発泡成形部材の製造方法および製造装置
【課題】硬さが全体的に均一な発泡体を成形し得ると共に、アンダーカット形状となる発泡体を成形可能とする。
【解決手段】ベース成形型10と、発泡体成形型30と、ベース成形型10および発泡体成形型30の間の空間において該発泡体成形型30の開閉方向と交差する側部に臨む第1スライドコア型部40および第2スライドコア型部50とでキャビティを画成する。キャビティ内に発泡原料を注入した後、発泡原料の外側にスキン層Sが形成されたら、発泡体成形型30を開放すると共に、各スライドコア型部40,50をベース成形型10から離間する方向へ移動する。これにより発泡体Fは、発泡体成形型30側および各スライドコア型部40,50側が開放した状態で成形される。
【解決手段】ベース成形型10と、発泡体成形型30と、ベース成形型10および発泡体成形型30の間の空間において該発泡体成形型30の開閉方向と交差する側部に臨む第1スライドコア型部40および第2スライドコア型部50とでキャビティを画成する。キャビティ内に発泡原料を注入した後、発泡原料の外側にスキン層Sが形成されたら、発泡体成形型30を開放すると共に、各スライドコア型部40,50をベース成形型10から離間する方向へ移動する。これにより発泡体Fは、発泡体成形型30側および各スライドコア型部40,50側が開放した状態で成形される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形部材を製造する製造方法および該製造方法を実施する製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13(a)は、インストルメントパネルやフロアコンソール等の車両内装部材または該車両内装部材の構成部材として用いられる発泡成形部材の一例を、一部破断して示した概略斜視図である。この発泡成形部材W1は、所要形状にインジェクション形成された合成樹脂製の基材Pと、該基材Pの外面に装着された発泡体Fとを備えている。図13(b)に示すように、基材Pは、全体的に湾曲した略矩形状をなす本体部P1と、本体部P1における3辺の外縁に沿って延在して該本体部P1と略直角に折曲した第1〜第3の外縁部P2,P3,P4とを有している。また発泡体Fは、基材Pの本体部P1を被覆する外面発泡部F1と、該基材Pの各外縁部P2,P3,P4を被覆する第1〜第3の端面発泡部F2,F3,F4とを有している。
【0003】
図14は、図13に示した発泡成形部材W1を製造する製造装置M1の概略構成図である。この製造装置M1は、基材Pおよび発泡体Fを連続して成形し得るようになっており、基材Pおよび発泡体Fの成形に共通に使用されるベース成形型70と、基材Pの成形に使用される基材成形型80と、発泡体Fの成形に使用される発泡体成形型90とを備えている。すなわち製造装置M1は、ベース成形型70と基材成形型80とを型閉めすることでインジェクション成形型として構成され(図15)、両成形型70,80内に画成されるキャビティC1内に樹脂原料を射出することで基材Pの成形が可能である。また製造装置M1は、ベース成形型70と発泡体成形型90とを型閉めすることで発泡成形型として構成され(図16)、基材Pをセットしたベース成形型70と発泡体成形型90との間に画成されるキャビティC2に発泡原料を射出することで発泡体Fの発泡成形が可能となっている。なお発泡体成形型90は、コアバック機構(図示せず)を備えており、ベース成形型70に型閉めした状態である原料注入位置(図16)から、該原料注入位置よりベース成形型70から離間した発泡体成形位置(図17参照)までキャビティC2から後退(コアバック)して、キャビティC2の容積を密閉状態で拡大させ得る。従って、発泡体Fを発泡成形するためには、先ず、ベース成形型70と発泡体成形型90とを型閉めして該発泡体成形型90を原料注入位置に保持した状態で、キャビティC1内に発泡原料Uを射出すると共に該発泡原料Uを加圧状態に保持する。次いで、発泡体成形型90を発泡体成形位置までコアバックさせると、加圧されていた発泡原料Uが減圧するので、該発泡原料U内の発泡剤が発泡して発泡体Fが成形され、基材Pの一面に該発泡体Fが装着された発泡成形部材W1の製造が可能となる。このような発泡成形部材の製造方法は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平11−77737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図14〜図17に示した製造装置M1は、ベース成形型70に対する発泡体成形型90のコアバック方向が、ベース成形型70に対する発泡体成形型90の型開き方向だけとなっている。従ってキャビティC2は、図16および図17から明らかなように、基材Pの本体部P1および発泡体成形型90の該本体部P1と対面する第1成形面92の間隔はコアバック後に拡大するが、基材Pの第1〜第3の外縁部P2,P3,P4および発泡体成形型90の該外縁部P2,P3,P4と対面する第2成形面94の間隔は、コアバック後も殆ど拡大しない。すなわち、前記製造装置M1を使用した従来の発泡成形部材の製造方法では、発泡体成形型90を発泡体成形位置にコアバックさせると、発泡原料Uにおける本体部P1と第1成形面92との間の部分は発泡が進行するが、該発泡原料Uにおける各外縁部P2,P3,(P4)と第2成形面94との間の部分は発泡することなく硬化してしまう。従って、発泡成形された発泡体Fは、該発泡体成形型90の開閉方向と交差する側部に臨む第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4が外面発泡部F1より硬くなり、該発泡体Fの硬さが全体的に均一にならない不都合が発生していた。
【0005】
また、図14〜図17に示した製造装置M1は、発泡体Fの対向する第1および第2の各端面発泡部F2,F3、すなわち発泡体成形型90の開放方向と交差する側部に臨む第1および第2の各端面発泡部F2,F3の外面が、発泡体成形型90のコアバック方向において平行な場合や、外面発泡部F1に近づくにつれて互いに近接するテーパ状の場合には、該発泡体成形型90のコアバックが許容される。しかるに、対向する第1および第2の各端面発泡部F2,F3の外面が、外面発泡部F1に近づくにつれて互いに離間する逆テーパ状の場合には、これら端面発泡部F2,F3が発泡体成形型90のコアバック方向においてアンダーカット形状になり、該発泡体成形型90のコアバックおよび型開きが不可能である。すなわち従来の製造装置M1は、発泡体Fの外面形状が発泡体成形型90のコアバック方向においてアンダーカット形状となる場合に、該発泡体Fの成形が困難な不都合もあった。
【0006】
従って本発明では、硬さが全体的に均一な発泡体を発泡成形し得ると共に、第2成形型の後退方向においてアンダーカット形状となる発泡体を成形し得る発泡成形部材の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、発泡体を備える発泡成形部材の製造方法であって、
第1成形型と、前記第1成形型に対し開閉可能な第2成形型と、第1成形型と第2成形型との間の空間において該第2成形型の開閉方向と交差する側部に臨むコア型とでキャビティを画成し、
前記キャビティ内に発泡原料を注入し、
前記発泡原料の外側にスキン層が形成されたら、前記第2成形型を開放すると共に、前記コア型を前記第1成形型から離間する方向へ移動し、
前記発泡原料を第2成形型側およびコア型側が開放した状態で発泡させて前記発泡体を成形することを特徴とする。
【0008】
従って、請求項1に係る発明によれば、発泡体の発泡成形時に、第2成形型を開放すると共に、コア型を第1成形型から離間する方向へ移動させ、発泡原料を第2成形型側およびコア型側が開放した状態で発泡させるので、第2成形型の開放方向と交差する側部に臨む部分の発泡が規制されない。これにより、発泡体の全体を均一に発泡させることができ、硬さが全体的に均一な発泡体を成形し得る。また、コア型を側部から離間させるので、該側部に臨む部分が第2成形型の開放方向においてアンダーカット形状となる発泡体も成形し得る。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記第1成形型に基材をセットして、前記キャビティに臨む前記基材に前記発泡体を積層することを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、第1成形型にセットした基材に、硬さが全体的に均一な発泡体を積層した状態で成形し得る。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記発泡体の発泡成形前に、前記第1成形型と該第1成形型に対し開閉可能な第3成形型とを型閉めして、両成形型により画成されたキャビティ内で前記基材を成形することを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、基材の成形、発泡体の発泡成形、基材に対する発泡体の装着の各工程が連続的になされ、基材および発泡体から構成される発泡成形部材の製造作業の効率化が図られる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、発泡体を備える発泡成形部材の製造装置であって、
第1成形型と、
前記第1成形型に対し開閉可能に配設される第2成形型と、
前記第1成形型または第2成形型に該第2成形型の開閉方向と交差する方向に移動可能に配設され、両成形型間の空間において該第2成形型の開閉方向と交差する側部に臨んで両成形型と共にキャビティを画成するコア型とを備え、
前記第2成形型およびコア型を、前記キャビティへの発泡原料の注入後に、該発泡原料の外面から離間した状態を保つよう前記第1成形型から離間する方向へ開放および移動することを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、発泡体の発泡成形時に、第2成形型およびコア型が発泡原料の外面から離間した状態に保持されるので、発泡原料を第2成形型側およびコア型側が開放した状態で発泡させ得る。これにより、発泡体の全体を均一に発泡させることを可能とし、硬さが全体的に均一な発泡体を成形することを可能とする。また、コア型が側部から離間するので、該側部に臨む部分が第2成形型の開放方向においてアンダーカット形状となる発泡体の成形も可能である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記第1成形型と型閉めして、基材を成形するキャビティを画成する第3成形型を備えたことを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、基材の成形、発泡体の発泡成形、基材に対する発泡体の装着の各工程を連続的に行なうことを可能とし、基材および発泡体から構成される発泡成形部材の製造作業の効率化を図り得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る発泡成形部材の製造方法によれば、発泡原料を第2成形型側およびコア型側が開放した状態で発泡させるので、第2成形型の開放方向と交差する側部に臨む部分の発泡が規制されない。従って、発泡体の全体を均一に発泡させることができ、硬さが全体的に均一な発泡体を成形し得る。また、側部に臨む部分が第2成形型の開放方向においてアンダーカット形状となる発泡体も成形し得る。
別の発明に係る発泡成形部材の製造装置によれば、発泡原料を第2成形型側およびコア型側が開放した状態で発泡させ得るので、第2成形型の開放方向と交差する側部に臨む部分の発泡を規制しない。従って、発泡体の全体を均一に発泡させることを可能とし、硬さが全体的に均一な発泡体を成形することを可能とする。また、側部に臨む部分が第2成形型の開放方向においてアンダーカット形状となる発泡体を成形することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る発泡成形部材の製造方法および製造装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。実施例では、図10に示す発泡成形部材Wを製造する製造装置および製造方法を例示して説明する。なお実施例では、図3の左右方向を製造装置Mの左右方向、図3の上下方向を製造装置Mの前後方向とし、同図の下方を該製造装置Mの前側とする。
【実施例】
【0016】
図10(a)に示す発泡成形部材Wは、インストルメントパネルやフロアコンソール等の車両内装部材または該車両内装部材の構成部材として用いられ、所要形状にインジェクション形成された合成樹脂製の基材Pと、該基材Pの外面に装着された発泡体Fとを備えている。基材Pは、全体的に湾曲した略矩形状をなす本体部P1と、本体部P1における3辺の外縁に沿って延在して該本体部P1と略直角に折曲した第1〜第3の各外縁部P2,P3,P4とを有している。また発泡体Fは、基材Pの本体部P1を被覆する外面発泡部F1と、該基材Pの第1〜第3の各外縁部P2,P3,P4を被覆する第1〜第3の各端面発泡部(側部)F2,F3,F4とを有している。
【0017】
発泡体Fは、図10(a)に示すように、外面発泡部F1の長手方向において該外面発泡部F1を挟んで対向する第1および第2の端面発泡部F2,F3が、図10(b)に示すように厚さ方向に破断した状態において、各々の外面が該外面発泡部F1から離間するにつれて互いに近接するよう傾斜している。また、外面発泡部F1の長手方向に延在する第3の端面発泡部F4は、図10(c)に示すように厚さ方向に破断した状態において、外面が該外面発泡部F1から離間するにつれて基材Pの裏面側へ傾斜している。すなわち、第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4は、図8および図9に示すように、発泡体Fを成形する製造装置Mにおける発泡体成形型30の開閉方向と交差する側部に臨む部分であり、該発泡体成形型30の開放方向においてアンダーカット形状をなしている。
【0018】
実施例に係る発泡成形部材の製造方法を実施する製造装置Mは、図14に示す従来の製造装置M1と同様に、基材Pおよび発泡体Fを連続して成形し得る。すなわち製造装置Mは、基材Pおよび発泡体Fの成形に共通に使用されるベース成形型(第1成形型)10と(図1、図2)、基材Pの成形に使用される基材成形型(第3成形型)20と(図4、図5)、発泡体Fの成形に使用される発泡体成形型(第2成形型)30(図1、図2)とを備えている。すなわち製造装置Mは、ベース成形型10と基材成形型20とを型閉めすることでインジェクション成形型に構成され、両成形型10,20内に画成されるキャビティC1内に樹脂原料を射出し、該樹脂原料を固化させることで基材Pが成形される(図4、図5)。また製造装置Mは、ベース成形型10と発泡体成形型30とを型閉めすることで発泡成形型として構成され、キャビティC2における基材Pと発泡体成形型30との間に発泡原料を射出し、該発泡原料を発泡させることで発泡体Fを基材Pに積層することが可能である(図6〜図9)。
【0019】
第1成形型としてのベース成形型10は、図4〜図7に示すように、基材成形型20および発泡体成形型30が型閉めされる上側に、略矩形状に突出した突出部12が形成されている。そして、突出部12の上面14は、ベース成形型10と基材成形型20とを型閉めして基材Pを成形する際には、第1キャビティC1に臨んで基材成形面として機能する(図4、図5)。また突出部12の上面14は、ベース成形型10と発泡体成形型30とを型閉めして発泡体Fを成形する際には、基材Pをセットする基材セット面として機能する(図6、図7)。
【0020】
第3成形型としての基材成形型20は、図4および図5に示すように、ベース成形型10に対向する下側に、略矩形状に陥凹した陥凹部22が形成されている。そして、陥凹部22の下方を指向する底面(上面)に、基材Pを成形するための基材成形面24が形成されている。従って、ベース成形型10と基材成形型20とを型閉めすることで、両成形型10,20の上面14および基材成形面24により、基材Pを成形するためのキャビティである第1キャビティC1が画成される。
【0021】
第2成形型としての発泡体成形型30は、図6および図7に示すように、ベース成形型10に型閉めした際に、該ベース成形型10に装着された基材Pが臨むと共に発泡原料Uを注入するためのキャビティである第2キャビティC2を画成する。この発泡体成形型30は、発泡体成形型30に固定した状態に配設される固定コア型部32と、該発泡体成形型30に移動可能に配設される第1スライドコア型部(コア型)40、第2スライドコア型部(コア型)50および第3スライドコア型部(コア型)60を備えている。そして、基材Pがセットされたベース成形型10と発泡体成形型30とを型閉めすると、固定コア型部32、第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60および該ベース成形型10により、前述した第2キャビティC2が密閉状態に画成される。
【0022】
固定コア型部32は、発泡体成形型30に固定した状態で配設されている。従って固定コア型部32は、発泡体成形型30の開閉動作により、図6および図7に示す原料注入位置および図8および図9に示す発泡体成形位置の間で移動すると共に、原料注入位置および発泡体成形位置とに停止保持される。なお固定コア型部32は、発泡原料Uの発泡前における発泡体Fの外面発泡部F1に対応し、該外面発泡部F1に外面形状を付与する。
【0023】
コア型である第1スライドコア型部40は、発泡体成形型30のベース成形型10を指向する部位にスライドレール42,42を介して移動可能に配設され、発泡体成形型30の外部壁面に配設したアクチュエータからなる第1作動手段44のロッド46に連結されている。これにより第1スライドコア型部40は、型閉めしたベース成形型10と発泡体成形型30との間の空間において該発泡体成形型30の開閉方向と交差する左側の側部に臨み、第1作動手段44の作動により図6に示す原料注入位置および図8に示す発泡体成形位置の間を、発泡体成形型30の開放方向と交差する方向(左右方向)へ移動する。そして第1スライドコア型部40は、原料注入位置と発泡体成形位置とに停止保持される。なお第1スライドコア型部40は、発泡原料Uの発泡前における発泡体Fの第1の端面発泡部F2に対応し、該第1の端面発泡部F2に外面形状を付与する。
【0024】
コア型である第2スライドコア型部50は、発泡体成形型30のベース成形型10を指向する部位において前記第1スライドコア型部40と対向する位置に、スライドレール52,52を介して移動可能に配設され、発泡体成形型30の外部壁面に配設したアクチュエータからなる第2作動手段54のロッド56に連結されている。これにより第2スライドコア型部50は、型閉めしたベース成形型10と発泡体成形型30との間の空間において該発泡体成形型30の開閉方向と交差する右側の側部に臨み、第2作動手段54の作動により図6に示す原料注入位置および図8に示す発泡体成形位置の間を、発泡体成形型30の開放方向と交差する方向(左右方向)へ移動する。そして第2スライドコア型部50は、原料注入位置と発泡体成形位置とに停止保持される。なお第2スライドコア型部50は、発泡原料Uの発泡前における発泡体Fの第2の端面発泡部F3に対応し、該第2の端面発泡部F3に外面形状を付与する。
【0025】
コア型である第3スライドコア型部60は、発泡体成形型30のベース成形型10を指向する部位にスライドレール62,62を介して移動可能に配設され、発泡体成形型30の外部壁面に配設したアクチュエータからなる第3作動手段64のロッド66に連結されている。これにより第3スライドコア型部60は、型閉めしたベース成形型10と発泡体成形型30との間の空間において該発泡体成形型30の開閉方向と交差する後側の側部に臨み、第3作動手段64の作動により図7に示す原料注入位置および図9に示す発泡体成形位置の間を、発泡体成形型30の開放方向と交差する方向(前後方向)へ移動する。そして第3スライドコア型部60は、原料注入位置と発泡体成形位置とに停止保持される。なお第3スライドコア型部60は、発泡原料Uの発泡前における発泡体Fの第3の端面発泡部F4に対応し、該第3の端面発泡部F4に外面形状を付与する。
【0026】
前述した固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60は、図6および図7に示すように、各々が原料注入位置に停止保持することで、ベース成形型10と共に密閉状態の第2キャビティC2を画成する。また、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60は、図8および図9に示すように、発泡体成形位置に移動して停止保持することで、ベース成形型10(基材P)から離間して発泡原料Uの外面から離間した状態を保つと共に、発泡成形される発泡体Fの外面に接触しないよう構成されている。すなわち固定コア型部32は、発泡体成形位置に移動させると、発泡成形される発泡体Fにおける外面発泡部F1の外面より外側へ離間する。第1スライドコア型部40は、発泡体成形位置に移動させると、発泡成形される発泡体Fにおける第1の端面発泡部F2の外面より離間する。また第2スライドコア型部50は、発泡体成形位置に移動させると、発泡成形される発泡体Fにおける第2の端面発泡部F3の外面より離間する。更に第3スライドコア型部60は、発泡体成形位置に移動させると、発泡成形される発泡体Fにおける第3の端面発泡部F4の外面より離間する。従って、実施例の製造装置Mでは、発泡原料Uから発泡体Fを発泡成形する際に、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60が、該発泡原料Uの発泡を規制しない。
【0027】
次に、前述のように構成された製造装置Mを使用した実施例の発泡成形部材の製造方法につき、図4〜図9を引用して説明する。
【0028】
先ず、図4および図5に示すように、ベース成形型10と基材成形型20とを型閉めする。そして、図示省略した注入口を介して両成形型10,20内に画成された第1キャビティC1内へ、基材成形用の樹脂原料を注入する。そして、第1キャビティC1内に注入した樹脂原料を固化させ、該第1キャビティC1内で基材Pを成形する。基材Pの成形が完了したら、基材成形型20をベース成形型10から離間させて型開きする。
【0029】
次いで、成形された基材Pがセットされているベース成形型10と発泡体成形型30とを型閉めする。なお、第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60は、ベース成形型10と発泡体成形型30の型閉め前に夫々を発泡体成形位置に保持しておいて、型閉め完了後に夫々を原料注入位置に移動する。但し、第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60は、ベース成形型10と発泡体成形型30の型閉め前に夫々を原料注入位置に停止保持させたもとで、両成形型10,30を型閉めするようにしてもよい。
【0030】
ベース成形型10と発泡体成形型30とを型閉めしたら、図6および図7に示すように、図省略した注入口を介して、基材Pがセットされたベース成形型10、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60により画成された第2キャビティC2内へ、発泡体成形用の発泡原料Uを注入する。なお、発泡原料Uの注入量は、第2キャビティC2の基材Pを除いた内容積と同量とされる。ここで発泡原料Uは、例えばポリプロピレン:ゴム分:油分(流動パラフィン等)の配合比率を50:100:10としたオレフィン系の熱可塑性エラストマ(TPO)に、適宜の発泡剤を3重量%程度添加されたものが使用される。
【0031】
第2キャビティC2内に注入された発泡原料Uは、発泡体成形型30の冷却されている固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60に接触した部分や、基材Pに接触した部分から硬化し始め、この部分にソリット化したスキン層Sが形成される。また、第2キャビティC2内へ注入された発泡原料Uが該第2キャビティC2内を流動する際に発泡ガスのロスがない場合には、発泡剤が分解して発生した全てのガスは圧縮されて当該発泡原料U内に含有された状態となっている。
【0032】
第2キャビティC2内に注入された発泡原料Uの外表面に所要厚のスキン層Sが形成されたら、図8および図9に示すように、第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60を原料注入位置から発泡体成形位置へ後退移動させる。また、これらの後退移動と同時または適宜時間差を以て、発泡体成形型30を同図の上方へ所要量だけ移動させ、固定コア型部32を原料注入位置から発泡体成形位置へ後退移動させる。これにより、発泡原料Uに付与されていた圧力が低下するので、該発泡原料U内で圧縮状態で含有されていたガスが順次気泡化して大小多数の空隙が形成され、発泡体Fの体積が増加してスキン層Sの内側に発泡層Faが形成される。なお、スキン層Sの部分では、ガスを閉じ込めた状態で樹脂が固化しているので、このスキン層Sの部分ではガスは気泡化しない。
【0033】
前述した発泡原料Uの発泡時には、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60が、該発泡原料Uの外面から離間した状態に保たれている。従って発泡原料Uは、固定コア型部32側および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60側が開放した状態で発泡され、発泡体成形型30により該発泡原料Uの発泡が規制されない。従って、発泡原料Uは全体が均一に発泡するようになり、成形された発泡体Fの発泡層Faは全体が均一の硬さに形成される。すなわち、発泡体Fの外面発泡部F1および第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4は、夫々が均一の硬さに形成される。なお発泡原料Uは、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60により形状が付与されたスキン層Sの内側で発泡するので、内側から該スキン層Sの全体を均一に押圧する。従って、成形された発泡体Fは、外部意匠面が部分的に膨出したり陥凹する等の不都合が殆ど発生しない。
【0034】
発泡原料Uの発泡完了により、発泡体Fは基材Pの一面に装着された状態で成形される。従って、発泡体成形型30をベース成形型10から離間して型開きすることで、基材Pに発泡体Fが積層された図10の発泡成形部材Wが成形される。
【0035】
前述した実施例の発泡成形部材の製造方法では、発泡体成形型30に配設した固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60を基材Pから離間する方向へ移動させるため、第2キャビティC2内に注入した発泡原料Uを、発泡体成形型30(固定コア型部32)側および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60側が開放した状態で発泡させ得る。そして、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60を、成形予定の発泡体Fの外面より離間した位置まで後退移動させるので、該発泡体Fの発泡が発泡体成形型30により規制されない。従って、発泡体Fの外面発泡部F1の発泡は勿論、発泡体成形型30の開放方向と交差する側部に臨む部分である第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4の発泡が規制されず、発泡体Fの全体を均一に発泡させることができ、硬さが全体的に均一な発泡体Fを成形し得る。しかも、発泡体Fの第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4が、発泡体成形型30の開放方向においてアンダーカット形状となっていても、外面発泡部F1および各端面発泡部F2,F3,F4を均一に発泡させることができ、外面発泡部F1および各端面発泡部F2,F3,F4の硬さが均一となるように該発泡体Fを成形し得る。また、ベース成形型10と基材成形型20とで成形した基材Pを該ベース成形型10にセットした状態で発泡体Fの発泡成形を行なうので、発泡体Fの発泡成形および該発泡体Fの基材Pへの装着が同時になされ、発泡体Fを構成部材とする発泡成形部材Wの製造作業の効率化を図り得る。
【0036】
また、前述した実施例の製造装置Mによれば、発泡体Fの発泡成形時に、発泡体成形型30に配設した固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60が発泡原料Uから離間した状態に保持されるので、該発泡原料Uを発泡体成形型30(固定コア型部32)側および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60側が開放した状態で発泡することを可能とする。従って、発泡体Fの外面発泡部F1の発泡は勿論、発泡体成形型30の開放方向と交差する側部に臨む部分である第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4の発泡を規制しないので、発泡体Fの全体を均一に発泡させることを可能とし、硬さが全体的に均一な発泡体Fを成形することを可能とする。しかも、発泡体Fの第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4が、発泡体成形型30の開放方向においてアンダーカット形状となっていても、外面発泡部F1および各端面発泡部F2,F3,F4を均一に発泡することを可能とする。また、ベース成形型10と基材成形型20とで成形した基材Pを該ベース成形型10にセットした状態で発泡体Fの発泡成形を行なうことが可能であり、発泡体Fの発泡成形および該発泡体Fの基材Pへの装着が同時になされ、発泡体Fを構成部材とする発泡成形部材Wの製造作業の効率化に寄与し得る。
【0037】
(変更例)
(1)本願が対象とする発泡成形部材の製造方法は、ベース成形型10に基材Pをセットした状態で発泡体Fを発泡成形するものに限定されず、ベース成形型10および発泡体成形型30により発泡体Fを単体で発泡成形するものであってもよい。すなわち、図11および図12に示すように、先ずベース成形型10と発泡体成形型30とを型閉めして、該ベース成形型10、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60により密閉されたキャビティC2を画成し、このキャビティC2内に発泡原料Uを注入する。そして、発泡原料Uにおける発泡体成形型30の固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60に接触する部分にスキン層Sが形成されたら、発泡体成形型30を開放して固定コア型部32をベース成形型10から離間させると共に、第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60をベース成形型10から離間する方向へ移動させ、固定コア型部32および各スライドコア型部40,50,60を発泡原料Uの外面から離間した状態に保つ。これにより、キャビティC2に注入した発泡原料Uを、発泡体成形型30(固定コア型部32)側および各スライドコア型部40,50,60側が開放した状態で発泡させ、発泡体Fを単体で成形する。
(2)本願が対象とする発泡成形部材の製造方法は、別の基材成形型で成形した基材Pをベース成形型10にセットしたもとで、ベース成形型10および発泡体成形型30により発泡体Fを該基材Pの一面に成形するようにしてもよい。
(3)実施例では、発泡体Fにおける第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4が、発泡体成形型30の開放方向においてアンダーカット形状である場合を例示したが、本願の製造方法および製造装置は、各端面発泡部F2,F3,F4がアンダーカット形状ではない発泡体Fであっても、発泡体Fの全体を均一に発泡させて、硬さが全体的に均一な発泡体Fを成形し得る。
(4)本願の発泡成形部材の製造方法および製造装置は、実施例に例示した形状の発泡成形部材Wだけでなく、様々な形状・サイズの発泡成形部材Wを成形し得る。そして、コア型としてのスライドコア型部の配設数および配設位置は実施例で示した形態に限定されず、成形予定の発泡体Fの形状、サイズに応じて配設数および配設位置が変更される。
(5)実施例の製造装置Mでは、コア型である第1〜第3のスライドコア型部40,50,60が発泡体成形型30に移動可能に配設した構成となっているが、コア型はベース成形型10に移動可能に配設した構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例の製造装置におけるベース成形型および発泡体成形型を、図3のI−I線で破断して示す縦断正面図である。
【図2】実施例の製造装置におけるベース成形型および発泡体成形型を、図3のII−II線で破断して示す縦断側面図である。
【図3】発泡体成形型の平面図である。
【図4】ベース成形型と基材成形型とを型閉めして画成された第1キャビティ内で基材を成形した状態を示す縦断正面図である。
【図5】図4の状態を示す縦断側面図である。
【図6】ベース成形型と発泡体成形型とを型閉めして画成された第2キャビティ内に発泡原料を注入した状態を示す縦断正面図である。
【図7】図6の状態を示す縦断側面図である。
【図8】発泡体成形型をベース成形型から離間させて、発泡体成形型に設けた固定コア型部および第1〜第3のスライドコア型部を、成形予定の発泡体の外面より離間した発泡体成形位置へ後退させ、発泡体を成形した状態を示す縦断正面図である。
【図9】図8の状態を示す縦断側面図である。
【図10】(a)は、実施例の製造装置を使用した製造方法により製造される発泡体および基材からなる発泡成形部材を一部破断して示す斜視図であり、(b)は(a)のXb−Xb線断面図であり、(c)は(a)のXc−Xc線断面図である。
【図11】変更例の製造装置におけるベース成形型および発泡体成形型により、発泡体を単体で成形する製造方法を概略的に示す縦断正面図であって、ベース成形型と発泡体成形型とを型閉めして画成された第2キャビティ内に発泡原料を注入した状態を示している。
【図12】図11に示す製造装置において、発泡体成形型をベース成形型から離間させて、発泡体成形型に設けた固定コア型部および第1〜第3のスライドコア型部を、成形予定の発泡体の外面より離間した発泡体成形位置へ後退させ、発泡体を単体で成形した状態を示す縦断正面図である。
【図13】(a)は、基材および発泡体から構成される発泡成形部材を一部破断して示す概略斜視図であり、(b)は、(a)に示す発泡成形部材の背面図である。
【図14】ベース成形型、基材成形型および発泡体成形型からなる従来の製造装置を概略的に示す説明図である。
【図15】ベース成形型と基材成形型とを型閉めして画成された第1キャビティ内で基材を成形した状態を示す縦断正面図である。
【図16】基材をセットしたベース成形型と発泡体成形型とを型閉めして画成された第2キャビティ内に発泡原料を注入した状態を示す縦断正面図である。
【図17】発泡体成形型をコアバックさせ、容積が拡大した密閉状態の第2キャビティ内で発泡体を発泡成形した状態を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ベース成形型(第1成形型),20 基材成形型(第3成形型)
30 発泡体成形型(第2成形型),40 第1スライドコア型部(コア型)
50 第2スライドコア型部(コア型),60 第3スライドコア型部(コア型)
C1 第1キャビティ(キャビティ),C2 第2キャビティ(キャビティ)
F 発泡体,F2 端面発泡部(側部),F3 端面発泡部(側部)
F4 端面発泡部(側部),P 基材,S スキン層,U 発泡原料
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形部材を製造する製造方法および該製造方法を実施する製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13(a)は、インストルメントパネルやフロアコンソール等の車両内装部材または該車両内装部材の構成部材として用いられる発泡成形部材の一例を、一部破断して示した概略斜視図である。この発泡成形部材W1は、所要形状にインジェクション形成された合成樹脂製の基材Pと、該基材Pの外面に装着された発泡体Fとを備えている。図13(b)に示すように、基材Pは、全体的に湾曲した略矩形状をなす本体部P1と、本体部P1における3辺の外縁に沿って延在して該本体部P1と略直角に折曲した第1〜第3の外縁部P2,P3,P4とを有している。また発泡体Fは、基材Pの本体部P1を被覆する外面発泡部F1と、該基材Pの各外縁部P2,P3,P4を被覆する第1〜第3の端面発泡部F2,F3,F4とを有している。
【0003】
図14は、図13に示した発泡成形部材W1を製造する製造装置M1の概略構成図である。この製造装置M1は、基材Pおよび発泡体Fを連続して成形し得るようになっており、基材Pおよび発泡体Fの成形に共通に使用されるベース成形型70と、基材Pの成形に使用される基材成形型80と、発泡体Fの成形に使用される発泡体成形型90とを備えている。すなわち製造装置M1は、ベース成形型70と基材成形型80とを型閉めすることでインジェクション成形型として構成され(図15)、両成形型70,80内に画成されるキャビティC1内に樹脂原料を射出することで基材Pの成形が可能である。また製造装置M1は、ベース成形型70と発泡体成形型90とを型閉めすることで発泡成形型として構成され(図16)、基材Pをセットしたベース成形型70と発泡体成形型90との間に画成されるキャビティC2に発泡原料を射出することで発泡体Fの発泡成形が可能となっている。なお発泡体成形型90は、コアバック機構(図示せず)を備えており、ベース成形型70に型閉めした状態である原料注入位置(図16)から、該原料注入位置よりベース成形型70から離間した発泡体成形位置(図17参照)までキャビティC2から後退(コアバック)して、キャビティC2の容積を密閉状態で拡大させ得る。従って、発泡体Fを発泡成形するためには、先ず、ベース成形型70と発泡体成形型90とを型閉めして該発泡体成形型90を原料注入位置に保持した状態で、キャビティC1内に発泡原料Uを射出すると共に該発泡原料Uを加圧状態に保持する。次いで、発泡体成形型90を発泡体成形位置までコアバックさせると、加圧されていた発泡原料Uが減圧するので、該発泡原料U内の発泡剤が発泡して発泡体Fが成形され、基材Pの一面に該発泡体Fが装着された発泡成形部材W1の製造が可能となる。このような発泡成形部材の製造方法は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平11−77737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図14〜図17に示した製造装置M1は、ベース成形型70に対する発泡体成形型90のコアバック方向が、ベース成形型70に対する発泡体成形型90の型開き方向だけとなっている。従ってキャビティC2は、図16および図17から明らかなように、基材Pの本体部P1および発泡体成形型90の該本体部P1と対面する第1成形面92の間隔はコアバック後に拡大するが、基材Pの第1〜第3の外縁部P2,P3,P4および発泡体成形型90の該外縁部P2,P3,P4と対面する第2成形面94の間隔は、コアバック後も殆ど拡大しない。すなわち、前記製造装置M1を使用した従来の発泡成形部材の製造方法では、発泡体成形型90を発泡体成形位置にコアバックさせると、発泡原料Uにおける本体部P1と第1成形面92との間の部分は発泡が進行するが、該発泡原料Uにおける各外縁部P2,P3,(P4)と第2成形面94との間の部分は発泡することなく硬化してしまう。従って、発泡成形された発泡体Fは、該発泡体成形型90の開閉方向と交差する側部に臨む第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4が外面発泡部F1より硬くなり、該発泡体Fの硬さが全体的に均一にならない不都合が発生していた。
【0005】
また、図14〜図17に示した製造装置M1は、発泡体Fの対向する第1および第2の各端面発泡部F2,F3、すなわち発泡体成形型90の開放方向と交差する側部に臨む第1および第2の各端面発泡部F2,F3の外面が、発泡体成形型90のコアバック方向において平行な場合や、外面発泡部F1に近づくにつれて互いに近接するテーパ状の場合には、該発泡体成形型90のコアバックが許容される。しかるに、対向する第1および第2の各端面発泡部F2,F3の外面が、外面発泡部F1に近づくにつれて互いに離間する逆テーパ状の場合には、これら端面発泡部F2,F3が発泡体成形型90のコアバック方向においてアンダーカット形状になり、該発泡体成形型90のコアバックおよび型開きが不可能である。すなわち従来の製造装置M1は、発泡体Fの外面形状が発泡体成形型90のコアバック方向においてアンダーカット形状となる場合に、該発泡体Fの成形が困難な不都合もあった。
【0006】
従って本発明では、硬さが全体的に均一な発泡体を発泡成形し得ると共に、第2成形型の後退方向においてアンダーカット形状となる発泡体を成形し得る発泡成形部材の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、発泡体を備える発泡成形部材の製造方法であって、
第1成形型と、前記第1成形型に対し開閉可能な第2成形型と、第1成形型と第2成形型との間の空間において該第2成形型の開閉方向と交差する側部に臨むコア型とでキャビティを画成し、
前記キャビティ内に発泡原料を注入し、
前記発泡原料の外側にスキン層が形成されたら、前記第2成形型を開放すると共に、前記コア型を前記第1成形型から離間する方向へ移動し、
前記発泡原料を第2成形型側およびコア型側が開放した状態で発泡させて前記発泡体を成形することを特徴とする。
【0008】
従って、請求項1に係る発明によれば、発泡体の発泡成形時に、第2成形型を開放すると共に、コア型を第1成形型から離間する方向へ移動させ、発泡原料を第2成形型側およびコア型側が開放した状態で発泡させるので、第2成形型の開放方向と交差する側部に臨む部分の発泡が規制されない。これにより、発泡体の全体を均一に発泡させることができ、硬さが全体的に均一な発泡体を成形し得る。また、コア型を側部から離間させるので、該側部に臨む部分が第2成形型の開放方向においてアンダーカット形状となる発泡体も成形し得る。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記第1成形型に基材をセットして、前記キャビティに臨む前記基材に前記発泡体を積層することを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、第1成形型にセットした基材に、硬さが全体的に均一な発泡体を積層した状態で成形し得る。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記発泡体の発泡成形前に、前記第1成形型と該第1成形型に対し開閉可能な第3成形型とを型閉めして、両成形型により画成されたキャビティ内で前記基材を成形することを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、基材の成形、発泡体の発泡成形、基材に対する発泡体の装着の各工程が連続的になされ、基材および発泡体から構成される発泡成形部材の製造作業の効率化が図られる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、発泡体を備える発泡成形部材の製造装置であって、
第1成形型と、
前記第1成形型に対し開閉可能に配設される第2成形型と、
前記第1成形型または第2成形型に該第2成形型の開閉方向と交差する方向に移動可能に配設され、両成形型間の空間において該第2成形型の開閉方向と交差する側部に臨んで両成形型と共にキャビティを画成するコア型とを備え、
前記第2成形型およびコア型を、前記キャビティへの発泡原料の注入後に、該発泡原料の外面から離間した状態を保つよう前記第1成形型から離間する方向へ開放および移動することを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、発泡体の発泡成形時に、第2成形型およびコア型が発泡原料の外面から離間した状態に保持されるので、発泡原料を第2成形型側およびコア型側が開放した状態で発泡させ得る。これにより、発泡体の全体を均一に発泡させることを可能とし、硬さが全体的に均一な発泡体を成形することを可能とする。また、コア型が側部から離間するので、該側部に臨む部分が第2成形型の開放方向においてアンダーカット形状となる発泡体の成形も可能である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記第1成形型と型閉めして、基材を成形するキャビティを画成する第3成形型を備えたことを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、基材の成形、発泡体の発泡成形、基材に対する発泡体の装着の各工程を連続的に行なうことを可能とし、基材および発泡体から構成される発泡成形部材の製造作業の効率化を図り得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る発泡成形部材の製造方法によれば、発泡原料を第2成形型側およびコア型側が開放した状態で発泡させるので、第2成形型の開放方向と交差する側部に臨む部分の発泡が規制されない。従って、発泡体の全体を均一に発泡させることができ、硬さが全体的に均一な発泡体を成形し得る。また、側部に臨む部分が第2成形型の開放方向においてアンダーカット形状となる発泡体も成形し得る。
別の発明に係る発泡成形部材の製造装置によれば、発泡原料を第2成形型側およびコア型側が開放した状態で発泡させ得るので、第2成形型の開放方向と交差する側部に臨む部分の発泡を規制しない。従って、発泡体の全体を均一に発泡させることを可能とし、硬さが全体的に均一な発泡体を成形することを可能とする。また、側部に臨む部分が第2成形型の開放方向においてアンダーカット形状となる発泡体を成形することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る発泡成形部材の製造方法および製造装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。実施例では、図10に示す発泡成形部材Wを製造する製造装置および製造方法を例示して説明する。なお実施例では、図3の左右方向を製造装置Mの左右方向、図3の上下方向を製造装置Mの前後方向とし、同図の下方を該製造装置Mの前側とする。
【実施例】
【0016】
図10(a)に示す発泡成形部材Wは、インストルメントパネルやフロアコンソール等の車両内装部材または該車両内装部材の構成部材として用いられ、所要形状にインジェクション形成された合成樹脂製の基材Pと、該基材Pの外面に装着された発泡体Fとを備えている。基材Pは、全体的に湾曲した略矩形状をなす本体部P1と、本体部P1における3辺の外縁に沿って延在して該本体部P1と略直角に折曲した第1〜第3の各外縁部P2,P3,P4とを有している。また発泡体Fは、基材Pの本体部P1を被覆する外面発泡部F1と、該基材Pの第1〜第3の各外縁部P2,P3,P4を被覆する第1〜第3の各端面発泡部(側部)F2,F3,F4とを有している。
【0017】
発泡体Fは、図10(a)に示すように、外面発泡部F1の長手方向において該外面発泡部F1を挟んで対向する第1および第2の端面発泡部F2,F3が、図10(b)に示すように厚さ方向に破断した状態において、各々の外面が該外面発泡部F1から離間するにつれて互いに近接するよう傾斜している。また、外面発泡部F1の長手方向に延在する第3の端面発泡部F4は、図10(c)に示すように厚さ方向に破断した状態において、外面が該外面発泡部F1から離間するにつれて基材Pの裏面側へ傾斜している。すなわち、第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4は、図8および図9に示すように、発泡体Fを成形する製造装置Mにおける発泡体成形型30の開閉方向と交差する側部に臨む部分であり、該発泡体成形型30の開放方向においてアンダーカット形状をなしている。
【0018】
実施例に係る発泡成形部材の製造方法を実施する製造装置Mは、図14に示す従来の製造装置M1と同様に、基材Pおよび発泡体Fを連続して成形し得る。すなわち製造装置Mは、基材Pおよび発泡体Fの成形に共通に使用されるベース成形型(第1成形型)10と(図1、図2)、基材Pの成形に使用される基材成形型(第3成形型)20と(図4、図5)、発泡体Fの成形に使用される発泡体成形型(第2成形型)30(図1、図2)とを備えている。すなわち製造装置Mは、ベース成形型10と基材成形型20とを型閉めすることでインジェクション成形型に構成され、両成形型10,20内に画成されるキャビティC1内に樹脂原料を射出し、該樹脂原料を固化させることで基材Pが成形される(図4、図5)。また製造装置Mは、ベース成形型10と発泡体成形型30とを型閉めすることで発泡成形型として構成され、キャビティC2における基材Pと発泡体成形型30との間に発泡原料を射出し、該発泡原料を発泡させることで発泡体Fを基材Pに積層することが可能である(図6〜図9)。
【0019】
第1成形型としてのベース成形型10は、図4〜図7に示すように、基材成形型20および発泡体成形型30が型閉めされる上側に、略矩形状に突出した突出部12が形成されている。そして、突出部12の上面14は、ベース成形型10と基材成形型20とを型閉めして基材Pを成形する際には、第1キャビティC1に臨んで基材成形面として機能する(図4、図5)。また突出部12の上面14は、ベース成形型10と発泡体成形型30とを型閉めして発泡体Fを成形する際には、基材Pをセットする基材セット面として機能する(図6、図7)。
【0020】
第3成形型としての基材成形型20は、図4および図5に示すように、ベース成形型10に対向する下側に、略矩形状に陥凹した陥凹部22が形成されている。そして、陥凹部22の下方を指向する底面(上面)に、基材Pを成形するための基材成形面24が形成されている。従って、ベース成形型10と基材成形型20とを型閉めすることで、両成形型10,20の上面14および基材成形面24により、基材Pを成形するためのキャビティである第1キャビティC1が画成される。
【0021】
第2成形型としての発泡体成形型30は、図6および図7に示すように、ベース成形型10に型閉めした際に、該ベース成形型10に装着された基材Pが臨むと共に発泡原料Uを注入するためのキャビティである第2キャビティC2を画成する。この発泡体成形型30は、発泡体成形型30に固定した状態に配設される固定コア型部32と、該発泡体成形型30に移動可能に配設される第1スライドコア型部(コア型)40、第2スライドコア型部(コア型)50および第3スライドコア型部(コア型)60を備えている。そして、基材Pがセットされたベース成形型10と発泡体成形型30とを型閉めすると、固定コア型部32、第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60および該ベース成形型10により、前述した第2キャビティC2が密閉状態に画成される。
【0022】
固定コア型部32は、発泡体成形型30に固定した状態で配設されている。従って固定コア型部32は、発泡体成形型30の開閉動作により、図6および図7に示す原料注入位置および図8および図9に示す発泡体成形位置の間で移動すると共に、原料注入位置および発泡体成形位置とに停止保持される。なお固定コア型部32は、発泡原料Uの発泡前における発泡体Fの外面発泡部F1に対応し、該外面発泡部F1に外面形状を付与する。
【0023】
コア型である第1スライドコア型部40は、発泡体成形型30のベース成形型10を指向する部位にスライドレール42,42を介して移動可能に配設され、発泡体成形型30の外部壁面に配設したアクチュエータからなる第1作動手段44のロッド46に連結されている。これにより第1スライドコア型部40は、型閉めしたベース成形型10と発泡体成形型30との間の空間において該発泡体成形型30の開閉方向と交差する左側の側部に臨み、第1作動手段44の作動により図6に示す原料注入位置および図8に示す発泡体成形位置の間を、発泡体成形型30の開放方向と交差する方向(左右方向)へ移動する。そして第1スライドコア型部40は、原料注入位置と発泡体成形位置とに停止保持される。なお第1スライドコア型部40は、発泡原料Uの発泡前における発泡体Fの第1の端面発泡部F2に対応し、該第1の端面発泡部F2に外面形状を付与する。
【0024】
コア型である第2スライドコア型部50は、発泡体成形型30のベース成形型10を指向する部位において前記第1スライドコア型部40と対向する位置に、スライドレール52,52を介して移動可能に配設され、発泡体成形型30の外部壁面に配設したアクチュエータからなる第2作動手段54のロッド56に連結されている。これにより第2スライドコア型部50は、型閉めしたベース成形型10と発泡体成形型30との間の空間において該発泡体成形型30の開閉方向と交差する右側の側部に臨み、第2作動手段54の作動により図6に示す原料注入位置および図8に示す発泡体成形位置の間を、発泡体成形型30の開放方向と交差する方向(左右方向)へ移動する。そして第2スライドコア型部50は、原料注入位置と発泡体成形位置とに停止保持される。なお第2スライドコア型部50は、発泡原料Uの発泡前における発泡体Fの第2の端面発泡部F3に対応し、該第2の端面発泡部F3に外面形状を付与する。
【0025】
コア型である第3スライドコア型部60は、発泡体成形型30のベース成形型10を指向する部位にスライドレール62,62を介して移動可能に配設され、発泡体成形型30の外部壁面に配設したアクチュエータからなる第3作動手段64のロッド66に連結されている。これにより第3スライドコア型部60は、型閉めしたベース成形型10と発泡体成形型30との間の空間において該発泡体成形型30の開閉方向と交差する後側の側部に臨み、第3作動手段64の作動により図7に示す原料注入位置および図9に示す発泡体成形位置の間を、発泡体成形型30の開放方向と交差する方向(前後方向)へ移動する。そして第3スライドコア型部60は、原料注入位置と発泡体成形位置とに停止保持される。なお第3スライドコア型部60は、発泡原料Uの発泡前における発泡体Fの第3の端面発泡部F4に対応し、該第3の端面発泡部F4に外面形状を付与する。
【0026】
前述した固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60は、図6および図7に示すように、各々が原料注入位置に停止保持することで、ベース成形型10と共に密閉状態の第2キャビティC2を画成する。また、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60は、図8および図9に示すように、発泡体成形位置に移動して停止保持することで、ベース成形型10(基材P)から離間して発泡原料Uの外面から離間した状態を保つと共に、発泡成形される発泡体Fの外面に接触しないよう構成されている。すなわち固定コア型部32は、発泡体成形位置に移動させると、発泡成形される発泡体Fにおける外面発泡部F1の外面より外側へ離間する。第1スライドコア型部40は、発泡体成形位置に移動させると、発泡成形される発泡体Fにおける第1の端面発泡部F2の外面より離間する。また第2スライドコア型部50は、発泡体成形位置に移動させると、発泡成形される発泡体Fにおける第2の端面発泡部F3の外面より離間する。更に第3スライドコア型部60は、発泡体成形位置に移動させると、発泡成形される発泡体Fにおける第3の端面発泡部F4の外面より離間する。従って、実施例の製造装置Mでは、発泡原料Uから発泡体Fを発泡成形する際に、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60が、該発泡原料Uの発泡を規制しない。
【0027】
次に、前述のように構成された製造装置Mを使用した実施例の発泡成形部材の製造方法につき、図4〜図9を引用して説明する。
【0028】
先ず、図4および図5に示すように、ベース成形型10と基材成形型20とを型閉めする。そして、図示省略した注入口を介して両成形型10,20内に画成された第1キャビティC1内へ、基材成形用の樹脂原料を注入する。そして、第1キャビティC1内に注入した樹脂原料を固化させ、該第1キャビティC1内で基材Pを成形する。基材Pの成形が完了したら、基材成形型20をベース成形型10から離間させて型開きする。
【0029】
次いで、成形された基材Pがセットされているベース成形型10と発泡体成形型30とを型閉めする。なお、第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60は、ベース成形型10と発泡体成形型30の型閉め前に夫々を発泡体成形位置に保持しておいて、型閉め完了後に夫々を原料注入位置に移動する。但し、第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60は、ベース成形型10と発泡体成形型30の型閉め前に夫々を原料注入位置に停止保持させたもとで、両成形型10,30を型閉めするようにしてもよい。
【0030】
ベース成形型10と発泡体成形型30とを型閉めしたら、図6および図7に示すように、図省略した注入口を介して、基材Pがセットされたベース成形型10、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60により画成された第2キャビティC2内へ、発泡体成形用の発泡原料Uを注入する。なお、発泡原料Uの注入量は、第2キャビティC2の基材Pを除いた内容積と同量とされる。ここで発泡原料Uは、例えばポリプロピレン:ゴム分:油分(流動パラフィン等)の配合比率を50:100:10としたオレフィン系の熱可塑性エラストマ(TPO)に、適宜の発泡剤を3重量%程度添加されたものが使用される。
【0031】
第2キャビティC2内に注入された発泡原料Uは、発泡体成形型30の冷却されている固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60に接触した部分や、基材Pに接触した部分から硬化し始め、この部分にソリット化したスキン層Sが形成される。また、第2キャビティC2内へ注入された発泡原料Uが該第2キャビティC2内を流動する際に発泡ガスのロスがない場合には、発泡剤が分解して発生した全てのガスは圧縮されて当該発泡原料U内に含有された状態となっている。
【0032】
第2キャビティC2内に注入された発泡原料Uの外表面に所要厚のスキン層Sが形成されたら、図8および図9に示すように、第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60を原料注入位置から発泡体成形位置へ後退移動させる。また、これらの後退移動と同時または適宜時間差を以て、発泡体成形型30を同図の上方へ所要量だけ移動させ、固定コア型部32を原料注入位置から発泡体成形位置へ後退移動させる。これにより、発泡原料Uに付与されていた圧力が低下するので、該発泡原料U内で圧縮状態で含有されていたガスが順次気泡化して大小多数の空隙が形成され、発泡体Fの体積が増加してスキン層Sの内側に発泡層Faが形成される。なお、スキン層Sの部分では、ガスを閉じ込めた状態で樹脂が固化しているので、このスキン層Sの部分ではガスは気泡化しない。
【0033】
前述した発泡原料Uの発泡時には、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60が、該発泡原料Uの外面から離間した状態に保たれている。従って発泡原料Uは、固定コア型部32側および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60側が開放した状態で発泡され、発泡体成形型30により該発泡原料Uの発泡が規制されない。従って、発泡原料Uは全体が均一に発泡するようになり、成形された発泡体Fの発泡層Faは全体が均一の硬さに形成される。すなわち、発泡体Fの外面発泡部F1および第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4は、夫々が均一の硬さに形成される。なお発泡原料Uは、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60により形状が付与されたスキン層Sの内側で発泡するので、内側から該スキン層Sの全体を均一に押圧する。従って、成形された発泡体Fは、外部意匠面が部分的に膨出したり陥凹する等の不都合が殆ど発生しない。
【0034】
発泡原料Uの発泡完了により、発泡体Fは基材Pの一面に装着された状態で成形される。従って、発泡体成形型30をベース成形型10から離間して型開きすることで、基材Pに発泡体Fが積層された図10の発泡成形部材Wが成形される。
【0035】
前述した実施例の発泡成形部材の製造方法では、発泡体成形型30に配設した固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60を基材Pから離間する方向へ移動させるため、第2キャビティC2内に注入した発泡原料Uを、発泡体成形型30(固定コア型部32)側および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60側が開放した状態で発泡させ得る。そして、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60を、成形予定の発泡体Fの外面より離間した位置まで後退移動させるので、該発泡体Fの発泡が発泡体成形型30により規制されない。従って、発泡体Fの外面発泡部F1の発泡は勿論、発泡体成形型30の開放方向と交差する側部に臨む部分である第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4の発泡が規制されず、発泡体Fの全体を均一に発泡させることができ、硬さが全体的に均一な発泡体Fを成形し得る。しかも、発泡体Fの第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4が、発泡体成形型30の開放方向においてアンダーカット形状となっていても、外面発泡部F1および各端面発泡部F2,F3,F4を均一に発泡させることができ、外面発泡部F1および各端面発泡部F2,F3,F4の硬さが均一となるように該発泡体Fを成形し得る。また、ベース成形型10と基材成形型20とで成形した基材Pを該ベース成形型10にセットした状態で発泡体Fの発泡成形を行なうので、発泡体Fの発泡成形および該発泡体Fの基材Pへの装着が同時になされ、発泡体Fを構成部材とする発泡成形部材Wの製造作業の効率化を図り得る。
【0036】
また、前述した実施例の製造装置Mによれば、発泡体Fの発泡成形時に、発泡体成形型30に配設した固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60が発泡原料Uから離間した状態に保持されるので、該発泡原料Uを発泡体成形型30(固定コア型部32)側および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60側が開放した状態で発泡することを可能とする。従って、発泡体Fの外面発泡部F1の発泡は勿論、発泡体成形型30の開放方向と交差する側部に臨む部分である第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4の発泡を規制しないので、発泡体Fの全体を均一に発泡させることを可能とし、硬さが全体的に均一な発泡体Fを成形することを可能とする。しかも、発泡体Fの第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4が、発泡体成形型30の開放方向においてアンダーカット形状となっていても、外面発泡部F1および各端面発泡部F2,F3,F4を均一に発泡することを可能とする。また、ベース成形型10と基材成形型20とで成形した基材Pを該ベース成形型10にセットした状態で発泡体Fの発泡成形を行なうことが可能であり、発泡体Fの発泡成形および該発泡体Fの基材Pへの装着が同時になされ、発泡体Fを構成部材とする発泡成形部材Wの製造作業の効率化に寄与し得る。
【0037】
(変更例)
(1)本願が対象とする発泡成形部材の製造方法は、ベース成形型10に基材Pをセットした状態で発泡体Fを発泡成形するものに限定されず、ベース成形型10および発泡体成形型30により発泡体Fを単体で発泡成形するものであってもよい。すなわち、図11および図12に示すように、先ずベース成形型10と発泡体成形型30とを型閉めして、該ベース成形型10、固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60により密閉されたキャビティC2を画成し、このキャビティC2内に発泡原料Uを注入する。そして、発泡原料Uにおける発泡体成形型30の固定コア型部32および第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60に接触する部分にスキン層Sが形成されたら、発泡体成形型30を開放して固定コア型部32をベース成形型10から離間させると共に、第1〜第3の各スライドコア型部40,50,60をベース成形型10から離間する方向へ移動させ、固定コア型部32および各スライドコア型部40,50,60を発泡原料Uの外面から離間した状態に保つ。これにより、キャビティC2に注入した発泡原料Uを、発泡体成形型30(固定コア型部32)側および各スライドコア型部40,50,60側が開放した状態で発泡させ、発泡体Fを単体で成形する。
(2)本願が対象とする発泡成形部材の製造方法は、別の基材成形型で成形した基材Pをベース成形型10にセットしたもとで、ベース成形型10および発泡体成形型30により発泡体Fを該基材Pの一面に成形するようにしてもよい。
(3)実施例では、発泡体Fにおける第1〜第3の各端面発泡部F2,F3,F4が、発泡体成形型30の開放方向においてアンダーカット形状である場合を例示したが、本願の製造方法および製造装置は、各端面発泡部F2,F3,F4がアンダーカット形状ではない発泡体Fであっても、発泡体Fの全体を均一に発泡させて、硬さが全体的に均一な発泡体Fを成形し得る。
(4)本願の発泡成形部材の製造方法および製造装置は、実施例に例示した形状の発泡成形部材Wだけでなく、様々な形状・サイズの発泡成形部材Wを成形し得る。そして、コア型としてのスライドコア型部の配設数および配設位置は実施例で示した形態に限定されず、成形予定の発泡体Fの形状、サイズに応じて配設数および配設位置が変更される。
(5)実施例の製造装置Mでは、コア型である第1〜第3のスライドコア型部40,50,60が発泡体成形型30に移動可能に配設した構成となっているが、コア型はベース成形型10に移動可能に配設した構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例の製造装置におけるベース成形型および発泡体成形型を、図3のI−I線で破断して示す縦断正面図である。
【図2】実施例の製造装置におけるベース成形型および発泡体成形型を、図3のII−II線で破断して示す縦断側面図である。
【図3】発泡体成形型の平面図である。
【図4】ベース成形型と基材成形型とを型閉めして画成された第1キャビティ内で基材を成形した状態を示す縦断正面図である。
【図5】図4の状態を示す縦断側面図である。
【図6】ベース成形型と発泡体成形型とを型閉めして画成された第2キャビティ内に発泡原料を注入した状態を示す縦断正面図である。
【図7】図6の状態を示す縦断側面図である。
【図8】発泡体成形型をベース成形型から離間させて、発泡体成形型に設けた固定コア型部および第1〜第3のスライドコア型部を、成形予定の発泡体の外面より離間した発泡体成形位置へ後退させ、発泡体を成形した状態を示す縦断正面図である。
【図9】図8の状態を示す縦断側面図である。
【図10】(a)は、実施例の製造装置を使用した製造方法により製造される発泡体および基材からなる発泡成形部材を一部破断して示す斜視図であり、(b)は(a)のXb−Xb線断面図であり、(c)は(a)のXc−Xc線断面図である。
【図11】変更例の製造装置におけるベース成形型および発泡体成形型により、発泡体を単体で成形する製造方法を概略的に示す縦断正面図であって、ベース成形型と発泡体成形型とを型閉めして画成された第2キャビティ内に発泡原料を注入した状態を示している。
【図12】図11に示す製造装置において、発泡体成形型をベース成形型から離間させて、発泡体成形型に設けた固定コア型部および第1〜第3のスライドコア型部を、成形予定の発泡体の外面より離間した発泡体成形位置へ後退させ、発泡体を単体で成形した状態を示す縦断正面図である。
【図13】(a)は、基材および発泡体から構成される発泡成形部材を一部破断して示す概略斜視図であり、(b)は、(a)に示す発泡成形部材の背面図である。
【図14】ベース成形型、基材成形型および発泡体成形型からなる従来の製造装置を概略的に示す説明図である。
【図15】ベース成形型と基材成形型とを型閉めして画成された第1キャビティ内で基材を成形した状態を示す縦断正面図である。
【図16】基材をセットしたベース成形型と発泡体成形型とを型閉めして画成された第2キャビティ内に発泡原料を注入した状態を示す縦断正面図である。
【図17】発泡体成形型をコアバックさせ、容積が拡大した密閉状態の第2キャビティ内で発泡体を発泡成形した状態を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ベース成形型(第1成形型),20 基材成形型(第3成形型)
30 発泡体成形型(第2成形型),40 第1スライドコア型部(コア型)
50 第2スライドコア型部(コア型),60 第3スライドコア型部(コア型)
C1 第1キャビティ(キャビティ),C2 第2キャビティ(キャビティ)
F 発泡体,F2 端面発泡部(側部),F3 端面発泡部(側部)
F4 端面発泡部(側部),P 基材,S スキン層,U 発泡原料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体を備える発泡成形部材の製造方法であって、
第1成形型と、前記第1成形型に対し開閉可能な第2成形型と、第1成形型と第2成形型との間の空間において該第2成形型の開閉方向と交差する側部に臨むコア型とでキャビティを画成し、
前記キャビティ内に発泡原料を注入し、
前記発泡原料の外側にスキン層が形成されたら、前記第2成形型を開放すると共に、前記コア型を前記第1成形型から離間する方向へ移動し、
前記発泡原料を第2成形型側およびコア型側が開放した状態で発泡させて前記発泡体を成形する
ことを特徴とする発泡成形部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1成形型に基材をセットして、前記キャビティに臨む前記基材に前記発泡体を積層する請求項1記載の発泡成形部材の製造方法。
【請求項3】
前記発泡体の発泡成形前に、前記第1成形型と該第1成形型に対し開閉可能な第3成形型とを型閉めして、両成形型により画成されたキャビティ内で前記基材を成形する請求項2記載の発泡成形部材の製造方法。
【請求項4】
発泡体を備える発泡成形部材の製造装置であって、
第1成形型と、
前記第1成形型に対し開閉可能に配設される第2成形型と、
前記第1成形型または第2成形型に該第2成形型の開閉方向と交差する方向に移動可能に配設され、両成形型間の空間において該第2成形型の開閉方向と交差する側部に臨んで両成形型と共にキャビティを画成するコア型とを備え、
前記第2成形型およびコア型を、前記キャビティへの発泡原料の注入後に、該発泡原料の外面から離間した状態を保つよう前記第1成形型から離間する方向へ開放および移動する
ことを特徴とする発泡成形部材の製造装置。
【請求項5】
前記第1成形型と型閉めして、基材を成形するキャビティを画成する第3成形型を備えた請求項4記載の発泡成形部材の製造装置。
【請求項1】
発泡体を備える発泡成形部材の製造方法であって、
第1成形型と、前記第1成形型に対し開閉可能な第2成形型と、第1成形型と第2成形型との間の空間において該第2成形型の開閉方向と交差する側部に臨むコア型とでキャビティを画成し、
前記キャビティ内に発泡原料を注入し、
前記発泡原料の外側にスキン層が形成されたら、前記第2成形型を開放すると共に、前記コア型を前記第1成形型から離間する方向へ移動し、
前記発泡原料を第2成形型側およびコア型側が開放した状態で発泡させて前記発泡体を成形する
ことを特徴とする発泡成形部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1成形型に基材をセットして、前記キャビティに臨む前記基材に前記発泡体を積層する請求項1記載の発泡成形部材の製造方法。
【請求項3】
前記発泡体の発泡成形前に、前記第1成形型と該第1成形型に対し開閉可能な第3成形型とを型閉めして、両成形型により画成されたキャビティ内で前記基材を成形する請求項2記載の発泡成形部材の製造方法。
【請求項4】
発泡体を備える発泡成形部材の製造装置であって、
第1成形型と、
前記第1成形型に対し開閉可能に配設される第2成形型と、
前記第1成形型または第2成形型に該第2成形型の開閉方向と交差する方向に移動可能に配設され、両成形型間の空間において該第2成形型の開閉方向と交差する側部に臨んで両成形型と共にキャビティを画成するコア型とを備え、
前記第2成形型およびコア型を、前記キャビティへの発泡原料の注入後に、該発泡原料の外面から離間した状態を保つよう前記第1成形型から離間する方向へ開放および移動する
ことを特徴とする発泡成形部材の製造装置。
【請求項5】
前記第1成形型と型閉めして、基材を成形するキャビティを画成する第3成形型を備えた請求項4記載の発泡成形部材の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−115908(P2010−115908A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292571(P2008−292571)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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