該対向する支持部の端部同士を連結するとともに同対向する支持部を接近させるべく弾性変形する弾性変形部とを備えた環状に形成されていることを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、複数の構成部材に発泡充填具を順次固定した後、それら複数の構成部材を重ね合わせるに際し、例えば構成部材の重量等による外力が支持部に対して加わると、弾性変形部の弾性変形によって、対向する支持部が接近することになる。これにより、複数の構成部材同士の間隔は、発泡充填具が固定された部分において狭まることになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発泡充填具において、前記発泡部材は、前記支持部材に対応した環状に形成されるとともに前記弾性変形部に追従して弾性変形するように構成したことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、弾性変形部の弾性変形を阻害することなく、中空構造体の内部において、発泡部材が配置される領域を広く確保することができるようになる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発泡充填具において、前記発泡部材は、前記支持部材の外周壁面の少なくとも一部に支持され、前記支持部材において前記発泡部材が支持されている部分の周壁の高さは、前記発泡部材の周壁の高さと同じ又は前記発泡部材の周壁の高さよりも低く設定されていることを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、発泡部材が発泡(膨張)するに際し、環状をなす支持部材の内側方向と外側方向との双方への発泡(膨張)が促進される。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発泡充填具において、前記発泡部材は、前記環状をなす支持部材の軸線方向に突出して前記支持部材に支持されていることを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、発泡部材が発泡(膨張)するに際し、支持部材から突出した発泡部材では、環状をなす支持部材の内側方向への発泡(膨張)が促進されることになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、構成部材の収容性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図6に基づいて詳細に説明する。
図1(a)に示すように、発泡充填具11は外部加熱により発泡する発泡部材12と、この発泡部材12を支持する支持部材13とを備えている。この発泡充填具11は、発泡部材12が発泡して形成される発泡体によって中空構造体としての車両ピラーの内部を充填するものである。この発泡充填具11は、車両ピラーを構成する構成部材としてのインナピラー61に固定して使用される。このインナピラー61は、アウタピラーとともに中空構造体である車両ピラーを構成する。
【0015】
支持部材13は、対向する支持部14と、これら支持部14の端部同士を連結する弾性変形部15とを備えた環状に形成されている。支持部14は対向して一対設けられ、それぞれ四角柱状をなすとともに略平行に延びるように設けられている。弾性変形部15は、支持部14の両端部同士を連結すべく一対設けられている。すなわち、本実施形態の支持部材13は連続した環状に形成されている。そして、このように環状に形成された支持部材13は、弾性変形部15の弾性変形によって、対向する支持部14を接近させることができる。なお、こうした弾性変形部15の材質としては、弾性材料であれば、特に限定されないが、成形性に優れるとともに弾性力の調整が容易であるといった観点から、樹脂材料が好ましい。本実施形態の弾性変形部15及び支持部14の材質としては、合成樹脂の一種であるポリアミド系樹脂を適用している。
【0016】
こうした支持部材13に支持される発泡部材12は、外部加熱によって発泡して発泡体を形成すべく、発泡材料から形成されている。本実施形態の発泡部材12は、支持部材13に沿った環状に形成されており、弾性変形部15に追従して弾性変形するように構成されている。このように、発泡部材12が支持部材13に対応した環状に形成されることで、車両ピラーの内部において、発泡部材12が配置される領域を広く確保することができるようになる。また、発泡部材12は、弾性変形部15に追従して弾性変形する構成としているため、こうした発泡部材12を弾性変形部15に支持させた場合であっても、発泡部材12が弾性変形部15の弾性変形を阻害することはない。なお、発泡部材12は、発泡材料等を適宜設定することにより、弾性変形させることができる。
【0017】
本実施形態の発泡部材12は連続した環状に形成され、支持部材13の外周壁に支持されている。また、発泡部材12は支持部材13の軸線方向D(図1における上下方向)に突出して設けられている。詳述すると、図1(b)に示すように支持部材13において発泡部材12が支持されている部分の周壁の高さH1は、発泡部材12の周壁の高さH2よりも低く設定されている。このように、本実施形態の発泡部材12は、支持部材13の上方及び下方に突出して設けられることで、突出部12aを有して構成されている。すなわち、この突出部12aの内周壁面12bは、支持部材13によって支持されずに構成されているため、突出部12aが支持部材13の内周方向へ発泡(膨張)するに際し、その発泡は支持部材13に阻害されることはない。このため、突出部12aの発泡(膨張)は、支持部材13の外側方向に加えて、支持部材13の内側方向へも促進されることになる。
【0018】
なお、発泡部材12を構成する発泡材料は発泡体に要求される機能に応じて適宜選択すればよい。こうした発泡材料の成分としては、例えば基材、発泡剤、及び架橋剤の他、充填剤、可塑剤等が挙げられる。基材としては合成樹脂、エラストマー、ゴム等が挙げられる。合成樹脂は熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂に分類され、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、EVA(エチレン/ビニルアセテートコポリマー)等が挙げられる。エラストマーとしてはSBS(スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー)等、ゴムとしてはNR(天然ゴム)、ENR(エポキシ化天然ゴム)、EPM(エチレン/プロピレンゴム)等が挙げられる。発泡剤としてはアゾジカルボンアミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン等、架橋剤としては周知のジメチルウレア、ジシアンジアミド、充填剤としては炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フェライト、シリカ等が挙げられる。なお、発泡体に要求される機能としては、遮音機能、制振機能の他、剛性を高める機能、補強機能、吸音機能、衝撃吸収機能等が挙げられる。
【0019】
図1(a)に示すように、本実施形態の支持部材13を構成する一方の支持部14には、インナピラー61の取付孔61aに係合する係合部16が設けられ、この係合部16をインナピラー61に貫設される取付孔61aに係合させることにより、発泡充填具11はインナピラー61に固定されるように構成されている。また、図1(a)及び図1(b)に示すように、他方の支持部14には外周壁面と内周壁面とを連通する連通路14aが形成されることにより、この連通路14aを通じて発泡部材12が発泡(膨張)するように構成されている。本実施形態の連通路14aは、支持部14の長さ方向に延びる長孔状をなして形成されている。
【0020】
こうした支持部材13及び発泡部材12は、例えば射出成形によって成形される。発泡部材12を支持部材13に支持させるには、例えば支持部材13を金型のキャビティ内にインサートして発泡部材12を成形するインサート成形によって支持させてもよいし、別途成形した発泡部材12を支持部材13に嵌合させてもよい。
【0021】
さて、この発泡充填具11を使用するには、まず図2に示すように複数のインナピラー61に発泡充填具11を順次固定する。こうした複数のインナピラー61は、所定の収容スペースに一時的に収容されることになる。ここで、収容スペースにできるだけ多くのインナピラー61を収容するために、複数のインナピラー61は、それぞれ重ね合わせるようにして収容される。このとき、例えばインナピラー61の重量等による外力が支持部14に対して加わると、図3に示すように弾性変形部15の弾性変形によって、対向する支持部14が接近することになる。これにより、複数のインナピラー61同士の間隔は、発泡充填具11が固定された部分において狭まることになる。すなわち、対向する支持部14が接近した距離に応じて、複数のインナピラー61を接近させて収容することができるようになる。さらに、複数のインナピラー61を重ね合わせるに際し、インナピラー61同士に加わる衝撃は、弾性変形部15の弾性変形によって緩和されるようになる。
【0022】
こうして収容されていたインナピラー61を順次取り出すと、支持部14は外力から解放される。すると、弾性変形部15の弾性によって、対向する支持部14が離間する方向に変位することで、発泡充填具11は図4に示す形状に復元する。そして、発泡充填具11が固定されたインナピラー61には、図4及び図5に示すようにアウタピラー62がスポット溶接等によって接合されることで、中空状の車両ピラー63が形成される。このように、インナピラー61に固定されていた発泡充填具11は、車両ピラー63の内部に配置されることになる。なお、この発泡充填具11は、環状の支持部材13が車両ピラー63の内周に沿うように配置される。
【0023】
こうした車両ピラー63は、車両ボディの一部を構成し、その車両ボディには、電着塗装、焼付塗装等の塗装が施される。こうした電着塗装工程において、車両ボディは電着液が貯留される電着槽、水洗液が貯留される水洗槽等の処理槽に浸漬された後、その処理槽から引き上げられる。このとき、発泡充填具11は、全体として環状をなして構成されているため、その発泡充填具11の内側領域は空間が形成されている。このため、電着液、水洗液等の処理液はその空間を通じて車両ピラー63の長手方向に流通される結果、車両ピラー63の内部から処理液が円滑に排出されるようになる。続いて、車両の製造工程において、車両ボディが乾燥炉内で加熱される際に、発泡充填具11は所定温度で所定時間加熱される。発泡充填具11が外部から加熱されると、その外部加熱により、所定の熱量が発泡部材12に移動することにより、発泡部材12の発泡(膨張)が開始される。そして、発泡した発泡部材12が硬化することで、図6(a)及び図6(b)に示すように発泡体17が形成される。
【0024】
こうした発泡体17の形成過程において、発泡部材12が有する突出部12aは、支持部材13の上方及び下方より支持部材13の内側方向へ発泡(膨張)するようになる。このように、突出部12aでは、支持部材13の内側方向への発泡(膨張)が促進される結果、支持部材13の内側部分における発泡体17の充填が好適に行われる。さらに、発泡部材12は支持部材13に形成される連通路14aを通じて、支持部材13の内側方向へ発泡(膨張)するようになるため、この連通路14aの形成によっても支持部材13の内側部分における発泡体17の充填が好適に行われる。このように支持部材13の内側部分において発泡体17の充填が好適に行われることで、車両ピラー63の内部は的確に遮断されるようになる。そして、発泡体17が充填された車両ピラー63では、発泡体17による遮音性や制振性等が付与されることになる。
【0025】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 支持部材13は、対向する支持部14を接近させるべく弾性変形する弾性変形部15を備えた環状に形成されている。このため、複数のインナピラー61に発泡充填具11を順次固定した後、それら複数のインナピラー61を重ね合わせるに際し、例えば構成部材の重量等による外力が支持部14に対して加わると、弾性変形部15の弾性変形によって、対向する支持部14が接近することになる。これにより、複数のインナピラー61同士の間隔は、発泡充填具11が固定された部分において狭まることになる。すなわち、対向する支持部14が接近した距離に応じて、複数のインナピラー61を接近させて収容することができるようになる。従って、所定の収容スペースに収容されるインナピラー61の数量を増加させることができるようになるため、インナピラー61の収容性を改善することができる。
【0026】
さらに、複数のインナピラー61を重ね合わせるに際し、インナピラー61同士に加わる衝撃は、弾性変形部15の弾性変形によって緩和されるようになる。すなわち、支持部14にインナピラー61が衝突した場合に、弾性変形部15の弾性変形に伴い支持部14同士が接近することで、その衝突に伴う衝撃が緩和されるため、複数のインナピラー61を重ね合わせるに際し、インナピラー61の損傷を抑制することができる。
【0027】
(2) 発泡部材12は、支持部材13に対応した環状に形成されるとともに弾性変形部15に追従して弾性変形するように構成されている。このため、弾性変形部15の弾性変形を阻害することなく、車両ピラー63の内部において、発泡部材12が配置される領域を広く確保することができるようになる。このため、車両ピラー63の内部に対する発泡体17の充填性能を十分に確保しつつ、インナピラー61の収容性を改善することができる。また、こうした発泡充填具11は、全体として環状をなして構成されているため、電着塗装工程における処理液は環状の内側領域である空間を通じて、車両ピラー63の長手方向に流通されるようになる。この結果、車両ピラー63の内部における処理液の排出が良好となるため、電着塗装工程に対する発泡充填具11の影響を低減することができる。
【0028】
(3) 発泡部材12は、支持部材13の外周壁面に支持されている。そして、支持部材13において発泡部材12が支持されている部分の周壁の高さH1は、発泡部材12の周壁の高さH2よりも低く設定されている。このため、発泡部材12が発泡(膨張)するに際し、環状をなす支持部材13の内側方向と外側方向との双方への発泡(膨張)が促進される。この結果、環状の支持部材13を採用した場合でも、支持部材13の内側及び支持部材13の外側における発泡体17の充填が的確に行われるようになるため、車両ピラー63に対する発泡体17の充填性能が十分に発揮される。
【0029】
(4) 発泡部材12は、環状をなす支持部材13の軸線方向Dに突出してなる突出部12aを有している。このため、突出部12aの発泡(膨張)は、支持部材13の外側方向に加えて、支持部材13の内側方向へも促進されることになる。この結果、環状の支持部材13を採用した場合でも、支持部材13の内側における発泡体17の充填が的確に行われるようになるため、車両ピラー63に対する発泡体17の充填性能が十分に発揮される。
【0030】
(変更例)
なお、前記各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記弾性変形部15の形状を変更してもよい。例えば、図7(a)に示す弾性変形部15では、その中間部分に屈曲部15aが形成されている。この屈曲部15aは、環状をなす支持部材13の内側方向に膨出するように屈曲形成されている。こうした屈曲部15aを有する弾性変形部15は、図8に示すように支持部材13の内側に折り畳まれるようにして弾性変形する。すなわち、屈曲部15aを有する弾性変形部15によっても、上記(1)に記載の作用効果と同じ作用効果を奏する。さらに、こうした屈曲部15aを有した弾性変形部15によれば、弾性変形部15が弾性変形する際に、支持部材13の外側方向に膨出することが抑制される。このため、弾性変形部15がインナピラー61の内面に干渉することで、弾性変形部15の弾性変形が妨げられることを抑制することができる。
【0031】
・ 図7(a)及び図7(b)に示すように、前記連通路14aを省略してもよい。なお、支持部材13に連通路14aを設ける場合には、その形状、位置及び数は特に限定されない。すなわち、連通路14aは円孔状等の他の形状に変更してもよい。また、前記連通路14aは支持部14に設けられているが、例えば弾性変形部15の外周壁面と内周壁面とを連通させるべく弾性変形部15に設けてもよい。また、支持部材13に連通路14aを複数設けてもよい。
【0032】
・ 支持部材13には、その内側方向に延びるとともに発泡部材の発泡(膨張)を案内する案内突起を設けることもできる。例えば、図7(a)に示す支持部材13には、その内周壁面より突出する案内突起18が複数設けられている。詳述すると、これらの案内突起18は、支持部14の内周壁面から対向する支持部14の内周壁面に向かって延びるように突出形成されている。なお、これらの案内突起18は支持部材13と一体成形されている。そして、発泡部材12から発泡体17が形成される過程では、外部加熱によって軟化した発泡部材12がこれらの案内突起18に付着するとともにその案内突起18に沿うように発泡(膨張)するようになる。すなわち、これらの案内突起18は発泡部材12が支持部材13の内側方向へ発泡することを案内することで、そうした内側方向への発泡を促進する役割を果たす。
【0033】
そして、図9(a)及び図9(b)に示すように、案内突起18を設けた支持部材13によれば、支持部材13の内側及び支持部材13の外側における発泡体17の充填が的確に行われるようになるため、車両ピラー63に対する発泡体17の充填性能が十分に発揮される。
【0034】
なお、こうした案内突起18の形状、位置、長さ及び数は特に限定されない。すなわち、案内突起18の形状、位置及び長さは、弾性変形部15の弾性変形に伴う支持部材13の変形を阻害しないように設定すればよい。例えば、対向する支持部14から複数の案内突起18を突出させる場合には、図8に示すように案内突起18の長さを適宜設定するとともに、一方の支持部14から突出する案内突起18と、他方の支持部14から突出する案内突起18とを交互に設けることにより、支持部14同士は十分に接近されるようになる。
【0035】
・ 前記支持部材13は連続する環状に形成されているが、支持部材13を不連続な環状に形成してもよい。例えば、図10に示す支持部材13では、支持部14の一部を不連続とすることにより、末端部14bを有して構成されている。
【0036】
・ 前記支持部14は一対に限定されない。例えば、図10に示すように支持部14は、2つの支持部14に対向して一つの支持部14を設けることもできる。
・ 前記弾性変形部15は、支持部14の両端部同士を連結すべく、一対設けられているが、いずれか一方の弾性変形部15を省略することもできる。すなわち例えば、図11(a)に示す支持部材13の弾性変形部15は、対向する一対の支持部14における一端部同士を連結すべく、一つ設けられている。そして、これら支持部14の他端部には、弾性変形部15を設けずに構成されている。このように構成した場合であっても、図11(b)に示すように、複数のインナピラー61同士の間隔は、発泡充填具11が固定された部分において狭まることになるため、上記(1)に記載の作用効果と同じ作用効果を奏する。
【0037】
・ 前記発泡部材12は連続する環状に形成されているが、発泡部材12を不連続な環状に形成してもよい。例えば、図11に示す発泡部材12では、環状をなす発泡部材12の一部を不連続として構成されている。こうした不連続な環状をなす発泡部材12であっても、上記(2)に記載の作用効果と同じ作用効果を奏する。
【0038】
・ 前記支持部材13の形状を四角環状以外の多角環状や円環状等に変更してもよい。また、前記発泡部材12の形状を四角環状以外の多角環状や円環状等に変更してもよい。ここで、図12に示す車両ピラー63の断面形状は、図5に示す車両ピラー63の断面形状とは異なる。このように、例えば車両ピラー63の断面形状に応じて、支持部材13又は発泡部材12の全体形状を変更してもよい。
【0039】
・ 前記発泡部材12の断面形状は四角形状をなしているが、発泡部材12の断面形状は特に限定されない。例えば、図13(a)に示すように断面形状が台形状をなす発泡部材12を採用してもよい。
【0040】
・ 前記突出部12aを省略してもよい。すなわち、発泡部材12を支持部材13の軸線方向Dに突出させずに構成してもよい。例えば、図13(b)に示すように、支持部材13において発泡部材12が支持されている部分の周壁の高さH1と発泡部材12の周壁の高さH2とを同じ高さに設定することもできる。このように、支持部材13の周壁の高さH1と発泡部材12の周壁の高さH2との関係を「H1=H2」とした場合でも、発泡部材12が発泡(膨張)するに際し、支持部材13の内側方向への発泡はその支持部材13によって阻害されにくくなるため、環状をなす支持部材13の内側方向と外側方向との双方への発泡(膨張)が促進されることになる。
【0041】
なお、支持部材13の周壁の高さH1と発泡部材12の周壁の高さH2との関係を「H1<H2」及び「H1=H2」に設定する箇所は、発泡充填具11の少なくとも一部分であれば、上記(3)に記載の作用効果を得ることができる。
【0042】
・ 発泡部材12を支持部材13の軸線方向Dに突出させて設ける態様としては、次のような態様も挙げられる。例えば、図13(c)に示すように、支持部材13の上面又は下面に発泡部材12を設けることにより、こうした発泡部材12は支持部材13の軸線方向Dに突出することになる。この場合であっても、上記(4)の作用効果と同じ作用効果を奏する。
【0043】
・ 図13(c)に示すように、発泡部材12を前記連通路14a内に設けてもよい。
・ 前記発泡部材12の全体形状は環状に限定されない。例えば、発泡部材12の全体形状はブロック状、板状等の形状に変更することもできる。
【0044】
・ 支持部材13に支持させる発泡部材12の個数は、複数でもよい。
・ 支持部材13に対する発泡部材12の支持位置は、特に限定されない。例えば、支持部材13の内周壁面に発泡部材12を支持させてもよい。
【0045】
・ 支持部材13に対する発泡部材12の支持構造は、特に限定されない。例えば、図14(a)に示すように支持部材13に形成された嵌合突部22と、発泡部材12に形成された嵌合凹部23とを嵌合して、支持部材13に発泡部材12を支持させてもよい。また例えば、支持部材13に形成された嵌合凹部23と、発泡部材12に形成された嵌合突部22とを嵌合して、支持部材13に発泡部材12を支持させてもよい。
【0046】
・ 支持部材13は、次のようにして環状に形成することもできる。すなわち、図15(a)に示す帯状部材19から環状の支持部材13を形成する。この帯状部材19の両端には、端部同士を連結する連結手段が設けられている。図15(a)に示す帯状部材19の一端には端面から突出する連結突部20が設けられているとともに、帯状部材19の他端には端面に開口されるとともに連結突部20が嵌入される連結凹部19aが形成されている。これら連結突部20及び連結凹部19aにより連結手段が構成されている。さらに、帯状部材19には、所定の位置にて屈曲させるべく切欠部19bが長手方向に所定の間隔をおいて複数形成されている。これら切欠部19bは、それぞれ短手方向にわたって切り欠くように形成されている。こうした切欠部19bが形成されている部分は、切欠部19bが形成されていない部分よりも薄肉となる薄肉部19cとされる。
【0047】
この帯状部材19では4つの切欠部19b(薄肉部19c)を有しており、これら切欠部19b(薄肉部19c)にて帯状部材19を屈曲させると、図15(b)に示すように四角形状の支持部材13が形成される。また、連結凹部19aに対する連結突部20の嵌入により、帯状部材19の端部同士が連結されることで、支持部材13の四角形状が保持されるように構成されている。なお、この帯状部材19には、支持部14に該当する部分に係合部16が設けられることで、形成された支持部材13は係合部16を有して構成されることになる。
【0048】
・ 図15(a)に示す帯状部材19に設けられる連結手段は、次のように構成することもできる。例えば、図16(a)に示す帯状部材19の両端部分は、段差部19dを介して他の部分よりも厚さの薄い薄板状に形成された薄板部19eとして構成されている。そして、一方の薄板部19eの板面には連結突起21を突設されるとともに、他方の薄板部19eにはその連結突起21が嵌入される連結孔19fが貫設されている。そして、薄板部19eの板面同士を合わせるようにして、連結突起21を連結孔19fに嵌入させることにより、帯状部材19の両端部が連結されるように構成されている。この連結状態では、薄板部19eによって連結部分の内周壁面及び外周壁面は面一に形成されるため、こうした連結部分とすれば、発泡部材12を支持させ易い支持部材13を提供することができる。
【0049】
また例えば、図16(b)に示す帯状部材19では、一方の薄板部19eにはその板面から突出する係合部16が設けられるとともに、他方の薄板部19eにはその係合部16が挿通される挿通孔19gが貫設されている。そして、薄板部19eの板面同士を合わせるようにして、係合部16を挿通孔19gに嵌入させることにより、帯状部材19の両端部が連結されるように構成されている。こうした帯状部材19によれば、図17に示すように係合部16を利用して連結された支持部材13を得ることができる。この係合部16は、前記実施形態と同様にインナピラー61に形成された取付孔61aに係合させることにより、発泡充填具11をインナピラー61に固定する役割を果たす。すなわち、このように帯状部材19に設けられた係合部16は、帯状部材19の連結手段に加えて、取付孔61aに係合する係合手段としても機能する。
【0050】
・ 前記支持部材13を複数の部材に分割して形成してもよい。例えば、支持部14と弾性変形部15とを分割して形成し、図15に示すような連結手段によって支持部14と弾性変形部15とを連結する構成としてもよい。
【0051】
・ 前記係合部16を省略してもよい。すなわち、接着剤等の固定手段によって支持部材13をインナピラー61に固定してもよい。
・ 前記係合部16を設ける位置は、特に限定されない。例えば、弾性変形部15に係合部16を設けてもよい。なお、弾性変形部15が弾性変形するに際し、弾性変形部15と係合部16との干渉が抑制されることで、弾性変形部15の機能を十分に発揮させるという観点から、支持部14に係合部16を設けることが好ましい。
【0052】
・ 発泡充填具11が固定される構成部材としては、中空構造体を構成する構成部材であれば特に限定されず、カバー、ドアパネル、ロッカーパネル等の構成部材、建造物におけるパネル等の構成部材等が挙げられる。
【0053】
上記実施形態及び上記変更例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ) 前記環状をなす支持部材には、同支持部材の外周壁面と内周壁面とを連通する連通路が形成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発泡充填具。この構成によれば、発泡体の形成過程において、発泡部材は支持部材に形成される連通路を通じて、支持部材の内側方向へ発泡(膨張)するようになるため、支持部材の内側部分における発泡体の充填が好適に行われるようになる。
【0054】
(ロ) 前記支持部材には、同支持部材の内側方向に延びる突起が設けられている請求項1から請求項4及び上記(イ)のいずれか一項に記載の発泡充填具。この構成によれば、これらの突起は発泡部材が支持部材の内側方向へ発泡することを促進する役割を果たすため、支持部材の内側部分における発泡体の充填が好適に行われるようになる。
【0055】
(ハ) 前記支持部には、前記構成部材に係合する係合部が設けられている請求項1から請求項4、上記(イ)及び(ロ)のいずれか一項に記載の発泡充填具。この構成によれば、係合部と弾性変形部との干渉を抑制することができるため、弾性変形部の機能を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)は発泡充填具及びインナピラーを示す斜視図、(b)は(a)の1b−1b線断面図。
【図2】発泡充填具が固定されたインナピラーを示す斜視図。
【図3】発泡充填具が固定されたインナピラーの収容状態を示す模式図。
【図4】発泡充填具が装着された車両ピラーを示す斜視図。
【図5】図4の5−5線断面図。
【図6】(a)は発泡体が充填された車両ピラーを示す断面図、(b)は(a)の6b−6b線部分断面図。
【図7】(a)は変更例の発泡充填具及びインナピラーを示す斜視図、(b)は(a)の7b−7b線断面図。
【図8】変更例の発泡充填具が固定されたインナピラーの収容状態を示す模式図。
【図9】(a)は発泡体が充填された車両ピラーを示す断面図、(b)は(a)の9b−9b線部分断面図。
【図10】変更例の発泡充填具及びインナピラーを示す斜視図。
【図11】(a)は変更例の発泡充填具及びインナピラーを示す斜視図、(b)は変更例の発泡充填具が固定されたインナピラーの収容状態を示す模式図。
【図12】変更例の発泡充填具が装着された車両ピラーを示す断面図。
【図13】(a)、(b)及び(c)は、発泡部材及びその支持構造の変更例を示す断面図。
【図14】(a)及び(b)は発泡部材の支持構造における変更例を示す断面図。
【図15】(a)は変更例の支持部材を形成する帯状部材を示す斜視図、(b)は変更例の支持部材を示す斜視図。
【図16】(a)及び(b)は、帯状部材における連結手段の変更例を示す斜視図。
【図17】変更例の支持部材を示す斜視図。
【図18】(a)は従来の発泡充填具及びインナピラーを示す斜視図、(b)は従来の発泡充填具が固定されたインナピラーの収容状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0057】
D…軸線方向、H1…支持部材の周壁の高さ、H2…発泡部材の周壁の高さ、11…発泡充填具、12…発泡部材、12a…突出部、12b…内周壁面、13…支持部材、14…支持部、14a…連通路、14b…末端部、15…弾性変形部、15a…屈曲部、16…係合部、17…発泡体、18…案内突起、19…帯状部材、19a…連結凹部、19b…切欠部、19c…薄肉部、19d…段差部、19e…薄板部、19f…連結孔、19g…挿通孔、20…連結突部、21…連結突起、22…嵌合突部、23…嵌合凹部、61…インナピラー、61a…取付孔、62…アウタピラー、63…車両ピラー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部加熱により発泡する発泡部材と、同発泡部材を支持する支持部材とを備え、中空構造体を構成する構成部材に固定して使用され、前記発泡部材が発泡して形成される発泡体を前記中空構造体の内部に充填するための発泡充填具であって、
前記支持部材は、対向する支持部と、該対向する支持部の端部同士を連結するとともに同対向する支持部を接近させるべく弾性変形する弾性変形部とを備えた環状に形成されていることを特徴とする発泡充填具。
【請求項2】
前記発泡部材は、前記支持部材に対応した環状に形成されるとともに前記弾性変形部に追従して弾性変形するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の発泡充填具。
【請求項3】
前記発泡部材は、前記支持部材の外周壁面の少なくとも一部に支持され、前記支持部材において前記発泡部材が支持されている部分の周壁の高さは、前記発泡部材の周壁の高さと同じ又は前記発泡部材の周壁の高さよりも低く設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡充填具。
【請求項4】
前記発泡部材は、前記環状をなす支持部材の軸線方向に突出して前記支持部材に支持されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発泡充填具。
【請求項1】
外部加熱により発泡する発泡部材と、同発泡部材を支持する支持部材とを備え、中空構造体を構成する構成部材に固定して使用され、前記発泡部材が発泡して形成される発泡体を前記中空構造体の内部に充填するための発泡充填具であって、
前記支持部材は、対向する支持部と、該対向する支持部の端部同士を連結するとともに同対向する支持部を接近させるべく弾性変形する弾性変形部とを備えた環状に形成されていることを特徴とする発泡充填具。
【請求項2】
前記発泡部材は、前記支持部材に対応した環状に形成されるとともに前記弾性変形部に追従して弾性変形するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の発泡充填具。
【請求項3】
前記発泡部材は、前記支持部材の外周壁面の少なくとも一部に支持され、前記支持部材において前記発泡部材が支持されている部分の周壁の高さは、前記発泡部材の周壁の高さと同じ又は前記発泡部材の周壁の高さよりも低く設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡充填具。
【請求項4】
前記発泡部材は、前記環状をなす支持部材の軸線方向に突出して前記支持部材に支持されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発泡充填具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−38491(P2007−38491A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224282(P2005−224282)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000101905)イイダ産業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000101905)イイダ産業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
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