説明

発泡材付きパイプの製造方法

【課題】才断時に発泡材の収縮が少ない発泡材付きパイプを従来よりも効率的に製造する。
【解決手段】架橋ポリエチレン発泡材14パイプ12の外周表面に添わせて円形に絞り、ライナー22を架橋ポリエチレン発泡材14の外周表面に添わせながら架橋ポリエチレン発泡材14で覆われたパイプ12をダイス16より引き抜く。ダイス16と架橋ポリエチレン発泡材14との間の摩擦係数をμ0、ダイス16とナイロンシートとの間の摩擦係数をμ1、架橋ポリエチレン発泡材14とナイロンシートとの間の摩擦係数をμ2、架橋ポリエチレン発泡材14と滑り抑制層28との間の摩擦係数をμ3としたときに、μ0>μ1、μ2<μ3、μ3>μ1を満足するように各々の部材の材質を選択することで、引き抜きの際に架橋ポリエチレン発泡材14の伸びが抑えられ、才断時の発泡材の収縮が抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂パイプの周りに樹脂発泡材(保温材)を被覆する発泡材付きパイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、給水・給湯用のパイプとしてポリブテンにて代表される樹脂パイプが広く用いられるようになり、寒冷地にあっては特に樹脂パイプの回りにポリエチレンにて代表される樹脂発泡材を被覆する手段が取られている。
【0003】
この樹脂パイプの周りにポリエチレン発泡材(保温材)を被覆する方法としては、シート状の発泡材を円形に絞りながら樹脂パイプの周りを覆い、紋りきる直前にシート端部を熱風で融解し、被覆終了後の径よりわずかに小さい径を持つ中空のダイスに通して融着面を接合し、次いで融着箇所を冷却して固化し、その後中空ダイスより発泡材付きパイプを圧縮コンベア等を設置して連続的に引き抜く方法がある。
【0004】
上記の製造過程にあっては、発泡材の外周部と中空ダイスの内面とで摩擦が生じることは避けられず、このため、パイプよりも柔軟な発泡材は延伸された状態で中空ダイスから引き出される。パイプの外周表面は発泡材の内周表面と接着していないので、中空ダイスから引き出されるパイプ自体は延伸していない。
【0005】
したがって、かかる製造方法によって得られる発泡材付きパイプでは、実際の施工時に使用寸法に才断すると、発泡材のみが収縮し、パイプ端が露出してしまう現象が発生する。このことは、引き抜く際に発泡材が伸ばされ、引き抜き後の発泡材に引張応力が残留して、パイプ自体は伸ばされていないため、発泡材が元の長さに戻ろうとすることが原因である。
そこで、発泡材とダイスとの間に滑り易いライナーを挟んで発泡材の伸びを低減することのできる発泡材付きパイプの製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−125760
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の製造方法により発泡材付きパイプを製造することで、ある程度のラインスピードまでは発泡材の収縮を抑えることが出来た。しかしながら、生産効率を上げようとしてラインスピード(引き抜き速度)を高速化すると収縮を抑えられなくなり、ラインスピードを上げるにも限界があり、高速化に改善の余地があった。
【0008】
また、種々の実験検討により、ライナーは、ダイスとの間の摩擦係数は小さくなるものの、発泡材との間の摩擦係数も小さくなってしまうため、相対的に見ると結局、発泡材の縮み性に影響を与えることが判明した。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、発泡材付きパイプの製造方法にあって、才断時に発泡材の収縮が少ない発泡材付きパイプを従来よりも効率的に製造することのできる発泡材付きパイプの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、シート状の発泡材を円形に絞りながらパイプの周りを覆い、前記発泡材を紋りきる前に互いに対向するシート端部を融解し、円形に絞った前記発泡材の外面にライナーを配して被覆終了後の径よりわずかに小さい径を持つ中空のダイスを通過させることで融解した前記シート端部同士を融着し、前記中空のダイスより前記シート端部同士が融着された発泡材付きパイプを連続的に引き抜く発泡材付きパイプの製造方法において、前記ライナーは、ライナー本体の発泡材側に滑り抑制層が設けられ、前記ダイスと前記発泡材との間の摩擦係数μ0>前記ダイスと前記ライナー本体との間の摩擦係数μ1、前記発泡材と前記ライナー本体との間の摩擦係数μ2<前記発泡材と前記滑り抑制層との間の摩擦係数μ3、前記発泡材と前記滑り抑制層との間の摩擦係数μ3>前記ダイスと前記ライナー本体との間の摩擦係数μ1を満足する。
【0011】
次に、請求項1に記載の発泡材付きパイプの製造方法の作用を説明する。
請求項1に記載の発泡材付きパイプの製造方法では、ダイスとライナー本体との間の摩擦係数μ1が、ダイスと発泡材との間の摩擦係数μ0よりも小さいため、ライナーを用いずに発泡材付きパイプをダイスから引き抜く場合に比較して、ライナーを用いて発泡材付きパイプをダイスから引き抜く方が、ダイスの内面との摩擦抵抗が少なくなり、発泡材の伸びが抑えられた状態で発泡材付きパイプを引き抜くことができる。なお、μ1≧μ0では、当然ながら発泡材の伸びを抑えることが出来なくなる。
【0012】
さらに、請求項1に記載の発泡材付きパイプの製造方法によれば、発泡材とライナー本体との間の摩擦係数μ2が、発泡材と滑り抑制層との間の摩擦係数μ3よりも小さくなっている。このため、発泡材とライナー本体とが接触している場合と、発泡材と滑り抑制層とが接触している場合を比較した場合、前者よりも後者(請求項1の構成)の方が、部材間の摩擦抵抗が大きいため、ダイスから発泡材付きパイプを引き抜く際の発泡材とライナーとの間のずれが抑えられる、即ち、発泡材の伸びがライナーによって抑えられる。なお、μ2≧μ3では、従来対比で発泡材の伸びが抑えられなくなる。
【0013】
また、発泡材と滑り抑制層との間の摩擦係数μ3が、ダイスとライナー本体との間の摩擦係数μ1よりも大に設定されている。これにより、発泡材付きパイプをダイスから引き抜く際に、ダイスの内面とライナーの外面となるライナー本体との摩擦抵抗が小さく、発泡材の外面とライナーの内面にある滑り抑制層との摩擦抵抗が大きくなることで、発泡材付きパイプはダイスからスムーズに引き抜かれると共に、発泡材とライナーとのずれが抑えられることによって、発泡材の伸びが抑えられる。なお、μ3≦μ1では、従来対比で発泡材の伸びが抑えられなくなる。
【0014】
少なくとも上記摩擦係数の関係が保たれれば、本発明の効果は得られる。ダイス、ライナー本体、滑り抑制層、発泡材の材料は、上記摩擦係数の関係が保たれるように、金属、合成樹脂等の様々な材料から種々選択することができる。また、摩擦係数の差を大きくした方が、高い効果を得られるのは勿論である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発泡材付きパイプの製造方法において、前記ライナーは、前記パイプの長手方向に沿って延びる経糸と、前記経糸に対して交差する方向に延びる緯糸を含んで構成された織物である。
【0016】
経糸と緯糸を含んで構成された織物を、経糸及び緯糸に対して傾斜した方向に引っ張ると、矩形の織り目が菱形に変形して織物が容易に伸びる。
パイプに沿わせるライナーの経糸をパイプの長手方向に沿う方向とすることで、織り目の変形が抑えられ、織物の伸び、即ち、ライナー自身の伸びが抑えられる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発泡材付きパイプの製造方法において、長さ100mm、幅25mmの前記ライナーを長手方向に50Nで引っ張った際の前記ライナーの伸びが0.3mm以下である。
【0018】
長さ100mm、幅25mmのライナーを長手方向に50Nで引っ張った際のライナー伸びを0.3mm以下とすることで、ダイスから引き抜く際のライナー自身の伸びが抑えられ、ライナー自身の伸びが抑えられることによって発泡材の伸びを更に抑えることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の発泡材付きパイプの製造方法において、前記滑り抑制層は、前記ライナー本体に合成樹脂を含浸させたことで形成された層である。
【0020】
滑り抑制層が、ライナー本体に合成樹脂を含浸させたことで形成された層であるため、合成樹脂はライナー本体に強固に一体化され、ライナー本体から剥離し難くなり、ライナーの耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明の発泡材付きパイプの製造方法によれば、才断時に発泡材の収縮が少ない発泡材付きパイプを従来よりも高速で製造可能となる。
請求項2に記載のパイプの製造方法によれば、発泡材の伸びを更に抑えることができる。請求項3に記載のパイプの製造方法によれば、発泡材の伸びを更に抑えることができる。また、請求項4に記載のパイプの製造方法によれば、ライナーの耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】発泡材付きパイプを製造方法する際に用いる製造装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】製造装置の一部分を示す側面図である。
【図3】ダイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1(A)には、例えば、建物の給水に用いるポリブテン製のパイプ12の外周を保温材となる架橋ポリエチレン発泡材14で覆った発泡材付きパイプ15を製造方法する際に用いる製造装置10の概略構成が平面図にて示されている。
この架橋ポリエチレン発泡材14は、図1(A)、(B)に示すように、当初は一定幅に切断されたシート状をなしているが、搬送方向下流側(矢印A方向側)に配置されたダイス16の手前で、パイプ12の外周表面に添わせつつ順次円形に絞られ、架橋ポリエチレン発泡材14の幅方向一方側の突き合わせ部分(端縁)14Aと、他方側の突き合わせ部(端縁)14Bとが、例えば、図2に示すような熱風ヒータ18からの熱風18Aで加熱され、図1に示すように、一方側の突き合わせ部分14Aと、他方側の突き合わせ部14Bとが溶融状態とされた後に突き合わされて一体に融着され、パイプ12の外周側を覆うパイプ形状とされる。なお、本実施形態の架橋ポリエチレン発泡材14は、ポリエチレンフィルム表皮の付いたものが用いられている。
【0024】
本実施形態では、架橋ポリエチレン発泡材14で覆われたパイプ12を搬送方向下流側に配置されたダイス16の孔20に通過させる前に、架橋ポリエチレン発泡材14の外周表面に帯状のライナー22を配し(図1(C)参照)、このライナー22を架橋ポリエチレン発泡材14の外周表面に添わせながら架橋ポリエチレン発泡材14で覆われたパイプ12をダイス16より引き抜く。
【0025】
本実施形態のダイス16は、ステンレス鋼で形成されているが、鋼、その他の金属で形成されていても良い。なお、ダイス16のパイプ搬送方向下流側には、発泡材付きパイプ15を引き抜くための1対の搬送ローラ24が配置されている。なお、搬送ローラ24は図示しないモータで矢印方向に回転され、ライナー22と共に発泡材付きパイプ15を両側から挟持してダイス16から引き抜き搬送するものである。搬送ローラ24に代えて、無端の搬送ベルトを用いても良い。
【0026】
そして、架橋ポリエチレン発泡材14付きのパイプ12は、架橋ポリエチレン発泡材14の外周にライナー22を沿わせたままダイス16の孔20に進入し、孔20の中で架橋ポリエチレン発泡材14の一方側の突き合わせ部分14Aと他方側の突き合わせ部14Bとが緊密に接触し、発泡材付きパイプとしての形が整えられる。
その後、融着した部分は冷却、固化されてダイス16の下流側に引き出される。なお、融着した部分は、自然冷却しても良く、強制冷却しても良い。
【0027】
本実施形態のライナー22は、ダイス16の孔20から出た後、再び孔20に侵入するように一定幅とされた無端のループ形状とされている。
ここで、ライナー22の基材26としては例えば、柔軟性があり、しかも引っ張り強度が高くて伸び難く、かつ、ダイス16との摩擦抵抗の小さいものが用いられる。また、ライナー22は、架橋ポリエチレン発泡材14よりも伸びが小さいように形成されている。
【0028】
ライナー22の基材26としては、例えば、編物、織物、不織布等から選択される繊維基材を用いることができる。繊維基材を構成する繊維素材としては、例えば、綿、麻等の天然繊維や金属繊維、ガラス繊維等の無機化学繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフルオロエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド等の有機化学繊維のいずれかを単独、または組み合わせて使用することができる。
【0029】
図3に示すように、本実施形態のライナー22の基材26には、ナイロンシートが用いられており、ナイロンシートには、架橋ポリエチレン発泡材14と接触する側に、架橋ポリエチレン発泡材14との間の摩擦係数を大きくする目的の滑り抑制層28が設けられている。
本実施形態のナイロンシートは、ライナー22の周方向(パイプ12に沿わせた際にパイプ12の長手方向となる)に沿って延びるナイロン繊維からなる経糸と、経糸と交差する方向に延びるナイロン繊維からなる緯糸から構成された平織物である。
本実施形態の滑り抑制層28は、ナイロンシートの片面側に合成樹脂が含浸されることで形成された層であり、この滑り抑制層28においては、ナイロン繊維が合成樹脂中に埋設されている。ナイロンシートに合成樹脂を含浸させることで、合成樹脂がナイロンシートの繊維と繊維の隙間に入り込んで繊維と一体化し、合成樹脂とナイロンシート(繊維)との接触面積が大となり、合成樹脂がナイロンシートから剥離し難い構成となっている。
【0030】
ここで、ダイス16と架橋ポリエチレン発泡材14との間の摩擦係数をμ0、ダイス16とナイロンシートとの間の摩擦係数をμ1、架橋ポリエチレン発泡材14とナイロンシートとの間の摩擦係数をμ2、架橋ポリエチレン発泡材14と滑り抑制層28との間の摩擦係数をμ3としたときに、μ0>μ1、μ2<μ3、及びμ3>μ1を全て満足するように、ダイス16、架橋ポリエチレン発泡材14、ライナー22の基材26、及び滑り抑制層28の各々の材質が選択されている。
【0031】
架橋ポリエチレン発泡材14は、その表面にポリエチレンフィルムが形成されていても良い。なお、架橋ポリエチレン発泡材14に代えて、ポリプロピレン、ポリスチレン、フェノ−ル、ポリウレタン等にて代表される樹脂発泡材を用いることも出来る。また、発泡材として、JIS・A・9511にて列挙される発泡材が用いられることは勿論である。
【0032】
なお、架橋ポリエチレン発泡材14の厚さは、特に規定は無いが、パイプ12が建物の給水・給湯用の場合、3〜20mmが好適範囲である。パイプ12の外径は特に限定するものではないが、建物の給水・給湯用の場合、例えばφ12〜30mmであり、更に大きい径の場合もある。
【0033】
滑り抑制層28には、上記のような摩擦係数の大小関係が成り立つような樹脂材質等が選択される。滑り抑制層28に用いる樹脂材質としては、摩擦係数の大きなものが好ましく、公知のエラストマー等を用いることができ、例えば、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニル、熱可塑性オレフィン等の熱可塑性樹脂、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム等のゴム、またはこれらの混合物が適宜使用される。
なお、本実施形態の滑り抑制層28には、熱可塑性ウレタン樹脂が用いられている。
【0034】
ライナー22にナイロンシートを用いたが、例えば、アクリルライナー、ポリエステルライナー、ビニロンライナー、ガラス繊維のライナー、不織布等も用いられる。但し、ライナー周方向の伸びが小さいものが好ましい。ライナー22の厚さは、架橋ポリエチレン発泡材14の厚さの約1/5〜1/20程度がよく、厚過ぎると架橋ポリエチレン発泡材14を圧縮する作用をしてしまい、架橋ポリエチレン発泡材14を圧縮し融着面の融着強度が低下する場合がある。なお、ライナー22の厚さの実寸法としては、0.1〜3mmの範囲内が好ましい。
【0035】
次に、本実施形態の発泡材付きパイプの製造方法の作用を説明する。
先ず、ダイス16と基材26との間の摩擦係数μ1を、ダイス16と架橋ポリエチレン発泡材14との間の摩擦係数μ0よりも小さく設定している。そのため、ライナー22を用いずに発泡材付きパイプ15をダイス16から引き抜く場合に比較して、ライナー22を用いて発泡材付きパイプ15をダイス16から引き抜く方が、ダイス16の内面との摩擦抵抗が少なくなり、架橋ポリエチレン発泡材14の伸びを抑えつつ発泡材付きパイプ15を引き抜くことができる。
【0036】
また、架橋ポリエチレン発泡材14と基材26との間の摩擦係数μ2を、架橋ポリエチレン発泡材14と滑り抑制層28との間の摩擦係数μ3よりも小さく設定し、架橋ポリエチレン発泡材14と基材26とが接触している場合と、架橋ポリエチレン発泡材14と滑り抑制層28とが接触している場合を比較した場合、後者の方、本実施形態の構成の方が、部材間の摩擦抵抗が大きくなる。したがって、ダイス16から発泡材付きパイプ15を引き抜く際の架橋ポリエチレン発泡材14とライナー22との間のずれが抑えられ、架橋ポリエチレン発泡材14の伸びがライナー22によって抑えられることとなり、より一層伸びが抑えられることとなる。
【0037】
さらに、本実施形態では、架橋ポリエチレン発泡材14と滑り抑制層28との間の摩擦係数μ3を、ダイス16と基材26との間の摩擦係数μ1よりも大に設定しているので、発泡材付きパイプ15をダイス16から引き抜く際に、ダイス16の内面とライナー22の外面となるライナー本体との摩擦抵抗が小さく、架橋ポリエチレン発泡材14の外面とライナー22の内面にある滑り抑制層28との摩擦抵抗が大きくなることで、発泡材付きパイプ15がダイス16からスムーズに引き抜かれると共に、架橋ポリエチレン発泡材14とライナー22とのずれが抑えられることによって、引き抜き時の架橋ポリエチレン発泡材14の伸びがさらに抑えられる。
【0038】
このように、引き抜き時のダイス16との摩擦を減少することによる架橋ポリエチレン発泡材14の伸び抑制効果と、ライナー22と架橋ポリエチレン発泡材14との摩擦を大きくして架橋ポリエチレン発泡材14の伸びの原因となるライナー22と架橋ポリエチレン発泡材14とのずれを抑える効果との、2つの効果により、従来よりも引き抜き時の架橋ポリエチレン発泡材14の伸びを効果的に抑えることができ、その結果、裁断後の架橋ポリエチレン発泡材14の収縮が効果的に抑えられ、発泡材付きパイプ15の引き抜き速度(ラインスピード)も高速化することができ、これによって発泡材付きパイプ15の生産効率を向上させることができる。
【0039】
なお、基材26が織物である場合、周方向(引き抜き時のパイプ12の長手方向に沿って延びる方向)に配置される経糸と、経糸に対して交差する方向に延びる緯糸を含んで構成された織物とすることが好ましい。これは、経糸と緯糸を含んで構成された織物を、経糸及び緯糸に対して傾斜した方向に引っ張ると、矩形の織り目が菱形に変形して織物が容易に伸びるが、経糸をパイプの長手方向に沿わせることで、織り目の変形が抑えられ、織物自身の伸び、即ち、ライナー22自身の伸びが抑えられる。
【0040】
また、ライナー22は、それ自身が伸び難いことが好ましく、例えば、長さ100mm、幅25mmのものを長手方向に50Nで引っ張った際の伸びを0.3mm以下とすることが好ましい。これにより、架橋ポリエチレン発泡材14の伸びを効果的に抑えることができる。
さらに、本実施形態のライナー22は、ナイロンシートに熱可塑性ウレタン樹脂を含浸させているので、熱可塑性ウレタン樹脂がナイロンシートから剥離し難く、耐久性の高いライナー22となっている。
【0041】
[その他の実施形態]
なお、融解部分を迅速に固化させるために、ダイス16の後半部に、強制的に冷却するための急冷ゾ−ン(4〜15°C、好ましくは5〜10°C)を設けても良い。
上記実施形態では、熱風ヒータ18の熱風で架橋ポリエチレン発泡材14の突き合わせ部分14A、14Bを融解したが、突き合わせ部分14A、14Bに接触させる電熱コテ等の接触式ヒータを新設し、電熱コテの熱と熱風ヒータ18の熱風とで突き合わせ部分14A、14Bを融解させても良く、電熱コテの熱のみを用いて突き合わせ部分14A、14Bを融解させても良い。
また、上記実施形態では、架橋ポリエチレン発泡材14の突き合わせ部分14A、14Bを融解して接合したが、例えば、ホットメルト接着剤等を用いて突き合わせ部分14A、14Bを接合しても良い。
本発明は、各部材間の摩擦係数μ0〜μ3の関係が満足できていれば、各部材の材質は上記実施形態のものに限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0042】
[試験例]
本発明の効果を確かめるために、ナイロンシートのみからなるライナーと、ナイロンシートの片面にウレタン樹脂層を設けたライナーとを用意し、発泡材付きパイプの引き抜き速度(いわゆるラインスピード)を種々変更し、製造された発泡材付きパイプを一定長(一例として5m)で切断し、架橋ポリエチレン発泡材の縮み率(%)を測定した。
尚、ここで用いたパイプはφ17mmのポリブテンパイプであり、厚さ5mmの架橋ポリエチレン発泡材を用いた。ライナーは厚さ1.5mmのものを用い、架橋ポリエチレン発泡材の外表面の80%を覆うものであった。
測定結果は、以下の表1に示す通りである。
【0043】
【表1】

試験結果から分かるように、ナイロンシートの片面に滑り抑制層を設けたライナーを用いることにより、製造された発泡材付きパイプのポリエチレン発泡材の縮み率は極めて小さく、ラインスピードを高速化でき、発泡材付きパイプの生産効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 製造装置
12 パイプ
14 架橋ポリエチレン発泡材
14A 突き合わせ部分
14B 突き合わせ部分
15 発泡材付きパイプ
16 ダイス
20 孔
22 ライナー
24 搬送ローラ
26 基材
28 滑り抑制層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の発泡材を円形に絞りながらパイプの周りを覆い、前記発泡材を紋りきる前に互いに対向するシート端部を融解し、円形に絞った前記発泡材の外面にライナーを配して被覆終了後の径よりわずかに小さい径を持つ中空のダイスを通過させることで融解した前記シート端部同士を融着し、前記中空のダイスより前記シート端部同士が融着された発泡材付きパイプを連続的に引き抜く発泡材付きパイプの製造方法において、
前記ライナーは、ライナー本体の発泡材側に滑り抑制層が設けられ、
前記ダイスと前記発泡材との間の摩擦係数μ0>前記ダイスと前記ライナー本体との間の摩擦係数μ1、
前記発泡材と前記ライナー本体との間の摩擦係数μ2<前記発泡材と前記滑り抑制層との間の摩擦係数μ3、
前記発泡材と前記滑り抑制層との間の摩擦係数μ3>前記ダイスと前記ライナー本体との間の摩擦係数μ1を満足する、発泡材付きパイプの製造方法。
【請求項2】
前記ライナーは、前記パイプの長手方向に沿って延びる経糸と、前記経糸に対して交差する方向に延びる緯糸を含んで構成された織物である、請求項1に記載の発泡材付きパイプの製造方法。
【請求項3】
長さ100mm、幅25mmの前記ライナーを長手方向に50Nで引っ張った際の前記ライナー伸びは0.3mm以下である、請求項1または請求項2に記載の発泡材付きパイプの製造方法。
【請求項4】
前記滑り抑制層は、前記ライナー本体に合成樹脂を含浸させたことで形成された層である、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の発泡材付きパイプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−221507(P2010−221507A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70783(P2009−70783)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】